JP2009120957A - 原油油槽用鋼およびその製造方法、原油油槽およびその防食方法 - Google Patents

原油油槽用鋼およびその製造方法、原油油槽およびその防食方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼製油槽で生じる原油腐食に対して、優れた耐全面腐食性及び耐局部腐食性を示し、さらに、固体Sを含む腐食生成物(スラッジ)の生成を抑制できる溶接構造用の原油油槽用鋼、原油油槽、およびその防食方法を提供する。
【解決手段】基本成分として、質量%で、C:0.001〜0.2%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.1〜2%、P:0.03%以下、S:0.007%以下、Cu:0.01〜1.5%、Al:0.001〜0.3%、N :0.001〜0.01%を含有し、さらに、Mo:0.01〜0.08%、W:0.01〜0.5%の1種または2種を含有し、原油油槽環境における耐全面腐食性および耐局部腐食性を示し、さらに固体Sを含む腐食生成物(スラッジ)の生成を抑制し得る原油油槽用鋼。
【選択図】図1

Description

本発明は、原油タンカーの油槽や、地上または地下原油タンクなどの、原油を輸送または貯蔵する鋼製油槽で生じる原油腐食に対して、優れた耐食性を示し、さらに固体Sを含む腐食生成物(スラッジ)の生成を抑制できる溶接構造用の原油油槽用鋼およびその製造方法、並びに原油油槽およびその防食方法に関する。
原油タンカーや、地上/地下原油タンクなどの、原油を輸送/貯蔵する鋼製油槽には、強度や溶接性に優れた溶接構造用鋼が使用されている。解決が求められていた原油油槽の腐食損傷の課題は、1)鋼板の腐食軽減、特に進展速度が比較的大きい孔食状の局部腐食損傷の軽減、2)スラッジの原因となる気相部で鋼板表面に析出する固体硫黄の軽減であった。
まず、両課題の概要を説明する。
1)鋼板の腐食軽減原油中に含まれる水分、塩分や腐食性ガス成分により、油槽内は腐食環境に晒される(非特許文献1,非特許文献2)。特に、原油タンカー油槽内面では、原油中の揮発成分や、混入海水、油田塩水中の塩分、防爆のために油槽内に送られるイナートガスと呼ばれる船舶のエンジン排気ガス、昼夜の温度変動による結露などによって独特の腐食環境になり、鋼は全面腐食および孔食状の局部腐食により損傷する。
原油タンカーの油槽底板では直径10〜30mm程度の食孔が多数発生する。その進展速度は、2〜3mm/年に達する。これは船体設計時に考慮する腐食による平均衰耗速度である0.1mm/年を遥かに超える値である。原油油槽においては、構造材の局部腐食は次の理由などで特に好ましくなく対策が不可欠である。局部的に腐食が進行すると、その部分の荷重が予想外に増大して大きな歪や塑性変形を生じ、構造物全体の破壊に至る可能性がある。また、局部腐食の発生箇所と進展は予測が難しい。それゆえ、溶接構造用鋼として強度や溶接性に優れながら耐食性、特に局部腐食の進展速度が遅い鋼の開発が待たれていた。
2)スラッジの原因となる気相部で鋼板表面に析出する固体硫黄の軽減、さらに、前記の腐食損傷に加えて、鋼製油槽内面、特に上甲板(デッキプレート)裏の鋼板表面に、大量の固体Sが生成・析出する。これは腐食した鋼板表面の鉄さびが触媒となり、気相中のSO2とH2Sが反応して固体Sを生成するためである。鋼板の腐食による新しい鉄さびの生成と、固体Sの析出が交互に生じ、鉄さびと固体Sとの層状腐食生成物が析出する。固体S層は脆いため、固体Sと鉄さびとからなる生成物は容易に剥離、脱落し、油槽底にスラッジとして堆積する。定期検査で回収するスラッジの量は、超大型原油タンカーで300トン以上といわれており、維持管理上、固体Sを主体としたスラッジの低減が強く求められていた。
鋼材の防食と固体Sを主体としたスラッジの低減を同時に図る技術としては、塗装・ライニング防食が一般的であり、亜鉛やアルミニウムの溶射による防食も提案されている(非特許文献3)。しかし、超大型タンカーのデッキプレート裏の再塗装には施工期間とコストがかかるという経済的な問題点に加えて、防食層の施工時のミクロな欠陥や経年劣化で腐食が不可避的に進展するため、塗装・ライニングをしても定期的な検査と補修が不可欠であるといった技術面での課題もあった。
さらに、原油油槽の環境での鋼材自身の耐食性を向上することにより、鋼材表面での固体Sの析出を抑制せしめた技術は開示されていない。それゆえ、タンクなど溶接構造用途では構造物の信頼性向上、寿命延長の観点から、耐食性に優れ、かつ固体Sを主体としたスラッジの生成を抑制する溶接構造用鋼の開発が待たれていた。
次に、上記課題1)および、2)を解決すべく提案された技術、および、周辺の技術およびそれら提案された技術の課題について述べる。
1)鋼板の腐食軽減対策と従来技術の課題
原油油槽内面における鋼板の腐食、特に局部腐食を軽減するためにこれまで提案された技術につい述べる。原油油槽では原油タンカー、地上または地下タンクともに溶接構造用普通鋼が裸使用されるのが一般的である。従来、最も一般的な防食方法は塗装であり、エポキシ系樹脂および/またはジンクリッチプライマーによる防食塗装やガラスフレーク入りエポキシ樹脂による重防食塗装などが提案されている。また、溶融亜鉛めっきが海水と原油とに交互に接する環境で耐食性に優れていることから塗装した上でタンカーの手摺、配管などで使用されている。さらに、普通鋼よりも耐食性に優れ、原油油槽内面用途で適した耐食鋼材としては以下の技術が提案されている。
特許文献1では荷油管用鋼として、荷油管のように原油と海水が交互にまたは同時に曝されるような環境でCu−Cr−Mo−Sb鋼が優れた耐食性を示すとして提案されている。特許文献1記載の耐食鋼はCr:0.2から0.5%を主成分とし、Cu:0.1〜0.5%、Mo:0.02〜0.5%、Sb:0.01〜0.1%を含む鋼である。
特許文献2では、造船用耐食鋼として、Cu−Mg鋼が船舶外板、バラストタンク、カーゴオイルタンク(原油油槽)、鉱炭船カーゴホールドなどの使用環境で優れた耐食性を示すとして提案されている。特許文献2記載の耐食鋼は、Cu:0.01〜2.0%、Mg:0.0002〜0.0150%を主成分としてC:0.01〜0.25%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.05〜2.0%、P:0.10%以下、S:0.001〜0.10%、Al:0.005〜0.10%、を含有する鋼である。
特許文献3では、荷油タンク用耐食鋼として高P−Cu−Ni−Cr−高Al鋼が荷油タンクのデッキプレート裏で優れた耐食性と溶接割れ感受性を示すとして提案されている。特許文献3記載の耐食鋼は、P:0.04〜0.1%、S:0.005%以下、Cu:0.1〜0.4%、Ni:0.05〜0.4%、Cr:0.3〜4%、Al:0.2〜0.8%を主成分とし、C:0.12%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.2〜3%を含有し、かつPcm≦0.22を満足する鋼である。ただし、Pcm=[%C]+[%Si]/30+[%Mn]/20+[%Cu]/20+[%Ni]/60+[%Cr]/20+[%Mo]/15+[%V]/10+5[%B]。
特許文献4では、荷油タンク用耐食鋼として低P−Cu−Ni−Cr−高Al鋼が荷油タンクのデッキプレート裏で優れた耐食性と100kJを超える大入熱溶接を受ける際の機械的性質、溶接性とのバランスに優れた特性を示すとして提案されている。特許文献4記載の耐食鋼は、P:0.035%以下、S:0.005%以下、Cu:0.1〜0.4%、Ni:0.05〜0.4%、Cr:0.3〜4%、Al:0.2〜0.8%を主成分とし、C:0.12%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.2〜3%を含有し、かつ、Pcm≦0.22を満足する鋼である。ただし、Pcm=[%C]+[%Si]/30+[%Mn]/20+[%Cu]/20+[%Ni]/60+[%Cr]/20+[%Mo]/15+[%V]/10+5[%B]。
特許文献5では貸油タンク用耐食鋼およびその製造方法として、含Cu鋼、含Cr鋼および含Ni鋼が、貸油タンク内上部の腐食雰囲気、すなわち貨油タンク内に導入される原動機排ガス中腐食性成分による酸露点腐食環境に対してプライマー塗装状態で優れた耐食性、より詳しくは塗膜下の錆の進行を最小限として結果として塗膜寿命が伸びるという耐久性を示し、かつ、溶接性に優れた特性を示すとして提案されている。特許文献5記載の耐食鋼は、プライマー塗装状態で使用することを前提とし、Cu:0.1%〜1.4%、Cr:0.2〜4%、Ni:0.05〜0.7%のうちの1種以上を含むことを基本成分とし、C:0.16%以下、Si:1.5%以下、Mn:3.0%以下、P:0.035%以下、S:0.01%以下を含み、かつPcm≦0.22を満足する鋼である。ただし、Pcm=[%C]+[%Si]/30+[%Mn]/20+[%Cu]/20+[%Ni]/60+[%Cr]/20+[%Mo]/15+[%V]/10+5[%B]。
