JP2018054483A - パワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置及びパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算方法 - Google Patents

パワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置及びパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算方法 Download PDF

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【課題】操舵のアシスト比を最適に設定することで運転者の操舵感を向上する。【解決手段】本発明に係るアシスト比演算装置100は、車両の将来の運転状態を予測する運転状態予測部126と、ステアリング操舵に関連する生体情報の離散度が低くなるアシスト比を運転状態毎に規定したデータベース150から、予測した将来の運転状態に応じたアシスト比を取得するアシスト比取得部127と、を備える。この構成により、操舵のアシスト比を最適に設定することで運転者の操舵感を向上することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、パワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置及びパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算方法に関する。
従来、例えば下記の特許文献1には、三角筋電極から筋電位を検出して、積分筋電位を求め、積分筋電位に基づいてアクティブ状態かパッシブ状態かを判定し、アクティブ状態かパッシブ状態であるかの情報と共に、感圧センサ、車両操舵状態検出部、官能評価入力部からの情報を収集して記憶し、これらの情報を用いて操舵感の要因の評価を行うことが記載されている。
特開2003−177079号公報
ドライバーが車両を運転する際に、ステアリング操舵は運転操作の主要な部分の1つを占めており、操舵感を向上させることで運転フィーリングを高めることができる。しかし、上記特許文献に記載された技術は、操舵感の要因の評価を行うものであり、操舵感を向上させることは何ら想定していなかった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、操舵のアシスト比を最適に設定することで運転者の操舵感を向上することが可能な、新規かつ改良された操舵アシスト比演算装置及び操舵アシスト比演算装置方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両の将来の運転状態を予測する運転状態予測部と、ステアリング操舵に関連する生体情報の離散度が低くなるアシスト比を運転状態毎に規定したデータベースから、予測した将来の運転状態に応じたアシスト比を取得するアシスト比取得部と、を備える、パワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置が提供される。
前記生体情報は、腕の加速度と腕の筋電であっても良い。
また、前記運転状態予測部は、撮像装置から得られる画像情報に基づいて前記運転状態を予測するものであっても良い。
また、前記運転状態予測部が予測する前記運転状態は、カーブを走行する際の運転状態であっても良い。
また、前記運転状態予測部は、所定時間毎に撮像装置から取得される前方の道路の曲率に基づいて、前記運転状態を予測するものであっても良い。
また、前記運転状態予測部は、カーブを走行する際の車両速度及びヨーレートを予測するものであっても良い。
また、前記運転状態予測部は、地図情報、又は前方を走行する車両から得られる情報に基づいて、前記車両速度を予測するものであっても良い。
また、前記運転状態予測部は、時系列に順次取得される前方の道路の曲率の差が所定値以下の場合に、前記車両速度及び前記ヨーレートを予測するものであっても良い。
また、前記運転状態予測部は、時系列に順次取得される前方の道路の曲率の今回値が前回値よりも小さくなった後、時系列に順次取得される前方の道路の曲率の差が所定値以下の場合に、前記車両速度及び前記ヨーレートを予測するものであっても良い。
また、前記データベースに格納された前記運転状態は、カーブを走行する際に車両速度及びヨーレートの相違に応じて分類された各運転状態であっても良い。
