JP2009149708A - オレフィン重合用触媒及びそれを用いたオレフィン重合体の製造方法 - Google Patents

オレフィン重合用触媒及びそれを用いたオレフィン重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のフィリップス触媒では製造が困難であった高分子量体を製造可能な、新規なオレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合触媒及びこれを用いたオレフィン重合体の製造法の提供。
【解決手段】成分(A):粘土、粘土鉱物及びイオン交換性層状化合物から選ばれた粘土鉱物等、成分(B):M(OR)nで表される特定の化合物、および成分(C)クロム酸、重クロム酸もしくはその塩、又は、クロムの陽イオンとハロゲンイオン、無機酸ないし有機酸の陰イオンからなるクロム化合物を接触させて得られる成分をオレフィン重合用触媒として使用する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、オレフィン重合用触媒及びそれを用いたオレフィン重合体の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、高分子量のポリオレフィンを生成可能なオレフィン重合用触媒及びこれを用いたオレフィン重合体の製造方法に係り、特に従来のフィリップス触媒では製造が困難なレベルの高分子量領域のポリオレフィンを製造可能としたオレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体の製造方法に関する。
オレフィン重合体は、各種の成形品の樹脂材料として、一般的に広く用いられているが、その成形方法と用途によって要求される特性が異なっている。例えば、射出成形法によって成形される製品には分子量が比較的低く、狭い分子量分布を有する重合体が適しているが、ブロー成形やインフレーション成形などによって成形される製品には、分子量が比較的高く、分子量分布の広い重合体が適している。
従来から、シリカ又はこれを主体とする複合酸化物に担持され、酸素の存在下で焼成活性化することにより少なくともクロム原子の一部が6価であるクロム触媒成分(フィリップス触媒)を用いることにより、ブロー成形、特に大型ブロー成形に適した広い分子量分布のポリエチレンが得られることはよく知られている。
このフィリップス触媒の改良技術として、例えば、「無機酸化物担体に担持され、非還元性雰囲気下で焼成し活性化された少なくともクロム原子の一部が6価であるクロム触媒成分に、不活性炭化水素溶媒中で有機マグネシウムを担持し、さらに溶媒を除去し乾燥して得られる有機マグネシウム担持クロム触媒」を用いてエチレンを重合する発明が開示されている(特許文献1参照)。
また、「粘土、粘土鉱物及びイオン交換性層状化合物からなる群より選ばれた少なくとも一つの粘土鉱物等を、クロム酸及びその塩、重クロム酸及びその塩、又は、クロムの陽イオンと、ハロゲンイオン、無機酸及び有機酸の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとからなるクロム化合物の均一溶液と接触させることにより得られた固体生成物であって、該固体生成物に含まれるクロムの少なくとも一部が6価であることを特徴とするオレフィン重合用触媒」を用いてエチレンを重合する発明が開示されている(特許文献2参照)。
フィリップス触媒以外にも、オレフィン重合用触媒として、粘土鉱物を特定の方法で処理したものが利用できることが知られている(例えば、特許文献3〜4参照)。特許文献3では、「(a)クロム塩及び塩基を水に溶解することにより、加水分解した第一溶液を調製し、その第一溶液を約20〜約100℃の範囲の温度に、溶液が約1.5〜約2.5の範囲のpHに達するまで連続的に攪拌しながら加熱し、それによってマスターバッチを形成し、(b)前記マスターバッチを水で希釈して希釈第二溶液を生成させ、前記希釈第二溶液を加熱して加熱第二溶液を生成させ、(c)二八面体又は三八面体スメクタイトである固体フィロ珪酸塩粘土を前記加熱第二溶液に添加し、そして加熱を継続し、(d)支柱型フィロ珪酸塩粘土を回収し、そして(e)前記支柱型フィロ珪酸塩粘土を乾燥して第一生成物を形成する、ことからなる支柱型フィロ珪酸塩粘土の製造方法」が開示されている。
しかしながら、この方法は、クロム塩の溶解、加水分解、加熱、pH調節、希釈、加熱、接触等の工程を経て、層状粘土の層間にポリヒドロキシ性のクロムオリゴマーを、支柱型に生成させるもので、処理工程が長く、複雑である。更にこれを酸化性雰囲気中で活性化して、トリエチルアルミニウム、トリエチル硼素、トリエチルシランのような共触媒とともにオレフィン重合用触媒として使用することが開示されているが、共触媒のない状態での利用については記載されていない。
あるいは特許文献4では、「(I)粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を、周期表第4〜6族遷移金属原子からなる群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲンイオン、無機酸および有機酸の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも一種の陰イオン、とからなる水溶性又は酸性水溶液に可溶性の塩と接触させて固体生成物を得る工程、(II)該固体生成物を洗液のpHが3〜7となるまで水で洗浄する工程、(III)水洗した固体生成物を乾燥する工程、及び(IV)乾燥した固体生成物を有機アルミニウム化合物と接触させて触媒を得る工程を順次実施することにより製造されるオレフィン重合用触媒」が開示されている。
しかしながら、この方法も有機アルミニウム化合物との接触工程を必須とするもので、(III)工程で得られた固体生成物をそのまま重合用触媒として利用することは記載されていない。
