JP2016089188A - 厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温靭性、強度及び溶接性に優れた厚鋼板およびその製造方法を提供する。【解決手段】特定の成分組成の鋼素材を加熱する加熱工程と、加熱工程で加熱された鋼素材を粗圧延し、鋼板表面で測定される温度がAr3〜890℃の温度範囲で、累積圧下率が30%以上で制御圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延工程で得られた熱延板を冷却する冷却工程と、冷却工程後に熱延板を再加熱し、鋼板中央の温度がAc3〜Ac3+40℃の条件で焼きならし処理する焼きならし工程と、を有することを特徴とする厚鋼板の製造方法とする。以上の製造工程を経ることにより、フェライト−パーライト組織でフェライト粒度が10.0以上であり、345MPa以上の降伏強さと483MPa以上620MPa以下の引張り強さを有する鋼板となる。【選択図】なし

Description

本発明は、焼ならし処理を経て製造され、低温靭性、強度及び溶接性に優れ、海洋構造物などに使用される厚鋼板およびその製造方法に関し、特に、API 2H Grade50規格を満足する厚鋼板およびその製造方法に関する。なお、ここで、厚鋼板とは板厚が6mmから80mmまでの鋼板をいう。
海洋構造物などに使用される鋼板には母材の強度、低温靭性および溶接性に優れることが要求される。API 2H Grade50には石油掘削リグなどの海洋構造物に使用される鋼板の規格が定められている。それによれば、この規格を満足する鋼板は焼ならし処理を経て製造されることを必須とし、345MPa以上の降伏強さ(YS)および483MPa以上620MPa以下の引張強さ(TS)を有し、−40℃でのシャルピー吸収エネルギー(平均)が41J以上となる低温靭性を有すべきことなどが規定されている。海洋構造物では鋼材表面の腐食反応によって生成する水素や、溶接時に侵入する水素によって、低温割れが発生しやすいため、炭素当量(CeqLR)の上限も規定されている。また、ベイナイトやマルテンサイトなどの硬質な低温変態相は水素の集積サイトとなり、低温割れが発生しやすくなる。このため、API 2H Grade50では、鋼板を焼ならし処理して製造すべきと規定している。
しかし、焼ならし処理を経た鋼板はフェライト−パーライト組織となり、上記の強度を満足させられない場合がある。強度を向上させるために、単純にCあるいはMnを増量しても、これらの元素を増加させると低温靭性が低下しやすくなるため、上記の低温靭性を満足させることができない。
このため、上記の強度および低温靭性を同時に満足させるには、低温靭性に悪影響を及ぼさずに強度を高める効果を有するNiやCuを多量に添加する必要があった。しかし、NiやCuはスラブ表面に疵を作りやすくするため、NiやCuを多量に添加した場合には、スラブの表面疵を手入れにより取り除いてからでなければ、スラブを熱間圧延することができない。スラブ手入れは、手入れのために一旦スラブを冷却する必要があり、また手入れにも時間がかかる。このため、NiやCuを多量に添加した場合には、短納期に対応できない。また、スラブ手入れにコストがかかる上、NiやCuは高価な元素であるので合金コストも嵩む。
合金元素の添加によらずに、強度と低温靭性を両立する手段としては、結晶粒微細化強化がある。結晶粒微細化強化とは、結晶粒径を小さくすると結晶粒界に転位が堆積しやすくなるため強度が上昇する効果により、鋼材を強化する手段である。結晶粒が小さくなると、脆性破壊の破面単位も小さくなるため、結晶粒微細化強化により鋼材を強化した場合には、鋼材の靭性も向上する。
特許文献1には結晶粒微細化効果により、強度と低温靭性に優れた鋼板を製造する方法について記載されている。すなわち、オーステナイトの未再結晶温度以下Ar3変態点以上の温度域において70%以上の累積圧下率を加え、さらに圧延終了後、Ar3変態点以上の温度から(Ar3変態点−100℃)以下350℃以上までの温度域を、20℃/秒以上の冷却速度で制御冷却を行うことにより結晶粒を微細化し、強度と低温靭性に優れた鋼板を製造している。この製造方法は制御圧延と制御冷却を組み合わせた加工熱処理方法、いわゆるTMCP法によるものである。この製造方法ではオーステナイトの未再結晶温度以下での圧延によってオーステナイト結晶粒を伸展させ、オーステナイト結晶粒中に多数の変形帯を導入する。そして、この変形帯およびオーステナイト結晶粒界をフェライトの核発生サイトとし、オーステナイト中に多数導入された核発生サイトから制御冷却中にフェライト変態を起こすことでフェライト結晶粒を微細化する。
しかし、この製造方法では焼きならしを行っておらず、API 2H Grade50の規格を満足しない。また、焼きならし後にも微細なフェライト組織を得る方法については、なんら記載がない。
焼きならし後に微細なフェライト組織を得るには、焼きならし加熱温度をAc3温度の直上(Ac3+10℃以内程度)に厳格に管理すればよい。しかし、加熱炉中で鋼板は表面から加熱されるため、加熱温度をAc3温度の直上に設定すると、鋼板表面近くしかAc3以上に加熱されず、鋼板表面近くしか焼きならしが行われないおそれがある。
