JP2009156657A - 自動固相前処理装置及び試料水の固相前処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固相カートリッジ20により試料水に含まれる微量成分を濃縮する自動固相前処理装置であって、試料水を収容する試料容器10と、微量成分を保持する固相カートリッジ20と、試料容器10の試料水を固相カートリッジ20に送液する送液システム30とがこの順で備えられていることを特徴とする自動固相前処理装置1。また、自動固相前処理装置1を用いた固相前処理方法。
【選択図】図1
Description
前処理装置101は、試料容器110と送液システム120と固相カートリッジ130とがこの順に備えられている。送液システム120は、シリンジ121と流路122とバルブ123からなっている。試料容器110と送液システム120の間に流路141が設けられており、バルブ123の部分から流路122と流路142とに分岐している。流路122のバルブ123と逆側の端にシリンジ121が接続されている。また、流路142のバルブ123と逆側の端には固相カートリッジ130が接続されており、固相カートリッジ130の流路142と逆側には流路143が設けられている。
試料容器110に試料水を収容し、バルブ123により流路141と流路122とを接続した状態で試料水をシリンジ121内に引き込む。ついで、バルブ123を切り替えて流路122と流路142とを接続し、シリンジ121を押し込むことによりシリンジ121内に引き込んだ試料水を固相カートリッジ130へと送液する。これにより試料水が固相カートリッジ130に通液され、試料水に含まれる微量成分が固相カートリッジ130内に保持される。固相カートリッジ130を通過した試料水は、流路143を通って廃棄される。
このようにして、試料水中の微量成分を固相カートリッジ130内に濃縮することができる。しかし、前処理装置101を用いる前処理方法では、試料水中の微量成分の回収率が低下し、分析の信頼性が低くなることがあった。
不純物分離装置201は、複数の小型の試料容器210と、試料容器210それぞれに対応する固相ディスク220と、廃液タンク230とを有しており、廃液タンク230に減圧ポンプ240が備え付けられている。
不純物分離装置201では、減圧ポンプ240により廃液タンク230内を減圧下に保つことで、試料容器210内に収容した試料を固相ディスク220に通液させる。これにより、試料中の目的物質が固相ディスク220に保持され、不純物が廃液タンク230へと分離される。
しかし、このような不純物分離装置201によって各固相ディスク220に定流量で送液するのは困難であり、試料水中の微量成分の濃縮に用いると微量成分の回収率が低くなる。また、この不純物分離装置201では、固相ディスク220に保持した目的物質を溶出する際には、別の溶出装置に固相ディスク220を付け替える必要がある。また、それぞれの試料容器210の容量が大きくないため、試料が多量にある場合には試料を試料容器210に継ぎ足す工程が必要となるか、もしくは別途システムを接続する必要があり、操作が煩雑となる。
そこで本発明は、固相カートリッジを用いて試料水中の微量成分を濃縮する装置として、高い回収率で濃縮することができ、また濃縮操作を簡便に行うことのできる自動固相前処理装置を目的とする。
また、本発明は、高い回収率で簡便に試料水中の微量成分を濃縮できる固相前処理方法を目的とする。
また、本発明の自動固相前処理装置は、さらに、固相カートリッジに保持させた微量成分をより溶出する溶出システムと、溶出された溶出液を濃縮する濃縮システムとを備えた装置であることが好ましい。
また、前記固相カートリッジにおける試料水が導入される開口径が、試料水が排出される開口径と同じであることが好ましい。
また、本発明の試料水の固相前処理方法は、前記試料水が超純水、回収水、環境水、又は工場排水であることが好ましい。
また、前記微量成分が、有機アミン類及び/又はベンゼン環を有するアルコール類を含む有機化合物であることが好ましい。
また、本発明の方法によれば、高い回収率で、簡便に試料水中の微量成分を濃縮できる。
有機アミン類としては、直鎖型有機アミン類が挙げられ、具体的には、炭化水素アミン等が挙げられる。
また、ベンゼン環を有するアルコール類としては、例えば、フェノール類等が挙げられる。
以下、本発明の自動固相前処理装置の一実施形態例について、図1〜2に基づいて詳細に説明する。
本発明の自動固相前処理装置1(以下、前処理装置1という)は、試料容器10と、固相カートリッジ20と、送液システム30とがこの順序で備えてられている。また、前処理装置1は、溶出システム40と、送気システム50と、濃縮システム60とを備えている。
また、固相カートリッジ20の、試料水が排出される開口20b側には流路71が設けられており、その流路71の他方の端にはバルブ81が設置され、流路72と流路73とに分岐している。
