以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1にはインストルメントパネル及びセンタコンソールを運転席側から見た斜視図が示されている。
同図の符号1は、車両の車室内前部に配設されているインストルメントパネル(以下「インパネ」と略称)であり、車幅方向左右に延出されている。このインパネ1の運転席2前方に位置する部位にコンビネーションメータ(以下「コンビメータ」と略称)3が配設されている。
又、運転席2と助手席5との間に配設されて、インパネ1側から車体後方へ延出するセンタコンソール6に、自動変速機のレンジを選択するセレクトレバー7が配設され、その後方に、エンジン制御モードを選択するモード選択手段としてのモード選択スイッチ8(詳細な構成については後述する)が配設されている。更に、運転席2の前方にステアリングホイール9が配設されている。
ステアリングホイール9は、エアバッグ等を収容するセンタパッド部9aを有し、このセンタパッド部9aと外周のグリップ部9bとの左右及び下部が、3本のスポーク9cを介して連設されている。又、右側のスポーク9cにクルーズコントロールスイッチ(以下「クルコンスイッチ」と略称)11が配設されている。このクルコンスイッチ11は、予め設定されている目標車速に従って定速制御を実行させるクルコンセットスイッチ、目標車速を上昇させるアップスイッチ、目標車速を低下させるダウンスイッチを有しており、これらの何れをONさせてもクルーズコントロールが実行される。又、クルーズコントロール中にクルコンセットスイッチを再度ONすると、クルーズコントロールが解除される。このクルーズコントロールは、後述するエンジン制御装置22において実行される。従って、このエンジン制御装置22には、本願発明のクルーズコントロールとしての機能が備えられている。尚、以下においては、便宜的に、クルコンセットスイッチ、アップスイッチ、ダウンスイッチをクルコンスイッチ11と総称して説明する。
又、コンビメータ3には、タコメータ、スピードメータ、水温計、燃料計、ウォーニングランプ、トリップメータやオドメータを表示するインフォメーショディスプレイ等、周知の表示部が所定に配設されている。
図2に示すように、モード選択スイッチ8は複合スイッチであり、本実施形態ではプッシュスイッチを併設する中点自動復帰式シャトルスイッチが採用されている。このモード選択スイッチ8は、リング状の操作つまみ8aを有し、外部操作者(一般的には運転者であるため、以下においては、「運転者」と称して説明する)が、この操作つまみ8aを操作することで、複数(本実施形態では3種類)の異なるエンジン出力特性を有するエンジン制御モードM(第1エンジン制御モードとしてのノーマルモードM1、第2エンジン制御モードとしてのセーブモードM2、第3エンジン制御モードとしてのパワーモードM3)から1つのエンジン制御モードを選択することができる。尚、この各エンジン制御モードの詳細については後述する。
すなわち、本実施形態では、操作つまみ8aを、後述するプッシュ方向とは異なる方向である、プッシュスイッチの押圧方向を軸として左右方向へ回転させることで左側スイッチと右側スイッチとが各々ON動作され、左側スイッチのON動作でノーマルモードM1が選択され、又、右側スイッチのON動作でパワーモードM3が選択される。更に、操作つまみ8aを下方向へプッシュしてプッシュスイッチをON動作させることでセーブモードM2が選択される。このようにモード選択スイッチ8は、各エンジン制御モードに対応するスイッチが独立して配設されているため、同じスイッチを連続的にONさせても、現在選択されているエンジン制御モードMが、他のエンジン制御モードに誤って切換えられてしまうことはない。
ここで、各モードM1〜M3のエンジン出力特性について簡単に説明する。ノーマルモードM1は、アクセルペダル14の踏込み量(アクセル開度)に対して出力トルクがほぼリニアに変化するように設定されている、通常運転に適したモードである(図13(a)参照)。又、セーブモードM2は、アクセルペダル14を全踏してもスロットル弁は全開とはならず、エンジントルクの上昇が抑制されており、十分な出力を確保しながらスムーズなエンジン出力特性が得られるようにし、アクセルペダルを思い切り踏み込むなどのアクセルワークを楽しむことができるモードに設定されている。更に、セーブモードM2は出力トルクを抑制しているのでイージードライブ性と低燃費性(経済性)との双方をバランス良く両立させることができる。更に、パワーモードM3は、エンジンの低回転域から高回転域までレスポンスに優れるエンジン出力特性とし、更に、自動変速機搭載車の場合には、エンジントルクに同期させてシフトアップポイントを変更させる等してワインディング路などでのスポーティな走行状況にも積極的に対応可能として、きびきびとした運転ができるようなパワー重視のモードに設定されている。
