JP2009100686A - 包装α化麺類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 常温および/またはチルド温度で長期間安定に保存することができ、長期間保存した後でも良好な外観、食感を保持している、常温および/またはチルド温度で流通、販売される包装α化麺類の製法の提供。
【解決手段】 蒸熱処理を行ってα化した後にアルコールを付着させるか又はアルコールと酸を付着させた、アルコールの付着量が1〜5質量%であるか又はアルコールの付着量が1〜5質量%で酸の付着量が0.1〜0.5質量%であり、且つ水分含量が30〜45質量%であるα化麺類を包装して包装α化麺類を製造する方法、或いは前記包装後に80〜100℃で20〜60分間加熱処理して包装α化麺類を製造する方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、常温またはチルド温度での流通および長期保存が可能な、包装したα化麺類およびその製造方法に関する。
本発明により得られる包装α化麺類は、常温またはチルド温度で長期保存後も良好な外観および食感を維持している。
α化した麺線を油で揚げた油揚げ即席麺類や、α化した麺線を熱風乾燥したノンフライ即席麺類などの即席麺類は、常温で長期間保存でき、しかも熱湯を注ぐだけで短時間に喫食可能に復元することから、古くから汎用されているが、復元時の食感や食味が十分に良好であるとは言えず、消費者の高品質指向や本物指向に合致しない場合が生じている。
かかる点から、長期保存が可能で且つ簡単に喫食可能に復元でき、しかも消費者の高品質指向や本物指向に合致した麺類が求められており、当該麺類についての研究や開発が従来から行われている。
常温での長期保存を目的とした包装α化麺類の製法としては、例えば、(1)水分含量が30〜50重量%のα化した麺類を包装後に100℃以上の温度でレトルト殺菌処理して常温で長期保存可能な包装α化麺類を製造する方法(特許文献1を参照)、(2)デュラム小麦粉またはデュラム小麦セモリナと澱粉を配合した製麺原料を用いて麺類をつくり、当該麺類をα化し、場合により酸処理した後に、包装し、90℃前後の温度で加熱殺菌処理して、常温での流通および常温での長期保存が可能な包装α化麺類を製造する方法(特許文献2を参照)、(3)アラビアガムを配合した製麺原料を用いて麺類をつくり、当該麺類をα化した後に酸液で処理し、次いで包装した後に100℃以下の温度で加熱して殺菌処理を行なって常温で長期保存の可能な包装α化麺類(ロングライフ麺類)を製造するか、またはアラビアガムを配合した製麺原料を用いて麺類をつくり、当該麺類をα化した後に包装し、レトルト処理(120℃の高温で加圧加熱処理)を行なって常温で長期保存可能な包装α化麺類(レトルト麺類)を製造する方法(特許文献3を参照)、(4)粒径51μm以下の澱粉を50%以上含有するそば粉と他の穀粉類を含む原料から調製した生そばを蒸煮処理した後、pHを5.5〜6.0または4.5〜5.0に調整し、包装後に75〜95℃の温度で加熱殺菌処理する方法(特許文献4を参照)が知られている。
しかしながら、上記(1)の方法で得られる包装α化麺類は、常温で長期保存が可能であるが、長期間保存後に喫食したときに、麺の中心部は粘弾性がなく、麺表面は歯に付着し歯切れが悪く、食感が不良である。
また、上記(2)〜(4)の方法で得られる包装α化麺類は、いずれも、水分を多く含んだ状態(水分含量50〜75質量%)で包装して加熱処理しているため、保存中に麺表面の水分が中心部に移行すると共に麺の老化が進行して粘弾性が失われる。
特公昭63−59668号公報 特開平4−200361号公報 特開平11−192063号公報 特開2002−153226号公報
本発明の目的は、常温またはチルド温度で流通可能でかつ長期保存安定性に優れていて、常温またはチルド温度で長期間保存した後でも、麺中心部の食感が粘弾性に優れ且つ麺表面の食感は歯切れが良好であって、しかも透明感のある良好な外観を維持している、包装α化麺類およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは上記の目的を達成すべく種々検討を重ねてきた。その結果、50〜75質量%という水分含量の多いα化麺類を包装した後に100℃以下の温度で加熱殺菌処理して包装α化麺類を製造するかまたは100℃よりも高い温度で加熱加圧処理してレトルト麺類とする上記した従来の方法(特許文献2〜4などの方法)、或いは水分含量が50質量%以下の状態で包装した後に100℃よりも高い温度で加熱加圧処理して包装α化麺類を製造する従来の方法(特許文献1の方法)に代えて、α化麺類の水分含量を30〜45質量%という少ない量にした状態で、しかもその際に当該α化麺類表面にエタノールを所定の量で付着させた状態で包装すると、包装後に加熱処理を行なわなくても、チルド温度(0〜5℃)では1カ月以上保存可能な包装α化麺類が得られること、しかもそれにより得られる包装α化麺類は1カ月後でも、麺中心部の食感が粘弾性に優れ且つ麺表面の食感は歯切れがよく、透明感のある良好な外観を有し、高い品質を保持していることを見出した。
