JP2009162916A - 電子写真感光体、電子写真カートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、電子写真カートリッジ、及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】単層型の感光層を有し、感光体サイクル後、導電性支持体側に電子が留まること等がなく、繰り返し画像形成に用いた際の初期電位の低下が少ない、電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に電荷発生物質及び電荷輸送物質を同一層内に含有する感光層を有する電子写真感光体において、該感光層を膜厚5μmで形成した場合の、該感光層の780nmの波長の光に対する透過率を20%以下とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真感光体に関するものである。さらに詳しくは、少なくとも電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有する単層型の感光層を有する電子写真感光体、及び前記電子写真感光体を備えた電子写真カートリッジ、並びに画像形成装置に係るものである。
近年、有機系の光導電性物質を電子写真感光体の感光層に用いる研究が進み、そのいくつかが実用化された。有機系の光導電性物質は無機系の光導電性物質に比し、軽量である、成膜が容易である、感光体の製造が容易である、種類によっては透明な感光体を製造できる、材料が無公害である等の多くの利点を有する。
特に、電荷キャリヤーの発生や移動といった機能を別々の有機系の光導電性物質に分担させた電子写真感光体(いわゆる機能分離型の電子写真感光体)が高感度化に有効であることから、近年開発の主流となっている。このような機能分離型の電子写真感光体の感光層には、いくつかの層構成が考案されている。中でも、電荷発生層と電荷輸送層とを積層し、電荷発生と電荷輸送の機能を分離した、いわゆる積層型感光層、及び電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一の層に含有した、いわゆる単層型感光層(例えば特許文献1〜5参照)が、一般に用いられている。
このような電子写真感光体を用いた画像形成装置における画像の記録方法の一例について、図1を用いて説明する。電子写真感光体1は、所定の軸(図示せず)を中心に、所定の周速度をもって回転駆動する。電子写真感光体1は、その回転過程において、帯電手段2によりその表面(感光層)が正又は負の所定の電位(例えば−600V)に帯電される。次いで像露光手段3から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された露光光を受ける。これにより、電子写真感光体1の表面(感光層)に、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されることとなる。
形成された静電潜像は、次いで現像手段4内のトナーで正規現像又は反転現像により可転写粒子像(トナー像)として顕画化される。具体的には、現像手段4が、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、電子写真感光体1の表面に接触させる。現像ローラ44に担持された帯電トナーTが電子写真感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が電子写真感光体1の感光面に形成される。
その後、給紙部Pから電子写真感光体1と転写手段5との間に電子写真感光体1の回転と同期して給送された被転写体(記録紙)Pに、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が転写手段5により順次転写されていく。この時、転写手段にはバイアス電源(図示せず)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。
トナー画像の転写を受けた被転写体(記録紙)Pは、電子写真感光体1面から分離されて定着手段7へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段6によって転写残りトナー等の付着物の除去を受けて清浄面化される。近年、クリーナレスシステムも研究され、転写残りトナーを直接、現像器等で回収する構成等とされる場合もある。
特開昭61−77054号公報 特開昭61−188543号公報 特開平2−228670号公報 特公平7−97223号公報 特公平7−97225号公報
従来、上記電子写真感光体に用いられる単層型感光層において、上記静電潜像の形成には、感光層表面に存在する電荷発生物質や電荷輸送物質のみが寄与していると考えられていた。これは、単層型感光層が露光光を吸収する電荷発生物質を含有している上、電荷発生物質を含有する層が通常5μm〜50μm程度の膜厚で形成されているため、露光光が層内で弱められ、感光層の深部、すなわち導電性支持体近傍まで届かないと考えられていたことに依る。しかしながら、本発明者らが検討を行なったところ、感光層深部の電荷発生物質についても、上記露光光により励起されており、発生した電子が感光層深部に留まりやすいことが確認された。上記感光層深部に留まった電子は、トナー転写後、次なる画像形成のための帯電、露光、現像の際に影響を及ぼす場合があった。すなわち、電子写真感光体の帯電、露光、現像、及び転写という工程(以下、適宜「感光体サイクル」という。)を繰り返し行った場合、1周以上前の感光体サイクルにおける像が画像に現れてしまうことがあった。また、繰り返し画像形成を行なった場合、感光体サイクルの最初に帯電させたときの感光体表面の電位(以下、適宜「初期電位」という。)が、上記電子により低下してしまう場合もあった。
そこで、本発明は、単層型の感光層を有し、感光体サイクル後、感光層深部に電子が留まること等がなく、繰り返し画像形成に用いた際の初期電位の低下が少ない、電子写真感光体を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記の目的を満足し得る電子写真感光体について鋭意研究したところ、感光層の光の透過率を低いものとすることにより、感光体サイクル後、感光層深部に電子が留まることがないものとすることができ、繰り返し画像形成に用いた際の初期電位の低下が少ないことを見出し、本発明に至った。
本発明の要旨は、導電性支持体上に電荷発生物質及び電荷輸送物質を同一層内に含有する感光層を有する電子写真感光体において、該感光層を膜厚5μmで形成した場合の、該感光層の780nmの波長の光に対する透過率が、20%以下であることを特徴とする電子写真感光体に存する(請求項1)。
またこの際、該感光層が、該感光層の露光に用いられる露光光の波長の、二分の一以上の体積平均粒子径を有する粒子を含有することが好ましく(請求項2)、さらに該粒子が有機化合物粒子であることが好ましい(請求項3)。
また、本発明の別の要旨は、上述したいずれかの電子写真感光体を備えることを特徴とする電子写真カートリッジに存する(請求項4)。
またさらに本発明の別の要旨は、上述したいずれかの電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置に存する(請求項5)。
本発明によれば、感光体サイクル後、感光層深部に電子が留まりにくく、繰り返し画像形成に用いた場合であっても、初期電位の低下が少なく、高品質な画像形成が可能な電子写真感光体を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
A.電子写真感光体
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に電荷発生物質及び電荷輸送物質を同一層内に含有する感光層を有する、所謂単層型の感光層を有するものであって、該感光層を膜厚5μmで形成した場合の、該感光層の780nmの波長の光に対する透過率が、20%以下であることを特徴としている。
本発明によれば、上記感光層の光の透過率が所定の値以下とされていることから、電子写真感光体を感光させるために用いられる露光光の透過率を低いものとすることができる。これにより、感光層の深部まで露光光が到達しないものとすることができ、感光層深部に存在する電荷発生物質が励起され難くすることができる。したがって、感光体サイクル後、感光層内に余分な電子が留まること等がないものとすることができ、電子写真感光体を繰り返し画像形成に用いた場合であっても、1感光体サイクル以上前の像が画像に現れてしまうこと等がないものとすることができる。また、感光体サイクル後、電子が感光層中に留まらないことから、電子写真感光体を繰り返し画像形成に用いた際の初期電圧の低下を少ないものとすることができ、目的とするパターン状に高精細に画像形成を行なうことが可能な電子写真感光体とすることができる。
以下、本発明の電子写真感光体を構成する各部材について説明する。
1.感光層
本発明の電子写真感光体に用いられる感光層について、以下詳しく説明する。
[物性]
本発明に係る感光層は、感光層を膜厚5μmで形成した場合の、該感光層の780nmの波長の光に対する透過率が、20%以下である。これにより、感光層を露光した際に、感光層深部まで露光光が到達しにくいものとすることができ、感光層の導電性支持体側に存在する電荷発生物質が励起され難いものとすることができる。したがって、感光体サイクル後、感光層深部に電子が留まってしまうこと等がないものとすることができる。またこの透過率は、より低くすることにより導電性支持体側に存在する電荷発生物質が励起され難いものとすることができるため、18%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下であって、さらに好ましくは12%以下、特に好ましくは8%以下である。
なお、上記透過率の測定方法は、測定波長に対して透明な測定用基板(例えばガラス基板等)上に、感光層を形成する際と同様の材料及び方法を用いて、5μmの膜厚の感光層を形成し、この感光層を分光光度計により測定する方法とすることができる。
また、本発明に係る電子写真感光体の感光層においては、膜厚が5μmであることに限定されず、任意の膜厚とすることができる。そこで、電子写真感光体に設ける感光層の膜厚が5μm以外の厚さの場合等には、透過率測定の際上記のように5μmの感光層を別途、測定用基板上に形成してもよいが、例えば電子写真感光体に実際に用いられる膜厚で感光層を形成し、該感光層の透過率を測定した後、下記方法により、該感光層の膜厚が5μmである場合の透過率を算出してもよい。この場合、算出された、膜厚が5μmである場合の透過率が本発明で規定する範囲、すなわち上記範囲にあれば、本発明の効果を得ることができ、本発明の範囲に含まれる。
原理は以下の通りである。
特定の単色光が通過して検出される場合に、光に対して垂直な厚さdLの薄い層を仮定する。
厚さdLの薄い層を通過後の光の強度の減少量−dIは、前記の層を通過する前の光の強度Iと、層の厚さdLとに比例すると考えられ、下記式(A)で表現することができる(kは定数)。
−dI=k・I・dL (A)
式(A)を変形すると次の様になる。
−dI/I=k・dL (B)
式(B)の両辺をそれぞれ、I0からIまで、0からLまでの区間で積分すると次の様な式が得られる。なお、I0は入射光の強度を表わす。
log(I0/I)=kL (C)
式(C)は、溶液系に於いてLambertの法則と呼ばれるものと同じであり、電子写真感光体の感光層として通常用いられる程度の膜厚においては適用可能であることから、本発明に於ける透過率の測定にも、適用することができる。
したがって、感光層の膜厚及び透過率(透過光の入射光に対する比率)が測定されれば、その透過率を膜厚5μmにおける値に変換することができる。
上記感光層の膜厚Lの値は、導電性支持体から感光層を一部剥離して厚さ測定装置で測定したり、導電性支持体の感光層非形成部分を基準にして粗さ計で測定したり、可干渉光を利用することにより測定するなど、任意の膜厚計測方法および装置で計測することができる。
なお、本発明に用いられる感光層は、上記波長の光以外の光の透過率は特に限定されないが、本発明の電子写真感光体を使用する際に用いる露光光の波長の光の透過率が、20%以下であることが好ましい。また、780nmの波長の光の透過率と同様に、露光光の透過率をより低くすることにより導電性支持体側に存在する電荷発生物質が励起され難いものとすることができるため、18%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下であって、更に好ましくは12%以下、特に好ましくは8%以下である。
また感光層の膜厚は、本発明の目的及び効果を損なわない限り、特に限定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下である。
[材料]
次に、感光層に用いられる材料を説明する。本発明に用いられる感光層は、電荷輸送物質及び電荷発生物質を含有する単一の層から成っていることが好ましいが、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものであって良い。後者の場合でも、感光層中の材料の働きから、単層型感光層という。この際、感光層を構成する層のうちの1以上の層において、電荷輸送物質及び電荷発生物質を同一層内に含有していれば良い。電荷輸送物質及び電荷発生物質を含む層としては、通常、電荷輸送物質が溶解または分散等されている層中に電荷発生物質を分散した層とすることができる。なお、本発明に用いられる感光層は、上述した透過率を実現するため、感光層中に所定の吸光度を有する粒子を含有することが好ましい。以下、上記感光層に用いられる材料について説明する。
(電荷発生物質)
感光層に用いる電荷発生物質としては、例えば、セレン及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料;フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料;などの各種光導電材料が使用できる。中でも、特に有機顔料が好ましく、更に、フタロシアニン顔料、アゾ顔料がより好ましい。
特に、電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物等の配位したフタロシアニン類などが使用される。3価以上の金属原子への配位子の例としては、上に示した酸素原子、塩素原子の他、水酸基、アルコキシ基などが挙げられる。中でも、特に感度の高いX型、τ型無金属フタロシアニン、A型、B型、D型等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が好適である。
