JP4351332B2 - 安定化赤リンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、安定化赤リン、その製造方法及び難燃性高分子材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、赤リンは、合成樹脂等に配合される難燃剤として知られている。しかし、赤リンは水分と直に接触すると加水分解反応を起こし、ホスフィンガスを発生するため、使用に際し問題がある。このため、赤リンの表面を有機又は無機材料で被覆することにより水分に対して安定とした、いわゆる安定化赤リンが種々提案されている。このうち有機材料で被覆した安定化赤リンは製造時に未反応の有機物が廃水中に含まれる等の問題があるため、無機材料で被覆した安定化赤リンが好ましい。
【0003】
無機材料で表面を被覆した安定化赤リンとしては、例えば、特開平1−24008号公報に、安定化赤リンの製造方法が開示されており、該発明によれば耐熱分解性及び耐加水分解性に優れる安定化赤リンが得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記発明記載の安定化赤リンは、製造する際に懸濁液中にチタン−アルミニウム縮合物系複合水和物の微粒子が存在するため安定化赤リンの沈降速度及びろ過速度が遅くなる。このため、製造に時間がかかり、コストが高くなるという問題があった。さらに、得られる安定化赤リンの無機粉体の被覆の厚さが十分でなく、無機被覆層が破壊し易いという問題があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、無機被覆層が強固で安定であり、しかも、製造の際に沈降速度及びろ過速度が速く製造コストが低い安定化赤リンを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、製造の際に、赤リン粒子の水性懸濁液に金属塩を添加した後アルカリを添加し、次いで凝集剤を添加すれば、液中に存在する金属水和物の微粒子が赤リン粒子表面の無機被覆層内に取り込まれることにより、安定化赤リンの沈降速度及びろ過速度が速く製造コストが低くなると共に、取り込まれた微粒子により無機被覆層が3次元構造になり強固になること、また、ろ滓の洗浄の際に塩類を容易に除去可能なこと、さらに、該安定化赤リンは、レーザー法で測定した平均粒子径(MA )、BET比表面積(A)、及びBET比表面積(A)と理論比表面積(B)との比表面積比A/Bが特定範囲のものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、赤リン粒子の水性懸濁液にTiの水溶性金属塩を添加した後アルカリを添加し、次いで凝集剤を添加することを特徴とする安定化赤リンの製造方法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係る安定化赤リンについて説明する。本発明に係る安定化赤リンは、赤リン粒子の表面に3次元構造の無機被覆層が形成されたものである。赤リン粒子は、粒子径が90μm 以下、好ましくは1〜30μm であり、平均粒子径が5〜30μm 、好ましくは8〜25μm 、さらに好ましくは10〜20μm である。粒子径及び平均粒子径が上記範囲内にあると樹脂に添加し易いため好ましい。
【0011】
無機被覆層は、赤リン粒子が水分と接触しないように形成された該粒子表面の被覆層であり、無機材料からなる3次元構造のものである。このような無機被覆層としては、例えば、赤リン粒子の表面に無機粉体が凝集しつつ積み重なり形成された3次元構造のものが挙げられる。ここで、3次元構造とは、無機被覆層を構成する無機材料がバルクな層でなく、連通する空隙を有するように形成された表面積が大きい状態の構造をいう。図1に本発明に係る安定化赤リンの一例の表面付近の拡大断面の模式図を示す。図1中、1は赤リン粒子、2は無機被覆層、3は無機粉体、4は空隙である。図1の例では、赤リン粒子1表面の無機被覆層2は、赤リン粒子1の表面から無機粉体3が凝集しつつ積み重なって形成された3次元構造のものとなっており、無機粉体3間には連通する空隙4が形成されている。
【0012】
無機被覆層を構成する無機材料としては、例えば、Si、Al、Mg、Ti、Zn、Fe、Sb、Co、Zr、V、Ca等の元素それぞれの酸化物、水酸化物及びリン酸塩から選択される1種又は2種以上からなるものが挙げられる。具体的には、例えば、水酸化チタン、酸化チタン、ポリ塩化アルミニウムを加水分解して得られる縮合アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化珪素、亜鉛華、りん酸カルシウム、アパタイト等が挙げられ、このうち水酸化チタン、酸化チタン、水酸化アルミニウム等は、赤リン粒子表面の被覆性が高いため好ましい。無機材料は、無機粉体であると耐熱性があるため好ましい。該粉体は、金属塩とアルカリとの反応で生成する極めて微細な粒子であり、その平均粒子径は特に制限されるものではないが、例えば、0.001〜1μm 、好ましくは0.01〜0.1μm である。無機被覆層は、均一に被覆された構造のものであることが好ましい。
【0013】
本発明に係る安定化赤リンは、無機被覆層まで含めた粒子径が100μm 以下、好ましくは1〜25μm であり、平均粒子径(MA )が0.1〜50μm 、好ましくは1〜50μm 、さらに好ましくは5〜20μm である。粒子径及び平均粒子径(MA )が上記範囲内にあると、樹脂等に添加し易いため好ましい。ここで、安定化赤リンの粒子径及び平均粒子径(MA )はレーザー法により測定される値である。レーザー法を用いる理由は汎用性があり、且つ、粒子径を具体的に測定できることによるものである。
【0014】
また、本発明に係る安定化赤リンは、BET比表面積(A)が5m2/g以上、好ましくは10m2/g以上、さらに好ましくは15〜50m2/gである。BET比表面積(A)が上記範囲内にあると、赤リン粒子表面が十分に被覆安定化されているため好ましい。ここで、BET比表面積(A)は窒素吸着法により測定される値である。
【0015】
また、安定化赤リンのBET比表面積(A)と上記式(1)で算出される理論比表面積(B)との比表面積比A/Bが50以上、好ましくは100以上、さらに好ましくは150〜400である。比表面積比A/Bは、安定化赤リンの形状を表面が平滑な球と仮定して算出した理論比表面積(B)に対する、現実のBET比表面積(A)の比率を示し、A/Bが大きくなるほど粒子表面が表面積の多い複雑な形状であることを示す。本発明に係る安定化赤リンは、比表面積比A/Bが上記範囲内にあるため、無機被覆層が十分に表面積の多い3次元構造に形成されている。このため、無機被覆層が赤リン粒子の表面に強固に形成されて剥離し難くなっており、従って、赤リン自体が水分と接触してホスフィン等を発生し難く安定化の度合が高い。
【0016】
次に本発明に係る安定化赤リンの製造方法について説明する。本発明に係る安定化赤リンの製造方法は、赤リン粒子の水性懸濁液に金属塩を添加した後アルカリを添加し、次いで凝集剤を添加するものである。まず、水に赤リン粒子を添加し攪拌する等して赤リン粒子の水性懸濁液を調製する。用いられる赤リン粒子としては、上述の特定径のものが挙げられる。赤リンは、水100重量部に対して、5〜60重量部、好ましくは20〜50重量部となる量で用いる。
【0017】
次に、水性懸濁液に金属塩を添加し、その後アルカリを添加する。なお、金属塩及びアルカリの添加は水性懸濁液の攪拌下で行うことが好ましい。金属塩としては、例えば、Si、A1、Mg、Ti、Zn、Fe、Sb、Co、Zr、V、Ca等の水溶性金属塩が挙げられ、具体的には、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等が挙げられる。金属塩は、赤リンに対して、0.5〜30重量%、好ましくは5〜15重量%の量で用いる。
【0018】
