JP5176649B2 - ポリエステルの製造方法 - Google Patents
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Description
こうした背景のもと、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールからなる脂肪族ポリエステルは、原料の脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸は植物由来のグルコースから発酵法を用いて製造でき、また脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールなども植物由来原料から製造できるので、原料供給が化石燃料原料の枯渇とは無関係になるとともに、植物の育成により二酸化炭素が吸収されるため二酸化炭素排出削減に大きく貢献することができ、又、生分解性プラスチックとしても期待されているポリマーである。
脂肪族ポリエステル製造においては、溶融重縮合後に環状2量体などの副生物を除去するため押出機による脱揮を行うことがある。然しながら、リンゴ酸などの多価ヒドロキシカルボン酸などを使用して製造した場合、溶融重縮合後に高温で長時間にわたり溶融状態で保持すると、ゲルが生成し異物化しフィルムなど成形品の品質を低下させるという問題がある。
即ち、本発明の要旨は、連続した複数の反応槽を用い、エステル化反応工程、溶融重縮合反応工程応及び押出し工程を経て、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを主成分とし、3官能以上の多官能化合物を共重合成分とする脂肪族ポリエステルを得る連続製造方法であって、該溶融重縮合反応工程における最後の反応槽の出口から押出し工程における最後の反応槽の出口までの間の重縮合反応物にラジカルトラップ剤を添加することを特徴とする脂肪族ポリエステルの連続製造方法に存する。
本発明は、連続した複数の反応槽を用い、エステル化反応工程、溶融重縮合反応工程応及び押出し工程を経てジカルボン酸及びジオールを主成分とするポリエステルを得る連続製造方法であって、該溶融重縮合反応工程における最後の反応槽の出口から押出し工程における最後の反応槽の出口までの間の重縮合反応物にラジカルトラップ剤を添加することを特徴とする。
本発明において、脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを主成分とし、連続した複数の反応槽を用いエステル化反応、溶融重縮合反応を経て得られるポリエステルである。ここで脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオールを主成分とするとは、本発明のポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分の85モル%以上が脂肪族ジカルボン酸であること及び、本発明のポリエステルを構成する全ジオール成分の85モル%以上が脂肪族ジオールであることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸成分としては、具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸、ダイマー酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、などがあげられ、これらの中で、得られるポリエステルの物性の面から、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸が好ましく、特にはコハク酸が好ましい。又、これら脂肪族ジカルボン酸は酸無水物の形態で使用することもできる。尚、これらは2種以上が併用されていてもよい。コハク酸又はコハク酸無水物は得られる脂肪族ポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から全脂肪族ジカルボン酸に対して50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、特に好ましくは90モル%以上である。
<脂肪族ジオール成分>
脂肪族ジオール成分としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等があげられ、これらの中で得られるポリエステルの物性の面から、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が好ましい。尚、これらは2種以上が併用されていてもよい。1,4−ブタンジオールは得られる脂肪族ポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から全脂肪族ジオールに対して50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、特に好ましくは90モル%以上である。
