JP2006108652A - 積層型圧電素子及びとその製造方法 - Google Patents

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仁志 進藤
Etsuro Yasuda
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Toshiatsu Nagaya
年厚 長屋
Tatsuhiko Nonoyama
龍彦 野々山
Masaya Nakamura
雅也 中村
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Abstract

【課題】主成分として導電性卑金属電極材料を含有する電極層備えた積層型圧電素子であって、優れた圧電性能を有し、かつ耐久性に優れた積層型圧電素子及びその製造方法並びにその製造に使用する電極用ペースト材料を提供すること。
【解決手段】圧電セラミック層10と電極層2とを交互に積層した積層型圧電素子1において、電極層2は主成分として導電性卑金属電極材料を含有し、セラミック層10各層の上部に位置する電極層2と下部に位置する電極層2に挟まれた挟持領域には、圧電性を持たない材料の構成元素が、最も多くの場所で分布するゼロでない分布強度の2倍を越える分布強度に至る局所分布を持たないように、均一に分散している。
【選択図】図2

Description

本発明は、圧電セラミック層と電極層とを交互に積層した積層型圧電素子及びその製造方法に関する。
各種優れた圧電特性及び誘電特性を有するPZT系材料等よりなる圧電セラミック層と、銅等の卑金属よりなる電極層とを交互に積層してなる積層型圧電素子は、アクチュエータやコンデンサ等に利用されている。
このような積層型圧電素子を製造する方法としては、例えば通常下記のような複数の工程にて行われる。
まず、PZT等のセラミック材料よりなるグリーンシートを準備し、このグリーンシートにスクリーン印刷等にて電極用ペースト材料を塗布する。続いて、電極用ペースト材料が塗布されたグリーンシートを所望の数だけ積層して積層体を作製し、さらにこの積層体を脱脂する。
次に、脱脂後の積層体を加熱炉内にて還元条件下で加熱することにより上記電極用ペースト材料中の金属酸化物を還元し、導電性を有する電極層にする(電極還元工程)。その後、積層体を焼成してセラミック材料を緻密化し、最終的な積層型圧電素子を得る(焼成工程)。
上記セラミック材料と、上記電極用ペースト材料とは、境界部の接合状態とその耐久性を良好な状態にするために、同時焼成するのが好ましい。
ところが、上記焼成工程において、上記電極用ペースト材料と上記セラミック材料とは、相反する雰囲気条件を要求する。即ち、例えばPZT等のセラミック材料は、酸化物であるため酸化雰囲気にて焼成することが好ましいのに対し、上記電極用ペースト材料は、電極還元工程において得られた導電性を保持するために還元雰囲気にて焼成を行うことが好ましい。
上記焼成工程において、上記セラミック材料を充分に焼成するために、酸化雰囲気にて焼成を行うと、予め上記電極還元工程において還元された銅等よりなる電極層が再び酸化されて導電性が低下してしまうおそれがある。一方、還元雰囲気にて焼成を行うと、上記セラミック材料が還元されてしまい、焼成後の積層体の特性が低下してしまうという問題がある。
ここでいう酸化雰囲気とは、セラミック材料と電極金属からなる積層品において、セラミック材料が酸化物の状態であり、電極金属が金属の状態であるための雰囲気条件に比べて比較的酸化側に存在する雰囲気条件を示す。また還元雰囲気とは、同様に比較的還元側に存在する雰囲気条件を示す。
このような問題を解決するために、水素ガスを含む雰囲気中で電極用ペースト材料を還元した後、続く焼成工程においては、酸素分圧を特定の範囲に制御した雰囲気下にて、上記積層体を焼成する方法がある(特許文献1参照)。
また、焼成温度よりも低い温度で電極用ペースト材料を還元し、続く焼成工程においては、N2−H2−H2O−O2混合ガスを使用し、O2分圧を特定の範囲に制御した雰囲気下にて、上記積層体を焼成する方法がある(特許文献2参照)。
そしてこのような従来の方法によれば、上記電極還元工程において還元された銅等よりなる電極層を、上記焼成工程においてほとんど酸化させることなくセラミック材料を緻密化させることができる。
またこの他にも、電極用ペースト材料の構成は酸化物を無くす/若しくは酸化物を少量にして電極金属を主成分とする電極用ペースト材料を用いて印刷し、脱脂工程での酸素分圧を制御して電極用ペースト材料中の電極金属の酸化を抑制しながら脱脂した後、焼成工程で同様にセラミック材料を緻密化させることができる。
しかしながら、上記従来の方法においては、特に積層数の多い積層体を作製する場合に、上記積層体の中心部と外周部との間で還元・酸化反応量のバランスをとることが難しく、雰囲気調整が極めて困難になるという問題がある。さらに、積層体の形状が大きいと、焼成前もしくは焼成・電極還元前の脱脂工程におけるバインダー除去に莫大な時間を費やしてしまう。また、バインダーの一部が残存していると、後工程で残存物質の酸化により雰囲気の均一性が保たれず品質に悪影響する。
また、近年使用されているPZTは成分元素としてPbを含んでおり、Pbの酸化物は900℃前後より昇華、液化等で媒体から減じられる。その結果として組成のずれを起こし圧電材料としての性能が比較的低下してしまうため、製造時には出発原料のPb系材料を増加させることが行われたり、圧電素子の焼成時に、圧電素子周辺にPbもしくはPb含材料を配置しておくことによりPb雰囲気を形成させて組成のずれを防止することが行われたりしてきた。またさらにはPbの酸化物特有の性質を生かして、よりPb含材料を増加させて、あるいはPbの酸化物に他の材料を添加したりして、焼成時にPbO(又はPbOと他の材料との共晶物質)の液相を形成させて熱の伝達を向上して焼結を早めて低温焼結させることもある。
以上のような性質をもつPbの酸化物を使用して作製するPZT材料は、品質面も考慮すると製品として取り上げにくい材料ではあるが、圧電性能が特に優れていることや、比較的低温での焼成が可能であり電極金属の選択肢が広がることから、積極的に使用されてきた。
しかし最近は環境問題が取り上げられるようになり、Pbが有害物質であることからPbを構成元素として含まない圧電材料が求められるようになった。
また、低コストの圧電素子を作製するには、電極材料を貴金属ではなく卑金属にする必要があり、このときには上述のとおり、セラミック材料の酸化状態と電極層の還元状態を両立させる必要がある。
前述のごとく、含Pb圧電材料では、焼成温度を低くすることができたので、融点が高いNiではなく、比較的融点の低いCuを使用することができた。
CuはNiに比べるとイオン化傾向が低く、または酸化のためのギブスの自由エネルギーが高いため、比較的高い酸素分圧(10−6atm程度)でも酸化量は少なく、還元雰囲気調整すれば導電性金属として維持することができた。
導電性金属として維持することの難易度は、以下のように考えればよい。
例えばボンベガスの不純物濃度は通常0.01%〜1%程度であり、その中に少量の酸素が含まれていても、酸素分圧調整を大きく妨げるレベルの酸素量ではなかった。(温度、湿度等の変化、材料の組成のずれの誤差などに比べれば、同レベル若しくはそれ以下であり、電極材料やセラミック材料の酸化度合いへの寄与度は小さかった。)
一方Pbを含まない材料では、現在、圧電性能を上げることが重視されている段階であり、低温焼成のために液相を作る材料を添加しながら圧電性能を上げる方向と高融点の導電性卑金属材料を電極材料として採用し焼成する方向の双方が検討項目として残されている。例えば、高融点の電極用金属としては、比較的高温(1100℃〜1300℃)でも使用できる材料として、Niが代表として挙げられる。
NiはCuに比べると酸化されやすいので、酸素分圧をより低く制御する必要がある。しかし前述のとおり、実際には雰囲気調整するガスには不純物が含まれており、酸素分圧を低くすればするほど、前記不純物によるノイズが相対的に大きくなる。結果、一部のサンプルは電極層の金属状態、セラミック層の酸化物状態が形成されていても、別のサンプルでは、上記所望の状態には必ずしもなってはおらず、結果として品質の悪い製品となってしまう。
また、Pbを含まないセラミック材料で低温焼成を実現すると、その低温焼成用の、例えば添加剤の酸化状態の制約が加わり、雰囲気調整をより難しくする。すなわち、どちらの検討項目においても、雰囲気調整の難しさが予想される。
上述のように、電極層とセラミック層が所望の状態になっていないときの品質低下について、以下簡単に一例を述べる。
焼成時等の還元雰囲気形成時、最適雰囲気条件よりも酸化側に振れれば、電極が酸化し、酸化物からなるセラミック層と共晶反応を起こし、溶融、拡散するおそれがある。また、最適雰囲気よりも還元側に振れると、セラミック層の一部が還元され、電極層の金属と共晶反応を起こし、電極材料が溶融、拡散するおそれがある。金属と金属、又は酸化物と酸化物とは共晶反応を起こしやすく、金属と酸化物の組み合わせでは共晶反応は極めてまれである。
また、圧電材料作製時には、所望の比率の構成原子割合で出発原料を混ぜ合わせて作製するが、全ての材料が圧電材料の化合物の構成になるわけではなく、ごく一部の材料は化合すべき構成材料と遭遇しないために圧電材料の化合物になれずに残存するという現象が起こることはごくあたりまえである。よって、酸化物同士、金属同士は共晶・溶融しやすく、酸化物と金属とは共晶が起こりにくいことから、上記導電性卑金属材料を酸化させず、また上記圧電材料だけでなく残存物質も還元させることなく焼成せねばならず、その雰囲気条件の設定が非常に困難となる。Pb含材料では焼成時にPbの昇華、液化などが起こるため、特に圧電性をもつ化合物にならなず残存しやすい。
以上のとおり、電極層とセラミック層が所望の状態になっていないと、電極層の材料とセラミック層の材料とが共晶反応を起こし、その結果、電極が途中で途切れ
て電極層が部分的にしか機能しなくなり性能が低下する。
この他にも、電極層の酸化による導電性低下、セラミック層の還元による絶縁抵抗の低下、セラミック層の材料の一部の圧電特性消失などさまざまな問題が想定される。
また、上記雰囲気調整における問題点に限り、雰囲気調整時のガス中の不純物の影響が大きいPbを含まない材料で特に起こりやすいが、Pbを含む材料ではPbの昇華・液化の影響が大きく品質面で問題となる。
以上、製法における困難性から、圧電性能をもつセラミック層内に圧電性能を持たない電極材料が焼成途中に流れ込むなどして偏析する等の、製品での問題点が生ずる。比較的大きな材料塊が偏析している素子においては、電圧印加により圧電層が変位するのに対し、偏析材料には変位が生じない。結果、偏析材料の周囲境界部に応力が集中し、場合によっては亀裂を発生させるなど、耐久性において問題となる。
