JP2009156657A - 自動固相前処理装置及び試料水の固相前処理方法 - Google Patents

自動固相前処理装置及び試料水の固相前処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】固相カートリッジを用いて、高い回収率で試料水中の微量成分を濃縮することができ、また濃縮操作を自動で行うことのできる自動固相前処理装置、及び固相前処理方法。
【解決手段】固相カートリッジ20により試料水に含まれる微量成分を濃縮する自動固相前処理装置であって、試料水を収容する試料容器10と、微量成分を保持する固相カートリッジ20と、試料容器10の試料水を固相カートリッジ20に送液する送液システム30とがこの順で備えられていることを特徴とする自動固相前処理装置1。また、自動固相前処理装置1を用いた固相前処理方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動固相前処理装置及び試料水の固相前処理方法に関する。
半導体、液晶等の電子部品の製造等においては、非常に高純度な水が用いられており、このような高純度な水には水中の有機物質や金属等が極力除去され、理論純水の比抵抗(18.24MΩ・cm)にできるだけ近いものが求められる。そのため、水中に含まれる有機物質や金属等の微量成分を正確に分析する技術が重要である。
試料水中の微量成分の分析においては、微量成分の検出感度を向上させるために、試料水を前処理して、試料水中の対象物質以外の物質を除去したり、対象物質を濃縮したりすることが広く行われている。このような前処理技術としては、試料水を固相カートリッジに通液することにより、対象の微量成分を該固相カートリッジ内に保持させて濃縮する技術が用いられている。
具体例としては、図3に示すような前処理装置101を用いて行う方法がある(例えば、特許文献1)。
前処理装置101は、試料容器110と送液システム120と固相カートリッジ130とがこの順に備えられている。送液システム120は、シリンジ121と流路122とバルブ123からなっている。試料容器110と送液システム120の間に流路141が設けられており、バルブ123の部分から流路122と流路142とに分岐している。流路122のバルブ123と逆側の端にシリンジ121が接続されている。また、流路142のバルブ123と逆側の端には固相カートリッジ130が接続されており、固相カートリッジ130の流路142と逆側には流路143が設けられている。
試料容器110に試料水を収容し、バルブ123により流路141と流路122とを接続した状態で試料水をシリンジ121内に引き込む。ついで、バルブ123を切り替えて流路122と流路142とを接続し、シリンジ121を押し込むことによりシリンジ121内に引き込んだ試料水を固相カートリッジ130へと送液する。これにより試料水が固相カートリッジ130に通液され、試料水に含まれる微量成分が固相カートリッジ130内に保持される。固相カートリッジ130を通過した試料水は、流路143を通って廃棄される。
このようにして、試料水中の微量成分を固相カートリッジ130内に濃縮することができる。しかし、前処理装置101を用いる前処理方法では、試料水中の微量成分の回収率が低下し、分析の信頼性が低くなることがあった。
また、試料中の不純物を除去する目的で用いられる装置としては、図4に示すような、不純物分離装置201が示されている(例えば、非特許文献1)。
不純物分離装置201は、複数の小型の試料容器210と、試料容器210それぞれに対応する固相ディスク220と、廃液タンク230とを有しており、廃液タンク230に減圧ポンプ240が備え付けられている。
不純物分離装置201では、減圧ポンプ240により廃液タンク230内を減圧下に保つことで、試料容器210内に収容した試料を固相ディスク220に通液させる。これにより、試料中の目的物質が固相ディスク220に保持され、不純物が廃液タンク230へと分離される。
しかし、このような不純物分離装置201によって各固相ディスク220に定流量で送液するのは困難であり、試料水中の微量成分の濃縮に用いると微量成分の回収率が低くなる。また、この不純物分離装置201では、固相ディスク220に保持した目的物質を溶出する際には、別の溶出装置に固相ディスク220を付け替える必要がある。また、それぞれの試料容器210の容量が大きくないため、試料が多量にある場合には試料を試料容器210に継ぎ足す工程が必要となるか、もしくは別途システムを接続する必要があり、操作が煩雑となる。