本発明のポリエステルのその他の構成成分となる共重合成分としては、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、フマル酸等のオキシカルボン酸、及びこれらオキシカルボン酸のエステルやラクトン、オキシカルボン酸重合体等、或いはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコール、或いは、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの無水物などの3官能以上の多価カルボン酸又はその無水物等があげられる。
<ポリエステルの連続製造方法>
本発明におけるポリエステルの連続製造方法として脂肪族ポリエステルを例にとり説明するがこれに限定されるものではない。
図1において、原料のコハク酸、リンゴ酸は、通常、原料混合槽(図示せず)で1,4−ブタンジオールと混合され、原料供給ライン1からスラリー又は液体の形態でエステル化反応槽Aに供給される。また、エステル化反応時に触媒添加する場合は、触媒調整槽(図示せず)で1,4−ブタンジオールの溶液とした後、エステル化槽触媒供給ライン3から供給される。
精留塔Cで分離された高沸成分は、抜出ライン6から抜き出され、ポンプDを経て、一部は再循環ライン2から反応槽Aに循環され、一部は循環ライン7から精留塔Cに戻される。また、余剰分は抜出ライン8から外部に抜き出される。一方、精留塔Cで分離された軽沸成分はガス抜出ライン9から抜き出され、コンデンサGで凝縮され、凝縮液ライン10を経てタンクFに一時溜められる。タンクFに集められた軽沸成分の一部は、抜出ライン11、ポンプE及び循環ライン12を経て精留塔Cに戻され、残部は、抜出ライン13を経て外部に抜き出される。コンデンサGはベントライン14を経て排気装置(図示せず)に接続されている。反応槽A内で生成したエステル化反応物は、抜出ポンプB及びエステル化反応物の抜出ライン4を経て溶融重縮合反応工程に供給される。
抜出ライン4から図2に示される溶融重縮合反応工程の第1重縮合反応槽aに供給されたエステル化反応物は、減圧下に重縮合されてポリエステル低重合体となり、その後、抜出用ギヤポンプc及び抜出ラインL1を経て第2重縮合反応槽dに供給される。第2重縮合反応槽dでは、通常、第1重縮合反応槽aよりも低い圧力で更に重縮合反応が進められる。得られた重縮合物は、引き続き抜出用ギヤポンプe及び抜出ラインL3を経て、第3重縮合反応槽kに供給され、更に重縮合反応が進められる。符号L2、L4、L6は、それぞれ、第1重縮合反応槽a、第2重縮合反応槽d、第3重縮合反応槽kのベントラインである。本明細書では、重縮合反応槽を溶融重縮合反応工程における反応槽ともいう。
本発明の製造方法においては、反応の促進のために、エステル化反応や重縮合反応で反応触媒を添加することもできる。エステル化反応においては無触媒でも十分な反応速度を得ることができるが、重縮合反応においては無触媒では反応が進みにくいため、触媒を用いることが好ましい。
重縮合反応触媒としては、一般には、周期表1〜14族の金属元素のうち少なくとも1種を含む化合物が用いられる。金属元素としては、具体的には、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウム等があげられる。その中では、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、亜鉛、鉄、ゲルマニウムが好ましく、特に、チタン、ジルコニウム、タングステン、鉄、ゲルマニウムが好ましい。更に、ポリエステルの熱安定性や耐加水分解性に影響を与える末端濃度を低減させるためには、上記金属の中では、ルイス酸性を示す周期表3〜6族の金属元素が好ましい。具体的には、スカンジウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステンであり、特に、入手のし易さからチタン、ジルコニウムが好ましい。
本発明においては、触媒は、重縮合時に溶融或いは溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重縮合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。また、重縮合は無溶媒で行うことが好ましいが、これとは別に、触媒を溶解させるために少量の溶媒を使用してもよい。この触媒溶解用の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールなどの前述のジオール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ヘプタン、トルエン等の炭化水素化合物、水並びにそれらの混合物等があげられ、その使用量は、触媒濃度が、通常0.0001重量%以上、99重量%以下となるように使用する。
