以下、図面に基づいて本発明の一形態を説明する。図1にインストルメントパネル及びセンタコンソールを運転席側から見た斜視図が示されている。
図1に示すように、車両の車室内前部に配設されているインストルメントパネル(以下「インパネ」と略称)1は、車幅方向左右に延出されており、運転席2の前方に位置するインパネ1にコンビネーションメータ(以下「コンビメータ」と略称)3が配設されている。又、このインパネ1の車幅方向ほぼ中央に、周知のカーナビゲーションシステムを構成する表示手段としてのセンタディスプレイ4が配設されている。
又、運転席2と助手席5との間に配設されて、インパネ1側から車体後方へ延出するセンタコンソール6に、自動変速機のレンジを選択するセレクトレバー7が配設され、その後方に、エンジンの駆動力特性を選択する選択手段としてのモード選択スイッチ8が配設されている。更に、運転席2の前方にステアリングホイール9が配設されている。
ステアリングホイール9は、エアバッグ等を収容するセンタパッド部9aを有し、このセンタパッド部9aと外周のグリップ部9bとの左右及び下部が、3本のスポーク9cを介して連設されている。このセンタパッド部9aの左下部に表示切換スイッチ10が配設され、又、右下部に、一時切換手段としての一時切換スイッチ11が配設されている。
又、図2に示すように、コンビメータ3は、中央寄りの左右に、エンジン回転数を示すタコメータ3aと、車速を表示するスピードメータ3bとが各々配設されている。更に、タコメータ3aの左側に冷却水温を表示する水温計3cが配設され、スピードメータ3bの右側に燃料残量を表示する燃料計3dが配設されている。又、中央部に現在の変速段を表示する変速段表示部3eが配設されている。尚、符号3fはウォーニングランプ、3gはトリップメータをリセットするトリップリセットスイッチである。このトリップリセットスイッチ3gの押しボタンがコンビメータ3から運転席2側に突出されており、運転者等が押しボタンを介してトリップリセットスイッチ3gを設定時間以上ONし続けることで、トリップメータがリセットされる。
更に、タコメータ3aの下部に、走行距離や燃費、エンジン駆動力等の情報を複数の表示画面を切換えて、それぞれ表示させる表示手段としてのマルチインフォメーションディスプレイ(以下「MID」と略称)12が配設されている。又、スピードメータ3bの下部に、瞬間燃費とトリップ平均燃費との差に基づき経済的な走行を指標する燃費メータ13が配設されている。
又、図3に示すように、モード選択スイッチ8は、プッシュスイッチを併設するシャトルスイッチであり、外部操作者(一般的には運転者であるため、以下においては、「運転者」と称して説明する)がリング状の操作つまみ8aを操作することで、後述する3種類のモード(第1モードであるノーマルモード1、第2モードであるセーブモード2、第3モードであるパワーモード3)を選択することができる。すなわち、本形態では、操作つまみ8aを左方向へ回転させることで左側スイッチがON動作されてノーマルモード1が選択され、右方向へ回転させることで右側スイッチがON動作されてパワーモード3が選択され、一方、操作つまみ8aを下方向にプッシュすることでプッシュスイッチがON動作してセーブモード2が選択される。尚、プッシュスイッチにセーブモード2を割り当てることで、例えば運転中に誤ってプッシュスイッチをONした場合であっても、セーブモード2は後述するように出力トルクが抑制されているため、モードがセーブモード2に切換えられても駆動力が急に増加されてしまうことがなく、運転者は安心して運転することができる。
ここで、各モード1〜3の出力特性について簡単に説明する。ノーマルモード1は、アクセルペダル14の踏込み量(アクセル開度)に対して出力トルクがほぼリニアに変化するように設定されている(図10(a)参照)、通常運転に適したモードである。
又、セーブモード2は、エンジントルクのセーブ、及び自動変速機搭載車では変速機のロックアップ制御に同期させてエンジントルクをセーブする等して、十分な出力を確保しながらスムーズな出力特性とし、アクセルワークを楽しむことができるモードに設定されている。更に、セーブモード2は出力トルクを抑制しているのでイージードライブ性と低燃費性(経済性)との双方をバランス良く両立させることができる。例えば、3リッタエンジンを搭載する車両であっても、2リッタエンジン相当の十分な出力を確保しながらスムーズな出力特性とし、特に街中などの実用領域における扱い易さを重視した性能が設定されている。
又、パワーモード3は、エンジンの低回転域から高回転域までレスポンスに優れる出力特性とし、更に、自動変速機搭載車の場合には、エンジントルクに同期させてシフトアップポイントを変更させる等してワインディング路などでのスポーティな走行状況にも積極的に対応可能として、きびきびとした運転ができるようなパワー重視のモードに設定されている。すなわち、このパワーモード3では、アクセルペダル14の踏込み量に対して高いレスポンス特性が設定されており、例えば3リッタエンジンを搭載する車両であれば、3リッタエンジンの有するポテンシャルを最大限に発揮できるように、早いタイミングで最大トルクを発生させるように設定されている。尚、この各モード(ノーマルモード1、セーブモード2、パワーモード3)の駆動力指示値(目標トルク)は、後述するように、エンジン回転数とアクセル開度との2つのパラメータに基づいて設定する。
表示切換スイッチ10は、MID12に表示される情報を切換える際に操作するもので、順送りスイッチ部10aと逆送りスイッチ部10bと初期画面復帰スイッチ部10cとが設けられている。
