JP2004074576A - インクジェット記録シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ひび割れ防止性、光沢性の高いインクジェット記録シートを、塗布性よく製造する方法の提供。
【解決手段】方法(1)において、支持体上の内側インク受容層上に濃度1.4%以下の硼砂溶液塗布層を設け、その上に、硼砂と架橋反応するポリマーを含む塗布液を塗布し、前記ポリマーを架橋しながら乾燥して外側インク受容層を形成し、方法(2)においては、転写基材上に形成された外側インク受容層上に濃度1.4%以下の硼砂溶液塗布層を設け、その上に硼砂と架橋反応するポリマーを含む塗布液を塗布し、前記ポリマーを架橋しながら乾燥して内側インク受容層を形成し、その上に支持体を貼着した後、転写基材を剥離する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク吸収性や耐光性が良好で、光沢性が高く、ひび割れ等の欠陥が少なく、かつ塗工後の乾燥工程において塗工面の乾燥による強い収縮によって生起する割れ(以下、折り割れという)が少ないインクジェット記録シートを、高い塗布効率をもってよく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水性インクを微細なノズルから記録シートに向かって噴出し、記録体面上に画像を形成させるインクジェット記録方式は、記録時の騒音が少ないこと、フルカラー画像の形成が容易であること、高速記録が可能であること、および、他の印刷装置より記録コストが安価であることなどの理由により、端末プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、あるいは帳票印刷等で広く利用されている。
【0003】
一方、プリンタの急速な普及と、高精細・高速化と、さらにはデジタルカメラの登場とにより、記録シートにも特性の高度化が要望されるようになった。すなわち、吸収性、記録濃度、耐水性、および耐光性に優れ、かつ銀塩方式の写真に匹敵する画質と保存性とを兼ね備えた記録シートの実現が強く求められている。さらに、記録画像の品質を写真画像の品質により近づけるために、記録シートの光沢性のより一層の向上も要望されている。
【0004】
一般的に記録シートに光沢性を付与する方法としては、スーパーカレンダー等の装置を用い、記録体に1対のロールの間で、加熱加圧することによりインク受容層の表面を平滑化する方法が知られている。しかしながら、このような方法では、得られる光沢性が要求されている光沢度にくらべて不十分なうえに、インク受容層内に分布しているインク吸収性空隙が減少してしまうため、結果としてインク画像ににじみが発生するという現象を生ずる。特に最近のインクジェットプリンターでは、粒状感のない写真調の画像を実現するために、低濃度インクを重ね打ちするフォトインク搭載のプリンタが主流となってきていることにより、記録シートにはより高いインク吸収性が求められている。
【0005】
高いインク吸収性を得るためには、インク受容層の塗布量を多量にする必要がある。例えば特開2000−301828号公報に記載しているように、通常、高い塗布量(乾燥膜厚として30μm以上)をもってインク受容層を形成する場合、塗布液の湿潤膜は100μmの高い膜厚で塗布される必要がある。この様な高い湿潤膜厚で水系塗布液を支持体上に塗布すると、その乾燥時に、インク受容層にひび割れが起きやすいという問題がある。ひび割れとは、接着剤として用いられているポリマーの皮膜が、乾燥時に起こる収縮に耐えられずに生起する細かいひび状の割れをいう。インク受容層を高い膜厚をもって塗布するとひび割れが起き易く、また乾燥時の風による液ヨレ(風により支持体上の塗料が移動すること)を生じやすいため、風量を抑制しなければならず、このため乾燥効率が大幅に低下してしまうという問題もある。
【0006】
そのため、特開2000−301828号公報では、非吸水性支持体上に第1の多孔質層を形成する塗布液を塗布し乾燥した後に、この第1多孔質層上に、それよりも乾燥膜厚が薄い第2多孔質層を形成する塗布液を塗布し、乾燥させることを提案している。しかし、多数のインク受容層を、それぞれ薄く形成し、これらを積層することは工程コストを高くし、経済的に問題を生ずることがある。しかし、できるだけ塗工層のひび割れが少なく、厚い膜厚を得るために有効な手段については上記公報には全く記載されていない。
【0007】
高いインク吸収性を有するインク受容層を形成するためには、一般的にインク受容層中のバインダーの含有量を減少させることが必要である。しかしそうすると、インク受容層の塗膜強度が低下するという問題を生ずる。
この問題を解決するため、特開平4−223190号公報には、硼砂又は硼酸を0.1g/m 以上の塗工量が塗布された基紙を用いることが提案されている。また特開平5−104848号公報には、片艶紙の艶面に、硼砂又は硼酸処理層を設けることが提案されている。さらに特開平7−238467号公報には、布地にバインダーのゲル化剤を担持させる処理方法が提案されている。さらに特開平11−115308号公報には、硼酸および硼酸塩からなる群より選ばれた1種以上からなる紙表面処理剤により表面処理された基材を用いることが提案されている。さらに特開2001−246832号公報には、支持体と色材受容層との間において、この支持体の色材受容層に対向している面上に、硼酸または硼素化合物を0.1g/m 以上含有する塗布量で塗工することが提案されている。
【0008】
しかしながら、樹脂被覆紙等の非吸水性支持体を用いる場合、この支持体に硼素化合物を含浸させることは不可能である。またインク受容層に硼素化合物を含有させるために、インク受容層用塗工液に硼素化合物を添加すると、この塗工液が増粘しやすく、このため塗工し難くなり、また塗工し得たとしても、このインク受容層上にさらに追加インク受容層用塗工液を塗布したとき、硼酸が、この追加のインクジェット受容層中に、その中のバインダーを架橋しうる量をもって溶出することは困難であって、その効果が低いという問題がある。
【0009】
