本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、Ptに代わる下部電極(導電性酸化物層)の構成材料として、例えばRuOxやIrO2をはじめとする導電性酸化物、特に、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)等のペロブスカイト構造を有する金属酸化物を用いればよいとの考えに至った。
かかるペロブスカイト構造を有する金属酸化物は、PZT等の強誘電体材料と同じ結晶構造を有しているので、下部電極(導電性酸化物層)は、強誘電体層との接合性の向上が図れるとともに、強誘電体層のエピタキシャル成長を実現しやすく、また、Pbの拡散バリア層としての特性にも優れたものとすることができると考えられる。
ところで、電子デバイスとしての各種特性の向上の観点からは、強誘電体層を配向膜とするのが好ましいが、このためには、下部電極(導電性酸化物層)をエピタキシャル成長により形成する必要がある。
ところが、一般に広く用いられるSi基板上に、直接、下部電極(導電性酸化物層)を形成しようとすると、まず、Si基板の表面にアモルファス層であるSiO2層が形成されてしまう。このようなアモルファス層上に、下部電極(導電性酸化物層)をエピタキシャル成長させることは極めて困難であった。
そこで、本発明者は、さらに検討を重ね、このようなアモルファス層上に、少なくとも厚さ方向に配向方位の揃ったバッファ層を設けることにより、このバッファ層上には、下部電極(導電性酸化物層)を、容易にエピタキシャル成長させることができることを見い出した。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、本発明の電子デバイス用基板は、少なくとも表面がアモルファス状態の物質で構成された基板と、前記表面上に、少なくとも厚さ方向に配向方位が揃うよう形成されたバッファ層と、前記バッファ層上にエピタキシャル成長により形成され、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を含む導電性酸化物層とを有することを特徴とする。
以下、本発明の電子デバイス用基板、電子デバイス、強誘電体メモリ、電子機器、インクジェット式記録ヘッドおよびインクジェットプリンタの好適な実施形態について、それぞれ説明する。
<電子デバイス用基板>
まず、本発明の電子デバイス用基板について説明する。
図1は、本発明の電子デバイス用基板の実施形態を示す断面図であり、図2は、バッファ層の配向方位を示す図であり、図3は、本発明の電子デバイス用基板の製造方法を説明するための図である。
図1に示す電子デバイス用基板100は、アモルファス層15を有する基板11と、アモルファス層15上に形成されたバッファ層12と、このバッファ層12上に形成された導電性酸化物層13とを有している。
基板11は、後述するバッファ層12および導電性酸化物層13とを支持する機能を有するのものであり、平板状をなす部材で構成されている。
この基板11は、その表面(図1中、上側)にアモルファス層15を有している。アモルファス層15は、アモルファス状態の物質で構成される部分であり、基板11と一体的に形成されたもの、基板11に対して固着されたもののいずれであってもよい。
基板11としては、例えば、Si基板、SOI(Si On Insulator)基板等を用いることができる。この場合、その表面が自然酸化膜または熱酸化膜であるSiO2膜で覆われているものを用いることができる。すなわち、この場合、これらの自然酸化膜または熱酸化膜がアモルファス層15を構成する。
また、アモルファス層15は、SiO2の他、例えば、窒化珪素、窒化酸化珪素、各種金属材料等で構成することもできる。この場合、アモルファス層15は、例えば、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着法(PVD)、スパッタリーフロー、Si基板表面の熱酸化等により形成するようにすればよい。
なお、本実施形態では、基板11は、アモルファス層15を有する構成であるが、本発明では、基板11は、その全体がアモルファス状態の物質で構成されていてもよい。この場合、基板11としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK(登録商標))、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の各種樹脂材料、または、各種ガラス材料等で構成される基板を用いることができる。
これらのSi基板、SOI基板、各種樹脂基板、各種ガラス基板等は、いずれも、汎用的な基板である。このため、基板11として、これらの基板を用いることにより、電子デバイス用基板100の製造コストを削減することができる。
基板11の平均厚さは、特に限定されないが、10μm〜1mm程度であるのが好ましく、100〜600μm程度であるのがより好ましい。基板11の平均厚さを、前記範囲内とすることにより、電子デバイス用基板100は、十分な強度を確保しつつ、その薄型化(小型化)を図ることができる。
基板11上には、薄膜よりなるバッファ層12が形成されている。
このバッファ層12は、少なくとも厚さ方向に配向方位が揃うよう形成されたものである。後述する導電性酸化物層13の配向方位は、バッファ層12の配向方位に依存するので、このようなバッファ層12上には、導電性酸化物層13も配向方位が揃うように成長するようになる。すなわち、本発明者は、このようなバッファ層12上には、導電性酸化物層13を、正常にエピタキシャル成長させることができることを見い出した。
ここで、「厚さ方向に配向方位が揃う」という意味について、図2を参照しつつ説明する。なお、ここでは、配向方位を厚さ方向に平行となるように揃える場合を一例とする。なお、図2中の1つの矢印は、1つの結晶粒の配向方位を模式的に示すものである。
この「厚さ方向に配向方位が揃う」とは、(1)配向方位が不規則になっているもの(すなわち、矢印の方向がランダムになっているもの)、および、(2)配向方位が面方向に揃っているもの(すなわち、矢印のほぼ全てが横になっているもの)は、該当せず、理想的には、図2(x)に示すように、厚さ方向に配向方位が完全に揃っている(すなわち、矢印の全てが上を向いて揃っているもの)が好ましいが、実際には、図2(y)に示すように、任意の配向方位のもの(すなわち、厚さ方向に対し傾斜した矢印)が、相当数含まれていてもよく、全体として配向方位が厚さ方向に向く傾向にある状態をいう。
なお、バッファ層12は、単一配向している(厚さ方向にのみ配向方位が揃っている)ものであればよいが、さらに面内配向している(三次元方向の全てに配向方位が揃っている)ものであるのが好ましい。これにより、前記効果が向上する。
また、バッファ層12を設けることにより、アモルファス層15と導電性酸化物層13との優れた接合性(密着性)を得ることもできる。
このようなバッファ層12は、例えば、NaCl構造の金属酸化物、蛍石型構造の金属酸化物、ペロブスカイト構造の金属酸化物等のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。これらの中でも、バッファ層12は、NaCl構造の金属酸化物、蛍石型構造の金属酸化物のうちの少なくとも1種を含むものがより好ましく、これらを主材料とするものがより好ましい。これらの金属酸化物は、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物との格子不整合が小さいので、導電性酸化物層13との接合性が向上する。
また、NaCl構造の金属酸化物としては、例えば、MgO、CaO、SrO、BaO、MnO、FeO、CoO、NiO、または、これらを含む固溶体等が挙げられるが、これらの中でも、特に、MgO、CaO、SrO、BaO、または、これらを含む固溶体のうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。このようなNaCl構造の金属酸化物は、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物との格子不整合が特に小さい。
一方、蛍石型構造の金属酸化物としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア、CeO2、ZrO2、ThO2、UO2、または、これらを含む固溶体等が挙げられるが、これらの中でも、イットリア安定化ジルコニア、CeO2、ZrO2、または、これらを含む固溶体のうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。このような蛍石型構造の金属酸化物は、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物との格子不整合が特に小さい。
バッファ層12は、例えば、立方晶(100)配向、立方晶(110)配向、立方晶(111)配向等でエピタキシャル成長しているもののいずれであってもよいが、これらの中でも、特に、立方晶(100)配向でエピタキシャル成長しているものであるのが好ましい。バッファ層12を立方晶(100)配向でエピタキシャル成長させることにより、バッファ層12の平均厚さを比較的小さくすることができる。このため、例えばMgO、CaO、SrO、BaOのような潮解性を示すNaCl構造の金属酸化物でバッファ層12を構成する場合であっても、製造時および使用時に空気中の水分で劣化するという不都合を好適に防止して、実用可能な電子デバイス用基板100とすることができる。
このような観点からは、バッファ層12は、できるだけ薄く形成するのが好ましく、具体的には、その平均厚さが10nm以下であるのが好ましく、5nm以下であるのがより好ましい。これにより、前記効果がより向上する。
また、このようにバッファ層12の平均厚さを小さくすることにより、例えば強誘電体メモリを作製する場合において、この強誘電体メモリのデザインルールの微細化に伴って必要となる薄型(例えば10nmオーダー厚)のキャパシタを作製することができるという利点もある。
バッファ層12上には、導電性酸化物層13がエピタキシャル成長により形成されている。前述したように、バッファ層12は、配向方位の揃ったものであるので、このバッファ層12上に、導電性酸化物層13をエピタキシャル成長させることにより、導電性酸化物層13は、配向方位が揃ったものとなる。
このような導電性酸化物層13を有する電子デバイス用基板100を用いて、各種電子デバイスを作製した場合、これらの電子デバイスは、各種特性が向上する。なお、この点については、後に説明する。
また、この導電性酸化物層13は、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を含むものであり、好ましくはペロブスカイト構造を有する金属酸化物を主材料とするものである。
ペロブスカイト構造を有する金属酸化物としては、例えば、CaRuO3、SrRuO3、BaRuO3、SrVO3、(La,Sr)MnO3、(La,Sr)CrO3、(La,Sr)CoO3、または、これらを含む固溶体等が挙げられるが、特に、CaRuO3、SrRuO3、BaRuO3、または、これらを含む固溶体のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。これらのペロブスカイト構造を有する金属酸化物は、導電性や化学的安定性に優れている。このため、導電性酸化物層13も、導電性や化学的安定性に優れたものとすることができる。
また、このような導電性酸化物層13は、電子デバイスを構築する際の電極として有用である。
導電性酸化物層13は、例えば、擬立方晶(100)配向、擬立方晶(110)配向、擬立方晶(111)配向等でエピタキシャル成長しているもののいずれであってもよいが、これらの中でも、特に、擬立方晶(100)配向または擬立方晶(110)配向でエピタキシャル成長しているものであるのが好ましい。このような導電性酸化物層13を有する電子デバイス用基板100を用いて、各種電子デバイスを作製した場合、これらの電子デバイスは、各種特性がより向上する。
また、導電性酸化物層13の平均厚さは、特に限定されないが、10〜300nm程度とするのが好ましく、50〜150nm程度とするのがより好ましい。これにより、導電性酸化物層13は、電極としての機能を十分に発揮することができるとともに、電子デバイスの大型化を防止することができる。
次に、このような電子デバイス用基板100の製造方法について、図3を参照しつつ説明する。
前述した電子デバイス用基板100は、例えば、次のようにして製造することができる。
以下に示す電子デバイス用基板100の製造方法は、アモルファス層15上にバッファ層12を形成する工程(バッファ層形成工程)と、バッファ層12上に導電性酸化物層13を形成する工程(導電性酸化物層形成工程)とを有している。以下、各工程について、順次説明する。
まず、アモルファス層15を有する基板11を用意する。この基板11には、厚さが均一で、たわみや傷のないものが好適に使用される。
[1A]バッファ層形成工程
まず、基板11のアモルファス層15上にバッファ層12を形成する。これは、例えば、次のようにして行うことができる。
まず、基板11を基板ホルダーに装填して、真空装置内に設置する。
なお、真空装置内には、基板11に対向して、前述したようなバッファ層12の構成元素を含む第1ターゲット(バッファ層用ターゲット)が所定距離、離間して配置されている。なお、第1ターゲットとしては、目的とするバッファ層12の組成と同一の組成または近似組成のものが好適に使用される。
次いで、例えばレーザー光を第1ターゲットに照射すると、第1ターゲットから酸素原子および金属原子を含む原子が叩き出され、プルームが発生する。換言すれば、このプルームがアモルファス層15に向かって照射される。そして、このプルームは、アモルファス層15(基板11)上に接触するようになる。
また、これとほぼ同時に、アモルファス層15の表面に対して、イオンビームを所定角度傾斜させて照射する。
これにより、アモルファス層15上に、少なくとも厚さ方向に配向方位の揃ったバッファ層12がエピタキシャル成長により形成される。
なお、前記原子を第1ターゲットから叩き出す方法としては、レーザー光を第1ターゲット表面へ照射する方法の他、例えば、アルゴンガス(不活性ガス)プラズマ、電子線等を第1ターゲット表面へ照射(入射)する方法を用いることもできる。
これらの中でも、前記原子を第1ターゲットから叩き出す方法としては、特に、レーザー光を第1ターゲット表面へ照射する方法が好ましい。かかる方法によれば、レーザー光の入射窓を備えた簡易な構成の真空装置を用いて、容易かつ確実に、原子を第1ターゲットから叩き出すことができる。
また、このレーザー光は、好ましくは波長が150〜300nm程度、パルス長が1〜100ns程度のパルス光とされる。具体的には、レーザー光としては、例えば、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザーのようなエキシマレーザー、YAGレーザー、YVO4レーザー、CO2レーザー等が挙げられる。これらの中でも、レーザー光としては、特に、ArFエキシマレーザーまたはKrFエキシマレーザーが好適である。ArFエキシマレーザーおよびKrFエキシマレーザーは、いずれも、取り扱いが容易であり、また、より効率よく原子を第1ターゲットから叩き出すことができる。
一方、アモルファス層15の表面に照射するイオンビームとしては、特に限定されないが、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトンのような不活性ガスのうちの少なくとも1種のイオン、または、これらのイオンと酸素イオンとの混合イオン等が挙げられる。
