以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜実施することができる。
本発明の電子写真感光体は、感光層中に、電荷輸送材料として後述するエナミン化合物、および、後述する特定結晶型を有する電荷発生材料を組み合わせて用いることが必須である。
<エナミン化合物>
本発明に用いることのできるエナミン化合物とは、下記式(1)で表さられる構造を有するエナミン化合物であればいかなるものであってもよい。
(式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立して、水素原子、分子量100以下の置換基を有していても良いアリール基、分子量100以下の置換基を有していても良いアルキル基を表し、R
1とR
2のうちのいずれか一つと、R
4とR
5のうちのいずれか一つが少なくとも分子量100以下の置換基を有していても良いアリール基である。)
R1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立して、水素原子、分子量100以下の置換基を有していてもよいアリール基、分子量100以下の置換基を有していてもよいアルキル基を表す。なお、アリール基、アルキル基が置換基を有する場合は、その置換基の分子量は100以下である必要がある。
分子量100以下の置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ビフェニル基等が挙げられる。中でも、電子写真感光体の特性を考慮すると、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基が好ましく、フェニル基、ナフチル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
前記アリール基、アルキル基は、分子量100以下の置換基を有していてもよい。置換基の分子量は本発明の効果を得るために、通常100以下であり、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下、特に好ましくは40以下である。好ましい置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐、環状構造を有するアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等のアルキルアミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられ、これらの中でも電子写真感光体特性の面からアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基が好ましく、これらの中でも炭素数5以下のアルキル基、アルコキシ基がより好ましく、更に好ましくは炭素数3以下のアルキル基、アルコキシ基であり、特に好ましくはメチル基、メトキシ基である。
また、R1、R2、R3、R4、R5が有する置換基は、置換基同士が互いに直接結合、又は連結基を介して環状構造を形成することも可能である。
置換基の数は置換可能な限り任意であるが、置換数が多くなるとエナミン化合物の分子量が増大し、本発明の効果が薄れたり、溶解性が低下する可能性があることから、通常R1、R2、R3、R4、R5が置換基を有する場合に、R1、R2、R3、R4、R5一つに対して、置換基の数は通常4以下であり、より好ましくは3以下であり、更に好ましくは2以下である。
また、本発明に用いることのできるエナミン化合物は、前述したとおりに分子量が増大すると、本発明の効果が薄れたり、溶解性が低下する可能性があることから、分子全体の分子量として通常は500以下、より好ましくは485以下、更に好ましくは470以下、更により好ましくは455以下である。また、分子量が小さすぎると感光層中からエナミン化合物がブリードアウトしてしまい、所望の電子写真感光体特性を得られなくなる可能性があることから、通常200以上、より好ましくは225以上、更に好ましくは250以上、より更に好ましくは275以上である。
通常R1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立して、水素原子、分子量100以下の置換基を有していてもよいアリール基、分子量100以下の置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R1とR2のうちのいずれか一つと、R4とR5のうちのいずれか一つが少なくとも分子量100以下の置換基を有していても良いアリール基であるが、エナミン化合物の電荷輸送能力を考慮すると、R1、R4、R5が分子量100以下の置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましく、エナミン化合物の生産性、安定性を考慮すると、R1、R4、R5が分子量100以下の置換基を有していてもよいアリール基、R2が分子量100以下の置換基を有していてもよいアリール基、または、分子量100以下の置換基を有していてもよいアルキル基であることがより好ましく、より好ましくはR1、R2、R4、R5がすべて分子量100以下の置換基を有していてもよいアリール基である。また、R3は水素であることが好ましい。
また、R1〜R5は、直接結合または連結基を介して環状構造を形成することも可能である。連結基の具体例としては、カルボニル基(2価の−C(=O)−を表わ。)、スルフィニル基、スルホニル基、スルフィナト基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキリデン基、オキシ基、セレノ基、チオ基等が挙げられ、好ましくはアルキレン基、アルケニレン基である。連結基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
以下に本発明に好適なエナミン化合物の構造を例示する。以下の構造は本発明をより具体的にするために例示するものであり、本発明の概念を逸脱しない限りは下記構造に限定されるものではない。
(Rは、上記した分子量100以下の置換基を表し、それぞれ同一でも、異なっていても構わない。具体的には、水素原子又は、置換基;置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が好ましい。特に好ましくは、メチル基、メトキシ基である。)
<特定結晶型を有する電荷発生材料>
本発明の電子写真感光体における感光層に含有される特定結晶型を有する電荷発生材料とは、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、24.1°、27.2°、あるいは、9.5°、9.7°、24.1°、27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンである。
他の回折ピークとしては26.2°付近にピークを有する結晶は分散時の結晶安定性に劣ることから、26.2°付近にはピークを有さないことが好ましい。中でも、7.3°、9.6°、11.6°、14.2°、18.0°、24.1°及び27.2°、あるいは、7.3°、9.5°、9.7°、11.6°、14.2°、18.0°、24.1°及び27.2°に主たる回折ピークを有する結晶が電子写真感光体として用いた場合の暗減衰、残留電位の観点からより好ましい。
<粉末XRD測定条件>
粉末のX線回折スペクトルを測定するため、測定装置は、CuKα線を線源とした集中光学系の粉末X線回折計であるPANalytical社製のPW1700を使用した。測定条件は、X線出力40kV、30mA、走査範囲(2θ)3〜40°、スキャンステップ幅0.05°、走査速度3.0°/min、発散スリット1.0°、散乱スリット1.0°、受光スリット0.2mmとした。
本発明に用いることのできる特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンは、通常アモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、または、低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを結晶型変換処理することにより得ることができる。
結晶性を有するフタロシアニンは、通常固体中でフタロシアニン分子が一定の規則性や長期的秩序を有している状態であり、粉末X線回折スペクトルを測定すると明確なピークを有するが、アモルファス性フタロシアニン、及び低結晶性フタロシアニンは、固体中で分子配列の規則性や、分子配列の長期的秩序が低下した状態にあり、図2ないし4に示すように、ハロー図形を示したり、または、ピークを有するがその半価幅の非常にひろいピークを示す。
結晶性フタロシアニンと低結晶性フタロシアニンの違いについての具体的な定義は非常に難しいが、粉末X線回折スペクトルピークの半値幅を用いて示すと、本発明において通常は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)0°〜40°の範囲内に半値幅が0.30°以下のピークを有さないフタロシアニンを低結晶性フタロシアニンと呼ぶ。この半値幅が小さくなりすぎると、固体中でフタロシアニン分子がある程度一定の規則性や長期的秩序を有している状態になっており、結晶型変換の際に結晶型の制御性が低下することから、好ましくは0.35°以下のピークを有さない低結晶性フタロシアニンであり、より好ましくは0.40以下、更に好ましくは0.45°以下のピークを有さない低結晶性フタロシアニンである。
また本発明において好適なフタロシアニン結晶であるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するフタロシアニン結晶へと結晶型を変換させる場合、27.2°付近にピークを有する低結晶性フタロシアニンは、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するフタロシアニン結晶とある程度類似した規則性を有しており、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するフタロシアニン結晶への結晶型制御性に優れることから、低結晶性フタロシアニンの半値幅は通常0.30°以下であり、好ましくは0.35°以下、より好ましくは0.40°以下であり、0.45°以下が更に好ましい。
27.2°付近にピークを有さない低結晶性フタロシアニンは、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するフタロシアニン結晶への結晶型制御性が低いことから、結晶性が低いことが望ましく、通常半値幅は0.30°以下であるが、好ましくは0.50°以下、より好ましくは0.70°以下であり、更に好ましくは0.90°以下である。
図2ないし4に、アモルファス性フタロシアニン、及び低結晶性フタロシアニンの粉末X線回折スペクトルの例を示す。例示スペクトルは本発明を詳細に説明するために例示したものであり、本発明の趣旨の範囲に反しない限りは例示スペクトルに限定されるものではない。
本発明におけるフタロシアニン結晶またはフタロシアニン混晶の前駆体となる低結晶性フタロシアニン、アモルファス性フタロシアニンの調整法としては、アシッドペースト法、アシッドスラリー法等の化学的処理法、粉砕、磨砕等の機械的処理法などの公知の調整法を用いることが可能であるが、より均一なアモルファス性フタロシアニン、又は低結晶性フタロシアニンが得られることから、化学的処理法が好ましく、中でもアシッドペースト法がより好ましい。
化学的処理の具体的な例としては、オキシチタニウムフタロシアニンを濃硫酸中に溶解して行うアシッドペースト法、または、硫酸中で分散状態を経るアシッドスラリー法(硫酸塩法)、ジクロロチタニウムフタロシアニンにフェノール、アルコールを付加させた後に脱離させてオキシチタニウムフタロシアニンを得る方法等の化学的処理方法が挙げられ、中でも、より安定的なアモルファス、低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを得るにはアシッドペースト法がより好ましい。
アシッドペースト法、アシッドスラリー法とは、顔料を強酸に溶解、もしくは、懸濁、分散させた溶液を調整し、その調整した溶液を、強酸と均一に混じり、顔料がほとんど溶解しない媒体中(例えば、オキシチタニウムフタロシアニンの場合は、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテルなど)に放出し、再顔料化させることにより顔料を改質する方法である。
アシッドスラリー法、アシッドペースト法には、濃硫酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸、トリハロゲン化酢酸等の強酸が使用される。これら強酸は、強酸単独、もしくは強酸同士の混合使用、または強酸と有機溶媒の組み合わせ等で用いることが可能である。強酸の種類はオキシチタニウムフタロシアニンの溶解性を考慮すると、トリハロゲン化酢酸、濃硫酸が好ましく、生産コストを考慮すると、濃硫酸がより好ましい。
濃硫酸の含有量は、オキシチタニウムフタロシアニンの溶解性を考慮すると、90%以上の濃硫酸が好ましく、さらに濃硫酸の含有量が低いと生産効率が低下することから、より好ましくは95%以上の濃硫酸である。
強酸にオキシチタニウムフタロシアニンを溶解させる温度は、公知文献に掲載されている温度条件で溶解させることが可能であるが、温度が高すぎるとフタロシアニン環が開環し、分解してしまうことから、5℃以下が好ましく、得られる電子写真感光体に及ぼす影響を考慮すると0℃以下がより好ましい。
用いる強酸の量は、任意の量で用いることが可能であるが、少なすぎるとオキシチタニウムフタロシアニンの溶解性が悪くなることから、オキシチタニウムフタロシアニン1質量部に対して5質量部以上、溶液中の固形分濃度が高すぎると撹拌効率が低下することから15質量部以上が好ましく、より好ましくは20質量部以上である。また、強酸使用量が多すぎると、廃棄酸量が増えることから、100質量部以下が好ましく、また生産効率を考慮すると50質量部以下がより好ましい。
得られたオキシチタニウムフタロシアニンの酸溶液を放出する媒体の種類としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等の鎖状エーテルなどが挙げられ、公知の方法同様に、放出媒体は単一種で用いても、2種類以上を混合して使用してもよい。用いる媒体種により再顔料化された際の粒子形状、結晶状態等が変化し、この履歴が後に得られる最終結晶の電子写真感光体特性に影響を与えることから、好ましくは、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の低級アルコール類が好ましく、生産性、コストの面から水がより好ましい。
オキシチタニウムフタロシアニンの濃硫酸溶液を放出媒体に放出し、再顔料化されたオキシチタニルフタロシアニンは濾別によりウェットケーキとして濾別されるが、このウエットケーキは放出媒体中に存在した、濃硫酸の硫酸イオン等の不純物を多く含むことから、再顔料化された後に、洗浄媒体で洗浄を行う。洗浄を行う媒体は、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、酢酸ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液等のアルカリ性水溶液、希塩酸、希硝酸、希酢酸等の酸性水溶液、イオン交換水等の水などが挙げられるが、顔料中に残存したイオン性物質は電子写真感光体特性に悪影響を与える場合が多いことから、イオン交換水等のイオン性の物質を取り除いた水が好ましい。
通常、アシッドペースト法、アシッドスラリー法より得られるオキシチタニウムフタロシアニンは明確な回折ピークを有さないアモルファスか、ピークは有するが、その強度が非常に弱く、半価幅の非常に大きいピークを有する低結晶性のものである。通常、アシッドペースト法、アシッドスラリー法により得られたアモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、又は低結晶性のオキシチタニウムフタロシアニンを有機溶媒に接触させることにより、本発明の電子写真感光体に用いることができるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、24.1°、27.2°、または、9.5°、9.7°、24.1°、27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを得ることができる。
通常有機溶媒との接触は水の存在下で行われる。水はアシッドペースト法、アシッドスラリー法により得られた含水ケーキ中に含まれたものを用いても、アシッドペースト法、アシッドスラリー法後に得られた含水ケーキをいったん乾燥させ、結晶変換時に新たに水を追加して用いても良いが、乾燥させてしまうと顔料と水との親和性が低下することから、乾燥させずにアシッドペースト法、アシッドスラリー法により得られた含水ケーキ中に含まれたものを用いて行うのが好ましい。
結晶変換に用いることができる溶媒としては、水と相溶性のある溶媒、水と非相溶の溶媒のいずれでも可能である。水と相溶性のある溶媒の好適な例としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテルが挙げられる。また、水と非相溶の溶媒の好適な例としては、トルエン、ナフタレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロトルエン、クロロベンゼン、o−ジクロロトルエン、ジクロロフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ニトロベンゼン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、アセトフェノン、クロロベンズアルデヒド等の置換芳香族系溶媒が挙げられ、中でも、環状エーテル、クロロトルエン、ハロゲン化炭化水素溶媒、芳香族炭化水素系溶媒が、得られた結晶の電子写真特性が良好であることからこの好ましく、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,2−ジクロロトルエン、ジクロロフルオロベンゼン、クロロベンズアルデヒド、トルエン、ナフタレンが、得られた結晶の分散時の安定性という点でより好ましい。
結晶変換後得られた結晶は、乾燥工程を行うことになるが、乾燥方法は送風乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の公知の方法で乾燥することが可能である。
これらオキシチタニウムフタロシアニンの粒子径は製法、結晶変換方法によって大きく異なるが、分散性を考慮すると、1次粒子径として、500nm以下が好ましく、塗布成膜性の面からは250nm以下であることが好ましい。
