以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係る調理補助ロボットについて説明する。
本発明の第1の実施の形態に係る調理補助ロボットは、高さ分布測定部により調理材料の調理容器の調理面からの高さ分布状態を測定し、かき混ぜ駆動部によりかき混ぜ器具の位置および姿勢を調理材料の高さ分布に応じて変化させる。これにより、焦げ付きや型崩れを軽減しながら満遍なく調理材料を攪拌し、調理補助を行うものである。
本発明の第1の実施の形態では、調理材料の高さ分布に応じてかき混ぜ動作の調整を行う調理補助ロボットについて説明する。この調理補助ロボットは、かき混ぜ器具を保持するとともに当該かき混ぜ器具の位置及び姿勢を変化させる手段と、調理材料の高さ分布を測定する手段とを備える。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る調理補助ロボットの概要を示す図である。図1に示したように、本発明の第1の実施の形態における調理補助ロボット1は、高さ分布測定部3と、かき混ぜ器具駆動部2と、制御部9とを備える。高さ分布測定部3は、調理用加熱コンロ8上に配置された調理容器5の内部の調理材料6の高さ分布を測定するものである。(以下、測定された高さ分布を高さ分布情報とも記す)かき混ぜ器具駆動部2は、かき混ぜ器具4を保持するとともに当該かき混ぜ器具4の位置及び姿勢を変化させるものである。制御部9は、高さ分布測定部3によって得られた高さ分布情報に基づいてかき混ぜ器具駆動部2を制御するものである。なお、かき混ぜ器具4は、縦約100mm、横約70mmの長方形の板部材である。そして、かき混ぜ器具4は、長さ150mmの接続部にてかき混ぜ器具駆動部2に保持されている。
ここで、かき混ぜ器具駆動部2の構成をさらに詳しく説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態における調理補助ロボット1のかき混ぜ器具駆動部2の構成を示す図である。
かき混ぜ器具駆動部2は、かき混ぜ器具4を保持するハンド部24と、ハンド部24への外力を検出するための力検出部25と、ハンド部24の位置及び姿勢を変化させるアーム部22と、アーム部22の位置及び姿勢を変化させる支持部21と、ハンド部24、アーム部22および支持部21を接続する関節部23(23a〜23d)とを備えている。なお、本実施の形態では、ハンド部24によってかき混ぜ器具4を保持することとしているが、ハンド部24は、かき混ぜ器具4だけではなく調理内容に応じて適宜対応する部材を保持することができるように構成されている。
支持部21は、キッチン7の長手方向への直線移動およびキッチン7の鉛直上下方向(以下、単に上下方向と称す)を軸とした回転移動が可能なように構成されている。また、支持部21は、図外の駆動用のサーボモータ、減速機、位置検出のための光学式エンコーダ、及び駆動ベルトによって所定の位置に停止させるように制御できる構成となっている。これにより、アーム部22及びハンド部24をキッチン7の長手方向(図1におけるAの方向)へ自由に移動可能となる。さらに、支持部21は、アーム部22aがキッチン7の上下方向に直線移動でき、かつ、アーム部22aがキッチン7の長手方向を軸として回転移動できるように関節部23aを支持するように構成されている。なお、支持部21の直線移動部分の駆動は、リニアモータや、ボールねじ等の一般的な直線駆動機構を用いて実現することができる。なお、支持部21の上下の長さ寸法は、約800mmである。
アーム部22は、複数の関節部23a〜23dを有している。ここで、各関節部23a、23b、23c、23dには、関節の角度を変化させるための駆動用サーボモータ(図示せず)、減速機(図示せず)、及び関節角検出のための光学式エンコーダ(図示せず)が設けられている。光学式エンコーダにより駆動用サーボモータを各可動範囲内の所定の位置で停止させることができるため、アーム部22に任意の姿勢をとらせることができる。なお、アーム部22aの長さは、約500mmである。また、アーム部22bとアーム部22cとを加えた長さは、約500mmである。
アーム部22及び関節部23の構成としては、例えば、一般に産業用ロボットとして市販されている6軸ロボットアーム等の公知のロボットアームを用いることができる。
なお、かき混ぜ器具駆動部2は、キッチン7の長手方向への直線移動、キッチン7の上下方向への直線移動、キッチン7の上下方向を軸とした回転移動、及びキッチン7の長手方向を軸とした回転移動という支持部21についての4つの可動部と、関節部23a〜23dについての4つの可動部とを有する合計8つの可動部を有している。しかしながら、キッチン7が固定されている絶対座標系に対し、ハンド部24の位置及び姿勢を任意に変化可能な可動部を少なくとも6つ有していればよい。
ハンド部24は、加わる外力を検出するための力検出部25を介してアーム部22dに接続されている。ハンド部24としては、例えば、一般に産業用として市販されている2本指のグリッパ型のハンドを用いることができるが、一般的な固定具を用いてかき混ぜ器具4をアーム部22に固定、保持させてもよい。
力検出部25としては、一般に6軸あるいは3軸力センサとして市販されているものを用いることができる。例えば、歪みゲージ式3軸力センサ、静電容量式6軸力センサ等を用いて構成できる。
また、本発明の第1の実施の形態においては、かき混ぜ器具駆動部2の台数を1台として説明したが、台数はこれに限定されない。2台のかき混ぜ器具駆動部2を用い、一方は調理容器5を支え、残りの一方がかき混ぜ器具4を用いてかき混ぜ動作を行うように構成してもよい。
高さ分布測定部3としては、例えば、距離画像撮像装置を用いることができる。距離画像撮像装置の一例として、赤外線を投光し、対象物に反射されて返ってくる赤外光を格子状に並べられたセンサで検出し、投光と受光の時間差と光の速度から対象物までの距離を2次元の距離画像として出力するものがある。また、他の例として、ステレオ視による距離画像撮像装置等の公知のものがある。なお、本実施の形態においては、赤外線距離画像センサを用いて調理材料6の高さ分布を測定する構成としたが、超音波式測距センサ等の狭い領域の平均距離を出力するような一般的な測距センサを用いることもできる。具体的には、かき混ぜ器具駆動部2のアーム部22あるいはハンド部24に測距センサを取り付け、計測領域を走査しながら連続的に距離の測定を行って、調理容器5全面の高さ分布を測定する構成としてもよい。
また、制御部9と高さ分布測定部3との間で情報を伝達するための構成としては、有線ケーブルでもよいし、無線や赤外線等の公知の通信手段から任意に選択したものを用いることも可能である。
なお、高さ分布測定部3は、ハンド部24に取り付けるように構成してあるが、調理容器5内部の調理材料6の高さ分布が測定できればよい。したがって、高さ分布測定部3は、その他の可動部又は固定部、例えば、調理用加熱コンロ8に固定してもよい。
ここで、調理補助ロボット1の構成をさらに詳しく説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態における調理補助ロボット1の構成を示すブロック図である。
調理補助ロボット1は、高さ分布測定部3と、混合状態検出部101と、かき混ぜ方向選択部102と、動作種別判断部103と、力検出部25と、異常検出部104と、かき混ぜ情報記憶部105と、操作指示入力部106と、動作指示部107と、動作履歴記録部405と、経過時間タイマ108とを備える。ここで、高さ分布測定部3は、調理容器5内の調理材料6の高さ分布を測定するものである。混合状態検出部101は、高さ分布に基づいて調理材料6の混合状態を推定するものである。かき混ぜ方向選択部102は、調理材料6の高さ分布からかき混ぜ動作を行う方向を選択するものである。動作種別判断部103は、高さ分布測定部3、混合状態検出部101およびかき混ぜ方向選択部102から出力される情報を元に、所定のかき混ぜ方向選択条件によって動作種別の切り替え判断を行うものである。力検出部25は、ハンド部24への外力を検出するためのものである。異常検出部104は、高さ分布測定部3および力検出部25からの出力を用いて異常状態の検出を行うものである。かき混ぜ情報記憶部105は、調理材料6及び調理レシピによるかき混ぜ調理の動作パラメータを記憶しているものである。操作指示入力部106は、操作部27を使用して使用者からの指示の入力を行うものである。動作指示部107は、動作種別判断部103、異常検出部104、操作指示入力部106の出力、及びかき混ぜ情報記憶部105からの動作パラメータに基づき動作指示を行うものである。動作履歴記録部405は、動作指示部107からの指令により、かき混ぜの位置及び姿勢を変化させるかき混ぜ器具駆動部2と、かき混ぜ器具駆動部2によるかき混ぜ動作の履歴を記録するものである。経過時間タイマ108は、使用者が指定した動作時間が経過した際に動作を停止するために参照するものである。