又、図4に示すように、車両には、CAN(Controller Area Network)通信等の車内通信回線16を通じて、メータ制御装置(メータ_ECU)21、エンジン制御装置(E/G_ECU)22、変速機制御装置(T/M_ECU)23、ナビゲーション制御装置(ナビ_ECU)24等の、車両を制御する演算手段としての制御装置が相互通信可能に接続されている。各ECU21〜24は、マイクロコンピュータ等のコンピュータを主体に構成され、周知のCPU、ROM、RAM、及びEEPROM等の不揮発性記憶手段等を有している。
メータ_ECU21は、コンビメータ3の表示全体を制御するもので、入力側にモード選択スイッチ8、表示切換スイッチ10、一時切換スイッチ11、及びトリップリセットスイッチ3gが接続されている。又、出力側に、タコメータ3a、スピードメータ3b、水温計3c、燃料計3d等の計器類、及びウォーニングランプ3fを駆動するコンビメータ駆動部26、MID駆動部27、燃費メータ駆動部28が接続されている。
E/G_ECU22は、エンジンの運転状態を制御するもので、入力側に、クランク軸等の回転から、エンジン運転状態を示すパラメータの代表であるエンジン回転数を検出する運転状態検出手段としてのエンジン回転数センサ29、エアクリーナの直下流等に配設されて吸入空気量を検出する吸入空気量センサ30、アクセルペダル14の踏込み量からアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段としてのアクセル開度センサ31、吸気通路に介装されてエンジンの各気筒に供給する吸入空気量を調整するスロットル弁(図示せず)の開度を検出するスロットル開度センサ32、エンジン温度を示す冷却水温を検出するエンジン温度検出手段としての水温センサ33等、車両及びエンジン運転状態を検出するセンサ類が接続されている。又、E/G_ECU22の出力側に、燃焼室に対して所定に計量された燃料を噴射するインジェクタ36、電子制御スロットル装置(図示せず)に設けられているスロットルアクチュエータ37等、エンジン駆動を制御するアクチュエータ類が接続されている。
E/G_ECU22は、入力された各センサ類からの検出信号に基づき、インジェクタ36に対する燃料噴射タイミング、及び燃料噴射パルス幅(パルス時間)を設定する。更に、スロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータ37に対してスロットル開度信号を出力してスロットル弁の開度を制御する。
ところで、E/G_ECU22に設けられている不揮発性記憶手段には、異なる複数の駆動力特性がマップ形式で格納されている。各駆動力特性として、本形態では3種類のモードマップMp1,Mp2,Mp3を備えており、図10(a)〜(c)に示すように、各モードマップMp1,Mp2,Mp3は、アクセル開度とエンジン回転数とを格子軸とし、各格子点に駆動力指示値(目標トルク)を格納する3次元マップで構成されている。
この各モードマップMp1,Mp2,Mp3は、基本的には、モード選択スイッチ8の操作により選択される。すなわち、モード選択スイッチ8にてノーマルモード1を選択した場合、モードマップとして第1モードマッブとしてのノーマルモードマップMp1が選択され、セーブモード2を選択した場合、第2モードマップとしてのセーブモードマップMp2が選択され、又、パワーモード3を選択した場合、第3モードマップとしてのパワーモードマップMp3が選択される。但し、本形態において、ノーマルモードマップMp1或いはセーブモードマップMp2の選択時に、一時切換スイッチ11が操作されると、モードマップはパワーモードマップMp3に切り換えられる。逆に、パワーモードマップMp3の選択時に、一時切換スイッチ11が操作されると、モードマップは従前のモードマップ(ノーマルモードマップMp1或いはセーブモードマップMp2)に切り換えられる。また、セレクトレバー7がRレンジにセットされると、モードマップは、予め設定された特定のモードマップ(例えば、ノーマルモードマップ1)に強制的に切り換えられる。
以下、各モードマップMp1,Mp2,Mp3の駆動力特性について説明する。同図(a)に示すノーマルモードマップMp1は、アクセル開度が比較小さい領域で目標トルクがリニアに変化させる特性に設定されており、又、スロットル弁の開度が全開付近で最大となるように設定されている。
又、同図(b)に示すセーブモードマップMp2は、上述したノーマルモードマップMp1に比し、目標トルクの上昇が抑えられており、アクセルペダル14を全踏しても、出力トルクを抑制することで、アクセルペダル14を思い切り踏み込む等のアクセルワークを楽しむことができる。更に、目標トルクの上昇が抑えられているため、イージードライブ性と低燃費性との双方をバランス良く両立させることができる。例えば3リッタエンジンを搭載する車両であっても、2リッタエンジン相当の充分な出力を確保しながらスムーズな出力特性とし、特に街中などの実用領域における扱い易さを重視した目標トルクが設定される。
又、同図(c)に示すパワーモードマップMp3は、ほぼ全運転領域でアクセル開度の変化に対する目標トルクの変化率が大きく設定されている。従って、例えば3リッタエンジンを搭載する車両であれば、3リッタエンジンの有するポテンシャルを最大限に発揮できるような目標トルクが設定される。尚、各モードマップMp1,Mp2,Mp3のアイドル回転数を含む極低回転領域は、ほぼ同じ駆動力特性に設定されている。
このように、本形態によれば、運転者がモード選択スイッチ8を操作して、何れかのモード1,2,3を選択すると、E/G_ECU22は、対応するモードマップMp1,Mp2,或いはMp3を選択する。そして、選択したモードマップMp1,Mp2,或いはMp3に基づいて、E/G_ECU22は、現在のアクセル開度及び車速に対応する目標トルクを演算する。すなわち、E/G_ECU22は、アクセル開度に応じた駆動力指示値をモード毎に異なる特性で演算する。そして、E/G_ECU22は、モードマップから演算した目標トルクに対して各種補正を行い、当該補正によって決定した最終的な目標トルク(最終目標トルク)に基づいてスロットル弁の開度を制御する。
