図1は、車両10に備えたシート20とシートベルト装置30を側方から見た状態で表している。図2は、車室11に設置されたシート20とシートベルト装置30を、正面から見た状態で表している。図1及び図2に示されたシート20は、運転者Mn(乗員Mn)が座る運転席として例示されている。また、シートベルト装置30は、運転者Mnのための装置を例示している。
シート20は、シートクッション21とシートバック22とヘッドレスト23とからなる。車両用シートベルト装置30は、シート20に着座した乗員Mnをベルト31(シートベルト、ウェビングとも言う。)によって拘束するものであり、リトラクタ41(ベルト巻取り器41)を備えている。シートベルト装置30によれば、乗員Mnの一方の肩部と腰部を同時に拘束するベルト31を、リトラクタ41によって巻き取ることができる。
このシートベルト装置30は、ベルト31をアッパアンカ32とセンタアンカ33とロアアンカ34の、3つのアンカによって支持する3点支持式の構成である。アッパアンカ32は、車体12の側部において、上部に設けられている。センタアンカ33は、シート20に対し、アッパアンカ32とは反対側の下部に設けられている。ロアアンカ34は、アッパアンカ32側の下部に設けられている。
ベルト31は、乗員Mnの一方の肩部を拘束するショルダベルト31aと、乗員Mnの腰部を拘束するラップベルト31bとからなる。ショルダベルト31aとラップベルト31bとの間(ベルト31の折返し部)には、タング35がベルト長手方向に移動可能に設けられている。このタング35は、センタアンカ33に固定されたバックル36に対して、取外し可能にワンタッチで装着される構成である。
バックル36は、バックルスイッチ37を内蔵している。このバックルスイッチ37は、バックル36にタング35が装着されているときにオフ作動し、バックル36からタング35が解除されたときに、オフ状態からオン状態に反転する構成である。つまり、バックルスイッチ37は、ベルト31が装着状態のときにオフ(off)信号を発し、ベルト31が非装着状態(外れた状態)のときに、オン(on)信号を発する。このようなバックルスイッチ37は、ベルト31の装着状態を検知するベルト装着状態検知部に相当する。
図2に示すように、リトラクタ41は、ベルト31を巻回するベルトリール42と、このベルトリール42を回転駆動する電動モータ43(以下、単に「モータ43」と言う)とからなる。つまり、リトラクタ41は、車両10の運転状態に応じて(車両10の緊急時を含む)、モータ43によりベルトリール42を回転駆動することによって、ベルト31の緩み部分を迅速に巻き取る機構、いわゆる電動式プリテンショナを有している。
ベルトリール42は、ハウジング44内に回転可能に収納されているとともに、ショルダベルト31aの一端部を結合したものである。さらに、このベルトリール42は、ショルダベルト31aを巻き取る方向に、リターンスプリング45によって付勢されている。このため、ベルトリール42は、ベルト31を巻き取り可能である。ベルト31は、通常状態において、リターンスプリング45の付勢力に抗して、ベルトリール42から引き出し可能である。
図3はシートベルト装置30の制御回路を示している。シートベルト装置30の制御回路は、上記バックルスイッチ37とイグニションスイッチ51とドア開閉状態検知部52と走行状態検知部53とベルト巻取り位置検知部54と制御部81とドライバ回路82と上記モータ43とからなる。
イグニションスイッチ51は、図示せぬ走行用動力源(エンジンやモータ)を始動するための周知のメインスイッチである。
ドア開閉状態検知部52は、図1に示すドア13が閉じていることを検知したときにオフ(off)信号を発するとともに、ドア13が開いていることを検知したときにオン(on)信号を発するものであり、例えばドアスイッチから成る。以下、ドア開閉状態検知部52のことを適宜「ドアスイッチ52」と言い換える。
走行状態検知部53は、図1に示す車両10の走行状態(走行、停止)を検知するものであり、例えば車速を検知する車速センサから成る。以下、走行状態検知部53のことを適宜「車速センサ53」と言い換える。
ベルト巻取り位置検知部54は、ベルトリール42によるベルト31の巻き取り位置を検知するものである。このベルト巻取り位置検知部54は、回転センサ55と回転方向判断部56と回転角判断部57と回転角変化判断部58とからなる。
回転センサ55は、ベルトリール42の回転を検知するものであり、例えば、ベルトリール42の軸に連結された磁気ディスクと、磁気ディスクの周囲に配置された2個のホールICとの、組み合わせからなる、周知の磁気センサによって構成される。磁気ディスクは、ベルトリール42と連動して回転する。2個のホールICから発せられた各々のパルス信号は、互いに所定の位相差を有する。このため、各々のパルス信号に基づいてベルトリール42の回転方向を検出することができる。
回転方向判断部56は、回転センサ55が発した各パルス信号に基づいて、ベルトリール42の回転方向を判断し、回転方向信号を発する。回転センサ55と回転方向判断部56の組み合わせ構造は、回転方向検知部を構成する。
回転角判断部57は、回転センサ55が発した各パルス信号に基づいて、ベルトリール42の回転角を判断し、回転角信号(回転位置信号)を発する。回転センサ55と回転角判断部57の組み合わせ構造は、回転角検知部を構成する。
回転角変化判断部58は、回転角判断部57が発した回転角信号の変化状態を判断することによって、ベルトリール42の回転角の変化を判断し、この回転角の変化に係る信号、つまり、回転角変化信号(回転速度信号)を発するものである。単位時間当たりの回転角の変化を求めることにより、ベルトリール42の回転速度に係る信号を得ることが可能となる。回転センサ55と回転角判断部57と回転角変化判断部58の組み合わせ構造は、回転角変化検知部を構成する。
これらの回転方向判断部56、回転角判断部57及び回転角変化判断部58から出力された各信号は、ベルトリール42によるベルト31(図1参照)の巻取り位置の検知情報として用いられる。
制御部81は、バックルスイッチ37とイグニションスイッチ51とドア開閉状態検知部52(ドアスイッチ52)と走行状態検知部53(車速センサ53)とベルト巻取り位置検知部54とから受けた信号に基づき、ドライバ回路82を介してモータ43を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータからなる。
ドライバ回路82は、制御部81の制御信号に応じて、モータ43に供給される駆動電流を制御する、モータ駆動制御部である。
ところで、制御部81には、電源回路61から電力が供給される。この電源回路61の作動は、イグニションスイッチ回路62とドアスイッチ回路63とバックルスイッチ回路64における、いずれか1つ又は複数によって切り替えられる。
電源回路61は、電源IC65(電力供給回路65)と、この電源IC65の作動を切り替えるための第1トランジスタT1とを有する。第1トランジスタT1は、PNP型トランジスタからなる。制御部81のウエイクアップ端子81a(起動信号入力端子81a)は、第1逆流防止用ダイオードD1を介して第1トランジスタT1のベースに接続されている。
