以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリア(以下、「磁性キャリア」という)について述べる。
本発明に係る磁性キャリアは、平均粒径近傍の粒径を有するキャリア粒子の飽和磁化をσ0(Am2/kg)、20μmよりも小さな粒径を有するキャリア粒子の飽和磁化をσ1(Am2/kg)としたとき、σ1−σ0が−2〜0である。磁性キャリアの飽和磁化のばらつきを示すσ1−σ0が−2よりマイナスが大きくなると、20μm以下の小粒径のキャリア付着が発生し易くなり画像品質が著しく低下するため好ましくない。一方、σ1−σ0は0を上回ることは技術的に困難である。σ1−σ0は好ましくは−1.5〜0であり、より好ましくは−1〜0である。
また、磁性キャリアの75μmよりも大きな粒径を有するキャリア粒子の飽和磁化をσ2(Am2/kg)としたとき、σ2−σ0が−2〜0であることが好ましい。磁性キャリアの飽和磁化のばらつきを示すσ2−σ0が−2よりマイナスが大きくなると、20μm以下の小粒径のキャリア付着が発生し易くなり画像品質が低下する傾向にあるため好ましくない。一方、σ1−σ0は0を上回ることは技術的に困難である。より好ましいσ2−σ0は−1.5〜0であり、さらに好ましくは−1〜0である。
本発明に係る磁性キャリアの平均粒径は20〜60μmであり、平均粒径が20μm未満の場合には二次凝集しやすく、60μmを越える場合には機械的強度が弱く、また、鮮明な画像を得ることができなくなる。より好ましくは20〜50μmである。
本発明に係る磁性キャリアの形状係数SF1及びSF2は、それぞれ、100〜120、及び100〜120が好ましい。より好ましくは、形状係数SF1が100〜110であり、形状係数SF2が100〜110である。
形状係数SF1は粒子の丸さの度合いを示し、形状係数SF2は粒子の凹凸の度合いを示しているため、円(球形)から離れるとSF1は値が大きくなり、表面の凹凸の起伏が大きくなるとSF2の値も大きくなる。それぞれの値は、真円(球)に近づくにつれて100に近い値となる。
磁性キャリアが真球に近づき、かつ表面の凹凸が小さいと、現像領域における磁気ブラシもより均一となるため、キャリア付着も改良される。また、磁性キャリアの形状係数SF1が120を超えたり、SF2が120を超えると、樹脂被覆層が均一な状態とならず、キャリアの帯電量、および抵抗の不均一性を生じ易くなるために、高精細な画像が得られなくなる。また、樹脂被覆層の粒子との密着強度が低下する傾向にあるため十分な耐久性が得られなくなる。
本発明に係る磁性キャリアの嵩密度は2.5g/cm3以下が好ましく、より好ましくは1.0〜2.0g/cm3である。真比重は2.5〜4.5g/cm3が好ましく、より好ましくは3.0〜4.0g/cm3である。
本発明に係る磁性キャリアにおいて、外部磁場79.58kA/m(1kOe)のときの飽和磁化値は30〜80Am2/kgが好ましく、より好ましくは40〜70Am2/kgである。外部磁場795.8kA/m(10kOe)のときの飽和磁化値は40〜90Am2/kgが好ましく、より好ましくは50〜80Am2/kgである。また、外部磁場79.58kA/m(1kOe)のときの残留磁化値は1〜20Am2/kgが好ましく、より好ましくは1〜10Am2/kgである。外部磁場795.8kA/m(10kOe)のときの残留磁化値は1〜20Am2/kgが好ましく、より好ましくは1〜10Am2/kgである。
本発明に係る磁性キャリア中の強磁性酸化鉄微粒子粉末の含有量は、磁性キャリアに対して80〜99重量%が好ましい。強磁性酸化鉄微粒子粉末の含有量が80重量%未満の場合には樹脂分が多くなり、大粒子が出来やすくなる。99重量%を越える場合には樹脂分が不足して十分な強度が得られない。より好ましくは85〜99重量%である。
本発明1に係る磁性キャリアの樹脂指数C1は、35〜80%が好ましく、より好ましくは40〜75%であり、さらに好ましくは45〜70%である。
本発明1に係る磁性キャリアの樹脂指数C1が35%未満の場合、球状複合体芯粒子に対する被覆樹脂の濡れ性が悪くなったり凹部に被覆樹脂が入り込むために均一な被覆が難しくなり、安定した帯電量及び電気抵抗特性が得られなくなる。さらに、球状複合体芯粒子の最表面の強度が弱くなり、現像剤の撹拌時における磁性キャリアの被覆層の剥れなどの劣化が生じやすくなる問題が生じる。一方、80%を超えると、球状複合体芯粒子の粒子表面における微細な凹凸構造が小さくなるためにアンカー効果が得られにくくなり、現像剤の攪拌時における磁性キャリアの被覆層の剥れなどの劣化が生じやすくなる。また、磁性キャリアの電気抵抗値が高くなりやすく、樹脂被覆による抵抗制御が難しくなる場合が生じたりする。本発明では、球状複合体芯粒子の樹脂指数C1を制御することで樹脂被覆による抵抗制御が容易になったり、被覆層の剥れ等の劣化を抑制できるようになる。
本発明1に係る磁性キャリアの電気抵抗値は、1.0×105〜1.0×1015Ωcmが好ましく、より好ましくは1.0×106〜1.0×1014Ωcmである。電気抵抗値が1.0×105Ωcm未満の場合、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ、潜像の乱れや画像の欠損等を生じ好ましくない。一方、1.0×1015Ωcmを超えると、ベタ画像でのエッジ効果が表れベタ部の再現が乏しい場合がある。
本発明1に係る磁性キャリアの水分量は0.1〜0.8重量%が好ましい。磁性キャリアの水分量が0.1重量%未満の場合、適度な吸着水分量がないためチャージアップが生じやすく、画質劣化の原因となる。一方、0.8重量%を超える場合、環境変動により帯電量が安定しにくくトナー飛散が起こる場合がある。より好ましい水分量は0.2〜0.7重量%である。
本発明2に係る磁性キャリアの水分量は0.3〜1.0重量%が好ましい。磁性キャリアの水分量が0.3重量%未満の場合、適度な吸着水分量がないためチャージアップが生じる傾向にあり、画質劣化の原因となる場合がある。一方、1.0重量%を超える場合、環境変動により帯電量が安定しにくくトナー飛散が起こりやすくなる。より好ましくは0.4〜0.8重量%である。
本発明2に係る磁性キャリアは、樹脂指数C1が50〜90%であり、より好ましくは55〜90%であり、さらに好ましくは60〜88%である。
樹脂指数C1を50%未満にすると、磁性キャリアの帯電量や電気抵抗値が不十分であったりばらつきが見られる等の弊害が生じたり、電気抵抗値の電圧に対する依存性が大きくなるので一般的には階調性のない画像となり好ましくない。また、最表面における強度が不十分となる場合が生じる。さらに、該粒子の表面に樹脂被覆を行った際の樹脂との接着性が悪くなり、樹脂被覆層が均一な状態とならないため好ましくない。一方、樹脂指数C1が90%を超えると、磁性キャリアの帯電量や電気抵抗値が高くなり過ぎ好ましくない。また、さらに該粒子の表面に樹脂被覆を行う際にはアンカー効果が得られにくくなり、磁性キャリアの強度に劣るなどといった問題が生じ好ましくない。
本発明2に係る磁性キャリアは、樹脂指数C1及びC2との比率C1/C2が1.05〜1.40であり、より好ましくは1.07〜1.35であり、さらに好ましくは1.10〜1.30である。
樹脂指数の比率C1/C2が1.40を超えると、磁性キャリアの粒子表面に形成されたメラミン樹脂からなる被覆層が薄かったり不均一であったりする場合が生じるため、長期間の使用に伴い被覆層の剥れ等が発生すると、リーク現象によるキャリア付着が発生し易くなるため好ましくない。一方、樹脂指数の比率C1/C2を1.05未満にすると、磁性キャリアの粒子表面に形成されたメラミン樹脂からなる被覆層が部分的もしくは全体的に厚くなったりする場合が生じるため、磁性キャリアの帯電量や電気抵抗値の制御が難しくなるため好ましくない。
本発明4に係る磁性キャリアの電気抵抗値は、印加電圧100Vにおいて1.0×106〜1.0×1016Ωcmが好ましく、より好ましくは5.0×106〜1.0×1015Ωcmであり、さらに好ましくは1.0×107〜1.0×1014Ωcmである。電気抵抗値が1.0×106Ωcm未満の場合、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ、潜像の乱れや画像の欠損等を生じ好ましくない。一方、1.0×1016Ωcmを超えると、ベタ画像でのエッジ効果が表れベタ部の再現が乏しい場合がある。
