JP2009190531A - 発進支援装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】運転者の意思に応じた脱出操作の実行を可能とする発進支援装置を提供すること。
【解決手段】発進支援ECUは、脱出シミュレーション演算の実行(ステップ102)により、駐車区画からの脱出可能性を判定するとともに(ステップ103)、その脱出操作において発生する必要な切り返し操作の回数Nを演算する。そして、脱出可能である場合(ステップ103:YES)には、その脱出操作の方法についてのガイダンス出力(ステップ109)に先立って、当該脱出操作において発生する必要な切り返し操作の回数Nの告知出力を実行する(ステップ104)。
【選択図】図7

Description

本発明は、発進支援装置に関するものである。
近年、車両においては、その駐車区画への駐車を支援するための駐車支援システムが数多く提案されている。例えば、特許文献1には、駐車開始位置の自由度を高めるべく、車載カメラにより車両周囲の映像を撮像するとともに、その駐車開始位置から想定される複数の走行経路についての特徴点を演算し、該各特徴点の軌跡をガイドラインとして車両周囲の映像に重畳する方法が開示されている。また、特許文献2には、縦列駐車から発進する際、車両の側部後方からの接近する移動体の存在を警告する方法が開示されており、その採用により、縦列駐車時においても、安全に車両を発進させることが可能になる。さらに、この特許文献2に記載の駐車支援システムには、駐車区画からの発進時、その発進を支援するための発進支援装置としての機能、具体的には、その駐車区画からの脱出が可能であるか否かを判定する判定機能、及び脱出可能である場合にその脱出のための運転方法を教示するガイド機能が備えられている。そして、これにより、駐車中に車間距離が短縮された場合であっても、速やかにその脱出可否判定をし、及び脱出操作を開始することが可能な構成となっている。
特開2006−1301号公報 特開2003−306105号公報
ところで、車両発進時、前方の障害物を回避するための十分なクリアランスが得られない場合には、通常、その回避方向とは逆方向の舵角を与えつつ車両を後退させることにより、車両を回避方向へと偏向させる運転操作、即ち所謂切り返し操作が行われる。そして、上記従来の構成は、その切り返し操作のタイミングをガイダンスすることにより、上記のように前後車両との車間距離が短縮された縦列駐車区画からの脱出を支援する構成となっている。
しかしながら、現実には、「理論的に脱出可能であるか否か」と「実際にその脱出操作を運転者が最後まで遂行可能であるか否か」とは、必ずしも一致しない。即ち、前方車両を回避することが可能な状態となるまで車両を偏向させるためには、複数回の切り返し操作を必要とする場合があるが、その一連の脱出操作を最後まで実行することに、運転者が大きな負担を感じる可能性がある。また、こうした切り返し操作においては、そのステアリング操作に大きな操舵トルクを必要とする所謂「据え切り」が多用されることから、パワーステアリング装置の負荷も大きい。そのため、特に、電動パワーステアリング装置(EPS)を採用する車両では、そのモータや駆動回路の過熱を抑えるための出力制限の実行により、一連の脱出操作の途中にあるにも関わらず、そのパワーアシスト制御が停止される可能性があり、これより、運転者の負担が更に増大するという問題がある。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、運転者の意思に応じた脱出操作の実行を可能とする発進支援装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、駐車区画からの車両発進時、車両と該車両の移動を妨げる障害物との位置関係に基づいて、前記駐車区画からの脱出が可能であるか否かを判定する判定手段と、前記脱出が可能であると判定された場合に、その脱出操作の方法を教示する教示手段とを備えた発進支援装置であって、前記脱出操作において発生する必要な切り返し操作の回数を演算する演算手段と、前記教示手段による教示出力の開始に先立って、前記演算手段により演算された必要な切り返し操作の回数を告知する告知手段とを備えること、を要旨とする。
上記構成によれば、運転者は、告知された切り返し操作の回数に基づいて、その脱出操作を行なった場合の労力(及び時間)を予測することが可能になる。そして、当該脱出操作を最後まで遂行可能であるか否かの判断を運手者自身に委ねることにより、試行途中でその脱出を断念するといった状況の発生を抑制することができる。その結果、運転者の意思に応じた脱出操作の実行を可能として、その利便性をより一層高めることができるようになる。
