JP3830667B2 - 車両用乗員拘束保護装置 - Google Patents

車両用乗員拘束保護装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両に装備される車両用乗員拘束保護装置に関し、特に、乗員を保護するためのシートベルトの巻き取り及び引き出しを行う電動リトラクタを用いた車両用乗員拘束保護装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
シートベルトの巻き取り及び引き出しを行う電動リトラクタを備えた車両用乗員拘束保護装置は、従来より知られている。
【0003】
このような車両用乗員拘束保護装置として、例えば、シートベルト非装着状態からシートベルト装着状態になったことが検出された時及びシートベルトの引き出しが検出された時に、所定の大きさのシートベルト巻き取り力でシートベルトを巻き取り限界まで巻き取り、その後、所定の大きさのシートベルト引き出し力で所定時間シートベルトを引き出し、シートベルトに所定の弛みを与えるようにしたものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の車両用乗員拘束保護装置では、モータを引き出し側に回転させるときにシートベルトがロックしてしまった場合、シートベルトの巻き取り側に働く力がないため、シートベルトはロックされた状態のままとなり、新たにシートベルトの巻き取りが行われる条件を作らない限り、シートベルトの引き出しができなくなるおそれがあった。
【0005】
ここで、シートベルトの巻き取りが行われる条件とは、急ブレーキを踏んだとき、シートベルトを非装着状態にしたとき又は自車両の衝突予知で衝突の危険があると判断されたとき等である。
【0006】
本発明は、上記点に着目してなされたものであり、快適なシートベルト装着環境を提供すると共に乗員を適切に保護することができる車両用乗員拘束保護装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の車両用乗員拘束保護装置は、所定の駆動信号に応じて駆動されるモータと、前記モータとシートベルトを巻装するリールシャフトの動力を連結し、前記モータの駆動に応じてシートベルトの巻き取り及び引き出しを行う電動リトラクタと、前記シートベルトの装着を検出するシートベルト装着検出手段と、前記シートベルト装着検出手段により前記シートベルト乗員により装着されたことが検出されている時該シートベルトを巻き取り限界まで巻き取った後に所定量だけ引き出すことにより、該シートベルトに弛みを付与する弛み付与手段と、前記シートベルトの引き出しをロックするロック手段と、前記シートベルトがロックされていることを検出するロック検出手段とを備えた車両用乗員拘束保護装置において、前記弛み付与手段によって前記シートベルトが引き出され、前記ロック手段により該シートベルトの引き出しがロックされていることが前記ロック検出手段により検出された時に、再度前記弛み付与手段による前記弛み付与動作を最初から行うように制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の構成によれば、ロック手段により該シートベルトの引き出しがロックされた時に、再度弛み付与手段による弛み付与動作を最初から行うように制御されるので、乗員に必ず所定の弛みが与えられ、快適なシートベルト装着環境を提供すると共に乗員を適切に保護することができる。
請求項2の車両用乗員拘束保護装置は、所定の駆動信号に応じて駆動されるモータと、前記モータとシートベルトを巻装するリールシャフトの動力を連結し、前記モータの駆動に応じてシートベルトの巻き取り及び引き出しを行う電動リトラクタと、前記シートベルトの装着を検出するシートベルト装着検出手段と、前記シートベルトの引き出しをロックするロック手段と、前記シートベルトがロックされていることを検出するロック検出手段とを備えた車両用乗員拘束保護装置において、前記シートベルト装着検出手段により前記シートベルトの装着が検出され、前記ロック検出手段により前記シートベルトの引き出しがロックされたことが検出されたときには、前記シートベルトを巻き取りするために前記モータに駆動信号を供給する制御手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3の車両用乗員拘束保護装置は、所定の駆動信号に応じて駆動されるモータと、前記モータとシートベルトを巻装するリールシャフトの動力を連結し、前記モータの駆動に応じてシートベルトの巻き取り及び引き出しを行う電動リトラクタと、前記シートベルトの装着を検出するシートベルト装着検出手段と、前記シートベルトの引き出しをロックするロック手段と、前記シートベルトがロックされていることを検出するロック検出手段とを備えた車両用乗員拘束保護装置において、前記シートベルト装着検出手段により前記シートベルトの装着が検出されている場合に、前記ロック検出手段により前記シートベルトの引き出しがロックされていないことが検出されている間、前記シートベルトを巻き取るために前記モータに供給される駆動信号は第1の駆動力を発生でき、前記ロック検出手段により前記シートベルトの引き出しがロックされたことが検出された後に、前記シートベルトを巻き取るために前記モータに第2の駆動力を発生させる駆動信号を供給する制御手段を備えることを特徴とする。
請求項4の車両用乗員拘束保護装置は、請求項3記載の車両用乗員拘束保護装置において、前記モータに発生させる駆動力は、前記第 1 の駆動力よりも前記第2の駆動力の方が大きくなるように駆動信号を供給する制御手段であることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、例えば、車両衝突の危険があると判断され、ロック前の巻き取り力よりも大きい巻き取り力でシートベルトが巻き取られ、その後、車両衝突の危険がなくなったと判断され、弛み付与動作が行われる時、大きい巻き取り力からそれよりも小さい巻き取り力になるため、乗員の体の弾力等によりシートベルトは少々引き出される。ここで、シートベルトがロックされた場合、ロック前の巻き取り力よりも大きい巻き取り力でシートベルトを巻き取れば、ロックを解除でき、再度弛み付与動作ができるので、快適なシートベルト装着環境を提供すると共に乗員を適切に保護することができる。
【0011】
請求項5の車両用乗員拘束保護装置は、所定の駆動信号に応じて駆動されるモータと、前記モータとシートベルトを巻装するリールシャフトの動力を連結し、前記モータの駆動に応じてシートベルトの巻き取り及び引き出しを行う電動リトラクタと、前記シートベルトの装着を検出するシートベルト装着検出手段と、前記シートベルトの引き出しをロックするロック手段と、前記シートベルトがロックされていることを検出するロック検出手段と、前記シートベルトの引き出し量又は巻き取り量を検出する引き出し巻き取り量検出装置を備えた車両用乗員拘束保護装置において、前記シートベルトの引き出し駆動を行わせる駆動信号を前記モータに供給している場合に、前記シートベルトのロック検出手段により、前記シートベルトのロックが検出されないときは、前記引き出し巻き取り量検出装置により第1所定量引き出されたことが検出されるまで前記シートベルトの引き出し駆動を行わせる駆動信号を前記モータに供給し、前記引き出し巻き取り量検出装置により第1所定量引き出されたことが検出されると、前記シートベルトの巻き取り駆動を行わせる駆動信号を前記モータに供給し、前記引き出し巻き取り量検出装置により第2所定量巻き取られたことが検出されるまで前記シートベルトの巻き取り駆動を行わせる駆動信号を前記モータに供給する制御手段を備えることを特徴とする。
請求項6の車両用乗員拘束保護装置は、請求項5記載の車両用乗員拘束保護装置において、前記第1所定量は前記第2所定量よりも大きいことを特徴とする制御手段を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、例えロックされたことが検出されなくても、シートベルトをロックする原因となるシートベルトの引き出しの後に、シートベルトの巻き取りが行われるので、シートベルトのロックは解除される。また、シートベルトがロックされないときには、第1所定量と第2所定量との差分の弛みが与えられるので、快適なシートベルト装着環境を提供すると共に乗員を適切に保護することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用乗員拘束保護装置が備えている電動リトラクタ100の構成を示す図である。
【0015】
電動リトラクタ100はフレーム1を備えている。このフレーム1にはシートベルトを巻き取るリールシャフト3が回転自在に設置され、車両に所定の減速度が作用したとき又はシートベルトが所定の加速度で引き出されたときにシートベルトの引き出しをロックする公知のシートベルトロック機構2が固定されている。
【0016】
次いで、リールシャフト3の中心軸3aはリールシャフト用プーリ5の中心軸に連結されており、このリールシャフト用プーリ5は動力伝達ベルト7を介して直流モータ用プーリ6に連結している。