フィリップス触媒は、得られるオレフィン重合体(ポリマー)の分子量分布の広さとポリマー鎖中に長鎖分岐が存在することから、主に、高密度ポリエチレンのブロー成形分野を中心に使用されている触媒である。また、重合条件の面から言えば、一般的には重合時にスカベンジャーとしての有機アルミニウム化合物を用いない点や、得られるポリマーの分子量を主に重合温度により制御する点が特徴として挙げられる。これらの特徴は、いわゆるチーグラー触媒やメタロセン触媒とは全く異なっており、分子量や分子量分布の制御範囲を広げるために、異なるタイプの触媒を組み合わせるという手法をとることは困難である。従って、フィリップス触媒と同様な重合面での特徴を持ち、得られるポリマーの分子量が大きく異なる触媒が簡便な手法で得られれば、従来のフィリップス触媒との併用も可能となり、分子量や分子量分布の制御範囲がさらに広がり、材料設計の幅が広がることが期待される。しかしながら、これらの観点からすると、従来公知のフィリップス触媒の改良技術に対しても、更なる改良が必要であった。
特開2002−80520号公報 特開2006−257255号公報 特開平5−238723号公報 特開平9−194517号公報
本発明は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、簡便な手法により得られる特定のクロム原子を含有する粘土鉱物からなるオレフィン重合用触媒成分から得られるオレフィン重合用触媒が、従来のフィリップス触媒より高分子量のポリエチレンを生成することを見出し完成されたものである。
本発明の要旨は、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を接触させて得られることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
成分(A):粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物から選ばれる成分
成分(B): 下記一般式(1)で表される化合物
[化1] M(OR)n (1)
(式中、Mは周期律表第3族から14族の元素を表し、Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基またはシリル基を表し、nはMの価数と同じ整数を表す。)
成分(C):クロム酸もしくはその塩、重クロム酸もしくはその塩、または、クロムの陽イオンとハロゲンイオンまたは無機酸もしくは有機酸の陰イオンから選ばれる陰イオンとからなるクロム塩、から選ばれるクロム化合物にある。
また、本発明の他の要旨は、成分(A)が、成分(B)と接触する前に、酸により処理されたものである前記オレフィン重合用触媒にある。
また、本発明の他の要旨は、成分(B)のMの量が、成分(A)1gに対して0.3mmol〜4mmolとなるように接触させた前記オレフィン重合用触媒にある。
また、本発明の他の要旨は、成分(C)のクロムの量が、成分(A)に対して0.01〜2重量%となるように接触させた請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒にある。
また、本発明の他の要旨は、含有されるクロムの少なくとも一部が6価である請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒にある。
また、本発明の他の要旨は、含有されるクロムが、酸素の存在下、400〜900℃に加熱することにより6価に変換されたものであることを特徴とする請求項5に記載のオレフィン重合用触媒にある。
また、本発明の他の要旨は、含有されるクロムの50〜100重量%が6価のクロムである前記のオレフィン重合用触媒にある。
また、本発明の他の要旨は、前記オレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンを重合することを特徴とするオレフィン重合体の製造方法にある。
本発明の触媒を使用すれば、現行のフィリップス触媒に対して、同一のプロセスが使用可能であり、また、得られるポリマーの分子量は現行フィリップス触媒で得られるものよりも高分子量体となるため、分子量分布の設計の幅が広がり、ブロー成形分野を中心に材料設計が行いやすくなる。
本発明の成分(A)として、粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状化合物からなる群より選ばれた少なくとも一つの粘土鉱物等の成分が使用される。ここで、「粘土鉱物等」とは、粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状化合物からなる群より選ばれた少なくとも一つの総称である。特定の粘土鉱物等は、「粘土」、「粘土鉱物」および「イオン交換性層状化合物」の三者に、それぞれ重複して分類されることがあるが、本発明に使用されるものは、これらのいずれかに少なくとも分類されるものである。粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる化合物であり、含有するイオンが交換可能なものを言う。大部分の粘土はイオン交換性層状化合物である。また、これら、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
粘土、粘土鉱物の具体例としては、アロフェン等のアロフェン族、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイト等のハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、アタパルジャイト、セピオライト、パイゴルスカイト、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、ヒシンゲル石、パイロフィライト、リョクデイ石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