特開2003−156483号公報 Waters社 カラム・サンプル前処理 純正保守品 製品カタログ p.28
以上のようなことから、試料水中の微量成分の回収率が高く、前処理を簡便に行うことのできる固相前処理装置及び固相前処理方法が望まれている。
そこで本発明は、固相カートリッジを用いて試料水中の微量成分を濃縮する装置として、高い回収率で濃縮することができ、また濃縮操作を簡便に行うことのできる自動固相前処理装置を目的とする。
また、本発明は、高い回収率で簡便に試料水中の微量成分を濃縮できる固相前処理方法を目的とする。
本発明の自動固相前処理装置は、試料水を固相カートリッジに通液して、試料水に含まれる微量成分を濃縮する装置であって、試料水を収容する試料容器と、微量成分を保持する固相カートリッジと、前記試料容器の試料水を固相カートリッジに送液する送液システムとがこの順で備えられていることを特徴とする。
また、本発明の自動固相前処理装置は、さらに、固相カートリッジに保持させた微量成分をより溶出する溶出システムと、溶出された溶出液を濃縮する濃縮システムとを備えた装置であることが好ましい。
また、前記固相カートリッジにおける試料水が導入される開口径が、試料水が排出される開口径と同じであることが好ましい。
本発明の試料水の固相前処理方法は、固相カートリッジにより試料水に含まれる微量成分を濃縮する方法であって、前記いずれかの自動固相前処理装置を用いて、前記試料容器の試料水を送液システムに通過させずに、かつ定流量で固相カートリッジに通液することを特徴とする方法である。
また、本発明の試料水の固相前処理方法は、前記試料水が超純水、回収水、環境水、又は工場排水であることが好ましい。
また、前記微量成分が、有機アミン類及び/又はベンゼン環を有するアルコール類を含む有機化合物であることが好ましい。
本発明の自動固相前処理装置は、高い回収率で試料水中の微量成分を濃縮できる。また、試料水中の微量成分の濃縮操作を簡便に行うことができる。
また、本発明の方法によれば、高い回収率で、簡便に試料水中の微量成分を濃縮できる。
本発明の自動固相前処理装置は、試料水を固相カートリッジに通液して、試料水に含まれる微量成分を濃縮する装置であって、試料水を収容する試料容器と、微量成分を保持する固相カートリッジと、前記試料容器の試料水を固相カートリッジに送液する送液システムとをこの順で備えた装置である。
本発明において前処理を行う試料水としては、特に制限はないが、例えば、純水、超純水、半導体工場等で使用した純水や超純水の回収水、地下水、河川水等の環境水、共存物質を含有する工場排水等が挙げられる。
濃縮する対象物である微量成分としては、例えば、有機アミン類、ベンゼン環を有するアルコール類、フッ素系有機化合物、農薬等の有機化合物が挙げられる。
有機アミン類としては、直鎖型有機アミン類が挙げられ、具体的には、炭化水素アミン等が挙げられる。
また、ベンゼン環を有するアルコール類としては、例えば、フェノール類等が挙げられる。
[自動固相前処理装置]
以下、本発明の自動固相前処理装置の一実施形態例について、図1〜2に基づいて詳細に説明する。
本発明の自動固相前処理装置1(以下、前処理装置1という)は、試料容器10と、固相カートリッジ20と、送液システム30とがこの順序で備えてられている。また、前処理装置1は、溶出システム40と、送気システム50と、濃縮システム60とを備えている。
固相カートリッジ20は、オートステージ21で支持されており、上下に移動できるようになっている。また、固相カートリッジ20の、試料水を導入する開口20a側には流路22が設けられており、該流路22が試料容器10内に挿入できるようになっている。
また、固相カートリッジ20の、試料水が排出される開口20b側には流路71が設けられており、その流路71の他方の端にはバルブ81が設置され、流路72と流路73とに分岐している。
流路73のバルブ81と逆側の端は、溶出システム40と接続されている。
流路72のバルブ81と逆側の端には、バルブ82が設けられており、流路74と流路75とに分岐している。流路74のバルブ82と逆側の端には、バルブ83が設けられており、流路74aと流路74bとに分岐している。
流路74aのバルブ83と逆側の端は、送気システム50に接続されている。
流路74bのバルブ83と逆側の端は、濃縮システム60に接続されている。
流路75のバルブ82と逆側の端には、シリンジ31a、31bと、流路32a、32bとバルブ33とを備えた流路送液システム30が接続されている。具体的には、流路75のバルブ82と逆側の端にバルブ33が接続されており、流路32a、32bとに分岐している。それぞれの流路32a、32bにはシリンジ31a、31bが接続されている。