流路72のバルブ81と逆側の端には、バルブ82が設けられており、流路74と流路75とに分岐している。流路74のバルブ82と逆側の端には、バルブ83が設けられており、流路74aと流路74bとに分岐している。
流路74aのバルブ83と逆側の端は、送気システム50に接続されている。
流路74bのバルブ83と逆側の端は、濃縮システム60に接続されている。
また、バルブ33には流路76も設けられている。
試料容器10の材質は、試料水中の微量成分の内壁への吸着が抑えられているものがよく、例えば、ガラス等が挙げられる。
また、試料容器10の形状も特に限定されないが、例えば、図2に示すように、底部側に円錐形の傾斜部分11が設けられており、その中央部分に目盛りを有する凹部12が形成されている形状が挙げられる。このような形状とすれば、固相カートリッジ20に保持させた微量成分を試料容器10に再度溶出させる場合に、溶出液が傾斜部分11を伝わって凹部12へと集まり、目盛りにより溶出液の量を判断することにより濃縮の度合いを確認しやすくなる。
固相カートリッジ20の充填剤としては、試料水中の微量成分分析の前処理に通常用いられるものが使用でき、目的の微量成分に応じたシリカベースの充填剤、キレート剤等が挙げられる。具体例としては、C18充填剤等が挙げられる。
シリンジ31a、31bは、固相前処理装置に通常用いられるガラス製のシリンジが使用できる。
溶出システム40には、固相カートリッジ20に保持した微量成分を溶出させることのできる溶出液が収容されており、溶出液を固相カートリッジ20に送液することにより、微量成分を試料容器10内へと溶出させることができる。また、溶出システム40は、固相カートリッジ20に溶出液を定流量で送液できるシステムを用いることができる。
溶出システム40による固相カートリッジ20に保持した微量成分の溶出は、試料水よりも少ない量の溶出液で行うことにより、目的の微量成分が濃縮された溶出液を得ることができる。
溶出システム40により溶出液を固相カートリッジ20に送液した後、送気システム50により空気を固相カートリッジ20へと送ることにより、固相カートリッジ20内に残った溶出液を試料容器10内に押し出すことができる。
前処理装置1が送気システム50を備えることにより、固相カートリッジ20内に残った溶出液が充分に排出されるので回収率が向上し、また溶出液量が低減できるので濃縮倍率が向上する。
また、試料容器10と固相カートリッジ20と送液システム30とを備え、溶出システム40、送気システム50、濃縮システム60を備えていなくてもよい。
また、送液システム30が有するシリンジが1本であってもよく、定流量ポンプであっても構わない。
本発明の試料水の固相前処理方法は、固相カートリッジにより試料水に含まれる微量成分を濃縮する方法であって、前述の自動固相前処理装置を用いて、試料容器の試料水を送液システムに通過させずに、かつ定流量で固相カートリッジに通液することを特徴とする方法である。
本実施形態例における固相前処理方法は、まず試料容器10に収容した試料水を固相カートリッジ20に通液して(工程(1))、固相カートリッジ20を乾燥した後(工程(2))、固相カートリッジ20に保持した微量成分を試料容器10に溶出する(工程(3))。ついで、固相カートリッジ20に残った溶出液を試料容器10に押し出した(工程(4))後に、試料容器10内において溶出液を気化させてさらに濃縮する(工程(5))。
すなわち、流路71、72、75、32a、32b、及びシリンジ31b内に超純水等の液体が充填された状態で、シリンジ31a内に該液体を引き込むことにより、試料容器10内の試料水を固相カートリッジ20へと送液する。それと同時にシリンジ31b内にある液体を流路76から排出させる。ついで、バルブ33を切り替えて、流路32aと流路76、流路32bと流路75とを接続して、シリンジ31b内に液体を引き込むのと同時にシリンジ31a内の液体を流路76から排出する。このように、バルブ33を切り替えながらシリンジ31aとシリンジ31bによる液体の引き込みと排出を連続的に交互に行い、試料水の液面に合わせてオートステージ21により固相カートリッジ20と流路22を下方に移動させていくことにより、試料容器10の試料水を固相カートリッジ20に定流量で通液させることができる。
工程(1)の送液により、試料水中の微量成分が固相カートリッジ20に保持される。
試料水の流量は、微量成分の濃度や、固相カートリッジの種類によっても異なるが、5〜20mL/分程度に保たれることが好ましい。試料水の流量を前記範囲内で一定に保つことにより、微量成分の回収率が向上する。
具体的には、オートステージ21により固相カートリッジ20と流路22とを上方に移動させる(流路22の先端が試料容器10の底部から離れる程度。例えば、約3cm程度離す。)。そして、バルブ82とバルブ83の切り替えにより、流路71、流路72、流路74、流路74bを接続し、濃縮システム60より窒素ガスを固相カートリッジ20に送る。窒素ガスの送気は、固相カートリッジ20が充分に乾燥するまで行えばよい。
