JP2009155556A - 脂肪族ポリエステルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造時において溶融重縮合反応速度が大きく、脂肪族ジオールの分解が少ない、透明で耐熱性の良好な脂肪族ポリエステル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】脂肪族ジカルボン酸成分に対する脂肪族ジオール成分のモル比を1.10〜2.00、反応温度を215〜235℃、反応圧力を50〜200kPaとしてエステル化反応を行ってエステル化率80%以上にせしめたエステル化反応物を、溶融重縮合反応に供することとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、脂肪族ポリエステルの製造方法に関する。詳しくは、品質の良い脂肪族ポリエステルの効率的な連続製造方法に関する。
近年、化石燃料の枯渇や大気中の二酸化炭素増加などの環境問題に対する意識が高まってきており、プラスチック業界においても製品の製造から廃棄までのライフサイクルを考慮した環境問題への対策が急務となっている。
こうした背景のもと、環境に優しいプラスチックとして、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールからなる脂肪族ポリエステルが注目されている。原料の脂肪族ジカルボン酸(例えばコハク酸やアジピン酸)は、植物由来のグルコースから発酵法を用いて製造でき、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール)も植物由来原料から製造できるので、化石燃料の省資源化をはかることができる。同時に、植物の育成により大気中の二酸化炭素が吸収されるため、二酸化炭素排出削減に大きく貢献することができる。更に、優れた生分解性を示すことも知られており、脂肪族ポリエステルは、環境に三重に優しいプラスチックであるといえる。
脂肪族ポリエステルは、通常、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、エステル化反応と溶融重縮合反応を行うことによって得られる。これらの反応は通常、回分法、連続法、あるいは回分法と連続法とを組み合わせた方法で行われる。これらの中で工業的に大量生産する場合は、生産性、品質安定性、経済性などの面から連続法が有利であり、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど大量生産されているものでは連続法によるものが圧倒的に多い。
脂肪族ポリエステルの連続製造方法については、特許文献1に開示されている。該文献によると、エステル化、溶融重縮合の反応温度を規定された温度以下で行うことが開示されているが、具体的に開示された技術では重合度上昇が必ずしも十分でなく、また脂肪族ジオールの反応中の分解も多いため、必ずしも満足できる方法ではなかった。
また、特許文献2には、所定の反応温度で所定エステル化率までエステル化反応を進め、所定重量平均分子量、所定酸価の低分子量体を得る工程と、所定反応温度で重縮合させて高分子量化する工程からなり、粘度が特定以上の高分子量化工程で、二軸連続重合反応装置を使用する技術が記載されている。しかしながら、開示された技術ではエステル化反応時間が比較的長く、また特定以上の高分子量化工程の前にペレット化して、再度重合反応装置にかけるなどするため、必ずしも効率的な方法とはいえなかった。
特開2006−265503号公報 特開2006−274253号公報
本発明は上記問題点に鑑み、製造時において溶融重縮合反応速度が大きく、脂肪族ジオールの分解が少ない、透明で耐熱性の良好な脂肪族ポリエステル及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題に関して検討を行った結果、脂肪族ポリエステルの連続製造において、エステル化反応の温度、圧力、脂肪族ジカルボン酸に対する脂肪族ジオールのモル比、エステル化率を特定の範囲にすることにより溶融重縮合反応速度が大きく、脂肪族ジオールの分解が少ない、品質が良好な脂肪族ポリエステルを製造することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明の第一の態様は、エステル化反応と溶融重縮合反応を経てポリエステルを得る、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを主成分とする脂肪族ポリエステルの連続製造方法であって、脂肪族ジカルボン酸成分に対する脂肪族ジオール成分のモル比を1.10〜2.00、反応温度を215〜235℃、反応圧力を50〜200kPaとしてエステル化反応を行ってエステル化率80%以上にせしめたエステル化反応物を、溶融重縮合反応に供することを特徴する脂肪族ポリエステルの製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
この態様において、溶融重縮合反応は、重縮合反応触媒としてチタン化合物を用いて行うことが好ましい。
また、この態様において、重縮合反応触媒を、脂肪族ジオールで希釈し、エステル化反応終了後から重縮合反応終了前までの間に、エステル化反応又は重縮合反応の反応液の液相に連続的に添加することが好ましい。
また、この態様において、エステル化反応ではエステル化反応触媒を使用しないことが好ましい。
また、この態様において、エステル化反応は、脂肪族ジカルボン酸成分に対する前記脂肪族ジオール成分のモル比が1.20〜1.60の間で行うことが好ましい。
また、この態様において、エステル化反応におけるエステル化率は85%以上であることが好ましい。
本発明の第二の態様は、固有粘度(〔η〕dL/g)が1.3〜2.5、末端カルボキシル基濃度(当量/トン)が5〜30、溶液ヘーズ(%)が0.01〜2.50、カラーb値が−3.0〜3.0である脂肪族ポリエステルを提供して前記課題を解決するものである。
本発明によれば、溶融重縮合反応速度が大きく、脂肪族ジオールの分解が少ない脂肪族ポリエステルの製造方法を提供することができる。この方法によれば安定に連続製造できるため、品質の安定した、透明で耐熱性の良好な脂肪族ポリエステルを提供することができ、ひいてはバイオマス由来のポリエステルの用途拡大に資することができる。
本発明は、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを主成分とし、エステル化反応、溶融重縮合反応を経てポリエステルを得る、脂肪族ポリエステルの連続製造方法に関するものである。ここで、「脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分とする」とは、本発明のポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分の85モル%以上が脂肪族ジカルボン酸であり、本発明のポリエステルを構成する全ジオール成分の85モル%以上が脂肪族ジオールであることをいう。以下、脂肪族ポリエステルの原料及び本発明の製造方法について、詳細に説明する。
(1)脂肪族ポリエステルの原料