ル) ホスフェート、エチルジエチルホスホノアセテート、エチルアシッドホスフェート
、トリエチレングリコールアシッドホスフェート、亜燐酸等の燐化合物を安定剤として共存させてもよい。
前記エステル化反応工程中、又は溶融重縮合工程中又押出し工程中には、ポリエステルの特性が損なわれない範囲において各種の添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤及び紫外線吸収剤等を添加してもよい。
第3重縮合反応槽kで重縮合反応を終えた脂肪族ポリエステルは、溶融状態のままで、抜き出しラインL5、抜出用ギヤポンプn及び押出機原料樹脂供給ラインL9を経て押出し工程に導入され脱揮される。
本発明において、押出し工程とは溶融重縮合反応工程における最後の反応槽の出口から重縮合反応物(ポリエステル)の出口配管(例として図2、3における反応物抜き出しラインL5)、必要に応じてギヤポンプ、フィルターなどを経て、押出機入り口配管(例として図2、3における押出機樹脂供給ラインL9)、押出機、必要に応じてギヤポンプ、フィルターを経て、押出機の出口までをいうが、より具体的には、押出機の出口とはポリエステルが押出しされ、カッティング等によりペレット化されるまでを云う。
本発明において、溶融重縮合反応工程における最後の反応槽(重縮合反応槽)の出口から押出し工程の最初の反応槽(押出機)の入り口までの間(例として、図3におけるL5,n、L9)における重縮合反応物の平均滞留時間は上限は60分が好ましく、より好ましくは40分、更には20分が好ましい。上限以上では配管内などや押出機内で急激な粘度上昇が起こり押出が不安定で、運転が困難になることがある。またポリエステルの熱分解が起こり異物の原因となることがある。
図3は押出し工程の一例であり、本発明において好ましく用いられる脱揮用ベント付、液体注入口付2軸押出機の一実施形態を示す概略図である。図3において、2軸押出機20は、押出機シリンダ21に添加剤添加口27、液体注入ラインL10、L12とそれぞれ繋がる液体注入口22、24と、ベントラインL11、L13とそれぞれ繋がるベント23、25とを有しており、一端にモーター26を有する。押出機処理後の溶融ポリエステルはギヤポンプpによりポリマーフィルターqへ供給し、フィルター通過後の溶融ポリエステルはダイrより抜き出して、冷却後に回転式カッターuでカッティングし、ポリエステルペレットを得る。
本発明において、ラジカルトラップ剤とは、ポリエステルの熱分解などによって発生する活性ラジカルをトラップする機能を有するものであり、これにより、ポリエステル中にゲルが発生するのを抑制できる。
ラジカルトラップ剤として、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が好ましく用いられる。
3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4‘−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等があげられる。
脱揮効果を高める観点から、2軸押出機20では液体注入口22、24を通じて水などの液体が注入されてもよい。ベント23、25を通じて減圧されることにより、ポリエステル樹脂の脱揮が効果的になされ、ポリエステル中の環状2量体が低減される。
ベント部の圧力は40kPa以下が好ましく、より好ましくは10kPa以下、最も好ましくは5kPa以下である。下限は低圧である方がよいが、通常0.05kPaである。
押出機のなかではスクリュー回転による剪断発熱でポリエステル温度が上昇することがあるが押出機出口温度で上限300℃とすることが好ましくより好ましくは280℃である。下限は通常200℃好ましくは220℃である。 上限以上では押出機内で急激な粘度上昇が起こり押出が不安定で、困難になることがある。またポリエステルの熱分解が起こり異物の原因となることがある。下限は、低いと脱揮効果が少ない。
下限は、ポリエステルの熱劣化の観点からは短いほど良いが配管取り回し上、ギヤポンプとフィルターを備える場合通常5分程度以上となる。
また、本発明の脂肪族ポリエステルの成形時に上に示した各種の添加剤の他に、ガラス繊維、炭素繊維、チタンウィスカー、マイカ、タルク、CaCO3 、TiO2、シリカ等
の強化剤及び増量剤、さらに酸化防止剤、光安定剤など公知の安定剤、滑剤などの加工助剤を添加して成形することもできる。