このイオンビームのイオン源としては、例えば、Kauffmanイオン源等を用いるのが好ましい。このイオン源を用いることにより、イオンビームを比較的容易に生成することができる。
また、イオンビームのアモルファス層15の表面の法線方向に対する照射角度(前記所定角度)は、特に限定されないが、35〜65°程度とするのが好ましい。特に、NaCl構造の金属酸化物を主材料とするバッファ層12を形成する場合には、前記照射角度を42〜47°程度、また、蛍石型構造の金属酸化物を主材料とするバッファ層12を形成する場合には、前記照射角度を52〜57°程度とするのがより好ましい。このような照射角度に設定して、イオンビームをアモルファス層15の表面に照射することにより、立方晶(100)配向で、かつ、面内配向したバッファ層12を形成することができる。
このようなバッファ層12の形成における各条件は、バッファ層12がエピタキシャル成長し得るものであればよく、例えば、次のようにすることができる。
レーザー光の周波数は、30Hz以下とするのが好ましく、15Hz以下とするのがより好ましい。
レーザー光のエネルギー密度は、0.5J/cm2以上とするのが好ましく、2J/cm2以上とするのがより好ましい。
イオンビームの加速電圧は、100〜300V程度とするのが好ましく、150〜250V程度とするのがより好ましい。
また、イオンビームの照射量は、1〜30mA程度とするのが好ましく、5〜15mA程度とするのがより好ましい。
基板11の温度は、0〜50℃程度とするのが好ましく、室温(5〜30℃)程度とするのがより好ましい。
基板11と第1ターゲットとの距離は、60mm以下とするのが好ましく、45mm以下とするのがより好ましい。
また、真空装置内の圧力は、133×10-1Pa(1×10-1Torr)以下とするのが好ましく、133×10-3Pa(1×10-3Torr)以下とするのがより好ましい。
真空装置内の雰囲気は、不活性ガスと酸素との混合比を、体積比で300:1〜10:1程度とするのが好ましく、150:1〜50:1程度とするのがより好ましい。
バッファ層12の形成における各条件を、それぞれ、前記範囲とすると、より効率よく、バッファ層12をエピタキシャル成長により形成することができる。
また、このとき、レーザー光およびイオンビームの照射時間を適宜設定することにより、バッファ層12の平均厚さを前述したような範囲に調整することができる。このレーザー光およびイオンビームの照射時間は、前記各条件によっても異なるが、通常、200秒以下とするのが好ましく、100秒以下とするのがより好ましい。
このようなバッファ層12の形成方法によれば、イオンビームの照射角度を調整するという簡単な方法で、揃える配向方位を任意の方向に調整が可能である。また、このようにバッファ層12の配向方位を、精度よく揃えることができるので、バッファ層12の平均厚さをより小さくすることができるという利点もある。
以上のようにして、バッファ層12が得られる(図3(a)参照)。
[2A]導電性酸化物層形成工程
次に、バッファ層12上に導電性酸化物層13を形成する。これは、例えば、次のようにして行うことができる。
なお、導電性酸化物層13の形成に先立って、前記第1ターゲットに代わり、バッファ層12(基板11)に対向して、前述したような導電性酸化物層13の構成元素を含む第2ターゲット(導電性酸化物層用ターゲット)が所定距離、離間して配置される。なお、第2ターゲットとしては、目的とする導電性酸化物層13の組成と同一の組成または近似組成のものが好適に使用される。
前記工程[1A]に引き続き、バッファ層12上に、酸素原子および各種金属原子を含む原子のプルームを照射する。そして、このプルームがバッファ層12の表面(上面)に接触することにより、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物(前述した通りである)を含む導電性酸化物層13が、エピタキシャル成長により膜状に形成される。
このプルームは、前記第2ターゲット表面に、前記工程[1A]と同様に、レーザー光を照射することにより、第2ターゲットから酸素原子および各種金属原子を含む原子を叩きだして、発生させるのが好ましい。
このようなレーザー光は、前記工程[1A]と同様に、ArFエキシマレーザーまたはKrFエキシマレーザーが好適である。
なお、必要に応じて、前記工程[1A]と同様に、バッファ層12の表面にイオンビームを照射しつつ、導電性酸化物層13を形成するようにしてもよい。これにより、より効率よく導電性酸化物層13を形成することができる。
また、導電性酸化物層13の形成における各条件は、各種金属原子が、所定の比率(すなわち、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物における組成比)で、バッファ層12上に到達し、かつ、導電性酸化物層13がエピタキシャル成長し得るものであればよく、例えば、次のようにすることができる。
レーザー光の周波数は、30Hz以下程度とするのが好ましく、15Hz以下程度とするのがより好ましい。
レーザー光のエネルギー密度は、0.5J/cm2以上とするのが好ましく、2J/cm2以上とするのがより好ましい。
バッファ層12が形成された基板11の温度は、300〜800℃程度とするのが好ましく、400〜700℃程度とするのがより好ましい。
なお、イオンビームの照射を併用する場合には、この温度は、0〜50℃程度とするのが好ましく、室温(5〜30℃)程度とするのが好ましい。
バッファ層12が形成された基板11と第2ターゲットとの距離は、60mm以下とするのが好ましく、45mm以下とするのがより好ましい。
また、真空装置内の圧力は、1気圧以下が好ましく、そのうち、酸素分圧は、例えば、酸素ガス供給下で133×10-3Pa(1×10-3Torr)以上とするのが好ましく、原子状酸素ラジカル供給下で133×10-5Pa(1×10-5Torr)以上とするのが好ましい。
なお、イオンビームの照射を併用する場合には、真空装置内の圧力は、133×10-1Pa(1×10-1Torr)以下とするのが好ましく、133×10-3Pa(1×10-3Torr)以下とするのがより好ましい。また、この場合、真空装置内の雰囲気は、不活性ガスと酸素との混合比を、体積比で300:1〜10:1程度とするのが好ましく、150:1〜50:1程度とするのがより好ましい。
導電性酸化物層13の形成における各条件を、それぞれ、前記範囲とすると、さらに効率よく導電性酸化物層13を形成することができる。
また、このとき、レーザー光の照射時間を適宜設定することにより、導電性酸化物層13の平均厚さを前述したような範囲に調整することができる。このレーザー光の照射時間は、前記各条件によっても異なるが、通常、3〜90分程度とするのが好ましく、15〜45分程度とするのがより好ましい。
以上のようにして、導電性酸化物層13が得られる(図3(b)参照)。
以上のような工程[1A]および[2A]を経て、電子デバイス用基板100が製造される。
なお、前記工程[1A]に先立って、前処理工程として、例えば基板11を洗浄する工程、すなわち、基板11の表面に付着した付着物を除去(例えば、脱脂等)する工程を設けるようにしてもよい。
このような付着物の除去は、例えば、基板11と除去液とを接触させることにより行うことができる。
基板11と除去液との接触方法としては、特に限定されないが、例えば、基板11を除去液中に浸漬する方法(浸漬法)、基板11の表面に除去液を噴霧(シャワー)する方法、基板11の表面に除去液を塗付する方法(塗布法)等が挙げられる。