目標トルクに対する補正の1つとして、E/G_ECU22は、車両の走行状態が減速状態から加速状態へと移行する過渡時に、目標トルクの変化速度を制限する制御(DA制御:deceleration-acceleration制御)を行う。このDA制御のパラメータをモード間で統一するため、本形態において、E/G_ECU22は、アクセル開度(実アクセル開度)を、予め設定された基準モード相当のアクセル開度(以下、逆引きアクセル開度と称す)に換算する。すなわち、上述のように、本形態において、E/G_ECU22は複数のモードマップMp1,Mp2,Mp3を選択的に用いるため、アクセル開度に対するエンジンの駆動力特性がモード毎に異なる。そこで、アクセル開度(実アクセル開度)に代わる各モード共通のパラメータを演算すべく、例えば、E/G_ECU22には基準モードとしてノーマルモードが予め設定されており、E/G_ECU22は、このノーマルモード1のモードマップMp1を用い、当該モードマップ上で現在の目標トルクに相当するアクセル開度を逆引きアクセル開度として求める。そして、E/G_ECU22は、演算した逆引きアクセル開度をパラメータの1つとして用い、DA制御を行う。
このように、本形態において、E/G_ECU22は、駆動力設定手段、アクセル開度逆算手段、駆動力制御手段としての各機能を有する。なお、上述のDA制御と同様の制御を、車両の走行状態が加速状態から減速状態へと移行する際の過渡時の制御(AD制御)に拡張することも可能である。
又、T/M_ECU23は、自動変速機の変速制御を行うもので、入力側にトランスミッション出力軸の回転数等から車速を検出する車速センサ41、セレクトレバー7のセットされているレンジを検出するインヒビタスイッチ42等が接続され、出力側に自動変速機の変速制御を行うコントロールバルブ43、及びロックアップクラッチをロックアップ動作させるロックアップアクチュエータ44が接続されている。本形態において、自動変速機は、例えば、複数の摩擦合要素(図示せず)を選択的に係合することで前進4段後進1段の変速段を得る多段式の変速機で構成され、T/M_ECU23は、コントロールバルブ43を通じた油圧制御により各摩擦係合要素の係合状態を切り換えることで各段への変速を実現する。
このT/M_ECU23では、インヒビタスイッチ42からの信号に基づきセレクトレバー7のセットレンジを判定し、Dレンジにセットされているときは、所定の変速パターン(変速マップ)に従い変速判定を行う。そして、T/M_ECU23は、変速タイミングであることを判定すると、変速油圧制御情報を演算し、この変速油圧制御情報に従ってコントロールバルブ43を制御する。これにより、摩擦係合要素の係合状態が切り換えられ、所定の変速段への変速が実現される。
このような変速制御時における変速油圧制御情報として、例えば、変速過渡時における各相(イナーシャ相、トルク相等)の切換タイミングや各タイミングでの油圧指示値の勾配等が演算される。この変速油圧制御情報の演算をモード間で統一するため、本形態において、T/M_ECU23は、E/G_ECU22で演算した上述の逆引きアクセル開度をパラメータの1つとして用いる。すなわち、T/M_ECU23には、例えば、変速制御時における各相の切換タイミングや各タイミングでの油圧指示値の勾配等を、逆引きアクセル開度をパラメータとして演算するための各マップが予め設定されている。
又、T/M_ECU23は、ロックアップ条件が満足されたときはロックアップアクチュエータ44にスリップロックアップ信号或いはロックアップ信号を出力し、トルクコンバータの入出力要素間を、コンバータ状態からスリップロックアップ状態、或いはロックアップ状態に切換える。
このように、本形態において、T/M_ECU23は、変速判定手段、変速制御情報演算手段としての各機能を有する。
ナビ_ECU24は、周知のカーナビゲーションシステムに設けられているもので、GPS衛星等から得られる位置データに基づいて車両の位置を検出すると共に、目的地までの誘導路を演算する。そして、自車の現在地及び誘導路がセンタディスプレイ4上の地図データに表示される。本形態では、このセンタディスプレイ4に、MID12に表示させる各種情報を表示させることができるようにしている。
次に、上述したE/G_ECU22で実行されるエンジンの運転状態を制御する手順について、図5〜図9のフローチャートに従って説明する。
イグニッションスイッチをONすると、先ず、図5に示す始動時制御ルーチンが1回のみ起動される。このルーチンでは、先ず、ステップS1で、前回のイグニッションスイッチOFF時に設定されていたモードM(M:ノーマルモード1、セーブモード2、パワーモード3)を読込む。
そして、ステップS2へ進み、モードMが、パワーモード3か否かを調べる。そして、パワーモード3に設定されているときは、モードMをノーマルモード1に強制的に設定して(M←モード1)、ルーチンを終了する。
又、モードMが、パワーモード3以外の、ノーマルモード1、或いはセーブモード2に設定されているときはそのままルーチンを終了する。
このように、前回のイグニッションスイッチをOFFしたときのモードMがパワーモード3に設定されている場合、今回、イグニッションスイッチをONしたときのモードMがノーマルモード1へ強制的に切換えられるため(M←モード1)、アクセルペダル14をやや踏み込んでも車両が急発進してしまうことが無く、良好な発進性能を得ることができる。
そして、この始動時制御ルーチンが終了すると、図6,7に示すルーチンが所定演算周期毎に実行される。先ず、図6に示すモードマップ選択ルーチンについて説明する。