なお、制御部9の混合状態検出部101、かき混ぜ方向選択部102、動作種別判断部103、異常検出部104、かき混ぜ情報記憶部105、操作指示入力部106、動作指示部107、動作履歴記録部405、及び経過時間タイマ108のそれぞれの機能は、専用回路等のハードウェアで実現されていてもよいし、それぞれの機能がソフトウェアによって記述され、コンピュータ内部で実行されることによって実現されてもよい。
混合状態検出部101は、高さ分布測定部3からの出力結果に基づき、調理容器5内部の調理材料6の最大高さ領域、最小高さ領域および高さの分散を算出する。分散があらかじめ定められた閾値以上の場合、調理材料6の混合が不十分と判断する。また、最大高さ領域を調理材料6の温度の低い部分、最小高さ領域を調理材料6の温度の高い部分と判断し、結果を出力する。
かき混ぜ方向選択部102は、高さ分布測定部3の出力結果から、調理材料6の山作り動作開始位置並びに目標位置、及び山崩し動作開始位置並びに目標位置を決定する。そして、目標位置への調理材料6の集積、及び調理材料6の拡散を行うためのかき混ぜ器具4の移動方向を選択する。
動作種別判断部103は、調理容器5内部の調理材料6の最大高さに基づき、実行すべきかき混ぜ動作として、山作り動作または山崩し動作のいずれかを選択する。
力検出部25は、ハンド部24にかかる外力の測定を行う。これにより、かき混ぜ器具4が調理容器5内壁へ衝突した場合、調理材料6を調理容器5とかき混ぜ器具4との間に挟みこんでしまった場合、あるいは使用者にかき混ぜ器具4が接触した場合等の異常時に発生する過大な外力の検出ができ、瞬時かつ安全に動作の停止が行える。
異常検出部104は、高さ分布測定部3及び力検出部25からの出力結果に基づき、異常状態の検出を行い、動作指示部107へ異常状態を通知する。また、高さ分布測定部3の結果により、調理容器5から調理材料6がこぼれそうな状態であることを検出する。
かき混ぜ情報記憶部105は、調理材料6の種類及び調理レシピに適したものとして予め設定されたかき混ぜパラメータを記憶保持しており、動作指示部107に出力することができる。これにより、動作指示部107が調理材料6や調理レシピに適したかき混ぜ動作の指示を行うことが可能になり、調理材料6の不十分な加熱や型崩れ、焦げ付きを軽減することができる。なお、かき混ぜ情報記憶部105としては、ハードディスクドライブなどの磁気ディスク装置や半導体メモリ等の公知の記憶装置を用いることができる。
操作指示入力部106は、使用者が操作部27を用いて入力した調理材料6の種類や使用量、調理レシピの種類、動作の開始、終了等の入力を受け付けることが可能に構成されている。
動作指示部107は、操作指示入力部106を介して入力された使用者の指示、及びかき混ぜ情報記憶部105に保持されたかき混ぜパラメータに基づき、動作種別判断部103により決定された動作種別の動作パラメータの調整と動作指示を行う。また、異常検出部104からの通知を監視し、異常の内容に応じて次のかき混ぜ動作への移行や停止の指令を行う。
動作履歴記録部405は、実行されたかき混ぜ動作の履歴の記録を行う。調理容器5の調理面を小領域に区分し、高さ分布測定部3を用いて各領域への調理材料6の存在を検知し、存在していた時間を累積記録する。これにより、各小領域の利用頻度が算出できる。なお、調理材料6の高さだけでなく、調理容器5の調理面の温度をも考慮に入れると、より精緻に利用頻度の算出を行うことができる。この調理容器5の調理面の温度の測定は、後述する温度分布測定部310や、調理用加熱コンロ8に設けた温度分布測定機構(図示せず)により、測定できる。具体的には、温度分布測定部310を用いた場合は、調理容器5の調理面の温度を測定できる。一方、調理用加熱コンロ8の温度分布測定機構を用いた場合は、調理容器5の底面の温度を測定でき、その底面の温度から調理容器5の調理面の温度を推定できる。また、動作履歴記録部405は、調理容器5の調理面のうちで、調理材料6の山が形成された位置(集積位置)を記録する(図4のステップS19)。
かき混ぜ器具駆動部2は、かき混ぜ器具4を保持しながら、調理容器5に対する位置および姿勢(特に角度)を変化させる。これにより、調理容器5内の調理材料6のかき混ぜ動作を行う。
次に、調理補助ロボット1の動作について説明する。図4A及び図4Bは、本発明の第1の実施の形態における調理補助ロボット1の処理ステップを示すフローチャートである。
基本的な動作の概要としては、各種初期化の後、山作り動作201および山崩し動作202を交互に繰り返しながら、かき混ぜ動作を行うようになっている。
まず、調理補助ロボット1は、使用者の指示入力が行われるまで待機する。つまり、使用者により調理用加熱コンロ8の電源の投入、調理材料6の投入及び動作指示の入力が完了するのを待つ(S1)。ここで、使用者の負担を低減させるため、調理用加熱コンロ8の電源は、本発明の調理補助ロボット1の動作開始に応じてON操作されるように構成されていてもよい。また、動作指示の入力方法としては、使用者の発話音声を認識することによる方法、撮像カメラにより撮像された使用者のジェスチャを認識することによる方法、タッチパネルを用いる方法等が挙げられる。
操作部27により、使用者が調理レシピ又は使用調理材料、使用量及び動作時間を指定し、動作開始を入力した場合、経過時間タイマ108及び動作履歴記録部405の初期化を行う(S2)。次に、調理容器5の位置、大きさ及び周縁部の高さを測定する(S3)。これらの測定方法としては、前述の高さ分布測定部3を用いる方法が考えられる。また、他の測定方法としては、かき混ぜ器具4と調理容器5の内壁との間の角度、及びかき混ぜ器具4に対する調理容器5の押し付け力を一定に維持しつつ、かき混ぜ器具4を調理容器5内壁の形状をなぞるように移動させ、当該かき混ぜ器具4の位置の変化を記録することによって測定する方法等が挙げられる。
次に、使用者によって指定された調理レシピあるいは調理材料6の種類、使用量及び動作時間に対応するかき混ぜ動作パラメータをかき混ぜ情報記憶部105から取得して動作指示部107に設定し(S4)、山作り動作201の処理ステップに移る。
山作り動作201において、ステップS2で検出した調理容器5の位置及び大きさに基づき、高さ分布測定部3を用いて、調理容器5内部の調理材料6の調理容器5の調理面からの高さ分布を測定する(S5)。高さ分布のうち、最大の高さが処理ステップS4で取得したかき混ぜ動作パラメータにおけるかき混ぜ動作判断条件の第1の閾値以上である場合(S6でYES)、既に山が存在している状態(山作りが完了した状態)であると判断し、現在の調理材料6の集積位置を動作履歴記録部405に記録し(S21)、後述のステップS24へ移行する。
ここで、第1の閾値は、処理ステップS4で取得した値を用いているが、この値にステップS3で測定された調理容器5の調理面の高さを加算した値を用いてもよい。これにより、底面部の厚みが異なる調理容器であっても、より高精度に対応できる。
一方、高さ分布の最大高さが第1の閾値を下回る場合(S6でNo)、動作履歴記録部405に記憶された調理容器5の調理面の利用頻度のうち、最も利用頻度の低い場所を読み出す。それと共に、当該利用頻度が予め設定された利用頻度未満であるか否かを判定する(S7)。ここで、利用頻度が予め設定された頻度未満である場合には、最も利用頻度の低い位置を調理材料6の山を作るための集積目標位置に設定する(S8)一方、調理容器5の全領域で利用頻度が予め設定された頻度を超えている場合には、調理容器5の中心を集積目標位置として設定する(S9)。
次いで、調理材料6の山を作るためのかき混ぜ方向を設定するとともに、山作り動作を開始する(S10)。以下、山を作るためのかき混ぜ方向を特定する方法について図5を参照して説明する。図5は、調理容器5を当該調理容器5の調理面と垂直な方向に見たときの概略図である。なお、以下の説明では、処理ステップS8において集積目標位置P1として使用頻度の最も低い位置が選択された場合を例に挙げて説明する。
まず、処理ステップS8において設定された集積目標位置P1と調理容器5の内壁とを結ぶ線分であって、集積目標位置P1を中心として例えば60°間隔で設定された線分L1〜L6の長さを算出する。次に、各線分L1〜L6のうち、それぞれの長さが調理容器5の直径寸法の例えば1/3よりも長いものを特定する。特定された各線分の両端のうち、調理容器5の内壁側の端点を動作開始点、集積目標位置P1側の端点を移動目標点とし、動作開始点から移動目標点へ向かう方向をかき混ぜ方向として設定する。このようにして、例えば60°間隔で設定された線分L1〜L6について、かき混ぜ方向を順次選択していく。
上記では集積目標位置P1として最低頻度の位置を設定する場合(S8)について説明したが、集積目標位置P1として調理容器5の中心が設定された場合(S9)には、全ての線分L1〜L6が調理容器5の半径寸法の長さを有するため、全ての線分L1〜L6に沿った方向がかき混ぜ方向として設定されることになる。なお、集積目標位置P1として調理容器5の中心を設定した場合には、調理容器5の調理面と垂直な面であって中心と各線分L1〜L6とをそれぞれ通る複数の仮想垂直面のうち、当該仮想垂直面における調理材料6の高さの平均に対する分散が最も大きくなる仮想垂直面に対応する線分だけをかき混ぜ方向として設定することもできる。このようにした場合も、調理材料6が激しく偏在する範囲に位置する調理材料6を移動させることができるので、調理材料6を効果的にかき混ぜることができる。
