JP2009209228A - 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物及びその製造法 - Google Patents

熱可塑性ポリエステル樹脂組成物及びその製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】 電子部品用のコンセント等の精密な製品を射出成形により製造するのに好適な、剛性、靱性及び流動性のいずれも優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し、この樹脂と反応する官能基を有するポリオルガノシロキサン化合物0.1〜10質量部、及び吸油量が60ml/100g以上の微粉末フィラー0.1〜5質量部を含有させてなる熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、流動性、剛性に優れ、かつ靱性が改良された熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に関するものであり、特にコネクター用材料として優れた熱可塑性ポリエステル樹脂に関するものである。また、本発明は、このような熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造法に関するものである。
熱可塑性ポリエステル樹脂、例えばポリアルキレンテレフタレート樹脂等は機械的性質、電気的性質、その他物理的・化学的特性に優れ、かつ、加工性が良好であるので、エンジニアリングプラスチックとして自動車、電気・電子部品等の広汎な用途に使用されている。その特に重要な用途の一つは、電子分野で用いられるコネクターの材料としての用途である。コネクターは、金属端子をランス等で確実に保持すること、及びロックした際に嵌合が緩まないことが求められる。ところで、コネクターのランスやロック機構は肉厚が薄いので、コネクターの材料は、溶融粘度が低く、且つ剛性及び靱性に富むことが必要であり、通常は、種々の助剤を添加することにより所望の物性を発現させることが試みられている。然しながら、助剤の添加は或る物性を向上させると他の物性が低下することが多い。例えばポリエステル系エラストマーのようなエラストマーを配合して耐衝撃性を向上させることが提案されているが、この方法では剛性の低下が避けられない。また種々の充填剤を配合することも提案されている。然しながら充填剤の特性にもよるが、この方法は概して靱性の低下を招き易い。
充填剤の配合による靱性の低下は、充填剤とポリエステル樹脂との接着不良によると考えられ、その対策として充填剤をシランカップリング剤等で表面処理する方法が提案され、実用化されている。シランカップリング剤としては、通常は分子内にポリエステル樹脂と反応し得る官能基、例えばアミノ基、エポキシ基等を有しているシランカップリング剤が用いられている。しかし、このような反応性シランカップリング剤で充填剤の表面を処理しても、若干の効果は認められるものの、靱性を十分に向上させることはできなかった。また、コネクターのような薄い肉厚の成形品の製造に際しては樹脂の溶融粘度が低いこと、即ち流動性がよいことが重要であるが、反応性シランカップリング剤で処理した無機充填剤を配合すると、流動性が低下する傾向がある。
特許文献1には、ポリアルキレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、吸油量が60ml/100g以上の微粉末フィラーを1〜50重量部含むことを特徴とする光反射体用ポリエステル系樹脂組成物が開示されている。また特許文献1にはこの組成物に、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物からなる群から選ばれる離型剤を配合することも開示されている。しかし、特許文献1には、成形品の外観、及び金属蒸着膜の反射率、接着性について記述されているのみであり、これらの微粉末フィラーや離型剤の添加により、樹脂の弾性率、靱性、流動性などがどのように変化するかは記載されていない。
特許文献2には、吸油量150ml/100g以上の非晶質シリカに、有機物を見掛比重が0.3以上になるように担持した組成物を、樹脂に配合することが記載されている。担持させる有機物としては、脂肪酸アミド類、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ステアリン酸系化合物及び脂肪酸エステル類からなる群から選ばれる融点が150℃以下である常温で固形の有機物、または鉱物油類、植物油類、シリコーンオイル類、脂肪酸エステル類及び界面活性剤類からなる群から選ばれる常温で液状の有機物が挙げられている。しかし、この特許文献2では得られた樹脂組成物については見掛比重、発塵性の評価結果が示されているのみであり、弾性率、靱性、流動性等に関する記載はない。
特開2007−106877号公報 特開2000−136265号公報
本発明は、流動性、剛性及び靱性が良好な熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を提供しようとするものである。この樹脂組成物を用いて製造したコネクターは、ランスやロック機構において折損などのトラブルが少ない。
