JP2003285445A - インクジェット式ヘッドの製造方法、インクジェット式ヘッドおよび吐出装置 - Google Patents

インクジェット式ヘッドの製造方法、インクジェット式ヘッドおよび吐出装置

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JP2003285445A
JP2003285445A JP2002089819A JP2002089819A JP2003285445A JP 2003285445 A JP2003285445 A JP 2003285445A JP 2002089819 A JP2002089819 A JP 2002089819A JP 2002089819 A JP2002089819 A JP 2002089819A JP 2003285445 A JP2003285445 A JP 2003285445A
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jet head
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JP2002089819A
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Hiroshi Miyazawa
弘 宮澤
Setsuya Iwashita
節也 岩下
Amamitsu Higuchi
天光 樋口
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Seiko Epson Corp
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Seiko Epson Corp
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 インクジェット式ヘッドを、容易かつ確実に
製造することができるインクジェット式ヘッドの製造方
法、かかるインクジェット式ヘッドの製造方法により製
造されるインクジェット式ヘッド、および、かかるイン
クジェット式ヘッドを備える吐出装置を提供すること。 【解決手段】 図2に示すインクジェット式ヘッドHの
主要部は、複数のインク室210を形成するインク室基
板200の下側に、ノズル板100が接合され、また、
上側に、振動板300が接触して設けられている。ま
た、振動板300のインク室基板200と反対側には、
各インク室210に対応する位置に圧電素子400が下
地層700を介して設けられている。振動板300は、
Si単結晶中にP型不純物を含んでなるものであり、エ
ッチングを施すことにより、インク室基板を得る工程に
おいて、エッチングによる侵食の進行を停止させるスト
ッパ層として機能する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェット式
ヘッドの製造方法、インクジェット式ヘッドおよび吐出
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、インクジェット式ヘッドは、主
に、インクを貯留可能な複数のインク室(キャビティ)
を形成するインク室基板と、インク室基板の一方の面に
接合されたノズル板と、他方の面に接合された振動板を
介して設けられた複数の圧電素子(振動源)とを備えた
構成とされている。
【0003】このようなインクジェット式ヘッドは、次
のような<1>〜<4>の工程を経て製造されている。
【0004】<1> まず、インク室基板となる母材と
してSi基板を用意し、このSi基板上に、振動板を積
層または接合する。
【0005】<2> 次に、この振動板上に、複数の圧
電素子を形成する。
【0006】<3> 次に、Si基板に対してエッチン
グを施すことにより、インク室基板を得る。
【0007】<4> 次に、インク室基板の振動板と反
対側に、インクを吐出するノズル孔が形成されたノズル
板を接合する。
【0008】ところが、この製造方法では、Si基板に
対してエッチングを施して、インク室基板を形成する際
に、浸食が過度(必要以上)に進行してしまい、振動
板、さらには、圧電素子まで浸食されたり、各インク室
の寸法もバラついたりするという不都合が生じることが
ある。
【0009】このような不都合を防止するためには、例
えばエッチング時間等のエッチング条件をコントロール
する必要があるが、かかるコントロールを厳密に行うの
は、極めて困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、イン
クジェット式ヘッドを、容易かつ確実に製造することが
できるインクジェット式ヘッドの製造方法、かかるイン
クジェット式ヘッドの製造方法により製造されるインク
ジェット式ヘッド、および、かかるインクジェット式ヘ
ッドを備える吐出装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(18)の本発明により達成される。
【0012】(1) Si単結晶中にP型不純物を含ん
でなるP型不純物層上に、NaCl構造の金属酸化物を
含むバッファ層と、ペロブスカイト構造を有する金属酸
化物を含む導電性酸化物層と、ペロブスカイト構造を有
する強誘電体材料を含む強誘電体材料層とを、この順
で、それぞれエピタキシャル成長により形成した後、前
記強誘電体材料層上に導電性材料層を形成して積層体を
得る第1の工程と、前記P型不純物層に隣接して位置す
るSi単結晶基板に対してエッチングを施すことによ
り、インクを貯留可能なインク室となる凹部を含む所定
のパターンを形成してインク室基板を得る第2の工程と
を有し、前記第2の工程における前記エッチングを、前
記Si単結晶基板の前記P型不純物層と反対側の面から
開始し、前記P型不純物層の存在により侵食の進行を停
止させることを特徴とするインクジェット式ヘッドの製
造方法。
【0013】(2) 前記第1の工程の前に、前記Si
単結晶基板の表面付近にP型不純物をイオン注入するこ
とにより、前記P型不純物層を形成する工程を有する上
記(1)に記載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
【0014】(3) 前記第1の工程の前に、前記Si
単結晶基板の表面付近にP型不純物を拡散させることに
より、前記P型不純物層を形成する工程を有する上記
(1)に記載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
【0015】(4) 前記第1の工程の前に、前記Si
単結晶基板と前記P型不純物層とを接合する工程を有す
る上記(1)に記載のインクジェット式ヘッドの製造方
法。
【0016】(5) 前記Si単結晶基板と前記P型不
純物層とは、互いに配向方位が異なっている上記(4)
に記載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
【0017】(6) 前記P型不純物層は、(100)
配向または(111)配向のものである上記(4)また
は(5)に記載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
【0018】(7) 前記P型不純物層におけるP型不
純物の濃度は、5×1018〜5×1020個/cm
である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のイン
クジェット式ヘッドの製造方法。
【0019】(8) 前記P型不純物層の平均厚さは、
0.01〜10μmである上記(1)ないし(7)のい
ずれかに記載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
【0020】(9) 前記エッチングは、アルカリ水溶
液による異方性エッチングである上記(1)ないし
(8)のいずれかに記載のインクジェット式ヘッドの製
造方法。
【0021】(10) 前記Si単結晶基板は、(11
0)配向のものである上記(1)ないし(9)のいずれ
かに記載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
【0022】(11) 前記第1の工程の後、前記凹部
に対応するように前記積層体を分割して、複数の振動源
を形成する工程を有する上記(1)ないし(10)のい
ずれかに記載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
【0023】(12) 前記P型不純物層は、前記振動
源の振動により振動する振動板として機能する上記(1
1)に記載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
【0024】(13) 前記第2の工程の後、前記イン