本発明5に係る球状複合体粒子の粒子表面に樹脂被覆してなる磁性キャリアの電気抵抗値は、印加電圧100Vにおいて1.0×107〜1.0×1016Ωcmが好ましく、より好ましくは1.0×108〜1.0×1015Ωcmである。電気抵抗値が1.0×107Ωcm未満の場合、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ、潜像の乱れや画像の欠損等を生じ好ましくない。一方、1.0×1016Ωcmを超えると、ベタ画像でのエッジ効果が表れベタ部の再現が乏しい。
次に、本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアの製造法について述べる。
即ち、本発明1に係る球状複合体芯粒子からなる電子写真現像剤用磁性キャリアは、水性媒体中でフェノール類とアルデヒド類とを塩基性触媒の存在下、圧縮密度CDが2.3〜3.0g/cm3である強磁性酸化鉄微粒子粉末を共存させてフェノール類とアルデヒド類とを反応させて、強磁性酸化鉄微粒子と硬化したフェノール樹脂とからなる球状複合体芯粒子を得ることができる(本発明7)。
本発明における強磁性酸化鉄微粒子粉末の圧縮密度CDは、2.3〜3.0g/cm3である。強磁性酸化鉄微粒子粉末の圧縮密度CDが2.3g/cm3未満の場合は、当該強磁性酸化鉄微粒子粉末を用いて磁性キャリアを製造した場合に20μm以下の粒子及び75μm以上の粒子に十分な磁化値が得られない。一方、圧縮密度CDが3.0g/cm3を超える場合は工業的に磁性キャリアの製造が困難である。好ましい圧縮密度CDは2.4〜3.0g/cm3であり、より好ましくは2.5〜3.0g/cm3である。
本発明で用いる強磁性酸化鉄微粒子粉末の製造法について述べる。
本発明における強磁性酸化鉄微粒子粉末は、従来公知の方法によって得られ、例えば、第一鉄塩水溶液と水酸化アルカリ水溶液とを中和混合して得られた水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応水溶液を酸素含有ガス、好ましくは空気をスラリー中に吹き込みながら酸化させる方法などによって得られた強磁性酸化鉄微粒子を含むスラリー溶液を、デカンテーション、フィルターシックナーなどにより溶液中の可溶性塩を除去し、さらに、ボールミル、アトライター、TKホモミキサーなどの粉砕装置を用いて湿式粉砕を行い、次いで、乾燥させることにより得ることができる。
本発明では、酸化反応終了後のスラリー溶液に対しボールミル、アトライター、TKホモミキサーなどの粉砕装置を用いて湿式粉砕を行う。
湿式粉砕の条件は、スラリー溶液中の磁性酸化鉄粒子粉末に十分なシェアを与える必要があり、例えばTKホモミキサーの場合では、3000rpm以上の回転数で処理する必要がある。ボールミルやアトライター場合では、メティアの径により分散シェアが異なる場合が多いので、できるだけ小さな径のメディアを使用する。メディア径としては1cm以下、好ましくは5mm以下である。処理時間としては、1時間以上が好ましい。
乾燥には、気流乾燥機、凍結乾燥機、真空乾燥機など各種乾燥機が使用できるが、本発明においては気流乾燥機を使用するのが好ましい。この装置では、粒子が固く凝集しないように適度に分散させながら乾燥させることができるので、圧縮密度CDが特定の範囲にある強磁性酸化鉄微粒子を効率的に製造することができるため好ましい。
分散性に優れた強磁性酸化鉄微粒子を得るには、湿式粉砕処理した強磁性酸化鉄微粒子を含んだスラリー溶液を気流乾燥機を用いて乾燥する際の、磁性酸化鉄粒子を含有するスラリー溶液の濃度に大きく影響される。スラリー濃度としては、低ければ低いほど良く、強磁性酸化鉄微粒子の濃度としては50%以下、このましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。また、乾燥機内での乾燥温度は、短時間で乾燥できる温度にコントロールする必要がある。乾燥温度としては100℃以上、このましく150℃である。乾燥時間としては、時間が短いほど良く10分、好ましくは5分以下である。
本発明における強磁性酸化鉄微粒子は、従来公知の方法によって得られた強磁性酸化鉄微粒子を含むスラリー溶液を、デカンテーション、フィルターシックナーなどにより溶液中の可溶性塩を除去し、さらに、ボールミル、アトライター、TKホモミキサーなどの粉砕装置を用いて湿式粉砕を行い、次いで、気流乾燥機、凍結乾燥機、真空乾燥機などを用いて乾燥することによって、分散性の良い強磁性酸化鉄微粒子を得ることができる。
強磁性酸化鉄微粒子の圧縮密度CDは、強磁性酸化鉄微粒子の分散性と密接な関係を有している。すなわち、本発明における球状複合体芯粒子は、強磁性酸化鉄微粒子と硬化したフェノール樹脂とから製造されていることから、前記樹脂中での強磁性酸化鉄微粒子の分散性が優れていることが要求されている。
一般に、強磁性酸化鉄微粒子が分散不良であると凝集粒子が存在してしまい、これが、造粒粒子の20μm以下の粒子と75μm以上の粒子に偏る傾向が見られる。凝集粒子を含む造粒粒子は強磁性酸化鉄微粒子の充填が十分にできないために強磁性酸化鉄微粒子の含有量が上がらなくなり磁化値が下がってしまう。特に、20μm以下の小粒径キャリアの場合、粒子1個当たりの磁化値が元々低いためにさらに磁化値が下がることになり、キャリア付着を引き起こし易くなるといった弊害が生じる。
そこで、本発明において、強磁性酸化鉄微粒子の圧縮密度CDを制御することで分散性に優れた強磁性酸化鉄微粒子を得ることができるようになったため、球状複合体粒子の磁化値のばらつきを小さくすることが可能となった。
本発明における強磁性酸化鉄微粒子粉末の平均粒径は、0.05〜3.0μmが好ましい。0.05μm未満の場合は、強磁性酸化鉄微粒子粉末の凝集力が大きく、球状複合体芯粒子の製造が困難なものになる。3.0μmを超える場合は強磁性酸化鉄微粒子粉末が脱離を起こし易くなる。より好ましくは0.1〜2.0μmである。
本発明における強磁性酸化鉄微粒子は、マグネトプランバイト型酸化鉄微粒子粉末(ストロンチウムフェライト粒子粉末、バリウムフェライト粒子粉末)、マグネタイト粒子粉末等であり、好ましくはマグネタイト粒子粉末である。
本発明における強磁性酸化鉄微粒子粉末の粒子形状は、球状、板状、六面体、八面体、多面体などであり、好ましくは球状である。
本発明においては、平均粒径及び/又は形状が異なる強磁性酸化鉄微粒子粉末を2種以上混合して使用しても良い。
本発明においては、前記強磁性酸化鉄微粒子粉末とともに、ヘマタイトなどの非磁性粒子粉末を併用してもよい。
一般に、強磁性酸化鉄微粒子粉末には、出発原料に由来する若干量の不純物が含まれているが、このような成分としては、例えば、SiO2、Ca、Mn、Na、Mg等や硫酸イオン、塩化物イオン等の陰イオン成分などが挙げられる。これらは帯電特性の環境安定性を阻害する要因となるので、通常、強磁性酸化鉄微粒子粉末における不純物の含有率が2.0%以下の純度の高いものが好ましい。
本発明に用いる強磁性酸化鉄微粒子は、いずれもあらかじめ親油化処理をしておくことが望ましく、親油化処理がされていない強磁性酸化鉄微粒子を用いる場合には、球状を呈した複合体粒子を得ることが困難となる場合がある。
親油化処理は、シラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等のカップリング剤で処理する方法又は界面活性剤を含む水性溶媒中に強磁性酸化鉄微粒子粉末を分散させ、粒子表面に界面活性剤を吸着させる方法等がある。
シラン系カップリング剤としては、疎水性基、アミノ基、エポキシ基を有するものがあり、疎水性基を有するシラン系カップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル・トリス(β−メトキシ)シラン等がある。
アミノ基を有するシラン系カップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)─γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ− アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル− γ− アミノプロピルトリメトキシシラン等がある。
