JP2009112627A - X線ct装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】被検体のX線管電圧依存情報を表わす断層像を、より少ない被曝により最適な画質で得られるX線CT装置を提供する。
【解決手段】X線CT装置は、複数のX線管電圧を設定する手段を含み、複数のX線管電圧で撮影される断層像の各々の画像ノイズが略同一となるように、それぞれのX線管電圧を用いた撮影に用いる撮影条件を設定する。撮影条件の設定は、X線管電流の設定である。X線管電流は、スカウト像より求められる+被検体の幾何学的特徴量に基づいて、複数のX線管電圧で撮影される断層像の各々の画像ノイズが略同一となるように設定される
【選択図】図12

Description

本発明は、医療用X線CT(Computed Tomography)装置、または産業用X線CT装置の技術に関する。
従来は多列X線検出器X線CT装置またはフラットパネルに代表されるマトリクス構造の2次元X線エリア検出器によるX線CT装置においては、図7に示すように複数のX線管電圧における断層像を撮影し、その複数の断層像より被検体を構成する物質のX線吸収係数のX線管電圧依存性の差の情報を画像化する技術が存在していた(非特許文献1, 2参照)。
CT値による骨塩定量法(QCT)−その原理と方法−、「THE BONE」、メディカルレビュー社、1996年9月、第10巻、第3号、p.145〜P149 CT値による骨塩定量法(QCT)−臨床応用−、「THE BONE」、メディカルレビュー社、1996年9月、第10巻、第4号、p.129〜P134
しかし、このX線吸収係数のX線管電圧依存性の差の情報を画像化する処理は複数のX線管電圧の断層像を加重減算する処理で得られた画像において、画質の制御、画像ノイズの制御が困難な処理であった。
一方で、多列X線検出器X線CT装置またはフラットパネルに代表される2次元X線エリア検出器によるX線CT装置において、X線コーンビームのコーン角が大きくなるにつれ、X線無駄被曝の問題がより大きくなる方向である。このため、被検体を構成する物質のX線管電圧依存情報を表す断層像を撮影する際にも、より少ないX線線量で撮影する必要がある。また、より最適な画質が得られる撮影条件で撮影する必要がある。
そこで、本発明の目的は、被検体の上述のX線管電圧依存情報を表わす断層像を、より少ない被曝により最適な画質で得られるX線CT装置を提供することにある。
第1の観点では、X線発生装置と、相対してX線を検出するX線検出器を、その間にある回転中心のまわりに回転運動をさせながら、その間にある被検体を透過したX線投影データを収集するX線データ収集手段、そのX線データ収集手段から収集された投影データを画像再構成する画像再構成手段、画像再構成された断層像を表示する画像表示手段、断層像撮影の各種撮影条件を設定する撮影条件設定手段、を含むX線CT装置において、前記撮影条件設定手段は、複数のX線管電圧を設定する手段を含み、前記複数のX線管電圧で撮影される断層像の各々の画像ノイズが略同一となるように、それぞれのX線管電圧を用いた撮影に用いる撮影条件を設定することを特徴とするX線CT装置を提供する。
第2の観点では、前記撮影条件の設定は、X線管電流の設定であることを特徴とする第1の観点に記載のX線CT装置を提供する。
第3の観点では、前記撮影条件設定手段は、スカウト像より求められる前記被検体の幾何学的特徴量に基づいて、複数のX線管電圧で撮影される断層像の各々の画像ノイズが略同一となるようなX線管電流を求めて設定することを特徴とする第2の観点に記載のX線CT装置を提供する。
第4の観点では、前記スカウト像は、前記断層像を撮影するX線管電圧と異なり、前記スカウト像に基づく被検体の幾何学的特徴量を、前記断層像を撮影するX線管電圧相当に補正して、X線管電流を求めて設定することを特徴とする第2の観点または第3の観点に記載のX線CT装置を提供する。
第5の観点では、前記補正は、前記スカウト像により求められた、各X線管電圧のX線透過経路長の違いに基づく補正であることを特徴とする第4の観点に記載のX線CT装置を提供する。
第6の観点では、前記補正は、ヘリカルスカウトスキャンの断層像より所定の物質からなる一部の領域の各X線管電圧ごとの透過経路長を用いて求められた各X線管電圧の違いに基づく補正であることを特徴とする第5の観点に記載のX線CT装置を提供する。
第7の観点では、前記ヘリカルスカウトスキャンの断層像の所定の物質からなる一部の領域は所定のCT値の範囲で定められる領域であることを特徴とする第6の観点に記載のX線CT装置を提供する。
第8の観点では、前記撮影条件設定手段は、前記スカウト像により、所望の画質の指標を満足させる最適なX線管電流を求めて、設定するを含むことを特徴とする第3〜7の観点のいずれか一項に記載のX線CT装置を提供する。
第9の観点では、前記画像再構成手段は、前記複数のX線管電圧の撮影より得られたX線投影データを用いて、X線管電圧依存情報を抽出して画像化することを特徴とする第1〜8の観点のいずれか一項に記載のX線CT装置を提供する。
第10の観点では、前記複数のX線管電圧の撮影よりX線管電圧依存情報を抽出して画像化する処理は画像空間において行われることを特徴とする第9の観点に記載のX線CT装置を提供する。
第11の観点では、前記複数のX線管電圧の撮影よりX線管電圧依存情報を抽出して画像化する処理はX線投影データ空間において行われることを特徴とする第9の観点に記載のX線CT装置を提供する。
第12の観点では、前記X線管電圧依存情報を抽出して画像化する処理は加重減算処理を含むことを特徴とする第10の観点または第11の観点に記載のX線CT装置を提供する。
第13の観点では、前記X線管電圧依存情報は前記被検体内の物質に依存した情報であることを特徴とする第9〜12の観点のいずれか一項に記載のX線CT装置を提供する。
本発明のX線CT装置によれば、被検体のX線管電圧依存情報を表わす断層像を、より少ない被曝により最適な画質で得られるX線CT装置を実現できる効果がある。
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態にかかるX線CT装置の構成ブロック図である。このX線CT装置100は、操作コンソール1と、撮影テーブル10と、走査ガントリ20とを具備している。
操作コンソール1は、操作者の入力を受け付ける入力装置2と、前処理、画像再構成処理、後処理などを実行する中央処理装置3と、走査ガントリ20で収集したX線検出器データを収集するデータ収集バッファ5と、X線検出器データを前処理して求められた投影データから画像再構成した断層像を表示するモニタ6と、プログラムやX線検出器データや投影データやX線断層像を記憶する記憶装置7とを具備している。
