JP2009120460A - シリコンの精製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】坩堝の内壁に堆積物が付着するのを抑止して不純物であるホウ素を効率的に除去することができるシリコンの精製方法を提供する。
【解決手段】溶融シリコンに二酸化ケイ素を含む第1のフラックスを添加した後に第1のフラックスから生成した第1のスラグを溶融シリコンと分離する第1の精製工程と、溶融シリコンに二酸化ケイ素を含まない第2のフラックスを添加した後に第2のフラックスから生成した第2のスラグを溶融シリコンと分離する第2の精製工程とを含むシリコンの精製方法である。
【選択図】図4
【解決手段】溶融シリコンに二酸化ケイ素を含む第1のフラックスを添加した後に第1のフラックスから生成した第1のスラグを溶融シリコンと分離する第1の精製工程と、溶融シリコンに二酸化ケイ素を含まない第2のフラックスを添加した後に第2のフラックスから生成した第2のスラグを溶融シリコンと分離する第2の精製工程とを含むシリコンの精製方法である。
【選択図】図4
Description
本発明は、シリコンの精製方法に関し、特に、金属級シリコン等の比較的不純物を多く含む原料シリコンから太陽電池用シリコンを製造する場合に、原料シリコンに含まれる不純物であるホウ素を除去するためのシリコンの精製方法に関する。
太陽電池用シリコンの原料としては、これまでシリコンウエハ製造などの半導体プロセスで発生するスクラップシリコンが主に用いられてきた。しかしながら、近年の太陽電池の需要の急速な伸びにより、スクラップシリコンの供給が追いつかず、太陽電池用シリコンの不足が起きている。
これに対し、比較的安価に得られる金属級シリコン(純度は通常98.0〜99.5%程度)を冶金プロセスによって精製することにより太陽電池を製造しようという試みがある。
金属級シリコンに含まれる不純物としては、鉄、アルミ等の金属ならびに、炭素、リンおよびホウ素等があるが、これらの不純物のうちホウ素は、(I)蒸気圧が低いため単純な真空除去ができない、(II)偏析係数(固相シリコン中の不純物濃度/液相シリコン中の不純物濃度)が1に近いため一方向凝固では分離しにくいという理由により特に除去しづらいことが知られている。
そのため、金属級シリコンを溶融して得られた溶融シリコンからホウ素を除去する方法(シリコンの精製方法)が各種提案されてきた。これらのシリコンの精製方法は主としてスラグを用いる方法とプラズマ(あるいはアークや電子ビーム)を用いる方法とに分類できるが、スラグを用いる方法はプラズマ(あるいはアークや電子ビーム)を用いる方法と比べて装置が簡便となるためコスト的に有利である。
このようなスラグを用いるシリコンの精製方法としては、たとえば特許文献1には、フッ化カルシウムと酸化カルシウムと二酸化ケイ素との混合物から生成したスラグを使用した方法が開示されている。また、特許文献2には、二酸化ケイ素とアルカリ金属の炭酸塩との混合物から生成したスラグを使用するシリコンの精製方法が開示されており、特許文献3には、特許文献2と同様の構成の混合物をキャリアガス(アルゴンガス)とともに溶融シリコン中に吹き込むシリコンの精製方法が開示されている。
上記の特許文献1〜3の記載から明らかなように、スラグを用いたシリコンの精製方法におけるホウ素の除去には二酸化ケイ素(SiO2)を含むスラグが広く用いられてきた。特に、特許文献2には、二酸化ケイ素によるホウ素の除去効果について詳しく述べられている。すなわち、同一の精製装置や精製条件の下で比較すれば、アルカリ金属の炭酸塩またはその水和物を単独でスラグ化して用いるよりも、それらと二酸化ケイ素の混合物をスラグ化して使用した方がホウ素の除去効率が向上するというものである。
特開昭56−32319号公報
特開2005−247623号公報
特開2006−193346号公報
しかしながら、溶融シリコン中で二酸化ケイ素を含む混合物を溶融してスラグを生成した場合には、二酸化ケイ素の融液は溶融シリコンよりも粘性が高いため、二酸化ケイ素の融液が溶融シリコンを収容する坩堝の内壁に付着して堆積物を生成することがわかった。また、その堆積物は坩堝の内壁から剥がれにくく、坩堝の内壁に堆積していく場合があることがわかった。