これらの中でも、前記接触方法としては、浸漬法を用いるのが好ましい。かかる浸漬法によれば、容易かつ確実に基板11の表面から付着物(例えば、有機物等)を除去することができる。また、浸漬法によれば、同時に複数(大量)の基板11を処理することができるという利点もある。
また、この場合、除去液に超音波振動を与えつつ行うようにしてもよいし、基板11および除去液の少なくとも一方を揺動させつつ行うようにしてもよい。
除去液としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルのようなエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルのようなニトリル類、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、n−ヘキサン、石油エーテル、トルエン、ベンゼン、キシレンのような炭化水素類等の各種有機溶媒が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<電子デバイス(キャパシタ)>
次に、本発明の電子デバイスをキャパシタに適用した場合について説明する。
図4は、本発明の電子デバイスをキャパシタに適用した場合の実施形態を示す断面図である。
以下、図4に示すキャパシタ200について、前記電子デバイス用基板100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
キャパシタ200は、電子デバイス用基板100と、電子デバイス用基板100上の所定領域に設けられた強誘電体層24と、強誘電体層24上に設けられた上部電極層25とを有している。
電子デバイス用基板100の導電性酸化物層13は、キャパシタ200では、一方の電極として機能する。以下、導電性酸化物層13を、「下部電極層13」と言う。
この下部電極層13上には、強誘電体層24がエピタキシャル成長により形成されている。前述したように、下部電極層13は、配向方位の揃ったものであるので、この下部電極層13上に、強誘電体層24をエピタキシャル成長させることにより、強誘電体層24は、配向方位が揃ったものとなる。
これにより、キャパシタ200は、例えば残留分極が増大、抗電界が低減等する。すなわち、キャパシタ200は、各種特性が向上する。このため、このようなキャパシタ200を用いて強誘電体メモリを作製した場合には、かかる強誘電体メモリをヒステリシス曲線の角型性に優れたものとすることができる。
また、強誘電体層24は、各種強誘電体材料で構成することができるが、ペロブスカイト構造を有する強誘電体材料を含むものが好ましく、ペロブスカイト構造を有する強誘電体材料を主材料とするものがより好ましい。さらに、ペロブスカイト構造を有する強誘電体材料としては、正方晶(001)配向でエピタキシャル成長しているもの、菱面体晶(100)配向でエピタキシャル成長しているもののいずれであってもよいが、特に、正方晶(001)配向でエピタキシャル成長しているものが好ましい。これにより、前記効果がより向上する。
このペロブスカイト構造を有する強誘電体材料としては、例えば、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、(Pb,La)(Zr,Ti)O3(PLZT)、BaTiO3、KNbO3、PbZnO3、PbNbO3、PbFeO3、PbWO3のようなペロブスカイト構造の金属酸化物、SrBi2(Ta,Nb)2O9、(Bi,La)4Ti3O12のようなBi層状化合物、または、これらを含む固溶体等が挙げられるが、これらの中でも、特に、PZT、BaTiO3、または、これらを含む固溶体のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。これにより、キャパシタ200は、各種特性が特に優れたものとなる。
なお、下部電極層13は、前述したように、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を含むもの(特に、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を主材料とするもの)である。また、このペロブスカイト構造を有する金属酸化物は、ペロブスカイト構造を有する強誘電体材料との格子不整合が小さい。このため、下部電極層13上には、強誘電体層24を、容易かつ確実に、正方晶(001)配向でエピタキシャル成長させることができる。また、得られる強誘電体層24は、下部電極層13との接合性が向上する。
また、強誘電体層24の平均厚さは、特に限定されないが、50〜300nm程度であるのが好ましく、100〜200nm程度であるのがより好ましい。強誘電体層24の平均厚さを、前記範囲とすることにより、キャパシタ200の大型化を防止しつつ、各種特性を好適に発揮し得るキャパシタ200とすることができる。
強誘電体層24上には、櫛歯状(または帯状)をなす上部電極層25が形成されている。
この上部電極層25の構成材料としては、例えば、Pt、Ir、Au、Ag、Ru、または、これらを含む合金等のうちの、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上部電極層25の平均厚さは、特に限定されないが、10〜300nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
次に、キャパシタ200の製造方法について説明する。
前述したキャパシタ200は、例えば、次のようにして製造することができる。
以下に示すキャパシタ200の製造方法は、アルモファス層15上にバッファ層12を形成する工程(バッファ層形成工程)と、バッファ層12上に下部電極層(導電性酸化物層)13を形成する工程(下部電極層形成工程)と、下部電極層13上に強誘電体層24を形成する工程(強誘電体層形成工程)と、下部電極層13を取り出す工程(下部電極層取出工程)と、強誘電体層24上に上部電極層25を形成する工程(上部電極層形成工程)とを有している。以下、各工程について、順次説明する。
[1B]バッファ層形成工程
前記工程[1A]と同様にして行う。
[2B]下部電極層形成工程
前記工程[2A]と同様にして行う。
[3B]強誘電体層形成工程
次に、下部電極層13上に強誘電体層24を形成する。これは、例えば、次のようにして行うことができる。
なお、強誘電体層24の形成に先立って、前記第2ターゲットに代わり、電子デバイス用基板100に対向して、前述したような強誘電体層24の構成元素を含む第3ターゲット(強誘電体層用ターゲット)が所定距離、離間して配置される。なお、第3ターゲットとしては、目的とする強誘電体層24の組成と同一の組成または近似組成のものが好適に使用される。
前記工程[2B]に引き続き、下部電極層13上に、酸素原子および各種金属原子を含む原子のプルームを照射する。そして、このプルームが下部電極層13の表面(上面)に接触することにより、ペロブスカイト構造を有する強誘電体材料(前述した通りである)を含む強誘電体層24が、例えば正方晶(001)配向等でエピタキシャル成長により膜状に形成される。
このプルームは、前記第3ターゲット表面に、前記工程[1A]と同様に、レーザー光を照射することにより、第3ターゲットから酸素原子および各種金属原子を含む原子を叩きだして、発生させるのが好ましい。
このようなレーザー光は、前記工程[1A]と同様に、ArFエキシマレーザーまたはKrFエキシマレーザーが好適である。
なお、必要に応じて、前記工程[1A]と同様に、下部電極層13の表面にイオンビームを照射しつつ、強誘電体層24を形成するようにしてもよい。これにより、より効率よく強誘電体層24を形成することができる。
また、強誘電体層24の形成における各条件は、各種金属原子が、所定の比率(すなわち、ペロブスカイト構造を有する強誘電体材料における組成比)で、下部電極層13上に到達し、かつ、強誘電体層24がエピタキシャル成長し得るものであればよく、例えば、次のようにすることができる。
レーザー光の周波数は、30Hz以下とするのが好ましく、15Hz以下とするのがより好ましい。
レーザー光のエネルギー密度は、0.5J/cm2以上とするのが好ましく、2J/cm2以上とするのがより好ましい。
下部電極層13が形成された基板11の温度は、300〜800℃程度とするのが好ましく、400〜700℃程度とするのがより好ましい。
なお、イオンビームの照射を併用する場合には、この温度は、0〜50℃程度とするのが好ましく、室温(5〜30℃)程度とするのがより好ましい。
下部電極層13が形成された基板11と第3ターゲットとの距離は、60mm以下とするのが好ましく、45mm以下とするのがより好ましい。
また、真空装置内の圧力は、1気圧以下が好ましく、そのうち、酸素分圧は、例えば、酸素ガス供給下で133×10-3Pa(1×10-3Torr)以上とするのが好ましく、原子状酸素ラジカル供給下で133×10-5Pa(1×10-5Torr)以上とするのが好ましい。
なお、イオンビームの照射を併用する場合には、真空装置内の圧力は、133×10-1Pa(1×10-1Torr)以下とするのが好ましく、133×10-3Pa(1×10-3Torr)以下とするのがより好ましい。また、この場合、真空装置内の雰囲気は、不活性ガスと酸素との混合比を、体積比で300:1〜10:1程度とするのが好ましく、150:1〜50:1程度とするのがより好ましい。
強誘電体層24の形成における各条件を、それぞれ前記範囲とすると、さらに効率よく強誘電体層24を形成することができる。
また、このとき、レーザー光の照射時間を適宜設定することにより、強誘電体層24の平均厚さを前述したような範囲に調整することができる。このレーザー光の照射時間は、前記各条件によっても異なるが、通常、3〜90分程度とするのが好ましく、15〜45分程度とするのがより好ましい。
以上のようにして、強誘電体層24が得られる。
[4B]下部電極層取出工程
次に、強誘電体層24の一部を除去して、下部電極層13を取り出す。これにより、強誘電体層24は、下部電極層13上の所定領域に設けられることになる。これは、例えば、フォトリソグラフィー法を用いることにより、行うことができる。
まず、除去する部分を残して、強誘電体層24上にレジスト層を形成する。
次いで、強誘電体層24に対して、エッチング処理(例えば、ウェットエッチング処理、ドライエッチング処理等)を施す。
次いで、前記レジスト層を除去する。これにより、下部電極層13の一部(図4中左側)が露出する。
[5B]上部電極層形成工程
次に、強誘電体層24上に上部電極層25を形成する。これは、例えば、次のようにして行うことができる。
まず、所望のパターン形状を有するマスク層を、例えばスパッタリング法等により強誘電体層24上に形成する。
次いで、例えばPt等で構成される上部電極層25の材料を、例えば、蒸着法、スパッタリング法、印刷法等を用いることにより、膜状に形成する。
次いで、前記マスク層を除去する。
以上のようにして、上部電極層25が得られる。
以上のような工程[1B]〜[5B]を経て、キャパシタ200が製造される。
<電子デバイス(カンチレバー)>
次に、本発明の電子デバイスをカンチレバー(圧電アクチュエータ)に適用した場合について説明する。
図5は、本発明の電子デバイスをカンチレバーに適用した場合の実施形態を示す断面図である。
以下、図5に示すカンチレバー300について、前記電子デバイス用基板100およびキャパシタ200との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
カンチレバー300は、電子デバイス用基板100と、電子デバイス用基板100上の所定領域に設けられた圧電体層34と、圧電体層34上に設けられた上部電極層35とを有している。
カンチレバー300では、基板11は、モノモルフ型カンチレバーの弾性基板として機能する。
また、電子デバイス用基板100の導電性酸化物層13は、カンチレバー300では、一方の電極として機能する。以下、導電性酸化物層13を、「下部電極層13」と言う。
この下部電極層13上には、圧電体層34がエピタキシャル成長により形成されている。前述したように、下部電極層13は、配向方位の揃ったものであるので、この下部電極層13上に、圧電体層34をエピタキシャル成長させることにより、圧電体層34は、配向方位が揃ったものとなる。
これにより、カンチレバー300は、例えば電界歪み特性等の各種特性が向上する。
また、圧電体層34は、各種強誘電体材料で構成することができるが、ペロブスカイト構造を有する強誘電体材料を含むものが好ましく、ペロブスカイト構造を有する強誘電体材料を主材料とするものがより好ましい。さらに、ペロブスカイト構造を有する強誘電体材料としては、菱面体晶(100)配向でエピタキシャル成長しているもの、正方晶(001)配向でエピタキシャル成長しているもののいずれであってもよいが、特に、菱面体晶(100)配向でエピタキシャル成長しているものが好ましい。これにより、前記効果がより向上する。
このペロブスカイト構造を有する強誘電体材料としては、前記キャパシタ200で挙げたのと同様のものを用いることができる。これにより、カンチレバー300は、各種特性が特に優れたものとなる。
なお、下部電極層13は、前述したように、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を含むもの(特に、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を主材料とするもの)である。また、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物は、ペロブスカイト構造を有する強誘電体材料との格子不整合が小さい。このため、下部電極層13上には、圧電体層34を、容易かつ確実に、菱面体晶(100)配向でエピタキシャル成長させることができる。また、圧電体層34は、下部電極層13との接合性が向上する。
また、圧電体層34の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、100〜3000nm程度であるのが好ましく、500〜2000nm程度であるのがより好ましい。圧電体層34の平均厚さを、前記範囲とすることにより、カンチレバー300の大型化を防止しつつ、各種特性を好適に発揮し得るカンチレバー300とすることができる。
圧電体層34上には、上部電極層35が形成されている。
この上部電極層35の構成材料および平均厚さは、それぞれ、前記キャパシタ200で記載した上部電極層25と同様とすることができる。
次に、カンチレバー300の製造方法について説明する。
前述したカンチレバー300は、例えば、次のようにして製造することができる。
以下に示すカンチレバー300の製造方法は、アモルファス層15上にバッファ層12を形成する工程(バッファ層形成工程)と、バッファ層12上に下部電極層(導電性酸化物層)13を形成する工程(下部電極層形成工程)と、下部電極層13上に圧電体層34を形成する工程(圧電体層形成工程)と、下部電極層13を取り出す工程(下部電極層取出工程)と、圧電体層34上に上部電極層25を形成する工程(上部電極層形成工程)とを有している。以下、各工程について、順次説明する。
[1C]バッファ層形成工程
前記工程[1A]と同様にして行う。
[2C]下部電極層形成工程
前記工程[2A]と同様にして行う。
[3C]圧電体層形成工程
次に、下部電極層13上に圧電体層34を形成する。これは、前記工程[3B]と同様にして行うことができる。
なお、圧電体層34の形成に先立って、前記第2ターゲットに代わり、電子デバイス用基板100に対向して、前述したような圧電体層34の構成元素を含む第3’ターゲット(圧電体層用ターゲット)が所定距離、離間して配置される。なお、第3’ターゲットとしては、目的とする圧電体層34の組成と同一の組成または近似組成のものが好適に使用される。