クを吐出するノズル孔を有するノズル板を、前記インク
室基板の前記P型不純物層と反対側に、前記ノズル孔が
前記凹部に対応するよう接合する工程を有する上記
(1)ないし(12)のいずれかに記載のインクジェッ
ト式ヘッドの製造方法。
【0025】(14) 前記P型不純物は、ホウ素であ
る上記(1)ないし(13)のいずれかに記載のインク
ジェット式ヘッドの製造方法。
【0026】(15) ペロブスカイト構造を有する金
属酸化物を含む第1の電極と、該第1の電極と対向する
第2の電極と、これらの電極の間に介挿され、ペロブス
カイト構造を有する強誘電体材料を含む圧電体層とを有
する振動源と、前記第1の電極の前記圧電体層と反対側
に設けられ、前記振動源の振動により振動し、Si単結
晶中にP型不純物を含んでなる振動板とを有することを
特徴とするインクジェット式ヘッド。
【0027】(16) 前記P型不純物は、ホウ素であ
る上記(15)に記載のインクジェット式ヘッド。
【0028】(17) 上記(1)ないし(14)のい
ずれかに記載のインクジェット式ヘッドの製造方法によ
り製造されたことを特徴とするインクジェット式ヘッ
ド。
【0029】(18) 上記(15)ないし(17)の
いずれかに記載のインクジェット式ヘッドを備えること
を特徴とする吐出装置。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明のインクジェット式
ヘッドの製造方法、インクジェット式ヘッドおよび吐出
装置の好適な実施形態について説明する。
【0031】図1は、本発明のインクジェット式ヘッド
の実施形態を示す分解斜視図(一部切り欠いて示す)で
あり、図2は、図1に示すインクジェット式ヘッドの主
要部の構成を示す断面図である。なお、図1は、通常使
用される状態とは、上下逆に示されている。
【0032】図1に示すインクジェット式ヘッドH(以
下、単に「ヘッドH」と言う。)は、主に、ノズル板1
00と、インク室基板200と、振動板300と、圧電
素子(振動源)400とを備え、これらが基体500に
収納されている。
【0033】なお、このヘッドHは、オンデマンド形の
ピエゾジェット式ヘッドを構成する。
【0034】ノズル板100は、例えばステンレス製の
圧延プレート等で構成されている。このノズル板100
には、インク滴を吐出するための多数のノズル孔110
が形成されている。これらのノズル孔110のピッチ
は、印刷精度に応じて適宜設定される。
【0035】ノズル板100には、インク室基板200
が固着(固定)されている。このインク室基板200に
は、ノズル板100、側壁(隔壁)220および後述す
る振動板300により、複数のインク室(キャビティ、
圧力室)210と、インクカートリッジ31から供給さ
れるインクを一時的に貯留するリザーバ室230と、リ
ザーバ室230から各インク室210に、それぞれイン
クを供給する供給口240とが区画形成されている。
【0036】これらのインク室210は、それぞれ短冊
状(直方体状)に形成され、各ノズル孔110に対応し
て配設されている。各インク室210は、後述する振動
板300の振動により容積が変化し、この容積変化によ
り、インクを吐出するよう構成されている。
【0037】また、インク室210の容積は、特に限定
されないが、1×10−7〜2×10−5mL程度とす
るのが好ましく、5×10−7〜1×10−5mL程度
とするのがより好ましい。
【0038】インク室基板200の平均厚さは、特に限
定されないが、10μm〜1mm程度であるのが好まし
く、100〜600μm程度であるのがより好ましい。
インク室基板200の平均厚さを、前記範囲とすること
により、ヘッドHは、十分な強度を確保しつつ、その小
型化(特に、薄型化)を図ることができる。
【0039】一方、インク室基板200のノズル板10
0と反対側には、振動板300がインク室基板200の
側壁220に接触して設けられ、さらに振動板300の
インク室基板200と反対側には、複数の圧電素子40
0が下地層700を介して設けられている。
【0040】また、振動板300の所定位置には、その
厚さ方向に貫通して連通孔310が形成されている。こ
の連通孔310を介して、後述するインクカートリッジ
31からリザーバ室230に、インクが供給可能とされ
ている。
【0041】この振動板300は、Si単結晶中にP型
不純物を含んでなるものである。すなわち、振動板30
0は、半導体材料からなるものである。このため、振動
板300は、絶縁性に優れるので、ヘッドHでは、振
動板300上に設けられた各部(各圧電素子400)間
での絶縁分離を良好なものとすること、圧電素子40
0の電解歪み特性等の各種特性の向上を図ることができ
るという効果もある。したがって、このようなヘッドH
は、その性能が向上する。
【0042】各圧電素子400は、それぞれ各インク室
210のほぼ中央部に対応して配設されている。各圧電
素子400は、後述する圧電素子駆動回路に電気的に接
続され、圧電素子駆動回路からの信号に基づいて作動す
るよう構成されている。
【0043】なお、各圧電素子400の平面視での寸法
は、特に限定されないが、例えば、1〜3mm×10〜
50μm程度とすることができる。
【0044】基体500は、例えば各種樹脂材料、各種
金属材料等で構成されており、この基体500にインク
室基板200が固定、支持されている。
【0045】以下、下地層700および圧電素子400
の構成について、図2を参照しつつ、さらに詳細に説明
する。
【0046】図2に示す圧電素子400は、下部電極
(第1の電極)420、圧電体層430および上部電極
(第2の電極)410が、この順で積層されて構成され
ている。換言すれば、圧電素子400は、上部電極41
0と下部電極420との間に、圧電体層(強誘電体層)
430が介挿された構成とされている。
【0047】この圧電素子400は、振動源として機能
するものであり、振動板300は、圧電素子(振動源)
400の振動により振動し、インク室210の内部圧力
を瞬間的に高める機能を有するものである。
【0048】振動板300上には、薄膜よりなる下地層
(バッファ層)700が形成され(設けられ)ている。
すなわち、圧電素子400(下部電極420)と振動板
300(P型不純物層30)との間に、下地層700が
設けられている。
【0049】この下地層700は、圧電素子400(下
部電極420)と振動板300との接合性(密着性)を
向上させる機能を有するものである。下地層700を設
けることにより、圧電素子400の振動板300からの
剥離等によるヘッドHの経時的劣化が好適に防止される
とともに、圧電素子400の振動をより確実に振動板3
00に伝達することができる。
【0050】なお、この下地層700は、振動板300
上の少なくとも圧電素子400を形成する領域に設ける
ようにすればよい。
【0051】下地層700の構成材料としては、例え
ば、NaCl構造の金属酸化物、蛍石型構造の金属酸化
物、フルオライト構造の金属酸化物等が挙げられ、これ
らの1種または2種以上を組み合わせて用いることがで
きる。これらの中でも、下地層700の構成材料として
は、NaCl構造の金属酸化物を含むものが好ましく、
NaCl構造の金属酸化物を主材料とするものがより好
ましい。
【0052】後述するように、下部電極420の構成材
料としては、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を
含むもの(特に、ペロブスカイト構造を有する金属酸化
物を主材料とするもの)が好適に使用されるが、NaC
l構造の金属酸化物は、このペロブスカイト構造を有す
る金属酸化物との格子不整合が小さく、さらに、Siと
の格子不整合も小さい。
【0053】なお、振動板300(P型不純物層30)
におけるP型不純物の濃度は、比較的少量(後述参照)
であるため、振動板300では、Si単結晶の結晶構造
が良好に維持されている。
【0054】このようなことから、NaCl構造の金属
酸化物を用いて下地層700を構成することにより、振
動板300(P型不純物層30)と下部電極420との
接合性(密着性)がより向上する。
【0055】また、NaCl構造の金属酸化物として
は、例えば、MgO、CaO、SrO、BaO、Mn
O、FeO、CoO、NiO、または、これらを含む固
溶体等が挙げられるが、これらの中でも、特に、Mg
O、CaO、SrO、BaO、または、これらを含む固
溶体の少なくとも1種を用いるのが好ましい。このよう
なNaCl構造の金属酸化物は、ペロブスカイト構造を
有する金属酸化物およびSiの双方との格子不整合が特
に小さい。
【0056】このような下地層700は、例えば、立方
晶(100)配向、立方晶(110)配向、立方晶(1
11)配向等したもののいずれであってもよいが、これ
らの中でも、特に、立方晶(100)配向または立方晶
