JP2009165231A - 振動波駆動装置およびそれを用いる装置 - Google Patents

振動波駆動装置およびそれを用いる装置 Download PDF

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Abstract

【課題】駆動振動波の次数と不要振動波の次数の関係に拘わらず、駆動振動波の発生に大きな影響を及ぼすことなく、不要振動波の発生を抑制することができる振動波駆動装置を提供する。
【解決手段】振動モータMの振動体1の一方の端面(上面)には、内部から外部に向けて放射状に伸びる複数の溝1aが形成されており、振動体1における溝1a間の部位は、ロータ3と加圧接触する突起1bを構成する。各溝1aは、深さtaが1つの正弦波曲線に沿って変化するように形成されている。また、溝1aがそれぞれ形成されている部位1cは、主に曲げ振動が生じる部位を構成する。各溝1aの深さtaが1つの正弦波曲線に沿って変化するので、これにより、各部位1cの厚さtcは、1つの正弦波曲線に沿って変化する。
【選択図】図2

Description

本発明は、振動体に予め設定された次数の曲げ振動波を駆動振動波として励起させ、該振動体に励起された駆動振動波によって移動子を駆動する振動波駆動装置およびそれを用いる装置に関する。
振動波駆動装置の1つとして、振動波モータがある。この振動波モータは、予め設定された次数m(mは1以上の整数)の曲げ振動波を駆動振動波(進行性振動波)として励起させ、該振動体に励起された駆動振動波によって移動子を駆動するものである。m次の曲げ振動波とは、波の数がm個である曲げ振動波をいう。ここで、振動体と移動子が互いに接触する接触面の精度の低さ、振動体に発生する機械的振動のむら、振動体と移動子の接触圧力の分布の不均一さなどの要因により、予め設定された次数mの曲げ振動波(駆動振動波)以外の曲げ振動波いわゆる不要振動波が発生する場合がある。この不要振動波は、異音の発生、出力の低下などを引き起こす原因になる。
そこで、不要振動波の発生を低減するために、振動体に対して、曲げ剛性が他の部位と異なる部位を設ける構成が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、曲げ剛性に差を設け、曲げ剛性が他に比較して低い部位を所定の角度範囲にわたって設ける構成が提案されている(例えば特許文献2参照)。
上記振動体に対して曲げ剛性が他の部位と異なる部位を設ける構成が用いられている振動波モータについて図18を参照しながら具体的に説明する。図18は従来の振動波モータの主要部の分解斜視図である。
振動波モータは、図18に示すように、リング状の圧電素子102(電気機械エネルギ変換素子)が接着され、リング状の弾性部材からなる振動体101を備える。振動体101は、上記圧電素子102と共働して振動子を構成する。振動体101には、深さh1を有する複数の溝101aが形成されており、溝101a間の部位101cは、振動および振幅を拡大するための突起を構成する。上記部位101c即ち突起101cは、移動子(図示せず)と加圧接触されている。
振動体101には、圧電素子102への電圧印加により、7次の曲げ振動波(波の数が7個である曲げ振動波)が駆動振動波として励起される。各突起101cと加圧接触されている移動子(図示せず)は、振動体101に励起された駆動振動波により回転駆動される。
上記振動波モータにおいて、複数の溝101aには、異なる深さを有する所定の数の溝101bが含まれる。各溝101bは、騒音の発生の可能性がある不要振動波、例えば3次の曲げ振動波が進行性の振動波として励起されることを低減させるためのものである。
ここで、各溝101bは、3次の曲げ振動波の波長λの整数倍またはその1/2の整数倍の位置に配置される。即ち、各溝101bが振動体101の周方向にθ=π/3(rad)の角度ピッチで配置されており、その数は6つである。また、各溝101a,101bの深さh1,h2は、h2>h1の関係を満足する。よって、溝101bがそれぞれ形成されている6つの部位の曲げ剛性は、溝101aが形成されている部位の曲げ剛性より小さくなる。