以上の問題点を解決するために特許文献3においては、有機ビヒクルと導電性卑金属材料もしくは、有機ビヒクルと導電性卑金属材料とその酸化物からなる電極用ペースト材料に、溶融抑制物質/又は融点上昇物質を添加している。
その結果、焼成後に導電性卑金属電極が酸化されていても、その導電性卑金属材料はセラミック層に偏析しない効果が認められている。電極材料が酸化されても偏析しないのであれば、上記NiやCu及び/またはその化合物、混合物での共通問題である雰囲気調整の困難性も解決される。
しかし、Pb含有材料を使用している限り、Pb特有の昇華、液化に伴う問題は解決されておらず、品質面での不安定性という課題は残される。また、大きな素子を焼成するときには、前後左右上下においてPb含有量が不均一となり、良い性能が十分発揮できないことが考えられる。
特開平5−82387号公報 特公平7−34417号公報 特開2002−260951号公報
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、主成分として導電性卑金属電極材料を含有する電極層を備えかつセラミック層は特にPb含有材料に限定しない積層型圧電素子であって、優れた圧電性能を有し、かつ導電性卑金属材料のセラミック層内での偏析を十分に抑制すると共に、その卑金属電極材料の偏析抑制のために使用した強化物質自体もまた偏析させない事により、耐久性に優れた積層型圧電素子及びその製造方法並びにその製造に使用する電極用ペースト材料を提供しようとするものである。
特に製法においては、Niに限らず低温焼成におけるCuも含めその他卑金属を電極材料として使用したときの、雰囲気調整の困難性を回避するものである。
第1の発明は、圧電セラミック層と電極層とを交互に積層した積層型圧電素子において、
上記圧電セラミック層は、主成分としてニオブ酸アルカリ化合物を含有し、上記電極層は主成分として導電性卑金属材料を含有していることを特徴とする積層型圧電素子にある(請求項1)。
ここで言う電極層とは、基本的には上下2つのセラミック層に挟まれた電極層を指し、上記セラミック層に電界をかける役割をしているものであれば、外部へのはみ出し/電極層分割による複数化/部分電極など、形態は何ら問題なく対象内とする。
逆に上記セラミック層に電界をかける役割ではなく、例えば外部電極のように他の電極層への電流供給だけをしてセラミック層の駆動に直接影響しない場合は、その電極層が一部、上下セラミック層に挟まれたような形態をとっていても対象外とする。
当然のことではあるが、上記のように所望の条件を満たすのであれば、上記電極層は例えば内部電極層のように、異なる呼び方をしてもいてもよい。
本発明の積層型圧電体素子は、その圧電セラミック層の主成分が、上記のごとく、Pbを含有していないニオブ酸アルカリ化合物よりなる。これにより、上記積層型圧電素子は、製造時又は廃棄時においても有害物質を発生させず、環境上利用価値の高い素子となるとともに、Pbの昇華、液化がなくなり品質に優れた素子となる。
また、上記ニオブ酸アルカリ化合物は、Pbを含有していない圧電材料としては優れた圧電性能を有している。そのため、これを圧電セラミック層の主成分として用いた上記積層型圧電素子は、優れた圧電性能を発揮し、アクチュエータ等への適用範囲を拡げることができる。
ここで、上記ニオブ酸アルカリ化合物とは、例えば、KNbO3、(K、Na)NbO3、(K、Na)(Nb、Ta)O3、K(Ta、Nb)O3、LiTaO3他、これらの固溶体など、Aサイトが、K、Na、Liなどに代表されるアルカリ金属一つもしくはそれ以上から構成され、BサイトがNbもしくはNbとTaなど5価の元素との複数の元素から構成されているもの総称である。
また、本発明においては、上記電極層は主成分として導電性卑金属材料を含有している。
この場合には、電極層が主成分として導電性卑金属材料で構成されることにより、セラミック材料と導電性卑金属材料との、微量の共晶反応などにより共晶物質による接合層が形成され接合度合いのよい積層型圧電素子が得られる。
また、上記導電性卑金属材料は、上記圧電セラミック層を構成するセラミック材料よりも、焼結温度における金属酸化物生成の標準ギブス自由エネルギーが大きいことが好ましい(請求項2)。
ここで、焼結温度とは、密度変化の温度依存性をグラフにした時に、高温側で密度が飽和した領域での接線と、密度変化の著しい領域での接線の交点の温度、言わば焼結終了温度を示す。ただし、製法が分かる場合には、焼成条件の最高温度を代用してもよい。なぜなら、通常、焼結終了温度もしくはその近傍の温度で焼成するからである。
上記電極層は、上記圧電セラミック層を構成するセラミック材料よりも、焼結温度における金属酸化物生成の標準ギブス自由エネルギーが大きい導電性卑金属材料を主成分としていることにより、電極層の材料の酸化とセラミック層の材料の還元を双方抑制しながら焼成することが可能となるので一体焼成が可能となり、その結果、電極と圧電セラミック層との接合がより良好な積層型圧電素子が得られる。
上記電極層は、導電性に支障をきたさなければ、上記導電性卑金属の一部が酸化されていてもよい。
ここで、「金属酸化物生成の標準ギブス自由エネルギーが大きい」とは、「酸化されにくい」ことを意味する。例えば1000℃において、Cuの酸化物生成のギブス自由エネルギーは、−40位であり、Pbの酸化については−15位、Niの酸化については−60位であるため、酸化されにくいものから順に、Cu、Pb、Niとなる。また、上記金属酸化物生成の標準ギブス自由エネルギーの大小が明らかでないものは、同一条件において焼成し、酸化量/酸化度合いの比較で代用しても良い。
また、上記電極層と上記圧電セラミック層との境界部近傍(境界部又は/およびその近傍)には、上記電極層と上記圧電セラミック層の接合強度を向上させるための強化物質もしくはその構成元素が分布していることが好ましい(請求項3)。
この場合には、電極層と圧電セラミック層の境界近傍に、強化物質が分布していることによりさらに接合の強い素子が得られる。
このときの強化物質については、作製時のセラミック材料でも電極用ペースト材料でも、どちらに含有されていたものでもよく、また積層後の過程において、元の物質から変化し異なる物質になることにより、接合強度を向上する材料になったものでも何ら問題ない。すなわち、接合強度を向上する物質が存在するのであれば、出発材料、作製過程を問わず良いことは言うまでもない。
また、上記強化物質もしくはその構成元素は、上記圧電セラミック層を構成する材料と共存した場合に、その融点を低下させない材料からなる/もしくはその融点を低下させない材料を構成する元素であることが好ましい(請求項4)。
上記強化物質を、このような材料にすることにより、焼成途中の酸化/還元による溶融回避を考えなくとも安易に形成できる。
ここでいう溶融とは、酸化物と酸化物、金属と金属において起こる共晶反応による現象がある。しかし、共晶反応は酸化物と酸化物、または金属と金属とで必ず起こる現象ではなく、相平衡図が共晶系の場合に起こり、相平衡図の一部分が共晶系の形の場合にも起こり得る。
セラミック材料は酸化物であるので、上記共晶反応による溶融が、強化物質もしくはその構成元素からなる酸化物とで生じなければ良い。また上記圧電セラミック層を構成する材料の主成分または副成分、もしくは主成分を作成できる原材料、または主成分を作成する工程において一時的に構成される中間生成物、それぞれが形成される温度域のみで、上記共晶反応による溶融が、強化物質もしくはその構成元素からなる酸化物との間で生じなければよい。少なくともセラミック材料を構成する材料は焼成最高温度でも存在するので、その材料の中でも融点が低いなど溶融しやすい材料と共晶反応を起こさないことが望ましい。
また焼結性向上、低温焼成のために添加するなどの副成分についても対象となることは言うまでもない。
酸化物であるセラミック材料と、強化物質もしくはその酸化物とで共晶反応が起こらなければ、焼成等、雰囲気調整を必要とする工程で、酸化側の雰囲気の逸脱許容範囲ができて雰囲気調整が安易となり、途中での溶融なく目的物を得ることができる。
セラミック材料と強化物質もしくはその酸化物とで共晶反応が起こらなければ、雰囲気調整が安易となる理由については、後に詳細に説明する。
またさらに望ましくは、上記圧電セラミック層を構成するセラミック材料の主成分または副成分、もしくは主成分を作成できる原材料、または主成分を作成する工程において一時的に構成される中間生成物のいずれかが還元されても、強化物質もしくはその還元物質とで共晶反応を起こさないことが望ましい。
酸化/還元双方で共晶・溶融が起こらなければ、雰囲気調整がさらに安易となる。
また、上記強化物質もしくはその構成元素は、上記電極層を構成する導電性卑金属材料またはその酸化物と共存した場合に、その融点を低下させない材料からなる/もしくはその融点を低下させない材料を構成する元素であることも好ましい(請求項5)。
これにより、上記強化物質がセラミック材料と電極材料の酸化物との共晶反応を阻害することが可能となり、耐溶融性を向上させる事ができ、上記同様に雰囲気調整が安易となる。
また、上記強化物質もしくはその構成元素は、上記圧電セラミック層を構成する材料と上記電極層を構成する導電性卑金属材料またはその酸化物とだけを焼成をした場合に構成される共晶物質と共存した場合に、その融点を低下させない材料からなる/もしくはその融点を低下させない材料を構成する元素であることも好ましい(請求項6)。
この場合には、共晶反応による溶融の形成、共晶反応の助長をなくして、逆にセラミック材料と電極材料の共晶反応もしくは共晶物質の組成変化を伴う増加を阻害することにより、性能の良い積層型圧電素子を得ることができる。
上記の各層(材料)との共晶反応を阻害する材料の具体例の一例として、対象材料と略同一の結晶構造であると同時に、より融点が高いという特徴をもつ材料が挙げられる。
例えば、上記強化物質もしくはその構成元素は、酸化物となったときに、圧電セラミック層を構成する材料と略同一の結晶構造であると共に、上記セラミック層を構成する材料より融点が高い材料からなることが好ましい(請求項7)。
また、上記強化物質もしくはその構成元素は、酸化物となったときに、上記電極層を構成する導電性卑金属材料の酸化物と略同一の結晶構造であると共に、その略同一の結晶構造をもつ導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い材料からなることも好ましい(請求項8)。
また、上記強化物質もしくはその構成元素は、酸化物となったときに、上記圧電セラミック層を構成する材料と上記電極層を構成する導電性卑金属材料またはその酸化物とだけでの焼成をした場合に構成される共晶物質と略同一の結晶構造をもつと同時に、該共晶物質よりも融点が高いことも好ましい(請求項9)。