これらのうち好ましくはディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイト等のハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物が挙げられる。特に好ましくはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイトが挙げられる。また、人工の合成物として、合成ヘクトライト、合成雲母(マイカ)、合成サポナイト等が挙げられる。
イオン交換性層状化合物は、粘土鉱物の大部分を占めるものであり、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライトなど)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。
イオン交換性層状化合物としては、各種公知のものが使用できる。具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。2:1型鉱物類としては、例えば、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族、バーミキュライトなどのバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族、パイロフィライト、タルクなどのパイロフィライト−タルク族、Mg緑泥石などの緑泥石族が挙げられる。2:1リボン型鉱物類としては、例えば、セピオライト、パリゴルスカイトなどが挙げられる。また、人工の合成物として、例えば、合成ヘクトライト、合成雲母(マイカ)、合成サポナイト等が挙げられる。本発明で原料として使用されるイオン交換性層状化合物としては、上記の混合層を形成した層状珪酸塩を用いることができる。本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることがさらに好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。
イオン交換性層状化合物は、六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl型、CdI型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物等を例示することができる。イオン交換性層状化合物の具体例としては、α−Zr(HAsO・HO、α−Zr(HPO、α−Zr(KPO・3HO、α−Ti(HPO、α−Ti(HAsO・HO、α−Sn(HPO・HO、γ−Zr(HPO、γ−Ti(HPO、γ−Ti(NHPO・HO等の多価金属の結晶性酸性塩があげられる。
これら粘土鉱物等は、特に処理を行うことなくそのまま用いてもよいし、ボールミル、ジェットミルなどによる粉砕、更に要すれば、ふるい分け、水ひ(水中での沈降速度を利用した分級方法)、造粒等の処理による粒子形状の制御を行った後に用いてもよい。また、粘土鉱物等は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明で使用するイオン交換性層状化合物の珪酸塩は、天然品または工業原料として入手したもの、或いは人工の合成物をそのまま用いることができるが、予め、成分Bの化合物との接触より前に、酸処理を行うことが好ましい。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造に含まれるAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部又は全部を溶出させる効果がある。8面体イオンの溶出の程度は酸処理前を基準として、1〜90%、好ましくは3〜80%である。結晶構造に含まれる陽イオンが溶出することにより、結晶構造は部分的に崩壊することになるが、このことは、後述するように、高温での加熱操作が必要となってくる場合においては、かえって、加熱による結晶構造変化に伴う細孔容積や表面積の変化を抑制する効果をもたらすものと期待される。また、固体中での粘土鉱物等の分散性が向上することから、含有されるクロム当たりの重合活性は向上する傾向にある。
上記酸処理で用いられる酸としては、無機酸または有機酸を使用することができる。例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸等の有機酸が挙げられる。好ましくは硫酸、塩酸、硝酸、酢酸又はシュウ酸が使用される。これらは2種以上併用することも可能である。酸処理条件は、公知の方法を特に制限なく使用できる。例えば、酸濃度は水溶液等の溶媒中の濃度で0.1〜50重量%、処理温度は室温〜使用溶媒の沸点の間の温度、処理時間は5分〜24時間、それぞれ採用できる。この酸処理は、粘土鉱物等を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。
本発明において、酸処理以外の予備処理として、アルカリ処理や有機物処理、酸化剤処理、還元剤処理等の他の化学処理を併用してもよい。
このようにして得られる予備処理した粘土鉱物等は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1ml/g以上、特には0.3〜5ml/gのものを使用することが好ましい。また、これら粘土鉱物等には、通常吸着水および層間水が含まれるため、不活性ガス流通下で加熱脱水処理するなどして、水分を除去してから使用するのが好ましい。
ここで、吸着水とは、粘土鉱物等の粒子の表面あるいは結晶破面に吸着された水で、層間水は結晶の層間に存在する水である。吸着水および層間水の加熱除去方法は特に制限されないが、加熱脱水、気体流通下の加熱脱水、減圧下の加熱脱水および有機溶媒との共沸脱水等の方法が用いられる。加熱の際の温度は、層間水が残存しないように、100℃以上、好ましくは150℃以上であるが、構造破壊を生じるような800℃を越える高温条件は好ましくない。好ましくは350℃以下である。加熱時間は0.5時間以上、好ましくは1時間以上、12時間程度である。その際、脱水乾燥した後の塩処理固体生成物の水分含有量が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有量を0重量%としたとき、3重量%以下、好ましくは1重量%以下、下限は0重量%以上である。