次いで、かき混ぜ器具駆動部2により、処理ステップS10によって得られた動作開始点に、調理容器5の調理面に対して垂直となるようにかき混ぜ器具4を挿入する。このとき、かき混ぜ器具4の先端部は、調理容器5の調理面に接触させても、調理容器5の調理面から所定の間隔(例えば、5mm)を開ける位置に止めてもよい。また、調理容器5の外周方向へ所定の力が加わるように力制御しながら、かき混ぜ器具4を調理容器5の内壁に接触させつつ挿入することにより、調理容器5の内壁に付着した調理材料6をこそぎ取り、焦げ付きを軽減することもできる。
次に、異常検出部104により、かき混ぜ器具4及び調理材料6の異常状態の監視を行い(S11)、異常状態(エラー)と判断された場合(S12でYES)には、その異常状態を特定する。そして、特定した異常状態に対するエラー復帰動作を行い(S14)、所定のかき混ぜ動作の完了確認ステップS16へ移行する。
一方、異常状態ではないと判断された場合(S12でNo)には、かき混ぜ器具駆動部2により集積目標点へ向けたかき混ぜ器具4の移動を開始する(S13)。ここで、かき混ぜ器具4の移動距離は、かき混ぜ方向を規定するための線分L1〜L6の長さの例えば1/10程度に設定される。また、調理容器5の調理面とかき混ぜ器具4との間に間隔を空けた状態でかき混ぜ器具4を移動させることができる。一方、かき混ぜ器具4の先端部を調理容器5の調理面に一定の力で接触した状態を維持しながら移動させることにより、調理容器5の調理面に接触している調理材料6を移動させることができるので、堆積した調理材料6を満遍なくかき混ぜることができる。さらに、調理容器5に近い部分ほどかき混ぜ方向の移動で先行するようにかき混ぜ器具4を傾けた状態(例えば、60°)で当該かき混ぜ器具4を移動させることにより、かき混ぜ器具4の移動に伴い調理材料6がかき混ぜ器具4の上に乗り上げるように移動して、かき混ぜ前に下にあった調理材料6と上にあった調理材料6とを上下に入れ替えることができる。また、調理材料6と調理容器5の間へかき混ぜ器具4を挿入して当該かき混ぜ器具4上に調理材料6を載せた上で、集積目標点に既に位置する調理材料6の上方にかき混ぜ器具4を移動させ、集積目標点に位置する調理材料6の上に調理材料6を被せるようにかき混ぜ器具4の位置および姿勢を変化させることにより、調理容器5の調理面からの距離が遠い調理材料と近い調理材料とを順次入れ替えることができ、調理容器5の熱を調理材料6にさらに満遍なく伝えることができる。
次に、かき混ぜ動作を行った結果、かき混ぜ器具4が集積目標点から所定の範囲内へ到達しているか否かを判定し(S15)、到達していない場合は、かき混ぜ器具4及び調理材料6の異常状態検出ステップ(S11)へ戻る。
一方、かき混ぜ器具4が集積目標点から所定の範囲内に到達した場合(S15でYES)には、処理ステップS10で設定した各動作開始点のうち、未選択のものがまだ存在するか否かを判定する(S16)。ここで、未選択の動作開始点が存在する場合(S16でNo)、未選択の動作開始点のうちの任意の1点を選択し、次の動作開始点として設定する(S18)。次の動作開始点の選択方法としては、例えば、既にかき混ぜ動作の完了した動作開始点に隣接する動作開始点を選択する方法、未選択の動作開始点のうち、近くに位置する調理材料6の高さ平均が最も大きい動作開始点を選択する方法等が挙げられる。
未選択の動作開始点がなくなった場合(S16でYES)には、かき混ぜ完了判定(S17)を行う。ここでは、経過時間タイマ108の値と使用者の指定した動作時間の値とを比較し、それらが一致した場合にかき混ぜ完了と判定する(S19)。
経過時間タイマ108の値が使用者の指定した動作時間の範囲内の場合(S19でNo)には、かき混ぜ未完了と判断し、高さ分布測定ステップ(S5)へ戻る。
一方、かき混ぜ完了と判断された場合(S19でYES)には、必要に応じて所定の手段を用い使用者へかき混ぜ完了を通知し、動作を停止する(S20)。なお、所定の手段としては、例えば、外部に向けて音声を発する手段、光の点滅を行う手段等、一般の通知手段を用いることができる。
次に、山崩し動作202の処理ステップについて説明する。
まず、山作り動作201と同様に、処理ステップS3で検出した調理容器5の位置及び大きさに基づき、高さ分布測定部3を用いて調理容器5内部の調理材料6の高さ分布を測定する(S22)。次いで、高さ分布測定部3により測定された高さ分布のうち、最大の高さが処理ステップS4で取得したかき混ぜ動作パラメータにおけるかき混ぜ動作判断条件の第2の閾値以上であるか否かを判定する(S23)。ここで最大の高さが第2の閾値よりも小さい場合(S23でNo)には、山崩しは完了したと判断し、前述の山作り動作201の処理ステップS7に移行する。
以下、山崩し動作におけるかき混ぜ方向の特定方法について、図4及び図6〜図9を参照して説明する。図6は、調理容器5の調理面を当該調理面と垂直な方向に見たときの概略図である。図7は、図6の方向a、方向b及び方向cに沿った断面形状を概略的に示す図である。図8は、図7の断面形状について高さの平均に対する分布を示すヒストグラムである。図9は、かき混ぜ方向における移動目標点を設定する方法を説明するための概略図である。
図4及び図6〜図9を参照して、まず、最大の高さが第2の閾値以上である場合には、調理容器5の内部の調理材料6の最大高さ位置を抽出し、動作開始点として設定する(S24)。
次に、調理材料6の最大高さ位置を通るとともに調理容器5の調理面に垂直な方向の軸を中心として所定の角度ごとに設定された複数の平面(仮想垂直面)における調理材料6の高さの断面形状(図7参照)を抽出する(S25)。
具体的に、図6における方向a、方向b、及び方向cに沿った仮想垂直面における調理材料6の断面形状を図7に示す。図7から分かるように、方向aは、常に調理材料6を通過している。方向bは、動作開始点から少し移動したところで一旦調理材料6の存在しない範囲を通過するものの、再び調理材料6の存在する範囲を通過している。方向cは、動作開始点から少し離れたところから常に調理材料6の存在しない範囲を通過している。これら方向a、方向b及び方向cの場合には、図8に示すように、高さ平均に対する調理材料6の高さの分散は、方向bが最も大きくなっていることが分かる。なお、本実施形態では、調理容器5の直径寸法をDとした場合、図7に示す断面波形のうち1/10D〜2D程度の波長の変化のみを考慮している。これより短いものを考慮すると調理材料6自体の形状の影響も受けてしまうためである。
そこで、高さ分布の分散の最も大きい断面方向(上記の例では方向b)をかき混ぜ方向として設定する(S26)。
そして、かき混ぜ方向における移動目標点を以下のように設定する。つまり、図9に示すように、調理容器5の調理面を当該調理面と直交する方向から見る視点において、かき混ぜ方向502と調理容器5の内壁との交点504、505のうち、動作開始点501からの距離が大きい方、つまり交点504をかき混ぜ器具4の移動目標点として設定する(S27)。より具体的に、かき混ぜ方向502における動作開始点501を挟んだ2つの区分のうち、当該かき混ぜ方向502に対して調理容器5の中心から下ろした垂線の足503が位置する側の区分に属する交点504を移動目標点として設定する。
次いで、かき混ぜ器具駆動部2により、処理ステップS27によって得られた動作開始点にかき混ぜ器具4を挿入する(S28)。次に、異常検出部104により、かき混ぜ器具4および調理材料6の異常状態監視を行う(S29)。
ここで、異常状態(エラー)と判断された場合(S30でYES)には、その異常状態を特定する。そして、特定した異常状態に対するエラー復帰動作を行い(S32)、ステップS33へ移行する。一方、異常状態ではないと判断された場合(S30でNo)には、処理ステップS27で設定した移動目標点へ向けてかき混ぜ器具4を移動させる(S31)。具体的に、かき混ぜ器具4の移動距離は、例えば、動作開始点と移動目標点との距離の10分の1とすることができる。ここで、調理容器5から遠い部分ほどかき混ぜ方向の移動で先行するようにかき混ぜ器具4を傾けた(約60°)状態で、当該かき混ぜ器具4をかき混ぜ方向に移動させるようにする。そうすることで、調理材料6を下から掬い上げるようにしてかき混ぜ器具4を移動させる場合と異なり、かき混ぜ器具4の途中部で調理材料6を抑えつつ移動させることができるので、当該調理材料6が調理容器5からこぼれ出すのを抑制することができる。また、上下に重なって存在する調理材料6を満遍なくかき混ぜるため、かき混ぜ器具4の先端を調理容器5の調理面から所定の距離だけ離した状態を維持したまま、山崩し動作202を行うことができる。これにより、調理容器5調理面からの距離が遠い調理材料と近い調理材料とが順次入れ替わり、調理容器5の熱を調理材料6にさらに満遍なく伝えることができる。
次に、かき混ぜ動作を行った結果、移動目標点から所定の範囲内へ到達しているか否かを判定し(S33)、到達していない場合は、かき混ぜ器具4及び調理材料6の異常状態検出ステップ(S29)へ戻る。
