JP2009126084A - 記録媒体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基紙のサイズ性変更、製造設備改造を施すことなく、製造安定性に優れた記録媒体の製造方法を提供すること。
【解決手段】ステキヒトサイズ度が30秒以下である基紙の両面に設けた塗工層に塗布液を塗布する工程の前に、基紙の端部断面に塗布液の浸透抑制剤を付与する工程を設け、塗布液を塗工層に塗布してから乾燥用圧着面に圧接して塗工層を乾燥し終るまでの間に、塗布液が基紙の端部断面から浸透する距離Aを1.0mm以下とする。
【選択図】図4

Description

本発明は、基紙上に塗工層を設けた記録媒体に対して浸透抑制剤を付与し、塗工層表面に塗布液を塗布した後に乾燥用圧着面に圧接させ、乾燥する記録媒体の製造方法に関するものである。より詳しくは、基紙の端部断面に浸透抑制剤を付与することによって基紙の端部断面からの塗布液の浸透を抑制し、乾燥用圧着面における汚れなどの工程トラブルを改善する記録媒体の製造方法に関するものである。
インクジェット記録方法は、インク等の記録用液体(記録液)の微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて、紙などの記録媒体に付着させ、画像、文字などの記録を行うものである。このインクジェット記録方法は、高速低騒音、多色化が容易であり、記録パターンの融通性が大きく、現像が不要であるなどの特徴を有する。このため、インクジェット記録方法はプリンター単体への展開をはじめとして、複写機、ワードプロセッサー、ファクシミリ、プロッター等の情報機器における出力部への展開が行われ、急速に普及している。
また、近年、高性能のデジタルカメラ、デジタルビデオ、スキャナー等が安価に提供されつつある。このため、パーソナルコンピューターの普及と相まって、これらの媒体から得た画像情報の出力に、インクジェット記録方法を採用したプリンターが好適に用いられるようになってきている。このような背景において、銀塩系写真や製版方式の多色印刷と比較して遜色ない画像を、手軽にインクジェット記録方法で出力する事が求められるようになってきた。
そこで、このような要求を満たす為に、記録の高速化、高精細化、フルカラー化などプリンター自体の構造や記録方式に関する改良が行われてきており、これと同時に記録媒体の構造や特性に関する改良も盛んに検討されている。
そこで、インクジェット記録方法用に用いられる記録媒体については、これまでに数多くの形態のものが提案されてきた。
特許文献1には、インクの吸収速度を向上させるために比表面積の大きなシリカ系顔料を主成分とした空隙を有する層をインク受容層として設けた記録媒体が開示されている。
特許文献2および特許文献3には、インク受容層を設けることによってインク吸収性を向上させると共に、高い印字濃度やインク滲みのない印字ドットを得る為に、非晶質シリカ粉末を配合した記録媒体が記載されている。
また、記録媒体のインクを受ける部分の構成材料として、近年、アルミナ水和物が注目を集めつつある。この理由は、アルミナ水和物が正電荷を有しているためインク染料の定着性に優れており、発色性が高く、しかも、高光沢性の画像が得られるなどの特徴を有しているためである。特許文献4には、このようなアルミナ水和物を用いた記録媒体が開示されている。
さらに、特許文献5には、インク吸収性を向上させるため、サイズ度の低い基紙上にインク受容層を設けた記録媒体が開示されている。
また、特許文献6には、リウェットキャスト法により顔料を含むインク受容層を塗布形成することで、インク吸収性の低下を招くことなく優れた表面光沢性が得られることが記載されている。
また、上記のようなインク受容層を有する記録媒体は、生産性、作業性の点から、巻き取りロールの形態で回収されている。すなわち、図1(C)に示すように、この記録媒体は基紙3の両面に塗工層4が設けられ、この塗工層の表面部分または全部がインク受容層として機能している。一般的には、この後、インク受容層上にリウェットキャスト液等の塗布液を付与した後、特許文献6等に記載の方法を用いて、乾燥を行った後、ロール状に巻き取られる。この際、図1(A)に示すように、ロール状に巻き取る前にスリッター2により記録媒体の両端部分1を切り落とし、ロール幅を所望の大きさに調整することが行なわれており、最終的に図1(B)に示すような形態として巻き取られる。
一方、従来から、写真印画紙用支持体では、支持体断面からの現像液の浸透を防止する方法として、支持体中に特定の化合物を含有させたものが知られている。
特許文献7には、支持体がアクリルアミド化合物とジアリルアミン塩との共重合体を含有する写真印画紙用支持体が開示されている。
また、特許文献8には、炭素数8〜30のアルキルケテンダイマー、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、カチオン化スチレン−アクリル系共重合体を含有する写真印画紙用支持体が開示されている。
特開昭52-9074号公報 特開昭55-51583号公報 特開昭56-157号公報 特開平7−232473号公報 特開平9-66663号公報 特開2001−138628号公報 特開平7−120874号公報 特開2001−109106号公報
しかしながら、従来、サイズ度の低い基紙を用いて記録媒体を製造する場合、塗工層を設け、この塗工層上に塗布液を塗布し、更に記録媒体全面を、乾燥用圧着面に圧接して乾燥していた。このため、記録媒体が乾燥用圧着面に貼り付いて記録媒体の断紙や、記録媒体表面の塗工層が乾燥用圧着面に取られ、毛羽立ちや剥がれによる凹凸が発生するために、記録媒体表面として均一な光沢性を有する面(以下、「面性」と記載する)を良好に保つことが出来ない場合があった。
図2は、従来のリウェットキャスト法を用いて、塗布液塗布部6から乾燥用圧着面であるキャストドラム8の圧着までの工程を表す一例である。また、図3は、塗工層上に塗布液を塗布する工程を表す一例である。まず、記録媒体10には、塗布液塗布部6より、塗布液が付与される。この際、図3で示されるように、基紙の端部から塗布液13が浸透して、塗工層表面に塗布液を塗布した部分12に比べ、その幅方向の両端部11の含水率が高くなっていた。そして、この両端部11が図2中のキャストドラム8の表面に貼り付いて記録媒体の断紙や記録媒体表面の面性低下が生じていた。
