JP2015052056A - インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクジェット記録用ヘッド、及びインクジェット記録装置 - Google Patents
インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクジェット記録用ヘッド、及びインクジェット記録装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ヒーターにおけるコゲーションの原因となる堆積物の蓄積を防止するとともに、インク中の顔料の分散状態を安定に維持して不吐出の発生を防止し、長期間にわたって印字することが可能な耐久性に優れたインクジェット記録用インクを提供する。【解決手段】水、水溶性化合物、顔料、及び顔料を分散させる酸価100mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有するインクジェット記録用インクである。インク全量を基準とした顔料の含有量をP質量%、及びインク全量を基準とした共重合体の含有量をR質量%とした場合に、下記式(1)((R/P)CRIT:顔料に吸着しない未吸着の共重合体が存在しないR/Pの最大値)の関係を満たす。1.05≰[R/P]/[(R/P)CRIT]≰1.40 ・・・(1)【選択図】なし
Description
本発明は、インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクジェット記録用ヘッド、及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録媒体に付着させることで画像や文字などを記録する方法である。インクジェット記録方法は、高速印字性、低騒音性、及び記録パターンの融通性に優れているとともに、容易に多色化することができ、かつ、現像や画像定着が不要であるといった特徴がある。特に、多色インクジェット記録方法によって記録された画像は、製版方式によって記録された多色印刷や、カラー写真方式によって記録された印画と比較しても何らの遜色もない。さらに、作成部数が少ない場合には、通常の印刷技術や写真技術よりも安価であるといった利点もある。このため、インクジェット記録方法を採用したインクジェット記録装置は、近年、各種情報機器の画像記録装置として急速に普及している。
従来、インクジェット記録装置に用いられてきた水性インクは、色材として染料が用いられている。しかしながら、色材として染料を用いた水性インクは着色力や鮮明性に優れている一方で、記録される画像の耐光性や耐水性等に問題を有していた。近年、このような問題を解決するため、インクジェット記録装置(プリンター)用の水性インクに用いる色材を染料から顔料に転換することが活発に検討されている。
しかしながら、インクジェット記録用ヘッドのノズル流路内部に充填されたインクをヒーターで加熱して発泡させ、インク吐出口からインクの液滴を飛翔させる仕組みのサーマル方式においては、室温から300℃以上までの温度変化と、気液の相変化が繰り返されている。このため、インクを長期間吐出する場合には、インク中の顔料の分散状態を安定に維持することが困難であった。その結果、ヒーター部分でコゲーションが発生するとともに、インク吐出口から液滴が吐出しない不吐出が生じてしまい、記録される画像の品位が低下しやすくなるという問題があった。
このような問題を解消するための方法として、例えば、インクジェット記録用のインクにホスホネート添加剤を添加してコゲーションを低減させる方法が開示されている(特許文献1)。また、インクジェット記録用のインクにグルコン酸等のアルドン酸を添加してコゲーションを低減させる方法が開示されている(特許文献2)。さらに、特定のパルス幅及びパルス周波数の除去パルス電圧をヒーターに印加して、コゲーションの原因となる堆積物を除去してコゲーションを低減させる方法が開示されている(特許文献3)。
特許文献1及び2で開示された方法では、特定の添加剤をインクに添加する必要があるため、インクに本来配合すべき添加剤が制限されてしまう場合があった。また、特許文献3で開示された方法を採用した場合には、ヒーターに過度の負荷がかかるとともに、コゲーションの原因となるすべての種類の堆積物を除去することが困難であった。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、ヒーターにおけるコゲーションの原因となる堆積物の蓄積を防止するとともに、インク中の顔料の分散状態を安定に維持して不吐出の発生を防止し、長期間にわたって印字することが可能な耐久性に優れたインクジェット記録用インクを提供することにある。また、本発明の別の課題は、前記インクを用いたインクジェット記録方法、インクジェット記録用ヘッド、及びインクジェット記録装置を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、顔料の分散剤として用いられるポリマーと顔料の配合量を厳密に制御することによって、上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、以下に示すインクジェット記録用インクが提供される。
[1]水、水溶性化合物、顔料、及び前記顔料を分散させる酸価100mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有するインクジェット記録用インクであって、インク全量を基準とした前記顔料の含有量をP質量%、及びインク全量を基準とした前記共重合体の含有量をR質量%とした場合に、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録用インク。
1.05≦[R/P]/[(R/P)CRIT]≦1.40 ・・・(1)
(前記式(1)中、(R/P)CRITは、前記顔料に吸着しない未吸着の前記共重合体が存在しないR/Pの最大値である)
[2]前記共重合体がランダムポリマーであり、前記共重合体が酸析法によって前記顔料に吸着した後、中和されている前記[1]に記載のインクジェット記録用インク。
[1]水、水溶性化合物、顔料、及び前記顔料を分散させる酸価100mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有するインクジェット記録用インクであって、インク全量を基準とした前記顔料の含有量をP質量%、及びインク全量を基準とした前記共重合体の含有量をR質量%とした場合に、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録用インク。
1.05≦[R/P]/[(R/P)CRIT]≦1.40 ・・・(1)
(前記式(1)中、(R/P)CRITは、前記顔料に吸着しない未吸着の前記共重合体が存在しないR/Pの最大値である)
[2]前記共重合体がランダムポリマーであり、前記共重合体が酸析法によって前記顔料に吸着した後、中和されている前記[1]に記載のインクジェット記録用インク。
また、本発明によれば、以下に示すインクジェット記録方法が提供される。
[3]インクをノズル列よりサーマル方式で吐出させるインクジェット記録方法であって、インク吐出口の開口面積が100〜350μm2であり、前記インクが、前記[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用インクであるインクジェット記録方法。
[4]インクをノズル列よりサーマル方式で吐出させるインクジェット記録方法であって、前記ノズル列の総ノズル数が1200以上、及び前記ノズル列の長さが2インチ以上であり、前記インクが、前記[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
[3]インクをノズル列よりサーマル方式で吐出させるインクジェット記録方法であって、インク吐出口の開口面積が100〜350μm2であり、前記インクが、前記[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用インクであるインクジェット記録方法。
[4]インクをノズル列よりサーマル方式で吐出させるインクジェット記録方法であって、前記ノズル列の総ノズル数が1200以上、及び前記ノズル列の長さが2インチ以上であり、前記インクが、前記[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
さらに、本発明によれば、以下に示すインクジェット記録用ヘッドが提供される。
[5]その内部に充填されたインクをノズル列よりサーマル方式で吐出させるインクジェット記録用ヘッドであって、インク吐出口の開口面積が100μm2以上350μm2以下、前記ノズル列の総ノズル数が1200以上、及び前記ノズル列の長さが2インチ以上であり、前記インクが、前記[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録用ヘッド。
[6]その内部に充填されたインクをノズル列よりサーマル方式で吐出させるインクジェット記録用ヘッドであって、前記ノズル列を形成する複数のノズル流路と連通する共通液室と、前記共通液室と連通する液体供給口と、前記液体供給口と連通するメイン液体供給室と、前記メイン液体供給室と連通する液体供給路と、前記液体供給路と連通する液体供給室と、前記液体供給室を、液体供給の際の流れに沿って上流側より第一液体供給室と、第二液体供給室とに分離するように配設された供給フィルターと、前記メイン液体供給室の一部に設けられた気液分離部と、前記気液分離部と連通する空気室と、を備え、前記ノズル流路と、前記共通液室と、前記液体供給口と、前記メイン液体供給室と、前記液体供給路と、前記液体供給室と、前記供給フィルターと、前記気液分離部と、前記空気室とが、前記ノズル流路の配列方向と前記液体の吐出方向を含む平面に対して、平行平面上に配置され、前記メイン液体供給室と、前記液体供給路と、前記供給フィルターと、前記気液分離部と、前記空気室とが、各々積層することなく配置されており、前記インクが、前記[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録用ヘッド。
[5]その内部に充填されたインクをノズル列よりサーマル方式で吐出させるインクジェット記録用ヘッドであって、インク吐出口の開口面積が100μm2以上350μm2以下、前記ノズル列の総ノズル数が1200以上、及び前記ノズル列の長さが2インチ以上であり、前記インクが、前記[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録用ヘッド。
[6]その内部に充填されたインクをノズル列よりサーマル方式で吐出させるインクジェット記録用ヘッドであって、前記ノズル列を形成する複数のノズル流路と連通する共通液室と、前記共通液室と連通する液体供給口と、前記液体供給口と連通するメイン液体供給室と、前記メイン液体供給室と連通する液体供給路と、前記液体供給路と連通する液体供給室と、前記液体供給室を、液体供給の際の流れに沿って上流側より第一液体供給室と、第二液体供給室とに分離するように配設された供給フィルターと、前記メイン液体供給室の一部に設けられた気液分離部と、前記気液分離部と連通する空気室と、を備え、前記ノズル流路と、前記共通液室と、前記液体供給口と、前記メイン液体供給室と、前記液体供給路と、前記液体供給室と、前記供給フィルターと、前記気液分離部と、前記空気室とが、前記ノズル流路の配列方向と前記液体の吐出方向を含む平面に対して、平行平面上に配置され、前記メイン液体供給室と、前記液体供給路と、前記供給フィルターと、前記気液分離部と、前記空気室とが、各々積層することなく配置されており、前記インクが、前記[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録用ヘッド。
また、本発明によれば、以下に示すインクジェット記録装置が提供される。
[7]インク収容部とインクを吐出する記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に搭載されるインクが、前記[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用インクであり、前記記録ヘッドが、前記[5]又は[6]に記載のインクジェット記録用ヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。
[7]インク収容部とインクを吐出する記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に搭載されるインクが、前記[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用インクであり、前記記録ヘッドが、前記[5]又は[6]に記載のインクジェット記録用ヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。
本発明のインクジェット記録用インクは、ヒーターにおけるコゲーションの原因となる堆積物の蓄積を防止するとともに、インク中の顔料の分散状態を安定に維持して不吐出の発生を防止し、長期間にわたって印字することが可能な耐久性に優れたインクである。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
[1]インクジェット記録用インク:
本発明のインクジェット記録用インク(以下、単に「インク」とも記す)は、水、水溶性化合物、顔料、及び顔料を分散させる酸価100mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有する。そして、インク全量を基準とした顔料の含有量をP質量%、及びインク全量を基準とした共重合体の含有量をR質量%とした場合に、下記式(1)の関係を満たす。以下、その詳細について説明する。
1.05≦[R/P]/[(R/P)CRIT]≦1.40 ・・・(1)
(前記式(1)中、(R/P)CRITは、前記顔料に吸着しない未吸着の前記共重合体が存在しないR/Pの最大値である)
本発明のインクジェット記録用インク(以下、単に「インク」とも記す)は、水、水溶性化合物、顔料、及び顔料を分散させる酸価100mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有する。そして、インク全量を基準とした顔料の含有量をP質量%、及びインク全量を基準とした共重合体の含有量をR質量%とした場合に、下記式(1)の関係を満たす。以下、その詳細について説明する。
1.05≦[R/P]/[(R/P)CRIT]≦1.40 ・・・(1)
(前記式(1)中、(R/P)CRITは、前記顔料に吸着しない未吸着の前記共重合体が存在しないR/Pの最大値である)
[1−1]顔料:
本発明のインクに用いる顔料としては、例えば、カーボンブラックや有機顔料等を挙げることができ、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの具体例は、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、商品名としてレイヴァン(ロンビア社製);ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)、ヴァルカン(Valcan)(以上、キャボット社製);カラーブラック(Color Black)、プリンテックス(Printex)、スペシャルブラック(Special Black)(以上、デグッサ社製);三菱カーボンブラック(三菱化学社製)等の冠称を有するものを使用することができる。勿論、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックを使用することも可能である。
本発明のインクに用いる顔料としては、例えば、カーボンブラックや有機顔料等を挙げることができ、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの具体例は、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、商品名としてレイヴァン(ロンビア社製);ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)、ヴァルカン(Valcan)(以上、キャボット社製);カラーブラック(Color Black)、プリンテックス(Printex)、スペシャルブラック(Special Black)(以上、デグッサ社製);三菱カーボンブラック(三菱化学社製)等の冠称を有するものを使用することができる。勿論、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックを使用することも可能である。
物性としては、一次粒子径が10nm以上40nm以下、BET法による比表面積が50m2/g以上400m2/g以下、給油量40mL/100g以上200mL/100g以下、揮発分が0.5〜10質量%、pHが2〜9であるカーボンブラックであることが好ましい。なお、DBP吸収量は、JIS K6221 A法によって測定される
有機顔料の具体例としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料;イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料;ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料;チオインジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料を挙げることができる。
また、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、以下のものを例示することができる。勿論、下記に示すもの以外の従来公知の有機顔料についても使用可能である。
C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、151、153、154、166、168
C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61
C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240
C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50
C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64
C.I.ピグメントグリーン:7、36
C.I.ピグメントブラウン:23、25、26
C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、151、153、154、166、168
C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61
C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240
C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50
C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64
C.I.ピグメントグリーン:7、36
C.I.ピグメントブラウン:23、25、26
[1−2]樹脂((メタ)アクリル酸エステル系共重合体):
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、顔料を分散させるための分散剤(樹脂分散剤)として用いられる。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びこれらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体を常法にしたがって共重合させることによって得ることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の合成方法は、例えば、特許4956917号公報等に開示されている。電気的中性状態とアニオン状態の共存範囲を広く制御可能な点、入手のしやすさ、及び価格等を考慮すると、(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。(メタ)アクリル酸の具体例としては、アクリル酸及びメタクリル酸を挙げることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、及びグラフトポリマー等の構造のなかでもランダムポリマーが好ましい。ランダムコポリマー以外のブロックコポリマー等では、顔料の親水性が高くなるものが多く、印字画像の耐水性が低下する傾向にある。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、顔料を分散させるための分散剤(樹脂分散剤)として用いられる。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びこれらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体を常法にしたがって共重合させることによって得ることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の合成方法は、例えば、特許4956917号公報等に開示されている。電気的中性状態とアニオン状態の共存範囲を広く制御可能な点、入手のしやすさ、及び価格等を考慮すると、(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。(メタ)アクリル酸の具体例としては、アクリル酸及びメタクリル酸を挙げることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、及びグラフトポリマー等の構造のなかでもランダムポリマーが好ましい。ランダムコポリマー以外のブロックコポリマー等では、顔料の親水性が高くなるものが多く、印字画像の耐水性が低下する傾向にある。
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラメチレンエーテルグルコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドのランダムポリマーグリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドのブロックポリマーグリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリテトラメチレンエーテルのランダムポリマーグリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリテトラメチレンエーテルのブロックポリマーグリコールのモノ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸ベンジル等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を得るためのモノマーとして、スチレン系単量体を用いることができる。スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロスチレン等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、スチレン系単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の酸価は100mgKOH/g以上160mgKOH/g以下であり、好ましくは110mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の酸価が160mgKOH/gを超えると、記録される画像(印字物)の耐滲み性が低下する傾向にある。一方、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の酸価が100mgKOH/g未満であると、サーマル方式でインクを吐出するインクジェット記録装置で用いた場合に吐出安定性が低下する傾向にある。
酸価は、1gの樹脂を中和するのに必要となるKOHの量(mg)であり、樹脂の親水性を示す指標となる。樹脂の酸価は、例えば、電位差滴定により酸価を求める滴定装置(例えば、商品名「Titrino」、Metrohm社製)等を使用して測定することができる。なお、樹脂を構成する各モノマーの組成比から酸価を算出することもできる。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体のスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、6,000〜12,000であることが好ましく、7,000〜9,000であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量が上記範囲内であると、インクの吐出安定性が向上するとともに、ヒーターでのコゲーションが抑制され、かつ、インクの粘度が低下して分散安定性が向上するので長期間安定して印字することができる。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量が6,000未満であると、顔料の分散安定性が低下する傾向にある。一方、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量が12,000を超えると、インクの粘度が高くなりすぎるとともに、顔料の分散安定性が低下する傾向にある。さらに、ヒーターでコゲーションが生じやすく、サーマル方式でインクを吐出するインクジェット記録装置で用いた場合にインクの不吐出が発生する傾向にある。
インク中の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の含有量は、顔料1質量部に対して、0.2〜1.0質量部であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の含有量が上記範囲内とすることで、顔料の分散安定性を維持しつつ、インクの粘度を低く保つことができる。
本発明のインクは、インク全量を基準とした顔料の含有量をP質量%、及びインク全量を基準とした(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の含有量をR質量%とした場合に、下記式(1)の関係を満たす。
1.05≦[R/P]/[(R/P)CRIT]≦1.40 ・・・(1)
(前記式(1)中、(R/P)CRITは、顔料に吸着しない未吸着の共重合体が存在しないR/Pの最大値である)
1.05≦[R/P]/[(R/P)CRIT]≦1.40 ・・・(1)
(前記式(1)中、(R/P)CRITは、顔料に吸着しない未吸着の共重合体が存在しないR/Pの最大値である)
「[R/P]/[(R/P)CRIT]」値が1.05未満であると、インク中のフリーポリマー((メタ)アクリル酸エステル系共重合体)の量が少なすぎるため、コゲーションの発生を防止することが困難になる。一方、「[R/P]/[(R/P)CRIT]」値が1.40を超えると、インク中のフリーポリマーの量が多すぎるため、記録ヘッドの吐出口周りのオリフィス等に余剰のフリーポリマーが付着して不均一な「ぬれ」が生じてしまう。このため、インクの吐出が不規則になり、吐出方向の曲がりやインク液滴の着弾点のずれ等が生ずる場合がある。さらに、余剰のフリーポリマーがオリフィス近傍で固着しやすくなるので、インクの吐出が妨げられてしまい、不吐出が生じてしまう場合がある。
[1−3]樹脂分散顔料:
本発明のインクは、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体によって顔料を被覆して得られる樹脂分散顔料を用いて調製することができる。液中での動的光散乱法により求められる樹脂分散顔料の平均粒子径は、70nm以上150nm以下であることが好ましく、80nm以上120nm以下であることがさらに好ましい。樹脂分散顔料の平均粒子径が150nmを超えると、インクの沈降が促進される、長期間での分散安定性が損なわれる傾向にある。一方、樹脂分散顔料の平均粒子径が70nm未満であると、記録する画像の発色性や耐候性が不十分になる傾向にある。樹脂分散顔料の平均粒子径は、例えば、レーザー光の散乱を利用した、FPAR−1000(大塚電子製、キュムラント法解析)及びナノトラックUPA 150EX(日機装製、50%の積算値の値とする)等の粒径・粒度分布測定装置を使用して測定することができる。
本発明のインクは、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体によって顔料を被覆して得られる樹脂分散顔料を用いて調製することができる。液中での動的光散乱法により求められる樹脂分散顔料の平均粒子径は、70nm以上150nm以下であることが好ましく、80nm以上120nm以下であることがさらに好ましい。樹脂分散顔料の平均粒子径が150nmを超えると、インクの沈降が促進される、長期間での分散安定性が損なわれる傾向にある。一方、樹脂分散顔料の平均粒子径が70nm未満であると、記録する画像の発色性や耐候性が不十分になる傾向にある。樹脂分散顔料の平均粒子径は、例えば、レーザー光の散乱を利用した、FPAR−1000(大塚電子製、キュムラント法解析)及びナノトラックUPA 150EX(日機装製、50%の積算値の値とする)等の粒径・粒度分布測定装置を使用して測定することができる。
樹脂分散顔料のインク中への添加量は、インク全量に対して0.5質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、1.0質量%以上8.0質量%以下とすることがさらに好ましく、1.5質量%以上6.0質量%以下とすることが特に好ましい。樹脂分散顔料の濃度が0.5質量%未満であると、十分な発色性を有する画像を記録することが困難になる場合がある。一方、樹脂分散顔料の濃度が10%質量を超えると、インクの粘度が上昇してしまい、吐出が困難になる場合がある。