さらに、本発明者らは、上記した方法で包装α化麺類を製造するに当たって、α化麺類表面にエタノールと共に所定の量の酸を付着させて包装すると、α化麺類表面へのエタノールの付着量を低減しながら、チルド温度で1カ月以上保存可能であり、1カ月保存した後でも、麺中心部の食感が粘弾性に優れかつ麺表面の食感は歯切れがよく、透明感のある良好な外観を維持する包装α化麺類が得られることを見出した。
また、本発明者らは、上記した方法で得られる包装α化麺類を、包装後に80〜100℃で20〜60分間加熱処理すると、その保存可能期間がより一層長くなって、常温では1カ月以上保存可能になり、またチルド温度では3カ月以上保存可能になること、しかもそのような長期間にわたる保存後にも、当該包装α化麺類は、麺中心部の食感は粘弾性に優れ且つ麺表面の食感は歯切れがよく、透明感のある良好な外観を保持していることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) 生麺類、半乾燥麺類または乾燥麺類を蒸熱処理して得られるα化麺類の表面にエタノールを付着させて包装α化麺類を製造する方法であって、前記α化麺類の質量に対してエタノールの付着量を1〜5質量%とし、且つα化麺類の水分含量を30〜45質量%にして包装することを特徴とする、包装α化麺類の製造方法である。
そして、本発明は、
(2) 生麺類、半乾燥麺類または乾燥麺類を蒸熱処理して得られるα化麺類の表面にエタノールおよび酸を付着させて包装α化麺類を製造する方法であって、前記α化麺類の質量に対して、エタノールの付着量を1〜5質量%、酸の付着量を0.1〜0.5質量%とし、且つα化麺類の水分含量を30〜45質量%にして包装することを特徴とする、包装α化麺類の製造方法である。
さらに、本発明は、
(3) 包装後に80〜100℃で20〜60分間加熱処理する上記(1)または(2)の包装α化麺類の製造方法である。
そして、本発明は、
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかの製造方法により得られる包装α化麺類である。
エタノールの付着量が1〜5質量%で、水分含量が30〜45質量%であるα化麺類を包装する本発明の方法により得られる包装α化麺類は、包装後に加熱処理を行なわなくても、チルド温度(0〜5℃)で1カ月以上保存可能であり、しかもチルド温度で1カ月以上保存した後でも、麺中心部の食感が粘弾性に優れ且つ麺表面の食感は歯切れがよくて良好な食感を有し、しかも透明感のある良好な外観を有し、高い品質を保持している。
エタノールの付着量が1〜5質量%で、水分含量が30〜45質量%であるα化麺類を包装した後、80〜100℃で加熱処理する本発明の方法により得られる包装α化麺類は、常温では1カ月以上保存可能であり、またチルド温度(0〜5℃)では3カ月以上保存可能であり、しかも常温で1カ月以上保存した後でも、またはチルド温度で3カ月以上保存した後でも、麺中心部の食感が粘弾性に優れかつ麺表面の食感は歯切れがよく、しかも透明感のある良好な外観を有し、高い品質を保持している。
本発明では、水分含量が30〜45質量%のα化麺類を得るに当たっては、蒸熱処理によるα化方法を採用しているため、水分含量が30〜45質量%のα化麺類を円滑に製造することができる。しかも、蒸熱処理によって調製した水分含量30〜45質量%のα化麺類を用いて包装α化麺類を製造しているため、包装α化麺類の食感および外観が長期保存後でも良好に保たれている。
本発明において、α化麺類表面にエタノールと共に所定の量の酸を付着させた、水分含量が30〜45質量%のα化麺類を用いて包装α化麺類を製造した場合には、α化麺類表面へのエタノールの付着量を低減しながら、長期保存が可能で、長期保存後も麺中心部の食感が粘弾性に優れかつ麺表面の食感は歯切れがよく、しかも透明感のある良好な外観を維持する包装α化麺類を得ることができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明では、包装α化麺類を常温およびチルド温度で長期間保存可能にし、且つ長期保存後にも良好な食感および外観を保持するために、α化麺類の水分含量を30〜45質量%の範囲にした状態で包装することが必要であり、α化麺類の水分含量を35〜40質量%の範囲にした状態で包装することが好ましい。
α化麺類の水分含量が前記範囲よりも少ない状態で包装すると、保存性は向上するが、α化麺類の食感および外観が不良になり、しかも喫食可能状態への復元に長い時間がかかるようになる。一方、α化麺類の水分含量が前記範囲よりも多い状態で包装すると、α化麺類表面にエタノールを付着させない場合は勿論のこと、麺類表面にエタノールを本発明で規定する量で付着させた場合であっても、早期にカビの発生や腐敗などが生じ易くなって、常温またはチルド温度での長期保存ができなくなる。