この各エンジン制御モード(ノーマルモードM1、セーブモードM2、パワーモードM3)の目標トルクは、後述するように、エンジン回転数とアクセル開度との2つのパラメータに基づいて設定する。
ところで、図4に示すように、車両には、CAN(Controller Area Network)通信等の車内通信回線16を通じて、メータ制御装置(メータ_ECU)21、エンジン制御手段としてのエンジン制御装置(E/G_ECU)22、変速機制御装置(T/M_ECU)23、パワーステアリング制御装置としてのモータ制御装置(モータ_ECU)24等の、車両を制御する制御装置が相互通信可能に接続されている。各ECU21〜24は、マイクロコンピュータ等のコンピュータを主体に構成され、周知のCPU、ROM、RAM、及びEEPROM等の不揮発性記憶手段等を有している。
メータ_ECU21は、コンビメータ3の表示全体を制御するもので、入力側にモード選択スイッチ8、クルコンスイッチ11が接続されている。又、出力側に、コンビメータ3に配設されているタコメータ、スピードメータ、水温計、燃料計等の計器類、及びウォーニングランプやブザーを駆動するコンビメータ駆動部26が接続されている。
E/G_ECU22は、エンジンの運転状態を制御するもので、入力側に、クランク軸等の回転から、エンジン運転状態を示すパラメータの代表であるエンジン回転数を検出する運転状態検出手段としてのエンジン回転数センサ29、エアクリーナの直下流等に配設されて吸入空気量を検出する吸入空気量センサ30、アクセルペダル14の踏込み量からアクセル開度を検出するアクセル開度センサ31、吸気通路に介装されてエンジンの各気筒に供給する吸入空気量を調整するスロットル弁(図示せず)の開度を検出するスロットル開度センサ32、エンジン温度を示す冷却水温を検出する水温センサ33等、車両及びエンジン運転状態を検出するセンサ類が接続されている。又、E/G_ECU22の出力側に、燃焼室に対して所定に計量された燃料を噴射するインジェクタ36、電子制御スロットル装置(図示せず)に設けられているスロットルアクチュエータ37等、エンジン駆動を制御するアクチュエータ類が接続されている。
又、E/G_ECU22は、入力された各センサ類からの検出信号に基づき、インジェクタ36に対する燃料噴射タイミング、及び燃料噴射パルス幅(パルス時間)を設定すると共に、クルコンスイッチ11がONの場合はクルーズコントロールを行う。更に、スロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータ37に対してスロットル開度信号を出力してスロットル弁の開度を制御する。
ところで、E/G_ECU22に設けられている不揮発性記憶手段には、異なる複数のエンジン出力特性がマップ形式で格納されている。各エンジン出力特性として、本実施形態では3種類のモードマップMp1,Mp2,Mp3を備えており、図13(a)〜(c)に示すように、各モードマップMp1,Mp2,Mp3は、エンジン出力特性を設定する際の運転状態を特定するパラメータの一例であるアクセル開度とエンジン回転数とを格子軸とし、各格子点に目標トルクを格納する3次元マップで構成されている。
この各モードマップMp1,Mp2,Mp3は、基本的には、モード選択スイッチ8の操作により選択される。すなわち、モード選択スイッチ8にてノーマルモードM1を選択した場合はモードマップとしてノーマルモードマップMp1が選択され、セーブモードM2を選択した場合はセーブモードマップMp2が選択され、又、パワーモードM3を選択した場合はパワーモードマップMp3が選択される。
以下、各モードマップMp1,Mp2,Mp3のエンジン出力特性について説明する。図13(a)に示すノーマルモードマップMp1は、アクセル開度が比較的小さい領域で目標トルクがリニアに変化させるエンジン出力特性に設定されており、又、スロットル弁の開度が全開付近で最大目標トルクとなるように設定されている。
又、図13(b)に示すセーブモードマップMp2は、上述したノーマルモードマップMp1に格納されているエンジン出力特性に比し、目標トルクの上昇が抑えられており、アクセルペダル14を全踏しても、スロットル弁は全開とはならず、出力トルクの上昇を抑制することで、アクセルペダル14を思い切り踏み込む等のアクセルワークを楽しむことができる。更に、目標トルクの上昇が抑えられているため、イージードライブ性と低燃費性との双方をバランス良く両立させることができる。
又、図13(c)に示すパワーモードマップMp3は、ほぼ全運転領域でアクセル開度の変化に対する目標トルクの変化率が大きく設定されている。従って、例えば3リッタエンジンを搭載する車両であれば、3リッタエンジンの有するポテンシャルを最大限に発揮できるような目標トルクが設定される。尚、各モードマップMp1,Mp2,Mp3のアイドル回転数を含む極低回転領域は、ほぼ同じエンジン出力特性に設定されている。
