JP2009205041A - 電子写真現像剤用磁性キャリア及びその製造方法、二成分系現像剤 - Google Patents

電子写真現像剤用磁性キャリア及びその製造方法、二成分系現像剤 Download PDF

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Abstract

【課題】 そこで、本発明は、耐久性がより向上し、表面被覆層の剥離が高度に抑制されたキャリアを提供することを技術的課題とする。
【解決手段】
磁性芯材粒子の粒子表面に主に樹脂からなら表面被覆層を形成した電子写真現像剤用磁性キャリアであって、該磁性キャリアの帯電量の測定において、測定10秒後の測定値と120秒後の測定値との比(10秒後の帯電量)/(120秒後の帯電量)が60%以上であることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリアは、磁性芯材粒子の粒子表面に表面被覆層を形成する電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法であって、二種類以上の装置を順に用いて表面被覆層を形成して得ることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子写真現像剤用磁性キャリアに関するものであり、カブリや画像ムラの生じない画像を形成することができる電子写真現像剤用磁性キャリアを提供する。
周知のとおり、電子写真法においては、セレン、OPC(有機半導体)、a−Si等の光導電性物質を感光体として用い、種々の手段により静電気的潜像を形成し、この潜像に磁気ブラシ現像法等を用いて、潜像の極性と逆に帯電させたトナーを静電気力により付着させ、顕像化する方式が一般に採用されている。
この現像工程においては、トナーとキャリアとからなる現像剤が使用され、キャリアと呼ばれる担体粒子が摩擦帯電により適量の正又は負の電気量をトナーに付与し、且つ、磁気力を利用し磁石を内蔵する現像スリーブを介して、潜像を形成した感光体表面付近の現像領域にトナーを搬送している。
近年、前記電子写真法は複写機又はプリンターに広く多用化されており、細線や小文字、写真及びカラー原稿等様々な文書に対応できることが望まれている。複写機及びプリンターの高機能化、高画質化及び高速化に伴って使用される現像剤としての諸特性の向上が要求されている。
特に、カラー用現像剤に用いられるキャリアについては、高画質化及び高速化に伴って更に高信頼性が必要となるため、キャリアの帯電性能が長期に亘って維持できる高寿命化が必要とされている。そのためには、表面被覆層が割れたり剥がれたりすることなく、できるだけ初期の粒子形状・状態を維持できることが必要である。
即ち、現像機中では常にある程度のシェアがかかっており、キャリアの芯材粒子と表面被覆層の密着性が悪いと表面被覆層が割れたり剥がれたりする。その結果、帯電能力が低下して、前述したカラー用キャリアに要求されている特性や信頼性を維持できない。特に、表面被覆層が厚くなるとキャリアの芯材粒子と表面被覆層の密着性がより重要となってくる。
高寿命化の手段として、磁性芯材粒子表面の表面被覆層を厚くすることが考えられる。しかし、単に、表面被覆層を厚くし樹脂量が多くなれば、ニーダやヘンシェル等の装置で表面被覆する場合には凝集がひどくなり生産性も悪く、また、凝集した粒子が解砕された結果、粒子表面に形成された表面被覆層にクレータ状の欠陥ができて芯材粒子表面が露出しキャリア特性に悪影響を及ぼすなど、高寿命化を達成できるキャリアを安定して作製することができない。
また、流動層を有する装置を用いて磁性芯材粒子の表面に表面被覆層を形成する場合、凝集を防ぎ、磁性芯材粒子表面に形成された表面被覆層にクレータ状の欠陥などを生じさせることなく処理することはできるが、磁性芯材粒子と表面被覆層との密着性が劣り表面被覆層が割れたり剥がれたりしてしまう。
鉄粉キャリア及びフェライトキャリアは、通常、粒子表面を樹脂で被覆して使用されるが、前記鉄粉キャリアは真比重が7〜8g/cm、フェライトキャリアは真比重が4.5〜5.5g/cmと大きいために、現像機中で攪拌するためには大きな駆動力を必要とし、機械的な損耗が多く、トナーのスペント化、キャリア自体の帯電性劣化や感光体の損傷を招きやすい。さらに、磁性芯材粒子表面と被覆樹脂との接着性が良好とは言い難く、使用中に次第に被覆樹脂が剥離して、帯電性の変化を起こし、結果として画像の乱れやキャリア付着等の問題を引き起こしてしまう。