特開平11−181519号公報
本発明は、高価でありスラブ疵ができやすくなるCuやNiを添加することなく、焼きならしを経て製造された、345MPa以上の降伏強さ(YS)および483MPa以上620MPa以下の引張強さ(TS)を有し、−40℃でのシャルピー吸収エネルギー(vE−40)が平均41J以上となる低温靭性を有する厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、結晶粒微細化強化を適用することで、CuやNiを添加することなく、所望の強度、靭性を両立する鋼板を焼ならし処理を経て製造することが可能となることを知見した。具体的には以下である。
焼きならし処理後のフェライト粒径を小さくするために、焼きならし加熱中のオーステナイトの結晶粒径をできるだけ小さくする。焼きならしの冷却過程(空冷)において、オーステナイトから変態して生成するフェライトの結晶粒径は、変態前のオーステナイトの結晶粒径の影響をうけ、変態前のオーステナイトの結晶粒径が小さいほど、変態後のフェライトの結晶粒径は小さくなる。
焼きならし加熱中のオーステナイトの結晶粒径を小さくするためには、焼きならし加熱中のオーステナイト結晶粒の成長をできるだけ抑制する必要がある。このために、結晶粒の成長を抑制するNbの添加およびTiNによるオーステナイト結晶粒界のピンニングが有効である。また、焼きならし加熱温度を低下させることも有効である。焼きならしではオーステナイト温度(Ac3温度以上)に加熱する必要がある。このためAc3温度を低下させる元素(Mnなど)を適量添加する。
また、焼きならし加熱中のオーステナイトの結晶粒径を小さくするためには、焼きならし加熱前のフェライト粒径をできるだけ小さくしておく必要がある。フェライト粒径を小さくするために、オーステナイト未再結晶温度域において圧延を行う制御圧延が有効である。
さらに、焼きならし処理後のフェライト粒径を小さくするために、焼きならしの冷却過程(空冷)において、適度に低い温度でフェライト変態が起こることが必要である。高温でフェライト変態が起こるとフェライトが粒成長して、フェライト粒径を小さくすることができない。このため、適度な焼入れ性が必要であり、炭素当量をある程度以上とする必要がある。ただし、焼入れ性が過度に高まると、フェライト以外のベイナイトやマルテンサイトなどの低温変態相が生成してしまう。ベイナイトやマルテンサイトなどの硬質な低温変態相は水素の集積サイトとなり、低温割れが発生しやすくなる。このため、炭素当量の上限も設定する必要がある。
以上の知見に基づき、焼きならし後のフェライト粒径を小さくし結晶粒微細化強化を利用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
[1]質量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.25〜0.60%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.015%以下、S:0.003%以下、Al:0.020〜0.040%、N:0.0040%以下、Cu:0.12%以下、Ni:0.05%以下、Ti:0.005〜0.020%、Nb:0.010〜0.035%を含有し、下記式(1)で表される炭素当量(CeqLR)が0.30以上0.43以下であり、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成と、フェライトとパーライトとからなりフェライト粒度番号が10.0以上である組織とを有し、345MPa以上の降伏強さと483MPa以上620MPa以下の引張り強さを有することを特徴とする厚鋼板。
CeqLR=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 (1)
式(1)中の元素記号は各元素の含有量を意味し、含まない場合は0とする。
[2]質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.1%以下、V:0.1%以下、B:0.0020%以下から選択される少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする[1]に記載の厚鋼板。
[3]質量%で、Zr:0.010%以下、Ca:0.0030%以下から選択される少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の厚鋼板。
[4]質量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.25〜0.60%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.015%以下、S:0.003%以下、Al:0.020〜0.040%、N:0.0040%以下、Cu:0.12%以下、Ni:0.05%以下、Ti:0.005〜0.020%、Nb:0.010〜0.035%を含有し、下記式(1)で表される炭素当量(CeqLR)が0.30以上0.43以下であり、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼素材を加熱する加熱工程と、粗圧延と仕上げ圧延とからなり、前記加熱工程で加熱された鋼素材を粗圧延し、その後、鋼板表面の温度がAr3〜890℃の温度範囲における累積圧延率が30%以上、圧延終了温度がAr3以上となる仕上げ圧延をする熱間圧延工程と、前記熱間圧延工程で得られた鋼板を、鋼板表面の温度で300℃以下にまで冷却する冷却工程と、前記冷却工程後に鋼板を再加熱し、鋼板の板厚中央の温度がAc3〜Ac3+40℃の温度で鋼板を抽出し、その後、空冷する焼きならし工程と、を有することを特徴とする厚鋼板の製造方法。