アルカリとしては、例えば、アンモニアガス、アンモニア水、苛性ソーダ、苛性カリ、NaHCO3 、Na2 CO3 、K2 CO3 、KHCO3 、Ca(OH)2 等の無機アルカリ剤、またはエタノールアミン等の有機アルカリ剤から選ばれた少なくとも1種以上のものが用いられるが、これらのうち、アンモニアガス又はアンモニア水は副生物の洗浄除去が容易なため好ましい。中和の終点はpH6〜8、好ましくはpH6.5〜7.5である。中和の終点が該範囲内にあると、中和が略終了しているため好ましい。本工程では、金属塩を添加して、さらにアルカリを添加することにより、水性懸濁液中の金属塩が還元されて赤リン粒子の表面に沈積し、金属化合物よりなる3次元構造の無機被覆層が形成される。また、本工程において、水性懸濁液の温度は室温〜100℃にする。
【0019】
次に、中和した水性懸濁液に凝集剤を添加する。なお、凝集剤の添加は該水性懸濁液の攪拌下で行うことが好ましい。凝集剤としては、市販されているものであれば特に制限されないが、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等が凝集効果に優れるため好ましく用いられる。なお、上記金属塩及びアルカリを添加する工程において、金属塩としてポリ塩化アルミニウム又は硫酸アルミニウム等を用い、これにアルカリを添加して水酸化アルミニウムからなる無機被覆層を形成した場合は、金属塩として添加したポリ塩化アルミニウム又は硫酸アルミニウム等が凝集剤としても作用するため、改めて凝集剤を添加する必要はない。凝集剤は、赤リンに対して、0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%の量で用いる。
【0020】
本工程では、凝集剤を添加することにより、液中に浮遊する金属水和物の微粒子が安定化リンの無機被覆層中の3次元構造の空隙内に取り込まれるため、無機被覆層の3次元構造が成長して該層がさらに強固なものとなる。本工程において、水性懸濁液の温度は60℃以上、好ましくは80〜90℃にする。次に、上記安定化赤リンが生成した水溶液をろ過し、ろ滓を洗浄すると本発明に係る安定化赤リンが得られる。本発明に係る安定化赤リンは、上記凝集剤の添加により液中に金属水和物の微粒子が実質的に存在しなくなるため、安定化赤リンの製造の際に、生成した安定化赤リン等の沈降速度及びろ過速度が速くなる。また、ろ滓の洗浄で容易に塩類を除去でき、低コストで導電性の低い安定化赤リンを製造できる。本発明に係る安定化赤リンは、各種高分子材料の難燃剤に使用でき、特に導電性が低いことが要求される電気材料用高分子材料に配合される難燃剤として好ましく使用できる。
【0021】
次に、本発明に係る難燃性高分子材料について説明する。本発明に係る難燃性高分子材料は、上記本発明に係る安定化赤リンが熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はエラストマーに配合されたものである。
【0022】
熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリエステルエーテル系樹脂;ポリアミドエーテル系樹脂;ポリフェニレンオキサイド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;スチレン−アクリロニトリル系共重合体(AS樹脂);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂(ABS樹脂);ポリα−オレフィン、α−オレフィンと他のモノマーとの共重合体等のポリオレフィン系樹脂;メタアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル;フッ素樹脂;ポリイミド;ポリアセタール;酢酸セルロース(セルロース樹脂);ポリスルホン熱可塑性ポリイミド;ポリブチレンアイオノマー系樹脂;難燃性熱可塑性樹脂等が挙げられる。以下、熱可塑性樹脂の各樹脂について説明する。
【0023】
(1)熱可塑性ポリエステル系樹脂
熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸成分として2価以上のカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用い、ジオール成分として2価以上のアルコール及び(又は)フェノールあるいはそれらのエステル形成性誘導体を用い、これらを公知の方法で重縮合することにより得られる熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0024】
ジカルボン酸成分として用いられる2価以上のカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、例えば、炭素数8〜22の2価以上の芳香族カルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの具体例としては、テレフタル酸やイソフタル酸等のフタル酸類、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタンアントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸等の2価芳香族カルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の芳香族カルボン酸等やこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらのうちでは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が、取り扱い易く、反応が容易で、得られる樹脂の耐熱性と流動性とのバランスが良好である等の点から好ましい。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
ジオール成分として用いられる2価以上のアルコール及び(又は)フェノールあるいはこれらのエステル形成性誘導体としては、例えば、炭素数2〜15の脂肪族化合物、炭素数6〜20の脂環式化合物、炭素数6〜40の芳香族化合物であって分子内に2個以上の水酸基を有する化合物、又はこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。これらの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグルコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン等の芳香族ジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール又はフェノール等や、それらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらのうちでは、エチレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールが、取り扱い易く、反応が容易で、得られる組成物の耐熱性、流動性、耐薬品性等の物性バランスに優れるため好ましい。
【0026】
上記ジカルボン酸成分及びジオール成分から得られる熱可塑性ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
【0027】
また、熱可塑性ポリエステル系樹脂は、所望の特性を損わない範囲で、公知の共重合可能な成分と共重合されてもよい。共重合可能な成分としては、炭素数4〜12の2価以上の脂肪族カルボン酸、炭素数8〜15の2価以上の脂環式カルボン酸等のカルボン酸類及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの具体例としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体;p−オキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸のようなオキシ酸及びこれらのエステル形成性誘導体;ε−カプロラクトンのような環状エステル等;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び(又は)ランダム共重合体、ビスフェノールA共重合ポリエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノールA共重合プロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノールA共重合テトラヒドロフラン付加重合体、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール単位等が挙げられる。これらのうち、ポリアルキレングリコール単位を共重合させると、熱可塑性ポリエステル系樹脂にエラストマーとしての特性を付与することができる。共重合可能な成分の配合割合は、熱可塑性ポリエステル系樹脂中に30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