[4C]下部電極層取出工程
前記工程[4B]と同様にして行う。
[5C]上部電極層形成工程
前記工程[5B]と同様にして行う。
以上のような工程[1C]〜[5C]を経て、カンチレバー300が製造される。
<強誘電体メモリ>
次に、本発明の電子デバイスをキャパシタとして備える強誘電体メモリについて説明する。
図6は、本発明の強誘電体メモリの実施形態を模式的に示す平面図であり、図7は、図6中のA−A線断面図である。なお、図6では、煩雑となることを避けるため、断面であることを示す斜線を一部省略して示す。
図7に示すように、強誘電体メモリ40は、メモリセルアレイ42と、周辺回路部41とを有している。これらのメモリセルアレイ42と周辺回路部41とは、異なる層に形成されている。本実施形態では、下層(下側)に周辺回路部41が、上層(上側)にメモリセルアレイ42が形成されている。
メモリセルアレイ42は、行選択のための第1信号電極(ワード線)422と、列選択のための第2信号電極(ビット線)424とが直交するように配列されている。なお、信号電極の配置は、前記のものに限らず、逆であってもよい。すなわち、第1信号電極422がビット線、第2信号電極424がワード線でもよい。
これらの第1信号電極422と第2信号電極424との間には、強誘電体層423が配置され、第1信号電極422と第2信号電極424との交差領域において、それぞれ、単位キャパシタ(メモリセル)が構成されている。
また、第1信号電極422、強誘電体層423および第2信号電極424を覆うように、絶縁材料からなる第1保護層425が形成されている。
さらに、第2配線層44を覆うように第1保護層425上に絶縁材料からなる第2保護層426が形成されている。
第1信号電極422および第2信号電極424は、それぞれ、第2配線層44によって周辺回路部41の第1配線層43と電気的に接続されている。
周辺回路部41は、図6に示すように、第1信号電極422を選択的に制御するための第1駆動回路451と、第2信号電極424を選択的に制御するための第2駆動回路452と、センスアンプなどの信号検出回路453とを有しており、前記の単位キャパシタ(メモリセル)に対して選択的に情報の書き込み、または、読み出しを行うことができる。
また、周辺回路部41は、図7に示すように、半導体基板411上に形成されたMOSトランジスタ412を有している。このMOSトランジスタ412は、ゲート絶縁層412a、ゲート電極412bおよびソース/ドレイン領域412cを有している。
各MOSトランジスタ412は、それぞれ、素子分離領域413によって分離されるとともに、所定のパターンで形成された第1配線層43によって、それぞれ、電気的接続がなされている。
MOSトランジスタ412が形成された半導体基板411上には、第1層間絶縁層414が、さらに、第1層間絶縁層414上には、第1配線層43を覆うようにして第2層間絶縁層415が形成されている。
この第2層間絶縁層415上には、下地層(バッファ層)421を含んだメモリセルアレイ42が設けられている。
そして、周辺回路部41とメモリセルアレイ42とは、第2配線層44によって電気的に接続されている。
本実施形態では、第2層間絶縁層415、下地層421、第1信号電極422、強誘電体層423および第2信号電極424により、前述したキャパシタ200が構成されている。
したがって、本実施形態では、第2層間絶縁層415の少なくとも表面がアモルファス状態の物質で構成されている。
以上の構成のような強誘電体メモリ40によれば、単一の半導体基板411上に周辺回路部41およびメモリセルアレイ42とが積層されているので、周辺回路部41とメモリセルアレイ42とを同一面に配置した場合に比べて、チップ面積を大幅に小さくすることができ、単位キャパシタ(メモリセル)の集積度を高めることができる。
このような強誘電体メモリ40における書き込み、読み出し動作の一例について説明する。
まず、読み出し動作においては、選択された単位キャパシタに読み出し電圧「V0」が印加される。これは、同時に「0」の書き込み動作を兼ねている。このとき、選択されたビット線を流れる電流またはビット線をハイインピーダンスにしたときの電位をセンスアンプにて読み出す。
なお、このとき、選択されない単位キャパシタには、読み出し時のクロストークを防ぐため、所定の電圧が印加される。
一方、書き込み動作においては、「1」の書き込みの場合は、選択された単位キャパシタに「−V0」の電圧が印加される。「0」の書き込みの場合は、選択された単位キャパシタに、この選択された単位キャパシタの分極を反転させない電圧が印加され、読み出し動作時に書き込まれた「0」状態を保持する。
なお、このとき、選択されない単位キャパシタには、書き込み時のクロストークを防ぐため、所定の電圧が印加される。
次に、強誘電体メモリ40の製造方法の一例について説明する。
前述したような強誘電体メモリ40は、例えば、次のようにして製造することができる。
−1− まず、公知のLSIプロセス(半導体プロセス)を用いて、周辺回路部41を形成する。
具体的には、半導体基板411上に、MOSトランジスタ412を形成する。例えば、半導体基板411上の所定領域にトレンチ分離法、LOCOS法等を用いて素子分離領域413を形成し、次いで、ゲート絶縁層412aおよびゲート電極412bを形成し、その後、半導体基板411に不純物をドープすることでソース/ドレイン領域412cを形成する。
−2− 次に、第1層間絶縁層414を形成した後、コンタクトホールを形成し、その後、所定パターンの第1配線層43を形成する。
−3− 次に、第1配線層43が形成された第1層間絶縁層414上に、第2層間絶縁層415を形成する。
以上のようにして、駆動回路451、452および信号検出回路453等の各種回路を有する周辺回路部41が形成される。
−4− 次に、周辺回路部41上に、メモリセルアレイ42を形成する。
これは、前述した工程[1B]〜[5B]と同様にして行うことができる。
−5− 次に、第2信号電極424が形成された強誘電体層423上に、第1保護層425を形成し、さらに、第1保護層425の所定領域にコンタクトホールを形成し、その後、所定パターンの第2配線層44を形成する。これにより、周辺回路部41とメモリセルアレイ42とが電気的に接続される。
−6− 次に、最上層に、第2保護層426を形成する。
以上のようにして、メモリセルアレイ42が形成され、強誘電体メモリ40が得られる。
このような強誘電体メモリ40は、各種電子機器に適用することができる。
この電子機器としては、パーソナルコンピューター、ICカード、タグ、携帯電話等が挙げられる。
<インクジェット式記録ヘッド>
本発明の電子デバイスを圧電アクチュエータとして備えるインクジェット式記録ヘッドについて説明する。
図8は、本発明のインクジェット式記録ヘッドの実施形態を示す分解斜視図であり、図9は、図8に示すインクジェット式記録ヘッドの主要部の構成を示す断面図である。なお、図8は、通常使用される状態とは、上下逆に示されている。
図8に示すインクジェット式記録ヘッド50(以下、単に「ヘッド50」と言う。)は、ノズル板51と、インク室基板52と、振動板53と、振動板53に接合された圧電素子(振動源)54とを備え、これらが基体56に収納されている。なお、このヘッド50は、オンデマンド形のピエゾジェット式ヘッドを構成する。
ノズル板51は、例えばステンレス製の圧延プレート等で構成されている。このノズル板51には、インク滴を吐出するための多数のノズル孔511が形成されている。これらのノズル孔511間のピッチは、印刷精度に応じて適宜設定される。
このノズル板51には、インク室基板52が固着(固定)されている。