特許文献6では、溶接部の耐食性に優れた貨油タンク用耐食鋼板としてCu−Ni鋼が、プライマー塗装状態で使用する母材ならびにプライマー塗装を施さない溶接部において優れた耐食性を有し、かつ、従来の炭素鋼用溶接ワイヤを使用可能とするとして提案されている。特許文献6記載の耐食鋼は、プライマー塗装状態で使用することを前提とし、Cu:0.15%〜1.4%を基本成分とし、C:0.16%以下、Si:1.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、を含み、かつ、Pcm≦0.24を満足する鋼である。ただし、Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cr/20+Cu/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B。
特許文献7では、原油および重油貯蔵庫用耐食鋼として、含Cu鋼、含Cr鋼、含Mo鋼、含Ni鋼、含Cr鋼、含Sb鋼および含Sn鋼が、原油タンカー、石油タンク等において液体燃料および原油、重油などの原燃料を貯蔵する際に優れた耐食性を示すとして提案されている。特許文献7記載の耐食鋼は、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜7.0%、Cr:0.01〜10.0%、Mo:0.01〜4.0%、Sb:0.01〜0.3%、Sn:0.01〜0.3%のいずれか1種または2種以上を含むことを基本成分とし、C:0.003〜0.30%、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Al:0.10%以下、P:0.050%以下、S:0.050%を含有する鋼である。
特許文献8では、原油を輸送・貯蔵タンク用耐食鋼として、Cu−Ni−Cr鋼が優れた耐食性を示すとして提案されている。特許文献8記載の耐食鋼は、Cu:0.5〜1.5%、 Ni:0.5〜3.0%、Cr:0.5〜2.0%を基本成分とし、C:0.001〜0.20%、Si:0.10〜0.40%、Mn:0.50〜2.0%、P:0.020 %以下、S:0.010%以下、Al:0.01〜0.10%を含有する鋼である。
特許文献9では、カーゴオイルタンク用鋼材として、含Ni鋼、Cu−Ni鋼が優れた耐食性、より詳しくはイナートガスを含む乾湿繰り返し腐食に対して優れた耐全面腐食性を示すとして提案されている。特許文献9記載の耐食鋼は、Ni:0.05〜3%を基本成分として、C:0.01〜0.3%、Si:0.02〜1%、Mn:0.05〜2%、P:0.05%以下、S:0.01%以下を含有し必要に応じてMo、Cu、W、Ca、Ti、Nb、V、B、SbおよびSnの1種または2種以上を含有する鋼である。
また、原油油槽用途ではないものの、船舶バラストタンク用途で提案された耐食鋼については、下記の技術が提案されている。
特許文献10では、耐食性低合金鋼として、Cu−W鋼およびCu−W−Mo鋼がバラストタンクで優れた耐食性を示すとして提案されている。特許文献10記載の耐食鋼は、Cu:0.15〜0.50%、W:0.05〜0.5%を基本成分とし、C:0.2%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、P:0.1%以下を含有し、必要に応じてMo:0.05〜1.0%含有する鋼である。
特許文献11では、耐食性低合金鋼として、Cu−W鋼およびCu−W−Mo鋼がバラストタンクで優れた耐食性を示すとして提案されている。特許文献11記載の耐食鋼は、Cu:0.15〜0.50%、W:0.01〜0.05%未満を基本成分とし、C:0.2%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、P:0.1%以下を含有し、必要に応じてMo:0.05〜1.0%含有する鋼である。
特許文献12では、耐食性低合金鋼として、CuとWを含有し、さらにGe、Sn、Pb、As、Sb、Bi、TeまたはBeの1種または2種以上を含む鋼がバラストタンクで優れた耐食性を示す、より詳しくは局部腐食に対する高い抵抗性を示すとして提案されている。特許文献12記載の耐食鋼は、Cu:0.15〜0.50%、W:0.05〜0.5%、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、TeまたはBeの1種または2種以上:0.01〜0.2%を基本成分とし、C:0.2%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、P:0.1%以下を含有し、必要に応じてMo:0.01〜1.0%含有する鋼である。
特許文献13では、耐食性低合金鋼として、Cu−Mo鋼がバラストタンクで優れた耐食性を示し、かつ良好な強度特性、溶接性を示すとして提案されている。特許文献13記載の耐食鋼は、Cu:0.05〜0.5%、Mo:0.01〜1%を基本成分とし、C:0.2%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.3〜3.0%、P:0.1%以下を含有する鋼である。
特許文献14では、耐海水性低合金鋼として、Cr−Al鋼が海水に対して耐食性、より詳しくは合金元素を多量に含む鋼で生じやすい孔食や隙間腐食に対する抵抗性、に優れるとして提案されている。特許文献14記載の耐食鋼は、Cr:1〜6%、Al:0.1〜8%基本成分とし、C:0.08%以下、Si:0.75%以下、Mn:1%以下、P:0.09%以下、S:0.09%以下を含有する鋼である。
特許文献15では、高温多湿環境用耐海水鋼およびその製造方法として、Cr−Ti鋼が、船舶における高温多湿環境、すなわちバラストタンクや海水配管などで優れた耐海水腐食性を示し、かつHAZ靭性に優れた鋼として提案されている。特許文献15記載の耐食鋼は、Cr:0.50〜3.50%を基本成分とし、C:0.1%以下、Si:0.50%以下、Mn:1.50%以下、Al:0.005 〜0.050%を含有する鋼である。
特許文献16では、溶接HAZ部靱性の優れた高温多湿環境用耐海水鋼の製造方法製造方法として、含Cr鋼が、船舶における高温多湿環境、すなわちバラストタンクや海水配管などで優れた耐海水腐食性を示すとして提案されている。特許文献16記載の耐食鋼は、Cr:1.0〜3.0%、Ti:0.005〜0.03%を基本成分とし、C:0.1%以下、Si:0.10〜0.80%、Mn:1.50%以下、Al:0.005〜0.050%、を含有する鋼である。
次に、上記従来技術の課題について述べる。
プライマー塗装や重防食、また金属溶射などの防食被覆で腐食を軽減する場合は、施工コストがかかるという問題に加えて、防食層の施工時のミクロな欠陥や経年劣化で生じる欠陥を起点として局部腐食が不可避的に発生・進展するため、通常の使用では長くても5〜10年で裸使用と大差がないほど腐食が進展するといった問題があった。また、定期的な検査と補修が不可欠で、結果として維持コストがかかる問題もあるといった問題があった。また、油槽底板で生じる局部腐食については、防食層が劣化した後では局部腐食の進展速度が裸使用と大差ないといった問題があった。
特許文献1記載の荷油管用鋼では、原油油槽環境で耐食性に有害なCrを0.1%を超えて含有するので、底板で生じる局部腐食の進展速度が低減せず、合金添加量の総和に見合ったコスト効果が耐食性で得られないといった課題があった。また、Crを含むために普通鋼と比較して溶接性が劣るといった課題があった。
特許文献2記載の造船用耐食鋼では、Mg添加を必須としているために、鋼の製造安定性が阻害するほか、本発明者らの研究でCu−Mg鋼では、底板で生じる局部腐食の進展速度が低減せず、合金添加量の総和に見合ったコスト効果が耐食性で得られないといった課題があった。
特許文献3記載の荷油タンク用耐食鋼(高P−Cu−Ni−Cr−高Al鋼)では、Cr:0.3〜4%と原油油槽底板環境で耐食性に有害なCrを0.1%を超えて含有するので、底板で生じる局部腐食の進展速度が低減せず、合金添加量の総和に見合ったコスト効果が耐食性で得られないといった課題があった。また、Crを含むために普通鋼と比較して溶接性が劣るといった課題があった。
特許文献4記載の荷油タンク用耐食鋼(低P−Cu−Ni−Cr−高Al鋼)では、Cr:0.3〜4%と原油油槽底板環境で耐食性に有害なCrを0.1%を超えて含有するので、底板で生じる局部腐食の進展速度が低減せず、合金添加量の総和に見合ったコスト効果が耐食性で得られないといった課題があった。また、Crを含むために普通鋼と比較して溶接性が劣るといった課題があった。また、プライマー状態でデッキプレート裏などの気相部で塗膜下腐食が抑制されるとしているが、CrやAlを比較的高く含有するために、塗膜欠陥部からの膨れ巾は低減するが、塗膜欠陥部から板厚方向に進展する腐食速度の低減が得られないといった課題があった。
特許文献5および特許文献6記載の貨油タンク用耐食鋼板(Cu−Ni鋼)では、Cu、Niは耐食性向上、より詳しくは塗膜下腐食に対する抵抗性の向上に有効で、Moは耐食性には有害だが強度特性の向上には有効としている。実施例によれば、提案されている耐食鋼で示されたCu−Ni−Mo鋼はいずれも本発明範囲のMoの上限(0.08%)を超えているので、原油油槽底板で生じる局部腐食の進展を抑制する効果が得られないといった課題があった。
特許文献7記載の原油および重油貯蔵庫用耐食鋼(含Cu鋼、含Cr鋼、含Mo鋼、含Ni鋼、含Cr鋼、含Sb鋼および含Sn鋼)では、優れた耐食性を得るには、実施例によればCu:0.22〜1.2%、Cr:0.3〜5.6%、Ni:0.5〜6.2%、Mo:0.25〜7.56%、Sb:0.07〜0.25%、Sn:0.07〜1.5%の1種または2種以上の添加が不可欠であり、効果の発現には多量の合金元素の添加が必要で、経済性や溶接性に劣るといった課題があった。