3次の曲げ振動波が振動体101に生ずる際には、この3次の曲げ振動の振動の腹および節は、それぞれリング状の弾性体1の周方向に沿って6箇所にほぼ等間隔で位置する。つまり、前記3次の曲げ振動波の発生位置によっては、6箇所の溝101bと6箇所の振動の腹の位置がすべて一致する場合や、6箇所の溝101bと6箇所の振動の節の位置がすべて一致する場合が起こる。振動の腹は、曲げ振動変位の極大値をとる位置であるとともに、曲げ変形の極大値をとる位置である。そのため、6箇所の溝101bと6箇所の振動の腹の位置がすべて一致する場合は、振動波の固有振動数が低くなる。6箇所の溝101bと6箇所の振動の節の位置がすべて一致する場合は、振動の節は曲げ変形が零となる位置であるため、固有振動数があまり変化しない。
この3次の振動波が進行性振動波として励起するには、6箇所の溝101bと6箇所の振動の腹の位置がすべて一致する定在波振動と、6箇所の溝101bと6箇所の振動の節の位置がすべて一致する定在波振動が同時に、同じ周波数にて発生すること必要である。そのため、2つの固有振動数を異ならしめた図18の構成では、3次の曲げ振動の自励振動が、進行性の振動波として生じ振動子を一方向に伝播する場合、3次の曲げ振動波は、進行性振動波として励起されず、不要振動波である3次の曲げ振動波の発生が抑制される。
特開平2−214477号公報 特開平3−145974号公報
しかしながら、上述した従来の不要振動波の発生を低減するための構成は、駆動振動波となる曲げ振動波の次数が不要振動波の次数の倍数であると、当該駆動振動波を励起させることができない場合があることがわかった。換言すれば、駆動振動波の次数と不要振動波の次数の関係によっては、不要振動波の発生を抑制することができない場合がある。
そこで、本発明の目的は、駆動振動波の次数と不要振動波の次数の関係に拘わらず、駆動振動波の発生に大きな影響を及ぼすことなく、不要振動波の発生を抑制することができる振動波駆動装置およびそれを用いる装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、振動体および該振動体に予め設定された次数の曲げ振動波を駆動振動波として励起させる電気機械エネルギ変換素子を有する振動子と、前記振動子の前記振動体に接触し、該振動体に励起された駆動振動波によって駆動される移動子とを備え、前記振動体は、曲げ振動変形が生じる部位の厚さが前記駆動振動波の進行方向に対して、少なくとも1つの正弦波により規定される曲線に沿って変化するように構成されていることを特徴とする振動波駆動装置を提供する。
また、本発明は、上記目的を達成するため、上記振動波駆動装置を用いる装置を提供する。
本発明によれば、駆動振動波の次数と不要振動波の次数の関係に拘わらず、駆動振動波の発生に大きな影響を及ぼすことなく、不要振動波の発生を抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
まず、駆動振動波の次数と不要振動波の次数の関係によっては、不要振動波の発生を抑制することができなくなる理由について説明を行う。
同じ次数の曲げ振動波に対する振動体101の固有振動数νは、概ね断面二次モーメントIと線密度ρの比の平方根に比例する。即ち、固有振動数νは、以下の関係式により表される。
ν∝(I/ρ)0.5
また、振動体101で曲げが生じる部位の厚さをt’とすると、断面二次モーメントIは厚さt’の3乗に比例し、線密度ρは、厚さt’の1乗に比例する。よって、上記固有振動数νは、
ν∝t’
と表される。
振動体101の厚さが不均一である場合でも、各溝の位置での振動体101の厚さを上記関係に適用することによって、固有振動数の分布を算出することができる。この場合の固有振動数は、各溝の位置での振動体101の厚さで、振動体101をそれぞれ製作した場合の固有振動数を表している。曲げ振動が定在波として発生したときに、振動変位が極大値となる腹の位置、および、その付近の剛性と密度は固有振動数に大きく影響を与え、節の位置、および、その付近の剛性と密度は固有振動数へあまり影響を与えない。