脂肪族ポリエステルの原料である脂肪族ジカルボン酸成分としては、具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸、ダイマー酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などが挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体として酸無水物を用いてもよく、具体的には、無水コハク酸が挙げられる。これら脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体は、単独で用いても2種以上併用してもよい。これらの中でも、得られるポリエステルの物性の面から、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸が好ましく、特にはコハク酸が好ましい。コハク酸は得られる脂肪族ポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から全脂肪族ジカルボン酸に対して50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、特に好ましくは90モル%以上である。
また、ジカルボン酸成分として、上記脂肪族ジカルボン酸の他に、芳香族ジカルボン酸を併用してもよく、芳香族ジカルボン酸の具体的な例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸も、単独で用いても2種以上用いてもよい。
脂肪族ポリエステルの他の原料である脂肪族ジオール成分としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。これらの中でも、得られるポリエステルの物性の面から、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。1,4−ブタンジオールは、得られる脂肪族ポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から全脂肪族ジオールに対して50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、特に好ましくは90モル%以上である。
本発明において、脂肪族ポリエステルには、上記のジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール成分以外の他の構成成分を含有させてもよい。その他の構成成分となる共重合成分としては、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、リンゴ酸、クエン酸、及びこれらオキシカルボン酸のエステル、ラクトン、オキシカルボン酸重合体などのオキシカルボン酸類;マレイン酸やフマル酸等の不飽和カルボン酸;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコール;プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの無水物などの3官能以上の多価カルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
特に、3官能以上のオキシカルボン酸、3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸などの多官能化合物は、共重合成分として少量加えることにより、高粘度のポリエステルが得られるため好ましい。中でも、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸が好ましく、特にはリンゴ酸が好ましく用いられる。これら3官能以上の多官能化合物を加える場合、その量は、全ジカルボン酸成分に対して、0.001〜5モル%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5モル%である。この範囲の上限超過ではゲル(未溶融物)が生成しやすく、下限未満では粘度上昇の効果が得にくい傾向がある。
本発明の製造方法においては、反応の促進のために、エステル化反応や重縮合反応で反応触媒を添加することもできる。ただし、エステル化反応時にエステル化反応触媒が存在すると、エステル化反応によって生じる水によって触媒が反応物に不溶の析出物を生じ、得られるポリエステルの透明性を損なう(即ちヘーズが高くなる)ことがあり、また異物化することがある。エステル化反応においてはエステル化反応触媒がなくても十分な反応速度を得ることができるため、エステル化反応中には反応触媒は使用しないことが好ましい。反応触媒を添加する場合には、触媒を反応槽の気相部に添加するとヘーズか高くなることがあり、また触媒が異物化することがあるので、反応液中に添加することが好ましい。
一方、重縮合反応においては無触媒では反応が進みにくいため、触媒を用いることが好ましい。重縮合反応触媒としては、一般には、周期表1〜14族の金属元素のうち少なくとも1種を含む化合物が用いられる。金属元素としては、具体的には、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられる。その中では、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、亜鉛、鉄、ゲルマニウムが好ましく、特に、チタン、ジルコニウム、タングステン、鉄、ゲルマニウムが好ましい。更に、ポリエステルの熱安定性に影響を与えるポリエステル末端濃度を低減させるためには、上記金属の中では、ルイス酸性を示す周期表3〜6族の金属元素が好ましい。具体的には、スカンジウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステンであり、中でも、入手のし易さからチタン、ジルコニウムが好ましく、特には反応活性の点からチタンが好ましい。
本発明においては、触媒として、これらの金属元素を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ―ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が好ましく用いられる。
チタン化合物としては、テトラアルキルチタネート及びその加水分解物が好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート及びこれらの混合チタネート、及びこれらの加水分解物が挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等も好んで用いられる。また、アルコール、アルカリ土類金属化合物、リン酸エステル化合物、及びチタン化合物を混合することにより得られる液状物も用いられる。これらの中では、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー及び、アルコール、アルカリ土類金属化合物、リン酸エステル化合物、及びチタン化合物を混合することにより得られる液状物、が好ましく、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー及び、アルコール、アルカリ土類金属化合物、リン酸エステル化合物、及びチタン化合物を混合することにより得られる液状物がより好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート及び、アルコール、アルカリ土類金属化合物、リン酸エステル化合物、及びチタン化合物を混合することにより得られる液状物が好ましい。
