JP2009126992A - 顔料分散液、インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置 - Google Patents

顔料分散液、インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】インクの定着性や記録画像の耐擦過性などの堅牢性が高く品位に優れた画像をどのような場合でも長期にわたって安定して記録することのできるインクを与える顔料分散液などの提供。
【解決手段】高分子分散剤、顔料、銅化合物および水から主としてなる顔料分散液において、上記高分子分散剤が、少なくとも疎水性ユニットと親水性ユニットとからなり、該疎水性ユニットが少なくとも1種の疎水性モノマーからなるブロック部を有し、該親水性ユニットが少なくとも一般式(1)のアクリルアミド構造の繰り返し単位構造を有する共重合体であり、かつ上記銅化合物中の銅(A)と上記高分子分散剤(B)とのモル比がA:B=1:10〜1:600の範囲にあることを特徴とする顔料分散液。
【選択図】なし

Description

本発明は、顔料分散液、インクジェット記録用インク(以下単に「インク」という場合がある)、インクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置に関する。さらに詳しくは、保存安定性が高く、印字画像の定着性と堅牢性が良好でインクジェット記録に適した色材分散体タイプの顔料分散液、水性インクジェット記録用インク、該インクを用いたインクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置に関する。
従来、印刷インクの着色剤として、耐水性や耐光性などの堅牢性に優れた顔料などの水不溶性色材が広く用いられている。しかし、水不溶性色材を水性インクの色材として用いるためには、水性媒体中に水不溶性色材を安定して分散させることが要求される。そのため、高分子化合物や界面活性剤などの分散剤を添加して水不溶性色材を水性媒体中に均一に分散させた色材分散体タイプの水性インクが使用されている。
近年、インクジェット記録用途においても、画像堅牢性の面からこの色材分散体タイプの水性インクをインクジェット記録用インクとして使用するようになってきている。インクジェット記録においては、紙面上でのインクの定着性や記録画像の耐水性を向上させるために、インク中の色材粒子に凝集機能や水不溶化機能を持たせる試みがとられている。しかしながら、このような機能を色材粒子に持たせることによって、インク中での色材の分散安定性が低下することになり、インクの保存中に色材粒子が凝集して濃度むらや沈降が発生しやすくなる、インクジェット装置のノズル先端部でインク乾燥による目詰まりが発生し、インクの吐出安定性が低下しやすくなるなどという問題点を持つ。
上記問題点を解決するために、特許文献1、2および3では、親水性セグメントとして特定構造のアクリル系モノマー構造を有するブロックポリマーが提案されているが、これらのポリマーではポリマーを構成する親水性のモノマー構造部の被記録材に対する親和性が不充分なため、該ブロックポリマーをインクに使用した際にはインク定着性や耐擦過性などの画像堅牢性は充分に満足できるレベルではない。さらに、産業用途における長期にわたる連続印字が要求される用途において、上記ブロックポリマーを含むインクの吐出安定性が大きく低下してしまうという課題がある。
また、特許文献4では、高分子分散剤とウレタン樹脂とを含有するインクが提案されているが、該インクは、長期保存時や高温保存時の色材の分散安定性が大きく低下する問題点を有し、さらに産業用途における長期にわたる連続印字が要求される用途において、インクの吐出安定性が大きく低下してしまう。また、このようなインクを熱エネルギーでインクを飛翔させるインクジェット記録装置に使用すると、発熱により色材粒子が激しく凝集して、インクを吐出できなくなるという問題も有している。
特開平4−227668号公報 特開平5−179183号公報 特開2005−177756号公報 特開2006−282760号公報
本発明の目的は、上記問題点に鑑みて為されたもので、インクの定着性や記録画像の耐擦過性などの堅牢性が高く品位に優れた画像をどのような場合でも長期にわたって安定して記録することのできるインクを与える顔料分散液を提供することであり、さらには堅牢性と品位に優れた画像を記録し得るインクジェット記録用インクとインクジェット記録方法、およびこのようなインクを含むインクカートリッジおよびインクジェット記録装置を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の発明によって上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、高分子分散剤、顔料、銅化合物および水から主としてなる顔料分散液において、上記高分子分散剤が、少なくとも疎水性ユニットと親水性ユニットとからなり、該疎水性ユニットが少なくとも1種の疎水性モノマーからなるブロック部を有し、該親水性ユニットが少なくとも下記一般式(1)のアクリルアミド構造の繰り返し単位構造を有する共重合体であり、かつ上記銅化合物中の銅(A)と上記高分子分散剤(B)とのモル比がA:B=1:10〜1:600の範囲にあることを特徴とする顔料分散液を提供する。
Figure 2009126992
(式中、R1は水素原子またはメチル基を、Xは水素原子または炭素数1から4のアルキル基を表し、nは1から10である。)
上記本発明の顔料分散液においては、疎水性ユニットの疎水性モノマーからなるブロック部が、下記一般式(2)の繰り返し単位構造からなるブロック部であること;
Figure 2009126992
(式中、R2は水素原子またはメチル基を、Yは−R3、−OR3または−COOR3を表す。ここでR3は炭素数1から18のアルキル基を表す。)
;親水性ユニットが、アニオン性の親水基を有するセグメントを有していること;親水性ユニットが、前記一般式(1)の繰り返し単位構造からなるブロック部とアニオン性の親水基を有するセグメントのブロック部とを有していること;高分子分散剤が、前記一般式(2)の繰り返し単位構造からなるブロック部、前記一般式(1)の繰り返し単位構造からなるブロック部およびアニオン性の親水基を有するセグメントのブロック部の順番で少なくとも構成されていること;銅化合物が、酸化銅、塩化銅、臭化銅およびよう化銅の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明は、上記顔料分散液と、少なくとも水溶性有機溶剤とを混合させてなることを特徴とするインクジェット記録用インクを提供する。