請求項2に記載の発明は、前記車両は、モータを駆動源として操舵系にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置を備えるとともに、該電動パワーステアリング装置は、発熱部位の過熱を防止すべく前記モータの出力制限を行なう保護機能を有するものであって、前記脱出操作の途中において前記保護機能の作動に伴う前記アシスト力の低下が発生する可能性を推定する推定手段と、前記アシスト力の低下が発生する可能性を予告する予告手段とを備えること、を要旨とする。
上記構成によれば、運転者は、アシスト力の低下による負荷の増大を踏まえた上で、正確に、その脱出操作に要する労力を予測することが可能になる。その結果、更なる利便性の向上を図ることができる。
請求項3に記載の発明は、前記予告手段は、前記アシスト力の低下が発生するタイミングとして想定される前記切り返し操作の回数を予告すること、を要旨とする。
上記構成によれば、より正確に、その脱出操作に要する労力を予測することが可能になる。
請求項4に記載の発明は、前記教示出力の途中で前記保護機能が作動した場合に、該保護機能の作動により前記アシスト力の低下が発生することを告知する第2の告知手段を備えること、を要旨とする。
上記構成によれば、運転者は、その脱出操作の途中で操舵トルクが増大した理由を知ることが可能になる。その結果、操舵感の変化により生ずる運転者の不安感を和らげることができる。
本発明によれば、運転者の意思に応じた脱出操作の実行を可能とする発進支援装置を提供することができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両1は、モータを駆動源として操舵系にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置(EPS)10を備えている。
同図に示すように、ステアリングホイール(ステアリング)12が固定されたステアリングシャフト13は、ラックアンドピニオン機構14を介してラック15に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト13の回転は、ラックアンドピニオン機構14によりラック15の往復直線運動に変換される。また、ラック15の両端には、タイロッド16が連結されており、これらのタイロッド16は、それぞれ、左右の前輪2fを支持するナックル17に連結されている。そして、ステアリングシャフト13の回転に伴うラック15の往復直線運動が、タイロッド16を介してナックル17に伝達されることにより、転舵輪を構成する各前輪2fの舵角が変更される構成となっている。
また、EPS10は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するEPSアクチュエータ20と、該EPSアクチュエータ20の作動を制御するEPSECU21とを備えている。
本実施形態のEPSアクチュエータ20は、その駆動源であるモータ22がラック15と同軸に配置された所謂ラックアシスト型のEPSアクチュエータであり、モータ22が発生するアシストトルクは、ボールねじ機構23を介してラック15に伝達される。尚、本実施形態のモータ22は、ブラシレスモータであり、EPSECU21から三相(U,V,W)の駆動電力の供給を受けることにより回転する。そして、EPSECU21は、その駆動電力の供給を通じてモータ22が発生するアシストトルクを制御することにより、操舵系に付与するアシスト力を制御する(パワーアシスト制御)。
本実施形態では、EPSECU21には、トルクセンサ24及び車速センサ25が接続されている。そして、EPSECU21は、これらトルクセンサ24及び車速センサ25によりそれぞれ検出される操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、EPSアクチュエータ20の作動、即ちパワーアシスト制御を実行する。
また、本実施形態のEPS10には、所謂据え切りが繰り返し行われた場合等、高負荷状態の継続によって、その発熱部位に過大な温度上昇が生ずることを防止すべく、モータ22の出力制限を実行する保護機能が備えられている。