撮影条件の入力はこの入力装置2から入力され、記憶装置7に記憶される。図6に撮影条件入力画面の例を示す。撮影条件入力画面13Aには、所定の入力を行うための入力ボタン13aが表示されている。図6においてはスキャンのタブが選択されている画面である。タブをP−Reconを選択すると図6の下に描かれているように入力用の表示が切り換わる。入力ボタン13aの上方には断層像13bが表示され、下方には再構成領域13cが表示されている。また、必要とあれば右上に表示されているように、呼吸信号や心拍信号などの生体信号を表示してもよい。
撮影テーブル10は、被検体を乗せて走査ガントリ20の開口部に出し入れするクレードル12を具備している。クレードル12は撮影テーブル10に内蔵するモータで昇降およびテーブル直線移動される。
走査ガントリ20は、X線管21と、X線コントローラ22と、コリメータ23と、ビーム形成X線フィルタ28と、多列X線検出器24とデータ収集装置(DAS:Data Acquisition System)25と、被検体の体軸の回りに回転しているX線管21などを制御する回転部コントローラ26と、制御信号などを前記操作コンソール1や撮影テーブル10とやり取りする制御コントローラ29とを具備している。ビーム形成X線フィルタ28は撮影中心である回転中心に向かうX線の方向にはフィルタの厚さが最も薄く、周辺部に行くに従いフィルタの厚さが増し、X線をより吸収できるようになっているX線フィルタである。このため、円形または楕円形に近い断面形状の被検体の体表面の被曝を少なくできるようになっている。また、走査ガントリ傾斜コントローラ27により、走査ガントリ20はz方向の前方および後方に±約30度ほど傾斜できる。
X線管21と多列X線検出器24は、回転中心ICの回りを回転する。鉛直方向をy方向とし、水平方向をx方向とし、これらに垂直なテーブルおよびクレードル進行方向をz方向とするとき、X線管21および多列X線検出器24の回転平面は、xy平面である。また、クレードル12の移動方向は、z方向である。
図2は、X線管21と多列X線検出器24の幾何学的配置をxy平面から見た図であり、図3はX線管21と多列X線検出器24の幾何学的配置をyz平面から見た図である。
X線管21は、コーンビームCBと呼ばれるX線ビームを発生する。コーンビームCBの中心軸方向がy方向に平行なときを、ビュー角度0度とする。
多列X線検出器24は、z方向にJ列、例えば256列のX線検出器列を有する。また、各X線検出器列はチャネル方向にIチャネル、例えば1024チャネルのX線検出器チャネルを有する。
図2では、X線管21のX線焦点を出たX線ビームがビーム形成X線フィルタ28により、再構成領域Pの中心ではより多くのX線が、再構成領域Pの周辺部ではより少ないX線が照射される。このようにX線線量を空間的に制御した後に、再構成領域Pの内部に存在する被検体にX線が吸収され、透過したX線が多列X線検出器24でX線検出器データとして収集される。
図3では、X線管21のX線焦点を出たX線ビームはX線コリメータ23により断層像のスライス厚方向に制御されて、つまり、回転中心軸ICにおいてX線ビーム幅がDとなるように制御されて、回転中心軸IC近辺に存在する被検体にX線が吸収され、透過したX線は多列X線検出器24でX線検出器データとして収集される。
X線が被検体に照射されて、収集された投影データは、多列X線検出器24からデータ収集装置(DAS)25でA/D変換され、スリップリング30を経由してデータ収集バッファ5に入力される。データ収集バッファ5に入力されたデータは、記憶装置7のプログラムにより中央処理装置3で処理され、断層像に画像再構成されてモニタ6に表示される。なお、本実施形態では多列X線検出器24を適用した場合であるが、フラットパネルX線検出器に代表されるマトリクス構造の2次元X線エリア検出器を適用することもできるし、1列のX線検出器を適用することができる。
(X線CT装置の動作フローチャート)
図4は本実施形態のX線CT装置の動作の概要を示すフローチャートである。
ステップP1では、被検体をクレードル12に乗せ、位置合わせを行う。クレードル12の上に乗せられた被検体は各部位の基準点に走査ガントリ20のスライスライト中心位置を合わせる。
ステップP2では、スカウト像(スキャノ像、X線透視像ともいう。)収集を行う。スカウト像は通常0度,90度で撮影できる。部位によっては例えば頭部のように、90度スカウト像のみの場合もある。スカウト像撮影では、X線管21と多列X線検出器24とを固定させ、クレードル12を直線移動させながらX線検出器データのデータ収集動作を行う。スカウト像の撮影の詳細については図5で後述する。
ステップP3では、スカウト像上に撮影する断層像の位置、大きさを表示しながら撮影条件設定を行う。本実施形態では、コンベンショナルスキャン(アキシャルスキャン)、ヘリカルスキャン、可変ピッチヘリカルスキャン、ヘリカルシャトルスキャンなどの複数のスキャンパターンを有している。コンベンショナルスキャンとは、クレードル12をz軸方向に所定の間隔で移動するごとにX線管21および多列X線検出器24を回転させて投影データを取得するスキャン方法である。ヘリカルスキャンとは、X線管21と多列X線検出器24からなるデータ収集系が回転しながらクレードル12を一定速度で移動させ、投影データを収集する撮影方法である。可変ピッチヘリカルスキャンとは、ヘリカルスキャンと同様にX線管21および多列X線検出器24からなるデータ収集系を回転させながらクレードル12の速度を可変させて投影データを収集する撮影方法である。ヘリカルシャトルスキャンとは、ヘリカルスキャンと同様にX線管21および多列X線検出器24からなるデータ収集系を回転させながらクレードル12を加速・減速させて、z軸の正方向またはz軸の負方向に往復移動させて投影データを収集するスキャン方法である。これらの複数の撮影を設定すると、1回分の全体としてのX線線量情報の表示を行う。また、シネスキャンにおいては、回転数または時間を入れるとその関心領域における入力された回転数分、または入力された時間分のX線線量情報が表示される。
ステップP4では、断層像撮影を行う。断層像撮影およびその画像再構成の詳細については図5で後述する。
ステップP5では、画像再構成された断層像を表示する。
ステップP6では、z方向に連続に撮影された断層像を3次元画像として用いて、3次元画像表示を行う。
(断層像撮影およびスカウト像撮影の動作フローチャート)
図5は、本発明のX線CT装置100の断層像撮影およびスカウト像撮影の動作の概略を示すフローチャートである。
ステップS1において、ヘリカルスキャンは、X線管21と多列X線検出器24とを被検体の回りに回転させ、かつ撮影テーブル10上のクレードル12を直線移動させながらX線検出器データのデータ収集動作を行う。ビュー角度viewと、検出器列番号jと、チャネル番号iとで表わされるX線検出器データD0(view,j,i)(j=1〜ROW,i=1〜CH)にz方向座標位置Ztable(view)を付加させて、一定速度の範囲のデータ収集を行う。