なお、ここで挙げたチタニルフタロシアニンの結晶型のうち、A型、B型についてはW.HellerらによってそれぞれI相、II相として示されており(Zeit. Kristallogr.159(1982)173)、A型は安定型として知られているものである。D型は、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θ±0.2°が27.3°に明瞭なピークを示すことを特徴とする結晶型である。
またアゾ顔料を併用する場合には、各種公知のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を下記に示す。下記式において、Cp1ないしCp3は、カップラーを表す。
Figure 2009162916
カップラーCp1ないしCp3としては、好ましくは、以下構造を示す。
Figure 2009162916
また上記アゾ顔料として具体的には、以下化合物が好ましい。
Figure 2009162916
Figure 2009162916
また下記式(1)で表される化合物が特に好ましい。
Figure 2009162916
式(1)中R12は、総炭素数1〜20のアルキル基を表す。
Zは、
Figure 2009162916
または
Figure 2009162916
を表す。なお環Xは置換基を有していてもよい。
環Xの有していてもよい置換基としては、例えばフッ素原子、ヨウ素原子、塩素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などのアルコキシ基が挙げられる。これらのなかではフッ素原子、塩素原子、メチル基が好ましい。上記式(1)で表される化合物のうち、より好ましい構造としては、Xで示されるベンゼン環に置換基が存在しない、もしくは環Xが置換基としてメチル基を有する場合である。
式(1)において、−OR12基の結合位置は任意であるが、−CONH−基の結合する炭素原子に対して、メタ位に結合するのが好ましい。R12が表すアルキル基としては、アルキル基部分の炭素数が20以下、より好ましくは15以下のものである。また通常炭素数は1以上であり、好ましくは3以上である。アルキル基部分はその構造により直鎖、分岐、環状等の構造に分類することが出来るが、電子写真感光体の特性の面から分岐、環状構造を有することが好ましく、アルキル基内にシクロアルキル構造を有することがより好ましい。
また、電荷発生物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。さらに、電荷発生物質を2種以上併用する場合、併用する電荷発生物質、及び、その結晶状態における混合状態としては、それぞれの構成要素を後から混合して用いても良いし、合成、顔料化、結晶化等の電荷発生物質の製造・処理工程において混合状態を生じせしめて用いてもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。
この場合の電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが望ましい。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下である。
さらに、感光層内に分散される電荷発生物質の量は少なすぎると充分な感度が得られない可能性があり、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などが生じる場合がある。よって、感光層内の電荷発生物質の量は、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下とする。
(電荷輸送物質)
本発明の電子写真感光体における感光層には、電荷輸送物質として、任意の公知の電荷輸送物質を1種、または2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
電荷輸送物質としては特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物などの電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質などが挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。
電荷輸送物質の好適な構造の具体例を以下に示す。ただし、これら具体例は例示のために示したものであり、本発明の趣旨に反しない限り、本発明においてはいかなる公知の電荷輸送物質を用いてもよい。なお、Buはブチル基を表わし、t−Buは3級ブチル基を表わす。
Figure 2009162916
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Figure 2009162916
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(所定の粒子径を有する粒子)
本発明に係る感光層は、感光層を膜厚5μmで形成した場合の、該感光層の780nmの波長の光に対する透過率が、20%以下であることを特徴とする。感光層の透過率を特定の範囲内とする方法としては、例えば、光を吸収する材料を感光層内に分散または溶解したり、バインダー樹脂に特定波長の光を吸収する物を用いたり、光を散乱または反射する材料を感光層内に分散させる方法等が挙げられるが、本発明の目的及び効果を損なわない限り、これらに限定されるものではない。上記の中でも、化学的に安定で、感光層に含有させた場合でも感光層と相溶したり、電荷発生物質、電荷輸送物質、バインダー樹脂等の含有成分と反応を起こしたりしない粒子を含有させることが好ましい。
感光層に用いられるこのような粒子としては、透過率を調整しようとする光の波長の二分の一以上の大きさを有する粒子が好ましいため、780nmの波長の光の透過率を特定のものとするためには、体積平均粒子径が390nm以上であることが好ましい。また、同様に、体積平均粒子径が本発明の電子写真感光体を露光するための露光光の波長の二分の一以上であることが好ましい。本発明における体積平均粒子径とは、JIS Z8826:2005に準じて測定される光子相関法による粒子径解析結果を用いるものとする。本発明における体積平均粒子径の値は、JIS Z 8826:2005の規格を満たす方法であれば、どのような測定装置によって測定された数値であっても構わない。
なお、本発明における透過率の規定は、感光層の透過率を規定するものであるので、上記の測定上の体積平均粒子径が、透過率を調整しようとする光の波長の二分の一以下の粒子であっても、感光層内で凝集したりすることにより、見かけ上、光の波長の二分の一以上の粒子となる場合には、感光層の780nmの波長の光に対する透過率を20%以下とすることが可能となり、本発明の効果を発揮することがある。
また上記粒子としては、感光層内で安定に存在するために、有機化合物粒子であることが好ましい。有機化合物粒子の具体例としては、シリコーン粒子、フッ素樹脂粒子等が挙げられる。本発明においては、上記の中でもシリコーン粒子が特に好ましい。これにより、感光層を塗布法で形成する場合に、塗布液の安定性を高めることができる。
これらの粒子は、1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
上記粒子の含有量としては、感光層内に通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。また通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。これにより上記透過率を実現することが可能となる。
(バインダー樹脂)
次に、上記感光層に用いるバインダー樹脂について説明する。上記感光層に用いるバインダー樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体またはその共重合体;ブタジエン樹脂;スチレン樹脂;酢酸ビニル樹脂;塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂;メタクリル酸エステル樹脂;ビニルアルコール樹脂;エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体;ポリビニルブチラール樹脂;ポリビニルホルマール樹脂;部分変性ポリビニルアセタール樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリアミド樹脂;ポリウレタン樹脂;セルロースエステル樹脂;シリコーン−アルキッド樹脂;ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;フェノキシ樹脂;エポキシ樹脂;シリコーン樹脂;及びこれらの部分的架橋硬化物が挙げられる。また上記樹脂は珪素試薬等で修飾されていてもよい。またこれらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
また特にバインダー樹脂として、界面重合で得られた1種、または2種類以上のポリマーを含有することが好ましい。界面重合とは、互いに混ざり合わない2つ以上の溶媒(多くは、有機溶媒−水系)の界面で進行される重縮合反応を利用する重合法である。例えば、ジカルボン酸塩化物を有機溶媒に、グリコール成分をアルカリ水等に溶かして、常温で両液を混合させて2相にわけ、その界面で重縮合反応を進ませて、ポリマーを生成させる。他の2成分の例としては、ホスゲンとグリコール水溶液等が挙げられる。また、ポリカーボネートオリゴマーを界面重合で縮合する場合のように、2成分をそれぞれ、2相に分けるのではなく、界面を重合の場として、利用する場合もある。
上記界面重合における反応溶媒としては、有機相と水相との二層を使用するのが好ましく、有機相としてはメチレンクロライドが好ましく、水相としてはアルカリ性水溶液が好ましく用いられる。また上記反応時に、触媒を使用することが好ましく、反応で使用する縮合触媒の量は、例えばグリコールを反応させる場合、ジオールに対して通常0.005mol%以上、好ましくは0.03mol%以上である。また通常0.1mol%以下、好ましくは0.08mol%以下である。上記範囲を超えると、重縮合後の洗浄工程で触媒の抽出除去に多大の労力を要する場合がある。
また上記界面重合における反応温度は、通常80℃以下、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下であり、下限は通常10℃以上である。反応温度が高すぎると、副反応の制御ができない場合がある。一方、低いと、反応制御上は好ましい状況ではあるが、冷凍負荷が増大して、その分コストアップとなる場合がある。また反応時間は反応温度や目的とする組成物の種類等によっても左右されるが、通常0.5分以上、好ましくは1分以上であり、通常30時間以内、好ましくは15時間以内である。
また、有機相中の反応成分の濃度は、得られる組成物が可溶な範囲であればよく、具体的には、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上である。また通常40重量%以下、好ましくは35重量%以下である。有機相の割合は水相に対して通常0.2以上の容積比であり、また通常1.0以下の容積比であることが好ましい。また、重縮合によって得られる有機相中の生成樹脂の濃度が5重量%以上、30重量%以下となるように溶媒の量が調整されることが好ましい。しかる後、新たに水及びアルカリ金属水酸化物を含む水相を加え、界面重縮合法に従い、初期の重縮合を完結させる。この際、重縮合条件を整えるために縮合触媒を含有させることが好ましい。上記重縮合時の有機相と水相との割合は容積比で有機相を1とした際に水相が0.2以上、1以下であることが好ましい。
上記界面重合により得られるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、特にポリカーボネート樹脂、またはポリアリレート樹脂が好ましい。また特に芳香族ジオールを原料とするポリマーであることが好ましく、好ましい芳香族ジオール化合物としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2009162916
(上記式(2)中、Xa
Figure 2009162916
または単結合を示し、R1及びR2は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、またはハロゲン化アルキル基を示し、Zは4〜20の置換または非置換の炭素環を示し、Y1ないしY8は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または、ハロゲン化アルキル基を示す。)
またさらに、下記構造式を有するビスフェノール、またはビフェノール成分が含有されるポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が電子写真感光体の感度及び残留電位の点から好ましく、中でも移動度の面からポリカーボネート樹脂がより好ましい。
上記ポリカーボネート樹脂に好適に用いる事の出来るビスフェノール及びビフェノールの構造を以下に例示する。本例示は、趣旨を明確にするために行うものであり、本発明の趣旨に反しない限り、例示される構造に限定されるものではない。
Figure 2009162916
Figure 2009162916
また特に、本発明の効果を最大限に発揮するためには、下記構造を示すビスフェノール誘導体を含有するポリカーボネートが好ましい。
Figure 2009162916
また、機械特性向上のためには、ポリエステル、特にポリアリレートを使用することが好ましく、この場合は、ビスフェノール成分として下記構造を有するものを用いることが好ましい。
Figure 2009162916
また酸成分としては、下記構造を有するものを用いることが好ましい。
Figure 2009162916
また、テレフタル酸とイソフタル酸を使用する際は、テレフタル酸のモル比が多い方が好ましく、特に下記構造を有するものを用いることが好ましい。
Figure 2009162916