特開平11−115308号公報には、支持体上に色材受容層が設けられている記録用シートにおいて、この色材受容層を形成するに際し、無機微粒子および水溶性樹脂を含む塗布液を支持体上に塗布し、この塗布と同時に、あるいはこの塗布した層が減率乾燥速度を示すようになる前に、前記塗布液層に、前記水溶性樹脂を架橋させることができる架橋剤を含む溶液を付与し、前記塗布液層を硬化させることが提案されている。
【0010】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、上記公報に記載の方法では、架橋速度が遅いため風による液ヨレを生じ易く、またひび割れの制御が不十分であることが判明した。
そのため、インク受容層用塗料の増粘がなく、しかも塗工層のひび割れ防止及び液ヨレ防止のすべてを満足するように、インク受容層のバインダーを架橋することは困難であり、その解決方法は未だ知られていない。
【0011】
本発明者らは、上記諸問題に鑑み、支持体上に樹脂材料及び顔料を含む少なくとも1層の内側インク受容層を形成し、前記内側インク受容層上に、樹脂材料及び顔料を含む外側インク受容層を形成することを含み、前記外側インク受容層の形成に際し、前記内側インク受容層上に、硼酸含有溶液を塗布し、その上に形成される外側インク受容層の前記樹脂材料に硼酸による架橋反応が可能なポリマーを含有させることを提案した。
【0012】
しかしながら、本発明者らがさらに検討した結果、硼酸は硼砂と比較し架橋速度が遅く、架橋能力が低いため、ひび割れ防止に十分な量の硼酸を添加すると、塗膜が硬くなりすぎ、塗膜の折り割れが発生しやすくなり、ひび割れ防止と折り割れ防止のバランスを取ることが比較的困難という知見を得ている。
【0013】
さらに、特開昭57−74192号公報には、色素画像退色防止剤が提案されている。また特開昭61−146591号公報には、ヒンダードアミン系化合物をインク受容層に含有させることが提案されている。さらに特開昭62−261476号公報には、紫外線吸収剤と防かび剤とをインク受容層に含有させることが提案されている。
しかしながら、これらの文献にはインク画像の耐光性の改良については開示されているけれども、ひび割れ防止及び、折り割れ防止のために有効な手段については全く記載されていない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、インク吸収性及び耐光性が良好で、光沢性が高く、ひび割れ等の欠陥の発生が少なく、かつ塗工後の乾燥工程において塗工面の折り割れの発生が少ないインクジェット記録シートを、高い塗布効率をもって製造する方法を提供しようとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録シートの製造方法(1)は、支持体上に、樹脂材料及び顔料を含む少なくとも1層の内側単位層からなる内側インク受容層を形成し、前記内側インク受容層上に、樹脂材料及び顔料を含む外側インク受容層を形成することを含み、
前記外側インク受容層の形成の前に、この外側インク受容層に接合すべき前記内側インク受容単位層上に、硼砂を1.4質量%以下の濃度で含む硼砂溶液を塗布し、その上に前記外側インク受容層を形成し、このとき、前記外側インク受容層に含まれる樹脂材料として、硼砂による架橋反応が可能なポリマーを含有するものを用いることを特徴とするものである。
本発明のインクジェット記録シートの製造方法(2)は、転写基材上に、樹脂材料及び顔料を含む外側インク受容層を形成し、前記外側インク受容層上に、樹脂材料及び顔料を含む少なくとも1層の単位層からなる内側インク受容層を形成し、前記内側インク受容層の表面上に、支持体を貼着し、得られた貼着体から前記転写基材を剥離することを含み、前記内側インク受容層の形成の前に、前記外側インク受容層上に、硼砂を1.4質量%以下の濃度で含む硼砂溶液を塗布し、その上に前記内側インク受容層を形成し、このとき、この内側インク受容層に含まれる前記樹脂材料として、硼砂により架橋反応が可能なポリマーを含有するものを用いることを特徴とするものである。
本発明のインクジェット記録シートの製造方法(1)又は(2)において、前記内側インク受容層が2層以上の単位層から形成され、この内側インク受容単位層のうち、前記外側インク受容層に接する単位層を除き、他の単位層の少なくとも1つの表面上に、硼砂を1.4質量%以下の濃度で含む硼砂溶液を塗布し、その上に他の単位層を形成し、このとき、硼砂溶液塗布層上に形成される単位層に含まれる樹脂材料として、硼砂により架橋反応が可能なポリマーを含むものを用いることを更に含んでいてもよい。
上記本発明のインクジェット記録シートの製造方法(1)又は(2)において、前記硼砂により架橋反応が可能なポリマーが、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート、スチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれることが好ましい。
上記本発明のインクジェット記録シートの製造方法(1)又は(2)において、前記外側インク受容層および内側インク受容層に含まれる顔料が、それぞれ互に独立に、非晶質シリカ、アルミノシリケート、アルミナ及びアルミナ水和物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記本発明のインクジェット記録シートの製造方法(1)又は(2)において、前記外側インク受容層および/または少なくとも一層の内側インク受容単位層に含まれる顔料が、非晶質シリカとカチオン性化合物を水中において混合して凝集させることによって得られる非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子を、平均粒子径が1.2μm以下になるまで粉砕分散して得られた非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子であることが好ましい。
上記本発明のインクジェット記録シートの製造方法(1)又は(2)において、前記外側インク受容層および内側インク受容単位層に含まれる樹脂材料の含有量が、それぞれ互に独立に、顔料100質量部に対して、3〜100質量部であることが好ましい。