CeqLR=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 (1)
式(1)中の元素記号は各元素の含有量を意味し、含まない場合は0とする。
[5]前記鋼素材は、質量%でCr:0.5%以下、Mo:0.1%以下、V:0.1%以下、B:0.0020%以下から選択される少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする[4]に記載の厚鋼板の製造方法。
[6]前記鋼素材は、質量%でZr:0.010%以下、Ca:0.0030%以下から選択される少なくとも一種をさらに含有することを特徴とする[4]または[5]に記載の厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、低温靭性、強度及び溶接性に優れた厚鋼板を、低コストで、かつ、短納期で製造することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
<鋼板の成分組成>
まず、鋼板の成分組成について説明する。なお、成分組成の説明において、「%」は「質量%」を意味する。
C:0.10〜0.20%
Cは鋼板の強度を確保するために必要な元素である。また、焼入れ性の向上にも寄与する。所望の強度を得るためには0.10%以上の添加が必要である。しかし、0.20%を越えて含有すると溶接性を損ねるので、その含有量は0.10〜0.20%とする。好ましくは0.13〜0.18%である。
Si:0.25〜0.60%
Siは固溶強化により鋼板の強度を高める元素である。所望の強度を得るためには、0.25%以上の添加が必要である。しかし、Si含有量が0.60%を越えると溶接部の靭性が低下するため、Si含有量は0.60%以下とする。このため、Si含有量は0.25〜0.60%とする。好ましいSi含有量は0.30〜0.50%である。
Mn:1.0〜1.8%
Mnは固溶強化により鋼板の強度を確保するために必要な元素である。また、Mnは焼入れ性を上げる元素でもある。さらに、Ac3変態点を低下させ、焼きならし温度を低下させる元素である。焼きならし温度が低下することにより、焼きならし中のオーステナイト粒の成長を抑止でき、その結果、オーステナイトから変態して生成するフェライトの結晶粒径も小さくなる。このため、所望の強度およびフェライト粒度を確保するためには、Mnは1.0%以上の添加が必要である。しかし、Mnが1.8%を越えて含有すると、溶接性を損ねるので、その含有量は1.0〜1.8%とする。好ましいMn含有量は1.3〜1.6%である。
P:0.015%以下
Pは不可避的不純物として鋼に含有される。Pは母材および溶接部の靭性を低下させるため、鋼板の特性上は、できるだけ低減することが好ましい。しかし、Pの含有量が0.015%以下までは許容できる。このためPの含有量は0.015%以下とする。好ましくは、0.010%以下である。しかし、過度の脱燐は製鋼コストが過剰にかかり、経済性を損なう。このため、Pは0.001%以上とすることが好ましい。
S:0.003%以下
Sは不可避的不純物として鋼に含有される。Sは母材および溶接部の靭性を低下させる。また、SはMnとMnSを形成し、圧延により伸展したMnSはラメラテアを発生させるため、鋼板の特性上は、できるだけ低減することが好ましい。しかし、Sの含有量が0.003%以下までは許容できる。このため、Sの含有量は0.003%以下とする。好ましくは、0.002%以下である。しかし、過度の脱硫は製鋼コストが過剰にかかり、経済性を損なう。このため、Sの含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
Al:0.020〜0.040%
Alは鋼の脱酸のため添加する。この目的のためには、Alは0.020%以上の添加が必要である。しかし、Alの含有量が0.040%を超えるとスラブ表面疵が発生しやすくなるため、Alの含有量は0.040%以下とする。このため、Alの含有量は0.020%〜0.040%とする。
N:0.0040%以下
Nは不可避的不純物として鋼に含有される。Nは母材および溶接部の靭性を低下させる。しかし、Nの含有量が0.0040%以下であれば、これらの悪影響は許容できる。このため、Nの含有量は0.0040%以下とする。しかし、Nの含有量を完全に0にすることは、製鋼プロセス上不可能であり、Nの含有量は、実際上は0.0015%程度以上である。また、NはTiとTiNを形成し、TiNはオーステナイト結晶粒界をピンニングして、オーステナイトの結晶成長を抑制する。このため、Nの含有量は0.0015%以上とすることが好ましい。