また、この傾向は、特にリウェットキャスト法を用いた場合に顕著であった。すなわち、塗工層を設けた記録媒体に対して塗布液(リウェットキャスト液)を塗布、乾燥した後、キャストドラムから引き剥がす際、ドラムへの貼りつきが生じて記録媒体の断紙や、その記録媒体表面の面性低下が頻繁に生じることとなっていた。
このように記録媒体の乾燥用圧着面への貼り付きが生じる理由は、塗工層を設けた記録媒体に対して塗布液を塗布する工程で、この塗布液が基紙の露出した端部断面に接して、この端部断面から基紙中に急速に浸透するためである。すなわち、基紙の端部断面付近の含水率が基紙の中心部分の含水率よりも高い状態となるためである。
通常の基材への塗工層形成工程では、塗布液を基材に塗工後、乾燥する際に発生する基紙の伸縮を整えるために、図1(A)に示すように記録媒体の両端部分をスリッタで切断することが多く、常に基紙が両端部分で露出した状態となっている。
また、この塗布液を塗布後、乾燥工程が終了するまでの時間は、生産性や作業性の観点から、通常、数秒から数十秒程度となっていた。このため、従来の記録媒体の製造方法では、この間に塗布液が基紙の端部断面から浸透し、この浸透距離は概ね端部断面から5mm以上10mm以下となっていた。また、支持体をロール形態で巻き取る記録媒体の製造方法では、一般的に、メーター単位の幅で製造している。このため、上記のように基紙の端部断面から塗布液が急速に浸透するためこの部分は製品として使用できないとしても、この塗布液が基紙中に浸透する部分は基紙全体に対して僅かな比率と考えることもできる。
しかしながら、たとえ、上記のように基紙中への塗布液の浸透部分が少なかったとしても、この浸透部分が生じることにより、記録媒体を乾燥用圧着面から引き剥がす際、この浸透部分が大きく影響することとなっていた。そして、この基紙中の塗布液の浸透部分が乾燥用圧着面へ貼りつき、記録媒体の断紙やその記録媒体表面の面性低下が発生していた。そこで、従来から、基紙上に設けた塗工層に塗布液を塗布する際には、基紙の端部断面からできるだけ塗布液が浸透しないようにすることが望まれていた。
一方、基紙の端部断面からの塗布液の浸透を防ぐために、基紙全体の塗布液の浸透性を低くすると、記録媒体全体のインク吸収性を低下させることとなっていた。特許文献8および9には、写真印画紙用支持体の現像液の浸透防止用の化合物が開示されている。しかしながら、これらの化合物をサイズ度の低い基紙全体に適用すると、基紙の端部のみならず、基紙の全ての部分の液浸透性が抑制されることとなり記録媒体全体のインク吸収性が低下してしまうこととなっていた。
そこで、本発明者は、鋭意検討した結果、基紙の両面に塗工層を設けた記録媒体に対して、基紙の端部断面に塗布液の浸透抑制剤を付与した後、基紙の端部断面に塗布液が接するように塗布液を塗工層に塗布すれば良いことを発見した。そして、塗布液を塗工層に塗布してから乾燥用圧着面に圧接して乾燥し終るまでの間に、塗布液が基紙の端部断面から浸透する距離Aを1.0mm以下とすれば良いことを発見した。すなわち、本発明の目的は、サイズ度の低い基紙を用いた場合であっても、基紙の端部のみに浸透抑制を行うことにより乾燥用圧着面への汚れや記録媒体の断紙などの工程トラブルを改善し、記録媒体表面の面性低下を防ぐ記録媒体の製造方法を提供することにある。
上記課題は下記構成の本発明によって達成することができる。
1.ステキヒトサイズ度が30秒以下である基紙の両面に、顔料とバインダを含有する塗工層を設けた基紙の端部断面に塗布液が接するように塗布液を塗工層に塗布する工程、
前記塗布液を塗布した塗工層表面を乾燥用圧着面に圧接し、前記塗工層を乾燥する工程、を有する記録媒体の製造方法であって、
前記塗布液を塗工層に塗布する工程の前に、前記基紙の端部断面に前記塗布液の浸透抑制剤を付与する工程を設け、
前記塗布液を塗工層に塗布してから乾燥用圧着面に圧接して前記塗工層を乾燥し終るまでの間に、前記塗布液が前記基紙の端部断面から浸透する距離Aを1.0mm以下とすることを特徴とする記録媒体の製造方法。
2.前記浸透抑制剤が、アルキルケテンダイマー、ヒンダードアミン化合物、およびヒンダードアミン化合物と酸との塩からなる群から選択された少なくとも一種を含むことを特徴とする上記1に記載の記録媒体の製造方法。
3.前記乾燥用圧着面に圧接し、前記塗工層を乾燥する工程が、前記塗布液を塗布した塗工層表面を、加熱した鏡面ドラム状の金属面に圧着した状態で乾燥するキャスト法であることを特徴とする上記1または2に記載の記録媒体の製造方法。
4.前記記録媒体が、インクジェット記録用記録媒体であることを特徴とする上記1から3の何れか1項に記載の記録媒体の製造方法。
5.前記塗布液が基紙の端部断面から浸透する距離Aが、0.5mm以下であることを特徴とする上記1から4の何れか1項に記載の記録媒体の製造方法。
本発明の記録媒体の製造方法では、ステキヒトサイズ度が30秒以下とサイズ性が低い基紙を用いた記録媒体において、基紙のサイズ性および製造設備を変更することなく、乾燥用圧着面の汚れや記録媒体の断紙を防止できる。また、記録媒体表面の面性を良好に保つことができる。この結果、高い生産性で高品質の記録媒体を製造することができる。
本発明の記録媒体の製造方法は、以下の工程を有する。
(1)ステキヒトサイズ度が30秒以下である基紙の両面に、顔料とバインダを含有する塗工層を設けた基紙の端部断面に塗布液の浸透抑制剤を付与する。この後、基紙の端部断面に塗布液が接するように塗布液を塗工層に塗布する。(2)塗布液を塗布した塗工層表面を乾燥用圧着面に圧接し、塗工層を乾燥する。
また、上記工程(1)、(2)において、塗布液を塗工層に塗布してから乾燥用圧着面に圧接して塗工層を乾燥し終るまでの間に、塗布液が基紙の端部断面から浸透する距離Aを1.0mm以下とする。
上記のようにステキヒトサイズ度が30秒以下というインク吸収性が高い基紙を用いる場合、従来の製造方法では、この基紙上に設けた塗工層に塗布液を塗布すると、基紙の端部断面から塗布液が急速に基紙内に浸透する。そして、このように基紙内の塗布液が急速に浸透した部分は高水分率となっているため、後の工程で乾燥処理を施した場合であっても乾燥が不十分な状態となる。このように乾燥が不十分な湿潤状態では、一般的に基紙の内部強度、引張強度、引裂強度等が低下する。