また、前記データベースは、運転状態に応じた車両速度及びヨーレートと、当該運転状態で前記離散度が低くなる前記アシスト比とを対応付けて格納しているものであっても良い。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車両の将来の運転状態を予測するステップと、ステアリング操舵に関連する生体情報の離散度が低くなるアシスト比を運転状態毎に規定したデータベースから、予測した将来の運転状態に応じたアシスト比を取得するステップと、を備える、パワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算方法が提供される。
以上説明したように本発明によれば、操舵のアシスト比を最適に設定することで運転者の操舵感を向上することができる。
本発明の一実施形態に係るステアリング操舵のアシスト比演算システム1000の構成を示す模式図である。 アシスト比演算装置100が行う処理の概要を示す模式図である。 アシスト比演算装置100が行う処理の詳細を示すフローチャートである。 アシスト比演算装置100が行う処理の詳細を示すフローチャートである。 ラベル表の例を示す模式図である。 腕の加速度のZスコア(ZAijk)と腕の筋負担のZスコア(ZMijk)を2次元平面にプロットした例を示す特性図である。 j=1,k=1の場合に、i=1,2,3のそれぞれの離散度D111,D211,D311とアシスト比の関係を示す特性図である。 式(2)から算出した近似曲線を示す模式図である。 走行状態に応じて最適なCxjkがデータベースに格納された様子を示す模式図である。 本実施形態に係るアシスト比の自動変更モード2について説明するためのフローチャートである。 定常円区間の走行車速を推測して制御を変更する処理を示すフローチャートである。 図10及び図11の処理において、車両が直線→緩和曲線→定常円区間→緩和曲線→直線を走行する様子を示す模式図である。 データベースに格納された情報を示す模式図である。 異なるドライバーA,B,C毎にアシスト比のピーク値Cxjkが異なる様子を説明するための特性図である。 異なるドライバーA,B,C毎にアシスト比のピーク値Cxjkが異なる様子を説明するための特性図である。 異なるドライバーA,B,C毎にアシスト比のピーク値Cxjkが異なる様子を説明するための特性図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング操舵のアシスト比演算システム1000の構成を示す模式図である。図1に示すシステム1000は、車両に搭載されることができる。本実施形態では、個々のドライバー(運転者)から、ステアリング操舵に関連する身体の情報を取得し、取得した身体の情報に基づいて、それぞれのドライバーに最適なステアリング操舵のアシスト比を算出する。ステアリング操舵に関連する身体の情報として、腕の加速度Aと、腕の筋活動量M(筋電(筋負担ともいう))を用いる。
ドライバーが車両を運転する際に、ステアリング操舵は運転操作の主要な部分の1つを占めており、操舵感を向上させることで運転フィーリングを高めることができる。本実施形態は、乗員の操舵時の動作を計測することにより、個人の特性に合わせた最適な操舵制御の設定を行うことで操舵感を向上させる。具体的には、生体計測によって、操舵時の手の加速度A、筋活動量Mを測定する。これらの計測を、3つ以上の異なる制御設定にて行う。制御設定の変更は、電動パワーステアリングシステム(EPS)のアシスト比Cを変更することで行う。異なる制御設定で取得した加速度A、筋活動量MをそれぞれZ得点化し、加速度A、筋活動量Mの2軸の相平面上にて制御設定毎に操舵感指標としての離散度Dの平均を計算する。そして、求めた離散度Dとアシスト比Cが非線形となるような近似曲線を求め(D=f(C))、離散度Dが最適値(下に凸となる頂点)となるアシスト比を求める。このような手法によれば、ドライバー毎に離散度が最も低くなるアシスト比を算出することができるため、個々のドライバーの特性に応じて最適にアシスト比を設定することができる。なお、加速度Aは3軸合成ベクトルの平均値を用いても良い。
なお、本実施形態では、生体情報として腕の加速度Aと、腕の筋活動量Mを例示するが、生体情報は他の情報であっても良い。また、生体情報として腕の加速度Aと、腕の筋活動量Mの2つの情報を使用したが、1つ又は3つ以上の生体情報を使用しても良い。