ここで、本発明における、α化麺類の前記した水分含量「30〜45質量%」、および好ましい水分含量「35〜40質量%」は、包材で包装する時点でのα化麺類の水分含量をいい、当該水分含量は、以下の数式(i)から求められる。

α化麺類の水分含量(質量%)={(A−B)/A}×100 (i)

式中、A=包装する時点でのα化麺類の質量(g)、B=包装する時点でのα化麺類を135℃の恒温槽中で2時間加熱した後(麺類の質量がそれ以上減少せず一定になった時点)の麺類の質量(g)を示す。
水分含量が30〜45質量%のα化麺類は、生麺類、半乾燥麺類または乾燥麺類を蒸熱処理して製造する。蒸熱処理を施す前の前記した麺類の種類、麺類に用いる原料の種類、成分配合(成分組成)、麺類の製造方法、形状、寸法などは特に制限されず、製造しようとする包装α化麺の種類などに応じて、適当なものを選択して用いることができる。
本発明では、蒸熱処理を施す麺類としては、生麺類、半乾燥麺類または乾燥麺類のいずれでもよいが、そのうちでも、生麺類を用いることが、麺全体が均一またはほぼ均一にα化され且つ水分含量が30〜45質量%の範囲にあるα化麺類を短い時間で円滑に得ることができる点から好ましい。
水分含量が30〜45質量%、好ましくは35〜40質量%であるα化麺類を得るための蒸熱処理条件は、麺の種類、麺の太さ、麺の成分組成などによって異なるため、水分含量が30〜45質量%になるように蒸熱条件を調整する。一般的には、温度100℃程度で1〜4分間程度蒸熱処理を行なう。
α化麺類の水分含量を30〜45質量%にするに当たっては、必要に応じて、蒸熱処理の前および/または後に茹で処理を行なってもよいが、蒸熱処理を行なわずに、茹で処理のみによって十分にα化させようとすると、水分含量が50質量%以上と多くなるので好ましくない。すなわち、茹で処理のみで水分含量が30〜45質量%のα化麺類を製造しようとすると、麺の表面部分はα化されているが、麺の内部がα化されずに芯が残存した状態になり、麺の食感が大きく低下する。
蒸熱処理を行なうか、または蒸熱処理と茹で処理を行なって得られたα化麺類の水分含量が45質量%を超えている場合、または水分含量は30〜45質量%の範囲内であるが当該水分含量範囲を維持しながら水分含量を多少低下させたい場合には、蒸熱処理、または蒸熱処理と茹で処理によって得られたα化麺類を送風等(例えば、単なる送風、冷風、温風)によって乾燥して、包装する時点でのα化麺類の水分含量を、30〜45質量%の範囲内に調整するか、または30〜45質量%の範囲内のより好ましい含量に調整するとよい。
本発明では、以下で具体的に説明するように、α化麺類の表面にエタノールを付着させるか、またはエタノールと酸を付着させてから包装する必要があることから、α化麺類表面へのエタノールの付着の際、またはエタノールと酸の付着の際に、エタノールと共にまたはエタノールおよび酸と共に水分がα化麺類に更に付与されて、α化麺類の水分含量が45質量%よりも多くなることがある。そのような場合には、α化麺類を前記した送風等によって乾燥して、包装する時点でのα化麺類の水分含量が30〜45質量%、好ましくは35〜40質量%の範囲であるようにする。
本発明では、前記したように、水分含量が30〜45質量%、好ましくは35〜40質量%であるα化麺類表面に、エタノールを1〜5質量%の割合で付着させて包装することが必要である。
本発明では、水分含量が30〜45質量%のα化麺類に、エタノールを前記した範囲内の量で付着させて包装することによって、包装後に加熱処理を行なわなくても、チルド温度(0〜5℃)で流通および長期保存が可能で、チルド温度で1カ月以上保存した後でもカビなどを発生することなく、麺中心部の食感が粘弾性に優れ且つ麺表面の食感は歯切れがよくて良好な食感を有し、しかも透明感のある良好な外観を保持している、チルド温度での流通用の包装α化麺類を得ることができる。
また、水分含量が30〜45質量%のα化麺類に、エタノールを前記した範囲内の量で付着させて包装することによって、包装後に80〜100℃で20〜60分間加熱処理した場合には、常温およびチルド温度で流通および長期保存が可能で、常温では1カ月以上、チルド温度では3カ月以上保存した後でもカビなどを発生することなく、麺中心部の粘弾性および麺表面の歯切れに優れる良好な食感と透明感のある良好な外観を保持している、常温およびチルド温度での流通用の包装α化麺類を得ることができる。
本発明において、α化麺類表面に対するエタノールの付着量が、α化麺類の質量に対して1質量%よりも少ないと、常温またはチルド温度で長期保存可能な包装α化麺類が得られなくなり、一方エタノールの付着量がα化麺類の質量に対して5質量%よりも多いと、エタノール臭が強くなって包装α化麺類の風味が低下する。α化麺類表面へのエタノールの付着量は、α化麺類の質量に対して1〜3質量%であることが好ましく、1.5〜2.5質量%であることがより好ましい。