本発明者らは、熱可塑性ポリエステル樹脂に、吸油量が高い微粉末フィラーとポリエステル樹脂と反応する官能基を有するポリオルガノシロキサン化合物を配合するならば、剛性を低下させること無く、靱性を向上させることができ、更には流動性も向上させ得ることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A成分)100質量部に対し、A成分と反応する官能基を有するポリオルガノシロキサン化合物(B成分)を0.1〜10質量部、及び吸油量が60ml/100g以上の微粉末フィラーを0.1〜5質量部を含有させたことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に存する。
本発明により、電子分野のコネクターに要求されるような、薄肉で且つ剛性及び靱性に富む成形品を与える、流動性のよい熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が得られた。
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
(a)熱可塑性ポリエステル樹脂;
本発明におけるA成分の熱可塑性ポリエステル樹脂は、基本的にジカルボン酸又はその誘導体と、ジオールとからなるポリエステル樹脂である。ジカルボン酸又はその誘導体としてはテレフタル酸又はその低級アルキルエステルが主に用いられるが、その他の酸成分として、フタル酸、イソフタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4′−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1.2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1.4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸又はこれらのジカルボン酸と低級アルキルアルコール又は低級グリコールとのエステルなどを併用してもよい。
ジオールとしては、エチレングリコール又は1,4−ブタンジオールが主に用いられるが、その他のジオール成分として、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)スルホン等の芳香族ジオール等を併用してもよい。
本発明においては、更に、乳酸、グリコール類、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンジカルボン酸、p−(β−ヒドロキシエトキシ)安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能成分;トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分などを共重合成分として併用することもできる。
本発明におけるポリエステル樹脂としては、芳香族ポリエステル樹脂が好ましいが、特に適度の機械強度を有する点でポリブチレンテレフタレート樹脂が最も好ましい。本発明においてポリブチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸が全ジカルボン酸成分の50モル%以上を占め、1,4−ブタンジオールが全ジオール成分の50重量%以上を占めるものを意味する。テレフタル酸は全ジカルボン酸成分の80モル%以上を占めるのが好ましく、95モル%以上を占めるのがさらに好ましい。1,4−ブタンジオールは全ジオール成分の80モル%以上を占めるのが好ましく、95モル%以上を占めるのが更に好ましい。テレフタル酸及び1,4−ブタンジオール以外の成分は20重量%以下であるのが好ましく、5重量%以下であれば更に好ましい。ポリエステル樹脂は2種以上を混合して併用してもよい。ポリエステル樹脂の固有粘度は、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール=1/1(質量比)の混合溶媒を用いて、温度30℃で測定した場合、0.5〜3.0である。固有粘度が、0.5より小さいと機械的強度が低く、3.0より大きいと流動性が悪く成形が困難になる。
ポリエステル樹脂と反応する官能基を有するポリオルガノシロキサン化合物;
本発明におけるB成分であるポリオルガノシロキサン化合物とは、下記一般式(1)
Figure 2009209228
[式中、Xは熱可塑性ポリエステル樹脂と反応性を有する有機基を表し、Rは2価の有機基を表す。R1は炭素数18以下で且つハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表し、R2はポリオルガノシリル基を表す。aは、0〜2の整数を表す。なお、aが0又は1の場合には複数のR2は相互に異なっていてもよく、aが2の場合には複数のR1は相互に異なっていてもよい。]
で表される化合物である。
Xで表される熱可塑性ポリエステル樹脂と反応性を有する有機基としては、例えばアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基などが挙げられる。なかでもアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基が好ましく、更にはアミノ基、エポキシ基がより好ましい。他の反応基ではポリエステル樹脂との反応性が小さいためか、靱性の改良効果を十分に発揮させるのが困難なことがある。またアミノ基とエポキシ基とを比較すると、エポキシ基は反応性が大きすぎるためか、得られる樹脂組成物の流動性を低下させることがある。従って最も好ましいのはアミノ基である。