Cu:0.12%以下
Cuは本発明では積極的に添加しない。しかし、Cuは製鋼原料のスクラップに含まれているため、鋼に混入してくる。Cuはスラブ疵を発生させやすくするため、少ないほど好ましいが、Cu含有量が0.12%以下であれば許容できる。このため、Cuは0.12%以下に制限する。
Ni:0.05%以下
Niは本発明では積極的に添加しない。しかし、Niは製鋼原料のスクラップに含まれているため、鋼に混入してくる。Niはスラブ疵を発生させやすくするため、少ないほど好ましいが、Ni含有量が0.05%以下であれば許容できる。このため、Niは0.05%以下に制限する。
Ti:0.005〜0.020%
TiはNとTiNを形成し、TiNはオーステナイト結晶粒界をピンニングして、オーステナイトの結晶成長を抑制する。この効果を得るために、Ti含有量を0.005%以上にすることが必要である。しかし、Ti含有量が0.020%を越えるとTiNが粗大化にして溶接部の靭性を低下させる。このため、Ti含有量を0.020%以下にすることが必要である。したがって、Ti含有量は0.005〜0.020%とする。好ましいTi含有量は0.006〜0.014%である。
Nb:0.010〜0.035%
Nbはオーステナイト再結晶温度を上昇させ、圧延中のオーステナイトの再結晶を抑制する元素である。Nb添加により、仕上げ圧延後のオーステナイト結晶粒を微細化するとともに、オーステナイト結晶粒中に多数の変形帯を導入し、冷却後のフェライト結晶粒を微細化する元素である。また、焼きならし加熱中のオーステナイトの結晶成長を抑制する。上記効果を得るために、Nb含有量を0.010%以上にすることが必要である。しかし、Nb含有量が0.035%を越えると、溶接熱影響部の靭性が低下するため、Nb含有量は0.035%以下にすることが必要である。したがって、Nb含有量は0.010〜0.035%とする。好ましいNb含有量は0.015〜0.025%である。
上記必須成分以外に、本発明の鋼板は、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.1%以下、V:0.1%以下、B:0.0020%以下から選択される少なくとも一種、および/または、Zr:0.010%以下、Ca:0.0030%以下から選択される少なくとも一種、をさらに含有することができる。
Cr:0.5%以下
Crは焼入れ性を上げフェライト変態温度を低下させる元素である。上記効果を得るためには、Cr含有量を0.01%以上にすることが好ましい。しかし、Cr含有量が0.5%を越えると過度に焼入れ性が高まり、ベイナイトなどの低温変態相が生成しやすくなる。また、Crを多量に添加すると合金コストが嵩む。このため、Cr含有量は0.5%以下とする。好ましくは、Cr含有量は0.1%以下である。
Mo:0.1%以下
Moは焼入れ性を上げフェライト変態温度を低下させる元素である。また、焼き戻し脆化を防止する元素でもある。上記効果を得るためには、Mo含有量を0.01%以上にすることが好ましい。しかし、Mo含有量が0.1%を越えると過度に焼入れ性が高まり、ベイナイトなどの低温変態相が生成しやすくなる。また、Moは高価な元素であるため合金コストが嵩む。このため、Mo含有量は0.1%以下とする。好ましくは、Mo含有量は0.05%以下である。
V:0.1%以下
Vは炭化物を形成し強度を上昇させる元素である。また、Vは焼入れ性を上げフェライト変態温度を低下させる元素である。上記効果を得るために、V含有量を0.01%以上にすることが好ましい。しかし、V含有量が0.1%を越えると過度に焼入れ性が高まり、ベイナイトなどの低温変態相が生成しやすくなる。また、Vは高価な元素であるため合金コストが嵩む。このため、V含有量は0.1%以下とする、好ましくは、V含有量は0.05%以下である。
B:0.0020%以下
Bはオーステナイト粒界に偏析してフェライト変態を遅らせる効果がある元素である。上記効果を得るために、B含有量を0.0001%以上にすることが好ましい。しかし、B含有量が0.0020%を超えるとフェライト変態が遅れすぎ、ベイナイトなどの低温変態相が生成やすくなる。このため、B含有量は0.0020%以下とする。好ましくは、B含有量は0.0003%以下である。
Zr:0.010%以下
Zrは硫化物の形態制御により母材および溶接部の靭性を高める元素である。上記効果を得るために、Zr含有量を0.001%以上にすることが好ましい。しかし、Zr含有量が0.010%を越えると溶接部の靭性が低下するため、Zr含有量は0.010%以下とする。好ましいZr含有量は0.005%以下である。
Ca:0.0030%以下
Caは硫化物の形態制御により母材および溶接部の靭性を高める元素である。上記効果を得るためにCa含有量を0.0010%以上にすることが好ましい。しかし、Ca含有量が0.0030%を越えると溶接部の靭性が低下するため、Ca含有量は0.0030%以下とする。好ましいCa含有量は0.0020%以下である。
CeqLR:0.30〜0.43
