実施例1に係るシートベルト装置について、図1〜図12に基づき説明する。
図1は、車両1の運転席におけるシートベルト装置10の装備状態を示している。図1に示すように、シートベルト装置10は、乗員11の身体を座席12に拘束するベルト13(シートベルト、ウェビングとも言う。)を備える。
ベルト13は、乗員11の上体を拘束するショルダベルト部13aと、乗員11の腰部を拘束するラップベルト部13bとから成る。ラップベルト部13bの一端は、アンカープレート14により車室下部の車体部分に固定されている。ショルダベルト部13aは、乗員11の肩近傍の箇所に設けられたスルーアンカー15で折り返され、その端部はリトラクタ16のベルトリールに連結されている。ベルト13の他方の共通端部(折返し部)にはタングプレート17が取り付けられている。このタングプレート17は、座席12の下側縁部に固定されたバックル18に着脱自在である。
バックル18には、バックルスイッチ19が設けられている。このバックルスイッチ19は、バックル18にタングプレート17が装着されていることを検知したときに、オン信号を発する。オン信号のときに、ベルト13は装着状態である。一方、バックルスイッチ19は、バックル18からタングプレート17が外されていることを検知したときに、オフ信号を発する。オフ信号のときに、ベルト13は非装着状態(外れた状態)である。
上記構成において、座席12は運転席の例を示し、乗員11は運転者である。図1に示すドア201は、車両1の右側前部の運転席ドアである。運転席ドア201は、運転者11が乗降するときに開閉される。運転席ドア201には、この運転席ドア201の開閉状態を検知するためのドア開閉状態検知部202が適宜な箇所に付設されている。このドア開閉状態検知部202は、ドア201が閉じていることを検知したときにオン信号を発する、ドアスイッチから成る。ドア開閉状態検知部202の設置箇所は任意である。
また、車両1には、走行状態検知部203及びイグニションスイッチ204が設けられている。走行状態検知部203は、車両1の走行状態(走行、停止)を検知するものであり、例えば車速を検知する車速センサから成る。イグニションスイッチ204は、図示せぬ走行用動力源(エンジンやモータ)を始動するための周知のメインスイッチである。
なお、シートベルト装置10及びドア201に関する上記の構成は、助手席、後部座席であっても同じように構成することができる。
図2はリトラクタ16の要部構成を模式的に示している。リトラクタ16は、ハウジング21内に回転自在に設けられたベルトリール22と、ベルトリール22を回転駆動する電気モータ23(以下、単に「モータ23」と言う)とを備える。ベルトリール22には、ベルト13における上記ショルダベルト部13aの端部が結合されている。ショルダベルト部13aは、ベルトリール22によって巻き取られるように構成されている。ベルトリール22の軸22aは、動力伝達機構(ギヤ機構)24を介してモータ23の駆動軸23aに接続される。モータ23は、動力伝達機構24を介してベルトリール22を回転駆動する。また、リトラクタ16は、ベルトリール22の軸22aに接続された回転検知部25を備える。
回転検知部25は、好ましくは、回転角センサを利用して構成される。この回転角センサには、例えば、磁気ディスクと2個のホールICとを組み合わせて成る、磁気センサが利用される。この回転角センサの最小分解角度は例えば4°であり、ベルトの長さに換算すると1.3〜1.6mm程度である。
図3〜図5を参照して、回転検知部25の一例として回転角センサを利用した構成を説明する。
図3及び図4に示すように、回転角センサとして例えば磁気センサが利用されている。この磁気センサ(回転検知部25)において、円板形状の磁気ディスク101における中心部は、図2に示すベルトリール22の軸22aに連結されている。磁気ディスク101は、ベルトリール22の軸22aの回転動作と連動して回転する。
磁気ディスク101の円周縁部に沿った環状領域には、微小なN極領域102aとS極領域102bを交互に配列した磁極配列部102が形成されている。磁気ディスク101における環状の磁極配列部102は、通常、磁化作用で作られる。磁極配列部102におけるN極領域とS極領域の各々の大きさは、上記のごとき所定の最小分解角度を実現するために必要な程度に設定される。
磁気ディスク101の磁極配列部102に対応して、磁極配列部102のN極領域102aとS極領域102bの各々に対して磁気的に感応する、2つのホールIC103,104が適宜な位置に配置されている。磁気ディスク101に近接して配置された2つのホールIC103,104は、それぞれ、ホールIC同士の位置関係と、感応する磁気ディスク101の磁極配列部102の各磁極との関係に基づいて、位相的に所定量だけずれた2つの相の異なるパルス信号P1,P2を出力する。
2つのパルス信号P1,P2は、そのパルスの生じる位相的関係に基づいてベルトリール22の軸22aの回転方向(巻取り方向かまたは引出し方向か)を検知することが可能となる。換言すれば、2つのパルス信号P1,P2は、ベルトリール22の軸22aの回転方向に応じて先後関係が反転するという特性を有している。
さらに、2つのパルス信号P1,P2のいずれかを用いて、発生したパルス数を計数することにより、ベルトリール22の軸22aの回転動作で生じた回転角(回転位置、回転量)を検知することが可能となり、さらにその変化量によって回転速度を演算することにより回転速度を検知することが可能となる。
図5に示すように、回転検知部25が発した2つのパルス信号P1,P2は、制御装置26に入力される。制御装置26は、回転検知部25から受けた2つのパルス信号P1,P2を利用して、下記に説明する所要の信号処理を行うための機能部110、つまり、回転状態検知部110を有している。
回転状態検知部110は、2つのパルス信号P1,P2に基づいて、ベルト13が巻回されたベルトリール22の回転状態(または回転動作状態)を検知する構成である。ここで、「回転状態(または回転動作状態)」は、上記の回転方向と回転角(回転位置、回転量)を含む概念であり、さらにはベルトリール22のベルト巻取り位置、ベルト巻取り位置の変化等を含む概念である。
回転状態検知部110は、回転方向検知部111と回転角検知部112を含んでいる。回転方向検知部111は、ベルトリール22の回転方向を検知して、回転方向信号を発する。回転角検知部112は、ベルトリール22の回転角を検知して、回転角信号(回転位置信号)を発する。
また、回転状態検知部110の次段には、回転角変化検知部113が設けられている。この回転角変化検知部113は、回転角検知部112が発した回転角信号の変化状態を検知することによって、ベルトリール22の回転角の変化を検知し、この回転角の変化に係る信号、つまり、回転角変化信号(回転速度信号)を発するものである。単位時間当たりの回転角の変化を求めることにより、ベルトリール22の回転速度に係る信号を得ることが可能となる。回転角変化検知部113から出力された回転角変化に係る信号は、ベルトリール22によるベルト13(図1参照)の巻取り位置を検知する情報として用いられる。リトラクタ16のベルト巻取り動作は、上述のベルト巻取り位置の検知情報に基づいて、制御装置26によって制御される。
図2に示すように、制御装置26は、電源27からモータ23へ供給される駆動電流Ibをモータ駆動制御部28(通電量調整部28)で制御することにより、リトラクタ16のベルト巻取り動作等を制御する。また、モータ23へ供給される駆動電流Ib(通電量Ib)は、電流値検知部63によって検知され、その検知信号が制御装置26に発せられる。制御装置26により制御されるリトラクタ16は、乗員11(図1参照)の姿勢を保持するための電気式プリテンショナ機構部として構成されている。
以上の説明をまとめると、次の通りである。図5に示すように、回転検知部25が発した位相の異なる2つの検知信号(パルス信号)P1,P2は制御装置26に入力される。制御装置26は、これらの検知信号P1,P2に基づいて、最終的に回転方向信号と回転位置信号と回転速度信号を取り出すために、所要の演算処理を実行する。つまり、制御装置26は、回転状態検知部110及び回転角変化検知部113を含んだ構成(各検知部110,113の機能部分が設けられた構成)である。また、回転検知部25と、制御装置26に設けられた回転状態検知部110とによって、巻取り・引出し検知部62が構成される。
図2に示すように、リトラクタ16の動作は、制御装置26の各種の制御機能によって制御される。制御装置26は、電源27からモータ23へ供給される通電量(駆動電流Ib)をモータ駆動制御部28で制御することにより、リトラクタ16によるベルト13の引き込み(巻取り)または引き出し(送り出し)等の動作を制御する。
図1に示す座席12に座った乗員11は、車両1の緊急時や走行状態の不安定時に、ベルト13による保護・拘束を受け、姿勢や位置の変化を抑止され、望ましい安全状態に保持される。