[1−4]インク中のフリーポリマーの存在確認:
インク中のフリーポリマーは、後述する方法によってインク中から取り出した乾固物試料を熱重量分析方法等によって分析することで、その存在を確認することができる。
インク中のフリーポリマーは、後述する方法によってインク中から取り出した乾固物試料を熱重量分析方法等によって分析することで、その存在を確認することができる。
カーボンブラックを顔料として用いた水性顔料分散体(インク)を例に挙げ、インク中のフリーポリマーの存在を確認する方法について説明する。カーボンブラックを含有するインク又は水性顔料分散体を塩析又は凝析することによって得られる沈澱物(固形分)を乾固させた後、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の良溶媒を用いて洗浄する。次いで、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体がその粒子表面に化学的に結合しているカーボンブラックのみを抽出する抽出処理を行う。以上をまとめると、インク中のフリーポリマーの存在は、(1)塩析又は凝析、(2)沈澱物の洗浄、(3)乾固、(4)カーボンブラックのみの抽出、及び(5)乾燥、という一連の手順によって確認することができる。
(1)インク(又は水性顔料分散体)からカーボンブラックを含む固形分を塩析又は凝析させる方法については特に限定されない。具体的には、(a)塩化ナトリウムや塩化カリウム等の塩で塩析させる;(b)硝酸や塩酸等の酸を用いて凝析(酸析)させる;等の方法を用いることができる。この際、必要に応じて、塩析等の前工程として限外濾過等を行ってもよい。
(2)塩析又は凝析等によって得られる固形分を純水で十分に洗浄する。特に、(b)凝析を行った場合には、洗浄後の濾液が中性になるまで十分に洗浄することが好ましい。
(3)オーブン等を使用して洗浄後の固形分を十分に乾燥し、乾固物を得る。乾燥条件等は特に限定されず、例えば、60℃で2時間程度乾燥させればよい。
(4)(3)で得られる乾固物には、カーボンブラックの粒子表面に化学的に結合していないフリーポリマーが混入している可能性がある。そこで、(3)で得た乾固物を(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の良溶媒で洗浄する。これにより、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体がその粒子表面に化学的に結合しているカーボンブラックをより高純度に抽出することができる。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の良溶媒は共重合体の構造によって異なり、一概に限定できるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)等は、汎用性のある良溶媒である。この場合、このような良溶媒を用いて繰り返して上記乾固物を洗浄し、固形分に混入している可能性のあるフリーポリマーの除去作業を繰り返すことが好ましい。
(5)良溶媒で洗浄することによりフリーポリマーが除去された固形分をオーブン等で十分な乾燥し、残存水分や残存溶剤を揮発させて乾固物試料を得る。乾燥の際に使用するオーブン等は特に限定されず、例えば、市販の真空乾燥機等を用いることができる。
(5)良溶媒で洗浄することによりフリーポリマーが除去された固形分をオーブン等で十分な乾燥し、残存水分や残存溶剤を揮発させて乾固物試料を得る。乾燥の際に使用するオーブン等は特に限定されず、例えば、市販の真空乾燥機等を用いることができる。
上記(4)の手順で得たカーボンブラックの洗浄液を液体クロマトグラフィー等により分析すれば、インク(又は水性顔料分散体)中のフリーポリマーの存在を確認することができる。
[1−5]酸析:
本発明のインクは、顔料と(メタ)アクリル酸エステル系共重合体とが強く相互作用し、顔料が水性媒体中に分散していることが好ましい。より具体的には、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体によって顔料が被覆されて形成された樹脂分散顔料が水性媒体中に分散していることが好ましい。顔料を(メタ)アクリル酸エステル系共重合物によって被覆し、樹脂分散顔料を形成するには、インクを調製する過程に酸析工程を組み込むことが好ましい。酸析工程においては、例えば、顔料と、塩基性物質の水溶液に溶解している(メタ)アクリル酸エステル系共重合体とを含有する水性分散体に塩酸、硫酸、又は酢酸等の酸を添加し、水性分散体を酸性にすることによって、溶解状態にある(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を顔料の粒子表面に析出させる。
本発明のインクは、顔料と(メタ)アクリル酸エステル系共重合体とが強く相互作用し、顔料が水性媒体中に分散していることが好ましい。より具体的には、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体によって顔料が被覆されて形成された樹脂分散顔料が水性媒体中に分散していることが好ましい。顔料を(メタ)アクリル酸エステル系共重合物によって被覆し、樹脂分散顔料を形成するには、インクを調製する過程に酸析工程を組み込むことが好ましい。酸析工程においては、例えば、顔料と、塩基性物質の水溶液に溶解している(メタ)アクリル酸エステル系共重合体とを含有する水性分散体に塩酸、硫酸、又は酢酸等の酸を添加し、水性分散体を酸性にすることによって、溶解状態にある(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を顔料の粒子表面に析出させる。
この工程を実施することにより、顔料と(メタ)アクリル酸エステル系共重合体との相互作用をより高めた樹脂分散顔料を形成させることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を顔料の粒子表面に析出させた後は、析出物を濾別する濾過工程を実施すればよい。濾過工程終了後には、析出物を洗浄する洗浄工程、及び塩基性物質で中和して水性媒体中に顔料を分散させる再分散工程を実施することで、分散安定性により優れた顔料分散体及びインクを得ることができる。
[1−6]水溶性化合物:
本発明のインクは、少なくとも水溶性化合物に樹脂分散顔料を分散させたものである。水溶性化合物を用いることで、水の蒸発を防止し、乾燥によるインクの固着を防止することができる。水溶性化合物の種類は特に限定されないが、水溶性有機溶媒及び25℃で固体の水溶性化合物の少なくともいずれかであることが好ましい。なお、「水溶性化合物」とは、水と自由に混和するか、或いは水に対する溶解度(25℃)が20g/100g以上の化合物を意味する。
本発明のインクは、少なくとも水溶性化合物に樹脂分散顔料を分散させたものである。水溶性化合物を用いることで、水の蒸発を防止し、乾燥によるインクの固着を防止することができる。水溶性化合物の種類は特に限定されないが、水溶性有機溶媒及び25℃で固体の水溶性化合物の少なくともいずれかであることが好ましい。なお、「水溶性化合物」とは、水と自由に混和するか、或いは水に対する溶解度(25℃)が20g/100g以上の化合物を意味する。
水溶性化合物としては、例えば以下に挙げるようなアルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、カルボン酸アミド類、複素環類、ケトン類、アルカノールアミン類等の各種水溶性有機溶媒を用いることができる。また、尿素、エチレン尿素、トリメチロールプロパン等の25℃で固体の水溶性化合物を用いることもできる。
(1)アルコール類:
メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール等の炭素数1〜5の鎖式アルコール類;
(2)多価アルコール類:
エチレングリコール(エタンジオール)、プロパンジオール(1,2−、1,3−)、ブタンジオール(1,2−、1,3−、1,4−)、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等のアルカンジオール類;
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルカンジオールの縮合体;
グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール等のアルカンジオール類以外の多価アルコール類;
(3)グリコールエーテル類:
エチレングリコールのモノメチルエーテル;
ジエチレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル;
トリエチレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノブチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル;
テトラエチレングリコールのジメチルエーテル、ジエチルエーテル;
(4)カルボン酸アミド類:
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド;
(5)複素環類:
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルモルホリン等の含窒素複素環類;
スルホラン等の含硫黄複素環類;
(6)尿素類:
尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(N,N’−ジメチルエチレン尿素)等の尿素類;
(7)ケトン類:
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;
4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)等のケトアルコール;
(8)アルカノールアミン類:
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン;
(9)その他:
ジメチルスルホキシド、ビスヒドロキシエチルスルホン等の含硫黄化合物;
メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール等の炭素数1〜5の鎖式アルコール類;
(2)多価アルコール類:
エチレングリコール(エタンジオール)、プロパンジオール(1,2−、1,3−)、ブタンジオール(1,2−、1,3−、1,4−)、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等のアルカンジオール類;
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルカンジオールの縮合体;
グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール等のアルカンジオール類以外の多価アルコール類;
(3)グリコールエーテル類:
エチレングリコールのモノメチルエーテル;
ジエチレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル;
トリエチレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノブチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル;
テトラエチレングリコールのジメチルエーテル、ジエチルエーテル;
(4)カルボン酸アミド類:
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド;
(5)複素環類:
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルモルホリン等の含窒素複素環類;
スルホラン等の含硫黄複素環類;
(6)尿素類:
尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(N,N’−ジメチルエチレン尿素)等の尿素類;
(7)ケトン類:
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;
4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)等のケトアルコール;
(8)アルカノールアミン類:
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン;
(9)その他:
ジメチルスルホキシド、ビスヒドロキシエチルスルホン等の含硫黄化合物;
上記の水溶性有機溶媒のなかでは、多価アルコール類が好ましく、グリセリンがさらに好ましい。グリセリンは揮発しにくく、インクの固着を防止する効果に優れる点において好ましい。また、これらの水溶性有機溶媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、グリセリンと、グリセリン以外の多価アルコール及び含窒素複素環類とを併用することも好ましい。この際、グリセリン以外の多価アルコールとしてはトリエチレングリコール等を、含窒素複素環類としては2−ピロリドン等を用いることができる。このような混合溶媒はインクの増粘を防止する効果が高い点において好ましい。
水溶性有機化合物の含有率は特に限定されない。但し、水性媒体の蒸発を防止し、乾燥によるインクの固着を防止する効果を得るために、インク全質量に対して5質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上とすることがさらに好ましく、15質量%以上とすることが特に好ましい。一方、高い駆動周波数にも対応可能とし、カビの発生を防止する観点から、インク全質量に対して50質量%以下とすることが好ましく、40質量%以下とすることがさらに好ましく、30質量%以下とすることが特に好ましい。
25℃で固体の水溶性化合物としては、尿素、エチレン尿素等を用いることが好ましく、エチレン尿素を用いることがさらに好ましい。25℃で固体の水溶性化合物の含有率は特に限定されない。但し、水性媒体の蒸発を防止し、乾燥によるインクの固着を防止する効果を得るために、インク全質量に対して5質量%以上とすることが好ましく、9質量%以上とすることがさらに好ましい。一方、過剰の添加による不具合を防止するため、インク全質量に対して30質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下とすることがさらに好ましい。
[1−7]界面活性剤:
