以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。先ず、図1には、本発明の防振装置用板ばねを用いた能動型流体封入式防振装置に係る第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。この自動車用エンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で弾性連結された構造を呈している。第一の取付金具12が図示しない自動車のパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具14が図示しない自動車のボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットが車両ボデーに対してエンジンマウント10を介して弾性的に支持されるようになっている。
なお、図1では、自動車に装着する前のエンジンマウント10の単体での状態が示されているが、自動車へのマウント装着状態では、パワーユニットの分担支持荷重がマウント軸方向(図1中、上下)に入力されることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14がマウント軸方向で相互に接近する方向に変位して、本体ゴム弾性体16が弾性変形する。また、かかる装着状態下、防振すべき主たる振動は、略マウント軸方向に入力されることとなる。以下の説明中、特に断りのない限り、上下方向は、マウント軸方向となる図1中の上下方向をいう。
より詳細には、第一の取付金具12は、逆有底円筒形状乃至は円柱形状を呈している。また、第一の取付金具12の中央部分には、上端面に開口する螺子穴22を備えており、図示しないパワーユニット側の部材が固定ボルトを介して螺子穴22に螺着固定されることにより、第一の取付金具12が、パワーユニットに固定的に取り付けられるようになっている。
また、第二の取付金具14は、大径の略段付き円筒形状を有しており、円環板形状の段部24の内周縁部から上方に向かって小径部26が延びていると共に、段部24の外周縁部から下方に向かって大径部28が延びている。小径部26の軸方向寸法が、大径部28の軸方向寸法に比して大きくされている。
これら第一の取付金具12と第二の取付金具14が、相互に同一中心軸上に配設されていると共に、第一の取付金具12が第二の取付金具14の小径部26側の開口部分と軸方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。第一の取付金具12と第二の取付金具14の間には、本体ゴム弾性体16が介装されている。
本体ゴム弾性体16は、全体として略裁頭円錐台形状を呈する厚肉のゴム弾性体であって、その下端中央部分には、下方に開口する逆すり鉢形状乃至は半球形状の大径凹所30が形成されている。本体ゴム弾性体16の上端部に対して第一の取付金具12の軸方向中間部から下端部に至る部分が埋め込まれるように加硫接着されていると共に、本体ゴム弾性体16の下端部の外周面に対して第二の取付金具14の小径部26の上端部分から軸方向中間部分にかけての内周面が重ね合わされて加硫接着されている。これにより、本体ゴム弾性体16が第一の取付金具12と第二の取付金具14を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されていると共に、第二の取付金具14の一方(図1中、上)の開口部が本体ゴム弾性体16によって流体密に閉塞されている。また、第二の取付金具14の小径部26における軸方向中間部分から下端部分にかけての内周面には、本体ゴム弾性体16と一体形成された薄肉のシールゴム層32が全体に亘って被着形成されている。なお、本体ゴム弾性体16における大径凹所30の開口端面の外周縁部がシールゴム層32の内周面よりも軸直角方向内側に位置せしめられていることによって、本体ゴム弾性体16とシールゴム層32の境界部分には、軸直角方向に円環形状に広がる環状段差部34が形成されている。
また、第二の取付金具14の軸方向下側の開口部分には、仕切部材36が組み付けられている。仕切部材36は、全体として略円形ブロック形状を呈しており、金属材や合成樹脂材等の硬質部材を用いて形成されている。かかる仕切部材36は、仕切部材本体38、第一隔壁板40および第二隔壁板42を含んで構成されている。
仕切部材本体38は、図2にも示されているように、略円形ブロック形状を呈しており、仕切部材本体38の上端部分には、大径円環形状の外フランジ状部44が一体形成されている。また、仕切部材本体38の軸方向中間部分から下端部にかけての外周面が、下方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパ形状を有している。
仕切部材本体38の中央部分には、透孔としての円形状の中央孔46が軸方向に延びるように形成され、仕切部材本体38の上下の端面を貫通している。中央孔46の軸方向略中央部分の周壁部には、円環形状の段差部48が形成されており、段差部48を挟んで中央孔46の上側部分の径寸法が、下側部分の径寸法に比して大きくされている。この中央孔46の下側開口部分には、内フランジ状部50が一体形成されている。また、仕切部材本体38における中央孔46の上側開口部の周りや段差部48には、周方向に所定距離を隔てて複数の螺子穴52が設けられている。また、仕切部材本体38の外周部分乃至は外フランジ状部44の内周部分には、連通窓54が厚さ方向(図1中、上下)に貫設されている。更に、仕切部材本体38の周壁部分における周上の一箇所には、径方向にトンネル状に延びる連通路56が形成されており、仕切部材本体38の中央孔46の大径部分の周壁面と仕切部材本体38の外周面に開口している。
また、第一隔壁板40は、厚肉の略円板形状を呈しており、中央部分には、下方に開口する円形凹状の中央凹所58が設けられている。この中央凹所58の上底部の中央部分には、小径の挿通孔60が貫設されていると共に、上底部の挿通孔60の回りには、複数の小孔からなる透孔62が貫設されている。更に、第一隔壁板40の上端周縁部には、円環形状の鍔状部64が一体形成されている。
また、第二隔壁板42は、第一隔壁板40に比して薄肉で且つ大径の略円板形状を有しており、中央部分には、小径の挿通孔66が貫設されていると共に、挿通孔66の回りには、複数の小孔からなる透孔68が貫設されている。第二隔壁板42の外径寸法が、第一隔壁板40の鍔状部64の外径寸法に比して大きくされていると共に、仕切部材本体38の外フランジ状部44の外径寸法と略同じとされている。
