JP2012185067A - 管径方向分配クロマトグラフィーを用いた混合物の分離方法 - Google Patents
管径方向分配クロマトグラフィーを用いた混合物の分離方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2012185067A JP2012185067A JP2011049138A JP2011049138A JP2012185067A JP 2012185067 A JP2012185067 A JP 2012185067A JP 2011049138 A JP2011049138 A JP 2011049138A JP 2011049138 A JP2011049138 A JP 2011049138A JP 2012185067 A JP2012185067 A JP 2012185067A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- solution
- separation
- solvent
- water
- carrier
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Treatment Of Liquids With Adsorbents In General (AREA)
Abstract
【解決手段】キャリア溶液として、水と親水性溶媒と疎水性溶媒とからなる三成分系の混合液で、三成分相図における均一‐不均一溶液境界線上又は当該境界線近傍の成分比率を有する均一溶液を用い、当該キャリア溶液を、内径が250μm以下のオープンキャピラリーチューブ内に層流条件下で送液することにより分離を行う。TRDC分離に適したキャリア溶液の流速は0.5〜2.0μL/分であり、親水性溶媒としては、アセトニトリル、1‐プロパノール、エタノール、メタノール、ジオキサンが挙げられ、疎水性溶媒としては、酢酸エチル、1‐ブタノール、クロロホルムが挙げられる。
【選択図】図3
Description
このような状況から、安価に混合物を精度良く分離することが可能なオープンキャピラリーチューブによる、混合物からの各物質の分離方法の開発が望まれている。
しかし、これまで、TRDCにより混合物の分離を行うのに最適な水‐アセトニトリル‐酢酸エチル混合溶液の成分割合や、水‐アセトニトリル‐酢酸エチルの混合溶液以外の混合溶液組成については検討されておらず、TRDCによる分離を実施するための条件(流速、圧力等)についても知られていないのが現状である。
更に、本発明は、上記の特徴を有するTRDC分離方法における前記親水性溶媒が、アセトニトリル、1‐プロパノール、エタノール、メタノール及びジオキサンから成るグループより選ばれたものであり、前記疎水性溶媒が、酢酸エチル、1‐ブタノール及びクロロホルムから成るグループより選ばれたものであることを特徴とするものでもある。
そして、本発明では、キャピラリー内壁が親水性である場合にも疎水性である場合にも、キャリア溶液中の溶媒組成分布が生じ、キャリア溶液を構成する溶媒の組成比率を、三成分相図の均一‐不均一溶液境界線上又は当該境界線近傍の成分比率に調節することによって、混合物中の親水性物質と疎水性物質の分離を簡単に行うことができる。
尚、分離に適したキャリア溶液の流速は0.5〜2.0μL/分であり、流速が0.5μL/分未満になると、キャリア溶液が管軸方向に流れて管径方向への分配が阻害され、逆に流速が2.0μL/分を超えると、せん断応力が大きくなって管径方向におけるずれ応力の変化が増大し、溶媒分子の管径方向への分配が阻害される。
本発明の分離方法にて使用される上記成分からなるキャリア溶液は、三成分相図における均一‐不均一溶液境界線上に位置する成分比率を有した均一溶液であるか、あるいは、当該境界線近傍に位置する成分比率を有した均一溶液である。水‐アセトニトリル‐酢酸エチル混合液の場合、均一‐不均一溶液境界線は、以下の三成分相図における点線で示されるような曲線となる。
〔図3〕
本発明において、均一‐不均一溶液境界線の近傍とは、水をx容積%、親水性溶媒をy容積%、疎水性溶媒をz容積%とした場合(x+y+z=100)の均一‐不均一溶液境界線上の点(x,y,z)から、点(x,y±1,z±1)までの領域を意味する。ポリテトラフルオロエチレン製のオープンキャピラリーチューブを使用し、使用するキャリア溶液が水/アセトニトリル(親水性溶媒)/酢酸エチル(疎水性溶媒)混合液の場合、上記x,y,zの好ましい範囲は、それぞれ15〜92、0〜60、8〜35である。
尚、図1に示されるTRDC分離装置には、マイクロシリンジポンプとオープンキャピラリーチューブとを連結するためのジョイントが設けられており、吸光検出器の排出側には、分離された液を回収するための分離液回収部(図示されていない)が存在している。