もっとも、特開平2−220068号公報記載の磁性微粒子とフェノール樹脂とからなる球状複合体粒子からなる磁性体分散型キャリアは、真比重が3〜4g/cmと前記鉄粉キャリア及びフェライトキャリアに比べて真比重が小さいために、トナーとキャリアの衝突時のエネルギーが小さくなり、トナーのスペント化に対して有利である。さらに、被覆樹脂との接着性に数段優れており、使用中に表面被覆層が剥離するという問題は、鉄粉キャリア及びフェライトキャリアに比べると低減されたものである。
しかしながら、近年の複写機及びプリンターの高機能化、高画質化及び高速化に伴い、表面被覆層の剥離が高度に抑制された磁性キャリアが強く要求されている。
従来、磁性芯材粒子に樹脂層を形成した磁性キャリアについて、磁性芯材粒子を樹脂層で被覆した磁性キャリアの電気抵抗率を制御する技術(特許文献1)、磁性芯材粒子を2種類の樹脂層で被覆した磁性キャリアの体積抵抗率を制御する技術(特許文献2)、磁性芯材粒子を樹脂溶液に浸漬して被覆層を形成し、次いで、流動床中で樹脂溶液を噴霧して被覆層を形成する技術(特許文献3)等が知られている。
特開2006−259010号公報 特開2007−206481号公報 特開2004−226568号公報
前出特許文献1には、抵抗測定時の電界強度が変化しても電気抵抗率が一定の領域を維持できる磁性キャリアが記載されているが、単に、遠心転動造粒コーティング装置のみを用いて磁性芯材粒子に対して表面被覆成分を形成するものであり、長寿命のキャリアが得られるとは言い難いものである。
また、前出特許文献2には、磁性芯材粒子をメラミン樹脂で被覆した後、更に、カーボンブラックを含有する樹脂層で被覆した磁性キャリアが記載されているが、重合反応によってメラミン樹脂を被覆した後、コーターを用いて樹脂層を被覆するものであり、長寿命のキャリアが得られるとは言い難いものである。
また、前出特許文献3には、磁性芯材粒子表面が凹凸である磁性芯材粒子を樹脂溶液に浸漬して磁性芯材粒子の表面を平滑にした後、流動床中で樹脂溶液を噴霧して膜厚が均一で厚い樹脂層の塗布することが記載されているが、長寿命の磁性キャリアを得ることは考慮されていない。
そこで、本発明は、耐久性がより向上し、表面被覆層の剥離が高度に抑制されたキャリアを提供することを技術的課題とする。
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
即ち、本発明は、磁性芯材粒子の粒子表面に主に樹脂からなら表面被覆層を形成した電子写真現像剤用磁性キャリアであって、該磁性キャリアの帯電量の測定において、測定10秒後の測定値と120秒後の測定値との比(10秒後の帯電量)/(120秒後の帯電量)が60%以上であることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明1)。
また、本発明は、本発明1記載の電子写真現像剤用磁性キャリアにおいて、
前記帯電量の測定において、10秒後の磁性キャリアの表面被覆層の割れが25%以下であることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明2)。
また、本発明は、本発明1記載の電子写真現像剤用磁性キャリアにおいて、表面被覆層を構成する樹脂成分が、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれる一種又は二種類以上の樹脂である電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明3)。
また、本発明は、本発明1記載の電子写真現像剤用磁性キャリアにおいて、表面被覆層の樹脂成分の合計量が0.9wt%〜10.0wt%である電子写真現像用磁性キャリアである(本発明4)。
また、本発明は、磁性芯材粒子の粒子表面に表面被覆層を形成する電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法であって、二種類以上の装置を順に用いて表面被覆層を形成することを特徴とする本発明1乃至4のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法である(本発明5)。
また、本発明は、本発明5記載の電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法において、二種類以上の装置のうち最後に用いる表面被覆層の形成装置として、流動層を有する装置を用いる電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法である(本発明5)。
また、本発明は、本発明1乃至4のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアを用いた二成分系現像剤である(本発明7)。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアは、耐久性が向上し、帯電性が安定して維持されるので、電子写真現像剤用の磁性キャリアとして好適である。