図1に示すように、アシスト比演算システム1000は、制御装置(アシスト比演算装置)100、生体センサ200(加速度センサ210、筋負担を計測する筋負担センサ220)、車両センサ400、モード切替SW500、通信部510、電動パワーステアリングシステム(EPS)600を有して構成されている。車両センサ400は、車速センサ402、操舵角センサ404、ヨーレートセンサ406、操舵トルクセンサ408、車外センサ410、位置センサ(GPS)412を含む。車外センサ410は、ステレオカメラ等から得た画像の画像処理により、道路形状や路面の白線形状等を検知する。なお、ステレオカメラの代わりに、単眼カメラ等の他の撮像装置を用いても良い。また、車外センサ410として、ミリ波レーダー、赤外線レーザー等を用いて車外の状況を検出する装置を用いても良い。位置センサ412は、現在位置を取得する。通信部510は、無線通信により外部と通信を行い、他車の走行履歴等を取得する。
腕の加速度は、ドライバーの腕に加速度センサ210を装着することによって計測する。また、腕の加速度は、カメラで撮像した画像を解析して手の軌跡を計測し、軌跡から算出しても良い。画像解析の場合、モーションキャプチャーによるマーカー計測、ステレオカメラや赤外線カメラ等によるマーカーレス計測を用いることができる。なお、腕の加速度の取得方法はこれらに限定されるものではなく、他の方法を用いても良い。
筋負担センサ220は、筋電計(電極)を含み、例えば筋電計をドライバーの三角筋に装着することで筋電を計測する。具体的には、以下の式より、筋電のデータから%MVCを計算した値を使用することができる。なお、RMS値は筋電の実効値を表す。最大随意収縮時におけるRMS値は予め停車状態などで計測しておく。
%MVC=解析箇所のRMS値
÷ 最大随意収縮時におけるRMS値
なお、筋電計の代わりに、荷重センサによる代用測定で筋負担を計測しても良い。この場合、ステアリング、またはシートに荷重センサを装着し、ドライバーが力を入れた時の作用点として荷重を測定し、荷重から筋負担を推定する。また、筋骨格モデルなどを用いて筋負担を推定しても良い。
アシスト比演算装置100は、第1の制御部110、第2の制御部120、モータ制御部130、データベース140,150を有して構成される。第1の制御部110は、車速、操舵トルクに基づいて、電動パワーステアリングシステム(EPS)600が備えるモータを制御するための制御値を求め、モータ制御部130に送る。モータ制御部130は、制御値に基づいて電動パワーステアリングシステム(EPS)600が備えるモータを制御する。
第2の制御部120は、生体センサ200の情報に基づいて電動パワーステアリングシステム(EPS)600のアシスト比を演算する。モータ制御部130は、第2の制御部120が演算したアシスト比に基づいて、電動パワーステアリングシステム(EPS)600が備えるモータを制御する。
通常の運転状態では、車速、操舵トルクに基づいて、電動パワーステアリングシステム(EPS)600が備えるモータが制御される。この際、電動パワーステアリングシステム(EPS)600は、予め定められた所定のアシスト比で電動パワーステアリングシステム(EPS)600を制御する。一方、ドライバーがモード切替SW500により所定の操作を行うと、電動パワーステアリングシステム(EPS)600によるアシスト比が第2の制御部120が演算したアシスト比に変更され、変更されたアシスト比により電動パワーステアリングシステム(EPS)600が備えるモータが制御される。
データベース140には、ナビゲーションシステムの地図情報、自車又は他社の走行履歴情報、等が格納されている。また、データベース150には、後述するアシスト比Cxjkが格納されている。
第2の制御部120は、生体センサ200が検出した生体情報を取得する生体情報取得部122、生体情報に基づいてアシスト比を演算するアシスト比演算部124、車両の運転状態を予測する運転状態予測部126、予測した車両の運転状態に基づいて、データベース150に格納されたアシスト比を取得するアシスト比取得部127、を有して構成されている。
より詳細には、アシスト比取得部127は、ステアリング操舵に関連する生体情報の離散度が低くなるアシスト比を運転状態毎に規定したデータベース150から、予測した将来の運転状態に応じたアシスト比を取得する。
なお、図1のアシスト比演算装置100が有する各構成要素は、回路(ハードウェア)又はCPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)から構成することができる。また、そのプログラムは、メモリ等の記録媒体に格納されることができる。