このz方向座標位置はX線投影データに付加させても良いし、また別ファイルとしてX線投影データと関連付けて用いても良い。ヘリカルシャトルスキャン、可変ピッチヘリカルスキャン時にX線投影データを3次元画像再構成する場合に、このz方向座標位置の情報は用いられる。また、ヘリカルスキャンまたはコンベンショナルスキャン(アキシャルスキャン)またはシネスキャン時に用いることにより、画像再構成された断層像の精度改善、画質改善を実現することもできる。
このz方向座標位置は撮影テーブル10のクレードル12の位置制御データを用いても良いし、撮影条件設定時に設定された撮影動作から予測される各時刻におけるz方向座標位置を用いることもできる。
また、可変ピッチヘリカルスキャンまたはヘリカルシャトルスキャンにおいては、一定速度の範囲のデータ収集に加えて、加速時、減速時においてもデータ収集を行うものとする。
また、コンベンショナルスキャン(アキシャルスキャン)またはシネスキャンでは撮影テーブル10上のクレードル12をあるz方向位置に固定させたまま、データ収集系を1回転または複数回転させてX線検出器データのデータ収集を行う。必要に応じて、次のz方向位置に移動した後に、再度データ収集系を1回転または複数回転させてX線検出器データのデータ収集を行う。
また、スカウト像撮影では、X線管21と多列X線検出器24とを固定させ、撮影テーブル10上のクレードル12を直線移動させながらX線検出器データのデータ収集動作を行うものとする。
ステップS2では、X線検出器データD0(view,j,i)に対して前処理を行い、投影データに変換する。前処理では、例えばオフセット補正、対数変換、X線線量補正および感度補正を行う。
スカウト像撮影の場合は、前処理されたX線検出器データをチャネル方向の画素サイズおよびクレードル12の直線移動方向であるz方向の画素サイズをモニタ6の表示画素サイズに合わせて表示すればスカウト像として完成である。
次に、ステップS3において、前処理された投影データD1 (view,j,i)に対して、ビームハードニング補正を行なう。ステップS3のビームハードニング補正は前処理S2のステップS24の感度補正が行なわれた投影データをD1(view,j,i)とし、ステップS3のビームハードニング補正の後のデータをD11(view,j,i)とすると、ステップS3のビームハードニング補正は以下の(数式1)のように、例えば多項式形式で表わされる。なお、本実施形態においては、乗算演算は“●”で表している。
Figure 2009112627
この時、検出器の各j列ごとに独立したビームハードニング補正を行なうことができるため、撮影条件で各データ収集系のX線管電圧が異なっていれば、各列ごとの検出器のX線エネルギー特性の違いを補正できる。
ステップS4では、ビームハードニング補正された投影データD11(view,j,i)に対して、z方向(列方向)のフィルタをかけるzフィルタ重畳処理を行う。
すなわち、各ビュー角度、各データ収集系における前処理後、ビームハードニング補正された多列X線検出器D11(view,j,i) (i=1〜CH, j=1〜ROW)の投影データに対し、列方向に例えば下記の(数式2),(数式3)に示すような、列方向フィルタサイズが5列のフィルタをかける。
Figure 2009112627
補正された検出器データD12(view,j,i)は以下の(数式4)のようになる。
Figure 2009112627
となる。なお、チャネルの最大値はCH, 列の最大値はROWとすると、
以下の(数式5),(数式6)のようになる。
Figure 2009112627
また、列方向フィルタ係数を各チャネルごとに変化させると画像再構成中心からの距離に応じてスライス厚を制御できる。一般的に断層像では再構成中心に比べ周辺部の方がスライス厚が厚くなる。このため、フィルタ係数を中心部と周辺部で変化させてスライス厚は周辺部でも画像再構成中心部でもほぼ一様にすることもできる。例えば、列方向フィルタ係数を中心部と周辺部で変化させて、列方向フィルタ係数を中心部チャネル近辺では列方向フィルタ係数の幅を広く変化させ、周辺部チャネル近辺では列方向フィルタ係数の幅をせまく変化させると、スライス厚は周辺部でも画像再構成中心部でもほぼ一様にすることもできる。
このように、多列X線検出器24の中心部チャネルと周辺部チャネルの列方向フィルタ係数を制御してやることにより、スライス厚も中心部と周辺部で制御できる。列方向フィルタでスライス厚を弱干厚くすると、アーチファクト、ノイズともに大幅に改善される。これによりアーチファクト改善具合、ノイズ改善具合も制御できる。つまり、3次元画像再構成された断層像つまり、xy平面内の画質が制御できる。また、その他の実施形態として列方向(z方向)フィルタ係数を逆重畳(デコンボリューション)フィルタにすることにより、薄いスライス厚の断層像を実現することもできる。
ステップS5では、再構成関数重畳処理を行う。すなわち、投影データを周波数領域に変換するフーリエ変換(Fourier Transform)を行い、再構成関数を掛け、逆フーリエ変換する。再構成関数重畳処理S5では、zフィルタ重畳処理後の投影データをD12とし、再構成関数重畳処理後の投影データをD13、重畳する再構成関数をKernel(j)とすると、再構成関数重畳処理は以下の(数式7)のように表わされる。なお、本実施形態においては、重畳(コンボリューション)演算を“*”で表している。
Figure 2009112627
つまり、再構成関数kernel(j)は検出器の各j列ごとに独立した再構成関数重畳処理を行なえるため、各列ごとのノイズ特性、分解能特性の違いを補正できる。
ステップS6では、再構成関数重畳処理した投影データD13(view,j,i)に対して、3次元逆投影処理を行い、逆投影データD3(x,y,z)を求める。画像再構成される画像はz軸に垂直な面、xy平面に3次元画像再構成される。以下の再構成領域Pはxy平面に平行なものとする。
ステップS7では、逆投影データD3(x,y,z)に対して画像フィルタ重畳、CT値変換などの後処理を行い、断層像D31(x,y,z)を得る。
後処理の画像フィルタ重畳処理では、3次元逆投影後の断層像をD31(x,y,z)とし、画像フィルタ重畳後のデータをD32(x,y,z)、断層像平面であるxy平面において重畳される2次元の画像フィルタをFilter(z)とすると、以下の(数式8)のようになる。
Figure 2009112627
つまり、各z座標位置の断層像ごとに独立した画像フィルタ重畳処理を行なえるため、各列ごとのノイズ特性、分解能特性の違いを補正できる。