電源IC65は、第1トランジスタT1の信号に応じて、待機電力Wsと通常作動電力Wnのいずれか一方を、制御部81に供給するための電力供給回路である。待機電力Wsは、制御部81が何の制御もすることなく、待機状態(スリープ状態)を維持することが可能な程度の低消費電力である。通常作動電力Wnは、制御部81が待機状態から起動して、モータ43を制御するための、通常の作動状態を維持することが可能な程度の比較的大きい電力である。
イグニションスイッチ回路62は、イグニションスイッチ51と第2トランジスタT2と第2逆流防止用ダイオードD2とを有する。第2トランジスタT2は、NPN型トランジスタからなる。バッテリ(電源)の正極+Vccは、イグニションスイッチ51と第2逆流防止用ダイオードD2を介して第2トランジスタT2のベースに接続されている。第2トランジスタT2のコレクタは、第1トランジスタT1のベースに接続されている。第2トランジスタT2のエミッタは、アースに接続されている。
ドアスイッチ回路63は、ドアスイッチ52と第3トランジスタT3と第3逆流防止用ダイオードD3とを有する。第3トランジスタT3は、PNP型トランジスタからなる。上記電源回路61における第1トランジスタT1のベースは、第3逆流防止用ダイオードD3とドアスイッチ52を介してアースに接続されている。第3逆流防止用ダイオードD3とドアスイッチ52との接続点P1は、第3トランジスタT3のベースにも接続されている。第3トランジスタT3のエミッタは、電源の正極+Vccに接続されている。第3トランジスタT3のコレクタは、制御部81のドア開閉信号入力端子81bに接続されるとともに、抵抗R3を介してアースに接続されている。
バックルスイッチ回路64は、バックルスイッチ37と第4トランジスタT4と第4逆流防止用ダイオードD4とを有する。第4トランジスタT4は、PNP型トランジスタからなる。上記電源回路61における第1トランジスタT1のベースは、第4逆流防止用ダイオードD4とバックルスイッチ37を介してアースに接続されている。第4逆流防止用ダイオードD4とバックルスイッチ37との接続点P2は、第4トランジスタT4のベースにも接続されている。第4トランジスタT4のエミッタは、電源の正極+Vccに接続されている。第4トランジスタT4のコレクタは、制御部81のベルト装着信号入力端子81cに接続されるとともに、抵抗R4を介してアースに接続されている。
次に、上記の各回路61〜64及び制御部81の作動関係について説明する。今、図3に示すように、バックルスイッチ37、イグニションスイッチ51及びドアスイッチ52は、いずれもオフ状態にある。このため、全てのトランジスタT1〜T4はオフ状態にある。この状態において、電源IC65は制御部81に待機電流Isを供給している。制御部81は待機状態を維持している。その後、バックルスイッチ37、イグニションスイッチ51又はドアスイッチ52のいずれか1つがオンになると、次の通りになる。
オフ状態のイグニションスイッチ51を、オン操作した場合には、第2トランジスタT2がオンになる。この結果、第1トランジスタT1はオンになる。
また、イグニションスイッチ51のオフ状態において、閉止状態のドア13(図1参照)を開放することによって、ドアスイッチ52がオン作動した場合には、第1トランジスタT1及び第3トランジスタT3はオンになる。第3トランジスタT3のオン作動に応じて、ドア開閉信号入力端子81bの電位は、低レベルから高レベルに反転する。このように、制御部81は、第3トランジスタT3からドア開閉信号入力端子81bにオン信号を受けることによって、ドアスイッチ52がオン作動した(ドア13が開放した)ことを認識する。
また、イグニションスイッチ51のオフ状態において、図1に示すバックル36に装着されている状態のタング35を解除することによって、バックルスイッチ37がオン作動した場合には、第1トランジスタT1及び第4トランジスタT4はオンになる。第4トランジスタT4のオン作動に応じて、ベルト装着信号入力端子81cの電位は、低レベルから高レベルに反転する。このように、制御部81は、第4トランジスタT4からベルト装着信号入力端子81cにオン信号を受けることによって、バックルスイッチ37がオン作動した(バックル36からタング35が解除された)ことを認識する。
上述のように、バックルスイッチ37、イグニションスイッチ51又はドアスイッチ52がオン作動することにより、第1トランジスタT1はオンになる。電源IC65は、第1トランジスタT1からオン信号を受けている間、制御部81に通常作動電流Iwを供給する。
しかも、イグニションスイッチ51のオンに応じて第2トランジスタT2がオンになり、この結果、ウエイクアップ端子81aの電位は高レベルから低レベルに反転する。また、ドアスイッチ52がオン作動することにより、ウエイクアップ端子81aの電位は高レベルから低レベルに反転する。また、バックルスイッチ37がオン作動することにより、ウエイクアップ端子81aの電位は高レベルから低レベルに反転する。
制御部81は、ウエイクアップ端子81aの電位が高レベルから低レベルに変化したことを受けて、ベルト収納制御システムが起動したと判断し、待機状態から通常のモータ制御状態に移行する。なお、制御部81が、「ベルト収納制御システムが起動したか否かを判断する」構成の詳細については、後述する(図5のステップS01参照)。
その後、ドアスイッチ52及びバックルスイッチ37が、共にオフ状態であるときにおいて、イグニションスイッチ51がオン状態からオフ状態に変化したときに、第1トランジスタT1はオン状態からオフに反転する。この結果、電源IC65は、制御部81に供給する電力を、待機電力Wsに切り替える。制御部81は、低消費電力となる待機状態に移行する。
その後、バックルスイッチ37、イグニションスイッチ51又はドアスイッチ52がオン作動したときに、電源IC65は、制御部81に供給する電力を、通常作動電流Iwに切り替える。しかも、ウエイクアップ端子81aの電位が高レベルから低レベルに変化する。この結果、制御部81は待機状態から通常の作動状態に復帰する。
上記ドアスイッチ回路63とバックルスイッチ回路64の組み合わせの構成は、復帰状態判別部66をなす。復帰状態判別部66は、バックルスイッチ37とドアスイッチ52の、どちらかのスイッチのオン作動によって、制御部81が待機状態から通常の作動状態に復帰したかを判別する。
つまり、ドアスイッチ52がオン作動すると、接続点P1の電位が低下する。この結果、復帰状態判別部66は、ドアスイッチ52がオン作動したと判別することができる。この場合には、第3トランジスタT3がオンになり、ドア開閉信号入力端子81bの電位を高レベルにする(復帰状態判別部66から制御部81へ、ドア開放の判別信号を発する)。
一方、バックルスイッチ37がオン作動すると、接続点P2の電位が低下する。この結果、復帰状態判別部66は、バックルスイッチ37がオン作動したと判別することができる。この場合には、第4トランジスタT4がオンになり、ベルト装着信号入力端子81cの電位を高レベルにする(復帰状態判別部66から制御部81へ、ベルト解除の判別信号を発する)。