Rで表される2価の有機基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基等のアルキレン基、フェニレン基、アルキレンアリーレン基、−R−(NHCH2CH2a−基[但し、Rはアルキレン基、aは1〜5の整数]、及び−(CH2CH2O)b−基[但し、bは1〜50の整数]、或いは−[CH2C(CH3)HO]c−基[但し、cは1〜50の整数]等のオキシアルキレン基やポリオキシアルキレン基等を挙げることができる。中でも、好ましいのは、エチレン基、プロピレン基である。
1で表される炭素数18以下のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ビニル基、フェニル基、メチルフェニル基、キシリル基及びナフチル基等が挙げられる。また、これらの基に置換するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が挙げられる。ハロゲン原子としては好ましいのはフッ素原子又は塩素原子であり、より好ましいのはフッ素原子である。ハロゲン原子で置換された基の例としては、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロオクチル基が挙げられる。R1として最も好ましいのは、メチル基又はフェニル基である。
で表されるポリオルガノシリル基は、下記式(2)で表される。
Figure 2009209228
[式中、R1は式(1)におけると同じく炭素数18以下で且つハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R3はR1と同様の有機基であるが、この有機基はさらに熱可塑性ポリエステル樹脂と反応する基を含有していても良く、その反応基は上記Xと同一でも異なっていても良い。R3としてはメチル基、フェニル基またはXと同一の反応基を有する有機基であることが好ましい。]
nは自然数で特に限定されるものではないが、10〜100の範囲にあるのが好ましい。nが10より小さい場合には、得られるポリエステル樹脂組成物の靱性改良などの効果が十分に発現しない場合がある。またnが100より大きい場合には、粘度が高くなって熱可塑性ポリエステル樹脂及び微粉末フィラーとの混合が困難となり、ひいては得られるポリエステル樹脂組成物の特性が低下し易いからである。
ポリオルガノシロキサン化合物としては、Xがアミノ基であり、且つR3にもアミノ基を有するジアミノ置換ポリオルガノシロキサン化合物が好ましい。このようなポリオルガノシロキサン化合物の具体例としては2個のアミノエチル基を有するジメチルポリシロキサンを挙げることができる。
B成分のポリオルガノシロキサン化合物のA成分であるポリエステル樹脂100質量部に対する配合量は、0.1〜10質量部である。0.1質量部より少ないと靱性改良効果が発揮されないし、10質量部より多いと、剛性が低下し、かつ靱性も低下する。ポリオルガノシロキサン化合物の好ましい配合量は0.2〜5質量部、特に0.3〜3質量部である。
なお、本発明においては、ポリオルガノシロキサン化合物は得られる樹脂組成物に耐衝撃性を付与する効果があるが、この効果を十分に発現するためにはポリオルガノシロキサン化合物は、樹脂組成物中に均一に分散していることが必要であると考えられる。然しながら、ポリオルガノシロキサン化合物は一般に熱可塑性ポリエステル樹脂との相溶性が必ずしも良好ではなく、熱可塑性ポリエステル樹脂にそのまま配合して混練しても、均一に分散させるのは必ずしも容易ではない。特に高粘度のポリオルガノシロキサン化合物の場合には、均一分散が困難である。本発明に好ましい態様では、ポリオルガノシロキサン化合物は、予め後記する微粉末フィラーと混合し、微粉末フィラーに吸着させた状態で熱可塑性ポリエステル樹脂に配合して混練する。これによりそのもの自体では熱可塑性ポリエステル樹脂に均一分散させ難いポリオルガノシロキサン化合物が均一に高分散した樹脂組成物を容易に得ることができる。また、ポリオルガノシロキサン化合物を予め微粉末フィラーに吸着させておくと、一般に耐衝撃性付与効果が更に向上する。これは個々の微粉末フィラーに吸着している複数のポリオルガノシロキサン化合物が、あたかも1個の高分子量のポリオルガノシロキサン化合物であるかのように作用するためと考えられる。
微粉末フィラー
C成分である微粉末フィラーとは、吸油量が60ml/100g以上で、且つ平均粒径が、通常10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下の微粉末からなる充填剤である。ここで、平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により求めた値で、例えば、微粉末フィラーを、3%中性洗剤水溶液に適量加え、撹拌して分散させた液について、(株)堀場製作所製LA−700を用いて測定して求めることができる。平均粒径の下限は通常0.005μmであるが、0.008μm以上、更には0.1μm以上の平均粒径を有するものを用いるのが好ましい。微粉末フィラーの形状は、繊維状、針状、粒状などいずれであってもよい。平均粒径が10μmより大きなフィラーは樹脂組成物の剛性を向上させる効果は著しいが、耐衝撃性を低下させ、コネクターのような肉薄成形品においては破損が起こりやすいという問題がある。平均粒径が10μm以下の微粉末フィラーを用いることにより、適度の剛性向上効果が得られ、かつ耐衝撃性の低下は少ないという特性が得られる。