<触媒中の金属元素分析>
試料0.1gをケルダールフラスコ中で硫酸存在下、過酸化水素で湿式分解の後、蒸留水にて定容したものについて、プラズマ発光分光分析装置(JOBIN YVON社製ICP−AES ULtrace JY−138U型)を用いて定量分析し、触媒中の金属含量(質量%)に換算した。
東亜DKK社製自動滴定装置(AUT−301型)を用い、大気下でpH電極を液状触媒に浸して測定した。
<エステル化率>
以下の計算式(1)によって酸価及びケン化価から算出した。酸価は、ベンジルアルコールに試料を溶解させ、0.1NのKOH/メタノール溶液を使用して滴定により求めた。ケン化価は0.5NのKOH/エタノール溶液でオリゴマーを加水分解し、0.5Nの塩酸で滴定し求めた。
<固有粘度(IV)>
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度0.5g/dLのポリマー溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(2)より求めた。
(但し、ηSP=η/η0−1であり、ηはポリマー溶液落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。)
<環状2量体含有量>
ポリエステルの環状2量体含有量の測定は、高速液体クロマトグラフ分析を用いて下記条件で行った。
移動相: アセトニトリル/水(容量比4/6)
カラム: 資生堂社製「SHISEIDO CAPCELL PAK C−18 TYPE
MG」
カラムオーブン温度: 40℃
流速: 1.0mL/分
検出器:UV検出器(検出波長:210nm)
ポリエステル試料0.5gをクロロホルム10mLに室温で溶解させ、エタノール/水(容量比8/2)混合溶媒30mLを加えてポリマー部分を沈殿させた。2mLの上澄み液を採取し、室温で溶媒を留去後、得られた固体を2mLのアセトニトリルに再溶解させた。アセトニトリル溶液中の環状2量体含有量(質量%)はUV検出器を用い、環状2量体純粋品を用いた絶対検量線法で決定した。
<ペレット色調YI>
ペレットを内径30mm、深さ12mmの円柱状の粉体測定セルに充填し、測色色差計Z300A(日本電色工業社製)を使用してJIS K7103の方法に準拠して測定した。
<フィルムフィッシュアイ>
ポリエステルペレットをイナートオーブン中で窒素雰囲気下80℃10時間乾燥した後、Film Quality Testing System(オプティカルコントロールシステムズ社 形式FS−5)を使用し、厚さ30μmで幅110mmのフィルムを成形温度190℃、冷却ロール温度30℃でTダイ成形し、成形が安定してからフィッシュアイ数をインライン測定し、フィルム面積1m2当たりの大きさ200μm以上のフィッシュアイ数を求めた。
尚、本実施例及び比較例で添加するラジカルトラップ剤は以下の4種である。
テトラキス−[メチレン−3−(3‘,5’−ジ−t−ブチル−4‘−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製 Irganox1010)
融点115〜125℃
ラジカルトラップ剤2:ヒンダードフェノール系化合物
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製 Irganox1330)
融点240℃
ラジカルトラップ剤3:ヒンダードアミン系化合物
ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノル]
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製 Tinuvin944LD)
軟化点100〜135℃
ラジカルトラップ剤4:
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製 IRGAFOS168)
これらのラジカルトラップ剤は、実施例1の溶融重縮合工程と同様にして得られる脂肪族ポリエステルをペレット化した後に 該ペレットに1質量%混合し、押出機にて押出し、ペレット化しラジカルトラップ剤マスターバッチペレットとして実験に供した。
<触媒溶液の調製>