そこで、上記振動体101の各位置における固有振動数の分布を、励起する曲げ振動の次数に応じた振動変位の極大値となる位置の分布と比較することによって、各次数の曲げ振動に応じて分布された振動体101の位置における固有振動数の差を表すことができる。
すなわち、振動体101の各位置の曲げ振動の固有振動数の分布を算出し、さらに次数との比較を明確に表すために、振動子101の1周を単位長さとした空間周波数分布として表せばよい。
図19は図18の振動体101の角度位置に対する固有振動数の変化を示す図である。図20は図19の固有振動数の変化を、振動体の周長を単位長さとした空間周波数で表した図である。
図20から分かるように、固有振動数νの変化は、主に6サイクル/周で発生する。この空間周波数成分をみることによって、1周に6つの振動の腹を持つ3次の曲げ振動波をその発生位置によって固有振動数を異ならせることができる。そのため、複数の3次の曲げ振動波が合成されても、互いの固有振動数が異なるために不要振動波である進行性振動波とはならず、その発生が抑制されることがわかる。
また、同様に、図20から固有振動数νの変化は、振動体101の曲げ剛性が小さい部位の数の整数倍である高次(6、12、18、…)の空間周波数成分を有しているが、14サイクル/周で発生しないので、駆動振動波である7次の曲げ振動波の固有振動数に影響を与えることはない。
ここで、上述した従来の不要振動波の発生を抑制するための構成において、6次の曲げ振動波を進行性振動波とし、不要振動波となる曲げ3次の曲げ振動波からなる進行性振動波の発生を抑制する場合を考える。この場合、図20に示すように、振動体101の固有振動数νの変化が6サイクル/周で発生するので、6次の曲げ振動波にとってもその発生位置によって固有振動数に差が生じ、6次の曲げ振動波が駆動振動波として進行性振動波となることが妨げられることになる。その結果、発生する振動波の振幅にむらが生じて駆動効率が低下し、ひいては駆動振動波となる6次の曲げ振動波を励起させることができない場合がある。
そこで、以下に示す各実施の形態にて、駆動振動波に影響を与えることなく不要振動波を抑制するための構成について詳細な説明を行う。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る振動波駆動装置がオートフォーカス用駆動モータとして用いられているレンズ鏡筒の主要部の構成を示す縦断面図である。図2は図1の振動波駆動装置の主要部の分解斜視図である。図3は図2の圧電素子2の表、裏面のそれぞれに形成されている電極を示す図である。図4は図2の振動体1に形成されている複数の溝の配置を示す展開図である。図5は図2の振動体1の固有振動数の変化を示す図である。図6は図1の振動体1の空間周波数に対する固有振動数νの変化の大きさを示す図である。本実施の形態においては、振動波駆動装置として、レンズ鏡筒のフォーカスレンズを駆動するための振動波モータを説明する。
オートフォーカス機能を有するレンズ鏡筒は、図1(a)に示すように、カメラマウント19に固定されている外筒12を備える。外筒12内には、固定筒11、固定内筒18および移動環17が配置されている。移動環17は、フォーカスレンズ27を保持する。移動環17には、連結ころ15と係合するキー溝(図示せず)が設けられている。また、移動環17には、ねじ部17aが設けられ、このねじ部17aは、固定内筒18のねじ部18aとヘイリコイド結合する。
上記移動環17は、振動波モータMにより回転駆動される出力伝達体25を介して、光軸Lを中心に回転しながら光軸Lに沿った方向へ移動される。詳細には、振動波モータMは、図1(b)に示すように、リング形状の振動体1、振動体1の一方の端面に接着されている圧電素子2、および環状のロータ(移動子)3を有する。振動体1および圧電素子2は、互いに共働して振動子を構成する。上記ロータ3は、振動体1の他方の端面に加圧接触されている。圧電素子2には、所定の位相を有する駆動信号が印加され、これにより振動体1には所定次数の曲げ振動波が駆動振動波(進行性振動波)として励起される。この駆動振動波により、上記ロータ3は、光軸Lを中心として回転駆動される。
上記振動子は、図1(a)に示すように、絶縁体4を保持する台8と固定筒18との間に重ね合わされて挿入されている1対の皿ばね9により、圧電素子2側から押圧されている。