上記のごとく、結晶構造が略同一の構造であれば、相平衡図は完全固溶系である可能性が高くなり、完全固溶系である場合、かつより融点の高い材料である場合に限り、元の材料の融点より低い温度での溶融は起こらない。
また、共晶反応もしくは共晶反応に伴う溶融の進行を、上記強化物質が物理的に阻害するため、セラミック層内での電極材料の偏析が抑制できる。
以下、共晶反応が起こらない材料を強化物質とすると、酸化側の雰囲気の逸脱許容範囲ができて雰囲気調整が安易となる理由も含め詳細に説明する。
上記物理的阻害とは、共晶・溶融し得る電極材料もしくはその一部とセラミック材料もしくはその一部との間に、上記強化物質が介在する事により、反応させないという事が一つの現象として考えられる。
上記共晶反応もしくは共晶反応に伴う溶融の進行を妨げると、液相生成量の低下により、焼結していない/焼結が十分進行していないセラミック層内にある空洞部への共晶反応物質の流れ込みが防止されたり、液相生成の遅延により、セラミック層の焼結が進行しセラミック層内の空洞が低減されていることにより、溶融物質の浸透が一部に集中せず偏析を抑制することが考えられる。偏析を抑制するため、雰囲気の逸脱許容範囲が広がることになる。
次に、略同一の結晶構造とは、結晶構造の分類が同じであれば良く、格子定数、角度が異なっていてもよい。この詳細は、請求項15の説明と同様である(後述)。
上記略同一の結晶構造の物質は、相平衡図において完全固溶系の形となる可能性があり共晶物質のように、単独のときの融点よりも低温で溶融する現象は起こらない。その結果、上記偏析抑制の効果が発揮できる。
このとき、共晶物質ができないだけでなく、強化物質自体も溶融しないように、融点は
それぞれ対象とする材料よりも低くないことが前提である。
以上の説明においては、完全固溶系/共晶系の分類で記載したが、相平衡図の名称に拘りはなく、例えば複合系の相平衡図が対象外であるわけではなく、強化物質の添加により融点が低下せず、かつ共晶・溶融を抑制するものであれば良い。
また対象の物質と混ざらない事により、共晶・溶融を抑制しても何ら問題なく同効果と認める。
また、全ての添加物・構成材料において言えることであるが、材料により異なる数値ではあるが数十nmにもなると、量子サイズ効果が現れ、融点の低下が起こることが知られつつある。よって、極めて小さい粒子は故意に増加させないことが望ましい。
また、大きさの上限としては、十分焼結し各目的層の厚みより小さいことが望ましい。
なお、請求項7、9において、圧電セラミック層を構成する材料とは、主成分に限定するわけではなく、低温焼結助剤なども対象とし、共晶・溶融しやすい材料について考えればよい
以上のような優れた特性を合わせ持つ電極用ペースト材料としては、例えば、上記導電性卑金属材料はCuもしくはCuとNiを含有する混合物、合金又は化合物であることが好ましい(請求項10)。
この場合には、接合しやすくまた、導電性の良い電極層を得ることができる。
また、上記導電性卑金属材料はNiもしくは、Niを含有する混合物、もしくはNiの比率が高い合金又は化合物であることが好ましい(請求項11)。
この場合には、一体焼成において、上記導電性卑金属材料がセラミック層よりも還元されやすい。
更に詳細に言うと、Cuのときは、圧電セラミック材料の還元を抑制しながら電極材料を還元するための雰囲気、例えば酸素分圧、水素分圧などの雰囲気の範囲が広く、分圧制御が比較的安易となる。
一方、NiのときにはNiの融点が高いために、比較的高温での焼成が可能となり、低温焼結の必要性が低下することに伴い、圧電セラミック材料の選択・検討範囲が広がる。
結果、還元されにくい圧電材料を採用することが可能となり還元焼成を安易とすることもでき、また性能のよりよい圧電材料の選択が可能となる。
また強化物質は、電極層の主成分:導電性卑金属がNiのときは、その酸化物:NiOと同じ結晶構造であることが望ましく、その結晶構造が高温において岩塩型構造であることから、上記電極層と上記圧電セラミック層との境界部近傍には、上記電極層と上記圧電セラミック層の接合強度を向上させるための強化物質が分布しており、該強化物質もしくはその構成元素は、酸化物となったときに岩塩型構造であることが好ましい(請求項12)。
また、岩塩型構造を有する上記酸化物としては、CaOがある(請求項14)。
CaOという岩塩型構造物質が、高温における電極材料の酸化物:NiOとセラミック材料の共晶反応を抑制する。このとき、共晶反応を妨げることが目的であるので、共晶反応を起こす温度域においてCaOが存在すればよく、電極用ペースト材料の構成においてCaOである必要はない。その一例としてCaCO3が挙げられる。
また強化物質は、電極層の主成分:導電性卑金属がCuのときは、その酸化物:CuOまたはCu2Oと同じ結晶構造であることが望ましく、その結晶構造が赤銅鉱型構造または単斜晶型構造であることから、上記電極層と上記圧電セラミック層との境界部近傍には、上記電極層と上記圧電セラミック層の接合強度を向上させるための強化物質が分布しており、該強化物質もしくはその構成元素は、酸化物となったときに赤銅鉱型構造または単斜晶型構造であることも好ましい(請求項13)。
また、上記積層型圧電素子は、向かい合って電位差を形成し得る電極の間に電極材料の偏析がないことが好ましい(請求項15)。
これにより、駆動時に変位する圧電セラミック層内で、変位しない電極材料の偏析部への応力集中が起こらず、耐久性が良好となる。このとき、異なる電位の電極が向かい合っていない部分のように、変位があっても小さい部分は対象外であり、電極材料の偏析が多少あってもよい。
以下、偏析について詳細説明する。
測定法は、電子線マイクロアナライザ−(EPMA;測定条件は、加速電圧20kV、電流1×10−7A、ビクセル数256×256、1ビクセルあたり20ms、倍率700倍)において、積層品の電極面に垂直な方向にカットした面、すなわちセラミック層と電極層が交互になっている状態が見られる面において、成分元素の分布をみるための面分析をする事により実施できる。
上記EPMAの面分析結果において、各成分元素特有のX線のピークがノイズに隠れて出ないような、いわゆる検出不可レベルの部分については、成分元素が無いように強度設定を定めて比較するものとする。このとき、電極層における電極材料の最高強度の値の40%以上の強度で圧電セラミック層内に電極材料が分布する場合を偏析とする。40%に至らない強度の分布については、拡散として区別する。
そして、本発明では電極材料の圧電セラミック層内における分布が、上記特定の分布状態、すなわち偏析がないように制限することにより、次のような優れた作用効果を得ることができる。
すなわち、各部位の電極材料が、微小な存在となることにより、微視的には散らばって分布しており、個々の粒径は小さくなる。例えば、光のレーリー散乱は粒子径の4乗に反比例し、あたかも粒子がないかのように透過する。変位も、光とは速度が違うものの、光同様に、波であるので、電極材料の粒子が微小化されることにより、変位という波の反射、散乱は少なくなる事が考えられる。さらには、微小化することにより、圧電材料の粒子−粒子間に介在するのであれば、圧電材料は比較的自由に変動する事が可能となり、応力集中が緩和され、問題は薄れる。
よってさらには、微視的に粒子(バルク)界面に点在するレベルの拡散だけになる事が好ましい。
なお、上述した結晶構造が同一か否かについては略同一であればよい。すなわち、結晶構造の名称/分類が同じであればよく、結晶構造の格子定数、角度までも限定するわけではない。例えば、圧電材料の代表であるBaTiO3はペロブスカイト構造を有しており、同じペロブスカイト構造を有するPZT{Pb(Ti、Zr)O3}、SrTiO3他、同分類の結晶構造をもつ材料が多数ある。しかし、これらは結晶構造の格子定数、角度の違いにより、立方晶、正方晶、菱面体晶、斜方晶などに細分されている。例えば立方晶や正方晶の違いを見ても格子の異方性は、格子定数の1、2%程度の違いしかなく、実質的には原子配置に大きな違いがある場合は少ない。
よって、細分された構造では限定せず大分類で限定する。
当然のことながら、同分類であっても格子定数が10%も違うと結晶構造は壊れる可能性が高いので、5%以上違うものは対象から除外する。
第2の発明として、圧電セラミック層と電極層とを交互に積層した積層型圧電素子を製造する方法において、ニオブ酸アルカリ化合物を上記圧電セラミック層の主成分として使用することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法がある(請求項16)。
結果として、Pbのような昇華・液化の問題がなく品質面に優れた積層型圧電素子を得ることができる。
また、電極用ペースト材料の主成分としては、導電性卑金属材料もしくは導電性卑金属材料およびその酸化物を使用することが好ましい(請求項17)。
卑金属を使用することにより低コスト化することができ、また電極層の卑金属が極微量に酸化してセラミック層のニオブ酸アルカリ化合物と共晶反応を一部起こし、接合が強化される。
次に、上記導電性卑金属材料は、CuもしくはCuとNiを含有する混合物、合金又は化合物であることが好ましく(請求項18)、これにより、導電性のよい電極層を形成できるとともに、低温での一体焼成を実現すれば、セラミック層の酸化、電極層の還元状態を両立できる。
また、上記導電性卑金属材料は、Niもしくは、Niを含有する混合物、もしくはNiの比率が高い合金又は化合物であることが好ましく(請求項19)、これにより、高温での一体焼成が可能となる。
このとき、使用する上記電極用ペースト材料には、上記圧電セラミック層を構成する材料と共存した場合に、その融点を低下させない材料を含有していることが望ましい(請求項20)。
その結果、セラミック層を構成する材料と電極層の材料の酸化物との共晶反応を阻害するので、酸化側の雰囲気の逸脱許容範囲が広がり、雰囲気調整が比較的安易となる。
また、使用する上記電極用ペースト材料には、上記電極層を構成する導電性卑金属材料またはその酸化物と共存した場合に、その融点を低下させない材料を含有していても(請求項21)、同様な効果が期待できる。
さらには、使用する上記電極用ペースト材料には、上記圧電セラミック層を構成する材料と上記電極層を構成する導電性卑金属材料またはその酸化物とだけを焼成した時に構成される共晶物質と共存した場合に、その融点を低下させない材料を含有していてもよい(請求項22)。この場合には、共晶反応は起こるものの、共晶物質の組成変化に伴う増加が、上記含有材料によって阻害される。
上記3つの条件の材料は、具体的に以下のように表すことができる。
(1)上記圧電セラミック層を構成する材料と略同一の結晶構造であると共に、その略同一の結晶構造をもつ材料よりも融点が高い材料を含有している(請求項23)。