本発明の成分(B)として、一般式(1)で表される化合物が用いられる。
[化1] M(OR)n (1)
ここで、Mは周期律表第3族から第14族の元素を表し、Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基またはシリル基を表し、nはMの価数と同じ整数を表す。複数存在するOR基は同一でも異なっていてもよい。
Mとして好ましい元素は、周期律表第4族から第14族の元素であり、さらに好ましくは、周期律表第4族から第6族および周期律表第13族から第14族の元素が好ましい。具体的には、Ti,Zr,Hf,V,Cr,Mo,W,Ni,B,Al,C,Si,Snなどが例示されるが、これらの中で好ましいのは、Ti,Zr,Hf,V,Cr,B,Al,Siである。さらに好ましくは、Ti,Zr,Hf,Siである。
式中ORは、酸素とRが結合していることを示す。Rとしては、水素、炭素数1〜20の炭化水素基、シリル基が挙げられる。炭化水素基の場合、脂肪族炭化水素でも芳香族炭化水素基でもどちらでも良い。また、直鎖状、分岐状、環状いずれの形態の炭化水素基も用いることが出来る。ここで、成分(A)と成分(B)中のMが相互作用し、成分(A)の表面の性質を変化させることで、本発明の効果、すなわち得られるポリマーの分子量の向上効果が得られると考えている。従って、R基が嵩高で大き過ぎるは、成分(A)と成分(B)中の元素Mの相互作用を妨げることが考えられる。そこでRが炭化水素基の場合、好ましいRの炭素数は1〜10であり、さらに好ましくは1〜6である。
Rが炭化水素基の場合の具体例としては、メチル基、エチル基、直鎖または分岐のプロピル基、直鎖または分岐のブチル基、直鎖、分岐または環状のヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、等が例示できる。また、これらの炭化水素基の一部が水素以外の置換基であっても良いが、置換基として好ましいのは、シリル基である。
Rがシリル基の場合、ケイ素には水素、炭化水素、ハロゲン、アミン等任意の置換基を有することが出来るが、好ましくは水素または炭化水素基である。ケイ素に結合する置換基が炭化水素の場合、炭素数の合計は1〜20、好ましくは1〜10である。
Rがシリル基の場合の好ましい具体例としては、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、トリエチルシリル基、エチルメチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ブチルジメチルシリル基、フェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる。
本発明における成分(C)のクロム化合物として、下記3種のいずれかが用いられる。ただし、下記(3)に属する化合物の中には重複して分類されるものも含まれている。
(1)クロム酸もしくはその塩、
(2)重クロム酸もしくはその塩、
(3)クロムの陽イオンと、ハロゲンイオンまたは無機酸もしくは有機酸の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとからなるクロム塩
(1)クロム酸塩としては、クロム酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
(2)重クロム酸塩としては、重クロム酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。クロム酸塩の場合と同様である。
(3)クロムの陽イオンとしては、2価、3価、4価、5価又は6価のクロムイオンが用いられるが、2価又は3価のクロムイオンが好ましい。ハロゲンイオンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の陰イオンが用いられる。無機酸及び有機酸の陰イオンとしては、ハロゲン酸イオン、過ハロゲン酸イオン、亜ハロゲン酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン、アセチルアセトナートなどが挙げられる。具体的には、クロムのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、塩化クロミル、臭化クロミル、硝酸クロム、硫酸クロム、リン酸クロム、酢酸クロム、シュウ酸クロム、クロム−1,3−ジケト化合物、クロム酸エステル、トリス(2−エチルヘキサノエート)クロム、クロムアセチルアセトネート、ビス(t−ブチル)クロメート等が挙げられる。
これらの中でも、硝酸クロム、酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートが好ましい。さらに好ましくは水溶性又は酸性水溶液に可溶性の化合物である。ここで、酸性水溶液とは、pH6以下、好ましくは、pH3以下の水溶液を意味する。また、これら塩は2種以上、混合して使用してもよい。酢酸クロム、クロムアセチルアセトネート、クロム酸エステルのような有機基を有するクロム化合物を用いた場合、後に述べる非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分は燃焼し、最終的には少なくとも一部のクロム原子は6価となると考えられる。初めから6価のクロム化合物を出発原料とした場合は、焼成活性化の工程は不要であるが、好ましくは、2〜5価のクロム化合物を粘土鉱物等に接触させた固体生成物を、その後焼成して6価とする方法である。
クロム化合物を溶解させる溶媒は特に限定されないが、一般的には、水、アルコール、エーテル、ケトン、炭化水素、ハロゲン化炭化水素が用いられる。これらの中で、粘土鉱物等の層状構造を膨潤させ、層間イオンの交換を起こしやすくするという観点から、好ましくは、水、アルコール、エーテル、ケトンが用いられ、特に水が好ましい。
