以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
[第1実施形態]
図1〜図11に本発明の第1実施形態を示す。図1にインストルメントパネル及びセンタコンソールを運転席側から見た斜視図を示す。同図に示すように、車両の車室内前部に配設されているインストルメントパネル(以下「インパネ」と略称)1は、車幅方向左右に延出されており、運転席2の前方に位置するインパネ1にコンビネーションメータ(以下「コンビメータ」と略称)3が配設されている。又、このインパネ1の車幅方向ほぼ中央に、周知のカーナビゲーションシステムを構成するセンタディスプレイ4が配設されている。
又、運転席2と助手席5との間に配設されて、インパネ1側から車体後方へ延出するセンタコンソール6に、自動変速機のレンジを選択するセレクトレバー7が配設され、その後方に、主にエンジンの駆動力特性を選択するモード選択スイッチ8が配設されている。更に、運転席2の前方にステアリングホイール9が配設されている。
ステアリングホイール9は、エアバッグ等を収容するセンタパッド部9aを有し、このセンタパッド部9aと外周のグリップ部9bとの左右及び下部が、3本のスポーク9cを介して連設されている。このセンタパッド部9aの左下部に表示切換スイッチ10が配設され、又、右下部に、一時切換スイッチ11が配設されている。
又、図2に示すように、モード選択スイッチ8は、プッシュスイッチを併設するシャトルスイッチであり、外部操作者(一般的には運転者であるため、以下においては、「運転者」と称して説明する)がリング状の操作つまみ8aを操作することで、後述する3種類の制御モードとしてのエンジンモードM(出力制限モードとしてのノーマルモードm1及びセーブモードm2、高出力モードとしてのパワーモードm3)を選択することができる。すなわち、本実施形態では、操作つまみ8aを左方向(同図の符号1方向)へ回転させることで左側スイッチがON動作されてノーマルモードm1が選択され、右方向(同図の符号3方向)へ回転させることで右側スイッチがON動作されてパワーモードm3が選択され、一方、操作つまみ8aを下方向(同図の符号2を押圧する方向)にプッシュすることでプッシュスイッチがON動作してセーブモードm2が選択される。尚、プッシュスイッチにセーブモードm2を割り当てることで、例えば運転中に誤ってプッシュスイッチをONした場合であっても、セーブモードm2は後述するように出力トルクが抑制されているため、モードがセーブモードm2に切換えられても駆動力が急に増加されてしまうことがなく、運転者は安心して運転することができる。
ここで、各モードm1〜m3の出力特性について簡単に説明する。ノーマルモードm1は、外部操作による要求出力を行う手段であるアクセルペダル14の踏込み量(アクセル開度)に対して出力トルクがほぼリニアに変化するように設定されている(図8(a)参照)、通常運転に適したモードである。
又、セーブモードm2は、エンジントルクのセーブ、及び自動変速機搭載車では変速機のロックアップ制御に同期させてエンジントルクをセーブする等して、十分な出力を確保しながらスムーズな出力特性とし、アクセルワークを楽しむことができるモードに設定されている。
更に、セーブモードm2は出力トルクを抑制しているのでイージードライブ性と低燃費性(経済性)との双方をバランス良く両立させることができる。例えば、3リッタエンジンを搭載する車両であっても、2リッタエンジン相当の十分な出力を確保しながらスムーズな出力特性とし、特に街中などの実用領域における扱い易さを重視した性能が設定されている。
又、パワーモードm3は、エンジンの低回転域から高回転域までレスポンスに優れる出力特性とし、更に、自動変速機搭載車の場合には、エンジントルクに同期させてシフトアップポイントを変更させる等してワインディング路などでのスポーティな走行状況にも積極的に対応可能として、きびきびとした運転ができるようなパワー重視のモードに設定されている。すなわち、このパワーモードm3では、アクセルペダル14の踏込み量に対して高いレスポンス特性が設定されており、例えば3リッタエンジンを搭載する車両であれば、3リッタエンジンの有するポテンシャルを最大限に発揮できるように、早いタイミングで最大トルクを発生させるように設定されている。
尚、この各エンジンモード(ノーマルモードm1、セーブモードm2、パワーモードm3)の目標出力(目標トルク)は、後述するように、エンジン回転数とアクセル開度との2つのパラメータに基づいて設定される。
表示切換スイッチ10は、インパネ1やコンビメータ3等の運転者から見易い位置に配設されているマルチインフォメーションディスプレイ(図示せず)に表示される情報を切換える際に操作するもので、順送りスイッチ部10aと逆送りスイッチ部10bと初期画面復帰スイッチ部10cとが設けられている。マルチインフォメーションディスプレイは、例えば、走行距離(オドメータ、及びトリップメータ)表示画面、燃費(平均燃費、及び瞬間燃費)表示画面、イグニッションON後の運転時間表示画面、燃料残量に応じた走行可能距離表示画面、選択したエンジンモードのアクセル−トルク線表示画面等が切換え表示される。尚、アクセル−トルク線表示画面におけるアクセル−トルク線は、縦軸にエンジの出力トルク、横軸にアクセル開度が示されており、表示されるアクセル−トルク線がアクセル開度の増減に連動してインジケータ表示される。
ところで、図3に示すように、車両には、CAN(Controller Area Network)通信等の車内通信回線16を通じて、メータ制御装置(メータ_ECU)21、エンジン制御装置(E/G_ECU)22、変速機制御装置(T/M_ECU)23、ナビゲーション制御装置(ナビ_ECU)24等の、車両を制御する制御装置が相互通信可能に接続されている。各ECU21〜24は、マイクロコンピュータ等のコンピュータを主体に構成され、周知のCPU、ROM、RAM、及びEEPROM等の不揮発性記憶手段等を有している。