このように基紙が湿潤状態となっている場合、塗工層中に存在するバインダ成分などの作用により塗工層の表面が乾燥用圧着面に貼り付いた状態のままとなる。そして、上記のような湿潤状態による強度低下の結果、記録媒体は塗工層表面の乾燥用圧着面への貼り付きや、記録媒体の切断、乾燥用圧着面の汚れといった工程トラブルの原因となる。
これに対して、本発明の製造方法では、塗布液を塗工層に塗布する工程の前に、基紙の端部断面に塗布液状の浸透抑制剤を付与する工程を有する。そして、塗布液を塗工層に塗布してから乾燥用圧着面に圧接して塗工層を乾燥し終るまでの間に、塗布液が基紙の端部断面から浸透する距離Aが1.0mm以下となっている。
このため、工程(1)、(2)の塗布液を塗工層に塗布してから乾燥用圧着面に圧接して塗工層を乾燥し終るまでの間に、基紙の端部断面を介して基紙中に浸透する塗布液の量を少なくすることができる。この結果、塗布液の付与後、基紙の端部断面から基紙の内部まで塗布液が浸透した部分、および塗布液の量を少なくすることができる。そして、記録媒体の塗布液を塗布した塗工層表面を乾燥用圧着面に圧接し、塗工層を乾燥する際に、塗工層表面の乾燥用圧着面への貼り付きや、記録媒体の切断、乾燥用圧着面の汚れを防止し、記録媒体表面の面性を良好に保つことができる。更に、本発明の製造方法では、基紙のサイズ性や製造設備を変更する必要がなくなる。
本発明の製造方法では、まず、工程(1)で、ステキヒトサイズ度が30秒以下である基紙の両面に、顔料とバインダを含有する塗工層を設ける。この塗工層は、単層あるいは2層以上の多層のどちらでも構わないが、インクを受容する塗工層部分は、インク受容層として機能する。この塗工層は例えば、顔料とバインダを含有するインク受容層用の塗布液を塗布、乾燥させることによって、形成することができる。
次に、基紙の端部断面にのみ塗布液状の浸透抑制剤を付与する。これによって、基紙のサイズ度(インク吸収性)に影響を及ぼすことなく、効果的に基紙の塗布液の浸透性を低下させることができる。この後、基紙の端部断面に塗布液が接するように塗布液を塗工層に塗布する。
次に、工程(2)では、塗布液を塗布した塗工層表面を乾燥用圧着面に圧接して、塗工層を乾燥する。この乾燥用圧着面としては、塗布液を塗布した塗工層表面に加圧して乾燥することができるものであれば、特に限定されるわけではなく、平板状やドラム状のものを挙げることができる。
図4は、本発明の製造方法の一例である、リウェットキャスト法を用いて、塗布液の塗布から乾燥用圧着面であるキャストドラムの圧着までの工程を表す図である。図4に示されるようにまず、塗工層を設けた基紙の端部断面に塗布液の浸透抑制剤を付与する。次に、この記録媒体14の塗工層表面に対して、塗布液塗布部6において塗布液を塗布した後に、圧着ロール7を用いてこれをキャストドラム8に圧接させると共に、加熱して乾燥する。そして、圧接、加熱乾燥後の記録媒体14を、剥離ロール9によりキャストドラム8から剥離させる。
また、図5(a)は、本発明の記録媒体の一例を示す図である。本発明の記録媒体は、図5(a)に示すように基紙22の両面上に塗工層23を有している。この記録媒体において、基紙の端部断面は21で表される。
また、本発明の製造方法では、工程(1)、(2)において、塗布液を塗工層に塗布してから乾燥用圧着面に圧接して塗工層を乾燥し終るまでの間に、塗布液が基紙の端部断面から浸透する距離Aを1.0mm以下となっている。以下に、図5(b)を用いて、「距離Aが1mm以下」の意義を説明する。図5(b)は、記録媒体の基紙のみを表したものである。本発明において、「距離Aが1mm以下」とは、塗布液を塗工層に塗布してから乾燥用圧着面に圧接して塗工層を乾燥し終るまでの間に、基紙内で塗布液が端部断面21からこの端部断面21に垂直な方向(図5(b)中の矢印24の方向)に浸透する距離が1.0mm以下となっていることを表す。
本発明の製造方法で製造した記録媒体は、インクジェット記録用記録媒体であることが好ましい。記録媒体をインクジェット記録用記録媒体として用いることによって、高いインク吸収性及び優れた画像特性を有することができる。
本発明の製造方法では、塗布液を塗工層に塗布してから乾燥用圧着面に圧接して塗工層を乾燥し終るまでの間に、塗布液が基紙の端部断面から浸透する距離Aが0.5mm以下であることが好ましい。このように距離Aが0.5mm以下であることによって、基紙中への塗布液の浸透を効果的に防止することができる。この結果、より効果的に記録媒体の断紙や記録媒体表面の面性低下を防止することができる。
以下、本発明の製造方法の各工程および使用材料の詳細について説明する。
<基紙>
基紙は、ステキヒトサイズ度(JIS P8122)が30秒以下で、キャスト工程のような乾燥用圧着面に接した状態で塗布液を乾燥する際に、塗布液中に含まれる水や溶剤成分が基紙中から蒸発し得るものであればどのようなものでも使用できる。具体的には、基紙の主材料としてLBKP、NBKP、NBSP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ、等の木材パルプ、ケナフ、バガス、コットンなどの非木材パルプを使用できる。
この基紙を得る際には、例えば、上記パルプのような主材料と、従来公知の顔料、バインダおよびサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を1種類以上、用いて混合して紙料を得る。また、この紙料中には、その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤等を、必要に応じて適宜に含有させることができる。そして、この紙料を長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種装置により抄造する。また、上記基紙表面には、澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の高分子化合物を含有する液をサイズプレス、ゲートロールコーター等で含浸・塗布することが好ましい。
<塗工層>