撹拌装置付き500mlのガラス製ナス型フラスコに酢酸マグネシウム・4水和物を62.0g入れ、更に250gの無水エタノール(純度99%以上)を加えた。更にエチルアシッドホスフェート(モノエステル体とジエステル体の混合質量比は45:55)を35.8g加え、23℃で撹拌を行った。15分後に酢酸マグネシウムが完全に溶解したことを確認後、テトラ−n−ブチルチタネートを75.0g添加した。更に10分間撹拌を継続し、均一混合溶液を得た。この混合溶液を、1Lのナス型フラスコに移し、60℃のオイルバス中でエバポレーターによって減圧下で濃縮を行った。約1時間後に殆どのエタノールが留去され、半透明の粘稠な液体が残った。オイルバスの温度を更に80℃まで上昇させ、665Paの減圧下で更に濃縮を行った。粘稠な液体は表面から粉体状へと徐々に変化し、約2時間後には完全に粉体化した。その後、窒素を用いて常圧に戻し、室温まで冷却し、淡黄色粉体108gを得た。得られた触媒の金属元素分析値は、チタン原子含有量が10.3質量%、マグネシウム原子含有量が6.8質量%、リン原子含有量が7.8質量%であり、各原子のモル比としては、チタン/リン=0.78、マグネシウム/リン=1.0であった。また、エタノール溶媒を除く原料総質量に対して37%の製造時質量減少率が認められた。尚、この粉体においては、エチルアシッドホスフェート由来のエタノールやテトラ−n−ブチルチタネート由来のブタノール、1,4−ブタンジオールのアルコキシド基由来の吸収がNMR上で観測されず、本触媒のチタン金属には有機アルコキシド基が結合していないことが判明した。
<エステル化反応工程及び重縮合反応工程>
図1に示すエステル化反応工程と図2に示す重縮合反応工程を通し、次の要領で脂肪族ポリエステルの製造を行った。まず、コハク酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオール1.30モル及びリンゴ酸0.0033モルの割合で混合した60℃のスラリーをスラリー調製槽から原料供給ライン(1)を通じ、予め、エステル化率99%の脂肪族ポリエステル低重合体を溶融充填したスクリュー型攪拌機を有するエステル化反応槽(A)に、42kg/hとなるように連続的に供給した。同時に、再循環ライン(2)から100℃の精留塔(C)の塔底成分(98質量%以上が1,4−ブタンジオール)を3.0kg/hで供給した。
第1重縮合反応槽(a)の内温は250℃、圧力2.7kPaとし、滞留時間が120分になるように液面制御を行った。減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L2)から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、初期重縮合反応を行った。抜き出した反応液は第2重縮合反応槽(d)に連続的に供給した。
2軸押出機は(図3の21)口径30mm、L/D=45.5の同方向回転の2軸押出機である。この押出機で脱揮処理を行った。押出機シリンダの設定温度は190℃、スクリュー回転数を250rpmに設定した。重縮合反応後の反応物を33kg/hで連続的に供給し、その後でラジカルトラップ剤1を含有するマスターバッチペレットを、ラジカルトラップ剤濃度が脂肪族ポリエステル中に0.1質量%となるように、窒素シールされたラジカルトラップ剤添加口(図3の27)から供給した。ラジカルトラップ剤を分散混合した後で、脂肪族ポリエステルに対して1質量%のイオン交換水を液添ポンプにて液体注入口(図3の22)から連続供給し、引き続きベント口(図3の23)よりベントラインL11を介して真空ポンプにて脱揮した。同様にして液体注入口24よりイオン交換水を供給し、ベント口25より脱揮し、更にL13より下流の液体注入口(図示していない)より、イオン交換水を供給し、ベント口(図示していない)より脱揮した。尚注水部位のスクリューにはニーディングエレメントを使用し、ニーディング部の後にはシールリングを装着し、注水部分で水を分散させるようにした。ギヤポンプpにて押出機より脱揮処理後の脂肪族ポリエステルを抜き出してポリマーフィルターqへ移送し、次いでダイrへ移送し、ダイから出たストランドを水槽で冷却した後、回転式カッターuでカッティングし、脱揮処理後の脂肪族ポリエステルペレットを得た。各ベント口の圧力は3kPaで、押出機出口におけるポリエステルの温度を樹脂温度計tで計測すると260℃であり、押出機内での滞留時間は3分であった。溶融ポリエステルが押出機出口からギヤポンプを経てダイより出るまでの平均滞留時間は10分であった。溶融重縮合工程出口のポリエステルサンプルの固有粘度、環状2量体含有量、及び得られた脂肪族ポリエステルの環状2量体量含有量、固有粘度、色調、フィルムフィッシュアイを評価し、まとめて表1に示した。フィッシュアイは少なく良好であった。また得られた脂肪族ポリエステルの融点は120℃であった。
なお、重縮合工程出口から押出機入口までの平均滞留時間は、ラインL5の配管内体積とラインL9の配管内体積とギヤポンプn内の液充満部体積を足し合わせた反応液体積の合計と、樹脂温度計sで測定される反応液温度における反応液密度と単位時間当たりの液流量から計算して求めた。
(実施例2)
ラジカルトラップ剤の添加量を0.01質量%にした以外は実施例1と同様に実施した。フィルムのフィッシュアイは良好でペレット色調は良好であった。結果を表1に示す。