(111)配向したものであるのが好ましい。下地層7
00を立方晶(100)配向または立方晶(111)配
向したものとすることにより、下地層700の平均厚さ
を比較的小さくすることができる。このため、例えばM
gO、CaO、SrO、BaOのような潮解性を示すN
aCl構造の金属酸化物で下地層700を構成する場合
であっても、製造時および使用時に空気中の水分で劣化
するという不都合を好適に防止することができる。
【0057】かかる観点からは、下地層700は、でき
るだけ薄く形成するのが好ましく、具体的には、その平
均厚さが10nm以下であるのが好ましく、5nm以下
であるのがより好ましい。これにより、前記効果がより
向上する。
【0058】また、このように下地層700の平均厚さ
を小さくすることにより、ヘッドHの大型化を防止する
こともできる。
【0059】下地層700上には、圧電体層430に電
圧を印加するための一方の電極である下部電極420が
形成され(設けられ)ている。
【0060】この下部電極420は、複数の圧電素子4
00の個別電極として、それぞれ設けられている。すな
わち、下部電極420の平面視形状が、圧電体層430
の平面視形状とほぼ等しくなるよう形成されている。
【0061】下部電極420の構成材料としては、例え
ば、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物等の各種導
電性酸化物が挙げられ、これらの1種または2種以上を
組み合わせて用いることができる。これらの中でも、下
部電極420の構成材料としては、ペロブスカイト構造
を有する金属酸化物を含むものが好ましく、ペロブスカ
イト構造を有する金属酸化物を主材料とするものがより
好ましい。
【0062】このペロブスカイト構造を有する金属酸化
物としては、例えば、ルテニウム酸ストロンチウム(S
RO)、NbドープしたSrTiO、または、これら
を含む固溶体等が挙げられ、これらの1種または2種以
上を組み合わせて用いることができる。これらのペロブ
スカイト構造の金属酸化物は、導電性および化学的安定
性に優れているので、下部電極420も、導電性および
化学的安定性に優れたものとすることができる。その結
果、圧電素子400は、電界歪み特性等の各種特性が向
上する。
【0063】これらの中でも、下部電極420に用いる
ペロブスカイト構造を有する金属酸化物としては、ルテ
ニウム酸ストロンチウム(SRO)が最適である。SR
Oは、特に導電性および化学的安定性に優れているの
で、SROを用いて下部電極420を構成することによ
り、圧電素子400は、前記効果がより向上する。
【0064】ここで、SROは、一般式Srn+1Ru
3n+1(nは1以上の整数)で表される。n=1
のときSrRuOとなり、n=2のときSrRu
となり、n=∞のときSrRuOとなる。SR
Oを用いて下部電極420を構成する場合は、SrRu
が最適である。これにより、下部電極420の導電
性および化学的安定性を極めて優れたものとすることが
できるとともに、下部電極420上に形成する圧電体層
430の結晶性を高めることもできる。
【0065】なお、下部電極420は、その厚さ方向の
途中に、イリジウムまたは白金等で構成される部分(中
間層)を有する構成、すなわち、SRO/Pt/SR
O、SRO/Ir/SROの積層構造とすることもでき
る。この場合、下部電極420の圧電体層430側の部
分を、SrRuOを含む材料で(特に、SrRuO
を主材料として)構成するようにすればよい。
【0066】このような下部電極420は、例えば、擬
立方晶(001)配向、擬立方晶(111)配向、擬立
方晶(110)配向、擬立方晶(100)配向等したも
ののいずれであってもよいが、これらの中でも、特に、
擬立方晶(001)配向または擬立方晶(111)配向
したものであるのが好ましい。このような下部電極42
0を用いて圧電素子400を構成することにより、圧電
素子400は、前記効果がより顕著となる。
【0067】また、下部電極420の平均厚さは、特に
限定されないが、1〜1000nm程度とするのが好ま
しく、100〜700nm程度とするのがより好まし
い。
【0068】下部電極420上には、電圧の印加により
変形する圧電体層430が、所定の形状で形成されてい
る。
【0069】圧電体層430の構成材料としては、各種
強誘電体材料が挙げられるが、特に、ペロブスカイト構
造を有する強誘電体材料を含むものが好ましく、ペロブ
スカイト構造を有する強誘電体材料を主材料とするもの
がより好ましい。
【0070】このペロブスカイト構造を有する強誘電体
材料としては、例えば、Pb(Zr,Ti)O(PZ
T)、(Pb,La)(Zr,Ti)O(PLZ
T)、BaTiO、KNbO、PbZnOのよう
なペロブスカイト構造の金属酸化物、SrBi(T
a,Nb)、(Bi,La)Ti12のよ
うなBi層状化合物、または、これらを含む固溶体等が
挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合
わせて用いることができる。これらのペロブスカイト構
造を有する金属酸化物を用いて圧電体層430を構成す
ることにより、圧電素子400は、電界歪み特性等の各
種特性が向上する。
【0071】これらの中でも、圧電体層430に用いる
ペロブスカイト構造を有する金属酸化物としては、チタ
ン酸ジルコン酸鉛(PZT)が最適である。PZTを用
いることにより、圧電素子400は、前記効果がより向
上する。
【0072】また、ペロブスカイト構造を有する強誘電
体材料としてPZTを用いる場合、このPZTとして
は、正方晶、菱面体晶のいずれのものを用いてもよい。
【0073】このような圧電体層430は、例えば、正
方晶(001)配向、正方晶(111)配向、菱面体晶
(001)配向、菱面体晶(111)配向等したものの
いずれであってもよいが、これらの中でも、特に、正方
晶(001)配向、正方晶(111)配向、菱面体晶
(001)配向、または、菱面体晶(111)配向した
ものであるのが好ましい。これにより、圧電素子400
は、電界歪み特性等の各種特性が特に優れたものとな
る。
【0074】また、圧電体層430の平均厚さは、特に
限定されないが、0.1〜50μm程度とするのが好ま
しく、0.5〜10μm程度とするのがより好ましい。
圧電体層430の平均厚さを、前記範囲とすることによ
り、圧電素子400(延いては、ヘッドH)の大型化を
防止しつつ、各種特性を好適に発揮し得る圧電素子40
0を得ることができる。
【0075】圧電体層430上には、圧電体層430に
電圧を印加するための他方の電極となる上部電極410
が形成され(設けられ)ている。
【0076】この上部電極410は、複数の圧電素子4
00の個別電極として、それぞれ設けられている。すな
わち、上部電極410の平面視形状は、圧電体層430
の平面視形状とほぼ等しくなるよう形成されている。
【0077】上部電極410の構成材料としては、前記
の下部電極420で挙げた材料と同様のものを用いるこ
とができる他、例えば、白金(Pt)、イリジウム(I
r)、アルミニウム(Al)、または、これらを含む合
金等の各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種
または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】なお、上部電極410をアルミニウムで構
成する場合、イリジウム等で構成される層を積層するよ
うにするのが好ましい。これにより、上部電極410の
電蝕による劣化を防止または抑制することができる。
【0079】また、上部電極410の平均厚さは、特に
限定されないが、1〜1000nm程度とするのが好ま
しく、10〜500nm程度とするのがより好ましい。
【0080】このようなヘッドHは、後述する圧電素子
駆動回路から所定の吐出信号が入力されていない状態、
すなわち、圧電素子400の下部電極420と上部電極
410との間に電圧が印加されていない状態では、圧電
体層430に変形が生じない。このため、振動板300
にも変形が生じず、インク室210には容積変化が生じ
ない。したがって、ノズル孔110からインク滴は吐出
されない。
【0081】一方、圧電素子駆動回路から所定の吐出信
号が入力された状態、すなわち、圧電素子400の下部
電極420と上部電極410との間に一定電圧(例え
ば、10〜50V程度)が印加された状態では、圧電体
層430に変形が生じる。これにより、振動板300が
大きくたわみ(図2中下方にたわみ)、インク室210
の容積の減少(変化)が生じる。このとき、インク室2
10内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル孔110からイ
ンク滴が吐出される。
【0082】1回のインクの吐出が終了すると、圧電素