第一隔壁板40と仕切部材本体38の間に第二隔壁板42を挟むようにして、第一隔壁板40、第二隔壁板42および仕切部材本体38が軸方向で相互に重ね合わされて、各中心軸が同一直線上に位置せしめられている。そして、支持ボルト70が第一及び第二隔壁板40,42を軸方向に貫通して、仕切部材本体38の上端面に開口する螺子穴52に螺着固定されていると共に、支持ボルト70の軸方向中間部分乃至はヘッド部が第一及び第二隔壁板40,42の貫通孔内に位置せしめられていることによって、第一及び第二隔壁板40,42と仕切部材本体38の軸直角方向での位置決め状態が維持されて、仕切部材36を構成している。
また、第一隔壁板40の鍔状部64と第二隔壁板42の外周部分が軸方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられており、これら鍔状部60の下端面と第一隔壁板40の周壁部の外周面と第二隔壁板42の上端面が協働して、仕切部材36の外周部分を径方向外方に向かって凹状に開口する断面で周方向に所定の長さ(例えば一周弱)で延びる周溝72を形成している。
さらに、第一隔壁板40の中央凹所58の開口部分が第二隔壁板42の中央部分で覆蓋せしめられることによって、第一隔壁板40と第二隔壁板42の間には、軸方向に略一定の円形断面で延びる円形領域74が形成されている。
このような仕切部材36が第二の取付金具14の下側開口部から軸方向に差し入れられ、第一隔壁板40の鍔状部64が本体ゴム弾性体16の環状段差部34に重ね合わせられていると共に、第二隔壁板42の外周部分が、第二の取付金具14のシールゴム層32を介して段部24に重ね合わせられている。これにより、仕切部材36の第二の取付金具14に対する軸方向の挿入端が規定されている。
仕切部材36の下方には、可撓性膜としてのダイヤフラム76が配設されている。ダイヤフラム76は、充分な弛みを有する薄肉の円形ゴム膜で形成されている。また、ダイヤフラム76の外周縁部には、固定金具78が加硫接着されている。固定金具78は、大径リング状の下端部分に径方向内方に延び出す内フランジ状部が一体的に設けられた形態を有している。固定金具78の内周縁部にダイヤフラム76の外周縁部が加硫接着されていると共に、固定金具78の内周面にはダイヤフラム76と一体成形された薄肉のシールゴム層80が略全面に亘って加硫接着されている。
ダイヤフラム76の固定金具78が第二の取付金具14の下側(大径部28側)の開口部から軸方向に内挿されて、固定金具78の上端部がシールゴム層80を介して第二の取付金具14の段部24に軸方向で重ね合わせられていると共に、固定金具78の下側の内周縁部がシールゴム層80を介して仕切部材本体38の外フランジ状部44の外周部分に軸方向で重ね合わせられている。
さらに、第二の取付金具14には、第一ブラケット金具82と第二ブラケット金具84が組み付けられている。第一ブラケット金具82は環状の板形状を有している。第二ブラケット金具84は筒状を有しており、その軸方向上側の内周縁部には、周方向に連続に延びる段差部86が形成されている。これら第一ブラケット金具82と第二ブラケット金具84が軸方向で重ね合わされる際に、第一ブラケット金具82の内周側の下端面が、第二の取付金具12の段部24の上端面に重ね合わされていると共に、第二ブラケット金具82の段差部(段差面)86が、ダイヤフラム76の固定金具78の下端面に重ね合わされている。
そして、後述の如く、第一ブラケット金具82と第二ブラケット金具84が軸方向でボルト固定されることに伴い、第二の取付金具14の段部24と固定金具78が軸方向に挟圧配置されて、第一隔壁板40の鍔状部64と本体ゴム弾性体16の環状段差部34や、第二隔壁板42の外周部分と第二の取付金具14の段部24の径方向内周部分乃至は中間部分、固定金具78の上端部分と段部24の外周部分が、それぞれシールゴム層32,80等を介して流体密に重ね合わせられている。これにより、第一及び第二ブラケット金具82,84の第二の取付金具14への固定に基づいて、仕切部材36とダイヤフラム76が第二の取付金具14に固定的に組み付けられていると共に、仕切部材32およびダイヤフラム74によって、第二の取付金具14の下側開口部が流体密に閉塞されている。また、第一及び第二ブラケット金具82,84等が図示しない車両ボデー側の部材に固定されることで、第二の取付金具14が車両ボデーに対して固定的に取り付けられるようになっている。
このようにして仕切部材36とダイヤフラム76が第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に組み付けられていることにより、仕切部材36を挟んだ軸方向一方(図1中、上)の側において、本体ゴム弾性体16の大径凹所30が仕切部材36で閉塞された領域には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室90が形成されている。また、仕切部材36を挟んだ軸方向他方(図1中、下)の側には、壁部の一部がダイヤフラム76で構成されて容積変化が容易に許容される平衡室92が形成されている。これら受圧室90と平衡室92には、非圧縮性流体が封入されている。封入される非圧縮性流体としては、例えば水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油等が採用されるが、特に流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を有効に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。また、受圧室90や平衡室92への非圧縮性流体の封入は、例えば、第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対する仕切部材36やダイヤフラム76の組み付けを非圧縮性流体中で行うことによって、好適に実現される。
また、仕切部材36が第二の取付金具14に組み付けられることに伴い、仕切部材36の周溝72の開口部分が、第二の取付金具14に被着されたシールゴム層32を介して第二の取付金具14の内周面に流体密に重ね合わされることによって、周溝72が流体密に閉塞されている。また、周溝72の周方向一方の端部が第一隔壁板40の上端部に形成された連通窓94を通じて受圧室90に接続されていると共に、周溝72の周方向他方の端部が第二隔壁板42の径方向中間部分に形成された連通窓96から仕切部材本体38の連通窓54を通じて平衡室92に接続されている。それによって、第二の取付金具14の内周面や周溝72の壁面、各連通窓54,94,96が協働して、仕切部材36の外周部分を周方向に所定の長さで延びるオリフィス通路としての第一のオリフィス通路98が形成されており、受圧室90と平衡室92が第一のオリフィス通路98を通じて相互に連通せしめられて、それら両室90,92間で、第一のオリフィス通路98を通じての流体流動が許容されるようになっている。