また、本発明は、インクにエネルギーを与えて、該インクを飛翔させて被記録材に付与して行うインクジェット記録方法において、上記インクが、前記本発明のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法を提供する。該記録方法においては、エネルギーが、熱エネルギーであることが好ましい。
また、本発明は、インクを収容したインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、該インクが上記本発明のインクであることを特徴とするインクカートリッジ;およびインクを収容したインク収容部を備えたインクカートリッジと、該インクを吐出させるためのヘッド部とを備えたインクジェット記録装置において、該インクが上記本発明のインクであることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
上記本発明によれば、高い堅牢性を有し品位に優れた画像をどのような場合でも長期にわたって安定して記録することのできるインクを与える顔料分散液を提供することができ、さらには堅牢性と品位とに優れた画像を記録し得るインクとインクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、高分子分散剤、顔料、銅化合物および水から主としてなる顔料分散液において、上記高分子分散剤として、少なくとも疎水性ユニットと親水性ユニットとからなり、該疎水性ユニットが少なくとも1種の疎水性モノマーからなるブロック部を有し、該親水性ユニットが少なくとも下記一般式(1)のアクリルアミド構造の繰り返し単位構造を有する共重合体を使用し、かつ上記銅化合物中の銅(A)と上記高分子分散剤(B)とのモル比がA:B=1:10〜1:600の範囲とすることで、高い堅牢性を有し品位に優れた画像をどのような場合でも安定して記録することが可能なインクとすることができる顔料分散液が提供されることを見出した。
Figure 2009126992
(式中、R1、Xおよびnは前記定義の通りである。)
本発明で用いる高分子分散剤は、その疎水性ユニットが顔料と良好な親和性を持つ疎水性モノマーからなるブロック部を含有するため、高分子分散剤が安定的にカプセル化した顔料粒子の分散安定性が向上される。さらに、高分子分散剤の親水性ユニットが分散媒である水と親和性の高いエチレンオキシド構造を有するアクリルアミド構造の繰り返し単位構造を有することで、カプセル化顔料粒子の分散安定性がより向上し、インクの長期保存安定性や吐出安定性が向上されると考えられる。特にこれらの効果はそれぞれの構造をブロック化させることでさらに向上される。
また、顔料分散液に添加剤として銅化合物を使用すると、高分子分散剤の親水性ユニットを構成するアクリルアミド構造部が銅と安定に配位する親和力を有すことから、銅化合物が作用する橋かけ効果によって、高分子分散剤同士の相互作用が向上し、カプセル化顔料粒子のカプセル形状が安定化される。このため、インク加温時などのカプセル形状が不安定になりやすい場合においても、カプセル化顔料粒子全体が均一な形状で維持されるため、カプセル化顔料粒子表面の電荷状態の乱れが殆ど発生せずに、カプセル化顔料粒子表面の電荷状態が均一に維持され、静電的な因子によるカプセル化顔料粒子同士の凝集や会合が大きく低減されるようになるからと考えられる。
また、高分子分散剤の親水性ユニットが、顔料分散液(インク)中の水や水溶性有機溶媒と親和性の高いエチレンオキシド構造を有することから、インクが、被記録材表面だけに残ることなく、画像濃度や滲み性の低下を招かない範囲でインクの浸透とともに適度に被記録材内部に浸透することが可能となり、さらに上記親水性ユニットが、被記録材と親和性の高いアミド構造を合わせ持つことから、記録画像と被記録材との密着性が最良となり、インクの定着性や記録画像の耐擦過性などの堅牢性が大きく向上されると考えられる。また、添加剤として高分子分散剤同士の橋かけ的効果を有する銅化合物を使用しているため、より安定なカプセル化顔料粒子が形成され、記録後の画像においてもこのカプセル状態が維持される。このように高分子分散剤が顔料粒子を強固に被覆していることにより、顔料粒子の一部が露出しているような場合に比べ、インクの定着性や記録画像の耐擦過性などの堅牢性がよりいっそう向上されると考えられる。芳香族炭化水素基を含有する特定構造のブロック部を高分子分散剤の疎水性ユニットに有する場合は、さらにこの効果が向上されるようになる。
これらの効果により、カプセル化顔料粒子の被記録材内部への浸透による発色性の低下がなく、良効な画像堅牢性や定着性を達成でき、かつインクの長期保存時の安定性を向上させるとともに、インクジェット装置に使用する際に必ず発生するノズル先端部でのインク濃縮のように、インク組成が大きく変化する場合においても、カプセル化顔料粒子の分散安定性が低下することなく、インクの安定な吐出が可能になる。さらに、インクジェットノズルのクリーニング回復動作を頻繁に行うことのできないラインヘッドを有するインクジェット装置の場合においても、ノズル周辺部へのカプセル化顔料粒子の付着が抑制できるため、インクの不吐出や印字ヨレが発生しにくく、長期にわたって良好な連続印字性能を達成できる。
以下、本発明の顔料分散液の構成材料についてさらに詳細に説明する。
(高分子分散剤)
本発明に使用する高分子分散剤は、少なくとも疎水性ユニットと親水性ユニットとからなるものであり、疎水性ユニットが少なくとも1種の疎水性モノマーからなるブロック部を有し、親水性ユニットが少なくとも下記一般式(1)のアクリルアミド構造の繰り返し単位構造を有する共重合体である。
Figure 2009126992
上記一般式(1)において、R1は水素原子またはメチル基を、Xは水素原子または炭素数1から4のアルキル基を、好ましくは水素原子またはメチル基を表し、nは1から10、好ましくは1から6である。
上記モノマー構造の繰り返し単位数としては、10から200、好ましくは20から150、より好ましくは20から100であると、カプセル化顔料粒子の分散安定性と被記録材上でのインクの定着性がより向上するため望ましい。