特許文献8記載の原油を輸送・貯蔵タンク用耐食鋼(Cu−Ni−Cr鋼)では、基本成分としてCu:0.5〜1.5%、Ni:0.5〜3.0 %、Cr:0.5〜2.0%を含むために、効果の発現には多量の合金元素の添加が必要で、経済性や溶接性に劣るといった課題があった。原油油槽底板環境で耐食性に有害なCrを0.1%を超えて含有するので、底板で生じる局部腐食の進展速度が低減せず、合金添加量の総和に見合ったコスト効果が耐食性で得られないといった課題があった。
特許文献9記載のカーゴオイルタンク用鋼材(含Ni鋼、Cu−Ni鋼)では、油槽底板ではなくデッキプレート裏を模擬した腐食試験環境において局部腐食の進展を抑制する鋼成分について検討している。Crを添加していない鋼でCu−Ni−Moを基本成分とした鋼としては、特許文献9記載の表4中の試料番号B4(0.43%Cu−0.18%Ni−0.26%Mo)、B6(0.33%Cu−0.31%Ni−0.35%Mo)、B13(0.38%Cu−0.12%Ni−0.44%Mo)、B15(0.35%Cu−0.28%Ni−0.31%Mo)、B19(0.59%Cu−0.16%Ni−0.22%Mo)およびB20(0.59%Cu−0.44%Ni−0.22%Mo)が該当するが、いずれの鋼も基本成分だけでもそれらの所要添加量が比較的多く、コストや溶接性の問題があった。また、原油タンク底板環境で優れた耐孔食性を得るためには、含Ni鋼またはCu−Ni鋼を基本成分とし、かつ、粒径が30μmを超える介在物が1cmあたり30個未満で、かつ、金属組織におけるパーライト比率Apと鋼中C量との間に、Ap/C≦130なる関係を満足しなければならないといった課題があった。
次に、船舶バラストタンク用途で提案された耐食鋼の課題について述べる。
特許文献10記載の耐食性低合金鋼(Cu−W鋼およびCu−W−Mo鋼)は、特許文献10記載の実施例表1に示された本願発明鋼の化学組成によればAlを含有していないため、原油タンク底板での耐局部腐食性が得られないといった課題があった。また、Alキルド鋼ではなく、鋼の清浄度および溶接部靭性の観点から現在の造船用鋼としては適用が難しいといった課題があった。
特許文献11記載の耐食性低合金鋼(Cu−W鋼およびCu−W−Mo鋼)は、特許文献11記載の実施例表1に示された本願発明鋼の化学組成によればAlを含有していないため、原油タンク底板での耐局部腐食性が得られないといった課題があった。また、Alキルド鋼ではないことが明らかであり、鋼の清浄度および溶接部靭性の観点から現在の造船用鋼としては適用が難しいといった課題があった。
特許文献12記載の耐食性低合金鋼は、Cu:0.15〜0.50%、W:0.05〜0.5%を含有し、さらにGe、Sn、Pb、As、Sb、Bi、TeまたはBeの1種または2種以上:0.01〜0.2%を含有必要があるため、熱間加工性が著しく劣るといった課題があった。また、特許文献12記載の表1に示された化学組成によればAlを含有していないため、原油タンク底板での耐局部腐食性が得られないといった課題があった。また、Alキルド鋼ではないことが明らかであり、鋼の清浄度および溶接部靭性の観点から現在の造船用鋼としては適用が難しいといった課題があった。
特許文献13記載の耐食性低合金鋼としては、バラストタンク用耐食鋼としてCu−Mo鋼が提案されているが、特許文献13記載の実施例で示された提案鋼の組成によれば、所期のバラストタンク環境での耐食性を得るにはSを0.008%以上含有する必要があることが明らかである。それゆえ、本発明鋼と同程度の原油タンク底板での耐局部腐食性が得られないといった課題があった。また、Alを含有していないため、原油タンク底板での耐局部腐食性が得られないといった課題があった。さらに、Alキルド鋼ではないことが明らかであり、鋼の清浄度および溶接部靭性の観点から現在の造船用鋼としては適用が難しいといった課題があった。
特許文献14〜16で提案された耐食鋼は、0.5%以上のCrを含む鋼を基本成分としており、原油タンク底板での耐局部腐食性が得られないといった課題があった。
以上に述べた従来技術のほかに、用途は異なるが低合金耐食鋼の技術がいくつか開示されているので述べる。
自動車足回り用部材は、融雪塩の付着に伴って、塩化物イオンを含む湿潤腐食が生じる。この腐食課題に対して、耐孔あき性に優れた自動車足回り部材用の低合金鋼として、例えば、鋼にCu、Ni、Ti、およびPを含有させることにより、概鋼表面に燐酸塩による防食性被膜を生成させることを特徴とした技術(例えば、特許文献17)や、鋼にP、Cuを単独または複合添加して、生成する錆層を非晶質化して緻密にすることで錆の保護性を高めた技術(例えば、特許文献18)がある。また、耐海水性を向上させた耐海水性低合金鋼も鉄鋼各社で開発され、市販されている(例えば、非特許文献4)。
しかしながら、上記自動車足回り用の耐孔あき性に優れた鋼や耐候性鋼の場合、使用環境が煙害環境でも保護性のある緻密な錆層を形成するものの、このような優れた耐孔あき性が発現するのは、常時濡れている場合ではなく、適度な乾湿繰り返しが繰り返されることによって緻密な保護性のある錆層が自ずと形成される環境に限られ、濡れ時間の長い使用環境や、常時湿潤する環境では、その優れた耐孔あき性が発揮されない。また、上記の耐海水性低合金鋼の場合は、平均的な板厚減少速度で評価される耐食性に関しては普通鋼よりも優れた特性を示す場合が多いものの、局部腐食の進展速度については、普通鋼よりも明らかに優れているとは言えない(非特許文献5)といった課題があった。
これまで述べたように、原油油槽などの溶接構造用途では、構造物の信頼性向上、寿命延長の観点から、全面腐食が発生しても局部腐食の進展速度が遅い低合金鋼の開発が待たれていた。原油油槽の底板で生じる局部腐食進展を低減する技術としては、現状では底板を防食ライニングする方法が提案されているにとどまり、本発明の課題環境である原油油槽と類似したバラストタンク環境や原油油槽デッキプレート裏で生じる腐食を軽減する耐食鋼はこれまで多く提案されているが、原油油槽底板で生じる局部腐食の進展速度が遅い耐食鋼の提案は、上記で述べた特許文献9にとどまっている。
2)スラッジの原因となる気相部で鋼板表面に析出する固体硫黄の軽減対策と従来技術の課題
鋼の防食と固体Sを主体としたスラッジの低減を同時に図る技術としては、塗装・ライニング防食が一般的であり、亜鉛やアルミニウムの溶射による防食も提案されている(非特許文献1)。しかし、腐食低減対策の場合と同様に、施工コストがかかるという経済的な問題点に加えて、防食層の施工時のミクロな欠陥や、経年劣化で腐食が不可避的に進展するため、塗装・ライニングをしても定期的な検査と補修とが不可欠であり、その寿命も5〜10年に限られるといった課題があった。
しかしながら、原油油槽の環境での鋼自体の耐食性を向上することにより、鋼表面での固体Sの析出を抑制せしめる技術は開示されていない。それ故、タンクなど溶接構造物用途では構造物の信頼性向上、寿命延長の観点から、耐食性に優れ、かつ固体Sを主体としたスラッジの生成を抑制する溶接構造用鋼の開発が待たれていた。
特開昭50−158515号公報 特開2000−17381号公報 特開2001−107179号公報 特開2001−107180号公報 特開2002−12940号公報 特開2003−105467号公報 特開2001−214236号公報 特開2002−173736号公報 特開2003−82435号公報 特公昭49−27709号公報 特開昭48−50921号公報 特開昭48−50922号公報 特開昭49−3808号公報 特開昭49−52117号公報 特開平7−310141号公報 特開平8−246048号公報 特開昭62−243738号公報 特開平2−22416号公報
日本高圧力技術協会:石油タンクの防食および腐食管理指針HPISG,p.18(1989〜90) 社団法人日本造船協会,H12年度研究概要報告,SR242 原油タンカーの新形コロージョン挙動の研究 日本高圧力技術協会:石油タンクの防食および腐食管理指針HPIS G, p.18(1989〜90) 松島巌,耐食低合金鋼,p.117,地人書館,1995 松島巌,耐食低合金鋼,p.112,地人書館,1995
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、原油油槽の底板環境で優れた耐局部腐食性を示し、かつ原油油槽の上甲板裏の気相部において固体Sを含む腐食生成物の生成速度が遅い溶接構造用の原油油槽用鋼およびその製造方法、並びに原油油槽およびその防食方法を提供することである。
上記課題を解決すべく、本発明者らは、原油油槽の底板での局部腐食進展挙動および上甲板裏での固体Sの析出挙動に及ぼす鋼の化学成分、組織、製法の影響を調査した結果、以下の知見を得た。
〔1〕原油油槽底板における局部腐食進展の抑制手段
原油油槽底板上には、原油中に含まれる大量の岩塩水が分離、滞留する。前記岩塩水の濃度は原油の産出地および油井深度に依存するが、NaCl換算でおよそ1〜60質量%の濃厚塩水であることを、まず知見した。このような濃厚塩水、すなわち濃厚ハロゲン水溶液に鋼板が曝されると、腐食生成物、スラッジ、灰などの付着物により鋼板表面は不均一な状態となり、優先的に地鉄が溶解するサイトが急速に形成・固定され、されらのサイトを起点に局部腐食が進展することを見出した。さらに、濃厚塩水溶液のpH緩衝能力が極めて弱いため、地鉄が優先的に溶解するサイトでは、溶出した鉄イオンや合金イオンの加水分解によりpHが急激に2以下に低下し、これらのサイトを起点に局部腐食が触媒加速的に進展するとの機構を提案した。