ここで、上記バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100重量部に対して通常電荷輸送物質が20重量部以上であり、残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、さらに繰り返し使用時の安定性、電荷移動度の観点から、40重量部以上がより好ましい。一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は200重量部以下、電荷輸送物質とバインダー樹脂との相溶性の観点からは好ましくは120重量部以下、さらに繰り返し価像形成時の耐久性の観点からは110重量部以下がより好ましく、感光層の耐傷性の観点からは100重量部以下がとりわけ好ましい。電荷輸送物質の量は少なすぎると電気特性が低下する傾向があり、多すぎると塗布膜が脆くなり耐摩耗性が低下する傾向がある。
なお、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、さらに上述した電荷発生物質、すなわちフタロシアニン化合物及び/またはその他の電荷発生物質が分散される。その際、電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが好ましく、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下である。感光層中に分散される電荷発生物質の量が少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等が生じることがある。そのため、電荷発生物質の量は通常0.1重量%以上、好ましく1重量%であり、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。なお、上記電荷発生物質の量は、上述したフタロシアニン化合物及び/またはその他の電荷発生物質の総量とする。
(その他の物質)
上記材料以外にも、感光層中には、例えば成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤などの添加物を含有させてもよい。また感光層には必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物などが挙げられ、界面活性剤の例としては、シリコ−ンオイル、フッ素系オイルなどが挙げられる。本発明では、これらを適宜、1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
また電子写真感光体表面の摩擦抵抗や摩耗を軽減する目的で、感光層の表面の層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでも良く、これらの樹脂からなる粒子や酸化アルミニウム等の無機化合物の粒子を含有させてもよい。
ここで、本発明においては特に下記の酸化防止剤及び電子吸引性化合物が含有されていることが好ましい。
<酸化防止剤>
酸化防止剤は、本発明の電子写真感光体に含まれる材料の酸化を防止するために用いられる安定剤の一種である。
酸化防止剤は、ラジカル補足剤としての機能があるものであればよく、具体例としては、フェノール誘導体、アミン化合物、ホスホン酸エステル、硫黄化合物、ビタミン、ビタミン誘導体等が挙げられる。
この中でも、フェノール誘導体、アミン化合物、ビタミン等が好ましい。また、嵩高い置換基を、ヒドロキシ基近辺に有する、ヒンダードフェノール、またはトリアルキルアミン誘導体等がより好ましい。
またさらに、ヒドロキシ基のo位に、t−ブチル基を有するアリール化合物誘導体、及びヒドロキシ基のo位に、t−ブチル基を2つ有するアリール化合物誘導体が特に好ましい。
また、該酸化防止剤の分子量が大きすぎると、酸化防止能が低下する場合があり、通常分子量1500以下、特には分子量1000以下の化合物が好ましい。また下限は通常100以上、好ましくは150以上であり、更に好ましくは200以上である。
以下、本発明に使用できる酸化防止剤の例を示す。本発明に使用できる酸化防止剤としては、例えばプラスチック、ゴム、石油、油脂類の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤として公知の材料すべてを用いる事ができるが、とりわけ下記の化合物群より選ばれる材料が好ましく使用できる。本発明においては、このような酸化防止剤を1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
(1)特開昭57−122444号公報に記載のフェノール類、特開昭60−188956号公報に記載のフェノール誘導体及び特開昭63−18356号公報に記載のビンダードフェノール類。
(2)特開昭57−122444号公報に記載のパラフェニレンジアミン類、特開昭60−188956号公報に記載のパラフェニレンジアミン誘導体及び特開昭63−18356号公報に記載のパラフェニレンジアミン類。
(3)特開昭57−122444号公報に記載のハイドロキノン類、特開昭60−188956号公報に記載のハイドロキノン誘導体及び特開昭63−18356号公報に記載のハイドロキノン類。
(4)特開昭57−188956号公報に記載のイオウ化合物及び特開昭63−18356号公報に記載の有機イオウ化合物類。
(5)特開昭57−122444号公報に記載の有機リン化合物及び特開昭63−18356号公報に記載の有機リン化合物類。
(6)特開昭57−122444号公報に記載のヒドロキシアニソール類。
(7)特開昭63−18355号公報に記載の特定の骨格構造を有するピペリジン誘導体及びオキソピペラジン誘導体。
(8)特開昭60−188956号公報に記載のカロチン類、アミン類、トコフェロール類、Ni(II)錯体、スルフィド類等。
また、特に好ましくは下記に示す、ヒンダードフェノール類が好ましい。なお、ヒンダードフェノールとは、嵩高い置換基を、ヒドロキシ基近辺に有する、フェノール類を示す。具体的には、ジブチルヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、α−トコフェノール、β−トコフェノール、2,2,4−トリメチル−6−ヒドロキシ−7−t−ブチルクロマン、ペンタエリスチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシアニソール、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(Octadecyl−3,5−di−tert−butyl−4−hydroxyhydrocinnamate)、または1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン(1,3,5−trimethyl−2,4,6−tris−(3,5−di−tert−butyl−4−hydroxybenzyl)−benzene)等が挙げられる。
上記、ヒンダードフェノール類の中でも、特に、ジブチルヒドロキシトルエン、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(Octadecyl−3,5−di−tert−butyl−4−hydroxyhydrocinnamate)、または1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン(1,3,5−trimethyl−2,4,6−tris−(3,5−di−tert−butyl−4−hydroxybenzyl)−benzene)がより好ましい。
これらの化合物はゴム、プラスチック、油脂類等の酸化防止剤として知られており、市販品として手に入るものもある。
上記酸化防止剤の使用量は、特に制限されないが、感光層中のバインダー樹脂100重量部当り通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上である。また良好な電気特性を得るため、通常25重量部以下であるが、酸化防止剤の量が多すぎると、電気特性だけでなく、耐刷性が低下する場合があるので、好ましくは、25重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。
<電子吸引性化合物>
また、本発明の電子写真感光体中には電子吸引性の化合物を有することが好ましく、特に感光層に含有することが好ましい。
電子吸引性化合物の例として具体的には、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、有機シアノ化合物、ニトロ化合物、芳香族ハロゲン誘導体等が挙げられ、好ましくは、スルホン酸エステル化合物、有機シアノ化合物であり、特に好ましくはスルホン酸エステル化合物である。上記電子吸引性化合物は1種のみを単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
また電子吸引性化合物の電子吸引能力は、LUMOの値(以下、適宜LUMOcalとする)で予見することが可能であると解され、本発明においては、上記の中でも特に、PM3パラメーターを使った半経験的分子軌道計算を用いた構造最適化による(以下これを単に、半経験的分子軌道計算による、と記載する場合がある)LUMOcalの値が−0.5以上−5.0eV以下である化合物が好ましく用いられる。LUMOcalの絶対値が、0.5eVよりも小さくなると、電子吸引性の効き目があまり期待できず、3.0eVを超えると、帯電の低下が懸念される。LUMOcalの絶対値は、より好ましくは、1.0eV以上であり、さらに好ましくは、1.1eV以上であり、特に好ましくは、1.2eV以上である。上記絶対値は、4.5eV以下が好ましく、さらに好ましくは、4.0eV以下であり、特に好ましくは、3.5eV以下である。
上記LUMOcalの絶対値が上記範囲内とされる化合物としては、以下の化合物が挙げられる。なお、Meはメチル基を表す。
Figure 2009162916
本発明における電子写真感光体に用いられる上記電子吸引性化合物の量は、特に制限されないが、上記電子吸引性化合物が感光層に使用される場合、感光層に含まれるバインダー樹脂100重量部当り通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上である。また良好な電気特性を得るため、通常10重量部以下であるが、電子吸引性化合物の量が多すぎると、電気特性だけでなく、耐刷性が低下する場合があるので、好ましくは、8重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
(感光層の形成方法)
次に、感光層の形成方法について説明する。上記感光層は、電荷輸送物質、バインダー樹脂、及びその他の物質を溶媒(または分散媒)に溶解(または分散)した塗布液中に上記電荷発生物質を分散させ、導電性支持体上(下引き層等の中間層を設ける場合は、これらの中間層上)に塗布することにより形成することができる。
以下、感光層の形成に用いられる溶媒または分散媒、及び塗布方法を説明する。
<溶媒または分散媒>
感光層の形成に用いられる溶媒または分散媒としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類;アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等があげられる。またこれらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用して用いてもよい。
<塗布方法>
感光層を形成するための塗布液の塗布方法としては、例えばスプレー塗布法、スパイラル塗布法、リング塗布法、浸漬塗布法等が挙げられる。
スプレー塗布法としては、例えばエアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーであって、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送する方法が好ましい。これにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた感光層を得ることができる。
またスパイラル塗布法としては、例えば特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機またはカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
浸漬塗布法では、塗布液あるいは分散液の全固形分濃度を好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上とする。また好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下とする。また粘度を好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上とする。また好ましくは700mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下とする。これにより膜厚の均一性に優れた感光層とすることができる。
上記塗布法により塗布膜を形成した後、塗膜を乾燥させるが、必要且つ充分な乾燥が行われる様に乾燥温度時間を調整することが好ましい。乾燥温度は、高すぎると感光層内に気泡が混入する可能性があり、低すぎると乾燥に時間を要し、残留溶媒量が増加して電気特性に影響を与えることがあるため、通常100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上である。また通常250℃以下、好ましくは170℃以下、さらに好ましくは140℃以下であり、段階的に温度を変更してもよい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機および遠赤外線乾燥機等を用いることができる。
2.導電性支持体
次に、本発明の電子写真感光体に用いられる導電性支持体について説明する。導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を共存させて導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着または塗布した樹脂、ガラス、紙等を主として使用する。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでも良い。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いる場合、金属材料に陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。