上記本発明のインクジェット記録シートの製造方法(1)又は(2)において、前記硼砂による架橋反応可能なポリマーを含む、外側インク受容層及び内側インク受容単位層の、前記樹脂材料の合計質量に対する前記硼砂架橋結合可能ポリマーの含有率が、それぞれ互に独立に、50〜100質量%であることが好ましい。
上記本発明のインクジェット記録シートの製造方法(1)又は(2)において、前記硼砂溶液塗布層の硼砂含有量を0.005〜0.07g/m に調整することが好ましい。
上記本発明のインクジェット記録シートの製造方法(1)又は(2)において、前記インクジェット記録シートに対し表面平滑化処理を施して、その75°表面光沢度(JIS−Z−8741)を、30%以上に調整することを更に含んでいてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
(塗工方法)
本発明方法(1)において、支持体上に樹脂材料及び顔料を含む少なくとも1層の内側単位層からなる内側インク受容層が形成され、前記内側インク受容層上に、樹脂材料及び顔料を含む外側インク受容層が形成される。この外側インク受容層の形成の前に、この外側インク受容層用に接合すべき前記内側インク受容単位層上に、硼砂を1.4質量%以下の濃度で含む硼砂溶液を塗布し、その上に前記外側インク受容層を形成し、このとき、前記外側インク受容層に含まれる樹脂材料として、硼砂による架橋反応が可能なポリマーを含有するものを用いる。
【0017】
本発明方法(2)において、転写基材の成形表面上に、樹脂材料及び顔料を含む外側インク受容層を形成し、この外側インク受容層上に、樹脂材料及び顔料を含む少なくとも1層の単位層からなる内側インク受容層を形成し、前記転写基材上の前記内側インク受容層上に、支持体を貼着し、得られた貼着体から前記転写基材を剥離することを含み、前記内側インク受容層の形成の前に、外側インク受容層上に、硼砂を1.4質量%以下の濃度で含む硼砂溶液を塗布し、その上に前記内側インク受容層を形成し、このとき、この内側インク受容層に含まれる樹脂材料として、硼砂により架橋反応が可能なポリマーを含むものを用いる。
【0018】
硼砂溶液塗布層と、硼砂で架橋しうるポリマーを含有する外側又は内側インク受容層用塗布液層が接触すると、直ちに外側又は内側インク受容層用塗布液層中に硼砂が侵入してこの塗布液をゲル化し、これを不動態とするため、風による液ヨレが発生し難く、このため乾燥時の風量を大きくして乾燥効率を向上させることが可能となる。また、乾燥時の外側インク受容層もひび割れに対して高い抵抗を示し、しかも塗膜が硬くなりすぎないため折り割れも生起しにくくなる。
本発明方法(1)及び(2)において、硼砂溶液の硼酸濃度は1.4質量%以下であり、好ましくは0.005〜1.4質量%、より好ましくは0.05〜1.0質量%にコントロールされる。
硼砂溶液を1.4質量%以下の濃度で、内側インク受容層又は外側インク受容層上に塗布すると、この塗布面に適度の濃度で硼砂が残留分布することができ、それによって、その上に塗布された外側インク受容層又は内側インク受容層用塗布液層中の樹脂成分中の架橋可能なポリマーと、適度の反応速度で反応し、それをゲル化することができる。
硼砂溶液の硼砂濃度が、1.4質量%をこえると、架橋が進みすぎて塗膜が硬くなり、折り割れが発生しやすくなるという不都合を生じ、それが3質量%以上であると、低温、長時間の放置により硼砂の析出を生ずることがある。但し、それが、0.005質量%未満になると、硼砂溶液の使用による外側インク受容層のひび割れ防止及び液ヨレ防止の効果が不十分になることがある。またこの場合所望の効果を得るために2回以上の重ね塗りが必要になることもある。
【0019】
硼砂溶液を塗布した後に、これに乾燥工程を施し、その上に硼砂で架橋しうるポリマーを含有する外側又は内側インク受容層用塗布液を塗布してもよい。しかしながら、インク受容層用塗布液のゲル化効率の点から、硼砂溶液塗布層が湿潤状態にあるうちに、インク受容層用塗布液を塗布することが好ましい。硼砂溶液塗布層が、インク受容層用塗布液と接触するときの好ましい水分率は、30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上である。
【0020】
なお、内側インク受容単位層を少なくとも2層設ける場合、先に形成された内側インク受容単位層(すなわち、本発明の製造方法(1)においては、支持体上に形成された内側インク受容単位層、本発明の製造方法(2)においては、転写基材上の外側インク受容層上に形成された内側インク受容単位層)が、それを形成するための内側インク受容単位層用塗布液を塗布、乾燥して形成された後、この内側インク受容単位層上に、硼砂溶液を塗布し、その上に硼砂と反応して架橋し得るポリマーを含む内側インク受容単位層用塗布液を塗布し、乾燥して、架橋された内側インク受容単位層を形成すればよい。
【0021】
この場合、前記と同様に、先に形成された内側インク受容単位層上に硼砂含有溶液を塗布し、これを乾燥した後に、その上に硼砂で架橋しうるポリマーを含有する内側インク受容単位層用塗布液を塗布してもよい。しかしながら、塗布液のゲル化効率の点から硼砂含有溶液塗布層が湿潤状態にあるうちに、硼砂架橋可能なポリマーを含む内側インク受容単位層用塗布液を塗布することが好ましい。このときの硼砂溶液塗布層の水分率は、30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上である。
【0022】
図1において、本発明方法(1)及び(2)によって得られるインクジェット記録シート6は、支持体1と、その上に形成された内側インク受容層2と、その上に形成された外側インク受容層3とにより構成されている。図示されていないか、内側インク受容層2は、前述のように、2以上の単位層が積層されたものであってもよい。
【0023】
本発明方法(1)によりインクジェット記録シートが形成されるときは、支持体1上に内側インク受容層2を形成(乾燥)した後、図1には示されていないが、その上に硼砂溶液塗布層を塗布し、好ましくはそれが50%以上の水分率を有する状態において、その上に外側インク受容層3を形成して乾燥すると、1.4%以下の硼砂溶液塗布層は消失するが、外側インク受容層中の、硼砂と架橋反応し得るポリマーは硼砂と架橋反応して、外側インク受容層塗布液がゲル化し、それによって外側インク受容層のひび割れ防止及び液ヨレ防止の両方が達成され、しかも外側インク受容層3は、内側インク受容層2に強固に結着する。