または、この2次元の画像フィルタ重畳処理の後に、下記に示す画像空間z方向フィルタ重畳処理を行ってもよい。また、この画像空間z方向フィルタ重畳処理は2次元画像フィルタ重畳処理の前に行ってもよい。さらには、3次元の画像フィルタ重畳処理を行って、この2次元の画像フィルタ重畳処理と、画像空間z方向フィルタ重畳処理の両方を兼ねるような効果を出してもよい。
画像空間z方向フィルタ重畳処理では、画像空間z方向フィルタ重畳処理された断層像をD33(x,y,z)、2次元の画像フィルタ重畳処理された断層像をD32(x,y,z)とすると、以下の(数式9)のようになる。ただし、v(i)はz方向の幅が2l+1の画像空間z方向フィルタ係数で以下の(数式10)のような係数列となる。
Figure 2009112627
ヘリカルスキャンにおいては、画像空間フィルタ係数v(i)はz方向位置に依存しない画像空間z方向フィルタ係数であってよい。しかし、特にz方向に検出器幅の広い2次元X線エリア検出器24または多列X線検出器24などを用い、コンベンショナルスキャン(アキシャルスキャン)またはシネスキャンを行う場合、画像空間z方向フィルタ係数v(i)はz方向のX線検出器の列の位置に依存した画像空間z方向フィルタ係数を用いるのが好ましい。その理由としては、各断層像の列位置に依存した詳細な調整ができるため更に効果的であるからである。
得られた断層像はモニタ6に表示される。
以下に上記のX線CT装置を用いた実施形態を示す。
(実施例1)
本実施例においては、スカウト像またはスカウト像のX線投影データを用いて被検体のプロファイル分布であるX線透過経路長を求め、その被検体のプロファイル分布の幾何学的特徴量より低いX線管電圧(例えば80kV)と、高いX線管電圧(例えば140kV)の撮影条件を定める実施例を示す。具体的には撮影条件のうちX線管電流を最適化して定めて、低いX線管電圧と高いX線管電圧の断層像の画質の指標値である画像ノイズ指標値をあらかじめ設定した値にしている。
図12に本実施例のスカウト像を用いて2種類のX線管電圧の撮影条件を決める場合のフロー図を示す。
ステップK1では、被検体を撮影テーブル10のクレードル12の上に乗せ位置合わせを行う。
ステップK2では、スカウトスキャンを行う。
ステップK3では、スカウト像画像再構成を行う。
ステップK4では、ノイズ指標値を入力する。
ステップK5では、低いX線管電圧の撮影条件と高いX線管電圧の撮影条件の各々のX線管電流値を求めて撮影条件を設定する。
ステップK6では、低いX線管電圧のスキャンを行う。
ステップK7では、高いX線管電圧のスキャンを行う。
ステップK8では、X線管に依存した物質弁別画像を画像再構成する。
ステップK9では、物質弁別画像を表示する。
ステップK5においては、ステップK3で求めたスカウト像より、被検体の各z方向座標位置のプロファイル分布より、プロファイル面積、プロファイル分布を楕円近似した時の楕円率を含むプロファイル分布の幾何学的特徴量を求め、これにより低いX線管電圧の断層像や、高いX線管電圧の断層像が同じ画質になるように、つまり同じ画像ノイズ(各画素の標準偏差)になるようにX線自動露出機構を用いて、低いX線管電圧の断層像撮影条件や高いX線管電圧の断層像撮影条件において、X線管電流を含む画像ノイズを制御する撮影条件の変数を制御して画質を最適化することができる。
なお、この時の自動X線露出機構の動きを以下に示す。
被検体のプロファイル分布の幾何学的特徴量を用いて、自動X線露出機構によりz方向に均一な画質となるように各z方向座標位置における最適な撮影条件を設定でき、その撮影条件を行うことで被曝低減、画質改善の行える実施例を以下に示す。
スカウト像を得て、z方向に均一な画質となるように各z方向座標位置における最適なX線管電流を設定する実施例の流れを以下の図13に示す。
また、下記の実施例においては、多列X線検出器の場合のX線検出器のz方向の幅による影響を考慮して、後述のステップP25,ステップP26,ステップP27を行っているが、以下の(1),(2),(3)のような理由でX線検出器のz方向幅を考慮しなくても良い場合は、ステップP25,ステップP26の処理を行わずにステップP24で求めた“理想的管電流曲線”に基いて、ステップP27において撮影条件設定を行ったり、X線投影データ収集を行っても良い。
(1)X線検出器のz方向の幅がそれほど広くない
(2)X線検出器のz方向の幅に比べて被検体のz方向の変化が小さい
(3)z方向の画質の均一性を求める精度が厳しくない
以下に図13を用いて全体の操作および処理の流れを示す。
ステップP21では、ヘリカルスカウトスキャンによるスカウト像撮影を行う。
ステップP22では、スキャン撮影条件を設定する。
ステップP23では、スカウト像の各z軸座標のプロファイル分布よりプロファイル面積、プロファイル分布の楕円近似の楕円率(長径/短径比率)などの幾何学的特徴量を測定する。
ステップP24では、断層像のCT値の標準偏差値の目標値であるノイズ・インデックス値に依存し、ステップP21のスカウト像の各z座標のプロファイル分布の幾何学的特徴量により、各z座標の管電流値テーブルを計算し、この管電流値テーブルを“理想的管電流値曲線”とする。
ステップP25では、多列X線検出器24の各列があるz方向座標の断層像に対する寄与率分布を求める。
ステップP26では、ステップP25で求めた多列X線検出器24の寄与率分布のデコンボリューション関数をステップP24で求めた“理想的管電流値曲線”に重畳して“制御すべき管電流値曲線“を求める。
ステップP27では、ステップP26の“制御すべき管電流曲線“の管電流値テーブルに従い、スキャンデータ収集を行う。
ステップP28では、断層像画像再構成を行う。
ステップP29では、断層像画像表示を行う。
あらかじめ、被検体の部位ごとの断層像の代表的な部分の関心領域における、画像ノイズの指標値であるCT値の標準偏差値と、そのスカウト像のプロファイル分布の複数の特徴パラメータとの関係を求めておく。つまり被検体をz方向に位置合わせした後に、z方向座標に依存した各々の断層像位置のノイズ指標値と、スカウト像またはスカウト像のX線投影データのプロファイル分布の幾何学的特徴量と、撮影に使用するX線管電流値との関係をあらかじめ関連づけておいておけばよい。
これらの関係式に基いて、収集したスカウト像またはスカウト像の投影データのプロファイル分布の特徴パラメータを求めた後に、図16のように、プロファイル分布の複数の幾何学的特徴量と被検体のz方向座標位置である部位とを求めておき、画像ノイズの目標値であるノイズ指標値を指定しておけば、制御すべきX線管電流値が求められる。これにより、スカウト像のz方向に沿って各z座標値のX線管電流値を図14のように求めることができ、z方向に沿ったX線管電流値曲線(X線管電流値テーブル)が求められる。
1列のX線検出器または列数の少ないX線検出器の場合は、このX線管電流値テーブルのままz方向に沿ってX線管電流値を変化させながら、ヘリカルスキャンまたはz方向の複数位置でのコンベンショナルスキャン(アキシャルスキャン)またはシネスキャンまたは可変ピッチヘリカルスキャンまたはヘリカルシャトルスキャンを行い、各z方向位置の断層像のCT値標準偏差値をほぼ一定にできた。