(2)上記電極層を構成する導電性卑金属材料の酸化物と略同一の結晶構造を有し、かつその略同一の結晶構造をもつ導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い材料を含有している(請求項24)。
(3)上記圧電セラミック層を構成する材料と上記電極層を構成する導電性卑金属材料またはその酸化物とだけを焼成した時に構成される共晶物質と略同一の結晶構造を有し、かつその略同一の結晶構造をもつ共晶物質よりも融点が高い材料を含有している(請求項25)。
次に電極材料の主成分がNiのときには、NiOが高温において岩塩型構造となるので、上記(2)の略同一の結晶構造とは、岩塩型構造となる。すなわち、上記電極用ペースト材料は、岩塩型構造をもち、かつ上記電極層を構成する導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い材料を含有しているものとなる(請求項26)。
また電極材料の主成分がCuのときには、Cu2O、CuOが赤銅鉱型構造、単斜晶型構造をもつので、(2)の略同一の結晶構造とは、赤銅鉱型構造、単斜晶型構造となる。すなわち、上記電極用ペースト材料は、赤銅鉱型構造もしくは単斜晶型構造をもち、かつ上記電極層を構成する導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い材料を含有しているものとなる(請求項27)。
上記岩塩型構造をもちかつ上記電極層を構成する導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い材料の一例として、CaOがあげられる(請求項28)。
前述のとおり、高温で所定の材料となればいいので、CaO以外にCaCO3等でもよい。
また高温になるまでに、ガスが分離してCaOとなる材料、酸化に伴い構成元素が分離・分解していくCa含有機材料なども挙げられる。
その他、高温でCaOになるのであれば、上記のように単一的に分離・分解・反応する材料に限らず、2種以上混入しておき工程途中に反応させるなどのような形態をとっても問題なく、本発明の効果である。
第3の発明は、圧電セラミック層と電極層とを交互に積層した積層型圧電素子において、
上記電極層は主成分として導電性卑金属電極材料を含有し、
上記セラミック層各層の上部に位置する上記電極層と下部に位置する電極層に挟まれた挟持領域には、圧電性を持たない材料の構成元素が、最も多くの場所で分布するゼロでない分布強度の2倍を越える分布強度に至る局所分布を持たないように、均一に分散していることを特徴とする積層型圧電素子にある(請求項29)。
ここで言う電極層とは、基本的には上下2つのセラミック層に挟まれた電極層を指し、上記セラミック層に電界をかける役割をしているものであれば、外部へのはみ出し/電極層分割による複数化/部分電極など、形態は何ら問題なく対象内とする。
逆に上記セラミック層に電界をかける役割ではなく、例えば外部電極のように他の電極層への電流供給だけをしてセラミック層の駆動に直接影響しない場合は、その電極層が一部、上下セラミック層に挟まれたような形態をとっていても対象外とする。
当然のことではあるが、上記のように所望の条件を満たすのであれば、上記電極層は例えば内部電極層のように、異なる呼び方をしてもいてもよい。
本発明では、上記挟持領域における上記特定の構成要素の分布強度を制限している。ここで、圧電性を持たない材料の構成元素とは、具体的には、例えば焼成前に電極用ペースト材料の印刷層内に入っていた材料がセラミック層内に拡散した時のように、当初から圧電セラミック層の性能を形成する目的で添加したものではないこと、すなわち主成分ではない元素を意味する。
また、上記の構成元素の分布の比較については、電子線マイクロアナライザ−(EPMA;測定条件は、加速電圧20kV、電流1×10-7A、ビクセル数256×256、1
ビクセルあたり20ms、倍率700倍)において、積層品の電極面に垂直な方向にカットした面、すなわちセラミック層と電極層が交互になっている状態が見られる面において、成分元素の分布をみるための面分析をする事により実施できる。
また、上記の最も多くの場所で分布するゼロでない分布強度という表記中のゼロでないとは、上記EPMAの面分析結果の曖昧な部分である強度設定を定めるための表記である。すなわち、各成分元素特有のX線のピークがノイズに隠れて出ないような、いわゆる検出不可レベルの部分については、成分元素がないように強度設定を定めて比較するものとする。最も多量に分布している部分の強度については、最高強度の設定次第で数値が変動するが、本案では分布強度の比による比較であるため任意とする。
また、上記の最も多くの場所で分布するゼロでない分布強度とは、上記強度設定においてセラミック層内に分散性良く分布している部分の分布強度の平均により代用する。
簡易的に数値を出す方法としては、100点くらいの多くの場所での分布強度を平均し代用する方法などが考えられる。
そして、本発明では、上記特定の構成元素の分布状態を上記のごとく制限することにより、次のような優れた作用効果を得ることができる。
すなわち、各部位、微小な存在となる事により、微視的には散らばって分布しており、個々の粒径は小さくなる。例えば、光のレーリー散乱は粒子径の4乗に反比例し、あたかも粒子がないかのように透過する。変位も、光とは速度が違うものの、光同様に、波であるので、微小化されることにより、変位という波の反射、散乱は少なくなる事が考えられる。さらには、微小化することにより、圧電材料の粒子−粒子間に介在するのであれば、圧電材料は比較的自由に変動する事が可能となり、応力集中が緩和され、問題は薄れる。
よってさらには、1.5倍を越える分布強度の局所分布がないことが好ましい。
上記積層型圧電素子においては、上記セラミック材料として、例えばPZT系材料{Pb
(Zr,Ti)O3系ペロブスカイト構造の酸化物の総称とし、Pb、Zr、Tiが部分的
に置換されている材料も含む;以下同様}等を用いる事ができる。またこの他にも、KNbO3やLiNbO3、BaTiO3等のようにPbを成分元素として含まない材料を用いる事もできる。
当然のことながら、このときPbを含まない材料は上記構成に限定するのではなく、ABO3と表記したときのAサイト、Bサイト原子(元素)は各々2つ以上あっても良く、ま
た上記化合物は主成分でありさえすればよい。例えば、焼結性向上や諸性能向上、強度向上などのために、少量の材料が添加されていて、その少量添加物が圧電性を持たない材料でも良い。
ただし、上記セラミック層を構成する材料については、環境問題の観点から、有害物質であるPbを構成元素として含まないことが好ましい。
また、上記導電性卑金属材料は、上記圧電セラミック層を構成するセラミック材料よりも、焼結温度における金属酸化物生成の標準ギブス自由エネルギーが大きいことが好ましい(請求項30)。
ここで、焼結温度とは、密度変化の温度依存性をグラフにした時に、高温側で密度が飽和した領域での接線と、密度変化の著しい領域での接線の交点の温度、言わば焼結終了温度を示す。ただし、製法が分かる場合には、焼成条件の最高温度を代用してもよい。なぜなら、通常、焼結終了温度もしくはその近傍の温度で焼成するからである。
ここで、「金属酸化物生成の標準ギブス自由エネルギーが大きい」とは、「酸化されにくい」ことを意味する。例えば1000℃において、Cuの酸化物生成のギブス自由エネルギーは、−40位であり、Pbの酸化については−15位、Niの酸化については−60位であるため、酸化されにくいものから順に、Cu、Pb、Niとなる。
これにより、上記積層型圧電素子は、その同時焼成の際の雰囲気調整が所望の酸化物と金属構成形成のために解がないわけではなく、上記電極層は充分に還元され、かつ上記圧電セラミック層は充分に酸化された状態のものとなる。すなわち、電極材料とセラミック材料の積層品の一体同時焼成が可能となり、より強固な、電極−セラミックの接合を実現できる。
上記電極層は、導電性に支障を来さなければ、上記導電性卑金属材料の一部が酸化されていてもよい。
圧電材料作製時には、所望の比率の構成原子割合で出発原料を混ぜ合わせて作製するが、全ての材料が圧電材料の化合物の構成になるわけではなく、例えば、混練時の一部の付着、若干の不均一性などにより、ごく一部の材料は化合すべき構成材料と遭遇しないために圧電材料の化合物になれずに残存するという現象が起こることは極あたりまえである。
よって、酸化物同士、金属同士は共晶・溶融しやすく、酸化物と金属とは共晶が起こりにくいことから、上記導電性卑金属材料を酸化させず、また上記圧電材料だけでなく残存物質も還元させることなく焼成しなければならず、その雰囲気条件の設定は本来非常に困難である。
これに対し、上記導電性卑金属材料として、上記圧電セラミック層を構成するセラミック材料よりも、焼成温度における金属酸化物生成の標準ギブス自由エネルギーが大きいものを用いているため、上記焼成温度にて上記導電性卑金属材料が酸化される可能性は低く、雰囲気条件の設定が不可能ではなくなる。
また、上記セラミック層各層の上記挟持領域には、上記電極層を構成する導電性卑金属材料の成分元素を含む化合物の偏析がないことが好ましい(請求項31)。
電極材料の偏析は、応力集中の問題だけでなく、電極材料の所定の場所での存在比率の低下から、電極の不連続性にも繋がりかねないので、偏析がないだけでなくセラミック層への拡散量も少ない方が好ましい。
ここで言う電極材料の偏析とは、EPMAにおける強度において、電極部の電極材料の最高強度に対し40%以上の強度分布の場合を示すものとし、同40%以下は拡散と称す。
また、上記電極層を構成する導電性卑金属材料の主成分がCu、NiもしくはCuとNiを含有する混合物、合金または化合物であることが好ましい(請求項32)。
すなわち、上記卑金属電極材料は、導電性がよく融点の高いCuが好ましい。あるいは好ましくは融点がさらに高いNiがよく、CuとNiは完全固溶系の相平衡図で表され、Cu+Niの混合物や化合物(合金)の融点がCuよりも低くなることはあり得ないので、Cu+Niの混合物でもよく、Cu+Niの化合物(合金)でもよい。
また上記の導電性卑金属材料には別の材料が含まれていても、導電性低下や融点低下による問題が起こらなければよいので、あくまで主成分を限定するものである。
例えば融点を上げる目的でCuに高融点のPdを混ぜ合金の融点を上げることも好ましい方法である。
また、上記狭持領域に均一分散している上記圧電性をもたない材料の構成元素がCaであることが好ましい(請求項33)。
上記のごとく、圧電性を持たない材料の構成元素とは、具体的には、例えば焼成前に電極用ペースト材料の印刷層内に入っていた材料がセラミック層内に拡散した時のように、当初から圧電セラミック層の性能を形成する目的で添加したものではないこと、すなわち主成分ではない元素を意味する。