【0024】
図2において、本発明方法(2)によりインク受容層が製造されるときは、図2−(A)に示されているように、転写基材4の上に外側インク受容層3が形成され、その上に硼砂溶液塗布層5が形成される。次に図2−(B)に示されているように、好ましくは前記硼砂溶液塗布層5が50%以上の水分率を有する状態において、硼砂含有溶液塗布層5の上に内側インク受容層2を形成し乾燥する。すると、内側インク受容層2中の、硼砂と架橋反応し得るポリマーは硼砂と架橋反応し、それを乾燥すると硼砂溶液塗布層5は消失するが、内側インク受容層2は、外側インク受容層3に強固に結着する。次に図2−(C)に示されているように、内側インク受容層2上に支持体1を結着する。このとき、支持体1を、内側インク受容層2が乾燥する前に積層して、結着しながら内側インク受容層2を乾燥固化してもよいし、それを乾燥固化した後、接着剤または水などを塗布層に塗布し、支持体1に圧着してもよい。次に、図2−(D)に示されているように、転写基材4を、支持体1/内側インク受容層2/外側インク受容層3からなる記録シート6から剥離する。得られた記録シート6の外側インク受容層3の表面には、転写基材表面状態(特に鏡面)が転写されている。
【0025】
(硼砂溶液)
硼砂とは、ナトリウムの含水硼酸塩鉱物であり、その組成はNa B O ・10H Oである。実質的にNa B O が樹脂材料中の架橋反応可能なポリマーを架橋する。本発明においては、硼砂の濃度及び含有量は、Na B Oから算出している。
本発明方法(1)及び(2)において、硼砂の使用量が少量であっても、樹脂材料中の架橋反応可能なポリマーを架橋し、それを含む塗布液層のゲル化を促進するという特性を有していて、それによって上記ポリマーを含むインク受容層のひび割れ及び折り割れを防止し、塗布効率が向上し、しかも得られるインク受容層のインク吸収性が良好で、さらに耐光性も向上する。
インクジェット記録シートの硼砂含有量は、0.005〜0.07g/m であることが好ましい。それが0.005g/m 未満では、得られる記録シートに所望の効果が得られないことがあり、またそれが0.07g/m を超えると、塗膜が硬くなりすぎ、塗膜の折り割れを生じ易くなったり、湿度により塗布層がひび割れしやすくなることがある。
上記インクジェット記録シートの硼酸含有量は、好ましくは0.01〜0.04g/m であり、より好ましくは0.015〜0.03g/m である。
硼砂溶液中の硼砂の濃度については前述の通りである。
【0026】
(支持体)
本発明方法において、支持体として、例えばセロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のフィルム類、上質紙、アート紙、箔紙、クラフト紙、樹脂被覆紙、含浸紙、蒸着紙等の紙類、金属フォイル、合成紙等のシート類が適宜使用される。また、例えばコート紙、キャスト紙等のような塗工紙や、あらかじめ公知のインク受容層を設けたものを用いてもよい。
【0027】
本発明の記録シートにおいて、そのコックリングを防止し、表面平滑性、表面光沢性を向上させるために、支持体としてポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂による被覆紙又は合成紙を用いると、銀塩方式の写真に匹敵する画質を有するインク画像を記録することが可能になるため、これらが特に好ましく用いられる。
【0028】
支持体として樹脂被覆紙を用いた場合、支持体と内側インク受容層との密着性を向上させる目的をもって、支持体表面の内側インク受容層側に、あらかじめ密着処理、または接着処理を施しておくことが有効である。また支持体裏面に、必要により搬送性、帯電防止、ブロッキング防止等のための処理を施してもよい。支持体の平滑度には特に限定はないが、高光沢、高平滑な表面を有するインクジェット記録シートを得るためには、300秒(王研式、J.TAPPI NO5)以上の平滑度を有する支持体を用いることが好ましい。また、支持体の不透明度にも特に限定はないが、銀塩写真ライクな風合いを得るためには、支持体の不透明度(JIS P8138)が85%以上であることが好ましい。
【0029】
(転写基材)
本発明の製造方法(2)に用いられる転写基材は、例えば、高平滑性を有するセロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のプラスチックフィルム類、樹脂被覆紙、グラシン紙、含浸紙、蒸着紙、水溶性紙等の紙類、金属フォイル及び合成紙等のシート類、無機ガラス、金属又はプラスチック製の高平滑性成形表面を有するドラム、及び板材類が適宜使用される。特に、製造工程、および塗布層の成形面の性能からみて、プラスチックフィルム又は、高平滑性表面を有する金属ドラムを用いることが好ましい。
転写基材の成形面は、記録シートに優れた光沢を付与するため、平滑であるほうが好ましく、成形面の表面粗さRa(JIS−B−0601)は、0.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.05μm以下である。ただし、表面粗さを適宜にコントロールしてセミグロス調等の表面を記録シートに与えることもできる。
【0030】
(外側インク受容層および内側インク受容層)
樹脂材料(バインダー)及び顔料を有する外側インク受容層および内側インク受容層について説明する。
【0031】
(顔料)