上記ロータ3は、振動吸収体5を介して円環状の連結板22に当接、保持される。連結板22は、出力伝達体25と固定され、出力伝達体25は、ボール10および外筒12に固定されているボールレース13,14により、光軸Lを中心に回転可能に支持されている。この出力伝達体25の先端には、上記連結ころ15が取り付けられている。
振動波モータMは、カメラ側から送出されるAF(焦点調節)信号またはマニュアルリング16の操作に連動して発生される信号に基づいて駆動され、この振動波モータMの駆動により、出力伝達体25は、光軸Lを中心に回転駆動される。そして、この出力伝達体25の回転駆動に連動して、移動環17は、光軸Lを中心に回転しながら光軸Lに沿った方向へ移動される。すなわち、フォーカスレンズ27が光軸Lに沿った方向へ移動され、焦点合わせが行われる。
次に、振動波モータMの振動子を構成する振動体1および圧電素子2について詳細に説明する。
振動体1は、図2に示すように、アルミニウム、真鍮、あるいは、ステンレスなどの金属からなるリング状部材からなる。振動体1の一方の端面(上面)には、内部から外部に向けて放射状に伸びる複数の溝1aが形成されている。各溝1aは、振動体1の周方向に沿って配置されている。ここで、各溝1aの深さをtaとすると、後述するように、各溝1aは、それぞれの深さtaが正弦波曲線に沿って変化するように形成されている。
振動体1における溝1a間の部位は、ロータ3と加圧接触する突起1bを構成する。また、溝1aがそれぞれ形成されている部位1cは、主に曲げ変形(曲げ振動)が生じる部位を構成し、当該部位1cは、振動体1に生じた曲げ振動波による周方向の変位を拡大する効果を発揮する。ここで、リング状の振動体1、圧電素子2、および、ロータ3のそれぞれの中心を通る直線を軸とする。上記部位1cの厚さ(振動体1の軸方向の長さ)をtc、振動体1の軸方向の厚さをtとすると、厚さtcは、
tc=t−ta
の関係式を満足する(図4を参照)。
圧電素子2は、リング形状を有し、その一方の端面(裏面)2bが振動体1の他方の端面(下面)に対向するように振動体1と接着されている。圧電素子2の裏面2bには、図3(b)に示すように、全面に亘るように共通電極22が形成されている。また、圧電素子2の他方の端面(表面)2aには、図3(a)に示すように、複数の電極領域に分割された駆動電極21が形成されている。駆動電極21は、A相、B相の2群で構成され、それぞれの電極領域は、図示するように、(+)、(−)の極性に分極処理されている。A相、B相の各群においては、隣り合う(+)、(−)の電極が1波長分の加振を担うように、それぞれ、π/6(rad)の角度範囲の領域に設けられている。即ち、(+)、(−)の各電極は、A相、B相のそれぞれにおいて6次の曲げ振動の定在波(6波長を有する曲げ振動の定在波)を加振するパターンに形成されている。A相、B相の各群には、時間位相差がπ/2(rad)の交番電圧が印加される。これにより、振動体1には、A相とB相の6時の曲げ振動の定在波が合成され、ロータ3を駆動するための6次の曲げ振動からなる進行性振動波である駆動振動波が励起される。
上記振動体1に形成されている各溝1aは、図4に示すように、リング状の振動体1の周方向に沿って、深さtaが正弦波曲線に沿って変化するようにそれぞれ形成されている。溝1aが形成されている部位1cのそれぞれの厚さtcは、進行性振動波の進行方向と直交する方向の厚さであるから、進行性振動波の進行方向に対して、正弦波曲線に沿って変化することになる。具体的には、振動体1の部位1cの厚さtcは、以下の式により表される。
tc=t0+Δt・sin(2nθ)
ここで、t0は厚さtcの最大値と最小値の中心となる厚さ、Δtは厚さの変動振幅、nは曲げ振動波の次数、θは振動体1の外周上の位置を表す角度(rad)である。
各部位1cの曲げ剛性Kは、厚さtcの3乗に比例するので、以下のように表すことができる。
K∝(t0+Δt・sin(2nθ))
また、線密度ρは、以下のように表すことができる。
ρ∝t0+Δt・sin(2nθ)
また、各部位1cでの曲げ振動の固有振動数νは、以下のように表すことができる。