メータ_ECU21は、コンビメータ3の表示全体を制御するもので、入力側にモード選択スイッチ8、表示切換スイッチ10、一時切換スイッチ11、及びトリップリセットスイッチ3gが接続されている。又、出力側に、タコメータ3a、スピードメータ3b、水温計3c、燃料計3d等の計器類、及びウォーニングランプ3fをそれぞれ駆動するコンビメータ駆動部26、MID12を表示駆動させるMID駆動部27、燃費メータ13の指針13aを駆動させる燃費メータ駆動部28が接続されている。
E/G_ECU22は、エンジンの運転状態を制御するもので、入力側に、クランク軸等の回転からエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ29、エアクリーナの直下流等に配設されて吸入空気量を検出する吸入空気量センサ30、アクセルペダル14の踏込み量から、運転者の要求出力であるアクセル開度を検出する要求出力検出手段(アクセル開度検出手段)としてのアクセル開度センサ31、吸気通路に介装されてエンジンの各気筒に供給する吸入空気量を調整するスロットル弁(図示せず)の開度を検出するスロットル開度センサ32、エンジン温度を示す冷却水温を検出する水温センサ33等、車両及びエンジン運転状態を検出するセンサ類が接続されている。又、E/G_ECU22の出力側に、各気筒の燃焼室に対して所定に計量された燃料を噴射するインジェクタ36、電子制御スロットル装置(図示せず)に設けられているスロットルアクチュエータ37等、エンジン駆動を制御するアクチュエータ類が接続されている。
E/G_ECU22は、入力された各センサ類からの検出信号に基づき、インジェクタ36に対する燃料噴射タイミング、及び燃料噴射パルス幅(パルス時間)を設定する。更に、スロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータ37に対しスロットル開度信号を出力してスロットル弁の開度を制御する。
ところで、E/G_ECU22に設けられている不揮発性記憶手段には、異なる複数の駆動力特性がマップ形式で格納されている。各駆動力特性として、本実施形態では3種類のモードマップMp1,Mp2,Mp3を備えており、図8(a)〜(c)に示すように、各モードマップMp1,Mp2,Mp3は、アクセル開度とエンジン回転数とを格子軸とし、各格子点に基本目標トルクTRQ1,TRQ2,TRQ3を各々格納する3次元マップで構成されている。
この各モードマップMp1,Mp2,Mp3は、基本的には、モード選択スイッチ8の操作により選択される。すなわち、モード選択スイッチ8にてノーマルモードm1を選択した場合、モードマップとしてノーマルモードマップMp1が選択され、セーブモードm2を選択した場合、セーブモードマップMp2が選択され、又、パワーモードm3を選択した場合、パワーモードマップMp3が選択される。
以下、各モードマップMp1,Mp2,Mp3の駆動力特性について説明する。図8(a)に示すノーマルモードマップMp1は、アクセル開度が比較的小さい領域で基本目標トルクTRQ1がリニアに変化させる特性に設定されており、又、スロットル弁の開度が全開付近で最大トルクとなるように設定されている。
又、同図(b)に示すセーブモードマップMp2は、上述したノーマルモードマップMp1に比し、基本目標トルクTRQ2の上昇が抑えられており、アクセルペダル14を全踏しても、出力トルクを抑制することで、アクセルペダル14を思い切り踏み込む等のアクセルワークを楽しむことができる。更に、基本目標トルクTRQ2の上昇が抑えられているため、イージードライブ性と低燃費性との双方をバランス良く両立させることができる。例えば3リッタエンジンを搭載する車両であっても、2リッタエンジン相当の充分な出力を確保しながらスムーズな出力特性とし、特に街中などの実用領域における扱い易さを重視したトルクが設定される。
又、同図(c)に示すパワーモードマップMp3は、ほぼ全運転領域でアクセル開度の変化に対する基本目標トルクTRQ3の変化率が大きく設定されている。従って、例えば3リッタエンジンを搭載する車両であれば、3リッタエンジンの有するポテンシャルを最大限に発揮できるような基本目標トルクTRQ3が設定される。尚、各モードマップMp1,Mp2,Mp3のアイドル回転数を含む極低回転領域は、ほぼ同じ駆動力特性に設定されている。
このように、本実施形態によれば、運転者がモード選択スイッチ8を操作して、何れかのモードm1,m2,m3を選択すると、対応するモードマップMp1,Mp2,或いはMp3が選択され、当該モードマップMp1,Mp2,或いはMp3に基づいて基本目標トルクTRQ1,TRQ2,TRQ3が設定されるため、1つの車両で全く異なる3種類のアクセルレスポンスを楽しむことができる。尚、スロットル弁の開閉速度も、セーブモードマップMp2では緩やかに、パワーモードマップMp3では素早く動作するように設定されている。
又、T/M_ECU23は、自動変速機の変速制御を行うもので、入力側にトランスミッション出力軸の回転数等から車速を検出する車速検出手段としての車速センサ41、セレクトレバー7のセットされているレンジを検出するインヒビタスイッチ42等が接続され、出力側に自動変速機の変速制御を行うコントロールバルブ43、及びロックアップクラッチをロックアップ動作させるロックアップアクチュエータ44が接続されている。このT/M_ECU23では、インヒビタスイッチ42からの信号に基づきセレクトレバー7のセットレンジを判定し、Dレンジにセットされているときは、所定の変速パターンに従い、その変速信号をコントロールバルブ43へ出力して変速制御を行う。尚、この変速パターンは、E/G_ECU22で設定されているモードm1,m2,m3に対応して可変設定される。