インク受容層に用いられる顔料は、例えば非晶質シリカ(湿式法及び乾式法によって製造される合成非晶質シリカ、及びアルミナ等によるカチオン変性シリカを含む)、非晶質シリカとカチオン性化合物を混合し凝集させることによって得られる非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化スズ、、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナおよびアルミナ水和物、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、スメクタイト、ゼオライト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等である。本発明では、光沢性、インク吸収性のバランスが取り易い非晶質シリカ、非晶質シリカとカチオン性化合物を混合し凝集させることによって得られる非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子、アルミノシリケート、アルミナ、アルミナ水和物を用いることが好ましい。
【0032】
特に光沢性の観点から、外側インク受容層(つまり、インクがまず着弾するところ)に含まれる顔料の粒子径は、平均一次粒子径が3〜40nmが好ましく、平均二次粒子径に関しては1.2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。同様に、顔料が非晶質シリカとカチオン性化合物を混合し凝集させることによって得られる非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子である場合でも、原料となる非晶質シリカの平均一次粒子径は3〜40nmが好ましく、非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子の粒子径は1.2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは500nm以下のである。前記平均二次粒子径及び粒子径が1.2μmを超えると、外側インク受容層の平滑性が低下し、従って、その光沢性も低下する。平均一次粒子径が3nm未満であると、緻密な外側インク受容層が形成され、このためインク吸収性が低下する。
【0033】
顔料の分散方法には特に制限はなく、例えば一般市販の合成非晶質シリカ(数μm)に機械的手段で強い力を与えることにより得られる。機械的手段としては、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、溶媒攪拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー等の機械的手法が挙げられる。分散媒体は、特に限定されないが、例えば水が用いられる。
また、非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子の作製方法は以下に2つの方法を示すが、これに限定されるものではない。二次粒子径が数百nmの非晶質シリカ分散液とカチオン性化合物を混合して増粘・凝集させて非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子を作製する方法。二次粒子径が数μm〜数十μmの非晶質シリカ分散液とカチオン性化合物を混合して増粘・凝集させて非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子を作製する方法。前記作製された非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子の分散方法は、前記顔料の分散方法と同様にして達成することができる。
【0034】
本発明方法(1)及び(2)において用いられ、硼砂により架橋反応し得るポリマーには、それが硼砂により架橋し得るものである限り、格別の制限はなく、例えばポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、澱粉、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルアクリルアミド及びポリビニルピロリドン等が挙げられる。その他、本発明の目的が達成される範囲内において、例えば水分散性樹脂(例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、スチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス等)等のような、一般に塗工紙分野で用いられている各種接着剤を用いてもよい。
【0035】
本発明方法(1)及び(2)において、硼砂と架橋反応し得るポリマーとしては、インク吸収性、塗膜耐水性、ひび割れ防止等のために、ポリビニルアルコール類を包含する各種水溶性樹脂が好ましく使用される。より好ましくはポリビニルアルコールが用いられ、その重合度は3000以上であることが好ましく、しかし5000以下であることが好ましい。重合度が3000未満では、得られるインク受容層の耐水性が不十分である。またそれが5000を超えるものは、実用上、入手が困難である。
【0036】
(顔料とポリマーの固形分質量比)
本発明方法(1)及び(2)において、外側インク受容層および内側インク受容層に用いられる、顔料と樹脂材料との固形分質量比には特に制限はないが、顔料100質量部に対し、樹脂材料が3〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量部である。樹脂材料の含有比率が高すぎると、顔料粒子間に形成される細孔が小さくなり、インク吸収性が低下する場合がある。一方、樹脂材料の含有比率が過少であると、得られるインク受容層にひび割れを生じ易く、実用できなくなるおそれがある。
【0037】
(カチオン性化合物)
本発明の外側及び/又は少なくとも1層の内側インク受容層中にカチオン性化合物を添加してもよい。これにより、インク定着性を向上させることができる。添加されるカチオン性化合物としては、例えばポリエチレンアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。なお、カチオン化合物の添加量としては顔料100質量部に対し、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量部の範囲内で調節される。顔料が非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子である場合、カチオン化合物を添加しなくても、或いは上記と同様な割合で添加してもよい。また各インク受容層中には、それぞれ互いに独立に、一般塗工紙製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が添加されていてもよい。
