JP5872243B2 - インクジェット記録用光沢紙及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製造工程においてホウ素化合物を使用せず、表面光沢感が高く、かつ、画像再現性に優れたインクジェット記録用光沢紙及びその製造方法に関する。
キャスト法は、表面に高い光沢を有する写真印刷用のインクジェット記録用光沢紙の製造方法として広く用いられている。キャスト法によってインクジェット記録用光沢紙を製造する場合において、金属ドラムに圧着される光沢発現層の塗工液には、光沢度及びインク吸収性の両方をもたせるために、顔料と顔料を塗工層に保持するための結着剤とを含有する塗工液が用いられている。結着剤としては、インク吸収時の発色を明瞭にするために、皮膜透明性の高いポリビニルアルコール(PVA)が広く用いられている。
塗工液を塗工した後、得られた塗工層にゲル化液を塗布することによって塗工層をゲル化させて塗工層が湿潤状態にあるうちに加熱した金属ドラムに圧着するキャスト法は、一般的にゲル化キャスト法と呼ばれる。このゲル化キャスト法は、生産性及び製品品質のバランスが良好であるため、キャスト塗工紙の製造方法として広く用いられている。
ゲル化キャスト法において、ポリビニルアルコールを含有する塗工層に塗布するゲル化液に含有されるゲル化剤は、ゲル化力が強く、かつ、ゲル化度合の制御が容易である点で、ホウ素化合物が使用されることがある。例えば、ゲル化液として、ホウ酸塩及びホウ酸の混合溶液を用いて製造したインクジェット記録媒体が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
ホウ素化合物以外のゲル化剤を用いて、ポリビニルアルコールを含有する塗工層をゲル化させる方法として、ポリアクリル酸を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
特開2002−283697号公報 特開2002−362010号公報
しかし、特許文献1のように、製造工程においてホウ素化合物を使用した場合、ホウ素を含有する工程排水が発生する。2001年の水質汚濁防止法の改正においては、排水基準に「ホウ素化合物」の項目が追加されており、ホウ素化合物を使用しないで製造できるインクジェット記録用光沢紙が求められている。
また、特許文献2のように、ゲル化剤としてポリアクリル酸を用いた場合、ホウ素化合物に比べてゲル化力が弱いために、塗工層の金属ドラムに対する圧着が不均一となり、十分な表面光沢度が得られないという問題がある。
本発明の目的は、表面光沢感が高く、画像再現性に優れたインクジェット記録用光沢紙及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、結着剤としてポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールの少なくともいずれか一方とアルギン酸アルカリ金属塩とを含有する光沢発現層塗工液を用い、かつ、カチオン性物質を含有するゲル化液を用いることによって、前記の問題を解決できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明に係るインクジェット記録用光沢紙は、基材の少なくとも片面に2層以上の塗工層が設けられ、該塗工層の最表層が光沢発現層であるインクジェット記録用光沢紙において、前記光沢発現層が、ポリビニルアルコール若しくは変性ポリビニルアルコールのいずれか一方又は両方(A)と、アルギン酸アルカリ金属塩(B)と、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの中から選ばれる1種以上(C)と、を含み、かつ、キャストコート層であり、前記光沢発現層が、ホウ素化合物を含有しないことを特徴とする。光沢発現層が、ホウ素化合物を含有しないことで、ホウ素を含有する工程排水が発生しないため、排水処理が容易になる。二価以上の多価金属塩を含有することで、ゲル化力が高いため、表面光沢感がより高い用紙とすることができる。
本発明に係るインクジェット記録用光沢紙の製造方法では、基材の少なくとも片面に層以上の塗工層が設けられ、該塗工層の最表層が光沢発現層であるインクジェット記録用光沢紙の製造方法において、前記光沢発現層を設ける手段が、ホウ素化合物を使用せず、前記光沢発現層を形成するための塗工液の塗工面が湿潤状態にあるうちに、該塗工面上にゲル化液を塗布し、加熱した鏡面ロールに圧着して乾燥するゲル化キャスト法であり、前記塗工液が、ポリビニルアルコール若しくは変性ポリビニルアルコールのいずれか一方又は両方(A)と、アルギン酸アルカリ金属塩(B)と、を含有し、前記ゲル化液が、ゲル化剤としてカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの中から選ばれる1種以上(C)を含有することを特徴とする。
本発明は、表面光沢感が高く、画像再現性に優れたインクジェット記録用光沢紙及びその製造方法を提供することができる。
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙は、基材の少なくとも片面に1層以上の塗工層が設けられ、塗工層の最表層が光沢発現層であるインクジェット記録用光沢紙において、光沢発現層が、ポリビニルアルコール若しくは変性ポリビニルアルコールのいずれか一方又は両方(A)と、アルギン酸アルカリ金属塩(B)と、カチオン性物質(C)と、を含み、かつ、(C)は(A)及び(B)とは異なるカチオン性物質である。