しかし小粒径のフィラー、特に本特許で用いる吸油量が60ml/100g以上のフィラーは、嵩密度が小さく、取扱いに際して飛散し易い。また、熱可塑性ポリエステル樹脂と混練する際にフィラーの分散が悪く、凝集を起こし易く、その結果得られる樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがある。しかしこのような微粉末フィラーでも、予めこれにポリオルガノシロキサン化合物を吸着させておくと、微粉末フィラーの取り扱い時の飛散が防止でき、同時に微粉末フィラーの分散が良好になり、微粉末フィラー本来の効果が十分に発現する。その結果、上記したポリオルガノシロキサン化合物の効果とあいまって得られる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の剛性が低下することなく、耐衝撃性、靱性が向上するというメリットがある。
ここで、吸油量とは、JIS K5101−13−2に準拠して測定される値である。微粉末フィラーの吸油量は、80〜1000ml/100gであるのが好ましく、100〜800ml/100g、更には150〜600ml/100gであるのが好ましい。一般に吸油量が小さいと、ポリオルガノシロキサン化合物の吸着量が少なく、樹脂との混練に際してフィラーを均一に分散させるのが困難になる。逆に吸油量が大き過ぎると、溶融成形の際に樹脂組成物の流動性が悪化する傾向があり、且つ得られる成形品の機械的強度も低下するおそれがある。総合的にみて微粉末フィラーの最も好ましい吸油量は200〜450ml/100gである。
微粉末フィラーとしては、有機フィラー及び無機フィラーのいずれでもよいが、中でも、シリカ、カオリン、焼成カオリン、ゼオライト、石英、タルク、マイカ、クレー、ハイドロタルサイト、雲母、黒鉛、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、珪酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、カーボンブラック等から選ばれるフィラーが好ましい。更には、熱可塑性ポリエステル樹脂及び/又はオルガノシロキサン化合物との親和性の点から、シリカ、焼成カオリン、ゼオライト、タルク、マイカ、硫酸バリウム及びカーボンブラックが好ましく、シリカ、焼成カオリン及びゼオライトが最も好ましい。微粉末フィラーのJIS R1626(N吸着一点法)によるBET比表面積は150〜500m2/gであるのが好ましく、180〜400m2/gであるのがより好ましい。微粉末フィラーは2種以上を併用することもでき、また必要に応じて表面処理が施されていてもよい。例えばシランカップリング剤やチタンカップリング剤で表面処理した微粉末フィラーを用いることができる。
微粉末フィラーの配合量は、熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部である。配合量が0.1質量部未満であると、所望の剛性を発現させるのが困難になる傾向がある。一方、5質量部を越えると耐衝撃性が低下する。微粉末フィラーの好ましい配合量は熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対して0.2〜3質量部である。またポリオルガノシロキサン化合物と微粉末フィラーの含有量比率は、1/10〜10/1、特に1/3〜5/1であるのが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、基本的に上記のA〜C成分からなるが、更に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、常用の種々の添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸及びそのエステル等の離型剤;ヒンダードフェノール系、亜燐酸エステル系、硫黄含有エステル化合物等の熱安定剤;紫外線吸収剤あるいは耐候性付与剤;ハロゲン系、窒素系、リン系などの難燃剤;耐衝撃性改良剤;耐加水分解性改良剤;染料、顔料;発泡剤;帯電防止剤等が挙げられる。また所望ならば、本発明の効果を損なわない範囲で、ナイロン、液晶ポリマー、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン、ABS、AS、MS等のスチレン系樹脂、各種アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、エポキシ樹脂、更にはメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含有させることもできる。これらの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の樹脂組成物は、前記のA〜C成分及び必要に応じて用いられる各種添加成分を配合し、溶融混練することによって得ることができる。溶融混練に際しては、反応及び分散が十分に行われるようにする。混練装置としては二軸押出機、ブラベンダープラストグラフ、ラボプラストミル、ニーダー、バンバリーミキサー等が使われる。