エポキシ基を有するシラン系カップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン等がある。
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート等がある。
界面活性剤としては、市販の界面活性剤を使用することができ、強磁性酸化鉄微粒子粉末の粒子表面と直接に、若しくは該粒子表面に有する水酸基と結合が可能な官能基を有するものが望ましく、イオン性で言えばカチオン性、あるいはアニオン性のものが好ましい。
上記いずれの処理方法によっても本発明の目的を達成することができるが、フェノール樹脂との接着性を考慮するとアミノ基、あるいはエポキシ基を有するシラン系カップリング剤による処理が好ましい。
前記カップリング剤又は界面活性剤の処理量は強磁性酸化鉄微粒子に対して0.1〜10重量%が好ましい。
本発明7に係る強磁性酸化鉄微粒子粉末と硬化したフェノール樹脂とからなる球状複合体芯粒子の製造方法は以下の通りである。
本発明に用いるフェノール類としては、フェノールのほか、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−プロピルフェノール、レゾルシノール、ビスフェノールA等のアルキルフェノール類や、アルキル基の一部又は全部が塩素原子、臭素原子で置換されたハロゲン化フェノール類等のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられるが、形状性を考慮すれば、フェノールが最も好ましい。
本発明に用いるアルデヒド類としては、ホルマリン又はパラアルデヒドのいずれかの形態のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、グリオキサール、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド及びグルタールアルデヒド等が挙げられるが、ホルムアルデヒドが最も好ましい。
アルデヒド類はフェノール類に対してモル比で1.0〜4.0が好ましく、アルデヒド類のフェノール類に対するモル比が1.0未満の場合には、粒子の生成が困難であったり、樹脂の硬化が進行し難いために、得られる粒子の強度が弱くなる傾向がある。4.0を超える場合には、反応後に水性媒体中に残留する未反応のアルデヒド類が増加する傾向がある。より好ましくは1.2〜3.0である。
本発明に用いる塩基性触媒としては、通常のレゾール樹脂製造に使用されている塩基性触媒が使用できる。例えば、アンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン及びジメチルアミン、ジエチルトリアミン、ポリエチレンイミン等のアルキルアミンが挙げられ、特にアンモニア水が好ましい。塩基性触媒はフェノール類に対してモル比で0.05〜1.50が好ましい。0.05未満の場合には、硬化が十分に進行せず造粒が困難となる。1.50を越える場合には、フェノール樹脂の構造に影響するため造粒性が悪くなり、粒子径の大きな粒子を得ることが困難となる。
前記フェノール類とアルデヒド類を塩基性触媒の存在下で反応させるに際し、共存させる強磁性酸化鉄微粒子の量は、強磁性酸化鉄微粒子、フェノール類及びアルデヒド類の総量に対して75〜99重量%が好ましく、生成する磁性キャリアの強度を考慮すると、78〜99重量%であることがより好ましい。
本発明における球状複合体芯粒子の生成反応は、水性媒体中で行われるが、水性媒体中の固形分濃度が30〜95重量%になるようにすることが好ましく、特に、60〜90重量%となるようにすることが好ましい。
本発明における球状複合体芯粒子の生成反応は、フェノール類、アルデヒド類、水、強磁性酸化鉄微粒子を十分に攪拌、混合した後、塩基性触媒を加えて攪拌しながら反応溶液を60〜95℃の温度範囲まで昇温し、この温度で30〜300分間、好ましくは60〜240分間反応させ、フェノール樹脂の重縮合反応を行って硬化させる。
このとき、球形度の高い球状複合体芯粒子を得るために、ゆるやかに昇温させることが望ましい。昇温速度は0.5〜1.5℃/minが好ましく、より好ましくは0.8〜1.2℃/minである。
このとき、粒径を制御するために、攪拌速度を制御することが望ましい。攪拌速度は100〜1000rpmが好ましい。
硬化させた後、反応物を40℃以下に冷却すると、バインダ樹脂中に強磁性酸化鉄微粒子が分散し、且つ、粒子表面に強磁性酸化鉄微粒子が露出した球状複合体芯粒子の水分散液が得られる。
前記球状複合体芯粒子を含む水分散液を濾過、遠心分離の常法に従って固・液を分離した後、洗浄・乾燥し、次いで熱処理を行って球状複合体芯粒子を得る。
本発明に係る球状複合体芯粒子は、樹脂指数C1が35〜80%の範囲にあることが好ましい。球状複合体芯粒子の樹脂指数C1を調整する方法として以下の方法が挙げられる。
前記球状複合体芯粒子は、樹脂をより硬化させるために熱処理を施すことが好ましい。特に、減圧下あるいは不活性雰囲気下で行うことが強磁性酸化鉄微粒子の酸化防止のためにも好ましいが、本発明ではこの熱処理により球状複合体芯粒子の樹脂指数C1を調整できることを見出した。
すなわち、前記球状複合体芯粒子の樹脂指数C1は、熱処理における減圧度や熱処理温度、熱処理時間を制御することで調整できる。
特開平2−220068号公報及び特開2000−199985号公報に記載の磁性粒子とフェノール樹脂とからなる球状複合体粒子は、非常に高い減圧度(665Pa)で熱処理がされているために樹脂指数が35%を満たさない粒子となり、磁性キャリア芯材に対する被覆樹脂の濡れ性が悪くなるために均一な被覆が難しくなり、安定した帯電量及び電気抵抗特性が得られなくなる。さらに、球状複合体粒子の最表面の強度が弱くなり、現像剤の攪拌時における磁性キャリアの被覆層の剥れなどの劣化が生じやすくなるため、近年における、高画質のためのさらなる高寿命化キャリアという要求に対して不十分になってきたという課題が生じている。
本発明の球状複合体芯粒子の熱処理において、該球状複合体芯粒子を窒素ガスなどの不活性雰囲気下にて40〜80kPaの減圧度で150℃から250℃の温度範囲で1〜7時間行われることにより、球状複合体芯粒子の樹脂指数C1を35〜80%の範囲に調整することができる。
前記球状複合体芯粒子の熱処理において、40kPaを満たさない高い減圧度で行った場合、球状複合体芯粒子の粒子表面の樹脂量が大きく減少してしまうため、球状複合体芯粒子に対する被覆樹脂の濡れ性が悪くなったり凹部に被覆樹脂が入り込むために均一な被覆が難しくなり、安定した帯電量及び電気抵抗特性が得られなくなる。さらに、球状複合体芯粒子の最表面の強度が弱くなり、現像剤の撹拌時における磁性キャリアの被覆層の剥れなどの劣化が生じやすくなる問題が生じる。一方、80kPaを超える低い減圧度で行った場合、球状複合体芯粒子の粒子表面における微細な凹凸構造が小さくなるためにアンカー効果が得られにくくなり、現像剤の攪拌時における磁性キャリアの被覆層の剥れなどの劣化が生じやすくなる。また、磁性キャリアの電気抵抗値が高くなりやすく、樹脂被覆による抵抗制御が難しくなる場合が生じたりする。よって、40〜80kPaの減圧度で熱処理することがより好ましく、さらにより好ましくは45〜75kPaの減圧度で熱処理することである。
前記球状複合体芯粒子の熱処理において、250℃を超える熱処理温度で行った場合、球状複合体芯粒子の粒子表面の樹脂量が大きく減少してしまうため、球状複合体芯粒子に対する被覆樹脂の濡れ性が悪くなったり凹部に被覆樹脂が入り込むために均一な被覆が難しくなり、安定した帯電量及び電気抵抗特性が得られなくなる。さらに、球状複合体芯粒子の最表面の強度が弱くなり、現像剤の撹拌時における磁性キャリアの被覆層の剥れなどの劣化が生じやすくなる問題が生じる。一方、150℃を満たさない熱処理温度で行った場合、球状複合体芯粒子の粒子表面に樹脂が過剰に存在し粒子表面における微細な凹凸構造が少なくなるためにアンカー効果が得られにくくなり、現像剤の攪拌時における磁性キャリアの被覆層の剥れなどの劣化が生じやすくなる。また、磁性キャリアの電気抵抗値が高くなりやすく、樹脂被覆による抵抗制御が難しくなる場合が生じたりする。よって、熱処理温度は150〜250℃で行うことが好ましく、さらに好ましくは170〜230℃である。