【0017】
リールシャフト用プーリ5及び直流モータ用プーリ6の外周にはそれぞれ所定数の外歯が形成され、また動力伝達ベルト7の内周にも所定数の内歯が形成されており、リールシャフト用プーリ5及び直流モータ用プーリ6の外歯と動力伝達ベルト7の内歯とは過不足なくかみ合っている。
【0018】
直流モータ用プーリ6の中心軸は直流モータ10に連結されている。従って、直流モータ10の回転は直流モーター用プーリ6を介してリールシャフト3に伝達される。
【0019】
直流モータ10は、フレーム1に少なくとも2点以上で固定されており、また直流モータ駆動部11を介してMPU(Micro Processing Unit)14に接続されている。直流モータ駆動部11はMPU14からのPWM(パルス幅変調)信号に基づいて直流モータ10の回転を制御する。
【0020】
図2は直流モータ駆動部11の回路図である。図2中の端子P1及び端子P2はMPU14から出力されるPWM(パルス幅変調)信号の入力端子であり、端子P1及び端子P2には、例えば、20kHzのPWM信号が入力される。端子P3及び端子P4は電流検出用の出力端子であり、端子P5及び端子P6は電圧検出用の出力端子であり、端子P1〜端子P6はそれぞれMPU14に接続されている。また、図2中の電圧Vbは直流モータ10に供給され、図2中の複数のトランジスタ及びFET等は、MPU14からのPWM信号により直流モータ10の回転を正転又は反転駆動させるためのものである。
【0021】
図2中の回路C1は、抵抗r1に流れる電流から直流モータ10に流れる電流iを検出する電流検出回路であり、PWM信号の影響による電流の変動を取り除くためのインターフェイス回路(以下、IFという)1及びIF2を備えている。MPU14は、IF1及びIF2からそれぞれ電圧信号を受信し、この電圧信号に基づいて直流モータ10に流れる電流iを検出する。
【0022】
回路C2は直流モータ10にかかる端子間電圧を測定する電圧測定回路であり、PWM信号の影響による端子間電圧の変動を取り除くため、IF3及びIF4を備えている。MPU14は、IF3及びIF4からそれぞれ電圧信号を受信し、この電圧信号に基づいて直流モータ10にかかる端子間電圧を測定する。
【0023】
IF1〜IF4は、例えば抵抗r2、抵抗r2より小さい抵抗値の抵抗r3及びコンデンサc3からなるローパスフィルタ構成となっており、カットオフ周波数を、例えば、20Hzに設定している。これにより、電流検出回路C1及び電圧測定回路C2でMPU14に出力されるPWM信号の影響は、−60dBに低減され、本来電流検出回路C1で検出しようとしている電流や電圧測定回路C2で測定しようとしている端子間電圧にほとんど影響を与えなくなる。
【0024】
図1に戻り、MPU14は、時間を計測するタイマ12,13,15を備え、シートベルトのタングがバックルに装着されたか否かを検出する及びシートベルトのタングがバックルから解除されたか否かを検出するバックル接続有無検出部16と、自車両の速度を検出する車速検出部17と、衝突の危険性があるか否か及び衝突不可避であるか否かを検出する衝突予知検出部18とにそれぞれ接続されている。また、MPU14は、制御プログラムを格納するメモリ(図示せず)を備えており、該プログラム中にシートベルトの巻き取り及び引き出しを交互に行わせることにより、シートベルトを振動させる振動フラグを備えている。
【0025】
バックル接続有無検出部16はシートベルトのタングがバックルに装着されたか否かを検出し又はシートベルトのタングがバックルから解除されたか否かを検出し、それに対応した制御信号をMPU14に出力する。車速検出部17は自車両の速度を検出し、それに対応した制御信号をMPU14に出力する。衝突予知検出部18は衝突の危険性があるか否か及び衝突不可避であるか否かを検出し、それに対応した制御信号をMPU14に出力する。
【0026】
図3はMPU14が実行する制御プログラムの一例を示す図であり、この制御プログラムはMPU14が備えているメモリ(図示せず)に格納されている。
【0027】
まず、本制御プログラムで使用されるカウンタnに0をセットする(n←0)と共にシートベルト格納フラグをリセットし(ステップS10)、シートベルトのタングがバックルに装着されたことをバックル接続有無検出部16により検出されたか否かを判別する(ステップS11)。
【0028】