さらに、仕切部材本体38の中央孔46の小径側には、加振板100が配設されている。加振板100は、薄肉の略円板形状を有していると共に、硬質の合成樹脂材や金属材等を用いて形成されている。加振板100の中央部分には、小径の円筒形状を有するボス状突部102が上方に向かって突設されており、ボス状突部102の内孔が加振板100の下端面に開口していることによって、加振板100の中心軸上に挿通孔104が形成されている。また、加振板100の外周縁部には、軸方向下方に向かって突出する略円筒形状のリム状突部106が一体形成されている。
また、ダイヤフラム76の中央部分には、連結ロッド108が加硫接着されている。連結ロッド108は、軸方向に延びる硬質のロッド状部材であり、その軸方向上側には、上端面に開口する螺子穴110が設けられている。また、連結ロッド108の軸方向中間部分には、径方向外方に広がる鍔部116が一体形成されていて、鍔部116の外周部分に対してダイヤフラム74の中央部分が加硫接着されている。それによって、連結ロッド108本体がダイヤフラム76の中央部分を貫通する形態をもってダイヤフラム76に加硫接着されて、鍔部116を挟んで螺子穴110を備えた上部と反対側の下部が、ダイヤフラム74から下方に大きく延び出している。
連結ロッド108の上端面と加振板100の中央部分の下端面が軸方向で相互に重ね合わされて、固定ボルト118が加振板100の上方から挿通孔104に挿通されて連結ロッド108の螺子穴110に螺着固定されている。
これにより、加振板100と連結ロッド108が軸方向で連結されていると共に、加振板100のリム状突部106が仕切部材本体38の中央孔46の周壁部に沿って配設されて、加振板100と中央孔46が略同軸的に配されている。そして、加振板100が、仕切部材本体38の中央孔46の上側開口部を覆蓋せしめる第二隔壁板42と軸方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。ここで、リム状突部106を備えた加振板100の外周部分と中央孔46の周壁部の間には、微小な隙間が形成されており、かかる隙間の存在によって加振板100の軸方向変位が好適に許容されるようになっている。かかる隙間を通じての流体流動等が生ぜしめられるか否かは、特に限定されるものでないが、本実施形態では、隙間が、それを通じての流体流動等が実質的に生ぜしめられない程度に微小なものとされている。その結果、仕切部材本体38の中央孔46の下側開口部が、加振板100によって実質的に閉塞せしめられている。
ここにおいて、加振板100の中央部分に突設されたボス状突部102が、防振装置用板ばねとしての加振板支持板ばね120を介して仕切部材本体38に支持されている。
加振板支持板ばね120は、図3〜6にも示されているように、ばね鋼やステンレス鋼等によって形成された薄肉の円板形状を有しており、径方向中央部分に中央取付部分122が形成されていると共に、径方向外周部分に外周取付部分124が形成されている。中央取付部分122は、略円環板形状を有しており、中央部分に円形状の中心孔126を備えている。また、外周取付部分124は、加振板支持板ばね120の外周縁部を全周に亘って連続して延びる環状の外周縁板部とされている。外周取付部分124には、複数の外周挿通孔128が所定の間隔(本実施形態では等間隔)で貫設されている。
また、加振板支持板ばね120における中央取付部分122と外周取付部分124の間には、肉抜き部分としてのスリット130が複数設けられている。スリット130は、加振板支持板ばね120に打ち抜き加工を施すこと等により形成され、中央取付部分122から外周取付部分124に向かって周方向に傾斜しつつ径方向に延びる渦巻状を呈している。特に本実施形態では、スリット130が周方向に等間隔に一対設けられている。
それによって、中央取付部分122と外周取付部分124は、加振板支持板ばね120における両取付部分122,124の間の環状部分において一対のスリット130,130を除いた部位からなる一対の連結腕部132,132によって、実質的に連結されている。連結腕部132は、略一定の幅寸法で、中央取付部分122から外周取付部分124に向かって周方向に傾斜しつつ径方向に延びる渦巻状を呈していると共に、周方向に等間隔に一対設けられている。
特に本実施形態では、連結腕部132が周方向に等間隔に一対設けられていることによって、各連結腕部132の中央取付部分122と接続される端部が、加振板支持板ばね120の中心軸を挟んだ軸直角方向一方向で対向位置せしめられていると共に、各連結腕部132の外周取付部分124と接続される端部が、加振板支持板ばね120の中心軸を挟んだ軸直角方向一方向で対向位置せしめられている。これら連結腕部132の中央取付部分122の側に接続される端部と外周取付部分124の側に接続される端部は、同一の軸直角方向線上に位置せしめられていても良いが、本実施形態では、互いに異なる軸直角方向線上に位置せしめられている。また、連結腕部132が、周方向に一周と略1/4周の長さで、即ち一周以上の長さで延びている。また、複数の連結腕部132やスリット130、外周挿通孔128がそれぞれ同一形態とされていると共に、それぞれ周方向で等間隔に形成されていることから、加振板支持板ばね120の周方向の位置決めが不要とされている。
ここで、連結腕部132にはスリット130形成のための打ち抜き加工と共に曲げ加工が施されること等によって、連結腕部132が、加振板支持板ばね120の軸方向に対して傾斜した板状の軸方向断面で周方向に連続に延びる傾斜帯板形状とされている。連結腕部132の軸直角方向線:Lに対する傾斜角度:αは、要求されるばね特性に応じて適当に設定変更されるものであるが、好ましくは10°≦α≦80°、より好ましくは30°≦α≦60°とされる。蓋し、傾斜角度:αが10°より小さいと、加振板支持板ばね120の軸直角方向のばね剛性の低減化が十分に図られ難くなる一方、傾斜角度:αが80°より大きくなると、加振板支持板ばね120の軸方向のばね成分が十分に得られ難くなるおそれがあるからである。