しかし、マトリクス構造の多列X線検出器または2次元X線エリア検出器では検出器幅がz方向に広いため、あるz方向座標位置の断層像に3次元逆投影される投影データは複数のz方向位置に分散して存在している。このため、多列X線検出器または2次元X線エリア検出器を用いた場合に、X線管電流値テーブルのままz方向に沿ってX線管電流値を変化させながら、ヘリカルスキャンまたはz方向の複数位置でのコンベンショナルスキャン(アキシャルスキャン)またはシネスキャンを行うと、検出器の寄与するz方向の幅が広いため、図15のように、画像ノイズの指標である断層像のCT値標準偏差が正しく制御されずにz方向に広がってボケてしまうおそれがある。
これを避けるには図15のように、あるz方向位置の断層像に対する検出器の各列の寄与率の分布をz方向に沿って求める。この寄与率の分布は、ヘリカルピッチ、画像再構成の際の各検出器列の加重係数のかけ方、スキャンのモード(ヘリカルスキャン、コンベンショナルスキャン(アキシャルスキャン)またはシネスキャン)などによっても異なってくる。
このz方向に分布した寄与率の分布の逆重畳関数を求め、これを「X線管電流値曲線」(X線管電流値テーブル)に重畳すれば、つまり、高周波(高域)強調気味にz方向フィルタがかけられて、「制御すべき管電流値曲線」が求められる。この「制御すべき管電流値曲線」(制御すべき管電流値テーブル)の通り、z方向に沿ってX線管電流値を変化させながらヘリカルスキャンまたはコンベンショナルスキャン(アキシャルスキャン)またはシネスキャンを行い、画像再構成を行えば、高周波(高域)強調された管電流値曲線が、z方向に分布する寄与率でz方向に平滑化され、ちょうど良く得られた断層像の画像ノイズ(CT値の標準偏差)はz方向にほぼ一様にすることができる。
ステップP21で求められるスカウト像の各z軸座標のプロファイル分布の幾何学特徴量、または図16のように以下のようなものもしくは、それらを組合せて演算して求められる特徴パラメータが考えられる。
Figure 2009112627
また、上記の第4項のプロファイル分布を複数の楕円に分けるか否かの判断、つまり独 立したプロファイルの抽出をするか否かの判断のフロー図を図17に示す。
ステップm1では、xi=x0+Δxとする。ただし、Δx=( xn−x0)/Nとする。
ステップm2では、m1をx0〜xi区間の平均σ1をx0〜 xiの標準偏差として求める。
ステップm3では、m2をxi〜xn区間の平均σ2をxi〜xnの標準偏差として求める。
Figure 2009112627
ただしKは適当な係数のようにして具体的に判断をさせることができる。
ステップm4では、(m2−m1)が(σ1+σ2)よりも充分大きいかを判断する。YESであればステップm5へ行き、NOであればステップm11へ行く。
ステップm5では、x0〜xiを1つの独立した区間として扱い、xiからxnから別のプロファイル分布とみなす。つまり独立した領域として分けて楕円近似を行い、別の近似楕円領域として切り離す。具体的には、被検体の下肢部の撮影で両足の断層像が映っている場合、または胸部と腕おろしした2本の腕が映っている場合などが考えられる。
ステップm6では、x0=x0+ΔN,N=N−1とする。
ステップm7では、xn=x0+ΔNか。YESであれば終了し、NOであればステップm2へ行く。
ステップm11では、xi=x0+2Δxとする。
このような判断により、プロファイル分布が複数の楕円近似で分けられるかを判断する。
上記のように各z座標位置において、プロファイル分布に応じてその幾何学的特徴パラメータや、その1つである楕円近似した際のパラメータなどで、各z座標位置の最適X線管電流などの撮影条件を決定することができる。楕円近似を各z座標位置において行うのであれば、図18,図19のようにデータ収集系のビュー方向を考慮すると、図20のように各ビュー方向により近似された楕円の投影データ長(透過経路長ともいう)が変化する。
このように、データ収集系のビュー方向とプロファイル分布から近似された楕円との位置関係を考慮すれば更に最適X線管電流値を下げて、被曝低減が可能になる。
図18のようにコンベンショナルスキャン(アキシャルスキャン)またはシネスキャンにおいては、データ収集系のビュー方向で近似される楕円は変化しないが、図19のようにヘリカルスキャンにおいては、z方向座標が移動するにつれ近似される楕円は変化し、データ収集系のビュー方向ごとの最適X線管電流値も変わってくる。
つまり、図18のコンベンショナルスキャン(アキシャルスキャン)またはシネスキャンでは、スキャン1,2のいずれでもビュー方向が同じであれば同じ最適X線管電流値になるが、図19のヘリカルスキャンにおいては、スキャン1,2により、ビュー方向がずれるとz方向座標位置もずれて近似される楕円の大きさも異なり最適X線管電流値は異なってくる。このようにしてビュー方向を考慮することにより、被曝低減を更に改善できる。
このようにして、X線自動露出機構により、低いX線管電圧の撮影条件や高いX線管電圧の撮影条件のX線管電流を含む画像ノイズを制御する撮影条件の変数を変更して画質を最適化することができる。
また、本実施例においては、スカウト像のX線管電圧(例えばX線管電圧120kV)と、低いX線管電圧(例えばX線管電圧80kV)の断層像撮影、高いX線管電圧(例えばX線管電圧140kV)の断層像撮影のX線管電圧が異なる。
すなわち、各X線管電圧ごとにX線エネルギー分布(線質分布)は異なるため、同じ被検体を撮影しても各X線管電圧ごとに被検体のプロファイル分布は、X線ビームハードニングの影響により異なってしまうことが考えらられる。なお、プロファイル分布は、被検体のX線透過経路長を表わす。
この場合は、スカウト像またはスカウト像から得られたX線投影データから得られた被検体のプロファイル分布より求められる幾何学的特徴量を図21のように変換係数で変換する必要がある。
図21においては、スカウト像のX線管電圧120kVの場合を1.0として他のX線管電圧で断層像撮影を行う場合は、補正係数をかけて被検体のプロファイル分布より求められる幾何学的特徴量を変換する。
これにより、各X線管電圧におけるノイズ指標値に基いた最適なX線撮影条件が求められる。
これにより、図12のステップK6、ステップK7において低いX線管電圧の断層像撮影、高いX線管電圧の断層像撮影が行える。
また、図12のステップK8においては、以下の計算により物質X,Yを弁別した画像が得られる。つまりこの場合は、各原子ごとに異なるX線吸収係数の管電圧依存情報を画像化することで物質X,Yの存在分布を画像化できる。