上記必須成分、任意成分の含有量に基づき、下記式(1)を用いて算出した炭素当量(CeqLR)を0.30〜0.43とする。CeqLRが0.30未満であると焼入れ性が低すぎ、フェライト変態が高温で開始するため、焼きならしの冷却過程でフェライト結晶粒が成長し、所望のフェライト粒度とすることができない。このため、CeqLRは0.30以上とする。好ましくは0.35以上である。また、CeqLRが0.43を超えると焼入れ性が高すぎ、焼きならしの冷却過程でベイナイトなどの低温変態相が生成しやすくなる。また、溶接部の硬さが高まり、低温割れが発生しやすくなる。このため、CeqLRは0.43以下とする。好ましくは0.42以下である。
CeqLR=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 (1)
式(1)中の元素記号は各元素の含有量を意味し、含まない場合は0とする。
上記の必須成分、任意成分以外の残部はFe及び不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えば、O:0.0020%以下、As:0.004%以下、Sn:0.001%以下、Co:0.015%以下を挙げることができる。
<鋼板の組織>
組織:フェライト−パーライト
本発明の鋼板の組織はフェライトとパーライトとからなる。鋼板の組織をフェライトとパーライトとするのは、ベイナイトやマルテンサイトなどの低温変態相では転位密度が高く、水素の集積サイトとなりやすいからである。海洋構造物では、腐食反応によって生成した水素が鋼材中を拡散し、水素の集積サイトに集積して水素割れを起こしやすい。このため、海洋構造物に用いられる本発明の鋼板はフェライトとパーライトとからなる組織とする。本発明の鋼板は、フェライトとパーライト以外の、ベイナイトやマルテンサイトなどの低温変態相を含まない。
フェライト粒度番号:10.0以上
フェライト粒度番号はJIS G 0551(2013)に準拠して測定される。粒度番号が大きいほど、平均結晶粒径は小さくなる。フェライト粒度番号が10.0未満のフェライト粒度であると、平均結晶粒径が大きく、結晶粒微細化強化による強化が少なく、所望の強度を得ることができない。このため、本発明の鋼板のフェライトは粒度番号10.0以上の粒度とする。
<厚鋼板の製造方法>
本発明の厚鋼板の製造方法は、加熱工程と、熱間圧延工程と、冷却工程と、焼きならし工程とを有する。以下、各工程について説明する。
加熱工程
鋼素材の製造方法は、常用の方法がいずれも適用でき、とくに限定する必要はないが、上記した組成の溶鋼を、転炉、電気炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法で、所定寸法のスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なおスラブの厚みは通常200〜300mm程度である。
本発明では、鋼素材の表面疵が発生しない成分組成としている。このため、得られた鋼素材は、表面手入れのために室温まで冷却する必要はない。したがって、鋼素材は、熱片(鋼素材の表面温度が300〜500℃程度)の状態で加熱炉に挿入し加熱を行った後に直ちに圧延することができる。また、得られた鋼素材を、一旦、室温まで冷却し、冷片(鋼素材の表面温度が室温程度)としても、生産効率は低下するが鋼板の特性上は問題ない。冷片とした場合も、加熱炉に挿入し加熱を行った後に熱間圧延を施す。
鋼素材を加熱する場合には、熱片、冷片のいずれからの加熱であっても、加熱温度は1000〜1200℃とすることが好ましい。加熱温度が1000℃未満であると、鋳造後の冷却過程で析出したTiを含む炭窒化物および硫化物が十分に溶解せず、次の熱間圧延工程で、オーステナイト結晶粒の成長を抑制する微細なTiNが析出しにくい。このため、次の熱間圧延工程において制御圧延を行っても結晶粒径を十分に小さくできなくなるおそれがある。このため、加熱温度が1000℃以上とすることが好ましい。しかし、加熱温度が1200℃以上となるとオーステナイト結晶粒が粗大になり、次の熱間圧延工程において制御圧延を行っても結晶粒径を十分に小さくできなくなるおそれがある。このため、加熱温度は1200℃以下とすることが好ましい。
熱間圧延工程
熱間圧延工程は粗圧延と仕上げ圧延とからなり、上記加熱工程で加熱された鋼素材を粗圧延し、該粗圧延後の鋼板をオーステナイト未再結晶温度域で仕上げ圧延する工程である。
粗圧延は、スラブを仕上げ圧延が行える所定の厚みの鋼板にするために行う。粗圧延の圧延条件は特に規定しない。粗圧延後の鋼板の厚みは、次工程の仕上げ圧延における圧下率と製品板厚から決まるが、通常は60〜100mm程度である。
仕上げ圧延では、Ar3〜890℃の温度範囲における累積圧下率が30%以上で圧延する。仕上げ圧延は、オーステナイトの未再結晶温度域で圧延を行う制御圧延とする。制御圧延はオーステナイト結晶粒を再結晶させることなく圧延し、オーステナイト結晶粒中にフェライト変態の核となる変形帯を多数導入するために行う。