又、ロックアップ条件が満足されたときはロックアップアクチュエータ44にスリップロックアップ信号或いはロックアップ信号を出力し、トルクコンバータの入出力要素間を、コンバータ状態からスリップロックアップ状態、或いはロックアップ状態に切換える。その際、E/G_ECU22は、目標トルクτeをスリップロックアップ状態、及びロックアップ状態に同期させて補正する。その結果、例えばエンジンモードMがセーブモードm2に設定されている場合は、目標トルクτeが、より経済的な走行ができる領域に補正される。
ナビ_ECU24は、周知のカーナビゲーションシステムに設けられているもので、GPS衛星等から得られる位置データに基づいて車両の位置を検出すると共に、目的地までの誘導路を演算する。そして、自車の現在地及び誘導路がセンタディスプレイ4上の地図データに表示される。本実施形態では、このセンタディスプレイ4に、MID12に表示させる各種情報を表示させることができるようにしている。
次に、上述したE/G_ECU22で実行されるエンジンの運転状態を制御する手順について、図4〜図7のフローチャートに従って説明する。
イグニッションスイッチをONすると、先ず、図4に示す始動時制御ルーチンが1回のみ起動される。このルーチンでは、先ず、ステップS1で、前回のイグニッションスイッチOFF時に設定されていたエンジンモードM(M:ノーマルモードm1、セーブモードm2、パワーモードm3)を読込む。
そして、ステップS2へ進み、エンジンモードMが、パワーモードm3か否かを調べる。そして、パワーモードm3に設定されているときは、エンジンモードMをノーマルモードm1に強制的に設定して(M←m1)、ルーチンを終了する。
又、エンジンモードMが、パワーモードm3以外の、ノーマルモードm1、或いはセーブモードm2に設定されているときはそのままルーチンを終了する。
このように、前回のイグニッションスイッチをOFFしたときのエンジンモードMがパワーモードm3に設定されている場合、今回、イグニッションスイッチをONしたときのエンジンモードMがノーマルモードm1へ強制的に切換えられるため(M←m1)、アクセルペダル14をやや踏み込んでも車両が急発進してしまうことが無く、良好な発進性能を得ることができる。
そして、この始動時制御ルーチンが終了すると、図5〜図7に示すルーチンが所定演算周期毎に実行される。先ず、図8に示すモードマップ選択ルーチンについて説明する。
このルーチンは、先ず、ステップS11で、現在設定されているエンジンモードMを読込み、ステップS12で、エンジンモードMの値を参照して、何れのモード(ノーマルモードm1、セーブモードm2、或いはパワーモードm3)が設定されているかを調べる。そして、ノーマルモードm1が設定されているときはステップS13へ進み、セーブモードm2に設定されているときはステップS14へ分岐し、又、パワーモードm3に設定されているときはステップS15へ分岐する。尚、イグニッションスイッチをONした後の、最初のルーチン実行時においては、エンジンモードMが、ノーマルモードm1かセーブモードm2の何れかであるため、ステップS15へ分岐することはない。但し、イグニッションスイッチをONした後、運転者がモード選択スイッチ8の操作つまみ8aを右回転させて、パワーモードm3を選択した場合、後述するステップS23でエンジンモードMがパワーモードm3に設定されるため、それ以降のルーチン実行時においては、ステップS12からステップS15へ分岐される。
そして、ノーマルモードm1に設定されていると判定されて、ステップS13へ進むと、E/G_ECU22の不揮発性記憶手段に格納されているノーマルモードマップMp1を、今回のモードマップとして設定して、ステップS19へ進む。又、セーブモードm2に設定されていると判定されて、ステップS14へ分岐すると、セーブモードマップMp2を、今回のモードマップとして設定して、ステップS19へ進む。
一方、パワーモードm3に設定されていると判定されて、ステップS15へ分岐すると、ステップS15,S16において、水温センサ33で検出した冷却水温Twと暖機判定温度TL、及び高温判定温度THとを比較する。そして、ステップS15において、冷却水温Twが暖機判定温度TL以上と判定され(Tw≧TL)、且つ、ステップS16で冷却水温Twが高温判定温度TH未満と判定されたときは(Tw<TH)、ステップS17へ進む。
一方、ステップS15で冷却水温Twが暖機判定温度TL未満と判定され(Tw<TL)、或いはステップS16で冷却水温Twが高温判定温度TH以上と判定されたときは(Tw≧TH)、ステップS18へ分岐し、エンジンモードMをノーマルモードm1に設定して(M←m1)、ステップS13へ戻る。
このように、本実施形態では、イグニッションスイッチをONした後、運転者がモード選択スイッチ8を操作して、パワーモードm3を選択した場合であっても、冷却水温Twが暖機判定温度TL以下、或いは高温判定温度TH以上のときは、強制的にノーマルモードm1へ戻すようにしたので、暖機運転時においては排気エミッションの排出量が抑制され、又、高温時においては出力を抑えることでエンジン、及び周辺機器を熱害から保護することができる。尚、エンジンモードMが強制的にノーマルモードm1に設定されたき、ウォーニングランプ3fが点灯或いは点滅し、エンジンモードMが強制的にノーマルモードm1へ戻されたことを運転者に報知する。この場合、ブザーや音声でその旨を知らせるようにしても良い。
次いで、ステップS13,S14,S17の何れかからステップS19へ進むと、モード選択スイッチ8がON操作されたか否かを調べ、操作されていないときは、そのままルーチンを抜ける。又、ON操作されたときは、ステップS20へ進み、運転者が何れのモードを選択したかを判別する。