また、本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法は、表面被覆層の剥離が高度に抑制され、帯電性が安定して維持できるという磁性キャリアに要求される特性を十分に確保でき、簡便であって、しかも、生産性に優れるので、磁性キャリアの製造方法として好適である。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアについて述べる。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアについて帯電量を測定した場合、測定10秒後と120秒後の測定値の比
(10秒後の帯電量)/(120秒後の帯電量)×100
が60%以上である。前記測定値が60%未満である場合、表面被覆層が剥離又は割れが生じたものであるから、優れた耐久性を有するものとは言い難い。より好ましい範囲は62%以上である。その上限値は100%である。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアは、前記10秒後の帯電量を測定した後の磁性キャリアのSEM観察(倍率1000倍、1視野にキャリアが5〜15個程度で表面状態が確認出来る程度)において、表面被覆層の割れが25%以下である。前記表面被覆層の割れが25%を超える場合、優れた耐久性を有するものとは言い難い。より好ましい範囲は20%以下である。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアの平均粒子径は10〜100μmが好ましい。平均粒子径が10μm未満の場合には二次凝集しやすく、100μmを越える場合には機械的強度が弱く、また、鮮明な画像を得ることができなくなる。より好ましくは20〜70μmである。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアの嵩密度は2.5g/cm以下が好ましく、より好ましくは1.0〜2.0g/cmである。比重は2.5〜5.2が好ましく、より好ましくは2.5〜4.5である。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアは、電気抵抗が1×10〜1×1017Ωcmが好ましく、より好ましくは1×10〜1×1016Ωcmである。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアの飽和磁化値は20〜80Am/kg(20〜80emu/g)が好ましく、より好ましくは40〜80Am/kg(40〜80emu/g)である。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアの水分量は0.2〜1.0wt%が好ましい。より好ましくは0.3〜0.8wt%である。
次に、本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアの製造法について述べる。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアは、磁性芯材粒子に二種類以上の装置を順に用いて表面被覆層を形成して得られる。
本発明における磁性芯材粒子は、フェライト粒子、鉄粉、バインダ樹脂中に磁性粒子粉末を分散させたバインダ型磁性粒子等のいずれも用いることができるが、表面被覆層との密着性を考慮するとバインダ型磁性粒子がより好ましい。
本発明において磁性芯材粒子として用いる、磁性粒子とバインダ樹脂とからなるバインダ型磁性粒子の製造方法は以下のとおりである。
即ち、バインダ型磁性粒子は、水性媒体中でフェノール類とアルデヒド類を塩基性触媒の存在下、マグネタイト粒子粉末、マグヘマイト粒子粉末、マグネトプランバイト型酸化鉄粒子粉末(ストロンチウムフェライト粒子粉末、バリウムフェライト粒子粉末)等の磁性粒子粉末を共存させて前記フェノール類とアルデヒド類とを反応させて得ることができる。バインダ型キャリアの磁性芯材粒子中における磁性粒子粉末の全含有量は、磁性芯材粒子に対して80〜99重量%が好ましく、80重量%未満の場合には樹脂分が多くなり、大粒子が出来やすくなる。99重量%を越える場合には樹脂分が不足して十分な強度が得られない。より好ましくは85〜99重量%である。
本発明における磁性芯材粒子の粒子表面に、主に樹脂からなら表面被覆層を形成する方法は以下のとおりである。
まず、第一回目の処理装置では、磁性芯材粒子と表面被覆層を形成する構成成分とを、装置内に入れ、攪拌・混合しながら、必要に応じて加熱し、その後、加熱・攪拌、必要に応じてその条件で保持して樹脂被覆層の形成を行う。