ν∝(K/ρ)0.5
ν∝t0+Δt・sin(2nθ)
即ち、振動体1の曲げ振動波に対する固有振動数νは、図5に示すように、各部位1cの厚さtcが振動体1の1周当り6周期分の1つの正弦波曲線に沿って変化するのと同様に、振動体1の1周当り6周期分の1つの正弦波曲線に沿って変化する。
上記固有振動数νの変化を、フーリエ変換により、振動体1の1周を1サイクルとする空間周波数を変数とする関数として表すと、図6に示すように、固有振動数νの変化が、6サイクル/周のみで発生していることがわかる。一方、3波長を有する3次の曲げ振動波は、振動体1の外周上の6箇所の位置で振動変位の極大値を示すから、発生する位置によって固有振動数の差が生じるため、進行性振動波として励起されない。即ち、不要振動波である3次の曲げ振動波は、発生し難くなる。
駆動振動波である6次の曲げ振動波は、振動体1の外周上の12箇所の位置でその振動変位が極大値を示す。また、図6に示すように、振動体1の固有振動数νの変化は、6サイクル/周のみで発生し、その変化には、12サイクル/周の空間周波数成分が含まれない。よって、6次の曲げ振動波は、振動体1の角度位置(外周上の位置)のそれぞれにおける固有振動数の変化の影響を受けない。そのため、6次の曲げ振動波を駆動振動波とする場合でも、不要振動波である3次の曲げ振動波の発生を低減することが可能である。
このように、振動体1の部位1cの厚さtcが1つの正弦波曲線に沿って変化するので、駆動振動波の次数と不要振動波の次数の関係に拘わらず、駆動振動波の発生に大きな影響を及ぼすことなく、不要振動波の発生を抑制することができる。また、振動波モータの設計自由度を大きくすることが可能となる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図7〜図12を参照しながら説明する。図7は本発明の第2の実施の形態に係る振動波駆動装置に設けられている振動体の展開図である。図8は本発明の第2の実施の形態における振動体の溝1aが形成された部位1cの厚さtcの変化を示す図である。図9は本発明の第2の実施の形態における振動体の角度位置に対する固有振動数の変化を示す図である。図10は本発明の第2の実施の形態における振動体の固有振動数の変化の大きさを空間周波数で示す図である。図11は6周期分と8周期分の正弦波曲線を最大値または最小値同士の位置のいずれかが重なるように線形的に加算した場合の溝1aが形成された部位1cの厚さtcの変化を示す図である。図12は6周期分と8周期分の正弦波曲線を最大値または最小値同士の位置が重ならないように加算した場合と重なるように加算した場合の溝1aが形成された部位1cの厚さtcの変化を示す図である。本実施の形態においては、上記第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明を行う。
本実施の形態は、不要振動波である3次および4次の曲げ振動波の発生を抑制するために、振動体1における溝1aが形成された部位1cの厚さtcを、異なる周期(波長)の正弦波曲線を線形的に加算した曲線に沿って変化させる。この点で、本実施の形態は、上記第1の実施の形態と異なる。
具体的には、図7に示すように、溝1aが形成された部位1cは、その厚さtcが、振動体1の1周当り、6周期分の正弦波曲線と8周期分の正弦波曲線を線形的に加算した曲線に沿って変化するように形成される。ここで、6周期分の正弦波曲線と8周期分の正弦波曲線は、それぞれの最大値または最小値を示す位置が重ならないように、線形的に加算される。即ち、図8に示すように、溝1aが形成された部位1cの厚さtcは、6周期分の正弦波曲線により規定される厚さと8周期分の正弦波曲線により規定される厚さを加算したものになる。
上記部位1cの厚さtcを異なる周期の正弦波曲線を線形的に加算した曲線に沿って変化させた場合の振動子1の固有振動数νは、振動体1の角度位置に対して、図9に示すように変化する。この固有振動数νの変化は、図10に示すように、フーリエ変換により、振動体1の1周を1サイクルとする空間周波数の関数として表すことができる。図10から、固有振動数νの変化は、部位1cの厚さtcを規定するための異なる周期の正弦波曲線のそれぞれに応じた空間周波数成分を有することが分かる。