図2は、アシスト比演算装置100が行う処理の概要を示す模式図である。先ず、加速度センサ210、筋負担センサ220をドライバーに装着した状態で、車両の運転を行う(ステップS10)。そして、運転中に手の加速度と筋電を計測する(ステップS12,S14)。
次に、計測した加速度と筋電の離散度を計算する(ステップS16)。次に、離散度のデータを蓄積し、離散度に基づいてステアリング操舵のアシスト比の最適値を計算する(ステップS18)。次に、電動パワーステアリングシステム(EPS)600におけるステアリング操舵のアシスト比を変更し(ステップS18)、ステップS10へ戻り、ステップS10〜S20の処理を繰り返す。そして、3回以上の繰り返し処理を行った後は、ステップS16からステップS22へ進んで最適値を判定し、アシスト比を最終決定する(ステップS24)。ステップS24で決定されたアシスト比により、制御条件が決定され、車両の運転が行われる(ステップS26)。制御条件の決定には、車速、舵角等の各種車両情報が適宜用いられる。
図3及び図4は、アシスト比演算装置100が行う処理の詳細を示すフローチャートである。図3の処理は、主として生体情報取得部122によって行われる。また、図4の処理は、主としてアシスト比演算部124、アシスト比決定部127によって行われる。先ず、ステップS100では、モード切替SW500が操作され、初期設定モードがオン(ON)とされる。なお、初期設定モードは車両を運転することが前提となるが、車両静止状態で操舵を行うシミュレーション設定モードで各種情報を取得しても良い。次のステップS102では、各制御設定時の電動パワーステアリングシステム(EPS)600のアシスト比Ciを設定する。iは3以上とし、3つ以上のアシスト比を設定する。一例として、i=1,2,3であり、C1=1、C2=2、C3=0.4とする。また、アシスト比の設定は、直線区間や停車中等に行う。直線区間の推定は、ナビゲーションシステムの地図情報や車外センサ410から得られる情報等を用いて行うことができる。
次のステップS104では、各種データの記録を開始する。ここで記録するデータは、車速Vi、操舵角αi、ヨーレートγi、実操舵トルクTsi、操舵トルクThi、腕の加速度Ai、腕の筋負担Mi、等の各種データである。
次のステップS106では、定常円区間を走行しているかを推定し、定常円区間走行毎に上記各データの平均値を計算する。定常円走行区間の推定は、一例として、ヨーレートの移動平均ピーク値を計算し、ピーク値の前2秒、後2秒の4秒分を定常円走行区間として推定し、各データを計算する。
次のステップS108では、ラベル表に従い、定常円区間毎に車速、ヨーレートの平均値に合わせて、各データにj,kのラベル付をする。図5はラベル表の例を示す模式図である。i=1の場合、ある定常円区間の車速V1の平均が0〜10[km/s]であり、ヨーレートγ1の平均が0.1〜0.2[rad/s]の場合、ラベル付け後の腕の加速度はA115となる。
次のステップS110では、j,kを組み合わせたデータ数がN個記録されるまで、運転を続ける。次のステップS112ではiの値に1を加算し、次のステップS114ではiの値が3以下であるか否かを判定し、iの値が3以下の場合はステップS102以降の処理を再度行う。
ステップS114でiの値が3を超えた場合は、図4のステップS116へ進む。ステップS116では、j,kを1から変化させ、それぞれの組み合わせで計算を開始する。jの値は1からJまでであり(j=1:J)、kの値は1からKまでである(k=1:K)。次のステップS118では、j,kのラベルが一致するデータ(腕の加速度、腕の筋負担)をそれぞれZスコア化する。これにより(ZAijk,ZMijk)が得られる。なお、Zスコアは、母集団を構成する要素iのある値piが分布の中でどの辺りに位置するかを平均値0、標準偏差1の標準正規分布に置き換えて表したものであり(Zスコア=(pi−μ)/σ、但し、μは母平均、σは標準偏差)、piが平均値と等しければZスコアは0となり、平均より高い値ならZスコアはプラスの値、低ければマイナスの値となる。Zスコアを求める上記式は任意の値の標準偏差の分布を、標準偏差1の標準正規分布に置き換えたものである。