また、バルブ33には流路76も設けられている。
試料容器10は、試料水を収容する容器である。
試料容器10の材質は、試料水中の微量成分の内壁への吸着が抑えられているものがよく、例えば、ガラス等が挙げられる。
また、試料容器10の形状も特に限定されないが、例えば、図2に示すように、底部側に円錐形の傾斜部分11が設けられており、その中央部分に目盛りを有する凹部12が形成されている形状が挙げられる。このような形状とすれば、固相カートリッジ20に保持させた微量成分を試料容器10に再度溶出させる場合に、溶出液が傾斜部分11を伝わって凹部12へと集まり、目盛りにより溶出液の量を判断することにより濃縮の度合いを確認しやすくなる。
固相カートリッジ20は、目的の微量成分を保持することのできる充填剤が充填されており、開口20aから試料水を導入し、開口20bから排出することにより、試料水中の微量成分を保持することができる。また、溶出液により保持した微量成分を溶出することもできる。
固相カートリッジ20の充填剤としては、試料水中の微量成分分析の前処理に通常用いられるものが使用でき、目的の微量成分に応じたシリカベースの充填剤、キレート剤等が挙げられる。具体例としては、C18充填剤等が挙げられる。
また、本発明の固相カートリッジ20は、試料水が導入される開口20aの径と、試料水が排出される開口20bの径とが同等であることが好ましく、同じであることが特に好ましい。固相カートリッジ20は、通常、開口20aの径が開口20bの径よりも大きいものが用いられているが、開口20aの径と開口20bの径とを同等にすることにより、溶出液を開口20b側から導入して固相カートリッジ20に保持した微量成分を溶出する場合(バックフラッシュ方式)に固相カートリッジ20内にかかる内圧を低減することができ、溶出液を定流量で通液させやすくなる。また、試料水の通液においても内圧が高くなりすぎることが抑えられ、定流量で通液することが容易になる。
本実施形態例における固相カートリッジ20は、オートステージ21で支持されており、固相カートリッジ20が上下に移動できるようになっている。固相カートリッジ20を上下に移動させることができれば、送液中に固相カートリッジ20に取り付けられた流路22の先端を試料容器10に収容した試料水の液面に対応させて移動させることができるため、流路22の長さを短く設定できる。流路22の長さが短ければ、流路22の内壁への微量成分の吸着を防止しやすい。
送液システム30としては、試料容器10に収容した試料水を固相カートリッジ20に定流量で送液しやすいものが好ましい。送液システム30としては、例えば、図1に示すような、バルブ33にそれぞれ別々の流路32a、32bが接続され、2本のシリンジ31a、31bを有するシステムが挙げられる。
シリンジ31a、31bは、固相前処理装置に通常用いられるガラス製のシリンジが使用できる。
この送液システム30では、流路32aと流路75、流路32bと流路76が接続された状態と、流路32aと流路76、流路32bと流路75が接続された状態とをバルブ33で切り替えることができ、流路75から試料水をシリンジ31a内部に引き込むのと同時にシリンジ31b内にある試料水を流路76から排出し、バルブ84を切り替えた後、流路75から試料水をシリンジ31b内部に引き込むのと同時にシリンジ31a内にある試料水を流路76から排出することを繰り返すことで連続的に送液することができる。これにより、気体に比べて体積の変化の小さい試料水が常にシリンジ31a、31b内に充填されている状態で送液を行うことができ、固相カートリッジ20への送液を定流量で行うことが容易になるため、微量成分の回収率がより向上する。
また、前処理装置1は、固相カートリッジ20に保持した微量成分を溶出する溶出システム40を備えている。
溶出システム40には、固相カートリッジ20に保持した微量成分を溶出させることのできる溶出液が収容されており、溶出液を固相カートリッジ20に送液することにより、微量成分を試料容器10内へと溶出させることができる。また、溶出システム40は、固相カートリッジ20に溶出液を定流量で送液できるシステムを用いることができる。
溶出液は、目的の微量成分によって適宜選択することができ、例えば、アルコール等が挙げられる。
溶出システム40による固相カートリッジ20に保持した微量成分の溶出は、試料水よりも少ない量の溶出液で行うことにより、目的の微量成分が濃縮された溶出液を得ることができる。
また、前処理装置1は、固相カートリッジ20に空気を送ることのできる送気システム50を備えている。