本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙は、基材の片面又は両面に塗工層が設けられている。塗工層は、1層で形成するか、又は2層以上で形成してもよい。塗工層が1層である場合には、当該層が光沢発現層である。塗工層が2層以上である場合には、最表層(基材から最も離れた層)が光沢発現層である。光沢発現層は、(A)と、(B)と、(C)と、顔料とを含有する。
ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール(A)は、主として結着剤としての役割をもつ。ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールは、さまざまな重合度及び鹸化度を有するものを使用できる。
ポリビニルアルコールは、一般に、酢酸ビニルモノマーを重合し、得られたポリ酢酸ビニル樹脂を鹸化することによって得られ、その鹸化度に応じて、側鎖に水酸基だけ又は水酸基及び酢酸基を有する合成樹脂である。
変性ポリビニルアルコールは、一般に、酢酸ビニルモノマーと水酸基又は酢酸基以外の官能基(変性基)を有するモノマーとを共重合することによって得られ、ポリビニルアルコール中に変性基が導入されたポリビニルアルコールである。変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、カチオン変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールである。これらは1種を単独で使用するか、又は2種以上を併用してもよい。
光沢発現層は、(A)としてポリビニルアルコールだけを含有するか、変性ポリビニルアルコールだけを含有するか、又はポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールの両方を含有してもよい。光沢発現層における(A)の合計含有量は、光沢発現層中の全顔料100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましい。より好ましくは2〜25質量部である。1質量部未満では、塗工層強度が低下する場合がある。30質量部を超えると、インク吸収性が低下する場合がある。
アルギン酸アルカリ金属塩(B)は、主として結着剤としての役割をもつ。(B)は、例えば、アルギン酸リチウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムである。これらは1種を単独で使用するか、又は2種以上を併用してもよい。この中で、アルギン酸ナトリウムが安価である点でより好ましい。(B)の分子量は、特に制限はなく、さまざまな分子量のものを使用できる。光沢発現層における(B)の含有量は、光沢発現層中の全顔料100質量部に対して0.05〜30質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜25質量部である。0.05質量部未満では、十分なゲル化力が得られず光沢感及びインクジェットの画像の鮮明性が低下する場合がある。また、金属ドラムの汚れが発生して操業性が劣る場合がある。30質量部を超えると、インクジェット画像の鮮明性が低下する場合がある。
光沢発現層は、(A)及び(B)以外のその他の結着剤を含有してもよい。その他の結着剤としては、例えば、ポリビニルアセタール、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ピドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、ポリエチレンイミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリアクリル酸又はその共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリルアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、尿素樹脂、メラミン系樹脂、スチレン‐ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート‐ブタジエン共重合体、アクリル酸エステルである。光沢発現層におけるその他の結着剤の含有量は、光沢発現層中の(A)及び(B)の合計含有量に対して、1〜500質量%であることが好ましい。より好ましくは、10〜400質量%である。