このように、本実施形態によれば、運転者がモード選択スイッチ8を操作して、モードM1,M2,M3の中から何れか1つを選択すると、対応するモードマップMp1,Mp2,或いはMp3が選択され、当該モードマップMp1,Mp2,或いはMp3に基づいて目標トルクが設定される。そのため、1つの車両で全く異なる3種類のアクセルレスポンスを楽しむことができる。
又、T/M_ECU23は、自動変速機の変速制御を行うもので、入力側にトランスミッション出力軸の回転数等から車速を検出する運転状態検出手段としての車速センサ41、セレクトレバー7のセットされているレンジを検出するレンジ位置検出手段としてのインヒビタスイッチ42等が接続され、出力側に自動変速機の変速制御を行うコントロールバルブ43、及びロックアップクラッチをロックアップ動作させるロックアップアクチュエータ44が接続されている。このT/M_ECU23では、インヒビタスイッチ42からの信号に基づきセレクトレバー7のセットレンジを判定し、Dレンジにセットされているときは、所定の変速パターンに従い、その変速信号をコントロールバルブ43へ出力して変速制御を行う。尚、この変速パターンは、E/G_ECU22で設定されているモードM1,M2,M3に対応して可変設定される。更に、ロックアップ条件が満足されたときはロックアップアクチュエータ44にスリップロックアップ信号或いはロックアップ信号を出力し、トルクコンバータの入出力要素間を、コンバータ状態からスリップロックアップ状態、或いはロックアップ状態に切換える。その際、E/G_ECU22は、目標トルクτeをスリップロックアップ状態、及びロックアップ状態に同期させて補正する。その結果、例えばエンジン制御モードMがセーブモードM2に設定されている場合は、目標トルクτeが、より経済的な走行ができる領域に補正される。
又、モータ_ECU24は、後述する電動パワーステアリング装置51に設けられている、アシストアクチュエータとしての電動モータ63の駆動力を制御する。ここで、図3を参照して、電動パワーステアリング装置51のステアリング系を含めた構成について説明する。
電動パワーステアリング装置51は、そのステアリング軸52が、図示しない車体フレームにステアリングコラム53を介して回動自在に支持されており、その一端が運転席側へ延出され、他端がエンジンルーム側へ延出されている。ステアリング軸52の運転席側端部にステアリングホイール9が固設され、又、エンジンルーム側へ延出する端部にピニオン軸55が連設されている。
エンジンルームには、車幅方向へ延出するステアリングギヤボックス56が配設されており、このステアリングギヤボックス56にラック軸58が往復移動自在に挿通支持されている。このラック軸58に形成されたラック(図示せず)に、ピニオン軸55に形成されたピニオンが噛合されて、ラックアンドピニオン式のステアリングギヤ機構が形成されている。又、ラック軸58の左右両端はステアリングギヤボックス56の端部から各々突出されており、その端部に、タイロッド59を介してフロントナックル60が連設されている。このフロントナックル60は、操舵輪としての左右輪61L,61Rを回動自在に支持すると共に、キングピン(図示せず)を介して車体フレームに転舵自在に支持されている。従って、ステアリングホイール9を操作し、ステアリング軸52、ピニオン軸55を回転させると、このピニオン軸55の回転によりラック軸58が左右方向へ移動し、その移動によりフロントナックル60がキングピン(図示せず)を中心に回動して、左右輪61L,61Rが左右方向へ転舵される。
又、ピニオン軸55にアシスト伝達機構62を介して、アシストアクチュエータとしての電動モータ63が連設されており、この電動モータ63にてステアリングホイール9に加える操舵トルクをアシストする。更に、ステアリング軸52に操舵トルク検出手段としての操舵トルクセンサ64、及び操舵角センサ65が連設されている。そして、操舵トルクセンサ64にて、ステアリングホイール9に加えられる操舵トルクTqが検出される。又、操舵角センサ65にて、ステアリングホイール9の操舵角θωが検出される。尚、操舵角センサ65は、左旋回方向の舵角が正値で検出され、右旋回方向の舵角が負値で検出される。この操舵トルクセンサ64で検出した操舵トルクTq、及び操舵角センサ65で検出した操舵角θωがモータ_ECU24に入力される。