以下に圧電セラミック層の性能を形成する目的で添加したものではない材料の判断方法を記す。
圧電セラミック層の性能を形成する目的で添加した材料の場合、セラミック層の材料の構成において、(A1,A2)(B1,B2)O3、A113+A223のように、ABO3というペロブスカイト構造の材料の表記において、2種類の表記方法がある。
前者はAサイト構成元素を括弧でくくり、Bサイト構成元素を括弧でくくり、続けて酸素3つ書く表記方法である。このときそれぞれの構成比率を書き添えていてもよい。
後者は材料内のAサイト元素とBサイト元素との中でも、結晶構造を形成している比率の高い組み合わせに分けて記す方法である。このときもまた構成比率が書き添えられていてもよい。
また圧電セラミック層の性能を形成する目的で添加した構成元素でも、ペロブスカイト構造に入っていない材料については、上記表記の後ろに所望の化学式で付け加えて記すことが多い。
上記の表記法にCaが入っていない、すなわち主成分にCaが入っていない材料において焼成等の工程途中でCaが入ってくると、ペロブスカイト構造のAサイトに偶発的にCaが入ることが起こりえて、結果、Caを含む圧電材料を一部形成する可能性がある。また圧電性を示さないCa化合物の部位もあるが、このとき形成されたCaを含む圧電材料と圧電性をもたないCa化合物とは、あるところで局所的に境界部を形成しているわけではなく、圧電性をもつ部分と圧電性をもたない部分の比率が連続的に/段階的に変化するような構成となる。その結果、圧電性を示す部分の変位は段階的に低下して圧電性を示さない部分に繋がるので、応力は一点に集中するのではなく、緩和される。すなわち粒子と粒子の境界部での接合が強靭なものとなる。
またCaを主成分とするわけではないので、圧電性能を大きく損なうことなく接合強度を向上できる。
第4の発明は、有機ビヒクルと導電性卑金属材料、または有機ビヒクルと導電性卑金属材料とその酸化物を主成分とする電極用ペースト材料において、
上記導電性卑金属材料は、上記電極用ペースト材料を印刷する圧電セラミック層を構成するセラミック材料よりも、焼結温度における金属酸化物生成の標準ギブス自由エネルギーが大きく、
該電極用ペースト材料を上記圧電セラミック層となるセラミックシートに印刷し、少なくともその積層、圧着、脱脂、焼成を実施した時に、上記導電性卑金属材料の成分元素の上記圧電セラミック層での偏析が抑制されかつその成分元素自体も偏析しない効果をもつ強化物質が添加されていることを特徴とする電極用ペースト材料にある(請求項34)。
この電極用ペースト材料を用いた場合には、上記強化物質の存在により、焼成時に電極の偏析を抑制することができ、かつ、強化物質も偏析しない。これにより、得られた積層型圧電素子を変位させた際の耐久性が向上し、強靭な積層型圧電素子を得ることができる。
また、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に、上記導電性卑金属材料の酸化物と略同一の結晶構造をもつと同時に、その略同一の結晶構造をもつ導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い酸化物である成分元素であり、かつその強化物質の主成分が有機化合物であることが好ましい(請求項35)。
また、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に、上記圧電セラミック層を構成する材料と略同一の結晶構造をもつと同時に、その略同一の結晶構造をもつ圧電セラミック層を構成する材料よりも融点が高い酸化物である成分元素であり、かつその強化物質の主成分が有機化合物であることも好ましい(請求項36)。
また、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に、上記導電性卑金属材料の酸化物と上記圧電セラミック層を構成する材料との共晶物質と略同一の結晶構造をもつと同時に、その略同一の結晶構造をもつ共晶物質よりも融点が高い酸化物である成分元素であり、かつその強化物質の主成分が有機化合物であることも好ましい(請求項37)。
これらの電極用ペースト材料の主成分は、目的の電極用金属または/及びその酸化物と有機ビヒクルから構成されており、これに添加する強化物質は有機化合物であることが好ましい。
有機物と有機物は混ざりやすいため、混ざりにくさに起因する凝集は起こりにくく、有機物として混ぜ込んだ強化物質は分散性が向上し、焼成後に、強化物質として混ぜた物質の偏析は起こりにくい。
そして、上記3条件いずれの場合も、電極材料もしくはその一部と、セラミック材料もしくはその一部との、共晶反応もしくは共晶反応に伴う溶融の進行を、上記強化物質が物理的に阻害するため、セラミック層内での電極材料の偏析が抑制できる。
上記物理的阻害とは、共晶・溶融し得る電極材料もしくはその一部とセラミック材料もしくはその一部との間に、上記強化物質が介在する事により、反応させないという事が一つの現象として考えられる。
また、上記共晶反応もしくは共晶反応に伴う溶融の進行を妨げると、液相生成量の低下により、焼結していない/焼結が十分進行していないセラミック層内にある空洞部への共晶反応物質の流れ込みが防止されたり、液相生成の遅延により、セラミック層の焼結が進行しセラミック層内の空洞が低減されていることにより、溶融物質の浸透が一部に集中せず偏析を抑制することが考えられる。
次に、略同一の結晶構造とは、結晶構造の分類が同じであれば良く、格子定数、角度が異なっていてもよい。以下詳細は、請求項46の説明と同様に考えればよい。
上記略同一の結晶構造の物質は、相平衡図において完全固溶系の形となる可能性があり共晶物質のように、単独のときの融点よりも低温で溶融する現象は起こらない。その結果、上記偏析抑制の効果が発揮できる。
このとき、共晶物質ができないだけでなく、強化物質自体も溶融しないように、融点はそれぞれ対象とする材料よりも低くないことが前提である。
以上の説明においては、完全固溶系/共晶系の分類で記載したが、相平衡図の名称に拘りはなく、例えば複合系の相平衡図が対象外であるわけではなく、強化物質の添加により融点が低下せず、かつ共晶・溶融を抑制するものであれば良い。
また対象の物質と混ざらない事により、共晶・溶融を抑制しても何ら問題なく同効果と認める。
また、全ての添加物・構成材料において言えることであるが、材料により異なる数値ではあるが数十nmにもなると、量子サイズ効果が現れ、融点の低下が起こることが知られつつある。よって、極めて小さい粒子は故意に増加させないことが望ましい。
また、大きさの上限としては、十分焼結し各目的層の厚みより小さいことが望ましい
請求項36において、圧電セラミック層を構成する材料とは、主成分に限定するわけではなく、低温焼結助剤なども対象とし、共晶・溶融しやすい材料について考えればよい。
また、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に、上記導電性卑金属材料の酸化物と略同一の結晶構造をもつと同時に、その略同一の結晶構造をもつ導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い酸化物である成分元素であり、かつその強化物質が、共有結合性が強い化合物を主成分とすることも好ましい(請求項38)。
また、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に、上記圧電セラミック層を構成する材料と略同一の結晶構造をもつと同時に、その略同一の結晶構造をもつ圧電セラミック層を構成する材料よりも融点が高い酸化物である成分元素であり、かつその強化物質が、共有結合性が強い化合物を主成分とすることも好ましい(請求項39)。
また、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に、上記導電性卑金属材料の酸化物と上記圧電セラミック層を構成する材料との共晶物質と略同一の結晶構造をもつと同時に、その略同一の結晶構造をもつ共晶物質よりも融点が高い酸化物である成分元素であり、かつその強化物質が、共有結合性が強い化合物を主成分とすることも好ましい(請求項40)。
また、上記導電性卑金属材料の主成分がCu、NiもしくはCuとNiを含有する混合物、合金または化合物であることが好ましい(請求項41)。
この場合には、接合しやすくまた、導電性のよい電極層を得ることができる。
更に詳細に言うと、Cuのときは、圧電セラミック材料の還元を抑制しながら電極材料を還元するための雰囲気、例えば酸素分圧、水素分圧などの雰囲気の許容範囲が広く、分圧制御が比較的安易となる。
一方、NiのときにはNiの融点が高いために、比較的高温での焼成が可能となり、低温焼結の必要性が低下することに伴い、圧電セラミック材料の選択・検討範囲が広がる。結果、還元されにくい圧電材料を採用する事が可能となり還元焼成を安易とする事もでき、また性能のよりよい圧電材料の選択が可能となる。
また、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に岩塩型構造であることも好ましい(請求項42)。
すなわち、NiOが高温において岩塩型構造をとることから、上記強化物質は、酸化物となったときに岩塩型構造となる材料であることが好ましい。
また、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に赤銅鉱型構造であるか、もしくは単斜晶型構造であるかのいずれかであることも好ましい(請求項43)。
上記強化物質の成分元素は酸化物となった時に、電極層の主成分:導電性卑金属がCuのときには、その酸化物:CuOまたはCu2Oと同じ結晶構造であることが望ましい。
すなわち赤銅鉱型構造または単斜晶型構造であることが好ましい。
また、CaOが岩塩型構造であることから、上記強化物質の成分元素がCaであることが好ましい(請求項44)。
上述した成分元素のうち、共有結合性が強い材料とは、各結合部の両端の原子が、仮にイオン化されたときにマイナスイオンになりやすい原子とプラスイオンになりやすい原子とで構成され、価数の和がゼロとなるというイオン結合性の強い材料ではなく、価数が3、4、5で他端の原子と結合を共有しているとみなせば、結合子の和が8になるという構成の材料である。
共有結合性が強ければ、多少なりとも、主に共有結合からなる有機ビヒクルへの可溶性が高まり、分散性が向上する。その結果、偏析しない添加物になり得る。
その他の作用効果は有機化合物とした場合と同様である。