本発明のインクには、表面張力を制御して記録媒体におけるインクのにじみ度合いや浸透性を制御する、ヘッド内でのインクの濡れ性を向上させる、或いはインクのヒーター面上でのコゲーションを防止して吐出を向上させる等の目的で、必要に応じて、界面活性剤を含有させてもよい。このような目的で添加される界面活性剤の種類は特に限定はされないが、以下に挙げるノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤を用いることができる。なお、これらの界面活性剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のインクには、表面張力を制御して記録媒体におけるインクのにじみ度合いや浸透性を制御する、ヘッド内でのインクの濡れ性を向上させる、或いはインクのヒーター面上でのコゲーションを防止して吐出を向上させる等の目的で、必要に応じて、界面活性剤を含有させてもよい。このような目的で添加される界面活性剤の種類は特に限定はされないが、以下に挙げるノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤を用いることができる。なお、これらの界面活性剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
[ノニオン性界面活性剤]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体等。脂肪酸ジエタノールアミド、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物、アセチレングリコール系界面活性剤等。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体等。脂肪酸ジエタノールアミド、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物、アセチレングリコール系界面活性剤等。
[アニオン性界面活性剤]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルフォン酸塩等。アルファスルホ脂肪酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフン酸塩、アルキルフェノールスルフォン酸塩、アルキルナフタリンスルフォン酸塩、アルキルテトラリンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルフォン酸塩等。アルファスルホ脂肪酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフン酸塩、アルキルフェノールスルフォン酸塩、アルキルナフタリンスルフォン酸塩、アルキルテトラリンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等。
[カチオン性界面活性剤]
アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド等。
アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド等。
[両性界面活性剤]
アルキルカルボキシベタイン等。
アルキルカルボキシベタイン等。
上記のなかでも、アセチレングリコール系界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルエーテル等は、インクの吐出安定性を向上させることができるため、特に好ましく使用される。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、下記一般式(1)に示す化合物(1)(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール又はそのエチレンオキサイド付加物)を用いる。
[1−8]水:
水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水の含有率は特に限定されない。ただし、インクの全質量に対し、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。水の含有率を10質量%以上とすることにより、顔料及び水溶性化合物を水和させることができ、顔料や水溶性化合物の凝集を防止することができる。一方、水の含有率を90質量%以下とすることにより、相対的に水溶性化合物の量が増え、水性媒体中の揮発成分(水等)が揮発してしまった場合でも、顔料の分散状態を維持することができ、顔料の析出や固化を防止することができる。
水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水の含有率は特に限定されない。ただし、インクの全質量に対し、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。水の含有率を10質量%以上とすることにより、顔料及び水溶性化合物を水和させることができ、顔料や水溶性化合物の凝集を防止することができる。一方、水の含有率を90質量%以下とすることにより、相対的に水溶性化合物の量が増え、水性媒体中の揮発成分(水等)が揮発してしまった場合でも、顔料の分散状態を維持することができ、顔料の析出や固化を防止することができる。
[1−9]他の添加剤:
本発明のインクは、目的に応じて、界面活性剤以外の添加剤を含有してもよい。そのような添加剤としては、例えばpH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、塩等を挙げることができる。
本発明のインクは、目的に応じて、界面活性剤以外の添加剤を含有してもよい。そのような添加剤としては、例えばpH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、塩等を挙げることができる。
[1−10]粘度:
本発明のインクの粘度ηは、1.5mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましく、1.6mPa・s以上3.5mPa・s以下であることがさらに好ましく、1.7mPa・s以上3.0mPa・s以下であることが好ましい。インクの粘度を1.5mPa・s以上とすると、良好なインク滴を形成することができる。また、インクの粘度を5.0mPa・s以下とすることにより、インクの流動性が向上し、ノズルへのインク供給性、ひいてはインクの吐出安定性が向上する。
本発明のインクの粘度ηは、1.5mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましく、1.6mPa・s以上3.5mPa・s以下であることがさらに好ましく、1.7mPa・s以上3.0mPa・s以下であることが好ましい。インクの粘度を1.5mPa・s以上とすると、良好なインク滴を形成することができる。また、インクの粘度を5.0mPa・s以下とすることにより、インクの流動性が向上し、ノズルへのインク供給性、ひいてはインクの吐出安定性が向上する。
インクの粘度は、JIS Z 8803に準拠して、温度25℃の条件下、E型粘度計(例えば、東機産業社製「RE−80L粘度計」等)を用いて測定した値を意味するものとする。インクの粘度は、界面活性剤の種類や量の他、水溶性有機溶媒の種類や量等により調整することができる。
[1−11]表面張力:
本発明のインクの表面張力γは、25mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。インクの表面張力を25mN/m以上とすると、インク吐出口のメニスカスを維持することができ、インクがインク吐出口から流出してしまう不具合を防止することができる。また、インクの表面張力を45mN/m以下とすることにより、インクの記録媒体への吸収速度を最適にすることができ、インクの吸収不足による定着不良をという不具合を防止することができる。
本発明のインクの表面張力γは、25mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。インクの表面張力を25mN/m以上とすると、インク吐出口のメニスカスを維持することができ、インクがインク吐出口から流出してしまう不具合を防止することができる。また、インクの表面張力を45mN/m以下とすることにより、インクの記録媒体への吸収速度を最適にすることができ、インクの吸収不足による定着不良をという不具合を防止することができる。
インクの表面張力は、温度25℃の条件下、自動表面張力計(例えば、協和界面科学社製「CBVP−Z型」等)を使用し、白金プレートを用いたプレート法により測定した値を意味するものとする。インクの表面張力は、界面活性剤の添加量、水溶性有機溶剤の種類及び含有量等により調整することができる。
[1−12]pH:
本発明のインクのpHは7.5以上10.0以下であることが好ましく、8.5以上9.5以下であることが好ましい。インクのpHが7.5未満であると、顔料粒子の分散安定性が低下しやすく、顔料粒子が凝集しやすくなる傾向にある。一方、インクのpHが10.0超であると、使用する装置の部材によってはインクとの接触によりケミカルアタックが生じて有機物や無機物がインク中に溶出することがあり、結果として吐出不良が引き起こされる場合がある。インクのpHは、温度25℃の条件下、pHメーター(例えば、堀場製作所社製「D−51」等)を用いて測定した値を意味するものとする。
本発明のインクのpHは7.5以上10.0以下であることが好ましく、8.5以上9.5以下であることが好ましい。インクのpHが7.5未満であると、顔料粒子の分散安定性が低下しやすく、顔料粒子が凝集しやすくなる傾向にある。一方、インクのpHが10.0超であると、使用する装置の部材によってはインクとの接触によりケミカルアタックが生じて有機物や無機物がインク中に溶出することがあり、結果として吐出不良が引き起こされる場合がある。インクのpHは、温度25℃の条件下、pHメーター(例えば、堀場製作所社製「D−51」等)を用いて測定した値を意味するものとする。
[2]記録ヘッド:
以下、本発明の記録ヘッドの一の実施形態について、図面を用いて説明する。但し、本発明の記録ヘッドは、以下に説明する構成に限定されるものではない。
以下、本発明の記録ヘッドの一の実施形態について、図面を用いて説明する。但し、本発明の記録ヘッドは、以下に説明する構成に限定されるものではない。
[2−1]ノズル部分の構造:
まず、ノズル部分の構造について図1A〜図1Cを用いて説明する。図1Aは記録ヘッドのノズルの内部構造を模式的に示す上面図である。図1Bは図1Aに示すノズルの内部構造を模式的に示す側面図である。図1Cは図1Aに示すノズルのインク吐出口を模式的に示す正面図である。
まず、ノズル部分の構造について図1A〜図1Cを用いて説明する。図1Aは記録ヘッドのノズルの内部構造を模式的に示す上面図である。図1Bは図1Aに示すノズルの内部構造を模式的に示す側面図である。図1Cは図1Aに示すノズルのインク吐出口を模式的に示す正面図である。
サーマル方式の記録ヘッドは、図示のようにノズル壁153によって仕切られた複数のノズル流路159からなるノズル列が形成され、ノズル流路159に連通する複数のインク吐出口151が形成され、各々のノズル流路159の内部にインク吐出用のヒーター152が配置されている。このような構造のヘッドは、ノズル流路159内部に充填されたインクをヒーター152で加熱し、インクを発泡させることで、インク吐出口151からインクの液滴を飛翔させることができる。
図示の形態では、ノズル流路159と共通液室112との間に、ヘッド内のインク流路中に浮遊する異物をトラップするためのノズルフィルター155が設置されている。また、ノズル天板162が貼り付けられる天板部材113は異方性エッチング等で形成されたインク供給開口(不図示)を備え、外部からのインクを共通液室112からノズル流路159に導入可能に構成されている。
ノズル流路159はノズル壁153によって左右の両側面側が仕切られることに加えて、ノズル天板162によって上面側が、ノズル底板164によって底面側が仕切られている。即ち、ノズル流路159は、ノズル壁153、ノズル天板162およびノズル底板164を隔壁として周囲の空間から区画された略四角柱状の内部空間である。ノズル天板162は、Si等で構成される天板部材113に貼り付けられており、ノズル底板164はヒーター基板111に貼り付けられている。
インク吐出口151はノズル流路159の一端に形成されるインクを吐出させる開口部であり、ノズル流路159を経由して共通液室112に連通されている。インク吐出口151はフェイス面に形成される。図示の例では、フェイス面はノズル壁153と一体的に形成されているが、別途フェイスプレートを設置してフェイス面を形成してもよい。インク吐出口151の開口面積は100μm2以上350μm2以下に構成される。開口面積を100μm2以上とすることで不吐ノズルの発生を防止することができる。一方、350μm2以下とすることで1つのインク液滴の量が10pL以下の微小液滴を形成させることができ、解像度を600dpi以上とすることができる。なお、前記開口面積は吐出口幅171と吐出口高さ172の積で表される。
前記記録ヘッドは複数のノズル流路によってノズル列が形成されたライン型ヘッドである。ノズル列を形成するノズル流路の数は特に限定されない。但し、本発明の効果を発現させるためには、ノズル列の総ノズル数が1200以上であることが必要であり、1200以上9600以下であることが好ましく、1200以上4800以下であることが更に好ましい。また、ノズル列の長さが2インチ以上であることが必要であり、2インチ以上4インチ以下であることが好ましい。
ヒーター152は、ノズル流路159に充填されたインクを加熱発泡させるための加熱手段である。ヒーター152はヒーター基板111に設置されている。ヒーター152としては抵抗体(例えばチッ化タンタル等からなる抵抗体)を用いることができる。ヒーター152には通電のためのアルミニウム等からなる電極(図示せず)が接続されており、その一方にはヒーター152への通電を制御するためのスイッチングトランジスタ(図示せず)が接続されている。スイッチトランジスタは制御用のゲート素子等の回路からなるICによって駆動を制御され、ヘッド外部からの信号によって、所定のパターンで駆動する。
前記記録ヘッドは、駆動周波数1kHz以上10kHz以下で駆動させることが可能なものである。駆動周波数1kHz以上で駆動させることにより、1滴あたりのインク量が極めて小さい場合でも、単位時間あたりのインク付与量を増加させ、画像データ量、記録ドット数を増やすことができる。すなわち高画質の画像を高速で印刷することが可能となる。駆動周波数10kHz以下で駆動させることにより、前記のような高速印刷時にインク吐出量に対してノズルへのインク供給量が不足して吐出安定性が低下する不具合が抑制される。前記効果をより確実に得るためには、駆動周波数3kHz以上8kHz以下で駆動させることが可能なものであることが好ましい。また、本発明の記録ヘッドは、高い駆動周波数の下でも吐出安定性が低下し難く、ノズル不吐が発生し難いため、駆動周波数6kHz以上10kHz以下で駆動させることが可能なものであることも好ましい。