制御部81は、復帰状態判別部66の判別結果、つまり第3トランジスタT3と第4トランジスタT4の、どちらがオン作動したかに基づき、モータ43によるベルト31の巻き取りによる収納制御を実行することができる。
次に、制御部81が起動した直後におけるベルト31の巻き取り位置Aoを、図4に基づいて説明する。図4は、バックル36からタング35が外され、ベルトリール42によってベルト31が概ね完全に巻き取られた状態を示している。このとき、ベルト31は、ベルトリール42によって概ね完全に巻き取られた位置Ao、つまり、ハウジング44内に全収納された原点位置Aoにある。ここで、ベルト31の巻き取り位置Aoについては、説明の理解を容易にするために、タング35の中央位置を基準とするが、これに限定されるものではない。このベルト31の巻き取り位置Aoは、図3に示すベルト巻取り位置検知部54によって検知される。
シート20に着座している乗員Mnは、巻き取り位置Aoに位置しているタング35を、白抜き矢印のように引いて、バックル36に装着することができる。この結果、ベルト31は装着状態になる。その後、バックル36からタング35を外したときに、ベルトリール42はベルト31を巻き取り位置Aoまで巻き取る。
ところで、モータ43の動力によって、ベルトリール42がベルト31を巻き取っているときに、ベルト31が車体12や乗員Mnの身体に引っ掛かると、ベルトリール42はベルト13を巻き取ることができない。
これに対して、制御部81は、モータ43によるベルト31の巻き取り駆動を一時停止するとともに、この巻き取り駆動を所定の試行回数だけ再試行(リトライ)するようにモータ43を制御する。再試行を繰り返しているうちに、ベルトリール42はベルト31を巻き取り位置Aoまで巻き取る。
しかしながら、制御部81が起動した直後におけるベルト31の巻き取り位置Aoは、常に一定であるとは限らない。例えば、シートベルト装置30を長期にわたって使用しなかったことに起因して、ベルト31に弛みが発生している場合などには、巻き取り位置Aoに若干の位置ずれが生じる。このため、ベルト31が巻き取り位置Aoの近傍まで巻き取られているにもかかわらず、制御部81は、ベルト31に引っ掛かり状態が発生したと判断して、再試行を繰り返すことがあり得る。巻き取り位置Aoの近傍において、巻き取り駆動を再試行する度に駆動音が発生したのでは、乗員Mnにとって煩わしい。また、再試行を繰り返していると、乗員Mnが再びベルト31を装着するときの妨げになる。
これに対して、本発明においては、ベルト31の巻き取り位置Aoを基準とする、ベルト位置基準範囲A1を次のように設定した。制御部81が起動した直後における巻き取り位置Ao、つまり原点位置Aoに対して、ベルト31が巻き取られる方向の限界位置ArLを、「最短位置ArL」とする。また、原点位置Aoに対して、ベルト31が引き出される方向の限界位置ArHを、「最長位置ArH」とする。最短位置ArLは、原点位置Aoから巻き取り許容値αを減算した値である(ArL=Ao−α)。最長位置ArHは、原点位置Aoに引出し許容値βを加算した値である(ArH=Ao+β)。ベルト位置基準範囲A1は、最短位置ArLから最長位置ArHまでの範囲に設定される。
なお、上述のように、ベルトリール42は、ショルダベルト31aを巻き取る方向に、図示せぬリターンスプリングによって付勢されている。ベルト位置基準範囲A1の大きさ、つまり、巻き取り許容値α及び引出し許容値βの各の大きさについては、リターンスプリングの付勢力によって、ベルト31が全収納されるように設定されることが好ましい。
シート20に着座している乗員Mnは、ベルト位置基準範囲A1に位置しているタング35を、白抜き矢印のように引いて、バックル36に装着することができる。この結果、ベルト31は装着状態になる。最長位置ArHからバックル36までの範囲A2のことを「ベルト引出し区間A2」と言うことにする。ベルト引出し区間A2は、ベルト位置基準範囲A1を外れている。
ベルトリール42がベルト31を巻き取っているときに、ベルト31の引っ掛かり状態は、ベルト引出し区間A2において発生しやすい。より円滑にベルト31を収納するには、巻き取り駆動を再試行することが可能な回数Cnは、多いことが好ましい。
一方、ベルト31がベルト位置基準範囲A1まで巻き取られたときには、引っ掛かり状態が発生しにくい。このため、再試行することが可能な回数Cnは少ないことが好ましい。巻き取り駆動を再試行する度に駆動音が発生するからである。また、再試行を繰り返していると、乗員Mnが再びベルト31を装着するときの妨げになる。
これに対して、本発明においては次のようにした。引掛り状態が発生したときの、ベルト31の巻き取り位置をAroとする(実際の巻き取り位置Aro)。実際の巻き取り位置Aroが、ベルト位置基準範囲A1に入っている(ArL≦Aro≦ArH)ときにおいて、再試行することが可能な回数Cnを、”N2”回とする。実際の巻き取り位置Aroが、ベルト引出し区間A2に入っているときにおいて、再試行することが可能な回数Cnを、”N3”回とする。N2はN3よりも小さい。
このようにすることによって、引掛り状態が発生したときのベルト31の巻き取り位置Aroが、ベルト位置基準範囲A1を外れているときには、再試行を多く繰り返して、より円滑にベルト31をハウジング44内に全収納することができる。
一方、引掛り状態が発生したときのベルト31の巻き取り位置Aroが、ベルト位置基準範囲A1に入っているときには、再試行をすることが可能な回数Cnが少ないので、巻き取り駆動を再試行するときに発生する駆動音を、抑制することができる。しかも、乗員Mnがベルト31を再び装着することを、より一層容易にすることができる。
さらには、ベルト31の巻き取り位置Aroが、ベルト位置基準範囲A1に入っているときに、再試行をすることが可能な回数Cnを零(N2=0)とすることが、より好ましい。再試行しないので、制御部81によるベルト巻き取り制御が行われていることを、乗員Mnは意識しなくてすみ、煩わしさがない。
次に、制御部81(図3参照)をマイクロコンピュータとした場合の制御フローについて、図1〜図4を参照しつつ、図5〜図9に基づき説明する。
図5は、制御部81(図3参照)によって実行されるベルト収納制御の一例を示す制御フローチャート(メインルーチン)を示している。制御部81は、先ず、ベルト収納制御システムが起動したか否かを判断する(ステップS01)。図3に示すバックルスイッチ37、イグニションスイッチ51及びドアスイッチ52の全てがオフ状態にある場合には、ベルト収納制御システムは起動しない、いわゆる待機状態(スリープ状態)にある。
その後、バックルスイッチ37、イグニションスイッチ51及びドアスイッチ52の、いずれか1つがオンに反転したときに、制御部81におけるウエイクアップ端子81aの電位が、高レベルから低レベルに変化する。このときに、ステップS01において、ベルト収納制御システムが起動した、つまり制御部81が起動したと判断して、次のステップS02に進む。
ステップS02においては初期設定をする。つまり、収納実行フラグFaを”0”にセットし(Fa=0)、スイッチ故障フラグFcを”0”にセットし(Fc=0)、ドア開制御フラグFdを”0”にセットする(Fd=0)。スイッチ故障フラグFcは、ドアスイッチ52に故障が発生したか否かを判断するためのフラグである。