【0028】
ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートについて、さらに詳細に説明する。ポリエチレンテレフタレートには、熱安定性、成形流動性、耐溶剤性を損なわない範囲内で、共重合可能な公知の成分を用いることができる。以下、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートとは、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの構造を主として含むものであって、且つ、単独重合体及び共重合体の両者を含む意味で用いる。共重合可能な公知の成分としては、炭素数8〜22の2価以上の芳香族カルボン酸、炭素数4〜12の2価以上の脂肪族カルボン酸、炭素数8〜15の2価以上の脂環式カルボン酸等のカルボン酸類、及びこれらのエステル形成性誘導体;炭素数3〜15の脂肪族化合物、炭素数6〜20の脂環式化合物又は炭素数6〜40の芳香族化合物であって分子内に2個以上の水酸基を有する水酸基含有化合物類、及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0029】
共重合可能なカルボン酸類及びこれらのエステル形成性誘導体としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタンアントラセンジカルボン酸、4−4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、デカヒドロナフタレンジカルボン酸等のカルボン酸、又はそのエステル形成能を有する誘導体が挙げられる。
【0030】
共重合可能な水酸基含有化合物類及びこれらのエステル形成性誘導体としては、例えば、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロへキサンジメタノール、シクロへキサンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の化合物、又はそのエステル形成能を有する誘導体;p−オキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸のようなオキシ酸、及びこれらのエステル形成性誘導体;ε−カプロラクトンのような環状エステル等;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド)ブロック及び/又は同ランダム共重合体、ビスフェノールA共重合ポリエチレンオキシド付加重合体、同プロピレンオキシド付加重合体、同テトラヒドロフラン付加重合体、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール単位が挙げられる。共重合可能な公知の成分の共重合量は、概ね20重量%以下、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0031】
モノマーを重合してポリエチレンテレフタレートを製造するには、特に制限はなく、公知の種々の重合反応触媒を用いて、溶融重縮合、固相重合等の公知の方法で製造することができる。重合反応触媒としては、例えば、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、スズ化合物、チタン化合物等が挙げられるが、熱安定性の面からゲルマニウム化合物を用いるのが好ましい。
【0032】
ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸をジカルボン酸成分、1,4−ブタンジオールをジオール成分として用いた、主鎖にエステル結合を有する高分子量の熱可塑性ポリエステルが挙げられる。ポリブチレンテレフタレートには、その他の共重合可能な成分を共重合することができる。共重合可能なジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シュウ酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。共重合可能なジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA等、及びリンを含有する化合物が挙げられる。
【0033】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、アルキレンテレフタレート繰り返し単位、特にエチレンテレフタレート繰り返し単位を80モル%以上含有すると、ポリエチレンテレフタレート樹脂が有する熱安定性、耐溶剤性等の好ましい特性を保持できるため好ましい。また、熱可塑性ポリエステル系樹脂は、フェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒中、25℃での対数粘度(IV)が0.3〜2.0dl/g、好ましくは0.4〜1.5dl/gである。対数粘度(IV)が0.3dl/g以上であると、耐熱性が良好で、充分な熱安定性が得られ、2.0dl/g以下であると、成形流動性に優れる。
【0034】
(2)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、例えば、いわゆる6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、12−ナイロン等の脂肪族ポリアミド;ポリヘキサメチレンイソフタラミド、ポリメタキシリレンイソフタラミド等の芳香族ポリアミド等;各種重縮合ポリアミドが挙げられる。各種重縮合ポリアミドとしては、上記脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドの原料単量体;ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類;エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ビス−γ−アミノプロピルエーテル等のジアミン類;又は前記ポリエステルのジカルボン酸類の中から組み合わせて得られるものが挙げられる。
【0035】
(3)ポリウレタン系樹脂
ポリウレタン系樹脂としては、各種高分子量ポリオールを、脂肪族ジイソシアナート等のジイソシアナート類と反応させて得られるプレポリマーを重合させたものが挙げられる。高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ジイソシアナート類としては、4、4’−ジフェニルメチレンジイソシアナナート、トルイレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等が挙げられる。また、上記ポリオールと上記ジイソシアナート類との反応の際に用いられる触媒としては、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ビス−β−ヒドロキシエトキシベンゼン、N−メチルジメタノールアミン、N,N’−ジメチルヘキサメチルジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、又はp−キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0036】
(4)ポリエステルエーテル又はポリアミドエーテル系樹脂