ノズルの全長は200μm以上300μm以下とすることが好ましい。この場合の「ノズルの全長」とは、ノズル流路159の長さを意味し、具体的にはノズル流路159を構成するノズル壁153のインク吐出口151側の端部から共通液室112側の端部までの長さを意味する。
ノズル流路159は、ヒーター中心157からインク吐出口151側の端部までの部分であるノズル前方部181と、ヒーター中心157から共通液室112側の端部までの部分であるノズル後方部182に区分される。吐出速度の観点から、ノズル前方部181の流抵抗(前方抵抗)と、ノズル後方部182の流抵抗(後方抵抗)は、前方抵抗/後方抵抗の値が0.3以上0.8以下であることが好ましい。なお、流抵抗は、流路断面積、流路長、吐出するインクの粘度等の値から、ハーゲン・ポアズイユの法則により計算で求めることができる。即ち、使用するインク(ひいてはその粘度)が定まれば、前方抵抗/後方抵抗の値は、ノズルの流路断面積、流路長等により調整することができる。
[2−2]ノズル材:
ノズル流路159を仕切るノズル壁153、ノズル天板162、ノズル底板164は、例えば感光性樹脂により形成することができる。感光性樹脂としては、ネガ型フォトレジスト等を用いることができる。具体的な市販品としては、例えば「SU−8シリーズ」、「KMPR−1000」(以上、化薬マイクロケム社製)、「TMMR」、「TMMR S2000」、「TMMF S2000」(以上、東京応化工業社製)等を挙げることができる。中でも、耐溶剤性、ノズル壁としての強度に優れたエポキシ系感光性樹脂を用いることが好ましい。具体的な市販品としては、東京応化工業社製の「TMMR S2000」が特に好ましい。
ノズル流路159を仕切るノズル壁153、ノズル天板162、ノズル底板164は、例えば感光性樹脂により形成することができる。感光性樹脂としては、ネガ型フォトレジスト等を用いることができる。具体的な市販品としては、例えば「SU−8シリーズ」、「KMPR−1000」(以上、化薬マイクロケム社製)、「TMMR」、「TMMR S2000」、「TMMF S2000」(以上、東京応化工業社製)等を挙げることができる。中でも、耐溶剤性、ノズル壁としての強度に優れたエポキシ系感光性樹脂を用いることが好ましい。具体的な市販品としては、東京応化工業社製の「TMMR S2000」が特に好ましい。
[2−3]親水性領域、撥水性領域:
本発明の記録ヘッドはインク吐出口の周縁に親水性領域または撥水性領域が形成されたものが好ましい。親水性領域と撥水性領域のいずれを形成するかは、使用するインクの色材の種類や表面張力を考慮して決定すればよい。
本発明の記録ヘッドはインク吐出口の周縁に親水性領域または撥水性領域が形成されたものが好ましい。親水性領域と撥水性領域のいずれを形成するかは、使用するインクの色材の種類や表面張力を考慮して決定すればよい。
例えば色材が顔料であるか、あるいは表面張力が34mN/m以下のインクを使用する場合には、インク吐出口の周縁に親水性領域が形成された記録ヘッド(親水性ヘッド)が好ましい。そして、インク吐出口の周縁に、使用するインクとの接触角が60°以下の親水性領域が形成されていることが好ましく、前記接触角が0°の(即ち、接触角を形成しない)親水性領域が形成されていることが更に好ましい。なお、親水性領域または撥水性領域の接触角はJIS R 3257に準拠して、接触角計(例えば、商品名「SImage−mini」、エキシマ社製等)を用い、ATAN1/2θ法により測定することができる。後述する実施例においても前記方法により接触角を測定している。
前記親水性領域は、インク吐出口が形成されている部材(フェイス材)を親水性材料により構成する方法、前記フェイス材の表面(フェイス面)を親水処理する方法、前記フェイス面に親水性膜を付与する方法等により形成することができる。
前記フェイス材としては、例えばエポキシ樹脂等の樹脂、特にエポキシ系感光性樹脂を用いることができる。
フェイス面を親水処理する方法としては、フェイス面を粗面化する方法を挙げることができる。粗面化の方法としては、例えば、レーザー照射処理、UV/O3処理、プラズマ処理、加熱処理、酸化処理およびエンボス加工処理等を挙げることができる。レーザー照射処理には、エキシマレーザー、YAGレーザー、CO2レーザー等のレーザーを用いることができる。また、インク吐出口周縁部を親水性が高い液体に長時間浸漬する方法により処理してもよい。「親水性が高い液体」としては顔料インク等を挙げることができる。例えば、フェイス材を使用する顔料インク中に10分間以上、浸漬すればよい。
フェイス面に親水性膜を付与する方法としては、フェイス面に金属膜や親水性の樹脂膜を形成する方法を挙げることができる。親水性膜は、親水性を有するのは勿論のこと、フェイス材に対する付着性が良好な材料により形成することが好ましい。そのような材料としては、水溶性樹脂および水不溶性低分子化合物を含む組成物等を挙げることができる。例えば、水溶性樹脂(ヒドロキシプロピルセルロース等)と水不溶性低分子化合物(ビスフェノールA等)を、適当な溶媒(ジメチルホルムアミド等)に溶解させ、その溶液をフェイス面に塗布し、乾燥させ、必要に応じてアルコール等で処理することにより、親水性膜を形成することができる。
親水性領域の形成は、前記方法の中からフェイス材を構成する材質に応じて適宜選択すればよい。また、親水性領域の形成は、前記方法を2種以上組み合わせて行ってもよい。前記方法の中では、ノズル周辺部をエポキシ系感光性樹脂により構成するとともに、前記ノズル周辺部をUV/O3処理し、更に顔料インク中に浸漬することにより親水化処理する方法が好ましい。
また、例えば色材が染料であり、かつ、表面張力が34mN/m超のインクを使用する場合には、インク吐出口の周縁に撥水性領域が形成された記録ヘッド(撥水性ヘッド)が好ましい。そして、インク吐出口の周縁に、使用するインクとの接触角が90°以上の撥水性領域が形成されていることが更に好ましく、使用するインクとの接触角が100°以上の撥水性領域が形成されていることが特に好ましい。
撥水性領域は、インク吐出口が形成されている部材(フェイス材)の表面(フェイス面)に撥水性膜を付与する方法等により形成することができる。
フェイス面に撥水性膜を付与する方法としては、フェイス面に超撥水性の樹脂膜を形成する方法を挙げることができる。超撥水性の樹脂膜は、従来公知の方法により形成することができる。例えば、フェイス面にフッ素樹脂、シリコーン樹脂等を塗工して樹脂膜を形成する方法、フェイス面においてフッ素系モノマーをプラズマ重合させてフッ素樹脂膜を形成する方法等を挙げることができる。また、フェイス面に撥水撥油性の樹脂膜を形成する方法を採用してもよい。例えばフルオロ炭素化合物を重合させたフッ素樹脂からなる膜を形成する方法等を挙げることができる。中でも、フッ素系溶媒(旭硝子製「CXT−809A」、住友スリーエム製「<ノベック>HFE−7100」、「<ノベック>HFE−7200」、「<ノベック>HFE−71IPA」等)に、含フッ素シリコーンカップリング剤(例えば、信越化学製「KP−801M」等)を溶解させた溶液を調製し、この溶液をフェイス面に加熱蒸着させることにより、撥水性膜を形成する方法が好ましい。
[2−4]記録ヘッドの全体構造:
次に、記録ヘッドの全体構造について図2A〜図2Cを用いて説明する。図2A〜図2Cに示すような構造の記録ヘッドは、特開2013−014111号公報に開示されている。従って、本願明細書においては前記公報の内容を引用することとし、その概略を説明するに留める。なお、図2Aは、本発明の記録ヘッドを模式的に示す正面図であり、図2Bは、図2AのA−A断面図であり、図2Cは、図2AのB−B断面図である。説明の便宜上、正面図において液体供給ケースカバーは省略している。
次に、記録ヘッドの全体構造について図2A〜図2Cを用いて説明する。図2A〜図2Cに示すような構造の記録ヘッドは、特開2013−014111号公報に開示されている。従って、本願明細書においては前記公報の内容を引用することとし、その概略を説明するに留める。なお、図2Aは、本発明の記録ヘッドを模式的に示す正面図であり、図2Bは、図2AのA−A断面図であり、図2Cは、図2AのB−B断面図である。説明の便宜上、正面図において液体供給ケースカバーは省略している。
本発明の記録ヘッドは、図示のように、ライン型ヘッドが、ノズル列を形成する複数のノズル流路と連通する共通液室112と、共通液室112と連通する液体供給口127と、液体供給口127と連通するメイン液体供給室126と、メイン液体供給室126と連通する液体供給路137と、液体供給路137と連通する液体供給室(第一液体供給室134、第二液体供給室135)と、液体供給室を液体供給の際の流れに沿って上流側より第一液体供給室134と第二液体供給室135とに分離するように配設された供給フィルター118と、メイン液体供給室126の一部に設けられた気液分離部120と、気液分離部120と連通する空気室141と、を備えていることが好ましい。
そして、ノズル流路と、共通液室112と、液体供給口127と、メイン液体供給室126と、液体供給路137と、液体供給室(第一液体供給室134、第二液体供給室135)と、供給フィルター118と、気液分離部120と、空気室141とが、ノズル流路の配列方向と液体の吐出方向を含む平面に対して、平行平面上に配置され、メイン液体供給室126と、液体供給路137と、供給フィルター118と、気液分離部120と、空気室141とが、各々積層されることなく配置されていることが好ましい。
図2A〜図2Cに示すような構造の記録ヘッドは、気液分離型の記録ヘッドと称される。気液分離型の記録ヘッドはインクの自重を利用してノズル内にインクを充填するため、従来構造の記録ヘッドと比較して吐出安定性を確保することが極めて困難である。従って、気液分離型の記録ヘッドは本発明の効果を最も享受することができる形態の一つであると言える。
セラミック製のベースプレート110はシリコンにより形成されるヒーター基板111を支持している。ヒーター基板111には、液体の吐出エネルギー発生素子としての複数の電気熱変換体(ヒーターまたはエネルギー発生部)とこれらの電気熱変換体に対応するノズルを構成するための複数の流路壁とが形成されている。また、ヒーター基板111には各ノズルに連通する共通液室112を囲む液室枠も形成されている。このように形成されたノズルの側壁および液室枠の上には、共通液室112を形成する天板部材113が接合されている。したがって、ヒーター基板111と天板部材113は互いに一体化した状態でベースプレート110に積層接着されている。このような積層接着は、銀ペーストなどの熱伝導率のよい接着剤によって行われる。ベースプレート110におけるヒーター基板111の後方には、実装済みの電気配線基板(PCB114)が両面テープ(図示せず)により支持されている。ヒーター基板111上の各吐出エネルギー発生素子とPCB114とは、各々の配線に対応するワイヤボンディングにより電気的に接続されている。
天板部材113上面には、液体供給部材115が接合されている。液体供給部材115は液体供給ケース116と液体供給ケースカバー117より構成されており、液体供給ケースカバー117が液体供給ケース116の上面を塞ぐことにより、後述する液室や液体供給路が形成される。液体供給ケース116と液体供給ケースカバー117の接合は、例えば熱硬化型の接着剤などにより行われる。また、液体供給ケース116には供給フィルター118および排出フィルター119が配設されている。供給フィルター118は液体供給部材115に供給された液体中の異物の除去を目的とし、排出フィルター119は記録ヘッド外部からの異物の侵入を防止することを目的とする。各々のフィルターは熱溶着によって液体供給ケース116に固定されている。さらに液体供給ケース116の一部には気液分離部120が形成され、気液分離部120に突出する形で外部より液面検知センサ121が実装されており、上述したような液室内の液体量の制御を行う。
ここで、液体供給ケースと116液体供給ケースカバー117の2つの部品の嵌合により形成される液室および液体供給路等の構成について説明する。液体供給ケース116の天板部材113との接合面には、ノズルの配列方向と略平行かつノズル列の幅に渡って矩形状の開口部である液体供給口127が形成されており、液体供給口127の延長上には貯留室状のメイン液体供給室126が形成されている。すなわち、メイン液体供給室126はノズル列と略平行かつノズル列の幅に渡って形成されている。また、液体供給口127と対向側の天面は、ほぼ全域にわたって気液分離部120を最上部とした傾斜(メイン液体供給室傾斜129)を構成している。メイン液体供給室傾斜129には2つの開口部が形成されており、1つは液体連通部131、他方は気液分離部120である。
気液分離部120はメイン液体供給室126の一部として形成され、メイン液体供給室126の他の部分よりも深さが大きくなっている。これは、後述するように液室内の液体に混在する気泡を破泡する効果を高めるためである。図示の形態においては、気液分離部120の内部にステンレスの電極を3本実装しており、図中左側より上限検知電極123、グランド電極124、下限検知電極125である。グランド電極124と上限検知電極123間の通電、グランド電極124と下限検知電極125間の通電により、メイン液体供給室126内の液面を上限と下限の間に維持する構成となっている。図示の形態のインクジェットヘッドにおいては、気液分離がなされた液体の液面を検知することで、検知の信頼性を向上させることが可能である。
気液分離部120の延長上にはエア連通部130があり、その先はエア流路として機能する空気室141となる。さらに先には前述した排出フィルター119が配設されており、排出ジョイント133に連通する。排出フィルター119は撥水性を有する材質によって構成されており、万が一エア流路(空気室141)に液体が流入し、排出フィルター119にインクが付着することで、フィルター内部にインクのメニスカスが形成されても、その撥水性によってフィルター部の毛管力を低減することができ、インクを容易に除去することができる。
一方、メイン液体供給室傾斜129に設けられた液体連通部131を介して液体供給路137が設けられている。液体供給路137は、液体連通部131から供給フィルター118近傍まで管状を成しており、メイン液体供給室126とほぼ同一平行平面上に形成される。供給フィルター118もまた、メイン液体供給室126と略同一平行平面上に配置されている。供給フィルター118は液体供給室を二室に分離するように配設され、供給ジョイント132に連通する側の室、すなわち記録ヘッド内の液体供給の流れに沿って上流側の室が第一液体供給室134、下流側の室が第二液体供給室135となっている。供給フィルター118はメイン液体供給室126と略同一平行平面上に配置されているため、供給フィルター118の両面に隣接する第一液体供給室134および第二液体供給室135もまた、メイン液体供給室126やインク吐出口配列面139とほぼ平行平面上に配置されることになる。
第二液体供給室135は供給フィルター118上方に開口(以下、第二液体供給室開口136という)があり、これを介して液体供給路137に連通している。また、第二液体供給室135の天面はこの開口を最上部とする傾斜(以下、第二液体供給室傾斜138という)が形成されている。