以上の構成を有する上記のシートベルト装置10及びリトラクタ16等は運転席側の装置であったが、特に助手席側にも同様なシートベルト装置及びリトラクタ等が装備されている。以下、運転席側と助手席側とを区別して説明する場合には、運転席側を「R側」と言い、助手席側を「L側」と言うことにする。また、運転席側の部材には符号の後にRを付し、助手席側の部材には符号の後にLを付す。
次に、図6のブロック図を参照して、シートベルト装置10等の制御システムをハードウェアの観点から説明する。
図6において、制御装置26はCPUで構成される。制御装置26を含むブロック30は、ベルト13(図1参照)によって乗員11の姿勢を保持するための電気式プリテンショナユニットを構成している。この電気式プリテンショナユニット30は、制御装置26の入力側に電源部31、車内ネットワーク(CAN)通信部32、回転角インターフェース部33(回転角I/F)、通信部34を備え、制御装置26の出力側にR側モータ駆動制御部28R、L側モータ駆動制御部28L、記録部37を備えている。記録部37は、データや制御プログラムを格納するメモリである。
電気式プリテンショナユニット30の入力側には、シートベルト用リトラクタの一例として上記のリトラクタ16(図2参照)を示すブロックが設けられる。リトラクタ16は、前述した回転検知部25から出力される検知信号を制御装置26に送信するための回転角インターフェース部41(回転角I/F)を含む。この回転角インターフェース部41は、電気式プリテンショナユニット30内の上記回転角インターフェース部33に接続され、回転角インターフェース部33に対して検知信号を送る。上記のリトラクタ16は、運転席側及び助手席側等のそれぞれについて設けられている。
電気式プリテンショナユニット30の入力側には、さらに、ACC(Adaptive Cruise Control)ユニット(障害物検知装置等の制御ユニット)42、VSA(Vehicle Stability Assist)ユニット(車両挙動安定化制御ユニット)43、FI/AT(Fuel Injection / Automatic Transmission)ユニット44、SRS(Supplement Restraint System)ユニット(補助拘束装置ユニット)45等の入力側要素が設けられている。
これらの入力側要素の中には、前述した電流値検知部63(図2参照)、ドア開閉状態検知部202(図1参照)、走行状態検知部203(図1参照)、及び車両1の挙動状態を検知する検知ユニット等も含まれる。
ACCユニット42、VSAユニット43、FI/ATユニット44等の入力側要素は、車内ネットワーク46を介してそれらの出力信号を車内ネットワーク通信部32に供給する。
SRSユニット45は、R側バックルスイッチ19R及びL側バックルスイッチ19Lからの各信号を受けるSRS制御部45aと、通信部45bとを有している。R側バックルスイッチ19Rは、運転席側のR側バックル18(図1参照)に内蔵されている。L側バックルスイッチ19Lは、助手席側のL側バックル18(図示せず)に内蔵されている。SRS制御部45aは、R側バックルスイッチ19RまたはL側バックルスイッチ19Lからの信号を受けると、通信部45bを介してその信号を電気式プリテンショナユニット30の通信部34に送信する。また、SRSユニット45は、車両1の走行時にシートベルト13が正規に使用されていない場合には、警告灯48に対して警告信号を発する。
電気式プリテンショナユニット30の出力側には、R側モータ23RとL側モータ23Lが設けられる。
R側モータ23Rは、運転席側のシートベルト装置の駆動用モータであり、R側モータ駆動制御部28Rに対応して設けられる。R側モータ駆動制御部28Rは、制御装置26の制御指令信号に基づく駆動電流を、R側モータ23Rに供給する。つまり、電源27(+V)からR側モータ23Rへ供給される駆動電流は、R側モータ駆動制御部28Rによって制御される。なおブロック53Rは接地部である。
L側モータ23Lは、助手席のシートベルト装置の駆動用モータであり、L側モータ駆動制御部28Lに対応して設けられる。L側モータ駆動制御部28Lは、制御装置26の制御指令信号に基づく駆動電流を、L側モータ23Lに供給する。つまり、電源27からL側モータ23Lへ供給される駆動電流は、L側モータ駆動制御部28Lによって制御される。なおブロック53Lは接地部である。
上記の接地部53R,53Lは、車体の一部をなす接地端子である。
図7は、シートベルト装置10の制御システムの基本的な機能部の構成を概念的に示す機能ブロック図である。この制御システムは、主要素として、ベルト装着・非装着判定部(バックル検知部等)61と、巻取り・引出し検知部62と、電流値検知部63と、ドア開閉状態検知部202と、走行状態検知部203と、シートベルト装置制御部64と、ベルト駆動部65とから構成されている。
ベルト装着・非装着判定部61は、座席12においてベルト13が乗員11に装着されているか否かを判定する手段であり、バックルスイッチ19R,19Lから成る。
シートベルト装置制御部64は、電気式プリテンショナとしての通常の乗員保護のための拘束制御の機能と、ベルト13の装着を解除した後にベルト13を原点位置(ベルト13を完全に収納した位置)に収納するための収納制御の機能と、収納制御を行う際の引掛り状態の検知機能と、ベルト13の引掛り状態を検知するための判定条件をドア開放とドア閉止の場合で異ならせるように変更するための制御機能とを有している。シートベルト装置制御部64は、前述した制御装置26の演算処理機能と、R側モータ駆動制御部28R及びL側モータ駆動制御部28Lとから成る。
ベルト駆動部65は、R側モータ23R及びL側モータ23Lから成る。
次に、制御装置26(図6参照)をマイクロコンピュータ(CPU)とした場合の制御フローについて、図1、図2、図5及び図6を参照しつつ、図8〜図12に基づき説明する。なお、以下の制御フローについては、R側モータ51を例示して説明する。
先ず、シートベルト装置10の一般的な作動を説明する。図1及び図2に示すように、通常、乗用自動車等の車両1を走行させるべく、乗員11が座席12に座り、ベルト13を身体に掛け、タングプレート17をバックル18(R側バックル47R)に結合すると、ベルト13は乗員11の身体に装着される。このとき、バックルスイッチ19はオンになる。反対に、車両1の走行が終了し、車両1から降りるつもりで座席12に座っている乗員11がバックル18からタングプレート17を取り外すと、バックルスイッチ19はオフになる。
通常、ベルト13の装着を解除し、ベルト13が自由な状態にされると、ベルト13はリトラクタ16の電気式プリテンショナユニット30の「収納制御」の機能に基づいて原点位置(ベルト完全収納位置)に引き込まれ、ベルトリール22に巻き取られることによって、リトラクタ16の中に収納される。乗員11が車両1から降りるときには、通常的にはドア201を開くので、ドア201の状態は閉止から開放に変化する。
図8は、制御装置26(図6参照)によって実行されるベルト収納制御の一例を示す制御フローチャート(メインルーチン)である。
制御装置26は、先ず、ベルト収納制御システムが起動したか否かを判断する(ステップS01)。この判断は、バックルスイッチ19の検知信号に基づく。バックルスイッチ19のスイッチ信号がオフ(off)であるときには、ベルト収納制御システムは起動しない、いわゆるスリープ状態にある。
その後、バックルスイッチ19のスイッチ信号がオン(on)に反転すると、制御装置26は、ステップS01において、ベルト収納制御システムが起動したと判断し、図示せぬ収納実行フラグFaを”0”にセットし(Fa=0)、スイッチ故障フラグFcを”0”にセットし(Fc=0)、ドア開制御フラグFdを”0”にセットした後に(Fd=0)、次のステップS02に進む。スイッチ故障フラグFcは、ドアスイッチ202に故障が発生したか否かを判断するためのフラグである。
ステップS02においては、ベルト収納制御システムが起動した時点におけるベルト収納制御を実行する。この制御については、後述するサブルーチン(図9参照)によって実行される。
次に、ステップS03において、上記ステップS02を実行した後における、通常のベルト収納制御を実行する。この制御については、後述するサブルーチン(図10参照)によって実行される。
次に、ステップS04において、イグニションスイッチ204がオフ(off)であるか否かを判断する。イグニションスイッチ204がオン(on)状態を維持している間は、ステップS03における通常のベルト収納制御を続ける。その後、イグニションスイッチ204がオフに切り替わったと判断したときには、次のステップS05に進む。