さらに、本発明者は、局部腐食進展速度に及ぼすCuおよびMoの影響について、実験室で溶製した種々のCu添加量(0.1〜0.5質量%)およびMo添加量(0.025〜0.075質量%)のFe−Cu−Mo鋼を用いて検討を行った結果、以下の知見を得た。
図1に、Fe−Cu−Mo鋼の局部腐食進展速度に及ぼすMo添加量の影響を示す。図1から、局部腐食進展速度は、0.05質量%Mo付近で極小値をとり、0.1質量%以上でMoの抑制効果が低減することを見出した。この結果、Mo添加量としては、0.03〜0.07%が最も好ましいことがわかった。
図2に、Fe−Cu−Mo鋼の局部腐食進展速度に及ぼすCu添加量の影響を示す。図2から、Cu−Mo複合添加による局部腐食進展速度の顕著な抑制効果は、Cu≧0.1質量%で顕著に認められ、0.3%でほぼ飽和していることがわかった。
図3(a)、(b)に、0.3%Cu−0.05%Mo鋼の局部腐食進展速度に及ぼすP、Sの影響を示す。不純物であるP、Sは局部腐食進展速度を加速する傾向を示した。Pは0.03%を超えて含有する場合、Sは0.02%を超えて含有する場合、局部腐食進展速度が顕著に増加した。また、P≦0.010%またはS≦0.0070%以下の場合、それらの阻害効果は最小限にできることがわかった。
図4に、低P−低S−Cu−Mo鋼の局部腐食進展速度に及ぼすAlの影響を示す。局部腐食進展速度の曲線は、下に凸の曲線を示し、Al量が0.3%を超えると局部腐食進展速度が増加する。0.01〜0.1%にAlを制御すると、さらに耐局部腐食性が向上することがわかった。
以上の知見をまとめると、それらの特徴は、(1)Cuを0.1質量%以上含む鋼にMoを0.01〜0.1質量%複合添加すると、局部腐食の進展速度が、普通鋼比で1/5以下に著しく低下すること、(2)Cuを0.1質量%以上含む鋼にMoを0.1質量%を超えて添加すると、Moによる局部腐食の進展速度抑制効果が低減すること、(3)Cuを0.1質量%以上含む鋼における最適なMo添加量は、0.03〜0.07質量%であること、(4)過剰のP、Sの添加は局部腐食進展速度を加速し、P、Sの上限を限定することで優れた耐局部腐食性が得られること、(5)Alの添加量を0.01〜0.1%にすると、さらに耐局部腐食性が向上する、(6)Crは耐局部腐食性を著しく加速する有害な元素であり、0.01%以下に制限するのが好ましい、などの本発明者の得た知見に基づいて、低合金鋼の鋼成分を制御することにより、局部腐食発生後の該腐食部における進展速度を遅くしたところにある。
さらに鋭意研究を進めた結果、下記の知見を得た。
すなわち、一般的な溶接構造用鋼の化学組成を基本として、Crを実質的に無添加とし、特定量のMo、Wのいずれかまたは両方とCuとを複合添加し、不純物であるP、Sの添加量を限定し、Alを添加することにより、以下の効果が得られることを知見した。
1)P、S、Alを限られた範囲で含有することにより、より少ないCu、Mo、Wの合金添加量で、当該環境での局部腐食の進展速度が飛躍的に低減する。
2)Mo、Wの存在状態と耐食性との関係を詳細に研究した結果、Mo、Wは固溶状態で存在する方がより一層耐食性に好ましい。
〔2〕スラッジの原因となる原油油槽上甲板裏で気相から析出する固体硫黄の軽減対策の手段
本発明者らが、原油油槽上甲板の鋼板表面における固体硫黄の気相からの析出挙動を鋭意研究した結果、下記の知見を得た。(1)固体Sは油槽気相中の硫化水素と酸素が鉄さび表面を触媒として反応・析出する。(2)固体Sの析出速度は、温度、気相中硫化水素および酸素濃度に依存するほか、鉄さびに極微量含まれる合金に依存する。(3)鉄さびにCuとMoが同時に含まれると固体Sの析出速度が抑制される。(4)CuとMoが同時含まれると、当該環境での全面腐食速度も同時に低減する。前記知見を基に、一般的な溶接構造用鋼の化学組成を基本として、Crを無添加とし、特定量のCuとMoとを複合添加し、不純物であるP、Sの添加量を限定することにより、当該環境での耐食性、すなわち耐全面腐食性を向上させることが可能であるという知見を得た。
本発明は、主に上記知見に基づいてなされたもので、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.001〜0.2%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.1〜2%、P:0.03%以下、S:0.007%以下、Cu:0.01〜1.5%、Al:0.001〜0.3%、N:0.001〜0.01%を含有し、さらに、Mo:0.01〜0.08%、W:0.01〜0.5%の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする原油油槽用鋼。
(2)質量%で、式(1)で示される炭素当量(Ceq.)が0.4%以下であることを特徴とする上記(1)に記載の原油油槽用鋼。
Ceq.=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+W+V)/5・・・(1)
(3)質量%で、Crが0.1%未満であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の原油油槽用鋼。
(4)質量%で、さらに、Ni:0.1〜3%、Co:0.1〜3%の1種または2種を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の原油油槽用鋼。
(5)質量%で、さらに、Sb:0.01〜0.3%、Sn:0.01〜0.3%、Pb:0.01〜0.3%、As:0.01〜0.3%、Bi:0.01〜0.3%の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の原油油槽用鋼。
(6)質量%で、さらに、Nb:0.002〜0.023%、V:0.005〜0.5%、Ti:0.002〜0.2%、Ta:0.005〜0.5%、Zr:0.005〜0.5%、B:0.0002〜0.005%の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の原油油槽用鋼。
(7)質量%で、さらに、Mg:0.0001〜0.0015%、Ca:0.0005〜0.01%、Y:0.0001〜0.1%、La:0.005〜0.1%、Ce:0.005〜0.1%の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の原油油槽用鋼。
(8)鋼の平均Mn%よりもMnが1.2倍以上濃化しているミクロ偏析部分の面積率が10%以下であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の原油油槽用鋼。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の原油油槽用鋼を製造する方法であって、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の成分からなる鋼片を熱間圧延後に加速冷却を行うに際して、加速冷却の平均冷却速度:5〜100℃/s、加速冷却停止温度:600℃〜300℃、加速冷却停止後〜100℃までの冷却速度:0.1〜4℃/sとすることを特徴とする原油油槽用鋼の製造方法。
(10)上記(9)記載の方法により製造した鋼を500℃以下で焼戻しまたは焼鈍を施すことを特徴とする原油油槽用鋼の製造方法。
(11)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の原油油槽用鋼を製造する方法であって、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の成分からなる鋼片を熱間圧延後、焼きならしにより製造するに際して、焼きならしの加熱温度:Ac変態点〜1000℃、700〜300℃の平均冷却速度:0.5〜4℃/sとすることを特徴とする原油油槽用鋼の製造方法。
(12)上記(11)記載の焼きならし後、500℃以下で焼戻しまたは焼鈍を施すことを特徴とする原油油槽用鋼の製造方法。
(13)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の成分からなる鋼片を熱間圧延前に、加熱温度:1200〜1350℃、保持時間:2〜100hの拡散熱処理を施すことを特徴とする上記(10)〜(12)のいずれかに記載の原油油槽用鋼の製造方法。
(14)底板、デッキプレート、側板および骨材の一部または全部が、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の原油油槽用鋼からなることを特徴とする原油油槽。
(15)上記(14)記載の原油油槽の表面における熱延スケールを機械的または化学的に除去し、地鉄素地を露出したことを特徴とする原油油槽の防食方法。
(16)熱延スケールを機械的または化学的に除去した後、厚さ10μm以上の塗膜を1層以上形成することを特徴とする上記(15)記載の原油油槽の防食方法。
本発明によれば、原油タンカーの油槽や、地上または地下原油タンクなどの、原油を輸送または貯蔵する構成油槽で生じる原油腐食に対して、優れた耐全面腐食性および耐局部腐食性を示し、さらに固体Sを含む腐食生成物(スラッジ)の生成を抑制できる溶接構造用の原油油槽用鋼、原油油槽を提供することが可能となり、鋼構造物、船舶の長期の信頼性向上、安全性向上、経済性の向上等に寄与する。