以上のように、メイン液体供給室126、気液分離部120、液体供給路137、供給フィルター118、第一液体供給室134、第二液体供給室135は、各々インク吐出口配列面139と略平行平面上に設定される。一方でA−A断面に示すように、メイン液体供給室126、液体供給路137、供給フィルター118、気液分離部120は互いに平面の鉛直方向に重ならないように配置することが重要である。
供給フィルター118は、フィルター孔径が1μm以上10μm以下、フィルター面積が10mm2以上500mm2以下のステンレス製メッシュであることが好ましい。フィルター孔径を1μm以上、フィルター面積を10mm2以上とすることで、流路抵抗(圧力損失)を低減させ、記録ヘッドの内の気泡を移動し易くすることができる。前記効果をより確実に得るためには、フィルター面積を200mm2以上とすることが更に好ましい。一方、フィルター孔径を10μm以下とすることでノズルへのゴミの流入を確実に防止することができ、フィルター面積を500mm2以下とすることで記録ヘッドを小型化することができる。前記効果をより確実に得るためには、フィルター孔径を3μm以上8μm以下とすることが更に好ましい。
[2−5]インクの充填:
本発明の記録ヘッドにおいては、前記ライン型ヘッドの前記インク吐出口と連通する内部空間に、インクジェット記録用のインクが充填されている。インクは、前記内部空間のうち、少なくともインク吐出口から共通液室までの部分(即ち、ノズル流路および共通液室)に充填されていることが好ましい。
本発明の記録ヘッドにおいては、前記ライン型ヘッドの前記インク吐出口と連通する内部空間に、インクジェット記録用のインクが充填されている。インクは、前記内部空間のうち、少なくともインク吐出口から共通液室までの部分(即ち、ノズル流路および共通液室)に充填されていることが好ましい。
[3]インクジェット記録装置:
本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット記録用の記録ヘッドと、前記記録ヘッドに供給するインクを収容するインク収容部とを備えたインクジェット記録装置である。そして、前記記録ヘッドが、本発明の記録ヘッドであることを特徴とするものである。前記インク収容部の形態は特に限定されない。例えば図3に示すようなインクタンク等を挙げることができる。
本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット記録用の記録ヘッドと、前記記録ヘッドに供給するインクを収容するインク収容部とを備えたインクジェット記録装置である。そして、前記記録ヘッドが、本発明の記録ヘッドであることを特徴とするものである。前記インク収容部の形態は特に限定されない。例えば図3に示すようなインクタンク等を挙げることができる。
[3−1]インクタンク:
図3はインクタンクの拡大断面図である。インクタンク230は液体収容容器であり、その内部にはインクを収容する液室(インク室231)が形成されている。インク室231は、ジョイント部232のみにおいて外部と連通可能な閉空間となっている。インクタンク230は、記録ヘッドに対して着脱可能に構成されている。また、インクタンク230は、記録ヘッドの上部に備えられている。インク室231は柔軟性のある部材により形成されており、その内部には負圧発生用のバネ233−1と、バネ233−1に接続された圧力板233−2が内蔵されている。バネ233−1は、圧力板233−2を介してインク室231を内部から外部に向かって付勢し、インク室231の内部空間を拡大させる。即ち、バネ233−1はインク室231の内部に所定の負圧を発生させており、バネ233−1、圧力板233−2及びインク室231は一体となって負圧発生部233を構成している。ジョイント部232には不織布製のフィルター234が備えられている。
図3はインクタンクの拡大断面図である。インクタンク230は液体収容容器であり、その内部にはインクを収容する液室(インク室231)が形成されている。インク室231は、ジョイント部232のみにおいて外部と連通可能な閉空間となっている。インクタンク230は、記録ヘッドに対して着脱可能に構成されている。また、インクタンク230は、記録ヘッドの上部に備えられている。インク室231は柔軟性のある部材により形成されており、その内部には負圧発生用のバネ233−1と、バネ233−1に接続された圧力板233−2が内蔵されている。バネ233−1は、圧力板233−2を介してインク室231を内部から外部に向かって付勢し、インク室231の内部空間を拡大させる。即ち、バネ233−1はインク室231の内部に所定の負圧を発生させており、バネ233−1、圧力板233−2及びインク室231は一体となって負圧発生部233を構成している。ジョイント部232には不織布製のフィルター234が備えられている。
図4は記録ヘッドの拡大断面図である。記録ヘッド220は、電気熱変換素子(インク吐出用のヒーター)などのエネルギー発生素子(不図示)を備えている。このエネルギー発生素子によって、インク室221内のインクI(液室内の液体)は吐出口220Aから吐出される。インク室221には、インクIと共に空気(気体)が存在する。したがって、インク室221内には、インクIが収容されたインク収容部(液体収容部)と、空気(気体)が収容された空気収容部(気体収容部)と、が形成されることになる。
インク室221の上部には、インク室221とインクタンクのインク室を連通させるためのインク供給部222が設けられている。インク供給部222の平均的な幅は10mm程度である。また、インク供給部222の開口部にはフィルター部材223が備えられている。図示のフィルター部材223は、SUS製のメッシュにより形成されている。そのメッシュは金属繊維を織り込んだ構造となっている。フィルター部材223が細かい目を持つことにより、外部から記録ヘッド内にゴミが侵入し難くなる。
フィルター部材223の下面は、インクを保持可能なインク保持部材224に圧接されている。図5Aは図4に示すインク保持部材の拡大斜視図であり、図5Bは図5Aに示すインク保持部材のVb−Vb断面図である。図5Aおよび図5Bに示すように、インク保持部材224には断面円形の流路224Aが複数形成されている。それぞれの流路224Aの口径は1.0mm程度である。
また、図4に示すように、インク室221の上部には、開口部225が設けられている。開口部225にはフィルター226が備えられている。開口部225は外部の流路である移送部(不図示)に接続することが可能に構成されている。この移送部は液体及び/又は気体を移送することが可能な流路である。開口部225は、インク室221内のインクI及び/又は気体を外部に流出させ、或いは記録ヘッド220の外部の液体(インクなど)及び/又は気体をインク室221内に流入させることが可能に構成されている。即ち、開口部225は、液体を単独で流出・流入させるのみならず、液体とともに気体を流出・流入させることが可能に形成されている。
図3に示すインクタンク230のジョイント部232と、図4に示す記録ヘッド220のインク供給部222とを連結させることにより、図3に示すインクタンク230と、図4に示す記録ヘッド220が直接的に接続される。この際、図3に示すインクタンク230のフィルター234と、図4に示す記録ヘッド220のフィルター部材223とは、上下から相互に圧接された状態となっている。このように形成されたインクタンクと記録ヘッドとの連結部は、その周囲をゴム製の弾性キャップ部材で囲むことにより、密閉性が維持される。前記のように記録ヘッドとインクタンクが直接的に接続された構造は、それらの間のインク供給路(液体供給路)を極めて短くすることができる点において好ましい。
[3−2]記録装置の全体構成:
インクジェット記録装置のその他の構造等については特に限定されない。例えば図6に示すような記録装置300を好適に用いることができる。
インクジェット記録装置のその他の構造等については特に限定されない。例えば図6に示すような記録装置300を好適に用いることができる。
図6は、インクジェット記録装置の全体構成を模式的に示す概略構成図である。記録装置300には、外部のホスト装置(コンピュータ装置308)が接続されている。記録装置300は、コンピュータ装置308から入力された記録データに基づいて記録ヘッド305からインクを吐出し、画像を記録することができるように構成されている。
記録装置300においては、記録媒体301として複数のラベルが仮付けされたラベル用紙を用いている。記録媒体301はロール状に巻回された状態でセットされている。但し、本発明のインクジェット記録装置においては、記録媒体として、紙のみならず、布、プラスチックフィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等のインクを受容可能な媒体であれば、材質を問わず使用することができる。
記録装置300は、記録媒体301を搬送する搬送手段として、搬送モータ303、搬送ローラ302、ロータリーエンコーダ310およびロールモータ311を備える。搬送モータ303により搬送ローラ302を駆動させることで、矢印A方向に向かって一定の速度で記録媒体301を搬送することができる。ロータリーエンコーダ310によって記録媒体301の搬送速度や搬送量を検出することができる。ロールモータ311によって矢印A方向とは逆方向に記録媒体301を巻き戻すことができる。用紙検知センサ304は記録媒体301の特定部分を検出するセンサである。図示の例ではラベル用紙に仮付けされた個々のラベルの先端を検出している。前記検出に基づいて画像の記録タイミングを決定することができる。
記録装置300は、その上部に4つの記録ヘッド305と、これらに対応するインクタンク306を備えている。前記4つの記録ヘッドは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを吐出するための記録ヘッドである。
記録ヘッド305は、記録媒体301の最大幅記録幅よりも幅広に構成された、いわゆるライン型ヘッドであり、インクを吐出可能な複数のノズルを備えている。ノズルのインク吐出口は記録ヘッド305の下面側に開口している。記録ヘッド305は、その長手方向が記録媒体301の搬送方向と交差する方向(図中の矢印Aに直交する方向)に沿うように配置されており、前記長手方向に沿って複数のノズルが配列されてノズル列が形成されている。
記録装置300においては、搬送モータ303によって搬送ローラ302が駆動され、搬送ローラ302によって記録媒体301が矢印A方向に定速度で搬送される。用紙検知センサ304によって記録媒体301の特定部分が検出されると、その検知位置を基準として4つの記録ヘッド305のインク吐出口から順次、インクが吐出される。この際、インクはインクタンク306から記録ヘッド305に供給される。このように、記録媒体301が記録ヘッド305の下部を通過するときに、それらの記録ヘッド305の複数のノズルからインクが吐出され、記録媒体301に画像が記録される。なお、記録ヘッド305はライン型ヘッドであるため定位置に固定された状態でインクを吐出する。即ち、シリアルヘッドのように左右に往復しながら、インクを吐出することはない。
記録装置300は、記録ヘッド305の回復動作を行うための回復機構として、キャッピング機構307、ブレード309などを備えている。
回復動作とは、記録ヘッド305が初期状態と同様の適正な吐出性能を発揮するように回復させるための動作である。例えば吸引回復、加圧回復、予備吐出、ワイプ回復等の動作を挙げることができる。吸引回復とは、記録ヘッド305のノズル内の増粘インクをキャッピング機構307に吸引除去する動作であり、加圧回復とは、記録ヘッド305のノズル内の増粘インクをキャッピング機構307に加圧排出する動作であり、予備吐出とはノズル内の増粘インクを吐出によりキャッピング機構307に排出しインクのメニスカスを安定させる動作であり、ワイプ回復とは、記録ヘッドのフェイス面をブレード309により払拭し、フェイス面に付着したゴミやインクを除去する動作である。これらの回復動作は組み合わせて実施することもできる。
キャッピング機構307は、各々の記録ヘッド305のインク吐出口をキャッピングする機構であり、記録ヘッド305の下部に配置されている。記録ヘッド305とキャッピング機構307は、図6の左右方向に相対移動させることが可能に構成されている。一方、ブレード309は、各々の記録ヘッド305のフェイス面を払拭する部材であり、記録ヘッド305の下部に配置されている。
吸引回復を行う場合には、記録ヘッド305をキャッピング機構307によりキャッピングした状態で、チューブポンプ(不図示)により、キャッピング機構307のバッファータンク(不図示)の内部を減圧する。これにより、記録ヘッド305のノズル内の増粘したインクをキャッピング機構307に吸引除去し、ノズル内をリフレッシュする。
加圧回復を行う場合には、記録ヘッド305をキャッピング機構307によりキャッピングした状態で、記録ヘッド305のノズル内を加圧する。これにより、ノズル内の増粘したインクをキャッピング機構307のキャップ内に加圧排出し、ノズル内をリフレッシュする。
ワイプ回復を行う場合には、ブレードモータ(不図示)によりブレード309を駆動させ、記録ヘッド305のノズルのフェイス面を払拭し、さらに加圧回復(予備吐出)を行う。これにより、ノズルのフェイス面がクリーニングされ、インク吐出口におけるメニスカスが整えられる。
なお、これらの回復動作によりキャッピング機構307に蓄積されたインクは、所定の量まで蓄積された段階で、チューブポンプ(不図示)により吸引され、廃インクタンク(不図示)に廃棄される。
[3−3]制御系:
次に、インクジェット記録装置の制御について説明する。図7は、図6に示す記録装置の制御系のブロック構成図である。前記記録装置は、記録ヘッドを含む記録機構に加えて、CPU(中央処理装置)、USBインターフェース部、ROMなどの制御系部品を備えている。CPU401は、プログラムROM402に記憶されているプログラムを実行して、前記記録装置の各部を制御する。プログラムROM402には、前記記録装置を制御するプログラムやデータが格納される。前記記録装置の処理は、CPU401がプログラムROM402内のプログラムを読み出して実行することにより実現される。
次に、インクジェット記録装置の制御について説明する。図7は、図6に示す記録装置の制御系のブロック構成図である。前記記録装置は、記録ヘッドを含む記録機構に加えて、CPU(中央処理装置)、USBインターフェース部、ROMなどの制御系部品を備えている。CPU401は、プログラムROM402に記憶されているプログラムを実行して、前記記録装置の各部を制御する。プログラムROM402には、前記記録装置を制御するプログラムやデータが格納される。前記記録装置の処理は、CPU401がプログラムROM402内のプログラムを読み出して実行することにより実現される。