このインク室基板52は、ノズル板51、側壁(隔壁)522および後述する振動板53により、複数のインク室(キャビティ、圧力室)521と、インクカートリッジ631から供給されるインクを一時的に貯留するリザーバ室523と、リザーバ室523から各インク室521に、それぞれインクを供給する供給口524とが区画形成されている。
これらのインク室521は、それぞれ短冊状(直方体状)に形成され、各ノズル孔511に対応して配設されている。各インク室521は、後述する振動板53の振動により容積可変であり、この容積変化により、インクを吐出するよう構成されている。
このインク室基板52を得るための母材としては、例えば、シリコン単結晶基板、各種ガラス基板、各種プラスチック基板等を用いることができる。これらの基板は、いずれも汎用的な基板であるので、これらの基板を用いることにより、ヘッド50の製造コストを低減することができる。
また、これらの中でも、母材としては、(110)配向シリコン単結晶基板を用いるのが好ましい。この(110)配向シリコン単結晶基板は、異方性エッチングに適しているのでインク室基板52を、容易かつ確実に形成することができる。
このインク室基板52の平均厚さは、特に限定されないが、10〜1000μm程度とするのが好ましく、100〜500μm程度とするのがより好ましい。
また、インク室521の容積は、特に限定されないが、0.1〜100nL程度とするのが好ましく、0.1〜10nL程度とするのがより好ましい。
一方、インク室基板52のノズル板51と反対側には、振動板53が接合され、さらに振動板53のインク室基板52と反対側には、複数の圧電素子54が、下地層(バッファ層)55を介して設けられている。
また、振動板53の所定位置には、振動板53の厚さ方向に貫通して連通孔531が形成されている。この連通孔531を介して、後述するインクカートリッジ631からリザーバ室523に、インクが供給可能となっている。
各圧電素子54は、それぞれ、下部電極542と上部電極541との間に圧電体層543を介挿してなり、各インク室521のほぼ中央部に対応して配設されている。各圧電素子54は、後述する圧電素子駆動回路に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)するよう構成されている。
これらの圧電素子54は、それぞれ、振動源として機能し、振動板53は、圧電素子54の振動により振動し、インク室521の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能する。
基体56は、例えば各種樹脂材料、各種金属材料等で構成されており、この基体56にインク室基板52が固定、支持されている。
本実施形態では、振動板53、下地層(バッファ層)55、下部電極542、圧電体層543、上部電極541により、前述した圧電アクチュエータ300が構成されている。
したがって、本実施形態では、振動板53の少なくとも表面がアモルファス状態の物質で構成されている。
このようなヘッド50は、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子54の下部電極542と上部電極541との間に電圧が印加されていない状態では、圧電体層543に変形が生じない。このため、振動板53にも変形が生じず、インク室521には容積変化が生じない。したがって、ノズル孔511からインク滴は吐出されない。
一方、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電素子54の下部電極542と上部電極541との間に一定電圧が印加された状態では、圧電体層543に変形が生じる。これにより、振動板53が大きくたわみ、インク室521の容積変化が生じる。このとき、インク室521内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル孔511からインク滴が吐出される。
1回のインクの吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極542と上部電極541との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子54は、ほぼ元の形状に戻り、インク室521の容積が増大する。なお、このとき、インクには、後述するインクカートリッジ631からノズル孔511へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気がノズル孔511からインク室521へ入り込むことが防止され、インクの吐出量に見合った量のインクがインクカートリッジ631(リザーバ室523)からインク室521へ供給される。
このようにして、ヘッド50において、印刷させたい位置の圧電素子54に、圧電素子駆動回路を介して吐出信号を順次入力することにより、任意の(所望の)文字や図形等を印刷することができる。
次に、ヘッド50の製造方法の一例について説明する。
前述したようなヘッド50は、例えば、次のようにして製造することができる。
−10− まず、インク室基板52となる母材と、振動板53とを貼り合わせ(接合して)、これらを一体化させる。
この接合には、例えば、母材と振動板53とを圧着させた状態で熱処理する方法が好適に用いられる。かかる方法によれば、容易かつ確実に、母材と振動板53とを一体化させることができる。
この熱処理条件は、特に限定されないが、100〜600℃×1〜24時間程度とするのが好ましく、300〜600℃×6〜12時間程度とするのがより好ましい。
なお、接合には、その他の各種接着方法、各種融着方法等を用いてもよい。
−20− 次に、振動板53上に、下地層55を介して接合された圧電素子54を形成する。
これは、前述した工程[1C]〜[5C]と同様にして行うことができる。
−30− 次に、インク室基板52となる母材の圧電素子54に対応した位置に、それぞれインク室521となる凹部を、また、所定位置にリザーバ室523および供給口524となる凹部を形成する。
具体的には、インク室521、リザーバ室523および供給口524を形成すべき位置に合せて、マスク層を形成した後、例えば、平行平板型反応性イオンエッチング、誘導結合型方式、エレクトロンサイクロトロン共鳴方式、ヘリコン波励起方式、マグネトロン方式、プラズマエッチング方式、イオンビームエッチング方式等のドライエッチング、5重量%〜40重量%程度の水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の高濃度アルカリ水溶液によるウエットエッチングを行う。
これにより、母材を、その厚さ方向に振動板53が露出する程度にまで削り取り(除去し)、インク室基板52を形成する。なお、このとき、エッチングされずに残った部分が、側壁522となり、また、露出した振動板53は、振動板としての機能を発揮し得る状態となる。
なお、母材として、(110)配向シリコン基板を用いる場合には、前述の高濃度アルカリ水溶液を用いることにより、母材は、容易に異方性エッチングされるので、インク室基板52の形成が容易となる。
−40ー 次に、複数のノズル孔511が形成されたノズル板51を、各ノズル孔511が各インク室521となる凹部に対応するように位置合わせして接合する。これにより、複数のインク室521、リザーバ室523および複数の供給口524が画成される。
この接合には、例えば、接着剤による接着等の各種接着方法、各種融着方法等を用いることができる。
−50− 次に、インク室基板52を基体56に取り付ける。
以上のようにして、インクジェット式記録ヘッド50が得られる。
<インクジェットプリンタ>
本発明のインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタについて説明する。