子駆動回路は、下部電極420と上部電極410との間
への電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子40
0は、ほぼ元の形状に戻り、インク室210の容積が増
大する。なお、このとき、インクには、後述するインク
カートリッジ31からノズル孔110へ向かう圧力(正
方向への圧力)が作用している。このため、空気がノズ
ル孔110からインク室210へ入り込むことが防止さ
れ、インクの吐出量に見合った量のインクがインクカー
トリッジ31(リザーバ室230)からインク室210
へ供給される。
【0083】このようにして、ヘッドHにおいて、印刷
させたい位置の圧電素子400に、圧電素子駆動回路か
ら吐出信号を順次入力することにより、任意の(所望
の)文字や図形等を印刷することができる。
【0084】以上のように、本発明のインクジェット式
ヘッドHは、電界歪み特性等の各種特性に優れる圧電素
子400を備える。このため、より少ない電圧で圧電素
子400を作動させることができるので、圧電素子駆動
回路を簡略化することができるとともに、消費電力を低
減することができる。
【0085】また、圧電素子400を小型化することも
できる。この場合、圧電素子400の幅(短軸方向の長
さ)を短くすると、インク室210の幅も小さくするこ
とができ、その結果、ノズル孔110のピッチも小さく
することができるので、より高精度の印刷が可能とな
る。また、圧電素子400の長さ(長軸方向の長さ)を
短くすると、ヘッドHのさらなる小型化を図ることがで
きる。
【0086】次に、インクジェット式ヘッドH(ヘッド
H)の製造方法について説明する。図3〜図6は、それ
ぞれ、図2に示すインクジェット式ヘッドの主要部の製
造工程を説明するための図(縦断面図)である。
【0087】これらの図に示すヘッドHの製造方法は、
[1]Si単結晶基板20の隣接位置にP型不純物層3
0を設ける工程と、[2]P型不純物層30上に積層体
400’を形成する工程(第1の工程)と、[3]積層
体400’を分割して圧電素子(振動源)400を形成
する工程と、[4]Si単結晶基板20に対してエッチ
ングを施すことによりインク室基板200を形成する工
程(第2の工程)と、[5]インク室基板200にノズ
ル板100を接合する工程とを有している。
【0088】ここで、Si単結晶基板20およびP型不
純物層30について、それぞれ説明する。
【0089】Si単結晶基板20には、後述するよう
に、インク室210となる凹部210’、その他、リザ
ーバ室230および供給口240となる凹部が、それぞ
れエッチングにより形成される。すなわち、このSi単
結晶基板20に対してエッチングを施すことにより、ヘ
ッドHのインク室基板200が得られる。
【0090】このSi単結晶基板20、すなわち、Si
単結晶で構成される基板は、汎用的な基板であるので、
このSi単結晶基板20を用いることにより、ヘッドH
の製造コストを低減することができる。
【0091】一方、P型不純物層30は、Si単結晶中
にP型不純物を含んでなるものであり、Si単結晶基板
20に前記凹部210’を含む所定のパターン形状をエ
ッチングにより形成する際に、浸食の進行を防止するス
トッパ層として機能するものである。
【0092】このP型不純物層30の存在により、エッ
チングによる浸食が過度(必要以上)に進み、P型不純
物層30のSi単結晶基板20と反対側に設けられる各
部(特に、後述する振動源としての圧電素子400)が
侵食されるのを防止することができる。その結果、ヘッ
ドHの機能(性能)が低下、または、失われることを防
止することができる。
【0093】P型不純物としては、特に限定されない
が、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジ
ウム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用い
ることができるが、これらの中でも、P型不純物として
は、特に、ホウ素が好適である。P型不純物として、ホ
ウ素を用いることにより、P型不純物層30は、エッチ
ングによる浸食の防止効果がより向上する。
【0094】また、このP型不純物層30は、圧電素子
400の振動により振動する振動板300として機能す
る。このため、P型不純物層30には、エッチングによ
る浸食の進行を防止する機能に加えて、振動板としての
十分な強度(物理的性質)が要求される。
【0095】このようなP型不純物層30の平均厚さ
は、特に限定されないが、0.01〜10μm程度とす
るのが好ましく、0.1〜2μm程度とするのがより好
ましい。P型不純物層30の平均厚さを、前記範囲とす
ることにより、得られるヘッドHの圧電特性を最適化し
つつ、P型不純物層30は、エッチングによる浸食の進
行を防止する機能を十分に発揮することができるととも
に、振動板に要求される十分な強度を確保することがで
きる。
【0096】これらの効果は、P型不純物層30におい
て、Si単結晶中に比較的少量のP型不純物が含まれる
ことで、十分に発揮される。
【0097】このようなP型不純物層30におけるP型
不純物の濃度は、特に限定されないが、5×1018
5×1020個/cm程度であるのが好ましく、1×
10 19〜1×1020個/cm程度であるのがより
好ましい。
【0098】また、P型不純物層30におけるP型不純
物の含有量を、比較的少量とすることにより、P型不純
物層30におけるSi単結晶の結晶構造は、良好に維持
される。したがって、P型不純物層30上に、積層体4
00’の各部(各層)を成膜した場合、各層は、それぞ
れP型不純物層30の配向方位に依存して(影響を受け
て)成長、すなわち、エピタキシャル成長するので、そ
の配向方位が揃うようになる。
【0099】ヘッドHでは、P型不純物層30上に、少
なくとも下地層700、圧電素子400の下部電極42
0となる導電性酸化物層420’、および、圧電体層4
30となる強誘電体材料層430’を、順次成膜してい
く。したがって、下地層700、導電性酸化物層42
0’(下部電極420)、および、強誘電体材料層43
0’ (圧電体層430)は、それぞれ、その配向方位
が揃うようになる。このように、配向方位が揃った圧電
体層430を有する圧電素子400は、電界歪み特性等
の各種特性が向上する。その結果、ヘッドHは、その性
能が向上する。
【0100】以下、各工程について、順次説明する。 [1] P型不純物層30を設ける工程:図3および図
4 まず、Si単結晶基板20の隣接した位置にP型不純物
層30を設ける。
【0101】これは、例えば、<I>Si単結晶基板2
0に対してP型不純物をイオン注入する方法(イオン注
入法)、<II>Si単結晶基板20にP型不純物を拡散
させる方法(拡散法)、または、<III>Si単結晶基
板20とP型不純物層30とを接合する方法(接合法)
を用いて行うことができる。
【0102】<I> イオン注入法(図3) まず、Si単結晶基板20を用意する。
【0103】次に、このSi単結晶基板20に対して、
例えばホウ素のようなP型不純物をイオン化して注入す
る。これにより、Si単結晶基板20の表面付近にP型
不純物が注入され、P型不純物層30が形成される。か
かるイオン注入法によれば、P型不純物層30を容易に
形成することができるので、ヘッドHの製造コストの低
減を図ることができる。また、かかるイオン注入法によ
れば、P型不純物層30におけるP型不純物の分布を均
一にすることができるという利点もある。
【0104】イオン化されたP型不純物の加速電圧は、
用いるイオン源の種類等により若干異なるが、通常、5
〜300keV程度とするのが好ましく、10〜200
keV程度とするのがより好ましい。イオン注入後に
は、800〜1200℃で30分〜1時間程度のアニー
ルを行うのが好ましい。
【0105】この加速電圧を適宜設定することにより、
P型不純物の注入深さ、すなわち、P型不純物層30の
厚さを調整することができる。
【0106】次に、必要に応じて、Si単結晶基板20
およびP型不純物層30に対して、それぞれ、例えば、
研削、研磨、エッチング等の後処理を施すことにより、
それらの形状(厚さ)を整えるようにしてもよい。
【0107】また、このようなイオン注入法によれば、
Si単結晶基板20とP型不純物層30とは、それらの
配向方位が一致するようになる。
【0108】この場合、Si単結晶基板20として(1
10)配向のものを選択するようにするのが好ましい。
このような(110)配向のSi単結晶基板20は、面
方向に対してほぼ垂直な方向にエッチングによる浸食が
精度よく進行する(すなわち、容易に異方性エッチング
される)ので、より寸法精度の高いインク室基板200
を得ることができる。
【0109】<II> 拡散法 この拡散法では、P型不純物を含む拡散源を用いて、S
i単結晶基板20にP型不純物を拡散させる。この拡散