本発明において使用するオキシチタニウムフタロシアニン結晶としては、塩素含有量0.4質量%以下のオキシチタニウムフタロシアニン結晶、または、塩素化オキシチタニウムタロシアニンの割合が無置換オキシチタニウムフタロシアニンに対してマススペクトル強度比が0.05以下であるオキシチタニウムフタロシアニンから結晶変換されて得られるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを用いることが好ましい。
オキシチタニウムフタロシアニン結晶中の塩素含有量、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンと無置換オキシチタニウムフタロシアニンのマススペクトルの強度比は以下のような条件によって測定することが可能である。
<塩素含有量測定条件>
オキシチタニウムフタロシアニン約100mgを精秤し、石英ボードにとり、三菱化学社製昇温型電気炉QF−02にて完全燃焼し、燃焼ガスを水15mlにて定量吸収させた。その吸収液を50mlに希釈し、イオンクロマトグラフィー(Dionex社製「DX−120」)でCl分析を行った。下記にイオンクロマトグラフィーの条件を示す。
カラム:Dionex IonPak AG12A+AS12A
溶離液:2.7mM Na2CO3/0.3mM NaHCO3
流量:1.3ml/min
注入量:50μl
<マススペクトル測定条件>
1・資料の調整
オキシチタニウムフタロシアニン0.50gをガラスビーズ(φ1.0−1.4mm)30g、シクロヘキサノン10gと共に50mlのガラス容器に入れ、染料分散試験機(ペイントシェーカー)で3時間分散処理をし、オキシチタニウムフタロシアニン分散液とした。この分散液を20mlサンプル瓶に1μl採取し、クロロホルム5mlを加えた。次に1時間超音波により分散させ、10ppm分散液を調整した。
2・測定装置・条件
測定装置:JEOL製 JMS−700/MStaion
イオン化モード:DCI(−)
反応ガス:イソブタン(イオン化室圧力1×10−5Torr)
フィラメントレート:0 → 0.90A(1A/min)
質量分析能:2000
スキャン法:MF−Linear
スキャン質量範囲:500 to 600
全質量範囲スキャン時間:0.8sec
繰り返し時間:0.5sec
3・塩素化オキシチタニウムフタロシアニンと無置換オキシチタニウムフタロシアニンのマススペクトル強度比算出方法
測定用分散液1μlをDCIプローブのフィラメントに塗布し、マススペクトルを上記条件で実施した。得られたマススペクトルにおいて、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの分子イオンに相当するm/z=610及び無置換オキシチタニウムフタロシアニンの分子イオンに相当するm/z=576のイオンクロマトから得られるピーク面積の比(「610」ピーク面積/「576」ピーク面積)をマススペクトル強度比として算出する。
オキシチタニウムフタロシアニン中に含有される塩素分の種類としては、反応に用いた溶媒の残存物、原料として用いる四塩化チタンから由来したイオン種として含有されるものや、四塩化チタンを中心金属源として用いた場合に反応系中でフタロシアニン環に塩素化が起こり、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンとして結晶中に含有されるものなどがある。これら不純物のうち、反応溶媒や、イオン種のものについては、ほとんどのものが反応後の洗浄操作で洗い出されるのに対して、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンについては、反応系中でフタロシアニン結晶を形成する際に、その結晶中に取り込まれてしまうことから、容易に除去できず、これが最終段階まで残り、塩素分として残存することになる。
先述した元素分析手法に基づいて測定される塩素含有率について、0.4質量%以下であることが好ましい。この理由は明確ではないが、不純物として、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン結晶は、準安定型の結晶型であり、物理的力等の外的な衝撃に弱く、安定結晶型への結晶型の転位が起こってしまう。塩素原子を有する化合物等の大きな分子団が結晶中に存在すると、結晶中の分子配列の歪みが大きくなり、物理的な力による影響を受けやすくなり、結晶安定性が低下するため、塩素含有量0.3質量%であることがより好ましい。また、塩素原子を有する化合物等が存在すると結晶中の分子間距離が離れ、分子面間のπ電子系の相互作用が低下し、電荷発生能力に対して悪影響を与えることから、塩素含有率は0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
フタロシアニン環が塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの量については、先述したマススペクトルのサンプル調整方法、測定方法、スペクトル強度比算出方法に基づいて求めることが可能である。前記同様に、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンが結晶中に含有されると、その塩素基が置換されている分だけ単分子の体積が大きくなり、結晶中の分子配列に影響を与え、結晶の安定性が低下することから、前記マススペクトル測定によるピーク強度比が、0.050以下が好ましく、クロロオキシチタニウムフタロシアニンの含有量が多くなると、感度が悪化する傾向にあることから、0.030以下がより好ましい。
<電子写真感光体の構成>
本発明の電子写真感光体は導電性支持体上に前述したエナミン化合物および特定結晶型を有する電荷発生材料を含有する感光層を有する。
<導電性支持体>
感光体に用いる導電性支持体としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のために、適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものでもよい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いることが好ましい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが好ましい。
例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/L、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/L、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行うことが好ましい。封孔処理は、公知の方法で行われればよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/Lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、25〜40℃、好ましくは30〜35℃で、また、フッ化ニッケル水溶液pHは4.5〜6.5、好ましくは5.5〜6.0の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としてはシュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることができる。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることができるが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/Lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は80〜100℃、好ましくは90〜98℃で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。ここでpH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることができる。処理時間は10分以上、好ましくは20分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。
平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って、生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。具体的には、導電性支持体はその表面粗さRaが0.01μm以上、0.3μm以下であることが好ましい。Raが0.01μm未満では接着性が悪くなる場合があり、0.3μmを超えると黒ポチ等の画像欠陥が発生する場合がある。Raの最も好ましい範囲は0.01〜0.20μmの範囲である。
[表面粗さRaの測定法と定義]
表面粗さRaは、算術平均粗さを意味し、平均線から絶対値偏差の平均値を表している。具体的には、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から、測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。上記Raは表面粗さ計(東京精密社製 サーフコム 570A)で測定した値が用いられる。但し、誤差範囲内で同一の結果を生じる測定器であれば、他の測定器を用いてもよい。
導電性支持体の表面粗さを上記範囲に加工するには、切削工具等で支持体表面を削り粗面化する方法や、微細な粒子を支持体表面に衝突させることによる、サンドブラスト加工の方法、特開平4−204538号に記載の氷粒子洗浄装置による加工の方法、特開平9−236937号に記載のホーニング加工の方法がある。また、陽極酸化法やアルマイト処理法、バフ加工法、あるいは、特開平4−233546号に記載のレーザー溶発法による方法、特開平8−1502号に記載の研磨テープによる方法や、特開平8−1510号に記載のローラバニシング加工の方法等が挙げられる。しかし、支持体の表面を荒らす方法としてはこれらに限定されるものではない。
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケル等の金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウム等を蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体の原料としては常温で比抵抗103Ωcm以下のものが好ましい。
<下引き層>
本発明の電子写真感光体は、下引き層を含有することが好ましい。この下引き層は、バインダー樹脂と屈折率2.0以下の金属酸化物粒子を含有することが好ましい。また、該下引き層をメタノールと1−プロパノールとを7:3の質量比で混合した溶媒に分散した液中の金属酸化物凝集体二次粒子の体積平均粒子径が0.1μm以下であって、かつ、累積90%粒子径が0.3μm以下であることは好ましい。更に好ましくは、体積平均粒子径が0.09μm以下であって、かつ、累積90%粒子径が0.2μm以下であることは好ましい。また、体積平均径が小さすぎると、クリーニング不良、装置汚染を引き起こす場合があり、体積平均粒子径は0.01μm以上が好ましく、累積90%粒子径も0.05μm以上であることは好ましい。
<金属酸化物>
本発明においては、下引き層に、金属酸化物粒子を使用することが好ましい。金属酸化物粒子としては、通常電子写真感光体に使用可能な如何なる金属酸化物粒子も使用することができる。金属酸化物粒子として、より具体的には、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。これらの中でもバンドギャップが2〜4eVの金属酸化物粒子が好ましい。金属酸化物粒子は、一種類の粒子のみを用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属酸化物粒子の中でも、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、及び酸化亜鉛が好ましく、より好ましくは酸化チタン及び酸化アルミニウムであり、特には酸化チタンが好ましい。
酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスの何れも用いることができる。また、これらの結晶状態の異なるものから、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
金属酸化物粒子は、その表面に種々の表面処理を行ってもよい。例えば、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、有機珪素化合物等の有機物による処理を施していてもよい。特に、酸化チタン粒子を用いる場合には、有機珪素化合物により表面処理されていることが好ましい。有機珪素化合物としては、ジメチルポリシロキサン又は、メチル水素ポリシロキサン等のシリコーンオイル及びメチルジメトキシシラン、ジフェニルジジメトキシシラン等オルガノシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が一般的であるが下記一般式(C)の構造で表されるシラン処理剤が金属酸化物粒子との反応性も良く最も良好な処理剤である。
式(C)中、R1u及びR2uは、それぞれ独立して、アルキル基を示し、より具体的にはメチル基又はエチル基を示す。R3uは、アルキル基又はアルコキシ基であって、より具体的には、メチル基、エチル基、メトキシ基及びエトキシ基よりなる群より選ばれた基を示す。なお、これらの表面処理された粒子の最表面はこのような処理剤で処理されているが、該処理のその前に酸化アルミ、酸化珪素又は酸化ジルコニウム等の処理剤等で処理されていても構わない。酸化チタン粒子は、一種類の粒子のみを用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。
使用する金属酸化物粒子は、通常、平均一次粒子径が500nm以下のものが用いられ、好ましくは1nm〜100nmのものが用いられ、より好ましくは5nm〜50nmのものが用いられる。この平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(Transmission electron micloscope、以下、「TEM」と略記する。)により直接観察される粒子の径の算術平均値によって求める。
また、使用する金属酸化物粒子としては種々の屈折率を有するものが利用可能であるが、通常電子写真感光体に用いることのできるものであれば、どのようなものも使用可能である。好ましくは、屈折率1.4以上であって、屈折率3.0以下のものが用いられる。金属酸化物粒子の屈折率は、各種の刊行物に記載されているが、例えばフィラー活用辞典(フィラー研究会編、大成社、1994)によれば下記表1のようになっている。
本発明において用いる金属酸化物粒子のうち、酸化チタン粒子の具体的な商品名としては、表面処理を施していない超微粒子酸化チタン「TTO−55(N)」、Al2O3被覆を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(A)」、「TTO−55(B)」、ステアリン酸で表面処理を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(C)」、Al2O3とオルガノシロキサンで表面処理を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(S)」、高純度酸化チタン「CR−EL」、硫酸法酸化チタン「R−550」、「R−580」、「R−630」、「R−670」、「R−680」、「R−780」、「A−100」、「A−220」、「W−10」、塩素法酸化チタン「CR−50」、「CR−58」、「CR−60」、「CR−60−2」、「CR−67」、導電性酸化チタン「SN−100P」、「SN−100D」、「ET−300W」(以上、石原産業社製)や、「R−60」、「A−110」、「A−150」等の酸化チタンをはじめ、Al2O3被覆を施した「SR−1」、「R−GL」、「R−5N」、「R−5N−2」、「R−52N」、「RK−1」、「A−SP」、SiO2、Al2O3被覆を施した「R−GX」、「R−7E」、ZnO、SiO2、Al2O3被覆を施した「R−650」、ZrO2、Al2O3被覆を施した「R−61N」(以上、堺化学工業社製)、また、SiO2、Al2O3で表面処理された「TR−700」、ZnO、SiO2、Al2O3で表面処理された「TR−840」、「TA−500」の他、「TA−100」、「TA−200」、「TA−300」等表面未処理の酸化チタン、Al2O3で表面処理を施した「TA−400」(以上、富士チタン工業社製)、表面処理を施していない「MT−150W」、「MT−500B」、SiO2、Al2O3で表面処理された「MT−100SA」、「MT−500SA」、SiO2、Al2O3とオルガノシロキサンで表面処理された「MT−100SAS」、「MT−500SAS」(以上、テイカ社製)等が挙げられる。
また、酸化アルミニウム粒子の具体的な商品名としては、「Aluminium Oxide C」(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
また、酸化珪素粒子の具体的な商品名としては、「200CF」、「R972」(日本アエロジル社製)、「KEP−30」(日本触媒社製)等が挙げられる。また、酸化スズ粒子の具体的な商品名としては、「SN−100P」(石原産業社製)等が挙げられる。そして、酸化亜鉛粒子の具体的な商品名としては「MZ−305S」(テイカ社製)が挙げられるが、本発明において使用可能な金属酸化物粒子は、これらに限定されるものではない。
本発明における電子写真感光体の下引き層形成用塗布液において、バインダー樹脂1質量部に対して、金属酸化物粒子は、0.5質量部〜4質量部の範囲で用いることが好ましい。
<バインダー樹脂>
下引き層において使用されるバインダー樹脂としては、電子写真感光体の下引き層形成用塗布液に通常用いられる、有機溶剤に可溶であって、かつ形成後の下引き層が、感光層形成用の塗布液に用いられる有機溶剤に不溶であるか、溶解性の低く、実質上混合しないものであれば、特に限定されるものではない。
このようなバインダー樹脂としては例えば、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、ポリアミド樹脂、特に、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等のポリアミド樹脂は、良好な分散性及び塗布性を示し好ましい。
ポリアミド樹脂としては例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン等を共重合させた、いわゆる共重合ナイロンや、N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチル変性ナイロンのようにナイロンを化学的に変性させたタイプ等のアルコール可溶性ナイロン樹脂を挙げることができる。具体的な商品名としては、例えば、「CM4000」「CM8000」(以上、東レ社製)、「F−30K」「MF−30」「EF−30T」(以上、ナガセケムテック社製)等が挙げられる。