第一回目の処理装置では、特に、磁性芯材粒子と表面被覆層との密着性を重視して装置の選定を行い、せん断する力と混練する力とを十分に加えられる装置を用いることが必要である。単に、磁性芯材粒子と表面被覆層の構成成分とが全体的に混合されるだけではなく、磁性芯材粒子の凝集が分散され、且つ、磁性芯材粒子と表面被覆層を形成する構成成分とが複合化できるものが好ましい。混合機の機構的分類では、撹拌羽根を内蔵する容器回転式(水平円筒、傾斜円筒、V型又は二重円錐等)、水平回転軸を有する機械撹拌式(複軸パドルなど)、垂直回転軸を有する機械撹拌式(高速流動、マラー等)等に該当する装置を用いることが好ましい。
第一回目の処理装置は、具体的には、不二パウダル株式会社製のダブルコーン型混合機、万能混合攪拌機、杉山重工株式会社製のドラムミキサー、アキシャルミキサ、株式会社パウレック製のバーチカルグラニュレータ、三井鉱山株式会社製のヘンシェルミキサー、神鋼環境ソリューション株式会社製のPVミキサー、SVミキサー又はツカサ工業株式会社製のパウミキサ等を挙げることが出来る。
第一回目の処理装置における処理条件は、装置内の温度は10℃〜100℃で行うことが好ましく、より好ましくは40℃〜80℃である。100℃を越えると乾燥速度が速くなり、十分に表面被覆層を形成する前に溶媒が蒸発するために磁性芯材粒子と被覆層との密着性が悪く、前述したような表面被覆層の剥離が高度に抑制された磁性キャリアとしての特性を達成することができない。また、温度が低く過ぎると生産性が低下するだけでなく、長時間、装置内で処理されるためにキャリア特性の制御が難しくなる傾向にある。このときの運転条件としては上記装置内の温度での運転がより好ましい。
装置内の雰囲気は窒素などの不活性ガス雰囲気、大気中雰囲気など特に限定はしないが、好ましくは不活性雰囲気が良い。
また、磁性芯材粒子と表面被覆層との密着性を高める上でも、第一回目の処理を減圧化において行なうことがより好ましい。
また、第一回目の処理装置を用いた表面被覆層を形成した後の、表面被覆層を形成した磁性芯材粒子の電気抵抗の目安としては、例えば、樹脂のみの被覆であれば樹脂量が0.1wt%以上0.8wt%未満の場合、被覆前の磁性芯材粒子の電気抵抗に対する比として1×10未満であることが好ましく、また、樹脂量が0.8〜1.0wt%の場合、被覆前の磁性芯材粒子の電気抵抗に対する比として1×10以上1×10以下であることが好ましい。
被覆後であっても被覆前の磁性芯材粒子の電気抵抗と同程度であれば、被覆層が均一でなく、また、磁性芯材粒子を均一に被覆できていないことになるため、密着性という観点からは十分ではなく、前述した高寿命などキャリアに要求されるその役割を果たすことができない。また、それぞれの樹脂量における上限の電気抵抗を超える場合は、せん断する力と混練する力とが十分に加えられたとは考えられず、磁性芯材粒子と表面形成層との間に隙間があると考えられ、十分な密着性が確保されているとは言えない。
第二回目以降は、第一回目の処理で得られた磁性芯材粒子を流動層中で滞留させた状態で表面処理層を形成する構成成分を添加し、磁性芯材粒子の粒子表面に表面被覆層の形成を行う。第二層目以降は、樹脂量が増えることによる凝集や、その凝集が解砕されたときにできるクレータ状の割れを防ぎ、生産性、キャリアに要求される特性を十分確保出来る装置を選定する。
第二回目の処理装置は、例えば、フロイント産業株式会社製のグラニュレックス、フローコーター、スパイラフロー、株式会社パウレック製のマルチプレックス、SFP、岡田精工株式会社製スピラコータ、ホソカワミクロン株式会社製のアグロマスタ、等を用いることができる。
流動層を有する装置であれば、凝集を抑制でき、またキャリアに要求される特性を確保できるが、好ましくは転動流動層、より好ましくは解砕機構を持つ転動流動層であれば、より効果的に凝集を抑制することができる。
第二回目の処理装置を用いる条件は、流動層の給気エア温度は30℃〜100℃で行うことが良く、好ましくは50℃〜90℃である。給気エア温度が100℃を越えると表面被覆層を形成する構成成分の乾燥速度が速くなり十分に被覆層を形成する前に溶媒が蒸発するために被覆層の形成効率が低下し、また、被覆層として第一回目の表面形成層との密着性も悪くなり、表面被覆層の剥離が高度に抑制された磁性キャリアを得ることができない。一方、給気エア温度が低く過ぎると乾燥効率が悪くなり被覆層の形成が十分ではなく、電気抵抗などの磁性キャリアに要求される特性の制御が出来なくなり、かつ、同様に前述したような要求、表面被覆層の剥離が高度に抑制された磁性キャリア、を得ることができない。
流動層を有する装置において、試料の滞留時間、給気エア量等は均一な表面被覆層ができるように適宜設定すればよい。
装置内の雰囲気は、窒素などの不活性雰囲気、大気中雰囲気など特に限定はしないが、好ましくは不活性雰囲気が良い。