次に、ステップS03において、現時点、つまり上記ステップS01において、ベルト収納制御システムが起動したと判断した直後の、ベルト31の巻き取り位置Aoを検知する。次に、ステップS04において、ベルト31の巻き取り位置Aoを基準として、ベルト位置基準範囲A1を設定する。具体的には、巻き取り位置Aoから巻き取り許容値αを減算して最短位置ArLを設定するとともに(ArL=Ao−α)、巻き取り位置Aoに引出し許容値βを加算して最長位置ArHを設定する(ArH=Ao+β)。
次に、ステップS05において、ベルト状態監視制御を実行する。この制御については、後述するサブルーチン(図6参照)によって実行される。次に、ステップS06において、イグニションスイッチ51がオフ(off)であるか否かを判断する。イグニションスイッチ51がオン(on)状態を維持している間は、ステップS05における通常のベルト収納制御を続ける。その後、イグニションスイッチ51がオフに切り替わったと判断したときには、次のステップS07に進む。
ステップS07においては、予め設定されている一定時間(経過時間)が経過したか否かを判断する。つまり、イグニションスイッチ51がオフ(off)に切り替わったときに(ステップS06)、このオフ状態が一定の経過時間にわたって持続している間(ステップS07)は、ステップS05におけるベルト状態監視制御を続け、一定の経過時間が経過した後には、ステップS05におけるベルト状態監視制御を終了する。その後、バックルスイッチ37、イグニションスイッチ51及びドアスイッチ52の、いずれか1つがオン(on)になるまで、ベルト収納制御システムはスリープ状態に入る。このように、ステップS05は、イグニションスイッチ51がオン(on)状態の間、常時実行される。
ところで、上記経過時間を設定していない場合には、イグニションスイッチ51を、オフ操作した直後に再びオン操作した場合に、ベルト収納制御システムは停止、起動を短時間に繰り返すことになる。これでは、乗員Mnが煩わしさを感じる。このような煩わしさを防ぐために、ステップS07において経過時間を設定した。
図6は、図5に示されたステップS05、つまり、ベルト状態監視制御を実行するための、サブルーチンを示している。
図6に示すサブルーチンにおいては、先ず、ステップS101において、イグニションスイッチ51がオフ(off)であるか否かを判断する。ここで、イグニションスイッチ51がオン(on)であると判断した場合には、イグニションスイッチ51によって制御部81が起動した、つまり、待機状態から作動状態に復帰したと、判断したことになる。この場合には、ステップS102において、第3の復帰条件を満足したと決定した(宣言した)後に、ステップS103に進む。
ステップS103においては、現時点における実際のベルト31の巻き取り位置Aroがベルト位置基準範囲A1(図4参照)に入っているか否かを判断する。ステップS103において、巻き取り位置Aroがベルト位置基準範囲A1に入っている(ArL≦Aro≦ArH)と判断した場合には、次にステップS104及びS105を実行する。先ず、ステップS104において、基準再試行回数Cnの値をN2に設定する(Cn=N2)。N2の値は例えば”0”である。次に、ステップS105において、収納実行フラグFaを1とする(Fa=1)。
一方、ステップS103において、巻き取り位置Aroがベルト位置基準範囲A1から外れている、つまり図4に示すベルト引出し区間A2にあると判断した場合には、次にステップS106及びS107を実行する。先ず、ステップS106において、基準再試行回数Cnの値をN3に設定する(Cn=N3)。N3の値は例えば”1”である。このように、値N2は値N3よりも小さく設定されている(N2<N3)。次に、ステップS107において、収納実行フラグFaを1とする(Fa=1)。
上記ステップS101において、イグニションスイッチ51がオフ(off)であると判断した場合には、次に、ドア13が閉じているか否か、つまり、ドアスイッチ52のスイッチ信号がオフ(off)であるか否かを判断する(ステップS108)。ここで、ドア13が開いている、つまり、ドアスイッチ52のスイッチ信号がオン(on)であると判断した場合には、ドア13によって制御部81が起動した、つまり、待機状態から作動状態に復帰したと、判断したことになる。この場合には、ステップS109において、第2の復帰条件を満足したと決定した(宣言した)後に、ステップS110に進む。
ステップS110においては、ドア開制御フラグFdを1と設定し、この設定した時点から一定時間Δt1にわたって、Fd=1の状態を保持し続ける。そして、Fd=1に設定とした直後に、ステップS111において収納実行フラグFaを1とする(Fa=1)。
上記ステップS108において、ドア13が閉じていると判断した場合には、ステップS112において、バックル36によって制御部81が起動する、つまり、第1の復帰条件によって起動すると宣言した後に、ステップS113に進む。
ステップS113においては、バックル36からタング35が解除された状態、つまり、バックルスイッチ37のスイッチ信号がオン(on)状態であるか否かを判断する。ステップS113において、バックル36にタング35が装着された状態であると判断した場合には、ステップS114において収納実行フラグFaを0とする(Fa=0)。一方、ステップS113において、バックル36からタング35が解除された状態であると判断した場合には、ステップS115に進む。
ステップS115においては、ベルト引出し速度Vpbが基準引出し速度Vpsよりも大きいか否かを判断する。ここで、ベルト引出し速度Vpbとは、何らかの外力によって、ベルトリール42からベルト31が引き出される場合において、ベルト31が引き出される速度のことである。基準引出し速度Vpsは、ベルトリール42からベルト31が引き出されつつあることを判断するための一定の基準値であり、予め設定されている。「Vpb>Vps」であると判断した場合には、次に、起動待機タイマの起動待機時間twaを”0”にリセットした上で、この起動待機タイマをスタートする(ステップS116)。次に、ステップS117及びS118に進む。
ステップS117においては、ベルトリール42から引き出されているベルト31の引出し量Xr(ベルト引出し量Xr)が、基準引出し量Xsよりも大きいか(Xr>Xs)否かを判断する。ベルト引出し量Xrは、図4に示す実際の巻き取り位置Aroに対応する。基準引出し量Xsは、ベルト31がベルトリール42に完全に巻き取られていないことを判断するための、一定の基準値であり、予め設定されている。この基準引出し量Xsは、例えば図4に示す最長位置ArHに対応するように設定される。
ステップS118においては、カウントされた起動待機時間twaが、予め設定されている一定の基準起動待機時間twsを経過したか(twa≧tws)否かを判断する。
そして、起動待機時間twaが基準起動待機時間twsを経過するまでにわたって(ステップS118)、ベルト引出し量Xrが基準引出し量Xsよりも大きいという条件(ステップS117)を満足している場合には、ステップS119において収納実行フラグFaを1とする(Fa=1)。Fa=1であるから、ベルト31を巻き取る指示となる。