源としては、例えば、固定拡散源、液体拡散源等が挙げ
られる。
【0110】以下、P型不純物としてホウ素を、固体拡
散源を用いてSi単結晶基板20へ拡散させる場合を一
例に説明する。
【0111】まず、Si単結晶基板20を用意する。次
に、拡散源となるBを有機溶剤に分散した分散液
を、例えば、スピンコート、刷毛塗り、ディッピング等
の各種塗布法によりSi単結晶基板20の表面に塗布し
た後、乾燥して、塗布層を形成する。
【0112】この塗布層の厚さ(平均)は、好ましくは
0.1〜10μm程度、より好ましくは1〜5μm程度
とされる。
【0113】なお、分散液中の拡散源の含有量は、特に
限定されないが、0.1〜10wt%程度であるのが好
ましく、1〜7wt%程度であるのがより好ましい。
【0114】また、前記乾燥条件は、特に限定されない
が、100〜200℃×10〜100分程度であるのが
好ましく、120〜180℃×20〜70分程度である
のがより好ましい。
【0115】次に、この塗布層に対して、例えば酸素雰
囲気、大気中等の酸化性雰囲気中で、熱処理を施す。こ
れにより、Bを焼結させる。
【0116】この熱処理条件は、特に限定されないが、
400〜1000℃×10〜60分程度であるのが好ま
しい。
【0117】次に、例えば窒素雰囲気、不活性ガス雰囲
気、減圧状態等の非酸化性雰囲気中で、熱処理を施す。
これにより、BがSi単結晶基板20に拡散して、P型
不純物層30が形成される。
【0118】この熱処理条件は、特に限定されないが、
700〜1400℃×8〜16時間程度であるのが好ま
しく、900〜1200℃×10〜14時間程度である
のがより好ましい。
【0119】この熱処理条件を適宜設定することによ
り、P型不純物層30の厚さを調整することができる。
【0120】かかる拡散法によれば、P型不純物層30
を容易に形成することができるので、ヘッドHの製造コ
ストの低減を図ることができる。
【0121】次に、必要に応じて、Si単結晶基板20
およびP型不純物層30に対して、それぞれ、例えば、
研削、研磨、エッチング等の後処理を施すことにより、
それらの形状(厚さ)を整えるようにしてもよい。
【0122】また、このような拡散法によれば、Si単
結晶基板20とP型不純物層30とは、それらの配向方
位が一致するようになる。
【0123】この場合、Si単結晶基板20として(1
10)配向のものを選択するようにするのが好ましい。
このような(110)配向のSi単結晶基板20は、面
方向に対してほぼ垂直な方向にエッチングによる浸食が
精度よく進行する(すなわち、容易に異方性エッチング
される)ので、より寸法精度の高いインク室基板200
を得ることができる。
【0124】<III> 接合法(図4) まず、Si単結晶基板20と、例えば前記<I>に記載
の方法を用いて製造したP型不純物層30とを用意す
る。この場合、P型不純物層30としては、比較的厚膜
のものを用意する。
【0125】次に、Si単結晶基板20とP型不純物層
30とを接合する。これにより、Si単結晶基板20と
P型不純物層30とを一体化させる。
【0126】この接合には、例えばSi単結晶基板20
とP型不純物層30とを圧着させた状態で、熱処理する
方法が好適に用いられる。かかる方法によれば、容易か
つ確実に、これらを一体化させることができる。この熱
処理条件は、特に限定されないが、800〜1400℃
×4時間程度とするのが好ましく、900〜1200℃
×2時間程度とするのがより好ましい。なお、接合に
は、その他の各種接着方法、各種融着方法等を用いても
よい。
【0127】次に、P型不純物層30に対して、例え
ば、研削、研磨、エッチング等の後処理を施すことによ
り、それらの形状(特に、厚さ)を整えて、P型不純物
層30の平均厚さを前述したような範囲とする。
【0128】このような接合法によれば、Si単結晶基
板20とP型不純物層30との配向方位を、互いに異な
るようにすることもできる。
【0129】この場合、具体的には、次のようにするの
が好ましい。すなわち、前述したように、圧電体層43
0は、P型不純物層30の配向方位に依存して(影響を
受けて)成長するので、圧電体層430の配向方位が、
圧電素子400の各種特性を向上させることができるよ
うな配向方位となるように、P型不純物層30の配向方
位を選択する。一方、Si単結晶基板20の配向方位
は、エッチングに適し、かつ、面方向に対してほぼ垂直
な方向にエッチングによる浸食が進行する(異方性エッ
チングされる)ものを選択する。これにより、ヘッドH
の性能の向上を図ることができる。
【0130】かかる観点からは、P型不純物層30とし
ては、(100)配向または(111)配向のものが好
ましい。これにより、圧電体層430を、例えば、正方
晶(001)配向、正方晶(111)配向、菱面体晶
(001)配向、菱面体晶(111)配向等でエピタキ
シャル成長により形成することができる。かかる圧電体
層430を有する圧電素子400は、電界歪み特性等の
各種特性が特に優れたものとなる。
【0131】一方、Si単結晶基板20としては、前記
<I>と同様に(110)配向のものが好適である。
【0132】[2] 積層体400’を形成する工程
(第1の工程):図5および図6 次に、P型不純物層30上に積層体400’を形成す
る。
【0133】なお、以下では、Si単結晶基板20とし
て(110)配向のもの、P型不純物層30として(1
00)配向のものを用いる場合について説明する。
【0134】また、以下の説明では、Si単結晶基板2
0とP型不純物層30との全体を「基板10」と言う。
【0135】[2−1] 下地層(バッファ層)700
の形成:図5のS1 まず、P型不純物層30上に、例えばSrOからなる下
地層700を形成する。
【0136】下地層700は、P型不純物層30の結晶
構造の影響を受けて結晶成長する。P型不純物層30
は、(100)配向のものであるので、P型不純物層3
0上に下地層700を成膜すると、下地層700は、立
方晶(100)配向でエピタキシャル成長する。
【0137】下地層700の形成方法(成膜方法)とし
ては、レーザーアブレーション法が好適に用いられる。
かかる方法によれば、レーザー光の入射窓を備えた簡易
な構成の真空装置を用いて、容易かつ確実に、下地層7
00を形成することができる。
【0138】具体的には、まず、基板10(サンプル)
を、例えば、室温での背圧が133×10−9〜133
×10−6Pa(1×10−9〜1×10−6Tor
r)程度に減圧された真空装置内に設置する。
【0139】なお、真空装置内には、基板10に対向し
て、下地層700の構成元素を含むターゲットが所定距
離、離間して配置されている。このターゲットとして
は、目的とする下地層700の組成と同一の組成または
近似組成のものが好適に使用される。
【0140】次いで、例えば赤外線ランプ(加熱手段)
等を用いて、基板10を加熱して昇温する。
【0141】この昇温速度は、特に限定されないが、1
〜20℃/分程度とするのが好ましく、5〜15℃/分
程度とするのがより好ましい。
【0142】また、サンプルの温度(到達温度)も、特
に限定されず、300〜800℃程度とするのが好まし
く、400〜700℃程度とするのがより好ましい。
【0143】なお、昇温速度、サンプルの温度、真空装
置内の圧力等の各条件は、基板10の表面に、熱酸化膜
が形成されないものであれば、前記範囲に限定されるも
のではない。
【0144】次いで、レーザー光をターゲットに照射す
ると、ターゲットから酸素原子および金属原子を含む原
子が叩き出され、プルームが発生する。換言すれば、プ
ルームが基板10に向かって照射される。そして、この
プルームは、基板10(P型不純物層30)上に接触し
て、下地層700が形成される。
【0145】このレーザー光は、好ましくは波長が15
0〜300nm程度、パルス長が1〜100ns程度の
パルス光とされる。具体的には、レーザー光としては、
例えば、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレー
ザー、XeClエキシマレーザーのようなエキシマレー
ザー、YAGレーザー、YVOレーザー、COレー
ザー等が挙げられる。これらの中でも、レーザー光とし
ては、特に、ArFエキシマレーザーまたはKrFエキ
シマレーザーが好適である。ArFエキシマレーザーお
よびKrFエキシマレーザーは、いずれも、取り扱いが
容易であり、また、より効率よく原子をターゲットから
叩き出すことができる。
【0146】下地層700の形成(成膜)における各条
件は、下地層700がエピタキシャル成長し得るもので
あればよく、例えば、次のようにすることができる。
【0147】レーザー光の周波数は、30Hz以下とす
るのが好ましく、15Hz以下とするのがより好まし
い。
【0148】レーザー光のエネルギー密度は、0.5J