一方、調理容器5の中心から所定の範囲内にかき混ぜ器具4が到達したと判定した場合には、かき混ぜ完了判定を行う(S34)。具体的には、経過時間タイマ108の値と使用者の指定した動作時間の値を比較し、それらが一致した場合にかき混ぜ完了と判定する。(S35)。
ここで、経過時間タイマ108の値が使用者の指定した動作時間の範囲内であると判定された場合(S35でNo)、かき混ぜ未完了と判断し、調理材料高さ分布測定ステップ(S22)へ戻る。
一方、かき混ぜ完了と判断された場合(S35でYES)には、山作り動作201と同様に所定の手段を用い使用者へかき混ぜ完了を通知し(S20)、動作を停止する。
なお、本実施の形態においては、かき混ぜ完了の判断として、経過時間タイマ108の値と使用者が指定した動作時間との比較を行う構成としているが、かき混ぜ完了の判断条件としては、混合状態検出部101での混合状態結果が十分に混合されていると出力された場合、撮像カメラによって撮像された調理材料の色が所定の色範囲となった場合、かき混ぜ器具駆動部2を用いて調理材料6に串を刺した際に力検出部25によって検出される反力の値が所定の閾値を上回った場合等が挙げられる。
なお、本実施の形態では、調理材料6の最大高さを通る直線上でかき混ぜ動作を行った。しかしながら、複雑な制御の実現や、調理材料6が調理容器よりこぼれる場合の対策が、充分なされている場合は、これに限定されるものではない。これ以外には、例えば、調理材料6の最大高さを中心とした螺旋状の方向をかき混ぜ方向とすることが考えられる。また、かき混ぜ器具4を調理容器5の調理面から傾斜させて調理材料6に挿入し、かき混ぜ器具4を回転させることで、かき混ぜ動作を行うことが考えられる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る調理補助ロボットについて説明する。
本発明の第2の実施の形態に係る調理補助ロボットは、焦げ付きや型崩れを軽減しながら満遍なく調理材料を攪拌し、加熱調理を行うためのものである。具体的に、本実施の形態に係る調理補助ロボットは、温度分布測定部310により調理材料の温度分布状態を測定すると共に、かき混ぜ器具によりかき混ぜ器具の位置及び姿勢を調理材料の温度分布に応じて変化させるようになっている。
本発明の第2の実施の形態の構成は、制御部での制御内容以外は第1の実施の形態と同様なため、その詳細な説明は省略する。
次に、本第2の実施の形態での調理補助ロボット1の動作について説明する。図14A及び図14Bは、本発明の第2の実施の形態における調理補助ロボット1の処理ステップを示すフローチャートである。
基本的な動作の概要としては、各種初期化の後、山作り動作201および山崩し動作202を交互に繰り返しながら、かき混ぜ動作を行うようになっている。
まず、調理補助ロボット1は、使用者の指示入力が行われるまで待機する。つまり、使用者により調理用加熱コンロ8の電源の投入、調理材料6の投入及び動作指示の入力が完了するのを待つ(S201)。
操作部27により、使用者が調理レシピ又は使用調理材料、使用量及び動作時間を指定し、動作開始を入力した場合、経過時間タイマ108及び動作履歴記録部405の初期化を行う(S202)。次に、調理容器5の位置、大きさ及び周縁部の高さを測定する(S203)。
次に、使用者によって指定された調理レシピあるいは調理材料6の種類、使用量及び動作時間に対応するかき混ぜ動作パラメータをかき混ぜ情報記憶部105から取得して動作指示部107に設定し(S204)、山作り動作201の処理ステップに移る。
山作り動作201において、ステップS202で検出した調理容器5の位置及び大きさに基づき、温度分布測定部310を用いて調理容器5内部の調理材料6の温度分布を測定する(S205)。温度分布の分散が処理ステップS204で取得したかき混ぜ動作パラメータにおけるかき混ぜ動作判断条件の第3の閾値以上である場合(S206でYES)、既に山が存在している状態(山作りが完了した状態)であると判断し、現在の調理材料6の集積位置を動作履歴記録部405に記録し(S221)、後述のステップS224へ移行する。
ここで、第3の閾値は、処理ステップS204で取得した値を用いている。
一方、温度分布の分散が第3の閾値を下回る場合(S206でNo)、動作履歴記録部405に記憶された調理容器5の調理面の利用頻度のうち、最も利用頻度の低い場所を読み出す。それと共に、当該利用頻度が予め設定された利用頻度未満であるか否かを判定する(S207)。ここで、利用頻度が予め設定された頻度未満である場合には、最も利用頻度の低い位置を調理材料6の山を作るための集積目標位置に設定する(S208)一方、調理容器5の全領域で利用頻度が予め設定された頻度を超えている場合には、調理容器5の中心を集積目標位置として設定する(S209)。
次いで、調理材料6の山を作るためのかき混ぜ方向を設定するとともに、山作り動作を開始する(S210)。
次いで、かき混ぜ器具駆動部2により、処理ステップS210によって得られた動作開始点に、調理容器5の調理面に対して垂直となるようにかき混ぜ器具4を挿入する。
次に、異常検出部104により、かき混ぜ器具4及び調理材料6の異常状態の監視を行い(S211)、異常状態(エラー)と判断された場合(S212でYES)には、その異常状態を特定する。そして、特定した異常状態に対するエラー復帰動作を行い(S214)、所定のかき混ぜ動作の完了確認ステップS216へ移行する。
一方、異常状態ではないと判断された場合(S212でNo)には、かき混ぜ器具駆動部2により集積目標点へ向けたかき混ぜ器具4の移動を開始する(S213)。
次に、かき混ぜ動作を行った結果、かき混ぜ器具4が集積目標点から所定の範囲内へ到達しているか否かを判定し(S215)、到達していない場合は、かき混ぜ器具4及び調理材料6の異常状態検出ステップ(S211)へ戻る。
一方、かき混ぜ器具4が集積目標点から所定の範囲内に到達した場合(S215でYES)には、処理ステップS210で設定した各動作開始点のうち、未選択のものがまだ存在するか否かを判定する(S216)。ここで、未選択の動作開始点が存在する場合(S216でNo)、未選択の動作開始点のうちの任意の1点を選択し、次の動作開始点として設定する(S218)。
未選択の動作開始点がなくなった場合(S216でYES)には、かき混ぜ完了判定(S217)を行う。ここでは、経過時間タイマ108の値と使用者の指定した動作時間の値とを比較し、それらが一致した場合にかき混ぜ完了と判定する(S219)。
経過時間タイマ108の値が使用者の指定した動作時間の範囲内の場合(S219でNo)には、かき混ぜ未完了と判断し、高さ分布測定ステップ(S205)へ戻る。
一方、かき混ぜ完了と判断された場合(S219でYES)には、必要に応じて所定の手段を用い使用者へかき混ぜ完了を通知し、動作を停止する(S220)。
次に、山崩し動作202の処理ステップについて説明する。
まず、山作り動作201と同様に、処理ステップS203で検出した調理容器5の位置及び大きさに基づき、温度分布測定部310を用いて調理容器5内部の調理材料6の温度分布を測定する(S222)。次いで、温度分布測定部310により測定された温度分布のうち、温度分布の分散が処理ステップS204で取得したかき混ぜ動作パラメータにおけるかき混ぜ動作判断条件の第4の閾値以上であるか否かを判定する(S223)。ここで温度分布の分散が第4の閾値よりも小さい場合(S223でNo)には、山崩しは完了したと判断し、前述の山作り動作201の処理ステップS207に移行する。
次いで、温度分布の分散が第4の閾値以上である場合には、調理容器5の内部の調理材料6の最低温度領域を算出する(S224)。それに合わせて、調理容器5の内部の調理材料6の最高温度領域を算出する(S225)。
次に、温度分布の分散の最も大きい断面方向をかき混ぜ方向として設定する(S226)。
そして、かき混ぜ方向における移動目標点を以下のように設定する。つまり、選択した断面のうち、調理材料6の最低温度領域を動作開始点として設定する。あわせて、選択した断面のうち、調理材料6の最高温度領域を移動目標点として設定する(S227)。
次いで、かき混ぜ器具駆動部2により、処理ステップS227によって得られた動作開始点にかき混ぜ器具4を挿入する(S228)。次に、異常検出部104により、かき混ぜ器具4および調理材料6の異常状態監視を行う(S229)。
ここで、異常状態と判断された場合(S230でYES)には、その異常状態を特定する。そして、特定した異常状態に対するエラー復帰動作を行い(S232)、かき混ぜ完了判定ステップS234へ移行する。一方、異常状態ではないと判断された場合(S230でNo)には、処理ステップS227で設定した移動目標点へ向けてかき混ぜ器具4を移動させる(S231)。
次に、かき混ぜ動作を行った結果、移動目標点から所定の範囲内へ到達しているか否かを判定し(S233)、到達していない場合は、かき混ぜ器具4及び調理材料6の異常状態検出ステップ(S229)へ戻る。