これらポリアミド樹脂の中でも、下記式(D)で表されるジアミンを構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂が特に好ましく用いられる。
式(D)においてR4〜R7は、それぞれ独立に、水素原子又は有機置換基を示す。m、nはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、置換基が複数の場合それらの置換基は互いに異なっていてもよい。R4〜R7で表される有機置換基としては、炭素数20以下の、ヘテロ原子を含んでいても構わない炭化水素基が好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等のアリール基が挙げられ、より好ましくはアルキル基又はアルコキシ基であり、特に好ましくは、メチル基又はエチル基である。
式(D)で表されるジアミンを構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂は、他に例えば、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類;1,4−ブタンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,20−アイコサンジカルボン酸等のジカルボン酸類;1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等のジアミン類;ピペラジン等を組み合わせて、2元、3元、4元等に共重合させたものが挙げられる。この共重合比率について特に限定はないが、通常、一般式(D)で表されるジアミン成分が5〜40mol%であり、好ましくは5〜30mol%である。
共重合ポリアミドの数平均分子量としては、10000〜50000が好ましく、特に好適には15000〜35000である。数平均分子量が小さすぎても、大きすぎても膜の均一性を保つことが難しくなりやすい。共重合ポリアミドの製造方法には特に制限はなく、通常のポリアミドの重縮合方法が適宜適用され、溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等が用いられる。また重合に際して、酢酸や安息香酸等の一塩基酸、あるいは、ヘキシルアミン、アニリン等の一酸塩基、分子量調節剤として加えることも何らさしつかえない。
また、亜リン酸ソーダ、次亜リン酸ソーダ、亜リン酸、次亜リン酸やヒンダードフェノールに代表される熱安定剤やその他の重合添加剤を加えることも可能である。本発明で使用されるのが好適な共重合ポリアミドの具体例を以下に示す。但し具体例中、共重合比率はモノマーの仕込み比率(モル比率)を表す。
また、電子写真感光体は、一種類以上の硬化性樹脂を含有することは好ましい。特に下引き層に使用されることは好ましく、該硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、EB硬化性樹脂等が使用されることは好ましい。何れの場合も、塗布後に、ポリマー間等での反応がおこり、架橋が起こって、ポリマーが硬化する。
ここで、硬化性樹脂の具体例について説明する。熱硬化性樹脂は、熱によって化学反応を起して硬化するタイプの樹脂の総称である。具体的には、フェノール樹脂・尿素樹脂・メラミン樹脂、エポキシ樹脂硬化物、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等がある。また、通常の熱可塑性ポリマーに、硬化性置換基を導入して、硬化性を持たせることも可能である。一般的には、縮合系橋掛けポリマー、付加系足掛けポリマー等と呼ばれることもあり、3次元的に架橋構造を持つポリマーである。通常、製造の際には、硬化性樹脂は時間の経過とともに反応が進行し、反応率と分子量が増える。これにより、弾性率は増加し、比容積は減少し、溶媒に対する溶解度が、大きく減少する。
次に、一般的な熱硬化性樹脂について、説明する。フェノール樹脂とは、フェノール類とホルムアルデヒドから作られた合成樹脂であり、安く、きれいに形が作れるという利点を有する。一般的に、フェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)の反応では、酸性条件では、F/Pモル比が0.6〜1程度のものが得られ、塩基触媒では、1〜3程度の樹脂が生成する。
また、尿素樹脂は、尿素とホルマリンとを反応させてできる合成樹脂であり、無色透明な固体で色を自由につけることができるという利点を有する。一般的に、尿素と、ホルムアルデヒドとの反応では、酸性条件では、メチロール基を持たないポリメチレン尿素が生成し、塩基性下では、メチロール尿素類の混合物が得られる。
また、メラミン樹脂は、メラミン誘導体とホルムアルデヒドとの反応により得られる熱硬化性樹脂であり、尿素樹脂よりも高価であるが、硬度、耐水性、耐熱性に優れ、しかも無色透明で着色が自由にできるという利点を有し、積層、接着用として優れる。
また、エポキシ樹脂は、高分子内に残存させたエポキシ基でグラフト重合させることで硬化させることが可能な熱硬化性樹脂の総称である。グラフト重合前のプレポリマーと硬化剤を混合して熱硬化処理を行うと製品として完成するが、プレポリマーも製品化した樹脂も両者ともエポキシ樹脂と呼ばれる。プレポリマーは、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する、主として、液状の化合物である。このポリマーと、種々の硬化剤の反応(主として重付加)により、三次元ポリマーが生成し、エポキシ樹脂硬化物となる。エポキシ樹脂硬化物は、接着性、密着性が良好で、耐熱性、耐薬品性、電気安定性に優れている。汎用のエポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリジルエーテル系のものであるが、他に、グリシジルエステル系、グリシジルアミン系の樹脂や、環状脂肪族エポキシ樹脂等がある。硬化剤としては、脂肪族、及び、芳香族ポリアミンや、酸無水物、ポリフェノールが代表的なもので、これらは、エポキシ基と、重付加により反応して、高分子化、三次元化する。他に、第3アミンや、ルイス酸等もある。
また、ウレタン樹脂とは、通常イソシアネート基とアルコール基が縮合してできるウレタン結合でモノマーを共重合させた高分子化合物である。通常、常温で液体の主剤と硬化剤に分かれており、その2液を撹拌混合することで重合させ固体とする。
また、不飽和ポリエステル樹脂は、常温で液体の樹脂と硬化剤に分かれており、その2液を撹拌混合することで重合させ固体とする。透明度が高いという特長を持つが、重合硬化時の縮みが大きく、寸法安定性等については問題がある。しばしば揮発性溶剤が混入された形で販売されているため、硬化後も溶剤の揮発に伴い、徐々に変形する。
光硬化性樹脂は、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のオリゴマー(低重合体)、反応性希釈剤(モノマー)、及び光重合開始剤(ベンゾイン系、アセトフェノン系等)を混合したものから成る。この他にも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の多官能モノマーを共重合するもの等を利用した、付加系足掛けポリマー等もある。また、いわゆる、硬化型樹脂以外のポリマーを併用することは好ましく、特には、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、前記変性ポリアミド等のポリアミド樹脂は、良好な分散性及び塗布性を示し好ましい。
下引き層形成用塗布液に用いる有機溶媒としては、下引き層用のバインダー樹脂を溶解することができる有機溶媒であれば、どのようなものでも使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール又はノルマルプロピルアルコール等の炭素数5以下のアルコール類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、トリクレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド等の含窒素有機溶媒類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられるが、これらの中から任意の組み合わせ及び任意の割合の混合溶媒で用いることができる。また、単独では下引き層用のバインダー樹脂を溶解しない有機溶媒であっても、例えば上記の有機溶媒との混合溶媒とすることで該バインダー樹脂を溶解可能で有れば、使用することができる。一般に、混合溶媒を用いた方が塗布ムラを少なくすることができる。
下引き層形成用塗布液に用いる有機溶媒と、バインダー樹脂、酸化チタン粒子等の固形分の量比は、下引き層形成用塗布液の塗布方法により異なり、適用する塗布方法において均一な塗膜が形成されるように適宜変更して用いればよい。
また、層形成用塗布液は、金属酸化物粒子を含有するものが好ましいが、この場合、該金属酸化物粒子は塗布液中に分散されて存在する。塗布液中に金属酸化物粒子を分散させるには、例えば、ボールミル、サンドグラインドミル、遊星ミル、ロールミル等の公知の機械的な粉砕装置で有機溶媒中にて湿式分散することにより製造することができるが、分散メディアを利用して分散することが好ましい。
分散メディアを利用して分散する分散装置としては、公知のどのような分散装置を用いて分散しても構わないが、ペブルミル、ボールミル、サンドミル、スクリーンミル、ギャップミル、振動ミル、ペイントシェーカー、アトライター等が挙げられる。これらの中でも塗布液を循環させて分散できるものが好ましく、分散効率、到達粒径の細かさ、連続運転の容易さ等の点から、湿式撹拌ボールミル、例えば、サンドミル、スクリーンミル、ギャップミルが用いられる。これらのミルは、縦型、横型何れのものでもよい。また、ミルのディスク形状は、平板型、垂直ピン型、水平ピン型等任意のものを使用できる。好ましくは、液循環型のサンドミルが用いられる。
前記湿式撹拌ボールミルとしては、円筒形のステータと、ステータの一端に設けられるスラリーの供給口と、ステータの他端に設けられるスラリーの排出口と、ステータ内に充填されるメディアと供給口より供給されたスラリーを撹拌混合するピン、ディスク或いはアニューラタイプのロータと、排出口に連結され、かつロータと一体をなして回転するか、或いはロータとは別個に独立して回転し、遠心力の作用によりメディアとスラリーに分離して、スラリーを排出口より排出させるインペラタイプのセパレータとよりなる湿式撹拌ボールミルにおいて、セパレータを回転駆動するシャフトの軸心を上記排出口に通ずる中空な排出口としたものが特に好ましい。
このような湿式撹拌ボールミルによれば、セパレータによりメディアを分離したスラリーはシャフトの軸心を通って排出されるが、軸心では遠心力が作用しないため、スラリーは運動エネルギーを有しない状態で排出される。このために運動エネルギーが無駄に放出されず、無駄な動力が消費されなくなる。
このような湿式撹拌ボールミルは、横向きでもよいが、メディアの充填率を多くするために好ましくは縦向きで、排出口がミル上端に設けられる。またセパレータもメディア充填レベルより上方に設けるのが望ましい。排出口をミル上端に設ける場合、供給口はミル底部に設けられる。好ましい態様において、供給口は弁座と、弁座に昇降可能に嵌合し、弁座のエッジと線接触が可能なV形、台形或いはコーン状の弁体とより構成され、弁座のエッジとV形、台形或いはコーン状の弁体との間にメディアが通過し得ないような環状のスリットを形成することにより、原料スラリーは供給されるが、メディアの落ち込みは防止できるようにされる。また弁体を上昇させることによりスリットを広げてメディアを排出させたり、或いは弁体を降下させることによりスリットを閉じてミルを密閉させることが可能である。更にスリットは弁体と弁座のエッジで形成されるため、原料スラリー中の粗粒子が噛み込み難く、噛み込んでも上下に抜け出し易く詰まりを生じにくい。
このような湿式撹拌ボールミルにはまた、底部にメディアを分離するスクリーンと、製品スラリーの取り出し口を設け、粉砕終了後、ミル内に残留する製品スラリーを取り出せるようにするのが望ましい。
本発明において、使用が好適な、下引き層形成用塗布液を分散するのに適用される湿式撹拌ボールミルは、セパレータがスクリーンやスリット機構であってもよいが、インペラタイプのものが望ましく、縦型であることが好ましい。湿式撹拌ボールミルは縦向きにし、セパレータをミル上部に設けることが望まれるが、特にメディアの充填率を80〜90%に設定すると、粉砕が最も効率的に行われる上、セパレータをメディア充填レベルより上方に位置させることが可能となり、メディアがセパレータに乗って排出されるのを防止することができる効果もある。
このような構造を有する湿式撹拌ボールミルとしては、具体的には例えば寿工業社製のウルトラアペックスミルが挙げられる。
金属酸化物の分散は、分散溶媒の共存下湿式で行うことが好ましいが、バインダー樹脂や各種添加剤を同時に混合していても構わない。該溶媒としては、特に制限されないが、前記の下引き層形成用塗布液に用いる有機溶媒を用いれば、分散後に溶媒交換等の工程を経る必要が無くなり好適である。これらの溶媒は何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて混合溶媒として用いてもよい。
溶媒の使用量は、生産性の観点から、分散対象となる金属酸化物1質量部に対して通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、通常500質量部以下、好ましくは100質量部以下の範囲である。機械的分散時の温度としては、溶媒(又は混合溶媒)の凝固点以上、沸点以下で行うことが可能であるが、製造時の安全性の面から、通常、10℃以上、200℃以下の範囲で行われる。
分散メディアを用いた分散処理後、該分散メディアを分離・除去し、更に超音波処理することが好ましい。超音波処理は、下引き層形成用塗布液に超音波振動を加えるものであるが、振動周波数等には特に制限はなく、通常、周波数10kHz〜40kHz、好ましくは15kHz〜35kHzの発振器により超音波振動を加える。
超音波発振機の出力に特に制限はないが、通常100W〜5kWのものが用いられる。通常、多量の塗布液を大出力の超音波発振機による超音波で処理するよりも、少量の塗布液を小出力の超音波発振機による超音波で処理する方が分散効率が良いため、一度に処理する下引き層形成用塗布液の量は、1〜50Lが好ましく、より好ましくは5〜30Lであって、特には10〜20Lが好ましい。また、この場合の超音波発振機の出力は、200W〜3kWが好ましく、より好ましくは300W〜2kWであって、特には500W〜1.5kWが好ましい。
下引き層形成用塗布液に超音波振動を加える方法に特に制限はないが、下引き層形成用塗布液を納めた容器中に超音波発振機を直接浸漬する方法、下引き層形成用塗布液を納めた容器外壁に超音波発振機を接触させる方法、超音波発信機により振動を加えた液体の中に下引き層形成用塗布液を納めた溶液を浸漬する方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、超音波発信機により振動を加えた液体の中に下引き層形成用塗布液を納めた溶液を浸漬する方法が好適に用いられる。この場合、超音波発信機により振動を加える液体としては、水;メタノール等のアルコール類;トルエン等の芳香族炭化水素類;シリコーンオイル等の油脂類が挙げられるが、製造上の安全性、コスト、洗浄性等を勘案すれば、水を用いることが好ましい。超音波発信機により振動を加えた液体の中に下引き層形成用塗布液を納めた溶液を浸漬する方法では、該液体の温度により超音波処理の効率が変化するため、該液体の温度を一定に保つことが好ましい。加えた超音波振動により振動を加えた液体の温度が上昇することがある。該液体の温度は、通常は5〜60℃、好ましくは10〜50℃、より好ましくは15〜40℃の温度範囲において超音波処理することが好ましい。
超音波処理する際に下引き層形成用塗布液を納める容器としては、電子写真感光体用の感光層を形成するのに用いられる下引き層形成用塗布液を入れるのに通常用いられる容器であればどのような容器でも構わないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製の容器や、ガラス製容器、金属製の缶が挙げられる。これらの中では金属製の缶が好ましく、特に、JIS Z 1602 に規定される、18リットル金属製缶が好適に用いられる。有機溶媒に侵され難く、衝撃に強いからである。
下引き層形成用塗布液は、粗大な粒子を除去するために、必要に応じて濾過した後使用される。この場合の濾過メディアとしては、通常濾過するために用いられる、セルロース繊維、樹脂繊維、ガラス繊維等、何れの濾過材を用いても構わない。濾過メディアの形態としては、濾過面積が大きく効率がよいこと等の理由により、芯材に各種繊維を巻き付けた、いわゆるワインドフィルターが好ましい。芯材としては従前公知の何れの芯材も用いることができるが、ステンレスの芯材、ポリプロピレン等の下引き層形成用塗布液に溶解しない樹脂製の芯材等が挙げられる。
このようにして製造された下引き層形成用塗布液は、所望により更に結着剤や種々の助剤等を添加して、下引き層の形成に用いる。
酸化チタン粒子等の金属酸化物粒子を下引き層用塗布液中に分散させるには、平均粒子径5μm〜200μmの分散メディアを用いることは好ましい。
分散メディアは通常、真球に近い形状をしているため、例えばJIS Z 8801:2000等に記載のふるいによりふるい分けする方法や、画像解析により測定することにより平均粒子径を求めることができ、アルキメデス法により密度を測定することができる。具体的には例えば、ニレコ社製のLUZEX50等に代表される画像解析装置により、平均粒子径と真球度を測定することが可能である。分散メディアの平均粒子径としては、通常5μm〜200μmのものが用いられ、特に10μm〜100μmであるのがより好ましい。一般に小さな粒径の分散メディアの方が、短時間で均一な分散液を与える傾向があるが、過度に粒径が小さくなると分散メディアの質量が小さくなりすぎて効率よい分散ができなくなる。
分散メディアの密度としては、通常5.5g/cm3以上のものが用いられ、好ましくは5.9g/cm3以上、より好ましくは6.0g/cm3以上のものが用いられる。一般に、より高密度の分散メディアを使用して分散した方が短時間で均一な分散液を与える傾向がある。分散メディアの真球度としては、1.08以下のものが好ましく、より好ましくは1.07以下の真球度を持つ分散メディアを用いる。