X線線質の異なる、つまり、X線管電圧のエネルギーが異なる2種類の断層像においては、例えば図22に示すように、それぞれ実効エネルギーA,Bに対応したX線吸収係数のX線管電圧依存性であるエネルギー特性を持つ2つの異なる断層像が得られる。そして、エネルギーAのX線に基づくX線投影データから画像再構成した断層像と、エネルギーBのX線に基づくX線投影データから画像再構成した断層像から、所望の物質に関する定量的なX線吸収係数のX線管電圧依存性であるエネルギー特性の分布画像を計算によって求めることができる。
エネルギーAのX線に基づく投影データから画像再構成した断層像におけるCT値およびエネルギーBのX線に基づく投影データから画像再構成した断層像におけるCT値は、それぞれ次の(数式22),(数式23)で与えられる。
Figure 2009112627
ここで、X,Yは所望の物質の量(未知数)である。αA,αB,βA,βB,γA,γBは予め測定によって判明している定数である。
このようなCT値からX,Yが次の(数式24),(数式25)によってそれぞれ求められ、
Figure 2009112627
このようにして、Xに関する画像およびYに関する画像がそれぞれ形成される。X,Yは例えばカルシウム分、脂肪、鉄分等である。このようにして、2つのX線線質の異なる断層像から所望の物質の定量的な分布画像を得ることができる。
つまり、(数式24),(数式25)は以下の(数式26)のように書き換えられる。
Figure 2009112627
つまり、物質X,Yは以下の(数式28)、(数式29)のように求められる。
Figure 2009112627
ただし、この時のw1,w2,w3,w4,c1,c2は以下の(数式30),(数式31),(数式32),(数式33)(数式34),(数式35)となる。
Figure 2009112627
つまり、物質X,物質Yの存在分布画像は、低いX線管電圧の断層像CTAと高いX線管電圧の断層像CTBとの加重加算処理で得られる。図23に画像空間において、低いX線管電圧の断層像CTAと高いX線管電圧の断層像CTBとの加重加算処理で物質Xの存在分布画像を求める方法を示す。
また、投影データ空間においても同様に加重加算処理により、物質X,YのX線投影データを求めることができ、この物質X,YのX線投影データを画像再構成することにより、物質X,Yの断層像が得られる。
つまり、低いX線管電圧のX線投影データをRAとし、高いX線管電圧のX線投影データをRBとし、物質XのX線投影データをRX、物質YのX線投影データをRYとすると、以下の(数式36),(数式37)のように、物質XのX線投影データと物質YのX線投影データとが求められる。
Figure 2009112627
この物質XのX線投影データRX、物質YのX線投影データRYを画像再構成することにより、物質X,物質Yの断層像が得られる。なお、上述の加重加算処理は、定数w2,w4が負の定数となることから加重減算処理ともいう。
図24に投影データ空間において、X線投影データの加重加算処理を用いて、低いX線管電圧のX線投影データRA、高いX線管電圧のX線投影データRBを求め、これらを画像再構成して、低いX線管電圧の断層像、高いX線管電圧の断層像が求められることを示す。
また、この時に用いられるX線投影データは、前処理およびビームハードニング補正を行われたX線投影データを用いる。特にビームハードニング補正では、各X線管電圧において水等価なX線透過経路長にすることにより、水以外の物質のX線吸収係数のX線管電圧依存性をより正しく評価することができる。
ここで、上述の低いX線管電圧の断層像と、高いX線管電圧の断層像とのが従加算処理、品和知差画像を求めた場合の画像にイズについて説明する。
画像ノイズがn1、信号レベルがs1、S/N比がn1/s1である低いX線管電圧の断層像と、画像ノイズがn2、信号レベルがs2、S/N比がn2/s2である高いX線管電圧の断層像の差画像を求めると、差画像のS/N比Nsubは以下の(数式42)のようになる。
Figure 2009112627
低いX線管電圧の断層像のS/N比N1、高いX線管電圧の断層像のS/N比N2は、以下の(数式43)、(数式44)で表わされる。
Figure 2009112627
これらにより、以下の(数式45)、(数式46)の関係がわかり、差画像の断層像の画像ノイズが、元の低いX線管電圧と高いX線管電圧より大きくなることがわかる。
Figure 2009112627
なお、相加相乗平均の定理より、以下の(数式47)が成り立つ。
Figure 2009112627
(ただし、等号が成立するのはn1=n2の場合)
このため、差画像のS/N比Nsubは、以下の(数式48)が成り立つ。
Figure 2009112627
(ただし、等号が成立するのはn1=n2の場合)
つまり、上述のように低いX線管電圧の断層像の画像ノイズn1と、高いX線管電圧の断層像の画像ノイズn2が等しい時、差画像の画像ノイズNsubは最小となることがわかる。
なお、低いX線管電圧の断層像の画像ノイズn1と、高いX線管電圧の断層像の画像ノイズn2とは、n1とn2の比が約10%以下または約5%以下が好ましい。
なお、図12におけるステップK6の低いX線管電圧のスキャン、ステップK7の高いX線管電圧のスキャンについては、従来は図7に示すように、例えば1スキャン目は低いX線管電圧による断層像撮影、2スキャン目は高いX線管電圧による断層像撮影のように行っていた。
しかし、1スキャン目と2スキャン目の間に時間があいてしまうと、体動の影響などで1スキャン目の断層像またはX線投影データと2スキャン目の断層像またはX線投影データの位置がずれてしまい、物質を構成する原子の分布を示すX線吸収係数のX線管電圧依存性であるエネルギー特性の分布画像作成時に測定誤差、アーチファクトとして発生してしまうことがある。
このため、被検体の体動を防ぐようなスキャンが望まれる。
本実施例においては、図8に示すように1回目のスキャン(低い管電圧の断層像撮影)と、2回目のスキャン(高い管電圧の断層像撮影)を続けて行う。または、わずかの時間をあけてX線管電圧を変化させて、すぐスキャンを行うことにより被検体の体動を最小にすることを行う。なお図8においては、80kVの低いX線管電圧の断層像撮影を行った後に、140kVの高いX線管電圧の断層像撮影を行っているが、80kVの低いX線管電圧の断層像撮影と140kVの高いX線管電圧の断層像撮影の順序が逆でもかまわないし、前述したようにX線管電圧を上げるために図9のようにX線をオフしている期間が間に入ってもかまわない。
また、X線投影データ上の処理を行うために、低いX線管電圧のX線投影データのX線データ収集開始ビュー角度と、高いX線管電圧のX線投影データのX線データ収集開始ビュー角度とを一致させたい場合は、図9に示す1回目のスキャンと2回目のスキャンの間のX線オフする時間であるISD(Inter Scan Delay)の時間を調整して、1回目のスキャンのデータ収集開始ビュー角度と2回目のスキャンのデータ収集開始ビュー角度とを揃えることができる。