コンピュータ装置308から出力された記録データは、前記記録装置のインターフェース・コントローラ403に入力される。記録媒体(ラベル)の枚数、種類およびサイズ等を指示するコマンドも、インターフェース・コントローラ403に入力され、解析される。CPU401は、これらのコマンドの解析の他、記録データの入力、記録動作、記録媒体のハンドリング等、記録装置全般の制御を司るための演算処理を実行する。前記演算処理は、プログラムROM402に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。前記プログラムは、後述する図8に示すフローチャートの手順に対応するプログラムを含む。また、CPU401の作業用のメモリとして、ワークRAM404が使用される。EEPROM405は書き換え可能な不揮発性メモリである。このEEPROM405には、前回の回復動作を実施した時刻、複数の記録ヘッドの相互の距離および搬送方向における記録位置を微調整(縦方向のレジストレーション)するための補正値等、前記記録装置に固有のパラメータが記憶される。
より具体的には、CPU401は、入力されたコマンドを解析した後、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ406にビットマップ展開する。このデータに基づいて描画が行われる。また、CPU401は、入出力回路407およびモータ駆動部408を介して、搬送モータ303、ロールモータ311、キャッピングモータ409、ヘッドモータ410およびポンプモータ418を制御する。キャッピングモータ409はキャッピング機構307を駆動するためのモータであり、ヘッドモータ410は記録ヘッド305K、305Y、305M、305Cを移動させるためのモータであり、ポンプモータ418はチューブポンプを駆動するためのモータである。記録ヘッド305K、305Y、305M、305Cは、キャッピング位置、記録位置および回復位置の間で移動される。キャッピング位置はキャッピング機構307によってキャッピングされる位置、記録位置は画像を記録するための位置、回復位置は回復動作を行うための位置である。
記録装置により画像を記録する際には、図6に示すように搬送モータ303により搬送ローラ302を駆動して、記録媒体301(図示の例ではラベル用紙)を一定の速度で搬送する。そして、ロータリーエンコーダ310によって記録媒体301の搬送速度や搬送量を検出する。図7に示す制御系においては、この一定速度で搬送される記録媒体に対する画像の記録タイミングを決定するために、用紙検知センサ304によってラベルの先端を検出する。用紙検知センサ304の検出信号は、入出力回路411を介してCPU401に入力される。搬送モータにより記録媒体が搬送されると、ロータリーエンコーダ(不図示)の信号に同期して、CPU401がイメージメモリ406から色毎のイメージデータを順次読み出す。前記イメージデータは、記録ヘッド制御回路412を介して、対応する記録ヘッド305K、305Y、305M、305Cのいずれかに転送される。これにより、記録ヘッド305K、305Y、305M、305Cが、前記イメージデータに基づいてインクを吐出する。
ポンプを駆動するためのポンプモータ413は、入出力回路407およびモータ駆動部408を介してその駆動を制御される。操作パネル414は入出力回路415を介してCPU401に接続される。また、前記記録装置の環境温度と環境湿度は温湿度センサ416によって検出され、A/Dコンバーター417を介してCPU401に入力される。
[3−4]回復シーケンス:
環境温度が40℃以上となり、水が蒸発した場合には、記録ヘッドにインクの固着が発生しやすくなる。従って、記録ヘッドからヘッドキャップが外れたヘッドオープンの状態で、かつ、水分が蒸発した場合には記録ヘッドのフェイス面を回復する回復シーケンスを入れることが好ましい。
環境温度が40℃以上となり、水が蒸発した場合には、記録ヘッドにインクの固着が発生しやすくなる。従って、記録ヘッドからヘッドキャップが外れたヘッドオープンの状態で、かつ、水分が蒸発した場合には記録ヘッドのフェイス面を回復する回復シーケンスを入れることが好ましい。
図8は、記録ヘッドの回復シーケンスの工程を示すフローチャートである。図8に示す回復シーケンスは、記録ヘッドがキャップから開放されたキャップオープンの条件(条件501)となると発動する。回復シーケンスが発動すると、温湿度センサにより記録装置の環境温度および環境湿度が取得(検出)される(工程502)。前記検出の結果、環境温度が40℃以上、環境湿度が70%以下であり(条件503)、かつ、前回の吸引回復からの累計時間が1時間以上となった場合(条件504)、ノズル内のインクをリフレッシュするための加圧回復(予備吐出)と、フェイス面を払拭しクリーニングするためのワイプ回復が行われる(工程505)。なお、条件504は、吸引回復が行われた場合にはリセットされる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の合成>
(合成例1)
撹拌装置、滴下装置、温度センサ、及び上部に窒素導入装置を有する環流装置を取り付けた反応容器にメチルエチルケトン1,000部を仕込み、撹拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸2−ヒドロキシエチル63部、メタクリル酸141部、スチレン417部、メタクリル酸ベンジル188部、メタクリル酸グリシジル25部、重合度調整剤(商品名「ブレンマーTGL」、日本油脂社製)33部、及びペルオキシ−2−エチルヘキサン酸−t−ブチル 67部を混合して得た混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で10時間反応を継続させて、酸価110mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)89℃、重量平均分子量8,000の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液(樹脂分:45.4%)を得た。
(合成例1)
撹拌装置、滴下装置、温度センサ、及び上部に窒素導入装置を有する環流装置を取り付けた反応容器にメチルエチルケトン1,000部を仕込み、撹拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸2−ヒドロキシエチル63部、メタクリル酸141部、スチレン417部、メタクリル酸ベンジル188部、メタクリル酸グリシジル25部、重合度調整剤(商品名「ブレンマーTGL」、日本油脂社製)33部、及びペルオキシ−2−エチルヘキサン酸−t−ブチル 67部を混合して得た混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で10時間反応を継続させて、酸価110mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)89℃、重量平均分子量8,000の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液(樹脂分:45.4%)を得た。
(合成例2)
メタクリル酸を209部及びメタクリル酸ベンジルを107部としたこと以外は、前述の合成例1と同様にして、酸価170mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)97℃、重量平均分子量8,600の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−2)の溶液(樹脂分:46.0%)を得た。
メタクリル酸を209部及びメタクリル酸ベンジルを107部としたこと以外は、前述の合成例1と同様にして、酸価170mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)97℃、重量平均分子量8,600の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−2)の溶液(樹脂分:46.0%)を得た。
(合成例3)
メタクリル酸を110部、メタクリル酸ベンジルを206部、及びペルオキシ−2−エチルヘキサン酸−t−ブチルを160部としたこと、並びに重合調整剤を添加しなかったこと以外は、前述の合成例1と同様にして、酸価90mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)87℃、重量平均分子量9,100の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−3)の溶液(樹脂分46.1%)を得た。
メタクリル酸を110部、メタクリル酸ベンジルを206部、及びペルオキシ−2−エチルヘキサン酸−t−ブチルを160部としたこと、並びに重合調整剤を添加しなかったこと以外は、前述の合成例1と同様にして、酸価90mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)87℃、重量平均分子量9,100の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−3)の溶液(樹脂分46.1%)を得た。
<水性顔料分散体の調製>
(PC−1)
冷却機能を備えた混合槽に合成例1で得た(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液、25%水酸化カリウム水溶液、水、及びフタロシアニン系ブルー顔料1,000部を仕込み、撹拌及び混合して混合液を得た。なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)は、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で40%の比率となる量を用いた。また、25%水酸化カリウム水溶液は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)が100%中和される量を用いた。さらに、水は、得られる混合液の不揮発分を27%とする量を用いた。得られた混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置に通し、循環方式により4時間分散させた。なお、分散液の温度を40℃以下に保持した。
(PC−1)
冷却機能を備えた混合槽に合成例1で得た(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液、25%水酸化カリウム水溶液、水、及びフタロシアニン系ブルー顔料1,000部を仕込み、撹拌及び混合して混合液を得た。なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)は、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で40%の比率となる量を用いた。また、25%水酸化カリウム水溶液は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)が100%中和される量を用いた。さらに、水は、得られる混合液の不揮発分を27%とする量を用いた。得られた混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置に通し、循環方式により4時間分散させた。なお、分散液の温度を40℃以下に保持した。
混合槽から分散液を抜き取った後、水10,000部で混合槽と分散装置の流路を洗浄し、洗浄液と分散液を混合して希釈分散液を得た。得られた希釈分散液を蒸留装置に入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して濃縮分散液を得た。室温まで放冷した濃縮分散液を撹拌しながら2%塩酸を滴下してpH4.5に調整した後、ヌッチェ式濾過装置にて固形分を濾過して水洗した。得られた固形分(ケーキ)を容器に入れ、水を加えた後、分散撹拌機を使用して再分散させ、25%水酸化カリウム水溶液にてpH9.5に調整した。その後、遠心分離器を使用し、6000Gで30分間かけて粗大粒子を除去した後、不揮発分を調整してシアン色の水性顔料分散体PC−1(顔料分:14%)を得た。
(PC−2)
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)を、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で43%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、シアン色の水性顔料分散体PC−2(顔料分:14%)を得た。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)を、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で43%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、シアン色の水性顔料分散体PC−2(顔料分:14%)を得た。
(PC−3)
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)を、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で48%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、シアン色の水性顔料分散体PC−3(顔料分:14%)を得た。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)を、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で48%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、シアン色の水性顔料分散体PC−3(顔料分:14%)を得た。
(PC−4)
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)を、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で55%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、シアン色の水性顔料分散体PC−4(顔料分:14%)を得た。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)を、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で55%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、シアン色の水性顔料分散体PC−4(顔料分:14%)を得た。
(PC−5)