分散メディアの材質としては、下引き層形成用塗布液に不溶、かつ、比重が下引き層形成用塗布液より大きなものであって、下引き層形成用塗布液と反応したり、下引き層形成用塗布液変質させたりしないものであれば、公知の如何なる分散メディアも使用することができ、クローム球(玉軸受用鋼球)、カーボン球(炭素鋼球)等のスチール球;ステンレス鋼球;窒化珪素球、炭化珪素、ジルコニア、アルミナ等のセラミック球;窒化チタン、炭窒化チタン等の膜でコーティングされた球等が挙げられるが、これらの中でもセラミック球が好ましく、特にはジルコニア焼成ボールが好ましい。より具体的には、特許第3400836号公報に記載のジルコニア焼成ビーズを用いることが特に好ましい。
<下引き層形成方法>
本発明において、好適な、下引き層は、下引き層形成用塗布液を支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、スパイラル塗布、リング塗布、バーコート塗布、ロールコート塗布、ブレード塗布等の公知の塗布方法により塗布し、乾燥することにより形成される。
スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機又はカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗布液を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
浸漬塗布法の場合、通常、下引き層形成用塗布液の全固形分濃度は、通常1質量%以上、好ましくは10質量%以上であって、通常50質量%以下、好ましくは35質量%以下の範囲とし、粘度を好ましくは0.1mPa・s以上、また、好ましくは100mPa・s以下の範囲とする。
その後塗布膜を乾燥するが、必要かつ充分な乾燥が行われる様に乾燥温度、時間を調整する。乾燥温度は通常100〜250℃、好ましくは110℃〜170℃、更に好ましくは115℃〜140℃の範囲である。乾燥方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機及び遠赤外線乾燥機を用いることができる。
<電荷発生物質>
導電性支持体上に形成された感光層としては、電荷発生物質と電荷輸送物質が同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層構造のものであっても、若しくは、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層と電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層とに機能分離された積層構造のものの何れであってもよい。
本発明においては、先述した特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生物質として用い、必要に応じて、その他の電荷発生物質として、染顔料を使用することが可能である。この例としては、例えば、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等各種光導電材料が使用でき、特に有機顔料、更にはフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。
併用されるフタロシアニンとしては、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。なお、これらのフタロシアニンのうち、A型(β型)、B型(α型)、D型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
また、アゾ顔料を併用する場合には、各種公知のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を下記に示す。下記一般式において、Cp1ないしCp3はカップラーを表す。
Cp1ないしCp3のカップラーとしては、好ましくは以下構造を示すものである。
積層型感光体における電荷発生層に用いられる結着樹脂の例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーの中から選択し、用いることができるが、これらポリマーに限定されるものではない。また、これら結着樹脂は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
結着樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒、分散媒としては例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等の鎖状、分岐、及び環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状、及び環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水等が挙げられ、後述する下引き層を溶解しないものが好ましく用いられる。またこれらは単独、又は2種以上を併用しても用いることが可能である。
積層型感光体の電荷発生層において、前記結着樹脂と電荷発生物質との配合比(質量)は、バインダー樹脂100質量部に対して10から1000質量部、好ましくは30から500質量部の範囲であり、その膜厚は通常0.1μmから4μm、好ましくは0.15μmから0.6μmである。電荷発生物質の比率が高すぎる場合は電荷発生物質の凝集等の問題により塗布液の安定性が低下し、一方低すぎる場合は感光体としての感度の低下をまねくことから、前記範囲で使用することが好ましい。前記電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散方法を用いることができる。この際粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の粒子サイズに微細化することが有効である。
<電荷輸送物質>
電荷輸送物質としては、前記エナミン化合物が用いられる。前記エナミン化合物は単独で用いても他の電荷輸送性物質と併用で使用してもよい。併用する電荷輸送性物質としては、公知の物質であればとくに限定されるものではなく、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖、もしくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中で、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。
下記に本発明に用いることが出来る好適な電荷輸送物質の構造を例示する。
上記式中、R’は同一でも、それぞれ異なっていても構わない(分子内でも)。具体的には、水素原子又は置換基であり、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基等が好ましい。特に好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、n’は0ないし2の整数である。
本発明の電子写真感光体において、前記エナミン化合物と併用される電荷輸送剤の量は、多すぎると本発明の効果が薄まる可能性があることから、感光層中の全電荷輸送剤の量を100質量部とした場合、通常前記エナミン化合物の使用量が50質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは70質量部以上、更により好ましくは80質量部以上である。
<バインダー樹脂>
電荷発生層と電荷輸送層を有する機能分離型感光体の電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層形成の際は、膜強度確保のため、化合物を分散させるためバインダー樹脂が使用される。機能分離型感光体の電荷輸送層の場合、電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解、あるいは分散してえられる塗布液、また、単層型感光体の場合、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂を溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることができる。バインダー樹脂としては、例えば、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これら樹脂は珪素試薬等で修飾されていてもよい。
特に、本発明においては、界面重合で得られた一種類以上のポリマーを含有することが好ましい。界面重合とは、互いに混ざり合わない2つ以上の溶媒(多くは、有機溶媒−水系)の界面で進行される重縮合反応を利用する重合法である。例えば、ジカルボン酸塩化物を有機溶媒に、グリコール成分をアルカリ水等に溶かして、常温で両液を混合させて、2相にわけ、その界面で、重縮合反応を進ませて、ポリマーを生成させる。他の2成分の例としては、ホスゲンとグリコール水溶液等が挙げられる。また、ポリカーボネートオリゴマーを界面重合で縮合する場合のように、2成分をそれぞれ、2相に分けるのではなく、界面を重合の場として利用する場合もある。
反応溶媒としては、有機相と、水相の二層を使用するのは好ましく、有機相としては、メチレンクロライド、水相は、アルカリ性水溶液が好ましい。反応時に、触媒を使用することが好ましく、反応で使用する縮合触媒の添加量は、グリコール成分であるジオールに対して0.005〜0.1mol%程度、好ましくは0.03〜0.08mol%である。0.1mol%を超えると、重縮合後の洗浄工程で触媒の抽出除去に多大の労力を要する場合がある。
反応温度は、80℃以下、好ましくは60℃以下、更に好ましくは10℃〜50℃の範囲にあることが好ましく、また反応時間は反応温度によっても左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。反応温度が高すぎると、副反応の制御ができず、一方、低すぎると、反応制御上は好ましい状況ではあるが、冷凍負荷が増大して、その分コストアップとなる場合がある。
また、有機相中の濃度は、得られる組成物が可溶な範囲であればよく、具体的には、10〜40質量%程度である。有機相の割合はジオールのアルカリ金属水酸化物水溶液、すなわち水相に対して0.2〜1.0の容積比であることが好ましい。
また、重縮合によって得られる有機相中の生成樹脂の濃度が5〜30質量%となるように溶媒の量が調整されるのが好ましい。しかる後、新たに水及びアルカリ金属水酸化物を含む水相を加え、更に重縮合条件を整えるために好ましくは縮合触媒を添加して界面重縮合法に従い、所期の重縮合を完結させる。重縮合時の有機相と水相の割合は容積比で有機相:水相=1:0.2〜1程度が好ましい。
界面重合により生成する該ポリマーとしては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(特にポリアリレート樹脂が好ましい)が特に好ましい。該ポリマーは、芳香族ジオールを原料とするポリマーであることが好ましく、好ましい芳香族ジオール構造としては、下記式(A)で表されるものである。
[式(A)中、X
2は単結合又は連結基を示し、Y
1ないしY
8は各々独立に、水素原子又は原子数20以下の置換基を示す。]
また、式(A)中、X2は単結合又は以下の構造で表される基であることが好ましい。「単結合」とは、「X2」なる原子がなく、式(A)中の左右2つのベンゼン環を、単に単結合で結合した状態をいう。
上記構造中、R1a及びR2aは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は、ハロゲン化アルキル基を示し、Zは、炭素数4〜20の置換されていてもよい炭化水素基を示す。
特に、下記構造式を有するビスフェノール又はビフェノール成分が含有されるポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が、感度、残留電位等の点から好ましい。
ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂に好適に用いることのできるビスフェノール、ビフェノールの構造を以下に例示する。本例示は、趣旨を明確にするために行うものであり、本発明の趣旨に反しない限りは例示される構造に限定されるものではない。
特に、本発明の効果を最大限に発揮するためには、以下構造を示すビスフェノール又はビフェノール成分を含有するポリカーボネート樹脂が好ましい。
また、機械特性向上のためには、ポリエステル特に、ポリアリレートを使用することが好ましく、この場合は、ビスフェノール成分として以下構造を用いるのが好ましく、
酸成分としては、以下構造を用いることが好ましい。
また、テレフタル酸とイソフタル酸を使用する際は、テレフタル酸のモル比が多い方が好ましい。
積層型感光体の電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層に使用されるバインダー樹脂と電荷輸送物質の割合は、単層型、積層型共に、通常、バインダー樹脂100質量部に対して電荷輸送物質が20質量部以上であって、残留電位低減の観点から30質量部以上が好ましく、更に繰り返し使用時の安定性、電荷移動度の観点から、40質量部以上がより好ましく、更に好ましくは50質量部以上である。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は150質量部以下、更に電荷輸送物質とバインダー樹脂の相溶性の観点からは好ましくは120質量部以下、更に耐刷性の観点からは100質量部以下がより好ましい。
単層型感光体の場合には、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、更に前記の電荷発生物質が分散される。その場合の電荷発生物質の粒子径は十分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質は少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下の弊害があり、例えば、好ましくは0.1〜50質量%の範囲、好ましくは1〜20質量%の範囲で使用される。
単層型感光体の感光層の膜厚は、通常5〜100μm、好ましくは10〜50μmの範囲で使用され、順積層型感光体の電荷輸送層の膜厚は、通常5〜50μmの範囲で用いられるが、長寿命、画像安定性の観点からは、好ましくは10〜45μm、高解像度の観点からは10〜30μmがより好ましい。
なお、感光層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤等の添加物を含有させてもよい。また感光層には必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。また、遮光剤の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物等が挙げられ、レベリング剤の例としては、シリコーンオイル、フッ素系オイル等が挙げられる。
<酸化防止剤>
酸化防止剤は、感光体に含まれる部材の酸化を防止するために添加される安定剤の一種である。酸化防止剤は、ラジカル補足剤としての機能があり、具体的には、フェノール誘導体、アミン化合物、ホスホン酸エステル、硫黄化合物、ビタミン、ビタミン誘導体等が挙げられる。
この中でも、フェノール誘導体、アミン化合物、ビタミン等が好ましい。中でも、嵩高い置換基を、ヒドロキシ基近辺に有する、ヒンダードフェノール、又は、トリアルキルアミン誘導体等がより好ましい。さらには、ヒドロキシ基のo位に、t−ブチル基を有するアリール化合物誘導体が好ましく、ヒドロキシ基のo位に、t−ブチル基を2つ有するアリール化合物誘導体がより好ましい。
また、該酸化防止剤は、分子量は大きすぎると、酸化防止能に問題が生じることがあり、分子量1500以下、特には、分子量1000以下の化合物が好ましい。下限は、100以上、好ましくは、150以上が好ましく、更に好ましくは、200以上が好ましい。
以下、本発明に使用できる酸化防止剤を示す。本発明に使用できる酸化防止剤としては、プラスチック、ゴム、石油、油脂類の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤として公知の材料すべては用いることができるが、とりわけ次に示す化合物群より選ばれる材料が好ましく使用できる。
(1)特開昭57−122444号公報に記載のフェノール類、特開昭60−188956号公報に記載のフェノール誘導体及び特開昭63−18356号公報に記載のビンダードフェノール類。
(2)特開昭57−122444号公報に記載のパラフェニレンジアミン類、特開昭60−188956号公報に記載のパラフェニレンジアミン誘導体及び特開昭63−18356号公報に記載の
パラフェニレンジアミン類。
(3)特開昭57−122444号公報に記載のハイドロキノン類、特開昭60−188956号公報に記載のハイドロキノン誘導体及び特開昭63−18356号公報に記載のハイドロキノン
類。
(4)特開昭63−18356号公報に記載の有機イオウ化合物類。
(5)特開昭57−122444号公報に記載の有機リン化合物及び特開昭63−18356号公報に記載の有機リン化合物類。
(6)特開昭57−122444号公報に記載のヒドロキシアニソール類。
(7)特開昭63−018355号公報に記載の特定の骨格構造を有するピペリジン誘導体及びオキソピペラジン誘導体。
(8)特開昭60−188956号公報に記載のカロチン類、アミン類、トコフェロール類、Ni(II)錯体、スルフィド類等。
また、中でも、以下に示す、ヒンダードフェノール類が好ましい。「ヒンダードフェノール」とは、嵩高い置換基をヒドロキシ基近辺に有するフェノール類をいう。ジブチルヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、α−トコフェノール、β−トコフェノール、2,2,4−トリメチル−6−ヒドロキシ−7−t−ブチルクロマン、ペンタエリスチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシアニソール、オクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(Octadecyl−3,5−di−tert−butyl−4−hydroxyhydrocinnamate)1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン(1,3,5−trimethyl−2,4,6−tris−(3,5−di−tert−butyl−4−hydroxybenzyl)−benzene)。
上記、ヒンダードフェノール類の中でも、以下の化合物が特に好ましい。オクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(Octadecyl−3,5−di−tert−butyl−4−hydroxyhydrocinnamate)1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン(1,3,5−trimethyl−2,4,6−tris−(3,5−di−tert−butyl−4−hydroxybenzyl)−benzene)。