ジルコニウム化合物としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセテート、ジルコニウムアセテートヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテート、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートならびにそれらの混合物が例示される。これらの中では、ジルコニルジアセテート、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテート、ジルコニウムアセテートヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシドが好ましく、ジルコニルジアセテート、ジルコニウムテトラアセテート、ジルコニウムアセテートヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドがより好ましく、特にジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレートが着色のない高重合度のポリエステルが容易に得られることから好ましい。
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
その他の金属含有化合物としては、炭酸スカンジウム、スカンジウムアセテート、スカンジウムクロリド、スカンジウムアセチルアセトネート等のスカンジウム化合物、炭酸イットリウム、イットリウムクロリド、イットリウムアセテート、イットリウムアセチルアセトネート等のイットリウム化合物、バナジウムクロリド、三塩化バナジウムオキシド、バナジウムアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネートオキシド等のバナジウム化合物、モリブデンクロリド、モリブデンアセテート等のモリブデン化合物、タングステンクロリド、タングステンアセテート、タングステン酸等のタングステン化合物、セリウムクロリド、サマリウムクロリド、イッテルビウムクロリド等のランタノイド化合物等が挙げられる。
また、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)等に記載される公知の層状珪酸塩を単独であるいは上記金属化合物と組み合わせた触媒を使用すると、重縮合速度が向上する場合があるため、このような触媒系もまた好ましく用いられる。
層状珪酸塩としては、具体的には、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク及び緑泥石群等が挙げられる。
本発明においては、触媒は、重縮合時に溶融あるいは溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重縮合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。また、重縮合は無溶媒で行うことが好ましいが、これとは別に、触媒を溶解させるために少量の溶媒を使用してもよい。この触媒溶解用の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールなどの前述のジオール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ヘプタン、トルエン等の炭化水素化合物、水ならびにそれらの混合物等が挙げられる。中でも、触媒溶解用の溶媒として、製造する脂肪族ポリエステルの主成分となる脂肪族ジオールを用いると、実質的に無溶媒で重縮合反応を行うことができるため好ましい。触媒溶解用の溶媒は、触媒濃度が、通常0.0001質量%以上、99質量%以下となるように使用する。
また、重縮合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常、0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上、より好ましくは1ppm以上であり、上限値が通常、3000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなく、理由は未だ詳らかではないが、ポリエステル中のカルボキシル基末端濃度が多くなる場合があるため、カルボキシル基末端量ならびに残留触媒濃度の増大によりポリエステルの熱安定性や耐加水分解性が低下する場合がある。逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリエステル製造中にポリエステルの熱分解が誘発され、実用上有用な物性を示すポリエステルが得られにくくなる。
触媒の反応系への添加位置は、溶融重縮合反応工程時に触媒が存在すれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよいが、水が多く存在、もしくは発生している状況下で触媒が共存すると触媒が失活し、異物が析出する原因となり製品の品質を損なう場合があるため、エステル化反応工程以後に添加するのが好ましい。特に好ましくはエステル化反応終了後から重縮合反応終了前までの間に、エステル化反応又は重縮合反応の反応液の液相に連続的に添加する。
(2)脂肪族ポリエステルの製造方法
以下に、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸、脂肪族ジオールとして1,4−ブタンジオール、多官能化合物としてリンゴ酸を原料とした、本発明にかかる脂肪族ポリエステルの製造方法の好ましい実施態様について、添付図面の参照符号を付記しつつ説明するが、本発明は図示の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明におけるエステル化反応工程の一実施形態を示す概略図、図2は、本発明における重縮合工程の一実施形態を示す概略図である。
図1において、原料のコハク酸、リンゴ酸は、通常、原料混合槽(図示せず)で1,4−ブタンジオール(BGと表すことがある。)と混合され、原料供給ライン1からスラリー又は液体の形態でエステル化反応槽Aに供給される。また、エステル化反応時に触媒を添加する場合は、触媒調整槽(図示せず)で1,4−ブタンジオールの溶液とした後、エステル化反応槽触媒供給ライン15から供給される。
ここで、エステル化反応槽Aにおける脂肪族ジカルボン酸成分に対する脂肪族ジオール成分のモル比は、下限が1.10であり、好ましくは1.12、更に好ましくは1.15、特に好ましくは1.20である。上限は2.00、好ましくは1.80、更に好ましくは1.60、特に好ましくは1.55である。下限より少ないとエステル化反応が不十分になりやすく、後工程の反応である重縮合反応が進みにくくなって高重合度のポリエステルが得にくい。一方、上限より多いと脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸の分解量が多くなり、好ましくない。
本発明において、「エステル化反応を行う脂肪族ジカルボン酸成分に対する脂肪族ジオール成分のモル比」とは、エステル化反応槽Aの気相及び反応液相に存在する、脂肪族ジカルボン酸及びエステル化された脂肪族ジカルボン酸に対する、脂肪族ジオール及びエステル化された脂肪族ジオールとのモル比を表し、反応系で分解されエステル化反応に寄与しない脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール及びそれらの分解物は含まれない。分解されてエステル化反応に寄与しないとは、例えば、脂肪族ジオールである1,4−ブタンジオールが分解してテトラヒドロフランになったものはこのモル比には含めない。このモル比を好ましい範囲に保つために、エステル化反応系に脂肪族ジオールを適宜補給することが好ましい。図1では後述するBG再循環ライン2にBG供給ライン3を連結し、両者を混合した後、エステル化反応槽Aの液相部に供給する態様が示されている。