そして、運転者がノーマルモードm1を選択した(操作つまみ8aを左回転させた)と判断したとき、ステップS21へ進み、エンジンモードMをノーマルモードm1で設定して(M←m1)、ルーチンを抜ける。又、運転者がセーブモードm2を選択した(操作つまみ8aをプッシュした)と判断したとき、ステップS22へ進み、エンジンモードMをセーブモードm2で設定して(M←m2)、ルーチンを抜ける。又、運転者がパワーモードm3を選択した(操作つまみ8aを右回転させた)と判断したとき、ステップS23へ進み、エンジンモードMをパワーモードm3で設定して(M←m3)、ルーチンを抜ける。
ところで、本実施形態では、イグニッションスイッチをONした後、モード選択スイッチ8の操作つまみ8aを操作することで、エンジンモードMをパワーモードm3に設定することができるため、パワーモードm3で発進させることも可能である。しかし、この場合、運転者が意識してパワーモードm3を選択したものであるため、発進に際して大きな駆動力が発生したとしても運転者が慌てることはない。又、後述するように、パワーモードm3からの発進に際しては、エンジントルクが制限される補正が行われるため、運転者に飛び出し感を感じさせることはない。
次に、図6に示すエンジン駆動制御ルーチンについて説明する。
このルーチンでは、先ず、ステップS32でエンジン回転数センサ29で検出したエンジン回転数Ne、アクセル開度センサ31で検出したアクセル開度θacc[%]、及び車速センサ41で検出した車速V[Km/h]をそれぞれ読込む。尚、アクセル開度θaccは比率で表されており0[%]がアクセル開放状態、100[%]がアクセル全踏状態となる。
その後、ステップS33へ進み、目標出力である目標トルクτeを設定する。この目標トルクτeは、図7に示す目標トルク設定サブルーチンで設定される。このサブルーチンでは、先ず、ステップS41でエンジン回転数Neとアクセル開度θaccとに基づき、各モードマップMp1,Mp2,Mp3を補間計算付きで参照して、基本目標トルクTRQ1,TRQ2,TRQ3を設定する。
次いで、ステップS42で、アクセル開度θaccと車速Vとに基づきノーマル・セーブ補正係数マップMr1、及びパワー補正係数マップMr2を補間計算付きで参照して、補正係数RATIO1,RATIO2を設定する。このステップS42の処理が補正係数設定手段に相当する。
図9にノーマル・セーブ補正係数マップMr1の特性を示し、図10にパワー補正係数マップMr2を示す。この各補正係数マップMr1,Mr2は、アクセル開度θaccと車速Vとを格子軸とし、各格子点に補正係数RATIO1,RATIO2を各々格納する3次元マップで構成されている。尚、各補正係数マップMr1,Mr2の特性については、後述するステップS44〜S46において詳しく説明する。
その後、ステップS43へ進み、エンジンモードMの値を参照して、何れのモード(ノーマルモードm1、セーブモードm2、或いはパワーモードm3)が選択されているかを調べる。そして、ノーマルモードm1が設定されているときはステップS44へ進み、セーブモードm2に設定されているときはステップS45へ分岐し、又、パワーモードm3に設定されているときはステップS46へ進む。尚、このステップS43の処理がモード判定手段に相当する。又、後述するステップS44〜S46の処理が目標出力設定手段に相当する。
エンジンモードMがノーマルモードm1と判定されて、ステップS44へ進むと、目標トルクτeを、ノーマルモードマップMp1を参照して設定した基本目標トルクTRQ1とパワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標トルクTRQ3とノーマル・セーブ補正係数マップMr1を参照して設定した補正係数RATIO1とに基づき、次式から算出する。
τe←TRQ1*RATIO1+TRQ3*(1−RATIO1)…(1)
補正係数RATIO1は、基本目標トルクTRQ1,TRQ3の加算比率を表す値であり、図9に示すように、ノーマル・セーブ補正係数マップMr1には、車速Vが低車速(約0〜20[Km/h])で、且つアクセル開度θaccが大開度(約70〜100[%])にあるとき急激に減少された値を示し(但し、0≠RATIO1)、車速Vが約20[Km/h]以上、或いはアクセル開度θaccが約20[%]以下では、最大値(=1)を示す補正係数RATIO1が格納されている。
(1)式によれば、エンジンモードMとしてノーマルモードm1が選択されている状態で設定される目標トルクτeは、車速Vが0[Km/h]付近にある場合、アクセル開度θaccが大きくなるに従い、換言すれば、運転者の要求出力が増量されるに従いノーマルモードマップMp1を参照して設定した基本目標トルクTRQ1の加算比率が低下し、相対的にパワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標トルクTRQ3の加算比率が大きくなり、目標トルクτeが増加される。従って、運転者がエンジンモードMとしてノーマルモードm1を選択していても、登坂路発進等、高負荷状態からの発進においては、アクセルペダル14を大きく踏み込むことで、エンジントルクが増加されるため、スムーズな発進性能を得ることが出来る。
又、発進後の補正係数RATIO1は、車速Vの上昇に従い急激に増加されて1に到達する。それに従い、基本目標トルクTRQ3の加算比率が減少し、相対的に基本目標トルクTRQ1の加算比率が増加し、RATIO1=1では、目標トルクτeがノーマルモードマップMp1を参照して設定した基本目標トルクTRQ1の値となる(τe=TRQ1)。従って、発進後にアクセルペダル14を踏み込んでいても、車両が急発進することはなく、スムーズな発進性能を得ることが出来る。更に、発進後は、基本目標トルクTRQ1の加算比率が自動的に増加され、相対的に基本目標トルクTRQ3の加算比率が減少されるので、例えば、ノーマルモードマップMp1とパワーモードマップMp3とを、アクセル開度θaccと車速Vとに応じて切換えて使用する場合に比し、エンジントルクが徐々に制限されるので、良好なドライバビリティ性能を得ることが出来る。