これらの化合物はゴム、プラスチック、油脂類等の酸化防止剤として知られており、市販品として手に入るものもある。
本発明の画像形成装置に用いられる感光体において、感光層中の前記酸化防止剤の量は、特に制限されないが、バインダー樹脂100質量部当り0.1質量部以上、20質量部以下が好ましい。この範囲以外の場合、良好な電気特性が得られない。特に好ましくは、1質量部以上である。また、多すぎると、電気特性だけでなく、耐刷性にも問題を起こす場合があるので、好ましくは15質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以下である。
<電子吸引性化合物>
感光体には、電子吸引性の化合物を有することが好ましく、具体的には、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、有機シアノ化合物、ニトロ化合物、芳香族ハロゲン誘導体等は好ましいが、特に好ましくは、スルホン酸エステル化合物、有機シアノ化合物、であり、特に、スルホン酸エステル化合物が好ましい。スルホン酸エステル構造を分子内に1個以上有することが好ましく、2個以上有することがより好ましく、更に好ましくは3個以上である。上限は、10個以下が好ましく、更に好ましくは5個以下である。
電子吸引能力は、LUMOのエネルギーレベルの値で予見することも可能である。特に、PM3パラメーターを使った半経験的分子軌道計算を用いた構造最適化による(以下これを単に、「半経験的分子軌道計算による」と略記する)LUMOのエネルギーレベルの値が−1.0eV〜−3.0eVである化合物が好ましい。LUMOのエネルギーレベルの絶対値が、1.0eVよりも小さくなると、電子吸引性の効き目があまり期待できず、3.0eVを超えると、帯電が悪化する場合がある。LUMOのエネルギーレベルの絶対値は、より好ましくは1.5eV以上であり、より好ましくは1.7eV以上であり、更に好ましくは1.9eV以上である。上限は、2.7eV以下が好ましく、より好ましくは2.5eV以下である。
電子吸引性化合物としては、具体的には、以下化合物が挙げられる。
<最表面層>
前記電荷発生物質、電荷輸送物質は、どのような層にあってもよいが、最表面層には、フッ素原子、珪素原子が存在していることが、トナー転写、クリーニング性向上等の観点から好ましい。これらの原子は、添加剤でも、電荷発生物質でも、電荷輸送物質でも、バインダー樹脂でも何れの物質に含まれていても構わない。
特に、感光体の最表面層には、感光層の損耗を防止したり、帯電器等からの発生する放電物質等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けてもよい。保護層は導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物等を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。保護層に用いる結着樹脂としてはポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることもできる。上記保護層は電気抵抗が109〜1014Ω・cmとなるように構成することが好ましく。電気抵抗が1014Ω・cmより高くなると残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまい、一方109Ω・cmより低くなると画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層は像露光に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等を含んでいてもよい。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいてもよい。
<層形成方法>
感光体を構成する各層は、各層を構成する材料を含有する塗布液を、支持体上に公知の塗布方法を用い、各層ごとに塗布・乾燥工程を繰り返し、順次塗布していくことにより形成される。
層形成用の塗布液は、単層型感光体及び積層型感光体の電荷輸送層の場合には、固形分濃度を、通常5〜40質量%の範囲で用いられるが、10〜35質量%の範囲で使用するのが好ましい。また、該塗布液の粘度は、通常10〜500mPa・sの範囲で用いられるが、50〜400mPa・sの範囲とするのが好ましい。
積層型感光体の電荷発生層の場合には、固形分濃度を、通常0.1〜15質量%の範囲で使用されるが、1〜10%の範囲で使用することがより好ましい。塗布液の粘度は、通常0.01〜20mPa・sの範囲で使用されるが、0.1〜10mPa・sの範囲で使用されることがより好ましい。
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥は室温における指触乾燥後、30〜200℃の温度範囲で、1分から2時間の間、無風、又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また加熱温度は一定であっても、乾燥時に変更させながら行ってもよい。
<画像形成装置に用いる静電荷像現像用トナー>
本発明の電子写真感光体を用いて画像形成を行なう場合、潜像を現像するための現像剤であるトナーを用いる。
<トナーの円形度>
トナーの形状は、トナーを構成する粒子群に含まれる各粒子の形状が、互いに近いものであって、球形に近いほどトナーの粒子内での帯電量の局在化が起こりにくく、現像性が均一になる傾向にあり、画像品質を高める上で好ましい。特に、トナーの形状が完全な球形に近い形状となれば、電子写真感光体との接触面積が小さくなり、トナーの転写率が高まり、トナーの消費量を低減することが可能となる場合がある。一方で、完全な球状トナーを作ることは製造上困難であり、トナーが高コスト化するため、一定以上の条件で球に近ければよく、完全な球である必要は無い。
したがって、具体的には、本発明のトナーは、フロー式粒子像分析装置によって測定される平均円形度が、通常0.940以上、好ましくは0.945以上、より好ましくは0.950以上、更に好ましくは0.955、特に好ましくは0.960以上である。また、前記平均円形度の上限は1.000以下であれば制限は無いが、生産の容易さの観点から、好ましくは0.998以 下、より好ましくは0.995以下である。
なお、前記の平均円形度は、トナーの粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明ではシスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定を行ない、測定された粒子の円形度〔a〕を下式(X)により求めるものとする。
円形度a=L0/L ・・・・・・(X)
(式(X)中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは画像処理したときの粒子像の周囲長を示す。)
前記の円形度は、トナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.000を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
平均円形度の具体的な測定方法としては、以下の通りである。即ち、予め容器中の不純物を除去した水20mL中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を加え、更に測定試料(トナー)を0.05g程度加える。この試料を分散した懸濁液に超音波を30秒照射し、分散液濃度を3.0〜8.0千個/μL(マイクロリットル)として、上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.60μm以上160μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
<トナーの種類>
本発明のトナーは、上記の平均円形度を有する限り他に制限は無い。トナーの種類は、通常はその製造方法に応じて様々なものが得られるが、本発明のトナーとしては、いずれを用いることも可能である。
以下、トナーの製造方法とともに、そのトナーの種類を説明する。
トナーは、従前公知のどのような方法で製造しても構わず、例えば重合法や溶融懸濁法などにより製造されるトナーが挙げられ、更には、いわゆる粉砕トナーを熱などの処理により球形化したものも用いることができるが、水系媒体中でトナー粒子を生成する、いわゆる重合法により製造されるトナーが好ましい。
いわゆる重合法によるトナーの方法としては、特公昭36−10231号公報、特開昭59−53856号公報、特開昭59−61842号公報に述べられている懸濁重合方法を用いて直接トナーを生成する方法や、単量体には可溶で得られる重合体が不溶な水系有機溶剤を用い直接トナーを生成する分散重合方法または水溶性極性重合開始剤存在下で直接重合しトナーを生成するソープフリー重合方法に代表される乳化重合方法等を用いトナーを製造することが可能である。
重合法トナーとしては、例えば、懸濁重合法トナー、乳化重合凝集法トナーなどが挙げられる。
また、トナーの離型性、低温定着性、高温オフセット性、耐フィルミング性などを改良するために、トナーに低軟化点物質(いわゆるワックス)を含有させる方法が提案されている。溶融混練粉砕法では、トナーに含まれるワックスの量を増やすのは難しく、重合体(バインダ樹脂)に対して5質量%程度が限界とされている。それに対して、重合トナーでは、低軟化点物質を多量(5〜30質量%)に含有させることが可能である。なお、ここでいう重合体は、トナーを構成する材料の一つであり、例えば後述する乳化重合凝集法により製造されるトナーの場合、重合性単量体が重合して得られるものである。
トナーの平均円形度を0.940以上にコントロールでき、比較的容易に粒度分布がシャープで3〜8μm粒径の微粒子トナーを得る方法として、例えば、常圧下での、または、加圧下での懸濁重合方法や、乳化重合凝集法が挙げられる。
懸濁重合法を用いて本発明に係るトナーを製造する場合、低軟化点物質を内包化せしめる具体的方法としては、水系媒体中での物質の極性を主要単量体より低軟化点物質の方を小さく設定し、さらに少量の極性の大きな樹脂または単量体を添加せしめることで低軟化点物質を外殻樹脂で被覆したいわゆるコア/シェル構造を有するトナーを得ることができる。トナーの粒度分布制御や粒径の制御は、難水溶性の無機塩や保護コロイド作用をする分散剤の種類や添加量を変える方法や機械的装置条件たとえばローターの周速・パス回数・撹拌羽根形状等の撹拌条件や容器形状または、水溶液中での固形分濃度等を制御することにより所定の本発明のトナーを得ることができる。
本発明に用いられるトナーの外殻樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−(メタ)アクリル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体を利用することができる。重合法により直接トナーを得る方法においては、それらの単量体が好ましく用いられる。
具体的には、スチレン、o(m−、p−)−メチルスチレン、m(p−)−エチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のエン系単量体が好ましく用いられる。
これらは、単独または一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−P139〜192(JohnWiley&Sons社製)に記載の理論ガラス転移温度(Tg)が、40〜75℃を示すように単量体を適宜混合し用いられる。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合には、トナ−の保存安定性や現像剤の耐久安定性の面から問題が生じ、一方75℃を越える場合は定着点の上昇をもたらし、特にフルカラートナーの場合においては各色トナーの混色が不十分となり色再現性に乏しく、さらにOHP画像の透明性を著しく低下させ高画質の面から好ましくない。
外殻樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される。具体的なGPCの測定方法としては、予めトナーをソックスレー抽出器を用いトルエン溶剤で20時間抽出を行った後、ロータリーエバポレーターでトルエンを留去せしめ、さらに低軟化点物質は溶解するがシェル用樹脂は溶解し得ない有機溶剤、たとえばクロロホルム等を加え十分洗浄を行った後、THF(テトラヒドロフラン)に可溶した溶液をポア径が0.3μmの耐溶剤性メンブランフィルターでろ過したサンプルをウォーターズ社製150Cを用い、カラム構成は昭和電工製A−801,802,803,804,805,806,807を連結し標準ポリスチレン樹脂の検量線を用い分子量分布を測定し得る。
得られた樹脂成分の数平均分子量(Mn)は、5000〜1000000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、2〜100を示す外殻樹脂が本発明には好ましい。
本発明においては、コア/シェル構造を有するトナーを製造する場合、外殻樹脂で低軟化点物質を内包化せしめるため外殻樹脂の他にさらに極性樹脂を添加せしめることが特に好ましい。本発明に用いられる極性樹脂としては、スチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体、マレイン酸共重合体、飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。該極性樹脂は、シェル樹脂または単量体と反応しうる不飽和基を分子中に含まないものが特に好ましい。仮に不飽和基を有する極性樹脂を含む場合においてはシェル樹脂層を形成する単量体と架橋反応が起き、特に、フルカラー用トナーとしては、極めて高分子量になり四色トナーの混色には不利となり好ましくない。
また、本発明においては、外殻構造を有するトナーの表面にさらに重ねて重合法により最外殻樹脂層を設けても良い。
上述の最外殻樹脂層のガラス転移温度は、耐ブロックキング性のさらなる向上のため外殻樹脂層のガラス転移温度以上に設計されること、さらに定着性を損なわない程度に架橋されていることが好ましい。また、該最外殻樹脂層には帯電性向上のため極性樹脂や荷電制御剤が含有されていることが好ましい。
また、最外殻樹脂層を設ける方法としては、特に限定されるものではないがたとえば以下のような方法が挙げられる。
1.重合反応後半、または終了後、反応系中に必要に応じて、極性樹脂、荷電制御剤、架橋剤等を溶解、分散したモノマーを添加し重合粒子に吸着させ、重合開始剤を添加し重合を行う方法。
2.必要に応じて、極性樹脂、荷電制御剤、架橋剤等を含有したモノマーからなる乳化重合粒子またはソープフリー重合粒子を反応系中に添加し、重合粒子表面に凝集、必要に応じて熱等により固着させる方法。
3.必要に応じて、極性樹脂、荷電制御剤、架橋剤等を含有したモノマーからなる乳化重合粒子 またはソープフリー重合粒子を乾式で機械的にトナー粒子表面に固着させる方法。
本発明に用いられる着色剤は、黒色着色剤としてカーボンブラック、磁性体、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12,13,14,15,17,62,74,83,93,94,95,109,110,111,128,129,147、168、等が好適に用いられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレット2,3,5,6,7,23,48;2,48;3、48;4,57;1,81;1,144,146,166,169,177,184,185,202,206,220,221,254が特に好ましい。
本発明に用いられるシアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1,7,15,15:1,15:2,15;3,15:4,60,62,66等が特に好適に利用できる。これらの着色剤は、単独または混合しさらには固溶体の状態で用いることができる。
本発明の着色剤は、カラートナーの場合、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は、樹脂100質量部に対し1〜20質量部添加して用いられる。黒色着色剤として磁性体を用いた場合には、他の着色剤と異なり樹脂100質量部に対し40〜150質量部添加して用いられる。
本発明に用いられる荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、カラートナーの場合は、特に、無色でトナーの帯電スピードが速ぐ且つ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに本発明において直接重合方法を用いる場合には、重合阻害性が無く水系への可溶化物の無い荷電制御剤が特に好ましい。
具体的化合物としては、ネガ系としてサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の金属化合物、スルホン酸、カルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリークスアレーン等が利用でき、ポジ系として四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が好ましく用いられる。該荷電制御剤は樹脂100質量部に対し0.5〜10質量部が好ましい。しかしながら、本発明において荷電制御剤の添加は必須ではない。
本発明で直接重合方法を利用する場合には、重合開始剤として、たとえば、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の過酸化物系重合開始剤が用いられる。
該重合開始剤の添加量は、目的とする重合度により変化するが一般的には単量体に対し0.5〜20質量%添加され用いられる。開始剤の種類は、重合方法により若干異なるが、十時間半減期温度を参考に、単独または混合し利用される。重合度を制御するため公知の架橋剤・連鎖移動剤・重合禁止剤等をさらに添加し用いる事も可能である。
本発明に用いられるトナー製造方法として懸濁重合を利用する場合には、用いる分散剤としてたとえば無機系酸化物として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ、磁性体、フェライト等が挙げられる。有機系化合物としてはたとえばポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースCカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等が水相に分散させて使用される。これら分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2〜10.0質量部を使用する事が好ましい。