図6は、腕の加速度のZスコア(ZAijk)と腕の筋負担のZスコア(ZMijk)を2次元平面にプロットした例を示す特性図である。図6において、横軸は腕の加速度のZスコア(ZAijk)の値を示しており、縦軸は腕の筋負担のZスコア(ZMijk)の値を示している。図6に示すプロットの特性は、j,kの特定の組み合わせ毎に得られる。i,jの特定の組み合わせにおいて、アシスト比を示すiが1,2,3のそれぞれの場合についてプロットが行われる。一例として、説明の便宜上、図6に示す特性はj=1,k=1であるものとする。図6では、i=1(アシスト比C1=1、操舵トルク「中間」)の場合のプロットを◇で示し、i=2(アシスト比C2=2、操舵トルク「軽い」)の場合のプロットを□で示し、i=3(アシスト比C3=0.4、操舵トルク「重い」)の場合のプロットを△で示している。
次のステップS120では、Zスコア化したデータから各アシスト比の制御設定毎の離散度Dijkを求める。離散度Dijkは、以下(1)の式から算出される。離散度Dijkは、運転しやすい制御設定では、操舵時の動き(加速度A、筋活動量M)の再現性が高いという実験結果を基に作成した指標である。操舵トルクが重すぎたり、軽すぎたりすると筋活動と加速度のばらつきが大きくなり、離散度が高くなる傾向があり、離散度は操舵感と高い相関関係がある。操舵感が良い、適切な操舵トルクを設定すると、操舵トルクが重い設定や軽い設定に対して筋活動、加速度が過度に増減せず、ばらつきも減少し、離散度が下がる。
Figure 2018054483
以上のようにして、例えばj=1,k=1の場合、離散度Di11が求まることになる。図7は、j=1,k=1の場合に、i=1,2,3のそれぞれの離散度D111,D211,D311とアシスト比の関係を示す特性図である。図7に示すように、アシスト比に応じて離散度Dが変化することが判る。
次のステップS122では、D1jk<D2jk且つD1jk<D3jkの条件が満たされるか否かを判定し、この条件が満たされる場合はステップS124へ進む。一方、この条件が満たされない場合は、ステップS116へ戻り、再計算を行う。ここで、アシスト比C3の場合は操舵トルクが重く、アシスト比C2の場合は操舵トルクが軽くなり、C3とC2はアシスト比を両極端に外した制御設定としている。一方、アシスト比C1の場合は操舵トルクが中間であり、設計ニュートラル値であり、適正値に近いと想定される制御設定である。このため、ステップS122の判定を行うことで、アシスト比C1の時の離散度がアシスト比C2とアシスト比C3の場合の離散度よりも小さい最小値になる条件のみを抽出する。
ステップS124では、図7の離散度Dとアシスト比Cとの関係を示す非線形の近似曲線を算出する。近似曲線は、例えば以下の式(2)から算出できる。但し、式(2)において、eは定数項とする。
jk=(C−Cxjk)+e ・・・(2)
図8は、式(2)から算出した近似曲線を示す模式図である。ステップS124では、近似曲線に基づいてピーク値のCxjkを算出する。図7及び図8の例では、極小値となるCi11が算出される。
例えば、図8では、アシスト比C1=1、C2=2,C3=0.4のそれぞれの場合におけるDjkを式(2)に代入し、式(2)に基づく以下の演算により、Cx11=0.81となる。具体的には、C1=1の場合の離散度D111=0.9、C2=2の場合の離散度D211=2.6、C3=0.4の場合の離散度D311=1.4を式(2)に代入し、Cx11=0.81を求める。従って、この場合、最も離散度が低くなるアシスト比は0.81である。
i11=3.93c−6.36c+3.29
=3.93(c−0.81)+0.71
次のステップS126では、全てのj,kの組み合わせについて、ステップS116〜S124の処理が終了したか否かを判定し、全てのj,kの組み合わせについて処理が終了した場合はステップS128へ進み、全てのCxjkをデータベース150に格納する。一方、全てのj,kの組み合わせについて処理が終了していない場合は、ステップS116へ戻る。ステップS128の後はステップS130へ進み、初期設定モードをオフ(OFF)に設定する。
図9は、走行状態に応じて最適なCxjkがデータベースに格納された様子を示す模式図である。図9に示すように、データベースには、平均速度vj,平均ヨーレートγlの任意の組み合わせ毎に最適なアシスト比Cxjkが格納されている。