具体的には、本実施形態のEPSECU21は、その発熱部位であるモータ22やEPSECU21内に設けられた駆動回路(図示略)の温度を監視する。尚、本実施形態では、その監視は、通電される電流量に基づく温度推定により行われる。そして、その発熱部位に過大な温度上昇が生ずる可能性のある場合には、駆動源であるモータ22に通電する電流量を低減し、当該モータ22の出力を制限することにより、その過熱を防止する構成となっている。
(発進支援装置)
本実施形態の車両1は、車両1が駐車区画から発進する際、その運転者による発進操作を支援するための発進支援装置30を備えている。
詳述すると、本実施形態の車両1は、発進支援に関する各種の演算処理を実行する発進支援ECU31と、この発進支援ECU31に制御されることにより、運転者による操作入力の受付、及び画像や音声等による発進支援の出力を実行する入出力装置32とを備えている。尚、本実施形態では、この入出力装置32には、カーナビゲーションシステムの入出力インターフェースが用いられている。また、本実施形態の車両1には、車両周囲の障害物と車両1との間隔(距離)を検出する複数のミリ波レーダ33が備えられている。そして、本実施形態の発進支援ECU31は、これら各ミリ波レーダ33により検出される距離情報に基づいて、その発進支援に関する各演算処理を実行し、及び当該演算処理に基づく入出力装置32の制御を実行する。
即ち、本実施形態の発進支援装置30は、これら発進支援ECU31、入出力装置32、及び各ミリ波レーダ33により構成されている。そして、本実施形態では、これらの各構成要素の組み合わせにより、判定手段、教示手段、演算手段、告知手段、推定手段、予告手段、及び第2の告知手段が構成される。
具体的には、本実施形態の発進支援ECU31は、各ミリ波レーダ33により検出される距離情報に基づいて、車両1が駐車区画から発進する際、その移動を妨げる障害物が存在するか否かを判定し、さらに当該障害物が存在する場合には、その位置関係に基づいて、車両1が駐車区画から脱出可能であるか否かを判定する。そして、上記入出力装置32を制御し、その脱出の可否をアナウンスするとともに、脱出可能である場合には、運転者からの要求に応じて、その脱出操作の方法を教示するためのガイダンス出力(後述する切り返し操作及び前進操作のタイミング等)を実行する構成となっている。
即ち、図2に示すように、前進する車両1の旋回中心CPは、その内側転舵輪2fiの回転軸延長線m1と後輪2rの車軸延長線m2とが交差する位置となる。尚、この回転軸延長線m1と車軸延長線m2との交差角は、内側転舵輪2fiの実舵角(アッカーマン実舵角)δと等しくなる。
従って、当該旋回中心CPから車両1の外側前端部tまでの距離、即ち旋回時における車両1の最外殻旋回半径rは、車両1のホイールベースLwb、オーバーハングLoh、車幅W、及び車軸延長線m2上における旋回中心CPから車両1までの距離Lcpを用いて、次の(1)式により求めることができる。
Figure 2009190531
つまり、駐車区画SPから発進する際に車両1が通過する車両通過領域γの外縁Tは、上記旋回中心CPを中心とする円弧となり、安全マージンとして障害物と間に最近接距離σを設定した場合、その円弧の半径Rは、次の(2)式に示されるように、上記(1)式により求められる車両1の最外殻旋回半径rに最近接距離σを加えた長さとなる。
Figure 2009190531
尚、図2に示す例は、「前進旋回」の場合であるため、フロントオーバーハングを用いて求められる最外殻旋回半径rに基づき車両通過領域γの外縁Tを演算したが、「後進旋回」の場合、その外縁は、リヤオーバーハングを用いて求められる外側後端部までの距離に基づくものとなる。
そして、本実施形態の発進支援ECU31は、上記各ミリ波レーダ33により検出される距離情報に基づいて、その円弧状の外縁Tを有する車両通過領域γ内に物体が存在するか否かを判定し、その車両通過領域γ内に物体が存在すると判定した場合には、該物体を障害物として特定する。
ここで、図3に示すように、例えば、縦列駐車からの発進時、障害物となった前方車両40を回避するために十分なクリアランスが得られない場合(同図中、車両位置P0)には、通常、先ずその回避方向(同図中右側)とは逆方向(同図中左側)の舵角を与えつつ車両を後退させる(同図中、車両位置P1)。そして、車両1が脱出位置(同図中、車両位置P2)へと移動可能な状態まで、当該車両1を回避方向に偏向させる運転操作、即ち所謂切り返し操作が行われる。