本発明では、固体生成物に含まれるクロムの少なくとも一部が6価であることが好ましい。一般式(1)で表される前記化合物、すなわち成分(B)の役割は必ずしも明確ではないが、以下のように考えられる。通常、フィリップス触媒においては、シリカ等の無機酸化物の表面水酸基にCr原子が担持された後に、酸素存在下、400〜900℃に加熱することなどで6価に変換される。このような条件では、有機物は燃焼反応により焼失し、高温でも存在可能な無機物の状態となる。成分(B)も無機物の状態になり、無機酸化物の表面に吸着して、最終的には、固体生成物の表面の性質に影響を与えるものと考えられる。また、成分(C)で示されるクロム化合物は、成分(B)とも直接相互作用をすることになるため、無機酸化物の表面水酸基と類似した構造および効果が期待される化合物が好ましいと考えられる。本発明の触媒によるオレフィン重合反応においては、従来よりも高分子量のポリオレフィンが得られるが、これは成分(B)による固体表面の改質効果によるものと考えられる。この成分(A)に対して成分(C)の2成分系を接触させただけで調製された触媒と、成分(A)に、成分(B)および成分(C)の3成分系を接触させて調整された触媒とは、賦活処理後の6価クロムへの変換値(重量%)が90%以上と、ほぼ同じ値であっても、後者の3成分系の触媒の場合には、分子量の高くなる重合が達成できる。勿論、分子量分布、分岐などの分子構造により若干影響を受けるが、高分子量の大きさの傾向を示す指標の一つであるHLMI(21.6kg/10分)にしたがって、ポリエチレンの例で見るなら、二成分系は、一般的には0.10〜30程度であるのに対して、三成分系では0.01〜0.10程度の相対的に低い一般的な傾向を鮮明に示すので、三成分系の触媒の方が、相対的に高分子量のものが重合されていることが容易に推察できる。
成分(A)、成分(B)および成分(C)の接触は、任意の順番方法で行うことが出来る。例えば、
(1)成分(A)に成分(B)を接触させた後、成分(C)を接触させる方法
(2)成分(A)に成分(C)を接触させた後、成分(B)を接触させる方法
(3)成分(B)と成分(C)を接触させた後、成分(A)を接触させる方法
(4)成分(A)と成分(B)の接触物と成分(A)と成分(C)の接触物をさらに接触される方法、
などが挙げられる。これらの中で好ましい接触順は、上記(1)、(2)、(3)の接触順であるが、さらに好ましくは(1)、(3)である。接触順(1)の場合、成分(A)と成分(B)を接触させた後、成分(B)の燃焼温度または分解温度以上の高温で処理する工程を経た後、成分(C)を接触させる方法を用いることも出来る。
各成分を接触させるとき、各成分は化合物をそのまま用いても良いし、溶媒で希釈して用いても良い。溶媒を用いる場合は、均一溶液として用いても、スラリー状態で用いてもどちらでも良いが、好ましくは、成分(B)および成分(C)は均一溶液として用いるのが好ましい。成分(B)と成分(C)をスラリー化または溶解させるのに用いる溶媒は同じであっても異なっていても良いが、相分離せずに均一に混合される溶媒同士であることが好ましい。具体的には、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類である。
成分(A)に対する成分(B)の使用量は、成分(A)の表面への成分(B)の分散状態に影響するため、成分(B)の使用量は、成分(A)が本来持つ性質を変化させるのに必要な量以上でかつ、成分(A)の性質が無くならない量以下が好ましい。具体的には、成分(A)1gに対し、成分(B)のM原子として0.3mmol〜4mmol接触させることが好ましく、さらに好ましくは、0.4mmol〜2.5mmolである。
成分(A)に対する成分(C)の使用量は、成分(A)1gに対して成分(C)のCr原子が0.01〜2重量%使用することが好ましく、さらに好ましくは0.05〜1.5重量%である。上記範囲を外れると、重合活性、重合体の分子量等、充分な効果を発揮することが難しくなりやすい。
上記の方法により得られる成分(A)、成分(B)、成分(C)の接触生成物は、クロム原子の少なくとも一部を6価に変換する操作を実施する前に、余分な溶媒を除去するための乾燥を実施することが出来る。乾燥とは、使用した溶媒を除去することを示すので、後述するクロム原子の価数の変換を目的とした加熱など、化学変化を目的とした操作とは区別される。乾燥は300℃以下、好ましくは200℃以下の温度で、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、12時間以内程度で実施される。
本発明において、クロム化合物のクロム原子の少なくとも一部を6価に変換させるため、酸素の存在下、400〜900℃、特に450〜850℃の温度で加熱を行ことが好ましい。これは、高分子量の重合体を生成させる活性種を生成させ、しかも重合活性種を均一にするという観点から、酸素存在下での加熱操作を実施することが好ましい。この加熱操作は、「賦活」とも呼ばれる。上記の加熱操作の際、水分を実質的に含まない非還元性雰囲気下(例えば、酸素または空気下)が好ましく、不活性ガスが共存していてもよい。好ましくはモレキュラーシーブス等を流通させた十分に乾燥した空気を用い、流動状態下で焼成を行うとよい。このとき、酸素は存在していれば濃度は特に限定されないが、好ましくは、1〜100容積%の濃度の雰囲気下で行われ、さらに好ましくは、5〜50容積%の濃度の雰囲気下で行われる。また、加熱温度は更に好ましくは500〜800℃の範囲である。加熱時間は通常1〜50時間、好ましくは2〜30時間で行なわれる。固体生成物を賦活することにより、その中に含有されるクロムの大部分は6価に変換される。通常、50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%が変換されるように、賦活の温度及び時間が調節される。