本発明のTRDC分離方法においては、疎水性溶媒(有機相)を多く含むキャリア溶液を使用した場合、キャピラリー内壁付近と中央付近でキャリア溶液中の不均一な溶媒組成分布が生じて有機相がキャピラリーの中心部を流れ、水(水相)がキャピラリー内壁に沿って流れ、キャピラリー内壁に沿って流れる水相が、キャピラリーの中心部分付近の有機相よりも遅く移動することにより、有機相に存在し平均流速で移動する疎水性物質の移動速度に比べて、水相に存在する親水性物質の移動速度の方が遅く、両物質の分離に必要な移動速度の差が得られて両物質の分離が達成される。
これとは逆に、水(水相)を多く含むキャリア溶液を使用した場合、キャピラリー内壁付近と中央付近でキャリア溶液中の不均一な溶媒組成分布が生じて水相がキャピラリーの中心部を流れ、疎水性溶媒(有機相)がキャピラリー内壁に沿って流れ、キャピラリー内壁に沿って流れる有機相が、キャピラリーの中心部分付近の水相よりも遅く移動することにより、水相に存在し平均流速で移動する親水性物質の移動速度に比べて、有機相に存在する疎水性物質の移動速度の方が遅く、両物質の分離に必要な移動速度の差が得られて両物質の分離が達成される(図11参照)。
以下、本発明の実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
分離カラムとして、ポリテトラフルオロエチレン製のオープンキャピラリーチューブ(内径:100μm、全長:120cm、有効長:100cm、ヤサカ工業製)を準備し、このキャピラリーチューブを、マイクロシリンジポンプ(MF-9090、Bioanalytical Systems, Inc.製)及び、検出器としての吸収スペクトル測定装置(改良SPD-10AV分光光度計、島津製作所製)と接続し、図1に示される構成を有したTRDC分離装置を作製した。
上記のキャピラリーチューブの温度は、キャピラリーチューブ(約80cm)を、ビーカー中で一定温度(15℃)に保たれた水の中に撹拌しながら浸すことにより制御した。様々な容積比を有する水−親水性/疎水性有機溶媒混合溶液をキャリア液として使用し、分析対象物溶液は、キャリア液を用いて調製した。
キャリア溶液として用いた水は、ELIX UV 3システム(Millipore Co., Billerica, MA)により精製したものであり、1−ナフトール、1−ナフトエ酸、1−ナフタレンスルホン酸、2,6−ナフタレンジスルホン酸、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、1−ブタノール、クロロホルム及びヘキサンについては、和光純薬工業株式会社製の市販品(分析用グレード)を使用した。
100:20の容積比の水−アセトニトリル(親水性)の一定の成分比を有する溶液に、反応容器中、酢酸エチル(疎水性)を22℃の温度で添加して、以下の組成のキャリア液a)〜e)を調製した。
a)100:20:0の容積比の水−アセトニトリル−酢酸エチル;b)100:20:4の容積比;c)100:20:9の容積比;d)100:20:10の容積比;およびe)100:20:11の容積比。
キャリア液a)〜d)は均質であったが、キャリア液e)は、異質(2つの均質層を含む)であった。容積比が100:20:10の水−アセトニトリル−酢酸エチルのキャリア液d)は、相図の均一‐不均一溶液境界領域の近くの溶媒の成分比を有した特定の均質溶液であった。2,6−ナフタレンジスルホン酸と1−ナフトールの分析対象物混合物(各2mM)について、4つの均質キャリア液a)〜d)を用い、前記TRDC分離装置により分離実験を行った。
図2に示されるように、容積比が100:20:10の水−アセトニトリル−酢酸エチルである特定の均質キャリア液d)だけが、混合物中の分析対象物を分離することができた。2,6−ナフタレンジスルホン酸(親水性)が、層流条件下にて略平均線速度でキャピラリーチューブ中に最初に溶出され、1−ナフトール(親水性)が、平均線速度よりも遅い速度で2番目に溶出された。
本発明のTRDC分離方法にて使用される分離装置では、水過剰のキャリア液を用いた場合に、キャピラリー内の主要な内側相が、水過剰の溶媒で形成され、小さい方の外側相またはキャピラリー壁相が、疎水性有機溶媒過剰の溶媒で形成され、キャピラリーチューブを通して送達された分析対象物は、層流条件下で内層と外層の間に分配されて分離される。図2の結果から、上記d)以外の、水−アセトニトリル−酢酸エチルからなる均質なキャリア液a)〜c)はいずれも、上記の分析条件下では、分析対象物に対していかなる分離挙動も示さないことがわかった。
水−アセトニトリル(親水性有機溶媒)−酢酸エチル(疎水性有機溶媒)の3成分系混合物についての相図を検討し、TRDC分離に必要な成分比を調査した。分離実験の条件は、前記実施例1と同様とした。