【0038】
本発明方法(1)及び(2)において、外側インク受容層および内側インク受容層の合計の塗布量には特に限定はないが、5〜60g/m 程度に調節することが好ましい。塗布量が5g/m より少ないと、得られるインク受容層のインク吸収性及び画質が不十分になることがあり、また、塗布量が60g/m より多いと、得られるインク受容層にひび割れが生じ易くなることがある。銀塩方式の写真に匹敵する画質が得るためには、インク受容層の合計塗布量は15〜45g/m であることが好ましい。
【0039】
支持体上または転写基材上に最初に形成されるインク受容層用塗布液層は、インク受容層用塗布液を、例えばブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドフレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の各種塗工装置を用いて塗布して形成することができ、これを乾燥して固化したインク受容層を得ることができる。
【0040】
支持体又は転写基材上に2層目のインク受容層を形成するには、先に設けた1層目のインク受容層上に、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドフレードコーター、カーテンコーター、ダイコーター等で硼砂溶液を塗布した後、その上に2層目のインク受容層用塗布液を、1層目と同様の各種塗工装置の一つ以上を用いて塗布、乾燥して得ることができる。
【0041】
もちろん3層目以降のインク受容層を設けるときも、前記硼砂溶液を塗布した後、硼砂で架橋しうるポリマーを含有するインク受容層用塗布液を塗布し、乾燥する工程を繰り返せばよい。
【0042】
本発明の所望の効果を阻害しない限りにおいて、外側及び内側インク受容層中に前記以外の顔料、界面活性剤、接着性樹脂、耐ガス向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、カビ防止剤、カチオン性化合物、蛍光増白剤、及び/又は染料等を含有させてもよい。
【0043】
本発明方法(1)及び(2)において、銀塩写真並みの優れた画質や光沢が得るため、記録表一面の75度光沢度(JIS−Z−8741)は、30%以上であることが好ましく、45%以上であることがさらに好ましい。
【0044】
記録表一面の75度光沢度(JIS−Z−8741)が30%以上のものを得るために、表面にコロイダルシリカを塗布したり、公知の表面光沢処理を行ってもよい。
【0045】
【実施例】
本発明を下記実施例により具体的に説明するが、もちろん本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。また、例中の「部」および「%」は、水を除いた固形分の「質量部」および「質量%」を示す。硼砂の「部」及び「%」は、Na B O の「質量部」および「質量%」を示す。
【0046】
下記実施例及び比較例において、下記材料が用いられた。
(塗布液A)
平均粒径3μmの合成非晶質シリカ(日本シリカ工業社製、商標:Nipsil HD−2)をサンドグライダーにより粉砕分散した後、圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商標:超高圧式ホモジナイザー GM−1)でさらに粉砕分散し、一次粒子の平均粒子径が15nm、二次粒子の平均粒子径が100nmのシリカ粒子を含む5%シリカ分散液Aを調製した。
このシリカ分散液A100部にカチオン性化合物としてポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド(センカ社製、商標:ユニセンスCP−103)15部を添加し増粘・凝集させた。この非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子を、二次粒子の平均粒子径が150nmになるまで、粉砕分散操作を繰り返して、6%シリカゾルAKを調製した。このシリカゾルAK100部に、5%ポリビニルアルコール(クラレ社製、商標:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)24部を混合し、塗布液Aを調製した。
【0047】
(塗布液B)
分散液Aと同様にして、粉砕分散の操作を繰り返し、二次粒子の平均粒子径が800nmの10%シリカ分散液Bを調製した。このシリカ分散液B100部に5%ポリビニルアルコール(クラレ社製、商標:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)30部を混合し、塗布液Bを調製した。
【0048】
(塗布液C)
インク受容層用塗布液Aと同様にし、塗布液Cを調整した。但し、5%ポリビニルアルコール(クラレ社製、商標:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)24部の代わりに、5%ポリビニルアルコール(クラレ社製、商標:PVA−117、重合度:1700、ケン化度:99%以上)24部を用いた。
【0049】
(塗布液D)
平均粒径3μmの合成非晶質シリカ(日本シリシカ工業社製、商標:Nipsil HD−2)の代りに合成非晶質シリカ(日本エアロジル社製、商標:エアロジルA300)を用いた以外、塗布液Aと同様にして、一次粒子の平均粒子径が15nm、二次粒子の平均粒子径が150nmのシリカ粒子を含む5%シリカ分散液Dを調製した。
なお、上記各粉砕分散処理において、シリカの一次粒子径は処理前後で変化はなかった。
【0050】
(支持体の作製)