上記一般式(1)の構造を形成するために使用するモノマーとしては、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)アクリルアミド、N−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)メタクリルアミド、N−(メトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−(2−エトキシエトキシ)エチル)アクリルアミド、N−(2−(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)エチル)メタクリルアミドおよびN−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)メタクリルアミドなどが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
高分子分散剤の疎水性ユニットとしては、少なくとも1種の疎水性モノマーからなるブロック部を有していればよく、2種以上の疎水性モノマーが含有されている場合でもこれらの疎水性モノマーのみで構成されている疎水性のブロックであれば、それぞれの疎水性モノマー同士の結合がランダム状態でもブロック状態でも使用できるが、好ましくはそれぞれの疎水性モノマーがブロック状態で構成されているものがより安定なカプセル化顔料粒子を形成できるため望ましい。疎水性モノマーからなるブロック部の疎水性モノマーの繰り返し単位としては、2種以上の疎水性モノマーで構成されている場合は、それら疎水性モノマーの繰り返し単位の総数として、10から200、好ましくは20から150、より好ましくは20から100であると顔料との親和性が良好になるため望ましい。また、疎水性モノマーの繰り返し単位数(a)と前記一般式(1)のモノマー構造の繰り返し単位数(b)の比がa/bが、0.1から10、好ましくは0.5から5の範囲にあると、カプセル化顔料粒子の分散安定性と被記録材上でのインクの定着性がともに向上するため望ましい。
疎水性モノマーとしては、前記親水性ユニットを構成するアクリルアミド構造のモノマーと共重合可能なモノマーであれば使用できるが、疎水性の置換基を有するビニルモノマーが好ましい。中でも、下記一般式(2)の繰り返し単位構造を構成させるモノマーが、顔料分散剤と顔料との親和性がより向上し安定なカプセル化顔料粒子を形成できるため望ましい。
Figure 2009126992
上記一般式(2)において、R2は水素原子またはメチル基であるのが好ましく、Yは−R3、−OR3または−COOR3であるのが好ましい。ここでR3は炭素数1から18のアルキル基であるのが好ましい。このようなモノマーとしては、例えば、1−メチル−4−ビニルベンゼン、1−エチル−4−(プロペン−2−イル)ベンゼン、1−ブチル−4−(プロペン−2−イル)ベンゼン、1−ドデシル−4−(プロペン−2−イル)ベンゼン、4−メトキシ−ビニルベンゼン、4−ブトキシ−ビニルベンゼン、メチル−4−ビニルベンゾエート、ブチル−4−ビニルベンゾエート、ドデシル−4−ビニルベンゾエート、ヘキサデシル−4−ビニルベンゾエート、オクタデシル−4−ビニルベンゾエートなどが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
また、親水性ユニットとして前記一般式(1)の構造を有するモノマー単位を含有すれば、その他の疎水性置換基や親水性置換基を有するモノマー構造を併有していることも可能であるが、親水性置換基を有するモノマー構造のものが、顔料の分散安定性がより向上するため好ましい。このような併有するモノマーとしては、親水性置換基としてアニオン性の親水基を有するものが、より顔料の分散安定性が向上するため好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、スチレンスルホン酸、スチレンカルボン酸、モノ−(2−アクリロイロキシ−1−メチル−エチル)フタレートなどが挙げられ、中でもアクリル酸、メタクリル酸が重合性の点で好ましい。これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。この際、親水性ユニットが、前記一般式(1)の繰り返し単位構造からなるブロック部とアニオン性の親水基を有するセグメントのブロック部とで構成されていると、被記録材上でのカプセル化顔料粒子の定着性がよりいっそう良好となり望ましい。特に、高分子分散剤が、前記一般式(2)の繰り返し単位構造からなるブロック部、前記一般式(1)の繰り返し単位構造からなるブロック部、アニオン性の親水基を有するセグメントのブロック部の順番で少なくとも構成されていると、カプセル化顔料粒子の分散安定性と被記録材上でのインクの定着性が最良となりより望ましい。
本発明に使用する高分子分散剤は、上記モノマー類をラジカル重合やアニオン重合などの常法の重合方法で得ることができ、特にリビングラジカル重合法などが好適に用いられる。リビングラジカル重合法を用いることにより長さ(分子量)を正確に揃えた共重合体やブロック共重合体が作製可能である。これらの高分子分散剤は、重量平均分子量で3,000から50,000の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは5,000から30,000の範囲である。得られた高分子分散剤の同定は、NMRやIRによる官能基の定性・定量や各種クロマトグラフィーによる解析などで行うことが可能である。
高分子分散剤がアニオン性親水基を有する場合、高分子分散剤の酸価としては、好ましくは10〜150mgKOH/g、より好ましくは30〜100mgKOH/gであると、印字画像の定着性と発色性の面で望ましい。また、高分子分散剤のアニオン性親水基は、アルカリで中和されていることが必要であるが、未中和のアニオン性親水基が含有されていても使用でき、中和度として好ましくは50から100mol%、より好ましくは80から100mol%であると、インクの吐出性の低下が起こりにくいため望ましい。