表面被覆層を構成する樹脂成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン系樹脂又はその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素・ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ系樹脂;エポキシ系樹脂などを挙げることができる。
表面被覆層を構成する樹脂成分としては、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれる一種、又は2種類以上の樹脂がより好ましい。
本発明における表面被覆層には、被覆層中に微粒子を含有させても良い。前記微粒子としては、例えばトナーに負帯電性を付与させるものとして、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ニグロシン系染料、ポリアミン樹脂などによる微粒子が好ましい。一方、トナーに正帯電性を付与させるものとして、Cr、Co等金属を含む染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物などによる微粒子が好ましい。なお、これらの樹脂粒子は1種単独で使用してよいし、2種以上を併用しても良い。
また、本発明における表面被覆層は、被覆層中に導電性微粒子を含有させても良い。前記導電性微粒子としては公知のものが使用可能であり、例えばアセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、Si、Ti等の金属炭化物、B、Ti等の金属窒化物、Mo、Cr等の金属ホウ化物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してよいし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。
第一回目の処理装置で形成される表面被覆層と、第二回目の処理装置で形成される表面被覆層とは、各被覆層同士の組成が同一であっても、異なるものであっても構わない。
特に、第一回目の装置での処理には、表面被覆層を形成する構成成分にカーボンブラックなどを含有させてもよいが、樹脂のみで表面被覆層を形成するのが密着性をより向上させる点で好ましい。
本発明に係る磁性キャリアの樹脂による全被覆量は、磁性芯材粒子100重量%に対して0.9〜10.0重量%である。被覆量が0.9重量%未満の場合には、前述したようにカラー用現像剤に用いられるキャリアについては、高画質化及び高速化に伴って更に高信頼性が必要となるため、キャリアの帯電性能が長期に亘って維持できる高寿命化が必要とされており、そうした高寿命の点で適切でない。また、10.0重量%を越える場合には、被覆量が多くなり過ぎて、キャリアとしての必要な特性を制御することができなくなる。好ましくは0.9〜8.0重量%であり、より好ましくは0.9〜5.0重量%である。
また、第一回目の処理装置と第二回目の処理装置において、各装置で用いる樹脂量の比率は特に限定されないが、磁性キャリアとしての特性以外にも、せん断する力と混練する力を十分に加えて処理を行い磁性芯材粒子と表面被覆層の密着性を高める、という観点からも、少なくとも1層目は0.1重量%〜1.0重量%であることが好ましい。
また、第一回目の処理装置において樹脂量が1.5重量%を越えると凝集がひどくなり、凝集した粒子が解砕された結果、粒子表面に形成された表面被覆層にクレータ状の欠陥ができて芯材粒子表面が露出しキャリア特性に悪影響を及ぼすなど、高寿命化を達成できるキャリアを安定して製造できない。
三種類以上の装置を用いて、磁性芯材粒子に表面被覆層を形成する場合、第一回目に用いる装置は、前記第一回目に用いる装置と同様であり、最後に用いる装置は、前記流動層を有する装置である。途中に用いる装置はいかなる装置を用いてもよい。また、同じ装置を再度、用いることも可能である。
必要により、第一回目の装置での処理後及び/又は第二回目の装置での処理後に加熱処理を行って良い。なお、磁性芯材粒子と表面被覆層との密着性を高める上で減圧化において加熱処理を行なっても良い。
前記加熱処理を行なう場合、樹脂の種類によってその処理温度の条件を設定することが好ましい。
例えば、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂又はアクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂の場合、第一回目の装置での処理後及び/又は第二回目の装置での処理後に、いずれも80℃〜200℃の温度範囲で加熱処理を行うのが好ましく、より好ましくは90℃〜150℃である。80℃未満では溶媒成分が十分に除去することが困難であり、また、200℃を越えると被覆層を形成している樹脂の劣化が起こり、被覆層自体の強度が低下するなど物理的・化学的にキャリア特性を維持できないだけでなく、凝集なども起こり生産性が悪くなる。