図10は、本発明のインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。なお、以下の説明では、図10中、上側を「上部」、下側を「下部」と言う。
図10に示すインクジェットプリンタ60は、装置本体62を備えており、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ621と、下部前方に記録用紙Pを排出する排紙口622と、上部面に操作パネル67とが設けられている。
操作パネル67は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えている。
また、装置本体62の内部には、主に、往復動するヘッドユニット63を備える印刷装置(印刷手段)64と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置64に送り込む給紙装置(給紙手段)65と、印刷装置64および給紙装置65を制御する制御部(制御手段)66とを有している。
制御部66の制御により、給紙装置65は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、ヘッドユニット63の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット63が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行われる。すなわち、ヘッドユニット63の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となって、インクジェット方式の印刷が行われる。
印刷装置64は、ヘッドユニット63と、ヘッドユニット63の駆動源となるキャリッジモータ641と、キャリッジモータ641の回転を受けて、ヘッドユニット63を往復動させる往復動機構642とを備えている。
ヘッドユニット63は、その下部に、多数のノズル孔511を備えるインクジェット式記録ヘッド50と、インクジェット式記録ヘッド50にインクを供給するインクカートリッジ631と、インクジェット式記録ヘッド50およびインクカートリッジ631を搭載したキャリッジ632とを有している。
なお、インクカートリッジ631として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。この場合、ヘッドユニット63には、各色にそれぞれ対応したインクジェット式記録ヘッド50(この構成については、後に詳述する。)が設けられることになる。
往復動機構642は、その両端をフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸643と、キャリッジガイド軸643と平行に延在するタイミングベルト644とを有している。
キャリッジ632は、キャリッジガイド軸643に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト644の一部に固定されている。
キャリッジモータ641の作動により、プーリを介してタイミングベルト644を正逆走行させると、キャリッジガイド軸643に案内されて、ヘッドユニット63が往復動する。そして、この往復動の際に、インクジェット式記録ヘッド50から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
給紙装置65は、その駆動源となる給紙モータ651と、給紙モータ651の作動により回転する給紙ローラ652とを有している。
給紙ローラ652は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ652aと駆動ローラ652bとで構成され、駆動ローラ652bは給紙モータ651に連結されている。これにより、給紙ローラ652は、トレイ621に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置64に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ621に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
制御部66は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置64や給紙装置65等を制御することにより印刷を行うものである。
制御部66は、いずれも図示しないが、主に、各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、圧電素子(振動源)54を駆動して、インクの吐出タイミングを制御する圧電素子駆動回路、印刷装置64(キャリッジモータ641)を駆動する駆動回路、給紙装置65(給紙モータ651)を駆動する駆動回路、および、ホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとを備えている。
また、CPUには、例えば、インクカートリッジ631のインク残量、ヘッドユニット63の位置、温度、湿度等の印刷環境等を検出可能な各種センサが、それぞれ電気的に接続されている。
制御部66は、通信回路を介して、印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理して、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づいて、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により圧電素子54、印刷装置64および給紙装置65は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
以上、本発明の電子デバイス用基板、電子デバイス、強誘電体メモリ、電子機器、インクジェット式記録ヘッドおよびインクジェットプリンタについて、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の電子デバイス用基板、電子デバイス、強誘電体メモリ、電子機器、インクジェット式記録ヘッドおよびインクジェットプリンタを構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、例えば、電子デバイス用基板、電子デバイス、強誘電体メモリおよびインクジェット式記録ヘッドの製造方法では、それぞれ、任意の工程を追加することもできる。
また、前記実施形態のインクジェット式記録ヘッドの構成は、例えば、各種工業用液体吐出装置の液体吐出機構に適用することもできる。この場合、液体吐出装置では、前述したようなインク(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック等のカラー染料インク)の他、例えば、液体吐出機構のノズル(液体吐出口)からの吐出に適当な粘度を有する溶液や液状物質等が使用可能である。
以上述べたように、本発明の電子デバイス用基板は、少なくとも表面がアモルファス状態の物質で構成された基板の表面上に、少なくとも厚さ方向に配向方位が揃ったバッファ層を設けることにより、このバッファ層上に、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を含む導電性酸化物層を、正常にエピタキシャル成長させることができる。よって、かかる電子デバイス用基板を用いることにより、各種特性に優れた電子デバイスを最適な構造で実現することができる。
また、本発明の電子デバイス用基板には、基板として汎用的な各種基板を用いることができるので、電子デバイス用基板の製造コストを削減することができる。
また、バッファ層の構成材料を適宜選択することにより、導電性酸化物層を形成する際に、その形成の効率を向上させることができるとともに、基板と導電性酸化物層との双方との接合性を向上させることもできる。