溶出システム40により溶出液を固相カートリッジ20に送液した後、送気システム50により空気を固相カートリッジ20へと送ることにより、固相カートリッジ20内に残った溶出液を試料容器10内に押し出すことができる。
前処理装置1が送気システム50を備えることにより、固相カートリッジ20内に残った溶出液が充分に排出されるので回収率が向上し、また溶出液量が低減できるので濃縮倍率が向上する。
また、前処理装置1は、固相カートリッジ20に保持した微量成分を溶出した溶出液をさらに濃縮する濃縮システム60を備えている。濃縮システム60は、窒素ガスを試料容器10内の溶出液の液面に吹き付けることができ、溶出液を気化させることによりさらに濃縮することができる。
また、本実施形態例の前処理装置1では、試料水を固相カートリッジ20に送液した後、濃縮システム60から窒素ガスを固相カートリッジ20に送ることにより固相カートリッジ20内を乾燥させることができる。このように、溶出液による溶出の前に固相カートリッジ20を乾燥させておくことにより、固相カートリッジ20内に残った試料水によって溶出液の濃度が薄まり、その結果、溶出液量が増加して濃縮倍率が低下したり、回収率が低下するのを防ぐ効果が得られる。
本実施形態例における流路としては、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを用いることができる。
なお、本発明の自動固相前処理装置は、図1及び図2に例示したものには限定されない。例えば、溶出システム40が固相カートリッジ20内に残った溶出液を押し出す送気システムを備えていてもよい。
また、試料容器10と固相カートリッジ20と送液システム30とを備え、溶出システム40、送気システム50、濃縮システム60を備えていなくてもよい。
また、送液システム30が有するシリンジが1本であってもよく、定流量ポンプであっても構わない。
[試料水の固相前処理方法]
本発明の試料水の固相前処理方法は、固相カートリッジにより試料水に含まれる微量成分を濃縮する方法であって、前述の自動固相前処理装置を用いて、試料容器の試料水を送液システムに通過させずに、かつ定流量で固相カートリッジに通液することを特徴とする方法である。
以下、本発明の試料水の固相前処理方法の一実施形態例として、前記前処理装置1を用いた方法について詳細に説明する。
本実施形態例における固相前処理方法は、まず試料容器10に収容した試料水を固相カートリッジ20に通液して(工程(1))、固相カートリッジ20を乾燥した後(工程(2))、固相カートリッジ20に保持した微量成分を試料容器10に溶出する(工程(3))。ついで、固相カートリッジ20に残った溶出液を試料容器10に押し出した(工程(4))後に、試料容器10内において溶出液を気化させてさらに濃縮する(工程(5))。
工程(1)では、バルブ81、82、33により、流路71、流路72、流路75、及び流路32aを接続する。このとき、同時に流路32bは流路76と接続される。そして、オートステージ21により固相カートリッジ20及び流路22を下方に移動させ、流路22の先端を試料容器10内の試料水に挿入する。
ついで、送液システム30により試料容器10内の試料水を固相カートリッジ20へと送液する。本実施形態例においては、予め流路71、72、75、32a、32bとシリンジ31b(又はシリンジ31a)内に超純水等を充填した状態にしておくことにより、送液初期の固相カートリッジ20への試料水の通液を定流量に保ちやすくなる。
すなわち、流路71、72、75、32a、32b、及びシリンジ31b内に超純水等の液体が充填された状態で、シリンジ31a内に該液体を引き込むことにより、試料容器10内の試料水を固相カートリッジ20へと送液する。それと同時にシリンジ31b内にある液体を流路76から排出させる。ついで、バルブ33を切り替えて、流路32aと流路76、流路32bと流路75とを接続して、シリンジ31b内に液体を引き込むのと同時にシリンジ31a内の液体を流路76から排出する。このように、バルブ33を切り替えながらシリンジ31aとシリンジ31bによる液体の引き込みと排出を連続的に交互に行い、試料水の液面に合わせてオートステージ21により固相カートリッジ20と流路22を下方に移動させていくことにより、試料容器10の試料水を固相カートリッジ20に定流量で通液させることができる。
工程(1)の送液により、試料水中の微量成分が固相カートリッジ20に保持される。
試料水の固相カートリッジ20への通液は定流量で行う。
試料水の流量は、微量成分の濃度や、固相カートリッジの種類によっても異なるが、5〜20mL/分程度に保たれることが好ましい。試料水の流量を前記範囲内で一定に保つことにより、微量成分の回収率が向上する。