一方、調理容器5の中心から所定の範囲内にかき混ぜ器具4が到達したと判定した場合には、かき混ぜ完了判定を行う(S234)。具体的には、経過時間タイマ108の値と使用者の指定した動作時間の値を比較し、それらが一致した場合にかき混ぜ完了と判定する。(S235)。
ここで、経過時間タイマ108の値が使用者の指定した動作時間の範囲内であると判定された場合(S235でNo)、かき混ぜ未完了と判断し、調理材料高さ分布測定ステップ(S222)へ戻る。
一方、かき混ぜ完了と判断された場合(S235でYES)には、山作り動作201と同様に所定の手段を用い使用者へかき混ぜ完了を通知し(S220)、動作を停止する。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る調理補助ロボットについて説明する。
本発明の第3の実施の形態に係る調理補助ロボットは、焦げ付きや型崩れを軽減しながら満遍なく調理材料を攪拌し、加熱調理を行うためのものである。具体的に、本実施の形態に係る調理補助ロボットは、高さ測定部により調理材料の高さ分布状態を測定し、温度分布測定部により調理材料の温度分布状態を測定する。これらの測定結果を基に、かき混ぜ器具・調理容器駆動部により、かき混ぜ器具・調理容器の位置及び姿勢を、調理材料の高さ・温度分布に応じて変化させるようになっている。
本発明の第3の実施の形態では、かき混ぜ器具を保持して位置および姿勢を変化させる手段と、調理材料の高さ分布・温度分布を測定する手段とを備える。そして、調理材料の高さ分布・温度分布に応じてかき混ぜ動作の調整を行う調理補助ロボットを実施例として説明する。
以下、図面を用いてその構成を説明する。また、本発明の第1の実施の形態と同様の部分については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る調理補助ロボットの概要を示す図である。
本発明の第3の実施の形態に係る調理補助ロボット301と本発明の第1の実施の形態の調理補助ロボット1との相違点は、以下の3点である。1点目は、かき混ぜ動作中に発生する音を収録する集音部311をさらに備えている点である。2点目は、かき混ぜ器具駆動部2に代えてかき混ぜ器具4及び調理容器5の位置や姿勢を変化させるかき混ぜ器具・調理容器駆動部302を備えている点である。3点目は、制御部9に代えて、温度分布測定部310、集音部311及びかき混ぜ器具・調理容器駆動部302の出力結果もさらに利用して調理補助ロボット301の制御を行う制御部309を備えた点である。
かき混ぜ器具・調理容器駆動部302は、本発明の第1の実施の形態の調理補助ロボット1のかき混ぜ器具駆動部2に加え、調理容器5の位置及び姿勢を変化させるために、さらに調理容器5を保持可能なハンド部構造および可搬重量性能を有する。
温度分布測定部310は、調理用加熱コンロ8の加熱領域(図示せず)上方に固定され、非接触で調理容器5内部の調理材料6の表面温度の分布測定を行う構成としている。
この温度分布測定部310により、調理容器5及び調理材料6の温度分布を測定することができるため、調理容器5の熱を有効に利用することができる。つまり、調理材料6の加熱不充分な部分と調理容器5との接触面積が大きくなるようにかき混ぜ動作を行うことや、調理容器5の平均温度の高い領域を積極的に利用することが可能となる。
温度分布測定部310としては、例えば、物体の発する遠赤外線の量を色濃度として出力する一般的な遠赤外線カメラを用いることができる。また、接触式の温度センサをかき混ぜ器具駆動部2のハンド部24に取り付けることもできる。この場合、ハンド部24の移動に応じて温度センサを計測領域に走査させて、調理材料6への接触及び調理容器5の温度測定を繰り返し断続的に行う。これにより、調理容器5の全領域の温度分布を測定することができる。さらに、当該温度センサをかき混ぜ器具4の先端に内蔵させ、温度情報を伝送する構成にしてもよい。
なお、本発明の第3の実施の形態では、温度分布測定部310を調理用加熱コンロ8の加熱領域上方に固定する構成をとっているが、常に一箇所から温度分布を測定する必要がなければ、高さ分布測定部3と同様にかき混ぜ器具・調理容器駆動部302のアーム部やハンド部に搭載してもよい。
集音部311は、かき混ぜ動作中に発生する音を収録する。
これにより、力検出部25で過大な外力を検出した場合に、その音に含まれる周波数成分の強度に基づいて、かき混ぜ器具が調理容器内壁へ衝突した状態にあるのか、あるいは調理材料6が調理容器5とかき混ぜ器具4との間に挟まれている状態であるのかを識別することができる。
集音部311としては、一般的なムービングコイル型マイクロホン、コンデンサ型マイクロホン、圧電型マイクロホン等を用いることができる。
なお、本発明の温度分布測定部310及び集音部311は、既存の調理システムに組み込むことを考慮して、ハンド部24に取り付けられている。しかしながら、調理容器5内部の調理材料6の温度分布が測定できればよく、その他の可動部または固定部、例えば、調理用加熱コンロ8に固定するように構成しても実現可能である。
また、図11は、本発明の第3の実施の形態における調理補助ロボット301の構成を示すブロック図である。
本発明の第3の実施の形態の調理補助ロボット301と本発明の第1の実施の形態の調理補助ロボット1との相違点は、制御部309の構成として、温度分布測定部310の出力結果を用いて調理材料の加熱状態の検出を行う加熱状態検出部401と、温度分布測定部310及び高さ分布測定部3の出力結果を用いて調理材料の混合状態の検出を行う混合状態検出部402と、温度分布測定部310及び高さ分布測定部3の出力結果を用いてかき混ぜ動作の方向を選択するかき混ぜ方向選択部403と、温度分布測定部310、高さ分布測定部3、集音部311および力検出部25の出力結果から異常状態を検出する異常検出部404と、をさらに備えた点である。
加熱状態検出部401は、温度分布測定部310によって測定された調理容器5内部の温度分布の分散が所定の閾値以上の場合には、調理材料6の加熱が不均一であると判断する。また、温度分布のうち、最低温度となる小領域を抽出することにより、最も加熱が不十分な調理材料6の部分を抽出する。
調理材料6の加熱不十分な部分と調理容器5との接触面積が大きくなるようにかき混ぜ動作を行うことにより、調理材料6をさらに均一に加熱することができる。
また、最高温度となる小領域を抽出することにより、最も多くの熱量を有する領域が抽出できる。これにより、平均温度の高い小領域を積極的に利用することで調理容器5および調理用加熱コンロ8の熱を有効に利用することが可能となる。
混合状態検出部402は、高さ分布測定部3及び温度分布測定部310からの出力結果に基づき、調理容器5内部の調理材料6の最大高さ領域、最小高さ領域、高さの分散、最高温度領域、最低温度領域、温度の分散を算出する。また、混合状態検出部402は、高さの分散及び温度の分散、またはどちらか一方があらかじめ定められた閾値以上の場合、調理材料6の混合が不十分と判断する。さらに、混合状態検出部402は、最大高さ領域又は最低温度領域を調理材料6の温度の低い部分、最小高さ領域又は最高温度領域を調理材料6の温度の高い部分と判断し、結果を出力する。
動作履歴記録部405は、実行されたかき混ぜ動作の履歴の記録を行う。調理容器5の調理面を小領域に区分し、高さ分布測定部3又は温度分布測定部310を用いて各領域への調理材料6の存在を検知し、存在していた時間を累積記録する。これにより、各小領域の利用頻度が算出できる。
かき混ぜ方向選択部403は、山作り動作時には、動作履歴記録部405に記録された前述の各小領域の利用頻度を用いて、次の調理材料6の山作り目標位置を決定し、目標位置へ調理材料6の集積を行うためのかき混ぜ器具4の移動方向を選択する。また、山崩し動作時には、温度分布測定部310の出力結果から、調理材料6の山崩し動作開始位置及び目標位置を決定し、調理材料6の拡散を行うためのかき混ぜ器具4の移動方向を選択する。なお、本実施の形態では、山崩し動作の移動方向の選択に温度分布のみを用いるように構成したが、高さ分布測定部3の測定結果を用いる構成、あるいは高さ分布測定部3および温度分布測定部310の両方の測定結果を用いる構成であってもよい。
異常検出部404は、高さ分布測定部3、温度分布測定部310、力検出部25及び集音部311からの出力結果に基づき、異常状態の検出を行い、動作指示部107へ異常状態を通知する。具体的に、異常検出部404は、高さ分布測定部3の出力結果により、調理容器5から調理材料6がこぼれそうな状態であることを検出する。また、異常検出部404は、温度分布測定部310の出力結果により、過大な温度の部分が存在していることを検出する。
さらに、異常検出部404は、力検出部25の結果に基づいて、かき混ぜ器具4が調理容器5に接触した状態にあるのか、あるいは、かき混ぜ器具4と調理容器5との間に調理材料6が挟まった状態又はかき混ぜ器具4が使用者に接触した状態にあるのかを判別するようになっている。具体的に、異常検出部404は、かき混ぜ器具4に予め定められた閾値以上の外力が検出された場合に、集音部311で収録された一定期間前からの音声情報を周波数解析(例えば、フーリエ変換)し、音声情報の周波数成分のうち調理容器5の固有振動数近傍の周波数成分の強度及び含有割合が予め定められた閾値を下回るか否かにより、かき混ぜ器具4が調理容器5に接触した状態にあるのか否かを判別するようになっている。