ステップS05においては、予め設定されている一定時間(経過時間)が経過したか否かを判断する。つまり、イグニションスイッチ204がオフ(off)に切り替わったときに(ステップS04)、このオフ状態が一定の経過時間にわたって持続している間(ステップS05)は、ステップS03におけるベルト収納制御を続け、一定の経過時間が経過した後には、ステップS03におけるベルト収納制御を終了する。その後、バックルスイッチ19のスイッチ信号がオン(on)に反転するまで、ベルト収納制御システムはスリープ状態に入る。このように、ステップS03は、イグニションスイッチ204がオン(on)状態の間、常時実行される。
ところで、上記経過時間を設定していない場合には、イグニションスイッチ204を、オフ操作した直後に再びオン操作した場合に、ベルト収納制御システムは停止、起動を短時間に繰り返すことになる。これでは、乗員11が煩わしさを感じる。このような煩わしさを防ぐために、ステップS05において経過時間を設定した。
図9は、図8に示されたステップS02、つまり、ベルト収納制御システムが起動した時点におけるベルト収納制御を実行するための、サブルーチンを示している。
図9に示すサブルーチンにおいては、先ず、バックルスイッチ19のスイッチ信号がオフ(off)状態のままであるか否かを判断する(ステップS11)。オフ状態のままであると判断した場合には、次に、起動待機タイマの起動待機時間twaを”0”にリセットした上で、この起動待機タイマをスタートする(ステップS12)。次に、ステップS13、ステップS14及びS15に進む。
ステップS13においては、バックルスイッチ19のスイッチ信号がオフ(off)であるか否かを判断する。
ステップS14においては、ベルトリール22から引き出されているベルト13の引出し量X(ベルト引出し量X)が、基準引出し量Xsよりも大きいか(X>Xs)否かを判断する。基準引出し量Xsは、ベルト13がベルトリール22に完全に巻き取られていないことを判断するための、一定の基準値であり、予め設定されている。
ステップS15においては、カウントされた起動待機時間twaが、予め設定されている一定の基準起動待機時間twsを経過したか(twa≧tws)否かを判断する。
そして、起動待機時間twaが基準起動待機時間twsを経過するまでにわたって(ステップS15)、バックルスイッチ19のスイッチ信号がオフ(off)であるという条件(ステップS13)と、ベルト引出し量Xが基準引出し量Xsよりも大きいという条件(ステップS14)の、2つの条件を満足している場合には、ステップS16において収納実行フラグFaを1とする(Fa=1)。
また、起動待機時間twaが基準起動待機時間twsを経過するまでの間に(ステップS15)、バックルスイッチ19のスイッチ信号がオン(on)になるか(ステップS13)、又は、ベルト引出し量Xが基準引出し量Xs以下になった(ステップS14)場合には、ステップS17において収納実行フラグFaを0とする(Fa=0)。ベルト13が装着状態、又は、ベルト13がベルトリール22から引き出されていない状態なので、Fa=0である。Fa=0であるから、ベルト13を巻き取らない指示となる。
一方、上記ステップS11において、バックルスイッチ19のスイッチ信号がオフ(off)状態のままではないと判断した場合には、ステップS18に進む。ステップS18においては、今、バックルスイッチ19のスイッチ信号がオン(on)からオフ(off)に反転したか否かを判断する。ステップS18において、オンからオフに反転したと判断した場合には、ステップS19においてドア開制御フラグFdを1と設定し、この設定した時点から一定時間Δt1にわたって、Fd=1の状態を保持し続ける。そして、Fd=1に設定とした直後に、ステップS20において収納実行フラグFaを1とする(Fa=1)。また、ステップS18において、オンからオフに反転していないと判断した場合には、ステップS21において収納実行フラグFaを0とする(Fa=0)。
なお、一定時間Δt1は、予め設定された値である。バックルスイッチ19のスイッチ信号は、バックル18からタングプレート17が外された瞬間に、オンからオフに反転し、その後、バックル18にタングプレート17を装着するまで、オフ状態を持続する。これに対し、ステップS19では、バックルスイッチ19のスイッチ信号がオンからオフに反転したという判断を、一定時間Δt1にわたって保持するために設けられたものである。この一定時間Δt1は、例えば、非装着状態となったベルト13が、ベルトリール22により完全収納位置まで巻き取られるのに要する時間よりも、若干長く設定される。
このように設定された、各々の収納実行フラグFaの内容を踏まえ、最後にステップS22において収納制御を実行した後に、図9に示すサブルーチンを終了して、図8に示すメインルーチンのステップS02に戻る。なお、ステップS22の収納制御については、後述するサブルーチン(図11及び図12参照)によって実行される。
図10は、図8に示されたステップS03、つまり、通常のベルト収納制御を実行するための、サブルーチンを示している。
図10に示すサブルーチンにおいては、先ず、ステップS101において、今、バックルスイッチ19のスイッチ信号がオン(on)からオフ(off)に反転したか否かを判断する。ステップS101において、オンからオフに反転したと判断した場合には、ステップS102においてドア開制御フラグFdを1と設定し、この設定した時点から一定時間Δt1にわたって、Fd=1の状態を保持し続ける。そして、Fd=1に設定とした直後に、ステップS103において収納実行フラグFaを1とする(Fa=1)。Fa=1であるから、ベルト13を巻き取る指示となる。
なお、ステップS102の実行内容は、上記図9に示すステップS19の実行内容と実質的に同じであり、一定時間Δt1は予め設定された値である。
一方、ステップS101において、オンからオフに反転しないと判断した場合には、次のステップS104及びS105に進む。
ステップS104おいては、バックルスイッチ19のスイッチ信号がオフ(off)であるか否かを判断する。
ステップS105においては、ベルト引出し速度Vpbが基準引出し速度Vpsよりも大きいか否かを判断する。ここで、ベルト引出し速度Vpbとは、何らかの外力によって、ベルトリール22からベルト13が引き出される場合において、ベルト13が引き出される速度のことである。基準引出し速度Vpsは、ベルトリール22からベルト13が引き出されつつあることを判断するための一定の基準値であり、予め設定されている。
ステップS104においてバックルスイッチ19のスイッチ信号がオフ(off)であるという条件と、ステップS105においてベルト引出し速度Vpbが基準引出し速度Vpsよりも大きい(Vpb>Vps)という条件の、2つの条件を満足した場合には、ステップS106において収納実行フラグFaを1とする(Fa=1)。ベルト13が非装着状態(外れた状態)であり、しかも、ベルト13がベルトリール22から引き出される速度Vpbが大きいので、Fa=1である。Fa=1であるから、ベルト13を巻き取る指示となる。
ステップS104においてバックルスイッチ19のスイッチ信号がオン(on)であるか、又は、ステップS105においてベルト引出し速度Vpbが基準引出し速度Vps以下である(Vpb≦Vps)である場合には、ステップS107において収納実行フラグFaを0とする(Fa=0)。ベルト13が装着状態である、又は、ベルト13がベルトリール22から引き出される動きをしていないので、Fa=0である。Fa=0であるから、ベルト13を巻き取らない指示となる。
このように、ステップS103、S106又はS107において、収納実行フラグFaを設定した後には、実際の車速Scが停車基準値SLを下回っているか否かを判断する(ステップS108)。車速Scは、走行状態検知部203(車速センサ203)によって検知された値である。停車基準値SLは、車両1が停止状態にあることを判断するための一定の基準値であり、予め設定されている。
ステップS108において、車速Scが停車基準値SLを下回っている(Sc<SL)、つまり停車状態にあると判断した場合には、そのままステップS109に進む。一方、上記ステップS108において、車速Scが停車基準値SLに達している(Sc≧SL)、つまり車両1が走行状態にあると判断した場合には、次のステップS110に進む。ステップS110においては、ドア201が開いているか否か、つまり、ドア開閉状態検知部202(ドアスイッチ202)のスイッチ信号がオフ(off)であるか否かを判断する。
ステップS108において車両1が走行状態にあるという条件と、ステップS110においてドア201が開いているという条件の、2つの条件を満足した場合には、ドアスイッチ202に故障が発生したと判断し、ステップS111において、スイッチ故障フラグFcを”1”とする(Fc=1)。そして、ステップS109に進む。
ステップS108において車両1が走行状態にあるという条件と、ステップS110においてドア201が閉じているという条件の、2つの条件を満足した場合には、そのままステップS109に進む。