標準ろ水度(JIS P−8121)が250mlになるまで叩解した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、標準ろ水度が280mlになるまで叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)とを、質量比2:8の割合で混合し、濃度0.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリー中に、パルプ絶乾質量を基準にして、カチオン化澱粉2.0%、アルキルケテンダイマー0.4%、アニオン化ポリアクリルアミド樹脂0.1%及びポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.7%を添加し、十分に攪拌して分散させた。
上記組成のパルプスラリーを長網マシンに供して抄紙し、得られた湿紙をドライヤー、サイズプレス、マシンカレンダーを通し、坪量180g/m 、密度1.0g/cm の原紙を製造した。上記サイズプレス工程に用いたサイズプレス液は、カルボキシル変性ポリビニルアルコールと塩化ナトリウムとを2:1の質量比で混合し、これを水に加えて加熱溶解し、濃度5%に調製したものであって、これを紙の両面に、合計25ml/m の塗布量で塗布して支持体用原紙を得た。
【0051】
前記支持体用原紙の両面に、コロナ放電処理を施した後、バンバリーミキサーで混合分散して調製され、かつ下記の組成を有するポリオレフィン樹脂組成物を、原紙のフェルト側面上に、その塗工量が25g/m になるようにして、また前記と同一のポリオレフィン樹脂組成物を、原紙のワイヤー側面上に塗工量が20g/m になるように、T型ダイを有する溶融押し出し機(溶融温度320℃)を用いて塗布積層し、フェルト側面上の上記層を鏡面を有するクーリングロールに、また、ワイヤー側面上の樹脂層を粗面のクーリングロール上に導いて冷却固化した。表面平滑度(王研式、J.TAPPI No.5 )が6000秒であり、不透明度(JIS P−8138)が93%の支持体が得られた。
(支持体用ポリオレフィン樹脂組成物)
長鎖型低密度ポリエチレン樹脂(密度0.926g/cm 、メルトインデックス20g/10分)35部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm 、メルトインデックス2g/10分)50部、アナターゼ型二酸化チタン(石原産業社製、商標:A−220)15部、ステアリン酸亜鉛0.1部、酸化防止剤(チバガイギー社製、商標:lrganox1010)0.03部、群青(第一化成社製、商標:青口群青 No.2000)0.09部、蛍光増白剤(チバガイギー社製、商標:UVITEX OB)0.3部。
【0052】
実施例1
前記支持体の表面上に、前記塗布液Bを、メイヤーバーで固形分塗布量が25g/m となるように塗布し、乾燥して内側インク受容層を形成した。この内側インク受容層上に硼砂溶液(濃度:0.5%)を10g/m の塗布量で塗布し、それが乾燥しない状態において、その上に前記塗布液Aを、メイヤーバーで固形分塗布量が5g/m になるように塗布し、熱風乾燥機(温度:120℃、風速:10m/秒)で乾燥して外側インク受容層を形成した、インクジェット記録シートが得られた。
【0053】
実施例2
成形面として使用されたPETフィルム(東レ社製、商標:ルミラーT、厚さ:75μm)の表面上に、前記塗布液Aをメイヤーバーで固形分塗工量が5g/m となるように塗布し、乾燥して外側インク受容層を形成した。この外側インク受容層上に硼砂溶液(濃度1.2%)を3g/m の塗布量で塗布し、この溶液層上に、前記塗布液Bを、メイヤーバーで固形分塗布量が25g/m になるように塗布し、この湿潤内側インク受容層上に、市販原紙(王子製紙社製、商標:OKコート、坪量127.9g/m )を貼合せ、熱風乾燥機(温度:100℃、風速:10m/秒)で乾燥し、しかる後にPETフィルムを剥離して、インクジェット記録シートを得た。
【0054】
実施例3
実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを得た。但し、塗布液Aの代わりに、塗布液Cを用いた。
【0055】
実施例4
実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを得た。但し、塗布液Aの代わりに、塗布液Dを用いた。
【0056】
比較例1
実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを得た。但し、硼砂溶液(濃度0.5%)の代わりに水を用いた。
【0057】
比較例2
実施例2と同様にしてインクジェット記録シートを得た。但し、硼砂溶液(濃度1.3%)の代わりに水を用いた。
【0058】
比較例3
実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを得た。但し、硼砂溶液(濃度0.5%)の代わり、グリオキザール含有溶液(濃度0.5%)を用いた。
【0059】
比較例4
実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを得た。但し、硼砂溶液の濃度0.5%を濃度2%に変更し、この硼砂溶液を20g/m の塗布量で塗布した。
【0060】
実施例1〜4及び比較例1〜4において得られた8種のインクジェット記録シートの目視外観、光沢度、及び印字濃度を下記方法により測定評価した。その結果を表1に示す。
(目視外観1)−ひび割れ−
インクジェット受容層の目視外観−ひび割れ−を、下記基準に従って評価した。○および△と表示されたものは、実用上問題のないレベルである。
○:塗布面にひび割れがなく良好
△:塗布面にひび割れ若干あり、使用上問題ないレベル。
×:塗布面にひび割れを生じ、実用上使用困難なレベル
(目視外観2)−折り割れ−
インクジェット記録体をおり曲げるとき生じる折り割れを下記基準に従って評価した。○及び△と表示されたものは実用上問題のないレベルである。
○:塗膜に折り割れがなく良好
△:塗膜に折り割れが若干ある
×:塗膜に折り割れを生じ、実用上使用困難なレベル
(光沢度)
JIS−P8142に従って白紙部の75°光沢度を測定した。
(印字濃度)
供試インクジェット記録シートに、インクジェットプリンター(エプソン社製、商標:PM−950C)を用いて黒部ベタを印写し、その色濃度をマクベス反射濃度計(マクベス社製、RD−914)を用いて測定した。表中に示した数字は5回測定の平均値である。