(実施例3、4、8)
ラジカルトラップ剤の種類をラジカルトラップ剤2、3、4にそれぞれ変えた以外は実施例1と同様に実施した。フィルムフィッシュアイは良好であった。結果を表1に示す。
(実施例5)
押出機シリンダの設定温度を250℃に上げた以外は実施例1と同様に実施した。環状2量体量は更に減少したが、IVはやや上昇し、フィルムフィッシュアイはやや多かった。結果を表1に示す。
(実施例6)
ライン(L5)とライン(L9)の長さを長く取り回しして配管滞留時間を80分にした以外は実施例1と同様に実施した。実施例5よりも更にIVが高くなり、フィルムフィッシュアイも増加した。結果を表1に示す。
ライン(L5)とギヤポンプ(n)とライン(L9)の熱媒温度を高くし、配管中の反応物温度を300℃にした以外は実施例1と同様に実施した。実施例6と同じくIVが高くなり、色調は悪くなり、フィルムフィッシュアイも増加した。結果を表1に示す。
(比較例1)
ラジカルトラップ剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に実施した。IVの上昇が著しく、フィルムフィッシュアイも非常に多く外観の悪いフィルムとなった。結果を表1に示す。
(比較例2)
ラジカルトラップ剤を2軸押出機で添加せずにペレットを得た後に、フィルム成形時にラジカルトラップ剤マスターバッチをペレットブレンドして、フィルム成形を行った以外は実施例1と同様に実施した。比較例1と同じくフィルムフィッシュアイが非常に多く外観の悪いフィルムとなった。結果を表1に示す。
2:再循環ライン
4:エステル化反応物の抜出ライン
5:留出ライン
6:抜出ライン
7:循環ライン
8:抜出ライン
9:ガス抜出ライン
10:凝縮液ライン
11:抜出ライン
12:循環ライン
13:抜出ライン
14:ベントライン
A:エステル化反応槽
B:抜出ポンプ
C:精留塔
D、E:ポンプ
F:タンク
G:コンデンサ
L1、L3、L5:反応物抜出ライン
L2、L4、L6:減圧ライン
L7:触媒供給ライン
a:第1重縮合反応槽
d:第2重縮合反応槽
k:第3重縮合反応槽
c、e、n:抜出用ギヤポンプ
s:樹脂温度計
20:2軸押出機
L9:押出機原料樹脂供給ライン
L10、L12:液体注入ライン
L11、L13:脱揮用ベントライン
21:押出機シリンダ
22、24:液体注入口
23、25:ベント
27:ラジカルトラップ剤添加口
26:モーター
p:ギヤポンプ
q:ポリマーフィルター
r:ダイ
s、t:樹脂温度計
u:回転式カッター
Claims (7)
- 連続した複数の反応槽を用い、エステル化反応工程、溶融重縮合反応工程及び押出し工程を経て、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを主成分とし、3官能以上の多官能化合物を共重合成分とする脂肪族ポリエステルを得る連続製造方法であって、該溶融重縮合反応工程における最後の反応槽の出口から押出し工程における最後の反応槽の出口までの間の重縮合反応物にラジカルトラップ剤を添加することを特徴とする脂肪族ポリエステルの連続製造方法。
- 該溶融重縮合反応工程における最後の反応槽の出口から押出し工程の最初の反応槽の入り口までの間における重縮合反応物の温度が270℃以下であり、且つ平均滞留時間が60分以内である請求項1記載の脂肪族ポリエステルの連続製造方法。
- 押出し工程の最後の反応槽の出口におけるポリエステルの温度が300℃以下である請求項1又は2に記載の脂肪族ポリエステルの連続製造方法。
- 脂肪族ジカルボン酸の50モル%以上がコハク酸であり、脂肪族ジオールの50モル%以上が1,4−ブタンジオールである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステルの連続製造方法。
- 3官能以上の多官能化合物がオキシカルボン酸であり、その含有割合が全ジカルボン酸成分に対して0.001〜5モル%である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリエステルの連続製造方法。
- ラジカルトラップ剤をマスターバッチペレットとして添加することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のポリエステルの連続製造方法。
- ラジカルトラップ剤が少なくとも、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物のいずれかを含む請求項1乃至6のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステルの連続製造方法。
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