図3は、水−アセトニトリル−酢酸エチル混合液に対する相図と、上記TRDC分離装置を用いて得られたクロマトグラムについての溶媒成分比である。図中の点線による曲線は、均一‐不均一溶液の境界(均質相と異質相との間の境界)を示している。この相図は、溶媒の各成分比によって、均質溶液(1つの均質層)または異質溶液(2つの均質層)が形成されることを示しており、図2及び図4にクロマトグラムが示されたキャリア液a)〜d)およびf)〜k)についての溶媒の成分比が、図3中にプロットされている。図3中の○印、△印、×印は、分析対象物に対するベースライン分離、スプリット分離、非分離をそれぞれ示している。
尚、図4には、図3の相図における均一‐不均一溶液境界線の近傍に位置する溶媒の成分比を有する均質なキャリア液を用いて得られたクロマトグラムが示されている。分析対象物は、2,6−ナフタレンジスルホン酸と1−ナフトールの混合物(各2mM)であり、キャピラリーチューブ温度は0℃とした。
図4の結果から、2,6−ナフタレンジスルホン酸と1−ナフトールは、f)〜i)のキャリア液ではこの順序で溶出したが、j)のキャリア液では、逆の順で溶出した。
水過剰のキャリア液(水>疎水性溶媒)の場合には、親水性の分析対象物は、水過剰の主要相(キャピラリーチューブの中央の周り)に分散されており、略平均線速度で溶出されるが、疎水性分析対象物は、チューブ(擬似固定相)の内壁近くの小さな有機溶媒過剰相に分散されており、平均線速度より遅い速度で溶出される。一方、有機溶媒過剰のキャリア液(水<疎水性溶媒)の場合には、有機溶媒過剰の主要相に分散された疎水性分析対象物は、平均線速度で溶出されるが、チューブの内壁近くの小さな水過剰相(擬似固定相)に分散された親水性分析対象物は、平均線速度より遅い速度で溶出される。これにより、分析対象物の溶出時間は、キャリア液の溶媒の成分比を変更することによって容易に逆にすることができる。実際、図4では、水過剰のキャリア液(f〜i)の場合は、2,6−ナフタレンジスルホン酸、1−ナフトールの順序で分離した。有機溶媒過剰のキャリア液(j)の場合には、逆の順序で分離したが、本分析条件下ではベースラインの分離は達成できなかった。
アセトニトリル(親水性有機溶媒)の代わりに、メタノール、エタノール、1,4−ジオキサン及び1−プロパノールを用い、均一‐不均一溶液境界領域の近くの溶媒の特定の成分比を有する均質な3成分系混合キャリア液を調製し、キャリア溶液として使用した。
実験に用いたキャリア溶液の溶媒成分比は、以下の通りである。
i)水−メタノール−酢酸エチル(100:20:15の容積比)
ii)水−エタノール−酢酸エチル(100:20:15の容積比)
iii)水−1,4−ジオキサン−酢酸エチル(100:5:10の容積比)
iv)水−1−プロパノール−酢酸エチル(100:10:11の容積比)
キャリア溶液の組成を変更した以外の分離実験条件は、前記実施例1と同様とした。
図5は、アセトニトリルの代わりに様々な親水性有機溶媒を用いた場合の、TRDC分離装置によって得られた2,6−ナフタレンジスルホン酸と1−ナフトールの混合物のクロマトグラムであり、水−アセトニトリル−酢酸エチル混合物(100:20:10の容積比)のクロマトグラムと共に示されている。
図5のクロマトグラムから、2,6−ナフタレンジスルホン酸と1−ナフトールは、様々な親水性有機溶媒により調製された水過剰のキャリア液を使用した場合にも、この順序で分離、検出できることが確認された。
酢酸エチル(疎水性有機溶媒)の代わりに、クロロホルム、ヘキサン及び1−ブタノールを用い、均一‐不均一溶液境界領域の近くの溶媒の特定の成分比を有する均質な3成分系混合キャリア液を調製し、キャリア溶液として使用した。
実験に用いたキャリア溶液の溶媒成分比は、以下の通りである。
v)水−アセトニトリル−ヘキサン(100:30:1の容積比)
vi)水−アセトニトリル−クロロホルム(100:30:1の容積比)
vii)水−アセトニトリル−1−ブタノール(100:15:20の容積比)
キャリア溶液の組成を変更した以外の分離実験条件は、前記実施例1と同様とした。
図6は、酢酸エチルの代わりに様々な疎水性有機溶媒を用いた場合の、TRDC分離装置によって得られた2,6−ナフタレンジスルホン酸と1−ナフトールの混合物のクロマトグラムであり、水−アセトニトリル−酢酸エチル混合物(100:20:10の容積比)のクロマトグラムと共に示されている。
図6のクロマトグラムから、2,6−ナフタレンジスルホン酸と1−ナフトールは、疎水性有機溶媒としてクロロホルム又は1−ブタノールを用いて調製された水過剰のキャリア液を使用した場合には、この順序で分離されたが、しかし、本分析条件下でヘキサンを使用したキャリア液の場合には分離されず、この理由としては、ヘキサンの分子構造がアルキル鎖として長いこと、また疎水度が大きいことが考えられる。
3種類の化合物を含む分析対象物として、1−ナフタレンスルホン酸、1−ナフトエ酸及び1−ナフトールの混合溶液(各2mM)を調製し、水過剰の組成を有する均質なキャリア液を用いて分離実験を行なった。キャリア液には、水−アセトニトリル−酢酸エチル(100:20:10の容積比)、水−エタノール−酢酸エチル(100:20:15の容積比)、および水−アセトニトリル−クロロホルム(100:30:1の容積比)を使用した。これらのキャリア液はいずれも、分離に適した均質なキャリア液が均一‐不均一溶液の境界領域近傍にあるとの考えに基づいて調製されたものである。