カチオン性物質(C)は、(A)及び(B)をゲル化するためのゲル化剤としての役割をもつ。ここで、(A)が変性ポリビニルアルコールであり、該変性ポリビニルアルコールがカチオン性であるとき、カチオン性物質(C)は(A)とは異なるカチオン性物質である。さらに、カチオン性物質(C)は(B)とも異なるカチオン性物質である。(C)は、例えば、カチオン性高分子、電解質である。カチオン性高分子は、例えば、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート四級塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン四級塩、又はこれらの共重合物である。電解質としては、例えば、金属塩である。これらは1種を単独で使用するか、又は2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙では、ゲル化力が高く、表面光沢感をより良好にできる点で、カチオン性物質(C)が金属塩であることが好ましい。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などの一価のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩などの二価以上の多価金属塩である。なお、本実施形態では、金属塩として、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸などの無機酸の金属塩と蟻酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸などの有機酸の金属塩とを包含する。
本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙では、ゲル化力が高く、表面光沢感を更に良好にできる点で、金属塩が、二価以上の多価金属塩であることが好ましい。多価金属塩の具体例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの無機酸の多価金属塩、蟻酸カルシウム、蟻酸マグネシウム、蟻酸アルミニウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸アルミニウム、シュウ酸カルシウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸アルミニウムなどの有機酸の多価金属塩である。これらは1種を単独で使用するか、又は2種以上を併用してもよい。この中で、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム又は硫酸アルミニウムが安価である点でより好ましい。
光沢発現層における(C)の含有量は、光沢発現層中の全質量に対して、0.1〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜30質量%である。0.1質量%未満では、十分なゲル化力が得られず、光沢感及びインクジェット画像の鮮明性が低下する場合がある。50質量%を超えると、インクジェット画像の鮮明性が低下する場合がある。
光沢発現層は、顔料を含有する。光沢発現層の顔料としては、特に限定されないが、例えば、コロイダルシリカ、沈降法シリカ、ゲル法シリカ、気相法シリカ、アルミナ、ベーマイト、微粒子炭酸カルシウム、有機合成微粒子である。
光沢発現層は、(A)、(B)、(C)及び顔料の他に、カチオン性インク定着剤、離型剤、防腐剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、耐水化剤などの各種助剤を適宜含有してもよい。
本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙では、光沢発現層が、ホウ素化合物を含有しないことが好ましい。ホウ素を含有する工程排水しないため、排水処理が容易となる。なお、本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙は、光沢発現層中に(A)と(B)と(C)とを含有し、(A)及び(B)と(C)とが強固にゲル化することで、ホウ素化合物をゲル化剤として使用せずとも、高い表面光沢感及び優れた画像再現性を有することができる。
本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙では、JIS H 8686−2:1999「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の写像性試験方法」に準じて、入反射角度60°で測定した光沢発現層の表面の写像性が50%以上であることが好ましい。より好ましくは、60%以上である。ここで、入反射角度を、JIS記載の45°から60°に変更した理由は、光沢感の差異を評価しやすくするためである。
光沢発現層と基材との間には、インク吸収層を設けることが好ましい。インク吸収層は、顔料と結着剤を主体として含有する。インク吸収層の顔料としては、例えば、コロイダルシリカ、沈降法シリカ、気相法シリカ、ゲル法シリカ、アルミナ、ベーマイト、微粒子炭酸カルシウム、有機合成微粒子である。また、インク吸収層の結着剤としては、例えば、アクリル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンなどの合成樹脂系エマルジョン、ポリビニルアルコール、澱粉又はその誘導体、セルロース誘導体である。さらに、インク吸収層は、カチオン性インク定着剤、離型剤、防腐剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、耐水化剤などの各種助剤を適宜含有することができる。インク吸収層は、1層で形成するか、又は2層以上で形成してもよい。また、インク吸収層を2層以上とする場合には、各層の組成を同一とするか、異なるものとしてもよい。