このように、ステップS108、S110、S111を実行した後には、ステップS109において、各々の収納実行フラグFaの内容を踏まえ、収納制御を実行した後に、図10に示すサブルーチンを終了して、図8に示すメインルーチンのステップS03に戻る。なお、ステップS109の収納制御については、後述するサブルーチン(図11及び図12参照)によって実行される。
図11及び図12は、図9に示されたステップS22(収納制御)及び図10に示されたステップS109(収納制御)を実行するためのサブルーチンを示している。
図11及び図12に示すプロセスでは、乗員11が降車するためにドア201が開放状態にあるか否かによって、制御のプロセスが分かれ(ステップS211)、ドア閉止及びドア開放のそれぞれで異なる引掛り条件が設定される(ステップS212,ステップS213)点に特徴がある。この場合、ドア201が開いているときの引掛り条件(ステップS213)は、ドア201が閉じているときの引掛り条件(ステップS212)よりも緩和される。以下、収納制御を実行するサブルーチンについて、詳細に説明する。
図11に示す、収納制御を実行するためのサブルーチンにおいては、先ず、ステップS201において、収納実行フラグFaが”1”であるか(Fa=1)否かを判断する。ステップS201において、Fa≠1であると判断した場合には、モータ23への通電を停止する(ステップS230)。その後、この図11に示すサブルーチンを終了して、図9に示すサブルーチンのステップS22、または図10に示すサブルーチンのステップS109に戻る。一方、ステップS201においてFa=1であると判断した場合には、モータ23に対し、ベルト巻取り動作を行わせるための通電を開始する(ステップS202)。この結果、ベルトリール22はベルト巻取り方向に回転し始める。次に、タイマのカウント時間tを”0”にリセットした上で、このタイマをスタートする(ステップS203)。
ステップS203の後に、ステップS211,S212,S213が実行される。ステップS211では、ドア201が閉じた状態(閉止状態)であるか否かを判断する。ステップS211において、ドア201が閉じた状態であると判断した場合には、時間差閾値dthの値を”dt2”に設定する(ステップS212)。一方、ステップS211において、ドア201が開いた状態(開放状態)であると判断したときには、時間差閾値dthの値を”dt1”に設定する(ステップS213)。”dt1”及び”dt2”は、それぞれ上記カウント時間tと対比するために、予め設定された一定の時間である。
ドア201が開放状態であるときの時間差閾値dth(つまり、値dt1)は、ドア201が閉止状態であるときの時間差閾値dth(つまり、値dt2)よりも、大きい値に設定されている(dt1>dt2)。このように、カウント時間tが経過したか否かを判断する基準については、ドア201が開放状態であるときの方が、閉止状態であるときに比べて緩和されている。
ステップS212の後には、ドア201が閉止状態である場合の収納制御のためのステップS221〜S233が実行される。また、ステップS213の後には、ドア201が開放状態である場合の収納制御のためのステップS321〜S334(図12参照)が実行される。
先ず、ドア201が閉止状態にある場合における、収納制御のステップS221〜S233について、図11に基づき説明する。
最初に、予め用意された変数iの値を0にリセットする(ステップS221)。この変数iはカウンタ値として設定され、収納制御に基づくベルト13の収納動作において生じる、ベルト13の引掛り状態を判定するために使用される。引掛り判定は、カウントされる変数iが、予め設定された一定の基準カウンタ値Nに達しても「引掛りである」という判定状態が維持されたときに確定する。
次にステップS222において、カウントされた変数iが基準カウンタ値Nよりも小さいか(i<N)否かを判断する。ステップS222において、i<Nであると判断した場合には、次にステップS223に進む。ステップS223においては、ベルトリール22の回転角に変化があるか否かを判断する。ここで、回転角変化の有無については、図5に示す回転検知部25の検知信号に基づいて判断する。つまり、回転角変化の有無については、実質的に回転検知部25から出力された位相の異なる2つのパルス信号P1,P2に基づき、回転状態検知部110や回転角変化検知部113等を経由して取り出される信号に基づいて判断する。
ステップS223において、ベルトリール22の回転角に変化があると判断した場合には、次のステップS224に進む。ステップS224においては、ベルトリール22の回転方向が、ベルト巻取り方向であるか否かを判断する。ベルトリール22の回転方向については、図5に示す回転検知部25の検知信号に基づいて判断する。つまり、ベルト巻取り方向については、回転検知部25の検知信号に基づき、回転方向検知部111を経由して取り出される信号に基づいて判断する。
ステップS224において、回転方向が「ベルト巻取り方向」であると判断した場合には、ベルトリール22の変化間隔に係る時間dtを求める(ステップS225)。「変化間隔に係る時間dt」とは、ベルトリール22が一定の回転角だけ変化するのに要した時間のことである。つまり、時間dtは、ベルトリール22が前回変化した時点tl−1から今回変化した時点tlまでの、時間(dt=tl−tl−1)であり、タイマのカウント時間tを計測することによって得ることができる。言い換えると「dt」は前回変化の際の時間tl−1と今回変化の際の時間tlとの差分を意味している。
なお、この時間dtについては、回転角変化検知部113(図5参照)で検知した単位時間当たりのベルトリール22の回転角の変化量(deg./msec)の逆数、つまり、回転速度の逆数によっても得ることができる。
次に、ステップS226において、変化間隔に係る時間dtが、一定の基準時間dt0未満(dt<dt0)であるか否かを判断する。基準時間dt0は、ベルト13の引掛り状態を判断するために、予め設定された一定の値である。ステップS226において、変化間隔に係る時間dtが基準時間dt0未満(dt<dt0)であると判断した場合には、後述するステップS229に進む。
一方、上記ステップS226において、変化間隔に係る時間dtが一定の基準時間dt0に達した(dt≧dt0)と判断した場合には、次のステップS227に進む。ステップS227では、変化間隔に係る時間dtが時間差閾値dth未満(dt<dth)であるか否かを判断する。ここで、時間差閾値dthの値は、上記ステップS212において設定された”dt2”である。
ベルト13の引掛り状態がない場合には、ステップS227において、変化間隔に係る時間dtが時間差閾値dth未満(dt<dth)であると判断する。dt<dthであると判断した場合には、ベルトリール22によるベルト巻取り時間を早める必要があるので、次のステップS228に進む。ステップS228では、ベルトリール22によるベルト巻取り力を増すために、モータ23に供給する駆動電流(通電量)Ibを所定値ΔIだけ増加した(Ib=Ib+ΔI)後に、次のステップS229に進む。
ステップS229においては、ベルト13が本来の収納位置、すなわち原点位置(完全収納位置)に収納されたか否かを判断する。ベルト13の収納位置については、図5に示す回転検知部25の検知信号に基づいて判断する。つまり、ベルト13の収納位置については、回転検知部25の検知信号に基づき、回転状態検知部110を経由して取り出される信号に基づいて判断する。
ステップS229において、ベルト13が完全収納位置まで収納されていないと判断した場合には、上記ステップS211へ戻って、ベルト13が完全収納位置に収納されるまで、巻き取り制御を続ける。一方、ステップS229において、ベルト13が完全収納位置に収納されたと判断した場合には、収納制御が完了したので、モータ23への通電を停止する(ステップS230)。その後、この図11に示すサブルーチンを終了して、図9に示すサブルーチンのステップS22、または図10に示すサブルーチンのステップS109に戻る。
ところで、制御装置26は、上記収納制御を実行中において、次の3つの引掛り判定条件の、少なくともいずれか1つの条件を満足した場合には、ベルト13に引掛り状態が発生したと判定して、モータ23を停止させる構成である。つまり、制御装置26は、リトラクタ16によってベルト13を巻き取っているときに、何かの原因によってベルト13に引掛りが生じ、この結果、リトラクタ16の巻取り動作にロック状態が発生したと判断した場合に、モータ23への通電を停止する。
ここで、「引掛り判定条件」とは、収納制御を実行中に車両1の一部(例えば、車室内の突起物やドア201)または乗員11の身体に対する、ベルト13の引掛り状態が発生したことを判定するものであり、予め設定されている。