上記基紙の両面に、顔料とバインダを含む塗工液を塗工後、これを乾燥して上記(1)、(2)における「塗工層」を設ける。この塗工層としては、後述する下塗り層およびインク受容層が該当し、どちらか一方または両方を設けても良いが、本発明の記録媒体では基紙の両面に対して、片面あたり1層以上の塗工層を設ける。但し、インクを受容する塗工層部分として機能するインク受容層は、基紙の片面または両面の記録媒体表面層側に必ず設ける。
以下に、下塗り層とインク受容層の詳細について説明する。
<下塗り層>
上記基紙の片面または両面上には、顔料とバインダを含む塗工液を塗工後、これを乾燥して上記工程(1)、(2)における「塗工層」に該当する下塗り層を設けることができる。この顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロサイト等の無機顔料を用いることができる。また、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等有機顔料等を用いることもできる。これらの顔料は単独で、または複数種を組み合わせて使用することができる。
バインダとしては、顔料を結着する能力を有し、且つ乾燥用圧着面に接して塗布液を乾燥する際に、基紙中からの水、溶剤成分の蒸発を妨げないものであれば特に制限なく利用できる。バインダとしては、例えば、下記のものを使用できる。
酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体;
カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;
カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール、これらの誘導体;
ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共重合体ラテックス;
アクリル酸エステルの重合体、メタクリル酸エステルの重合体、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;
エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;
上記各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;
上記各種重合体にカチオン基を用いてカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤にて重合体表面をカチオン化したもの、カチオン性ポリビニルアルコール下で重合し重合体表面に該ポリビニルアルコールを分布させたもの、カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で重合を行い、重合体表面に該粒子が分布しているもの;
メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性バインダ;
ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体または共重合体樹脂;
ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダ等。
上記バインダは、単独で、または複数種を混合して用いることができる。
更に下塗り層中には、白色度、色調整のために蛍光染料、色顔料を含有しても良い。これらの材料を下塗り層中に含有させる際には、記録媒体の印字画像の写真様の質感、視覚の最適化のためにやや青白く調整することが好ましい。
下塗り層中の上記顔料とバインダの含有比は、質量比で100/5〜20/100とするのが好ましい。また、上記下塗り層は基紙の両面に、互いに対称となるように1層以上、設けることが好ましい。また、上記下塗り層を設けた基紙は、塗布液を塗布する前に、必要に応じて平滑化や厚みを調整する目的でカレンダ処理を施しても良い。
上記下塗り層用の塗工液の塗工は、例えば、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エクストルージョン方式を用いたダイコーター、スライドホッパー方式を用いたコーター、サイズプレス等の各種塗工装置を適宜、選択して用いることができる。また、上記塗工液の塗工は、オンマシン、又はオフマシンで行うことができる。
なお、記録媒体に必要とされる特性によって、この下塗り層は設けても、設けなくても良いが、高い白色度や光沢性を有するインクジェット記録用記録媒体を得るには、下塗り層を設けることが望ましい。
また、下塗り層を設ける場合には、この下塗り層に対して表面処理液を塗布しても良い。この工程では、例えば、表面処理液としてホウ酸及びホウ酸塩のうち少なくとも一方を含む表面処理液を下塗り層上に塗布する。この表面処理液の塗布量は、ホウ酸及びホウ酸塩の固形分換算で0.05g/m2以上3.0g/m2以下であることが好ましい。また、この表面処理液中には、バインダと架橋反応を起こして硬化する架橋剤を含んでいても良い。
表面処理液の塗布には、適正塗布量が得られるよう各種塗布装置を使用できる。この塗布装置としては各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター、スライドビード方式を用いたコーター等を適宜、選択して用いオンマシン、又はオフマシンで塗布できる。
また、下塗り層用塗工液、表面処理液の乾燥には、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を適宜、選択して用いることができる。
<インク受容層>
本発明の製造方法では、基紙上に下塗り層を設けた後、または場合によっては下塗り層を設けていない基紙上に、インク受容層としての機能を有する塗工層を設ける。このインク受容層は、下塗り層と同様に、上記工程(1)、(2)における「塗工層」に該当するものであり、顔料と、バインダを含む塗工液を塗工、乾燥することによって形成できる。
この顔料としては例えば、無機顔料として、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。
また、有機顔料としては例えば、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等を挙げることができる。