また、本発明では、水分含量が30〜45質量%、好ましくは35〜40質量%であるα化麺類の表面に、α化麺類の質量に対してエタノールを1〜5質量%の割合で付着させると共に、酸を0.1〜0.5質量%の割合で付着させて包装してもよい。
エタノールと共に酸を付着させて包装する場合には、エタノールの付着量を少なくしながら(例えばエタノールの付着量を、α化麺類の質量に対して下限値である1質量%にするか、それよりも多少多い量にしながら)、包装後に加熱処理を行なわない場合はチルド温度で1カ月以上保存が可能で、また包装後に80〜100℃で20〜60分間加熱処理した場合は、常温で1カ月以上、チルド温度で3カ月以上保存が可能で、前記保存後も麺中心部の粘弾性および麺表面の歯切れに優れる良好な食感と透明感のある良好な外観を保持している、チルド温度および/または常温での流通用の包装α化麺類を得ることができる。
エタノールと共に、酸を付着させる場合には、エタノールの付着量をα化麺類の質量に対して1〜2.5質量%、特に1〜2質量%とし、酸の付着量をα化麺類の質量に対して0.1〜0.5質量%、特に0.1〜0.3質量%とすることが好ましい。
本発明において使用するエタノールおよび酸は、食品への使用が許可されているものであればいずれでもよい。
酸の具体例としては、乳酸、クエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸などの有機酸およびこれらの塩類を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
ここで、本明細書における「α化麺類表面に対するエタノールの付着量」は、包装する時点でのα化麺類の質量に対してエタノール濃度100%として換算した付着量(質量%)をいう。
また、本明細書における「α化麺類表面に対する酸の付着量」は、包装する時点でのα化麺類の質量に対して酸濃度100%として換算した付着量(質量%)をいう。
α化麺類表面へのエタノールの付着方法としては、α化麺類表面全体にエタノールをムラなく均一に付着させ得る方法であればいずれの方法を採用してもよく、例えば、エタノールまたはエタノール水溶液をα化麺類表面に噴霧する方法、エタノールまたはエタノール水溶液中にα化麺類を浸漬する方法、前記した噴霧と浸漬を併用する方法などを挙げることができる。エタノール水溶液中にα化麺類を浸漬する場合は、α化麺類表面への水分の付着(吸収)を抑制するために、浸漬時間を短くするようにする。
α化麺類表面にエタノールまたはエタノール水溶液を噴霧して付着させる場合は、α化麺類表面全体に均一に付着させるために、α化麺類を広げた状態にしながら、またはα化麺類を転動などによって動かしながら噴霧を行なうか、或いはα化麺類を1食分ずつまたは複数食分ずつ(好ましくは2〜3食分ずつ)に小分けした状態、もしくは、小分けしたα化麺類を包材に入れた直後に、エタノールまたはエタノール水溶液を噴霧することが好ましい。
また、α化麺類表面に酸を付着させる場合は、α化麺類表面全体に酸をムラなく均一に付着させ得る方法であればいずれの付着方法を採用してもよく、例えば、酸水溶液をα化麺類表面に噴霧する方法、酸水溶液中にα化麺類を浸漬する方法、前記した噴霧と浸漬を併用する方法などを挙げることができる。酸水溶液中にα化麺類を浸漬する場合は、α化麺類への水分の付着(吸収)を抑制するために、浸漬時間を短くするようにする。
α化麺類表面に酸水溶液を噴霧して付着させる場合は、α化麺類表面全体に均一に付着させるために、α化麺類を広げた状態にしながら、またはα化麺類を転動などによって動かしながら噴霧を行なうか、或いはα化麺類を1食分ずつまたは複数食分ずつ(好ましくは2〜3食分ずつ)に小分けした状態、もしくは、小分けしたα化麺類を包材に入れた直後に、酸水溶液を噴霧することが好ましい。
α化麺類表面にエタノールと共に酸を付着させる場合は、エタノールの付着と酸の付着を同時に行なってもよいし、または逐次に行なってもよい。同時に付着させる場合は、エタノールと酸の両方を含有する水溶液をα化麺類表面に噴霧する方法、エタノールと酸の両方を含む水溶液中にα化麺類を浸漬する方法などが挙げられる。また、逐次に付着させる場合は、エタノールまたはその水溶液をα化麺類表面に噴霧するか、またはエタノールまたはその水溶液中にα化麺類を浸漬した後に、酸水溶液をα化麺類に噴霧するかまたは酸水溶液中にα化麺類を浸漬する方法、或いは前記と逆の順序により行なう方法などが挙げられる。