試料容器10内の試料水を全て固相カートリッジ20に通液させた後、工程(2)において、固相カートリッジ20内を乾燥する。
具体的には、オートステージ21により固相カートリッジ20と流路22とを上方に移動させる(流路22の先端が試料容器10の底部から離れる程度。例えば、約3cm程度離す。)。そして、バルブ82とバルブ83の切り替えにより、流路71、流路72、流路74、流路74bを接続し、濃縮システム60より窒素ガスを固相カートリッジ20に送る。窒素ガスの送気は、固相カートリッジ20が充分に乾燥するまで行えばよい。
工程(2)において固相カートリッジ20を乾燥した後、工程(3)において、バルブ81を切り替えて流路71と流路73とを接続し、溶出システム40により溶出液を固相カートリッジ20に通液する。これにより、固相カートリッジ20に保持した微量成分を試料容器10に溶出させて回収することができる。溶出液は試料水よりも少ない量に設定しておけば(凹部12に収容できる量)、試料水中の微量成分が所望の倍率で濃縮される。
溶出液の固相カートリッジ20への通液も定流量で行う。
溶出液の流量は、微量成分の濃度や、固相カートリッジ、溶出液の種類によっても異なるが、0.5〜1mL/分程度に保たれることが好ましい。溶出液の流量を前記範囲内で一定に保つことにより、固相カートリッジ20に保持された微量成分を全て溶出液中に抽出させることが容易になる。
ついで、工程(4)において、バルブ81、82、83の切り替えにより、流路71、流路72、流路74、流路74aを接続し、送気システム50により空気を送ることにより、固相カートリッジ20内に残った溶出液を試料容器10へと押し出す。
ついで、工程(5)において、バルブ83を切り替えて、流路71、流路72、流路74、流路74bを接続し、濃縮システム60により、試料容器10内の回収された溶出液の液面に窒素ガスを吹き付ける。これにより溶出液を気化させて所望の倍率までさらに濃縮を行う。
以上説明した固相前処理方法により、試料水中の微量成分を濃縮された溶出液が得られる。
なお、試料容器の壁面や流路22(PFAチューブ)内に吸着した目的の微量成分は、流路22を取り外した後に溶出に用いた溶出液と同じ液体により洗浄して回収することもできる。
また、本発明の固相前処理方法は、工程(1)と工程(2)以降を別の装置で行うようにしてもよい。
以上説明した本発明の自動固相前処理装置によれば、高い回収率で試料水中の微量成分を濃縮できすることができ、試料水中の微量成分の濃縮操作を自動で行うことができる。また、本発明の方法は、高い回収率で試料水中の微量成分を濃縮でき、その後の分析の信頼性が高くなる。
これは、本発明の自動固相前処理装置が試料容器と固相カートリッジと送液システムとをこの順で備えており、試料容器中の試料水を送液システムに通過させることなく固相カートリッジに送液できるため、送液システム内(例えば、シリンジ内)に微量成分が吸着してしまうことを防ぐことができるためであると考えられる。また、試料容器と固相カートリッジとの間に送液システムを介さないことで、試料容器と固相カートリッジとの間の流路を短くすることもでき、流路への微量成分の吸着も抑えられると考えられる。
また、本発明の固相前処理方法では、固相カートリッジに試料水を定流量で通液させることができるため、固相カートリッジへの微量成分の保持効率、固相カートリッジからの微量成分の溶出効率が高くなり、回収率が良好になると考えられる。
従来は、図3に例示したような前処理装置101を用いていたため、固相カートリッジまでの流路やシリンジ(通常、ガラス製である)内に目的の微量成分が吸着してしまうことで回収率が低下していたと考えられる。
また、図4に例示したような不純物分離装置201では、廃液タンク230を減圧することにより全ての固相ディスク220における通液の流量を一定に保つことが困難であるため、微量成分の濃縮に用いた場合には回収率が低下してしまうと考えられる。
また、自動固相前処理装置、及びそれを用いた固相前処理方法は、試料水の量が多量である場合でも連続して試料水を固相カートリッジに送液して簡便に濃縮することができる。
また、本発明の前処理方法では、固相カートリッジ20の開口20a側から試料水を導入して微量成分を保持させ、開口20b側から溶出液を導入して保持させた微量成分を溶出するバックフラッシュ方式を採用することで、固相カートリッジ20を別の装置に付け替えることなく溶出が行える簡便な方法とすることができる。