エステル化反応温度は、下限が通常215℃以上、好ましくは218℃以上、上限が通常240℃以下、好ましくは235℃以下、より好ましくは233℃以下である。反応温度が下限より低いとエステル化反応速度が遅くなって反応時間を長時間必要とし、脂肪族ジオールの脱水分解など好ましくない反応が起こりやすくなる。一方、反応温度が上限を超えると、脂肪族ジオールや脂肪族ジカルボン酸の分解が多くなり、また反応槽内に飛散物が増加して異物発生原因となりやすく、その結果、反応物に濁り(ヘーズ)を生じやすくなる。エステル化反応温度は、エステル化率を安定させるために一定温度であることが好ましい。一定温度とは、通常設定温度の±5℃の範囲をいい、好ましくは±2℃の範囲内である。
反応圧力は、50kPa〜200kPaであり、下限は好ましくは60kPa、更に好ましくは70kPa、上限は好ましくは130kPa、更に好ましくは110kPaである。下限よりも反応圧力が低いと、反応槽内に飛散物が増加して反応物のヘーズが高くなり、異物増加の原因となりやすい。また、脂肪族ジオールの反応系外への留出が多くなって重縮合反応速度の低下を招きやすい。一方、上限よりも反応圧力が高いと、脂肪族ジオールの脱水分解が多くなり、重縮合速度の低下を招きやすい。
反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。また、反応時間は、通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは、4時間以下である。
本発明に用いるエステル化反応槽Aとしては、公知のものが使用でき、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽等の型式のいずれであってもよい。中でも攪拌装置を有する反応槽が好ましく、攪拌装置としては、動力部及び軸受、軸、攪拌翼からなる通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式攪拌機、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機等の高速回転するタイプも用いることができる。また、図示の態様では、エステル化反応は1つのエステル化反応槽Aで行われているが、図示のように単数槽としても、同種又は異種の槽を直列させた複数槽としてもよい。
攪拌の形態にも制限はなく、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部等から直接攪拌する通常の攪拌方法の他、反応液の一部を反応槽の外部に配管等で持ち出してラインミキサ−等で攪拌し、反応液を循環させる方法もとることができる。また、攪拌翼の種類も公知のものが選択でき、具体的にはプロペラ翼、スクリュー翼、タービン翼、ファンタービン翼、ディスクタービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等が挙げられる。
エステル化反応において、エステル化反応槽Aから留出するガスは、留出ライン5を経て精留塔Cで高沸成分と低沸成分とに分離される。通常、高沸成分の主成分は1,4−ブタンジオールであり、低沸成分の主成分は、水及びテトラヒドロフラン(THFと表すことがある。)である。
精留塔Cで分離された高沸成分は、抜出ライン6から抜き出され、ポンプDを経て、一部はBG再循環ライン2からからエステル化反応槽Aに循環され、一部は循環ライン7から精留塔Cに戻される。また、余剰分は抜出ライン8から外部に抜き出される。一方、精留塔Cで分離された軽沸成分はガス抜出ライン9から抜き出され、コンデンサGで凝縮され、凝縮液ライン10を経てタンクFに一時溜められる。タンクFに集められた軽沸成分の一部は、抜出ライン11、ポンプE及び循環ライン12を経て精留塔Cに戻され、残部は、抜出ライン13を経て外部に抜き出される。コンデンサGはベントライン14を経て排気装置(図示せず)に接続されている。エステル化反応槽A内で生成したエステル化反応物は、抜出ポンプB及びエステル化反応物の抜出ライン4を経て第1重縮合反応槽aに供給される。
図1に示す工程においては、BG再循環ライン2にBG供給ライン3が連結されているが、両者は独立していてもよい。また、原料供給ライン1はエステル化反応槽Aの液相部に接続されていてもよい。また、重縮合前のエステル化反応物に触媒を添加する場合は、触媒調製槽(図示せず)で所定濃度に調製した後、図2における触媒供給ラインL7及び供給ラインL8を経て、図1に示すエステル化反応物の抜出ライン4に供給される。
本発明においては、上記エステル化反応工程においてエステル化率80%以上にせしめたエステル化反応物を、次の重縮合反応に供する。ここで、エステル化率とはエステル化反応物試料中の全酸成分に対するエステル化された酸成分の割合を示すものであり、次式で表される。
エステル化率(%)=(ケン化価−酸価)/ケン化価)×100
エステル化反応物のエステル化率は、通常80%以上であり、好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上、特に好ましくは90%以上である。エステル化率が下限より低いと後工程の反応である重縮合反応の反応性が悪くなる。また、重縮合反応時の飛散物が増えて壁面に付着して固化し、更にこの飛散物が反応物内に落下し、ヘーズの悪化(異物発生)の要因となる。上限は後工程の反応である重縮合反応のためには高いほうがよいが、通常99%である。
また、エステル化反応物の末端カルボキシル基濃度は500〜2500当量/トンが好ましい。下限は更に好ましくは600当量/トン、特に好ましくは700当量/トンである。上限は更に好ましくは2000当量/トン、特に好ましくは1800当量/トンである。下限より低いと脂肪族ジオールの分解が多くなり、上限より高いと後工程の反応である重縮合反応性の反応性が悪くなる。また、重縮合反応時の飛散物が増えて壁面に付着して固化し、更にこの飛散物が反応物内に落下し、ヘーズの悪化(異物発生)の要因となる。
エステル化反応におけるジカルボン酸とジオールとのモル比、反応温度、反応圧力及び反応率を上記範囲にして連続反応を行い、連続的にエステル化反応物を重縮合反応に供することにより、ヘーズが低く異物が少ない高品質の脂肪族ポリエステルを効率的に得ることができる。
エステル化反応物の抜出ライン4、フィルターpを経たエステル化反応物は、図2に示される第1重縮合反応槽aに供給され、減圧下に重縮合されてポリエステル低重合体となる。第1重縮合反応槽aで重縮合されたポリエステル低重合体は、その後、抜出用ギヤポンプc及び出口流路である抜出ラインL1、フィルターqを経て第2重縮合反応槽dに供給される。第2重縮合反応槽dでは、通常、第1重縮合反応槽aよりも低い圧力で更に重縮合反応が進められる。得られた重縮合物は、抜出用ギヤポンプe及び出口流路である抜出ラインL3、フィルターrを経て第3重縮合反応槽kに供給され、ここで更に重縮合反応が進められる。
本発明に用いられる重縮合反応槽の型式に特に制限はなく、例えば、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽などを挙げることができる。重縮合反応槽は、1基とすることも、図示のように同種又は異種の複数基の槽を直列させた複数槽とすることもできるが、複数槽とすることが好ましく、反応液の粘度が上昇する重縮合の後期は界面更新性とプラグフロー性、セルフクリーニング性に優れた薄膜蒸発機能を有した横型攪拌重合機を選定することが好ましい。例えば本実施態様において、第3重縮合反応槽kは、複数個の攪拌翼ブロックで構成され、2軸のセルフクリーニングタイプの攪拌翼を具備した横型の反応槽である。