又、エンジンモードMがセーブモードm2と判定されて、ステップS43からステップS45へ進むと、目標トルクτeを、セーブモードマップMp2を参照して設定した基本目標トルクTRQ2とパワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標トルクTRQ3とノーマル・セーブ補正係数マップMr1を参照して設定した補正係数RATIO1とに基づき、次式から算出する。
τe←TRQ2*RATIO1+TRQ3*(1−RATIO1)…(2)
尚、ノーマル・セーブ補正係数マップMr1の特性については、既述したので説明を省略する。又、本実施形態ではノーマル・セーブ補正係数マップMr1を、ノーマルモードm1とセーブモードm2とで共通で使用しているが、それぞれのモードm1,m2毎に異なる特性の補正係数マップを採用するようにしても良い。
(2)式によれば、エンジンモードMとしてセーブモードm2が選択されている状態で設定される目標トルクτeは、車速Vが0[Km/h]付近にある場合、アクセル開度θaccが大きくなるに従い、ノーマルモードマップMp1を参照して設定した基本目標トルクTRQ1の加算比率が低下し、相対的にパワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標トルクTRQ3の加算比率が大きくなり、目標トルクτeが増加される。従って、運転者がエンジンモードMとしてセーブモードm2を選択していても、登坂路発進等、高負荷状態からの発進においては、アクセルペダル14を大きく踏み込むことで、エンジントルクが急激に増加されるため、スムーズな発進性能を得ることが出来る。
特に、図8(b)に示すようにセーブモードマップMp2を参照して設定される基本目標トルクTRQ2は、アクセルペダル14を全踏させても基本目標トルクはエンジン固有の最大出力より低い値が設定され、結果としてスロットル開度θth[%]が全開に至らない特性を有している。このため、エンジンモードMとしてパワーモードm3が設定されていればトルク不足にならない状況であっても、セーブモードm2の設定では登坂路発進等、高負荷状態からの発進においてはトルク不足に陥る場合があり得る。しかし、本実施形態では、アクセルペダル14を踏み込むことで、本来制限されているスロットル開度の上限を超えてスロットル弁を開弁させるようにしたので、エンジントルクが自動的に増加されてスムーズな発進性能を得ることが出来る。
又、発進後の補正係数RATIO1は、上述したように車速Vの上昇に従い急激に増加されて1に到達し、RATIO1=1では、目標トルクτeがセーブモードマップMp2を参照して設定した基本目標トルクTRQ2の値となる(τe=TRQ2)。従って、発進後にアクセルペダル14を踏み込んでいても、車両が急発進することはなく、スムーズな発進性能を得ることが出来る。又、発進後は、基本目標トルクTRQ1の加算率が自動的に増加され、相対的に基本目標トルクTRQ3の加算比率が減少されるので、ノーマルモードm1本来のトルク制御領域へスムーズに移行させることができ、良好なドライバビリティ性能を得ることが出来る。
又、エンジンモードMがパワーモードm3と判定されて、ステップS46へ進むと、目標トルクτeを、パワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標トルクTRQ3とノーマルモードマップMp1を参照して設定した基本目標トルクTRQ1とパワー補正係数マップMr2を参照して設定した補正係数RATIO2とに基づき、次式から算出する。
τe←TRQ3*RATIO2+TRQ1*(1−RATIO2)…(3)
補正係数RATIO2は、基本目標トルクTRQ3,TRQ1の加算比率を表す値であり、図10に示すように、パワー補正係数マップMr2には、車速Vが低車速(約0〜20[Km/h])で、且つアクセル開度θaccが低開度(約0〜30[%])にあるとき急激に減少された値を示し(但し、0≠RATIO2)、車速Vが約20[Km/h]以上、或いはアクセル開度θaccが約30[%]以上では、最大値(=1)を示す補正係数RATIO2が格納されている。
(3)式によれば、エンジンモードMとしてパワーモードm3が選択されている状態で設定される目標トルクτeは、車速Vが0[Km/h]付近にある場合、アクセル開度θaccが小さくなるに従い、換言すれば、運転者の要求出力が小領域では、パワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標トルクTRQ3の加算比率が低下し、相対的にノーマルモードマップMp1を参照して設定した基本目標トルクTRQ1の加算比率が大きくなり、目標トルクτeが減少される。従って、運転者がエンジンモードMとしてパワーモードm3を選択していても、発進時においてアクセルペダル14を僅かに踏み込んだ状態では、エンジントルクがノーマルモード側へ自動的に移行されるため、トルク過剰とならずスムーズな発進性能を得ることが出来る。
又、発進後の補正係数RATIO2は、車速Vの上昇に従い急激に増加されて1に到達する。それに従い、基本目標トルクTRQ1の加算比率が減少し、相対的に基本目標トルクTRQ3の加算比率が増加し、RATIO2=1では、目標トルクτeがパワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標トルクTRQ3の値となる(τe=TRQ3)。従って、発進後にアクセルペダルの踏込み量を一定にしていても、車速Vの上昇に伴いエンジントルクが自動的に増加されるので、この状態でアクセルペダルを更に踏み込むことで良好な加速応答性を得ることが出来る。更に、発進後は、基本目標トルクTRQ3の加算比率が自動的に増加され、相対的に基本目標トルクTRQ1の加算比率が減少されるので、例えば、パワーモードマップMp3とノーマルモードマップMp1とを、アクセル開度θaccと車速Vとに応じて切換えて使用する場合に比し、パワーモードm3本来のトルク制御領域へスムーズに移行させることができ、良好なドライバビリティ性能を得ることが出来る。