次に、図10に基づいて、本実施形態に係るアシスト比の自動変更モード2について説明する。図10に示す処理は、主として運転状態予測部126によって行われる。先ず、ステップS300では、自動変更モード2をオンにする。次のステップS301では、車両の走行中に前方の道路曲率半径ρ、自車の車速v、前後加速度情報の取得を開始する。前方の道路曲率半径ρは、車外センサ410が備えるステレオカメラの画像情報から取得する。次のステップS302では、F[m]先の曲率半径ρlを取得し、データを格納する。なお、lは1から無限大(∞)までの値とする。また、Dは車外センサ410で検知可能な最大前方距離を表し、∞はループ計算の終了判定が出るまで処理を続けるという意味を表している。道路曲率半径ρを取得する場合、より具体的には、画像情報から車線検出を行い、F0m先の車線中の点の変位(車両横方向)がある閾値を超えた際に、白線上の3点(F0、F1、F2)を通る円弧を算出し、円弧から曲率半径を求める。車線検出を行う際には、画像情報を2値化処理し、前後方向に連続して検出した点を車線と判定する。F0、F1、F2は任意に設定可能であり(F0=Fとして良い)、なるべく等間隔に設定する。更に測定点F3を追加するなどして測定点を4つ以上に増やして精度を上げても良い。その場合の計算例として、F0、F1、F2を通る円弧とF1、F2、F3を通る円弧の平均を曲率半径の算出に用いる。なお、ステレオカメラの場合、取得画像から作成した視差画像を用いることで、自車位置から白線の位置を精度よく検出することができる。
次のステップS304では、l≧2であるか否かを判定し、l≧2の場合はステップS306へ進む。緩和曲線の開始地点を推定するために曲率半径の変化を計算するが、そのために2つ以上のデータを取得しておく必要があるため、ステップS304ではl≧2であるか否かを判定する。なお、精度向上のために3つ以上のデータを取得するように設定してもよい。
ステップS306では、ρl<ρl−1であるか否かを判定し、ρl<ρl−1の場合はステップS308へ進む。ステップS306では、曲率半径ρが減少した場合は緩和曲線に入ったと判定する。例えば、ρl<ρl−1<ρl−2が成立するか否かを判定することで、判定数を増やして精度を上げても良い。ステップS310では、F[m]先の座標を記録し、この座標を緩和曲線の開始位置P1として設定する。
一方、ステップS304でl<2の場合、又はステップS306でρl≧ρl−1の場合はステップS310へ進み、lの値に1を加算し(l=l+1)、ステップS302以降の処理を再度行う。
ステップS310の後はステップS312へ進み、F[m]先の曲率半径ρmを取得し、データベースに格納する。なお、mは1から無限大(∞)までの値とする。次のステップS314では、m≧2であるか否かを判定し、m≧2の場合はステップS316へ進む。定常円区間の開始地点を推定するために曲率半径の変化を計算するが、2つ以上のデータを取得するため、ステップS314ではm≧2であるか否かを判定する。なお、より精度を向上するため、3つ以上のデータを取得するようにしても良い。
ステップS316では、ρ−ρm−1<ρx1であるか否かを判定し、ρ−ρm−1<ρx1の場合はステップS318へ進む。このように、曲率半径ρが変化しなくなった場合は定常円区間と推定し、ステップS318では、その際の曲率半径をρyとして記録する。その際、閾値ρx1未満は誤差または緩和曲線と判定する。なお、判定数を増やして精度を上げても良い。例えば、m≧3の場合に、ρ−ρm−1<ρx1であり、且つρm−1−ρm−2<ρx1の場合にステップS318へ進むようにしても良い。
一方、ステップS314でm<2の場合、又はステップS316でρ−ρm−1≧ρx1の場合はステップS320へ進み、mの値に1を加算し(m=m+1)、ステップS312以降の処理を再度行う。
ステップS318の後はステップS320へ進む。ステップS320では、F[m]先の座標を記録し、定常円区間の開始位置P2として設定する。以上のようにして、運転状態予測部126は、F[m]から定常円区間が開始することを予測する。
図11は、定常円区間の走行車速を推測して制御を変更する処理を示すフローチャートである。図11に示す処理は、主として運転状態予測部126、アシスト比取得部127によって行われる。先ず、ステップS400では、定常円区間の開始位置P2に到達した際に、定常円区間走行時の車速vyを推定する。車速vyの推定は、データベース140に格納された情報(制限速度や自車又は他車の走行履歴)、あるいは、前方車両がいればその速度等に基づいて行う。具体的には、図13に示す情報に基づいて、車速vyの推定を行う。前方車両の速度は、通信部510がF[m]先を通過した前方車両と通信を行うことで取得できる。次のステップS402では、定常円区間走行時のヨーレートγyを算出する。ヨーレートγyは、以下の式から算出できる。以上のようにして、運転状態予測部126は、F[m]から定常円区間が開始することを予測し、定常円区間における車速vy、ヨーレートγyを予測する。