上記の中でも、顔料としては、透明性、発色性の点から、シリカ、アルミナ水和物を用いることが好ましい。これらの中でも、染料定着性、透明性、印字濃度、発色性、光沢性の点から、アルミナ水和物を用いることがより好ましい。インク受容層を形成するための塗工液中の、このアルミナ水和物の含有量は、塗工液中に含有される顔料全体の60質量%以上、100質量%以下とすることが好ましい。塗工液中のアルミナ水和物の含有量が60質量%未満の場合、染料定着性、透明性、印字濃度、発色性、光沢性が低下する場合がある。
このアルミナ水和物としては、例えば、下記一般式により表されるものが好ましい。
Al23-n(OH)2n・mH2
(上記式中、nは0、1、2または3の何れかを表し、mは0以上10以下、好ましくは0以上5以下の範囲にある値を表す。但し、mとnは、同時に0にはならない。mH2Oは、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数または整数でない値をとることができる。また、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがあり得る。)。
インク受容層を形成する塗工液中に使用するバインダとしては、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。このポリビニルアルコールとしては、アルミナ水和物等の顔料の結着性の点から、ケン化度70%以上のものが好ましく、80%以上のものがより好ましい。また、重合度としては、500以上のものを使用することが好ましい。ポリビニルアルコールの含有量としては、アルミナ水和物100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下とすることが好ましい。
インク受容層用の塗工液中に用いるバインダとしては、上記ポリビニルアルコールの他、下塗り層に使用できるバインダを用いることができる。また、インク受容層中には、下塗り層中に含まれるその他の添加剤を含有させることができる。更に、インク受容層中には、ホウ酸およびホウ酸塩のうち少なくとも一方を含有させることができる。インク受容層中にこれらのホウ酸およびホウ酸塩を含有させることにより、インク受容層中でのクラック発生を抑制することができる。
このインク受容層を構成する顔料とバインダの比(顔料)/(バインダ)は、質量比で100/5以上20/100以下であることが好ましい。また、インク受容層の乾燥塗工量は、20g/m2以上60g/m2以下の範囲にあることが好ましい。インク受容層の乾燥塗工量が20g/m2未満の場合、色素の定着性、吸収性が不充分になり鮮明で色濃度の高い記録ができない場合がある。また、インク受容層の乾燥塗工量が60g/m2を超える場合、インク受容層の機械的強度が低下し、クラックの発生が起こりやすくなる場合がある。
インク受容層用の塗工液の塗工は、下塗り層用の塗工液の塗工と同様の装置、方法を用いることにより行うことができる。
また、インク受容層用の塗工液の塗工後の乾燥には、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を、適宜、選択して用いることができる。
<浸透抑制剤>
本発明の記録媒体の製造方法では、基紙上に、下塗り層、インク受容層、または必要に応じて下塗り層とインク受容層を設けた後、基紙の端部断面に塗布液の浸透抑制剤を付与する。この浸透抑制剤は、後の工程で、塗布液を塗布し、塗工層表面を乾燥用圧着面に圧接して塗工層を乾燥するまでの間に、基紙中への塗布液の浸透を抑制する疎水性化合物である。浸透抑制剤を付与しない場合と比べて、基紙中への塗布液(典型的には、水)の浸透を抑制する作用を有するものであれば、浸透抑制剤の種類は特に限定されない。浸透抑制剤としては例えば、基紙中への塗布液の浸透を抑制する成分を含有する水溶液状、エマルジョンおよび有機溶媒中に基紙中への塗布液の浸透を抑制する成分を溶解させた溶液状のものを挙げることができる。
この基紙の端部断面に塗布液の浸透抑制剤を付与する方法としては、浸透抑制剤を、刷毛やスポンジ状ローラーなどを用いて基紙の端部断面に塗布する方法を挙げることができる。また、作業環境などに応じて、これらの方法以外の方法を適時、使用することができる。なお、浸透抑制剤は、基紙の端部断面以外の部分には付与されないため、記録媒体のインク吸収性を低下させることがない。
この基紙の端部断面に付与する浸透抑制剤としては、塗布液の基紙中への浸透を抑制するものであれば特に限定されるものではないが、僅かな付与量でサイズ性を高めると共にブロッキングを起こさないものであることが好ましい。この浸透抑制剤としては、アルキルケテンダイマー、ヒンダードアミン化合物、およびヒンダードアミン化合物と酸との塩からなる群から選択された少なくとも一種を含むものを用いることが好ましい。また、スチレン系ポリマー、スチレンアクリレート系ポリマー、もしくはアクリル系ポリマーとアルキルケテンダイマーとの混合物を使用することもできる。
ヒンダードアミン化合物としては、下記式(I)で示されるヒンダードアミン構造を分子内に1つ以上有する化合物が好ましい。
Figure 2009126084
ここで、R1〜R4は、それぞれ独立して、炭素数1〜5の低級アルキル基、好ましくはメチル基、またはエチル基である。R5は、特に制限されず、例えば、水素原子、低級アルキル基、ベンジル基、アリル基、アセチル基、アルコキシル基、ベンジルオキシ基である。Aは、特に制限されず、例えば、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基である。また、Aは、例えば、マロン酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸等のジカルボン酸のエステル基、あるいは、トリカルボン酸またはテトラカルボン酸のエステル基等でも良く、他のヒンダードアミン構造を連結する基であっても良い。さらに、Aは、(メタ)アクリルエステル基等のビニル基を有する基であっても良く、この場合には、ヒンダードアミン構造を側鎖に有するポリマーであることも可能である。