第1の引掛り判定条件は、ベルトリール22が所定時間tsにわたって停止しているということである。この第1の引掛り判定条件が該当する要因の一例として、次の場合がある。図1に示すドア201等の車体や乗員11の身体に、ベルト13が引っ掛かることによって、ベルトリール22はベルト13を巻き取ることができずに、停止する。乗員11の身体にベルト13が引っ掛かる例として、乗員11が手でベルト13を強く押さえている場合が挙げられる。
第2の引掛り判定条件は、ベルトリール22が逆転、つまりベルト引出し方向に回転しているということである。この第2の引掛り判定条件が該当する要因の一例として、次の場合がある。ベルトリール22によってベルト13を巻き取る力に対し、ベルトリール22からベルト13を引き出す外力が大きい場合に、ベルトリール22はベルト引出し方向に回転する。ベルト13を引き出す外力の例として、図1に示す乗員11が手でベルト13を引張る場合が挙げられる。
第3の引掛り判定条件は、ベルトリール22の回転速度が遅すぎるということである。つまり、第3の引掛り判定条件は、ベルトリール22が一定の回転角だけ変化するのに要した時間dt(変化間隔に係る時間dt)が、時間差閾値dthに達することである。この第3の条件が該当する要因の一例として、次の場合がある。図1に示すドア201等の車両1の一部や乗員11の身体に、ベルト13が軽く引っ掛かることによって、ベルトリール22はベルト13を迅速に巻き取ることができず、巻き取り時間が遅くなる。
時間差閾値dthの値は、上記ステップS211〜S213において、予め設定される。つまり、時間差閾値dthの値は、ドア201が閉止状態であるときには値dt2に設定され、ドア201が開放状態であるときには値dt1に設定される。各値は「dt1>dt2」の関係にある。このように、第3の引掛り判定条件は、ドア201の閉止状態と開放状態とによって異なり、閉止状態のときの条件に対して、開放状態のときの条件が緩く設定されている。
先ず、ドア201が閉止状態であるときで、第1の引掛り判定条件の場合について説明する。上記ステップS223において、ベルトリール22の回転角に変化が無いと判断した場合には、次に、この変化が無い状態で、予め設定された一定の所定時間ts(角度変位無し時間ts)が経過したか否かを判断する(ステップS231)。回転角に変化が無い状態で所定時間tsが経過するまでは、ステップS222、S223及びS231を繰り返す。
一方、ステップS231において、回転角に変化が無い状態で所定時間tsが経過したと判断した場合には、次のステップS232に進む。ステップS232においては、予め設定された一定の所定時間Δt2(一時停止時間Δt2)が経過するまで、このステップS232を繰り返す。つまり、一時停止時間Δt2が経過するまで一時停止する。一時停止時間Δt2が経過した後に、ステップS233において変数iを1だけ加算して(i=i+1)、ステップS222に戻る。
以上の説明から明らかなように、ベルトリール22の回転角に変化が無いと判断した(ステップS223)状態で、且つ、所定時間tsが経過したと判断した(ステップS231)場合を、繰り返す毎に、変数iを1つずつ加算カウントする(ステップS233)。そして、カウントされた変数iが基準カウンタ値Nに達した(i≧N)と判断したとき(ステップS222)、つまり、巻取り動作のロック状態が確定したと判断したときに、モータ23への通電を停止する(ステップS230)。その後、この図11に示すサブルーチンを終了して、図9に示すサブルーチンのステップS22、または図10に示すサブルーチンのステップS109に戻る。
つまり、リトラクタ16でベルト13を巻き取っているときに、何かの原因によってベルト13に引掛りが生じることにより、巻取り動作にロック状態が発生したと判断した場合(ステップS223、S231)には、変数iが増大して(ステップS233)、基準カウンタ値Nに達する。この結果、ステップS222において、変数iが基準カウンタ値Nに達した(i≧N)と判断、つまり、巻取り動作のロック状態が確定したと判断して、モータ23への通電を停止する(ステップS230)。
次に、ドア201が閉止状態であるときで、第2の引掛り判定条件の場合について説明する。ステップS224において、ベルトリール22の回転方向が「ベルト引出し方向」であると判断した場合には、次のステップS232において、一時停止時間Δt2が経過するまで一時停止する。次に、ステップS233において変数iを1だけ加算して(i=i+1)、ステップS222に戻る。
このように、ベルトリール22が「ベルト引出し方向」に回転していると判断した場合(ステップS224)には、変数iが増大して(ステップS233)、基準カウンタ値Nに達する。この結果、ステップS222において、変数iが基準カウンタ値Nに達した(i≧N)と判断、つまり、巻取り動作のロック状態が確定したと判断して、モータ23への通電を停止する(ステップS230)。その後、この図11に示すサブルーチンを終了して、図9に示すサブルーチンのステップS22、または図10に示すサブルーチンのステップS109に戻る。
次に、ドア201が閉止状態であるときで、第3の引掛り判定条件の場合について説明する。ステップS226において、変化間隔に係る時間dtが一定の基準時間dt0に達した(dt≧dt0)と判断し、且つ、ステップS227において、変化間隔に係る時間dtが時間差閾値dthに達した(dt≧dth)と判断した場合には、次のステップS232において、一時停止時間Δt2が経過するまで一時停止する。次に、ステップS233において変数iを1だけ加算して(i=i+1)、ステップS222に戻る。
このように、dt≧dthという条件(ステップS227)を満足した場合には、変数iが増大して(ステップS233)、基準カウンタ値Nに達する。この結果、ステップS222において、変数iが基準カウンタ値Nに達した(i≧N)と判断、つまり、巻取り動作のロック状態が確定したと判断して、モータ23への通電を停止する(ステップS230)。その後、この図11に示すサブルーチンを終了して、図9に示すサブルーチンのステップS22、または図10に示すサブルーチンのステップS109に戻る。
次に、ドア201が開放状態にある場合における、収納制御のステップS321〜S334について、図12に基づき説明する。
先ず、上記図11に示すステップS213を実行した後に、図12に示すステップS321に進む。ステップS321の実行内容(制御内容)は、図11に示すステップS221の実行内容と実質的に同じである。同様に、S322はS222、S323はS223、S324はS224、S325はS225、S326はS226、S327はS227、S328はS228、S329はS229、S330はS230、S331はS231、S332はS232、S333はS233と、それぞれ実質的に同じである。
このように、ステップS321〜S333は、基本的には前述した図11に示すステップS221〜S233とそれぞれ同じであるので、前述した説明を援用する。
図12に示すドア201が開放している場合における制御内容(ステップS321〜S334)は、図11に示すドア201が閉止している場合における制御内容(ステップS221〜S233)に対し、次の点で相違している。
第1の相違点は、上記「第2の引掛り判定条件」に対する制御内容が相違することである。つまり、ステップS324において、ベルトリール22の回転方向が「ベルト引出し方向」であると判断した場合には、次のステップS334に進む。ステップS334においては、ベルト引出しを阻止する(規制する)ために、モータ23に供給する駆動電流(通電量)を増加する。その後、ステップS322に戻る。
第2の相違点は、ステップS327における時間差閾値dthの値を、”dt1”としたことである(dth=dt1)。つまり、ステップS327において用いられる時間差閾値dthの値は、図11に示すステップS213において、”dt1”に設定されている。ステップS327では、変化間隔に係る時間dtが時間差閾値dth未満(dt<dth)であるか否かを判断する。
ベルト13の引掛り状態がない場合には、ステップS327において、変化間隔に係る時間dtが時間差閾値dth未満(dt<dth)であると判断することである。このステップS327において、dt<dthであると判断した場合には、ベルトリール22によるベルト巻取り時間を早める必要があるので、次のステップS328に進む。ステップS328では、ベルトリール22によるベルト巻取り力を増すために、モータ23に供給する駆動電流(通電量)Ibを所定値ΔIだけ増加する(Ib=Ib+ΔI)。
このように、第2の相違点は、ドア201が開放しているときにおける第3の引掛り判定条件(ステップS327における条件dt<dt1)が、ドア201が閉止しているときにおける第3の引掛り判定条件(ステップS227における条件dt<dt2)よりも緩く設定されていることである(dt1>dt2)。