このように、厚さtcが異なる周期の正弦波曲線を線形的に加算した曲線に沿って変化する部位1cを形成することにより、不要振動波となる次数の曲げ振動波の発生を同時に抑制することができる。従って、不要振動波となる曲げ振動波の発生を同時に抑制するためには、加算すべき周期が異なる複数の正弦波曲線を選択すればよく、振動体1の設計を容易にすることができる。
ここで、図11に示すように、異なる周期(6周期と8周期)の2つの正弦波曲線を、それぞれの最大値または最小値を示す位置のいずれかが重なるように線形的に加算する場合を想定する。ここで、図12に示すように、異なる周期(6周期と8周期)の2つの正弦波曲線を最大値または最小値同士の位置が重ならないように線形的に加算した場合(図8の場合)の厚さtcの変化は、曲線P1により表わされる。また、上記2つの正弦波曲線を最大値または最小値同士の位置が重なるように線形的に加算した場合(図11の場合)の厚さtcの変化は、曲線P2により表わされる。曲線P2は、曲線P1に対して、溝1aが形成された部位1cの厚さtcの変化幅が大きくなることを示す。これは、固有振動数νの変化の幅が大きくなることを示す。この固有振動数νの変化の幅が局所的に大きくなるということは、駆動振動波である次数mの曲げ振動波の伝播速度および波長に与える影響が大きくなることを示す。
従って、本実施の形態のように、異なる周期(6周期と8周期)の正弦波曲線を最大値または最小値同士の位置が重ならないように線形的に加算することが、より望ましい。この構成により、駆動振動波となる曲げ振動波の励起に対する悪影響を少なくすることが可能になる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について図13〜図15を参照しながら説明する。図13は本発明の第3の実施の形態に係る振動波駆動装置に設けられている振動体の展開図である。図14は本発明の第3の実施の形態における振動体の角度位置に対する固有振動数の変化を示す図である。図15は図14の固有振動数の変化の大きさを空間周波数で示す図である。本実施の形態においては、上記第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明を行う。
本実施の形態では、振動体1が、7次の曲げ振動からなる駆動振動波を励起するものとする。本実施の形態は、固有振動数νの変化が駆動振動の次数の2倍の空間周波数成分のみを含まないように、溝1aが形成された部位1cの厚さtcを変化させる点で、上記第1および第2の実施の形態と異なる。
具体的には、図13に示すように、振動体1は、溝1aが形成された部位1cの厚さtcが、対応する次数の倍の周期を有する複数の正弦波曲線を線形的に加算した曲線に沿って変化するように構成されている。ここで、上記曲線は、振動体1の単位波長当たりの固有振動数νの変化が、駆動振動波の次数の2倍の空間周波数成分を含まず、かつ溝1aの数の半数以下の偶数の空間周波数成分を含むように規定される。
このように構成することによって、振動体1の周方向における単位波長当たりの固有振動数の変化は、図15に示すように、駆動次数の2倍の空間周波数成分を含まない変化になる。その結果、駆動振動波となる曲げ振動波の次数以外の全ての次数の曲げ振動波の自励発振を防止することが可能である。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について図16および図17を参照しながら説明する。図16は本発明の第4の実施の形態に係る振動波駆動装置の主要部構成を示す縦断面図である。図17は図16の振動体の側面図である。
上記第1〜第3の実施の形態は、振動体1に複数の溝1aを形成し、それぞれの溝1aの厚さtaを1または複数の正弦波曲線により規定される曲線に沿って変えることにより、溝1aがそれぞれされた部位1cの厚さtcを変化させる構成を採用している。
これに対し、本実施の形態は、図16に示すように、リング状に形成された弾性部材からなる基部31とリング状に形成された突起部32を接合した振動体1を用いる。