エタノールを付着させるか、またはエタノールと酸を付着させて水分含量を30〜45質量%、好ましくは35〜40質量%に調製したα化麺類を包材で包装して、包装α化麺類とする際の包材としては、ロングライフ麺類などの製造に通常用いられている包材のいずれもが使用できる。本発明で用い得る包材としては、α化麺類表面に付着させたエタノール、またはエタノールと酸が、後工程の加熱処理によって揮散して失われないようにするために、密封性の高い包材を使用することが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエステルなどからなる単層フィルムやシート、前記したポリマーからなる層が2層以上製造した積層フィルムや積層シート、前記したポリマーからなる層の1層または2層以上と他の層(例えばアルミニウム層など)からなる積層フィルムまたは積層シート、前記した積層シートから形成した容器などを挙げることができる。
α化麺類の包装方法は特に制限されず、使用する包材の種類、形態(形状)などに応じて、ロングライフ麺類などにおいて従来から採用されている包装方法を採用して包装することができる。
包装して得られる包装α化麺類は、上記したように、加熱処理を行なわずに、そのままチルド温度保存用の包装α化麺類として流通、販売することができる。
上記により得られる包装α化麺類は、好ましくは包装後に80〜100℃で20〜60分間加熱処理することによって、常温およびチルド温度で長期保存が可能な、常温および/またはチルド温度で流通、販売するための包装α化麺類とすることができる。
包装後に80〜100℃で20〜60分間加熱処理(加熱殺菌処理)を行なった包装α化麺類は、上記したように、常温では1カ月以上、チルド温度では3カ月以上保存が可能で、前記保存後でも麺中心部の食感が粘弾性に優れかつ麺表面の食感は歯切れがよく、透明感のある良好な外観を保持している。
包装α化麺類を包装後に加熱処理する場合は、加熱処理の温度が80℃未満であると、加熱処理による包装α化麺類の保存期間の延長効果が低くなり、一方加熱処理の温度が100℃を超えると、麺中心部の粘弾性や麺表面の歯切れが低下して食感が不良になり、しかも透明感が低下して外観が不良になる。
加熱処理時間が20分未満であると、加熱処理による包装α化麺類の保存期間の延長効果が低くなり、一方加熱処理時間が60分間を超えると、麺中心部の粘弾性および麺表面の歯切れが低下して食感が不良になる。
包装後の加熱処理は、水蒸気を利用して間接加熱する方法が好ましく採用され、例えば一般に90℃で、30〜40分間程度行なわれる。
本発明で対象としている包装α化麺類の種類は特に制限されず、いわゆる、調理済みのロングライフ麺類(α化されたロングライフ包装麺類)として、流通、販売し得る包装α化麺類であればいずれでもよい。本発明で対象としている包装α化麺類に包含される麺類としては、小麦粉及びその他の原料を用いて製麺したものであって、中華麺、焼そば、ワンタン、うどん、素麺、冷麦、きしめん、日本そば、スパゲティ、マカロニなどのパスタ類、米麺、大麦麺などを挙げることができる。
但し、包装α化麺類が日本そばである場合は、そば粉には一般に微生物が多く含まれることから、滅菌したそば粉を用いて製造した日本そばを使用して包装α化麺を製造することが、長期保存性の観点から好ましい。
以下に本発明を実施例などによって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例などにより何ら制限されるものではない。
以下の例において、包装する時点でのα化麺類の水分含量、エタノールの付着量および酸(乳酸)の付着量は、以下の方法で求めた。
(1)α化麺類の水分含量:
下記の数式(i)により求めた。

α化麺類の水分含量(質量%)={(A−B)/A}×100 (i)

[式中、A=包装する時点でのα化麺類の質量(g)、B=包装する時点でのα化麺類を135℃の恒温槽中で2時間加熱した後(麺類の質量がそれ以上減少せず一定になった時点)の麺類の質量(g)を示す。]
(2)α化麺類におけるエタノールの付着量:
下記の数式(ii)により求めた。

α化麺類のエタノール付着量(質量%)=[{(b−a)×(c/100)}/a]×100 (ii)

[式中、a=エタノール噴霧または浸漬前のα化麺類の質量(g)、b=エタノール噴霧または浸漬後のα化麺類の質量(g)、c=エタノール溶液の濃度(質量%)を示す。]
(3)α化麺類における乳酸の付着量:
下記の数式(iii)により求めた。

α化麺類の乳酸付着量(質量%)=[{(b'−a')×(c'/100)}/a']×100 (iii)

[式中、a'=乳酸噴霧または浸漬前のα化麺類の質量(g)、b'=乳酸噴霧または浸漬後のα化麺類の質量(g)、c'=乳酸溶液の濃度(質量%)を示す。]
また、以下の実施例および比較例で得られた包装α化麺類の品質[「外観」(透明感)、「麺中心部の粘弾性」および「麺表面の歯切れ」(歯ぬかりの有無)]の評価基準は、以下の表1に示すとおりである。
Figure 2009100686
《実施例1》[包装α化中華麺の製造]