/cm以上とするのが好ましく、2J/cm以上と
するのがより好ましい。
【0149】サンプルとターゲットとの距離は、60m
m以下とするのが好ましく、45mm以下とするのがよ
り好ましい。
【0150】また、真空装置内の圧力は、1気圧以下が
好ましく、そのうち、酸素分圧は、例えば、酸素ガス供
給下で133×10−3Pa(1×10−3Torr)
以上とするのが好ましく、原子状酸素ラジカル供給下で
133×10−5Pa(1×10−5Torr)以上と
するのが好ましい。
【0151】下地層700の形成における各条件を、そ
れぞれ、前記範囲とすると、より効率よく、下地層70
0をエピタキシャル成長により形成することができる。
【0152】また、このとき、レーザー光の照射時間を
適宜設定することにより、下地層700の平均厚さを前
述したような範囲に調整することができる。この場合、
レーザー光の照射時間は、前記各条件によっても異なる
が、通常、2時間以下とするのが好ましく、1時間以下
とするのがより好ましい。
【0153】なお、下地層700の形成方法としては、
これに限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリン
グ法、MOCVD法、ゾル・ゲル法、MOD法等の各種
薄膜作製法を用いることもできる。
【0154】なお、下地層(バッファ層)700は、そ
の構成材料の種類、後述する工程[2−2]〜[2−
4]における各層の成膜条件等によっては、下地層70
0の厚さ方向の少なくとも一部が消失する場合がある。
【0155】[2−2] 導電性酸化物層420’の形
成:図5のS2 次に、下地層700上に、例えばSrRuOからなる
導電性酸化物層420’を形成する。なお、この導電性
酸化物層420’は、後述する工程[3]により分割さ
れ、下部電極420となる。
【0156】導電性酸化物層420’は、下地層700
の結晶構造の影響を受けて結晶成長する。下地層700
は、立方晶(100)配向したものであるので、下地層
700上に導電性酸化物層420’を成膜すると、導電
性酸化物層420’は、擬立方晶(001)配向でエピ
タキシャル成長する。
【0157】導電性酸化物層420’の形成は、前記工
程[2−1]と同様にして行うことができる。すなわ
ち、導電性酸化物層420’の形成方法(成膜方法)と
しては、レーザーアブレーション法が好適であるが、こ
れに限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング
法、MOCVD法、ゾル・ゲル法、MOD法等の各種薄
膜作製法を用いることもできる。
【0158】[2−3] 強誘電体材料層430’の形
成:図5のS3 次に、導電性酸化物層420’上に、例えば、組成比P
b(Zr0.56Ti 0.44)OのPZTからなる
強誘電体材料層430’を形成する。なお、この強誘電
体材料層430’は、後述する工程[3]により分割さ
れ、圧電体層430となる。
【0159】強誘電体材料層430’は、導電性酸化物
層420’の結晶構造の影響を受けて結晶成長する。導
電性酸化物層420’は、擬立方晶(001)配向した
ものであるので、導電性酸化物層420’上に強誘電体
材料層430’を成膜すると、強誘電体材料層430’
は、菱面体晶(001)配向でエピタキシャル成長す
る。
【0160】強誘電体材料層430’の形成は、前記工
程[2−1]と同様にして行うことができる。すなわ
ち、強誘電体材料層430’の形成方法(成膜方法)と
しては、レーザーアブレーション法が好適であるが、こ
れに限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング
法、MOCVD法、ゾル・ゲル法、MOD法等の各種薄
膜作製法を用いることもできる。
【0161】[2−4] 導電性酸化物層410’の形
成:図5のS4 次に、強誘電体材料層430’上に、例えばSrRuO
からなる導電性酸化物層(導電性材料層)410’を
形成する。なお、この導電性酸化物層410’は、後述
する工程[3]により分割され、上部電極410とな
る。
【0162】導電性酸化物層410’の形成は、前記工
程[2−1]と同様にして行うことができる。すなわ
ち、導電性酸化物層410’の形成方法(成膜方法)と
しては、レーザーアブレーション法が好適であるが、こ
れに限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング
法、MOCVD法、ゾル・ゲル法、MOD法等の各種薄
膜作製法を用いることもできる。
【0163】[3] 圧電素子(振動源)400を形成
する工程:図6のS5 次に、積層体400’、すなわち、導電性酸化物層42
0’、強誘電体材料層430’および導電性酸化物層
(導電性材料層)410’を所定形状に加工(分割)し
て、複数の圧電素子(圧電アクチュエータ)400を形
成する。
【0164】具体的には、まず、導電性酸化物層41
0’上に、例えばスピンコートによりレジストを形成し
た後、インク室210を形成すべき位置に合わせて、露
光・現像してパターニングする。次いで、残ったレジス
トをマスクとして、例えばイオンミリング等でエッチン
グする。これにより、導電性酸化物層410’、強誘電
体材料層430’および導電性酸化物層420’の不要
な部分が除去され、複数の圧電素子400が得られる。
【0165】[4] インク室基板200を得る工程
(第2の工程):図6のS6 次に、Si単結晶基板20の圧電素子400に対応した
位置に、それぞれインク室210となる凹部210’
を、また、所定位置にリザーバ室230および供給口2
40となる凹部を形成する。
【0166】具体的には、インク室210、リザーバ室
230および供給口240を形成すべき位置に合せて、
Si単結晶基板20の圧電素子400(P型不純物層3
0)と反対側の面にマスクを形成した後、エッチングを
行う。
【0167】エッチングを開始すると、Si単結晶基板
20の不要な部分が除去され、P型不純物層30にまで
到達すると、P型不純物層30の存在により侵食の進行
が停止し、インク室基板200が得られる。
【0168】このように、P型不純物層30の存在によ
り、エッチングによる浸食が過度(必要以上)に進行
し、圧電素子400が浸食されるのを好適に防止するこ
とができ、インク室基板200、延いては、ヘッドHを
容易かつ確実に製造することができる。
【0169】また、このとき、エッチングされずに残っ
た部分が、側壁220となり、また、露出したP型不純
物層30は、振動板として機能し得る状態となる。
【0170】このエッチングには、例えば、平行平板型
反応性イオンエッチング、誘導結合型方式、エレクトロ
ンサイクロトロン共鳴方式、ヘリコン波励起方式、マグ
ネトロン方式、プラズマエッチング方式、イオンビーム
エッチング方式等のドライエッチング、5重量%〜40
重量%程度の水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウ
ムハイドロオキサイド等の高濃度アルカリ水溶液による
ウエットエッチングが挙げられ、これらの1種または2
種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中
でも、エッチングには、特に、アルカリ水溶液による異
方性エッチングを用いるのが好ましい。かかる異方性エ
ッチングによれば、Si単結晶基板20は、凹部21
0’、リザーバ室230および供給口240となる凹部
を、容易かつ精度よく形成することができる。このた
め、より寸法精度の高いインク室基板200を得ること
ができる。
【0171】また、本実施形態では、Si単結晶基板2
0として、(110)配向のものを用いるので、異方性
エッチングによる浸食は、Si単結晶基板20の面方向
に対して、ほぼ垂直な方向に効率よく進行する。
【0172】[5] ノズル板100を接合する工程:
図6のS7 次に、例えばステンレス製のノズル板100を、各ノズ
ル孔110が各凹部210’に対応するように位置合わ
せして接合する。これにより、複数のインク室210、
リザーバ室230および複数の供給口240が、それぞ
れ区画形成される。
【0173】この接合には、例えば、接着剤による各種
接着方法、各種融着方法等を用いることができる。
【0174】次に、ヘッドHの主要部を基体500に取
り付けて、インクジェット式ヘッドH(ヘッドH)を完
成する。
【0175】これは、例えばインク室基板200を基体
500に対して、接着剤による接着方法等により行うこ
とができる。
【0176】なお、本実施形態のヘッドHでは、振動板
300がP型不純物層30で構成されていたが、これに
限定されず、例えば、振動板300は、P型不純物層3
0と任意の目的で設けられる他の層とで構成されていて
もよい。
【0177】また、本実施形態では、下部電極420お