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)を、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で65%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、シアン色の水性顔料分散体PC−5(顔料分:14%)を得た。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)を、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で65%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、シアン色の水性顔料分散体PC−5(顔料分:14%)を得た。
(PC−6)
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−2)を、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で48%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、シアン色の水性顔料分散体PC−6(顔料分:14%)を得た。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−2)を、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で48%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、シアン色の水性顔料分散体PC−6(顔料分:14%)を得た。
(PC−7)
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−3)を、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で48%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、シアン色の水性顔料分散体PC−7(顔料分:14%)を得た。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−3)を、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で48%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、シアン色の水性顔料分散体PC−7(顔料分:14%)を得た。
(PY−1)
フタロシアニン系ブルー顔料に代えてピグメントイエローY74を用いたこと、及び(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)を、ピグメントイエローY74に対して、不揮発分で52%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、イエロー色の水性顔料分散体PY−1(顔料分:14%)を得た。
フタロシアニン系ブルー顔料に代えてピグメントイエローY74を用いたこと、及び(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)を、ピグメントイエローY74に対して、不揮発分で52%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PC−1」と同様にして、イエロー色の水性顔料分散体PY−1(顔料分:14%)を得た。
(PY−2)
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)を、ピグメントイエローY74に対して、不揮発分で40%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PY−1」と同様にして、イエロー色の水性顔料分散体PY−2(顔料分:14%)を得た。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)を、ピグメントイエローY74に対して、不揮発分で40%の比率となる量を用いたこと以外は、前述の「PY−1」と同様にして、イエロー色の水性顔料分散体PY−2(顔料分:14%)を得た。
<水性顔料分散体の分析>
調製した水性顔料分散体の「R/P」値を表1に示す。また、「R/P」値を0.01刻みで変更したシアン色とイエロー色の水性顔料分散体をそれぞれ調製し、前述の手順にしたがって、顔料に吸着せずに水性顔料分散体中に存在する未吸着の共重合体(フリーポリマー)の有無を確認した。その結果及び表1に示す結果から、シアン色の水性顔料分散体の「(R/P)CRIT」値は「0.43」であり、イエロー色の水性顔料分散体の「(R/P)CRIT」値は「0.40」であることが分かった。
調製した水性顔料分散体の「R/P」値を表1に示す。また、「R/P」値を0.01刻みで変更したシアン色とイエロー色の水性顔料分散体をそれぞれ調製し、前述の手順にしたがって、顔料に吸着せずに水性顔料分散体中に存在する未吸着の共重合体(フリーポリマー)の有無を確認した。その結果及び表1に示す結果から、シアン色の水性顔料分散体の「(R/P)CRIT」値は「0.43」であり、イエロー色の水性顔料分散体の「(R/P)CRIT」値は「0.40」であることが分かった。
<インク(実施例1〜3、比較例1〜6)の調製>
表2に示す組成(合計:100部)となるように、水性顔料分散体及び各成分を容器に投入し、プロペラ撹拌機を使用して30分以上撹拌した。その後、孔径0.2μmのフィルター(日本ポール社製)で濾過してインクを調製した。なお、粒径・粒度分布測定装置(FPAR−1000(大塚電子製、キュムラント法解析))を使用して測定したインク中の樹脂分散顔料の平均粒子径は、シアンインクについては100nmであり、イエローインクについては105nmであった。
表2に示す組成(合計:100部)となるように、水性顔料分散体及び各成分を容器に投入し、プロペラ撹拌機を使用して30分以上撹拌した。その後、孔径0.2μmのフィルター(日本ポール社製)で濾過してインクを調製した。なお、粒径・粒度分布測定装置(FPAR−1000(大塚電子製、キュムラント法解析))を使用して測定したインク中の樹脂分散顔料の平均粒子径は、シアンインクについては100nmであり、イエローインクについては105nmであった。
<印字耐久性の評価>
調製したインクをインクジェット記録装置(商品名「LXD5500」(キヤノンファインテック社製)を改造した装置)のインクタンクに収納し、温度15℃及び湿度10%の条件下、インクジェットヘッド上に1200dpiの密度で1列に並んだ4800個のノズル(吐出口)のうちの4つノズルからインクを吐出させて、1本の線印字パターン画像(線1本あたり1000ドット)を記録媒体に連続して印刷した。なお、記録媒体(メディア)にはマットラベル(キヤノンファインテック社製)を用いた。不吐出が発生した印刷枚数から、以下に示す評価基準にしたがってインクの印字耐久性を評価した。結果を表2に示す。
○:15万枚以上
△:1万枚以上15万枚未満
×:1万枚未満
調製したインクをインクジェット記録装置(商品名「LXD5500」(キヤノンファインテック社製)を改造した装置)のインクタンクに収納し、温度15℃及び湿度10%の条件下、インクジェットヘッド上に1200dpiの密度で1列に並んだ4800個のノズル(吐出口)のうちの4つノズルからインクを吐出させて、1本の線印字パターン画像(線1本あたり1000ドット)を記録媒体に連続して印刷した。なお、記録媒体(メディア)にはマットラベル(キヤノンファインテック社製)を用いた。不吐出が発生した印刷枚数から、以下に示す評価基準にしたがってインクの印字耐久性を評価した。結果を表2に示す。
○:15万枚以上
△:1万枚以上15万枚未満
×:1万枚未満
110:ベースプレート、111:ヒーター基板、112:共通液室、113:天板部材、115:液体供給部材、116:液体供給ケース、117:液体供給ケースカバー、118:供給フィルター、119:排出フィルター、120:気液分離部、121:液面検知センサ、123:上限検知電極、124:グランド電極、125:下限検知電極、126:メイン液体供給室、127:液体供給口、129:メイン液体供給室傾斜、130:エア連通部、131:液体連通部、132:供給ジョイント、133:排出ジョイント、134:第一液体供給室、135:第二液体供給室、136:第二液体供給室開口、137:液体供給路、138:第二液体供給室傾斜、139:インク吐出口配列面、141:空気室、151:インク吐出口、152:ヒーター、153:ノズル壁、155:ノズルフィルター、157:ヒーター中心、159:ノズル流路、162:ノズル天板、164:ノズル底板、171:吐出口幅、172:吐出口高さ、181:ノズル前方部、182:ノズル後方部、220:記録ヘッド、220A:吐出口、221:インク室、222:インク供給部、223:フィルター部材、224:インク保持部材、224A:流路、225:開口部、226:フィルター、230:インクタンク、231:インク室、232:ジョイント部、233:負圧発生部、233−1:バネ、233−2:圧力板、234:フィルター、300:記録装置、301:記録媒体、302:搬送ローラ、303:搬送モータ、304:用紙検知センサ、305、305K、305Y、305M、305C:記録ヘッド、306:インクタンク、307:キャッピング機構、308:コンピュータ装置、309:ブレード、310:ロータリーエンコーダ、311:ロールモータ、401:CPU、402:プログラムROM、403:インターフェース・コントローラ、404:ワークRAM、405:EEPROM、406:イメージメモリ、407:入出力回路、408:モータ駆動部、409:キャッピングモータ、410:ヘッドモータ、411:入出力回路、412:記録ヘッド制御回路、413:ポンプモータ、414:操作パネル、415:入出力回路、416:温湿度センサ、417:A/Dコンバーター、418:ポンプモータ、501:条件、502:工程、503:条件、504:条件、505:工程、I:インク。
Claims (7)
- 水、水溶性化合物、顔料、及び前記顔料を分散させる酸価100mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有するインクジェット記録用インクであって、
インク全量を基準とした前記顔料の含有量をP質量%、及びインク全量を基準とした前記共重合体の含有量をR質量%とした場合に、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録用インク。
1.05≦[R/P]/[(R/P)CRIT]≦1.40 ・・・(1)
(前記式(1)中、(R/P)CRITは、前記顔料に吸着しない未吸着の前記共重合体が存在しないR/Pの最大値である) - 前記共重合体がランダムポリマーであり、
前記共重合体が酸析法によって前記顔料に吸着した後、中和されている請求項1に記載のインクジェット記録用インク。 - インクをノズル列よりサーマル方式で吐出させるインクジェット記録方法であって、
インク吐出口の開口面積が100〜350μm2であり、
前記インクが、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インクであるインクジェット記録方法。 - インクをノズル列よりサーマル方式で吐出させるインクジェット記録方法であって、
前記ノズル列の総ノズル数が1200以上、及び前記ノズル列の長さが2インチ以上であり、
前記インクが、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。 - その内部に充填されたインクをノズル列よりサーマル方式で吐出させるインクジェット記録用ヘッドであって、
インク吐出口の開口面積が100μm2以上350μm2以下、前記ノズル列の総ノズル数が1200以上、及び前記ノズル列の長さが2インチ以上であり、
前記インクが、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録用ヘッド。 - その内部に充填されたインクをノズル列よりサーマル方式で吐出させるインクジェット記録用ヘッドであって、
前記ノズル列を形成する複数のノズル流路と連通する共通液室と、前記共通液室と連通する液体供給口と、前記液体供給口と連通するメイン液体供給室と、前記メイン液体供給室と連通する液体供給路と、前記液体供給路と連通する液体供給室と、前記液体供給室を、液体供給の際の流れに沿って上流側より第一液体供給室と、第二液体供給室とに分離するように配設された供給フィルターと、前記メイン液体供給室の一部に設けられた気液分離部と、前記気液分離部と連通する空気室と、を備え、
前記ノズル流路と、前記共通液室と、前記液体供給口と、前記メイン液体供給室と、前記液体供給路と、前記液体供給室と、前記供給フィルターと、前記気液分離部と、前記空気室とが、前記ノズル流路の配列方向と前記液体の吐出方向を含む平面に対して、平行平面上に配置され、
前記メイン液体供給室と、前記液体供給路と、前記供給フィルターと、前記気液分離部と、前記空気室とが、各々積層することなく配置されており、
前記インクが、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録用ヘッド。 - インク収容部とインクを吐出する記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インク収容部に搭載されるインクが、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インクであり、
前記記録ヘッドが、請求項5又は6に記載のインクジェット記録用ヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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JP2013185458A JP2015052056A (ja) | 2013-09-06 | 2013-09-06 | インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクジェット記録用ヘッド、及びインクジェット記録装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2015052058A (ja) * | 2013-09-06 | 2015-03-19 | キヤノンファインテック株式会社 | インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクジェット記録用ヘッド、及びインクジェット記録装置 |
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2013
- 2013-09-06 JP JP2013185458A patent/JP2015052056A/ja active Pending
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