クロム原子の総量は、通常一般の金属分析法、例えば、プラズマ発光分析、蛍光X線法により測定することができる。クロムの価数は固体生成物の色変化(一般的には、6価は黄色からオレンジ色、3価は緑色、2価は青色)を肉眼観察することにより概略を知ることができるが、定量を行うには、簡便な手法として、キレート滴定法や吸光光度法が知られている。具体的には、日本化学会編「実験化学講座15 分析」丸善(1991年)P.246〜248に記載がある。例えば、3価のクロムの場合は、酸性溶液中の3価のクロムに対して過剰の濃度既知のEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を加え5〜10分煮沸し、3価の鉄の標準液で滴定することにより定量できる。また、6価のクロムの場合は、アルカリ性溶液ではCrO 2−として存在することを利用し、366nmの波長の吸光度を測定することにより定量が可能である。
以上により成分(A)、成分(B),成分(C)からの固体生成物で、含有するクロムの少なくとも一部が6価であるオレフィン重合用触媒が得られる。以下、この重合触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法について説明する。
本発明に用いられるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンあるいはこれらの誘導体が挙げられる。また、上記オレフィンの単独重合のほか上記オレフィンの2種以上の混合物を用いるランダム共重合や2種以上のオレフィンを用いるブロック共重合にも好適に適用できる。製造される代表的な重合体を列挙すれば、ポリエチレン、いわゆる特に高密度ポリエチレン(HDPE)に相当する密度0.940〜0.965g/cm程度のものまでを含む各種ポリエチレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、ポリプロピレンなどの、列挙のオレフィンの範疇に属する各種モノマーを任意に組み合わせ、しかも任意のモノマー組成比で組み合わせた共重合体とすることが出来る。しかも、触媒、重合条件、モノマー仕様などを調整すれば、分子量も通常ものから、比較的分子量が非常に高い重合体または共重合体までを製造することができる。重合反応は、チーグラー触媒等を使用する公知の重合方法が採用でき、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素や液化α−オレフィン等の溶媒存在下、あるいは不存在下に1段又は多段で行われる。重合温度は−50〜250℃、重合圧力は特に制限されないが、好ましくは常圧〜約200MPaの範囲が例示できる。また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。更に、重合温度、分子量調節剤の濃度等を変えて多段階で重合させてもよい。さらに、重合方法としては、溶液重合、気相重合、固相重合、塊状重合などの慣用の重合方法により実施できる。勿論、懸濁重合、乳化重合のような、有機または水性媒体のような非溶媒中における重合も採用することが出来る。
重合に際しては、スカベンジャーとして有機アルミニウム化合物を使用することも出来る。有機アルミニウム化合物は、スカベンジャーとしての役割の他にも、本触媒においては、得られるポリマーの分子量を高くしたり、分子量調節剤としての水素がより効きやすくなるという効果も併せ持っている。使用される有機アルミニウム化合物には特に制限はないが、好ましくは下記一般式で表されるものが挙げられる。
AlR3−a
(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示し、aは0<a≦3の数を示す。)
上記の有機アルミニウム化合物としては、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシド等のハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他、メチルアルミノキサン等のアルミノキサン類等も使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。これらの有機アルミニウム化合物を使用する場合には、固体触媒1gあたり0.001〜100mmol、好ましくは0.01〜10mmolの比率である。
本発明においては、固体生成物を本重合の触媒として使用する前にエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等のオレフィンと予備的に接触させて重合し、必要に応じて前記の不活性炭化水素溶媒で洗浄することもできる。この予備的な重合は、不活性溶媒中で穏和な条件で行うことが好ましく、固体触媒1gあたり、0.01〜1000g、好ましくは0.1〜100gの重合体が生成するように行うことが望ましい。
本発明の触媒は、いわゆるフィリップス触媒では製造が困難なレベルの高分子領域のポリオレフィンが可能である。この理由は必ずしも明確ではないが、成分(A)の表面を成分(B)由来の酸化物で修飾することにより、成分(C)から生成する6価クロム周辺の電子状態や、配位状態が変化したためと考えている。
本発明の触媒は、広くオレフィン類の重合体の製造触媒として使用出来るが、特に、エチレンの単独重合体又はエチレンを主体(80モル%以上)とするエチレン系重合体の製造に好適に用いられる。
次に実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りこれら実施例によって制約を受けるものではない。以下の実施例、比較例の結果を後記[表1]にまとめた。なお、実施例中、物性評価は下記に従った。
(1)HLMI:ASTM−D−1238−57Tに準拠し、190℃、21.6kg荷重で測定した。
(2)ポリマー密度:JIS−K6760に準拠して密度勾配管法で測定した。
(3)6価のクロムの含有量:NaOH水溶液(0.1M)を触媒成分に添加し、6価のクロムを溶解させ、溶液の一部をとり波長366nmの吸光度を測定することにより定量した。