例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより、金属材料表面に陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は通常100g/l以上であり、また通常300g/l以下、溶存アルミニウム濃度は通常2g/l以上であり、通常15g/l以下、液温は通常15℃以上であり、通常30℃以下、電解電圧は通常10V以上であり、通常20V以下、電流密度は通常0.5A/dm2以上であり、通常2A/dm2以下の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
陽極酸化被膜を施す場合、封孔処理を行うことが好ましい。封孔処理は、公知の方法で行うことができるが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に上記金属材料を浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に上記金属材料を浸漬させる高温封孔処理を施すことが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選択可能であるが、水溶液濃度を3g/l以上、6g/l以下の範囲とした場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるための処理温度としては、通常25℃以上、好ましくは30℃以上である。また通常40℃以下、好ましくは35℃以下である。また、フッ化ニッケル水溶液pHは、通常4.5以上、好ましくは5.5以上であり、通常pHは6.5以下、好ましくは6.0以下で処理することが好ましい。
pH調節剤としては、例えばシュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることが出来る。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり通常1分以上、3分以内で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するために例えばフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、または界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に共存させておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
また上記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、例えば酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることが出来るが、特に酢酸ニッケルを用いることが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は通常5g/l以上、20g/l以下が好ましい。この際の処理温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上、また通常100℃以下、好ましくは98℃以下である。またさらに、酢酸ニッケル水溶液のpHは通常5.0以上、6.0以下で処理することが好ましい。
pH調節剤としては例えばアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることが出来る。処理時間は通常10分以上、好ましくは15分以上とすることが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために例えば酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に含有させてもよい。更に、実質上塩類を含まない高温水や高温水蒸気で処理しても構わない。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。
なお、陽極酸化被膜の平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件とすることが好ましい。しかしながら強い封孔条件とすると生産性が低下すると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じる場合がある。したがって、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下とされることが好ましい。
上記導電性支持体の表面は、平滑であっても良く、また特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであっても良い。
なお、上記導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のために、後述する下引き層を設けても良い。
3.下引き層
本発明の電子写真感光体には、上記感光層と導電性支持体との間に下引き層を有していてもよい。下引き層としては、例えば樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。下引き層には、上記1種類の粒子のみを用いても良く、複数の種類の粒子を任意の比率及び組み合わせで混合して用いても良い。
上記金属酸化物粒子の中でも、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。なお酸化チタン粒子は、表面が、例えば酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、またはステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物等によって処理されていてもよい。また酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
下引き層に用いられる金属酸化物粒子の粒径としては、特に限定されないが、下引き層の特性、および下引き層を形成するための溶液の安定性の面から、平均一次粒径として10nm以上であることが好ましく、また通常100nm以下、より好ましくは50nm以下である。
ここで、下引き層は上記金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成することが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、例えばフェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等が良好な分散性及び塗布性を示すことから好ましい。
上記バインダー樹脂に対する金属酸化物粒子の混合比は任意に選べるが、10重量%から500重量%の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。また下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、電子写真感光体の特性、および上記分散液の塗布性から通常0.1μm以上、20μm以下とすることが好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を含んでいても良い。
4.その他の層
また本発明の電子写真感光体は、上述した導電性支持体、感光層、及び下引き層以外に必要に応じて適宜他の層を有していてもよく、例えば感光層上には電気的、機械的機能低下を防止する目的で保護層等を設けてもよい。
5.電子写真感光体の用途
本発明の電子写真感光体が用いられる画像形成装置の種類等は特に限定されず、公知の画像形成装置に適用することが可能である。感光層の露光波長は特に限定されず通常、波長700nm以上、800nm以下の単色光や、波長600nm以上、700nm以下のやや短波長よりの単色光、波長380nm以上、600nm以下の短波長の単色光とすることができる。これらの中でも特に、露光光の口径を小さくする場合には、波長380nm以上、600nm以下の短波長とすることが好ましく、より好ましくは波長500nm以下とすることが好ましい。
B.画像形成装置
次に、本発明の画像形成装置について説明する。本発明における画像形成装置は、上述した電子写真感光体を備えるものであれば、その構成は特に限定されない。
上記電子写真感光体を備えた画像形成装置は、電子写真感光体を繰り返し画像形成に用いた場合であっても、初期電圧の低下が少なく、また目的とするパターン状に高精細に画像形成を行なうことが可能である。
以下、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、通常、電子写真感光体1、帯電手段2、像露光手段3及び現像手段4、及び転写手段5を備え、必要に応じてクリーニング手段6及び定着手段7が設けられる。
本発明の画像形成装置において、次のようにして画像の記録が行なわれる。電子写真感光体1は、所定の軸(図示せず)を中心に、所定の周速度をもって回転駆動する。電子写真感光体1は、その回転過程において、帯電手段2によりその表面(感光層)が正又は負の所定の電位(例えば−600V)に帯電される。次いで像露光手段3から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された露光光を受ける。これにより、電子写真感光体1の表面(感光層)に、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されることとなる。
形成された静電潜像は、次いで現像手段4内のトナーで正規現像又は反転現像により可転写粒子像(トナー像)として顕画化される。具体的には、現像手段4が、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、電子写真感光体1の表面に接触させる。現像ローラ44に担持された帯電トナーTが電子写真感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が電子写真感光体1の感光面に形成される。
その後、給紙部Pから電子写真感光体1と転写手段5との間に電子写真感光体1の回転と同期して給送された被転写体(記録紙)Pに、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が転写手段5により順次転写されていく。この時、転写手段にはバイアス電源(図示せず)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。
トナー画像の転写を受けた被転写体(記録紙)Pは、電子写真感光体1面から分離されて定着手段7へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段6によって転写残りトナー等の付着物の除去を受けて清浄面化される。近年、クリーナレスシステムも研究され、転写残りトナーを直接、現像器等で回収する構成等とすることもできる。また、上記画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば電子写真感光体の除電を行う(除電工程)ことができる除電手段(図示せず)を有する構成としても良い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
以下、画像形成装置の各構成ごとに説明する。
[電子写真感光体]
上記画像形成装置における電子写真感光体としては、上述した「A.電子写真感光体」で説明したものとすることができる。図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電手段2、像露光手段3、現像手段4、転写手段5及びクリーニング手段6がそれぞれ配置されている。
なお、電子写真感光体1及び後述する帯電手段2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、電子写真カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計される。例えば電子写真感光体1や帯電手段2が機能低下した場合に、この電子写真カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるような構成とされる。また例えば電子写真感光体1、帯電手段2、及び後述する転写手段に用いられるトナーが備えられた構成の電子写真カートリッジとすることも可能である。
[帯電手段]
帯電手段2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させることが可能なものであれば特に限定されない。図1では帯電手段2の一例としてローラ型の帯電手段(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電手段、帯電ブラシ等の接触型帯電手段などがよく用いられる。接触型帯電手段の材料としては、導電性を付与した弾性体が一般的である。
また接触帯電手段に印加される電圧としては、直流電圧のみでも良く、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧でも良い。ここで言う振動電圧とは、時間と共に周期的に電圧値が変化する電圧であり、交流電圧は、直流電圧のみ印加時における感光体の帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を有することが好ましい。
[像露光手段]
像露光手段3は、電子写真感光体1に、例えば波長700nm以上、800nm以下の単色光や、波長600nm以上、700nm以下のやや短波長よりの単色光、波長380nm以上、600nm以下の短波長の単色光を照射して像露光を行ない、電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、 ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようなものであってよい。
[現像手段]
現像手段4は、上記電子写真感光体1上に形成された前記静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成することが可能なものであれば、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、磁性一成分接触現像、磁性一成分非接触現像、非磁性一成分接触現像、非磁性一成分非接触現像、磁性二成分接触現像、磁性二成分非接触現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の手段を用いることができる。また導電性トナーを用いてもよい。図1では、現像手段4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。