このルーチンは、先ず、ステップS11で現在設定されているモードMを読込み、ステップS12で、モードMの値を参照して、何れのモード(ノーマルモード1、セーブモード2、或いはパワーモード3)が設定されているかを調べる。そして、ノーマルモード1が設定されているときはステップS13へ進み、セーブモード2に設定されているときはステップS14へ分岐し、又、パワーモード3に設定されているときはステップS15へ分岐する。尚、イグニッションスイッチをONした後の、最初のルーチン実行時においては、モードMが、ノーマルモード1かセーブモード2の何れかであるため、ステップS15へ分岐することはない。但し、イグニッションスイッチをONした後、運転者がモード選択スイッチ8の操作つまみ8aを右回転させて、パワーモードを選択した場合、後述するステップS23でモードMがパワーモード3に設定されるため、それ以降のルーチン実行時においては、ステップS12からステップS15へ分岐される。
そして、ノーマルモード1に設定されていると判定されて、ステップS13へ進むと、E/G_ECU22の不揮発性記憶手段に格納されているノーマルモードマップMp1を、今回のモードマップとして設定して、ステップS19へ進む。又、セーブモード2に設定されていると判定されて、ステップS14へ分岐すると、セーブモードマップMp2を、今回のモードマップとして設定して、ステップS19へ進む。
一方、パワーモード3に設定されていると判定されて、ステップS15へ分岐すると、ステップS15,S16において、エンジン温度を冷却水温から検出する水温センサ33で検出した冷却水温Twと設定下限温度としての暖機判定温度TL、及び設定上限温度としての高温判定温度THとを比較する。そして、ステップS15において、冷却水温Twが暖機判定温度TL以上と判定され(Tw≧TL)、且つ、ステップS16で冷却水温Twが高温判定温度TH未満と判定されたときは(Tw<TH)、ステップS17へ進む。
一方、ステップS15で冷却水温Twが暖機判定温度TL未満と判定され(Tw<TL)、或いはステップS16で冷却水温Twが高温判定温度TH以上と判定されたときは(Tw>TH)、ステップS18へ分岐し、モードMをノーマルモード1に設定して(M←モード1)、ステップS13へ戻る。
このように、本形態では、イグニッションスイッチをONした後、運転者がモード選択スイッチ8を操作して、パワーモード3を選択した場合であっても、冷却水温Twが暖機判定温度TL以下、或いは高温判定温度TH以上のときは、強制的にノーマルモード1へ戻すようにしたので、暖機運転時においては排気エミッションの排出量が抑制され、又、高温時においては出力を抑えることでエンジン、及び周辺機器を熱害から保護することができる。尚、モードMが強制的にノーマルモード1へ戻されたとき、ウォーニングランプ3fが点灯或いは点滅し、モードMが強制的にノーマルモード1へ戻されたことを運転者に報知する。この場合、ブザーや音声でその旨を知らせるようにしても良い。
次いで、ステップS13,S14,S17の何れかからステップS19へ進むと、モード選択スイッチ8がON操作されたか否かを調べ、操作されていないときは、そのままルーチンを抜ける。又、ON操作されたときは、ステップS20へ進み、運転者が何れのモードMを選択したか判別する。
そして、運転者がSモードを選択した(つまみ8aを左回転させた)と判断したとき、ステップS21へ進み、モードMをノーマルモード1で設定して(M←モード1)、ルーチンを抜ける。又、運転者がセーブモード2を選択した(つまみ8aをプッシュした)と判断したとき(M←モード2)、ステップS22へ進み、モードMをセーブモード2で設定して(M←モード2)、ルーチンを抜ける。又、運転者がパワーモード3を選択した(つまみ8aを右回転させた)と判断したとき、ステップS23へ進み、モードMをパワーモード3で設定して(M←モード3)、ルーチンを抜ける。
ところで、本形態では、イグニッションスイッチをONした後、モード選択スイッチ8のつまみ8aを操作することで、モードMをパワーモード3に設定することができるため、パワーモード3で発進させることも可能である。しかし、この場合、運転者が意識してパワーモードを選択したものであるため、発進に際して大きな駆動力が発生したとしても運転者が慌てることはない。
次に、図7に示すエンジン制御ルーチンについて説明する。
このルーチンでは、先ず、ステップS31で、現在選択されているモードマップ(Mp1,Mp2、或いはMp3:図10参照)を読込み、続く、ステップS32でエンジン回転数センサ29で検出したエンジン回転数Neと、アクセル開度センサ31で検出したアクセル開度θaccとを読込む。
その後、ステップS33へ進み、両パラメータNe,θaccに基づき、ステップS31で読込んだモードマップを補間計算付きで参照して駆動力指示値としての目標トルクτeを演算する。
次いで、ステップS34へ進み、例えば、図8に示す逆引きアクセル開度演算サブルーチンのフローチャートに従い、ステップS33で演算した目標トルクτeから、逆引きアクセル開度θaccrを演算する。すなわち、E/G_ECU22は、基準モード(ノーマルモード1)のマップMp1上において、目標トルクτeに対応するアクセル開度θacc(逆引きアクセル開度θaccr)を求める。
このサブルーチンでは、先ず、ステップS41で、アクセル開度センサ31から入力される実アクセル開度θaccが設定開度θacc0以上であるか否かを調べる。そして、アクセル開度θaccが設定開度θacc0以上である場合にはステップS45に進み、設定開度θacc0よりも小さい場合にはステップS42に進む。ここで、設定開度θacc0は、アクセル全開近傍の所定開度に設定されるもので、本形態において、設定開度θacc0は、例えば、全開の7/8に相当する開度(87.5%)に設定されている。