基材としては、通常の上質紙、中質紙、白板紙などの紙基材を用いる。紙基材に使用する原料パルプとしては、例えば、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ又はケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプである。これらは、単独で使用するか、又は2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。さらに、合成繊維を品質に支障がでない範囲において使用してもよい。また、環境負荷の少ないECF(Elemental Chlorine Free)パルプ又はTCF(Totally Chlorine Free)パルプの使用が望ましい。
本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙の製造方法では、基材の少なくとも片面に1層以上の塗工層が設けられ、塗工層の最表層が光沢発現層であるインクジェット記録用光沢紙の製造方法において、光沢発現層を設ける手段が、光沢発現層を形成するための塗工液を塗工した塗工面が湿潤状態にあるうちに、塗工面上にゲル化液を塗布し、加熱した鏡面ロール(以降、金属ドラムということもある。)に圧着して乾燥するゲル化キャスト法であり、塗工液が、ポリビニルアルコール若しくは変性ポリビニルアルコールのいずれか一方又は両方(A)と、アルギン酸アルカリ金属塩(B)と、を含有し、ゲル化液が、ゲル化剤としてカチオン性物質(C)を含有する。
次に、各製造工程について順に説明する。
(基材の形成工程)
基材としての基紙は、原料パルプを含有する紙料を抄紙して得ることができる。基紙の抄紙方法は、特に限定されるものではなく、例えば、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造される。抄紙方式は、例えば、酸性抄紙、中性抄紙である。
基紙の表面には、塗工層を形成するための塗工液及びキャストコート時におけるゲル化液の過度の浸透を押さえるために、サイズプレスで澱粉、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を塗布することが好ましい。
基紙は、抄紙機のプレス、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなど公知のカレンダー装置によって処理することが好ましい。
基紙の坪量は、特に限定されないが、60〜350g/mであることが好ましく、より好ましくは70〜300g/mである。基紙は、単層抄きであるか、又は多層抄きであってもよい。基紙を多層抄きで形成する場合には、各層を同一の組成とするか、又は各層で異なる組成としてもよい。
(インク吸収層の形成工程)
塗工層を2層以上で設ける場合には、インク吸収層を形成する工程を有することが好ましい。インク吸収層は、前記した顔料及び結着剤を主体とするインク吸収層に含有される各種成分を配合し、適当な固形分濃度に調整した塗工液(以降、インク吸収層形成用塗工液という。)を基紙の表面上に塗工後、乾燥して形成する。
インク吸収層形成用塗工液の塗工方法としては、公知の塗工機を用いることができ、例えば、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーターである。インク吸収層の塗工量は、特に限定されないが、固形分換算で3〜30g/mであることが好ましい。より好ましくは、5〜25g/mである。3g/m未満では、インク吸収性が劣る場合がある。30g/mを超えると、塗工層の強度が不足する場合がある。
(光沢発現層の形成工程−塗工)
光沢発現層は、前記した(A)、(B)及び顔料など光沢発現層に含有される各種成分を配合し、適当な固形分濃度に調整した塗工液(以降、光沢発現層形成用塗工液という。)を基紙上又はインク吸収層上に塗工後、乾燥して形成する。このとき、光沢発現層形成用塗工液には、(C)を配合しない。光沢発現層形成用塗工液に(C)を配合すると、塗工液が急激に増粘して塗工できない。
光沢発現層形成用塗工液の塗工方法としては、公知の塗工機を用いることができ、例えば、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーターである。光沢発現層の塗工量は、固形分換算で3〜30g/mであることが好ましい。より好ましくは4〜25g/mである。塗工量が30g/mを超えると、生産性が劣るため好ましくない。塗工量が3g/m未満では、表面光沢度が不足する場合がある。
(光沢発現層の形成工程−ゲル化処理)
光沢発現層は、ゲル化キャスト法で形成する。光沢発現層形成用塗工液を塗工後、塗工面が湿潤状態にあるうちに、塗工面上にゲル化液を塗布してゲル化処理する。ゲル化液は、ゲル化剤として(C)を含有する水溶液である。ゲル化液中の(C)の固形分濃度は、0.1〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜10質量%である。この範囲とすることで、結果として光沢発現層中に(C)を0.1〜50質量%含有させることができる。ゲル化液中の(C)の固形分濃度が0.1質量%未満では、十分なゲル化力が得られない場合がある。ゲル化液中の(C)の固形分濃度が20質量%を超えると、インクジェット画像の鮮明性の低下を引き起こす場合がある。