また、上記の成分元素Caを含む有機化合物としては、ジメトキシカルシウム、ジエトキシカルシウム、ジ−n−ブトキシカルシウム、ジ−i−プロポキシカルシウム、ジ−n−プロポキシカルシウム、ジ−i−ブトキシカルシウム、ジ−sec−ブトキシカルシウムのいずれかを挙げることができる(請求項45)。
上記の成分元素Caを含む有機化合物を添加して積層品を形成すると、新たに添加した有機物からも有機物が分解・脱離し気化して拡散するので、よりいっそうの電極部とセラミック部との界面の接合強化が必要となる。そのためにさらなる添加物として、セラミック層の材料と略同一の組成のセラミック材料を事前に電極用ペースト材料に添加すると良い。
すなわち、上記電極用ペースト材料は、セラミック層の材料と略同一の組成のセラミック材料を含有していることが好ましい(請求項46)。
ここで言う略同一の組成とは、セラミック層の材料とほぼ同様の結晶構造(例えば、ペロブスカイト構造であれば、格子定数、角度が異なってもよい)をもつ材料で、一部の構成元素が抜けていても、新たに加わっていてもよい。
さらに詳細に説明すると、結晶構造の名称分類が同じであればよく、結晶構造の格子定数、角度までも限定するわけではない。例えば、圧電材料の代表であるBaTiO3はペロブスカイト構造を有しており、同じペロブスカイト構造を有するPZT、SrTiO3他、同分類の結晶構造をもつ材料が多数ある。しかし、これらは結晶構造の格子定数、角度の違いにより、立方晶、正方晶、菱面体晶、斜方晶などに細分されている。例えば、立方晶や正方晶の違いを見ても格子の異方性は、格子定数の1,2%程度の違いしかなく、実質的には原子配置に大きな違いがある場合は少ない。
よって、細分された構造では限定せず、大分類で限定する。
当然のことながら、同分類であっても格子定数が10%も違うと結晶構造は壊れる可能性が高いので、5%以上違う場合は対象から除外する。
ただし抜ける構成元素は、不純物として、酸化物などの形で存在すると仮定した時に、電極層の導電性卑金属材料が酸化した際、その酸化物と共晶反応を起こしやすい元素であることが望ましい。
逆に新たに加わる構成元素は、不純物として酸化物などを形成していたりしても、電極層の導電性卑金属材料が酸化した際、その酸化物と共晶反応を起こす恐れのない材料であることが好ましい。
例えばセラミック材料がニオブ酸アルカリ化合物の場合、BサイトにNb以外の構成元素が加わってもよく、Aサイトにはセラミック材料を構成するアルカリ元素(たとえばNa,K)が任意の割合で変化してもよくまた構成元素の数も増減しても良い。
但しこれはBサイトがNbだけであるためにBサイトの構成元素を増加する例を挙げたが、セラミック材料のBサイトが複数あるときにはBサイトの構成元素は減っても良い。このときの増加させる構成元素は電極材料やセラミック材料と溶融しないような元素が好ましい。(減少させる構成元素はその逆である。ただし溶融に関与しない材料についてはなんら制約するものではない。)
以上、共晶反応を避けるように構成することが好ましいことを記したが、共晶反応が全く受け入れられないわけではなく、共晶反応により形成さる共晶物質の量が比較的少なければ良い。共晶物質の量の多い/少ないは、不純物の量と相平衡図での共晶点の組成比から計算でき、さらなる添加物の不純物は本来少ないものであることから、共晶点の組成比が90%であるために不純物の量の約10倍の共晶物質が形成されるような極端なもので無ければよい。
あくまで問題は電極層の導電性卑金属材料との共晶反応物質の量であるため、さらなる添加物の純度に依存することは言うまでもない。
また以上において、さらなる添加物を結晶構造・組成により限定したが、これを主成分としていて、電極層の導電性卑金属材料やセラミック材料、または導電性卑金属材料とセラミック材料の共晶物質と共晶・溶融反応を起こさない材料を副成分として含有していてもよいことは言うまでもない。
また、上記電極用ペースト材料は、Ni及びその酸化物の総量に対して、Niの酸化物のmol含有比率が3割以下であることが好ましい(請求項47)。
NiはHよりもイオン化傾向が強くまた酸化還元電位も低い傾向にある。その結果、例えばPZTを圧電セラミック層として用いた積層型圧電素子における電極材料としてCuを使用するときに、Cu及びCu酸化物からなる電極用ペースト材料を塗布して積層、圧着、脱脂後に、電極層を還元力の強いH2で還元して電極層の導電性を確保し、焼結させる製法がある。しかし、Niでは同様な構成・手順でH2で還元し導電性を確保しようとしても、還元能力が相対的に弱いために十分な還元状態を得られないことが考えられる。よって、Niを主成分とする電極層を形成する場合には、電極用ペースト材料中のNiの酸化物のmol含有比率が3割以下であることが必要である。Niが工程途中酸化されたとしても、最初から酸化Niを使用するよりは酸化状態の安定性が弱く、還元がある程度可能である。確実に導電性を確保するためにも上記含有比率にすることが必要である。
第5の発明は、圧電セラミック層と電極層とを交互に積層した積層型圧電素子を製造する方法において、セラミック材料をシート状に成形してなるセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に電極用ペースト材料を塗布する電極印刷工程と、
上記電極用ペースト材料が塗布されたセラミックグリーンシートを積層し圧着して積層体を作製する圧着工程と、
上記積層体を脱脂する脱脂工程と、
上記積層体を還元雰囲気にて焼成して積層型圧電素子を作製する焼成工程とを少なくとも有し、
上記電極用ペースト材料は、上記第4の発明の電極用ペースト材料を用いることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法にある(請求項48)。
本発明の製造方法は、上記の優れた第4の発明の電極用ペースト材料を用いる。そのため、次のような優れた作用効果が得られる。
すなわち、還元焼成において、高温では、所望の酸素分圧に調整・制御するなど、酸化・還元力のあるガスを調整・制御し続けて、セラミック材料は酸化物に、電極材料は金属に維持しなければならない。
電極材料が極端に酸化されると導電性が低下し電極として機能しなくなる。また、酸化された電極材料はセラミック層の材料(酸化物)と共晶反応を起こして溶融し、電極材料がセラミック層に拡散して偏析する。その結果、電極を何らかの方法で金属に戻して導電性を回復したとしても、セラミック層を変位させた時に、セラミック層内の偏析した電極材料が圧電性をもたないために変位せず、偏析した電極材料の周りに応力が集中するため耐久性が悪い。また電極材料の拡散により電極層の電極材料が少なくなり電極途切れが起こるという問題もある。
一方、セラミック材料が極度に還元されると、圧電性能が低下することはもとより絶縁抵抗値が低下し、圧電セラミック層上下の電極層により形成される電位差を無くして導通してしまう。また還元されたセラミック材料構成物と電極材料とが共晶反応を起こして溶融し、電極材料がセラミック層に拡散して偏析し、上記同様に問題である。
この問題を解決するために、還元焼成雰囲気が所望の条件から酸化側に多少振れたとしても、導電性卑金属材料の成分元素のセラミック層での偏析が抑制される、強化物質を電極用ペースト材料に添加しておけば、還元雰囲気調整の許容範囲が広がり、雰囲気調整が安易となる。
このとき、電極材料の拡散・偏析を抑制することにより、電極途切れについては完全に問題解決するが、セラミック層内の、圧電性能をもたない材料の偏析による耐久性への影響については、電極材料だけでなく、電極材料のセラミック層内での偏析抑制のために添加した材料についても必要であり、有機物の構造もしくは構成で/または共有結合性の強い材料で、強化物質を添加することにより解決する。
(実施例1)
本発明の実施例に係る積層型圧電素子について説明する。
鉛を含まないKNbO3系材料(Aサイト、Bサイト共に置換物あり)からなるセラミックシートに電極用ペースト材料を印刷し乾燥させて、積層、圧着、脱脂の後、N2雰囲気で焼成し、図2に示すごとく、圧電セラミック層10と電極層2とが交互に積層された六層積層品よりなる積層型圧電素子1を作製した。そして、電極用ペースト材料内の構成を変えて複数のサンプルを作製し、還元力の弱いN2雰囲気での焼成により電極の拡散・偏析状況を比較した。なお、各工程の詳細は後述する。
電極用ペースト材料は、母材を共通とし、これに添加する添加物の種類及び量を変えて複数の試料(実施例サンプルE1〜E5と比較例サンプルC1、C2)を作製した。
表1には母材の構成を、表2には各試料に添加した添加物の詳細を示した。
Figure 2006108652
Figure 2006108652
(積層型圧電素子の製造方法)
セラミック材料をシート状に成形してなるグリーンシートを、ドクターブレード法を用いて作製した。
先ず、セラミック層の圧電材料の構成元素を含む酸化物もしくは炭酸化合物の粉末をそれぞれ用意する。本案では、MgO、K2CO3、Na2CO3、Nb25等の粉末を用意する。そしてこれら原料粉末を所望の組成となるように秤量し調合する。これを混合機にて乾式混合し、その後800〜1000℃で仮焼する。
次いで、仮焼粉に純水、分散剤を加えてスラリーとし、パールミルにより湿式粉砕する。この粉砕物を乾燥、粉脱脂した後、溶剤、バインダー、可塑剤、分散剤などを加えてボールミルにより混合する。その後、このスラリーを真空装置内で攪拌機により攪拌しながら真空脱泡、粘度調整をする。
次いで、スラリーをドクターブレード装置により一定厚みのグリーンシートに成形する。回収したグリーンシートはプレス機で打ち抜くか、切断機により切断し、所定の大きさの矩形体に成形する。
一方、上記電極用ペースト材料は、次のようにして準備する。
エチルセルロースをテルピネオールで溶解してなる有機ビヒクル{樹脂材(アクリル系樹脂、アラキド樹脂、エトセル系樹脂等)含む}に、Ni粉{住友金属鉱山(株)製、SNP−YH6}及びNiO粉(平均粒径1〜2μm、粒度分布範囲:0.2μm〜5μmの材料)を、表1に示すような配合割合となるように混練して母材を作製し、各々表2に従い添加物を入れて十分混ぜ、電極用ペースト材料を作製した。
次に、各々所望の電極用ペースト材料を、成形後の5枚のグリーンシートの一方の表面にパターンをスクリーン印刷成形する。なお、本例では、印刷厚みは20μmとした。次に、図1に示すごとく、電極用ペースト材料を印刷していないグリーンシートを加えて6枚のグリーンシートを積層する。このとき電極用ペースト材料を印刷したグリーンシートは5枚とも印刷面を同方向として積層し、印刷面が外部に出ている所に、電極用ペースト材料を印刷していないグリーンシートを積層する。
またこのとき、電極用ペースト材料は、予めグリーンシートの少なくとも一つの側面には到達しないように印刷しておき、積層時に、電極用ペースト材料の印刷が到達していない側面が左右交互に来るように、すなわち電極用ペースト材料が交互に左右の側面に到達するように積層した。