これらの化合物は各種のものが市場から入手可能である。例えば、チヌビン405,チヌビン622,チマソーブ944,チマソーブ119(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商品名)、アデカスタブLA−52,アデカスタブLA−57,アデカスタブLA−63,アデカスタブLA−77,アデカスタブLA−82,アデカスタプLA−87(旭電化社、商品名)等を挙げることができるが、これらのものに限定されるわけではない。
アルキルケテンダイマーとは、脂肪酸から合成される一般式(II)で表される2量体化合物のことを表す。
Figure 2009126084
(ここで、R6およびR7は、それぞれ独立して、炭素数14〜18のアルキル基を表す)。
すなわち、R6及びR7は、それぞれ独立して、テトラデシル(tetradecyl)基、ペンタデシル(pentadecyl)基、ヘキサデシル(hexadecyl)基、ヘプタデシル(heptadecyl)基、又はオクタデシル(octadecyl)基となる。
また、ヒンダードアミン化合物と酸との塩としては、上記の例示したヒンダードアミン化合物と、硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、コハク酸、絡酸などの有機酸といった一般的な酸との塩を用いることができる。ヒンダードアミン化合物と酸との塩を形成するために用いるヒンダードアミン化合物は、前述のヒンダードアミン化合物と同一であっても異なっていても良いが、調製が容易であることから、同一であることが好ましい。
<乾燥用圧着面への圧接方法>
本発明の製造方法では、塗布液を塗布した塗工層表面を乾燥用圧着面に圧接し、塗工層を乾燥する。この乾燥用圧着面に圧接する方法としては、特に限定されるわけではなく、例えば、平板状のプレス機に圧接する方法や、ヤンキ−ドライヤー、多筒シリンダドライヤー、ドラム状のプレス機で圧接する場合などを挙げることができる。好ましくは、乾燥用圧着面に圧接し、塗工層を乾燥する工程が、塗布液を塗布した塗工層表面を、加熱した鏡面ドラム状の金属面に圧着した状態で乾燥するキャスト法であることが好ましい。
このキャスト法とは、湿潤状態、または可塑性を有する状態にあるインク受容層を、加熱された鏡面ドラム状(キャストドラム)の金属面に圧接させ、圧接させた状態で乾燥し、その鏡面をインク受容層の表面に写し取る方法である。このキャスト法としては、以下(a)〜(c)の3つの代表的方法がある。
(a)基紙の端部断面に塗布液が接するように、過剰量の塗布液を塗工層に塗布し、プレスロールとキャストドラムの間で絞るようにして適正塗布量にした後、そのまま加熱されているキャストドラムに圧着して乾燥する直接法。
(b)基材上に塗布された塗工層用の塗工液を一度、乾燥、または半乾燥状態にした後、基紙の端部断面に水を主成分とする塗布液が接するように、塗布液を塗工層に塗布することにより、塗工層を可塑性を有した状態(湿らせた状態)に戻す。この後、加熱されているキャストドラムに圧着して乾燥するリウェットキャスト法(間接法)。
(c)基紙に塗布された塗工層用の塗工液をある程度、乾燥し、続いて酸等の凝固剤を含有する塗布液を、基紙の端部断面に接するように、塗工層に塗布する。これにより、塗工層を流動性のないゲル状態として、加熱されているキャストドラムに圧着して乾燥する凝固法。
なお、この塗布液は、基紙の端部断面に塗布液が接するように、塗工層に対して塗布する。この塗布方法としては特に限定されるわけではなく、刷毛やスポンジ状ローラー、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エクストルージョン方式を用いたダイコーター、スライドホッパー方式を用いたコーター、サイズプレス等の各種塗布装置を適宜、選択して用いることができる。
また、これらのキャスト法は、何れも写真調画像の形成が可能な記録媒体を製造する場合に利用できるが、生産性の点から、リウェットキャスト法が他の2種の方法に比べて速く製造できるので好ましい。また、本発明の記録媒体は、そのインク受容層にアルミナ水和物が好適に用いられるが、この場合には、特にリウェットキャスト法を行うことによって高光沢性が得られるので、より好ましい。
このリウェットキャスト法を用いる場合、塗布液としては水を主成分とし、これに例えば、アンモニウム塩、ポリアミド樹脂、ヘキサメタリン酸等のリン化合物、アミド化合物、フッ化物、硫酸亜鉛、蟻酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス等を添加したものを用いることが好ましい。
また、上記(a)〜(c)のキャスト法で使用するキャストドラムは、一般のキャストコート紙の製造条件と同様に、本発明においても、その表面粗度、表面温度、直径、線圧、速度を適宜、選択することが可能である。好ましくは、ドラムの表面温度を80〜120℃にしておくのが良い。ドラムの表面温度が80℃未満の場合、光沢面の光沢性が低下する可能性がある。また、ドラムの表面温度が120℃を超える場合、キャストドラムに圧着されたインク受容層が急激に加熱されて、インク受容層の構成成分が沸騰され易くなる場合がある。そして、このようにインク受容層の構成成分の沸騰が起こると、インク受容層は、キャストドラムと完全に密着することができなくなり、キャストドラムの鏡面の写し取りが不十分となって光沢面が著しく損なわれる場合がある。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明に関わる諸物性の測定は下記の方法で行った。
<基紙の端部断面の液浸透性>
浸透抑制剤を付与した基紙の表裏両面にセロテープ(ニチバン)を貼り合わせて、表裏からの塗布液の浸透を抑制した状態で、試験片(15cm×1.5cm)を作製した。
この試験片を30秒間、塗布液中に浸し、試験片中の基紙が露出した端部断面から塗布液が浸透した距離Aを測定した。なお、この30秒間は、実施例において塗布液を塗布してからキャストドラムによる乾燥工程が終了するまでの時間である。また、予備実験から、この表裏両面にセロテープ(ニチバン)を貼り合わせた基紙は、実施例で表裏両面に下塗り層及びインク受容層を設けた基紙と同様の距離Aの測定結果を示すことが確認されている。
<製造適性>