ステップS41でアクセル開度θaccが設定開度θacc0よりも小さいと判定されて、ステップS42に進むと、E/G_ECU22で選択されている現在のモードMがノーマルモード1であるか否かを調べる。その結果、現在のモードMがノーマルモード1以外(すなわち、セーブモード2或いはパワーモード3)であると判定するとステップS43に進み、現在のモードがノーマルモード1であると判定するとステップS44に進む。
そして、ステップS42からステップS44に進むと、現在のアクセル開度θaccをそのまま逆引きアクセル開度θaccrとして設定した後、サブルーチンを抜ける。
一方、現在のモードMがステップS42からステップS43に進むと、基準モードであるノーマルモード1のマップMp1上で、現在のエンジン回転数Ne、目標トルクτeに対応するアクセル開度を逆検索し、当該逆検索した値を逆引きアクセル開度θaccrとして設定した後、サブルーチンを抜ける。すなわち、E/G_ECU22は、現在のエンジン回転数Neと一致する格子線上の目標トルク線をノーマルモードマップMp1から抽出し、この目標トルク線上で、現在の目標トルクτeを得るために必要なアクセル開度を逆引きアクセル開度θaccrとして演算する。
ここで、あるエンジン回転数において、アクセル開度に対する目標トルクの関係が図11に示すような関係にある場合を例にこの逆引きアクセル開度θaccrの演算方法について説明する。例えば、現在のモードMとしてセーブモード2が選択され、アクセル開度がθaccrにある場合、目標トルクはτe(モード2)となる。この目標トルクτe(モード2)と同じ目標トルクを基準モードであるノーマルモード1において得ようとする場合、必要となるアクセル開度はθaccr(モード2)となる。つまり、θaccr(モード2)がセーブモード2におけるアクセル開度θaccrに対応する逆引きアクセル開度となる。同様に、現在のモードMとしてパワーモード3が選択され、アクセル開度がθaccrにある場合、θaccr(モード3)が対応する逆引きアクセル開度となる。
また、ステップS41においてアクセル開度θaccが設定開度θacc0以上であると判定されて、ステップS45に進むと、逆引きアクセル開度θaccrを、設定開度θacc0以上の値に設定した後、サブルーチンを抜ける。ここで、本形態において、アクセル開度θaccが設定開度θacc0以上である場合、逆引きアクセル開度θaccrは、常に100%に設定される。なお、アクセル開度θaccが設定開度θacc0以上である場合の逆引きアクセル開度θaccrには、アクセル開度θaccをそのまま用いてもよい。
ここで、エンジン回転数Neを一定とした場合における、各モードMでのアクセル開度θaccと逆引きアクセル開度θaccrとの関係の一例を図12に示す。
ステップS34で逆引きアクセル開度θaccrを演算してステップS35に進むと、ステップS33で演算した目標トルクτeを補正して最終目標トルクτesmを決定する。この目標トルクτeに対する補正として、本形態では、車両の走行状態が減速状態から加速状態へと移行する過渡時に目標トルクτeの変化速度を抑制するDA制御を行う。本形態のDA制御では、例えば、車両の走行状態が減速状態から加速状態へと移行する際に駆動力が解放される駆動力ゼロラインを挟んで第1,第2の変曲点(第1,第2の変曲点トルクdap1,dap2)を設定し、これら各変曲点トルクdap1,dap2の前後で最終目標トルクτesmの変化速度をそれぞれ異ならせる、いわゆる2段折れ制御を行う。
このDA制御は、例えば、図9に示すDA制御サブルーチンのフローチャートに従って実行されるもので、サブルーチンがスタートすると、先ず、ステップS51で、DA制御開始条件が成立したか否かを調べる。本形態において、E/G_ECU22は、例えば、アクセル開度センサ31からの入力信号に基づいて、アクセルペダルが開放状態から踏み込まれたことを判定したとき、DA制御開始条件が成立したと判定する。そして、DA制御開始条件が成立したと判定するとステップS52に進み、DA制御実行フラグFDAを「1」にセット(FDA←1)した後、ステップS55に進む。
一方、ステップS51において、DA制御開始条件が成立していないと判定した場合にはステップS53に進み、DA制御実行フラグFDAが「1」にセットされているか否かを調べる。そして、DA制御実行フラグFDAが「1」にセットされていないと判定した場合にはステップS59にジャンプし、DA制御実行フラグFDAが「1」にセットされていると判定した場合にはステップS54に進む。
ステップS53からステップS54に進むと、DA制御終了条件が成立したか否かを調べる。本形態において、E/G_ECU22は、例えば、後述する補正トルクτedabの前回値τedab(n−1)が第2の変曲点トルクdap2以上であり、且つ、最終目標トルクτesmが目標トルクτeと一致しているとき、DA制御終了条件が成立していると判定する。そして、DA制御終了条件が成立したと判定した場合にはステップS56に進む。
一方、ステップS54において、DA制御終了条件が成立していないと判定した場合にはステップS55に進む。
ステップS52或いはステップS54からステップS55に進むと、DA制御のキャンセル条件が成立しているか否かを調べる。本形態において、E/G_ECU22は、車両が停車しているとき、或いは、セレクトレバー7のセットレンジがニュートラルレンジにセットされているときの少なくとも何れかである場合に、DA制御のキャンセル条件が成立していることを判定する。なお、マニュアルトランスミッション車においては、クラッチペダルの踏み込み時にもキャンセル条件の成立を判定してもよい。そして、DA制御のキャンセル条件が成立したと判定した場合には、ステップS56に進む。