また、エポキシ系樹脂又はシリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂の場合、第一回目の装置での処理後及び/又は第二回目の装置での処理後に、いずれも100℃〜250℃の温度範囲で加熱処理を行うのが好ましく、より好ましくは120℃〜200℃である。100℃未満では表面形成層の硬化が十分に進まず前述したような高寿命に対応出来るような表面層を形成出来ず、また、250℃を越えると熱可塑性樹脂と同様に被覆層を形成している樹脂の劣化が起こり、被覆層自体の強度が低下するなど物理的・化学的にキャリア特性を維持できないだけでなく、凝集なども起こり生産性が悪くなる。
次に、本発明における二成分系現像剤について述べる。
本発明のキャリアと組み合わせて使用するトナーとしては、公知のトナーを使用することができる。具体的には、結着樹脂、着色剤を主構成物とし、必要に応じて離型剤、磁性体、流動化剤などを添加したものを使用できる。又、トナーの製造方法は公知の方法を使用できる。
<作用>
本発明において重要な点は、二つ以上の処理装置を順に用いて、表面被覆層を形成することであり、第一回目の装置は密着性を重視して、第二回目以降の装置は凝集を抑制し、また、凝集後解砕されたときにできるクレータ状の欠陥の発生を抑制することで、キャリアに要求される特性を制御できることである。
第一回目の処理装置は、磁性芯材粒子と表面被覆層との密着性をより重視し、混練する力やせん断力を十分に与えることのできる装置であることが好ましい。
第二回目以降の処理装置では、表面被覆層を形成する樹脂量が増えることで発生する凝集やその凝集体が解砕されて生じるクレータ状の欠陥を抑制するために、磁性芯材粒子の1つ1つを個々に流動させて被覆することができる装置である、流動層を用いることが好ましい。
その結果、磁性芯材粒子と表面被覆層との密着性が向上し、帯電量の変化が低減され、耐久性に優れたキャリアを作製することができる。また、磁性芯材粒子と第一回目の処理装置で形成した被覆層との密着性を向上させたことで、環境安定性にも優れたキャリアを作製することができる。
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
粒子粉末の平均粒子径はレーザー回折式粒度分布計 LA500((株)堀場製作所製)により計測して体積基準による値で示した。
帯電量の測定は、磁性キャリア95重量部と下記の方法により製造したトナー5重量部を十分に混合し、24℃、60%RH環境に24hr以上放置調湿した試料を準備して、ブローオフ帯電量測定装置TB−200(東芝ケミカル社製)を用いて測定した。測定時間を、10秒、120秒として、その時に測定された値の比を、下記数1で計算した値で、表面被覆層の強度を示す指数とした。
<数1>
(10秒後の帯電量)/(120秒後)の帯電量)×100
トナーの製造例
ポリエステル樹脂 100重量部
銅フタロシアニン系着色剤 5重量部
帯電制御剤(ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛化合物) 3重量部
ワックス 9重量部
上記材料をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸押出式混練機により溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて粉砕、分級して重量平均粒径7.4μmの負帯電性青色粉体を得た。
前記負帯電性青色粉体100質量部と疎水性シリカ1重量部をヘンシェルミキサーで混合して負帯電性シアントナーを得た。
得られたトナーを用いて上記測定方法に従って、帯電量の測定を行った。
粒子の粒子形態は、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製(S−800))で観察したものである。また、表面被覆層の状態の確認は、観察サンプルを帯電量測定10秒後のものとし、1000倍での視野で、1視野中にキャリアが5〜15個程度の表面被覆層の割れの個数を確認したものである。
水分含有量の測定は、カールフィッシャー(平沼産業社製、自動加熱気化水分測定システムAQ−2100)にて行った。また、測定用試料は、24℃、60%RH環境に24hr以上放置調湿した試料1gをガラス製のサンプル管に精秤し、アルミ箔で蓋をして準備した(この時、空気中に含まれる水分量を補正するために、同様に蓋をした空のサンプル管を2本用意する)。