重縮合反応は、通常、減圧下で行われる。最終重縮合反応槽の反応圧力は、下限が通常0.01kPa以上、好ましくは0.03kPa以上であり、上限が通常1.4kPa以下、好ましくは0.4kPa以下である。重縮合反応時の圧力が高すぎると、重縮合時間が長くなり、それに伴いポリエステルの熱分解による分子量低下や着色が引き起こされ、実用上充分な特性を示すポリエステルの製造が難しくなる傾向がある。一方、超高真空重縮合設備を用いて製造する手法は重縮合反応速度を向上させる観点からは好ましい態様であるが、極めて高額な設備投資が必要となるため、経済的には不利である。
反応温度は、下限が通常215℃以上、好ましくは220℃以上であり、上限が通常270℃以下、好ましくは260℃以下の範囲である。この温度が低すぎると、重縮合反応速度が遅く、高重合度のポリエステル製造に長時間を要するばかりでなく、高動力の撹拌機も必要となるため、経済的に不利である。一方、反応温度が高すぎると製造時のポリエステルの熱分解が引き起こされやすく、高重合度のポリエステルの製造が難しくなる傾向がある。
反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは8時間以下、より好ましくは6時間以下である。反応時間が短すぎると反応が不充分で高重合度のポリエステルが得にくく、その成形品の機械物性が劣る傾向となる。一方、反応時間が長すぎると、ポリエステルの熱分解による分子量低下が顕著となり、その成形品の機械物性が劣る傾向となるばかりでなく、ポリエステルの耐久性に悪影響を与えるカルボキシル基末端量が熱分解により増加する場合がある。
第3重縮合反応槽kで重縮合反応を終えた脂肪族ポリエステルは、抜出用ギヤポンプm、出口流路である抜出ラインL5及びフィルターsを経てダイスヘッドgから溶融したストランドの形態で抜き出され、水などで冷却された後、回転式カッターhで切断されてポリエステルペレットとなる。L2、L4、L6は、それぞれ、第1重縮合反応槽a、第2重縮合反応槽d、第3重縮合反応槽kのベントラインである。
図2において各重縮合反応槽の前後に設置されているフィルターp、q、r、sは、反応物中の異物を除去するためのものであり、必ずしも全部設置する必要はなく、異物除去効果と運転安定性とを考慮して適宜設置することができる。
(3)脂肪族ポリエステル
上記本発明の製造方法により得られる脂肪族ポリエステルの固有粘度(〔η〕dL/g)は、下限が1.3dL/g以上であることが好ましく、特に好ましくは、1.6dL/g以上である。上限は2.8dL/g以下が好ましく、更に好ましくは2.5dL/g以下であり、特に好ましくは2.3dL/g以下である。固有粘度が下限より低いと、成形品にしたとき十分な機械強度が得にくい。一方、固有粘度が上限より高いと、成形時に溶融粘度が高く成形しにくい。
また、脂肪族ポリエステルの末端カルボキシル基濃度(当量/トン)は下限が5以上であることが好ましく、より好ましくは7以上であり、更に好ましくは10以上であり、特に好ましくは13以上である。上限は30以下であることが好ましく、より好ましくは25以下であり、更に好ましくは20以下であり、特に好ましくは18以下である。末端カルボキシル基濃度は低いほど熱安定性、耐加水分解性がよいが、低すぎると触媒量を下げる、あるいは重合温度を下げる必要があり、これは重縮合反応速度の低下をもたらし、実用的な速度で分子量が上昇しない。また、高すぎると熱安定性が悪く成形時などに熱分解が多くなる。
また、上記製造方法により製造された脂肪族ポリエステルのペレットのハンター色座標におけるカラーb値は、下限が−3.0以上であることが好ましく、更に好ましくは−1.0以上であり、特に好ましくは0.0以上である。上限は3.0以下であることが好ましく、更に好ましくは2.5以下であり、特に好ましくは2.0以下である。カラーb値が小さすぎると、成形品にしたとき青味があり好ましくないことがあり、また大きすぎると成形品にしたとき黄色味があり好ましくないことがある。
脂肪族ポリエステルの溶液ヘーズは、0.01〜2.5%であることが好ましい。下限は低いほど透明な製品が得られてよいが、通常0.01%以上である。上限はより好ましくは2.0%以下であり、更に好ましくは1.5%以下であり、特に好ましくは1.0%以下である。
溶液ヘーズが大きすぎると成形品に濁りが生じ、また、異物が多くなり好ましくない。ここで、溶液ヘーズとは、フェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合液を溶媒として、試料濃度10質量%の溶液の光路長10mmにおける濁度をいい、%で表す。
特に、脂肪族ポリエステルの固有粘度が1.3〜2.5dL/g、かつ末端カルボキシ基濃度が5〜30当量/トン、かつ溶液ヘーズが0.01〜2.5%、かつカラーb値が−3.0〜3.0であることとすると、成形性、熱安定性、色調に優れたバランスの取れた良好なポリエステル成形品の原料とすることができる。また、製造時の溶融状態におけるポリマーの透明性が高いことから、高品質なフィルム、シート等の成形品への利用が可能である。
本発明の製造方法により得られる脂肪族ポリエステルには、芳香族−脂肪族共重合ポリエステルや脂肪族オキシカルボン酸等を配合させて脂肪族ポリエステル組成物としてもよい。また、必要に応じて用いられるカルボジイミド化合物、充填材、可塑剤以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の生分解性樹脂、例えば、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等や、澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末、あるいはこれらの混合物を配合して脂肪族ポリエステル組成物とすることもできる。更に、成形体の物性や加工性を調整する目的で、熱安定剤、可塑剤、滑剤、ブロッキング防止剤、核剤、無機フィラー、着色剤、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤、改質剤、架橋剤等を含有させてもよい。
脂肪族ポリエステル組成物の製造方法は、特に限定されないが、ブレンドした脂肪族ポリエステルの原料チップを同一の押出機で溶融混合する方法、各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーブレンダー等の通常の混練機を用いて混練することによって混合する等が挙げられる。また、各々の原料チップを直接成形機に供給して組成物を調製すると同時に、その成形体を得ることも可能である。
本発明の製造方法により得られる脂肪族ポリエステル及びこれを用いた樹脂組成物は、熱安定性、引張強度、引張伸び等の実用物性を有するので、射出成形法、中空成形法、及び押出成形法等の汎用プラスチック成形法等により、フィルム、ラミネートフィルム、シート、板、延伸シート、モノフィラメント、マルチフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体等の成形品に利用可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性及び評価項目の測定方法は次の通りである。
<触媒中の金属元素分析>
試料0.1gをケルダールフラスコ中で硫酸存在下、過酸化水素で湿式分解の後、蒸留水にて定容したものについて、プラズマ発光分光分析装置(JOBIN YVON社製ICP−AES ULtrace JY−138U型)を用いて定量分析し、触媒中の金属含量(質量%)に換算した。
<触媒溶液のpH分析>