これら分散剤は、市販のものをそのまま用いても良いが、細かい均一な粒度を有す分散粒子を得るために、分散媒体中にて高速撹拌下にて該無機化合物を生成させる事もできる。たとえば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合する事で懸濁重合方法に好ましい分散剤を得る事ができる。またこれら分散剤の微細化のため0.001〜0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用でき、たとえばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が好ましく用いられる。
本発明に用いられるトナーの製造方法として直接重合方法を用いる場合には、以下の如き製造方法によって具体的にトナーを製造する事が可能である。単量体中に低軟化物質からなる離型剤、着色剤、荷電制御剤、重合開始剤その他の添加剤を加え、ホモジナイザー・超音波分散機等によって均一に溶解または分散せしめた単量体組成物を、分散安定剤を含有する水相中に通常の撹拌機またはホモミキサー、ホモジナイザー等により分散せしめる。好ましくは単量体組成物からなる液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度・時間を調整し、造粒する。その後は分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。重合温度は40℃以上、一般的には50〜90℃の温度に設定して重合を行う。また、重合反応後半に昇温しても良く、さらに、耐久特性向上の目的で、未反応の重合性単量体、副生成物等を除去するために反応後半、または、反応終了後に一部水系媒体を留去しても良い。反応終了後、生成したトナー粒子を洗浄・ろ過により回収し、乾燥する。懸濁重合法においては、通常単量体系100質量部に対して水300〜3000質量部を分散媒体として使用するのが好ましい。
また、本発明におけるトナーは分級して粒度分布を制御しても良く、その方法として好ましくは、慣性力を利用した多分割分級装置を用いる。この装置を用いることにより、本発明の粒度分布を有するトナーを効率的に製造できる。
乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合、その製造工程としては、通常、重合工程、混合工程、凝集工程、融合工程、洗浄・乾燥工程を行なう。即ち、一般的には乳化重合により重合体一次粒子を得て(重合工程)、その重合体一次粒子を含む分散液に、必要に応じ、着色剤(顔料)、ワックス、帯電制御剤等の分散体を混合し(混合工程)、この分散液中に凝集剤を加えて一次粒子を凝集させて粒子凝集体とし(凝集工程)、必要に応じて微粒子等を付着する操作を行ない、その後に融合させて粒子を得て(融合工程)、得られた粒子を洗浄、乾燥することにより(洗浄・乾燥工程)、母粒子が得られる。
<重合工程>
重合体の微粒子(重合体一次粒子)としては、特に限定されない。したがって、液状媒体中で重合性単量体を、懸濁重合法、乳化重合法等により重合させて得られる微粒子、樹脂等の重合体の塊を粉砕することによって得られる微粒子のいずれを重合体一次粒子として用いてもよい。ただし、重合法、特に乳化重合法、なかでも乳化重合におけるシードとしてワックスを用いたものが好ましい。乳化重合におけるシードとしてワックスを用いると、重合体がワックスを包み込んだ構造の微粒子を重合体一次粒子として製造することができる。この方法によれば、ワックスをトナーの表面に露出させず、トナー内に含有させることができる。このため、ワックスによる装置部材の汚染がなく、また、トナーの帯電性を損なうこともなく、かつ、トナーの低温定着性や高温オフセット性、耐フィルミング性、離型性等を向上させることができる。
以下、ワックスをシードとして乳化重合を行ない、これにより重合体一次粒子を得る方法について説明する。
乳化重合法としては、従来より知られている方法に従って行えばよい。通常は、ワックスを乳化剤の存在下で液状媒体に分散してワックス微粒子とし、これに重合開始剤、重合により重合体を与える重合性単量体(即ち、重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物)、並びに、必要に応じて連鎖移動剤、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤、保護コロイド、及び内添剤等を混合、攪拌して重合を行なう。これにより、重合体がワックスを包み込んだ構造を有する重合体の微粒子(即ち、重合体一次粒子)が液状媒体に分散したエマルジョンが得られる。なお、重合体がワックスを包み込んだ構造としては、コアシェル型、相分離型、オクルージョン型などが挙げられるが、コアシェル型が好ましい。
(i.ワックス)
ワックスとしては、この用途に用い得ることが知られている任意のものを用いることができる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;アルキル基を有するシリコーンワックス;低分子量ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂系ワックス;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン類;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸より得られるエステル類または部分エステル類;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステルなどが挙げられる。なかでも、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークを50〜100℃に少なくとも1つ有するものが好ましい。
また、ワックスの中でも、例えば、エステル系ワックス、パラフィンワックス、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、シリコーンワックス等は、少量で離型性の効果が得られるので好ましい。特に、パラフィンワックスが好ましい。なお、ワックスは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ワックスを用いる場合、その使用量は任意である。ただし、重合体100質量部に対して、ワックスを通常3質量部以上、好ましくは5質量部以上、また、通常40質量部以下、好ましくは30質量部以下とすることが望ましい。ワックスが少なすぎると定着温度幅が不十分となる可能性があり、多すぎると装置部材を汚染して画質の低下が生じる可能性がある。
(ii.乳化剤)
乳化剤に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意のものを使用することができる。例えば、非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性のいずれの界面活性剤も用いることができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
また、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類等が挙げられる。
さらに、カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類等が挙げられる。
また、両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン等のアルキルベタイン類等が挙げられる。これらの中でも、非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤が好ましい。なお、乳化剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。さらに、乳化剤の配合量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、重合性モノマー100質量部に対して、乳化剤を、通常1〜10質量部の割合で用いる。
(iii.液状媒体)
液状媒体としては、通常は水系媒体を用い、特に好ましくは水を用いる。ただし、液状媒体の質は液状媒体中の粒子の再凝集による粗大化にも関係し、液状媒体の導電率が高いと経時の分散安定性が悪化する傾向がある。したがって、液状媒体として水等の水系媒体を使用する場合、導電率を、通常10μS/cm以下、好ましくは5μS/cm以下となるように脱塩処理されたイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好ましい。なお、導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて25℃下で測定を行なう。
また、液状媒体の使用量に制限は無いが、重合性単量体に対して、通常1〜20質量倍程度の量を用いる。
この液状媒体に、乳化剤の存在下で前記ワックスを分散させることにより、ワックス微粒子を得る。乳化剤及びワックスを液状媒体に配合する順は任意であるが、通常は、まず乳化剤を液状媒体に配合し、その後、ワックスを混合する。また、乳化剤は連続的に液状媒体に配合してもよい。
(iv.重合開始剤)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体に、重合開始剤を配合する。重合開始剤としては本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その例を挙げると、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物類;過酸化水素等の無機過酸化物類などが挙げられる。中でも、無機過酸化物類が好ましい。なお、重合開始剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、重合開始剤の他の例としては、過硫酸塩類、有機又は無機過酸化物類と、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸等の還元性有機化合物類、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物類などとを併用して、レドックス系開始剤とすることもできる。この場合、還元性無機化合物類は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、重合開始剤の使用量にも制限は無く任意である。ただし、重合開始剤は、重合性単量体100質量部に対して、通常0.05〜2質量部の割合で用いられる。
(v.重合性単量体)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体には、前記の重合開始剤の他に、重合性単量体を配合する。重合性単量体に特に制限は無いが、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド類、ブレンステッド酸性基を有する単量体(以下、単に「酸性モノマー」と略記することがある)、ブレンステッド塩基性基を有する単量体(以下、単に「塩基性モノマー」と略記することがある)等の単官能性モノマーが主として用いられる。また、単官能性のモノマーに多官能性のモノマーを併用することもできる。
スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等が挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等が挙げられる。
さらに、酸性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するモノマー;スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー;ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有するモノマーなどが挙げられる。
また、塩基性モノマーとしては、例えば、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の含窒素複素環含有モノマー;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
なお、酸性モノマー及び塩基性モノマーは、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。
さらに、多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アクロレイン等の反応性基を有するモノマーを用いることも可能である。中でもラジカル重合性の二官能性モノマー、特に、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましい。
これらの中でも、重合性単量体としては、少なくともスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基を有する酸性モノマーから構成されるのが好ましい。特に、スチレン類としてはスチレンが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル類としてはアクリル酸ブチルが好ましく、カルボキシル基を有する酸性モノマーとしてはアクリル酸が好ましい。
なお、重合性単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ワックスをシードとして乳化重合を行なう際には、酸性モノマー又は塩基性モノマーと、これら以外のモノマーとを併用するのが好ましい。酸性モノマー又は塩基性モノマーを併用することにより、重合体一次粒子の分散安定性を向上させることができるからである。
この際、酸性モノマー又は塩基性モノマーの配合量は任意であるが、全重合性単量体100質量部に対する酸性モノマー又は塩基性モノマーの使用量を、通常0.05質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、また、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下となるようにすることが望ましい。酸性モノマー又は塩基性モノマーの配合量が上記範囲を下回ると重合体一次粒子の分散安定性が悪化する可能性があり、上限を上回るとトナーの帯電性に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、多官能性モノマーを併用する場合、その配合量は任意であるが、重合性単量体100質量部に対する多官能性モノマーの配合量は、通常0.005質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、また、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。多官能性モノマーを使用することにより、トナーの定着性を向上させることができる。この際、多官能性モノマーの配合量が上記範囲を下回ると耐高温オフセット性が劣る可能性があり、上限を上回ると低温定着性が劣る可能性がある。
液状媒体へ重合性単量体を配合する方法は特に限定されず、例えば、一括添加、連続添加、間欠添加のいずれでもよいが、反応制御の点からは連続的に配合するのが好ましい。また、複数の重合性単量体を併用する場合、各重合性単量体は、別々に配合してもよく、また予め混合してから配合してもよい。更には、単量体混合物の組成を変化させながら配合してもよい。
(vi.連鎖移動剤等)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体には、前記の重合開始剤及び重合性単量体の他に、必要に応じて、連鎖移動剤、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤、保護コロイド、内添剤などの添加剤を配合する。これらの添加剤は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。また、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
連鎖移動剤としては、公知の任意のものを使用することができる。具体例を挙げると、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。また、連鎖移動剤は、重合性単量体100質量部に対して、通常5質量部以下の割合で用いられる。
さらに、保護コロイドとしては、この用途に用い得ることが知られている任意のものを使用することができる。具体例を挙げると、部分又は完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等などが挙げられる。
また、内添剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系オイル等のトナーの粘着性、凝集性、流動性、帯電性、表面抵抗等を改質するためのものが挙げられる。
(vii.重合体一次粒子)
ワックス微粒子を含む液状媒体に重合開始剤及び重合性単量体、並びに、必要に応じて添加剤を混合し、撹拌し、重合させることにより、重合体一次粒子を得る。この重合体一次粒子は、液状媒体中にエマルションの状態で得ることができる。
重合開始剤、重合性単量体、添加剤などを液状媒体に混合する順番に制限は無い。また、混合、撹拌の方法なども制限は無く、任意である。
さらに、重合(乳化重合反応)の反応温度も反応が進行する限り任意である。但し、重合温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、また、通常120℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。
重合体一次粒子の体積平均粒径に特に制限は無いが、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、また、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。体積平均粒径が小さすぎると、凝集速度の制御が困難となる場合があり、また、体積平均粒径が大きすぎると、凝集して得られるトナーの粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。なお、体積平均粒径は、後述する動的光散乱法を用いた粒度分析計で測定することができる。
本発明においては、体積粒度分布は動的光散乱法により測定される。この方式は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。実際の測定では、上記の体積粒径については、動的光散乱方式を用いた超微粒子粒度分布測定装置(日機装社製、UPA−EX150、以下UPA−EXと略す)を用いて、以下の設定にて行なう。
測定上限 :6.54μm
測定下限 :0.0008μm
チャンネル数:52
測定時間 :100sec.