この二酸化ケイ素を主成分とする堆積物(以下、単に「堆積物」と表記する)は坩堝の内壁全体に付着するが、特に溶融シリコンの液面近傍に著しく多量に付着する。
この堆積物の付着は、二酸化ケイ素を含む混合物の添加を繰り返すたびに進行する。そして、この堆積物が坩堝の内壁に堆積していくと、(a)坩堝の容積が減り、精製処理できるシリコン量が減少する、(b)坩堝の内壁に余計な構造物ができるため、誘導加熱等の坩堝外から加熱のためのエネルギーを投入する場合に、シリコンの加熱の効率が下がる、(c)坩堝を傾けて出湯する際の障害となり、設計量の溶融シリコンが出湯できなくなる等の問題が発生する。そのため、最終的には坩堝を廃棄し、新たな坩堝と交換する必要が生じる。
なお、このような堆積物は、加熱方法が誘導加熱であり、坩堝が誘導加熱により発熱しない材料からなる場合に特に顕著に付着することがわかった。これは、誘導加熱のような加熱方法と坩堝の組み合わせにおいては坩堝自体が加熱されないため、溶融シリコンの出湯時に坩堝の内壁に付着した堆積物が急速に冷却されて凝固するためである。すなわち、一旦凝固した堆積物(特に、その主成分である二酸化ケイ素)は新たに投入された溶融シリコン中で再溶融しにくく、堆積が加速されることになる。
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、坩堝の内壁に堆積物が付着するのを抑止して不純物であるホウ素を効率的に除去することができるシリコンの精製方法を提供することにある。
本発明は、溶融シリコンに二酸化ケイ素を含む第1のフラックスを添加した後に第1のフラックスから生成した第1のスラグを溶融シリコンと分離する第1の精製工程と、溶融シリコンに二酸化ケイ素を含まない第2のフラックスを添加した後に第2のフラックスから生成した第2のスラグを溶融シリコンと分離する第2の精製工程とを含むシリコンの精製方法である。
ここで、本発明のシリコンの精製方法においては、第1の精製工程と第2の精製工程とを行なう順番はどちらが先でも構わないが、第1の精製工程の後に第2の精製工程が行なわれることが好ましい。
また、本発明のシリコンの精製方法においては、第2のフラックスが、アルカリ金属の炭酸塩およびアルカリ金属の炭酸塩の水和物の少なくとも一方からなることが好ましい。
さらに、本発明のシリコンの精製方法においては、第1の精製工程と第2の精製工程とを、それぞれ所定の回数ずつ繰り返すことが好ましい。ここで、「それぞれ所定の回数ずつ繰り返す」とは、第1の精製工程をA回繰り返す工程と第2の精製工程をB回繰り返す工程とを含む精製サイクルをC回繰り返すという意味である(上記のA、BおよびCはそれぞれ自然数である)。
本発明によれば、坩堝の内壁に堆積物が付着するのを抑止して不純物であるホウ素を効率的に除去することができるシリコンの精製方法を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、比較的高いホウ素除去性能を持つが坩堝の内壁に堆積物が付着するという欠点を持つ第1のスラグと、ホウ素除去性能は第1のスラグに劣るものの、坩堝の内壁に堆積物が付着しにくい、あるいは一旦付着した堆積物を減少または消失することが可能な第2のスラグとを組み合わせて用いることにより、坩堝の内壁への堆積物の付着を抑止しつつ、ホウ素の除去が可能となる。
以下、図1〜図4の模式的構成図を参照して、本発明のシリコンの精製方法の一例について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
まず、図1に示すように、加熱装置2を備えた坩堝1に原料シリコン3aを投入し、坩堝1内に収容された原料シリコン3aを加熱装置2によって加熱して溶融させて溶融シリコン3bとする。
ここで、坩堝1としては、たとえば、黒鉛、シリカ、アルミナ、マグネシアまたは炭化ケイ素等の公知材料からなる坩堝を用いることができる。