加熱温度150℃、キャリアガス(窒素ガス)流量100ml/minに条件にて水分気化装置(EV−2010 AUTO SOLID EVAPCRATOR)から送られてきた水をINTERVAL=30秒、TIMER=1分の条件で滴定を行った。発生液はリーデル・デ・ヘーエン社製ハイドラナールアクアライトRS、対極液は関東化学(株)製アクアライトCNを用いた。
飽和磁化は、振動試料型磁力計VSM−3S−15(東英工業(株)製)を用いて外部磁場795.8kA/m(10kOe)のもとで測定した値で示した。
流動率は、JIS Z2502を参考に測定した。
かさ密度は、JIS K5101を参考に測定した。
真比重はマルチボリウム密度計(島津製作所製1305型)で測定した。
電気抵抗値(体積固有抵抗値)は、ハイレジスタンスメーター4339B(横河ヒューレットパッカード製)で測定した値で示した。
画像評価はエプソン製LP8000Cを改造して用いた。キャリアを本発明のキャリアに変え、バイアス電圧を変えて画出しを行い、5万枚の耐刷試験を行った。
印刷画像のカブリを、次の4段階で評価した。
◎:非常によい。
○:良好。
△:許容レベル。
×:悪い。
印刷画像の画像濃度は、次の4段階で評価した。
◎:非常によい。
○:良好。
△:許容レベル。
×:悪い。
<球状複合体粒子の製造:強磁性酸化鉄微粒子の親油化処理>
500mlフラスコに球状マグネタイト粒子粉末(平均粒子径0.24μm)1000gを仕込み十分に良く攪拌した後、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤(商品名:KBM−403 信越化学社製)7.0gを添加し、約100℃まで昇温し30分間良く混合攪拌することによりカップリング剤で被覆されている球状マグネタイト粒子粉末Aを得た。
<磁性芯材用の球状複合体粒子Aの製造>
フェノール樹脂 11重量部
37%ホルマリン 17重量部
親油化処理された球状マグネタイト粒子粉末A 100重量部
25%アンモニア水 3重量部
水 10重量部
上記材料をフラスコに入れ、250rpmの攪拌速度で攪拌しながら60分間で85℃に昇温させた後、同温度で120分間反応・硬化させることにより、強磁性酸化鉄微粒子と硬化したフェノール樹脂からなる複合体粒子の生成を行った。
次に、フラスコ内の内容物を30℃まで冷却後、上澄み液を除去し、さらに下層の沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)に150〜180℃で乾燥して磁性芯材粒子用の球状複合体粒子Aを得た。
得られた球状複合体粒子Aは、平均粒子径が35.8μmであり、かさ密度1.91g/cm、比重3.61g/cm、飽和磁化値74.1Am/kg、流動率35.1sec/50g、水分量0.55%、電気抵抗値3.4×10Ω・cm、であった。
<磁性芯材用の球状複合体粒子Bの製造>
親油化処理した強磁性酸化鉄微粒子の量、フェノールの量、ホルマリンの量、塩基性触媒であるアンモニア水の量、水の量及び攪拌速度を種々変化させた以外は、複合体粒子Aと同一の条件で操作を行って、磁性芯材粒子用の球状複合体粒子Bを得た。
得られた球状複合体粒子Bは、平均粒子径が52.1μmであり、かさ密度1.92g/cm、比重3.57g/cm、飽和磁化値73.1Am/kg、流動率33.1sec/50g、水分量0.56%、電気抵抗値2.6×10Ω・cm、であった。
実施例1 <樹脂被覆した磁性キャリアの製造>
次に、第一回目の装置として万能混合攪拌機(ダルトン製)を用い、大気開放の下、装置内に、前記球状複合体粒子A 1500g及びアクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製:BR−105)を固形分として11.25g添加し、攪拌しながら70℃まで昇温し、同温度で2時間保持してアクリル樹脂からなる樹脂被覆層の形成を行った。
第二回目の装置として流動層を用い、転動流動層(SFP、パウレック社製)内に、前記第一回目の処理を行った球状複合体粒子A 1500gを投入、流動層中で滞留させた状態で表面被覆層を形成する成分を添加し、粒子表面に表面被覆層の形成を行った。給気エアは、大気より取り込み、給気エア温度は80℃、給気エア流量は0.8m/minとした。表面形成層を噴霧するノズルは、アトマイズエア量を30L/min、噴霧速度を7g/minとし、第二層を形成する成分のアクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製:BR−105)を固形分として18.75gを噴霧した。また、ロータ回転数は600r.p.m.とした。
得られた樹脂被覆層を有する電子写真用磁性キャリアを、100℃、4時間保持して、加熱処理を行なった。また、このとき昇温速度を5℃/min、降温速度を5℃/minと制御した。