また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像手段4に付帯させる構成としてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能となるように構成される。
また多くの場合、トナーTはトナーカートリッジ中に蓄えられ、画像形成装置本体から取り外し可能に設計される。使用しているトナーカートリッジ中のトナーTが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるような構成とすることが、トナーTの補給の利便性等の面から好ましい。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、例えば鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロール等から形成される。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
通常、現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g重/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法などを用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト状の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。本発明に好適に用いられるトナーについて、後で詳しく説明する。
[転写手段]
転写手段5は、上記電子写真感光体1上に形成されたトナー像を被転写体に転写することが可能なものであれば、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた手段とすることができる。例えば転写手段5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとすることができる。この転写手段5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を被転写体(記録紙)Pに転写する。
[クリーニング手段]
クリーニング手段6は、電子写真感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。その種類に特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング手段を用いることができる。但し、クリーニング手段6、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング手段6は無くても構わない。
[定着手段]
定着手段7は、例えば上部定着部材(加圧ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成されるもの等とすることができ、通常、定着部材71または72の内部には加熱装置73が通常備えられる。図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71、72は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71、72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
被転写体(記録紙)P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて被転写体(記録紙)P上にトナーが定着される。
なお、定着手段についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着手段を設けることができる。
[除電手段]
除電手段としては、上記電子写真感光体の除電を行うことが可能な手段であれば特に限定されるものではない。除電方法としては、通常、蛍光灯、LED等を用いて電子写真感光体にエネルギーを照射する方法が挙げられる。なお上記除電工程で用いる光は、強度として像露光の際の露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
C.電子写真カートリッジ
次に、上記電子写真感光体を用いた電子写真カートリッジについて説明する。電子写真カートリッジは、上述した電子写真感光体を備えるものであれば、その構成等は特に限定されるものではなく、例えば上記電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した前記電子写真感光体に対し像露光を行い、静電潜像を形成する像露光手段、前記電子写真感光体上に形成された前記静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段、前記電子写真感光体上の前記トナー像を被転写体に転写する転写手段、前記トナー像の転写後に前記電子写真感光体上に残留する電荷を除去する除電手段、及び前記トナー像の転写後に前記電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段のうちの少なくとも一つとを備えるものとすることができる。
上記電子写真カートリッジに用いられる電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段、転写手段、除電手段、及びクリーニング手段は、それぞれ上述した「A.電子写真感光体」や「B.画像形成装置」で説明したものと同様とすることができる。
この電子写真感光体カートリッジは、通常、複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能な構成とすることができる。この場合、例えば電子写真感光体やその他の部材が機能低下した場合に、この電子写真カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
上記電子写真感光体を用いた電子写真カートリッジにおいては、電子写真感光体を繰り返し画像形成に用いた場合であっても、初期電位の低下が少ないものとすることができ、また目的とする画像を高精細に形成することが可能となる。したがって、本発明の電子写真カートリッジは、「B.画像形成装置」で説明したような画像形成装置に好適に用いることが可能であり、このような画像形成装置において、安定して高品質な画像形成が可能である。
D.トナー
上記画像形成装置に用いられるトナーは、どのような方法で製造されるものであっても構わないが、水系媒体中で製造されたトナー粒子、いわゆる重合法トナーが好ましい。重合法トナーとしては、懸濁重合法トナー、乳化重合凝集法トナーが挙げられる。特に、乳化重合凝集法は、液状媒体中でポリマー樹脂微粒子と着色剤とを凝集させてトナーを製造する方法であり、凝集条件を制御することによってトナーの粒径および円形度を調整することができるので好ましい。また、離型性、低温定着性、高温オフセット性、耐フィルミング性などを改良するためにトナーに低軟化点物質(いわゆるワックス)を含有させる方法が提案されている。溶融混練粉砕法では、トナーに含まれるワックスの量を増やすのは難しく、バインダー樹脂に対して5%程度が限界とされている。それに対して、重合トナーでは、例えば特開昭59−194393公報や、特開平03−194560公報に記載のごとく、低軟化点物質を多量(5〜30%)に含有することを特徴としている。
以下、乳化重合凝集法により製造されるトナーについて更に詳細に説明する。
乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合、通常、重合工程、混合工程、凝集工程、融合工程、洗浄・乾燥工程を有する。すなわち、一般的には乳化重合により得た重合体一次粒子を含む分散液に、必要に応じ、着色剤、ワックス、帯電制御剤等の分散液を混合し、この分散液中に凝集剤を加えて一次粒子を凝集させて粒子凝集体とし、必要に応じて微粒子等を付着する操作を行い、その後に融合させて得られた粒子を洗浄、乾燥することにより母粒子が得られる。
バインダー樹脂の微粒子(重合体一次粒子)としては、特に限定されないが、液状媒体中で重合性単量体を、懸濁重合法、乳化重合法等により重合させて得られる微粒子、バインダー樹脂を粉砕することによって得られる微粒子のいずれでもよいが、重合法、特に乳化重合法、なかでも乳化重合におけるシードとしてワックスを用いたものが好ましい。乳化重合におけるシードとしてワックスを用いると、バインダー樹脂がワックスを包み込んだ形状の微粒子を製造することができる。この方法によればワックスをトナーの表面に露出させずに含有させることができるので、ワックス粒子による顔料粒子の付着阻害がなく、またトナーの帯電性を損なうこともなく、かつトナーの低温定着性や高温オフセット性、耐フィルミング性、離型性等を向上させることができる。
以下、ワックスをシードとして乳化重合して得られたバインダー樹脂の微粒子を用いる方法について説明する。
乳化重合法としては、従来より知られている方法に従って行えばよく、通常は、ワックスを乳化剤の存在下で液状媒体に分散してワックス微粒子とし、これに重合開始剤、重合によりバインダー樹脂を与える重合性単量体すなわち重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物、及び必要に応じて連鎖移動剤、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤、保護コロイド、内添剤等を共存させて、攪拌して重合を行うことにより、重合体がワックスを包み込んだ形状をもつバインダー樹脂微粒子が液状媒体に分散したエマルジョンが得られる。重合体がワックスを包み込んだ形状としては、例えばコアシェル型、相分離型、オクルージョン型などが挙げられるが、コアシェル型が好ましい。
ワックスとしては、この用途に用い得ることが知られている任意のものを用いることができる。具体例としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;アルキル基を有するシリコーンワックス;低分子量ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂系ワックス;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン類;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸より得られるエステル類または部分エステル類;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が挙げられる。なかでも、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークを50〜100℃に少なくとも1つ有するものが好ましい。
また、例えばエステル系ワックス、パラフィンワックス、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、シリコーンワックス等は、少量で離型性の効果が得られるので好ましい。
ワックスを用いる場合、バインダー樹脂100重量部に対して3重量部以上の割合で用いるのが好ましい。なかでも5重量部以上が好ましい。またその上限は通常40重量部以下、好ましくは30重量部以下である。
重合性単量体としては、例えばスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド類、ブレンステッド酸性基を有する単量体(以下、単に「酸性モノマー」と略記することがある)、ブレンステッド塩基性基を有する単量体(以下、単に「塩基性モノマー」と略記することがある)等の単官能性モノマーが主として用いられる。また、単官能性のモノマーに多官能性のモノマーを併用することもできる。
スチレン類としては、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等が挙げられる。
これらの重合性単量体は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
酸性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するモノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有するモノマー等が挙げられる。
塩基性モノマーとしては、例えばアミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の含窒素複素環含有モノマー、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。酸性モノマー及び塩基性モノマーは、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。
多官能性モノマーとしては、例えばジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アクロレイン等の反応性基を有するモノマーを用いることも可能である。中でもラジカル重合性の二官能性モノマー、特に、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましい。
これらのなかでも、少なくともスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基を有する酸性モノマーから構成されるのが好ましく、特にスチレン類としてスチレン、(メタ)アクリル酸エステル類としてアクリル酸ブチル、カルボキシル基を有する酸性モノマーとしてアクリル酸であることが好ましい。
ワックスをシードとして乳化重合を行う際には、酸性モノマーまたは塩基性モノマーと、これら以外のモノマーとを併用するのが好ましい。酸性モノマーまたは塩基性モノマーを重合に供する場合には、全重合性単量体100重量部に対して、通常は0.05重量部以上となるように用いる。0.5重量部以上がより好ましく、特に1重量部以上となるように用いるのが特に好ましい。また、上限は通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。酸性モノマーや塩基性モノマーを併用することにより、バインダー樹脂の分散安定性を向上させることができる。
多官能性モノマーを併用する場合、その配合量は、重合性単量体100重量部に対して、通常は0.005重量部以上となるようにする。0.1重量部以上、更には0.3重量部以上となるようにするのが好ましい。またその上限は、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下、更に好ましくは1重量部以下である。多官能性モノマーを使用することにより、トナーの定着性を向上させることができる。