Fe−Cu−Mo鋼の局部腐食進展速度とMo含有量との関係図である。 Fe−Cu−Mo鋼の局部腐食進展速度とCu含有量との関係図である。 (a)はFe−Cu−Mo鋼の局部腐食進展速度とP含有量との関係を示す図であり、(b)はFe−Cu−Mo鋼の局部腐食進展速度とS含有量との関係を示す図である。 Fe−Cu−Mo鋼の局部腐食進展速度とAl含有量との関係図である。 腐食試験装置の構成図である。 試験片に付加した温度サイクルを説明する図である。
本発明は前述の課題を克服し、目的を達成するもので、その具体的手段を以下に説明する。
先ず、本発明にかかわる成分元素とその含有量について説明する。文中に示す成分含有量の%の単位は質量%である。
Cは、0.001%未満に脱C化することは工業的には経済性を著しく阻害するため、0.001%以上含有させるが、強化元素として用いる場合には、0.002%以上の含有がより好ましい。一方、0.2%を超えて過剰に含有させると、溶接性や継手靭性の劣化等も生じ、溶接構造物用鋼として好ましくないため、0.001〜0.2%を限定範囲とした。溶接施工性の観点からは、Cは0.18%以下がより好ましい。特に船舶用途の軟鋼(降伏応力が240N/mm2級)および高張力鋼(降伏応力が265,315,355,390N/mm2級)および高張力鋼船舶用鋼板としては、0.05〜0.15%がより好ましい。Cは原油油槽底板での耐局部腐食性をやや低下させる元素であり、耐食性の観点からは、0.15%以下が好ましい。
Siは、脱酸元素として必要であり、脱酸効果を発揮するためには、0.01%以上必要である。Siは耐全面腐食性向上に効果があり、また、耐局部腐食性向上にもわずかながら効果がある元素である。該効果を発現させるためには0.1%以上含有させることが好ましい。一方、Siを過度に含有させると、熱延スケールの固着(スケール剥離性の低下)を招き、スケール起因の疵が増加するため、本発明においては上限を2.5%とする。特に、耐食性とともに溶接性や母材および継手靭性への要求が厳しい鋼の場合は、上限を0.5%とすることが好ましい。
Mnは、鋼の強度確保のために0.1%以上必要である。一方、2%超になると、溶接性の劣化や、粒界脆化感受性を高めて好ましくないため、本発明においてはMnの範囲を0.1〜2%に限定する。なお、C、Mnは耐食性にほとんど影響を及ぼさない元素であるため、特に溶接構造用途で、炭素当量を限定する場合にはC、Mn量で調整することが可能である。
Pは、不純物元素であり、0.03%を超えると、局部腐食進展速度を加速し、かつ、溶接性を劣化させるため、0.03%以下に限定する。特に、0.015%以下にした場合に、耐食性および溶接性に良好な影響を及ぼすため0.015%以下が好ましい。さらに、製造コストは上がるが、耐食性が一層向上するため、Pを0.005%以下にするのがより好ましい。
Sも、不純物元素であり、0.007%を超えると局部腐食進展速度を加速し、かつ、スラッジの生成量を増加させる傾向がある。さらに、機械的性質、特に延性を著しく劣化させるため、0.007%を上限とする。S量は耐食性や機械的性質に対して少ないほど好ましく、0.005%以下が特に好ましい。
Cuは、Mo、Wとともに0.01%以上含有させると、耐全面腐食性だけでなく、耐局部腐食性向上に有効である。さらに、0.03%以上添加すると固体Sの生成抑制にも効果がある。1.5%を超えて含有させると、鋼片の表面割れの助長、継手靭性の劣化等、悪影響も顕在化するため、本発明では上限を1.5%とする。0.5%を超えて添加しても耐食性の向上はほぼ飽和するので、原油油槽底板の局部腐食の進展を抑制する場合は、0.01〜0.5%が好ましい。スラッジ生成抑制効果は、0.2%以上添加するとほぼ飽和するので、原油油槽上甲板に適用する場合は、製造性とのバランスから、0.03〜0.2%未満がより好ましい。
Alは、Cu、並びにMoおよび/またはWとともに添加すると、局部腐食の進展を抑制するのに不可欠な元素である。また、AlNにより母材の加熱オーステナイト粒径微細化に有効な元素である。さらに、固体Sを含む腐食生成物の生成抑制効果も有し有益である。ただし、これらの効果を発揮するためには0.001%以上含有する必要がある。一方、0.3%を超えて過剰に含有すると、粗大な酸化物を形成して延性および靭性を劣化させるため、0.001%〜0.3%の範囲に限定する必要がある。十分な耐食性向上効果、固体Sを含む腐食生成物の生成抑制効果を得るには、0.02%以上の添加がより好ましい。耐食性向上効果は0.1%を超えて添加してもほぼ飽和するので、0.02〜0.10%がより好ましい。
Nは、固溶状態では延性、靭性に悪影響を及ぼすため、好ましくないが、V、AlやTiと結びついてオーステナイト粒微細化や析出強化に有効に働くため、微量であれば機械的特性向上に有効である。また、工業的に鋼中のNを完全に除去することは不可能であり、必要以上に低減することは製造工程に過大な負荷をかけるため好ましくない。そのため、延性、靭性への悪影響が許容できる範囲で、かつ、工業的に制御が可能で、製造工程への負荷が許容できる範囲として下限を0.001%とする。Nは耐食性をやや向上させる効果があるが、過剰に含有すると固溶Nが増加し、延性や靭性に悪影響を及ぼす可能性があるため、許容できる範囲として上限を0.01%とする。
Mo、Wは、局部腐食特性に対してCuと同様、重要な元素であり、0.01%以上のCuとともに含有させることによって、特に局部腐食進展速度低減に顕著な効果を発揮する。MoとWとはほぼ同等の効果を有し、Moは0.01〜0.2%、Wは0.01〜0.5%の範囲で、各々単独あるいは両方を含有させる必要がある。Moは0.01%以上、Wは0.01%以上含有させると耐局部腐食性向上に明確な効果を生じる。一方、Moは0.2%、Wは0.5%を超えて含有させると耐局部腐食性が逆に低下し、かつ溶接性や靭性を劣化させるため、Moは0.01〜0.2%、Wは0.01〜0.5%に限定する。なお、析出物の生成を抑制して固溶Mo、Wを確実に確保するためには、Mo、Wの上限を各々、0.1%、0.05%未満とすることがより好ましい。また、Moは0.01〜0.08%添加した場合、少ない添加量で著しい耐局部腐食性の向上が得られるので、0.01〜0.08%がより好ましい。さらに、製造安定性を考慮すると0.03〜0.07%がより好ましい。また、Wは0.01〜0.05%未満の場合、少ない添加量で著しい耐局部腐食性の向上が得られるので、0.01〜0.05%未満がより好ましい。
上記のMo、Wの範囲は必要条件ではあるが、耐局部腐食性向上効果をより有効に発揮させるためには、含有量を上記範囲とした上で、MoとWの固溶量を一定以上確保する必要がある。すなわち、Mo、Wとが粗大な析出物を形成すると、その周りに該元素の枯渇層を生じ、耐局部腐食性向上効果が損なわれるため、Mo、Wは極力均一に存在する必要がある。固溶状態のMoとWとは耐局部腐食性に対して同等の効果を有するため、両元素の固溶量の合計が0.005%以上あれば耐局部腐食性が大幅に向上する。固溶量の上限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、固溶強化によって強度が上昇するため、適度な強度を経済的に得るためには、両元素の固容量の上限は0.5%以下とすることが好ましい。
なお、本発明における耐局部腐食性向上に有効な固溶Mo、固溶Wとは、全含有量から抽出残渣分析によって求められた析出量を差し引いた量を指す。すなわち、抽出残渣分析では固溶とみなされるようなごく微細な析出物の場合はほぼ固溶状態に準じて均一に鋼中に存在しているとみなせるため耐食性には有効に働く。
以上が、本発明鋼における化学組成に関する基本要件とその限定理由であるが、本発明においては、さらに、諸特性の向上等を目的として選択的に添加してもよい元素に関する限定をする。
先ず、溶接性、溶接継手靭性を特段に考慮する必要がある場合は、式(1)で示す、炭素当量(Ceq.)を0.4%以下とする。
Ceq.=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+W+V)/5・・・(1)
式(1)は、本発明鋼における重要な元素であるWも含んだ炭素当量式で、式(1)の炭素当量が0.4%以下であれば、溶接による熱影響部の硬化が抑制され、耐低温割れ性や溶接熱影響部(HAZ)靭性が確実に向上するため0.4%以下が好ましい。式(1)の炭素当量が0.4%を超えて過大となると、成分の組み合わせによっては、耐低温割れ性やHAZ靭性の劣化、さらにはHAZの対応力腐食割れ特性の劣化も招く恐れがある。炭素当量の下限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、0〜−40℃の低温域で優れた靭性を得るためには、炭素当量の下限は0.36%とすることが好ましい。
Crは、強化元素であり、強度調整のために必要に応じて添加することは可能であるが、Crは、局部腐食進展速度を最も加速する元素であるため、少ないほど好ましく0.1%以上含有させると、原油環境における耐局部腐食性を劣化させ、かつ、固体Sの生成をやや促進する。そのため、本発明においては0.1%以上含有させることは好ましくない。従って、意図的には含有させないか、不可避的または意図的に含有させる場合でも0.1%未満が好ましい。