アニオン性親水基の中和方法は、アニオン性親水基を含有するビニルモノマーをアルカリで先に中和してから重合する方法やアニオン性親水基を含有するビニルモノマーを重合してからアルカリで後から中和する方法のいずれも可能であるが、モノマーの重合面から後から中和する方法が好ましい。この中和に使用するアルカリとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属類、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられ、カリウムの場合にインクの吐出性がより向上するため好ましい。具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどが挙げられる。なお、本発明での高分子分散剤の酸価は、日本工業規格JIS−K0070に記載の酸価測定方法に準じて測定した値を示す。
(顔料)
本発明の顔料分散液中における顔料の含有量は、顔料分散液全質量に対して、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1.0〜20質量%であり、インク中での含有量は、インク全質量に対して、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。インク中での顔料の量が0.1質量%未満では十分な画像濃度が得にくい場合があり、顔料の量が15質量%を超えると、ノズルにおける目詰りなどによる吐出安定性の低下が起こる場合がある。また、顔料と上記高分子分散剤との含有比率は、固形分質量比で好ましくは10:1〜1:3、より好ましくは5:1〜1:2であると、インクの定着性や印字画像の堅牢性とインクの吐出安定性や保存安定性の面から望ましい。なお、これらの顔料は、単独で使用する以外に、2種以上組み合わせて使用することもできる。
本発明においては、従来から使用されている有機顔料、無機顔料のいずれも使用することが可能であるが、特に黒色顔料と、シアン、マゼンタ、イエローの着色顔料が有用である。
また、これらの顔料が、顔料分散液中で高分子分散剤と形成するカプセル化顔料粒子の平均粒子径は、好ましくは50nm以上200nm以下の範囲、より好ましくは50nm以上150nm以下である。カプセル化顔料粒子の平均粒子径がこの範囲にあれば、インクの吐出安定性がさらに向上し、また、印字画像の発色性も良好になる。本発明でのカプセル化顔料粒子の粒子径は、レーザー光散乱法により測定を行った。
(銅化合物)
本発明の顔料分散液に使用する銅化合物としては、銅元素を含有する化合物であり、好ましくは、酸化銅、塩化銅、臭化銅およびよう化銅の群から選ばれる少なくとも1種、より好ましくは酸化銅であると、カプセル化顔料粒子の安定性がより向上し望ましい。
これらの銅化合物の顔料分散液中での含有量としては、銅化合物中の銅のモル数(A)と高分子分散剤のモル数(B)の比で、A:B=1:10〜1:600の範囲、好ましくはA:B=1:20〜1:400の範囲、より好ましくはA:B=1:50〜1:300の範囲であると、顔料分散液の保存安定性がより向上するため望ましい。銅化合物の含有量が上記範囲より少ないと顔料分散液の保存安定性の向上効果が少なくなる場合や、上記範囲よりも多いとノズルの目詰まりが発生しやすくなる。なお、使用する顔料自体に銅元素を含有する場合は、顔料分散液中の銅含有量の測定値から顔料自体の銅含有量を差し引くことで、銅化合物中の銅含有量を算出し、銅化合物中の銅のモル数(A)と高分子分散剤のモル数(B)の比を算出した。
(分散媒体)
また、本発明の顔料分散液の分散媒体である水は、特に限定されず、水道水、脱イオン水(イオン交換水)、純水などであり、脱イオン水が好ましい。水の使用量は、顔料濃度が前記範囲になる割合である。以上が本発明の顔料分散液を主として構成する材料であるが、これらに加えて水溶性有機溶剤を使用するのが好ましい。本発明の顔料分散液に使用する水溶性有機溶剤としては、水溶性の有機溶剤であればいずれも使用することができ、2種以上の水溶性有機溶剤の混合溶媒としても使用できる。
(有機溶剤)
有機溶剤は、乾燥によるインクの固化を防止し、吐出を安定化する働きをするもので、好ましい水溶性有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、チオジグリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオールなどのトリオール類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトールなどのヒンダードアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;グリセリン、ジメチルスルホキシド、グリセリンモノアリルエーテル、ポリエチレングリコール、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルフォラン、β−ジヒドロキシエチルウレア、ウレア、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコールなどである。
以上の成分以外に、界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤、防黴剤などの各種の添加剤を添加してもよい。
本発明の顔料分散液は、従来公知の顔料分散技術により、水中に前記高分子分散剤を用いて顔料および銅化合物を分散・溶解させることで得られる。好ましい製造方法としては、前記高分子分散剤を好ましくはメチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランなどの有機溶剤に溶解して溶液(濃度1〜30質量%)とし、該溶液と前記顔料とを前記の固形分比率で十分に混練して顔料を分散させるとともに、顔料粒子を高分子分散剤で被覆し、その後溶剤を留去する。得られた混合物をフレーク、シート、粉体などの形状とし、これと銅化合物とを適当量のアルカリ物質を含む適当量の水に加えて攪拌することによって本発明の顔料分散液が得られる。
本発明のインクジェット記録用インクは、上記顔料分散液と、少なくとも水溶性有機溶剤とを混合させることで得られるインクである。本発明のインクジェット記録用インクで使用する水溶性有機溶剤は、上記顔料分散液の項で記載したものが好適に使用できる。これらの中でも、沸点が120℃以上の水溶性有機溶剤を使用すると、ノズル先端部でのインク濃縮が抑制されるため好ましい。これらの水溶性有機溶剤のインク中に占める割合は、インク全質量の好ましくは5から50質量%、より好ましくは10から30質量%である。