前記球状複合体芯粒子の熱処理において、7時間を越える熱処理時間で行った場合、球状複合体芯粒子の粒子表面の樹脂量が大きく減少してしまうため、球状複合体芯粒子に対する被覆樹脂の濡れ性が悪くなったり凹部に被覆樹脂が入り込むために均一な被覆が難しくなり、安定した帯電量及び電気抵抗特性が得られなくなる。さらに、球状複合体芯粒子の最表面の強度が弱くなり、現像剤の撹拌時における磁性キャリアの被覆層の剥れなどの劣化が生じやすくなる問題が生じる。一方、1時間を満たさない熱処理時間で行った場合、球状複合体芯粒子の粒子表面に樹脂が過剰に存在し粒子表面における微細な凹凸構造が少なくなるためにアンカー効果が得られにくくなり、現像剤の攪拌時における磁性キャリアの被覆層の剥れなどの劣化が生じやすくなる。また、磁性キャリアの電気抵抗値が高くなりやすく、樹脂被覆による抵抗制御が難しくなる場合が生じたりする。よって、熱処理時間は1〜7時間で行うことが好ましく、さらに好ましくは2〜6時間である。
なお、不活性雰囲気とするためには、不活性ガスを使用するのが好ましい。不活性ガスとしては例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス等を使用することができるが、工業的には、窒素ガスを吹き込みながら加熱処理を行うことがコスト的に有利であり、特性の安定したものが得られる。
次に、本発明2に係る球状複合体芯粒子の粒子表面にメラミン樹脂からなる被覆層を形成させた球状複合体粒子の製造方法について述べる(本発明8)。
本発明8に係る電子写真現像剤用磁性キャリアは、水性媒体中でフェノール類とアルデヒド類とを塩基性触媒の存在下、圧縮密度CDが2.3〜3.0g/cm3である強磁性酸化鉄微粒子粉末を共存させてフェノール類とアルデヒド類とを反応させて、強磁性酸化鉄微粒子と硬化したフェノール樹脂とからなる球状複合体芯粒子を生成させ、次いで、該球状複合体芯粒子を含む水性媒体中に、酸性触媒として酸解離定数pKaが3〜6の酸からなる酸性水溶液と、メチロールメラミン水溶液を添加することによって、該球状複合体芯粒子の粒子表面にメラミン樹脂からなる被覆層を形成させ、さらに、不活性雰囲気下にて40〜80kPaの減圧度で150℃から250℃の温度範囲で熱処理して得ることができる。
前記球状複合体芯粒子の粒子表面にメラミン樹脂からなる被覆層を形成させた球状複合体粒子の反応は、前記球状複合体芯粒子を生成させた水性媒体中において連続的に行う。すなわち、反応溶液を60〜95℃の温度範囲に維持したまま、酸性触媒として酸解離定数pKaが3〜6の酸からなる酸性水溶液と、水でメラミンとアルデヒド類とを反応させて調整したメチロールメラミン水溶液を添加して、30〜300分間、好ましくは60〜240分間攪拌しながら反応させて、前記球状複合体芯粒子の粒子表面にメラミン樹脂からなる被覆層を形成させる。
次いで、反応物を40℃以下に冷却し、前記球状複合体粒子を含む水分散液を濾過、遠心分離の常法に従って固・液を分離した後、洗浄・乾燥し、熱処理を行って球状複合体粒子を得る。
球状複合体粒子に対するメラミンの添加量は、樹脂指数C1及びC1/C2を制御するために0.1〜5.0重量%が好ましい。
また、前記球状複合体芯粒子を含む水性媒体中にメラミンを添加する方法において、メラミンは水に不溶のため、メラミンを固体の状態で直接水性媒体中に添加すると球状複合体芯粒子の粒子表面にメラミン樹脂被覆層が不均一に形成された球状複合体粒子が得られるため、本発明の通りに規定された樹脂指数C1及びC1/C2にならない場合が生じ好ましくない(特許文献1、2、3、4)。
前記球状複合体芯粒子を含む水性媒体中にメラミンを添加する方法において、別に用意した水でメラミンとアルデヒド類とを反応させて調整したメチロールメラミン水溶液の状態で添加するのが好ましい。該水溶液中においてメチロール化反応を急激に進行させるとメチロールメラミンの重縮合反応で溶液が白濁してしまい、球状複合体芯粒子の粒子表面に薄く均一なメラミン樹脂からなる被覆層を形成させるのが困難となるため、重合をある程度進行させた透明なメチロールメラミン水溶液の状態で球状複合体芯粒子を含む水性媒体中に添加するのが好ましい。
前記メラミン被覆層の形成において用いるアルデヒド類は、前記球状複合体芯粒子の生成反応において用いることができるものから選択して用いることができる。
メチロールメラミン水溶液中におけるアルデヒド類のメラミンに対するモル比は1〜10が好ましく、メラミン濃度は5〜50重量%が好ましい。
メチロールメラミン水溶液の調整は、水にメラミンとアルデヒド類とを添加して攪拌しながら反応溶液を40〜80℃の温度範囲まで昇温し、この温度で30〜240分間、好ましくは60〜180分間メチロール化反応を行って生成させる。
このとき、メラミンのメチロール化はゆるやかに反応させることが望ましい。昇温速度は0.5〜1.5℃/minが好ましく、攪拌速度は100〜1000rpmが好ましい。
本発明に用いる酸性触媒としては、酸解離定数pKaが3〜6の弱酸が好適に用いられ、例えば蟻酸、シュウ酸、酢酸等が挙げられるが、酢酸が最も好ましい。複合体粒子を生成させる水性媒体中における酸の含有量は0.5〜3重量%が好ましい。
本発明においては、前記複合体芯粒子を含む水性媒体中に酸性触媒として酸解離定数pKaが3〜6の酸からなる酸性水溶液、及び、メチロールメラミン水溶液を添加することに特徴がある。すなわち、両水溶液を水性媒体中に添加することでメチロールメラミンの反応及び硬化速度が最適になり、強磁性酸化鉄微粒子と硬化したフェノール樹脂とからなる球状複合体芯粒子の粒子表面に薄く均一なメラミン樹脂からなる被覆層を形成させることができる。
酸解離定数pKaが3未満の、例えば塩化アンモニウムのような強酸の塩酸を生成させる酸性触媒ではメラミン樹脂からなる被覆層を均一に形成させることが困難となり、本発明の通りに規定された樹脂指数C1及びC1/C2が得られないため好ましくない(特許文献1、2、3、4)。また、酸解離定数pKaが6を超える場合には、メラミン樹脂からなる被覆層を十分に形成させることが困難となり好ましくない。
また、前記球状複合体芯粒子の粒子表面に薄く均一なメラミン樹脂からなる被覆層を形成させるために、攪拌速度を制御することが望ましい。攪拌速度は100〜1000rpmが好ましい。
本発明の球状複合体粒子の熱処理において、該球状複合体粒子を窒素ガスなどの不活性雰囲気下にて40〜80kPaの減圧度で150℃から250℃の温度範囲で1〜7時間行われることが好ましい。
すなわち、熱処理条件における減圧度や熱処理温度、熱処理時間を制御することで、本発明の通りに規定された樹脂指数C1及びC1/C2を有するメラミン樹脂からなる被覆層を形成させた球状複合体粒子を得ることができる。本発明1から4においては、前記磁性キャリアの表面近傍における樹脂の被覆状態を評価するために、後述する実施例に記載されている「樹脂指数」を用いる。ここで樹脂指数とは、磁性キャリアの粒子の表面近傍において樹脂によって被覆されている割合や厚みの程度に関係する指標である。この樹脂指数により磁性キャリアの最表面の強度、芯材粒子の表面に樹脂被覆層を形成する場合の被覆樹脂との接着性なども評価できる。
前記球状複合体粒子の熱処理において、40kPaを満たさない高い減圧度で行った場合、球状複合体粒子の粒子表面の被覆量が大きく減少してしまったり、薄くなり過ぎたりする場合が生じてしまうため、磁性キャリアの帯電量や電気抵抗値が不十分であったりばらつきが見られる等の弊害が生じたり、電気抵抗値の電圧に対する依存性が大きくなるので一般的には階調性のない画像となり好ましくない。また、最表面における強度が不十分となる場合が生じる。さらに、長期間の使用に伴い被覆層の剥れ等が発生すると、リーク現象によるキャリア付着が発生し易くなるため好ましくない。また、さらに該粒子の表面に樹脂被覆を行った際の樹脂との接着性が悪くなり、樹脂被覆層が均一な状態とならないため好ましくない。また、長期間の使用に伴い被覆層の剥れ等が発生した場合、リーク現象によるキャリア付着が発生し易くなるため好ましくない。一方、80kPaを超える低い減圧度で行った場合、球状複合体粒子の粒子表面の被覆量が多過ぎたり、厚くなり過ぎたりする場合が生じてしまうため、磁性キャリアの帯電量や電気抵抗値が高くなり過ぎてしまい好ましくない。また、さらに該粒子の表面に樹脂被覆を行う際にはアンカー効果が得られにくくなり、磁性キャリアの強度に劣るなどといった問題が生じ好ましくない。よって、40〜80kPaの減圧度で熱処理することがより好ましく、さらにより好ましくは45〜75kPaの減圧度で熱処理することである。