Ni、Coは、母材やHAZ靭性の向上に有効な元素であり、かつ、Cu、Moを含有する鋼において、耐食性の向上、スラッジ抑制にも効果がある。両元素とも0.1%以上含有させることによって初めて靭性向上や耐食性向上効果が明確に発現する。一方、両元素とも3%を超えて過剰に含有させることは、両元素とも高価な元素であり、経済的に不適当であるのと、溶接性の劣化を招くため、本発明においては、Ni、Coの両者を含有させる場合には0.1〜3%に含有量を限定する。
Sb、Sn、As、Bi、Pbは、各々0.01%以上含有させることによって、局部腐食の進展をさらに抑制する効果を有するため、必要に応じて含有させる場合の下限は0.01%とするが、各々、0.3%を超えて過剰に含有させても効果が飽和するため、他の特性への悪影響の懸念もあり、経済性も考慮して、上限を0.3%とする。0.01〜0.15%がより好ましい。
Nb、V、Ti、Ta、Zr、Bは、微量で鋼の強度を高めるのに有効な元素であり、主に強度調整のために必要に応じて含有させる。各々効果を発現するためには、Nbは0.002%以上、Vは0.005%以上、Tiは0.002%以上、Taは0.005%以上、Zrは0.005%以上、Bは0.0002%以上含有させる必要がある。一方、Nbは0.23%超、Vは0.5%超、Tiは0.2%超、Taは0.5%超、Zrは0.5%超、Bは0.005%超で、靭性劣化が顕著となるため、好ましくない。従って、必要に応じて、Nb、V、Ti、Ta、Zr、Bを含有させる場合は、Nbは0.002〜0.023%、Vは0.005〜0.5%、Tiは0.002〜0.2%、Taは0.005〜0.5%、Zrは0.005〜0.5%、Bは0.0002〜0.005%に限定する。
Mg、Ca、Y、La、Ceは、介在物の形態制御に有効で、延性特性の向上に有効であり、また、大入熱溶接継手のHAZ靭性向上にも有効であり、さらに、Sを固定することによるスラッジ生成抑制効果も弱いながらあるため、必要に応じて含有させる。本発明における各元素の含有量は効果が発現する下限から下限値が決定され、各々、Mg、0.0001%、Caは0.0005%、Yは0.0001%、Laは0.005%、Ceは0.005%を下限値とする。一方、上限値は介在物が粗大化して、機械的性質、特に延性と靭性に悪影響を及ぼすか否かで決定され、本発明では、この観点から上限値を、Mgは0.0015%、Caは0.01%、Y、La、Ceは0.1%とする。Mg、Caは、0.0005%以上添加すると、局部腐食の食孔内の酸性化を抑制する作用をさらに発現するので、Mgは0.0005〜0.0015%、Caは0.0005〜0.1%がより好ましい。
以上が、本発明における化学組成に関する限定理由であるが、さらに、本発明においては、鋼片の性状によっては、必要に応じて、鋼のミクロ偏析状態も規定する。すなわち、耐局部腐食を発現するためには、耐局部腐食性を発現する元素が鋼中に極力均一に分布している必要がある。そのためには、ミクロ偏析の程度が小さいことが好ましい。また、耐局部腐食性発現元素以外でも成分元素の濃度変動があると、それだけで、局部腐食を促進する。そのため、本発明においては、必要に応じて、ミクロ偏析状態も限定する。Mnの偏析状態でミクロ偏析状態をほぼ代表できることから、本発明において、ミクロ偏析状態を規定する場合は、鋼の平均Mn%よりもMnが1.2倍以上濃化しているミクロ偏析部分の面積率を10%以下とする。
ミクロ偏析状態を上記のように限定するのは、元素の濃化が平均よりも1.2倍を超えて顕著に濃化した場合に、負偏析部との濃度差が耐食性の観点から無視できなくなるためで、詳細な実験に基づき、該濃化領域の割合を断面における面積率で10%以下とすることで実質的な悪影響を受けないことを確認し、本発明においては、Mnの濃度で評価して、鋼の平均Mn%よりもMnが1.2倍以上濃化しているミクロ偏析部分の面積率を10%以下とする。ミクロ偏析部分の面積率の下限は小さいほど好ましく、0%が最適である。
なお、ミクロ偏析の測定は、X線マイクロアナライザーにより行い、濃度マップにおいて、Mn濃度が平均Mn濃度の1.2倍以上となる領域の面積率を求める。測定は、鋼の表面から板厚方向に向かって、表面直下から板厚の1/2までの板厚方向の数カ所を鋼表面に直角な板厚断面上で測定し、各位置で本発明の要件を満足する必要がある。
次に、以上の本発明鋼の要件、主に、固溶Mo、W量を確保するためと、ミクロ偏析状態を制御するための鋼の製造方法についての本発明の要件を下記に説明する。ただし、本発明の鋼に関する要件は、その達成手段は問わない。すなわち、本発明の製造方法に限定されるものではない。
本発明においては、主としてMo、Wの固溶量を確保するための製造方法として、(1)加工熱処理によって製造する場合と、(2)熱間圧延後に焼きならしによって製造する場合の、大別して2種類がある。また、ミクロ偏析の制御方法として、(1)と(2)の方法に共通して、熱間圧延前に、(3)拡散熱処理を施すこと、を要件とする。以下に要件をまとめる。
(1)熱間圧延後に加速冷却を行う加工熱処理により製造するに際して、加速冷却の平均冷却速度が5〜100℃/s、加速冷却停止温度が600〜300℃、加速冷却停止後〜100℃までの冷却速度が0.1〜4℃/sであり、かつ、熱間圧延・加速冷却終了後は必要に応じ500℃以下で焼戻しまたは焼鈍を施す。
(2)熱間圧延後、焼きならしにより製造するに際して、焼きならしの加熱温度がAc変態点〜1000℃、700〜300℃の平均冷却速度が0.5〜4℃/s、であり、かつ、必要に応じ焼きならし後は500℃以下で焼戻しまたは焼鈍を施す。
(3)熱間圧延前に、加熱温度が1200〜1350℃、保持時間が2〜100hの拡散熱処理を施す。
先ず、(1)の方法について説明する。
熱間圧延後に加速冷却を行う加工熱処理による製造する場合は、固溶Mo、Wを必要量確保するために、先ず、熱間圧延後の加速冷却を含む冷却条件を規定する必要がある。
加速冷却は水冷等によって行うが、加速冷却の平均冷却速度は5〜100℃/s、該加速冷却の停止温度は600〜300℃、加速冷却停止後の冷却は、加速冷却停止〜100℃まで0.1〜4℃/sで冷却する必要がある。
加速冷却の冷却速度の下限を5℃/sとするのは、該冷却速度が5℃/s未満であると、加速冷却による強度、靭性の向上が明確でないために加速冷却を実施する意義が失われてしまうためと、冷却中にMo、Wが析出物を形成して固溶Mo、Wが確保できない恐れがあるためである。一方、加速冷却の冷却速度は大きいほど、強度の向上、Mo、Wの析出抑制にはより好ましいが、100℃/s超になると、これらに対する効果が飽和する一方で、鋼板の形状が悪化する懸念が増大するため、上限を100℃/sとする。
加速冷却は600〜300℃の範囲で停止する。加速冷却の停止が600℃超であると、加速冷却停止後の冷却速度を本発明範囲としても、加速冷却停止後に、Mo、Wが析出物を形成し、固溶Mo、W量が十分確保されず、固溶Mo、Wが本発明で規定する量を確保された場合に比べて、耐食性が若干損なわれる懸念があるため好ましくない。一方、加速冷却停止温度が300℃未満であると、特に溶接構造物用鋼として必要な靭性レベルを確保することが化学組成によっては困難になるためと、残留応力が大きく、鋼の形状が悪化する可能性が大となるため好ましくない。なお、加速冷却の開始温度は、固溶Mo、W量への影響が加速冷却停止温度に比べて非常に小さいため、特に規定する必要はないが、強度、靭性を劣化させないためには、熱間圧延終了後、すみやかに開始することが好ましい。Ar変態点以上から開始することを目安とすれば、特段の問題を生じない。
さらに、固溶Mo、W量を確実に確保するためには、加速冷却停止後の冷却にも考慮を払う必要がある。すなわち、加速冷却停止〜100℃までの冷却が0.1℃/s未満の徐冷になると、該冷却中にMo、Wが炭窒化物を形成する可能性がある。従って、例えば、鋼の厚さが大きく、空冷では冷却速度が0.1℃/s未満となることが避けられない場合には、シャワー冷却やガス冷却等の手段により冷却速度が0.1℃/s以上となるように制御する必要がある。該冷却速度は大きいほど固溶Mo、Wの確保からは効果が確実であるが、4℃/s超では効果が飽和する一方で、5〜100℃/sに制御する熱間圧延後の加速冷却との差が明確でなくなり、靭性の劣化や残留応力の増大等の悪影響が顕在化する恐れがあるため、本発明では4℃/sを上限とする。
以上の熱間圧延・冷却工程を最終工程とするか、材質調整のために、さらに、焼戻しまたは焼鈍を施すことができるが、焼戻しまたは焼鈍でのMo、Wの析出を抑制して、固溶Mo、W量を確保するためには、焼戻しまたは焼鈍の温度は500℃以下に限定する必要がある。
次に、(2)の方法について説明する。
(2)の方法は焼きならしにより鋼を製造する場合における本発明の方法である。(1)の方法と同様、焼きならし工程において、Mo、Wの析出を抑制して固溶Mo、Wを必要量確保するために、焼きならし条件を種々規定する必要がある。なお、焼きならしの加熱段階でオーステナイト単相化された時点で、それまでの履歴の影響は解消されるため、焼きならしに先立つ熱間圧延の条件は特に問わない。従って、熱間圧延は連続的に圧延する通常圧延でも、制御圧延でも、さらには加速冷却を伴う加工熱処理でも構わない。また、熱間圧延の前後の履歴も特に限定する必要がない。