そして、更に、後方車両(図示略)の存在等により、一回の切り返し操作では脱出可能とはならない状況にある場合には、回避方向の舵角を与えつつ車両を前進させた後、再び上記切り返し操作を行う一連の脱出操作を繰り返すことよって、その駐車区画SPから脱出可能な状態となるまで車両を偏向させることになる。
本実施形態の発進支援ECU31は、上記の障害物判定により、車両1が駐車区画SPから発進する際にその移動を妨げる障害物の存在を特定した場合には、その駐車区画SPからの脱出操作において、上記切り返し操作が何回発生するかを演算する。そして、その脱出に必要となる切り返し操作の回数が、常識的な範囲内(例えば20回程度)にある場合には「脱出可能」と判定し、当該範囲を超える場合には「脱出不可能」と判定する。
さらに詳述すると、図4に示すように、本実施形態の発進支援ECU31は、上記各ミリ波レーダ33により検出される距離情報(車間距離Lsp_f,Lsp_r)に基づいて、車両前後の障害物(前方車両40及び後方車両41)の輪郭を形成する各特徴点Pob(Pob_f,Pob_r)の平面座標(Xn,Yn)を取得する。そして、これら各特徴点Pobを座標変換し、上記一連の脱出操作(図3参照)による車両1の偏向に伴い変化する当該車両1と各障害物との間の位置関係をシミュレートすることにより、その脱出に必要となる切り返し操作の回数を演算する。
具体的には、本実施形態における脱出シミュレーション演算は、先ず、切り返し操作により、反脱出方向にフルステア(最大舵角)を与えた状態で車両1を後進させ(図4参照)、それにより脱出可能とならない場合には、脱出方向にフルステアを与えた状態で車両1を前進させた後(図5参照)、再び切り返し操作を行うことを前提として行われる。そして、こうした切り返し操作と前進操作との繰り返しによって、その駐車区画SPから脱出可能な状態(図6)まで車両1を偏向させるために必要な切り返し操作の回数を演算する。
より具体的には、図4〜図6に示すように、本実施形態の発進支援ECU31は、その切り返し操作及び前進操作毎に、車両1を基準とした場合の上記旋回中心CP(CP1,CP2)を演算する。そして、その随時演算される旋回中心CPを原点(0,0)として、車両前後の障害物(前方車両40及び後方車両41)の輪郭を形成する各特徴点Pobを座標変換することにより、その脱出シミュレーション演算を実行する。
即ち、図4に示すように、本実施形態の発進支援ECU31は、先ず、その切り返し操作時における旋回中心CP1の座標を原点(0,0)とした各特徴点Pobの平面座標(Xn,Yn)を取得する。
次に、発進支援ECU31は、その切り返し操作により、上記障害物として特定された後方車両41との車間距離Lsp_rが上記安全マージンとして設定された最近接距離σとなるまで車両1を後退させた場合の偏向角度θを演算する。また、発進支援ECU31は、これに続いて、以下に示す(3)式により、その切り返し時の旋回中心CP1を原点(0,0)として各特徴点Pobの平面座標(Xn,Yn)を偏向角度θだけ回転移動させるような座標変換を実行する。そして、その座標変換により特定された位置関係に基づいて、当該切り返し操作により、車両1が脱出可能な状態となったか否か、即ちその車両通過領域γ内に、前方の障害物として特定された前方車両40が存在するか否かを判定する。
Figure 2009190531
図5に示すように、上記切り返し操作により、車両1が脱出可能な状態とならなかった場合、発進支援ECU31は、その前進操作時の旋回中心CP2が原点(0,0)となるよう、次に示す(4)式に基づく座標変換を実行する。
Figure 2009190531
続いて、発進支援ECU31は、その前進操作により、上記障害物として特定された前方車両40との車間距離Lsp_fが最近接距離σとなるまで車両1を前進させた場合の偏向角度θを演算する。そして、上記(3)式により、その前進操作時の旋回中心CP2を原点(0,0)として各特徴点Pobの平面座標(Xn,Yn)を偏向角度θだけ回転移動させる座標変換を実行する。
そして、発進支援ECU31は、上記(3)式に基づく座標変換の後、更に、その切り返し操作時の旋回中心CP1が原点(0,0)となるように、次に示す(5)式に基づく座標変換を実行する。
Figure 2009190531
このように、発進支援ECU31は、上記の各座標変換を順次実行することにより、図6に示すような車両1が脱出可能な状態となるまで、その脱出シミュレーション演算を継続する。そして、発進支援ECU31は、この脱出シミュレーション演算において発生する切り返し操作の回数をカウントすることにより、駐車区画SPからの脱出操作において必要となる切り返し操作の回数を演算する構成となっている。