バックル接続有無検出部16によりシートベルトのタングがバックルに装着されたことが検出されていない場合には、タイマ15をスタートし(ステップS17)、直流モータ10の端子間電圧によりシートベルトが引き出されたか否かを判別し(ステップS18)、シートベルトが引き出された場合には、タイマ15をストップ及びクリアし(ステップS19)、シートベルト格納フラグをセットして(ステップS20)、ステップS11に戻る。一方、シートベルトが引き出されていない場合には、タイマ15により所定時間t1(例えば、4秒)経過したか否かを判別し(ステップS21)、所定時間t1経過していない場合には、ステップS18に戻る一方、所定時間t1経過している場合には、タイマ15をストップ及びクリアし(ステップS22)、シートベルト格納フラグをセットしているか否かを判別する(ステップS23)。
【0029】
シートベルト格納フラグをセットしている場合には、該シートベルト格納フラグをリセットし(ステップS24)、シートベルト格納制御を行い(ステップS25)、ステップS11に戻る。
【0030】
図4はシートベルト格納制御の一例を示すフローチャートである。
【0031】
シートベルト格納制御では、MPU14からPWM信号を直流モータ駆動部11に入力することにより、直流モータ10をシートベルトの巻き取り側に回転させ(ステップS251)、直流モータ10に流れる電流よりシートベルトが巻き取り限界であるか否かを判別し(ステップS252)、シートベルトが巻き取り限界でない場合には、ステップS251に戻る一方、シートベルトが巻き取り限界である場合には、本制御を終了する。ここで、シートベルトの巻き取り限界とは、直流モータ10がシートベルトの巻き取り側に回転しなくなることをいう。
【0032】
図3に戻り、ステップS23で、シートベルト格納フラグをセットしていない場合には、カウンタnの値が5以上であるか否かを判別し(ステップS26)、カウンタnの値が5以上である場合にはステップS11に戻る一方、カウンタnの値が5未満の場合には、ステップS25と同様にシートベルト格納制御を行い(ステップS27)、シートベルト格納制御終了後、カウンタnの値を1インクリメントし(ステップS28)、ステップS11に戻る。
【0033】
上記ステップS11で、バックル接続有無検出部16によりシートベルトのタングがバックルに装着されたことが検出された場合には、タイマ12により計時されるタイマ割り込みが有効になる(ステップS12)。このタイマ割り込みによる割り込みにより、例えば0.1s毎に後述するタイマ割り込み処理が行われる。
【0034】
図5はタイマ割り込み処理の一例を示すフローチャートである。
【0035】
まず、タイマ割り込み処理では、タイマ割り込みが無効にされる(ステップS121)。次に、シートベルトのタングがバックルに装着されたことをバックル接続有無検出部16により検出されたか否かを判別し(ステップS122)、バックル接続有無検出部16によりシートベルトのタングがバックルに装着されたことを検出されない場合には、カウンタnに0をセットする(n←0)と共にシートベルト格納フラグをリセットし(ステップS123)、ステップS25のシートベルト格納制御にジャンプする(ステップS124)。
【0036】
次いで、ステップS122で、バックル接続有無検出部16によりシートベルトのタングがバックルに装着されたことを検出された場合には、衝突予知検出部18より衝突不可避であることを示す信号が入力されたか否かを判別し(ステップS125)、衝突不可避であることを示す信号が入力された場合には、タイマ13により計時される所定時間t3(例えば4s)、PWM信号を直流モータ駆動部11に入力することにより、直流モータ10をシートベルトの巻き取り側に回転させる(ステップS126)。これにより、乗員は衝突時に適切に保護される。その後、タイマ割り込みを有効にし(ステップS127)、ステップS13に進む(ステップS128)。
【0037】
上記ステップS125で、衝突不可避であることを示す信号が入力されていない場合には、衝突予知検出部18より衝突危険であることを示す信号が入力されたか否かを判別し(ステップS129)、衝突危険であることを示す信号が入力された場合には、PWM信号を直流モータ駆動部11に入力することにより、直流モータ10をシートベルトの引き出し側及び巻き取り側に交互に回転させ、シートベルトを振動させて、MPU14の振動フラグをセットする(ステップS130)。この時の振動周波数は、1Hz〜10kHzとし、乗員に警報として感じられやすい振動を与える。その後、振動を与え続けたままステップS125に戻る。
【0038】