(1) 中力小麦粉(日清製粉株式会社製「特雀」)70質量部および馬鈴薯澱粉(Jオイルミルズ株式会社製「BO−15」)30質量部に、食塩1.0質量部と粉末かんすい(オリエンタル酵母工業株式会社製「赤かんすい」)0.4質量部を水35質量部に溶解した水溶液を加えて、横型1軸ミキサー(新トーキョーメンキ製)で15分間混捏した後、常法により複合および圧延を行なって、厚さ1.2mmの麺帯にし、それを角刃の切刃#20番で切り出して生麺線を得た。
(2) 実験番号1では、上記(1)で得られた生麺線を、100℃で1分30秒間蒸熱処理した後、10秒間水洗し、さらに100℃で1分30秒間蒸熱処理して、α化中華麺を製造した。
実験番号2および4では、上記(1)で得られた生麺線を、100℃で2分30秒間蒸熱処理し、α化中華麺を製造した。
実験番号3では、前記の実験番号2および4で得られたα化中華麺を、温度30℃の温風にて5分間乾燥処理して、α化中華麺を製造した。
(3) 実験番号1〜3については、それぞれのα化中華麺を100gずつに小分した後、常温でエタノール溶液(濃度95質量%)を噴霧して、麺線表面にエタノールを付着させたα化中華麺を得た。このα化中華麺の水分含量およびエタノールの付着量を測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
実験番号4については、α化中華麺を100gずつに小分した後、常温でエタノール水溶液(濃度95質量%)を噴霧し、次いで常温で乳酸水溶液(濃度10質量%)を噴霧して、麺線表面にエタノールおよび乳酸を付着させたα化中華麺を得た。このα化中華麺の水分含量、エタノールの付着量および乳酸の付着量を測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(4) 前記で得られたエタノールを付着させたα化中華麺、またはエタノールと乳酸を付着させたα化中華麺を、耐熱性の包材(ポリアミドとポリエチレンの積層フィルム)で個別密封包装した後、蒸気殺菌庫内で、90℃で40分間加熱殺菌処理した。
(5) 得られた加熱殺菌処理後の包装α化中華麺を、常温(25℃)で30日間保存して、30日保存後にカビの発生およびは変色の有無について確認した。カビの発生および変色がない場合を(○)とし、カビの発生および/または変色があった場合を(×)としたところ、下記の表2に示すとおりであった。
保存性の評価後に異常のない実験区について、麺を包材から取出して、丼型のスチロール製容器に容れ、沸騰水500mlを注いだ後に湯切りをし、再度500mlの沸騰水を注ぎ、粉末スープを入れて、表1に示した評価基準に基づいて10名のパネラーで官能検査を実施し、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
さらに、得られた加熱殺菌処理後の包装α化中華麺を、チルド温度(5℃)で90日間保存した。90日保存後に上記と同様に保存性の評価を行った。また、異常のない実験区の麺を包材から取出し、手鍋に容れて沸騰水500mlを注いで1分間茹でた後、粉末スープを入れて10名のパネラーで官能試験を実施し、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
《比較例1》[包装α化中華麺の製造]
(1) 実験番号1では、実施例1の実験番号2と同じ方法でα化中華麺を製造した後、30℃の温風にて20分間乾燥処理して、水分含量の低減したα化中華麺を製造した。
実験番号2では、実施例1の実験番号1と同じ方法でα化中華麺を製造した後、水洗を行い、水分含量の増加したα化中華麺を製造した。
実験番号3では、実施例1の実験番号2と同じ方法でα化中華麺を製造した。
また、実験番号4では、粉末かんすいの使用量を0.01質量部に変更した以外は、実施例1の実験番号2と同じ方法でα化中華麺を製造した。
(2) 実験番号1および2では、得られたα化中華麺を100gずつに小分し、実施例1と同様にしてエタノール水溶液を噴霧して、麺線表面にエタノールを付着させたα化中華麺を得た。このα化中華麺の水分含量およびエタノールの付着量を測定したところ、下記の表3に示すとおりであった。次いで、このエタノールを付着したα化中華麺を、実施例1と同様にして、包装し加熱殺菌処理して、包装α化中華麺を製造した。
実験番号3では、得られたα化中華麺に対してエタノールの付着処理を行なわずに、実施例1と同様の条件で包装し加熱殺菌処理して、包装α化中華麺を製造した。
実験番号4では、得られたα化中華麺に対してエタノールの付着処理を行なわずに、レトルト殺菌用パウチに充填包装し、110℃で30分間加圧加熱殺菌処理をした。
(3) 上記により得られた包装α化中華麺について、実施例1と同様にして、常温(25℃)で30日間、およびチルド(5℃)で90日間の保存性の評価を実施した。
さらに、保存性の評価後に腐敗していない実験区については、実施例1と同様に10名のパネラーで官能検査を実施し、その平均値を採ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