そして、ステップS44〜S46の何れかにおいて目標トルクτeを設定すると、プログラムは、図6のステップS34へ進み、目標トルクτeに対応する、最終的な目標出力である目標スロットル開度θe[%]を決定する。
次いで、ステップS35で、スロットル開度センサ32で検出したスロットル開度θthを読込み、ステップS36で、スロットル開度θthが目標スロットル開度θeに収束するように、電子制御スロットル装置に設けられているスロットル弁を開閉動作させるスロットルアクチュエータ37をフィードバック制御して、ルーチンを抜ける。
以上説明したように、E/G_ECU22で設定される各エンジンモードM(M:m1,m2,m3)毎の目標トルクτeは、(1)〜(3)式から、車速Vが設定車速(約20[Km/h])以上となり、補正係数マップMr1,Mr2が補正係数RATIO1,RATIO2が1になれば、基本目標トルクTRQ1,TRQ2,TRQ3で設定される。
基本目標トルクTRQ1は、アクセルペダル14の踏込み量(アクセル開度θacc)に対してほぼリニアに変化するため、通常の運転を行うことができる。基本目標トルクTRQ2は、その上限が抑えられているため、アクセルペダル14を思い切り踏み込む等のアクセルワークを楽しむことができ、イージードライブ性と低燃費性との双方をバランス良く両立させることができる。従って、例えば3リッタエンジンを搭載する車両であっても、2リッタエンジン相当の十分な出力を確保しながらスムーズな運転を行うことができ、街中などの実用領域に良好な運転性能を得ることができる。又、基本目標トルクTRQ3は、高いレスポンスが得られるため、よりスポーティな走りを得ることができる。
その結果、1台の車両で全く異なる3種類のアクセルレスポンスを楽しむことができる。従って、運転者は、車両を購入後も好みの駆動力特性を任意に選択することができ、1台の車両で、異なる特性を有する3台分の車両を運転することができる。
又、エンジンモードMとしてノーマルモードm1、或いはセーブモードm2が設定されている状態で、登坂路発進等の高負荷状態からの発進に際し、アクセルペダル14をある程度踏み込んでも車両が発進しない場合、運転者はアクセルペダル14を更に踏み込む。すると、ノーマル・セーブ補正係数マップMr1を参照して設定される補正係数RATIO1が1未満となり、その分、目標トルクτeは、上述した(1)式、或いは(2)式に示すように、パワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標トルクTRQ3の加算比率が増加するため、トルク不足が補われて良好な発進性能を得ることが出来る。
図11(a)にエンジンモードMとしてノーマルモードm1を選択したときの高負荷状態から発進に際してのアクセル開度θaccと目標スロットル開度θeとの関係を示す。
登坂路発進等の高負荷状態からの発進において、運転者がアクセルペダル14を踏み込んでも車両が発進しない場合、運転者はアクセルペダル14を更に踏み込む。すると、目標スロットル開度θeが、補正係数RATIO1による加算比率で、一点鎖線で示すノーマルモードマップMp1参照により設定される基本目標トルクTRQ1に対応するスロットル開度よりも、細線で示すパワーモードm3においてパワーモードマップMp3参照により設定される基本目標トルクTRQ3に対応するスロットル開度側に近づく特性に補正される。従って、高負荷発進に際し、例えば車速Vが約10[Km/h]以下の低車速状態でアクセルペダル14を全踏(θacc=100[%])方向へ大きく踏み込むと、目標スロットル開度θeが大きく膨らみを有して変化するため、出力トルクが大きく増加され、車両をスムーズに発進させることが出来る。
又、図11(b)にエンジンモードMとしてセーブモードm2を選択したときの高負荷状態から発進に際してのアクセル開度θaccと目標スロットル開度θeとの関係を示す。
上述と同様、高負荷状態からの発進において、運転者がアクセルペダル14を大きく踏み込むと、目標スロットル開度θeが、補正係数RATIO1による加算比率で、一点鎖線で示すセーブモードマップMp2参照により設定される基本目標トルクTRQ2に対応するスロットル開度よりも、細線で示すパワーモードm3においてパワーモードマップMp3参照により設定される基本目標トルクTRQ3に対応するスロットル開度側に近づく特性に補正される。従って、高負荷発進に際し、例えば車速Vが約10[Km/h]以下の低車速状態でアクセルペダル14を全踏(θacc=100[%])方向へ大きく踏み込むと、目標スロットル開度θeが、本来の制限されているスロットル開度(図においては60[%])を越えてスロットル全開(100[%])側に設定されるため、出力トルクが大きく増加され、車両をスムーズに発進させることが出来る。
又、図11(c)にエンジンモードMとしてパワーモードm3を選択したときの高負荷状態から発進に際してのアクセル開度θaccと目標スロットル開度θeとの関係を示す。
パワーモードm3では、平地発進等の低負荷状態からの発進において、運転者がアクセルペダル14を軽く踏み込むと、目標スロットル開度θeが、補正係数RATIO2による加算比率で、一点鎖線で示すパワーモードマップMp3参照により設定される基本目標トルクTRQ3に対応するスロットル開度よりも、細線で示すノーマルモードm1においてノーマルモードマップMp1参照により設定される基本目標トルクTRQ1に対応するスロットル開度側に近づく特性に補正される。従って、低負荷発進に際し、例えば車速Vが約10[Km/h]以下の低車速状態でアクセルペダル14を軽く踏み込んだ状態では目標スロットル開度θeが制限されるため、トルク過剰が抑制され、運転者は飛び出し感を感じることなく車両をスムーズに発進させることができる。