γy=vy/ρy
図13は、データベース140に格納された情報を示す模式図である。図13に示すように、データベース140には、地図情報に対応付けて、各区間における平均車速vl、ヨーレート平均値γl、又は平均曲率半径ρl等の情報が格納されている。また、データベース140には、自車や他車の走行履歴の情報が格納されており、地図情報におけるカーブ区間と、自車や他車がそのカーブ区間を走行した際の制限速度、平均車速vl、ヨーレート平均値rl、又は平均曲率半径ρlとが対応付けされて記録されている。図13に示す各区間における平均車速vl、ヨーレート平均値γl、又は平均曲率半径ρlは、推定された定常円区間を走行した際の車速、ヨーレート、曲率半径をそれぞれ平均して求めたものであり、例えば、定常円区間の始まりと判定したら各データを蓄積し始め、定常円区間の終わりと判定したら各データの平均値を計算することで得られる。
次のステップS404では、アシスト比取得部127が、図9に示したCxjkを格納したデータベース150から、車速vy、ヨーレートγyの組み合わせに最も近い値となる車速vj、ヨーレートγkの組み合わせを検索し、検索した組み合わせに対応するCxjkを選択する。次のステップS406では、アシスト比をステップS404で選択したCxjkに設定する。
次のステップS408では、F[m]先の曲率半径ρnを取得し、データベースに格納する。次のステップS410では、n≧2であるか否かを判定し、n≧2の場合はステップS412へ進む。直線区間の開始地点を推定するために曲率半径の変化を計算するが、2つ以上のデータを取得するため、ステップS410ではn≧2であるか否かを判定する。なお、より精度を向上するため、3つ以上のデータを取得するようにしても良い。
ステップS412では、ρ−ρn−1≧ρx1且つρ>ρx2であるか否かを判定し、この条件が成立する場合はステップS414へ進む。具体的に、ステップS412では、曲率半径の変化が図10のステップS316の条件よりも大きくなったことと、曲率半径ρが閾値ρx2以上の場合に緩和曲線の開始と判定する。ステップS414では、F[m]先の座標を記録し、緩和曲線の開始位置P3として設定する。
一方、ステップS410でn<2の場合、又はステップS412でρ−ρn−1≠0又はρ≦ρx2の場合はステップS416へ進み、nの値に1を加算し(n=n+1)、ステップS408以降の処理を再度行う。
ステップS414の後はステップS418へ進み、自車がP3に達したら制御設定(アシスト比)を初期値に変更する。次のステップS420では、自動変更モード2をオフ(OFF)にする。ステップS420の後は処理を終了する(END)。
図12は、図10及び図11の処理において、車両が直線→緩和曲線→定常円区間→緩和曲線→直線を走行する様子を示す模式図である。図12に示すように、通常、直線と定常円区間の間に緩和曲線が設けられる。車両が直線を走行中に、ステップS306の条件が成立すると、F[m]先の開始位置P1から緩和曲線が開始すると判定され、ステップS312以降の定常円区間の判定処理に移行する。その後、ステップS316の条件が成立すると、定常円区間を走行する際のアシスト比Cxjkが設定される。その後、ステップS412の条件が成立すると、ステップS418において緩和曲線の開始位置P3に車両が到達した時点でアシスト比を初期値に変更する。
図14A〜図14Cは、異なるドライバーA,B,C毎にアシスト比のピーク値Cxjkが異なる様子を示す特性図である。図14Aに示すドライバーAの特性では、操舵トルクが中間(アシスト比≒1)の場合に離散度がピークになっている。また、図14Bに示すドライバーBの特性では、操舵トルクが重い(アシスト比1.0以下)の場合に離散度がピークになっている。また、図14Cに示すドライバーCの特性では、操舵トルクが軽い(アシスト比1.0以上)の場合に離散度がピークになっている。以上のように、ドライバー毎に最適のアシスト比は異なるが、本実施形態では、運転状態に応じて、j,kのラベル毎に離散度Dが最も小さくなるピーク値Cxjkを求め、更に、運転状態に応じてCxjkを選択するようにしたため、ドライバー毎に、運転状態に応じた最適なアシスト比Cxを設定することが可能となる。
以上説明したように本実施形態によれば、ドライバー毎に生体情報の離散度が最も低くなるアシスト比を算出することができるため、個々のドライバーの特性に応じて最適にアシスト比を設定することができる。また、走行中に将来の運転状態を予測し、予測した運転状態に応じて生体情報の離散度が最も低くなるアシスト比を自動設定できるため、将来の運転状態に応じて最適な操舵感を得ることが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