上記ステップS129で、衝突危険であることを示す信号が入力されていない場合には、シートベルトが振動状態にあったか否かをMPU14の振動フラグにより判別し(ステップS131)、シートベルトが振動状態にあった場合には、振動フラグをリセットすると共に振動を停止させ(ステップS132)、ステップS127に進む。一方、シートベルトが振動状態にない場合には、タイマ割り込みを有効にし(ステップS133)、タイマ割り込みが行われたところに戻る。
【0039】
図3に戻り、次に、乗員に圧迫感を与えず、かつ適正な弛みを与えるため、シートベルト弛み付与制御を行う(ステップS13)。
【0040】
図6はシートベルト弛み付与制御の一例を示すフローチャートである。
【0041】
まず、シートベルトのタングがバックルに装着されたことをバックル接続有無検出部16により検出されたか否かを判別し(ステップS135)、バックル接続有無検出部16によりシートベルトのタングがバックルに装着されたことが検出されていない場合には、本制御を終了する一方、バックル接続有無検出部16によりシートベルトのタングがバックルに装着されたことが検出された場合には、シートベルトの弛み付与が必要であるか否かを判別する(ステップS136)。ここで、シートベルトの弛み付与が必要である場合とは、正規のシートベルト位置から変動があった場合であり、例えば、(1)所定車速以上で走行中に制動がなされ、その後、車速が所定値未満になるか又は制動がなされなくなったとき、(2)衝突予知検出部18により衝突の危険性があると検出され、その後、衝突の危険性はないと検出されたとき、(3)乗員によりシートベルトが引き出され、その後、シートベルトの巻き取りが可能になったとき等が該当する。
, 上記ステップS136で、シートベルトの弛み付与が必要でない場合には、本制御を終了する一方、シートベルトの弛み付与が必要である場合には、MPU14からPWM信号を直流モータ駆動部11に入力することにより、直流モータ10をシートベルトの巻き取り側に回転させ(ステップS137)、直流モータ10に流れる電流よりシートベルトが巻き取り限界であるか否かを判別する(ステップS138)。これにより、シートベルトの不適正な弛みを一旦完全に除去する。
【0042】
ステップS138で、シートベルトが巻き取り限界でない場合には、ステップS137に戻る一方、シートベルトが巻き取り限界である場合には、所定の弛みを与えるため、MPU14からPWM信号を直流モータ駆動部11に入力することにより、直流モータ10をシートベルトの引き出し側に回転させ(ステップS139)、シートベルトロック機構2でシートベルトの引き出しがロックされているか否かを判別する(ステップS140)。ここでは、直流モータ10をシートベルトの引き出し側に回転させている時の直流モータ10の端子間電圧の変動が所定値以下の場合にシートベルトの引き出しがロックされていると判別する。尚、直流モータ10に流れる電流が所定値以上の場合又は直流モータ10に流れる電流の変動が所定値以下の場合にシートベルトの引き出しがロックされていると判別してもよい。
【0043】
上記ステップS140で、シートベルトの引き出しがロックされている場合には、該ロックを解除し、再び所定の弛みを与えるため、ステップS137に戻る。このとき、ステップS137で行われるシートベルトの巻き取りの巻き取り力は、シートベルトの弛み付与が必要と判断されたとき(ステップS136でYES)の巻き取り力よりも大きい力にする。このような巻き取り力にしないとロックが解除されないからである。
【0044】
尚、シートベルトの引き出しがロックされる場合として、例えば、車両衝突の危険があると判断され、ロック前の巻き取り力よりも大きい巻き取り力でシートベルトが巻き取られ、その後、車両衝突の危険がなくなったと判断され、弛み付与動作が行われる時、即ち、シートベルトの弛み付与が必要と判断された時、大きい巻き取り力からそれよりも小さい巻き取り力になるため、乗員の体の弾力等によりシートベルトが少々引き出され、これにより、シートベルトがロックされる場合がある。このような場合に、上述のようにロック前の巻き取り力よりも大きい巻き取り力でシートベルトを巻き取れば、ロックを解除でき、再度弛み付与動作ができる。
【0045】
上記ステップS140で、シートベルトの引き出しがロックされていない場合には、直流モータ10の端子間電圧よりシートベルトの引き出し量が第1所定量(例えば、10cm)に達したか否かを判別する(ステップS141)。
【0046】