このため、仕上げ圧延では、本発明の鋼組成においてオーステナイト未再結晶温度域である890℃以下の温度から仕上げ圧延終了までの累積圧下率が30%以上となるように行う。また、仕上げ圧延終了温度はAr3以上とする。Ar3を下回る温度で圧延を行うと、圧延中にフェライト変態が開始して組織の一部がフェライトとなるため、冷却後の鋼板の組織が粗大なフェライト粒を含む混粒組織となる。このため、この鋼板を焼きならししても、所望の微細フェライト組織を得ることができなくなる。このため仕上げ圧延の終了温度はAr3以上の温度とする。Ar3はオーステナイト温度領域から冷却した際の熱膨張曲線から測定したフェライト変態の開始温度を意味する。なお、上記の仕上げ圧延における鋼板温度、仕上げ圧延終了温度は鋼板表面で測定される温度である。
また、Ar3〜890℃の温度範囲における累積圧下率は30%以上とする。この累積圧下率が30%未満であるとオーステナイト結晶粒中にフェライト変態の核となる変形帯を十分に導入することができず、仕上げ圧延−冷却後のフェライト結晶粒径を十分に小さくできなくなる。このため、Ar3〜890℃の温度範囲における累積圧下率は30%以上とする。なお、この累積圧下率が50%を超えると過剰に圧延荷重が高まり圧延効率が低下するため、累積圧下率は50%以下とすることが好ましい。
冷却工程
冷却工程とは、熱間圧延工程で得られた鋼板を冷却する工程である。冷却条件は特に限定されないが、焼きならしの前に、フェライト変態(またはその他の低温変態相への変態)が完了している必要があるため、焼きならしのために再加熱する前には、鋼板表面温度が300℃以下となっていることが必要である。より好ましくは200℃以下である。フェライト変態は500℃程度で完了するため、鋼板表面温度が300℃以下になっていれば、冷却時に最も温度が高くなる鋼板の板厚中央でもフェライト(または、その他の低温変態相)に変態している。
冷却速度は特に定めないが、冷却速度が小さく、冷却後の鋼板組織が粗大なフェライト−パーライト組織となると、その後の焼きならしによっても、結晶粒径が微細で均一なフェライト−パーライト組織とすることができなくなる。このため冷却速度は0.1℃/s以上であることが好ましい。なお、この冷却速度は鋼板の板厚中央の温度で仕上げ圧延の終了(仕上げ圧延の終了時の板厚中央の温度が800℃を超えている場合は800℃)から500℃の温度範囲における平均冷却速度である。また、冷却速度が大きく、ベイナイトやマルテンサイトが生成したとしても、次の焼きならし工程を経ることで、鋼板組織はフェライト−パーライトになるため、冷却速度の上限は特に定めない。したがって、生産効率を上げるため、水冷によって鋼板を加速冷却してもよい。
焼ならし工程
焼ならし工程とは、冷却工程後、鋼板表面温度が300℃以下にまで温度が低下し、フェライト(または、その他の低温変態相)組織となっている鋼板を再加熱し、鋼板をオーステナイトに変態させ、その後、空冷し、オーステナイトから、再びフェライト−パーライト組織に変態させる工程である。
焼ならし工程では、鋼板の板厚中央の温度がAc3〜Ac3+40℃となるまで、鋼板を加熱し、その後、鋼板を加熱炉より抽出し鋼板を空冷する。鋼板の板厚中央の温度がAc3以上であることは、冷却工程後、フェライト(またはベイナイトあるいはマルテンサイト)組織となっている鋼板組織を再びオーステナイトに変態させるために必要である。加熱炉中で鋼板は表面から加熱されるため、板厚中央が加熱時の鋼板中で最も温度が低い。したがって、鋼板全体をオーステナイトに変態させるためには、鋼板の板厚中央の温度がAc3以上でなければならない。また、鋼板の板厚中央の温度がAc3+40℃を超えると、オーステナイト結晶粒が粗大になり、焼きならしの冷却過程においてオーステナイトからフェライトへ変態したあとのフェライト粒径が大きくなり、所望のフェライト粒度が得られなくなる。好ましい焼きならし温度はAc3〜Ac3+20℃である。なお、ここで焼きならし温度とは、加熱炉から厚鋼板を取り出すときの鋼板の板厚中央の温度(抽出温度)を意味する。鋼板の板厚中央の温度は加熱炉の設定温度から伝熱計算によって求められる温度である。焼きならし加熱の時間は短いほど好ましく、鋼板の板厚中央の温度が、設定した抽出温度に達したら直ちに鋼板を抽出することが好ましい。抽出温度に達してから、さらに加熱し続けることはオーステナイト結晶粒の成長を招き好ましくない。焼きならし加熱時間は、鋼板の板厚中央の温度がAc3に達してから、加熱炉から厚鋼板を抽出するまでの時間である。このため、焼きならし加熱時間は、20分以内にすることが好ましく、より好ましくは10分以内である。なお、Ac3はフェライト温度領域から加熱した際の熱膨張曲線から測定したオーステナイト変態の終了温度を意味する。
鋼板を加熱炉より抽出した後は、空冷により室温まで冷却する。冷却速度は特に定めないが、冷却速度が小さく、冷却後の鋼板組織が粗大なフェライト−パーライト組織となると、所望のフェライト粒度のフェライト−パーライト組織とすることができなくなる。このため、冷却速度は0.1℃/s以上、好ましくは0.3℃/s以上とする。また、冷却速度が大すぎると、ベイナイトなどの低温変態相が生成し、フェライト−パーライト組織とすることができなくなる。このため、冷却速度は5℃/s以下、好ましくは2℃/s以下とする。なお、この冷却速度は鋼板の板厚中央の温度で800℃から500℃の温度範囲における平均冷却速度である。
表1に示す成分組成を有する鋼スラブを、表2に示す条件で加熱し、熱間圧延し、冷却し、焼きならしを行った。なお、鋼スラブは連続鋳造法で製造し、鋼スラブの厚みは250mmである。鋼スラブは、表面手入れを行うことなく、表面温度で300〜500℃の熱片の状態で、加熱炉に挿入した。