以下に、本発明のオレフィン重合用触媒を調整することが出来る、仕様を例示する。
[触媒仕様の実施態様例]
触媒成分 成分(A) 成分(B) 成分(C)
(仕様番号)
1 モンモリロナイト Si(OC クロムアセチルアセトネート
2 カオリナイト Al(OC 硫酸クロム
3 バーミキュライト B(OSi(CH)) 酢酸クロム
4 モンモリナイト Zr(OC 重クロム酸ナトリウム
5 ベントナイト Ti(OCH クロム酸アンモニウム
6 セリサイト W(OC 硝酸クロム

以上の触媒仕様の実施態様例に示すように、成分(A),成分(B)および成分(C)の範疇に属する各種化合物を、任意に組み合わせることにより、本発明のオレフィン重合用触媒を調整することができる。勿論、本願発明は、この触媒仕様の化合物および組み合わせに限定されるものではないが、成分(A)〜成分(C)に属する化合物を万遍に使用して、慣用の手段で賦活処理をすれば、本発明の重合用触媒の調整が出来るとともに、触媒活性を確認することが出来る。
[比較例1]
(1)触媒の調製
モンモリロナイト(アルドリッチ社製、K−10)30gに、クロムアセチルアセトネート2.02gをエタノール100mlに溶解させた溶液を全量添加し、室温で4時間撹拌した。120℃に昇温したオイルバスで加熱することによりEtOHを留去し、クロム含有モンモリロナイトを得た。モンモリロナイトに対するクロムアセチルアセトネートの添加量は、モンモリロナイト1g当たりクロムとして1.0wt%である。
(2)クロム含有モンモリロナイトの賦活
参考例1(1)で得たれたクロム含有モンモリロナイト10gを、空気気流下、730℃に昇温し、6時間保持することにより賦活を行った。空気雰囲気から窒素雰囲気に置換した。回収後も窒素雰囲気下で保管した。賦活により、クロム含有モンモリロナイトは薄い青色から薄いオレンジ色へ色が変化した。このことからクロム原子が6価に変換したことが判る。3価クロムは実質的に99重量%が6価に変換されていた。
(3)エチレン重合
精製窒素で十分置換された内容積2.0Lのオートクレーブに、参考例1(2)で得られたクロム含有モンモリロナイトの賦活触媒を89mg添加した。次いで、イソブタンを700ml導入し100℃へ昇温した。さらにエチレン圧を1.4MPaかけ、定圧重合を開始した。エチレン吸収量が150gになるまで50分間重合を行った。その結果、160gのポリマーを得た。触媒活性は2160g/g触媒/hr、得られた重合体のHLMIは0.11g/10分、密度は0.9520g/cmであった。
[実施例1]
(1)触媒の調製
モンモリロナイト(アルドリッチ社製、K−10)30gにエタノール70ml添加し、室温で撹拌した。そこに、テトラエトキシシラン3.13gをエタノール20mlに溶解させた溶液を室温で添加し、2時間撹拌した。その後、オイルバスを120℃へ昇温しエタノールを留去することで、粉末状のテトラエトキシシランとモンモリロナイトの接触物を得た。この接触物に、クロムアセチルアセトネート2.02gをエタノール100mlに溶解させた溶液を全量添加し、室温で4時間撹拌した。120℃に昇温したオイルバスで加熱することによりEtOHを留去し、クロム含有モンモリロナイトを得た。モンモリロナイトに対するテトラエトキシシラン、クロムアセチルアセトネートの添加量は、それぞれモンモリロナイト1g当たり0.5mmol、クロムとして1.0wt%である。
(2)クロム含有モンモリロナイトの賦活
実施例1(1)で得たれたクロム含有モンモリロナイト10gを、空気気流下、730℃に昇温し、6時間保持することにより賦活を行った。空気雰囲気から窒素雰囲気に置換した。回収後も窒素雰囲気下で保管した。賦活により、クロム含有モンモリロナイトは薄い青色から薄いオレンジ色へ色が変化した。このことからクロム原子が6価に変換したことが判る。3価クロムは実質的に98重量%が6価に変換されていた。
(3)エチレン重合
精製窒素で十分置換された内容積2.0Lのオートクレーブに、実施例1(2)で得られたクロム含有モンモリロナイトの賦活触媒を128mg添加した。次いで、イソブタンを700ml導入し100℃へ昇温した。さらにエチレン圧を1.4MPaかけ、定圧重合を開始した。エチレン吸収量が220gになるまで64分間重合を行った。その結果、222gのポリマーを得た。触媒活性は1630g/g触媒/hr、得られた重合体のHLMIは0.06g/10分、密度は0.952g/cmであった。実施例1(3)で得られた重合体は、比較例1で得られた重合体に比べ、高分子量の重合体が得られている。
[実施例2]
(1)触媒の調製
モンモリロナイト(アルドリッチ社製、K−10)20gを秤量した。そこに、テトラエトキシシラン4.17gをエタノール80mlに溶解させた溶液を室温で添加した。次いで、オイルバスを100℃へ昇温し、撹拌しながら3時間還流した。その後、エタノールを留去し、粉末状のテトラエトキシシランとモンモリロナイトの接触物を得た。この接触物を大気雰囲気下で800℃、5時間加熱後、室温まで放冷した。
800℃加熱したシラン処理モンモリロナイトを15g分取し、脱塩水を60ml添加した。そこに、脱塩水7mlに酢酸クロムを0.645g溶解させた水溶液を添加し、撹拌しながら4時間還流した。その後、水を留去することでクロム含有モンモリロナイトを得た。モンモリロナイトに対するテトラエトキシシラン、酢酸クロムの添加量は、それぞれモンモリロナイト1g当たり1.0mmol、クロムとして1.0wt%である。
(2)クロム含有モンモリロナイトの賦活
実施例2(1)で得たれたクロム含有モンモリロナイト10gを用いる以外は、実施例1(2)と同様に行い、賦活触媒を得た。3価クロムは実質的に97重量%が6価に変換されていた。
(3)エチレン重合