測定温度 :25℃
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度 :1g/cm3
分散媒種類 :WATER
分散媒屈折率:1.333
なお、測定時は、サンプル濃度指数が0.01〜0.1の範囲になるように粒子の分散体を液状媒体で希釈し、超音波洗浄器で分散処理した試料で測定する。そして、本発明にかかわる体積平均粒子径は、上記の体積粒度分布の結果を算術平均値として計測される。
また、重合体一次粒子を構成する重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるピーク分子量のうち少なくとも1つが、通常3000以上、好ましくは1万以上、より好ましくは3万以上、また、通常10万以下、好ましくは7万以下、より好ましくは6万以下に存在することが望ましい。ピーク分子量が前記範囲にある場合、トナーの耐久性、保存性、定着性が良好となる傾向がある。ここで、前記のピーク分子量とは、ポリスチレン換算した値を用いるものとし、測定に際しては溶媒に不溶の成分を除くものとする。ピーク分子量は、後述するトナーの場合と同様に測定することが可能である。
特に、前記の重合体がスチレン系樹脂である場合には、重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける数平均分子量は、下限が通常2000以上、好ましくは2500以上、より好ましくは3000以上、また上限は、通常5万以下、好ましくは4万以下、より好ましくは3.5万以下である。さらに、重合体の重量平均分子量は、下限が通常2万以上、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上、また上限は、通常100万以下、好ましくは50万以下である。数平均分子量、重量平均分子量の少なくとも一方、好ましくは双方が前記の範囲に収まるスチレン系樹脂を重合体として用いた場合、えられるトナーは、耐久性、保存性、定着性が良好となるからである。さらに分子量分布において、メインピークが2つあるものでもよい。なお、スチレン系樹脂とは、スチレン類が全重合体中の通常50質量%以上、好ましくは65質量%以上を占めるものを指す。
また、重合体の軟化点(以下「Sp」と略記することがある)は、通常150℃以下、好ましくは140℃以下であることが低エネルギー定着の点から好ましく、また、通常80℃以上、好ましくは100℃以上であることが耐高温オフセット性、耐久性の点で好ましい。ここで重合体の軟化点は、フローテスターにおいて、試料1.0gをノズル1mm×10mm、荷重30kg、予熱時間50℃で5分、昇温速度3℃/分の条件下で測定を行なったときの、フロー開始から終了までのストランドの中間点での温度として求めることができる。
さらに、重合体のガラス転移温度〔Tg〕は、通常80℃以下、好ましくは70℃以下である。重合体のガラス転移温度〔Tg〕が高すぎると低エネルギー定着ができなくなる可能性がある。また、重合体のガラス転移温度〔Tg〕の下限は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上である。重合体のガラス転移温度〔Tg〕が低すぎると耐ブロッキング性が低下する可能性がある。ここで重合体のガラス転移温度〔Tg〕は、示差走査熱量計において、昇温速度10℃/分の条件で測定した曲線の転移(変曲)開始部に接線を引き、2つの接線の交点の温度として求めることができる。
重合体の軟化点及びガラス転移温度〔Tg〕は、重合体の種類およびモノマー組成比、分子量等を調整することによって前記範囲とすることができる。
<混合工程及び凝集工程>
前記の重合体一次粒子が分散したエマルジョンに、顔料粒子を混合し、凝集させることにより、重合体、顔料を含む凝集体(凝集粒子)のエマルジョンを得る。この際、顔料は、予め液状媒体に界面活性剤等を用いて均一に分散させた顔料粒子分散体を用意し、これを重合体一次粒子のエマルジョンに混合することが好ましい。この際、顔料粒子分散体の液状媒体として通常は水等の水系溶媒を使用し、顔料粒子分散体を水系分散体として用意
する。また、その際には、必要に応じてワックス、帯電制御剤、離型剤、内添剤等をエマルジョンに混合してもよい。また、顔料粒子分散体の安定性を保持するために、上述した乳化剤を加えてもよい。
重合体一次粒子としては、乳化重合により得た前記の重合体一次粒子を使用することができる。この際、重合体一次粒子は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。さらに、上述した乳化重合とは異なる原料や反応条件で製造した重合体一次粒子(以下適宜「併用重合体粒子」という)を併用してもよい。
併用重合体粒子としては、例えば、懸濁重合や粉砕で得られた微粒子などが挙げられる。このような併用重合体粒子の材料としては樹脂を使用できるが、この樹脂としては、上述の乳化重合に供する単量体の(共)重合体の他に、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、ビニルピロリドン等のビニル系単量体の単独重合体または共重合体、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などの熱可塑性樹脂、及び、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。なお、これらの併用重合体粒子も、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。ただし、併用重合体粒子の割合は、重合体一次粒子及び併用重合体粒子の重合体の合計に対して、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
また、顔料に制限は無く、その用途に応じて任意のものを用いることができる。ただし、顔料は通常は着色剤粒子として粒子状で存在するが、この顔料の粒子は、乳化重合凝集法における重合体一次粒子との密度差が小さい方が好ましい。前記の密度差が小さいほうが、重合体一時粒子と顔料とを凝集させた場合に均一な凝集状態が得られ、従って得られるトナーの性能が向上するからである。なお、重合体一次粒子の密度は、通常は1.1〜1.3g/cm3である。
前記の観点から、JIS K 5101−11−1:2004に規定されるピクノメーター法で測定される顔料粒子の真密度は、通常1.2g/cm3以上、好ましくは1.3g/cm3以上、また、通常2.0g/cm3未満、好ましくは1.9g/cm3以下、より好ましくは1.8g/cm3以下である。顔料の真密度が大きすぎる場合は、特に液状媒体中での沈降性が悪化する傾向にある。加えて、保存性、昇華性などの課題も考慮すると、顔料はカーボンブラックあるいは有機顔料であるのが好ましい。
以上の条件を満たす顔料の例示としては、以下に示すイエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料などが挙げられる。また、黒色顔料としては、カーボンブラック、又は、以下に示すイエロー顔料/マゼンタ顔料/シアン顔料を混合して黒色に調色されたものが利用される。
このうち、黒色顔料として使用されるカーボンブラックは、非常に微細な一次粒子の凝集体として存在し、顔料粒子分散体として分散させたときに、再凝集によるカーボンブラック粒子の粗大化が発生しやすい。カーボンブラック粒子の再凝集の程度は、カーボンブラック中に含まれる不純物量(未分解有機物量の残留程度)の大小と相関が見られ、不純物が多いと分散後の再凝集による粗大化が顕著となる傾向を示す。
不純物量の定量的な評価としては、以下の測定方法で測定されるカーボンブラックのトルエン抽出物の紫外線吸光度が、通常0.05以下、好ましくは0.03以下である。一般に、チャンネル法のカーボンブラックは不純物が多い傾向を示すので、本発明のトナーに使用するカーボンブラックとしては、ファーネス法で製造されたものが好ましい。
なお、カーボンブラックの紫外線吸光度(λc)は、次の方法で求める。即ち、まずカーボンブラック3gをトルエン30mLに充分に分散、混合させて、続いてこの混合液をNo.5C濾紙を使用して濾過する。その後、濾液を吸光部が1cm角の石英セルに入れて市販の紫外線分光光度計を用いて波長336nmの吸光度を測定した値(λs)と、同じ方法でリファレンスとしてトルエンのみの吸光度を測定した値(λo)とから、紫外線吸光度はλc=λs−λoで求める。市販の分光光度計としては、例えば島津製作所製紫外可視分光光度計(UV−3100PC)などがある。
また、イエロー顔料としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物などに代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180、185等が好適に用いられる。
さらに、マゼンタ顔料としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキウ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物などが用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、C.I.ピグメントバイオレット19等が好適に用いられる。
中でも、C.I.ピグメントレッド122、202、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19で示されるキナクリドン系顔料が特に好ましい。このキナクリドン系顔料は、その鮮明な色相や高い耐光性などからマゼンタ顔料として好適である。キナクリドン系顔料の中でも、C.I.ピグメントレッド122で示される化合物が、特に好ましい。
また、シアン顔料としては、例えば、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
なお、顔料は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
上記の顔料は、液状媒体に分散させ、顔料粒子分散体としてから重合体一次粒子を含有するエマルションと混合する。この際、顔料粒子分散体中における顔料粒子の使用量は、液状媒体100質量部に対して、通常3質量部以上、好ましくは5質量部以上、また、通常50質量部以下、好ましくは40質量部以下である。着色剤の配合量が前記範囲を上回る場合には顔料濃度が濃いので分散中で顔料粒子が再凝集する確率が高まり、前記範囲未満の場合には分散が過剰となって適切な粒度分布を得ることが困難になる可能性がある。
また、重合体一次粒子に含まれる重合体に対する顔料の使用量の割合は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、また、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下である。顔料の使用量が少なすぎると画像濃度が薄くなる可能性があり、多すぎると凝集制御が困難となる可能性がある。
さらに、顔料粒子分散体には、界面活性剤を含有させても良い。この界面活性剤に特に制限は無いが、例えば、乳化重合法の説明において乳化剤として例示した界面活性剤と同様のものが挙げられる。中でも、非イオン系界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類等のアニオン系活性剤、ポリマー系界面活性剤等が好ましく用いられる。また、この際、界面活性剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
なお、顔料粒子分散体に占める顔料の割合は、通常10〜50質量%である。
また、顔料粒子分散体の液状媒体としては、通常は水系媒体を用い、好ましくは水を用いる。この際、重合体一次粒子及び顔料粒子分散体の水質は各粒子の再凝集による粗大化にも関係し、導電率が高いと経時の分散安定性が悪化する傾向がある。したがって、導電率を、通常10μS/cm以下、好ましくは5μS/cm以下となるように脱塩処理されたイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好ましい。なお、導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて25℃下で測定を行なう。
また、重合体一次粒子を含有するエマルションに顔料を混合させる際、エマルションにワックスを混合しても良い。ワックスとしては、乳化重合法の説明において述べたものを同様のものを使用することができる。なお、ワックスは、重合体一次粒子を含有するエマルションに顔料を混合する前、混合中、後のいずれにおいて混合しても良い。
また、重合体一次粒子を含有するエマルションに顔料を混合させる際、エマルションに帯電制御剤を混合しても良い。
帯電制御剤としては、この用途に用いられ得ることが知られている任意のものを使用することができる。正荷電性帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などが挙げられる。また、負荷電性帯電制御剤としては、例えば、Cr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアゾ錯化合物染料;サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸の金属塩又は金属錯体;カーリックスアレン化合物、ベンジル酸の金属塩又は金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物などが挙げられる。中でも、トナーとしての色調障害を回避するため、無色ないしは淡色のものを選択することが好ましく、特に正荷電性帯電制御剤としては4級アンモニウム塩、イミダゾール系化合物が好ましく、負荷電性帯電制御剤としてはCr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアルキルサリチル酸錯化合物、カーリックスアレン化合物が好ましい。なお、帯電制御剤は1種を用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
帯電制御剤の使用量に制限は無いが、重合体100質量部に対し、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、また、10質量部以下、好ましくは5質量部以下である。帯電制御剤の使用量が少なすぎても多すぎても所望の帯電量が得られなくなる可能性がある。
帯電制御剤は、重合体一次粒子を含有するエマルションに顔料を混合する前、混合中、後のいずれにおいて混合しても良い。
また、帯電制御剤は、前記顔料粒子と同様に、液状媒体(通常は、水系媒体)に乳化した状態として、凝集時に混合することが望ましい。
上記の重合体一次粒子を含有するエマルションに顔料を混合した後、重合体一次粒子と顔料とを凝集させる。なお、上述したとおり、混合の際には、通常、顔料は顔料粒子分散体とした状態で混合させる。
凝集方法に制限は無く任意であるが、例えば、加熱、電解質の混合、pHの調整等が挙げられる。なかでも、電解質を混合する方法が好ましい。
電解質を混合して凝集を行なう場合の電解質としては、例えば、NaCl、KCl、LiCl、MgCl2、CaCl2等の塩化物;Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO4)3、Fe2(SO4)3等の硫酸塩などの無機塩;CH3COONa、C6H5SO3Na等の有機塩などが挙げられる。これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。
なお、電解質は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
電解質の使用量は、電解質の種類によって異なるが、エマルジョン中の固形成分100質量部に対して、通常0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、また、通常25質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。電解質を混合して凝集を行なう場合において、電解質の使用量が少なすぎると、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られる凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しないなどの可能性があり、また、電解質の使用量が多すぎると、凝集反応が急速に起こるため粒径の制御が困難となり、得られる凝集体中に粗粉や不定形のものが含まれる可能性がある。
得られた凝集体は、後述する二次凝集体(溶融工程を経た凝集体)と同じく、引き続き液状媒体中で加熱して球形化するのが好ましい。加熱は二次凝集体の場合と同様の条件(融合工程の説明において述べるのと同様の条件)で行えばよい。
一方、加熱により凝集を行なう場合、温度条件は凝集が進行する限り任意である。具体的な温度条件を挙げると、通常15℃以上、好ましくは20℃以上、また、重合体一次粒子の重合体のガラス転移温度〔Tg〕以下、好ましくは55℃以下の温度条件で凝集を行なう。凝集を行なう時間も任意であるが、通常10分以上、好ましくは60分以上、また、通常300分以下、好ましくは180分以下である。
また、凝集を行なう際には、撹拌を行なうことが好ましい。撹拌に使用する装置は特に限定されないが、ダブルヘリカル翼を有するものが好ましい。
得られた凝集体は、そのまま次工程の樹脂被覆層を形成する工程(カプセル化工程)に進んでもよいし、引き続き液状媒体中で加熱による融合処理を行なった後に、カプセル化工程に進んでもよい。そして、望ましくは、凝集工程の後に、カプセル化工程を行ない、カプセル化樹脂微粒子のガラス転移温度〔Tg〕以上の温度で加熱して融合工程を行なうのが、工程を簡略化でき、トナーの性能劣化(熱劣化など)を生じないので好ましい。
<カプセル化工程>
凝集体を得た後、当該凝集体には、必要に応じて樹脂被覆層を形成することが好ましい。凝集体に樹脂被覆層を形成させるカプセル化工程とは、凝集体の表面に樹脂被覆層を形成することにより、凝集体を樹脂により被覆する工程である。これにより、製造されるトナーは樹脂被覆層を備えることになる。カプセル化工程では、トナー全体が完全に被覆されない場合もあるが、顔料は、実質的にトナー粒子の表面に露出していないトナーを得ることができるようになる。この際の樹脂被覆層の厚さに制限は無いが、通常は0.01〜0.5μmの範囲である。
前記樹脂被覆層を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、スプレードライ法、機械式粒子複合法、in−situ重合法、液中粒子被覆法などが挙げられる。
上記スプレードライ法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集体と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子とを水媒体中に分散して分散液を作製し、分散液をスプレー噴出し、乾燥することによって、凝集体表面に樹脂被覆層を形成することができる。
また、前記機械式粒子複合法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集体と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子とを気相中に分散させ、狭い間隙で機械的な力を加えて凝集体表面に樹脂微粒子を成膜化する方法であり、例えばハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)などの装置が使用できる。
さらに、前記in−situ重合法としては、例えば、凝集体を水中に分散させ、単量体及び重合開始剤を混合して、凝集体表面に吸着させ、加熱して、単量体を重合させて、内層である凝集体表面に樹脂被覆層を形成する方法である。
また、前記液中粒子被覆法としては、例えば、内層を形成する凝集体と外層を形成する樹脂微粒子とを、水媒体中で反応あるいは結合させ、内層を形成する凝集体の表面に樹脂被覆層を形成させる方法である。
外層を形成させる場合に用いる樹脂微粒子は、凝集体よりも粒径が小さく樹脂成分を主体とする粒子である。この樹脂微粒子は、重合体で構成された粒子であれば特に制限はない。ただし、外層の厚みがコントロールできるという観点から、上述した重合体一次粒子、凝集体、又は、前記の凝集体を融合した融合粒子と同様の樹脂微粒子を用いることが好ましい。なお、これらの重合体一次粒子等と同様の樹脂微粒子は、内層に使用する凝集体における重合体一次粒子等と同様に製造することができる。
また、樹脂微粒子の使用量は任意であるが、トナー粒子に対して通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、また、通常50質量%以下、好ましくは25質量%以下の範囲で用いることが望ましい。
さらに、凝集体に対する樹脂微粒子の固着又は融合を効果的に行なうためには、樹脂微粒子の粒径は、通常は、0.04〜1μm程度のものが好ましく用いられる。
樹脂被覆層に用いられる重合体成分(樹脂成分)のガラス転移温度〔Tg〕としては、通常60℃以上、好ましくは70℃以上、また、通常110℃以下が望ましい。さらに、樹脂被覆層に用いられる重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕は、重合体一次粒子のガラス転移温度〔Tg〕より5℃以上高いものであることが好ましく、10℃以上高いものであることがより好ましい。ガラス転移温度〔Tg〕が低すぎると、一般環境での保存が困難であり、また高すぎては充分な溶融性が得られないので好ましくない。
さらに、樹脂被覆層中にはポリシロキサンワックスを含有させることが好ましい。これにより、耐高温オフセット性の向上という利点を得ることができる。ポリシロキサンワックスの例を挙げると、アルキル基を有するシリコーンワックスなどが挙げられる。
ポリシロキサンワックスの含有量に制限は無いが、トナー中、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、また、通常2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とする。樹脂被覆層中のポリシロキサンワックスの量が少なすぎると耐高温オフセット性が不十分となる可能性があり、多すぎると耐ブロッキング性が低下する可能性がある。
樹脂被覆相中にポリシロキサンワックスを含有させる方法は任意であるが、例えば、ポリシロキサンワックスをシードとして乳化重合を行ない、得られた樹脂微粒子と、内層を形成する凝集体とを、水系媒体中で反応あるいは結合させ、内層を形成する凝集体の表面にポリシロキサンワックスを含有する樹脂被覆層を形成させることにより含有させることが可能である。