ポリエステルエーテル又はポリアミドエーテル系樹脂としては、例えば、上記ポリエステル又はポリアミドの原料である各種単量体又はオリゴマーと、各種重合度のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール又はこれらの末端ヒドロキシル基をアミノ基に変えたポリエーテルジアミンとを共重合して得られるランダム又はブロック共重合体が挙げられる。
【0037】
(5)ポリフェニレンオキサイド系樹脂
ポリフェニレンオキサイド系樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテルの単独重合体又は共重合体が挙げられる。ポリフェニレンエーテル単独重合体としては、例えば、ポリ(2、6−ジメチル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2、6−ジエチル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−nプロピル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2、6−ジ−nプロピル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−nブチル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシルエチル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1、4−フェニレン)エーテル等のホモポリマーが挙げられる。また、ポリフェニレン共重合体としては、例えば、2、3、6−トリメチルフェノール等のアルキル置換フェノールと、o−クレゾール等とを共重合して得られるポリフェニレンエーテル構造を主体としてなるものが挙げられる。また、これらは、ポリスチレン等によって変性されたものであってもよい。変性方法としては、ブレンド法、グラフト重合法等のいずれも採用できる。
【0038】
(6)ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、水酸基が2価以上のフェノール系化合物と、ホスゲンまたはジフェニルカーボネートのような炭酸ジエステルとを反応させて得られるものが挙げられる。2価以上のフェノール系化合物としては、特に限定されないが、2価フェノール化合物である2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)が経済的、機械的強度の点から好ましい。
【0039】
ビスフェノールA以外の2価フェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−イソプロピルフェニル)メタン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−ナフチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−メチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1−エチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4−メチル−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のジヒドロキシジアリールアルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン等のジヒドロキシジアリールシクロアルカン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン等のジヒドロキシジアリールケトン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニル等のジヒドロキシジフェニル類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のジヒドロキシアリールフルオレン類等が挙げられる。また、前記2価フェノール化合物以外に、ヒドロキノン、レゾルシノール、メチルヒドロキノン等のジヒドロキシベンゼン類;1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類等の2価フェノール化合物が挙げられる。
【0040】
3価以上のフェノール系化合物としては、得られるポリカーボネート系樹脂が熱可塑性を維持するものが挙げられ、例えば、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシフェニルエーテル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシフェニルエーテル、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニル−2−プロパン、2,2’−ビス(2,4−ジヒドロキシ)プロパン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルメタン、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニルメタン、1−[α−メチル−α−(4’−ジヒドロキシフェニル)エチル]−3−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[α−メチル−α−(4’−ジヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプタン、1,3,5−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−5’−イソプロピルベンジル)−4−イソプロピルフェノール、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−イソプロピルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン、2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン、1,3−ビス(2’,4’−ジヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼン、トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−アミル−s−トリアジン等が挙げられる。これら2価以上のフェノール系化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
炭酸ジエステルとしては、例えば、ジアルキルカーボネート、ジシクロアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート等が挙げられる。これら炭酸ジエステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。得られるポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネート樹脂、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンとジフェニルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0042】
(7)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のα−置換スチレン重合体;ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物の重合体;前記ビニル芳香族化合物と共重合可能な他の単量体、例えば、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、これらのメチルあるいはエチルエステル等との共重合体;前記重合体にこの重合体と共重合可能な他の単量体をグラフトさせたグラフト共重合体等が挙げられる。
【0043】