また更に、被検体の体動をより少なくするためのスキャン方法としては、図10に示すように、例えば奇数ビューを高いX線管電圧140kVのX線データ収集、偶数ビューを低いX線管電圧80kVのX線データ収集として各ビューごとにX線管電圧を変化させていく方法や、図11のように複数のまとまったビューの単位ごとに、高いX線管電圧140kVのX線データ収集、低いX線管電圧80kVのX線データ収集を交互に行ってもよい。
いずれの場合においても最終的に高いX線管電圧140kV、低いX線管電圧80kVのX線投影データが360度分または180度+ファン角分、収集できればよい。また、高いX線管電圧140kVと低いX線管電圧80kVの順序は逆でもよいし、X線管電圧値は140kVと80kV以外の値でもよい。
(実施例2)
本実施例においては、ヘリカルスカウトスキャンによるスカウト像により被検体のプロファイル分布であるX線透過経路長を求め、その被検体のプロファイルの幾何学的特徴量より低いX線管電圧(例えば80kV)と、高いX線管電圧(例えば140kV)のX線管電流を定める実施例を示している。
このヘリカルスカウトスキャンによりスカウト像を求める場合は、いちど2方向に連続した断層像を画像再構成した後に、0度方向または90度方向、あるいは、その他の角度方向について再投影処理を行いスカウト像を求める。
この場合の再投影方向は、x軸方向、y軸方向を含むいずれの方向にも行うことができ、いずれの場合も再投影処理は平行ビーム再投影処理となり、このようにして平行ビーム再投影によるスカウト像が画像再構成できる。つまり、この平行ビーム再投影スカウト像ではX線焦点に近くても遠くても常に正しい縮尺で画像化できる。このため、被検体が撮影視野のどこにあってもX線焦点から被検体までの距離に依存せずに、正しい被検体の幾何学的特徴量が得られ、z方向に均一な画質となる各z方向座標位置における最適な撮影条件が設定できる。
特にヘリカルスカウトスキャンにおいては、各z方向座標位置の断層像が得られる。この断層像のうち通常のビームハードニング補正では充分補正しきれない部分、すなわち、X線吸収係数が水と異なる特性を示す一部の領域、例えば骨の部分を抽出して透過経路の補正データを求め、前処理およびビームハードニング補正で求められたX線透過経路長をより精度よく求められるようにできる。
図25に本実施例のヘリカルスカウトスキャンのスカウト像を用いて、2種類のX線管電圧の撮影条件を決める場合のフロー図を示す。
ステップK11では、被検体を撮影テーブル10のクレードル12の上に乗せ位置合わせを行う。
ステップK12では、ヘリカルスカウトスキャンを行う。
ステップK13では、ヘリカルスカウトスキャンの画像再構成を行う。
ステップK14では、連続した断層像を3次元画像とし、3次元画像から骨の部分を抽出する。
ステップK15では、骨の透過経路と被検体全体の透過経路を求める。
ステップK16では、低いX線管電圧の透過経路と高いX線管電圧の透過経路を求める。
ステップK17では、低いX線管電圧の撮影条件と高いX線管電圧の撮影条件の各々のX線管電流値を求めて撮影条件を設定する。
ステップK18では、低いX線管電圧のスキャンを行う。
ステップK19では、高いX線管電圧のスキャンを行う。
ステップK20では、X線管に依存した物質弁別画像を画像再構成する。
ステップK21では、物質弁別画像を表示する。
前述のステップK15においては、ステップK15において超低被曝スキャンによるヘリカルスカウトスキャンにより、一度z方向に連続した断層像を求めてから、0度方向または90度方向またはその他の角度方向に再投影処理を行いスカウト像を求めていることから、撮影条件設定時に断層像情報がわかっている。
この時に、骨や造影剤のように水とX線吸収係数の傾向の異なる特性を示しそうな物質の存在する領域を検出し、その領域を通るX線ビームの透過経路長を求め、ビームハードニング補正で補正しきれなかった水等価なX線経路長への変換に補正をかけることができる。
そして、前述のステップK16において、X線管電圧によって異なる骨のX線吸収係数の水と異なる特性分について補正を行うことにより、低いX線管電圧の透過経路長と高いX線管電圧の透過経路長を求める。
図26に骨と造影剤の領域のプロファイル分布を求め、水等価経路長の補正データを求めるステップK15のフローを示す。
ステップB1では、ヘリカルスカウトスキャンによる断層像を入力する。
ステップB2では、CT値の範囲(例えば、CT値200以上)を設定し、骨の領域または造影剤の領域を2値化処理を行う。
ステップB3では、抽出された2値化領域の各画素の近傍領域のCT値標準偏差を求める。
ステップB4では、骨の領域と造影剤の領域の領域分離を行う。
ステップB5では、骨の領域と造影剤の領域の各々の領域の各ビュー方向におけるプロファイル分布を求める。
ステップB6では、各ビュー方向における骨の領域と造影剤の領域の補正データを求める。
ステップB7では、各ビュー方向における水等価経路長の補正を行う。
以上のX線CT装置100において、本発明のX線CT装置によれば、X線管電圧依存情報を示す断層像を得るための撮影において、被曝低減、画質改善を実現する効果がある。
また、本発明は、z方向(被検体の体軸方向)に連続する複数の断層像について土曜名撮影条件を使用することにより、同様の効果を得ることができる。
なお、上記実施例においては、最適な撮影条件を制御するパラメータとしてX線管電流を用いているが、X線管電流の他に、ヘリカルスキャンにおけるヘリカルピッチ、画像フィルタ、再構成関数、zフィルタ、スライス厚、スキャン時間などのパラメータにより撮影条件を制御してz方向に均一な画質を得る最適な撮影条件を設定しても良い。
なお、本実施形態においては、2種類の撮影条件において2種類のX線管電圧80kVと140kVについて説明しているが、80kV,140kVと異なるX線管電圧の組合せでも良いし、また3種類以上の撮影条件、X線管電圧においても同様な効果を出すことができる。
なお、本発明における画像再構成法は、従来公知のフェルドカンプ法による3次元画像再構成法でもよい。さらに、他の3次元画像再構成方法でもよい。または2次元画像再構成でも良い。
本発明は、コンベンショナルスキャン(アキシャルスキャン)、シネスキャン、可変ピッチヘリカルスキャンについても同様に効果を出すことができる。
本発明は、走査ガントリ20が傾斜した、いわゆるチルト・スキャンの場合でも同様な効果を出すことができる。
本発明は、生体信号、特に心拍信号に同期させても同様な効果を出すことができる。
また、本発明では、多列X線検出器または、フラットパネルX線検出器に代表されるマトリクス構造の2次元X線エリア検出器、または、1列のX線検出器のX線CT装置においても同様の効果を出せる。