ゲル化液には、(C)以外に、離型剤、防腐剤、消泡剤、染料、顔料、インク定着剤などの各種助剤を配合してもよい。
(光沢発現層の形成工程−乾燥)
ゲル化処理後、ゲル化処理した塗工面が湿潤状態にあるうちに、塗工面を加熱した鏡面ロールに圧着して乾燥する。鏡面ロールから剥離すると、光沢発現層の表面が光沢面となる。
光沢発現層の形成工程において、光沢発現層形成用塗工液を塗工してからゲル化液を塗工するまでの時間、ゲル化液を塗工してから金属ドラムに圧着するまでの時間、金属ドラムの表面温度、圧着時の圧力、ライン速度などを適宜調整することで、より高い表面光沢度が得られる。一例としては、金属ドラムの表面温度は、80〜120℃であることが好ましく、90〜110℃であることがより好ましい。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
(実施例1)
<基材の形成>
坪量157g/mの上質紙の両面に、サイズプレスにて酸化澱粉を含有するサイズ液を片面あたり1g/m(乾燥質量)塗布して表面処理し、紙基材を得た。
<インク吸収層の形成>
顔料として合成シリカ(ミズカシルP−78A:水澤化学工業社製)100部と、結着剤としてポリビニルアルコール(PVA124:クラレ社製)10部及びエチレン‐酢酸ビニル(ポリゾールEVA AD−13:昭和高分子社製)40部と、インク定着剤としてカチオン性ポリマー(パピオゲンP‐103:センカ社製)30部とを配合し、固形分濃度19%のインク吸収層形成用塗工液を得た。続いて、紙基材の片面に、インク吸収層形成用塗工液をエアーナイフコーターで絶乾塗工量が10g/mとなるように塗工・乾燥してインク吸収層を形成した。
<光沢発現層の形成>
顔料として気相法シリカ(アエロジル200:日本アエロジル社製、平均一次粒子径12nm)90部及び凝集体コロイダルシリカの一種であるパールネックレス状コロイダルシリカ(スノーテックスPS−MO、カチオン性、一次粒子径18〜25nm、二次粒子径80〜150nm:日産化学工業社製)10部と、結着剤である(A)としてシラノール変性ポリビニルアルコール(PVA‐R1130:クラレ社製)6部と、結着剤である(B)としてアルギン酸ナトリウム1部とを配合し、固形分濃度が16%の光沢発現層形成用塗工液を得た。インク吸収層上に、光沢発現層形成用塗工液をエアーナイフコーターで絶乾塗工量が10g/mとなるように塗工した。次いで、ゲル化剤である(C)として多価金属塩(塩化アルミニウム)を5%含む水溶液をゲル化液として、絶乾塗工量が1.5g/mとなるように塗工面上に塗布してゲル化処理を行ったのち、得られた塗工層表面が湿潤状態にあるうちに表面温度105℃の金属ドラムに圧着し、剥離してインクジェット記録用光沢紙を作製した。なお、光沢発現層における(C)の含有量は、光沢発現層中の全質量に対して13%であった。
(実施例2)
実施例1において、ゲル化液を、ゲル化剤である(C)として多価金属塩(塩化カルシウム)を5%含む水溶液に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用光沢紙を作製した。
(実施例3)
実施例1において、ゲル化液を、ゲル化剤である(C)として多価金属塩(硫酸アルミニウム)を5%含む水溶液に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用光沢紙を作製した。
(実施例4)
実施例1において、ゲル化液を、ゲル化剤である(C)として多価金属塩(塩化マグネシウム)を5%含む水溶液に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用光沢紙を作製した。
(実施例5)
実施例1において、ゲル化液を、ゲル化剤である(C)としてポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを5%含む水溶液に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用光沢紙を作製した。
(実施例6)
実施例1において、光沢発現層形成用塗工液に使用する結着剤である(A)を、シラノール変性ポリビニルアルコール(PVA‐R1130:クラレ社製)3部及びポリビニルアルコール(PVA−235:クラレ社製)3部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用光沢紙を作製した。
(実施例7)
実施例1において、光沢発現層形成用塗工液に使用する結着剤である(B)を、アルギン酸カリウム1部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用光沢紙を作製した。
(比較例1)
実施例1において、光沢発現層形成用塗工液に使用する結着剤である(B)(アルギン酸ナトリウム)を配合しないこととした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用光沢紙を作製した。
(比較例2)