前記球状複合体粒子の熱処理において、250℃を超える熱処理温度で行った場合、球状複合体粒子の粒子表面の被覆量が大きく減少してしまったり、薄くなり過ぎたりする場合が生じてしまうため、磁性キャリアの帯電量や電気抵抗値が不十分であったりばらつきが見られる等の弊害が生じたり、電気抵抗値の電圧に対する依存性が大きくなるので一般的には階調性のない画像となり好ましくない。また、最表面における強度が不十分となる場合が生じる。さらに、長期間の使用に伴い被覆層の剥れ等が発生すると、リーク現象によるキャリア付着が発生し易くなるため好ましくない。また、さらに該粒子の表面に樹脂被覆を行った際の樹脂との接着性が悪くなり、樹脂被覆層が均一な状態とならないため好ましくない。また、長期間の使用に伴い被覆層の剥れ等が発生した場合、リーク現象によるキャリア付着が発生し易くなるため好ましくない。一方、150℃を満たさない熱処理温度で行った場合、球状複合体粒子の粒子表面の被覆量が多過ぎたり、厚くなり過ぎたりする場合が生じてしまうため、磁性キャリアの帯電量や電気抵抗値が高くなり過ぎてしまい好ましくない。また、さらに該粒子の表面に樹脂被覆を行う際にはアンカー効果が得られにくくなり、磁性キャリアの強度に劣るなどといった問題が生じ好ましくない。よって、熱処理温度は150〜250℃で行うことが好ましく、さらに好ましくは170〜230℃である。
前記球状複合体粒子の熱処理において、7時間を越える熱処理時間で行った場合、球状複合体粒子の粒子表面の被覆量が大きく減少してしまったり、薄くなり過ぎたりする場合が生じてしまうため、磁性キャリアの帯電量や電気抵抗値が不十分であったりばらつきが見られる等の弊害が生じたり、電気抵抗値の電圧に対する依存性が大きくなるので一般的には階調性のない画像となり好ましくない。また、最表面における強度が不十分となる場合が生じる。さらに、長期間の使用に伴い被覆層の剥れ等が発生すると、リーク現象によるキャリア付着が発生し易くなるため好ましくない。また、さらに該粒子の表面に樹脂被覆を行った際の樹脂との接着性が悪くなり、樹脂被覆層が均一な状態とならないため好ましくない。また、長期間の使用に伴い被覆層の剥れ等が発生した場合、リーク現象によるキャリア付着が発生し易くなるため好ましくない。一方、1時間を満たさない熱処理時間で行った場合、球状複合体粒子の粒子表面の被覆量が多過ぎたり、厚くなり過ぎたりする場合が生じてしまうため、磁性キャリアの帯電量や電気抵抗値が高くなり過ぎてしまい好ましくない。また、さらに該粒子の表面に樹脂被覆を行う際にはアンカー効果が得られにくくなり、磁性キャリアの強度に劣るなどといった問題が生じ好ましくない。よって、熱処理時間は1〜7時間で行うことが好ましく、さらに好ましくは2〜6時間である。
なお、不活性雰囲気とするためには、不活性ガスを使用するのが好ましい。不活性ガスとしては例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス等を使用することができるが、工業的には、窒素ガスを吹き込みながら加熱処理を行うことがコスト的に有利であり、特性の安定したものが得られる。
また、メラミン樹脂は正帯電性であることから、磁性キャリアの正帯電性を高めることができる。
また、メラミン樹脂は硬質な膜を形成することから、磁性キャリアの耐久性を高めることができる。
本発明に係る磁性キャリアは、複合体粒子の粒子表面を樹脂によって被覆されていても良い。
本発明に用いる被覆樹脂は特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン;アクリル樹脂;ポリアクリロニトリル;ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン系樹脂又はその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素・ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素−ポリアミド樹脂、フッ素−ポリイミド樹脂、フッ素−ポリアミドイミド樹脂、などを挙げることができる。
本発明5に係る磁性キャリアは、複合体粒子の粒子表面をシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂から選ばれる1種又は2種以上の樹脂で被覆することが好ましい。粒子表面を低い表面エネルギーを有するシリコーン系樹脂で被覆することによって、トナーのスペント化を抑制することができる。また、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂ともに、コア粒子との接着性及び帯電性向上の効果を有する。
シリコーン樹脂としては、従来から知られているシリコーン樹脂が使用可能である。具体的には、オルガノシロキサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂、及び、該ストレートシリコーン樹脂をアルキッド、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどで変性したシリコーン樹脂が挙げられる。
アクリル系樹脂としては、メチルメタクリレート、メチルエタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート等のアルキルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のシクロアルキルアクリレート、フェニルメタクリレート等の芳香族アクリレート、これらとアクリル酸の共重合体、グリシジルメタクリレート等のエポキシ化合物との共重合体、グリセリンモノメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系化合物との共重合体等が挙げられ、キャリアとしたときの環境依存性等の点からメチルメタクリレート、エチルエタクリレート等の短鎖アルキルアクリレートが好ましい。
スチレン−アクリル系樹脂としては、前記アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体等が挙げられ、高温高湿環境下と低温低湿環境下での帯電の差が小さい等の点からスチレンと短鎖アルキルメタクリレートとの共重合体が好ましい。
本発明に係る磁性キャリアの樹脂による被覆量は、複合体粒子に対して0.1〜5.0重量%が好ましい。被覆量が0.1重量%未満の場合には、十分に被覆することが困難となり、コートむらが生じることがある。また、5.0重量%を越える場合には、樹脂の被覆を複合体粒子表面に密着させることはできるが、生成した複合体粒子同士の凝集が生じ、複合体粒子の粒子サイズの制御が困難になる。好ましくは0.3〜3.0重量%である。
本発明における樹脂被覆は、樹脂被覆層中に微粒子を含有させても良い。前記微粒子としては、例えばトナーに負帯電性を付与させるものとして、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ニグロシン系染料、ポリアミン樹脂などによる微粒子が好ましい。一方、トナーに正帯電性を付与させるものとして、Cr、Co等金属を含む染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物などによる微粒子が好ましい。なお、これらの粒子は1種単独で使用して良いし、2種以上を併用しても良い。
また、本発明における樹脂被覆は、樹脂被覆層中に導電性微粒子を含有させても良い。樹脂中に導電性微粒子を含有させることが、磁性キャリアの抵抗を容易に制御することができる点で好ましい。前記導電性微粒子としては公知のものが使用可能であり、例えばアセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、Si、Ti等の金属炭化物、B、Ti等の金属窒化物、Mo、Cr等の金属ホウ化物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してよいし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。