<融合工程>
融合工程では、凝集体を加熱処理することにより、凝集体を構成する重合体の溶融一体化を行う。
また、凝集体に樹脂被覆層を形成してカプセル化樹脂微粒子とした場合には、加熱処理をすることにより、凝集体を構成する重合体及びその表面の樹脂被覆層の融合一体化がなされることになる。これにより、顔料粒子は実質的に表面に露出しない形態で得られる。
融合工程の加熱処理の温度は、凝集体を構成する重合体一次粒子のガラス転移温度〔Tg〕以上の温度とする。また、樹脂被覆層を形成した場合には、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕以上の温度とする。具体的な温度条件は任意であるが、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕よりも、通常5(℃)以上高温であることが好ましい。その上限に制限は無いが、「樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕よりも50(℃)高い温度」以下が好ましい。
なお、加熱処理の時間は処理能力、製造量にもよるが、通常0.5〜6時間である。
<洗浄・乾燥工程>
上述した各工程を液状媒体中で行なっていた場合には、融合工程の後、得られたカプセル化樹脂粒子を洗浄し、乾燥して液状媒体を除去することにより、トナーを得ることができる。洗浄及び乾燥の方法に制限は無く任意である。
<トナーの粒径に関する物性値>
本発明のトナーの体積平均粒径〔Dv〕に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常4μm以上、好ましくは5μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは8μm以下である。トナーの体積平均粒径〔Dv〕が小さすぎると画質の安定性が低下する可能性があり、大きすぎると解像度が低下する可能性がある。
また、本発明のトナーは、体積平均粒径〔Dv〕を個数平均粒径〔Dn〕で除した値〔Dv/Dn〕が、通常1.0以上、また、通常1.25以下、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.15以下であることが望ましい。〔Dv/Dn〕の値は、粒度分布の状態を表わし、この値が1.0に近い方ほど粒度分布がシャープであることを表わす。粒度分布がシャープであるほど、トナーの帯電性が均一となるので望ましい。
さらに、本発明のトナーは、粒径25μm以上の体積分率が、通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、更に好ましくは0.05%以下である。この値は小さいほど好ましい。これは、トナーに含まれる粗粉の割合が少ないことを意味しており、粗粉が少ないと、連続現像の際のトナーの消費量が少なく、画質が安定するので好ましいのである。なお、粒径25μm以上の粗粉は全く存在しないのが最も好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.005%以下にしなくとも構わない。
また、本発明のトナーは、粒径15μm以上の体積分率が、通常2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下である。粒径15μm以上の粗粉も全く存在しないのが最も好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.01%以下にしなくとも構わない。
さらに、本発明のトナーは、粒径5μm以下の個数分率が、通常15%以下、好ましくは10%以下であることが、画像カブリの改善に効果があるので、望ましい。
ここで、トナーの体積平均粒径〔Dv〕、個数平均粒径〔Dn〕、体積分率、個数分率などは、以下のようにして測定することができる。即ち、トナーの粒子径の測定装置としては、コールターカウンターのマルチサイザーII型あるいはIII型(ベックマン・コールター社製)を用い、個数分布・体積分布を出力するインターフェイス及び一般的なパーソナルコンピューターを接続して使用する。また、電解液はアイソトンIIを用いる。測定法としては、前記電解液100〜150mL中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5mL加え、更に測定試料(トナー)を2〜20mg加える。そして、試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記コールターカウンターのマルチサイザーII型あるいはIII型により、100μmアパーチャーを用いて測定する。このようにしてトナーの個数及び体積を測定して、それぞれ個数分布、体積分布を算出し、それぞれ、体積平均粒径〔Dv〕、個数平均粒径〔Dn〕を求める。
<トナーの分子量に関する物性値>
本発明のトナーのTHF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す場合がある)におけるピーク分子量のうち少なくとも1つは、通常1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であり、通常15万以下、好ましくは10万以下、より好ましくは7万以下であることが好ましい。なお、THFはテトラヒドロフランのことを言う。ピーク分子量が何れも前記範囲より低い場合は、非磁性一成分現像方式における機械的耐久性が悪化する場合があり、ピーク分子量が何れも前記範囲より高い場合は、低温定着性や定着強度が悪化する場合がある。
さらに、トナーのTHF不溶分は後述するセライト濾過による重量法で測定した場合、通常10%以上、好ましくは20%以上であり、また、通常60%以下、好ましくは50%以下である。前記範囲にない場合は、機械的耐久性と低温定着性の両立が困難となる場合がある。
なお、本発明のトナーのピーク分子量は、測定装置:HLC−8120GPC(東ソー社製)を用いて次の条件で測定される。
即ち、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mL(ミリリットル)の流速で流す。次いで、トナーをTHFに溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。
測定は、試料濃度(樹脂の濃度)を0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF溶液を測定装置に50〜200μL注入して行なう。試料(トナー中の樹脂成分)の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の、分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
さらに、前記の測定方法で用いるカラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組合せるのが良く、例えば、Waters社製のμ−styragel 500,103,104,105の組合せや、昭和電工社製のshodex KA801,802,803,804,805,806,807の組合せが好ましい。
また、トナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分の測定は、以下のようにして行なうことができる。即ち、試料(トナー)1gをTHF100gに加え25℃で24時間静置溶解し、セライト10gを用いて濾過し、濾液の溶媒を留去してTHF可溶分を定量し、1gから差し引いてTHF不溶分を算出することができる。
<トナーの軟化点及びガラス転移温度>
本発明のトナーの軟化点〔Sp〕に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、低エネルギーで定着する観点から、通常150℃以下、好ましくは140℃以下である。また、耐高温オフセット性、耐久性の点からは、軟化点は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上である。
なお、トナーの軟化点〔Sp〕は、フローテスターにおいて、試料1.0gをノズル1mm×10mm、荷重30kg、予熱時間50℃で5分、昇温速度3℃/分の条件下で測定を行なったときの、フロー開始から終了までのストランドの中間点での温度として求めることができる。
また、本発明のトナーのガラス転移温度〔Tg〕に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常80℃以下、好ましくは70℃以下であると、低エネルギーで定着できるので望ましい。また、ガラス転移温度〔Tg〕は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上であると、耐ブロッキング性の点で好ましい。
なお、トナーのガラス転移温度〔Tg〕は、示差走査熱量計において、昇温速度10℃/分の条件で測定した曲線の転移(変曲)開始部に接線を引き、2つの接線の交点の温度として求めることができる。
トナーの軟化点〔Sp〕及びガラス転移温度〔Tg〕は、トナーに含まれる重合体の種類および組成比に大きく影響を受ける。このため、トナーの軟化点〔Sp〕及びガラス転移温度〔Tg〕は、前記の重合体の種類及び組成を適宜最適化することにより調整することができる。また、重合体の分子量、ゲル分、ワックス等の低融点成分の種類および配合量によっても、調整することが可能である。
<トナー中のワックス>
本発明のトナーがワックスを含有する場合、トナー粒子中のワックスの分散粒径は、平均粒径として、通常0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上であり、また、上限は通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。分散粒径が小さすぎるとトナーの耐フィルミング性改良の効果が得られない可能性があり、また、分散粒径が大きすぎるとトナーの表面にワックスが露出しやすくなり帯電性や耐熱性が低下する可能性がある。
なお、ワックスの分散粒径は、トナーを薄片化して電子顕微鏡観察する方法の他、ワックスが溶解しない有機溶剤等でトナーの重合体を溶出した後にフィルターで濾過し、フィルター上に残ったワックス粒子を顕微鏡により計測する方法などにより確認することができる。
また、トナーに占めるワックスの割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、また通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下である。ワックスが少なすぎると定着温度幅が不十分となる可能性があり、多すぎると装置部材を汚染して画質が低下する可能性がある。
<外添微粒子>
トナーの流動性、帯電安定性、高温下での耐ブロッキング性などを向上させるために、トナー粒子表面に外添微粒子を添着させてもよい。
外添微粒子をトナー粒子表面に添着させる方法としては、例えば、上述したトナーの製造方法において、液状媒体中で二次凝集体と外添微粒子を混合した後、加熱してトナー粒子上に外添微粒子を固着させる方法;二次凝集体を液状媒体から分離、洗浄、乾燥させて得られたトナー粒子に乾式で外添微粒子を混合又は固着させる方法などが挙げられる。
乾式でトナー粒子と外添微粒子とを混合する場合に用いられる混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、V型ミキサー、レディゲミキサー、ダブルコーンミキサー、ドラム型ミキサーなどが挙げられる。中でもヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速撹拌型の混合機を用い、羽根形状、回転数、時間、駆動−停止の回数等を適宜設定して均一に撹拌、混合することにより混合することが好ましい。
また、乾式でトナー粒子と外添微粒子を固着させる場合に用いられる装置としては、圧縮剪断応力を加えることの出来る圧縮剪断処理装置や、粒子表面を溶融処理することのできる粒子表面溶融処理装置などが挙げられる。
圧縮剪断処理装置は、一般に、間隔を保持しながら相対的に運動するヘッド面とヘッド面、ヘッド面と壁面、あるいは壁面と壁面によって構成される狭い間隙部を有し、被処理粒子が該間隙部を強制的に通過させられることによって、実質的に粉砕されることなく、粒子表面に対して圧縮応力及び剪断応力が加えられるように構成されている。このような圧縮剪断処理装置としては、例えば、ホソカワミクロン社製のメカノフュージョン装置等が挙げられる。
一方、粒子表面溶融処理装置は、一般に、熱風気流等を利用し、母体微粒子と外添微粒子との混合物を母体微粒子の溶融開始温度以上に瞬時に加熱し外添微粒子を固着できるように構成される。このような粒子表面溶融処理装置としては、例えば、日本ニューマチック社製のサーフュージングシステム等が挙げられる。
また、外添微粒子としては、この用途に用い得ることが知られている公知のものが使用できる。例えば、無機微粒子、有機微粒子などが挙げられる。
無機微粒子としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化珪素等の窒化物、ホウ化ジルコニウム等のホウ化物、シリカ、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の酸化物や水酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の各種チタン酸化合物、リン酸三カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸イオンの一部が陰イオンによって置換された置換リン酸カルシウム等のリン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、滑石、ベントナイト、導電性カーボンブラックをはじめとする種々のカーボンブラック等を用いることができる。さらには、マグネタイト、マグへマタイト、マグネタイトとマグヘマタイトの中間体等の磁性物質などを用いてもよい。
一方、有機微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、トリフロロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアクリロニトリルなどの微粒子を用いることができる。
これら外添微粒子の中では、特に、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、カーボンブラック等が好適に使用される。
なお、外添微粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、これらの無機または有機微粒子の表面は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤等の処理剤によって疎水化などの表面処理が施されていてもよい。なお、処理剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、外添微粒子の数平均粒径は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.001μm以上、好ましくは0.005μm以上、また、通常3μm以下、好ましくは1μm以下であり、異なる平均粒径のものを複数配合してもよい。なお、外添微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡観察やBET比表面積の値からの換算等により求めること
ができる。
また、トナーに対する外添微粒子の割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、トナーと外添微粒子との合計質量に対する外添微粒子の割合として、通常0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは6質量%以下、より好ましくは4質量%以下が望ましい。外添微粒子が少なすぎると流動性、帯電安定性が不足する可能性があり、多すぎると定着性が悪化する可能性がある。
<トナーその他>
本発明のトナーの帯電特性は、負帯電性であっても、正帯電性であっても良く、用いる画像形成装置の方式に応じて設定することができる。なお、トナーの帯電特性は、帯電制御剤などのトナー母粒子構成物の選択および組成比、外添微粒子の選択および組成比等により調整することができる。
また、本発明のトナーは、一成分現像剤として用いることも、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることも可能である。
二成分現像剤として用いる場合には、トナーと混合して現像剤を形成するキャリアとしては、例えば、公知の鉄粉系、フェライト系、マグネタイト系キャリア等の磁性物質、または、それらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性樹脂キャリアを用いることができる。
キャリアの被覆樹脂としては、例えば、一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。
また、キャリアの平均粒径は特に制限はないが、10〜200μmの平均粒径を有するものが好ましい。これらのキャリアは、トナー1質量部に対して5〜100質量部の割合で用いるのが好ましい。
なお、電子写真方式によるフルカラー画像の形成は、マゼンタ、シアン、イエローの各カラートナーおよび必要に応じてブラックトナーを用いて常法により実施することができる。
[画像形成装置および電子写真カートリッジ]
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1,帯電装置2,露光装置3および現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5,クリーニング装置6および定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5およびクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。帯電装置としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。直接帯電手段の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器などが挙げられる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。直接帯電手段として、気中放電を伴う帯電、あるいは気中放電を伴わない注入帯電いずれも可能である。また、帯電時に印可する電圧としては、直流電圧だけの場合、および直流に交流を重畳させて用いることもできる。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。また、書き込み解像度は、現在は600dpi以上が主流であるが、高性能機種では1200dpiのものも存在する。書き込み解像度により、静電潜像、トナー像の解像度が決定され、解像度が高いほど鮮明な画像が得られるので、1200dpi以上の解像度が好ましい。例えば、600dpi、1200dpiの解像度を持つLEDで書き込んだ場合、最小ドット形成間隔は、それぞれ、42μm、21μmとなる。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、および、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。なお、本実施形態では、トナーTとして、上述した本発明のトナーを使用することが好ましい。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケルなどの金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコーン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1および供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43および現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを撹拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
中でも、構成が簡易で小型・低コストであり、クリーニング性能・信頼性に優れていることからブレードクリーニング方式が好ましい。ブレードクリーニング方式において、当接法と加圧法で分類することが可能である(第57回日本画像学会技術講習会 予稿集 P196〜211)。当接法においては、カウンター当接、順方向当接に分類され、加圧法においては、低変位方式と低荷重方式に分類される。
本発明において、トナーを効果的に除去するためにブレードクリーニング方式が好ましく、特に、円形度の高いトナーを使用する場合、ブレードと感光体間をトナーがすり抜けしやすいため、カウンター当接方式が好ましい。また、ブレードの感光体に対する線圧は20−60g/cmに設定することが好ましい。
以上のような条件にブレードを設定すると感光体とブレード間での摺擦音が発生するきらいがあるが、本発明の感光体を使用することにより、回避することが可能である。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71および下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71または72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部および下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行うことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行う構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、および定着装置7のうち1つまたは2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真カートリッジ」という)として構成し、この電子写真カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。