また、加熱装置2としては、たとえば抵抗加熱または誘導加熱等の公知手法により加熱することが可能な装置を用いることができる。ここで、加熱装置2の加熱方式として誘導加熱を用い、坩堝1が誘導加熱により発熱しない材料からなる組み合わせが、本発明を好ましく適用できる組み合わせとして挙げることができる。
なお、本発明において、「坩堝が誘導加熱により発熱しない材料」は、ほぼ100%のシリカ等の絶縁材料である場合は勿論のこと、たとえば90質量%のアルミナと10質量%の炭素材料からなる坩堝材料のように、誘導加熱によって発熱する材料が10質量%以下(好ましくは5質量%以下)含まれている材料も含む概念である。
次に、図2に示すように、溶融シリコン3bに二酸化ケイ素を含む第1のフラックス4aを添加することによって、第1のフラックス4aが溶融して第1のスラグ4bが生成し、溶融シリコン3bと第1のスラグ4bとを接触させる。これにより、溶融シリコン3bに不純物として含まれるホウ素が第1のスラグ4bに吸収されて溶融シリコン3bが高純度化して精製されるとともに、主に溶融シリコン3bの液面近傍に二酸化ケイ素を主成分とする堆積物6が堆積する。なお、第1のスラグ4bは、一般的には、溶融シリコン3bよりも密度が小さくなるため、溶融シリコン3bの上方に浮かぶことになる。
ここで、溶融シリコン3bに添加する第1のフラックス4aとしては、二酸化ケイ素を含むものであれば特に限定なく用いることができ、たとえば、二酸化ケイ素とアルカリ金属の炭酸塩(たとえば、炭酸ナトリウム等)との混合物を用いることができる。
また、図2においては、第1のフラックス4aを単に溶融シリコン3bの湯面に投入する例を示しているが、第1のフラックス4aを溶融シリコン3bの湯面に投入するとともに、別途、酸化性ガス(水蒸気を含有するアルゴンガス等)を溶融シリコン3bに吹き込んでもよく、あるいは特許文献3に記載されているように第1のフラックス4aをキャリアガス(アルゴンガス等の不活性ガス)とともに溶融シリコン3b中に吹き込んでもよい。
次に、図3に示すように、溶融シリコン3bに第1のフラックス4aの添加を完了してから所定時間経過後(たとえば、5分以上1時間以下)に第1のスラグ4bを坩堝1から排出することによって溶融シリコン3bと第1のスラグ4bとを分離する。
ここで、溶融シリコン3bと第1のスラグ4bとを分離する方法としては、たとえば、坩堝1を傾けて作業者が治具を用いて掻き出す方法等を挙げることができる。なお、図3においては、作業者および治具については図示されていない。
なお、上述した溶融シリコン3bに第1のフラックス4aを添加した後に溶融シリコン3bから第1のスラグ4bを分離する工程(第1の精製工程)は少なくとも1回実施すればよく、複数回繰り返して実施することもできる。
ここで、第1の精製工程の繰り返し回数は、原料シリコン3a中のホウ素濃度、目的とするホウ素濃度、一度に添加する第1のスラグ4bの質量等により様々に異なるが、第1の精製工程の実施回数は、一般的には1回以上7回以下とすることができ、1回以上4回以下とすることが好ましく、1回以上3回以下とすることが特に好ましい。溶融シリコン3bからホウ素を除去する観点からは第1のフラックス4aを溶融シリコン3bに添加する回数は多い方が好ましいが、その回数があまりに多くなりすぎると、坩堝1の内壁に堆積する二酸化ケイ素を主成分とする堆積物6が大きくなりすぎて、後述する堆積物6の除去に必要な第2の精製工程の実施回数が多くなって効率的なシリコンの精製ができなくなってしまうからである。
次に、図4に示すように、溶融シリコン3bに二酸化ケイ素を含まない第2のフラックス5aを添加することによって、第2のフラックス5aが溶融して第2のスラグ5bが生成し、溶融シリコン3bと第2のスラグ5bとを接触させる。これにより、第2のスラグ5bと堆積物6とを接触させることができ、溶融シリコン3bの液面近傍の坩堝1の内壁に堆積していた二酸化ケイ素を主成分とする堆積物6を除去することができる。なお、第2のスラグ5bは、一般的には、溶融シリコン3bよりも密度が小さくなるため、溶融シリコン3bの上方に浮かぶことになる。