図5に示すように、このモータ_ECU24は、アクチュエータ制御部としてのモータ制御部72、モータ駆動信号生成回路73、モータ駆動回路74、電流検出部75を備えている。モータ制御部72は、モータ_ECU24の主な制御演算機能を担っており、選択されたステアリングアシストモード(以下、「パワステアシストモード」と称する)Msに従い、電動モータ63から出力されるアシストトルクの目標値(目標アシストトルク)τpを設定すると共に、電動モータ63の出力が目標アシストトルクτpに収束するようにフィードバック制御を行う。
モータ駆動信号生成回路73は、モータ制御部72からのモータ制御信号Pmに対応するモータ駆動信号を生成する。尚、このモータ駆動信号としては、例えばモータ制御信号Pmに応じたデューティ比のパルス幅変調信号(PWM信号)がある。
モータ駆動回路74は、このモータ駆動信号に応じた電圧を電動モータ63へ出力し、運転者がステアリングホイール9に加える操舵トルクを、電動モータ63の駆動力でアシストする。更に、電流検出部75は電動モータ63に供給される電流(モータ電流)Isを検出し、モータ制御部72へ出力する。
上述したパワステアシストモードMsは、前述のエンジン制御モードMに対応して、ノーマルモードM1に対応するパワステノーマルモードMs1、セーブモードM2に対応するパワステセーブモードMs2、パワーモードM3に対応するパワステパワーモードMs3の3種類が設定されている。そして、この各モード毎に、異なるアシスト特性の基本アシストトルクτt及びダンピングトルクτdが設定されており、この各基本アシストトルクτt、及びダンピングトルクτdが、モータ_ECU24に設けられている不揮発性記憶手段にテーブル形式で格納されている。
図14(a)にアシスト特性テーブルの概念を示し、同図(b)にダンピング特性テーブルの概念を示す。このアシスト特性テーブルは、ノーマルモードアシスト特性テーブルMt1、セーブモードアシスト特性テーブルMt2、パワーモードアシスト特性テーブルMt3の3種類のモードを有し、各アシスト特性テーブルMt1〜Mt3に、車速Vsp[Km/h]に対応する基本アシストトルクτtが実験等から求めて格納されている。一方、ダンピング特性テーブルは、ノーマルモードダンピング特性テーブルMd1、セーブモードダンピング特性テーブルMd2、パワーモードダンピング特性テーブルMd3の3種類を有し、各ダンピング特性テーブルMd1〜Md3に、車速Vsp[Km/h]に対応するダンピングトルクτdが実験等から求めて格納されている。
尚、上述したように、本実施形態で採用する電動パワーステアリング装置51は車速感応型であるため、車速Vspをパラメータとして基本アシストトルクτt、及びダンピングトルクτdが設定されるが、本実施形態は、舵角感応型の電動パワーステアリング装置に適用することもできる。この場合、電動パワーステアリング装置では、操舵角θωをパラメータとして基本アシストトルクτt、及びダンピングトルクτdを設定することになる。
ここで、各アシスト特性テーブルMt1〜Mt3、及び各ダンピング特性テーブルMd1〜Md3に格納されている基本アシストトルクτt、及びダンピングトルクτdの特性について詳述する。
図14(a)に示すように、ノーマルモードアシスト特性テーブルMt1には一般的な特性の基本アシストトルクτtが格納されている。又、セーブモードアシスト特性テーブルMt2には、ノーマルモードアシスト特性テーブルMt1に格納されている基本アシストトルクτtに比し、変化の比較的緩やかな、換言すれば、車速Vspの変化にほぼ比例して変化する特性の基本アシストトルクτtが格納されている。一方、パワーモードアシスト特性テーブルMt3には、ノーマルモードアシスト特性テーブルMt1に格納されている基本アシストトルクτtに比し、低速側で急激に低下し、中・高速側では変化の少ない特性の基本アシストトルクτtが格納されている。従って、基本アシストトルクτtは、パワステアシストモードMsを、パワステセーブモードMs2からパワステノーマルモードMs1、更にパワステパワーモードMs3へ切換えるに従い、よりダイレクトなステアリング操作感となる。
又、図14(b)に示すように、ダンピングトルクτdは基本アシストトルクτtと同様に車速Vspに応じて異なる出力特性に設定されている。
すなわち、ノーマルモードダンピング特性テーブルMd1には一般的な特性のダンピングトルクτdが格納されている。又、セーブモードダンピング特性テーブルMd2には、ノーマルモードダンピング特性テーブルMd1に格納されているダンピングトルクτdに比し、低速側では変化が少なく、高速側で急激に上昇する特性のダンピングトルクτdが格納されている。一方、パワーモードダンピング特性テーブルMd3には、ノーマルモードダンピング特性テーブルMd1に格納されているダンピングトルクτdに比し、車速Vspの変化にほぼ比例して変化する特性のダンピングトルクτdが格納されている。