また、本実施形態では、各列ごとに係数の異なった列方向(z方向)フィルタを重畳することにより、画質のばらつきを調整し、各列において均一なスライス厚、アーチファクト、ノイズの画質を実現しているが、これには様々なz方向フィルタ係数が考えられるが、いずれも同様の効果を出すことができる。
本実施例では、医用X線CT装置を元に書かれているが、産業用X線CT装置または他の装置と組合わせたX線CT−PET装置,X線CT−SPECT装置などで利用できる。
本発明の一実施形態にかかるX線CT装置を示すブロック図である。 X線発生装置(X線管)および多列X線検出器をxy平面で見た説明図である。 X線発生装置(X線管)および多列X線検出器をyz平面で見た説明図である。 被検体撮影の流れを示すフロー図である。 本発明の一実施形態に係るX線CT装置の画像再構成の概略動作を示すフロー図である。 X線CT装置の撮影条件入力画面を示す図である。 スキャン単位でX線管電圧を切換える場合を示す図である。 連続したスキャンでX線管電圧を切換える場合を示す図である。 連続したスキャンでX線管電圧を切換える場合を示す図である。 各ビューごとにX線管電圧を切換える場合を示す図である。 各データ収集セグメントごとにX線管電圧を切換える場合を示す図であ る。 スカウト像を用いて2種類のX線管電圧の撮影条件を決める場合の フロー図である。 ヘリカルスカウトスキャンのスカウト像を用いて2種類のX線管電 圧の撮影条件を決める場合のフロー図である。 画像ノイズの目標値とX線管電流地の関係を示す図である。 2次元X線エリア検出器の理想的管電流値テーブルを示す図である。 プロファイル分布の幾何学的特徴量を示す図である。 独立したプロファイル分布の抽出の判断の処理の流れを示すフロー図で ある。 コンベンショナルスキャン(アキシャルスキャン)またはシネスキャン の場合を示す図である。 ヘリカルスキャンの場合でz方向座標位置により近似される楕円が異な る場合を示す図である。 楕円近似した場合のθ方向の投影データ長を示す図である。 幾何学的特徴量のX線管電圧依存性を示す図である。 実効エネルギーA,Bを持つX線線質分布を示す図である。 画像空間におけるX線吸収係数のX線管電圧依存情報の断層像の求め方 を示す図である。 投影データ空間空間におけるX線吸収係数のX線管電圧依存情報の断層 像の求め方を示す図である。 ヘリカルスカウトスキャンのスカウト像を用いて2種類のX線管電圧の 撮影条件を決めるフロー図である。 骨と造影剤の領域のプロファイル分布を求める方法の概念図である。
符号の説明
1 操作コンソール
2 入力装置
3 中央処理装置
5 データ収集バッファ
6 モニタ
7 記憶装置
10 撮影テーブル
12 クレードル
15 回転部
20 走査ガントリ
21 X線管
22 X線コントローラ
23 コリメータ
24 多列X線検出器または2次元X線エリア検出器
25 データ収集装置(DAS)
26 回転部コントローラ
27 走査ガントリ傾斜コントローラ
28 ビーム形成X線フィルタ
29 制御コントローラ
30 スリップリング

Claims (13)

  1. X線発生装置と、相対してX線を検出するX線検出器を、その間にある回転中心のまわりに回転運動をさせながら、その間にある被検体を透過したX線投影データを収集するX線データ収集手段、
    そのX線データ収集手段から収集された投影データを画像再構成する画像再構成手段、
    画像再構成された断層像を表示する画像表示手段、
    断層像撮影の各種撮影条件を設定する撮影条件設定手段、
    を含むX線CT装置において、
    前記撮影条件設定手段は、複数のX線管電圧を設定する手段を含み、
    前記複数のX線管電圧で撮影される断層像の各々の画像ノイズが略同一となるように、それぞれのX線管電圧を用いた撮影に用いる撮影条件を設定する
    ことを特徴とするX線CT装置。
  2. 前記撮影条件の設定は、X線管電流の設定である
    ことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
  3. 前記撮影条件設定手段は、スカウト像より求められる前記被検体の幾何学的特徴量に基づいて、複数のX線管電圧で撮影される断層像の各々の画像ノイズが略同一となるようなX線管電流を求めて設定する
    ことを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
  4. 前記スカウト像は、前記断層像を撮影するX線管電圧と異なり、前記スカウト像に基づく被検体の幾何学的特徴量を、前記断層像を撮影するX線管電圧相当に補正して、X線管電流を求めて設定する
    ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のX線CT装置。
  5. 前記補正は、前記スカウト像により求められた、各X線管電圧のX線透過経路長の違いに基づく補正である
    ことを特徴とする請求項4に記載のX線CT装置。
  6. 前記補正は、ヘリカルスカウトスキャンの断層像より所定の物質からなる一部の領域の各X線管電圧ごとの透過経路長を用いて求められた各X線管電圧の違いに基づく補正である
    ことを特徴とする請求項5に記載のX線CT装置。
  7. 前記ヘリカルスカウトスキャンの断層像の所定の物質からなる一部の領域は所定のCT値の範囲で定められる領域である
    ことを特徴とする請求項6に記載のX線CT装置。
  8. 前記撮影条件設定手段は、前記スカウト像により、所望の画質の指標を満足させる最適なX線管電流を求めて、設定する
    を含むことを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載のX線CT装置。
  9. 前記画像再構成手段は、前記複数のX線管電圧の撮影より得られたX線投影データを用いて、X線管電圧依存情報を抽出して画像化する
    ことを特徴とする請求項1〜8にいずれか一項に記載のX線CT装置。
  10. 前記複数のX線管電圧の撮影よりX線管電圧依存情報を抽出して画像化する処理は画像空間において行われる
    ことを特徴とする請求項9に記載のX線CT装置。
  11. 前記複数のX線管電圧の撮影よりX線管電圧依存情報を抽出して画像化する処理はX線投影データ空間において行われる
    ことを特徴とする請求項9に記載のX線CT装置。
  12. 前記X線管電圧依存情報を抽出して画像化する処理は加重減算処理を含む
    ことを特徴とする請求項10または請求項11に記載のX線CT装置。
  13. 前記X線管電圧依存情報は前記被検体内の物質に依存した情報である
    ことを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載のX線CT装置。
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