ステップS54或いはステップS55からステップS56に進むと、DA制御実行フラグFDAを「0」にクリア(FDA←0)した後、ステップS59に進む。
一方、ステップS54において、DA制御のキャンセル条件が成立していないと判定した場合にはステップS57に進み、前回の最終目標トルクτesm(n−1)を読み込むと共に、以下の(1)式を用いて、第1の変曲点トルクdap1を算出した後、ステップS58に進む。
dap1=tiL×KGRR×Kp …(1)
ここで、(1)式において、tiLは、車両の走行抵抗係数であり、例えば、予め設定されたマップから車速Vに基づいて算出される。また、KGRRは、ギヤ係数であり、変速段毎に異なる値が設定される。また、Kpはモード係数であり、例えば、現在のモードMがノーマルモード1或いはセーブモード2であるとき「1」に設定され、パワーモードであるとき「1」以上の所定値に設定される。
ステップS57からステップS58に進むと、目標トルクτeが第1の変曲点トルクdap1よりも小さいか否かを調べる。その結果、目標トルクτeが第1の変曲点トルクdap1よりも小さいと判定した場合にはステップS59に進み、目標トルクτeが第1の変曲点トルクdap1以上であると判定した場合にはステップS60に進む。
そして、ステップS53、ステップS56、或いは、ステップS58からステップS59に進むと、補正トルクτedabとして目標トルクτeをそのまま代入(τedab←τe)した後、ステップS66に進む。
又、ステップS58からステップS60に進むと、第1,第2の変曲点トルクdap1,dap2間で許容される最大トルク変化量(傾き)を規定するための第1の目標トルク変化量das1を、以下の(2)式を用いて演算する。
das1=tiS1×KGRRS1×tiSA1×Ksp1 …(2)
ここで、(2)式において、tiS1は、例えば、予め設定されたマップからエンジン回転数Neに基づいて設定されるエンジン回転数係数である。なお、本形態において、このエンジン回転数係数tiS1の設定には、例えば、ロックアップのON/OFF状態によって異なるマップが用いられ、これにより、ロックアップOFF時のエンジン回転数係数tiS1がロックアップON時のものよりも相対的に大値に設定される。また、KGRRS1は、ギヤ係数であり、変速段毎に頃なる値が設定される。また、tiSA1は、アクセル開度係数であり、予め設定されたマップから逆引きアクセル開度θaccrに基づいて算出される。また、Ksp1はモード係数であり、例えば、現在のモードMがノーマルモード1或いはセーブモード2であるとき「1」に設定され、パワーモードであるとき「1」以上の所定値に設定される。
次いで、ステップS61に進むと、以下の(3)式を用いて、第2の変曲点トルクdap2を算出する。
dap2=tiH×KGRR×Kp …(3)
ここで、(3)式において、tiHは、車両の走行抵抗係数であり、例えば、予め設定されたマップから車速Vに基づいて算出される。また、KGRRは、ギヤ係数であり、変速段毎に異なる値が設定される。また、Kpはモード係数であり、例えば、現在のモードMがノーマルモード1或いはセーブモード2であるとき「1」に設定され、パワーモードであるとき「1」以上の所定値に設定される。
そして、ステップS61からステップS62に進むと、前回の最終目標トルクτesm(n−1)と第1のトルク変化量das1との加算値が第2の変曲点トルクdap2よりも小さいか否かを調べる。その結果、前回の最終目標トルクτesm(n−1)と第1のトルク変化量das1との加算値が第2の変曲点トルクdap2よりも小さいと判定した場合にはステップS63に進み、前回の最終目標トルクτesm(n−1)と第1のトルク変化量das1との加算値が第2の変曲点トルクdap2以上であると判定した場合にはステップS64に進む。
そして、ステップS62からステップS63に進むと、前回の最終目標トルクτesm(n−1)と第1のトルク変化量das1との加算値、或いは、第1の変曲点トルクdap1の何れか大値を補正トルクτedabとして設定(τedab←max(τesm(n−1)+des1,dap1)した後、ステップS66に進む。
また、ステップS62からステップS64に進むと、第2の変曲点トルクdap2以降で許容される最大トルク変化量(傾き)を規定するための第2の目標トルク変化量das2を、以下の(4)式を用いて演算する。
das2=tiS2×KGRRS2×tiSA2×Ksp2 …(4)
ここで、(2)式において、tiS2は、例えば、予め設定されたマップからエンジン回転数Neに基づいて設定されるエンジン回転数係数である。なお、本形態において、このエンジン回転数係数tiS2の設定には、例えば、ロックアップのON/OFF状態によって異なるマップが用いられ、これにより、ロックアップOFF時のエンジン回転数係数tiS2がロックアップON時のものよりも相対的に大値に設定される。また、KGRRS2は、ギヤ係数であり、変速段毎に頃なる値が設定される。また、tiSA2は、アクセル開度係数であり、予め設定されたマップから逆引きアクセル開度θaccrに基づいて算出される。また、Ksp2はモード係数であり、例えば、現在のモードMがノーマルモード1或いはセーブモード2であるとき「1」に設定され、パワーモードであるとき「1」以上の所定値に設定される。
その後、ステップS65に進むと、前回の最終目標トルクτesm(n−1)と第2のトルク変化量das2との加算値、或いは、第2の変曲点トルクdap2の何れか大値を補正トルクτedabとして設定(τedab←max(τesm(n−1)+des2,dap2)した後、ステップS66に進む。