溶融混練に際しての加熱温度は、通常230〜290℃である。各成分は、混練機に一括して供給することも、順次供給することもできる。また、付加的成分を含め、2種以上の成分を予め混合しておくこともできる。特に、B成分とC成分を事前にヘンシェルミキサーなどの高速撹拌混合器を用いて十分に混合した混合物を、二軸押出機に供給してA成分のポリエステル樹脂と溶融混練するのが好ましい。例えば、上記混合物をポリエステル樹脂とともに二軸押出機の主ホッパーより定量フィーダーにて供給する方法、更には二軸押出機の主ホッパーからはポリエステル樹脂を供給し、シリンダー途中のサイドフィーダーから上記混合物を供給する方法を用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、既知の種々の成形方法、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形、回転成形等により、電機・電子機器分野、自動車分野、機械分野、日用雑貨分野等の成形品が得られる。特に好ましい成形方法は、流動性の良さから射出成形である。射出成形に当たっては、樹脂温度を240〜280℃にコントロールするのが好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によりなんら限定されるものではない。
<実施例、比較例に使用した樹脂組成物の原材料>
[A成分]
(a)PBT;三菱エンジニアリングプラスチックス社製「商品名:ノバデュラン(登録商標)5080」と「商品名:ノバデュラン(登録商標)5020」の2種のポリブチレンテレフタレート樹脂を、固有粘度が1.0になるように混合した。
[B成分]
ポリオルガノシロキサン化合物
(b−1)アミノ基含有シリコーンオイル:信越化学社製「商品名:KF8012」
(b−2)シリコーンオイル:信越化学社製「商品名:KF54」
[C成分]
微粉末フィラー、なお、吸油量及び平均粒径はカタログ値である。
(c−1)フュームドシリカ:日本アエロジル社製「商品名:AEROSIL200」、吸油量=290ml/100g、平均粒径=0.012μm
(c−2)湿式シリカ:東ソ−シリカ社製「商品名:ニップジェルAZ−200」、吸油量=300ml/100g、平均粒径=1.9μm
(c−3)炭酸マグネシウム:日鉄鉱業社製「商品名:マグチューブ」、吸油量=120〜220ml/100g、管状粒子(外径2〜8μm、長さ10〜50μm)
(c−4)カオリン:ENGELHARD社製「商品名:ASP170」、吸油量=40ml/100g、平均粒径=0.4μm
(c−5)タルク:林化成社製「商品名:ミクロンホワイト5000S」、吸油量=50ml/100g、平均粒径=2.8μm
<実施例1>
(a)100質量部、(b−1)1質量部、(c−1)0.5質量部を、ヘンシェルミキサーにて高速撹拌により混合した。その混合物を二軸押出機((株)日本製鋼所製、型式TEX30C、スクリュー径30mm)を用いてシリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数200rpmで、溶融混練し、ペレットを得た。
<実施例2>
(b−1)1質量部と(c−1)0.5質量部をヘンシェルミキサーにて高速撹拌混合し、微粉末フィラーにポリオルガノシロキサン化合物を含浸した混合物を得た。この混合物を(a)100質量部に配合し、タンブラーで20分間混合したのち、実施例1と同様に溶融混練し、ペレットを得た。
<比較例1>
(a)だけを実施例1と同様に溶融混練してペレットを得た。このペレットはオルガノポリシロキサン化合物及び微粉末フィラーを含有していない点で、本発明のものではない。
<比較例2〜4>
(a)100質量部と(c−1)、(c−2)又は(c−3)0.5質量部とを実施例1と同様に混合ならびに溶融混練し、ペレットを得た。このペレットはオルガノポリシロキサン化合物を含有していない点で、本発明のものではない。
<実施例3〜4>
(b−1)1質量部と(c−2)又は(c−3)0.5質量部とを実施例2と同様に混合し、得られた混合物と(a)100質量部とを実施例2と同様に混合及び溶融混練して、ペレットを得た。
<実施例5〜6>
(b−1)0.5質量部と(c−1)0.5質量部又は1質量部とを実施例2と同様に混合し、得られた混合物と(a)100質量部とを実施例2と同様に混合及び溶融混練して、ペレットを得た。
<比較例5>
(a)100質量部と(b−1)1質量部とをタンブラーで20分間混合したのち実施例1と同様に溶融混練してペレットを得た。このペレットは微粉末フィラーを含有していない点で、本発明のものではない。
<比較例6〜7>
(b−1)1質量部と(c−4)又は(c−5)0.5質量部とを実施例2と同様に混合し、得られた混合物と(a)100質量部とを実施例2と同様に混合及び溶融混練してペレットを得た。このペレットは吸油量が60ml/100gよりも小さい微粉末フィラーが用いられている点で、本発明のものではない。
<比較例8>
(b−1)1質量部と(c−1)7質量部とを実施例2と同様に混合し、得られた混合物と(a)100質量部とを実施例2と同様に混合及び溶融混練して、ペレットを得た。このペレットは微粉末フィラーの含有量が多過ぎる点で、本発明のものではない。
<比較例9>