ここで、第2のフラックス5aとしては、アルカリ金属の炭酸塩またはアルカリ金属の炭酸塩水和物を単独で、若しくはこれらの複数種を組み合わせて用いることが好ましい。この場合には、坩堝1の内壁に堆積した二酸化ケイ素を主成分とする堆積物6の除去をより効率的に行なうことができる傾向にある。
たとえば、第2のフラックス5aを構成するアルカリ金属の炭酸塩として炭酸ナトリウム(Na2CO3)を用いた場合には、炭酸ナトリウムは溶融シリコン3b中で堆積物6を構成する二酸化ケイ素(SiO2)と下記の反応式(1)の反応を起こして、堆積物6中の二酸化ケイ素を消費するためである。
Na2CO3+SiO2→Na2SiO3+CO2 …(1)
なお、上記の反応式(1)の反応生成物である二酸化炭素(CO2)は気化して坩堝1の外部に排出され、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)は、後述の第2のスラグ5bを溶融シリコン3bと分離する際に第2のスラグ5bとともに排出される。
なお、上記の反応式(1)の反応生成物である二酸化炭素(CO2)は気化して坩堝1の外部に排出され、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)は、後述の第2のスラグ5bを溶融シリコン3bと分離する際に第2のスラグ5bとともに排出される。
次に、溶融シリコン3bに第2のフラックス5aの添加を完了してから所定時間経過後(たとえば、5分以上1時間以下)に第2のスラグ5bを坩堝1から排出することによって溶融シリコン3bと第2のスラグ5bとを分離する。
ここで、溶融シリコン3bと第2のスラグ5bとを分離する方法としては、たとえば、上記と同様に、坩堝1を傾けて作業者が治具を用いて掻き出す方法等を挙げることができる。
なお、上述した溶融シリコン3bに第2のフラックス5aを添加した後に溶融シリコン3bから第2のスラグ5bを分離する工程(第2の精製工程)は少なくとも1回実施すればよく、複数回繰り返して実施することもできる。
ここで、第2の精製工程の繰り返し回数は、目的とするホウ素濃度、一度に添加する第2のスラグ5bの質量、さらには堆積物6の除去状況等により様々に異なるが、第2の精製工程の実施回数は、一般的には1回以上10回以下とすることができ、2回以上7回以下とすることが好ましく、2回以上5回以下とすることが特に好ましい。坩堝1の内壁の堆積物6を除去する観点からは第2のフラックス5aを溶融シリコン3bに添加する回数は多い方が好ましいが、その回数があまりに多くなりすぎると、シリコンの精製効率が悪くなるためである。
本発明においては、上記で例示された溶融シリコン3bへの第1のフラックス4aの添加工程、溶融シリコン3bからの第1のスラグ4bの分離工程、溶融シリコン3bへの第2のフラックス5aの添加工程、および溶融シリコン3bからの第2のスラグ5bの分離工程を含むシリコンの精製方法とすることにより、坩堝1の内壁への堆積物6の付着を抑止しつつ不純物であるホウ素を効率的に除去することができる。これにより、坩堝1の内壁への堆積物6の堆積に起因する坩堝1の交換回数を従来(二酸化ケイ素を含む混合物の添加によって生成したスラグのみを用いてシリコンを精製した場合)よりも減少することができる。
以下、実施例1、実施例2および比較例を示しつつ、本発明をさらに詳しく説明する。なお、一般的な太陽電池用シリコン材料として要求されるホウ素濃度は、通常0.3質量ppm(ppmwと表記)以下、好ましくは0.1ppmw以下であると考えられている。そこで、以下の実施例1、実施例2ならびに比較例においては、精製後のシリコンのホウ素濃度が0.1ppmw程度(0.10ppmw以上0.15ppmw以下)となるように設定した。
<実施例1>
まず、図1に示すように、大気開放系にあるアルミナ製の坩堝1中で、10kgの原料シリコン3aを1500℃まで昇温して溶融した。
まず、図1に示すように、大気開放系にあるアルミナ製の坩堝1中で、10kgの原料シリコン3aを1500℃まで昇温して溶融した。