この各ダンピングトルクτdは、車速Vspが0付近では低い減衰特性となり、車速Vspが高くなるに従い、次第に高い減衰特性に設定される。従って、パワステアシストモードMsを、パワステセーブモードMs2からパワステノーマルモードMs1、更にパワステパワーモードMs3へ切換えるに従い、よりシャープなステアリング操作感となる。
次に、上述したE/G_ECU22で実行されるエンジン運転状態の制御処理について、図6、図7のフローチャートに従って説明する。尚、図8に示す一時切換制御ルーチンは、メータ_ECU21で実行されるが、これについては後述する。
先ず、図6に示すモードマップ選択ルーチンについて説明する。このルーチンはイグニッションスイッチをONした後、設定演算周期毎に実行され、ステップS1で現在設定されているエンジン制御モードMが読込まれる。尚、イグニッションスイッチをONすると、エンジン制御モードMは、ノーマルモードM1に初期設定される。但し、この場合、セーブモードM2に初期設定されようにしても良い。
次いで、ステップS2へ進み、エンジン制御モードMの値を参照して、何れのモード(ノーマルモードM1、セーブモードM2、或いはパワーモードM3)が設定されているかを調べる。そして、ノーマルモードM1が設定されているときはステップS3へ進み、セーブモードM2に設定されているときはステップS4へ分岐し、又、パワーモードM3に設定されているときはステップS5へ分岐する。
ステップS3へ進むと、E/G_ECU22の不揮発性記憶手段に格納されているノーマルモードマップMp1を、今回のモードマップとして選択して、ステップS6へ進む。又、ステップS4へ分岐すると、セーブモードマップMp2を、今回のモードマップとして選択して、ステップS6へ進む。一方、ステップS5へ分岐すると、パワーモードマップMp3を、今回のモードマップとして選択して、ステップS6へ進む。
そして、ステップS3〜S5の何れかよりステップS6へ進むと、モード選択スイッチ8がON操作されたか否かを調べ、操作されていないときは、そのままルーチンを抜ける。又、ON操作されたときは、ステップS7へ進み、運転者が何れのエンジン制御モードMを選択したかを判別する。
そして、運転者がノーマルモードを選択した(操作つまみ8aを左回転させた)と判断したとき、ステップS8へ進み、エンジン制御モードMをノーマルモードM1で設定して(M←モード1)、ルーチンを抜ける。又、運転者がセーブモードM2を選択した(操作つまみ8aをプッシュした)と判断したとき、ステップS9へ進み、エンジン制御モードMをセーブモードM2で設定して(M←M2)、ルーチンを抜ける。又、運転者がパワーモードM3を選択した(操作つまみ8aを右回転させた)と判断したとき、ステップS10へ進み、エンジン制御モードMをパワーモードM3で設定して(M←M3)、ルーチンを抜ける。
次に、図7に示すエンジン制御ルーチンについて説明する。このルーチンでは、先ず、ステップS11で運転者が選択したエンジン制御モードMに対応するモードマップ(Mp1,Mp2、或いはMp3:図13参照)を読込み、続く、ステップS12でエンジン回転数センサ29で検出したエンジン回転数Neと、アクセル開度センサ31で検出したアクセル開度θaccとを読込む。
その後、ステップS13で、両パラメータNe,θaccに基づき、ステップS11で読込んだモードマップを補間計算付きで参照して目標トルクτeを決定する。次いで、ステップS14へ進み、目標トルクτeに対応する、最終的な目標スロットル開度θeを決定する。
その後、ステップS15へ進み、スロットル開度センサ32で検出したスロットル開度θthを読込み、ステップS16で、スロットル開度θthが目標スロットル開度θeに収束するように、電子制御スロットル装置に設けられているスロットル弁を開閉動作させるスロットルアクチュエータ37をフィードバック制御して、ルーチンを抜ける。
その結果、運転者がアクセルペダル14を操作すると、アクセル開度θaccとエンジン回転数Neとをパラメータとして、運転者が選択したエンジン制御モードM(M:ノーマルモードM1、セーブモードM2、パワーモードM3)に対応するモードマップMp1,Mp2,Mp3に従いスロットル弁が開閉動作し、エンジン制御モードMがノーマルモードM1に設定されている場合は、アクセルペダル14の踏込み量(アクセル開度θacc)に対して出力トルクがほぼリニアに変化するため、通常の運転を行うことができる。
又、セーブモードM2に設定されている場合は、アクセルペダル14を全踏してもスロットル弁は全開とはならず、目標トルクτeの上昇が抑えられているため、アクセルペダル14を思い切り踏み込む等のアクセルワークを楽しむことができる。更に、パワーモードM3に設定されている場合は、高いレスポンスが得られるため、よりスポーティな走りを得ることができる。