重合開始剤としては、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物類、過酸化水素等の無機過酸化物類等が挙げられる。中でも無機過酸化物類が好ましい。これらは1種でも、2種以上を併用してもよい。これらは、重合性単量体100重量部に対して、通常0.05〜2重量部の割合で用いられる。
また、例えば過硫酸塩類、有機または無機過酸化物類と、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸等の還元性有機化合物類、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物類等を併用して、レドックス系開始剤とすることもできる。この場合、還元性無機化合物類は1種でも、2種以上を併用してもよい。
乳化剤としては、通常、非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性のいずれの界面活性剤も用いることができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えばステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン等のアルキルベタイン類等が挙げられる。
これらの中でも、非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤が好ましい。乳化剤は1種でも、2種以上を併用してもよい。乳化剤は、重合性モノマー100重量部に対して、通常1〜10重量部の割合で用いられる。
連鎖移動剤としては、公知の任意のものを使用することができる。具体例としては、t―ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。これらは1種でも、2種類以上を併用してもよい。連鎖移動剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常5重量部以下の割合で用いられる。
保護コロイドとしては、この用途に用い得ることが知られている任意のものを使用することができ、具体例としては、部分または完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等などが挙げられる。
内添剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系オイル等のトナーの粘着性、凝集性、流動性、帯電性、表面抵抗等を改質するためのものが挙げられる。
液状媒体は、通常は水であり、重合性単量体に対して1〜20重量倍程度の量を用いる。乳化重合反応の反応温度は、重合温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上である。また通常120℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。
液状媒体への重合性単量体の混合の方法は特に限定されず、一括混合、連続混合、間欠混合のいずれでもよいが、反応制御の点からは連続的に混合するのが好ましい。また、複数の重合性単量体を併用する場合、各重合性単量体は、別々に混合してもよく、また予め混合した後混合してもよい。更には、単量体混合物の組成を変化させながら混合してもよい。また、乳化剤は液状媒体へ予め混合しておくのが好ましいが、連続的に液状媒体に混合してもよい。
バインダー樹脂の微粒子としては、1種類を用いても、異なる原料や反応条件で製造した2種以上を併用してもよい。
乳化重合によって得られたバインダー樹脂のエマルジョンには、乳化重合以外の方法で得られたバインダー樹脂の微粒子を混合してもよい。乳化重合以外の方法で得られた微粒子としては、懸濁重合や粉砕で得られた微粒子などが挙げられる。このような樹脂としては、上述の乳化重合に供する単量体の(共)重合体の他に、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、ビニルピロリドン等のビニル系単量体の単独重合体または共重合体、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などの熱可塑性樹脂、及び、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂などの熱硬化性樹脂等からなる粒子が挙げられ、これらは1種でも、2種以上を併用してもよい。乳化重合以外の重合方法で得られた微粒子のバインダー樹脂の微粒子全体に占める割合は、通常5重量%以下である。
バインダー樹脂の微粒子としては、体積平均粒径が通常0.02μm以上のものを用いる。体積平均粒径が0.05μm以上が好ましく、更には0.1μm以上のものを用いるのが好ましい。また、その上限は通常3μm以下であるが、2μm以下が好ましく、更には1μm以下のものが好ましい。体積平均粒径が小さすぎると、凝集速度の制御が困難となる場合があり、また、体積平均粒径が大きすぎると、凝集して得られるトナーの粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。なお、体積平均粒径は、後述する動的光散乱法を用いた粒度分析計で測定することができる。
バインダー樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるピーク分子量のうち少なくとも1つが、通常3000以上、また通常10万以下に存在することが好ましい。特には1万以上、さらには3万以上、また、7万以下、さらには6万以下に存在するのがより好ましい。ピーク分子量が前記範囲にある場合、トナーの耐久性、保存性、定着性が良好となる傾向がある。ここで、前記ピーク分子量とは、ポリスチレン換算した値を用いるものとし、測定に際しては溶媒に不溶の成分を除くものとする。
特にバインダー樹脂がスチレン系樹脂である場合には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける数平均分子量は、下限が2000以上であるのが好ましく、2500以上がより好ましく、さらには3000以上であればなお好ましい。また上限は、5万以下であるのが好ましく、4万以下であればなお好ましい。
また、重量平均分子量は、下限が2万以上であるのが好ましく、3万以上であればなお好ましい。また上限は、100万以下であるのが好ましく、50万以下であればなお好ましい。数平均分子量、重量平均分子量の少なくとも一方、好ましくは双方が前記範囲のスチレン系樹脂を用いたトナーは、耐久性、保存性、定着性が良好である。さらに分子量分布において、メインピークが2つあるものでもよい。なお、スチレン系樹脂とは、好ましくはスチレン類が50重量%以上、さらに好ましくは65重量%以上を占めるものを指す。
バインダー樹脂の軟化点(以下「Sp」と略記することがある)は、通常150℃以下、特に140℃以下であることが低エネルギー定着の点から好ましく、通常80℃以上、特に100℃以上であることが耐高温オフセット性、耐久性の点で好ましい。ここでSpは、フローテスターにおいて、試料1.0gをノズル1mm×10mm、荷重30kg、予熱時間50℃で5分、昇温速度3℃/分の条件下で測定を行ったときの、フロー開始から終了までのストランドの中間点での温度として求めることができる。
バインダー樹脂のガラス転移点(以下「Tg」と略記することがある)は、通常80℃以下、特に70℃以下であるのが好ましい。Tgが高すぎると低エネルギー定着ができなくなる可能性がある。またTgの下限は、通常40℃以上、特に50℃以上であるのが好ましい。Tgが低すぎると耐ブロッキング性が低下する可能性がある。ここでTgは、示差走査熱量計(島津製作所社製DTA−40)において、昇温速度10℃/分の条件で測定した曲線の転移(変曲)開始部に接線を引き、2つの接線の交点の温度として求めることができる。バインダー樹脂のSp、Tgは、樹脂の種類およびモノマー組成比、分子量等を調整することによって前記範囲とすることができる。
バインダー樹脂の微粒子が分散したエマルジョンに、顔料粒子の水系分散体を加えて凝集させ、バインダー樹脂、顔料を含む凝集体のエマルジョンを得る。その際には、必要に応じて帯電制御剤、離型剤、内添剤等を共存させてもよい。顔料粒子分散体の安定性を保持するために、前記した乳化剤を加えてもよい。
また着色剤粒子は、乳化重合凝集法における重合体一次粒子(樹脂粒子として約1.1〜1.3g/cm3)との密度差が小さい方が均一な凝集状態が得られ、従って得られるトナーの性能が向上するので、その真密度はJIS K 5101−11−1:2004に規定されるピクノメーター法で測定される顔料粒子の真密度が2.0g/cm3未満であるのが好ましく、通常1.2g/cm3以上、好ましくは1.3g/cm3以上である。また1.9g/cm3以下であることがより好ましく、1.8g/cm3であるのが特に好ましい。真密度が大きい場合は、特に水系媒体中での沈降性が低下する傾向にある。加えて、保存性、昇華性等も考慮すると、着色剤はカーボンブラックあるいは有機顔料であるのが好ましい。
以上の顔料の例示としては、以下に示すイエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料が挙げられ、黒色顔料としてカーボンブラックまたは以下に示すイエロー顔料/マゼンタ顔料/シアン顔料を混合して黒色に調色されたものが利用される。
このうち、黒色顔料としてカーボンブラックは、非常に微細な一次粒子の凝集体として存在し、顔料分散体として分散させたときに、再凝集による粒子の粗大化が発生しやすい。本発明者らの検討によると、カーボンブラック粒子の再凝集の程度は、カーボンブラック中に含まれる不純物量(未分解有機物量の残留程度)の大小と相関が見られ、不純物が多いと分散後の再凝集による粗大化が激しい傾向を示した。そして、不純物量の定量的な評価として、以下の方法で測定されるカーボンブラックのトルエン抽出物の紫外線吸光度が0.05以下であるのが好ましく、0.03以下であるのが一層好ましい。一般に、チャンネル法のカーボンブラックは不純物が多い傾向を示すので、本発明におけるカーボンブラックとしては、ファーネス法で製造されたものが好ましい。
カーボンブラックの紫外線吸光度(λc)は、次の方法で求める。まずカーボンブラック3gをトルエン30mlに充分に分散、混合させて、続いてこの混合液をNo.5C濾紙を使用して濾過する。その後、濾液を吸光部が1cm角の石英セルに入れて市販の紫外線分光光度計を用いて波長336nmの吸光度を測定した値(λs)と、同じ方法でリファレンスとしてトルエンのみの吸光度を測定した値(λo)から、紫外線吸光度はλc=λs−λoで求める。市販の分光光度計としては、例えば島津製作所製紫外可視分光光度計(UV−3100PC) などがある。
イエロー顔料としては、例えば縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物などに代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180、185等が好適に用いられる。
マゼンタ顔料としては、例えば縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキウ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、C.I.ピグメントバイオレット19等が好適に用いられる。中でもC.I.ピグメントレッド122、202、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19で示されるキナクリドン系顔料が特に好ましい。このキナクリドン系顔料は、その鮮明な色相や高い耐光性などからマゼンタ顔料として好適である。キナクリドン系顔料の中でも、C.I.ピグメントレッド122で示される化合物であるのが、分散性の上で特に好ましい。
シアン顔料としては、例えば銅フタロシアニン及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
トナーにおける以上の着色剤粒子の使用量は、水100重量部に対して、通常3重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、また通常50重量部以下、好ましくは40重量部以下である。着色剤の量が前記範囲を超える場合には、着色剤濃度が濃いので分散中に粒子の再凝集の確率が高まるので可能性があり、前記範囲未満の場合には分散が過剰となって本発明における粒度分布を得ることが困難となる可能性がある。
顔料を分散させ、上記した粒子径を得る手法としては、さまざま公知の湿式ミルが提案されており、いずれも好適に使用しうる。この種のものとしては、例えば、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等が挙げられるので、適宜条件を選べばよい。各方式の概要は以下の通りである。
・ボールミル:ドラム状容器の中に湿式分散媒、被粉砕物及び10〜30mm程度のメデイアビーズを入れ、ドラムごと回転させてビーズとビーズ、ビーズとドラムの間で被粉砕物を磨り潰す方式。
・アトライター:湿式分散媒、被粉砕物をタンクに入れ、3〜15mm程度のメディアビーズを入れアルミナ製などのアジテータアームで強制的に撹拌して摩砕する方式。
・サンドミルは、湿式分散媒と被粉砕物をプレミックスしたものに1〜5mm程度のメデイアビーズを加えた後、サンドディスクを浸漬して規定速度で回転・機動させる方式。
・ビーズミル(アニュラー型):容器のロータとステータの間に1〜3mm程度のメディアビーズを充填し、ロータを高速回転させることでビーズ間に流動速度差を与えることで発生するずり応力、剪断力、摩擦などによって粉砕分散を行う方式。
本発明においては、顔料分散体中の顔料粒子の体積粒度分布は動的光散乱法により測定される。この方式は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。これら顔料粒子の体積粒子径の値は、水系中に着色剤粒子が安定に分散しているときの値であり、分散前の粉体としての顔料、ウエットケーキの粒径を意味していない。実際の測定では、上記の体積粒径については、動的光散乱方式を用いた超微粒子粒度分布測定装置(日機装社製、UPA−EX150)を用いて、以下の設定にて行うことができる。
測定上限 :6.54μm
測定下限 :0.0008μm
チャンネル数:52
測定時間 :100sec.