次に、図2に示すように、溶融シリコン3bと同一の質量となる第1のフラックス4aを坩堝1内に添加することによって第1のフラックス4aを溶融して第1のスラグ4bを生成し、第1のスラグ4bと溶融シリコン3bとを接触させた。ここで、第1のフラックス4aとしては、二酸化ケイ素と炭酸ナトリウムとを同一の質量で混合した混合物を添加した。
そして、図3に示すように、第1のフラックス4aの添加を完了した時点から20分経過後に坩堝1を傾けて第1のスラグ4bを坩堝1から掻き出すことによって、溶融シリコン3bから第1のスラグ4bを分離した。
次に、図4に示すように、溶融シリコン3bと同一の質量となる第2のフラックス5aを坩堝1内に添加することによって第2のフラックス5aを溶融して第2のスラグ5bを生成し、第2のスラグ5bと溶融シリコン3bとを接触させた。ここで、第2のスラグ5bとしては、炭酸ナトリウムを用いた。
そして、第2のフラックス5aの添加終了時点から20分経過後に坩堝1を傾けて第2のスラグ5bを坩堝1から掻き出すことによって、溶融シリコン3bから第2のスラグ5bを分離した。
なお、上記の第2のフラックス5aを添加した後に第2のスラグ5bを分離する工程については4回繰り返して行なった。
また、上記の実施例1および後述する実施例2と比較例に用いた原料シリコン3a中のホウ素濃度は12ppmwであり、第1のフラックス4a中のホウ素濃度は0.9ppmwであって、第2のフラックス5a中のホウ素濃度は0.3ppmwであった。
そして、上記の実施例1のシリコンの精製方法における、フラックスの添加前の溶融シリコン中のホウ素濃度、フラックスの添加後の溶融シリコン中のホウ素濃度および分離後のスラグ中のホウ素濃度をそれぞれICP発光分析法によって測定し、その測定値から分配比(分離後のスラグ中のホウ素濃度/フラックスの添加後の溶融シリコン中のホウ素濃度)を算出した。その結果を表1に示す。
なお、表1において、フラックスの添加前の溶融シリコン中のホウ素濃度を「フラックス添加前Si中B濃度(ppmw)」の欄に記載し、フラックスの添加後の溶融シリコン中のホウ素濃度を「フラックス添加後Si中B濃度(ppmw)」の欄に記載し、分離後のスラグ中のホウ素濃度を「分離後スラグ中B濃度(ppmw)」の欄に記載し、分配比を「分配比」の欄に記載している。
表1に示すように、12ppmwのホウ素濃度を有する原料シリコン3aに対して第1のフラックス4aを添加した後に第1のスラグ4bを分離する工程を1回行なった後、第2のフラックス5aを添加した後に第2のスラグ5bを分離する工程を4回繰り返すことによって0.1ppmw程度までのホウ素を除去することが可能なことがわかった。
なお、実施例1においては、第1のフラックス4aを添加した際には坩堝1の内壁に堆積物6の付着が確認されたものの、第2のフラックス5aの添加および第2のスラグ5bの分離を2〜3回繰り返した時点において、この堆積物6はほぼ消失した。
したがって、実施例1においては、フラックスの添加とスラグの分離を180回繰り返した段階においても(実施例1の工程の36回分に相当する)、坩堝1の容量(後述する比較例に記載した原料シリコン3aの投入量変動によって測定したもの)および加熱状況等に有意な変化は見られなかった。
<実施例2>
実施例1と同一組成および同一質量の第1のフラックス4aを12ppmwのホウ素濃度を有する溶融シリコン3bに添加した後に、第1のスラグ4bを溶融シリコン3bから分離する工程を実施例1と同様にして2回繰り返して行ない、その後、実施例1と同一組成および同一質量の第2のフラックス5aを溶融シリコン3bに添加した後に、第2のスラグ5bを分離する工程を1回行なった。
実施例1と同一組成および同一質量の第1のフラックス4aを12ppmwのホウ素濃度を有する溶融シリコン3bに添加した後に、第1のスラグ4bを溶融シリコン3bから分離する工程を実施例1と同様にして2回繰り返して行ない、その後、実施例1と同一組成および同一質量の第2のフラックス5aを溶融シリコン3bに添加した後に、第2のスラグ5bを分離する工程を1回行なった。