基部31は、図17に示すように、端面31aおよび端面31bを有する。端面31aは、1または複数の正弦波曲線により規定される曲線に沿う曲面に仕上げられている。これにより、基部31の軸方向の厚さは、基部31の周方向に対して、1または複数の正弦波曲線により規定される曲線に沿って変化する。端面31bは、平面に仕上げられており、端面31bには、圧電素子2が接着されている。
振動体1の基部31を製作する方法としては、粉体焼結、MIMなどによる型成形、リング形状部材の一方の端面をプレスによって対応する曲面に加工した後、裏面を平面研削するような塑性加工による方法がある。
突起部32は、薄板の絞り加工によって、コ字状の断面形状を有するリング状に形成されたものである。突起部32には、複数の溝32aが設けられており、各溝32aの厚さ(深さ)は、同じ厚さtdである。突起部32の溝間には、それぞれ、移動子(ロータ)と加圧接触される複数の突起32bが形成される。突起部32は、その開口部が基部31の端面31a側から嵌め込まれ、基部31と固着されている。
ここで、基部31の軸方向の厚さが例えば第1の実施の形態と同様に、基部31の周方向に対して、6周期分の1つの正弦波曲線に沿って変化するとする。この場合、基部31(振動体1)の固有振動数νの変化は、6サイクル/周の空間周波数成分のみで発生する。よって、上記第1の実施の形態と同様に、3波長を有する3次の曲げ振動波は、振動体1の外周上の6箇所の位置で振動変位の極大値を示すから、発生する位置によって固有振動数の差が生ずるため、進行性振動波として励起されない。即ち、不要振動波である3次の曲げ振動波は、発生し難くなる。
また、固有振動数νの変化は、6サイクル/周のみで発生し、その変化には、12サイクル/周の空間周波数成分が含まれない。よって、6次の曲げ振動波は、振動体1の角度位置(外周上の位置)のそれぞれにおける固有振動数の変化の影響を受けない。そのため、6次の曲げ振動波を駆動振動波とする場合でも、不要振動波である3次の曲げ振動波の発生を抑制することが可能である。
また、基部31の軸方向の厚さを上記第2または第3の実施の形態のように変化させるようにしてもよい。この場合も、上記第2または第3の実施の形態と同様の効果が得られる。
上記第1〜第3の実施の形態においては、リング形状の振動体が用いられているが、これに代えて、円板形状の振動体を用いることも可能である。この場合の振動体は、一方の面に移動子(ロータ)と接触するリング状の突起部が形成されている円板状部材からなる。この突起部は、例えば上記第1の実施の形態と同様に構成される(図2参照)。即ち、突起部には、周方向に沿って配列されている複数の溝が形成されており、溝が形成されている部位のそれぞれの厚さが1または複数の正弦波曲線により規定される曲線に沿って変化する。
また、上記第1〜第4の実施の形態においては、振動波駆動装置として、レンズ鏡筒に用いられる振動波モータを説明したが、この振動波モータをレンズ鏡筒以外の他の装置または機器の駆動源として適用可能なことはいうまでもない。
本発明の第1の実施形態に係る振動波駆動装置がオートフォーカス用駆動モータとして用いられているレンズ鏡筒の主要部の構成を示す縦断面図である。 図1の振動波駆動装置の主要部の分解斜視図である。 図2の圧電素子2の表、裏面のそれぞれに形成されている電極を示す図である。 図2の振動体1に形成されている複数の溝の配置を示す展開図である。 図2の振動体1の固有振動数の分布を示す図である。 図1の振動体1の空間周波数に対する固有振動数νの変動の大きさを示す図である。 本発明の第2の実施の形態に係る振動波駆動装置に設けられている振動体の展開図である。 本発明の第2の実施の形態における振動体の溝1aが形成された部位1cの厚さtcの変化を示す図である。 本発明の第2の実施の形態における振動体の角度位置に対する固有振動数の変化状態を示す図である。 本発明の第2の実施の形態における空間周波数で固有振動数の変化の大きさを示す図である。 6周期分と8周期分の正弦波曲線を最大値または最小値同士の位置のいずれかが重なるように線形的に加算した場合の溝1aが形成された部位1cの厚さtcの変化を示す図である。 