また、顔料分散液と水溶性有機溶剤を混合する際には、必要に応じて、水や界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤、防黴剤などの各種の添加剤を添加してもよい。
さらに、インクのpHが好ましくは8.0から10.0の範囲に、より好ましくは8.4から9.8の範囲になるように調整すると、インクの長期保存安定性が向上し、長期保存後のインクの吐出性低下が抑制されるため好ましい。pH調整剤としては、トリエタノールアミンなどの有機アミンや水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物や有機酸が挙げられる。
本発明のインクジェット記録方法の特徴は、インクにエネルギーを与えてインクを飛翔させて行うインクジェット記録方法において、上記本発明のインクを使用することである。エネルギーとしては、熱エネルギーや力学的エネルギーを用いることができるが、熱エネルギーを用いる場合が好ましい。
本発明のインクジェット記録方法において、被記録材は限定されるものではないが、いわゆるインクジェット専用紙、ハガキや名刺用紙、ラベル用紙、ダンボール用紙、インクジェット用フィルムや各種コピー用紙などが好ましく使用される。コーティング層を持つ被記録材としては、少なくとも親水性ポリマーおよび/または無機多孔質体を含有した少なくとも一方の面にインクを受容するコーティング層を持つ被記録材が望ましい。
上記本発明のインクを用いて記録を行うインクジェット記録装置としては、A4サイズ紙に主に用いる一般家庭用プリンターや、名刺やカードを印刷対象とするプリンター、あるいは業務用の大型プリンターなどが挙げられるが、好適なインクジェット記録装置の一例を以下に説明する。
(熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置)
図1は、ヘッドにインク供給チューブ104を介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ100の一例を示す図である。101は供給用インクを収納したインク袋であり、その先端には塩素化ブチルゴム製の栓102が設けられている。この栓102に針103を挿入することにより、インク袋101中のインクを記録ヘッド(303から306)に供給できる。また、インクカートリッジ内に廃インクを受容するインク吸収体を設けてもよい。本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上記のごとき記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、それらが一体になったものも好適に用いられる。
図2は、本実施例に使用したインクジェット記録ヘッドの構造を説明するための模式図である。各ノズル202には、それぞれに対応した発熱体204(ヒータ)が設けられており、記録ヘッド駆動回路からヒータ204に所定の駆動パルスを印加することにより加熱し、気泡を発生させ、その作用で吐出口202からインク液滴を吐出する。なお、ヒータ204はシリコン基板206の上に半導体製造プロセスと同様の手法で形成される。203は各ノズル202を構成するノズル隔壁であり、205は各ノズル202にインクを供給するための共通液室であり、207は天板である。
本実施形態による記録装置の一部透視図を図3に示す。記録装置300の被記録材302は例えばロール供給ユニット301から供給され、記録装置300本体に具備された搬送ユニットによって、連続的に搬送される。搬送ユニットは搬送モータ312、搬送ベルト313などから構成される。記録は、被記録材の画像切り出し位置がブラックの記録ヘッド303の下を通過する時に、記録ヘッドからブラックインクを吐出開始、同様に、シアン304、マゼンタ305、イエロー306の順に、各色のインクを選択的に吐出してカラー画像を形成する。
記録装置300はこの他、各記録ヘッドを待機中にキャップするキャップ機構311、各々の記録ヘッド303から306にインクを供給するためのインクカートリッジ307から310、インクの供給や回復動作のためのポンプユニット(不図示)、記録装置全体を制御する制御基板(不図示)などによって構成されている。
図4は本実施例に使用したインクジェット記録装置における回復処理系の概略図である。記録ヘッド303から306が下降したとき、そのインク吐出口形成面がキャップ機構311内の塩素化ブチルゴムにより形成されたキャップ400に近接することにより所定の回復動作の実行が可能である。
回復処理系におけるインク再生回路部は補給されるインクが貯留されポリエチレン袋に収容されるインクカートリッジ100と、吸引ポンプ403などを介して接続されるサブタンク401と、キャップ400とサブタンク401との間を接続する塩化ビニルにより形成されたインク供給路409に配されキャップ機構311からのインクをサブタンク401に回収する吸引ポンプ403、キャップから回収したインク中のゴミなどを除去するフィルター405、インク供給路408を介して接続され記録ヘッド303から306の共通液室にインクを供給する加圧ポンプ402、記録ヘッドから戻ったインクをサブタンク401に供給するインク供給路407、弁404aから404dを主要な要素として構成されている。
記録ヘッド303から306のクリーニング時において回復弁404bを閉鎖し加圧ポンプ402を作動することによりサブタンク401から記録ヘッドにインクを加圧供給し、ノズル406から強制排出させる。これにより記録ヘッドのノズル内の泡、インク、ゴミなどを排出する。吸引ポンプ403は、記録ヘッドからキャップ機構311内に排出されたインクをサブタンク401に回収する。
(力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置)
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の好ましい一例としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図5に示す。
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82などを指示固定するための基板84とから構成されている。