得られた樹脂被覆層を有する電子写真用磁性キャリアは、平均粒子径が36.0μmであり、かさ密度1.79g/cm、比重3.48g/cm、飽和磁化値73.2Am/kg、流動率37.3sec/50g、水分量0.58%、電気抵抗値6.8×1014Ω・cmであった。
帯電量測定時の10秒後、120秒後の測定値の比は65.0であった。
走査型電子顕微鏡で帯電量測定10秒後のサンプルを観察した結果、1000倍の視野で3視野観察したところ、全磁性キャリア18個中3個について表面被覆層の割れを確認し、割れの度合いは16.7%であった。また、帯電量測定前の磁性キャリアの表面被覆層の被覆状態は均一なものであった。
得られた樹脂被覆層を有する磁性キャリアの製造法を表1及び表2に、得られた磁性キャリアの諸特性及び耐刷評価結果を表3及び表4に示す。
実施例2〜17、比較例1〜10
磁性芯材粒子の種類、第一回目、第二回目の処理において、用いる装置、樹脂の種類、樹脂被覆量を種々変化させた以外は、実施例1と同様にして磁性芯材粒子に表面被覆層を形成した電子写真現像剤用磁性キャリアを得た。
このときの製造条件を表1及び表2に、得られた磁性芯材粒子に表面被覆層を形成した電子写真現像剤用磁性キャリア諸特性及び耐刷評価結果を表3及び表4に示す。
なお、シリコーン樹脂は、信越化学社製 KR−251、カーボンブラックは三菱化学株式会社製 MA600を、それぞれ用いた。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアは、二種類以上の処理装置を用いることで、第一回目の処理にて磁性芯材粒子と表面被覆層との密着性を持たせ、その層の表面に、第二回目の処理を行う。そのため、第一回目はせん断する力と混練する力を有する装置が好ましい。また、二回目以降は、凝集し難く、かつ、凝集したものが解砕されたときに見られるクレータ状の割れの発生を防ぐ為にキャリア粒子1つ1つ個々に流動させることが出来る流動層が好ましい。
その結果、磁性芯材粒子と表面被覆層との密着性を向上し、形成した表面被覆層の強度が向上することで、耐久性と環境安定性に優れたキャリアを作製することが出来る。
耐久性が向上し、帯電性が安定して維持されるので、電子写真現像剤用の磁性キャリアとして好適である。
実施例1の磁性キャリアの帯電量測定後の電子顕微鏡写真の一部である。 比較例1の磁性キャリアの帯電量測定後の電子顕微鏡写真の一部である。

Claims (7)

  1. 磁性芯材粒子の粒子表面に主に樹脂からなら表面被覆層を形成した電子写真現像剤用磁性キャリアであって、該磁性キャリアの帯電量の測定において、測定10秒後の測定値と120秒後の測定値との比(10秒後の帯電量)/(120秒後の帯電量)が60%以上であることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリア。
  2. 請求項1記載の電子写真現像剤用磁性キャリアにおいて、
    前記帯電量の測定において、10秒後の磁性キャリアの表面被覆層の割れが25%以下であることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリア。
  3. 請求項1記載の電子写真現像剤用磁性キャリアにおいて、表面被覆層を構成する樹脂成分が、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれる一種又は二種類以上の樹脂である電子写真現像剤用磁性キャリア。
  4. 請求項1記載の電子写真現像剤用磁性キャリアにおいて、表面被覆層の樹脂成分の合計量が0.9wt%〜10.0wt%である電子写真現像用磁性キャリア。
  5. 磁性芯材粒子の粒子表面に表面被覆層を形成する電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法であって、二種類以上の装置を順に用いて表面被覆層を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法。
  6. 請求項5記載の電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法において、二種類以上の装置のうち最後に用いる表面被覆層の形成装置として、流動層を有する装置を用いる電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法。
  7. 請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアを用いた二成分系現像剤。
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