ここで、図1において、バックルスイッチ19(ベルト装着状態検知部19)はベルト装着状態検知手段に相当し、制御装置26は制御手段に相当し、電流値検知部63は電流値検知手段に相当し、ドア開閉状態検知部202(ドアスイッチ202)はドア状態検知手段に相当し、走行状態検知部203(車速センサ203)は走行状態検知手段に相当する。図5において、巻取り・引出し検知部62及び回転角変化検知部113の組み合わせ構造は、回転位置検知手段に相当する。
以上の説明から明らかなように、実施例1のシートベルト装置10は次の作用、効果を有する。すなわち、シートベルト装置10では、乗員11がベルト13を非装着状態にしたことによって(図10のステップS101でYESの判断)、ベルトリール22がベルト13を巻き取っているときに(図11のステップS202)、ドア201を開いた場合(図11のステップS211でNOの判断)、制御装置26は、何らかの外力によってベルト13がベルトリール22から引出されることを規制するように、モータ23に供給する駆動電流を増加させるべく制御する(図12のステップS324、S334)。
このため、ベルトリール22によるベルト13の巻き取り動作は、停止し難くなり、円滑に行われる。ベルト13には、ベルトリール22に巻き取られないことによる、弛みが発生しにくい。ベルト13に弛みが無いので、ベルト13が車室内の突起物に引っ掛かったり、開閉したドア201に挟まることを防止できる。
このように、乗員11がドア201を開けて、車両1から降りようとしているとき、または降りたときにおいて、乗員11の身体から外されたベルト13を、ベルトリール22に確実に且つ円滑に巻き取って、収納することができる。
さらに、制御装置26は、乗員11がベルト13を非装着状態にしたことによって(図10のステップS101でYESの判断)、ベルトリール22がベルト13を巻き取っているときに(図11のステップS202)、車両1の一部に対するベルト13の引掛り状態が発生したことを判定して(図11のステップS227、図12のS327)、巻き取りを停止するための、第3の引掛り判定条件を予め設定している(図11のステップS212、S213)。ドア201を開いた状態のときの第3の引掛り判定条件(図11のステップS213)は、ドア201を閉じた状態のときの第3の引掛り判定条件(図11のステップS212)よりも、緩く設定されている(dt1>dt2)。
このため、ベルトリール22によるベルト13の巻き取り動作は、停止し難くなり、円滑に行われる。ベルト13には、ベルトリール22に巻き取られないことによる、弛みが発生しにくい。ベルト13に弛みが無いので、ベルト13が車室内の突起物に引っ掛かったり、開閉したドア201に挟まることを防止できる。
このように、乗員11がドア201を開けて、車両1から降りようとしているとき、または降りたときにおいて、乗員11の身体から外されたベルト13を、ベルトリール22に確実に且つ円滑に巻き取って、収納することができる。
次に、実施例2に係るシートベルト装置について、図1〜図15に基づき説明する。なお、上記図1〜図10に示す実施例1の構成、作用については、実施例2においても同じ構成なので、説明を省略する。
図13〜図15は、図9に示されたステップS22(収納制御)及び図10に示されたステップS109(収納制御)を実行するためのサブルーチンを示している。つまり、実施例2のシートベルト装置は、上記図11及び図12に示す実施例1のサブルーチンの代わりに、図13〜図15に示すサブルーチンを実行する構成であることを特徴とする。
図13に示す、収納制御を実行するためのサブルーチンにおいては、先ず、ステップS401において、収納実行フラグFaが”1”であるか(Fa=1)否かを判断する。ステップS401において、Fa≠1であると判断した場合には、モータ23への通電を停止する(ステップS402)。その後、この図13に示すサブルーチンを終了して、図9に示すサブルーチンのステップS22、または図10に示すサブルーチンのステップS109に戻る。一方、ステップS201においてFa=1であると判断した場合には、ステップS403及びS404に進む。
ステップS403においては、ドア201が開放状態であるか否かを判断する。ステップS404においては、ドア開制御フラグFdが1であるか否かを判断する。
そして、ドア201が開放状態であるという条件(ステップS403)と、ドア開制御フラグFdが1であるという条件(ステップS404)の、2つの条件を満足している場合には、ステップS405に進む。ステップS405においては、待機時間タイマの待機時間twを”0”にリセットした上で、この待機時間タイマをスタートする。次に、ステップS406において、待機時間twが第1の基準待機時間taを経過するまで、待機する。
また、ドア201が閉止状態であるか(ステップS403)、又は、ドア開制御フラグFd≠1である(ステップS404)場合には、ステップS407に進む。ステップS407においては、待機時間タイマの待機時間twを”0”にリセットした上で、この待機時間タイマをスタートする。次に、ステップS408において、待機時間twが第2の基準待機時間tbを経過するまで、待機する。
第1・第2の基準待機時間ta,tbは、予め設定されている一定の時間である。第2の基準待機時間tbは、第1の基準待機時間taよりも大きく設定されている(ta<tb)。
ステップS406又はステップS408の次には、ステップS409に進む。ステップS409においては、モータ23に対し、ベルト巻取り動作を行わせるための通電を開始する。この結果、ベルトリール22はベルト巻取り方向に回転し始める。次に、タイマのカウント時間tを”0”にリセットした上で、このタイマをスタートする(ステップS410)。
次に、ステップS411において、スイッチ故障フラグFcが”0”であるか(Fc=0)否か、つまり、ドアスイッチ202が正常であるか否かを判断する。ここで、Fc=0であると判断した場合には、ステップS412〜S416が実行され、Fc≠0であると判断した場合には、ステップS417〜S418が実行される。
詳しく述べると、ステップS411においてFc=0であると判断した場合には、ドア201が閉止状態であるか否かを判断する(ステップS412)。ドア201が閉止状態であると判断した場合には、巻取り速度閾値Vstを値”V2”に設定する(ステップS413)。次に、目標巻取り速度Vtcを値”Vt1”に設定する(ステップS414)。
一方、ステップS412において、ドア201が開放状態であると判断した場合には、巻取り速度閾値Vstを値”V1”に設定する(ステップS415)。次に、目標巻取り速度Vtcを値”Vt2”に設定する(ステップS416)。
上述のように、ステップS411において、Fc≠0であると判断した場合には、ドアスイッチ202に故障が発生したので、その後におけるドアスイッチ202の検知結果にかかわらず、ステップS417及びS418に進む。つまり、巻取り速度閾値Vstを値”V2”に設定し(ステップS417)、次に目標巻取り速度Vtcを値”Vtm”に設定する(ステップS418)。
ここで、値”V1”及び”V2”は、それぞれ実際のベルト巻取り速度と対比するために、予め設定された一定の速度であり、V1<V2の関係にある。ドア201が開放状態であるときの巻取り速度閾値Vst(つまり、値V1)は、ドア201が閉止状態であるときの巻取り速度閾値Vst(つまり、値V2)よりも、小さい値に設定されている(V1<V2)。
目標巻取り速度Vtcとは、ベルトリール22によってベルト13を巻き取る、目標の速度のことである。Vt1、Vt2、値Vtmは、予め設定されている一定の値であり、Vt1よりもVtmが大い値に設定され、VtmよりもVt2が大きい値に設定されている(Vt1<Vtm<Vt2)。
ステップS414又はS418の次には、ドア201が閉止状態である場合の収納制御のためのステップS421〜S435が実行される(図14参照)。また、ステップS416の次には、ドア201が開放状態である場合の収納制御のためのステップS521〜S536(図15参照)が実行される。
先に、ドア201が閉止状態にある場合における、収納制御のステップS421〜S435について、図14に基づき説明する。
先ず、上記図13に示すS414又はS418を実行した後に、図14に示すステップS421に進む。ステップS421の実行内容(制御内容)は、図11に示すステップS221の実行内容と実質的に同じである。同様に、S422はS222、S423はS223、S424はS224と、それぞれ実質的に同じである。
ステップS421〜S424の概要は次の通りである。ステップS421においては、予め用意された変数iの値を0にリセットする。次に、ステップS422において、i<Nであると判断した場合には、ステップS423に進む。ステップS423において、ベルトリール22の回転角に変化があると判断した場合には、ステップS424に進む。ステップS424において、回転方向が「ベルト巻取り方向」であると判断した場合には、ステップS425に進む。