特に本実施形態では、連結腕部132が、周方向の略全長に亘って一定の傾斜角度:αで延びている。また、連結腕部132の幅方向中央部分が、中央取付部分122や外周取付部分124と略同じ軸方向高さに位置せしめられており、連結腕部132の外周縁部と内周縁部が、中央取付部分122や外周取付部分124よりも軸方向外方に位置せしめられている。また、後述する加振板支持板ばね120の加振板100および仕切部材36への取り付け状態では、連結腕部132の軸方向断面が、径方向外方に行くに従って軸方向上側に向くように傾斜する傾斜板状とされている。
このような加振板支持板ばね120の中心孔126に固定ボルト118が挿通されて、加振板支持板ばね120の中央取付部分122が、固定ボルト118のヘッド部と加振板100のボス状突部102の軸方向間で固定ボルト118の螺着固定力に基づき挟圧されている。また、加振板支持板ばね120の外周取付部分124が仕切部材本体38の中央孔46の段差部48に載置されると共に、外周取付部分124の外周挿通孔128が段差部48の螺子穴52に位置合わせされて、ボルトやビス等が外周挿通孔128に挿通されて螺子穴52に固定されている。これにより、加振板支持板ばね120が仕切部材本体38の内側で軸直角方向に広がるように配設されて、かかる加振板支持板ばね120により、加振板100を挟んで軸方向一方の側(図1中、上)のボス状突部102が仕切部材本体38に対して軸方向で弾性的に連結支持せしめられている。
すなわち、加振板100のボス状突部102および連結ロッド108が軸方向に変位することに伴い、加振板支持板ばね120も軸方向に弾性変形することから、加振板100が仕切部材本体38の中央孔46を軸方向に変位可能とされている。また、加振板100が、加振板支持板ばね120によって軸直角方向に位置決めされることで、加振板100と仕切部材本体38が同軸的に位置せしめられる状態が保持されている。
また、仕切部材36における加振板100と第二隔壁板42の間の領域が、第一及び第二隔壁板40,42に貫設された透孔62,68や第一隔壁板40と第二隔壁板42の間の円形領域74を通じて受圧室90と相互に連通せしめられており、当該領域にも受圧室90と同一の非圧縮性流体が封入されている。即ち、加振板100と第二隔壁板42の間の領域には、透孔62,68や円形領域74を通じて受圧室90の圧力変動が直接に及ぼされることから、当該領域が受圧室90の一部として機能する。上述の説明からも明らかなように、受圧室90において本体ゴム弾性体16と異なる壁部の別の一部が、加振板100で構成されている。
換言すれば、仕切部材36における第一及び第二隔壁板40,42を挟んだ一方の側(図1中、上)には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成された第一受圧室142が形成されていると共に、仕切部材36における第一及び第二隔壁板40,42挟んだ他方の側(図1中、下)には、壁部の一部が加振板100で構成された第二受圧室144が形成されており、これら第一受圧室142と第二受圧室144を含んで受圧室90が構成されている。即ち、受圧室90を仕切る隔壁部材が、第一隔壁板40と第二隔壁板42を含んで構成されている。また、第一受圧室142と第二受圧室144を相互に連通せしめるフィルタオリフィスが、第一及び第二隔壁板40,42に形成された透孔62,68や円形領域74を含んで構成されている。
また、加振板支持板ばね120のスリット130を通じて加振板支持板ばね120と加振板100の間の領域にも、加振板支持板ばね120と第二隔壁板42の間の領域と同様に、非圧縮性流体が封入せしめられることとなり、かかる領域が第二受圧室144の一部とされている。
特に本実施形態では、上述の透孔62,68や円形領域74からなるフィルタオリフィスを通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、加振板100による能動的な防振効果を得ようとする、中速乃至は高速こもり音等に相当する80〜100Hz程度の高周波数域にチューニングされている。
また、仕切部材本体38に形成された連通路56の一方の端部が第二受圧室144に接続されていると共に、連通路56の他方の端部が平衡室92に接続されている。即ち、かかる連通路56によって、第二受圧室144と平衡室92を相互に連通せしめる第二のオリフィス通路146が構成されて、それら両室92,144間で、第二のオリフィス通路146を通じての流体流動が許容されるようになっている。
特に本実施形態では、第一のオリフィス通路98を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、例えば、該流体の共振作用に基づいてエンジンシェイク等に相当する10Hz前後の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(高減衰効果)が発揮されるようにチューニングされている。一方、第二のオリフィス通路146を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、例えば該流体の共振作用に基づいてアイドリング振動や低速こもり音等に相当する20〜40Hz程度の中周波数域の振動に対して有効な防振効果が得られるようにチューニングされている。即ち、第二のオリフィス通路146のチューニング周波数が、第一のオリフィス通路98のチューニング周波数に比して高周波数域に設定されていると共に、前述の透孔62,68や円形領域74で構成されるフィルタオリフィスのチューニング周波数が、第一及び第二のオリフィス通路98,146に比して高周波数域に設定されている。これら第一のオリフィス通路98や第二のオリフィス通路146、フィルタオリフィスのチューニングは、例えば、受圧室90や平衡室92の各壁ばね剛性、即ちそれら各室90,92を単位容積だけ変化させるのに必要な圧力変化量に対応する本体ゴム弾性体16やダイヤフラム76等の各弾性変形量に基づく特性値を考慮しつつ、各オリフィス通路の通路長さと通路断面積を調節することによって行うことが可能であり、一般に、オリフィス通路を通じて伝達される圧力変動の位相が変化して略共振状態となる周波数を、オリフィス通路のチューニング周波数として把握することが出来る。