なお、制御部309の加熱状態検出部401、混合状態検出部402、かき混ぜ方向選択部403、経過時間タイマ108、動作種別判断部103、動作履歴記録部405、異常検出部404、動作指示部107、かき混ぜ情報記憶部105及び操作指示入力部106のそれぞれの機能は、専用回路等のハードウェアで実現されていてもよいし、それぞれの機能がソフトウェアによって記述され、コンピュータ内部で実行されることによって実現されてもよい。
次に、本発明の第3の実施の形態における調理補助ロボット301の動作について説明する。図12A及び図12Bは、本発明の第3の実施の形態における調理補助ロボット301の処理ステップを示すフローチャートである。
まず、本発明の第1の実施の形態の調理補助ロボット1と同様に、調理補助ロボット301は、使用者の指示入力を待機する。つまり、使用者により調理用加熱コンロ8の電源の投入、調理材料6の投入及び動作指示の入力が完了するのを待つ(S301)。
操作部27により、使用者が調理レシピ又は使用調理材料、使用量及び動作時間を指定し、動作開始を入力した場合、経過時間タイマ108及び動作履歴記録部405の初期化を行う(S302)。次に、調理容器5の位置、大きさ及び周縁部の高さを測定する(S303)。
次に、使用者によって指定された調理レシピあるいは調理材料6の種類、使用量及び動作時間に対応するかき混ぜ動作パラメータをかき混ぜ情報記憶部105から取得して動作指示部107に設定し(S304)、山作り動作205の処理ステップに移る。
山作り動作205において、ステップS302で検出した調理容器5の位置及び大きさに基づき、高さ分布測定部3を用いて調理容器5内部の調理材料6の高さ分布を測定する(S305)。高さ分布のうち、最大の高さが処理ステップS304で取得したかき混ぜ動作パラメータにおけるかき混ぜ動作判断条件の第5の閾値以上である場合(S306でYES)、既に山が存在している状態(山作りが完了した状態)であると判断し、現在の調理材料6の集積位置を動作履歴記録部405に記録し(S321)、後述のステップS324へ移行する。
一方、高さ分布の最大高さが、かき混ぜ動作判断条件の第5の閾値を下回る場合(S306でNo)、動作履歴記録部405に記録された調理容器5の調理面のうち、最も利用頻度の低い場所を読み出す。それと共に、当該利用頻度が予め設定された利用頻度未満であるか否かを判定する(S307)。ここで、利用頻度が予め設定された利用頻度未満である場合には、最も利用頻度の低い位置を調理材料6の山を作るための集積目標点として設定する(S308)。一方、利用頻度が予め設定された頻度を超えている場合には、調理容器5の中心を集積目標位置として設定する(S309)。
次いで、調理材料6の山を作るためのかき混ぜ方向を設定すると共に、かき混ぜ器具・調理容器駆動部302により、山作り動作を開始する(S310)。
次に、温度分布測定部310を用いて、調理材料6の表面の温度分布を測定する(S340)。そして、調理材料6の表面温度のうちの最高温度が、第7の閾値以上か否かを判定する(S341)。そして、調理材料6の表面温度のうちの最高温度が、第7の閾値以上である場合(S341でYES)は、調理容器5の調理面からの熱を有効利用するために、その最高温度領域を集積目標位置に設定し(S342)、S310の山作り動作を再開する。一方、調理材料6の表面温度のうちの最高温度が第7の閾値未満である場合(S341でNO)は、異常検出部404により、後述するかき混ぜ器具4及び調理材料6の異常状態の監視を行う(S311)。そして、異常状態と判断された場合(S312でYES)には、その異常状態を特定する。そして、特定した異常状態に対するエラー復帰動作を行い(S314)、かき混ぜ完了判定ステップS315へ移行する。一方、異常状態ではないと判断された場合(S312でNO)には、処理ステップS308、S309、S342で設定した集積目標点へ向けてかき混ぜ器具4を移動させる(S313)。
次に、かき混ぜ動作を行った結果、かき混ぜ器具4が集積目標点から所定の範囲内へ到達しているか否かを判定し(S315)、到達していない場合は、かき混ぜ器具4及び調理材料6の異常状態検出ステップ(S311)へ戻る。
一方、かき混ぜ器具4が集積目標点から所定の範囲内に到達した場合(S315でYES)には、処理ステップS310で設定した開始点のうち、未選択のものがまだ存在するか否かを判定する(S316)。ここで、未選択の動作開始点が存在する場合(S316でNo)には、未選択の分割点のうちの任意の1点を選択し、次の動作開始点として設定する(S318)。次の動作開始点の選択方法としては、例えば、既にかき混ぜ動作の完了した分割点に隣接した分割点を選択する方法、未選択の動作開始点のうち、近くに位置する調理材料6の高さ平均が最も大きい分割点を選択する方法等が挙げられる。
未選択の分割点がなくなった場合(S316でYES)には、かき混ぜ完了判定(S317)を行う。ここでは、経過時間タイマ108の値と使用者の指定した動作時間の値とを比較し、一致した場合にかき混ぜ完了と判定する(S319)。
経過時間タイマ108の値が使用者の指定した動作時間の範囲内の場合(S319でNo)には、かき混ぜ未完了と判断し、ステップS305へ戻る。
一方、かき混ぜ完了と判断された場合(S319でYES)には、所定の手段を用い使用者へかき混ぜ完了を通知し、動作を停止する(S320)。なお、所定の手段としては、外部に向けて音声を発する手段、光の点滅を行う手段等、一般の通知手段を用いることができる。
次に、山崩し動作206の処理ステップについて説明する。
まず、山作り動作205と同様に、ステップS303で検出した調理容器5の位置及び大きさに基づき、高さ分布測定部3を用いて調理容器5内部の調理材料6の調理面からの高さ分布を測定する(S322)。次いで、高さ分布測定部3により測定された高さ分布のうち、最大の高さが処理ステップS304で取得したかき混ぜ動作パラメータにおけるかき混ぜ動作判断条件の第6の閾値以上であるか否かを判定する(S323)。ここで最大の高さが第6の閾値よりも小さい場合(S323でNo)には、山崩しは完了したと判断し、前述の山作り動作205の処理ステップS307に移行する。
一方、かき混ぜ動作判断条件の第6の閾値以上である場合(S323でYES)には、調理容器5の内部の調理材料6の最大高さ位置を抽出し、動作開始点として設定する(S324)。
次に、調理材料6の最大高さ位置を通ると共に調理容器5の調理面に垂直な方向の軸を中心として所定の角度ごとに設定された複数の平面(仮想垂直面)における調理材料6の高さの断面形状を抽出する(S325)。
次に、調理容器5の内部の調理材料6の表面温度分布を測定する(S326)。
次いで、調理材料6の表面の最高温度が第7の閾値以上か否かを判定する(S327)。調理材料6の表面の最高温度が第7の閾値以上の場合(S327でYES)は、最低温度領域を動作開始点として、最高温度領域を移動目標点として選択する(S329)。
次に、調理材料6の表面の最高温度が第7の閾値未満の場合(S327でNO)は、高さの分散の最も大きい断面方向502をかき混ぜ方向として選択する(S328)。
次に、かき混ぜ方向502と調理容器5内壁との交点504、505のうち、調理容器5中心から下ろした垂線の足503のある側504を移動目標点として選択する(S330)。
次に、S328又は329で設定された調理材料6の動作開始点に、かき混ぜ具を挿入する(S331)。
次に、異常検出部404により、後述のかき混ぜ器具4及び調理材料6の異常状態監視を行い(S332)、異常状態(エラー)と判断された場合(S333でYES)には、その異常状態を特定する。そして、特定した異常状態に対するエラー復帰動作を行い(S335)、かき混ぜ完了判定ステップS336へ移行する。一方、異常状態ではないと判断された場合(S333でNO)には、処理ステップS329又はS330で設定した移動目標点へ向けてかき混ぜ器具4を移動させる(S334)。
次に、かき混ぜ完了判定を行う(S337)。ここでは、経過時間タイマ108の値と使用者の指定した動作時間の値を比較し、一致した場合にかき混ぜ完了と判定する(S38)。経過時間タイマ108の値が使用者の指定した動作時間の範囲内の場合(S338でNo)は、かき混ぜ未完了と判断し、調理材料高さ分布測定ステップ(S322)へ戻る。
一方、かき混ぜ完了と判断された場合(S338でYES)には、山作り動作205と同様に所定の手段を用い使用者へかき混ぜ完了を通知し、動作を停止する(S320)。
なお、実施形態では、かき混ぜ完了の判断として、経過時間タイマ108の値と使用者が指定した動作時間との比較を行う構成としているが、温度分布測定部310により測定された調理材料6の温度分布が予め設定された値を超えているか否かを判定することも考えられる。