[第2実施形態]
図12〜図14に本発明の第2実施形態を示す。本実施形態は上述した第1実施形態の変形例であり、図12に示すエンジン駆動制御ルーチン、及び図13に示す目標スロットル開度設定サブルーチンは、図6、図7に示す各フローチャートに代えて適用され、又、図14に示す各モードマップは、図8に示す各モードマップに代えて適用される。尚、これ以外の構成については第1実施形態と同一であるため、説明を省略する。
上述した第1実施形態では、目標スロットル開度θeを設定するに際し、先ず、基本目標トルクTRQ1,TRQ2,TRQ3を設定し、この基本目標トルクTRQ1,TRQ2,TRQ3から目標トルクτeを演算するようにしているが、本実施形態では基本目標トルクTRQ1,TRQ2,TRQ3に代えて基本目標スロットル開度θα1,θα2,θα3を設定し、この基本目標スロットル開度θα1,θα2,θα3から目標スロットル開度θeを設定するようにしたものである。
すなわち、図12に示すエンジン駆動制御ルーチンでは、先ず、ステップS62でエンジン回転数Ne、アクセル開度θacc、及び車速V[Km/h]をそれぞれ読込み、続く、ステップS63で、目標出力である目標スロットル開度θeを設定する。この目標スロットル開度θeは、図13に示す目標スロットル開度設定サブルーチンで設定される。このサブルーチンでは、先ず、ステップS71でエンジン回転数Neとアクセル開度θaccとに基づき、図14(a)〜(c)に示す各モードマップMp1,Mp2,Mp3を補間計算付きで参照して、基本目標スロットル開度θα1,θα2,θα3を設定する。同図(a)〜(c)に示す各モードマップMp1,Mp2,Mp3は、アクセル開度とエンジン回転数とを格子軸とし、各格子点に基本目標スロットル開度θα1,θα2,θα3を各々格納する3次元マップで構成されており、その特性は、前述した図8(a)〜(c)に示す各モードマップMp1,Mp2,Mp3と同一である。
次いで、ステップS72で、アクセル開度θaccと車速Vとに基づきノーマル・セーブ補正係数マップMr1、及びパワー補正係数マップMr2を補間計算付きで参照して、補正係数RATIO1,RATIO2を設定する。尚、このノーマル・セーブ補正係数マップMr1、パワー補正係数マップMr2の特性は、上述した図9、図10に示すマップと同一であるため説明を省略する。
その後、ステップS73へ進み、エンジンモードMの値を参照して、何れのモード(ノーマルモードm1、セーブモードm2、或いはパワーモードm3)が選択されているかを調べる。そして、ノーマルモードm1が設定されているときはステップS74へ進み、セーブモードm2に設定されているときはステップS75へ分岐し、又、パワーモードm3に設定されているときはステップS76へ進む。
エンジンモードMがノーマルモードm1と判定されて、ステップS74へ進むと、目標スロットル開度θeを、ノーマルモードマップMp1を参照して設定した基本目標スロットル開度θα1とパワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標スロットル開度θα3とノーマル・セーブ補正係数マップMr1を参照して設定した補正係数RATIO1とに基づき、次式から算出する。
θe←θα1*RATIO1+θα3*(1−RATIO1)…(1’)
(1’)式によれば、エンジンモードMとしてノーマルモードm1が選択されている状態で設定される目標スロットル開度θeは、車速Vが0[Km/h]付近にある場合、アクセル開度θaccが大きくなるに従い、ノーマルモードマップMp1を参照して設定した基本目標スロットル開度θα1の加算比率が減少し、相対的にパワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標スロットル開度θα3の加算比率が大きくなり、目標スロットル開度θeが増加され、第1実施形態と同様、登坂路発進等、高負荷状態からの発進の際に、アクセルペダル14を大きく踏み込むことで、スムーズな発進性能を得ることが出来る。
又、発進後の補正係数RATIO1は、車速Vの上昇に従い急激に増加されて1に到達する。従って、発進後にアクセルペダル14を踏み込んでいても、車両が急発進することはなく、スムーズな発進性能を得ることが出来る。更に、発進後は、基本目標スロットル開度θα1の加算比率が自動的に増加され、相対的に基本目標スロットル開度θα3の加算比率が減少されるので、第1実施形態と同様、ノーマルモードm1本来のトルク制御領域へスムーズに移行させることができ、良好なドライバビリティ性能を得ることが出来る。
又、エンジンモードMがセーブモードm2と判定されて、ステップS73からステップS75へ進むと、目標スロットル開度θeを、セーブモードマップMp2を参照して設定した基本目標スロットル開度θα2とパワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標スロットル開度θα3とノーマル・セーブ補正係数マップMr1を参照して設定した補正係数RATIO1とに基づき、次式から算出する。
θe←θα2*RATIO1+θα3*(1−RATIO1)…(2’)
(2’)式によれば、エンジンモードMとしてセーブモードm2が選択されている状態で設定される目標スロットル開度θeは、車速Vが0[Km/h]付近にある場合、アクセル開度θaccが大きくなるに従い、ノーマルモードマップMp1を参照して設定した基本目標スロットル開度θα1の加算比率が減少し、相対的にパワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標スロットル開度θα3の加算比率が大きくなり、目標スロットル開度θeが増加される。従って、第1実施形態と同様、運転者がエンジンモードMとしてセーブモードm2を選択していても、登坂路発進等、高負荷状態からの発進においては、アクセルペダル14を大きく踏み込むことで、スムーズな発進性能を得ることが出来る。