具体的には、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ゴム質重合体変性ポリスチレン、(α−メチル)スチレン・アクリロニトリル共重合体(スチレン・アクリロニトリル共重合体及び(又は)α−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体を意味する、以下同様)、ゴム質重合体変性(α−メチル)スチレン・アクリロニトリル共重合体、(α−メチル)スチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ゴム質重合体変性(α−メチル)スチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、(α−メチル)スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体、(α−メチル)スチレン・N−フェニルマレイミド・アクリロニトリル共重合体、ゴム質重合体変性(α−メチル)スチレン・N−フェニルマレイミド・アクリロニトリル共重合体、(α−メチル)スチレン・N−フェニルマレイミド・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ゴム質重合体変性(α−メチル)スチレン・N−フェニルマレイミド・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、(α−メチル)スチレン・無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂(ABS樹脂)等が挙げられる。
【0044】
ABS樹脂としては、例えば、アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレンを主成分とする共重合体及びこれらの単独ポリマーのブレンド物;スチレン−アクリロニトリル共重合体とアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムとのブレンド物;ブタジエンゴムラテックス又はスチレン−ブタジエンゴムラテックス共存下でスチレンとアクリロニトリルをグラフト共重合して得られるグラフトポリマー等が挙げられる。
【0045】
(8)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−ブテン)系樹脂、ポリペンテン系樹脂等が挙げられる。
【0046】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)又はプロピレンを主成分とする共重合体、これらの混合物のいずれでもよく、プロピレンを主成分とする共重合体としては、例えば、プロピレンを主成分とするプロピレン−α−オレフィン共重合体を挙げることができる。プロピレン−α−オレフィン共重合体に用いられるα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0047】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体(ポリエチレン)、エチレンを主成分とする共重合体、これらの混合物のいずれでもよく、エチレンを主成分とする共重合体としては、例えば、エチレンを主成分とするエチレン−α−オレフィン共重合体を挙げることができる。エチレン−α−オレフィン共重合体に用いられるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0048】
上記以外のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。変性ポリエチレン樹脂は特に限定されるものではなく、例えばエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。
【0049】
(9)難燃性熱可塑性樹脂
難燃性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(オキシ−フェニレン−スルホニル−フェニレン)、ポリ(チオ−フェニレン−スルホニル−フェニレン)、ポリ(オキシ−フェニレン−スルホニル−フェニレン−オキシ−フェニレン−イソプロピリデン−フェニレン)、ポリ(オキシ−フェニレン−スルホニル−ビフェニレン−スルホニル−フェニレン)、ポリ(オキシ−フェニレン−カルボニル−フェニレン)、ポリ(オキシ−フェニレン−カルボニル−フェニレン−オキシ−フェニレン)及びポリ〔オキシ−(フェニレン−ビスフタルイミジール)−オキシ−フェニレン−イソプロピリデン−フェニレン〕等が挙げられる。
【0050】
次に、本発明に係る難燃性高分子材料に用いられる熱硬化性樹脂について説明する。該熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、尿素樹脂、ケイ素樹脂、フタル酸ジアクリル樹脂又はポリウレタン樹脂等が挙げられる。以下、熱硬化性樹脂の各樹脂について説明する。
【0051】
(1)エポキシ系樹脂
エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAに代表される多価フェノールのグリシジルエーテル或いは線状脂肪族、環式脂肪族のエポキシ樹脂、又これらにハロゲン原子、水酸基及びエーテル基の如き置換基を有していてもよく種々のタイプのエポキシを使用することができる。具体的な市販品としてはシェル化学製エピコート、チバガイギー製アラルダイト、ダウケミカルインターナショナル製ダウエポキシ樹脂等を挙げることができる。エポキシ硬化剤としてはアミン類、例えばジエチルトリアミン、トリエチルテトラミン、エチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、n−ヒドロキシエチルジエチレントリアミン等の脂肪族アミン、ジアミノジフェニルメタン、トリス(ジエチルアミノメチル)フェノール、ジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミン等の芳香族アミン、ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の環式脂肪族アミン、その他複素環式アミン類を用い、その添加量は一般的にポリエポキシのエポキシ等量当たり少なくとも1個のアミノ水素原子を与えるような量を使用する。この際、サリチル酸、乳酸の如き促進剤を添加すると硬化は促進される。又、カルボン酸無水物系の硬化触媒、例えば無水テレフタル酸、無水ドデシルコハク酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水コハク酸等を用いることもでき、その添加量はエポキシ等量当たり一般には0.8〜2.3酸等量を使用する。この際、第3級アミン、硫化物、有機ホスフィン酸の促進剤等を加えることもできる。
【0052】
(2)不飽和ポリエステル系樹脂
不飽和ポリエステル系樹脂としては、無水マレイン酸或いはフタル酸のような不飽和カルボン酸及び無水フタル酸で代表されるような飽和多塩基酸とプロピレングリコール、エチレングリコールのような多価アルコールとのエステル生成物をスチレンモノマー等の重合性単量体にて希釈した液状樹脂一般を使用することができる。具体的な市販品としては大日本インキ(株)のポリライト、武田薬品工業(株)のポリコール、日立化成(株)のポリセット等を挙げることができる。不飽和ポリエステル樹脂用硬化剤としては、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーベンゾエート等のケトンパーオキシド、アシルパーオキシド或いはハイドロパーオキシド等の有機過酸化物が用いられ、その添加量は不飽和ポリエステルに対し0.02〜5重量%程度である。不飽和ポリエステルの硬化には硬化促進剤が必要である。硬化促進剤としてはナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、オクトエン酸バナジル、ジメチルアニリン等のコバルト系、マンガン系、バナジウム系、アミン系、第4級アンモニウム塩、メルカプタン類を用いる。
【0053】