Figure 2016089188
Figure 2016089188
上記の方法で製造した、鋼板について、表面疵の有無、組織観察、引張特性と靭性の評価を行った。評価方法は以下の通りであり、結果を表3に示した。
[表面疵の有無]
鋼板の表面疵の有無は検査員の目視観察により判定した。鋼板表面に1箇所でも疵が検出されたら不合格とした。
[組織観察、フェライト結晶粒度測定]
鋼板の圧延方向断面を観察面とするように組織サンプルを採取し、観察面を鏡面まで研磨した後、3vol%ナイタールにより腐食し組織を現出させた。板厚1/4位置において光学顕微鏡により400倍で写真を撮影し、組織の種類を同定した。さらにJIS G551(2013)に準拠してフェライト結晶粒度を測定した。
[引張り特性]
圧延方向に対して90°方向(C方向)にJIS1A号引張試験片(試験片厚み;板厚全厚、ゲージ長さ;200mm)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度10mm/minで引張試験をおこない、降伏応力(YS)、引張強度(TS)を測定した。345MPa以上の降伏強さ(YS)および483MPa以上620MPa以下の引張強さ(TS)であるものを合格とした。
[低温靭性]
各鋼板の板厚1/2位置の圧延方向と垂直な方向から、JIS Z 2202(1998年)の規定に準拠してVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242(1998年)の規定に準拠して各鋼板について−40℃で3本のシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度−40℃での吸収エネルギーを求め、靭性を評価した。3本の吸収エネルギーの平均(vE−40)が41J以上であるものを合格とした。
Figure 2016089188
鋼板No.1〜6、および13〜16は本発明例である。いずれも、表面疵がなく、所望のYS、TS、低温靭性を有していた。
鋼板No.7、8はAr3〜890℃の温度範囲における累積圧延率が本発明の範囲を下回る比較例である。いずれも、フェライト粒度が本発明の範囲未満であり、YSが目標値を下回っていた。
鋼板No.9は仕上げ圧延終了温度がAr3未満である比較例である。Ar3を下回る温度で圧延されたため、圧延中に一部がフェライト変態し、粗大なフェライトが生成した。このため、焼きならし後もフェライト粒径が小さくならず、フェライト粒度が本発明の範囲を満足しなかった。その結果、目標のYSを下回った。
鋼板No.10は焼きならし加熱前の温度が本発明の範囲を超える温度である比較例である。鋼板の温度が十分に下がっていないので、鋼板の板厚中央付近ではフェライト変態が完了しておらず、オーステナイトが残留していた。オーステナイトの部分は焼きならし加熱によって変態しないので結晶粒が細粒化しない。このためフェライト粒度が本発明の範囲を満足せず、目標のYSを下回っていた。
鋼板No.11は焼きならし温度が本発明の範囲を下回る温度である比較例である(焼きならしとは、オーステナイト温度(Ac3以上)に加熱し、その後空冷する熱処理を言う。このため、この例は加熱温度がAc3未満であるので、正確には焼きならしではない。便宜的に「焼きならし温度」が本発明の範囲を下回るとしている)。この比較例では、Ac3の直下に加熱されて、焼き戻されたため、フェライト粒が粗大になり、フェライト粒度が本発明の範囲を満足しなかった上、強度が著しく低下し、目標のYS、TSを下回った。
鋼板No.12は焼きならし温度が本発明の範囲を上回る比較例である。焼きならし温度が高すぎるため、焼きならし加熱中にオーステナイト結晶粒が成長し粗大になった。このため、焼きならし後にフェライト変態しても、フェライト粒径が小さくならず、フェライト粒度が本発明の範囲を満足しなかった。このため、目標のYSを下回った。
鋼板No.17(鋼G)は鋼のCeqLRが本発明の範囲を超える比較例である。CeqLRが高すぎるため、焼きならし後の冷却において一部がベイナイト変態し、鋼板組織中にベイナイトが生成した。ベイナイトは低温割れが発生しやすく、海洋構造物用鋼板である本発明の鋼板としては不適である。
鋼板No.18(鋼H)は鋼中のCu、Ni含有量が本発明の範囲を超える比較例である。Cu、Niの含有量が多すぎるため、スラブ表面に疵が発生した。スラブ手入れを行ってスラブ表面疵を取り除いていないため、鋼板の表面に疵が発生した。
鋼板No.19(鋼I)は鋼のCが本発明の範囲を超え、このためCeqLRが本発明の範囲を超える比較例である。CeqLRが高すぎるため、焼きならし後の冷却において一部がベイナイト変態し、鋼板組織中にベイナイトが生成した。ベイナイトは低温割れが発生しやすく、海洋構造物用鋼板である本発明の鋼板としては不適である。
鋼板No.20(鋼J)は鋼中のMn含有量が本発明の範囲を下回る比較例である。Mn含有量が少なすぎるため、Ac3温度が高く、焼きならし温度を高くしなければならなかった。このため、オーステナイト結晶粒が焼きならし加熱中に成長して粗大になった。その結果、フェライト粒径が小さくならず、フェライト粒度が本発明の範囲を満足しなかった。このため目標のYSを下回っていた。