また、起動待機時間twaが基準起動待機時間twsを経過するまでの間に(ステップS118)、ベルト引出し量Xrが基準引出し量Xs以下になった(ステップS117)場合には、ステップS120において収納実行フラグFaを0とする(Fa=0)。ベルト31がベルトリール42から引き出されていない状態なので、Fa=0である。Fa=0であるから、ベルト31を巻き取らない指示となる。
上記ステップS115において、ベルト引出し速度Vpbが基準引出し速度Vps以下である場合(Vpb≦Vps)には、上記ステップS103に進む。
このように、ステップS105、S107、S111、S114、S119又はS120において、収納実行フラグFaを設定した後には、実際の車速Scが停車基準値SLを下回っているか否かを判断する(ステップS121)。車速Scは、車速センサ53によって検知された値である。停車基準値SLは、車両10が停止状態にあることを判断するための一定の基準値であり、予め設定されている。
ステップS121において、車速Scが停車基準値SLを下回っている(Sc<SL)、つまり停車状態にあると判断した場合には、そのままステップS122に進む。一方、上記ステップS121において、車速Scが停車基準値SLに達している(Sc≧SL)、つまり車両10が走行状態にあると判断した場合には、次のステップS123に進む。ステップS123においては、ドア13が開いているか否か、つまり、ドアスイッチ52のスイッチ信号がオン(on)であるか否かを判断する。
ステップS121において車両10が走行状態にあるという条件と、ステップS123においてドア13が開いているという条件の、2つの条件を満足した場合には、ドアスイッチ52に故障が発生したと判断し、ステップS124において、スイッチ故障フラグFcを”1”とする(Fc=1)。そして、ステップS122に進む。
ステップS121において車両10が走行状態にあるという条件と、ステップS123においてドア13が閉じているという条件の、2つの条件を満足した場合には、そのままステップS122に進む。
このように、ステップS121、S123、S124を実行した後には、ステップS122において、各々の収納実行フラグFaの内容を踏まえ、収納制御を実行した後に、図6に示すサブルーチンを終了して、図5に示すメインルーチンのステップS05に戻る。なお、ステップS122の収納制御については、後述するサブルーチン(図7〜図9参照)によって実行される。
図7〜図9は、図6に示されたステップS122を実行するためのサブルーチンを示している。
図7に示す、収納制御を実行するためのサブルーチンにおいては、先ず、ステップS201において、収納実行フラグFaが”1”であるか(Fa=1)否かを判断する。ステップS201において、Fa≠1であると判断した場合には、モータ43への通電を停止する(ステップS202)。その後、この図7に示すサブルーチンを終了して、図6に示すサブルーチンのステップS122に戻る。一方、ステップS201においてFa=1であると判断した場合には、ステップS203及びS204に進む。
ステップS203においては、ドア13が開放状態であるか否かを判断する。ステップS204においては、ドア開制御フラグFdが1であるか否かを判断する。
そして、ドア13が開放状態であるという条件(ステップS203)と、ドア開制御フラグFdが1であるという条件(ステップS204)の、2つの条件を満足している場合には、ステップS205に進む。ステップS205においては、待機時間タイマの待機時間twを”0”にリセットした上で、この待機時間タイマをスタートする。次に、ステップS206において、待機時間twが第1の基準待機時間taを経過するまで、待機する。
また、ドア13が閉止状態であるか(ステップS203)、又は、ドア開制御フラグFd≠1である(ステップS204)場合には、ステップS207に進む。ステップS207においては、待機時間タイマの待機時間twを”0”にリセットした上で、この待機時間タイマをスタートする。次に、ステップS208において、待機時間twが第2の基準待機時間tbを経過するまで、待機する。
第1・第2の基準待機時間ta,tbは、予め設定されている一定の時間である。第2の基準待機時間tbは、第1の基準待機時間taよりも大きく設定されている(ta<tb)。
ステップS206又はステップS208の次には、ステップS209に進む。ステップS209においては、モータ43に対し、ベルト巻取り動作を行わせるための通電を開始する。この結果、ベルトリール42はベルト巻取り方向に回転し始める。次に、タイマのカウント時間tcを”0”にリセットした上で、このタイマをスタートする(ステップS210)。
次に、ステップS211において、スイッチ故障フラグFcが”0”であるか(Fc=0)否か、つまり、ドアスイッチ52が正常であるか否かを判断する。ここで、Fc=0であると判断した場合には、ステップS212〜S216が実行され、Fc≠0であると判断した場合には、ステップS217〜S218が実行される。
詳しく述べると、ステップS211においてFc=0であると判断した場合には、ドア13が閉止状態であるか否かを判断する(ステップS212)。ドア13が閉止状態であると判断した場合には、巻取り速度閾値Vstを値”Vs2”に設定する(ステップS213)。次に、目標巻取り速度Vtcを値”Vt1”に設定する(ステップS214)。
一方、ステップS212において、ドア13が開放状態であると判断した場合には、巻取り速度閾値Vstを値”Vs1”に設定する(ステップS215)。次に、目標巻取り速度Vtcを値”Vt2”に設定する(ステップS216)。
上記ステップS211において、Fc≠0であると判断した場合には、ドアスイッチ52に故障が発生したので、その後におけるドアスイッチ52の検知結果にかかわらず、ステップS217及びS218に進む。つまり、巻取り速度閾値Vstを値”Vs2”に設定し(ステップS217)、次に目標巻取り速度Vtcを値”Vtm”に設定する(ステップS218)。
ここで、値”Vs1”及び”Vs2”は、それぞれ実際のベルト巻取り速度と対比するために、予め設定された一定の速度であり、Vs1<Vs2の関係にある。ドア13が開放状態であるときの巻取り速度閾値Vst(つまり、値Vs1)は、ドア13が閉止状態であるときの巻取り速度閾値Vst(つまり、値Vs2)よりも、小さい値に設定されている(Vs1<Vs2)。
目標巻取り速度Vtcとは、ベルトリール42によってベルト31を巻き取る、目標の速度のことである。Vt1、Vt2、値Vtmは、予め設定されている一定の値であり、Vt1よりもVtmが大きい値に設定され、VtmよりもVt2が大きい値に設定されている(Vt1<Vtm<Vt2)。
ステップS214又はS218の次には、ドア13が閉止状態である場合の収納制御のためのステップS221〜S238が実行される(図8参照)。また、ステップS216の次には、ドア13が開放状態である場合の収納制御のためのステップS321〜S339(図9参照)が実行される。
先に、ドア13が閉止状態にある場合における、収納制御のステップS221〜S238について、図8に基づき説明する。