よび上部電極410は、各圧電素子400毎に設けられ
た個別電極であったが、下部電極420および上部電極
410のいずれか一方を、各圧電素子400の共通電極
として設けるようにしてもよい。
【0178】次に、インクジェット式ヘッドを備える吐
出装置の一形態であるインクジェットプリンタ、すなわ
ち、本発明の吐出装置をインクジェットプリンタに適用
した場合の実施形態について説明する。
【0179】図7は、本発明の吐出装置の一形態である
インクジェットプリンタの実施形態を示す概略図であ
る。なお、以下の説明では、図7中、上側を「上部」、
下側を「下部」と言う。
【0180】図7に示すインクジェットプリンタ1は、
装置本体2を備えており、上部後方に記録用紙(記録媒
体)Pを設置するトレイ21と、下部前方に記録用紙P
を排出する排紙口22と、上部面に操作パネル7とが設
けられている。
【0181】操作パネル7は、例えば、有機ELディス
プレイ、液晶ディスプレイ、LEDランプ等で構成さ
れ、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)
と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)と
を備えている。
【0182】また、装置本体2の内部には、主に、往復
動するヘッドユニット3を備える印刷装置(印刷手段)
4と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置4に送り込む給紙
装置(給紙手段)5と、印刷装置4および給紙装置5を
制御する制御部(制御手段)6と、各部に電力を供給す
る電源部(図示せず)とを有している。
【0183】制御部6の制御により、給紙装置5は、記
録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、
ヘッドユニット3の下部近傍を通過する。このとき、ヘ
ッドユニット3が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する
方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行なわれ
る。すなわち、ヘッドユニット3の往復動と記録用紙P
の間欠送りとが、印刷における主走査および副走査とな
って、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
【0184】印刷装置4は、ヘッドユニット3と、ヘッ
ドユニット3の駆動源となるキャリッジモータ41と、
キャリッジモータ41の回転を受けて、ヘッドユニット
3を往復動させる往復動機構42とを備えている。
【0185】ヘッドユニット3は、その下部に、多数の
ノズル孔110を備える本発明のヘッドHと、ヘッドH
にインクを供給するインクカートリッジ31と、ヘッド
Hおよびインクカートリッジ31を搭載したキャリッジ
32とを有している。
【0186】なお、インクカートリッジ31として、イ
エロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のイ
ンクを充填したものを用いることにより、フルカラー印
刷が可能となる。この場合、ヘッドユニット3には、各
色にそれぞれ対応したヘッドHが設けられることにな
る。
【0187】往復動機構42は、その両端をフレーム
(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸421
と、キャリッジガイド軸421と平行に延在するタイミ
ングベルト422とを有している。
【0188】キャリッジ32は、キャリッジガイド軸4
21に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベ
ルト422の一部に固定されている。
【0189】キャリッジモータ41の動作により、プー
リを介してタイミングベルト422を正逆走行させる
と、キャリッジガイド軸421に案内されて、ヘッドユ
ニット3が往復動する。そして、この往復動の際に、ヘ
ッドHから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷
が行われる。
【0190】給紙装置5は、その駆動源となる給紙モー
タ51と、給紙モータ51の作動により回転する給紙ロ
ーラ52とを有している。
【0191】給紙ローラ52は、記録用紙Pの送り経路
(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ52
aと駆動ローラ52bとで構成され、駆動ローラ52b
は給紙モータ51に連結されている。これにより、給紙
ローラ52は、トレイ21に設置した多数枚の記録用紙
Pを、印刷装置4に向かって1枚ずつ送り込めるように
なっている。なお、トレイ21に代えて、記録用紙Pを
収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構
成であってもよい。
【0192】制御部6は、例えばパーソナルコンピュー
タやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力
された印刷データに基づいて、印刷装置4や給紙装置5
等を制御することにより印刷を行うものである。
【0193】制御部6は、いずれも図示しないが、主
に、各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモ
リ、圧電素子(振動源)400を駆動して、インクの吐
出タイミングを制御する圧電素子駆動回路、印刷装置4
(キャリッジモータ41)を駆動する駆動回路、給紙装
置5(給紙モータ51)を駆動する駆動回路、ホストコ
ンピュータからの印刷データを入手する通信回路、およ
び、印刷データを処理するデータ処理回路と、これらに
電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとを
備えている。
【0194】また、CPUには、例えば、ヘッドHの周
囲の環境条件(例えば、温度、湿度等)、インクの吐出
状況、記録用紙(記録媒体)P上の印刷状況、記録用紙
Pの供給状態、記録用紙Pの印刷部位付近の雰囲気のイ
ンク溶媒濃度等を検出可能な各種センサが、それぞれ電
気的に接続されている。
【0195】このようなインクジェットプリンタ1で
は、まず、CPUが、通信回路を介して、印刷データを
入手してメモリに格納する。次いで、データ処理回路
は、この印刷データを処理する。次いで、CPUは、こ
の処理データおよび各種センサの検出データに基づい
て、各駆動回路にそれぞれ駆動信号を出力する。この駆
動信号により圧電素子400、印刷装置4および給紙装
置5は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに
印刷が行われる。
【0196】以上、本発明のインクジェット式ヘッドの
製造方法、インクジェット式ヘッドおよび吐出装置につ
いて、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明
は、これらに限定されるものではない。
【0197】例えば、本発明のインクジェット式ヘッド
の製造方法、インクジェット式ヘッドおよび吐出装置を
構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置
換、または、その他の構成を追加することもできる。
【0198】また、例えば、本発明のインクジェット式
ヘッドの製造方法では、任意の工程を追加することもで
きる。
【0199】また、前記実施形態では、インクジェット
式ヘッドを備える吐出装置の一形態として、インクジェ
ットプリンタについて説明したが、本発明の吐出装置
は、例えば、各種工業用液体吐出装置に適用することも
できる。この場合、工業用液体吐出装置では、前述した
ようなインク(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック
等のカラー染料インク)の他、例えば、インクジェット
式ヘッドのノズル(液体吐出口)からの吐出に適当な粘
度を有する溶液や液状物質等が使用可能である。
【0200】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、P
型不純物層を有しているので、Si単結晶基板に対して
エッチングを施す際に、このエッチングにより必要とし
ない部分まで浸食されてしまうという不都合が防止さ
れ、容易かつ確実にインクジェット式ヘッドを製造する
ことができる。
【0201】また、Si単結晶基板の表面付近にP型不
純物をイオン注入することにより、P型不純物層を形成
する場合には、インクジェット式ヘッドを容易に製造す
ることができるとともに、製造コストの低減を図ること
ができる。