自動滴定装置(東亜DKK社製AUT−301型)を用い、大気下でpH電極を液状触媒に浸して測定した。
<エステル化反応物の末端カルボキシル基濃度 当量/トン>
エステル化反応物試料0.3gをベンジルアルコール40mLに入れ、180℃で20分間加熱し、10分間冷却した後、0.1mol・L―1のKOH/メタノール溶液で滴定して求めた値を当量/トンで表した。
<エステル化率 %>
以下の計算式(1)によって酸価及びケン化価から算出した。酸価は、エステル化反応物試料0.3gをベンジルアルコール40mLに入れ、180℃で20分間加熱し、10分間冷却した後、0.1mol・L―1のKOH/メタノール溶液で滴定して求めた。ケン化価は0.5NのKOH/エタノール溶液でオリゴマーを加水分解し、0.5Nの塩酸で滴定して求めた。
エステル化率=((ケン化価−酸価)/ケン化価)×100・・・(1)
<固有粘度(IV) dL/g>
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度0.5g/dLのポリマー溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(2)より求めた。
IV=((1+4KηSP0.5−1)/(2KC) ・・・(2)
(ただし、ηSP=η/η−1であり、ηは試料溶液落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズの定数である。Kは0.33を採用した。)
<ポリエステルの末端カルボキシル基濃度(AV) 当量/トン>
ペレット状ポリエステルを粉砕した後、熱風乾燥機にて乾燥し、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mLを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させた。次いで、クロロホルム5cmを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に、0.1mol・L―1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル試料を加えずに同様の操作を実施し、以下の式(3)によって末端カルボキシル基量(酸価)を算出した。
末端カルボキシル量(当量/トン)=(a−b)×0.1×f/W・・・(3)
ここで、aは、滴定に要した0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、bは、ブランクでの滴定に要した0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、Wはポリエステルの試料の量(g)、fは、0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。
なお、0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、以下の方法で求めた。試験管にメタノール5cmを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液の指示薬として1〜2滴加え、0.lmol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4cmで変色点まで滴定し、次いで力価既知の0.1mol・L−1の塩酸水溶液を標準液として0.2cm採取して加え、再度、0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定した(以上の操作は、乾燥窒素ガス吹き込み下で行った。)。そして、以下の式(4)によって力価(f)を算出した。
力価(f)=0.1mol・L−1の塩酸水溶液の力価×0.1Nの塩酸水溶液の採取量(μL)/0.1mol・L−1の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μL)・・・(4)
<カラーb値>
ペレット状ポリエステルを内径30mm、深さ12mmの円柱状の粉体測定用セルに充填し、測色色差計Z300A(日本電色工業(株)社製)を使用して、JIS Z8730の参考例1に記載されるLab表示系におけるハンターの色差式の色座標によるb値を、反射法により、測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
<溶液ヘーズ%>
フェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合液20mLにポリエステル試料2.70gを入れ、110℃、30分間で溶解させた後、この溶液を30℃の恒温水槽で15分間冷却し、濁度計(日本電色(株)社製NDH−300A)を使用して、光路長10mmのセルで溶液の濁度を測定し溶液ヘーズとした。値が低いほど透明性が良好であることを示す。
<THF化率モル%>
エステル化反応中の、1,4−ブタンジオールのTHFへの分解量を仕込みコハク酸量に対するモル%として表した。具体的には、連続反応の場合(実施例1から比較例2まで)、反応開始後16時間目から24時間目までにおける図1の抜出ライン(13)からの留出液質量と留出液中のTHF濃度(質量%)より、単位時間当たりの留出THF質量を算出後、以下の式(5)より求めた。
THF化率(モル%)=(単位時間当たりの留出THF質量/72.11)/(単位時間当たりにエステル化反応槽に供給したコハク酸質量/118.09)×100・・・(5)
留出液中のTHF濃度(質量%)は、以下の方法により求めた。すなわち、留出液を約1g精秤し、n−ドデカンのジオキサン溶液(n−ドデカン0.025g/ジオキサン5ml)を5ml添加し、ガスクロマトグラフ法により以下の式(6)より求めた。また、補正係数は、ジオキサンを基準として有効炭素数から求め、THFは1.640を使用した。
留出液中のTHF濃度(質量%)=(THFピーク面積×補正係数/n−ドデカンピーク面積×0.025)/留出液精秤量・・・(6)
装置は、GC−14BPF(島津製作所社製)(スプリット比:1/90、RANGE:10)を、カラムはJ&W社製のDB−WAX(内径:0.32mm、長さ:60m、膜圧:0.5μm)を使用した。注入部及び検出器温度は240℃、カラム温度は90℃から230℃まで7℃/minで昇温後、230℃で20分保持した。キャリヤガスには窒素(1mL/min)を用いた。
回分式反応(比較例3)におけるTHF化率は、エステル化反応槽でエステル反応中に留出した留出液質量と留出液中のTHF濃度(質量%)より、THF質量を算出後、以下の式(7)より求めた。
THF化率(モル%)=(エステル化反応時の留出THF質量/72.11)/(エステル化反応槽への仕込みコハク酸質量/118.09)×100・・・(7)
(実施例1)
[重縮合用触媒の調製]
撹拌装置付きのガラス製ナス型フラスコに、酢酸マグネシウム・4水和物を100質量部入れ、更に1500質量部の無水エタノール(純度99質量%以上)を加えた。更にエチルアシッドホスフェート(モノエステル体とジエステル体の混合質量比は45:55)を130.8質量部加え、23℃で撹拌を行った。15分後に酢酸マグネシウムが完全に溶解したことを確認後、テトラ−n−ブチルチタネートを529.5質量部添加した。更に10分間撹拌を継続し、均一混合溶液を得た。この混合溶液を、ナス型フラスコに移し、60℃のオイルバス中でエバポレーターによって減圧下で濃縮を行った。1時間後に殆どのエタノールが留去され、半透明の粘稠な液体を得た。オイルバスの温度を更に80℃まで上昇させ、5Torrの減圧下で更に濃縮を行い粘稠な液体を得た。この液体状の触媒を、1,4−ブタンジオールに溶解させ、チタン原子含有量が3.36質量%となるよう調製した。この触媒溶液の1,4−ブタンジオール中における保存安定性は良好であり、窒素雰囲気下40℃で保存した触媒溶液は少なくとも40日間析出物の生成が認められなかった。また、この触媒溶液のpHは6.3であった。