図6において、インク流路80は、感光性樹脂などで形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケルなどの金属を電鋳やプレス加工による穴あけなどにより吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタンなどの金属フィルムおよび高弾性樹脂フィルムなどで形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZTなどの誘電体材料で形成される。以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、歪み応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板82を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。
以下、実施例および比較例に基づき本発明を詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、文中、「部」および「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
また、高分子分散剤の同定には、核磁気共鳴吸収測定装置(H1−NMR、日本電子社製ECA400、溶媒;テトラヒドロフラン−d8を使用)およびGPC(東ソー(株)製HLC8220、カラム;TSK−GEL4000HXL、TSK−GEL3000HXL、TSK−GEL2000HXLを使用し、カラムオーブン温度40.0℃)を用いて行った。また、顔料分散液に含まれる銅の含有量はICP発光分光分析装置(セイコーインスツル(株)製SPS1700HV、溶媒;超純水)を用いて測定した。
(高分子分散剤Aの作製)
還流管、滴下ロート、温度計および攪拌装置を備えたガラス製4つ口フラスコを窒素置換した後、ジメチルホルムアミド100部とペンタメチルジエチレントリアミン0.5部を仕込み、次いで疎水性ユニットの疎水性モノマーとして1−メチル−4−ビニルベンゼン36ミリモルと開始剤としてのクロロエチルベンゼン1ミリモルを添加し、攪拌しながら加熱した。系内温度が80℃に達したところで塩化第一銅0.2部を加え重合を開始し、疎水性ユニットの疎水性モノマーからなるブロック部(A成分)を合成した。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、A成分の重合が完了した後、次いで前記一般式(1)のアクリルアミド構造を形成する親水性モノマーとしてのN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)アクリルアミド(B成分)36ミリモルを添加し重合を続行した。同様にGPCで分子量をモニタリングし、B成分の重合が完了した後、アニオン性の親水基を有するセグメントを形成し得るモノマー種としてメタクリル酸を、n−ブチルアルコールでエステル化したブチルメタクリレート20ミリモル(C成分)を添加して重合を行った。重合を停止させた後、C成分のエステル部を水酸化ナトリウム/メタノール溶液で加水分解させカルボン酸型とし、さらに精製してABCトリブロック共重合体(高分子分散剤A)を得た。化合物の同定には、NMRおよびGPCを用いて行った(Mn[数平均分子量]=1.1×104、Mw/Mn[重量平均分子量/数平均分子量]=1.2)。なお、得られた高分子分散剤の酸価を測定したところ80mgKOH/gであり、この時点の分析では銅元素は検出されなかった。
(高分子分散剤B〜Hの作製)
高分子分散剤Aにおけると同様の方法で、疎水性ユニットと親水性ユニットのモノマー種と添加量を変更することで、表1に記載の高分子分散剤B〜Hを作製した。なお、高分子分散剤EとFにおいては、BモノマーとCモノマーを混合して添加することで、高分子分散剤G、HについてはCモノマーを添加せずに合成を行うことでそれぞれ作製した。この時点の分析では銅元素は検出されなかった。
Figure 2009126992
*Cモノマー種は、カルボン酸基をエステル化した後に添加して重合を行った。
Figure 2009126992
[実施例1]
(顔料分散液1の作製)
上記高分子分散剤Aのメチルエチルケトン溶液と市販の顔料としてカーボンブラック(三菱化学製 MA100)を2軸スクリューを有する混練機に仕込み、均一になるまで混練した後、内温を80℃に維持しながら減圧して溶媒を留去した。この混練物を2本ロールを用いてシート化し、所定量のイオン交換水と中和剤として水酸化ナトリウムを高分子分散剤のアニオン性基の1当量に相当する量を加えて、さらに酸化銅を添加して攪拌し、顔料濃度15%、高分子分散剤濃度10%の顔料分散液1を得た。得られた顔料分散液中の銅と高分子分散剤のモル比を測定したところ、銅:高分子分散剤=1:153であった。
[実施例2]
(顔料分散液2の作製)
実施例1の高分子分散剤を高分子分散剤Bに、顔料をC.I.ピグメントブルー15:3に変更し、実施例1と同様にして、顔料濃度15%、高分子分散剤濃度10%の顔料分散液2を得た。得られた顔料分散液中の銅と高分子分散剤のモル比を測定したところ、銅:高分子分散剤=1:289であった(C.I.ピグメントブルー15:3はそれ自体に銅が含まれるため、銅の重量含有率を算出し減算した)。
[実施例3]
(顔料分散液3の作製)
実施例1の高分子分散剤を高分子分散剤Cに、顔料をC.I.ピグメントイエロー128に変更し、実施例1と同様にして、顔料濃度15%、高分子分散剤濃度10%の顔料分散液3を得た。得られた顔料分散液中の銅と高分子分散剤のモル比を測定したところ、銅:高分子分散剤=1:55であった。
[実施例4]
(顔料分散液4の作製)
実施例1の高分子分散剤を高分子分散剤Dに、顔料をC.I.ピグメントレッド122に変更し、実施例1と同様にして、顔料濃度15%、高分子分散剤濃度10%の顔料分散液4を得た。得られた顔料分散液中の銅と高分子分散剤のモル比を測定したところ、銅:高分子分散剤=1:391であった。
[実施例5]
(顔料分散液5の作製)
実施例1の高分子分散剤を高分子分散剤Eに、顔料をC.I.ピグメントイエロー74に、酸化銅を塩化銅に変更し、実施例1と同様にして、顔料濃度1%、高分子分散剤濃度2%の顔料分散液5を得た。得られた顔料分散液中の銅と高分子分散剤のモル比を測定したところ、銅:高分子分散剤=1:23であった。
[実施例6]