先ず、上記図7に示すS214又はS218を実行した後に、図8に示すステップS221に進む。
ステップS221においては、予め用意された試行回数Crの値を0にリセットする。この試行回数Crはカウンタ値として設定され、収納制御に基づくベルト31の収納動作において生じる、ベルト31の引掛り状態を判定するために使用される。引掛り判定は、カウントされる試行回数Crが上述の基準再試行回数Cnに達しても「引掛りである」という判定状態が維持されたときに確定する。
次に、ステップS222において、カウントされた試行回数Crが基準再試行回数Cnよりも小さいか(Cr<Cn)否かを判断する。ステップS222において、Cr<Cnであると判断した場合には、次のステップS223に進む。ステップS223においては、ベルトリール42の回転角に変化があるか否かを判断する。ここで、回転角変化の有無については、図3に示すベルト巻取り位置検知部54の検知信号に基づいて判断する。つまり、回転角変化の有無については、回転角変化判断部58の信号に基づいて判断する。
ステップS223において、ベルトリール42の回転角に変化があると判断した場合には、次のステップS224に進む。ステップS224においては、ベルトリール42の回転方向が、ベルト巻取り方向であるか否かを判断する。ベルトリール42の回転方向については、図3に示すベルト巻取り位置検知部54の検知信号に基づいて判断する。つまり、ベルト巻取り方向については、回転方向検知部56の信号に基づいて判断する。ステップS224において、回転方向が「ベルト巻取り方向」であると判断した場合には、ステップS225に進む。
ステップS225においては、ベルト31の巻取り速度Vbを求める。この巻取り速度Vbについては、例えば回転角変化判断部58(図3参照)で検知した単位時間当たりのベルトリール42の回転角の変化量(deg./msec)に基づいて求められる。つまり、巻取り速度Vbは、前回変化した時点におけるベルトリール42の回転角Xti−1から、今回変化した時点におけるベルトリール42の回転角Xtiまでの、単位時間当たりの変化量を計測することによって得ることができる。
次に、ステップS226において、巻取り速度Vbが巻取り速度閾値Vstを越えたか(Vb>Vst)否かを判断する。ここで、巻取り速度閾値Vstの値は、上記ステップS214(図7参照)において設定された”Vs2”である。ステップS226において、巻取り速度Vbが巻取り速度閾値Vstを越えた(Vb>Vst)と判断した場合には、次のステップS227〜S230が実行される。
具体的には、巻取り速度Vbから、ドア13が閉止しているときの目標巻取り速度Vtc(つまり、値”Vt1”)を差し引いた、値に応じて、モータ43に供給する駆動電流(通電量)Ibを設定する。つまり、ステップS227においては、条件「(Vb−Vtc)>0」を満たしているか否かを判断する。ステップS229においては、条件「(Vb−Vtc)<0」を満たしているか否かを判断する。
ステップS227において、巻取り速度Vbから目標巻取り速度Vtcを差し引いた値が”正”の値であると判断した場合には((Vb−Vtc)>0)、ベルトリール42によるベルト巻取り力を減らすために、モータ43に供給する駆動電流Ibを所定値だけ減少させて(ステップS228)、ステップS231に進む。
ステップS227がNOの判断をし、且つステップS229において、巻取り速度Vbから目標巻取り速度Vtcを差し引いた値が”負”の値であると判断した場合には((Vb−Vtc)<0)、ベルトリール42によるベルト巻取り力を増すために、モータ43に供給する駆動電流Ibを所定値だけ増加させて(ステップS230)、ステップS231に進む。
実際の巻取り速度Vbから目標巻取り速度Vtcを差し引いた値が、±0であると判断した場合には(ステップS227とS229が共にNOの判断)、モータ43に供給する駆動電流Ibをそのまま維持して、ステップS231に進む。
ステップS231においては、ベルト31が本来の完全収納位置、すなわち図4に示す原点位置Ao(ベルト位置基準範囲A1であればよい)に収納されたか否かを判断する。ベルト31の収納位置については、図3に示すベルト巻取り位置検知部54の検知信号に基づいて判断する。
ステップS231において、ベルト31が完全収納位置まで収納されていないと判断した場合には、上記ステップS211(図7参照)へ戻って、ベルト31が完全収納位置に収納されるまで、巻き取り制御を続ける。一方、ステップS231において、ベルト31が完全収納位置に収納されたと判断した場合には、収納制御が完了したので、モータ43への通電を停止する(ステップS232)。その後、この図7及び図8に示すサブルーチンを終了して、図6に示すサブルーチンのステップS122に戻る。
ところで、制御部81は、上記収納制御を実行中において、次の3つの引掛り判定条件の、少なくともいずれか1つの条件を満足した場合には、ベルト31に引掛り状態が発生したと判定して、モータ43を停止させる構成である。つまり、制御部81は、リトラクタ41によってベルト31を巻き取っているときに、何かの原因によってベルト31に引掛りが生じ、この結果、リトラクタ41の巻取り動作にロック状態が発生したと判断した場合に、モータ43への通電を停止する。
ここで、「引掛り判定条件」とは、収納制御を実行中に車両10の一部(例えば、車室内の突起物やドア13)又は乗員Mnの身体に対する、ベルト31の引掛り状態が発生したことを判定するものであり、予め設定されている。
第1の引掛り判定条件は、ベルトリール42が所定時間tsにわたって停止しているということである。この第1の引掛り判定条件が該当する要因の一例として、次の場合がある。図1に示すドア13等の車体や乗員Mnの身体に、ベルト31が引っ掛かることによって、ベルトリール42はベルト31を巻き取ることができずに、停止する。乗員Mnの身体にベルト31が引っ掛かる例として、乗員Mnが手でベルト31を強く押さえている場合が挙げられる。
第2の引掛り判定条件は、ベルトリール42が逆転、つまりベルト引出し方向に回転しているということである。この第2の引掛り判定条件が該当する要因の一例として、次の場合がある。ベルトリール42によってベルト31を巻き取る力に対し、ベルトリール42からベルト31を引き出す外力が大きい場合に、ベルトリール42はベルト引出し方向に回転する。ベルト31を引き出す外力の例として、図1に示す乗員Mnが手でベルト31を引張る場合が挙げられる。
第3の引掛り判定条件は、ベルトリール42の回転速度が遅すぎるということである。つまり、第3の引掛り判定条件は、ベルトリール42による巻取り速度Vbが、巻取り速度閾値Vstを越えていない(Vb≦Vst)ことである。この第3の条件が該当する要因の一例として、次の場合がある。図1に示すドア13等の車両10の一部や乗員Mnの身体に、ベルト31が軽く引っ掛かることによって、ベルトリール42はベルト31を迅速に巻き取ることができず、巻き取り時間が遅くなる。
先ず、ドア13が閉止状態であるときで、第1の引掛り判定条件の場合について説明する。上記ステップS223において、ベルトリール42の回転角に変化が無いと判断した場合には、次に、この変化が無い状態で、予め設定された一定の所定時間ts(角度変位無し時間ts)が経過したか否かを判断する(ステップS233)。回転角に変化が無い状態で所定時間tsが経過するまでは、ステップS222、S223及びS233を繰り返す。