(b−1)14質量部と(c−1)7質量部とを実施例2と同様に混合し、得られた混合物と(a)100質量部とを実施例2と同様に混合及び溶融混練して、ペレットを得た。このペレットはポリオルガノシロキサン化合物及び微粉末フィラーの含有量が多過ぎる点で、本発明のものではない。
<比較例10>
(b−2)1質量部と(c−1)0.5質量部とを実施例2と同様に混合し、得られた混合物と(a)100質量部とを実施例2と同様に混合及び溶融混練してペレットを得た。このペレットは反応性基を有しないポリオルガノシロキサン化合物が用いられている点で、本発明のものではない。
<物性評価>
実施例及び比較例で得られたペレットを、120℃で5時間乾燥したものについて、下記の方法で物性評価を行った。
<流動性>
キャピラリーレオメーター(東洋精機製作所製:型式キャピログラフ1C)を使用し、270℃で、せん断速度6080sec-1における溶融粘度を測定した。数値が小さいほど流動性は良好であることを示す。
<曲げ強度、曲げ弾性率、シャルピー衝撃試験>
射出成形機(住友重機械(株)製:型式SG−75MIII)を使用して、シリンダ温度260℃、金型温度80℃の条件で、機械的物性測定用ISO試験片を成形し、ISO178に従って曲げ試験、ISO179に従ってシャルピー衝撃試験を実施した。曲げ弾性率が高いほど剛性があることを示し、また曲げ強度ならびにシャルピー衝撃値が高いほど、靱性があることを示す。
上記の評価によって得られた結果を表−1に示す。
Figure 2009209228
表−1より次のことが判明する。
1)A成分にB成分の官能基を有するポリオルガノシロキサン化合物とC成分の微粉末フィラーを併用した本発明の実施例1〜6は、A成分単独(比較例1)、A成分にC成分のみを配合(比較例2〜4)、及びA成分にB成分のみを配合(比較例5)との比較において、流動性が改善され、剛性はほぼ同等であるが衝撃強度が改善されている。従って本発明によれば、A成分そのものに比して溶融粘度が3Pa・sec以上、シャルピー衝撃強度が1.0KJ/m2以上改良された樹脂組成物を容易に得ることができ、更には溶融粘度で5Pa・sec以上改良されたものや、シャルピー衝撃強度で1.5KJ/m2以上改良されたものも得ることができる。
2)A成分、B成分及びC成分を同時にブレンドした実施例1より、B成分とC成分を事前に混合し、B成分をC成分に充分含浸させた後、A成分と溶融混練した実施例2の方が、特に耐衝撃強度が改善され好ましい。
3)吸油量が本発明の範囲より低い微粉末フィラーをB成分と事前に混合したものとA成分とを溶融混練した比較例6、7は、衝撃強度がA成分単独(比較例1)よりも低下している。
4)本発明の範囲よりも多量のC成分をB成分と事前に混合したものとA成分とを溶融混練した比較例8、9は、剛性はA成分単独より改善されるが、流動性が悪化し、更には衝撃強度も低下する。
5)B成分の代わりに官能基を有していないポリオルガノシロキサン化合物を用いた比較例10は、A成分単独よりも流動性は改良されるが衝撃強度が低下している。

Claims (9)

  1. 熱可塑性ポリエステル樹脂(A成分)100質量部に対し、A成分と反応する官能基を有するポリオルガノシロキサン化合物(B成分)を0.1〜10質量部、及び吸油量が60ml/100g以上の微粉末フィラー(C成分)を0.1〜5質量部を含有させたことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. B成分の含有量が0.2〜5質量部であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. C成分が吸油量100ml/100g以上のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. B成分に対するC成分の質量比が3/1〜1/5であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. ポリブチレンテレフタレート樹脂(A成分)100質量部に対し、A成分と反応するアミノ基を有するポリオルガノシロキサン化合物(B成分)を0.2〜5質量部、及び吸油量が100ml/100g〜800ml/100gの微粉末フィラー(C成分)を0.2〜3質量部とを、B成分に対するC成分の質量比が3/1〜1/5となるように含有させたことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  6. B成分とC成分とを予め混合したものをA成分に含有させたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. C成分がシリカであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. A成分の溶融粘度及びシャルピー衝撃試験片を成形して測定した場合のシャルピー衝撃強度に比して、溶融粘度が3Pa・sec以上、シャルピー衝撃強度が1.0KJ/m2以上改良されていることを特徴とする請求項1ない7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. B成分とC成分とを予め混合したものとA成分とを混合し、この混合物を溶融混練することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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