シートベルトの引き出し量が第1所定量に達していない場合には、ステップS139に戻り、続けて引き出しを行う一方、シートベルトの引き出し量が第1所定量に達した場合には、シートベルトの引き出しがロックされているか否かが正常に検出されなかったことを想定して、保険の意味で再びMPU14からPWM信号を直流モータ駆動部11に入力することにより、直流モータ10をシートベルトの巻き取り側に回転させる(ステップS142)。
【0047】
次に、直流モータ10の端子間電圧よりシートベルトの巻き取り量が第2所定量(例えば、5cm)に達したか否かを判別し(ステップS143)、シートベルトの巻き取り量が第2所定量に達していない場合には、ステップS142に戻る一方、シートベルトの巻き取り量が第2所定量に達した場合には、本制御を終了する。
【0048】
図3に戻り、次に、直流モータ10の端子間電圧によりシートベルトが引き出されたか否かを判別し(ステップS14)、シートベルトが引き出されていない場合には、該判別を繰り返す一方、シートベルトが引き出された場合には、直流モータ10の端子間電圧が所定値(例えば0.3V)以下であるか否かによりシートベルトの引き出しが完了したか否かを判別する(ステップS15)。シートベルトの引き出しが完了していない場合には、該判別を繰り返す一方、シートベルトの引き出しが完了した場合には、車速検出部17より入力された車速vに応じた信号から車速vが所定値v1(例えば10km/h)より大きいか否かを判別する(ステップS16)。
【0049】
車速vが所定値v1以下の場合には、該判別を繰り返す一方、車速vが所定値v1より大きい場合には、ステップS13のシートベルト弛み付与制御に戻る。これにより、例えば駐車のために車両をゆっくりバックさせている時にリールシャフトが正転しないので、乗員が後方を見渡している最中にシートベルトが巻き取り限界まで巻き取られることがなくなる。
【0050】
上述したように、本実施の形態によれば、シートベルト弛み付与制御において(図6)、シートベルトの弛み付与が必要である場合に(ステップS136でYES)、シートベルトを巻き取り限界まで巻き取り(ステップS138でYES)、その後、所定の弛みを与えるためにシートベルトを引き出し(ステップS139)、引き出し中にシートベルトがロックされた場合には(ステップS140でYES)、ロックを解除して再び所定の弛みを与えるためにシートベルトの巻き取りを行い(ステップS137)、引き出し中にシートベルトがロックされなかった場合には、シートベルトの引き出し量が第1所定量に達した後、シートベルトがロックされないように、第2所定量シートベルトの巻き取りを行うので(ステップS142、ステップS143)、乗員に必ず所定の弛みが与えられるように構成されていると共に不要なシートベルトのロックは解除されるように構成されている。よって、本実施の形態に係る車両用乗員拘束保護装置は、快適なシートベルト装着環境を提供すると共に乗員を適切に保護することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1の車両用乗員拘束保護装置によれば、ロック手段により該シートベルトの引き出しがロックされた時に、再度弛み付与手段による弛み付与動作を最初から行うように制御されるので、乗員に必ず所定の弛みが与えられ、快適なシートベルト装着環境を提供すると共に乗員を適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用乗員拘束保護装置が備えている電動リトラクタ100の構成を示す図である。
【図2】直流モータ駆動部11の回路図である。
【図3】MPU14が実行する制御プログラムの一例を示す図である。
【図4】シートベルト格納制御の一例を示すフローチャートである。
【図5】タイマ割り込み処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】シートベルト弛み付与制御の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 フレーム
2 シートベルトロック機構(ロック手段)
3 リールシャフト
5 リールシャフト用プーリ
6 直流モータ用プーリ
7 動力伝達ベルト
10 直流モータ(弛み付与手段)
11 直流モータ駆動部
14 MPU(弛み付与手段、制御手段)
16 バックル接続有無検出部
17 車速検出部
100 電動リトラクタ

Claims (6)