(耐光性)
供試インクジェット記録シートに、インクジェットプリンター(エプソン社製、商標:PM−950C)で、ポートレート画像(高精細カラーディジタル標準画像データ、N1、日本規格協会)を印写した後、それにキセノンウエザーメーター(スガ試験機社製、63℃、90%)を用いて光を36時間照射し、その結果を下記のように評価した。
○:退色が少なく良好。
△:退色がみられるが、使用上問題ないレベル。
×:退色が進み問題あり。
(インク吸収性)
供試インクジェット記録シートに、インクジェットプリンター(エプソン社製、商標:PM−950C)で自転車の画像(高精細カラーディジタル標準画像データ、N5、日本規格協会)を印写し、インクの吸収状況を下記のように評価した。
○:にじみがなく線がはっきりしている。
×:にじみがあり線がつぶれている。
【0061】
【表1】
Figure 2004074576
【0062】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録シートの製造方法は、インク吸収性や耐光性が良好で、光沢性が高く、ひび割れ等の欠陥が少なく、かつ塗工後の乾燥工程で塗工面の乾燥による強い収縮によって起こる割れ(以下、折り割れという)が少ないインクジェット記録シートを、塗布効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法(1)及び(2)によって得られるインクジェット記録シートの積層構造を示す断面説明図。
【図2】本発明方法(2)の工程を示す説明図。
【符号の説明】
1…支持体
2…内側インク受容層
3…外側インク受容層
4…転写基材
5…硼砂溶液塗布層
6…インクジェット記録シート

Claims (10)

  1. 支持体上に、樹脂材料及び顔料を含む少なくとも1層の内側単位層からなる内側インク受容層を形成し、前記内側インク受容層上に、樹脂材料及び顔料を含む外側インク受容層を形成することを含み、
    前記外側インク受容層の形成の前に、この外側インク受容層に接合すべき前記内側インク受容単位層上に、硼砂を1.4質量%以下の濃度で含む硼砂溶液を塗布し、その上に前記外側インク受容層を形成し、このとき、前記外側インク受容層に含まれる樹脂材料として、硼砂による架橋反応が可能なポリマーを含有するものを用いることを特徴とするインクジェット記録シートの製造方法。
  2. 転写基材上に、樹脂材料及び顔料を含む外側インク受容層を形成し、前記外側インク受容層上に、樹脂材料及び顔料を含む少なくとも1層の単位層からなる内側インク受容層を形成し、前記内側インク受容層の表面上に、支持体を貼着し、得られた貼着体から前記転写基材を剥離することを含み、前記内側インク受容層の形成の前に、前記外側インク受容層上に、硼砂を1.4質量%以下の濃度で含む硼砂溶液を塗布し、その上に前記内側インク受容層を形成し、このとき、この内側インク受容層に含まれる前記樹脂材料として、硼砂により架橋反応が可能なポリマーを含有するものを用いることを特徴とするインクジェット記録シートの製造方法。
  3. 前記内側インク受容層が2層以上の単位層から形成され、この内側インク受容単位層のうち、前記外側インク受容層に接する単位層を除き、他の単位層の少なくとも1つの表面上に、硼砂を1.4質量%以下の濃度で含む硼砂溶液を塗布し、その上に他の単位層を形成し、このとき、硼砂溶液塗布層上に形成される単位層に含まれる樹脂材料として、硼砂により架橋反応が可能なポリマーを含むものを用いることを更に含む、請求項1又は2に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
  4. 前記硼砂により架橋反応が可能なポリマーが、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート、スチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録シート。
  5. 前記外側インク受容層および内側インク受容層に含まれる顔料が、それぞれ互に独立に、非晶質シリカ、アルミノシリケート、アルミナ及びアルミナ水和物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
  6. 前記外側インク受容層および/または少なくとも一層の内側インク受容単位層に含まれる顔料が、非晶質シリカとカチオン性化合物を水中において混合して凝集させることによって得られる非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子を、平均粒子径が1.2μm以下になるまで粉砕分散して得られた非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
  7. 前記外側インク受容層および内側インク受容単位層に含まれる樹脂材料の含有量が、それぞれ互に独立に、顔料100質量部に対して、3〜100質量部である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
  8. 前記硼砂による架橋反応可能なポリマーを含む、外側インク受容層及び内側インク受容単位層の、前記樹脂材料の合計質量に対する前記硼砂による架橋反応が可能なポリマーの含有率が、それぞれ互に独立に、50〜100質量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
  9. 前記硼砂溶液塗布層の硼砂含有量を0.005〜0.07g/m に調整する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
  10. 前記インクジェット記録シートに対し表面平滑化処理を施して、その75°表面光沢度(JIS−Z−8741)を、30%以上に調整することを更に含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
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