そして、ステップS59、ステップS63、或いは、ステップS65からステップS66に進むと、補正トルクτedab、或いは、目標トルクτeの何れか小値を最終目標トルクτesmとして設定した後、サブルーチンを抜ける。
これにより、DA制御時の最終目標トルクτesmは、例えば、図13に示す挙動で変化する。すなわち、アクセルペダルが開放状態から踏み込まれてDA制御が開始されると、最終目標トルクτesmは、第1の変曲点トルクdap1に到達するまでの間、目標トルクτeに従って変化する。これにより、DA制御開始時には、変速機やデフ等の駆動系の歯面間のガタ詰めが早期に行われる。また、最終目標トルクτesmは、第1の変曲点トルクdap1に到達すると、第2の変曲点トルクdap2に到達するまでの間、第1のトルク変化量das1を限度として除変される。これにより、自動変速機等の駆動系の歯面間が緩やかに当接される。また、最終目標トルクτesmは、第2の変曲点トルクdap2に到達すると、目標トルクτeに到達するまでの間(すなわち、DA制御が終了されるまでの間)、第2のトルク変化量das2を限度として除変される。ここで、第2のトルク変化量das2は第1のトルク変化量das1よりも相対的に大値となっており、自動変速機等の駆動系の歯面間に作用する駆動力が速やかに上昇される。
次いで、ステップS35で最終目標トルクτesmを決定してステップS36に進むと、最終目標トルクτesmに対応する目標スロットル開度θeを決定する。
その後、ステップS37へ進み、スロットル開度センサ32で検出したスロットル開度θthを読込み、ステップS38で、スロットル開度θthが目標スロットル開度θeに収束するように、電子制御スロットル装置に設けられているスロットル弁を開閉動作させるスロットルアクチュエータ37をフィードバック制御して、ルーチンを抜ける。
その結果、運転者がアクセルペダル14を操作すると、アクセル開度θaccとエンジン回転数Neとをパラメータとして、運転者が選択したモードM(M:ノーマルモード1、セーブモード2、パワーモード3)に対応するモードマップMp1,Mp2,Mp3に従いスロットル弁が開閉動作し、モードMがノーマルモード1に設定されている場合は、アクセルペダルの踏込み量(アクセル開度θacc)に対して出力トルクがほぼリニアに変化するため、通常の運転を行うことができる。
又、セーブモード2に設定されている場合は、目標トルクの上昇が抑えられているため、アクセルペダル14を思い切り踏み込む等のアクセルワークを楽しむことができるばかりでなく、イージードライブ性と低燃費性との双方をバランス良く両立させることができる。従って、例えば3リッタエンジンを搭載する車両であっても、2リッタエンジン相当の十分な出力を確保しながらスムーズな運転を行うことができ、街中などの実用領域に良好な運転性能を得ることができる。
更に、パワーモード3に設定されている場合は、高いレスポンスが得られるため、よりスポーティな走りを得ることができる。
その結果、1台の車両で全く異なる3種類のアクセルレスポンスを楽しむことができる。従って、運転者は、車両を購入後も好みの駆動力特性を任意に選択することができ、1台の車両で、異なる特性を有する3台分の車両を運転することができる。
又、DA制御において、第1,第2のトルク変化量das1,das2を設定するための重要な係数であるアクセル開度係数tiSA1,tiSA2を、逆引きアクセル開度θaccrをパラメータとして算出することにより、本形態のように、アクセル開度θaccに対してモード間で異なる目標トルクτeが設定される場合にも、モード間で共通の制御特性を用いてDA制御を行うことができる。従って、制御特性の設定工数やE/G_ECU22に格納するデータ量等を増大させることなく、トルク反転に伴うトルクショックを抑制することができる。
次に、T/M_ECU23で実行される自動変速機の変速制御について、図14に示す変速制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。
このルーチンは所定演算周期毎に実行され、ルーチンがスタートすると、先ず、ステップS71で、現在の逆引きアクセル開度θaccr、及び、モードMをE/G_ECU22から読み込み、続くステップS72で、読み込んだモードMに応じた変速マップを選択する。すなわち、T/M_ECU23に設けられている不揮発性記憶手段には、各モードM毎の変速マップが予め設定されて格納されており、T/M_ECU23は、現在E/G_ECU22で選択されているモードMに応じた変速マップを選択する。
ここで、図15に示すように、本形態において、変速マップは、車速Vと逆引きアクセル開度θaccrをパラメータして各変速段への変速線が設定されている。なお、図15に示す変速マップは、例えば、ノーマルモード1に対応する変速マップであり、他のモードM(セーブモード2、及びパワーモード3)に対応する変速マップも、車速Vと逆引きアクセル開度θaccrをパラメータとして各変速段への変速線が設定されている。ここで、各モードに対応する3−4アップシフト線、及び4−3ダウンシフト線を図16に示す。同図に示すように、セーブモード2の変速線はノーマルモード1の変速線よりも相対的に低車速側に設定され、パワーモード3の変速線はノーマルモード1の変速線よりも相対的に高車速側に設定されている。
続くステップS73では、車速Vと逆引きアクセル開度θaccrとに基づき、ステップS71で選択した変速マップを参照して変速判定を行う。すなわち、車速Vと逆引きアクセル開度θaccrとで定められる変速マップ上の点が所定の変速線を横切ったか否かの判定により、所定の変速段への変速タイミングであるか否かを調べる。その結果、変速タイミングであると判定するとステップS74に進み、変速タイミングでないと判定するとそのままルーチンを抜ける。