また、仕切部材36の円形領域74には、可動板148が収容配置されている。この可動板148は、ゴム弾性体からなり、円形領域74よりも一回り小さな略円板形状を有している。円形領域74の周壁部、即ち第一隔壁板40の中央凹所58の周壁部と可動板148の外周縁部との間には、全周に亘って隙間が設けられている。また、可動板148の厚さ寸法が、円形領域74の軸方向寸法に比して小さくされている。そして、可動板148の一方(図1中、上)の面には、第一隔壁板40の透孔62を通じて第一受圧室142の圧力が及ぼされるようになっていると共に、可動板148の他方(図1中、下)の面には、第二隔壁板42の透孔68を通じて第二受圧室144の圧力が及ぼされるようになっている。これにより、可動板148が、第一受圧室142と第二受圧室144の相対的な圧力差に基づいて、仕切部材36の中央孔46を覆蓋するようにして円形領域74内を軸方向に変位可能とされている。
なお、可動板148の中央部分には、軸方向両側の外方に突出せしめられるようにして案内軸部150,150が突設されており、可動板148が円形領域74に収容配置される際に、各案内軸部150が、円形領域74の上壁部を構成する第一隔壁板40と下壁部を構成する第二隔壁板42の各中央部分に貫設された挿通孔60,66に対して変位可能に挿通せしめられることによって、可動板148の円形領域74に対する軸直角方向の位置決めがされている。また、可動板148の両面が凹凸形状を有していることで、可動板148の第一隔壁板40および第二隔壁板42への打ち当たり部分が小さくされていることに基づき打音が小さくされることに加えて、可動板148の有効面積が大きく確保されていることにより、第一及び第二受圧室142,144の圧力が可動板148に効率的に及ぼされるようになっている。特に、可動板148の共振周波数が、第二のオリフィス通路146のチューニング周波数域と同一の範囲内となる、アイドリング振動や中速こもり音等の中周波数域にチューニングされており、加振板100の加振周波数の高い領域やフィルタオリフィスの共振周波数に比して低い周波数域に設定されている。
また、第二の取付金具12の下方には、電磁式アクチュエータ153が配設されている。この電磁式アクチュエータ153においては、可動子としての可動部材152の外周側に固定子としてのヨーク部材154が離隔配置されていると共に、ヨーク部材154にコイル156が組み付けられた構造を呈している。かかるコイル156への通電により可動部材152とヨーク部材154の間に生ぜしめられる磁界の作用によって、可動部材152が固定子(ヨーク部材154)に対して軸方向に駆動せしめられるようになっている。
具体的に、コイル156は周方向に巻き付けられるようにして軸方向に延びる円筒形状を有しており、コイル156の表面には電気絶縁層158が被覆されている。また、ヨーク部材154が、強磁性材からなり、コイル156の内周面側を除いた周りを囲うように配されていることによって、かかる周りを囲うようにして磁路が形成されている。磁路には、コイル156の内周部分において磁気ギャップが形成されており、この磁気ギャップに相当する位置に可動部材152が配設されている。
可動部材152は、略円筒形状を有する強磁性材からなる。また、可動部材152の内周面には、内フランジ状の係合突部160が設けられている。更に、可動部材152とコイル156の間には、円筒形状の摺動スリーブ162が配設されており、可動部材152が摺動スリーブ162に内挿配置されて摺動スリーブ162に沿って軸方向に変位することにより、可動部材152がヨーク部材154に対して軸方向に可動とされている。
また、ヨーク部材154には、第三ブラケット金具164と第四ブラケット金具166が組み付けられている。第三ブラケット金具164は環状板形状を有している。第四ブラケット金具166は略筒状を有しており、その軸方向上側の外周縁部には、外フランジ状部168が形成されていると共に、軸方向上側の内周縁部には、周方向に連続して延びる切り欠き状の段差部170が形成されている。なお、第四ブラケット金具166の周壁部には、外部電力をコイル156に給電するコネクタを外方に突設配置するための孔が設けられている。また、第四ブラケット金具166の下端部には、内フランジ状部174が突設されている。ここで、ヨーク部材154の軸方向中間部分には、外フランジ形状の係止金具176が外挿装着されており、ヨーク部材154が第四ブラケット金具166に内挿されることに伴い、係止金具176が第四ブラケット金具166の段差部170に重ね合わされて係止されている。また、第四ブラケット金具166の上方から第三ブラケット金具164が重ね合わされて固定用ボルト178で相互に固定されることに基づき、係止金具176が、第三ブラケット金具164と第四ブラケット金具166の軸方向間に挟圧されている。これにより、ヨーク部材154が、係止金具176を介して第三及び第四ブラケット金具164,166の軸方向中間部分において、それらブラケット金具164,166に固定的に支持されている。
また、可動部材152には、その中心軸上でダイヤフラム76から下方に突出する連結ロッド108が挿し入れられている。連結ロッド108は、可動部材152の中心孔に挿通された状態下、可動部材152の係合突部160に内挿配置されていると共に、連結ロッド108の軸方向下端部が可動部材152の内側に位置せしめられている。この可動部材152の内側に位置せしめられる連結ロッド108の下端部では、ロックボルト構造とされており、位置決めナット182が螺着されている。六角レンチ等を用いて、ロックボルトを備えた連結ロッド108を位置決めナット182に対して相対回転させて、位置決めナット182の連結ロッド108に対するねじ込み量を調節することにより、連結ロッド108における可動部材152からの突出位置、延いては加振板100の軸方向高さの設定変更が可能とされている。
さらに、可動部材152の下側開口部には蓋部材184が組み付けられて開口部が覆蓋せしめられていることにより、位置決めナット182を備えた連結ロッド108の下端部が、可動部材152に収容状態で配されている。また、可動部材152の中心軸上に位置する蓋部材184の中央部分には、段差部186を介して先端部分が小径化せしめられた雄螺子部188が、軸方向下方に向かって突設されている。
ここにおいて、蓋部材184が配設された可動部材152の軸方向下端部側が、防振装置用板ばねとしての可動子支持板ばね190を介して第四ブラケット金具166に支持されている。可動子支持板ばね190は、図3〜6に示される如き加振板支持板ばね120と略同一の構造とされており、加振板支持板ばね120よりも大きくされている。即ち、可動子支持板ばね190の径方向中央部分には、円環板形状の中央取付部分192が形成されていると共に、径方向外周部分には、外周縁部を全周に亘って連続して延びる環状の外周縁板部構造の外周取付部分194が形成されている。中央取付部分192の中央部分は、円形状の中心孔196を備えていると共に、外周取付部分194には、複数の外周挿通孔198が所定の間隔(本実施形態では等間隔)で貫設されている。