また、かき混ぜ完了の判断としては、集音部311によりかき混ぜ完了後のものとして予め記憶された音と、現時点で集音された音とを比較することも考えられる。
さらに、本実施の形態においては、調理容器5の調理面のうち利用頻度が最低の範囲を山作り動作の集積目標位置に設定することとしているが、調理容器5の内部のうち最高の温度となっている位置を集積目標位置に設定することもできる。
また、本実施の形態においては、調理容器5の調理面のうち利用頻度が最低となる部分を、山を作る集積目標位置として設定し、この集積目標位置と調理容器5の周縁部の分割点とを結ぶ方向をかき混ぜ方向として設定しているが、集積目標位置と各分割点とを結ぶことにより分割される調理容器5上の領域のうち、平均温度が最も低い領域を通るように設定された調理容器5の縁部から集積目標位置までの方向をかき混ぜ方向として設定することもできる。
また、本実施の形態においては、調理容器5の内部に動作開始点と移動目標点を設定し、これらの間でかき混ぜ器具4を移動させた。しかしながら、これに代えて、傾斜開始位置と傾斜終了位置を設定し、傾斜開始位置が鉛直上、傾斜終了位置が鉛直下となるように調理容器5を傾斜させることでかき混ぜることも可能である。ここで、調理容器5の傾斜角度は、傾斜開始位置と傾斜終了位置との距離が大きいほど大きくなるように設定されることが好ましい。また、調理容器5を傾斜させるだけでなく、所定の周期(例えば、0.5秒)及び所定の振幅(例えば、10mm)で調理容器5を振動させる。これにより、傾斜開始位置と傾斜終了位置が近い場合、すなわち調理材料6が急峻に偏在している場合には、傾斜角度が小さくなるため、大きく拡散して調理容器からこぼれることを低減できる。逆に傾斜開始位置と傾斜終了位置が離れている場合、すなわち調理材料が緩やかに偏在している場合には、傾斜角度が大きくなるため、調理容器5の底面との摩擦で調理材料6が移動しなくなる状態を改善できる。なお、ここでは、傾斜開始位置と傾斜終了位置の距離が大きいほど、調理容器5の傾斜角度が大きくなるようにしたが、所定の一定角度(例えば、15度)だけ傾斜させてもよい。また、調理容器5の振動は、必ずしも行う必要はない。
次に、かき混ぜ動作中の異常状態の検出動作についてさらに詳細に説明する。図13は、本発明の第1から第3の実施の形態における調理補助ロボットのかき混ぜ動作中の異常状態検出処理ステップを示すフローチャートである。
まず、かき混ぜ情報記憶部105より、指定された調理レシピあるいは調理材料の種類、使用量および動作時間に対応する異常検出閾値を取得する(S101)。異常検出閾値には、力検出部25の出力結果に基づいて異常な外力が発生していると判断するための情報や、調理容器5とかき混ぜ器具4との衝突を検出するための情報が含まれている。具体的に、異常検出閾値としては、特定のレシピに対応するかき混ぜ動作を行う際に発生する外力の限界閾値や、調理容器5の固有振動数等が挙げられる。
次に、力検出部25の出力値を取得し(S102)、異常検出閾値との比較を行う(S103)。
力検出部25の出力値が、異常検出閾値以上である場合(S103でYES)には、後述する接触状態判定処理に移行し、異常検出閾値を下回っている場合(S103でNo)には、次の調理材料あふれ警告判定処理に移行する。
調理材料あふれ警告判定処理としては、高さ分布測定部3により調理容器5周縁部近傍の調理材料6の高さ分布を測定し(S104)、この高さ分布と、前述の処理ステップS4あるいは処理ステップS204で取得した調理容器周縁部の平均高さに所定の安全率(例えば、0.75)を掛けた閾値との比較を行う(S105)。ここで、調理材料6の平均高さが閾値を上回っている場合(S105でNo)には、調理材料6が調理容器5からあふれそうな状態であると判断し、警告エラーを出力する(S107)。一方、調理材料6の平均高さが閾値以下である場合(S105でYES)には、異常はないと判断し、異常なしを出力する(S106)。
接触状態判定処理としては、集音部311によって測定された音情報のうち、力検出部25によって異常な外力が検出された時点から所定の時間だけさかのぼった時点から現在までの間の収録波形を抽出する(S108)。つまり、かき混ぜ器具4が未知の物体に接触したと思われる時から現在までの区間の音声情報を抽出する。
次に、周波数解析(例えば、フーリエ変換)を行い(S109)、調理容器5の固有振動数近傍の周波数成分の強度及び含有割合と、所定の閾値とを比較する(S110)。調理容器5の固有振動数近傍の周波数成分の強度及び含有割合が所定の閾値を上回っている場合(S110でNo)には、調理容器5の内壁とかき混ぜ器具4が接触したと判断し、調理容器接触エラーを出力する(S111)。一方、周波数成分の強度及び含有割合が閾値以下である場合(S110でYES)には、調理容器5とかき混ぜ器具4との間に調理材料6を挟み込んだと判断し、調理材料挟み込みエラーを出力する(S112)。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
つまり、本発明の一局面に係る調理補助ロボットは、調理容器内部の調理材料を物理的に移動させることによって調理を行う調理補助ロボットであって、調理材料を移動させるかき混ぜ動作を行うためのかき混ぜ駆動部と、調理容器内の調理材料の高さ分布を測定する高さ分布測定部と、高さ分布測定部により測定された調理材料の高さ分布に基づいて、かき混ぜ動作のかき混ぜ方向を選択するかき混ぜ方向選択部と、かき混ぜ方向に応じたかき混ぜ動作をかき混ぜ駆動部に指示する動作指示部とを備え、調理容器内に所定の高さ以上の山が形成されている場合に、かき混ぜ方向選択部は、山を崩すためのかき混ぜ方向を選択する。
本発明によれば、調理容器内に所定高さ以上の山が形成されている場合、つまり、調理容器の調理面から上に離れて加熱され難い位置に調理材料が堆積している場合に、この調理材料を低い位置に落として加熱することが可能となる。
したがって、本発明によれば、調理容器内部の調理材料の加熱むらが発生し難くい効率的なかき混ぜ調理を行うことができる。
具体的に、かき混ぜ方向選択部は、調理容器の調理面に垂直な面であって、調理材料の高さが最大となる頂点を通る複数の仮想垂直面のうち、各仮想垂直面における調理材料の高さの平均に対する分散が最大となるものに沿った方向をかき混ぜ方向として選択するように構成することができる。
この構成によれば、仮想垂直面において高さの平均に対する分散が最大となる方向、すなわち調理材料が最も偏在している方向に沿って山を崩すことができるので、当該かき混ぜ方向における調理材料の分散を小さくすることにより調理材料の全体を満遍なく加熱することが可能となる。
調理補助ロボットにおいて、かき混ぜ方向選択部は、頂点を移動開始点に設定するとともに、かき混ぜ方向として選択された垂直面と調理容器の縁部とが交差する2つの交点のうち、頂点から遠い方の交点を移動目標点に設定することが好ましい。
この構成によれば、頂点を基準として縁部までの距離が長い方向に向けて調理材料を移動させて山を崩すことができるので、山に堆積された調理材料を調理容器内の広範囲にわたり広げることができ、これにより、調理材料を満遍なく加熱することが可能となる。
調理補助ロボットにおいて、調理容器内に所定の高さ以上の山が存在しない場合に、かき混ぜ方向選択部は、調理容器内に山を作るためのかき混ぜ方向を選択することが好ましい。
この構成によれば、調理容器内に所定高さ以上の山が存在しない場合、つまり、調理容器内に比較的に満遍なく調理材料が広がっている場合に、一旦山を作るとともに上述した山崩し動作を行うことにより、調理容器の調理面に接触していた調理材料と表層に位置していた調理材料とを入れ替えることができるため、より満遍なく調理材料の加熱を行うことが可能となる。
調理補助ロボットにおいて、過去のかき混ぜ動作の履歴を記録する動作履歴記録部をさらに備え、かき混ぜ方向選択部は、かき混ぜ動作の履歴に基づいて調理容器の調理面のうち利用頻度が所定値よりも低い範囲を特定し、利用頻度の低い範囲に山を作る目標位置を設定し、調理容器の縁部から目標位置へ向かう方向をかき混ぜ方向として選択することが好ましい。
この構成によれば、利用頻度が所定値よりも低い範囲、つまり、調理容器の調理面の熱を今まで有効に利用できていない範囲に山を作ることにしているため、調理容器の熱を有効に活用することができる。しかも、構成では、調理容器の一部が必要以上に熱せられている時間を短くすることができるので、調理容器の寿命を延ばすことができるという効果もある。
調理補助ロボットにおいて、かき混ぜ方向選択部は、調理容器の縁部に設定された複数の開始点と目標位置とをそれぞれ繋ぐ複数の線分のうち、所定の長さ以上の線分に沿った方向をかき混ぜ方向として選択することが好ましい。
この構成によれば、調理材料の山を作るためのかき混ぜ方向として所定の長さ以上のものが選択されるため、調理材料を殆どかき集めることができない距離の短いかき混ぜ方向が選択されるのを防止することにより、かき混ぜ動作の効率化を図ることができる。
調理補助ロボットにおいて、かき混ぜ方向選択部は、調理容器の調理面のうち利用頻度が所定値よりも低い範囲が存在しない場合に、調理容器の調理面の中心を山を作る目標位置として設定することが好ましい。