芯材粒子の粒子表面に樹脂を被覆する場合には、周知のスプレードライヤーを用いて球状複合体粒子に樹脂を吹き付ける方法、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー等を用いて球状複合体粒子と樹脂とを乾式混合する方法、樹脂を含む溶剤中に球状複合体粒子を含浸する方法等によって行えばよい。
次に、本発明に係る二成分系現像剤について述べる。
本発明のキャリアと組み合わせて使用するトナーとしては、公知のトナーを使用することができる。具体的には、結着樹脂、着色剤を主構成物とし、必要に応じて離型剤、流動化剤などを添加したものを使用できる。又、トナーの製造方法は公知の方法を使用できる。
<作用>
本発明において重要な点は、少なくとも強磁性酸化鉄微粒子と硬化したフェノール樹脂とからなる平均粒径20〜60μmの球状複合体芯粒子からなる電子写真現像剤用磁性キャリアであって、
当該電子写真現像剤用磁性キャリアの平均粒径近傍の粒径を有するキャリア粒子の飽和磁化をσ0(Am2/kg)、20μmよりも小さな粒径を有するキャリア粒子の飽和磁化をσ1(Am2/kg)としたとき、下記式(1)を満足することを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリアであるという点である。
σ1−σ0=−2〜0 (1)
本発明においては、磁性キャリアの磁化値のばらつきを小さくすることによって、耐久性があり、キャリア付着を発生させず、高品位な画像を長く維持することが可能になった。
本発明2においては、磁性キャリアの磁化値のばらつきが小さく、かつ、前記球状複合体芯粒子の粒子表面に形成されたメラミン樹脂からなる被覆層の被覆率を制御することによって所望の帯電量、電気抵抗値及び最表面における強度を得ることができるので、耐久性があり、キャリア付着を発生させず、高品位な画像を長く維持することが可能になった。
本発明5に係る樹脂被覆した磁性キャリアは、磁性キャリアの磁化値のばらつきが小さいので、耐久性があり、キャリア付着を発生させず、高品位な画像を長く維持することが可能になった。
本発明6に係る二成分系現像剤は耐久性があり、キャリア付着を発生させず、高品位な画像を長く維持することができ、特に、芯材電気抵抗の影響を受け易い高電圧において、電荷のリーク現象によるベタ部へのハケスジの発生や階調性に劣る等の画像欠陥を抑制したり、キャリアの長期使用に伴う被覆樹脂の削れ又は剥離による経時劣化を抑えることが可能となった。
本発明の代表的な実施例は次の通りである。
粒子粉末の平均粒径はレーザー回折式粒度分布計LA750((株)堀場製作所製)により計測して体積基準による値で示した。また、粒子の粒子形態は、走査型電子顕微鏡S−4800((株)日立製作所製)で観察したものである。
キャリア粒子の飽和磁化σ0、σ1及びσ2は以下のように求めた。
すなわち、キャリア粒子の平均粒径が20〜30μmの場合はキャリア粒子を目開き20μmと38μmの試験用ふるいを用いて篩にかけ、キャリア粒子の平均粒径が30〜40μmの場合はキャリア粒子を目開き25μmと45μmの試験用ふるいを用いて篩にかけ、キャリア粒子の平均粒径が40〜50μmの場合はキャリア粒子を目開き32μmと53μmの試験用ふるいを用いて篩にかけ、キャリア粒子の平均粒径が50〜60μmの場合はキャリア粒子を目開き45μmと63μmの試験用ふるいを用いて篩にかけ、得られた各粒子を平均粒径近傍の粒径を有するキャリア粒子とみなし、それらの外部磁場795.8kA/mのもとで測定した飽和磁化をσ0とした。
また、キャリア粒子を目開き20μmの試験用ふるいを用いて篩にかけ、得られた篩下の粒子を20μm以下の粒子とみなし、外部磁場795.8kA/mのもとで測定した飽和磁化をσ1とし、キャリア粒子を目開き75μmの試験用ふるいを用いて篩にかけ、得られた篩上の粒子を75μm以上の粒子とみなし、外部磁場795.8kA/mのもとで測定した飽和磁化をσ2とした。
本発明における磁性キャリアの篩い分けは以下の通りに行った。
1.電磁式ふるい振とう機(Retsch社製 型式AS200DIGIT,60Hz)に、各目開きの試験用ふるいを取り付けた。2種類の試験用ふるいを取り付ける場合は、受け皿を置き、目開きの小さい順に積み重ね、一番上には蓋を置き、振とう機にセットする。試験用ふるいとしては、東京スクリーン株式会社製のTest sieves試験用ふるい(JIS Z 8801,φ200mm×45mmH)を用いた。目開き20,25,32,38,45,53,63,75μmの内、目開き20,25,32,38μmの網は綾織のものを使用している。
2.一番上の試験用ふるいに磁性キャリア30gを投入し、タイマーを5分、振幅が1.5mmになるようにamplitudeつまみを調整し連続で振動させた。
3.σ1測定用の磁性キャリアは目開き20μmの篩下のキャリアをサンプリングし、σ2測定用の磁性キャリアは目開き75μmの篩上のキャリアをサンプリングし、σ0測定用の磁性キャリアはセットした2種類の篩の内、下側にセットした篩上のキャリアをサンプリングした。この篩い分けられた磁性キャリアを、飽和磁化を測定する試料として使用した。これら1度の操作で飽和磁化の測定に要する量が得られない場合には、篩い分けを複数回繰り返すことで必要量の磁性キャリアを採取した。
飽和磁化及び残留磁化は、振動試料型磁力計VSM−3S−15(東英工業(株)製)を用いて外部磁場795.8kA/m(10kOe)のもとで測定した値で示した。
樹脂指数C1及びC2は、以下の装置、条件により評価した。走査型電子顕微鏡S−4800((株)日立製作所製)を用いて、加速電圧1kVもしくは2kV、倍率15000倍にて、粒子個数として10粒子以上の反射電子像を観察した。得られた反射電子像は、画像解析ソフトにより2値化処理して、コントラストにより強磁性酸化鉄微粒子とそれ以外の部分を識別し、強磁性酸化鉄微粒子以外の部分を樹脂部分とみなし、複合体芯粒子、複合体粒子それぞれの反射電子像の全面積に対する樹脂部分の面積率を次式で算出し、樹脂指数(%)とした。このとき、加速電圧1kVのときの樹脂指数をC1、加速電圧2kVのときの樹脂指数をC2とする。なお、画像処理ソフトとしては、通常のソフトが使用でき、本発明では、「画像解析ソフトA像くん(旭化成エンジニアリング製)」を使用した。
樹脂指数C(%)=100−(強磁性酸化鉄微粒子部分の面積/複合体芯粒子又は複合体粒子の反射電子像の全面積×100)
本方法で粒子表面の強磁性酸化鉄微粒子とそれ以外の成分が識別できるかの原理について述べる。まず走査型電子顕微鏡の一般的な形状観察のための二次電子ではなく、反射電子を解析することで、反射電子の原子番号効果により強磁性酸化鉄微粒子とそれ以外の成分のコントラスト差を画像となって検出できる。原子番号効果は検出する試料の原子番号が大きくなるほど反射電子の放出量が多くなり、コントラストとして白く検出される効果である。その結果、強磁性酸化鉄微粒子部分が白いコントラストで、それ以外の成分部分がグレーから黒いコントラストで観察できる。加速電圧を1kVとすることで電子線の分析深さを浅くし、粒子の表面近傍における樹脂の量を正確に解析することが可能となった。さらに加速電圧を2kVにして電子線の分析深度を深くすることで、粒子表面における樹脂被覆層の厚さに対する情報を得ることが可能となった。
電気抵抗値(体積固有抵抗値)は、ハイレジスタンスメーター4339B(横河ヒューレットパッカード製)で測定した値で示した。
強磁性酸化鉄微粒子粉末の圧縮密度CDの測定は以下の通りに行った。
秤量した試料(25g)を25mmφの円筒形金型に入れ、中で試料状態が均一になるように整える。所定の圧力(1t/cm2)を加圧した後、金型中の試料の高さを測定し、プレス後の試料体積Vを求め、下記式より圧縮密度CDを算出する。
CD=W/V
CD:圧縮密度(g/cm3)
W :試料重量(g)
V :プレス後の試料体積(cm3)
磁性キャリアの形状係数SF1及びSF2は下記手順に従って測定した。
形状係数を示すSF1、SF2とは、例えば走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製(S−4800))を用い300倍に拡大したキャリア粒子像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報はインターフェースを介して、例えばニレコ社製画像解析装置(Luzex AP)に導入し解析を行い、下式より算出し得られた値を形状係数SF1、SF2と定義する。