溶出液の流量は、微量成分の濃度や、固相カートリッジ、溶出液の種類によっても異なるが、0.5〜1mL/分程度に保たれることが好ましい。溶出液の流量を前記範囲内で一定に保つことにより、固相カートリッジ20に保持された微量成分を全て溶出液中に抽出させることが容易になる。
以上説明した固相前処理方法により、試料水中の微量成分を濃縮された溶出液が得られる。
また、本発明の固相前処理方法は、工程(1)と工程(2)以降を別の装置で行うようにしてもよい。
これは、本発明の自動固相前処理装置が試料容器と固相カートリッジと送液システムとをこの順で備えており、試料容器中の試料水を送液システムに通過させることなく固相カートリッジに送液できるため、送液システム内(例えば、シリンジ内)に微量成分が吸着してしまうことを防ぐことができるためであると考えられる。また、試料容器と固相カートリッジとの間に送液システムを介さないことで、試料容器と固相カートリッジとの間の流路を短くすることもでき、流路への微量成分の吸着も抑えられると考えられる。
また、本発明の固相前処理方法では、固相カートリッジに試料水を定流量で通液させることができるため、固相カートリッジへの微量成分の保持効率、固相カートリッジからの微量成分の溶出効率が高くなり、回収率が良好になると考えられる。
また、図4に例示したような不純物分離装置201では、廃液タンク230を減圧することにより全ての固相ディスク220における通液の流量を一定に保つことが困難であるため、微量成分の濃縮に用いた場合には回収率が低下してしまうと考えられる。
また、本発明の前処理方法では、固相カートリッジ20の開口20a側から試料水を導入して微量成分を保持させ、開口20b側から溶出液を導入して保持させた微量成分を溶出するバックフラッシュ方式を採用することで、固相カートリッジ20を別の装置に付け替えることなく溶出が行える簡便な方法とすることができる。
また、固相カートリッジ20への微量成分の保持は、試料水を適切な流量で一定に保てば充填剤のうち開口20a側に集中するため、バックフラッシュ方式を採用することにより回収率が向上するという効果も得られる。
[実施例1]
図1に例示した自動固相前処理装置を用いた試料水の微量成分の濃縮について説明する。
試料液として、超純水(100mL)に直鎖型有機アミンを1.0ppb含有させた溶液を用いた。また、固相カートリッジ20としては、商品名C18 Sep−Pak(Waters社製)を用いた。
ついで、バルブ33を切り替えながらシリンジ31aとシリンジ31bによる液体の引き込みと排出を連続的に交互に行い、試料水の液面に合わせてオートステージ21により固相カートリッジ20と流路22を下方に移動させていくことにより、試料容器10の試料水を固相カートリッジ20に定流量(20mL/分)で全量を通液させた。
試料液及び固相カートリッジは実施例1と同じものを使用し、図3に例示した固相前処理装置101を用いて試料水の微量成分の濃縮を行った。
バルブ141aを切り替えながらシリンジ120による液体の引き込みと排出を連続的に行い、試料容器110の試料水全量を固相カートリッ130に通液させた。ついで、固相カートリッジ130を充分に乾燥した。
一方、従来の前処理装置である比較例1では、実施例1に比べて回収率が劣っていた。
Claims (6)
- 試料水を固相カートリッジに通液して、試料水に含まれる微量成分を濃縮する自動固相前処理装置であって、
試料水を収容する試料容器と、微量成分を保持する固相カートリッジと、前記試料容器の試料水を固相カートリッジに送液する送液システムとがこの順で備えられていることを特徴とする自動固相前処理装置。 - さらに、固相カートリッジに保持させた微量成分を溶出する溶出システムと、溶出された溶出液を濃縮する濃縮システムとを備えた、請求項1に記載の自動固相前処理装置。
- 前記固相カートリッジにおける試料水が導入される開口径が、試料水が排出される開口径と同じである、請求項1又は2に記載の自動固相前処理装置。
- 固相カートリッジにより試料水に含まれる微量成分を濃縮する方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載の自動固相前処理装置を用いて、前記試料容器の試料水を送液システムに通過させずに、かつ定流量で固相カートリッジに通液することを特徴とする試料水の固相前処理方法。
- 前記試料水が超純水、回収水、環境水、又は工場排水である、請求項4に記載の試料水の固相前処理方法。
- 前記微量成分が、有機アミン類及び/又はベンゼン環を有するアルコール類を含む有機化合物である、請求項4又は5に記載の試料水の固相前処理方法。
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