[脂肪族ポリエステルの製造]
図1に示すエステル化工程と図2及び図3に示す重縮合工程により、次の要領で脂肪族ポリエステル樹脂の製造を行った。先ず、リンゴ酸を0.18質量%含有したコハク酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオールを1.30モル及びリンゴ酸を総量0.0033モルの割合となるように混合した50℃のスラリーを、スラリー調製槽(図示せず)から原料供給ライン(1)を通じ、予め、窒素雰囲気下エステル化率99質量%の脂肪族ポリエステル低分子量体(エステル化反応物)を充填した攪拌機を有するエステル化反応槽(A)に、45.5kg/hとなるように連続的に供給した。
エステル化反応槽(A)の内温は230℃、圧力は101kPaとし、生成する水とテトラヒドロフラン及び余剰の1,4−ブタンジオールを、留出ライン(5)から留出させ、精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離した。系が安定した後の塔底の高沸成分は精留塔(C)の液面が一定になるように、抜出ライン(8)を通じて、その一部を外部に抜き出した。一方、水とTHFを主体とする低沸成分は塔頂よりガスの形態で抜き出し、コンデンサ(G)で凝縮させ、タンク(F)の液面が一定になるように、抜出ライン(13)より外部に抜き出した。同時に、BG再循環ライン(2)より100℃の精留塔(C)の塔底成分(98質量%以上が1,4−ブタンジオール)全量を、また、BG供給ライン(3)より、エステル化反応槽で発生したテトラヒドロフランと等モルの1,4−ブタンジオールを併せて供給し、エステル化反応槽内のコハク酸に対する1,4−ブタンジオールのモル比が1.30となるように調整した。供給量は、再循環ライン(2)とBG供給ライン(3)合わせて3.8kg/hであった。また、1,4−ブタンジオールがテトラヒドロフランに転化した量は、コハク酸1.00モルに対し、0.042モル(THF化率4.2モル%対コハク酸)であった。
エステル化反応槽(A)で生成したエステル化反応物は、抜出ポンプ(B)を使用し、エステル化反応物の抜出ライン(4)から連続的に抜き出し、エステル化反応槽(A)内液のコハク酸ユニット換算での平均滞留時間が3時間になるように液面を制御した。抜出ライン(4)から抜き出したエステル化反応物は、第1重縮合反応槽(a)に連続的に供給した。系が安定した後、エステル化反応槽(A)の出口で採取したエステル化反応物のエステル化率は92.4%であり、末端カルボキシル濃度は884当量/トンであった。
予め前述手法で調製した触媒溶液を、触媒調製槽において、チタン原子としての濃度が0.12質量%となるように1,4−ブタンジオールで希釈した触媒溶液を調製した後、触媒供給ライン(L7)及び供給ライン(L8)を通じて、1.4kg/hで連続的にエステル化反応物の抜出ライン(4)に供給した(触媒は反応液の液相に添加された)。供給量は運転期間中安定していた。
第1重縮合反応槽(a)の内温を240℃、圧力を2.67kPaとし、滞留時間が120分になるように液面制御を行った。減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L2)から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、初期重縮合反応を行った。抜き出した反応液は第2重縮合反応器(d)に連続的に供給した。
第2重縮合反応槽(d)の内温を240℃、圧力を0.67kPaとし、滞留時間が90分になるように液面制御を行い、減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L4)から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、更に重縮合反応を進めた。得られたポリエステルは、抜出用ギヤポンプ(e)により抜出ライン(L3)を経由し、第3重縮合反応器(k)に連続的に供給した。第3重縮合反応器(k)の内温は240℃、圧力は130Pa、滞留時間は60分間とし、更に、重縮合反応を進めた。得られたポリエステルは、ダイスヘッド(g)からストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッター(h)でカッティングしペレットとした。エステル化反応、重縮合反応は連続7日間行い、反応スタート後16時間経過してから8時間毎にサンプリングして得られた脂肪族ポリエステル物性を測定した。表1に得られた結果として、それぞれのサンプルの平均値及び触れ幅を示す。
(実施例2)
エステル化反応槽(A)の内温を220℃とした以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。反応開始後24時間目のサンプルの測定結果を表1に示す。
(実施例3)
エステル化反応槽(A)の圧力を66.7kPa、エステル化反応槽内のコハク酸に対する1,4−ブタンジオールモル比が1.50となるようにBG供給ライン(3)と再循環ライン(2)の流量を調整した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。反応開始後24時間目のサンプルの測定結果を表1に示す。
(実施例4)
エステル化反応槽(A)において、エステル化反応槽内のコハク酸に対する1,4−ブタンジオールモル比が1.50となるようにBG供給ライン(3)と再循環ライン(2)の流量を調整した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。反応開始後24時間目のサンプルの測定結果を表1に示す。
(実施例5)
リンゴ酸を0.13質量%含有したコハク酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオールを1.10モル、リンゴ酸を総量0.0033モルの割合となるように混合した50℃のスラリーを、42.0kg/hとなるようにエステル化反応槽(A)に連続的に供給した。エステル化反応槽(A)において、エステル化反応槽内のコハク酸に対する1,4−ブタンジオールモル比が1.10となるようにBG供給ライン(3)と再循環ライン(2)の流量を調整した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。反応開始後24時間目のサンプルの測定結果を表1に示す。
(実施例6)
エステル化反応槽(A)の内温を220℃、エステル化反応槽内のコハク酸に対する1,4−ブタンジオールモル比が1.80となるようにBG供給ライン(3)と再循環ライン(2)の流量を調整した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。反応開始後24時間目のサンプルの測定結果を表1に示す。
(実施例7)
予め実施例1の「重縮合用触媒の調製]手法にて調製した触媒溶液を、触媒調製槽において、チタン原子としての濃度が0.12質量%になるように、1,4−ブタンジオールで希釈した触媒溶液を調製した後、触媒供給ライン(15)を通じ、0.56kg/hで連続的にエステル化反応槽(A)に供給した。また、これとは別に、触媒調製槽よりチタン原子濃度0.12質量%の触媒溶液を、触媒供給ライン(L7)及び供給ライン(L8)を通じ、エステル化反応物の抜出ライン(4)に0.83kg/hとなるように供給した以外は、実施例1と同様にしてポリマーを得た。結果を表1に示す。反応開始後24時間目のサンプルの測定結果を表1に示す。