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度(g/cm3):1
分散媒種類 :WATER
分散媒屈折率:1.333
なお、測定時は、サンプル濃度指数が0.01〜0.1の範囲になるようにトナーを純水で希釈し、超音波洗浄器で分散処理した試料で測定したものである。そして、本発明にかかわるMVq、MVaは、上記の体積粒度分布の結果を算術平均値として計測される。
なお、ワックス分散液、重合体分散液についても上記と同様の方法で粒度分布を測定することができる。
また、バインダー樹脂に対する顔料の量の割合は、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上であり、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。
顔料は、予め液状媒体に界面活性剤等を用いて均一に分散させた着色剤分散液を調製し、これをバインダー樹脂微粒子のエマルジョンに混合するが好ましい。着色剤分散液の調製に用いられる界面活性剤としては、上述のものが用いられ、特に非イオン系界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類等のアニオン系活性剤、ポリマー系界面活性剤等が好ましく用いられる。着色剤分散液に占める着色剤の割合は、通常10〜50重量%である
なお、バインダー樹脂粒子及び顔料粒子分散体の水質は各粒子の再凝集による粗大化にも関係し、導電率が高いと経時の分散安定性が低下する傾向があるので、その導電率を好ましくは10μS/cm以下に、より好ましくは5μS/cm以下となるように脱塩処理されたイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好ましい。導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて25℃下で測定を行うことが好ましい。
本発明におけるエマルジョンの凝集方法としては、加熱、電解質の混合、pHの調整等が挙げられる。なかでも、電解質を混合する方法が好ましい。
電解質を混合して凝集を行う場合の電解質としては、NaCl、KCl、LiCl、MgCl2、CaCl2等の塩化物、Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO43、Fe2(SO43等の硫酸塩などの無機塩、CH3COONa、C65SO3Na等の有機塩が挙げられる。これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。
電解質の混合量は、電解質の種類によって異なるが、エマルジョン中の固形成分100重量部に対して、通常0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であり、通常25重量部以下、好ましくは15重量部以下、更に好ましくは10重量部以下である。電解質を混合して凝集を行う場合において、電解質の混合量が少なすぎると、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られる凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しない可能性があり、また、電解質の混合量が多すぎると、凝集反応が急速に起こるため粒径の制御が困難となり、得られる凝集体中に粗粉や不定形のものが含まれる可能性がある。得られた凝集体は、前述の二次凝集体と同じく、引き続き液状媒体中で加熱して球形化するのが好ましい、加熱は二次凝集体の場合と同様の条件で行えばよい。
加熱により凝集を行う場合は、通常15℃以上、好ましくは20℃以上であり、通常バインダー樹脂のTg以下、好ましくは55℃である。また、通常10分以上、好ましくは60分以上であり、また300分以内、好ましくは180分以内攪拌を行う。攪拌装置は特に限定されないが、ダブルヘリカル翼を有するものが好ましい。
帯電制御剤としては、この用途に用いられ得ることが知られている任意のものを使用することができる。正荷電性帯電制御剤としては、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などが挙げられる。負荷電性帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアゾ錯化合物染料、サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸の金属塩または金属錯体、カーリックスアレン化合物、ベンジル酸の金属塩または金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等などが挙げられる。中でも、トナーとしての色調障害を回避するため無色ないしは淡色のものを選択することが好ましく、特に正荷電性帯電制御剤としては4級アンモニウム塩、イミダゾール系化合物が好ましく、負荷電性帯電制御剤としてはCr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアルキルサリチル酸錯化合物、カーリックスアレン化合物が好ましい。帯電制御剤は1種でも2種以上を併用してもよい。
帯電制御剤の割合は、バインダー樹脂100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であり、また10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。
本発明における乳化重合凝集法においては、前記顔料粒子と異ならず、帯電制御剤も水系媒体に乳化した状態として、凝集時に加える。
得られた凝集粒子は、そのまま次工程の樹脂被覆層を形成する工程に進んでもよいし、引き続き液状媒体中で加熱による融合処理を行った後に、カプセル化工程に進んでもよい。そして、望ましくは、凝集工程の後に、カプセル化工程を行い、その後凝集一次粒子とカプセル化樹脂微粒子を合わせて、カプセル化樹脂微粒子のガラス転移点以上の温度で加熱して融合工程を行うのが、工程を簡略化でき、トナーの性能低下(熱分解など)を生じないので好ましい。
凝集粒子に樹脂被覆層を形成させる工程とは、トナー粒子の表面を樹脂により被覆層を形成させ、着色剤が実質的にトナー粒子の表面に露出していないトナーを得るための工程であり、この際の被覆層の厚さは0.01〜0.5μmの範囲であるのが好ましい。
前記樹脂被覆層を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、スプレードライ法、機械式粒子複合法、in−situ重合法、液中粒子被覆法等が挙げられる。上記スプレードライ法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集粒子と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子とを水媒体中に分散して分散液を作製し、分散液をスプレー噴出し、乾燥することによって、凝集粒子表面に樹脂被覆層を形成することができる。前記機械式粒子複合法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集粒子と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子を気相中に分散させ、狭い間隙で機械的な力を加えて凝集粒子表面に樹脂微粒子を成膜化する方法であり、例えばハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)などの装置が使用できる。
上記in−situ重合法としては、例えば、凝集粒子を水中に分散させ、単量体及び重合開始剤を共存させ、凝集粒子表面に吸着させ、加熱して、単量体を重合させて、内層である凝集粒子表面に樹脂被覆層を形成することができる。
上記液中粒子被覆法としては、内層を形成する凝集粒子と外層を形成する樹脂微粒子とを、水媒体中で反応あるいは結合させ、内層を形成する凝集粒子の表面に樹脂被覆層を形成することができる。
外層を形成させる場合に用いる樹脂微粒子は、重合体で構成された粒子であれば特に制限はないが、外層の厚みがコントロールできるという観点から、重合体一次粒子、凝集粒子もしくは凝集粒子の融合粒子であることが好ましい。上記外層を構成する重合体一次粒子、凝集粒子及び融合粒子は、内層に使用する凝集粒子における重合体一次粒子、凝集粒子及び融合粒子と同様の重合体を使用し、同様の製造方法で製造することができる。樹脂微粒子は、トナー粒子に対して通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは25重量%以下の割合で用いるが好ましい。樹脂微粒子とは、トナー粒子よりも粒径が小さく樹脂成分を主体とする粒子を意味し、固着または融合を効果的に行うために、粒径0.04〜1μm程度のものが好ましく用いられる。
樹脂被覆層に用いられる重合体成分のガラス転移点(Tg)としては、通常60℃以上、好ましくは70℃以上であり、また通常、上限は110℃である。重合体一次粒子より5℃以上高いものであることが好ましく、10℃以上高いものであるのがより好ましい。Tgが低すぎると、一般環境での保存が困難であり、また高すぎては充分な溶融性が得られない可能性がある。
樹脂被覆層形成の後の融合工程では、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移点以上の温度で加熱処理することにより、凝集体を構成するバインダー樹脂及びその表面の樹脂被覆層の融合一体化がなされる、球形に近いトナー粒子を得ることができる。これにより、顔料粒子は実質的に表面に露出しない形態が得られる。
融合工程の加熱処理の温度は、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移点以上の温度(当然、凝集体を構成する重合体一次粒子のガラス転移点の温度以上)であり、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度+5(℃)以上が好ましい。その上限は、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度+50(℃)以下が好ましい。加熱処理の時間は、処理能力、製造量にもよるが通常0.5〜6時間である。
本発明に用いられるトナー粒子において、水性媒体中で凝集粒子の表面に樹脂被覆層を形成させて製造する場合には、該カプセル化トナー粒子の水性分散液を脱水し、乾燥して粉体状の樹脂被覆トナー粒子を得、本発明に用いられるトナーとすることができる。
このようにして得られるトナー粒子の体積平均粒径Dvは、好ましくは4μm以上、より好ましくは5μm以上であり、また好ましくは10μm以下、より好ましくは8μmである。また、トナーは、体積平均粒径(Dv)を個数平均粒径(Dn)で除した値(Dv/Dn)が、1.0以上であることが好ましい。また1.25以下、好ましくは1.20以下、特に1.15以下であれば更に好ましい。Dv/Dnの値は、粒度分布の状態を表し、この値が1.0に近い方ほど粒度分布がシャープであることを表し、トナーの帯電性が均一となるので望ましい。
トナーは、粒径25μm以上の体積分率が通常1%以下、特に0.5%以下であるのが好ましい。この値は小さいほど好ましく、0.1%以下がより好ましく、更には0.05%以下であるのが好ましい。これは、トナーに含まれる粗粉の割合が少ないことを意味しており、粗粉が少ないと、連続現像の際のトナーの消費量が少なく、画質が安定するので好ましい。粒径25μm以上の粗粉は全く存在しないのが特に好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.005%以下にする必要はない。
さらに、粒径15μm以上の体積分率は通常2%以下であり、1%以下がより好ましく、更に0.1%以下であることが好ましい。粒径15μm以上の粗粉も全く存在しないのが特に好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.01%以下とする必要はない。
また、粒径5μm以下の個数分率が15%以下、特に10%以下であることが、画像カブリの改善に効果があるので好ましい。
ここで、トナーの粒子径の測定装置としては、例えばコールターカウンターのマルチサイザーII型(ベックマン・コールター社製)を用いることができ、個数分布・体積分布を出力するインターフェイス及び一般的なパーソナルコンピューターを接続し、電解液はアイソトンIIを用いることができる。測定法としては、例えば前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターカウンターのマルチサイザーII型により、100μmアパーチャーを用いて測定する。トナーの個数・体積を測定して、それぞれ個数分布、体積分布を算出し、それぞれ、個数平均径、体積平均径を求めることができる。
また、本発明に用いられるトナー、特に乳化重合凝集法で製造されるトナーの形状は球形に近いものが好ましく、平均円形度が、好ましくは0.940以上、より好ましくは0.950以上、更に好ましくは0.960以上である。球形に近いほど粒子内での帯電量の局在化が起こりにくく、現像性が均一になる傾向にあるが、クリーニング不良が起こり易く、また完全な球状トナーを作ることは製造上困難であるので、前記平均円形度は、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.990以下である。
本発明における円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明ではシスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定を行い、測定された粒子の円形度を下式(1)により求める。
円形度a=L0/L (1)
〔式中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは画像処理した時の粒子像の周囲長を示す。〕
本発明に用いている円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
具体的な測定方法の例としては、予め容器中の不純物を除去した水20ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加え、更に測定試料を0.05g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波を30秒照射し、分散液濃度を3.0〜8.0千個/μlとして、上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.60μm以上160μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
トナーの軟化点(Sp)は、低エネルギーで定着する観点から通常150℃以下、特に140℃以下が好ましい。また、耐高温オフセット性、耐久性の点からは軟化点が通常80℃以上、特に100℃以上であるものが好ましい。
また、トナーのガラス転移点(Tg)は、通常80℃以下、特に70℃以下であると低エネルギーで定着できるので好ましい。また、ガラス転移点は、通常40℃以上、特に50℃以上であるものが耐ブロッキング性の点で好ましい。
トナーの軟化点、ガラス転移点の測定は、前記したバインダー樹脂の測定方法に準ずる。
トナーの軟化点、ガラス転移点は、バインダー樹脂の種類および組成比に大きく影響を受けるため、これらを適宜最適化することにより調整することができる。また、バインダー樹脂の分子量、ゲル分、ワックス等の低融点成分の種類および配合量によっても調整することが出来る。