次に、上記発進支援ECU31による発進支援制御の処理手順について説明する。
図7のフローチャートに示すように、本実施形態の発進支援ECU31は、先ず上記各ミリ波レーダ33により検出される車両前後の距離情報(車間距離Lsp_f,Lsp_r)を取得する(ステップ101)。そして、その距離情報に基づき把握される車両1と障害物との位置関係に基づいて、上記のような脱出シミュレーション演算を実行する(ステップ102)。
図8のフローチャートに示すように、発進支援ECU31は、その脱出シミュレーション演算において、先ず、脱出操作により発生する切り返し操作の回数Nを計測するカウンタを初期化し(N=0、ステップ201)、次に、上記車両通過領域γ(図2参照)内に障害物があるか否かを判定する(ステップ202)。そして、このステップ202における障害物判定において、その車両通過領域γ内に障害物があると判定した場合(ステップ202:YES)には、上記のカウンタをインクリメントし(N=N+1、ステップ203)、その切り返し操作の回数Nが所定の閾値N0を超えるか否かを判定する(ステップ204)。
このステップ204において、発生する切り返し操作の回数Nが所定の閾値N0以下である場合(N≦N0、ステップ204:NO)、発進支援ECU31は、続いて、切り返し操作後、即ち反脱出方向にフルステアを与えつつ車両1を後進させた場合における障害物の位置を演算する(ステップ205、図4参照)。そして、再び上記車両通過領域γ(図2参照)内に障害物があるか否かを判定し(ステップ206)、未だその車両通過領域γ内に障害物があると判定した場合(ステップ206:YES)には、前進操作後、即ち脱出方向にフルステアを与えつつ車両1を前進させた場合における障害物の位置を演算する(ステップ207、図5参照)。
本実施形態の発進支援ECU31は、このステップ207の処理を実行すると、再び上記ステップ203及び該ステップ203以降の処理を実行する。即ち、そのステップ203〜ステップ207の処理を繰り返し実行することにより、一連の脱出操作をシミュレートし、当該脱出操作において発生する切り返し操作の回数Nをカウント(計測)する。そして、ステップ206において、車両通過領域γ内に障害物はないと判定した場合(ステップ206:NO)には、それまでにカウントされた切り返し操作の回数Nを、必要な切り返し操作の回数として確定する(ステップ208)。
尚、上記ステップ202において、車両通過領域γ内に障害物はないと判定した場合(ステップ202:NO)、必要な切り返し操作の回数は「N=0」として確定される。そして、上記ステップ204において、その切り返し操作の回数Nが所定の閾値N0を超えると判定した場合(N>N0、ステップ204:YES)には、その駐車区画からの脱出は不可能と判定する(ステップ209)。
図7に示すように、このようにしてステップ102における脱出シミュレーション演算を実行すると、発進支援ECU31は、続いて、当該脱出シミュレーション演算の結論が「脱出可能」であるか否かを判定する(ステップ103)。そして、その結論が「脱出可能」である場合(ステップ103:YES)には、当該脱出可能であることを示す出力として、上記脱出シミュレーション演算において演算された必要な切り返し操作の回数Nの出力を実行する(ステップ104)。
そして、脱出シミュレーション演算の結論が「脱出不可能」である場合(ステップ103:NO)には、当該「脱出不可能」であることのアナウンス出力を実行する(ステップ105)。
ここで、本実施形態の発進支援ECU31には、実際に脱出操作が行なわれた場合に、車両1に搭載されたEPS10において上記過熱防止のための保護機能が作動、即ちモータ22の出力制限が実行される可能性が高まる切り返し操作の回数についての閾値N1が記憶されている。
発進支援ECU31は、上記ステップ104の処理を実行し、その切り返し操作の回数Nを出力すると、続いて、上記ステップ102において演算された脱出操作において発生する必要な切り返し操作の回数Nが、この閾値N1を超えるか否かを判定する(ステップ106)。そして、その演算された必要な切り返し操作の回数Nが閾値N1を超える場合(N>N1、ステップ106:YES)には、運転者による脱出操作の試行途中でのアシスト力の低下、即ち操舵トルクが増大する可能性が高いことの予告出力を実行する(ステップ107)。