Figure 2009100686
Figure 2009100686
上記の表2にみるように、実施例1においては、蒸熱処理を行ってα化した後にエタノールを付着させて、エタノールの付着量が2質量%で水分含量が32〜43質量%の範囲であるα化中華麺(実験番号1〜3)、またはエタノールと乳酸を付着させて、エタノールの付着量が1質量%および乳酸の付着量が0.1質量%でかつ水分含量が37質量%であるα化中華麺(実験番号4)を包装した後、90℃の温度で40分間加熱処理して包装α化中華麺を製造したことにより、常温(25℃)で30日間保存した後でも、またチルド温度(5℃)で90日間保存した後でも、カビ・変色が生じず、しかも喫食状態にしたときに透明感があって外観に優れ、麺中心部の粘弾性および麺表面の歯切れに優れていて良好な食感で、常温およびチルド温度で流通および長期保存可能な包装α化中華麺が得られていることがわかる。
それに対して、表3にみるように、比較例1の実験番号1では、実施例1と同様にエタノールを付着させたα化中華麺を包装した後に、実施例1と同様に90℃の温度で40分間加熱処理しているが、包装する時点でのα化中華麺の水分含量が26質量%と低いことにより、常温およびチルド温度での保存性は良好であるものの、保存後に喫食状態にしたときの中華麺の食感および外観が実施例1に比べて大きく劣っていることがわかる。
比較例1の実験番号2では、実施例1と同様にエタノールを付着させたα化中華麺を包装した後に、実施例1と同様に90℃の温度で40分間加熱処理しているが、包装する時点でのα化中華麺の水分含量が53質量%と高いことにより、常温で保存したときに30日後にはカビや変色が生じていて、長期保存できず、またチルド温度で保存した時にも同様に90日後にカビや変色が生じていて、長期保存できないことがわかる。
比較例1の実験番号3では、包装する時点でのα化中華麺の水分含量は37質量%であるが、α化中華麺にエタノールを付着させずに包装し加熱処理を行なったことにより、常温で保存したときに30日後にカビや変色が生じており、長期保存できず、またチルド温度で保存した時にも同様に90日後にカビや変色が生じており、長期保存できないことがわかる。
比較例1の実験番号4では、包装する時点でのα化中華麺の水分含量は37質量%であるが、α化中華麺を包装した後に110℃という高温でレトルト処理したことにより、常温およびチルド温度での保存性は良好であるが、保存後に喫食状態にしたときの中華麺の食感および外観が実施例1に比べて大きく劣っていることがわかる。
《実施例2》[チルド温度で流通および保存するための包装α化中華麺の製造]
実施例1において、包装後の加熱処理(加熱殺菌処理)を行なわなかった以外は、実施例1と同じ方法を採用して、チルド温度で流通および保存するための包装α化中華麺を製造した。
得られた包装α化中華麺を、チルド温度(5℃)で30日間保存し、30日間保存後の保存性の評価、喫食した際の中華麺の透明感(外観)、粘弾性および歯切れ(歯ぬかりの有無)を、実施例1と同様にして10名のパネラーに評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表4に示すとおりであった。
Figure 2009100686
上記の表4の結果にみるように、実施例2では、蒸熱処理を行ってα化した後にエタノールを付着させて、エタノールの付着量が2質量%で水分含量が32〜43質量%の範囲であるα化中華麺(実験番号1〜3)、またはエタノールと乳酸を付着させて、エタノールの付着量が1質量%および乳酸の付着量が0.1質量%で、かつ水分含量が37質量%であるα化中華麺(実験番号4)を包装して包装α化中華麺を製造したことにより、包装後に加熱処理をしていないにも拘わらず、チルド温度(5℃)で30日間保存した後でも、カビ・変色が生じず、しかも喫食状態にしたときに透明感があって外観に優れ、麺中心部の粘弾性および麺表面の歯切れに優れていて良好な食感になる、チルド温度で流通および長期保存可能な包装α化中華麺が得られることがわかる。
《実施例3》[包装α化うどんの製造]
(1) 中力小麦粉(日清製粉株式会社製「特雀」)70質量部およびタピオカ澱粉(Jオイルミルズ株式会社製「A700」)30質量部に、食塩1.5質量部を水35質量部に溶解した水溶液を加えて、横型1軸ミキサー(新トーキョーメンキ製)で15分間混捏した後、常法により複合および圧延を行なって厚さ1.2mmの麺帯にし、それを角刃の切刃#10番で切り出して生麺線を得た。
(2) 実験番号1では、上記で得られた生麺線を、100℃で1分30秒間蒸熱処理した後、10秒間水洗し、さらに1分30秒間蒸熱処理し、α化うどんを製造した。
実験番号2および4では、上記で得られた生麺線を、100℃で2分30秒間蒸熱処理し、α化うどんを製造した。
実験番号3では、前記実験番号2および4で得られたα化うどんを温度30℃の温風にて5分間乾燥処理し、α化うどんを製造した。