トナーがワックスを含有する場合、トナー粒子中のワックスの分散粒径は、平均粒径として通常0.1μm以上、特に0.3μm以上であるのが好ましく、上限は通常3μm以下、特に1μm以下であるのが好ましい。分散粒径が小さすぎると、トナーの耐フィルミング性改良の効果得られない可能性があり、また分散粒径が大きすぎると、トナーの表面に露出しやすくなり帯電性や耐熱性が低下する可能性がある。ワックスの分散粒径は、トナーを薄片化して電子顕微鏡観察する方法の他、ワックスが溶解しない有機溶剤等でトナーのバインダー樹脂を溶出した後にフィルターで濾過し、フィルター上に残ったワックス粒子を顕微鏡により計測する方法などにより確認することができる。
また、トナーに占めるワックスの割合は、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、また通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。
また、トナーの流動性、帯電安定性、高温下での耐ブロッキング性などを向上させるために、トナー粒子表面に外添微粒子を添着させてもよい。
外添微粒子をトナー粒子表面に添着させる方法としては、液状媒体中で二次凝集体と外添微粒子を混合した後、加熱してトナー粒子上に外添微粒子を固着させる方法、二次凝集体を液状媒体から分離、洗浄、乾燥させて得られたトナー粒子に乾式で外添微粒子を混合または固着させる方法などが挙げられる。
乾式でトナー粒子と外添微粒子を混合する場合に用いられる混合機としては、例えばヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、V型ミキサー、レディゲミキサー、ダブルコーンミキサー、ドラム型ミキサーなどが挙げられる。中でもヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌型の混合機を用い、羽根形状、回転数、時間、駆動−停止の回数等を適宜設定して均一に攪拌、混合することによりなされることが好ましい。
乾式でトナー粒子と外添微粒子を固着させる場合に用いられる装置としては、圧縮剪断応力を加えることの出来る装置や、粒子表面を溶融処理することのできる装置などが挙げられる。
圧縮剪断処理装置は、一般に、間隔を保持しながら相対的に運動するヘッド面とヘッド面、ヘッド面と壁面、あるいは壁面と壁面によって構成される狭い間隙部を有し、被処理粒子が該間隙部を強制的に通過させられることによって、実質的に粉砕されることなく、粒子表面に対して圧縮応力及び剪断応力が加えられるように構成されている。このような圧縮剪断処理装置としては、例えばホソカワミクロン社製のメカノフュージョン装置等が挙げられる。
粒子表面溶融処理装置は、一般に、熱風気流等を利用し、母体微粒子と外添微粒子の混合物を母体微粒子の溶融開始温度以上に瞬時に加熱し外添微粒子を固着できるように構成される。このような粒子表面溶融処理装置としては、例えば日本ニューマチック社製のサーフュージングシステム等が挙げられる。
外添微粒子としては、この用途に用い得ることが知られている公知のものが使用でき、具体的には、無機微粒子、有機微粒子などが挙げられる。
無機微粒子としては、例えば炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化珪素等の窒化物、ホウ化ジルコニウム等のホウ化物、シリカ、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の酸化物や水酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の各種チタン酸化合物、リン酸三カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸イオンの一部が陰イオンによって置換された置換リン酸カルシウム等のリン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、滑石、ベントナイト、導電性カーボンブラックをはじめとする種々のカーボンブラック等を用いることができる。さらには、マグネタイト、マグへマタイト、マグネタイトとマグヘマタイトの中間体等の磁性物質を用いてもよい。
有機微粒子としては、例えばスチレン系樹脂、ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、トリフロロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル等の微粒子を用いることができる。
これら外添微粒子の中では、特にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、カーボンブラック等が好適に使用される。外添微粒子は1種でも、2種以上を併用してもよい。
また、これらの無機または有機微粒子の表面は、例えばシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤等の処理剤によって疎水化などの表面処理が施されていてもよい。処理剤は1種でも、2種以上を併用してもよい。
外添微粒子の数平均粒径は、通常0.001μm以上、好ましくは0.005μm以上であり、通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。異なる平均粒径のものを複数配合してもよい。外添微粒子の平均粒径は電子顕微鏡観察やBET比表面積の値からの換算等により求めることができる。
トナーに占める外添微粒子の割合は、0.1重量%以上が好ましい。0.3重量%以上、更には0.5重量%以上であればより好ましい。また上限は、10重量%以下であるのが好ましく、6重量%以下、更には4重量%以下であればなお好ましい。
トナーの帯電特性は、負帯電性であっても、正帯電性であっても良く、用いる画像形成装置の方式に応じて設定することができる。なお、トナーの帯電特性は、帯電制御剤などのトナー母粒子構成物の選択および組成比、外添微粒子の選択および組成比等により調整することができる。
トナーは、一成分現像剤として用いることも、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることも可能である。
二成分現像剤として用いる場合には、トナーと混合して現像剤を形成するキャリアとしては、公知の鉄粉系、フェライト系、マグネタイト系キャリア等の磁性物質または、それらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性樹脂キャリアを用いることができる。キャリアの被覆樹脂としては、一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。キャリアの平均粒径は、特に制限はないが10〜200μmの平均粒径を有するものが好ましい。これらのキャリアは、トナー1重量部に対して5〜100重量部の割合で用いるのが好ましい。
電子写真方式によるフルカラー画像の形成は、マゼンタ、シアン、イエローの各カラートナーおよび必要に応じてブラックトナーを用いて常法により実施することができる。
以下、実施例を用いて本発明について更に具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例および参考例中の「部」の記載は、特に指定しない限り「重量部」を示す。
<下引き層形成用分散液の作製方法>
下引き層用分散液は、次のようにして製造した。即ち、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの重量比が7/3の混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、特開平4−31870号公報の実施例に記載された、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水化処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用分散液とした。
Figure 2009162916
<感光層形成用塗布液の作製方法>
・顔料分散液
CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示すことを特徴とする、オキシチタニウムフタロシアニン7部、下記構造式で表されるペリレン化合物10.5部、及びトルエン227部をサンドグラインドミル中で1時間分散し、得られた分散液をトルエンで希釈して固形分濃度5重量%の顔料分散液を調製した。
Figure 2009162916
・電荷輸送物質溶液
下記繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量、約4万)105部、下記構造式で表されるヒドラゾン化合物63部、下記構造式で表されるアミン化合物1部、下記構造式で表されるフェノール化合物17部、シリコーンオイル(信越化学株式会社製シリコーンオイルKF96)0.03部、およびトルエン494部を混合し、電荷輸送物質溶液を調製した。
Figure 2009162916
Figure 2009162916
Figure 2009162916
Figure 2009162916
前記顔料分散液210部と、電荷輸送物質溶液683部とを、特殊機化工業株式会社製TKホモミクサーで30分混合し、感光層分散液を調製した。
・粒子分散液A
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、シリコーン樹脂粒子、トスパール120A(日機装(株)製のマイクロトラックUPA粒度分析計を用いて、イソプロピルアルコール中に分散した分散液において測定した平均粒子径が2μm)20部と、トルエン80部とを5分間混合し、粒子分散液Aを調製した。
・粒子分散液B
ダイキン化学工業製四フッ化エチレン樹脂、ルブロンL5(日機装(株)製のマイクロトラックUPA粒度分析計を用いて、パークロルエチレン中に分散した分散液において測定した平均粒子径が7μm)20部と、トルエン80部とを5分間混合し、粒子分散液Bを調製した。
<電子写真感光体の製造>
[実施例1]
前記感光層分散液100部に対して、前記粒子分散液Aを18部混合して、感光層形成用塗布液を調製した。
アルミニウム製押出管をしごき形成して作製した、外径30mm、長さ244mm、厚さ0.75mmのアルミニウム製しごき管を、下引き層用分散液に浸漬塗布し、その乾燥膜厚が1.25μmとなるように下引き層を設けた。
次に、先に下引き層を設けたアルミニウム製シリンダーを、感光層形成用塗布液に浸漬塗布し、その乾燥膜厚が25μmとなるように感光層を設けて電子写真感光体1を作製した。
[実施例2]
実施例1において用いた粒子分散液Aの使用量を、前記感光層分散液100部に対して、12部とした以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体2を作製した。
[実施例3]
実施例1において用いた粒子分散液Aの使用量を、前記感光層分散液100部に対して、6部とした以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体3を作製した。
[実施例4]
実施例2において用いた粒子分散液Aを、前記粒子分散液Bとした以外は、実施例2と同様にして、電子写真感光体4を作製した。
[実施例5]
実施例4において用いた粒子分散液Bの使用量を、前記感光層分散液100部に対して、6部とした以外は実施例4と同様にして、電子写真感光体5を作製した。
[比較例]
実施例1において用いた粒子分散液Aを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体6を作製した。
<感光層の透過率>
実施例1〜5および比較例で用いた感光層形成用塗布液を、アプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が5μmとなるように無反射ガラス上に塗布し、乾燥して得られた膜の780nmの光に対する透過率を、無反射ガラスの透過率と、膜を形成した無反射ガラスの透過率との差から算出した。結果を下記表1に示す。
<電気特性試験>
前記電子写真感光体1〜6を、電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)に搭載して電気特性試験を行なった。電子写真感光体を30rpmの一定速度で回転させ、帯電にはスコロトロン帯電手段を用いて、感光体の初期表面電位が+700Vになるようにグリッド電圧を調整し、除電光として波長660nmの単色光を9.0μJ/cm2で露光した。この条件下で帯電と除電とを3000回繰り返し、その後に同条件のままで再度帯電させて電子写真感光体の表面電位を測定して、繰り返し後の初期表面電位(V0)とした。また、繰り返し後の初期表面電位を帯電させた後、暗所で5秒間放置した後の表面電位を測定し、その電位の初期表面電位に対する比率を百分率で表したものを繰り返し後の暗減衰(DDR)とした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%で行なった。結果を下記表1に示す。
Figure 2009162916
<画像特性試験>
電子写真感光体2および電子写真感光体6を、ブラザー工業株式会社製モノクロレーザープリンター(製品名:HL−5040)に搭載し、画像特性試験を行なった。画像特性試験は、A4用紙の紙送り方向に対して、先頭側三分の一のエリア中央に6cm×3cmのベタ黒画像を、後方側三分の二のエリア全面にハーフトーン画像を印字するテスト画像を1000枚印刷することで行なった。A4用紙の紙送り方向に対して後方側三分の二のエリアに印字したハーフトーン画像内に、黒ベタ画像に由来する画像メモリーが観察されるかを目視で判別した。本発明の電子写真感光体である電子写真感光体2を搭載した場合には、全く画像メモリーが観察されなかったが、電子写真感光体6を搭載した場合には、ハーフトーン画像内に2箇所の画像メモリーが観察された。
本発明の電子写真感光体は、繰り返し使用した際の初期電圧の低下が少なく、さらに感光サイクルを繰り返した場合でも、不要な像が形成されることなく、安定して高品質な画像を形成することができる。したがって、本発明は例えば複写機、プリンター、印刷機等の分野において好適に用いることができる。
一般的な画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。
符号の説明
1 感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(加圧ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 被転写体

Claims (5)

  1. 導電性支持体上に電荷発生物質及び電荷輸送物質を同一層内に含有する感光層を有する電子写真感光体において、該感光層を膜厚5μmで形成した場合の、該感光層の780nmの波長の光に対する透過率が、20%以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 該感光層が、該感光層の露光に用いられる露光光の波長の、二分の一以上の体積平均粒子径を有する粒子を含有することを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 該粒子が有機化合物粒子である
    ことを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備える
    ことを特徴とする電子写真カートリッジ。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備える
    ことを特徴とする画像形成装置。
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