図7には、1−ナフタレンスルホン酸、1−ナフトエ酸及び1−ナフトールの混合液を分析対象物溶液として、TRDC分離装置により得られたクロマトグラムが示されている。分離実験の条件については、前記実施例1と同様とした。
図7に示されるように、上記の分離実験では、いずれのキャリア溶液の場合にも、1−ナフタレンスルホン酸(pKa 0.57)、1−ナフトエ酸(pKa 3.70)及び1−ナフトール(pKa 9.34)は、この順序で溶出し、水過剰のキャリア液によってこれら化合物が分離できることがわかった。1−ナフタレンスルホン酸が、層流条件下で略平均線速度で溶出する一方、他の化合物(1−ナフトエ酸及び1−ナフトール)は、平均線速度より遅い速度でこの順に溶出した。1−ナフタレンスルホン酸、1−ナフトエ酸及び1−ナフトールの溶出順序は、それらの分子構造またはpKa値に基づく親水性または疎水性を考慮すると、妥当なものであった。
内径50μm、長さ120 cm (実効長100 cm)のフューズドシリカキャピラリーチューブを使用し、マイクロシリンジポンプによりキャリア溶液を送液し、UV吸光検出器 (254 nm)で検出を行った。上記キャピラリーは20℃の水に50 cm浸し、温度制御をおこなった。1‐ナフトールと2,6‐ナフタレンジスルホン酸の2成分をキャリア溶液で調製して試料溶液とし、水‐アセトニトリル‐酢酸エチル系キャリア溶液の組成比を変えて分離実験を行った。
図8は、水-アセトニトリル-酢酸エチル三成分相図であり、図中の曲線は均一な1相と不均一な2相との境界を示している。そして、この三成分相図中には、フューズドシリカキャピラリーチューブを使用し、1‐ナフトールと2,6‐ナフタレンジスルホン酸の混合試料を分析した際のクロマトグラムの結果が記号で示されており、○は、完全分離、△は、分離はするが両ピークが一部重なっている、×は、分離しない、を表している。
このキャリア溶液にアセトニトリルを加えていくと、分離度は徐々に低下し、組成比(b)のキャリア溶液では分離することができず、これらの実験結果から、TRDCによる分離を行うのに適したキャリア溶液は、均一な溶液で、しかも、相図中の境界領域近傍の組成を有するものであることが示唆された。
TRDCによる分離メカニズムを調べるために、異なる蛍光波長を持つ2種類の蛍光試薬が、キャピラリーチューブ内でどのように分配されているか蛍光顕微鏡にCCDカメラを取り付けたシステムにより観測した。
キャリア溶液には、ペリレン(0.1mM)とエオシンY(1mM)を水‐アセトニトリル‐酢酸エチル(容積比3:8:4または容積比15:3:2)に溶解したものを用いた。それぞれのキャリア溶液は直接ポンプによってフューズドシリカキャピラリー(内径75μm、全長110cm、実効長90cm)にポンプによって送液した。キャピラリー内でのキャリア溶液中の蛍光試薬を蛍光顕微鏡(Olympus BX51)にカラーCCDカメラ(東芝 IK-TU50)を取り付けたシステムによって観察した。
有機溶媒過剰のキャリア溶液を用いた場合と、水過剰なキャリア溶液を用いた場合の、エオシンYの管内での分配状態には明らかな差が見られ、両者の比較から、水‐親水性‐疎水性有機溶媒の混合溶媒をキャピラリー中に送液するとキャリア溶液中で大きな組成比を占める溶媒分子は、管中央部領域で溶媒クラスター相を形成し、小さな組成比を占める溶媒分子は、溶媒クラスター相を内壁付近で形成し、ここに溶質を混合溶媒と共に通過させるだけで、溶質のそれぞれのクラスター相に対する親和性の違いに基づき選択的に溶媒和され、分離が達成されるというTRDCの分離メカニズムが確認された。
水‐アセトニトリル‐酢酸エチルを容積比3:8:4で混合した有機溶媒過剰なキャリア溶液及び、内径75μmのフューズドシリカキャピラリーチューブを用いてTRDCにおける流速と圧力の影響について検討した。キャピラリーの全長(110, 290, 350, 500cm)、実効長(90, 60, 30cm)および流速(0.1-3.0μL/min)を変化させた。検出部にかかる圧力をハーゲン・ポアズイユの式より求め、流速と圧力の関係をプロットした結果を図10に示す。この図において、( )内には使用したキャピラリー条件が記載されており、例えば全長が110cmで、実効長が90cmである場合を(110-90)と表記している。
図10の結果から、流速0.5-2.0μL/minの範囲内では管径方向への分配(相形成)が確認されたが、流速0.1-0.2μL/minおよび2.5-3.0μL/minの範囲では管径方向への分配(相形成)は確認されなかった。また、相形成が確認された圧力の範囲は1.017×105〜2.404×105 Paであった。