ステップS73からステップS74に進むと、現変速段の摩擦係合要素の解放制御及び次の変速段の摩擦係合要素の係合制御を行うための各種変速制御情報として、変速制御時の各相の切換タイミングや各タイミングでの油圧指示値の勾配等を、予め設定されたマップ等から逆引きアクセル開度θaccr等に基づいて演算する。
次いで、ステップS75で、変速制御情報に基づくコントロールバルブ制御を通じて、該当する摩擦係合要素に対する変速油圧制御を行った後、ステップS76に進み、次の変速段への切換が完了したか否かを調べる。そして、ステップS76において、変速段の切換が未だ完了していないと判定するとステップS74に戻り、完了していと判定するとルーチンを抜ける。
このように、本形態の変速制御では、パラメータとして逆引きアクセル開度θaccrを用いることにより、変速時の各種変速制御情報を演算するためのマップ等(制御特性)をモード毎に設定することなく、モード間に共通の制御特性を用いてドライバの運転意図に忠実な変速制御を実現することができる。ここで、図17は、例えば、パワーモード3が選択された際の所定変速段への変速時に係合される摩擦係合要素(クラッチ)に対する指示油圧とギヤ比を示すタイムチャートである。また、図17(b)には、その比較例として、例えば、アクセル開度に対してノーマルモード1で適正化された変速油圧制御特性を持つ自動変速機と、パワーモード3の駆動力特性との組み合わせにおいて変速制御を行った際のギヤ比の変動を破線で示す。逆引きアクセル開度θaccrをパラメータとして適正化された制御特性に基づく変速制御では、実トルクに対して好適なクラッチ締結力が発生するためギヤ比の移行が速やかに行われる。これに対し、アクセル開度θaccをパラメータとして変速油圧制御を行った場合、あるアクセル開度に対してノーマルモード1で適正化された変速油圧では、同一のアクセル開度であってもパワーモード3ではノーマルモード1の場合より大きなトルクが発生しているため、摩擦係合要素の締結力が実トルクに対して不足することになる。従って、クラッチ締結遅れが発生し、最終的に変速ショックが発生する。すなわち、アクセル開度θaccをパラメータとして適正化された制御特性に基づく変速制御では、変速過渡時における摩擦係合要素の締結制御を全てのモードで好適に行うことが困難であるのに対し、逆引きアクセル開度θaccrをパラメータとして適正化された制御特性に基づく変速制御では、変速過渡時における摩擦係合要素の締結制御を全てのモードで好適に行うことができる。
また、車速Vと逆引きアクセル開度θaccrとをパラメータとして変速マップを設定することにより、各モードMに好適に適合する変速マップを容易に設定することができる。すなわち、逆引きアクセル開度θaccrと目標トルクτeとの関係はモード間で共通であるため、全てのモードMに対する変速マップを個別に適正化する必要がなく、例えば、特定のモードの変速マップを設定した後、当該変速マップをベースとして僅かな変更等を行うだけで、他のモードに適合する変速マップを設定することができる。
この場合において、アクセル開度θaccが設定開度θacc0以上となった場合には逆引きアクセル開度θaccrを設定開度θacc0以上の全開側の値に強制的に設定することにより、特に、本形態のセーブモード2のように、他のモードよりも最大出力トルクを抑制している場合にも、逆引きアクセル開度θaccrを用いた好適な変速判定を実現することができる。すなわち、本形態のセーブモード2のような出力特性を設定した場合において、実アクセル開度θaccと逆引きアクセル開度θaccrとを1対1で対応させると、図12中に1点鎖線で示すように、セーブモード2では実アクセル開度θaccが全開となっても逆引きアクセル開度θaccrが全開値とならない。従って、セーブモード2において、実アクセル開度θaccと逆引きアクセル開度θaccrとを1対1で対応させた場合、特に、逆引きアクセル開度θaccrをパラメータとした変速判定では、4速から3速へのキックダウン判定(ダウンシフト判定)が行われない虞がある。これに対し、本形態のように、アクセル開度θaccが設定開度θacc0以上となった場合には逆引きアクセル開度θaccrを設定開度θacc0以上の全開側の値に強制的に設定することにより、セーブモード2においても、逆引きアクセル開度θaccrが全開側の値となる領域を擬似的に形成することができ、例えば、図16に示すようなダウンシフト判定を実現することができる。
尚、本発明は上述した形態に限るものではなく、例えばモードマップは異なる駆動力特性を有する2種類、或いは4種類以上設定されていても良く、このように設定することで、運転者は1台の車両で、異なる駆動力特性を有する2台分、或いは4台分以上の車両を運転することができる。又、このモードマップの駆動力特性を運転者の好みに応じて変更できるようにしても良い。
更に、本形態では、アクセル開度とエンジン回転数に基づき異なる複数の駆動力特性を有する複数のモードマップを用いて目標トルクを設定する場合について例示したが、本発明はこれに限らず、各駆動力特性の目標トルクをアクセル開度とエンジン回転数から演算により求めても良い。
又、本形態では、電子制御スロットル装置に装備されているスロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータ37を制御対象として説明したが、制御対象は、これに限らず、例えばディーゼルエンジンでは、制御対象をインジェクタ駆動装置とし、このインジェクタ駆動装置から噴射される燃料噴射量を目標トルクτesmに基づいて設定するようにしても良い。又、吸気弁を電磁動弁機構で開閉動作させるエンジンでは、制御対象を電磁動弁機構とし、この電磁動弁機構にて駆動する吸気弁の弁開度を目標トルクτesmに基づいて設定するようにしても良い。