SF1=(粒子の絶対最大長)2/(粒子の投影面積)×(π/4)×100
SF2=(粒子の周囲長)2/(粒子の投影面積)×(1/4π)×100
形状係数SF1は粒子の丸さの度合いを示し、形状係数SF2は粒子の凹凸の度合いを示しているため、円(球形)から離れるとSF1は値が大きくなり、表面の凹凸の起伏が大きくなるとSF2の値も大きくなる。それぞれの値は、真円(球)に近づくにつれて100に近い値となる。
嵩密度は、JIS K5101に記載の方法に従って測定した。
真比重はマルチボリウム密度計1305型(マイクロメリティクス/島津製作所製)で測定した値で示した。
水分量の測定はカールフィッシャー電量滴定法にて行う。測定機器は平沼産業(株)社製の微量水分測定装置AQ−2100を用いた。24℃、60%RH環境下に24時間以上放置して調湿した試料1gをガラス製のサンプル管に精秤し、アルミ箔で蓋をする。(このとき、空気中に含まれる水分量を補正するために、同様に蓋をした空のサンプル管を用意する。)
加熱温度150℃、キャリアガス(窒素ガス)流量100ml/minの条件にて、微量水分測定装置AQ−2100に接続された水分気化装置(平沼産業(株)社製,EV−2010)から送られてきた水をINTERVAL=30秒、TIMER=1分の条件で滴定をおこなった。発生液はリーデル・デ・ヘーエン社製ハイドラナールアクアライトRS、対極液は関東化学(株)製アクアライトCNを用いた。
トナーの帯電量は、磁性キャリア95重量部と下記の方法により製造したトナー5重量部を十分に混合し、ブローオフ帯電量測定装置TB−200(東芝ケミカル社製)を用いて測定した。
(トナー製造例)
ポリエステル樹脂 100重量部
銅フタロシアニン系着色剤 5重量部
帯電制御剤(ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛化合物) 3重量部
ワックス 9重量部
上記材料をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸押出式混練機により溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて粉砕、分級して重量平均粒径7.4μmの負帯電性青色粉体を得た。
上記負帯電性青色粉体100質量部と疎水性シリカ1重量部をヘンシェルミキサーで混合して負帯電性シアントナーaを得た。
〔磁性キャリアの強制劣化テスト〕
磁性キャリア50gを100ccのガラス製サンプル瓶の中に入れ、ふたをした後、ペイントコンディショナー(RED DEVIL社製)にて、24時間振とうさせる。振とう前後の各々のサンプルについて帯電量及び電気抵抗値を測定し、走査型電子顕微鏡S−4800((株)日立製作所製)により粒子表面の剥れ等を確認した。
強制劣化テスト前後の帯電量は、下記式で示したように、振とう前後の各々のサンプルについて常温常湿下(24℃,60%RH)の帯電量の変化幅を%で表わし、以下の評価基準で行なった。現像剤は本発明の磁性キャリアを95重量部と負帯電性シアントナーaを5重量部とを十分に混合して調整した。
帯電量の変化率(%)=(1−Q/QINI)×100
QINI:強制劣化テスト前の帯電量
Q:強制劣化テスト後の帯電量
A:強制劣化テスト前後の変化率が0%以上5%未満
B:強制劣化テスト前後の変化率が5%以上10%未満
C:強制劣化テスト前後の変化率が10%以上20%未満
D:強制劣化テスト前後の変化率が20%以上30%未満
E:強制劣化テスト前後の変化率が30%以上
電気抵抗値は、下記式で示したように、振とう前後の各々のサンプルについて常温常湿下(24℃,60%RH)の電気抵抗値の変化率を表わし、以下の評価基準で行なった。
電気抵抗値の変化率=Log(RINI/R)
RINI:印加電圧100Vにおける強制劣化テスト前の電気抵抗値
R:印加電圧100Vにおける強制劣化テスト後の電気抵抗値
A:強制劣化テスト前後の変化率が−0.5以上0未満
B:強制劣化テスト前後の変化率が0以上0.5未満
C:強制劣化テスト前後の変化率が0.5以上1未満
D:強制劣化テスト前後の変化率が1以上1.5未満
E:強制劣化テスト前後の変化率が1.5以上
走査型電子顕微鏡S−4800((株)日立製作所製)による粒子表面の剥れ等は下記3段階で評価した。B以上が問題ないレベルと判断した。
A:被覆層の剥れや磨耗等が無し
B:被覆層の剥れや磨耗等がわずかに有り
C:被覆層の剥れや磨耗等が極めてひどい
〔マシン評価における被覆樹脂キャリアの評価〕
現像剤は本発明の磁性キャリアを95重量部と負帯電性シアントナーaを5重量部とを十分に混合して調整した。マシン評価はエプソン製LP8000Cを改造して用い、24℃、60%RHの常温常湿下でバイアス電圧を変えて、画像比率10%のオリジナル原稿を用いてマシン評価を行った。
前記マシン評価に基づいて1000枚(初期)の耐久画像出力を行った後、感光体上に粘着テープを密着させてサンプリングし、光学顕微鏡により観察することにより、1cm×1cm中の感光体に付着していた磁性キャリアの個数をカウントし、1cm2当たりに付着しているキャリアの付着個数を算出した。以下の評価基準に従って、キャリア付着について評価した。
A:3個未満 :非常に良好
B:3個以上、5個未満 :良好
C:5個以上、10個未満 :実用上可能レベル
D:11個以上 :不可レベル
〔強磁性酸化鉄微粒子の製造:強磁性酸化鉄微粒子1〕
従来公知の方法で得られた球状で平均粒径が0.24μmの強磁性酸化鉄微粒子を含むスラリー溶液をデカンテーションした後、ボールミルで湿式粉砕を行い、次いで、気流乾燥機を用いて乾燥させることで球状の強磁性酸化鉄微粒子を得た。
次に、フラスコに球状の前記強磁性酸化鉄微粒子1000gを仕込み十分に良く攪拌した後、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤(商品名:KBM−403 信越化学社製)7.0gを添加し、約100℃まで昇温し30分間良く混合攪拌することによりカップリング剤で被覆されている球状強磁性酸化鉄微粒子1を得た。
得られた強磁性酸化鉄微粒子1は、飽和磁化値86.0Am2/kg、圧縮密度2.5g/cm3であった。
強磁性酸化鉄微粒子2:
強磁性酸化鉄微粒子1の製造条件において、従来公知の方法で得られた球状で平均粒径が0.16μmの強磁性酸化鉄微粒子を含むスラリー溶液をフィルターシックナーを用いて可溶性塩を除去させる以外は、前記強磁性酸化鉄微粒子1と同一の条件で操作を行って球状の強磁性酸化鉄微粒子2を得た。
強磁性酸化鉄微粒子2の製造条件及び諸特性を表1に示す。
強磁性酸化鉄微粒子3:
強磁性酸化鉄微粒子1の製造条件において、従来公知の方法で得られた球状で平均粒径が0.35μmの強磁性酸化鉄微粒子を含むスラリー溶液を凍結乾燥機を用いて乾燥させる以外は、前記強磁性酸化鉄微粒子1と同一の条件で操作を行って球状の強磁性酸化鉄微粒子3を得た。
強磁性酸化鉄微粒子3の製造条件及び諸特性を表1に示す。
強磁性酸化鉄微粒子4:
強磁性酸化鉄微粒子1の製造条件において、従来公知の方法で得られた球状で平均粒径が0.52μmの強磁性酸化鉄微粒子を含むスラリー溶液を真空乾燥機を用いて乾燥させる以外は、前記強磁性酸化鉄微粒子1と同一の条件で操作を行って球状の強磁性酸化鉄微粒子4を得た。
強磁性酸化鉄微粒子4の製造条件及び諸特性を表1に示す。
強磁性酸化鉄微粒子5:
強磁性酸化鉄微粒子5は、従来公知の方法で得られた球状で平均粒径が0.23μmの強磁性酸化鉄微粒子を含むスラリー溶液を、湿式粉砕を行わずに気流乾燥機を用いて乾燥を行った以外は強磁性酸化鉄微粒子1と同一の条件で操作を行って球状の強磁性酸化鉄微粒子5を得た。
強磁性酸化鉄微粒子5の製造条件及び諸特性を表1に示す。
強磁性酸化鉄微粒子6:
強磁性酸化鉄微粒子6は、従来公知の方法で得られた球状で平均粒径が0.50μmの強磁性酸化鉄微粒子を含むスラリー溶液をプレスフィルターにかけた後、ボールミルで湿式粉砕を行い、次いで、ろ過、水洗したペーストを静置式乾燥機を用いて乾燥させる以外は強磁性酸化鉄微粒子1と同一の条件で操作を行って球状の強磁性酸化鉄微粒子6を得た。