流速0.1-0.2μL/minの範囲では、キャリア溶液が管径方向ではなく管軸方向ヘプラグ状になって流れることから、このように流速の遅いときは表面張力の影響により相が形成されないものと考えられる。また、流速2.5-3.0μL/minの範囲においては、疎水性の蛍光試薬として用いたペリレンの青色と親水性の蛍光試薬として用いたエオシンYの緑色が混ざり合ったような状態が観測された。これは、流速が速くなるとせん断応力が大きくなり、すなわち、管径方向におけるずれ応力の変化が増大し、溶媒分子の管径方向への分配を阻害するためであると考えられる。
又、上記実験から、管内で相が形成されるには、圧力および流れが必要であり、流速が速くなると管内で生じるせん断応力が大きくなり、管内で形成していたキャピラリー中央部と内壁近傍が崩れ、キャリア溶液が均一になることが分かった。
又、本発明で使用されるキャリア溶液には塩が含まれていないので、キャピラリーチューブ内での塩析出の恐れがなく、水‐親水性溶媒‐疎水性溶媒三成分相図における均一‐不均一溶液境界線から、分離に適したキャリア溶液の組成比を適宜選択(水と親水性溶媒と疎水性溶媒の組成比率を調節)することによって種々の混合物の分離が行なえる。
本発明のTRDC分離方法では、当該組成比率を変更することで親水性物質と疎水性物質の溶出順序を変えることもでき、産業上非常に有用である。
Claims (3)
- オープンキャピラリーチューブを用いて2種類以上の物質が混合されてなる混合物から各物質を分離する方法であって、キャリア溶液として、水と親水性溶媒と疎水性溶媒とからなる三成分系の混合液で、三成分相図における均一‐不均一溶液境界線上又は当該境界線近傍の成分比率を有する均一溶液を用い、当該キャリア溶液を、内径が250μm以下のオープンキャピラリーチューブ内に層流条件下で送液することを特徴とする管径方向分配クロマトグラフフィー分離方法。
- 前記キャリア溶液の流速が0.5〜2.0μL/分であることを特徴とする請求項1に記載の管径方向分配クロマトグラフフィー分離方法。
- 前記親水性溶媒が、アセトニトリル、1‐プロパノール、エタノール、メタノール及びジオキサンから成るグループより選ばれたものであり、前記疎水性溶媒が、酢酸エチル、1‐ブタノール及びクロロホルムから成るグループより選ばれたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の管径方向分配クロマトグラフフィー分離方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011049138A JP2012185067A (ja) | 2011-03-07 | 2011-03-07 | 管径方向分配クロマトグラフィーを用いた混合物の分離方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011049138A JP2012185067A (ja) | 2011-03-07 | 2011-03-07 | 管径方向分配クロマトグラフィーを用いた混合物の分離方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2012185067A true JP2012185067A (ja) | 2012-09-27 |
Family
ID=47015271
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2011049138A Pending JP2012185067A (ja) | 2011-03-07 | 2011-03-07 | 管径方向分配クロマトグラフィーを用いた混合物の分離方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2012185067A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014235248A (ja) * | 2013-05-31 | 2014-12-15 | 東京応化工業株式会社 | レジスト組成物、化合物、高分子化合物及びレジストパターン形成方法 |
US11325104B2 (en) | 2017-12-07 | 2022-05-10 | Emp Biotech Gmbh | System and method of applied radial technology chromatography |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010249632A (ja) * | 2009-04-15 | 2010-11-04 | Doshisha | キャピラリークロマトグラフィーを用いた混合物の分離方法 |
-
2011
- 2011-03-07 JP JP2011049138A patent/JP2012185067A/ja active Pending