又、本実施形態では、セレクトレバー7を後進レンジ(以下、「Rレンジ」と称する)にセットすると、エンジン制御モードMが自動的に一時切換えされる。この一時切換制御は、メータ_ECU21において、図8に示す一時切換制御ルーチンに従って実行される。
このルーチンでは、先ず、ステップS21で、セレクトレバー7がRレンジにセットされているか否かを、インヒビタスイッチ42からの信号に基づいて判定する。そして、セレクトレバー7がRレンジにセットされているときは、ステップS22へ進み、又、Rレンジ以外のレンジにセットされているときは、ステップS25へ進む。
ステップS22へ進むと、現在のエンジン制御モードMを参照し、パワーモードM3以外のときは、そのままルーチンを抜ける。又、エンジン制御モードMとしてパワーモードM3が選択されているときは、ステップS23へ進み、リバースフラグFRをセットして(FR←1)、ステップS24で、エンジン制御モードMをノーマルモードM1に強制的に切換えて(M←M1)、ルーチンを抜ける。
このように、本実施形態では、エンジン制御モードMがパワーモードM3に設定されている状態で、セレクトレバー7をRレンジにセットしたときは、エンジン制御モードMがノーマルモードM1に強制的に切換えられるため、後進走行の際にアクセルペダル14をやや踏み込んでも車両が急に後進されてしまうことが無く、良好な後進走行性能を得ることができる。
一方、ステップS21でセレクトレバー7がRレンジ以外のレンジにセットされていると判定されてステップS25へ進むと、リバースフラグFRの値を参照し、FR=1、すなわち、セレクトレバー7をRレンジから別のレンジへ切換えた後の最初のルーチンのときは、ステップS26へ進み、エンジン制御モードMをパワーモードM3に戻し(M←M3)、ステップS27でリバースフラグFRをクリアした後(FR←0)、ルーチンを抜ける。
その結果、セレクトレバー7をRレンジから、例えばDレンジに戻した場合、エンジン制御モードMが、元のパワーモードM3に自動的に戻されるため、運転者は違和感なく車両を発進させることができる。
又、上述したエンジン制御モードMは、モータ_ECU24に設けられたモータ制御部72において電動モータ63の出力を制御する際に読込まれる。モータ制御部72で処理される電動モータ63の出力制御は、具体的には、図9〜図12に示すフローチャートに従って実行される。
先ず、図9に示すパワステアシストモード設定ルーチンについて説明する。このルーチンは設定演算周期毎に実行され、先ず、ステップS31で、電動パワーステアリング装置51のシステム異常が検出されたか否かを調べる。すなわち、操舵トルクセンサ64からの信号、操舵角センサ65からの信号、及び他のECUからの信号等、モータ制御部72に入力される信号、及びモータ制御部72から出力される信号を読込み、それら各信号に異常があるか否かを調べ、電動パワーステアリング装置51自身のシステム異常、或いは通信システムの異常が検出された場合は、ステップS32へ分岐して、フェールセーフフラグFをセットして(F←1)、ルーチンを抜ける。又、システム異常が検出されなかった場合は、ステップS33へ進む。尚、ステップS31で判定する「システム異常」とは、センサ等から異常信号が出力されている状態であっても、電動パワーステアリング装置51の機能を完全に失うまでには至らないが、電動モータ63の作動を停止してフェールセーフを図ることが望ましいと判断される状態をいう。
又、ステップS31からステップS33へ進むと、クルーズコントロール中か否かを調べ、クルーズコントロール中の場合はステップS34へ進み、パワステアシストモードMsをパワステパワーモードMs3でセットして(Ms←Ms3)、ルーチンを抜ける。
又、クルーズコントロールが解除されている場合は、ステップS35へ進み、セレクトレバー7がRレンジにセットされているか否かを、インヒビタスイッチ42からの信号に基づいて判定する。そして、セレクトレバー7がRレンジにセットされているときは、ステップS36へ進み、パワステアシストモードMsをパワステセーブモードMs2でセットして(Ms←Ms2)、ルーチンを抜ける。
一方、セレクトレバー7がRレンジ以外のレンジにセットされているときは、ステップS37でエンジン制御モードMを読込み、続く、ステップS38でパワステアシストモードMsを読込む。そして、ステップS39で、エンジン制御モードMとパワステアシストモードMsとが同じモードに設定されているか否かを調べ、同じモードに設定されている場合は(M=Ms)、ステップS31へ戻る。又、異なるモードに設定されている場合は(M≠Ms)、ステップS40へ進む。