次に、本発明に係る難燃性高分子材料に用いられるエラストマーについて説明する。該エラストマーは、その使用の際に難燃化を要求されている非難燃性エラストマーである。該エラストマーとしては、例えば、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、エチレンープロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)等のオレフィン系重合体エラストマー;エポキシ基、カルボキシル基および酸無水物基から成る群から選ばれる官能基の1種以上を含有するオレフィン系重合体エラストマー;スチレンーブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルーブタジエン共重合体ゴム(NBR);水添および非水添のアルケニル芳香族炭化水素重合体のブロックおよび脂肪族炭化水素重合体のブロックから成るブロックコポリマー等のスチレン系エラストマー;ポリエステルエラストマー;アクリルエラストマー;CR;IIR;ウレタンゴム;シリコーンゴム;フッ素化ゴム;熱可塑性エラストマー等およびこれらの変性物等の合成ゴムが挙げられる。
【0054】
これらの中で好ましい非難燃性エラストマーは、エポキシ基、カルボキシル基および酸無水物基から成る群から選ばれる官能基の1種以上を含有するオレフィン系重合体エラストマー並びにアルケニル芳香族炭化水素重合体のブロックおよび脂肪族炭化水素重合体のブロックから成るブロックコポリマーから成る群から選ばれるエラストマーである。また、特に好ましい非難燃性エラストマーは熱可塑性の水添または非水添のスチレンー共役ジエン系ブロック共重合体である。本発明で用いられる非難燃性エラストマーの分子量は特に制限されないが、一般に、5000〜200000である。
【0055】
なお、エラストマーにはランダム共重合体とブロック共重合体があるが、ブロック共重合体は一般的に低温域での硬さがランダム共重合体と比較して硬く、低温時の衝撃性の改善効果が不十分であるため、本発明においては、ガラス転移温度が−30℃以下のブロック共重合体、又はランダム共重合体が好適に用いられる。このようなブロック共重合体ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体又はその水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体又はその水素添加物等が挙げられる。また、ランダム共重合体ゴムとしては、例えば、エチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン−α・オレフィン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体及びその水素添加物等が挙げられる。
【0056】
上記本発明に係る難燃性高分子材料には、必要に応じて、種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、フッ素系樹脂又はシリコーン、弾性体、赤リン以外の難燃剤、充填材、白色化材、リン系又はイオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、および染料・顔料を含む着色剤等が挙げられる。
【0057】
フッ素系樹脂又はシリコーンは、本発明に係る難燃性高分子材料に配合されると、該難燃性高分子材料が燃焼する場合に樹脂が溶けて液滴が落下すること(ドリップ)を抑制することができる。このようなフッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体等が挙げられ、これらのうちポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましい。フッ素系樹脂の添加量は機械物性、成形性の面から熱可塑性樹脂100重量部に対して通常0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部である。
【0058】
また、シリコーンとしてはオルガノポリシロキサン類が用いられ、オルガノポリシロキサン類としては、例えば、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシロキサン化合物を重合して得られる、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、これらの共重合体等が挙げられる。また分子末端がエポキシ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、エーテル等により置換された変性シリコーンも用いることができる。シリコーンは、数平均分子量が200以上、更に好ましくは数平均分子量が1000〜5000000の範囲の重合体であれば難燃性をより高めることができる。シリコーンの性状には特に制限はなく、オイル状、ガム状、ワニス状、粉体状、ペレット状等の任意のものが利用可能である。
【0059】
弾性体は、本発明に係る難燃性高分子材料が熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等の樹脂材料からなるものである場合に、その特性を損なわない範囲で添加すると、難燃性高分子材料の衝撃強度、靭性、耐薬品性等を高めることができる。弾性体としては、ゴム弾性体であるグラフト重合体、または軟質樹脂であるオレフィン系樹脂から選ばれた1種以上を添加することが好ましい。弾性体のガラス転移温度は、好ましくは0℃以下であるが、さらに好ましくは−20℃以下のものであれば、得られた樹脂の衝撃強度がより向上する。
【0060】
赤リン以外の難燃剤としては、無機金属化合物系の難燃剤、窒素含有化合物系の難燃剤、有機リン系の難燃剤が挙げられる。無機金属化合物系の難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、(コロイダル)五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、およびリン酸アンチモン等のアンチモン化合物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム等のホウ酸化合物、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム等のモリブデン酸化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム、塩基炭酸マグネシウム、ドーソナイト等が挙げられる。
【0061】
窒素含有化合物系の難燃剤としては、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート、メラム、メレム、メロン、サクシノグアンミン、硫酸メラミン、硫酸アセトグアナミン、硫酸グアニルメラミン、硫酸メラム、硫酸メレム、メラミン樹脂、BTレジン等とこれらの混合物を挙げることができる。これらの窒素含有化合物系の難燃剤のなかでもメラミンシアヌレートが難燃性、及び経済性の点で特に好ましい。
【0062】
有機リン系の難燃剤としては、下記一般式(1)又は(2)で表されるリン化合物からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【化1】
一般式(1)中、R1 は水素原子、炭素原子1〜16個を有する直鎖状または分岐状アルキル基、もしくはアリール基を示し、R2 は水酸基、水素原子または炭素原子1〜16個を有する直鎖状または分岐状アルキル基、アルコキシ基、アリール基もしくはアリーロキシ基を示し、R3 は水素原子、炭素原子1〜16個を有する直鎖状または分岐状アルキル基もしくはアリール基を示す。
【0063】
上記一般式(1)で表されるリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチル−プロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホフホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられ、これらは単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。また、一般式(1)で表されるリン化合物は、n量体の混合物であってもかまわない。