そして、上記にて得られた積層体をそれぞれ圧着治具に固定し、温度110℃にて1分間16MPaの圧力にて熱圧着した。熱圧着した積層体は、シートカッターにて縦9mm、横9mmの大きさに切断し、その後、常温において、7.8MPaの加圧力で積層方向に加圧して平坦化を行った。
次に、この積層品を気体循環式脱脂炉中に入れ、温度550℃で10時間加熱して大気中に放置させることにより脱脂した後、N2雰囲気で焼成した。焼成温度は1250℃度として8時間焼成した。
次に上記のようにして得た六層積層品よりなる積層型圧電素子1(図2)を、積層品の中心部を通りかつシートの面に垂直な平面で切断し、断面の5点を700倍に拡大しEPMA分析をした。
700倍の面、5点につき、成分元素NiとCaの分布(分布範囲・位置と分布した点での分布量)を測定した。
この結果を図3〜図8に示す(何れも積層方向は左右となっている。)。
比較サンプルC1では、図7に示すごとく、Niが電極層から多量に染み出し、セラミック層内にNiが偏析している(CaCO3:2wt%添加)。
比較サンプルC2では、図8に示すごとく、Niのセラミック層内での偏析はないものの、添加量を2wt%から5wt%に増加したCaCO3の中に含まれる、成分元素:Caが偏析している。
これに対し、図3〜図6に示すごとく、Ca原子の量が、上記比較サンプルC1、C2と同量となるように換算し添加した、実施例サンプルE1〜E4では、成分元素:Ni、Caともに偏析が見られなかった。また成分元素:Caについては電極層内、セラミック層内それぞれ比較的均一に分布していた。
(実施例2)
実施例1と同様の工程で以下に示すサンプルを作製し、実施例1の実施例サンプルE1〜E4との収縮率の比較を実施した。
<実施例サンプルE21>
実施例サンプルE1の電極用ペースト材料にセラミック材料を5wt%添加したものである。他の構成、工程は全て実施例サンプルE1と同じ。(なお、ここでいうセラミック材料は、シートに使用した材料と同じである。以下E34まで同じ)
<実施例サンプルE22>
実施例サンプルE2の電極用ペースト材料にセラミック材料を5wt%添加したものである。他の構成、工程は全て実施例サンプルE2と同じ。
<実施例サンプルE23>
実施例サンプルE3の電極用ペースト材料にセラミック材料を5wt%添加したものである。他の構成、工程は全て実施例サンプルE3と同じ。
<実施例サンプルE24>
実施例サンプルE4の電極用ペースト材料にセラミック材料を5wt%添加したものである。他の構成、工程は全て実施例サンプルE4と同じ。
<実施例サンプルE31>
実施例サンプルE1の電極用ペースト材料にセラミック材料を10wt%添加したものである。他の構成、工程は全て実施例サンプルE1と同じ。
<実施例サンプルE32>
実施例サンプルE2の電極用ペースト材料にセラミック材料を10wt%添加したものである。他の構成、工程は全て実施例サンプルE2と同じ。
<実施例サンプルE33>
実施例サンプルE3の電極用ペースト材料にセラミック材料を10wt%添加したものである。他の構成、工程は全て実施例サンプルE3と同じ。
<実施例サンプルE34>
実施例サンプルE4の電極用ペースト材料にセラミック材料を10wt%添加したものである。他の構成、工程は全て実施例サンプルE4と同じ。
<実施例サンプルE41>
実施例サンプルE1の電極用ペースト材料にセラミック材料2を5wt%添加したものである。他の構成、工程は全て実施例サンプルE1と同じ。(ここでいうセラミック材料2は、単一物質:KNbO3である。)
<試験結果>
焼成前は何れも一辺9mmであったのに対し、以下のように変化した。その結果を表3に示す。
Figure 2006108652
表3から知られるように、実施例サンプルE21〜E24、E31〜E34、E41は、いずれも実施例サンプルE1〜E4よりも焼成後の長さは短く、焼結性の良いサンプルが得られた。
なお、焼結時には、電極とセラミック層界面の反応→電極の収縮/セラミックの収縮の順に反応が起こるため、界面剥離ではなく、セラミック層の収縮性に違いが出たと考えられる。
表3から知られるように、実施例サンプルE21〜E24、E31〜E34、E41は、いずれも実施例サンプルE1〜E4よりも焼成後の長さは短く、焼結性の良いサンプルが得られた。
なお、焼結時には、電極とセラミック層界面の反応→電極の収縮/セラミックの収縮の順に反応が起こるため、界面剥離ではなく、セラミック層の収縮性に違いが出たと考えられる。
実施例1における、圧電セラミック層の積層構造を示す説明図。 実施例1における、積層型圧電素子を示す説明図。 実施例1における、サンプルE1の元素NiとCaの分布を示す説明図。 実施例1における、サンプルE2の元素NiとCaの分布を示す説明図。 実施例1における、サンプルE3の元素NiとCaの分布を示す説明図。 実施例1における、サンプルE4の元素NiとCaの分布を示す説明図。 実施例1における、サンプルC1の元素NiとCaの分布を示す説明図。 実施例1における、サンプルC2の元素NiとCaの分布を示す説明図。 実施例1における、サンプルE5の元素CuとPdの分布を示す説明図
符号の説明
1 積層型圧電素子
10 圧電セラミック層
2 電極層

Claims (48)

  1. 圧電セラミック層と電極層とを交互に積層した積層型圧電素子において、
    上記圧電セラミック層は、主成分としてニオブ酸アルカリ化合物を含有し、上記電極層は主成分として導電性卑金属材料を含有していることを特徴とする積層型圧電素子。
  2. 請求項1において、上記導電性卑金属材料は、上記圧電セラミック層を構成するセラミック材料よりも、焼結温度における金属酸化物生成の標準ギブス自由エネルギーが大きいことを特徴とする積層型圧電素子。
  3. 請求項1又は2において、上記電極層と上記圧電セラミック層との境界部近傍には、上記電極層と上記圧電セラミック層の接合強度を向上させるための強化物質もしくはその構成元素が分布していることを特徴とする積層型圧電素子。
  4. 請求項3において、上記強化物質もしくはその構成元素は、上記圧電セラミック層を構成する材料と共存した場合に、その融点を低下させない材料からなる/もしくはその融点を低下させない材料を構成する元素であることを特徴とする積層型圧電素子。
  5. 請求項3において、上記強化物質もしくはその構成元素は、上記電極層を構成する導電性卑金属材料またはその酸化物と共存した場合に、その融点を低下させない材料からなる/もしくはその融点を低下させない材料を構成する元素であることを特徴とする積層型圧電素子。
  6. 請求項3において、上記強化物質もしくはその構成元素は、上記圧電セラミック層を構成する材料と上記電極層を構成する導電性卑金属材料またはその酸化物とだけを焼成をした場合に構成される共晶物質と共存した場合に、その融点を低下させない材料からなる/もしくはその融点を低下させない材料を構成する元素であることを特徴とする積層型圧電素子。
  7. 請求項4において、上記強化物質もしくはその構成元素は、酸化物となったときに、圧電セラミック層を構成する材料と略同一の結晶構造であると共に、上記セラミック材料の主成分より融点が高い材料からなることを特徴とする積層型圧電素子。
  8. 請求項5において、上記強化物質もしくはその構成元素は、酸化物となったときに、上記電極層を構成する導電性卑金属材料の酸化物と略同一の結晶構造であると共に、その略同一の結晶構造をもつ導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い材料からなることを特徴とする積層型圧電素子。
  9. 請求項6において、上記強化物質もしくはその構成元素は、酸化物となったときに、上記圧電セラミック層を構成するセラミック材料と上記電極層を構成する導電性卑金属材料またはその酸化物とだけでの焼成をした場合に構成される共晶物質と略同一の結晶構造をもつと同時に、該共晶物質よりも融点が高いことを特徴とする積層型圧電素子。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項において、上記導電性卑金属材料はCuもしくはCuとNiを含有する混合物、合金又は化合物であることを特徴とする積層型圧電素子。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項において、上記導電性卑金属材料はNiもしくは、Niを含有する混合物、もしくはNiの比率が高い合金又は化合物であることを特徴とする積層型圧電素子。
  12. 請求項11において、上記電極層と上記圧電セラミック層との境界部近傍には、上記電極層と上記圧電セラミック層の接合強度を向上させるための強化物質が分布しており、該強化物質もしくはその構成元素は、酸化物となったときに岩塩型構造であることを特徴とする積層型圧電素子。
  13. 請求項12において、上記電極層と上記圧電セラミック層との境界部近傍には、上記電極層と上記圧電セラミック層の接合強度を向上させるための強化物質が分布しており、該強化物質もしくはその構成元素は、酸化物となったときに赤銅鉱型構造または単斜晶型構造であることを特徴とする積層型圧電素子。
  14. 請求項12において、上記強化物質の構成元素に、少なくともCaがあることを特徴とする積層型圧電素子。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項において、向かい合って電位差を形成し得る電極の間に電極材料の偏析がないことを特徴とする積層型圧電素子。
  16. 圧電セラミック層と電極層とを交互に積層した積層型圧電素子を製造する方法において、