また、固相カートリッジ20への微量成分の保持は、試料水を適切な流量で一定に保てば充填剤のうち開口20a側に集中するため、バックフラッシュ方式を採用することにより回収率が向上するという効果も得られる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
図1に例示した自動固相前処理装置を用いた試料水の微量成分の濃縮について説明する。
試料液として、超純水(100mL)に直鎖型有機アミンを1.0ppb含有させた溶液を用いた。また、固相カートリッジ20としては、商品名C18 Sep−Pak(Waters社製)を用いた。
まず、バルブ81、82、33により、流路71、流路72、流路75、及び流路32aを接続し、同時に流路32bと流路76とを接続する。そして、オートステージ21により固相カートリッジ20及び流路22を下方に移動させ、流路22の先端を試料容器10内の試料水に挿入する。
ついで、バルブ33を切り替えながらシリンジ31aとシリンジ31bによる液体の引き込みと排出を連続的に交互に行い、試料水の液面に合わせてオートステージ21により固相カートリッジ20と流路22を下方に移動させていくことにより、試料容器10の試料水を固相カートリッジ20に定流量(20mL/分)で全量を通液させた。
ついで、オートステージ21により固相カートリッジ20と流路22とを上方に3cm移動させ、バルブ82とバルブ83の切り替えにより、流路71、流路72、流路74、流路74bを接続し、濃縮システム60より窒素ガスを固相カートリッジ20に送って固相カートリッジ20を充分に乾燥させた。
[比較例1]
試料液及び固相カートリッジは実施例1と同じものを使用し、図3に例示した固相前処理装置101を用いて試料水の微量成分の濃縮を行った。
バルブ141aを切り替えながらシリンジ120による液体の引き込みと排出を連続的に行い、試料容器110の試料水全量を固相カートリッ130に通液させた。ついで、固相カートリッジ130を充分に乾燥した。
実施例及び比較例で得られた各固相カートリッジからの微量成分の溶出は、定流量ポンプにより行った。溶出液は低極性有機溶媒を使用した。得られた溶出液を高速液体クロマトグラフィーにて分析することにより、初期の試料溶液中の微量成分量から回収率を算出した。結果を表1に示す。ただし、表1に示す回収率は、実施例、比較例共に、濃縮操作を3回ずつ行ったものの平均値である。
Figure 2009156657
表1に示すように、本発明の自動固相前処理装置を用いた実施例1では、高い回収率で微量成分の濃縮を行うことができた。
一方、従来の前処理装置である比較例1では、実施例1に比べて回収率が劣っていた。
本発明の自動固相前処理装置の一実施形態例を示す概略図である。 本発明の試料容器の一実施形態例を示す概略図である。 従来の固相前処理装置の一実施形態例を示す概略図である。 不純物の分離に用いられる不純物分離装置の一実施形態例を示した概略図である。
符号の説明
1 自動固相前処理装置 10 試料容器 20 固相カートリッジ 30 送液システム 40 溶出システム 60 濃縮システム

Claims (6)

  1. 試料水を固相カートリッジに通液して、試料水に含まれる微量成分を濃縮する自動固相前処理装置であって、
    試料水を収容する試料容器と、微量成分を保持する固相カートリッジと、前記試料容器の試料水を固相カートリッジに送液する送液システムとがこの順で備えられていることを特徴とする自動固相前処理装置。
  2. さらに、固相カートリッジに保持させた微量成分を溶出する溶出システムと、溶出された溶出液を濃縮する濃縮システムとを備えた、請求項1に記載の自動固相前処理装置。
  3. 前記固相カートリッジにおける試料水が導入される開口径が、試料水が排出される開口径と同じである、請求項1又は2に記載の自動固相前処理装置。
  4. 固相カートリッジにより試料水に含まれる微量成分を濃縮する方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載の自動固相前処理装置を用いて、前記試料容器の試料水を送液システムに通過させずに、かつ定流量で固相カートリッジに通液することを特徴とする試料水の固相前処理方法。
  5. 前記試料水が超純水、回収水、環境水、又は工場排水である、請求項4に記載の試料水の固相前処理方法。
  6. 前記微量成分が、有機アミン類及び/又はベンゼン環を有するアルコール類を含む有機化合物である、請求項4又は5に記載の試料水の固相前処理方法。
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