(2)の方法の基本要件は、熱間圧延後、焼きならしにより製造するに際して、焼きならしの加熱温度をAc3変態点〜1000℃とし、冷却過程における、700〜300℃の平均冷却速度を0.5〜4℃/sとすることにある。
加熱温度がAc3変態点未満であると、焼きならし前に析出していたMo、Wを十分固溶させることができないため耐食性が劣化する。また、組織が不均一となるため、強度、靭性の劣化も招くため好ましくない。また、加熱温度が1000℃超であると加熱オーステナイトが粗大化し、その結果最終的な変態組織の粗大化を招いて靭性劣化が顕著となって好ましくない。そのため、本発明では、焼きならしにおける加熱温度をAc3変態点〜1000℃とする。
通常焼きならしにおいては、加熱・保持後、冷却は空冷によるが、本発明においては、固溶Mo、Wの確保の必要性から、空冷では過度に徐冷となる場合には、手段は問わないが、冷却速度を制御して、700〜300℃の平均冷却速度を0.5〜4℃/sとする必要がある。700〜300℃における平均冷却速度が0.5℃/s未満であると、冷却中にMo、Wが析出物を形成して本発明範囲の固溶Mo、W量を確保できない恐れが大となる。該冷却速度は大きいほど固溶Mo、Wの確保からは効果が確実であるが、4℃/s超では効果が飽和する一方で、靭性の劣化や残留応力の増大等の悪影響が顕在化する恐れがあるため、本発明では4℃/sを上限とする。焼きならしにおいては、(1)の方法におけるような加速冷却を伴わないため、300℃未満の冷却速度は特に問わないが、300〜100℃での平均冷却速度で0.1℃/sを大きく下回る徐冷は好ましくない。
以上の焼きならし工程を最終工程とするか、材質調整のために、さらに、焼戻しまたは焼鈍を施すことができるが、焼戻しまたは焼鈍でのMo、Wの析出を抑制して、固溶Mo、W量を確保するためには、焼戻しまたは焼鈍の温度は500℃以下に限定する必要がある。
最後に、(3)の方法について説明する。(3)の方法は、ミクロ偏析に関する本発明の要件を満足させるための一つの手段であり、その基本要件は、熱間圧延前に、加熱温度が1200〜1350℃、該温度範囲での保持時間が2〜100hの拡散熱処理を施すことにある。拡散熱処理によってミクロ偏析している元素は拡散して、ミクロ偏析部の濃化を低減する。該拡散熱処理において、加熱温度が1200℃未満であると、元素の拡散速度が過小となり、実用的な保持時間では十分な拡散効果が得られない。加熱温度は高いほど拡散速度は大きくなって、偏析低減には有利であるが、加熱オーステナイト粒径が過度に粗大となって、その後の熱間圧延や熱処理の後でも粗大組織が残存して機械的性質に悪影響を残す恐れがあり、また鋼表面の肌荒れを生じる可能性も大となって好ましくない。本発明ではこれらの悪影響が実用的に許容できる観点から、加熱温度の上限を1350℃とする。
拡散熱処理の加熱温度を1200〜1350℃とした場合、ミクロ偏析が十分軽減されるためには、保持時間は2h以上必要である。保持時間は長いほど拡散は進行するが、通常のインゴットまたはスラブのミクロ偏析を前提とした場合には、100h保持すれば十分な拡散熱処理効果が得られるため、経済性も考慮して、本発明においては拡散熱処理の保持時間の上限は100hとする。
1200〜1350℃で2〜100h保持した後の冷却は、特に問わないが、冷却中の拡散効果も期待する場合には冷却は空冷以下の徐冷が好ましい。
なお、本発明では、熱間圧延後では鋼のサイズが大きくなり、実用上、熱間圧延後に拡散熱処理を行うことが熱処理炉の能力上問題になる可能性が大であり、また、拡散熱処理によって一旦粗大化した組織を微細化する必要性から、熱間圧延前に拡散熱処理を行うとしている。ただし、本発明の(2)の方法で、上記問題がなければ、熱間圧延後、焼きならし前に拡散熱処理を施しても効果はいささかも減じない。
次に、本発明鋼からなる原油油槽について述べる。原油油槽の底板、デッキプレート、天井板、側板および骨材の一部または全部に本発明鋼を用いることで、原油油槽中で生じる局部腐食の進展速度を極めて小さくすることができ、原油油槽の補修頻度の低減、安全性の向上が図られる。以下に、本発明鋼を使用した原油油槽の効果について、普通鋼を使用した原油油槽と比較してさらに詳細に説明する。
原油中に含まれる濃厚塩水が底に分離し、油槽の様々な部位で局部腐食が生じる。特に底板や側面では局部腐食は不可避である。本発明鋼を油槽構造に応じて局部腐食が生じる部位あるいは油槽全体に用いることにより、原油油槽の局部腐食進展速度が顕著に低下する。特に、構造上の問題で洗浄が行き届かず、継続的に濃厚塩水に晒される部位に選択的に本発明鋼を用いることで、耐久性に優れ、かつ経済的な原油油槽とすることが可能である。
一般に、原油油槽は定期的な解放検査で局部腐食の位置および深さを検査し、所定の深さ以上の孔食については、肉盛り溶接などによる補修が義務付けられている。それ故、本発明鋼を使用した原油油槽では、定期検査期間が一定間隔の場合、補修が必要な孔食の数が圧倒的に少なくなり、補修にかかるコストおよび時間を大幅に削減することができる。また、仮に検査漏れで成長性の局部腐食が補修されなくとも、普通鋼を使用した原油油槽と比較して、板厚が同じ場合、局部腐食による貫通、原油の漏洩事故に至る確率が低くなり、原油油槽の安全性向上に寄与する。本発明鋼を用いれば、前記の経済面、安全面の優れた原油油槽が、普通鋼を用いる場合と同様の溶接施工性、機械的性質で得られる。加えて、本発明鋼をデッキプレート、天井板に用いることで、デッッキ裏、天井板裏でのスラッジの生成を大幅に抑制でき、スラッジ回収に掛かるコストを低減することも可能となる。
以下に、本発明の効果を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
試作鋼は真空溶解または転炉により溶製し、インゴットまたは鋼片を鋼板に製造した。表1に化学組成、表2に鋼板の製造条件を示す。鋼板の製造は本発明の製造方法の効果を明らかにできるよう、拡散熱処理、熱間圧延、焼きならし、焼戻し、各々条件や組み合わせを変化させている。なお、表2中には、試作した鋼板の固溶Mo、W量、Mnのミクロ偏析状態の測定結果を合わせて示す。固溶Mo、W量は、黒皮を除去した鋼板全厚試料について抽出残渣分析により求めた。ミクロ偏析の測定は、鋼板表面に直角な断面の表面下1mm、板厚の1/4位置、板厚中心部、各々の位置において、X線マイクロアナライザーにより行い、濃度マップにおいて、Mn濃度が平均Mn濃度の1.2倍以上となる領域の面積率を画像解析により求めた。
表3は試作した鋼板の機械的性質(強度、2mmVノッチシャルピー衝撃特性)と溶接性として溶接熱影響部の最高硬さを、表4、表5は耐食性の試験結果を各々示している。なお、表4は主として耐局部腐食性を評価するための試験であり、表5は主として耐全面腐食性とスラッジ生成挙動を評価するための試験である。
鋼板の機械的性質としては、丸棒引張試験、2mmVノッチシャルピー衝撃試験により、強度、靭性を調査したが、試験片は試験片長手方向が圧延報告に直角になる方向で、板厚中心部から採取した。引張試験は室温で行い、2mmVノッチシャルピー衝撃試験は種々の温度で行い、遷移曲線から求めた破面遷移温度を靭性の指標とした。
溶接熱影響部の最高硬さ試験は、JISZ3101に従って、予熱を行わない条件で実施した。
表4の主に耐局部腐食性を評価するための試験条件は下記の通りである。
長さ40mm、長さ40mm、厚さ4mmの試験片を鋼板の板厚1/4位置が試験片の厚さ中心になるように採取した。試験片全面を機械研削し、600番の湿式研磨後、40mm×40mmの表裏面を残して端面を塗料で被覆した。該試験片を、塩酸でpHを0.2に調整した20mass%NaCl水溶液、の2種類の腐食液中に浸漬した。浸漬条件は、液温30℃、浸漬時間24時間〜4週間で実施し、腐食減量を測定し、腐食速度を評価した。該腐食液組成は、実際の鋼構造物で局部腐食が発生する際の環境の条件を模擬したもので、該腐食試験での腐食速度の低減に応じて実環境で局部腐食の進展速度が低減される。
表5の全面腐食性、スラッジ生成挙動を調査するための試験条件は下記の通りである。
長さ40mm、長さ40mm、厚さ4mmの試験片を鋼板の板厚1/4位置が試験片の厚さ中心になるように採取した。試験片全面を機械研削し、600番の湿式研磨後、40mm×40mmの表面を残して裏面と端面を塗料で被覆した。試作鋼の腐食速度、および、固体Sを主体とするスラッジの生成速度は、図6に示す試験装置を用いて評価した。表6には、腐食試験で使用したガスの組成を示す。
ガスは、露点調整水槽2を通して、一定の露点(30℃)に調整した後、試験チャンバー3に送った。腐食試験前に、NaClの付着量が1000mg/m2となるように、試験片4の表面にNaCl水溶液を塗布、乾燥させ、試験チャンバー内の恒温ヒーター板5に水平に設置した。ヒーター制御器6を制御することにより、図6に示すような、20℃×1時間と40℃×1時間の計2時間/サイクルの温度サイクルを与え、試験片表面で乾湿繰り返しが生じるようにした。720サイクル後に腐食減量から腐食速度を、試験片表面に生成した生成物質量からスラッジ生成速度を評価した。なお、生成物は化学分析およびX線分析で、オキシ水酸化鉄(鉄さび)および固体Sであることは予備試験により確認している。
実施例のうち、先ず、機械的性質に関しては、本発明の要件を満足している鋼板番号A1〜A7とA9〜A26の鋼は全て溶接構造用鋼として十分な特性を有していることが表3の結果から明らかである。さらに、溶接性に関して、式(1)で示す炭素当量を0.4%以下とした本発明例の鋼板では溶接熱影響部の最高硬さがビッカース硬さで確実に300以下になっており、良好な溶接性を有していることが明らかである。