ステップS40へ進むと、モード協調条件が成立しているか否かを調べる。モード協調条件は、パワステアシストモードMsを切換えた場合、運転者に与えるステアリング操作感が急変されてしまい、運転者に違和感を与えてしまうことになる領域では、例えエンジン制御モードMが切換えられてもパワステアシストモードMsは切換えることなく維持させるようにするものである。そして、モード協調条件が満足された場合、パワステアシストモードMsをエンジン制御モードMに一致させる設定を行う。又、モード協調条件が満足されなかった場合は、エンジン制御モードMが切換えられても、パワステアシストモードMsは切換えることなく、現状を維持させる。
モード協調条件は、例えば車速Vspと操舵角θωと操舵トルクTqとに基づき判定する。そして、車速Vspが設定車速未満(Vsp<設定車速)で、且つ操舵角θωの絶対値|θω|が設定舵角未満(|θω|<設定舵角)で、且つ操舵トルクTqが設定トルク未満(Tq<設定トルク)の場合は、モード協調条件成立と判定して、ステップS41へ進む。又、この条件1つでも満足されなかった場合、モード協調条件不成立と判定してステップS31へ戻り、現在設定されているパワステアシストモードMsを維持する。従って、例えば、Vsp≧設定車速の高速走行時に運転者がエンジン制御モードMを切換えても、パワステアシストモードMsは切換えられないので、高速走行中にステアリング操作感が急変することが無く、安定したドライバビリティを得ることができる。
そして、ステップS41へ進むと、パワステアシストモードMsをエンジン制御モードMで設定されているモードに対応したモードに設定して(Ms←M)、ルーチンを抜ける。従って、パワステアシストモードMsは、基本的にエンジン制御モードMに対応して切換えられるので、電動パワーステアリング装置51の出力特性を、エンジン制御モードMに合わせて適正に設定することができる。
又、モード協調条件が不成立の場合は現状のパワステアシストモードMsを維持するようにしたので、エンジン制御モードMが切換えられても、運転者に与えるステアリング操作感が急変されず、運転者に違和感を与えることがない。
更に、クルーズコントロール中のパワステアシストモードMsは、パワステパワーモードMs3に固定されるため、例えば高速走行においては路面からの振動がステアリングホイール9に伝達されても、ステアリングホイール9が運転者の意思に反した方向へ動き難くなる。従って、クルーズコントロールを比較的長い時間継続させても、ステアリングホイール9を把持する運転者に与える疲労感を軽減することができる。
更に、セレクトレバー7がRレンジにセットされているときは、パワステアシストモードMsがパワステセーブモードMs2に固定されるので、後進走行時のステアリング操作感を常に一定にすることができる。
このパワステアシストモードMsは、図10に示すパワステテーブル選択ルーチンにおいて読込まれる。このルーチンは設定演算周期毎に実行され、先ず、ステップS51でフェールセーフフラグFの値を参照し、F=1のシステム異常の場合は、そのままルーチンを抜ける。又、F=0のシステム正常の場合は、ステップS52へ進む。
ステップS52へ進むと、パワステアシストモードMsを読込み、続くステップS53で、パワステアシストモードMsが何れのモードに設定されているかを調べる。そして、パワステアシストモードMsがパワステノーマルモードMs1に設定されている場合はステップS54へ進み、パワステセーブモードMs2に設定されている場合はステップS5へ進み、又、パワステパワーモードMs3に設定されている場合はステップS56へ進む。
ステップS54へ進むと、ノーマルモードアシスト特性テーブルMt1(図14(a)参照)、及びノーマルモードダンピング特性テーブルMd1(図14(b)参照)を選択してルーチンを抜ける。又、ステップS55へ進むと、セーブモードアシスト特性テーブルMt2(図14(a)参照)、及びセーブモードダンピング特性テーブルMd2(図14(b)参照)を選択してルーチンを抜ける。更に、ステップS56へ進むと、パワーモードアシスト特性テーブルMt3(図14(a)参照)、及びパワーモードダンピング特性テーブルMd3(図14(b)参照)を選択してルーチンを抜ける。
この選択したアシスト特性テーブル及びダンピング特性テーブルは、図11に示すアシストトルク算出ルーチンにおいて読込まれる。このルーチンは設定演算周期毎に実行され、先ず、ステップS61でフェールセーフフラグFの値を参照し、F=1のシステム異常の場合は、そのままルーチンを抜ける。又、F=0のシステム正常の場合は、ステップS62へ進む。
ステップS62では、選択したアシスト特性テーブルとダンピング特性テーブルとを読込み、続くステップS63で車速Vspを読込む。そして、ステップS64へ進み、車速Vspに基づき、選択したアシスト特性テーブルとダンピング特性テーブルを補間計算付きで参照して、基本アシストトルクτtとダンピングトルクτdとを設定する。