一方、ステップS233において、回転角に変化が無い状態で所定時間tsが経過したと判断した場合には、次のステップS234に進む。ステップS234においては、一時停止用タイマの一時停止時間tmを”0”にリセットした上で、この一時停止用タイマをスタートする。次に、ステップS235において、モータ43への通電を一次停止する。次に、ステップS236において、カウントされた一時停止時間tmが、予め設定されている一定の基準停止時間tdを経過したか(tm≧td)否かを判断する。そして、一時停止時間tmが基準停止時間tdを経過するまで、ステップS235及びS236を繰り返す。
その後、ステップS236において、一時停止時間tmが基準停止時間tdを経過したと判断した場合には、モータ43に対し、ベルト巻取り動作を行わせるための通電を再開する(ステップS237)。つまり、モータ43を再始動(再試行)する。次に、ステップS238において、試行回数Crを1だけ加算して(Cr=Cr+1)、ステップS222に戻る。
以上の説明から明らかなように、ベルトリール42の回転角に変化が無いと判断した(ステップS223)状態で、且つ、所定時間tsが経過したと判断した(ステップS233)場合を、繰り返す毎に、モータ43を基準停止時間tdだけ一次停止した後に(ステップS234〜S236)、試行回数Crを1つずつ加算カウントする(ステップS238)。
そして、カウントされた試行回数Crが基準再試行回数Cnに達した(Cr≧Cn)と判断したとき(ステップS222)、つまり、巻取り動作のロック状態が確定したと判断したときに、モータ43への通電を停止する(ステップS232)。その後、この図7及び図8に示すサブルーチンを終了して、図6に示すサブルーチンのステップS122に戻る。
つまり、リトラクタ41でベルト31を巻き取っているときに、何かの原因によってベルト31に引掛りが生じることにより、巻取り動作にロック状態が発生したと判断した場合(ステップS223、S233)には、試行回数Crが増大して(ステップS238)、基準再試行回数Cnに達する。この結果、ステップS222において、試行回数Crが基準再試行回数Cnに達した(Cr≧Cn)と判断、つまり、巻取り動作のロック状態が確定したと判断して、モータ43への通電を停止する(ステップS232)。
次に、ドア13が閉止状態であるときで、第2の引掛り判定条件の場合について説明する。ステップS224において、ベルトリール42の回転方向が「ベルト引出し方向」であると判断した場合には、上記ステップS234〜S238を実行した後に、ステップS222に戻る。
つまり、ベルトリール42が「ベルト引出し方向」に回転しているという判断(ステップS224)を繰り返す毎に、モータ43を基準停止時間tdだけ一次停止し(ステップS234〜S236)、その後に試行回数Crを1つずつ加算カウントする(ステップS238)。そして、カウントされた試行回数Crが基準再試行回数Cnに達したと判断したときに(ステップS222)、モータ43への通電を停止する(ステップS232)。その後、この図7及び図8に示すサブルーチンを終了して、図6に示すサブルーチンのステップS122に戻る。
次に、ドア13が閉止状態であるときで、第3の引掛り判定条件の場合について説明する。ステップS226において、巻取り速度Vbが巻取り速度閾値Vstを越えていないという条件(Vb≦Vst)と判断した場合には、上記ステップS234〜S238を実行した後に、ステップS222に戻る。
つまり、Vb≦Vstという判断(ステップS226)を繰り返す毎に、モータ43を基準停止時間tdだけ一次停止し(ステップS234〜S236)、その後に試行回数Crを1つずつ加算カウントする(ステップS238)。そして、カウントされた試行回数Crが基準再試行回数Cnに達したと判断したときに(ステップS222)、モータ43への通電を停止する(ステップS232)。その後、この図7及び図8に示すサブルーチンを終了して、図6に示すサブルーチンのステップS122に戻る。
次に、ドア13が開放状態にある場合における、収納制御のステップS321〜S339について、図9に基づき説明する。
先ず、上記図7に示すステップS216を実行した後に、図9に示すステップS321に進む。ステップS321の実行内容(制御内容)は、図8に示すステップS221の実行内容と実質的に同じである。同様に、S322はS222、S323はS223、S324はS224、S325はS225、S326はS226、S327はS227、S328はS228、S329はS229、S330はS230、S331はS231、S332はS232、S333はS233、S334はS234、S335はS235、S336はS236、S337はS237、S338はS238と、それぞれ実質的に同じである。
このように、ステップS321〜S338は、基本的には前述した図8に示すステップS221〜S238とそれぞれ同じであるので、前述した説明を援用する。
図9に示すドア13が開放している場合における制御内容(ステップS321〜S339)は、図8に示すドア13が閉止している場合における制御内容(ステップS221〜S238)に対し、次の点で相違している。
第1の相違点は、上記「第2の引掛り判定条件」に対する制御内容が相違することである。つまり、ステップS324において、ベルトリール42の回転方向が「ベルト引出し方向」であると判断した場合には、次のステップS339に進む。ステップS339においては、ベルト引出しを阻止する(規制する)ために、モータ43に供給する駆動電流(通電量)を増加する。その後、ステップS322に戻る。
第2の相違点は、ステップS226、S326における第3の引掛り判定条件「Vb>Vst」で採用する値Vs1及びVs2が「Vs1<Vs2」の関係に設定されていることである。
つまり、ドア13が開放しているときの第3の引掛り判定条件(ステップS326の条件「Vb>Vst」)で採用するVstの値”Vs1”は、ドア13が閉止しているときの第3の引掛り判定条件(ステップS226の条件「Vb>Vst」)で採用するVstの値”Vs2”よりも緩く設定されている。
ところで、上記実施例において、ベルト31の目標巻取り速度Vtcについては、図10に示すようにマップによって設定してもよい。図10は、横軸を時間tiとし縦軸をベルト31の目標巻取り速度Vtcとして、時間tiの経過に伴ってVtcの設定を変化させるマップの一例を示している。
図10において、各特性線Q1〜Q3は次の通りである。
破線によって表された特性線Q1は、ドア13の閉止状態におけるVtcの値を設定するためのマップ(ドア閉止時のマップ)を示している。
一点鎖線によって表された特性線Q2は、ドア13の開放状態におけるVtcの値を設定するためのマップ(ドア開放時のマップ)を示している。
実線によって表された特性線Q3は、ドアスイッチ52が故障したときにおけるVtcの値を設定するためのマップ(ドアスイッチ故障時のマップ)を示している。