Patent Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010249632A (ja) * | 2009-04-15 | 2010-11-04 | Doshisha | キャピラリークロマトグラフィーを用いた混合物の分離方法 |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014235248A (ja) * | 2013-05-31 | 2014-12-15 | 東京応化工業株式会社 | レジスト組成物、化合物、高分子化合物及びレジストパターン形成方法 |
US11325104B2 (en) | 2017-12-07 | 2022-05-10 | Emp Biotech Gmbh | System and method of applied radial technology chromatography |
US11731107B2 (en) | 2017-12-07 | 2023-08-22 | Emp Biotech Gmbh | System and method of applied radial technology chromatography |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Carasek et al. | Basic principles, recent trends and future directions of microextraction techniques for the analysis of aqueous environmental samples | |
Hashemi et al. | Recent advances in liquid-phase microextraction techniques for the analysis of environmental pollutants | |
Kocúrová et al. | Solvent microextraction: a review of recent efforts at automation | |
US9504936B2 (en) | Method of packing chromatographic columns | |
JP6291618B2 (ja) | クロマトグラフィーシステムで使用するための乱流混合デバイス | |
Jinno et al. | Analytical Conditions and Separation Performance of Capillary Chromatography Based on the Tube Radial Distribution of Aqueous-Organic Mixture Carrier Solvents under Laminar-Flow Conditions | |
Peroni et al. | Advancing liquid/liquid extraction through a novel microfluidic device: Theory, instrumentation and applications in gas chromatography | |
Tsukagoshi | Investigation of Specific Microfluidic Flow with Two-phase Separation Mixed Solvent Solutions and Application to Flow Technology Mini-Review | |
Jinno et al. | Experimental consideration of capillary chromatography based on tube radial distribution of ternary mixture carrier solvents under laminar flow conditions | |
US20190247769A1 (en) | Fiber Chromatography | |
Yamada et al. | Tube radial distribution chromatography system developed by combining commercially available HPLC system and open-tubular capillary tube as separation column | |
JP2012185067A (ja) | 管径方向分配クロマトグラフィーを用いた混合物の分離方法 | |
Oliveira et al. | Universal approach for mesofluidic handling of bead suspensions in lab-on-valve format | |