【0064】
【化2】
(式中、m1 、m2 、m3 、m4 は、0〜2の整数、nは1〜15の整数を示す)で表わされる化合物等が挙げられる。係る化合物は、特定の単官能フェノール、すなわちフェノール、モノメチルフェノールおよびジメチルフェノールの少なくとも1種と、特定の2官能フェノール、すなわち2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとをオキシ塩化リンと反応させることにより得られるが、この製法になんら制約されるものではない。
【0065】
一般式(2)におけるm1 〜m4 は熱安定性の面から1または2が好ましい。また、nは1〜15、好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜7の整数であってその数によって耐熱性、加工性が異なってくる。上記一般式(2)で表されるリン化合物としては、例えば、m1 〜m4 がすべて1でnが1であるビスフェノールAポリ(ジクレジル)ホスフェート、m1 〜m4 がすべて0でnが1であるビスフェノールAポリ(ジフェニル)ホスフェート、m1 〜m4 がすべて2でnが1であるビスフェノールAポリ(ジキシレニル)ホスフェートや、前記化合物におけるnが1〜15のもの等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上組み合わせて使用する場合の組み合わせ方に限定はなく、例えば、構造の異なるもの、分子量の異なるもの等を任意に組み合わせることができる。
【0066】
充填材は、本発明に係る難燃性高分子材料に配合されると、該難燃性高分子材料の強度、剛性、耐熱性等を大幅に向上させることができる。充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンおよび酸化アルミニウム等が挙げられ、なかでもチョップドストランドタイプのガラス繊維が好ましく用いられる。充填材の添加量としては、難燃性高分子材料100重量部に対して1〜140重量部が好ましく、特に好ましくは5〜100重量部である。
【0067】
白色化材は、本発明に係る難燃性高分子材料に配合されると、該難燃性高分子材料中の赤リン自体による着色を抑えたり、赤リンを白色化したりすることができる。白色化材としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。白色化材の添加量としては、安定化赤リン100重量部に対して約200重量部になるように添加すればよい。
【0068】
リン系、イオウ系等の酸化防止剤や熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、および染料・顔料を含む着色剤等の通常の添加剤は、本発明に係る難燃性高分子材料に、必要により、その目的を損なわない範囲内で配合される。これらは、1種以上添加することができる。
【0069】
本発明の難燃性高分子材料は通常公知の方法で製造される。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はエラストマー等の高分子材料と、安定化赤リンおよび必要により配合される添加剤とを、予備混合してから、または予備混合せずにそのまま押出機等に供給し、次いで、十分溶融混練することにより調製される。また、ハンドリング性や生産性の面から好ましい製造方法としては、まず、高分子材料の一部と安定化赤リンとを溶融混練して、最終的に難燃性高分子材料中に配合されるべき安定化赤リン量よりも安定化赤リン濃度が過剰な高分子材料(以下、「赤リン過剰高分子材料」ともいう。)を製造しておき、次いで、該赤リン過剰高分子材料と残りの高分子材料および必要により配合される添加剤とを溶融混練する方法が挙げられる。
【0070】
また、その他の好ましい製造方法としては、まず、高分子材料の一部と赤リンおよび添加剤とを溶融混練して赤リン過剰高分子材料を製造しておき、次いで、該赤リン過剰高分子材料と残りの高分子材料および既に配合した添加剤以外の添加剤とを溶融混練する方法が挙げられる。なお、該方法においては、赤リン過剰高分子材料を製造する段階で添加剤が配合されるが、該添加剤は予め赤リンと混合しておくことが好ましい。
【0071】
かかる赤リン過剰高分子材料は、いわゆるマスターペレットの形態で好ましく用いられるが、それに限定されず、いわゆるチップ状、粉末状、あるいはそれらの混合物の形態であってもよい。また、赤リン過剰高分子材料と、それと配合する高分子材料の形態、大きさ、形状はほぼ同等、あるいは互いに似通っていることが均一に混合し得る点で好ましい。高分子材料を製造するに際し、例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機等を用いることができる。かくして得られる高分子材料は通常公知の方法で成形することができ、射出成形、押出成形、圧縮成形等の成形品、シート、フィルム等の成形物品とすることができる。なかでも射出成形品用途に特に好適であり、その特徴を活かして機械機構部品、電気部品、自動車部品として有用に用いることができる。
【0072】
【実施例】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0073】
実施例1
(1) 安定化赤リン含有スラリーの生成
反応容器に水200g を入れ、これに粒子径3〜44μm で平均粒子径18μm の赤リン粉末を20g 添加し、撹拌を行った。得られた赤リンの水性懸濁液に四塩化チタン溶液(Tiとして8.5重量%含有、富士チタン工業製)を3.06g 添加した。次に、該溶液中に5重量%のアンモニア水溶液を添加してpHを7〜8に調整し、これにポリ塩化アルミニウム(商品名、タイペック、大明化学製、Al2 O3 として33%含有)0.2g を添加して攪拌を行った。さらに、該溶液を撹拌しながら加熱して温度を85℃とし、2時間加熱撹拌を続け、反応終了後、安定化赤リン含有スラリーを得た。この時の最終pHは6.8であった。
(2) 反応終了後の安定化赤リン含有スラリーの電気伝導度、沈降速度及びろ過速度の測定
上記安定化赤リン含有スラリーにイオン交換水を加えて全量300g のスラリーにし、室温で30分間攪拌を行い、安定化赤リンが十分に分散した分散溶液を得た。該溶液について電気伝導度(EC)を測定した。また、該溶液100mlを100mlメスシリンダーに採取し、以下に示す方法により沈降速度を測定した。次に、該100mlメスシリンダー中のスラリーを元の分散溶液に戻して再び全量を300g とし、攪拌して十分に分散させた後、分散溶液の全量をろ紙(ADVANTEC社製、番手5C、捕捉可能粒子径1μm )を載置したブフナー径φ110mmのブフナーロートでろ過してろ過速度を測定した。反応終了後の安定化赤リン含有スラリーの電気伝導度、沈降速度及びろ過速度の結果を表1に示す。
(3) 1回洗浄後の安定化赤リン含有スラリーの電気伝導度及び沈降速度の測定
次に、上記ろ過後のろ過ケーキを容器に入れ、これにイオン交換水を加えて全量を300g にした後、室温で30分間攪拌を行い、安定化赤リンが十分に分散した分散溶液を得た。該溶液について電気伝導度を測定した。また、該溶液100mlを100mlメスシリンダーに採取し、上記と同様の方法で沈降速度を測定した。1回洗浄後の安定化赤リン含有スラリーの電気伝導度及び沈降速度の結果を表1に示す。
(4) 安定化赤リンの生成
1回洗浄後の安定化赤リン含有スラリーについて、上記と同様のろ過及び洗浄を繰り返した後、乾燥して本発明に係る安定化赤リンを得た(試料A)。
・沈降速度の測定
安定化赤リンが十分に分散した分散溶液の100mlを100mlメスシリンダーに採取し、安定化赤リンが単位時間当たりに沈降する容積を沈降速度とした。
【0074】
【表1】
*1:比較例1において1回洗浄後のスラリーの上澄みは白濁していた。
【0075】
(5) 安定化赤リンの物性評価
得られた安定化赤リン(試料A)について、被覆層の材質、平均粒子径、BET比表面積(A)、理論比表面積(B)及び比表面積比(A/B)を測定した。なお、物性の測定は以下のようにして行った。結果を表2に示す。