鋼板No.21(鋼K)は鋼のCeqLRが本発明の範囲を下回る比較例である。CeqLRが低すぎるため、フェライト変態が高温で起こる。このため、フェライト粒径が小さくならず、フェライト粒度が本発明の範囲を満足しなかった。このため目標のYSを下回っていた。
鋼板No.22(鋼L)は鋼のC含有量が本発明の範囲を下回る比較例である。C含有量が低すぎるため、目標のYS、TSを下回っている。
鋼板No.23(鋼M)は鋼のTi含有量が本発明の範囲を下回る比較例である。Ti含有量が低すぎるため、焼きならし加熱中のオーステナイト結晶粒の成長を抑えられなかった。このため、オーステナイト結晶粒が焼きならし加熱中に成長して粗大になり、フェライト粒度が本発明の範囲を満足せず、目標のYSを下回っていた。
鋼板No.24(鋼N)は鋼のNb含有量が本発明の範囲を下回る比較例である。Nb含有量が低すぎるため、焼きならし加熱中のオーステナイト結晶粒の成長を抑えられなかった。このため、オーステナイト結晶粒が焼きならし加熱中に成長して粗大になり、フェライト粒度が本発明の範囲を満足せず、目標のYSを下回っていた。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.25〜0.60%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.015%以下、S:0.003%以下、Al:0.020〜0.040%、N:0.0040%以下、Cu:0.12%以下、Ni:0.05%以下、Ti:0.005〜0.020%、Nb:0.010〜0.035%を含有し、
    下記式(1)で表される炭素当量(CeqLR)が0.30以上0.43以下であり、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成と、
    フェライトとパーライトとからなりフェライト粒度番号が10.0以上である組織とを有し、345MPa以上の降伏強さと483MPa以上620MPa以下の引張り強さを有することを特徴とする厚鋼板。
    CeqLR=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 (1)
    式(1)中の元素記号は各元素の含有量を意味し、含まない場合は0とする。
  2. 質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.1%以下、V:0.1%以下、B:0.0020%以下から選択される少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板。
  3. 質量%で、Zr:0.010%以下、Ca:0.0030%以下から選択される少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載の厚鋼板。
  4. 質量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.25〜0.60%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.015%以下、S:0.003%以下、Al:0.020〜0.040%、N:0.0040%以下、Cu:0.12%以下、Ni:0.05%以下、Ti:0.005〜0.020%、Nb:0.010〜0.035%を含有し、
    下記式(1)で表される炭素当量(CeqLR)が0.30以上0.43以下であり、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼素材を加熱する加熱工程と、
    粗圧延と仕上げ圧延とからなり、前記加熱工程で加熱された鋼素材を粗圧延し、その後、鋼板表面の温度がAr3〜890℃の温度範囲における累積圧延率が30%以上、圧延終了温度がAr3以上となる仕上げ圧延をする熱間圧延工程と、
    前記熱間圧延工程で得られた鋼板を、鋼板表面の温度で300℃以下にまで冷却する冷却工程と、
    前記冷却工程後に鋼板を再加熱し、鋼板の板厚中央の温度がAc3〜Ac3+40℃の温度で鋼板を抽出し、その後、空冷する焼きならし工程と、を有することを特徴とする厚鋼板の製造方法。
    CeqLR=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 (1)
    式(1)中の元素記号は各元素の含有量を意味し、含まない場合は0とする。
  5. 前記鋼素材は、質量%でCr:0.5%以下、Mo:0.1%以下、V:0.1%以下、B:0.0020%以下から選択される少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項4に記載の厚鋼板の製造方法。
  6. 前記鋼素材は、質量%でZr:0.010%以下、Ca:0.0030%以下から選択される少なくとも一種をさらに含有することを特徴とする請求項4または5に記載の厚鋼板の製造方法。
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