(実施例8)
第1重縮合反応槽(a)の気相部に、予め実施例1の「重縮合用触媒の調製]手法にて調製した触媒溶液を、チタン原子としての濃度が0.12質量%になるように、1,4−ブタンジオールで希釈した触媒溶液を、供給ライン(16)を通じ、1.4kg/hで連続的に供給した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。反応開始後24時間目のサンプルの測定結果を表1に示す。
(比較例1)
コハク酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオールを1.16モルの割合となるように混合した60℃のスラリーを、43.1kg/hとなるようにエステル化反応槽(A)に連続的に供給した。エステル化反応槽(A)の内温を210℃、平均滞留時間を1時間、エステル化反応槽内のコハク酸に対する1,4−ブタンジオールモル比が1.16となるようにBG供給ライン(3)と再循環ライン(2)の流量を調整した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。反応開始後24時間目のサンプルの測定結果を表1に示す。
(比較例2)
コハク酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオールを1.16モルの割合となるように混合した60℃のスラリーを、43.1kg/hとなるようにエステル化反応槽(A)に連続的に供給した。また、触媒として、90%の乳酸水溶液に、二酸化ゲルマニウム濃度が1質量%になるように調整したものを1.2kg/hとなるようにエステル化反応槽(A)に、供給ライン(15)を通じ、連続的に供給した。更に、エステル化反応槽内のコハク酸に対する1,4−ブタンジオールモル比の調整として、1,4−ブタンジオールを供給しなかった以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。エステル化反応槽内のコハク酸に対する1,4−ブタンジオールモル比は1.09であった。反応開始後24時間目のサンプルの測定結果を表1に示す。
(比較例3)
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、原料としてコハク酸中にリンゴ酸を0.14質量%含有したコハク酸100質量部、1,4−ブタンジオール99.2質量部、リンゴ酸0.24質量部(コハク酸に対して総リンゴ酸量0.33モル%)を仕込み、窒素−減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を撹拌しながら昇温を行い、内温が230℃に到達した時点(130分)でエステル化終了とした。その後、実施例1の「重縮合用触媒の調製]手法にて調製した触媒溶液をチタン原子としての濃度が1.0質量%になるように、1,4−ブタンジオールで希釈した触媒溶液を添加した。添加量は得られるポリエステルあたりチタン原子として50ppmとなる量とした。30分かけて240℃まで昇温し、同時に1時間30分かけて0.06×10Paになるように減圧し、更に0.06×10Paの減圧下で8.1時間反応させポリエステルを得た。結果を表1に示す。
Figure 2009155556
表1より、本発明の製造方法で製造したポリエステル(実施例1〜実施例8)は、全ての品質試験の結果が良好であった。ただし、エステル化反応時に触媒を添加して反応を行った実施例7や、重縮合時に気相部に触媒を添加した実施例8では、若干の溶液ヘーズの上昇がみられた。また、実施例1において一定時間毎に測定したポリエステル物性値の振れ幅が小さいことから、本発明の製造方法で得られるポリエステルは品質が安定したものであることが分かる。
一方、エステル化反応の反応温度が低くエステル化率が低い比較例1や、脂肪族ジカルボン酸成分に対する脂肪族ジオール成分のモル比が小さい比較例2で得られたポリエステルは、特に末端カルボキシル基濃度と溶液ヘーズの点で劣っていた。また、回分法で製造した比較例3のポリエステルは、末端カルボキシル基濃度が高く、また品質の触れ幅の大きいものであった。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明にかかる脂肪族ポリエステルの製造方法におけるエステル化反応工程の一実施形態を示す概略図である。 本発明にかかる脂肪族ポリエステルの製造方法における重縮合工程の一実施形態を示す概略図である。
符号の説明
1:原料供給ライン
2:BG再循環ライン
3:BG供給ライン
4:エステル化反応物の抜出ライン
5:留出ライン
6:抜出ライン
7:循環ライン
8:抜出ライン
9:ガス抜出ライン
10:凝縮液ライン
11:抜出ライン
12:循環ライン
13:抜出ライン
14:ベントライン
15、16:触媒供給ライン
A:エステル化反応槽
B:抜出ポンプ
C:精留塔
D、E:ポンプ
F:タンク
G:コンデンサ
L1、L3、L5:重縮合反応物抜出ライン
L2、L4、L6:ベントライン
L7:触媒供給ライン
L8:供給ライン
a:第1重縮合反応槽
d:第2重縮合反応槽
k:第3重縮合反応槽
c、e、m:抜出用ギヤポンプ
g:ダイスヘッド
h:回転式カッター
p、q、r、s:フィルター

Claims (7)

  1. エステル化反応と溶融重縮合反応を経てポリエステルを得る、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを主成分とする脂肪族ポリエステルの連続製造方法であって、
    脂肪族ジカルボン酸成分に対する脂肪族ジオール成分のモル比を1.10〜2.00、反応温度を215〜235℃、反応圧力を50〜200kPaとして前記エステル化反応を行ってエステル化率80%以上にせしめたエステル化反応物を、前記溶融重縮合反応に供することを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
  2. 前記溶融重縮合反応を、重縮合反応触媒としてチタン化合物を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  3. 重縮合反応触媒を、前記脂肪族ジオールで希釈し、前記エステル化反応終了後から前記重縮合反応終了前までの間に、前記エステル化反応又は前記重縮合反応の反応液の液相に連続的に添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  4. 前記エステル化反応でエステル化反応触媒を使用しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  5. 前記エステル化反応を、前記脂肪族ジカルボン酸成分に対する前記脂肪族ジオール成分のモル比が1.20〜1.60の間で行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  6. 前記エステル化反応におけるエステル化率が85%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  7. 固有粘度(〔η〕dL/g)が1.3〜2.5、末端カルボキシル基濃度(当量/トン)が5〜30、溶液ヘーズ(%)が0.01〜2.50、カラーb値が−3.0〜3.0である脂肪族ポリエステル。
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