ステップS425においては、ベルト13の巻取り速度Vbを求める。この巻取り速度Vbについては、例えば回転角変化検知部113(図5参照)で検知した単位時間当たりのベルトリール22の回転角の変化量(deg./msec)に基づいて求められる。つまり、巻取り速度Vbは、前回変化した時点におけるベルトリール22の回転角Xti−1から、今回変化した時点におけるベルトリール22の回転角Xtiまでの、単位時間当たりの変化量を計測することによって得ることができる。
次に、ステップS426において、巻取り速度Vbが巻取り速度閾値Vstを越えたか(Vb>Vst)否かを判断する。ここで、巻取り速度閾値Vstの値は、上記ステップS412(図13参照)において設定された”V2”である。ステップS426において、巻取り速度Vbが巻取り速度閾値Vstを越えた(Vb>Vst)と判断した場合には、次のステップS427〜S430が実行される。
具体的には、巻取り速度Vbから、ドア201が閉止しているときの目標巻取り速度Vtc(つまり、値”Vt1”)を差し引いた、値に応じて、モータ23に供給する駆動電流(通電量)Ibを設定する。つまり、ステップS427においては、条件「(Vb−Vtc)>0」を満たしているか否かを判断する。ステップS429においては、条件「(Vb−Vtc)<0」を満たしているか否かを判断する。
ステップS427において、巻取り速度Vbから目標巻取り速度Vtcを差し引いた値が”正”の値であると判断した場合には((Vb−Vtc)>0)、ベルトリール22によるベルト巻取り力を減らすために、モータ23に供給する駆動電流Ibを所定値ΔIだけ減少させて(ステップS428)、ステップS431に進む。
ステップS427がNOの判断をし、且つステップS429において、巻取り速度Vbから目標巻取り速度Vtcを差し引いた値が”負”の値であると判断した場合には((Vb−Vtc)<0)、ベルトリール22によるベルト巻取り力を増すために、モータ23に供給する駆動電流Ibを所定値ΔIだけ増加させて(ステップS430)、ステップS431に進む。
実際の巻取り速度Vbから目標巻取り速度Vtcを差し引いた値が、±0であると判断した場合には(ステップS427とS429が共にNOの判断)、モータ23に供給する駆動電流Ibをそのまま維持して、ステップS431に進む。
ステップS431においては、ベルト13が本来の収納位置、すなわち原点位置(完全収納位置)に収納されたか否かを判断する。ベルト13の収納位置については、図5に示す回転検知部25の検知信号に基づいて判断する。つまり、ベルト巻取り方向については、回転検知部25の検知信号に基づき、回転状態検知部110を経由して取り出される信号に基づいて判断する。
ステップS431において、ベルト13が完全収納位置まで収納されていないと判断した場合には、上記ステップS411(図13参照)へ戻って、ベルト13が完全収納位置に収納されるまで、巻き取り制御を続ける。一方、ステップS431において、ベルト13が完全収納位置に収納されたと判断した場合には、収納制御が完了したので、モータ23への通電を停止する(ステップS432)。その後、この図13及び図14に示すサブルーチンを終了して、図9に示すサブルーチンのステップS22、または図10に示すサブルーチンのステップS109に戻る。
ところで、制御装置26は、上記収納制御を実行中において、次の3つの引掛り判定条件の、少なくともいずれか1つの条件を満足した場合には、ベルト13に引掛り状態が発生したと判定して、モータ23を停止させる構成である。つまり、制御装置26は、リトラクタ16によってベルト13を巻き取っているときに、何かの原因によってベルト13に引掛りが生じ、この結果、リトラクタ16の巻取り動作にロック状態が発生したと判断した場合に、モータ23への通電を停止する。
第1の引掛り判定条件は、ベルトリール22が所定時間tsにわたって停止しているということである。この第1の引掛り判定条件は、上記実施例1における第1の引掛り判定条件と実質的に同一である。
第2の引掛り判定条件は、ベルトリール22が逆転、つまりベルト引出し方向に回転しているということである。この第2の引掛り判定条件は、上記実施例1における第2の引掛り判定条件と実質的に同一である。
第3の引掛り判定条件は、ベルトリール22の回転速度が遅すぎるということである。
先ず、ドア201が閉止状態であるときで、第1の引掛り判定条件の場合について説明する。ベルトリール22の回転角に変化が無いと判断した(ステップS423)状態で、且つ、所定時間tsが経過したと判断した(ステップS433)場合を、繰り返す毎に、一時停止時間Δt2の経過後(ステップS434)、変数iを1つずつ加算カウントする(ステップS435)。そして、カウントされた変数iが基準カウンタ値Nに達した(i≧N)と判断したとき(ステップS422)、つまり、巻取り動作のロック状態が確定したと判断したときに、モータ23への通電を停止する(ステップS432)。その後、この図13及び図14に示すサブルーチンを終了して、図9に示すサブルーチンのステップS22、または図10に示すサブルーチンのステップS109に戻る。
このように、ステップS433の実行内容(制御内容)は、図11に示すステップS231の実行内容と実質的に同じである。同様に、S434はS232、S435はS233と、それぞれ実質的に同じである。
次に、ドア201が閉止状態であるときで、第2の引掛り判定条件の場合について説明する。ベルトリール22が「ベルト引出し方向」に回転していると判断した場合(ステップS424)には、一時停止時間Δt2の経過後(ステップS434)、変数iが増大して(ステップS435)、基準カウンタ値Nに達する。この結果、ステップS422において、変数iが基準カウンタ値Nに達した(i≧N)と判断、つまり、巻取り動作のロック状態が確定したと判断して、モータ23への通電を停止する(ステップS432)。その後、この図13及び図14に示すサブルーチンを終了して、図9に示すサブルーチンのステップS22、または図10に示すサブルーチンのステップS109に戻る。
次に、ドア201が閉止状態であるときで、第3の引掛り判定条件の場合について説明する。巻取り速度Vbが巻取り速度閾値Vstを越えていない(Vb≦Vst)と判断した場合(ステップS426)には、一時停止時間Δt2の経過後(ステップS434)、変数iが増大して(ステップS435)、基準カウンタ値Nに達する。この結果、ステップ422において、変数iが基準カウンタ値Nに達した(i≧N)と判断、つまり、巻取り動作のロック状態が確定したと判断して、モータ23への通電を停止する(ステップS432)。その後、この図13及び図14に示すサブルーチンを終了して、図9に示すサブルーチンのステップS22、または図10に示すサブルーチンのステップS109に戻る。
次に、ドア201が開放状態にある場合における、収納制御のステップS521〜S536について、図15に基づき説明する。
先ず、上記図13に示すステップS416を実行した後に、図15に示すステップS521に進む。ステップS521の実行内容(制御内容)は、図14に示すステップS421の実行内容と実質的に同じである。同様に、S522はS422、S523はS423、S524はS424、S525はS425、S526はS426、S527はS427、S528はS428、S529はS429、S530はS430、S531はS431、S532はS432、S533はS433、S534はS434、S535はS435と、それぞれ実質的に同じである。
このように、ステップS521〜S535は、基本的には前述した図14に示すステップS421〜S435とそれぞれ同じであるので、前述した説明を援用する。
図15に示すドア201が開放している場合における制御内容(ステップS521〜S536)は、図14に示すドア201が閉止している場合における制御内容(ステップS421〜S435)に対し、次の点で相違している。
第1の相違点は、上記「第2の引掛り判定条件」に対する制御内容が相違することである。つまり、ステップS524において、ベルトリール22の回転方向が「ベルト引出し方向」であると判断した場合には、次のステップS536に進む。ステップS536では、ベルト引出しを阻止する(規制する)ために、モータ23に供給する駆動電流(通電量)を増加する。その後、ステップS522に戻る。
第2の相違点は、ステップS426、S526における第3の引掛り判定条件「Vb>Vst」で採用する値V1及びV2が「V1<V2」の関係に設定されていることである。
つまり、ドア201が開放しているときの第3の引掛り判定条件(ステップS526の条件「Vb>Vst」)で採用するVstの値”V1”は、ドア201が閉止しているときの第3の引掛り判定条件(ステップS426の条件「Vb>Vst」)で採用するVstの値”V2”よりも緩く設定されている。