強磁性酸化鉄微粒子6の製造条件及び諸特性を表1に示す。
強磁性酸化鉄微粒子7:
従来公知の方法で得られた球状で平均粒径が1.03μmの強磁性酸化鉄微粒子を含むスラリー溶液を用いる以外は、前記強磁性酸化鉄微粒子2と同一の条件で操作を行って球状の強磁性酸化鉄微粒子7を得た。
強磁性酸化鉄微粒子7の製造条件及び諸特性を表1に示す。
強磁性酸化鉄微粒子8:
フラスコに、得られた強磁性酸化鉄微粒子3を70重量部と強磁性酸化鉄微粒子7を30重量部仕込み、250rpmの攪拌速度で30分間良く混合攪拌することで球状の強磁性酸化鉄微粒子8を得た。
得られた強磁性酸化鉄微粒子8は、飽和磁化値85.8Am2/kg、圧縮密度2.9g/cm3であった。
実施例1:
〔球状複合体芯粒子の製造〕
フェノール 11重量部
37%ホルマリン 14重量部
強磁性酸化鉄微粒子1 100重量部
25%アンモニア水 5重量部
水 19重量部
上記材料をフラスコに入れ、250rpmの攪拌速度で攪拌しながら60分間で85℃に昇温させた後、同温度で120分間反応・硬化させることにより、強磁性酸化鉄微粒子とバインダ樹脂からなる複合体芯粒子の生成を行った。
次に、フラスコ内の内容物を30℃まで冷却後、上澄み液を除去し、さらに下層の沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを窒素ガス雰囲気に、60kPaの減圧下にて210℃で4時間熱処理することにより球状複合体芯粒子1を得た。
ここに得られた球状複合体芯粒子1は、平均粒径が54μmであり、嵩密度1.82g/cm3、比重3.56g/cm3、飽和磁化値74.0Am2/kg、σ1−σ0が−1.1、σ2−σ0が−1.2、樹脂指数C1が57%であった。
実施例2〜6、比較例1〜3:
球状複合体芯粒子の製造条件を種々変化させた以外は、球状複合体芯粒子1と同一の条件で操作を行って球状複合体芯粒子2〜9を得た。得られた球状複合体芯粒子の仕様を表2に示す。
得られた球状複合体芯粒子2〜9の諸特性を表3に示す。
実施例7:
〔球状複合体粒子の製造〕
フェノール 13重量部
37%ホルマリン 15重量部
強磁性酸化鉄微粒子1 100重量部
25%アンモニア水 4重量部
水 17重量部。
上記材料をフラスコに入れ、250rpmの攪拌速度で攪拌しながら60分間で85℃に昇温させた後、同温度で120分間反応・硬化させることにより、強磁性酸化鉄微粒子とバインダ樹脂からなる複合体芯粒子の生成を行った。
別途、水0.4重量部と99%氷酢酸水溶液0.6重量部とからなる酸性触媒を調整した。
別途、水1.6重量部、メラミン粉末0.6重量部、37%ホルマリン1.4重量部とからなる水溶液を250rpmの攪拌速度で攪拌しながら60分間で約60℃まで上昇した後、約40分間攪拌することにより透明なメチロールメラミン溶液を調整した。
次に、攪拌速度250rpmで攪拌し反応温度を85℃に維持している前記複合体芯粒子を含む反応溶液内に、前記酸性触媒及び前記透明なメチロールメラミン溶液を添加した後、120分間反応させ、球状複合体芯粒子の粒子表面にメラミン樹脂からなる被覆層が形成された球状複合体粒子を得た。
次に、フラスコ内の内容物を30℃まで冷却後、上澄み液を除去し、さらに下層の沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを窒素ガス雰囲気に、65kPaの減圧下にて230℃で4時間熱処理することにより球状複合体粒子1を得た。
ここに得られた球状複合体粒子1は、平均粒径が40μmであり、嵩密度1.93g/cm3、比重3.55g/cm3、飽和磁化値72.7Am2/kg、σ1−σ0が−1.1、σ2−σ0が−1.2、樹脂指数C1が63%、C1/C2が1.27であった。
ここに得られた球状複合体粒子1の製造条件を表4に、諸特性及び強制劣化テストの結果を表5に示す。
球状複合体粒子1の強制劣化テストにおける帯電量及び電気抵抗値の変化率は小さく、粒子表面の剥れ等はほとんど見られなかった。
実施例8〜18、比較例4〜9:
球状複合体粒子1の製造条件を種々変化させた以外は、前記実施例7と同一の条件で操作を行って球状複合体粒子2〜18を得た。
得られた球状複合体粒子2〜18の製造条件を表4に、得られた球状複合体粒子の諸特性及び強制劣化テストの結果を表5に示す。
〔樹脂被覆キャリアの製造〕
実施例19:
窒素気流下、ヘンシェルミキサー内に、前記球状複合体芯粒子1を1kg、アクリル系樹脂(商品名:BR80 三菱レイヨン社製)を固形分として10g及びカーボンブラック(商品名:トーカブラック♯4400 東海カーボン社製)を1.5g添加し、50〜150℃の温度で1時間攪拌してカーボンブラックを含有したアクリル系樹脂からなる樹脂被覆層の形成を行った。
ここに得られた樹脂被覆キャリア1は、平均粒径が54μmであり、嵩密度1.78g/cm3、比重3.52g/cm3、飽和磁化値73.8Am2/kg、電気抵抗値9.5×1011Ω・cmであった。
実施例20、比較例10:
球状複合体芯粒子の種類を変化させた以外は、実施例19と同一の条件で操作を行って樹脂被覆キャリアを得た。
実施例20、比較例10で得られた樹脂被覆キャリアの製造条件、及び、得られた樹脂被覆キャリアの諸特性を表6に示す。
実施例21:
窒素気流下、ヘンシェルミキサー内に、前記球状複合体芯粒子3を1kg、シリコーン系樹脂(商品名:KR251 信越化学社製)を固形分として10g及びカーボンブラック(商品名:トーカブラック♯4400 東海カーボン社製)を1.5g添加し、50〜150℃の温度で1時間攪拌して、カーボンブラックを含有したシリコーン系樹脂からなる樹脂被覆層の形成を行った。
ここで得られた樹脂被覆キャリア3の製造条件、及び、得られた樹脂被覆キャリアの諸特性を表6に示す。
実施例22、比較例11:
球状複合体芯粒子の種類を変化させた以外は、実施例21と同一の条件で操作を行って樹脂被覆キャリアを得た。
実施例22、比較例11で得られた樹脂被覆キャリアの製造条件、及び、得られた樹脂被覆キャリアの諸特性を表6に示す。
実施例23:
窒素気流下、ヘンシェルミキサー内に、前記球状複合体芯粒子5を1kg、スチレン−メチルメタクリレート共重合体(商品名:BR50 三菱レイヨン社製)を固形分として10g及びカーボンブラック(商品名:トーカブラック♯4400 東海カーボン社製)を1.5g添加し、50〜150℃の温度で1時間攪拌してカーボンブラックを含有したスチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂からなる樹脂被覆層の形成を行った。
ここで得られた樹脂被覆キャリア5の製造条件、及び、得られた樹脂被覆キャリアの諸特性を表6に示す。
実施例24、比較例12:
球状複合体芯粒子の種類を変化させた以外は、実施例23と同一の条件で操作を行って樹脂被覆キャリアを得た。
実施例24、比較例12で得られた樹脂被覆キャリアの製造条件、及び、得られた樹脂被覆キャリアの諸特性を表6に示す。
得られた実施例19〜24及び比較例10〜12の強制劣化テストの結果を表6に示す。何れも強制劣化テストにおける帯電量及び電気抵抗値の変化率は小さく、粒子表面の剥れ等はほとんど見られなかった。
実施例25〜28、比較例13、比較例15:
球状複合体粒子の種類を変化させた以外は、実施例19と同一の条件で操作を行って樹脂被覆キャリアを得た。
実施例25〜28、比較例13、比較例15で得られた樹脂被覆キャリアの製造条件、及び、得られた樹脂被覆キャリアの諸特性を表7に示す。
実施例29〜32、比較例14、比較例16:
球状複合体粒子の種類を変化させた以外は、実施例21と同一の条件で操作を行って樹脂被覆キャリアを得た。
実施例29〜32、比較例14、比較例16で得られた樹脂被覆キャリアの製造条件、及び、得られた樹脂被覆キャリアの諸特性を表7に示す。
実施例33〜36、比較例17〜18:
球状複合体粒子の種類を変化させた以外は、実施例23と同一の条件で操作を行って樹脂被覆キャリアを得た。
実施例33〜36、比較例17〜18で得られた樹脂被覆キャリアの製造条件、及び、得られた樹脂被覆キャリアの諸特性を表7に示す。
上記マシン評価により、本発明に係る磁性キャリア及び現像剤は、耐久性があり、キャリア付着を発生させず、高品位な画像を長く維持できることが確認された。