  1. 所定の駆動信号に応じて駆動されるモータと、前記モータとシートベルトを巻装するリールシャフトの動力を連結し、前記モータの駆動に応じてシートベルトの巻き取り及び引き出しを行う電動リトラクタと、前記シートベルトの装着を検出するシートベルト装着検出手段と、前記シートベルト装着検出手段により前記シートベルト乗員により装着されたことが検出されている時該シートベルトを巻き取り限界まで巻き取った後に所定量だけ引き出すことにより、該シートベルトに弛みを付与する弛み付与手段と、前記シートベルトの引き出しをロックするロック手段と、前記シートベルトがロックされていることを検出するロック検出手段とを備えた車両用乗員拘束保護装置において、
    前記弛み付与手段によって前記シートベルトが引き出され、前記ロック手段により該シートベルトの引き出しがロックされていることが前記ロック検出手段により検出された時に、再度前記弛み付与手段による前記弛み付与動作を最初から行うように制御する制御手段を備えることを特徴とする車両用乗員拘束保護装置。
  2. 所定の駆動信号に応じて駆動されるモータと、前記モータとシートベルトを巻装するリールシャフトの動力を連結し、前記モータの駆動に応じてシートベルトの巻き取り及び引き出しを行う電動リトラクタと、前記シートベルトの装着を検出するシートベルト装着検出手段と、前記シートベルトの引き出しをロックするロック手段と、前記シートベルトがロックされていることを検出するロック検出手段とを備えた車両用乗員拘束保護装置において、
    前記シートベルト装着検出手段により前記シートベルトの装着が検出され、前記ロック検出手段により前記シートベルトの引き出しがロックされたことが検出されたときには、前記シートベルトを巻き取りするために前記モータに駆動信号を供給する制御手段を備えることを特徴とする車両用乗員拘束保護装置。
  3. 所定の駆動信号に応じて駆動されるモータと、前記モータとシートベルトを巻装するリールシャフトの動力を連結し、前記モータの駆動に応じてシートベルトの巻き取り及び引き出しを行う電動リトラクタと、前記シートベルトの装着を検出するシートベルト装着検出手段と、前記シートベルトの引き出しをロックするロック手段と、前記シートベルトがロックされていることを検出するロック検出手段とを備えた車両用乗員拘束保護装置において、
    前記シートベルト装着検出手段により前記シートベルトの装着が検出されている場合に、前記ロック検出手段により前記シートベルトの引き出しがロックされていないことが検出されている間、前記シートベルトを巻き取るために前記モータに供給される駆動信号は第1の駆動力を発生でき、前記ロック検出手段により前記シートベルトの引き出しがロックされたことが検出された後に、前記シートベルトを巻き取るために前記モータに第2の駆動力を発生させる駆動信号を供給する制御手段を備えることを特徴とする車両用東員拘束保護装置。
  4. 前記モータに発生させる駆動力は、前記第1の駆動力よりも前記第2の駆動力の方が大きくなるように駆動信号を供給する制御手段であることを特徴とする請求項3記載の車両用乗員拘束保護装置。
  5. 所定の駆動信号に応じて駆動されるモータと、前記モータとシートベルトを巻装するリールシャフトの動力を連結し、前記モータの駆動に応じてシートベルトの巻き取り及び引き出しを行う電動リトラクタと、前記シートベルトの装着を検出するシートベルト装着検出手段と、前記シートベルトの引き出しをロックするロック手段と、前記シートベルトがロックされていることを検出するロック検出手段と、前記シートベルトの引き出し量又は巻き取り量を検出する引き出し巻き取り量検出装置を備えた車両用乗員拘束保護装置において、
    前記シートベルトの引き出し駆動を行わせる駆動信号を前記モータに供給している場合に、前記シートベルトのロック検出手段により、前記シートベルトのロックが検出されないときは、前記引き出し巻き取り量検出装置により第1所定量引き出されたことが検出さ れるまで前記シートベルトの引き出し駆動を行わせる駆動信号を前記モータに供給し、前記引き出し巻き取り量検出装置により第1所定量引き出されたことが検出されると、前記シートベルトの巻き取り駆動を行わせる駆動信号を前記モータに供給し、前記引き出し巻き取り量検出装置により第2所定量巻き取られたことが検出されるまで前記シートベルトの巻き取り駆動を行わせる駆動信号を前記モータに供給する制御手段を備えることを特徴とする車両用乗員拘束保護装置。
  6. 前記第1所定量は前記第2所定量よりも大きいことを特徴とする制御手段を備えることを特徴とする請求項5記載の車両用乗員拘束保護装置。
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