リウェットキャスト法における乾燥用圧着面であるキャストドラムにおいて、記録媒体をキャストドラムに圧着・引き剥がした際の、キャストドラムへの記録媒体の貼り付きによるドラム汚れや、記録媒体の断紙、記録媒体表面の面性低下の状態を、下記の評価基準に従って総合的に評価した。
〔評価基準〕
○: 問題なし。
△:記録媒体の断紙には至らないものの、ドラム汚れ、または記録媒体の面性低下のいずれかが発生する場合。
×:ドラム汚れ、または記録媒体の表面欠陥のいずれかが発生した上で、工程内で断紙に至る場合。
(実施例1)
<基紙の作製>
先ず、下記組成のパルプスラリーを作製した。
濾水度400mlCSFの広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)90質量部
濾水度350mlCSFの針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)10質量部。
次に、上記パルプスラリー100質量部に対して、軽質炭酸カルシウム10質量部、内添用サイズ剤としてアルキルケテンダイマー0.1質量部を添加して紙料を調整した。この紙料を、長網抄紙機を用いて抄紙した後、多筒シリンダドライヤーで乾燥した。この後、カレンダ処理をして坪量150g/m2、厚さ189μm、ステキヒトサイズ度が10秒の基紙を得た。
<下塗り層の形成>
上記基紙の表面に、以下のようにして下塗り層を形成した。すなわち、先ず、下塗り層の形成に使用する塗工液として、軽質炭酸カルシウム/カオリン/酸化チタンの質量比70/20/10からなるスラリーを準備した。次に、填料(軽質炭酸カルシウム、カオリンおよび酸化チタンの総量)100質量部に対して、スチレン−ブタジエン系ラテックス/澱粉の質量比15/5からなるバインダ20質量部を添加して、固形分60質量%となるように組成物を調製した。
次に、この組成物を乾燥塗工量が片面あたり15g/m2になるように、ブレードコーターで基紙の両面に塗工・乾燥して、坪量180g/m2、厚さ204μmの下塗工層(下塗り層)を基紙上に設けた。
<下塗り層への表面処理>
上記で得た下塗り層に対して、表面処理液を塗布した。この表面処理液としては、30℃に加温した5質量%のホウ砂水溶液を用い、エアーナイフコーターを用いてウェット塗布量14g/m2(乾燥後の塗布量は0.7g/m2に相当)となるよう、毎分30mで塗布した。なお、この塗布液を目視で観察したところ、下塗り層上に表面処理工程で付与した表面処理塗布液が溢れずに含浸された。
<インク受容層の形成>
表面処理液が下塗り層に含浸されてすぐに、表面処理液を塗布した表面(両面)上にインク受容層を形成した。この際、以下の通りに、インク受容層(塗工層)の形成を行った。
純水中のアルミナ水和物固形分が5質量%となるように分散させ、次いで、これに塩酸を加え、pHを4に調整してしばらく攪拌した。この後、この分散液を攪拌しながら95℃まで昇温し、この温度で4時間、保持した。そして、この温度を保持したまま苛性ソーダによりpHを10に調整し、10時間攪拌を行った。この後、分散液の温度を室温に戻し、塩酸によりpHを7〜8に調整した。
更に、脱塩処理を行い、続いて酢酸を添加して解膠処理して、コロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを乾燥して得られたアルミナ水和物をX線回折により測定したところ、ベーマイト構造を示すもの(擬ベーマイト)であった。また、この時のBET比表面積は138g/m2、細孔容積は0.75cm3/gであった。このアルミナ水和物の電子顕微鏡での観察では、平板状であり、平均アスペクト比は7.4、縦横比は0.7であった。
そして、上記で調製したアルミナ水和物のコロイダルゾルを濃縮して22.5質量%の分散液を作製した。次に、この分散液に3質量%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物の固形分100質量部に対してホウ酸固形分換算で0.50質量部となるように添加してホウ酸含有アルミナ水和物分散液を得た。
次に、ポリビニルアルコールを純水に溶解して、固形分9質量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。この後、上記ホウ酸含有アルミナ水和物分散液と、先に調製したポリビニルアルコール水溶液を、スタティックミキサーでアルミナ水和物固形分と、ポリビニルアルコール固形分の比(質量比)が100:9となるように混合した。そして、この混合直後の混合液をインク受容層用の塗工液とし、これをダイコーターで乾燥塗工量が30g/m2となるように毎分30mで塗布した。そして、この塗工液を170℃で乾燥して、インク受容層を設けることで記録媒体を得た。
<紙断面処理>
上記で得た記録媒体の端部で基紙が露出した端部断面に対して、浸透抑制剤を付与した。この際、浸透抑制剤は以下のようにして付与した。すなわち、まず、固形分20質量%のアルキルケテンダイマー(商品名:SE2360、星光PMC製)を50質量部、純水50質量部を混合し、浸透抑制剤を得た。次に、この浸透抑制剤を、記録媒体の端部で基紙が露出した端部断面に対してのみ、固形分付着量として25.2g/m2を均一に付与した。なお、この固形分付着量とは、(基紙の端部断面に付与した浸透抑制剤)/(記録媒体表面の片面の面積)で表される。
<塗布液塗布・高速乾燥>
次に、以下のリウェットキャスト法により光沢面を形成した。先ず、塗布液として、100質量部の水に対して、2質量部のポリエチレンエマルジョン(商品名:ポリマロン618、中京油脂(株)製)、0.2質量部の界面活性剤(商品名:サーフィノール465、日信化学(株)製)を添加して塗布液を調製した。次に、この塗布液を、記録媒体の基紙の端部断面を含むインク受容層表面の全面に均一に塗布してインク受容層を湿潤させた。この湿潤状態のまま、下記の条件で記録媒体を加熱した鏡面を有するキャストドラム(乾燥用圧着面)に圧着、乾燥させ、リウェットキャストを行うことで、本実施例の記録媒体を得た。
リウェットキャスト条件
塗布液温度:60℃
キャストドラム温度:95℃
圧着時のニップ圧:130kg/cm2
塗布液の塗布時(膨潤開始)から乾燥終了までの時間:30秒。
(実施例2)