尚、本実施形態では、この予告出力は、当該操舵トルクが増大する可能性が高まるタイミングとして想定される切り返し操作の回数、即ち閾値N1のアナウンスを伴う形態で実行される。そして、上記ステップ106において、演算された必要な切り返し操作の回数Nが閾値N1以下であると判定された場合(N≦N1、ステップ106:NO)には、そのステップ107における予告出力処理は実行されない。
次に、発進支援ECU31は、運転者により、その脱出操作の方法についてのガイダンス出力(教示)を求めるガイダンス要求があるか否かを判定する(ステップ108)。そして、ガイダンス要求がある場合(ステップ108:YES)には、その要求に応じてガイダンス出力の実行を開始する(ステップ109)。尚、本実施形態では、ガイダンス要求のない場合(ステップ108:NO)には、ステップ109におけるガイダンス出力処理は実行されない。
ここで、図1に示すように、本実施形態のEPS10では、上記過熱防止のための保護機能が作動された場合、EPSECU21から当該保護機能の作動を示す状態信号S_stが外部出力されるようになっており、発進支援ECU31は、当該状態信号S_stに基づいて、その保護機能の作動を検知する。そして、上記ステップ109におけるガイダンス出力の途中において、その保護機能の作動を検知した場合には、当該保護機能の作動により生ずるアシスト力の低下(操舵トルクの増大)を告知出力する構成となっている。
即ち、図9のフローチャートに示すように、発進支援ECU31は、EPSECU21から出力される状態信号S_stを取得すると(ステップ301)、当該状態信号S_stに基づいて、EPSECU21による上記過熱防止のための保護機能が作動されたか否かを判定する(ステップ302)。そして、当該保護機能が作動されたと判定した場合(ステップ302:YES)には、その旨及びアシスト力の低下についての告知出力を実行する(ステップ303)。尚、保護機能は作動されていないと判定された場合(ステップ302:NO)には、ステップ303における告知出力は実行されない。
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)発進支援ECU31は、脱出シミュレーション演算の実行(ステップ102)により、駐車区画からの脱出可能性を判定するとともに(ステップ103)、その脱出操作において発生する必要な切り返し操作の回数Nを演算する。そして、脱出可能である場合(ステップ103:YES)には、その脱出操作の方法についてのガイダンス出力(ステップ109)に先立って、当該脱出操作において発生する必要な切り返し操作の回数Nの告知出力を実行する(ステップ104)。
上記構成によれば、運転者は、告知された切り返し操作の回数Nに基づいて、その脱出操作を行なった場合の労力(及び時間)を予測することが可能になる。そして、当該脱出操作を最後まで遂行可能であるか否かの判断を運手者自身に委ねることにより、試行途中でその脱出を断念するといった状況の発生を抑制することができる。その結果、運転者の意思に応じた脱出操作の実行を可能として、その利便性をより一層高めることができるようになる。
(2)車両1は、モータ22を駆動源として操舵系にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置(EPS)10を備えるとともに、当該EPS10は、発熱部位の過熱を防止すべく、モータ22の出力制限を実行する保護機能を有している。また、発進支援ECU31には、実際に脱出操作が行なわれた場合に、EPS10においてこの保護機能が作動する可能性が高まる切り返し操作の回数についての閾値N1が記憶される。そして、発進支援ECU31は、脱出操作において発生する必要な切り返し操作の回数Nが、この閾値N1を超える場合(N>N1、ステップ106:YES)には、運転者による脱出操作の試行途中でのアシスト力の低下、即ち操舵トルクが増大する可能性が高いことの予告出力を実行する(ステップ107)。
上記構成によれば、運転者は、アシスト力の低下による負荷の増大を踏まえた上で、正確に、その脱出操作に要する労力を予測することが可能になる。その結果、更なる利便性の向上を図ることができる。
(3)そのアシスト力が低下(操舵トルクが増大)する可能性が高まるタイミングとして想定される切り返し操作の回数、即ち閾値N1のアナウンスを伴う形態で、上記予告出力を実行する。これにより、より正確に、その脱出操作に要する労力を予測することが可能になる。