精製窒素で十分置換された内容積2.0Lのオートクレーブに、実施例2(2)で得られたクロム含有モンモリロナイトの賦活触媒を175mg添加した。次いで、イソブタンを700ml導入し100℃へ昇温した。さらにエチレン圧を1.4MPaかけ、定圧重合を開始した。エチレン吸収量が300gになるまで140分間重合を行った。その結果、290gのポリマーを得た。触媒活性は710g/g触媒/hr、得られた重合体のHLMIは0.04g/10分、密度は0.950g/cmであった。実施例2(3)で得られた重合体は、比較例1で得られた重合体に比べ、高分子量の重合体が得られている。
[実施例3]
(1)触媒の調製
実施例2(1)において、テトラエトキシシランの使用量を8.34gに変更した以外は、実施例2(1)と同様に行い、クロム含有モンモリロナイトを得た。モンモリロナイトに対するテトラエトキシシラン、酢酸クロムの添加量は、それぞれモンモリロナイト1g当たり2.0mmol、クロムとして1.0wt%である。
(2)クロム含有モンモリロナイトの賦活
実施例3(1)で得たれたクロム含有モンモリロナイト10gを用いる以外は、実施例1(2)と同様に行い、賦活触媒を得た。3価クロムは実質的に96重量%が6価に変換されていた。
(3)エチレン重合
精製窒素で十分置換された内容積2.0Lのオートクレーブに、実施例3(2)で得られたクロム含有モンモリロナイトの賦活触媒を162mg添加した。次いで、イソブタンを700ml導入し100℃へ昇温した。さらにエチレン圧を1.4MPaかけ、定圧重合を開始した。エチレン吸収量が160gになるまで120分間重合を行った。その結果、162gのポリマーを得た。触媒活性は500g/g触媒/hr、得られた重合体のHLMIは0.02g/10分、密度は0.949g/cmであった。実施例3(3)で得られた重合体は、比較例1で得られた重合体に比べ、高分子量の重合体が得られている。
[実施例4]
(1)触媒の調製
モンモリロナイト(アルドリッチ社製、K−10)30gを秤量し、そこに、テトラブトキシジルコニウム6.76gをエタノール100mlに分散させた懸濁溶液を室温で添加し、2時間撹拌した。その後、オイルバスを120℃へ昇温しエタノールを留去することで、粉末状のテトラブトキシジルコニウムとモンモリロナイトの接触物を得た。この接触物に、クロムアセチルアセトネート2.02gをエタノール100mlに溶解させた溶液を全量添加し、室温で4時間撹拌した。120℃に昇温したオイルバスで加熱することによりEtOHを留去し、クロム含有モンモリロナイトを得た。モンモリロナイトに対するテトラブトキシジルコニウム、クロムアセチルアセトネートの添加量は、それぞれモンモリロナイト1g当たり0.5mmol、クロムとして1.0wt%である。
(2)クロム含有モンモリロナイトの賦活
実施例4(1)で得たれたクロム含有モンモリロナイト10gを用いる以外は、実施例1(2)と同様に行い、賦活触媒を得た。3価クロムは実質的に96重量%が6価に変換されていた。
(3)エチレン重合
精製窒素で十分置換された内容積2.0Lのオートクレーブに、実施例4(2)で得られたクロム含有モンモリロナイトの賦活触媒を135mg添加した。次いで、イソブタンを700ml導入し100℃へ昇温した。さらにエチレン圧を1.4MPaかけ、定圧重合を開始した。エチレン吸収量が230gになるまで70分間重合を行った。その結果、236gのポリマーを得た。触媒活性は1500g/g触媒/hr、得られた重合体のHLMIは0.05g/10分、密度は0.951g/cmであった。実施例4(3)で得られた重合体は、比較例1で得られた重合体に比べ、高分子量の重合体が得られている。

Claims (8)

  1. 下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を接触させて得られることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
    成分(A):粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物から選ばれる成分
    成分(B): 下記一般式(1)で表される化合物
    [化1] M(OR)n (1)
    (式中、Mは周期律表第3族から14族の元素を表し、Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基またはシリル基を表し、nはMの価数と同じ整数を表す。)
    成分(C):クロム酸もしくはその塩、重クロム酸もしくはその塩、または、クロムの陽イオンとハロゲンイオンまたは無機酸もしくは有機酸の陰イオンから選ばれる陰イオンとからなるクロム塩から選ばれるクロム化合物
  2. 成分(A)が、成分(B)と接触する前に、酸により処理されたものである請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
  3. 成分(B)のMの量が、成分(A)1gに対して0.3mmol〜4mmolとなるように接触させた請求項1または2に記載のオレフィン重合用触媒。
  4. 成分(C)のクロムの量が、成分(A)に対して0.01〜2重量%となるように接触させた請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒。
  5. 含有されるクロムの少なくとも一部が6価である請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒。
  6. 含有されるクロムが、酸素の存在下、400〜900℃で加熱することにより6価に変換されたものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒。
  7. 含有されるクロムの50〜100重量%が6価のクロムである請求項1〜6のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンを重合することを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
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