この構成によれば、所定高さ以上の山が存在せず、かつ、規定値よりも低い利用頻度の範囲が存在しない場合であっても、一旦調理容器の中心に山を作るとともに上述した山崩し動作を行うことにより、調理容器の調理面に接触していた調理材料と表層に位置していた調理材料とを入れ替えることができる。また、構成によれば、調理容器の調理面全体から中心に向けて満遍なく調理材料を集めることができる。さらに、構成では、調理材料が調理容器の中心へ集められるため、調理容器の中心以外の部分に集める場合と比較して調理容器から調理材料がこぼれるのを低減することができる。
調理補助ロボットにおいて、調理容器内部の温度分布を測定する温度分布測定部をさらに備え、かき混ぜ方向選択部は、調理容器の調理面のうち最も温度が高い位置を山を作る目標位置として設定するとともに、調理容器の縁部から目標位置へ向かう方向をかき混ぜ方向として選択することが好ましい。
この構成によれば、調理容器の調理面のうち最も温度が高い位置、つまり、調理容器の調理面の熱を今まで有効に利用できていない範囲に山を作ることにしているため、調理容器の熱を有効に活用することができる。しかも、構成では、調理容器の一部が必要以上に熱せられている時間を短くすることができるので、調理容器の寿命を延ばすことができるという効果もある。
調理補助ロボットにおいて、かき混ぜ方向選択部は、調理容器の調理面の中心を山を作る目標位置として設定し、調理容器の縁部から目標位置へ向かう方向をかき混ぜ方向として選択することが好ましい。
この構成によれば、調理容器の調理面全体から満遍なく中心に向けて調理材料を集めることができる。また、構成では、調理材料が調理容器の中心へ集められるため、調理容器の中心以外の部分に集める場合と比較して調理容器から調理材料がこぼれるのを低減することができる。
調理補助ロボットにおいて、かき混ぜ方向選択部は、調理容器の調理面の中心を山を作る目標位置として設定するとともに、調理容器の縁部に複数の開始点を設定し、調理容器の調理面に垂直な面であって、目標位置と各開始点とを通る複数の仮想垂直面のうち、当該各仮想垂直面における調理材料の高さの平均に対する分散が最も大きくなる仮想垂直面に沿った方向をかき混ぜ方向として選択することが好ましい。
この構成によれば、上述のように調理容器の中心に調理材料を集める効果に加えて、調理材料の高さのばらつきが最も大きい方向、すなわち調理材料の山の形成が不充分な方向を検出することができるため、その方向へのかき混ぜ動作を行うことにより、効率的に山作り動作を行うことができる。
調理補助ロボットにおいて、調理容器内部の温度分布を測定する温度分布測定部をさらに備え、かき混ぜ方向選択部は、調理容器の調理面の中心を山を作る目標位置として設定するとともに、調理容器の縁部に複数の分割点を設定し、目標位置と各分割点とを結ぶことにより分割される調理容器上の複数の領域のうち、平均温度が最も低い領域を通るように設定された調理容器の縁部から目標位置までの方向をかき混ぜ方向として選択することが好ましい。
この構成によれば、充分に加熱されていない調理材料を調理容器の温度の高い中心領域に集めることができるので、調理容器の熱を有効に利用して調理材料を満遍なく加熱することができる。
調理補助ロボットにおいて、かき混ぜ駆動部は、かき混ぜ駆動部に取り付けられたかき混ぜ器具の調理容器内での位置及び角度を変化させることにより、かき混ぜ動作を行うように構成され、山を崩す動作では、かき混ぜ器具のうち、調理容器から遠い部分ほどかき混ぜ方向の移動で先行するようにかき混ぜ器具を傾斜させた状態で移動させることが好ましい。
この構成によれば、調理材料に対してかき混ぜ器具を介して直接力を作用させてかき混ぜ動作を行うことができるので、調理容器内の調理材料の山崩し動作を精度良く安定して行うことができる。さらに、構成では、調理容器から遠い部分ほどかき混ぜ方向の移動で先行するようにかき混ぜ器具を傾斜させた状態でかき混ぜ器具を移動させるようにしているため、山から崩れた調理材料をかき混ぜ器具の途中部で上から押さえ付けることにより、調理材料が調理容器からこぼれ落ちるのを抑制することができる。
調理除補ロボットにおいて、かき混ぜ駆動部は、かき混ぜ駆動部に取り付けられたかき混ぜ器具の調理容器内での位置及び角度を変化させることにより、かき混ぜ動作を行うように構成され、山を作る動作では、かき混ぜ器具のうち、調理器具に近い部分ほどかき混ぜ方向の移動で先行するようにかき混ぜ器具を傾斜させた状態で移動させることが好ましい。
この構成によれば、調理器具に近い部分ほどかき混ぜ方向の移動で先行するようにかき混ぜ器具を傾斜させた状態、つまり、調理容器の調理面と調理材料との間にかき混ぜ器具の先端部を滑り込ませるように当該かき混ぜ器具を寝かせた状態でかき混ぜ器具を移動させるため、調理容器の調理面に接する調理材料を上に掬い上げるようにしつつ、調理材料の山を作ることができる。したがって、構成によれば、調理容器の調理面に接する調理材料と、表層に位置する調理材料とを入れ替えることにより、調理容器の熱を調理材料により満遍なく伝えることができる。
調理補助ロボットにおいて、かき混ぜ駆動部は、調理容器の位置及び角度を変化させる、又は調理容器に振動を加えることにより、かき混ぜ動作を行うように構成されていることが好ましい。
この構成によれば、調理材料に直接異物を接触させず、調理材料に余計な力を与えることがないので、型崩れし易い調理材料であっても型崩れが起きるのを抑制することができる。
調理補助ロボットにおいて、調理材料及び調理レシピごとに予め設定されたかき混ぜ情報を蓄積するためのかき混ぜ情報記憶部と、少なくとも調理材料の種類、使用量、動作の開始及び動作時間を含む情報の入力を受け付ける操作指示入力部とをさらに備え、操作指示入力部により入力された情報とかき混ぜ情報とに基づいて、かき混ぜ駆動部によるかき混ぜ動作が制御されることが好ましい。
この構成によれば、例えば、使用者から入力された調理材料の種類に基づいて、当該調理材料に適した調理、例えば、調理材料の型崩れを低減するためのかき混ぜ速度の制御等を行うことができる。
調理補助ロボットにおいて、高さ分布測定部により測定された高さ分布に基づいて、調理材料の混合状態を検出する混合状態検出部をさらに備え、混合状態検出部による混合状態に基づいて、加熱量、加熱時間、かき混ぜ方向及びかき混ぜ時間が調整されることが好ましい。
この構成によれば、調理材料の混合状態を検出することができるので、この混合状態に基づいて加熱量、加熱時間、かき混ぜ方向及びかき混ぜ時間を調整することができる。
調理補助ロボットにおいて、かき混ぜ駆動部は、かき混ぜ駆動部に取り付けられたかき混ぜ器具の調理容器内での位置及び角度を変化させることにより、かき混ぜ動作を実行するように構成され、かき混ぜ器具に加わる外力を検出する力検出部と、かき混ぜ器具が当該かき混ぜ器具以外の物と接触した際に発生する音を収録する集音部と、かき混ぜ器具に加わる外力が所定の閾値を上回った場合に、所定時間前から閾値を上回った時点までの音を集音部から抽出し、音の周波数成分のうち、調理容器の固有振動数近傍の周波数成分の強度が所定の値を下回るか否かを判定することにより異常状態にあるか否かを検出する異常検出部とをさらに備え、異常検出部により異常状態にあると検出された場合には、調理容器とかき混ぜ器具との間に調理材料が挟みこまれたと判断して、現時点で行われているかき混ぜ動作を中止するように構成されていることが好ましい。
この構成によれば、調理材料が調理容器とかき混ぜ器具との間に挟まった場合にかき混ぜ動作を中止することができるので、調理材料に対して過剰の力が与えられるのを抑制することにより、比較的やわらかい調理材料についても型崩れを抑制することができる。
また、本発明の別の局面に係る調理補助方法は、調理補助ロボットによって調理容器内部の調理材料を物理的に移動させることにより調理を行う調理補助方法であって、調理補助ロボット内において、調理容器内の調理材料の高さ分布を測定するステップと、調理補助ロボット内において、調理容器内に所定高さ以上の山が形成されているか否かを判定するステップと、調理補助ロボット内において、山が存在する場合に山を崩すためのかき混ぜ方向を選択する一方、山が存在しない場合に山を作るためのかき混ぜ方向を選択するステップと、調理補助ロボットのかき混ぜ駆動部によって、選択された混ぜ方向に調理材料を移動させることにより、山を崩す動作、又は山を作る動作を行うステップとを含む。
本発明によれば、調理容器内に所定高さ以上の山が形成されている場合、つまり、調理容器の調理面から上に離れて加熱されにくい位置に調理材料が堆積している場合に、この調理材料を低い位置に落として過熱することができる。一方、所定高さ以上の山が存在しない場合、つまり、調理容器内に比較的に満遍なく調理材料が広がっている場合に、一旦山を作るとともに上述した山崩し動作を行うことにより、調理容器の調理面に接触していた調理材料と表層に位置していた調理材料とを入れ替えることができるため、満遍なく調理材料の過熱を行うことができる。
したがって、本発明によれば、調理容器内部の調理材料の過熱むらが発生し難い効率的なかき混ぜ調理を行うことができる。