浸透抑制剤として、溶媒をアセトンとした1質量%のヒンダードアミン化合物(商品名:アデカスタブLA−63P、旭電化製)の溶液を固形分付着量として2.5g/m2付与した。これ以外は、実施例1と同様にして記録媒体を得た。
(実施例3)
浸透抑制剤として、0.5質量%のヒンダードアミン化合物(商品名:アデカスタブLA−63P、旭電化製)の溶液を固形分付着量として1.3g/m2付与した。これ以外は、実施例2と同様にして記録媒体を得た。
(実施例4)
浸透抑制剤として、0.3質量%のヒンダードアミン化合物(商品名:アデカスタブLA−63P、旭電化製)の溶液を固形分付着量として0.8g/m2付与した。これ以外は、実施例2と同様にして記録媒体を得た。
(実施例5)
浸透抑制剤として、0.1質量%のヒンダードアミン化合物(商品名:アデカスタブLA−63P、旭電化製)の溶液を固形分付着量として0.3g/m2付与した。これ以外は、実施例2と同様にして記録媒体を得た。
(実施例6)
パルプスラリーに添加する内添用サイズ剤を0.2質量部とした。これ以外は、実施例2と同様にして記録媒体を得た。なお、内添用サイズ剤の増量により、基紙のステキヒトサイズ度は28秒となった。
(実施例7)
浸透抑制剤として、溶媒に酢酸0.3質量%を含む水を使用した1質量%のヒンダードアミン化合物(商品名:アデカスタブLA−63P、旭電化製)の水溶液を固形分付着量として2.5g/m2付与した。これ以外は、実施例1と同様にして記録媒体を得た。
(比較例1)
浸透抑制剤として、スチレン/アクリル系エマルジョン(商品名:T−XP118、星光PMC製)を固形分付着量として101.7g/m2付与した。これ以外は、実施例1と同様にして記録媒体を得た。
(比較例2)
浸透抑制剤として、ポリエステル系ウレタン樹脂(商品名:ハイドランHW−350、大日本インキ化学工業製)を固形分付着量として12.4g/m2付与した。これ以外は、実施例1と同様にして記録媒体を得た。
(比較例3)
基紙の端部断面に浸透抑制剤を付与しない以外は、実施例1と同様にして記録媒体を得た。
(比較例4)
基紙の端部断面に浸透抑制剤を付与しない以外は、実施例6と同様にして記録媒体を得た。
上記実施例、比較例の液浸透性、製造適性の評価結果を表1に示す。
Figure 2009126084
表1の結果より、距離Aが1.0mm以下の実施例1〜7では「製造適性」が「○」又は「△」であった。このため、距離Aを1.0mm以下とすることにより、基紙のサイズ性変更や生産コスト増加の要因となる設備改造を施すことなく、製造安定性に優れた生産が可能となることが分かる。また、本発明の製造方法が各種画像記録用途に好適に応用可能であり、特に、インクジェット記録用記録媒体の製造方法として好適であることが分かる。
一方、距離Aが1.0mmを超える比較例1〜4では、「製造適性」が「×」であった。このため、距離Aが1.0mmを超えると、基紙のサイズ性の変化や生産コスト増加の原因となることが分かる。
従来の製造後の記録媒体をロール状に巻き取る工程の一例を表す図であり、図1(A)は記録媒体の端部断面をスリッターにより切断する工程を表す斜視図、図1(B)は記録媒体をロール状に巻き取る工程を表す斜視図、図1(C)は記録媒体の断面図である。 従来の、リウェットキャスト法を用いて、塗布液の塗布から乾燥用圧着面であるキャストドラムの圧着までの工程を表す図である。 従来の塗工層を設けた基紙の表面に塗布液を塗布する工程において、基紙端部の露出した断面から塗布液が浸透する状態を示す図である。 本発明の、リウェットキャスト法を用いて、塗布液の塗布から、乾燥用圧着面であるキャストドラムの圧着までの工程を表す図である。 本発明の記録媒体および距離Aを説明する図である。
符号の説明
1 記録媒体の基紙が露出した端部断面
2 スリッター
3 基紙
4 塗工層
5 バッキングロール
6 塗布液塗布部
7 圧着ロール
8 キャストドラム
9 剥離ロール
10 記録媒体
11 基紙中へ塗布液が浸透した部分
12 塗布面
13 塗布液
14 基紙の端部断面に塗布液の浸透抑制剤を付与した記録媒体
21 基紙の端部断面
22 基紙
23 塗工層

Claims (5)

  1. ステキヒトサイズ度が30秒以下である基紙の両面に、顔料とバインダを含有する塗工層を設けた基紙の端部断面に塗布液が接するように塗布液を塗工層に塗布する工程、
    前記塗布液を塗布した塗工層表面を乾燥用圧着面に圧接し、前記塗工層を乾燥する工程、を有する記録媒体の製造方法であって、
    前記塗布液を塗工層に塗布する工程の前に、前記基紙の端部断面に前記塗布液の浸透抑制剤を付与する工程を設け、
    前記塗布液を塗工層に塗布してから乾燥用圧着面に圧接して前記塗工層を乾燥し終るまでの間に、前記塗布液が前記基紙の端部断面から浸透する距離Aを1.0mm以下とすることを特徴とする記録媒体の製造方法。
  2. 前記浸透抑制剤が、アルキルケテンダイマー、ヒンダードアミン化合物、およびヒンダードアミン化合物と酸との塩からなる群から選択された少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の記録媒体の製造方法。
  3. 前記乾燥用圧着面に圧接し、前記塗工層を乾燥する工程が、前記塗布液を塗布した塗工層表面を、加熱した鏡面ドラム状の金属面に圧着した状態で乾燥するキャスト法であることを特徴とする請求項1または2に記載の記録媒体の製造方法。
  4. 前記記録媒体が、インクジェット記録用記録媒体であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の記録媒体の製造方法。
  5. 前記塗布液が基紙の端部断面から浸透する距離Aが、0.5mm以下であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の記録媒体の製造方法。
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JPWO2016052131A1 (ja) * 2014-09-30 2017-08-31 富士フイルム株式会社 画像記録方法

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