また、可動子支持板ばね190における中央取付部分192と外周取付部分194の間には、周方向に一周以上の長さで延びる渦巻き状のスリット200の一対が周方向に等間隔に設けられている。それによって、加振板支持板ばね120における中央取付部分192と外周取付部分194の間の環状部分において一対のスリット200,200を除いた部位には、周方向に一周以上の長さで延びる渦巻き状の連結腕部202の一対が周方向に等間隔に設けられており、これら一対の連結腕部202,202によって、中央取付部分192と外周取付部分194が実質的に連結されている。ここで、加振板支持板ばね120の連結腕部132と同様に、可動子支持板ばね190の連結腕部202においても、可動子支持板ばね190の軸方向に対して所定の角度:αで傾斜した板状の軸方向断面で周方向に連続に延びる傾斜帯板形状とされている。
この可動子支持板ばね190の中心孔196に蓋部材184の雄螺子部188が挿通されて、可動子支持板ばね190の中央取付部分192が、蓋部材184の段差部186に重ね合わされている。また、可動子支持板ばね190の下方に突出せしめられた雄螺子部188には、支持ナット210が螺着されていることで、中央取付部分192が支持ナット210と蓋部材184の段差部186の軸方向間に挟み込まれており、この支持ナット210の螺着固定力に基づいて挟圧されている。また、可動子支持板ばね190の外周取付部分194の上端面が第四ブラケット金具166の内フランジ状部174の下端面に重ね合わされていると共に、複数の固定ボルト212が、外周取付部分194の各外周挿通孔198に挿通されて、内フランジ状部174に螺着固定されていることにより、外周取付部分194が第四ブラケット金具166に固定されている。
これにより、可動子支持板ばね190が可動部材152の軸方向下方において軸直角方向に広がるように配設されて、かかる可動子支持板ばね190により、可動部材152の軸方向下側が第三及び四ブラケット金具164,166、延いては第一及び二ブラケット金具82,84を介して第二の取付金具14に対して軸方向で弾性的に連結支持せしめられている。
また、可動部材152が、連結ロッド108を介して加振板100と連結されていることにより、可動部材152の軸方向上側が、加振板支持板ばね120を介して仕切部材36、延いては第二の取付金具14に弾性支持されている。
すなわち、コイル156の通電により可動部材152とヨーク部材154の間で発生する磁界の作用で、可動部材152がヨーク部材154に対して軸方向両側に変位することに伴い、加振板支持板ばね120や可動子支持板ばね190も軸方向に弾性変形することによって、可動部材152に固定された連結ロッド108や蓋部材184もヨーク部材154に対して軸方向に可動とされている。上述の説明からも明らかなように、電磁式アクチュエータ153の可動子側の出力部材が、連結ロッド108と蓋部材184を含んで構成されている。また、可動子支持板ばね190を固定する電磁式アクチュエータ153のハウジングが、第三ブラケット金具164と第四ブラケット金具166を含んで構成されている。
また、可動部材152が加振板支持板ばね120と可動子支持板ばね190によって軸直角方向に位置決めされることで、可動部材152および連結ロッド108とヨーク部材154が同軸的に位置せしめられる状態が保持されている。即ち、図1に示される如きコイル156の非通電状態下において、可動部材152のヨーク部材154に対する初期位置が、加振板支持板ばね120および可動子支持板ばね190の剛性に基づいて保持されている。また、初期位置から変位した可動部材152における初期位置への返戻は、例えば、加振板支持板ばね120および可動子支持板ばね190の弾性変形作用を利用して、好適に為される。
なお、可動部材152が、加振板支持板ばね120や可動子支持板ばね190を介して、第二の取付金具14やヨーク部材154を含む固定子側に弾性支持されていることで、可動部材152や蓋部材184、連結ロッド108、加振板100等をマス成分とし、加振板支持板ばね120および可動子支持板ばね190をバネ成分とする一つのマス−バネ系が構成されている。特に、防振すべき振動周波数よりも更に高周波数域の反共振によりマス−バネ系が剛体化される等の悪影響を回避するために、この一つのマス−バネ系の固有振動数が、防振すべき振動周波数、即ち加振板100の加振周波数よりも充分に高周波数域に設定される。
このような構造とされた電磁式アクチュエータ153を第二の取付金具14に組み付けるに際しては、第二の取付金具14側の第二ブラケット金具84と電磁式アクチュエータ153側の第三ブラケット金具164が軸方向で相互に重ね合わされている。また、予め第一乃至は第四ブラケット金具82,84,164,166に軸方向に貫設された各挿通孔が軸直角方向で位置合わせされており、特に、第二ブラケット金具84の挿通孔が螺子孔214とされている。第一ブラケット金具82と第四ブラケット金具166の軸方向両側から固定ボルト215,217が挿通されて、螺子孔214に螺着固定されることによって、第一乃至は第四ブラケット金具82,84,164,166が軸方向で相互に挟圧固定されている。その結果、前述の如く、第一ブラケット金具82と第二ブラケット金具84の軸方向のボルト固定に基づいて、仕切部材36およびダイヤフラム76が第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に固定的に組み付けられていると共に、電磁式アクチュエータ153が、第一乃至は第四ブラケット金具82,84,164,166を介して、第二の取付金具14に組み付けられているのである。
而して、コイル156の通電により可動部材152がヨーク部材154に対して軸方向に駆動変位せしめられると、連結ロッド108から加振板100に軸方向駆動力が伝達されて、加振板100が軸方向に加振駆動されることとなる。