実施例1において、ゲル化液を、ゲル化剤である(C)(カチオン性物質)を配合しないこととした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用光沢紙を作製した。
(比較例3)
実施例1において、光沢発現層形成用塗工液に(C)として多価金属塩(塩化アルミニウム)を配合したところ、塗工液が増粘してゲル状になり、塗工することができなかった。
得られたインクジェット記録用光沢紙について、次の試験を実施し、評価結果を表1に示した。
<光沢発現層表面の写像性>(写像性(入射反射角度60°))
得られたインクジェット記録用光沢紙の光沢発現層表面について、鏡面性を評価するために写像性を測定した。写像性は、JIS H 8686−2:1999「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の写像性試験方法」に準じて、光学くし幅2mmにて入反射角度60°とし、写像性測定器(ICM−1T:スガ試験機社製)を用いて測定した。評価基準は次のとおりである。
50%以上:反射した像が鮮明に写り、光沢感に優れている(実用可能レベル)。
50%未満:反射した像が不鮮明に写り、光沢感に劣る(実用不可レベル)。
<染料インクの画像鮮明性>
ISO標準画像(ISO/JIS−SCID高精細カラーデジタル標準画像データ、画像の名称:ポートレート、画像の識別番号:N1)をインクジェットプリンター(PM−G820:セイコーエプソン社製)を用いて、得られたインクジェット記録用紙の光沢発現層を形成した側の面に印字した。印字した画像を目視によって評価した。評価基準は次のとおりである。
◎:記録画像が非常に鮮明でコントラストがはっきりしている(実用可能レベル)。
○:記録画像が鮮明でコントラストがはっきりしている(実用下限レベル)。
△:記録画像が鮮明であるがコントラストがはっきりしなく、色が沈んでいる(実用不可レベル)。
×:記録画像が不鮮明で、色が沈んでいる(実用不可レベル)。
<染料インクの吸収性>
インクジェットプリンター(PM−G820:セイコーエプソン社製)を用いて、CMYKの各インクのベタ(100%濃度)及び文字並びにRGB(Red‐Green‐Blue)のベタ(100%濃度)及び文字を得られたインクジェット記録用紙の光沢発現層を形成した側の面に印字した。ベタ部の各色の境界及び文字のにじみの程度を目視によって評価した。評価基準は次のとおりである。
◎:境界がくっきりしてにじみが全く無く、文字が鮮明である(実用可能レベル)。
○:境界のにじみが目立たず、文字が鮮明である(実用下限レベル)。
△:境界のにじみが目立ち、文字が不鮮明ある(実用不可レベル)。
×:境界のにじみがひどく、文字が判別できない(実用不可レベル)。
<ドラム汚れ(操業性)>
圧着後の金属ドラムの汚れの程度を目視によって評価した。評価基準は次のとおりである。
○:金属ドラムにくもり及び塗工液による汚れが全く無く、操業が容易である(実用可能レベル)。
△:金属ドラムにくもり及び塗工液による汚れが僅かにあるが操業できる(実用下限レベル)。
×:金属ドラムのくもり及び塗工液による汚れが全面にあり、操業ができない(実用不可レベル)。
Figure 0005872243
表1から明らかなように、実施例1〜7は、いずれも写像性が高くて表面光沢感に優れていた。さらに、染料インクの画像鮮明性及びインク吸収性に優れ、かつ、操業性に優れていた。
比較例1は、光沢発現層中にアルギン酸アルカリ金属塩(B)がないため、ゲル化力が不足して、写像性が低く光沢感に劣り、画像鮮明性及び操業性に劣った。比較例2は、ゲル化液中にカチオン性物質(C)がないため、ゲル化が起こらず、写像性が低く光沢感に劣り、画像鮮明性及び操業性に劣った。

Claims (2)

  1. 基材の少なくとも片面に2層以上の塗工層が設けられ、該塗工層の最表層が光沢発現層であるインクジェット記録用光沢紙において、
    前記光沢発現層が、ポリビニルアルコール若しくは変性ポリビニルアルコールのいずれか一方又は両方(A)と、アルギン酸アルカリ金属塩(B)と、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの中から選ばれる1種以上(C)と、を含み、かつ、キャストコート層であり、
    前記光沢発現層が、ホウ素化合物を含有しないことを特徴とするインクジェット記録用光沢紙。
  2. 基材の少なくとも片面に層以上の塗工層が設けられ、該塗工層の最表層が光沢発現層であるインクジェット記録用光沢紙の製造方法において、
    前記光沢発現層を設ける手段が、ホウ素化合物を使用せず、前記光沢発現層を形成するための塗工液の塗工面が湿潤状態にあるうちに、該塗工面上にゲル化液を塗布し、加熱した鏡面ロールに圧着して乾燥するゲル化キャスト法であり、
    前記塗工液が、ポリビニルアルコール若しくは変性ポリビニルアルコールのいずれか一方又は両方(A)と、アルギン酸アルカリ金属塩(B)と、を含有し、
    前記ゲル化液が、ゲル化剤としてカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの中から選ばれる1種以上(C)を含有することを特徴とするインクジェット記録用光沢紙の製造方法。
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