【0202】また、Si単結晶基板とP型不純物層とを
接合する場合には、Si単結晶基板として、エッチング
に適した配向のものを選択し、P型不純物層として、こ
の上に形成する(設ける)振動源の特性を向上させ得る
配向のものを選択することができるので、インクジェッ
ト式ヘッドの性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のインクジェット式ヘッドの実施形態
を示す分解斜視図(一部切り欠いて示す)である。
【図2】 図1に示すインクジェット式ヘッドの主要部
の構成を示す断面図である。
【図3】 図2に示すインクジェット式ヘッドの主要部
の製造工程を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】 図2に示すインクジェット式ヘッドの主要部
の製造工程を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】 図2に示すインクジェット式ヘッドの主要部
の製造工程を説明するための図(縦断面図)である。
【図6】 図2に示すインクジェット式ヘッドの主要部
の製造工程を説明するための図(縦断面図)である。
【図7】 本発明の吐出装置の一形態であるインクジェ
ットプリンタの実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
1‥‥インクジェットプリンタ 2‥‥装置本体 21
‥‥トレイ 22‥‥排紙口 3‥‥ヘッドユニット
31‥‥インクカートリッジ 32‥‥キャリッジ 4
‥‥印刷装置 41‥‥キャリッジモータ 42‥‥往
復動機構 421‥‥キャリッジガイド軸 422‥‥
タイミングベルト 5‥‥給紙装置 51‥‥給紙モー
タ 52‥‥給紙ローラ 52a‥‥従動ローラ 52
b‥‥駆動ローラ 6‥‥制御部 7‥‥操作パネル
10‥‥基板 20‥‥Si単結晶基板 30‥‥P型
不純物層 100‥‥ノズル板 110‥‥ノズル孔
200‥‥インク室基板 210‥‥インク室 21
0’‥‥凹部 220‥‥側壁 230‥‥リザーバ室
240‥‥供給口 300‥‥振動板 310‥‥連
通孔 400‥‥圧電素子 400’‥‥積層体 41
0‥‥上部電極 410’‥‥導電性酸化物層 420
‥‥下部電極 420’‥‥導電性酸化物層430‥‥
圧電体層 430’‥‥強誘電体材料層 500‥‥基
体 700‥‥下地層 H‥‥インクジェット式ヘッド
P‥‥記録用紙
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 樋口 天光 長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコ ーエプソン株式会社内 Fターム(参考) 2C057 AF93 AG44 AP14 AP23 AP24 AP34 AP35 AP51 AP52 AP53 AP56 AP57 AQ02 AQ06

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si単結晶中にP型不純物を含んでなる
    P型不純物層上に、NaCl構造の金属酸化物を含むバ
    ッファ層と、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を
    含む導電性酸化物層と、ペロブスカイト構造を有する強
    誘電体材料を含む強誘電体材料層とを、この順で、それ
    ぞれエピタキシャル成長により形成した後、前記強誘電
    体材料層上に導電性材料層を形成して積層体を得る第1
    の工程と、 前記P型不純物層に隣接して位置するSi単結晶基板に
    対してエッチングを施すことにより、インクを貯留可能
    なインク室となる凹部を含む所定のパターンを形成して
    インク室基板を得る第2の工程とを有し、 前記第2の工程における前記エッチングを、前記Si単
    結晶基板の前記P型不純物層と反対側の面から開始し、
    前記P型不純物層の存在により侵食の進行を停止させる
    ことを特徴とするインクジェット式ヘッドの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記第1の工程の前に、前記Si単結晶
    基板の表面付近にP型不純物をイオン注入することによ
    り、前記P型不純物層を形成する工程を有する請求項1
    に記載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記第1の工程の前に、前記Si単結晶
    基板の表面付近にP型不純物を拡散させることにより、
    前記P型不純物層を形成する工程を有する請求項1に記
    載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記第1の工程の前に、前記Si単結晶
    基板と前記P型不純物層とを接合する工程を有する請求
    項1に記載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記Si単結晶基板と前記P型不純物層
    とは、互いに配向方位が異なっている請求項4に記載の
    インクジェット式ヘッドの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記P型不純物層は、(100)配向ま
    たは(111)配向のものである請求項4または5に記
    載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記P型不純物層におけるP型不純物の
    濃度は、5×10 〜5×1020個/cmである
    請求項1ないし6のいずれかに記載のインクジェット式
    ヘッドの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記P型不純物層の平均厚さは、0.0
    1〜10μmである請求項1ないし7のいずれかに記載
    のインクジェット式ヘッドの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記エッチングは、アルカリ水溶液によ
    る異方性エッチングである請求項1ないし8のいずれか
    に記載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
  10. 【請求項10】 前記Si単結晶基板は、(110)配
    向のものである請求項1ないし9のいずれかに記載のイ
    ンクジェット式ヘッドの製造方法。
  11. 【請求項11】 前記第1の工程の後、前記凹部に対応
    するように前記積層体を分割して、複数の振動源を形成
    する工程を有する請求項1ないし10のいずれかに記載
    のインクジェット式ヘッドの製造方法。
  12. 【請求項12】 前記P型不純物層は、前記振動源の振
    動により振動する振動板として機能する請求項11に記
    載のインクジェット式ヘッドの製造方法。
  13. 【請求項13】 前記第2の工程の後、前記インクを吐
    出するノズル孔を有するノズル板を、前記インク室基板
    の前記P型不純物層と反対側に、前記ノズル孔が前記凹
    部に対応するよう接合する工程を有する請求項1ないし
    12のいずれかに記載のインクジェット式ヘッドの製造
    方法。
  14. 【請求項14】 前記P型不純物は、ホウ素である請求
    項1ないし13のいずれかに記載のインクジェット式ヘ
    ッドの製造方法。
  15. 【請求項15】 ペロブスカイト構造を有する金属酸化
    物を含む第1の電極と、該第1の電極と対向する第2の
    電極と、これらの電極の間に介挿され、ペロブスカイト
    構造を有する強誘電体材料を含む圧電体層とを有する振
    動源と、 前記第1の電極の前記圧電体層と反対側に設けられ、前
    記振動源の振動により振動し、Si単結晶中にP型不純
    物を含んでなる振動板とを有することを特徴とするイン
    クジェット式ヘッド。
  16. 【請求項16】 前記P型不純物は、ホウ素である請求
    項15に記載のインクジェット式ヘッド。
  17. 【請求項17】 請求項1ないし14のいずれかに記載
    のインクジェット式ヘッドの製造方法により製造された
    ことを特徴とするインクジェット式ヘッド。
  18. 【請求項18】 請求項15ないし17のいずれかに記
    載のインクジェット式ヘッドを備えることを特徴とする
    吐出装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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