そして、上記の実施例2のシリコンの精製方法における、フラックスの添加前の溶融シリコン中のホウ素濃度、フラックスの添加後の溶融シリコン中のホウ素濃度および分離後のスラグ中のホウ素濃度をそれぞれICP発光分析法によって測定し、その測定値から分配比(分離後のスラグ中のホウ素濃度/フラックスの添加後の溶融シリコン中のホウ素濃度)を算出した。その結果を表2に示す。
なお、表2においても、フラックスの添加前の溶融シリコン中のホウ素濃度を「フラックス添加前Si中B濃度(ppmw)」の欄に記載し、フラックスの添加後の溶融シリコン中のホウ素濃度を「フラックス添加後Si中B濃度(ppmw)」の欄に記載し、分離後のスラグ中のホウ素濃度を「分離後スラグ中B濃度(ppmw)」の欄に記載し、分配比を「分配比」の欄に記載している。
表2に示すように、12ppmwのホウ素濃度を有する原料シリコン3aに第1のフラックス4aを添加した後に第1のスラグ4bを分離する工程を2回繰り返した後、第2のフラックス5aを添加した後に第2のスラグ5bを分離する工程を1回行なうことによって、0.1ppmw程度までのホウ素を除去することが可能なことがわかった。
なお、実施例2においては、第1のフラックス4aを添加した際に坩堝1の内壁に堆積した堆積物6が、第2のフラックス5aの添加および第2のスラグ5bの分離により減少した。
したがって、実施例2においては、坩堝1の内壁に皮膜状の堆積物6が常時付着した状態ではあったものの、フラックスを添加した後にスラグを分離する工程を180回繰り返した段階においても(実施例2の工程の60回分に相当する)、坩堝1の容量および加熱状況等に有意な変化は見られなかった。
<比較例>
実施例1と同一組成および同一質量の第1のフラックス4aを12ppmwのホウ素濃度を有する溶融シリコン3bに添加した後に、第1のスラグ4bを分離する工程を実施例1と同様にして3回繰り返して行なった。比較例においては第2のフラックス5aの添加および第2のスラグ5bの分離は行なわなかった。
実施例1と同一組成および同一質量の第1のフラックス4aを12ppmwのホウ素濃度を有する溶融シリコン3bに添加した後に、第1のスラグ4bを分離する工程を実施例1と同様にして3回繰り返して行なった。比較例においては第2のフラックス5aの添加および第2のスラグ5bの分離は行なわなかった。
そして、上記の比較例のシリコンの精製方法における、フラックスの添加前の溶融シリコン中のホウ素濃度、フラックスの添加後の溶融シリコン中のホウ素濃度および分離後のスラグ中のホウ素濃度をそれぞれICP発光分析法によって測定し、その測定値から分配比(分離後のスラグ中のホウ素濃度/フラックスの添加後の溶融シリコン中のホウ素濃度)を算出した。その結果を表3に示す。
なお、表3においても、フラックスの添加前の溶融シリコン中のホウ素濃度を「フラックス添加前Si中B濃度(ppmw)」の欄に記載し、フラックスの添加後の溶融シリコン中のホウ素濃度を「フラックス添加後Si中B濃度(ppmw)」の欄に記載し、分離後のスラグ中のホウ素濃度を「分離後スラグ中B濃度(ppmw)」の欄に記載し、分配比を「分配比」の欄に記載している。
比較例においても、実施例2と同様に、フラックスを添加した後にスラグを分離する工程を3回繰り返すことによって、0.1ppmw程度までのホウ素除去が可能なことがわかった。
すなわち、シリコン精製の目標をホウ素濃度0.1ppmw程度(0.10ppmw以上0.15ppmw以下)と設定した場合においては、実施例2と比較例の間にはホウ素の除去によるシリコンの精製に要する時間(タクトタイム)の差が無いことがわかった。
しかしながら、比較例においては、実施例2とは異なり、第2のフラックス5aを用いることなく第1のフラックス4aのみしか用いないため、坩堝1の内壁への堆積物6の堆積が進行する。
ここで、比較例においては、以下の(i)〜(v)の工程を実施する方法で、坩堝1の内壁の堆積物6の堆積の進行を評価した。
(i)まず、所定量(後述する出湯時に所定の傾斜角に坩堝1を傾けたときに坩堝1内に残る溶融シリコン3b量と同量)の溶融シリコン(湯種)が入った坩堝1に原料シリコン3aを投入し、原料シリコン3aを加熱および溶融して溶融シリコン3bを作製する。