100 アシスト比演算装置
124 アシスト比演算部
126 運転状態予測部

Claims (12)

  1. 車両の将来の運転状態を予測する運転状態予測部と、
    ステアリング操舵に関連する生体情報の離散度が低くなるアシスト比を運転状態毎に規定したデータベースから、予測した将来の運転状態に応じたアシスト比を取得するアシスト比取得部と、
    を備えることを特徴とする、パワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
  2. 前記生体情報は、腕の加速度と腕の筋電であることを特徴とする、請求項1に記載のパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
  3. 前記運転状態予測部は、撮像装置から得られる画像情報に基づいて前記運転状態を予測することを特徴とする、請求項1又は2に記載のパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
  4. 前記運転状態予測部が予測する前記運転状態は、カーブを走行する際の運転状態であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
  5. 前記運転状態予測部は、所定時間毎に撮像装置から取得される前方の道路の曲率に基づいて、前記運転状態を予測することを特徴とする、請求項4に記載のパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
  6. 前記運転状態予測部は、カーブを走行する際の車両速度及びヨーレートを予測することを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載のパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
  7. 前記運転状態予測部は、地図情報、又は前方を走行する車両から得られる情報に基づいて、前記車両速度を予測することを特徴とする、請求項6に記載のパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
  8. 前記運転状態予測部は、時系列に順次取得される前方の道路の曲率の差が所定値以下の場合に、前記車両速度及び前記ヨーレートを予測することを特徴とする、請求項6又は7に記載のパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
  9. 前記運転状態予測部は、時系列に順次取得される前方の道路の曲率の今回値が前回値よりも小さくなった後、時系列に順次取得される前方の道路の曲率の差が所定値以下の場合に、前記車両速度及び前記ヨーレートを予測することを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載のパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
  10. 前記データベースに格納された前記運転状態は、カーブを走行する際に車両速度及びヨーレートの相違に応じて分類された各運転状態であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
  11. 前記データベースは、運転状態に応じた車両速度及びヨーレートと、当該運転状態で前記離散度が低くなる前記アシスト比とを対応付けて格納していることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載のパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
  12. 車両の将来の運転状態を予測するステップと、
    ステアリング操舵に関連する生体情報の離散度が低くなるアシスト比を運転状態毎に規定したデータベースから、予測した将来の運転状態に応じたアシスト比を取得するステップと、
    を備えることを特徴とする、パワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算方法。
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