6周期分と8周期分の正弦波曲線を最大値または最小値同士の位置が重ならないように加算した場合と重なるように加算した場合の溝1aが形成された部位1cの厚さtcの変化を示す図である。 本発明の第3の実施の形態に係る振動波駆動装置に設けられている振動体の展開図である。 本発明の第3の実施の形態における振動体の角度位置に対する固有振動数の変動状態を示す図である。 空間周波数に対する固有振動数の変動の大きさを示す図である。 本発明の第4の実施の形態に係る振動波駆動装置の主要部構成を示す縦断面図である。 図16の振動体の側面図である。 従来の振動波モータの主要部の分解斜視図である。 図18の振動体の角度位置に対する固有振動数の変化を示す図である。 図19の固有振動数の変化を、振動体の周長を単位長さとした空間周波数で表した図である。
符号の説明
1 振動体
1a,32a 溝
1b,32b 突起
1c 部位
2 圧電素子
3 ロータ(移動子)
31 基部
31a,31b 端面
M 振動波モータ

Claims (8)

  1. 振動体および該振動体に予め設定された次数の曲げ振動波を駆動振動波として励起させる電気機械エネルギ変換素子を有する振動子と、
    前記振動子の前記振動体に接触し、該振動体に励起された駆動振動波によって駆動される移動子とを備え、
    前記振動体は、曲げ振動が生じる部位の厚さが前記駆動振動波の進行方向に対して、少なくとも1つの正弦波により規定される曲線に沿って変化するように構成されていることを特徴とする振動波駆動装置。
  2. 前記振動体は、リング状部材からなり、該振動体には、周方向に沿って配列されている複数の溝が形成されており、前記溝間の部位のそれぞれが、前記移動子と接触する突起を成し、前記複数の溝の深さに変化をつけることで、前記曲げ振動が生じる部位のそれぞれの厚さが前記駆動振動波の進行方向に対して、前記少なくとも1つの正弦波により規定される曲線に沿って変化することを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置。
  3. 前記振動体は、一方の面に前記移動子と接触するリング状の突起部が形成されている円板状部材からなり、前記突起部には、周方向に沿って配列されている複数の溝が形成されており、前記複数の溝の深さに変化をつけることで、前記曲げ振動が生じる部位のそれぞれの厚さが前記駆動振動波の進行方向に対して、前記少なくとも1つの正弦波により規定される曲線に沿って変化することを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置。
  4. 前記振動体は、前記電気機械エネルギ変換素子により予め設定された次数の曲げ振動が駆動振動波として励起される基部と、前記移動子と接触するように前記基部に固着されている突起部とを有し、前記基部の厚さが前記駆動振動波の進行方向に対して、前記少なくとも1つの正弦波により規定される曲線に沿って変化することを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置。
  5. 前記少なくとも1つの正弦波により規定される曲線は、波長が異なる複数の正弦波を線形的に加算した曲線であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の振動波駆動装置。
  6. 前記波長が異なる複数の正弦波は、最大値および最小値同士が一致しないように線形的に加算されることを特徴とする請求項5に記載の振動波駆動装置。
  7. 前記駆動振動波の進行方向に対する前記曲げ振動が生じる部位の厚さの変化は、前記曲げ振動波の前記予め設定された次数の空間周波数成分を含まない変化であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の振動波駆動装置。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1つに記載の振動波駆動装置を駆動源として用いることを特徴とする装置。
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