以上の説明から明らかなように、実施例2のシートベルト装置10は次の作用、効果を有する。すなわち、シートベルト装置10では、乗員11がベルト13を非装着状態にしたことによって(図10のステップS101でYESの判断)、ベルトリール22がベルト13を巻き取っているときに(図13のステップS409)、ドア201を開けた場合(図13のステップS412でNOの判断)、制御装置26は、何らかの外力によってベルト13がベルトリール22から引出されることを規制するように、モータ23に供給する駆動電流を増加させるべく制御する(図15のステップS524、S536)。
このため、ベルトリール22によるベルト13の巻き取り動作は、停止し難くなり、円滑に行われる。ベルト13には、ベルトリール22に巻き取られないことによる、弛みが発生しにくい。ベルト13に弛みが無いので、ベルト13が車室内の突起物に引っ掛かったり、開閉したドア201に挟まることを防止できる。
このように、乗員11がドア201を開けて、車両1から降りようとしているとき、または降りたときにおいて、乗員11の身体から外されたベルト13を、ベルトリール22に確実に且つ円滑に巻き取って、収納することができる。
さらに、制御装置26は、乗員11がベルト13を非装着状態にしたことによって(図10のステップS101でYESの判断)、ベルトリール22がベルト13を巻き取っているときに(図13のステップS409)、車両1の一部に対するベルト13の引掛り状態が発生したことを判定して(図14のステップS426、図15のS526)、巻き取りを停止するための、第3の引掛り判定条件を予め設定している(図13のステップS412、S413、S417)。
このように、ドア201を開けた状態のときの第3の引掛り判定条件(図13のステップS415、図15のS526)は、ドア201を閉じた状態のときの第3の引掛り判定条件(図13のステップS413、図14のS426)よりも、緩く設定されている(つまり、V1<V2である)。
このため、ベルトリール22によるベルト13の巻き取り動作は、停止し難くなり、円滑に行われる。ベルト13には、ベルトリール22に巻き取られないことによる、弛みが発生しにくい。ベルト13に弛みが無いので、ベルト13が車室内の突起物に引っ掛かったり、開閉したドア201に挟まることを防止できる。
このように、乗員11がドア201を開けて、車両1から降りようとしているとき、または降りたときにおいて、乗員11の身体から外されたベルト13を、ベルトリール22に確実に且つ円滑に巻き取って、収納することができる。
さらに、制御装置26は、ベルト13が装着状態から非装着状態に変化したことをバックルスイッチ19が検知したときから(図10のステップS101でYESの判断)、所定の待機時間ta,tbを経過した後に(図13のステップS405〜S408)、収納制御を実行するとともに(図13のステップS409)、ドアスイッチ202がドア201の開放を検知したときには(図13のステップS403でYESの判断)、待機時間taを短縮する(図13のステップS406)。
このため、乗員11がベルト13を外したときには、所定の待機時間ta,tbを経過した後に、ベルトリール22でベルト13を巻き取り始める。ベルト13を外した直後に、ベルト13が巻き取られないので、一旦外したベルト13を直ぐに再び装着することが容易である。
また、ドア201が開放されたときの待機時間taを、ドア201が閉止状態であるときに比べて、短縮させた。このため、ドア201を開けたときには、ベルトリール22によるベルト巻き取り開始タイミングは早い。従って、開閉させたドア201にベルト13が挟まることを防止できる。
このように、乗員11がドア201を開けて車両1から降りるときには、外されたベルト13をベルトリール22に速やかに且つ確実に巻き取ることができる。しかも、ドア201を開けることなく、一旦外したベルト13の再装着を円滑に且つ容易に行うことができる。
さらに、制御装置26は、ドアスイッチ202が正常である場合において(図13のステップS411でYESの判断)、ドアスイッチ202がドア201の開放を検知したときには(図13のステップS412でNOの判断)、この検知した後のベルト巻き取り速度を高めるように(図13のステップS416)、モータ23の回転速度を制御する(図15のステップS527〜S530)構成である。つまり、目標巻取り速度Vtcの値を、Vt1よりも大きいVt2に設定する。
一般に、ドア201が開けられたときには、ベルト13を再装着する可能性が低い。このときには、ベルト13の巻き取り速度を積極的に高めるようにした。このため、開閉させたドア201にベルト13が挟まることを防止できる。
さらに、制御装置26は、車両1が走行状態であることを車速センサ203によって検知し(図10のステップS108でNOの判断)、且つドア201が開放状態であることをドアスイッチ202によって検知したときには(図10のステップS110でYESの判断)、ドアスイッチ202に故障が発生した、又はドア201が半ドア状態であると判断して(図10のステップS111、図13のステップS411)、その後におけるドアスイッチ202の検知結果にかかわらず、ベルト巻き取り速度を高めるように(図13のステップS418)、モータ23の回転速度を制御する(図14のステップS427〜S430)構成である。つまり、目標巻取り速度Vtcの値を、ドア閉止時のVt1よりも大きい、Vtmに設定する。
例えば、ドア201が半ドア状態のときやドアスイッチ202に故障が発生したときには、外したベルト13の巻き取り速度が遅いと、ドア201を全閉にしたときに、ドア201にベルト13が挟まってしまう心配がある。これに対して、制御装置26は、車速センサ203が車両1の走行を検知し、且つ、ドアスイッチ202がドア201の開放を検知したときに、ベルト13の巻き取り速度を高めるようにした。このため、ドア201を閉め直したときに、ドア201にベルト13が挟まることを防止できる。
さらに、制御装置26は、ドアスイッチ202が正常である場合において(図13のステップS411でYESの判断)、車両1が走行状態であることを車速センサ203によって検知し(図10のステップS108でNOの判断)、且つ、ドア201が閉止状態であることをドアスイッチ202によって検知したときには(図10のステップS110でNOの判断、図13のステップS412でYESの判断)、ドア201が開放状態であるときよりも、ベルト巻き取り速度を低速に設定するように(図13のステップS414)、モータ23の回転速度を制御する(図14のステップS427〜S430)構成である。つまり、目標巻取り速度Vtcの値を、VtmやVt2よりも小さいVt1に設定する。
ドア201が閉じているときには、外したベルト13の巻き取り速度が遅くても、ドア201にベルト13が挟まる心配はない。一般に、ベルト13を巻き取るときに発生する作動音は、巻き取り速度が早いほど大きくなる傾向がある。これに対して、制御装置26は、車速センサ203が車両1の走行を検知し、且つ、ドアスイッチ202がドア201の閉止を検知したときには、ドア201が開放状態であるときよりも、ベルト13の巻き取り速度を低速に設定した。このため、ベルト13を巻き取るときに発生する作動音を、低減することができる。この結果、車室内の乗員11にとって、快適性を高めることができる。
ところで、実施例2において、ベルト13の目標巻取り速度Vtcについては、図16に示すようにマップによって設定してもよい。図16は、横軸を時間tiとし縦軸をベルト13の目標巻取り速度Vtcとして、時間tiの経過に伴ってVtcの設定を変化させるマップの一例を示している。
図16において、各特性線Q1〜Q3は次の通りである。
破線によって表された特性線Q1は、ドア201の閉止状態におけるVtcの値を設定するためのマップ(ドア閉止時のマップ)を示している。
一点鎖線によって表された特性線Q2は、ドア201の開放状態におけるVtcの値の値を設定するためのマップ(ドア開放時のマップ)を示している。
実線によって表された特性線Q3は、ドアスイッチ202が故障したときにおけるVtcの値を設定するためのマップ(ドアスイッチ故障時のマップ)を示している。
各マップQ1〜Q3は、時間tiが経過するにつれてVtcの値を段階的に低減させた特性を有している。例えば、0〜ti1の時間帯、ti1〜ti2の時間帯、ti2〜ti3の時間帯で、Vtcの値が段階的に低減する。この場合、0からti3までの時間において、どの時間帯においても、ドア開放時のマップQ2、ドアスイッチ故障時のマップQ3、ドア閉止時のマップQ1の順に、設定値が低くなるように特性が設定される。
また、値Vtcについては、時間帯毎に段階的に低減させる他に、ベルトリール22でベルト13を巻き取る、巻き取り区間毎に段階的に低減させることもできる。
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。