各マップQ1〜Q3は、時間tiが経過するにつれてVtcの値を段階的に低減させた特性を有している。例えば、0〜ti1の時間帯、ti1〜ti2の時間帯、ti2〜ti3の時間帯で、Vtcの値が段階的に低減する。この場合、0からti3までの時間において、どの時間帯においても、ドア開放時のマップQ2、ドアスイッチ故障時のマップQ3、ドア閉止時のマップQ1の順に、設定値が低くなるように特性が設定される。
また、値Vtcについては、時間帯毎に段階的に低減させる他に、ベルトリール42でベルト31を巻き取る、巻き取り区間毎に段階的に低減させることもできる。
以上の説明をまとめると、次の通りである(図1、図3及び図5参照)。
制御部81は、イグニションスイッチ51がオン状態からオフ状態に変化したときに、通常の作動状態から、低消費電力となる待機状態へ移行する(図5のステップS01)。このときに、電源回路61は制御部81に待機電力Wsを供給する。この結果、制御部81の消費電力を極力低減することができる。
その後に、制御部81は、次の複数の復帰条件の少なくとも1つを満足したと判断した場合に、待機状態から通常の作動状態に復帰する(図5のステップS01)。
第1の復帰条件は、ベルト31が装着状態から非装着状態に変化したということである。バックル36に装着されている状態のタング35を解除することによって、バックルスイッチ37がオフ状態からオン作動した場合に、第1の復帰条件を満足する。このように、ベルト31の装着状態が変化した場合に、第1の復帰条件を満足することになる。
第2の復帰条件は、ドア13が閉止状態から開放状態に変化したということである。閉止状態のドア13を開放することによって、ドアスイッチ52がオフ状態からオン作動した場合に、第2の復帰条件を満足する。
第3の復帰条件は、イグニションスイッチ51がオン操作されたということである。イグニションスイッチ51がオフ状態からオン作動した場合に、第3の復帰条件を満足する。
第1、第2及び第3の復帰条件のいずれか1つを満足した場合には、電源回路61は制御部81に通常作動電力Wnを供給する。複数の復帰条件には、第1の復帰条件と第2の復帰条件とを、少なくとも含んでいることが好ましい。
復帰状態判別部66は、上記複数の復帰条件において、第1の復帰条件と第2の復帰条件の、どの条件によって、制御部81が待機状態から作動状態に復帰したかを判別する構成である。制御部81は、復帰状態判別部66の判別結果に基づき、それぞれ異なる態様でモータ43によってベルト31を巻き取る、収納制御を実行する構成である。
例えば、復帰状態判別部66からベルト装着信号入力端子81cへ判別信号を発した場合、つまり、ベルト装着信号入力端子81cの電位が、低レベルから高レベルに反転した場合に、制御部81は、ベルト31が装着状態から非装着状態に変化したと認識する。そして、制御部81は、モータ43によってベルト31を巻き取る、収納制御を実行する。
また、復帰状態判別部66からドア開閉信号入力端子81bへ判別信号を発した場合、つまり、ドア開閉信号入力端子81bの電位が、低レベルから高レベルに反転した場合に、制御部81は、ドア13が閉止状態から開放状態に変化したと認識する。そして、制御部81は、モータ43によってベルト31を巻き取る、収納制御を実行する。
このように、制御部81が待機状態から作動状態に復帰したときに、例えば、ベルト31が装着状態から非装着状態に変化したという条件と、ドア13が閉止状態から開放状態に変化したという条件の、どの復帰条件を満足したかを、復帰状態判別部66によって判別することができる。そして、復帰状態判別部66の判別結果に基づいて、制御部81がモータ43によってベルト31を巻き取る収納制御を実行するようにした。
つまり、制御部81は、作動状態から待機状態へ移行するときにおける、各種のスイッチの作動状態にかかわらず、「待機状態から作動状態へ復帰したときにおける復帰条件」に応じて、ベルト31の巻き取りをするか否かを、速やかに且つ適切に決定することができる。従って、制御部81は、モータ43によってベルト31を巻き取る収納制御を、より適切に実行することができる。例えば、制御部81は、長時間にわたる待機状態を経過した後に、制御システムが再起動した(通常の作動状態へ復帰した)場合においても、より適切に判断して収納制御をすることが可能となる。
実施例に開示の車両用シートベルト装置30によれば、(1)制御部81が、ドア13が閉止状態から開放状態に変化したと認識して(図6のステップS108)収納制御を実行する際には、ベルト31の引き出しを検知するステップや、ベルト31の巻取り位置を判別するステップを省略して、速やかに収納制御を開始するので、乗員Mnが車両10から速やかに降りる動作を妨げない効果を高める一方、(2)制御部81が、ベルト装着信号に基づいて収納制御を開始する際には(図6のステップS113)、起動待機時間tws(基準起動待機時間tws)を設け、この起動待機時間tws中に収納制御を行わないようにしたので(図6のステップS116,S118)、乗員Mnが意識的にベルト31を再装着する操作の妨げとなることを、確実に防止することができる。
さらに、制御部81は、ベルト31の装着状態が変化したという第1の復帰条件について判断する(図6のステップS113)よりも先に、ドア13が閉止状態から開放状態に変化したという第2の復帰条件を判断する(図6のステップS108)。このため、ベルト31の装着状態についての判断が正確でない場合であっても、乗員Mnの乗降動作への影響を排除することができる。
さらに、制御部81は、ベルト31の装着状態が変化したという第1の復帰条件(図6のステップS113)や、ドア13が閉止状態から開放状態に変化したという第2の復帰条件(図6のステップS108)について判断するよりも先に、イグニションスイッチ51がオフ状態からオン状態に変化したという第3の復帰条件を判断する(図6のステップS101)。一般に、イグニションスイッチ51の操作によって、制御部81が待機状態から作動状態に復帰したときには、乗員Mnの乗降を伴わない可能性が高い。本実施例によれば、乗員Mnが乗降動作中でないということを、速やかに判別することができる。
さらに、制御部81は、復帰状態判別部66の判別結果を受けて収納制御を開始するときに、ベルトリール42からベルト31が引き出されていないと判断した場合には(図6のステップS105)、収納制御を中止する構成である(図6のステップS108及び図7のステップS201〜S202)。
このため、制御部81は、復帰状態判別部66の判別結果を受けてベルト31の巻き取りを開始するときに、ベルト31がベルトリール42に巻き取られている状態の場合には、巻き取り制御を中止する。
従って、制御部81が待機状態から作動状態へ復帰したときに、ベルト31を自動的に巻き取るタイミングに対して、乗員Mnがベルト31を引いて装着しようとするタイミングが一致しても、乗員Mnによる装着動作を阻害することがない。このため、乗員Mnは装着動作をするときに、煩わしさを感じることがない。
なお、本発明では、シート20及びシートベルト装置30は、助手席、後部座席であっても同様の構成とすることができる。
また、制御部81は、回転方向判断部56と回転角判断部57と回転角変化判断部58の一部又は全部を兼ねる構成であってもよい。