なお、鋼板番号A25は、本発明範囲例であるが、同じ組成の本発明例(鋼板番号A1、A11)に比べて固溶Mo量が少ないため、耐局部腐食性が若干劣る。ただし、比較例に比べて耐食性は顕著に優れている。
鋼板番号A26も、化学組成としては本発明を満足しているが、同じ組成の本発明例(鋼板番号A6、A13)に比べて固溶Moと固溶Wの合計量が若干少なく、そのため耐局部腐食性が若干劣る。ただし、比較例に比べて耐食性は顕著に優れている。
表4に示す局部腐食特性、表5に示す全面腐食特性、スラッジ生成量から、ほぼ普通鋼の組成で、本発明の必須元素である、Cu、Mo、Wをいずれも含有していない、比較例の鋼板番号B1に比べて、本発明鋼は、その腐食速度、スラッジ生成速度が、全て約1/4以下に抑制されており、耐食性が著しく向上していることが明白である。特に、表4に示す耐局部腐食性に関しては、本発明例の中でも、ミクロ偏析が少ないか、あるいは拡散熱処理によってミクロ偏析を低減して、鋼の平均Mn%よりもMnが1.2倍以上濃化しているミクロ偏析部分の面積率が10%以下であるものは、一層の耐局部腐食性の向上が図られている。
一方、鋼板番号B1〜B9は、本発明の要件を満足していないため、本発明に比べて耐食性が劣っている比較例である。
すなわち、鋼板番号B1(鋼片番号31)は、局部腐食性およびスラッジ生成抑制に必須なCuおよびMoおよび/またはWのいずれもが含有されておらず、その結果、必然的に固溶Mo、W量も確保できず、耐局部腐食性、全面腐食性、耐スラッジ性、いずれも本発明例に比べて著しく劣る。
鋼板番号B2(鋼片番号32)は、Cuは含有するものの、Mo、Wを含まないため、耐局部腐食性、全面腐食性、耐スラッジ性、いずれも本発明例に比べて著しく劣る。
鋼板番号B3(鋼片番号33)は、Moは含有するものの、Cuを含まないため、本発明の効果を発揮できず、耐局部腐食性、全面腐食性、耐スラッジ性、いずれも本発明例に比べて著しく劣る。
鋼板番号B4(鋼片番号34)は、Cr量が過大なため、耐食性が本発明に比べて劣る。特に、塩分濃度の高い腐食条件(表4における腐食条件(2))では普通鋼に比べても耐局部腐食性の劣化が大きく、好ましくない。
鋼板番号B5(鋼片番号35)は、Pが過剰に含有されているため、耐局部腐食性、全面腐食性、耐スラッジ性、いずれも本発明例に比べて劣る。スラッジの生成量が多くなる傾向にある。
鋼板番号B6(鋼片番号36)は、Sが過剰に含有されているため、耐局部腐食性、全面腐食性、耐スラッジ性、いずれも本発明例に比べて劣る。スラッジの生成量が多くなる傾向にある。
鋼板番号B7(鋼片番号37)は、Alが本発明範囲の下限に満たないため、耐局部腐食性が本発明例に比べて劣る。スラッジの生成量が多くなる傾向にある。
鋼板番号B8(鋼片番号38)は、Alが過剰に含有されているため、耐局部腐食性が本発明例に比べて劣る。スラッジの生成量が多くなる傾向にある。靭性も劣る。
鋼板番号B9(鋼片番号39)は、Moが過剰に含有されているため、耐局部腐食性が本発明例に比べて劣るスラッジの生成量が多くなる傾向にある。また、靭性や溶接性も劣るため好ましくない。
以上の実施例から、本発明によれば、原油を輸送または貯蔵する構成油槽で生じる原油腐食に対して、優れた耐全面腐食性および耐局部腐食性を示し、さらに固体Sを含む腐食生成物(スラッジ)の生成を抑制できることが明白である。
Figure 2009120957
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本発明によれば、原油タンカーの油槽や、地上または地下原油タンクなどの、原油を輸送または貯蔵する構成油槽で生じる原油腐食に対して、優れた耐全面腐食性および耐局部腐食性を示し、さらに固体Sを含む腐食生成物(スラッジ)の生成を抑制できる溶接構造用の原油油槽用鋼、原油油槽を提供することが可能となり、鋼構造物、船舶の長期の信頼性向上、安全性向上、経済性の向上等に寄与する。よって、産業上の本発明の効果は極めて大きい。
1 混合ガス源
2 露点調整水槽
3 試験チャンバー
4 試験片
5 恒温ヒーター板
6 ヒーター制御部

Claims (16)

  1. 質量%で、
    C:0.001〜0.2%、
    Si:0.01〜2.5%、
    Mn:0.1〜2%、
    P:0.03%以下、
    S:0.007%以下、
    Cu:0.01〜1.5%、
    Al:0.001〜0.3%、
    N:0.001〜0.01%、
    を含有し、さらに、
    Mo:0.01〜0.08%、
    W:0.01〜0.5%、
    の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする原油油槽用鋼。
  2. 質量%で、
    式(1)で示される炭素当量(Ceq.)が0.4%以下であることを特徴とする請求項1に記載の原油油槽用鋼。
    Ceq.=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+W+V)/5・・・(1)
  3. 質量%で、Cr:0.1%未満を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の原油油槽用鋼。
  4. 質量%で、さらに、
    Ni:0.1〜3%、
    Co:0.1〜3%、
    の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の原油油槽用鋼。
  5. 質量%で、さらに、
    Sb:0.01〜0.3%、
    Sn:0.01〜0.3%、
    Pb:0.01〜0.3%、
    As:0.01〜0.3%、
    Bi:0.01〜0.3%、
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の原油油槽用鋼。
  6. 質量%で、さらに、
    Nb:0.002〜0.023%、
    V:0.005〜0.5%、
    Ti:0.002〜0.2%、
    Ta:0.005〜0.5%、
    Zr:0.005〜0.5%、
    B:0.0002〜0.005%、
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の原油油槽用鋼。
  7. 質量%で、さらに、
    Mg:0.0001〜0.0015%、
    Ca:0.0005〜0.01%、
    Y:0.0001〜0.1%、
    La:0.005〜0.1%、
    Ce:0.005〜0.1%、
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の原油油槽用鋼。
  8. 鋼の平均Mn%よりもMnが1.2倍以上濃化しているミクロ偏析部分の面積率が10%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の原油油槽用鋼。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の原油油槽用鋼を製造する方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載の成分からなる鋼片を熱間圧延後に加速冷却を行うに際して、平均冷却速度:5〜100℃/s、加速冷却停止温度:600℃〜300℃、加速冷却停止後〜100℃までの冷却速度:0.1〜4℃/sとすることを特徴とする原油油槽用鋼の製造方法。
  10. 請求項9に記載の方法により製造した鋼を500℃以下で焼戻しまたは焼鈍を施すことを特徴とする原油油槽用鋼の製造方法。
  11. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の原油油槽用鋼を製造する方法であって、請求項1〜8のいずれか1項に記載の成分からなる鋼片を熱間圧延後、焼きならしにより製造するに際して、焼きならしの加熱温度:Ac3変態点〜1000℃、700〜300℃の平均冷却速度:0.5〜4℃/sとすることを特徴とする原油油槽用鋼の製造方法。
  12. 請求項11記載の焼きならし後、500℃以下で焼戻しまたは焼鈍を施すことを特徴とする原油油槽用鋼の製造方法。
  13. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の成分からなる鋼片を熱間圧延前に、加熱温度:1200〜1350℃、保持時間:2〜100hの拡散熱処理を施すことを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の原油油槽用鋼の製造方法。
  14. 底板、デッキプレート、側板および骨材の一部または全部が、請求項1〜8のいずれか1項に記載の原油油槽用鋼からなることを特徴とする原油油槽。
  15. 請求項14記載の原油油槽の表面における熱延スケールを機械的または化学的に除去し、地鉄素地を露出したことを特徴とする原油油槽の防食方法。
  16. 熱延スケールを機械的または化学的に除去した後、厚さ10μm以上の塗膜を1層以上形成することを特徴とする請求項15記載の原油油槽の防食方法。
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