上述の如き構造とされた自動車用エンジンマウント10においては、例えば、パワーユニットのエンジン点火信号を参照信号とすると共に、車両ボデー等の防振すべき部材の振動検出信号をエラー信号として適応制御等のフィードバック制御を行うこと等によって、コイル156への通電を制御し、加振板100を軸方向に加振駆動せしめる。その結果、例えばエンジンシェイク等の低周波振動が入力されたり、或いはアイドリング振動や低速こもり音等の中周波振動が入力されたりした際に、受圧室90と平衡室92の間に圧力変動が有効に生ぜしめられるように加振板100を駆動制御せしめることによって、第一のオリフィス通路98を通じての流体の共振作用等に基づく防振効果や第二のオリフィス通路146を通じての流体の共振作用等に基づく防振効果が有効に発揮され得る。
なお、本実施形態では、仕切部材本体38の内フランジ状部50において加振板100と対向位置せしめられる面には、全周に亘って略一定の厚さ寸法で延びる緩衝ゴム層216が被着形成されている。それによって、加振板100が緩衝ゴム層216を介して内フランジ状部50に打ち当たることとなり、緩衝ゴム層216の緩衝作用に基づいて打ち当たりに起因する問題となる打音の発生が抑えられる。
また、例えば、第一のオリフィス通路98や第二のオリフィス通路146のチューニング周波数域よりも高周波数域の中速乃至は高速こもり音等が入力された際に、かかる振動に対応した駆動力を加振板100に作用せしめる。これによって、加振板100の加振駆動に基づき第一及び第二受圧室142,144からなる受圧室90の内圧が制御されることとなり、当該高周波振動に対して積極的乃至は能動的な防振効果が有効に発揮され得る。
特に本実施形態では、第一及び第二隔壁板40,42の透孔62,68や円形領域74を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、加振板100による能動的な防振効果を得ようとする、中速乃至高速こもり音等の高周波数域にチューニングされていることと相俟って、加振板100の加振駆動に基づいて第一受圧室142および第二受圧室144に生ぜしめられる圧力変動が、透孔62,68や円形領域74を通じて流動せしめられる流体の共振作用等を利用して、効率的に伝達されるようになっている。そして、第一受圧室142および第二受圧室144の圧力変動が積極的に乃至は能動的に制御されることにより、本体ゴム弾性体16で連結された第一の取付金具12と第二の取付金具14の振動伝達特性が調節されて、目的とする防振効果が有利に発揮され得るのである。
ここで、本実施形態に係る電磁式アクチュエータ153においては、そのコイル156やヨーク部材154の磁界作用を利用した駆動原理が、例えば特開2007−239883号公報に記載されている如き電磁式アクチュエータと同様とされており、コイル156への通電によって可動部材152がヨーク部材154に対して軸直角方向一方向に変位して可動部材152の周上の一箇所が擦動スリーブ162に当接せしめられつつ、軸方向に駆動される。そのため、可動部材152には、ある程度の軸直角方向変位が要求される。
そこにおいて、本実施形態の自動車用エンジンマウント10によれば、可動部材152の軸方向両側を第二の取付金具14やヨーク部材154を含む固定子側に弾性的に連結支持せしめる加振板支持板ばね120および可動子支持板ばね190において、可動部材152側に取り付けられる中央取付部分122,192と固定子側に取り付けられる外周取付部分124,194が、可動部材152の駆動軸方向に対して所定の角度:αで傾斜せしめられた傾斜帯板形状の連結腕部132,202によって、連結された構造を呈している。これにより、支持板ばね120,190の材質や連結腕部132,202の幅寸法を確保した上で、軸方向のばね成分が有効に得られつつ、軸直角方向のばね剛性が低減され得る。なお、上述の説明からも明らかなように、中央取付部分122,192が取り付けられる一方の被連結部材が、加振板100や可動部材152を含んで構成されていると共に、外周取付部分124,194が取り付けられる他方の被連結部材が、第二の取付金具14やヨーク部材154を含む固定子を含んで構成されている。
その結果、コイル156の通電時には、可動部材154が固定子に対して軸直角方向一方向に変位して、周上の1箇所で固定子側の擦動スリーブ162に対して軸方向のライン状で線当たり状に擦接しつつ、軸方向に変位する。これにより、可動部材152の平行な軸直角方向変位が許容されることから、傾動を伴う振動変位が防止されて、首振り状の不安定挙動も防止され得、そのような不安定挙動が共振してしまう程のより大きな問題発生も未然に回避され得る。
それ故、加振板100の加振駆動も安定し、目的とする防振制御が効果的に実現される。また、加振板100が仕切部材36の中央孔46の周壁部等に当接する可能性が低くされ、当接に伴い傷等が発生するおそれが好適に回避され得る。
また、本発明に係る防振装置用板ばねとしての可動子支持板ばね190は、例示の如き自動車用エンジンマウント10のみに適用されるものでなく、例えば図7に示される如き本発明の能動型制振装置に係る第二の実施形態としての制振器220に用いることも可能である。以下の説明において、前記第一の実施形態と実質的に同一の構造とされた部材及び部位については、第一の実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
本実施形態では、前記第一の実施形態に係る電磁式アクチュエータ153を制振器220として用いる具体例が示されており、第一の実施形態における可動子としての可動部材152が、固定子としての固定部材152’とされていると共に、第一の実施形態における固定子としてのヨーク部材154が、可動子としてのヨーク部材154’とされている。更に、本実施形態では、第一の実施形態における連結ロッド108の鍔部116を挟んで軸方向上側に設けられていた螺子穴110に代えて、連結ロッド108の軸方向上側に雄螺子部222が設けられている。即ち、連結ロッド108の雄螺子部222が、固定部材152’から軸方向上方に大きく延び出している。
このような連結ロッド108の雄螺子部222が、例えば、車両ボデー等の制振対象部材224に設けられた挿通孔226に挿通されて、雄螺子部222の先端部分が制振対象部材224から軸方向外方に突出せしめられている。また、制振対象部材224において雄螺子部222の先端部分が突出する面と反対側の面では、連結ロッド108の鍔部116が重ね合わされている。この雄螺子部222の先端部分に固定ナット228が螺着されることにより、固定ナット228と鍔部116の間に制振対象部材224が挟圧固定されて、制振器220の固定部材152’が制振対象部材224に固定されている。また、コイル156や第三及び第四ブラケット金具164,166を備えたヨーク部材154’が、可動子支持板ばね190を介して固定部材152’延いては制振対象部材224に弾性的に支持されている。