(ii)次に、湯種と投入した原料シリコン3aが溶融して得られた溶融シリコン3bとの合計の湯面が所定の規定高さ(坩堝1の上端から湯面までの所定距離)に達した時点で原料シリコン3aの投入を中止し、投入した原料シリコン3aの質量を記録しておく。
(iii)次に、上記の比較例と同様にして、上記の第1のフラックス4aを添加した後に第1のスラグ4bを分離する工程を3回繰り返す。
(iv)その後、坩堝1を傾けて坩堝1内の溶融シリコン3bを排出(出湯)する。この際の坩堝1の傾斜角を一定とした場合には、堆積物6の生成により坩堝1の容量が変わらない限り、坩堝1からの溶融シリコン3bの出湯量および坩堝1内に残る溶融シリコン(湯種)量は一定となる。
(v)引き続き、湯面が上記の規定高さになるまで新たな原料シリコン3aを坩堝1内に投入して、投入した原料シリコン3aの質量を記録する。この際、堆積物6の生成によって坩堝1の容積が減少した場合には、一定の湯面高さになるまでに投入される原料シリコン3aの投入量が減少するため、原料シリコン3aの投入量の変動により、堆積物6の付着状況を定量化することができる。
以上の(i)〜(v)の工程を60回繰り返す間の原料シリコン3a投入量の変動を図5に示す。なお、図5の縦軸は原料シリコン3aの第1回目の投入量を1としたときの各回の原料シリコン3aの投入量の相対値を示しており、横軸は(i)〜(v)の工程の繰り返し回数を示している。また、図5に上記の原料シリコン3a投入量の変動データの線形近似線を示す。
図5に示す結果から、(i)〜(v)の工程を60回繰り返した後(フラックスを添加した後にスラグを分離する工程を180回繰り返した後)の坩堝1の容量は坩堝1の初期の容量の約90%まで減少することがわかる。したがって、この結果から、比較例においては、シリコンの精製量が次第に減少していくとともに、シリコンの溶融のための消費電力の無駄の発生等の問題が生じることを意味しており、好ましい状況ではない。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明によれば、坩堝の内壁に堆積物が付着するのを抑止して不純物であるホウ素を効率的に除去することができるシリコンの精製方法を提供することができる。
1 坩堝、2 加熱装置、3a 原料シリコン、3b 溶融シリコン、4a 第1のフラックス、4b 第1のスラグ、5a 第2のフラックス、5b 第2のスラグ、6 堆積物。
Claims (4)
- 溶融シリコンに二酸化ケイ素を含む第1のフラックスを添加した後に前記第1のフラックスから生成した第1のスラグを前記溶融シリコンと分離する第1の精製工程と、
溶融シリコンに二酸化ケイ素を含まない第2のフラックスを添加した後に前記第2のフラックスから生成した第2のスラグを前記溶融シリコンと分離する第2の精製工程と、を含む、シリコンの精製方法。 - 前記第1の精製工程の後に前記第2の精製工程が行なわれることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンの精製方法。
- 前記第2のフラックスが、アルカリ金属の炭酸塩およびアルカリ金属の炭酸塩の水和物の少なくとも一方からなることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリコンの精製方法。
- 前記第1の精製工程と前記第2の精製工程とを、それぞれ所定の回数ずつ繰り返すことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のシリコンの精製方法。
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2007
- 2007-11-19 JP JP2007299298A patent/JP2009120460A/ja not_active Withdrawn
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