次いで、ステップS65で、基本アシストトルクτtとダンピングトルクτdとの差分から目標アシストトルクτpを算出し(τ←τt−τd)、ルーチンを抜ける。目標アシストトルクτpは、ダンピングトルクτdの分だけ減衰されるためステアリングホイール9の収斂性が向上する。すなわち、図14に示すように、車速Vspが低速から高速方向へ移行するに従い、基本アシストトルクτtは減少するが、ダンピング特性は逆に次第に増加する。その結果、車速Vspが高速へ移行するに従い、次第に高い収斂性を得ることができる。
目標アシストトルクτpは、パワステアシストモードMs毎に異なる特性に設定され、又、このパワステアシストモードMsが基本的にエンジン制御モードMに対応して設定されるため、例えばエンジン制御モードMとして、それほどのパワーを必要とせず、経済的な運転を行うことのできるセーブモードM2が選択されている場合、パワステアシストモードMsとしてパワステセーブモードMs2が設定されるため、目標アシストトルクτpが、パワステアシストモードMsとしてパワステノーマルモードMs1が設定される場合に比し大きな値となり、相対的にステアリング操作感が軽くなる。その結果、運転者にかかるステアリング操作時の負担が軽減される。
一方、エンジン制御モードMとして、スポーティな走りを得ることのできるパワーモードM3が選択されている場合は、パワステアシストモードMsとしてパワステパワーモードMs3が設定されるため、目標アシストトルクτpは、パワステアシストモードMsとしてパワステノーマルモードMs1が設定される場合に比し、小さくなるため、相対的にステアリング操作感が重くなり、ダイレクト且つシャープなフィーリングを得ることができる。その結果、ステアリングホイール9は中立位置付近でのしっかり感を得ることができ、高速走行時のハンドル振れを抑制することができる。
この目標アシストトルクτpは、図12に示すパワステ制御ルーチンにおいて読込まれる。このルーチンは設定演算周期毎に実行され、先ず、ステップS71でフェールセーフフラグFの値を参照し、F=0のシステム正常の場合はステップS72へ進み、F=1のシステム異常の場合はステップS73へ分岐する。
ステップS72へ進むと、目標アシスト量τを読込み、続くステップS73で、目標アシスト量τに対応する目標アシスト電流値Pを設定し、ステップS75で、電流検出部75で検出したモータ電流値Isを読込む。
そして、ステップS76で目標アシスト電流値Pとモータ電流値Isとの差分ΔP(ΔP←P−Is)を算出し、続く、ステップS77で、この差分ΔPが0に収束するような制御信号(フィードバック制御信号)Dを比例積分制御等により生成する。
次いで、ステップS78で、目標アシスト電流値Pにフィードバック制御信号Dを加算してモータ制御信号Pmを算出し(Pm←P+D)、モータ駆動信号生成回路73へ出力する。モータ駆動信号生成回路73は、モータ制御部72から出力されるモータ制御信号Pmに応じたモータ駆動信号(例えばPWM信号)を生成し、モータ駆動回路74へ出力する。
モータ駆動回路74は、モータ駆動信号生成回路73で生成したモータ駆動信号に応じた電圧によって流れる電流に応じた大きさ、及び方向の電圧を電動モータ63へ供給する。すると、この電動モータ63の駆動力がピニオン軸55にアシスト伝達機構62を介して伝達される。
一方、ステップS71で、F=1のシステム異常と判定されてステップS73へ進むと、モータ電流値Isを読込み、ステップS79で、モータ電流値Isから設定値ΔIsを減算してモータ制御信号Pmを算出する。次いで、ステップS80で、モータ制御信号Pmが0以下か否かを調べる。そして、Pm≦0のときはステップS81へ進み、モータ制御信号Pmを0にセットして(Pm←0)、ステップS82へ進む。又、Pm>0のときは、そのままステップS82へ進む。
そして、ステップS80或いはステップS81からステップS82へ進むと、モータ制御信号Pmを出力してルーチンを抜ける。従って、フェールセーフフラグF=1のシステム異常と判定されたときは、そのときのモータ電流値Isから設定値ΔIs分だけ減少された値が、演算周期毎にモータ制御信号Pmとして設定され、このモータ制御信号Pmが0となるまで段階的に減少される。その結果、システム異常が検出されたときは、ステアリングがマニュアルモードへ緩やかに移行される。
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えばアシストアクチュエータは電動モータ63に限らず油圧モータであっても良い。又、電動パワーステアリング装置51のシステム異常が検出されたときは、ステアリングをマニュアルモードへ移行せず、予めフェイルセーフ用に設定されている特性のアシストトルク及びダンピングトルクに基づいて電動モータ63を制御するようにしても良い。