上述の如き構造とされた制振器220においては、コイル156に通電して、固定部材152’とヨーク部材154’の間に生じる磁界の作用で、ヨーク部材154’が固定部材152’に対して軸方向に変位する。この変位力が加振力として固定部材152’から制振対象部材224に及ぼされることとなり、かかる加振力に基づいて制振対象部材224に対して能動的乃至は相殺的な制振力が作用せしめられるのである。
そこにおいて、本実施形態に係る制振器220では、可動子と固定子を弾性的に連結する板ばねとして、軸方向に対して傾斜する傾斜帯板形状の連結腕部202を備えた可動子支持板ばね190が採用されており、中央取付部分192が固定部材152’に固定されていると共に、外周取付部分194がヨーク部材154’に固定されていることから、第一の実施形態と同様に、軸直角方向におけるばね剛性の低減とチューニング自由度の向上に加え、軸方向のばね成分のチューニング自由度も向上され得る。
特に本構造では、コイル156やヨーク部材154’の磁界作用を利用した駆動原理が、例えば特開2007−239883号公報に記載されている如き電磁式アクチュエータと同様とされており、コイル156への通電によって、ヨーク部材154’が固定部材152’に対して軸直角方向一方向に変位してヨーク部材154’における擦動スリーブ162の周上の一箇所が固定部材152’に当接せしめられつつ、軸方向に駆動される。ここで、可動子支持板ばね190の軸直角方向のばね剛性が低減されていることに基づき、ヨーク部材154’の平行な軸直角方向変位が許容されることから、傾動を伴う振動変位が防止されて、首振り状の不安定挙動も防止され得る。それ故、ヨーク部材154’の加振駆動が安定し、目的とする能動的な防振効果が安定して得られるのである。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、第一の実施形態において、加振板支持板ばね120や可動子支持板ばね190、第一のオリフィス通路98、第二のオリフィス通路146、フィルタオリフィス、可動板148等における形状や大きさ、構造、数、配置等の形態は、例示の如き形態に限定されるものではない。特に、第一のオリフィス通路98や第二のオリフィス通路146、フィルタオリフィス、可動板148等は、必要に応じて配されるものであって、必須の構成要件でない。
特に第一の実施形態では、加振板100のボス状突部102に固定された固定ボルト118の頭部と可動板148の案内軸部150が軸方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。そこで、例えば、加振板100を上方に向かって駆動させて、案内軸部150を固定ボルト118で押圧せしめ、可動板148を第一隔壁板40に当接した状態に保持せしめることも可能である。これにより、第一隔壁板40の透孔62が可動板148で覆蓋されると共に、可動板148の変位が拘束せしめることから、第二のオリフィス通路146を通じての流体の流動作用を実質的に生ぜしめないようにすること、即ち第二のオリフィス通路146を遮断状態にすることが可能となる。それ故、第一のオリフィス通路98のチューニング周波数域の振動入力時に、第二のオリフィス通路146を遮断状態に保持しておけば、受圧室90の第二のオリフィス通路146を通じての圧力漏れが一層確実に抑えられることから、第一のオリフィス通路98による防振効果を一層効果的に得ることが出来る。
また、例えば、加振板100を下方に向かって駆動変位せしめて、加振板100のリム状突部106を仕切部材本体38の内フランジ状部50に当接した状態を保持させることによって、第二受圧室144と平衡室92の間において、加振板100と中央孔46の間の隙間を通じての流体の流動作用を一層確実に阻止することも可能である。これにより、第二のオリフィス通路146のチューニング周波数域の振動入力時に、加振板100の外周部分(リム状突部106)を内フランジ状部50に当接保持せしめることによって、第二受圧室144の隙間を通じての圧力漏れが一層確実に抑えられることから、第二のオリフィス通路146による防振効果を一層効果的に得ることが出来る。
また、第一の実施形態では、加振板100と仕切部材36を弾性連結する板ばねや、電磁式アクチュエータ153の可動子(可動部材152)と固定子(ヨーク部材154)を弾性連結する板ばねとして、両方とも本発明に係る防振装置用板ばね(加振板支持板ばね120や可動子支持板ばね190)が採用されていたが、それら板ばねの一方にだけ採用しても良い。
また、連結腕部132,202は、例示のような全周に亘って略一定の幅寸法で且つ略一定の傾斜角度:αで延びている形態に限定されるものでなく、連結腕部の幅寸法や軸方向に傾斜する角度が周方向で変化しても良い。
また、前記実施形態では、連結腕部130,202が、周方向で等間隔に一対設けられていたが、周方向で等間隔に3つ以上設けられても良い。
また、前記実施形態では、外周取付部分124、194が、支持板ばね120,190の外周縁部を全周に亘って連続して延びる環状の外周縁板部とされていたが、例えば全周に亘って連続に延びずに、連結腕部の径方向外方端部に挿通孔を備えた構造とされても良い。
また、第一の実施形態において採用される電磁式アクチュエータには、例示の如き可動子(可動部材152)の外周側にコイル156を備えた固定子(ヨーク部材154)を配した構造の他、例えば特開2005−291276号公報や特開2000−227137号公報等に示されるように、可動子側に複数の永久磁石とヨーク部材の一方を配設すると共に、固定子側に複数の永久磁石とヨーク部材の他方とコイルを配設することにより、コイルへの通電によって生ぜしめられる磁界によって、複数の永久磁石のN極とS極を交互に増減させて、可動子を固定子に対して往復駆動せしめるようにした構造を採用することも可能である。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用エンジンマウントに適用したものの具体例について説明したが、本発明は、自動車用ボデーマウントやデフマウント等の他、自動車以外の各種振動体の防振装置に対して、何れも、適用可能である。
10:自動車用エンジンマウント、12:第一の取付金具、14:第二の取付金具、16:本体ゴム弾性体、100:加振板、120:加振板支持板ばね、122:中央取付部分、124:外周取付部分、132:連結腕部、152:可動部材、154:ヨーク部材、190:可動子支持板ばね、192:中央取付部分、194:外周取付部分、202:連結腕部