    ニオブ酸アルカリ化合物を上記圧電セラミック層の主成分として使用することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  17. 請求項16において、電極用ペースト材料の主成分として導電性卑金属材料もしくは導電性卑金属材料およびその酸化物を使用することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  18. 請求項17において、上記導電性卑金属材料は、CuもしくはCuとNiを含有する混合物、合金又は化合物であることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  19. 請求項17において、上記導電性卑金属材料は、Niもしくは、Niを含有する混合物、もしくはNiの比率が高い合金又は化合物であることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  20. 請求項16〜19のいずれか1項において、上記電極用ペースト材料には、上記圧電セラミック層を構成する材料と共存した場合に、その融点を低下させない材料を含有していることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  21. 請求項16〜19のいずれか1項において、上記電極用ペースト材料には、上記電極層を構成する導電性卑金属材料またはその酸化物と共存した場合に、その融点を低下させない材料を含有していることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  22. 請求項16〜19のいずれか1項において、上記電極用ペースト材料には、上記圧電セラミック層を構成する材料と上記電極層を構成する導電性卑金属材料またはその酸化物とだけを焼成した時に構成される共晶物質と共存した場合に、その融点を低下させない材料を含有していることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  23. 請求項20において、上記電極用ペースト材料には、上記圧電セラミック層を構成する材料と略同一の結晶構造であると共に、その略同一の結晶構造をもつ材料よりも融点が高い材料を含有していることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  24. 請求項21において、上記電極用ペースト材料には、上記電極層を構成する導電性卑金属材料の酸化物と略同一の結晶構造を有し、かつその略同一の結晶構造をもつ導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い材料を含有していることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  25. 請求項22において、上記電極用ペースト材料には、上記圧電セラミック層を構成する材料と上記電極層を構成する導電性卑金属材料またはその酸化物とだけを焼成した時に構成される共晶物質と略同一の結晶構造を有し、かつその略同一の結晶構造をもつ共晶物質よりも融点が高い材料を含有していることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  26. 請求項19、21、24のいずれか1項において、上記電極用ペースト材料には、岩塩型構造をもち、かつ上記電極層を構成する導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い材料を含有していることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  27. 請求項18、21、24のいずれか1項において、上記電極用ペースト材料には、赤銅鉱型構造もしくは単斜晶型構造をもち、かつ上記電極層を構成する導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い材料を含有していることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  28. 請求項26において、岩塩型構造をもちかつ上記電極層を構成する導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い材料がCaOであることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  29. 圧電セラミック層と電極層とを交互に積層した積層型圧電素子において、
    上記電極層は主成分として導電性卑金属電極材料を含有し、
    上記セラミック層各層の上部に位置する上記電極層と下部に位置する電極層に挟まれた挟持領域には、圧電性を持たない材料の構成元素が、最も多くの場所で分布するゼロでない分布強度の2倍を越える分布強度に至る局所分布を持たないように、均一に分散していることを特徴とする積層型圧電素子。
  30. 請求項29において、上記導電性卑金属材料は、上記圧電セラミック層を構成するセラミック材料よりも、焼結温度における金属酸化物生成の標準ギブス自由エネルギーが大きいことを特徴とする積層型圧電素子。
  31. 請求項30において、上記セラミック層各層の上記挟持領域には、上記電極層を構成する導電性卑金属材料の成分元素を含む化合物の偏析がないことを特徴とする積層型圧電素子。
  32. 請求項29〜31において、上記電極層を構成する導電性卑金属材料の主成分がCu、NiもしくはCuとNiを含有する混合物、合金または化合物であることを特徴とする積層型圧電素子。
  33. 請求項29〜32のいずれか1項において、上記狭持領域に均一分散している上記圧電性をもたない材料の構成元素がCaであることを特徴とする積層型圧電素子。
  34. 導電性卑金属材料とその酸化物を主成分とする電極用ペースト材料において、
    上記導電性卑金属材料は、上記電極用ペースト材料を印刷する圧電セラミック層を構成するセラミック材料よりも、焼結温度における金属酸化物生成の標準ギブス自由エネルギーが大きく、
    該電極用ペースト材料を上記圧電セラミック層となるセラミックシートに印刷し、少なくともその積層、圧着、脱脂、焼成を実施した時に、上記導電性卑金属材料の成分元素の上記圧電セラミック層での偏析が抑制されかつその成分元素自体も偏析しない効果をもつ強化物質が添加されていることを特徴とする電極用ペースト材料。
  35. 請求項34において、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に、上記導電性卑金属材料の酸化物と略同一の結晶構造をもつと同時に、その略同一の結晶構造をもつ導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い酸化物である成分元素であり、かつその強化物質の主成分が有機化合物であることを特徴とする電極用ペースト材料。
  36. 請求項34において、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に、上記圧電セラミック層を構成する材料と略同一の結晶構造をもつと同時に、その略同一の結晶構造をもつ圧電セラミック層を構成する材料よりも融点が高い酸化物である成分元素であり、かつその強化物質の主成分が有機化合物であることを特徴とする電極用ペースト材料。
  37. 請求項34において、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に、上記導電性卑金属材料の酸化物と上記圧電セラミック層を構成する材料との共晶物質と略同一の結晶構造をもつと同時に、その略同一の結晶構造をもつ共晶物質よりも融点が高い酸化物である成分元素であり、かつその強化物質の主成分が有機化合物であることを特徴とする電極用ペースト材料。
  38. 請求項34において、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に、上記導電性卑金属材料の酸化物と略同一の結晶構造をもつと同時に、その略同一の結晶構造をもつ導電性卑金属材料の酸化物よりも融点が高い酸化物である成分元素であり、かつその強化物質が、共有結合性が強い化合物を主成分とすることを特徴とする電極用ペースト材料。
  39. 請求項34において、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に、上記圧電セラミック層を構成する材料と略同一の結晶構造をもつと同時に、その略同一の結晶構造をもつ圧電セラミック層を構成する材料よりも融点が高い酸化物である成分元素であり、かつその強化物質が、共有結合性が強い化合物を主成分とすることを特徴とする電極用ペースト材料。
  40. 請求項34において、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に、上記導電性卑金属材料の酸化物と上記圧電セラミック層を構成する材料との共晶物質と略同一の結晶構造をもつと同時に、その略同一の結晶構造をもつ共晶物質よりも融点が高い酸化物である成分元素であり、かつその強化物質が、共有結合性が強い化合物を主成分とすることを特徴とする電極用ペースト材料。
  41. 請求項35〜40のいずれか1項において、上記導電性卑金属材料の主成分がCu、NiもしくはCuとNiを含有する混合物、合金または化合物であることを特徴とする電極用ペースト材料。
  42. 請求項35、38又は41のいずれか1項において、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に岩塩型構造であることを特徴とする電極用ペースト材料。
  43. 請求項35、38又は41のいずれか1項において、上記強化物質の成分元素が、酸化物となった時に赤銅鉱型構造であるか、もしくは単斜晶型構造であるかのいずれかであることを特徴とする電極用ペースト材料。
  44. 請求項42において、上記強化物質の成分元素がCaであることを特徴とする電極用ペースト材料。
  45. 請求項44において、成分元素Caを含む有機化合物が、ジメトキシカルシウム、ジエトキシカルシウム、ジ−n−ブトキシカルシウム、ジ−i−プロポキシカルシウム、ジ−n−プロポキシカルシウム、ジ−i−ブトキシカルシウム、ジ−sec−ブトキシカルシウムのいずれかであることを特徴とする電極用ペースト材料。
  46. 請求項34〜45のいずれか1項において、上記電極用ペースト材料は、セラミック層の材料と略同一の組成のセラミック材料を含有していることを特徴とする電極用ペースト材料。
  47. 請求項41、42、44、45のいずれか一項において、Ni及びその酸化物の総量に対して、Niの酸化物のmol含有比率が3割以下であることを特徴とする電極用ペースト材料。
  48. 圧電セラミック層と電極層とを交互に積層した積層型圧電素子を製造する方法において、
    セラミック材料をシート状に成形してなるセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に電極用ペースト材料を塗布する電極印刷工程と、
    上記電極用ペースト材料が塗布されたセラミックグリーンシートを積層し圧着して積層体を作製する圧着工程と、
    上記積層体を脱脂する脱脂工程と、
    上記積層体を還元雰囲気にて焼成して積層型圧電素子を作製する焼成工程とを少なくとも有し、
    上記電極用ペースト材料は、請求項34〜47のいずれか1項に記載の電極用ペースト材料を用いることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
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