(顔料分散液6の作製)
実施例1の高分子分散剤を高分子分散剤Fに、顔料をC.I.ピグメントバイオレット19に、酸化銅を臭化銅に変更し、実施例1と同様にして、顔料濃度30%、高分子分散剤濃度3%の顔料分散液6を得た。得られた顔料分散液中の銅と高分子分散剤のモル比を測定したところ、銅:高分子分散剤=1:583であった。
[実施例7]
(顔料分散液7の作製)
実施例1の高分子分散剤を高分子分散剤Gに、顔料をC.I.ピグメントブルー16に、酸化銅を塩化銅とよう化銅の混合物(モル比1:1)に変更し、実施例1と同様にして、顔料濃度0.5%、高分子分散剤濃度1.5%の顔料分散液7を得た。得られた顔料分散液中の銅と高分子分散剤のモル比を測定したところ、銅:高分子分散剤=1:11であった(C.I.ピグメントブルー16はそれ自体に銅が含まれるため、銅の重量含有率を算出し減算した)。
[実施例8]
(顔料分散液8の作製)
実施例1の高分子分散剤を高分子分散剤Hに、顔料をC.I.ピグメントブルー16に、酸化銅を塩化銅とよう化銅の混合物(モル比1:1)に変更し、実施例1と同様にして、顔料濃度0.5%、高分子分散剤濃度1.5%の顔料分散液8を得た。得られた顔料分散液中の銅と高分子分散剤のモル比を測定したところ、銅:高分子分散剤=1:11であった(C.I.ピグメントブルー16はそれ自体に銅が含まれるため、銅の重量含有率を算出し減算した)。
[比較例1]
(顔料分散液9の作製)
実施例1で使用したカーボンブラックを使用し、酸化銅は添加せず、高分子分散剤としてスチレン−2−ヒドロキシプロピルアクリレート−マレイン酸ランダム共重合体(数平均分子量10,000、酸価160mgKOH/g、スチレンのセグメント数/2−ヒドロキシプロピルアクリレートのセグメント数=11)を使用した以外は実施例1と同様にして顔料濃度15%、高分子分散剤濃度10%の顔料分散液9を得た。この時点の分析では銅元素は検出されなかった。
[比較例2]
(顔料分散液10の作製)
実施例1で使用したカーボンブラックを使用し、酸化銅は添加せず、高分子分散剤としてオクタデシルメタクリレート−N,N−ジメチルアクリルアミドブロック共重合体(数平均分子量17,000、オクタデシルメタクリレートのセグメント数/N,N−ジメチルアクリルアミドのセグメント数=0.07)を使用した以外は実施例1と同様にして顔料濃度15%、高分子分散剤濃度10%の顔料分散液10を得た。この時点の分析では銅元素は検出されなかった。
[比較例3]
(顔料分散液11の作製)
実施例1で使用したカーボンブラックを使用し、酸化銅は添加せず、分散剤としてポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル(HLB12.9)を使用した以外は実施例1と同様にして顔料濃度15%、高分子分散剤濃度10%の顔料分散液11を得た。この時点の分析では銅元素は検出されなかった。
[比較例4]
(顔料分散液12の作製)
実施例1において、使用した酸化銅の添加量を増やした以外は実施例1と同様にして顔料濃度15%、高分子分散剤濃度10%の顔料分散液12を得た。得られた顔料分散液中の銅と高分子分散剤のモル比を測定したところ、銅:高分子分散剤=1:0.5であった。
[比較例5]
(顔料分散液13の作製)
実施例8において、銅化合物を添加しなかった以外は実施例8と同様にして顔料濃度15%、高分子分散剤濃度10%の顔料分散液13を得た。この時点の分析では銅元素は検出されなかった。
(評価1)
実施例1〜5と比較例1〜5の顔料分散液を使用し、以下の成分を混合し、充分攪拌して、それぞれインクを作製した。
・顔料分散液 30.0部
・トリエチレングリコール 10.0部
・トリプロピレングリコール 10.0部
・イオン交換水 50.0部
実施例6の顔料分散液を使用し、以下の成分を混合し、充分攪拌してインクを作製した。
・顔料分散液 30.0部
・グリセリン 10.0部
・エチレングリコール 20.0部
・イオン交換水 40.0部
実施例7〜8の顔料分散液を使用し、以下の成分を混合し、充分攪拌してインクを作製した。
・顔料分散液 40.0部
・ジエチレングリコール 10.0部
・1,2−ブタンジオール 5.0部
・ポリエチレングリコール600 5.0部
・2−ピロリドン 5.0部
・イオン交換水 35.0部
実施例1〜8と比較例1〜5の顔料分散液の分散安定性と、実施例1〜8と比較例1〜5の顔料分散液を使用したインクの、吐出安定性、印字画像の画像品位と堅牢性および保存安定性についての試験を行った。なお、画像品位と堅牢性および吐出安定性については、各インクを記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置P−660CII(キヤノンファインテック製)にそれぞれ搭載して、普通紙GF−500(キヤノン製)に印字を行い、評価を行った。その結果、表2に記載したように、いずれの実施例の顔料分散液も比較例の顔料分散液に比べて分散安定性や保存安定性と吐出安定性が良好で、画像品位と堅牢性が良好な結果が得られた。
Figure 2009126992
*1:分散安定性
各顔料分散液を密閉状態で80℃2週間保存した後、試験前後の粒子径を測定し、下式で粒子径増加率(%)を求め分散安定性の尺度とした。粒子径の測定には動的光散乱法(商品名:レーザー粒径解析システムFPAR−1000;大塚電子(株)製)を用いた。評価基準は下記の通りとした。
Figure 2009126992
◎:粒子径増加率(%)が5%未満である。
○:粒子径増加率(%)が5%以上10%未満である。
△:粒子径増加率(%)が10%以上30%未満である。
×:粒子径増加率(%)が30%以上である。
*2:間欠吐出安定性
各インクを70℃で2週間保管した後、15℃で湿度が10%の環境下において、100%ベタ画像を印字し3分間休止した後、再度100%ベタ画像を印字した画像を下記の評価基準で評価した。
◎:白スジが全く無く、正常に印字されている。
○:印字の最初の部分に僅かに白スジがみられる。
△:画像全体に白スジがみられる。
×:画像がほとんど印字されていない。
*3:連続吐出安定性
ハガキサイズのグラデーションパターンを1000枚連続印字し、1000枚目の画像のヨレ、不吐の吐出特性を下記の基準で評価した。
◎:ヨレ、不吐が無く、正常に印字されている。
○:不吐は発生していないが、一部にヨレが見られる。
△:不吐が一部発生し、画像全体にヨレが見られる。