特に、図14(b)に示すようにセーブモードマップMp2を参照して設定される基本目標スロットル開度θα2は、アクセルペダル14を全踏させてもスロットル開度θthが全開に至らない特性を有しているため、このままの設定では登坂路発進等、高負荷状態からの発進においてはトルク不足に陥りやすいが、本実施形態では、アクセルペダル14を踏み込むことで、エンジントルクがパワーモード側へ自動的に移行され、本来制限されているスロットル開度の上限を超えて開弁させるようにしたので、スムーズな発進性能を得ることが出来る。
又、発進後の補正係数RATIO1は、上述したように車速Vの上昇に従い急激に増加されて1に到達するので、発進後にアクセルペダル14を踏み込んでいても、車両が急発進することはなく、スムーズな発進性能を得ることが出来る。更に、発進後は、基本目標スロットル開度θα1の加算率が自動的に増加されるので、エンジンモードMを本来選択されているセーブモードm2本来のトルク制御領域へスムーズに移行させることができ、良好なドライバビリティ性能を得ることが出来る。
又、エンジンモードMがパワーモードm3と判定されて、ステップS76へ進むと、目標スロットル開度θeを、パワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標スロットル開度θα3とノーマルモードマップMp1を参照して設定した基本目標スロットル開度θα1とパワー補正係数マップMr2を参照して設定した補正係数RATIO2とに基づき、次式から算出する。
θe←θα3*RATIO2+θα1*(1−RATIO2)…(3’)
(3’)式によれば、エンジンモードMとしてパワーモードm3が選択されている状態で設定される目標スロットル開度θeは、車速Vが0[Km/h]付近にある場合、アクセル開度θaccが小さくなるに従い、パワーモードマップMp3を参照して設定した基本目標スロットル開度θα3の加算比率が低下し、相対的にノーマルモードマップMp1を参照して設定した基本目標スロットル開度θα1の加算比率が大きくなり、目標スロットル開度θeが減少される。従って、運転者がエンジンモードMとしてパワーモードm3を選択していても、発進時においてアクセルペダル14を僅かに踏み込んだ状態では、トルク過剰とならずスムーズな発進性能を得ることが出来る。
又、発進後の補正係数RATIO2は、車速Vの上昇に従い急激に増加されて1に到達するので、パワーモードm3本来の加速応答性を自動的に取得することが出来る。更に、発進後は、基本目標スロットル開度θα3の加算比率が自動的に増加され、相対的に基本目標スロットル開度θα1の加算比率が減少されるので、パワーモードマップMp3本来のトルク制御領域へスムーズに移行させることができ、良好なドライバビリティ性能を得ることが出来る。尚、上述したステップS74〜S76の処理が目標出力設定手段に相当する。
そして、ステップS74〜S76の何れかにおいて目標スロットル開度θeを設定すると、プログラムは、図12のステップS64へ進み、スロットル開度センサ32で検出したスロットル開度θthを読込み、ステップS65で、スロットル開度θthが、上述したステップS63で設定した目標スロットル開度θeに収束するように、電子制御スロットル装置に設けられているスロットル弁を開閉動作させるスロットルアクチュエータ37をフィードバック制御して、ルーチンを抜ける。
このように、本形態では、各モードマップMp1,Mp2,Mp3を参照して基本目標スロットル開度θα1,θα2,θα3を設定し、この基本目標スロットル開度θα1,θα2,θα3に基づいて目標スロットル開度θeを設定するようにしたので、上述した第1実施形態の効果に加え、基本目標トルクTRQ1,TRQ2,TRQ3から目標トルクτeを設定し、この目標トルクτeから目標スロットル開度θeを設定する第1実施形態に比し、演算負荷が軽減され、その分、高い応答特性を得ることが出来る。
尚、発進、及び低車速状態での各モードm1,m2,m3におけるアクセル開度θaccと目標スロットル開度θeとの関係は、上述した図11(a)〜(c)と同一の特性が示される。
本発明は上述した形態に限るものではなく、例えば各モードマップは異なる駆動力特性を有する2種類、或いは4種類以上で設定されていても良く、このように設定することで、運転者は1台の車両で、異なる駆動力特性を有する2台分、或いは4台分以上の車両を運転することができ、この場合においても発進から低車速運転領域まで目標スロットル開度θeを、補正係数マップを用いて補正することで、発進時のトルク不足、或いはトルク過剰を補正することが出来る。
更に、第1実施形態で説明した基本目標トルクTRQ1,TRQ2,TRQ3、及び第2実施形態で説明した基本目標スロットル開度θα1,θα2,θα3は、アクセル開度θaccとエンジン回転数Neとから演算により求めるようにしても良い。
又、各実施形態では、電子制御スロットル装置に装備されているスロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータ37を制御対象として説明したが、制御対象は、これに限らず、例えばディーゼルエンジンでは、制御対象をインジェクタ駆動装置とし、このインジェクタ駆動装置から噴射される燃料噴射量を目標トルクτeに基づいて設定するようにしても良い。又、吸気弁を電磁動弁機構で開閉動作させるエンジンでは、制御対象を電磁動弁機構とし、この電磁動弁機構にて駆動する吸気弁の弁開度を目標トルクτeに基づいて設定するようにしても良い。
更に、各実施形態では3つのエンジンモードを備えたエンジン制御装置の例示したが、本発明はこれに限らず、出力特性の異なる2以上のエンジンモードを備えたものに適用しても良い。