Semail et al. | Induced sample via transient isotachophoresis mediated with sweeping in micellar electrokinetic chromatography for the dual-stacking strategy of non-steroidal anti-inflammatory drugs in environmental water samples | |
Miró et al. | Recent advances in on-line solvent extraction exploiting flow injection/sequential injection analysis | |
Kan et al. | Implementation of Tube Radial Distribution Chromatography by Using a Commercially Available HPLC System | |
Nagatani et al. | Tube radial distribution flow separation in a microchannel using an ionic liquid aqueous two-phase system based on phase separation multi-phase flow | |
Yamada et al. | Capillary Chromatography Based on Tube Radial Distribution of Aqueous–Organic Mixture Carrier Solvents: Introduction of Double Tubes Having Different Inner Diameters to the System | |
Cârje et al. | Enantioseparation of indapamide by high performance liquid chromatography using ovomucoid glycoprotein as chiral selector | |
Tayeb et al. | Troubleshooting and maintenance of high-performance liquid chromatography during herbicide analysis: An overview | |
JP2010249632A (ja) | キャピラリークロマトグラフィーを用いた混合物の分離方法 | |
Jinno et al. | Micro-flow separation system using an open capillary tube that works under laminar flow conditions | |
Nogami et al. | Elution Behavior of Lambda-DNA with Ternary Mixed Carrier Solvents in an Open-Tubular Capillary under Laminar Flow Conditions | |
Tanigawa et al. | Investigations into tie lines and solubility curves on phase diagrams in open-tubular capillary chromatography using ternary mixed-carrier solvents | |
Kan et al. | Protein separation through preliminary experiments concerning pH and salt concentration by tube radial distribution chromatography based on phase separation multiphase flow using a polytetrafluoroethylene capillary tube |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20131227 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20140704 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20140709 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20140827 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20150204 |