(4)EPSECU21は、上記過熱防止のための保護機能が作動された場合、その作動を示す状態信号S_stを出力する。そして、発進支援ECU31は、そのガイダンス出力の途中において、当該状態信号S_stに基づきEPS10における保護機能の作動を検知した場合には、その旨及び当該保護機能の作動による生ずるアシスト力の低下(操舵トルクの増大)を告知する。
上記構成によれば、運転者は、その脱出操作の途中で操舵トルクが増大した理由を知ることが可能になる。その結果、操舵感の変化により生ずる運転者の不安感を和らげることができる。
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、ミリ波レーダ33を用いて車両周囲の障害物と車両1との間隔(距離)を検出することにより、車両と障害物との位置関係を把握する構成とした。しかし、これに限らず、ステレオカメラを用いた画像処理により行なう構成としてもよく、その他、GPS等を用いる方法により行なう構成としてもよい。
・本実施形態では、本発明を、EPS10を備えた車両1に具体化したが、ステアリング装置の型式は、これに限るものではない。
・本実施形態では、その一例として、縦列駐車区画からの脱出時について説明したが、これに限らず、切り返し操作を伴う発進操作全般に適用してもよい。
・本実施形態では、本実施形態では、「車両を操作する上での切り返し」、即ち障害物を開始するための後進旋回を「切り返し操作」として定義し、その回数Nをカウントし及び告知出力を実行することとした。しかし、これに限らず、「ステアリング操作を行なう上での切り返し(操舵)」、即ちステアリング中立位置を越えて反対方向の舵角を与える操舵を行なうことを「切り返し操作」と定義して、その回数のカウント及び告知出力を行なう構成に具体化してもよい。
発進支援装置を搭載する車両の概略構成図。 車両通過領域の演算方法を示す説明図。 脱出操作の一例を示す模式図。 脱出シミュレーション演算の態様を示す説明図。 脱出シミュレーション演算の態様を示す説明図。 脱出シミュレーション演算の態様を示す説明図。 発進支援制御の処理手順を示すフローチャート。 脱出シミュレーション演算の処理手順を示すフローチャート。 EPSの保護機能が作動した場合の処理手順を示すフローチャート。
符号の説明
1…車両、2f…前輪、2r…後輪、2fi…内側転舵輪、10…電動パワーステアリング装置(EPS)、12…ステアリング、20…EPSアクチュエータ、21…EPSECU、22…モータ、30…発進支援装置、31…発進支援ECU、32…入出力装置、33…ミリ波レーダ、40…前方車両、41…後方車両、SP…駐車区画、N…回数、N0,N1…閾値、S_st…状態信号。

Claims (4)

  1. 駐車区画からの車両発進時、車両と該車両の移動を妨げる障害物との位置関係に基づいて、前記駐車区画からの脱出が可能であるか否かを判定する判定手段と、前記脱出が可能であると判定された場合に、その脱出操作の方法を教示する教示手段とを備えた発進支援装置であって、
    前記脱出操作において発生する必要な切り返し操作の回数を演算する演算手段と、
    前記教示手段による教示出力の開始に先立って、前記演算手段により演算された必要な切り返し操作の回数を告知する告知手段とを備えること、を特徴とする発進支援装置。
  2. 請求項1に記載の発進支援装置において、
    前記車両は、モータを駆動源として操舵系にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置を備えるとともに、該電動パワーステアリング装置は、発熱部位の過熱を防止すべく前記モータの出力制限を行なう保護機能を有するものであって、
    前記脱出操作の途中において前記保護機能の作動に伴う前記アシスト力の低下が発生する可能性を推定する推定手段と、
    前記アシスト力の低下が発生する可能性を予告する予告手段とを備えること、
    を特徴とする発進支援装置。
  3. 請求項2に記載の発進支援装置において、
    前記予告手段は、前記アシスト力の低下が発生するタイミングとして想定される前記切り返し操作の回数を予告すること、を特徴とする発進支援装置。
  4. 請求項2又は請求項3に記載の発進支援装置において、
    前記教示出力の途中で前記保護機能が作動した場合に、該保護機能の作動により前記アシスト力の低下が発生することを告知する第2の告知手段を備えること、
    を特徴とする発進支援装置。
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