・平均粒子径(D50) の測定
MICROTRAC 粒度分析計(形式:9320-X100、日機装社製)を用い、レーザー法で測定した。
・BET 比表面積の測定
フローソブ(島津製作所(株)製)を用い、窒素吸着法により測定した。
・理論比表面積の測定
上記式(1)において、ρに2.2(g/cm3) 、MA に(D50) の値を代入して求めた。
【0076】
【表2】
【0077】
(6) 安定化赤リンからのホスフィン発生量の評価
・ホスフィンの発生量の測定
50mlの密栓容器中をN2 ガス雰囲気で満たし、該容器中に得られた安定化赤リン(試料A)をP(リン)分として2.0g 封じ込み、250℃で1時間保持した後、容器内のガスをテドラーバックでサンプリングし、ホスフィンガス検知管(ガステック検知管:検知濃度0.150ppm 、北澤産業(株)製)を用いてテドラーバック中のホスフィン(PH3 )濃度を測定した。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
比較例1
(1) 安定化赤リン含有スラリーの生成
反応容器に水200g を入れ、これに粒子径3〜44μm で平均粒子径18μm の赤リン粉末を20g 添加し、撹拌を行った。得られた赤リンの水性懸濁液に四塩化チタン溶液(Tiとして8.5重量%含有、富士チタン工業製)3.06g 及びポリ塩化アルミニウム(商品名、タイペック、大明化学製、Al2 O3 として33%含有)0.2g を添加して攪拌を行った。次に、該溶液中に5重量%のアンモニア水溶液を添加してpHを7〜8に調整し、該溶液を撹拌しながら加熱して温度を85℃とし、2時間加熱撹拌を続け、反応終了後、安定化赤リン含有スラリーを得た。この時の最終pHは6.8であった。
(2) 反応終了後の安定化赤リン含有スラリーの電気伝導度、沈降速度及びろ過速度、並びに、1回洗浄後の安定化赤リン含有スラリーの電気伝導度及び沈降速度の測定
実施例1と同様にして、反応終了後の安定化赤リン含有スラリーの電気伝導度、沈降速度及びろ過速度、並びに、1回洗浄後の安定化赤リン含有スラリーの電気伝導度及び沈降速度を測定した。結果を表1に示す。
(3)安定化赤リンの生成
実施例1と同様にして、ろ過及び洗浄を繰り返した後、乾燥して安定化赤リンを得た(試料B)。
【0080】
表1の結果より、実施例1で得られた安定化赤リン(試料A)は、比較例1で得られた安定化赤リン(試料B)と比べると沈降速度、ろ過速度共に速い。従って、実施例1の方法は、工業的に非常に有利であることが分かった。さらに、1回洗浄後の安定化赤リン含有スラリーにおいて、試料Aのスラリーは試料Bのスラリーよりも電気伝導度がかなり低くなっており、塩類がよく除去されている。従って、導電性が低いことが要求される電気材料に配合される安定化赤リンとして好適であることが分かった。
【0081】
比較例2
市販の安定化赤リン(ノーバレット120UF:試料C)を用い、実施例1と同様にして、被覆層の材質、平均粒子径、BET比表面積(A)、理論比表面積(B)及び比表面積比(A/B)を測定した。結果を表2に示す。
【0082】
比較例3
被覆層が形成されていない赤リン(試料D)を用い、実施例1と同様にして、被覆層の材質、平均粒子径、BET比表面積(A)、理論比表面積(B)、比表面積比(A/B)及びホスフィンの発生量を測定した。結果を表2及び表3に示す。
【0083】
実施例2
ポリエチレンテレフタレート62部、試料A3部、鉱物繊維30部及びガラス繊維5部をブレンドした後、シリンダー温度280℃に設定したベント付き2軸押出機のホッパーに供給して溶融押出することにより、難燃性樹脂組成物を作製した。上記方法で得られたペレットを乾燥後、射出成形機(金型温度80〜140℃)によりAETMD−638に規定されている難燃用評価用試験片(厚み1.6mm、幅2.7mm、長さ127mm)を得て、UL−94Vの難燃性試験を行ったところ、難燃レベルとしてV−0であった。
【0084】
実施例3
ポリブチレンテレフタレート(PBT)100部、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)5部及び試料A10部をブレンドした後、シリンダー温度280℃に設定したベント付き2軸押出機のホッパーに供給して溶融押出することにより、難燃性樹脂組成物を作製した。上記方法で得られたペレットを乾燥後、射出成形機(金型温度80〜140℃)によりAETMD−638に規定されている難燃用評価用試験片(厚み1.6mm、幅2.7mm、長さ127mm)を得て、UL−94Vの難燃性試験を行ったところ、難燃レベルとしてV−0であった。
【0085】
実施例4
10重量%のポリブタジエン成分を含むポリブタジエン変性耐衝撃性ポリスチレン樹脂100重量部、ポリフェニレンエーテル樹脂(2、6−ジメチル−1、4−フェニレンエーテル重合体)15部及び試料A7重量部をブレンドした後、シリンダー温度280℃に設定したベント付き2軸押出機のホッパーに供給して溶融押出することにより、難燃性樹脂組成物を作製した。上記方法で得られたペレットを乾燥後、射出成形機(金型温度80〜140℃)によりAETMD−638に規定されている難燃用評価用試験片(厚み1.6mm、幅2.7mm、長さ127mm)を得て、UL−94Vの難燃性試験を行ったところ、難燃レベルとしてV−0であった。
【0086】
実施例5
粘度平均分子量が約22000のビスフェノール型ポリカーボネート樹脂(PC)80部、対数粘度約0.75dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂20部、試料A4部、ビスフェノールAポリ(ジクレジル)ホスフェート(一般式(2)において、m1〜m4=1、n=1、2、3の混合物)1部及びリン系安定剤(アデカスタブHP−10)0.3部をブレンドした後、シリンダー温度280℃に設定したベント付き2軸押出機のホッパーに供給して溶融押出することにより、難燃性樹脂組成物を作製した。上記方法で得られたペレットを乾燥後、射出成形機(金型温度80〜140℃)によりAETMD−638に規定されている難燃用評価用試験片(厚み1.6mm、幅2.7mm、長さ127mm)を得て、UL−94Vの難燃性試験を行ったところ、難燃レベルとしてV−0であった。
【0087】
実施例6
(赤リンマスターバッチの作製)
粘度平均分子量が約22000のビスフェノール型ポリカーボネート樹脂(PC)80重量部、試料A20部をブレンドした後、シリンダー温度280℃に設定したベント付き2軸押出機のホッパーに供給して溶融押出することにより、安定化赤リン含有マスターバッチを作製した。上記PC80部、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PE)30部及び上記安定化赤リン含有マスターバッチ10部をブレンドした後、シリンダー温度280℃に設定したベント付き2軸押出機のホッパーに供給して溶融押出することにより、難燃性樹脂組成物を作製した。上記方法で得られたペレットを乾燥後、射出成形機(金型温度80〜140℃)によりAETMD−638に規定されている難燃用評価用試験片(厚み1.6mm、幅2.7mm、長さ127mm)を得て、UL−94Vの難燃性試験を行ったところ、難燃レベルとしてV−0であった。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、無機被覆層が強固で安定であり、製造の際に沈降速度及びろ過速度が速く製造コストが低く、しかも、洗浄により塩類を容易に除去可能な安定化赤リンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る安定化赤リンの表面付近の拡大断面の模式図である。
【符号の説明】
1 赤リン粒子
2 無機被覆層
3 無機粉体
4 空隙
Claims (2)
- 赤リン粒子の水性懸濁液にTiの水溶性金属塩を添加した後アルカリを添加し、次いで凝集剤を添加することを特徴とする安定化赤リンの製造方法。
- 前記凝集剤が、ポリ塩化アルミニウム又は硫酸アルミニウムであることを特徴とする請求項1記載の安定化赤リンの製造方法。
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