×:不吐が多く発生し、画像全体にヨレが見られる。
*4:画像品位
70℃で2週間保管した各インクで画像を印字し、その画像を下記の評価基準で評価した。
◎:画像の滲みがなく、彩度が高い。
○:画像の滲みはないが、若干彩度が低い。
△:画像の滲みが若干みられる。
×:画像の滲みが多く、彩度も低い。
*5:堅牢性
70℃で2週間保管した各インクで100%ベタ画像を印字し、印字1分後に印字部を2×104N/m2の荷重を掛けてシルボン紙で擦り、その画像を下記の評価基準で評価した。
◎:画像の擦れがなく、シルボン紙への付着がない。
○:画像の擦れがないが、シルボン紙への付着が見られる。
△:画像の擦れが若干みられる。
×:画像の擦れが多い。
*6:保存安定性
各インクを密閉状態で70℃で2週間保存した後、試験前後の粒子径を測定し、下式で粒子径増加率(%)を求め分散安定性の尺度とした。粒子径の測定には動的光散乱法(商品名:レーザー粒径解析システムFPAR−1000;大塚電子(株)製)を用いた。評価基準は下記の通りとした。
Figure 2009126992
◎:粒子径増加率(%)が5%未満である。
○:粒子径増加率(%)が5%以上10%未満である。
△:粒子径増加率(%)が10%以上30%未満である。
×:粒子径増加率(%)が30%以上である。
以上説明したように、本発明によれば、高い堅牢性を有し品位に優れた画像をどのような場合でも長期にわたって安定して記録することのできる顔料分散液を提供することができ、さらには堅牢性と品位に優れた画像を記録し得るインクとインクジェット記録方法とインクジェット記録装置を提供することができる。
インクカートリッジの構造を説明するための模式図である。 インクジェット記録ヘッドの構造を説明するための模式図である。 インクジェット記録装置の透視図である。 インクジェット記録装置における回復処理系の概略図である。 インクジェット記録ヘッドの別の構成例を示す概略断面図である。
符号の説明
100:インクカートリッジ
101:インク袋
102:ゴム栓
103:針
104:チューブ
201:ベースプレート
202:インクノズル(吐出口)
203:隔壁
204:ノズルヒータ
205:共通液室
206:基板
207:天板
300:記録装置
301:ロール供給ユニット
302:被記録材(ロール紙)
303:記録ヘッド(ブラック)
304:記録ヘッド(シアン)
305:記録ヘッド(マゼンタ)
306:記録ヘッド(イエロー)
307:インクカートリッジ(ブラック)
308:インクカートリッジ(シアン)
309:インクカートリッジ(マゼンタ)
310:インクカートリッジ(イエロー)
311:キャップ機構
312:搬送モータ
313:搬送ベルト
400:キャップ
401:サブタンク
402:加圧ポンプ
403:吸引ポンプ
404a:供給弁
404b:回復弁
404c:大気開放弁
404d:リサイクル弁
405:フィルター
406:フェース(ノズル)面
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口

Claims (11)

  1. 高分子分散剤、顔料、銅化合物および水から主としてなる顔料分散液において、上記高分子分散剤が、少なくとも疎水性ユニットと親水性ユニットとからなり、該疎水性ユニットが少なくとも1種の疎水性モノマーからなるブロック部を有し、該親水性ユニットが少なくとも下記一般式(1)のアクリルアミド構造の繰り返し単位構造を有する共重合体であり、かつ上記銅化合物中の銅(A)と上記高分子分散剤(B)とのモル比がA:B=1:10〜1:600の範囲にあることを特徴とする顔料分散液。
    Figure 2009126992
    (式中、R1は水素原子またはメチル基を、Xは水素原子または炭素数1から4のアルキル基を表し、nは1から10である。)
  2. 疎水性ユニットの疎水性モノマーからなるブロック部が、下記一般式(2)の繰り返し単位構造からなるブロック部である請求項1に記載の顔料分散液。
    Figure 2009126992
    (式中、R2は水素原子またはメチル基を、Yは−R3、−OR3または−COOR3を表す。ここでR3は炭素数1から18のアルキル基を表す。)
  3. 親水性ユニットが、アニオン性の親水基を有するセグメントを有している請求項1または2に記載の顔料分散液。
  4. 親水性ユニットが、前記一般式(1)の繰り返し単位構造からなるブロック部とアニオン性の親水基を有するセグメントのブロック部とを有している請求項3に記載の顔料分散液。
  5. 高分子分散剤が、前記一般式(2)の繰り返し単位構造からなるブロック部、前記一般式(1)の繰り返し単位構造からなるブロック部およびアニオン性の親水基を有するセグメントのブロック部の順番で少なくとも構成されている請求項4に記載の顔料分散液。
  6. 銅化合物が、酸化銅、塩化銅、臭化銅およびよう化銅の群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の顔料分散液。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の顔料分散液と、少なくとも水溶性有機溶剤とを混合させてなることを特徴とするインクジェット記録用インク。
  8. インクにエネルギーを与えて、該インクを飛翔させて被記録材に付与して行うインクジェット記録方法において、上記インクが、請求項7に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  9. エネルギーが、熱エネルギーである請求項8に記載のインクジェット記録方法。
  10. インクを収容したインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、該インクが請求項7に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  11. インクを収容したインク収容部を備えたインクカートリッジと、該インクを吐出させるためのヘッド部とを備えたインクジェット記録装置において、該インクが請求項7に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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