(3) 実験番号1〜3では、得られたそれぞれのα化うどんを100gずつに小分した後、常温でエタノール水溶液(濃度95質量%)を噴霧して、麺線表面にエタノールを付着させたα化うどんを得た。このα化うどんの水分含量およびエタノールの付着量を測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
実験番号4では、得られたα化うどんを100gずつに小分した後、常温でエタノール水溶液(濃度95質量%)を噴霧し、次いで常温で乳酸水溶液(濃度10質量%)を噴霧して、麺線表面にエタノールおよび乳酸を付着させたα化うどんを得た。このα化うどんの水分含量、エタノールの付着量および乳酸の付着量を測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
(4) 前記で得られた小分した、エタノールを付着させたα化うどん、またはエタノールと乳酸を付着させたα化うどんを、耐熱性の包材(ポリアミドとポリエチレンの積層フィルム)で個別密封包装した後、蒸気殺菌庫内で、90℃で40分間加熱殺菌処理した。
(5) 得られた加熱殺菌処理後の包装α化うどんを、実施例1と同様にして、保存性および官能評価を実施したところ、下記の表5に示すとおりであった。
《比較例2》[包装α化うどんの製造]
(1) 実験番号1では、実施例3の実験番号2と同じ方法でα化うどんを製造した後、30℃の温風にて20分間乾燥処理した。水分含量の低減したα化うどんを製造した。
実験番号2では、実施例3の実験番号1と同じ方法でα化うどんを製造した後、水洗を行い、水分含量の増加したα化うどんを製造した。
実験番号3および4では、実施例3の実験番号2と同じ方法でα化うどんを製造した。
(2) 実験番号1および2では、得られたα化うどんを100gずつに小分し、実施例3と同様にしてエタノール水溶液を噴霧して、麺線表面にエタノールを付着させたα化うどんを得た。このα化うどんの水分含量およびエタノールの付着量を測定したところ、下記の表6に示すとおりであった。次いで、このエタノールを付着させたα化うどんを、実施例3と同様にして、包装し加熱殺菌処理して、包装α化うどんを製造した。
実験番号3では、エタノールの付着処理を行なわずに、以後実施例3と同様にして、包装し加熱殺菌処理して、包装α化うどんを製造した。
実験番号4では、エタノールの付着処理を行なわずに、レトルト殺菌用パウチに充填包装し、110℃、30分間加圧加熱殺菌処理をした。
(3) 得られた加熱殺菌処理後の包装α化うどんを、実施例3と同様にして、保存性および官能評価を実施したところ、下記の表6に示すとおりであった。
Figure 2009100686
Figure 2009100686
上記の表5にみるように、実施例3では、蒸熱処理を行ってα化した後にエタノールを付着させてエタノールの付着量が2質量%で水分含量が32〜42質量%の範囲であるα化うどん(実験番号1〜3)、またはエタノールと乳酸を付着させてエタノールの付着量が1質量%および乳酸の付着量が0.1質量%で、かつ水分含量が38質量%であるα化うどん(実験番号4)を包装した後、90℃の温度で40分間加熱処理して包装α化うどんを製造したことにより、常温(25℃)で30日間保存した後でも、カビ・変色が生じず、しかも喫食状態にしたときに透明感があって外観に優れ、麺中心部の食感の粘弾性および麺表面の食感の歯切れに優れており、常温で流通および長期保存可能な包装α化うどんが得られることがわかる。
実施例3の包装α化うどんは、常温で30日以上にわたって品質の低下などを生ずることがなく保存可能であることから、チルド温度でも品質の低下などを生ずることがなく一層長い期間にわたって保存可能であることが予想される。
それに対して、表6にみるように、比較例2の実験番号1では、エタノールを付着させたα化うどんを包装した後に90℃の温度で40分間加熱処理しているが、包装する時点でのα化うどんの水分含量が28質量%と低いことにより、常温で30日以上にわたって保存可能であるものの、当該保存後に喫食状態にしたときのうどんの食感および外観が実施例3に比べて大きく劣っていることがわかる。
比較例2の実験番号2では、エタノールを付着させたα化うどんを包装した後に90℃温度で40分間加熱処理しているが、包装する時点でのα化うどんの水分含量が52質量%と高いことにより、常温で保存したときに30日間後にカビや変色が生じており、長期保存できないことがわかる。
比較例2の実験番号3では、包装する時点でのα化うどんの水分含量は38質量%であるが、α化うどんにエタノールを付着させずに包装し、加熱処理を行なったことにより、常温で保存したときに30日間後にカビや変色が生じており、長期保存ができない。
比較例2の実験番号4では、包装する時点でのα化うどんの水分含量は38質量%であるが、α化うどんを包装した後に110℃という高温でレトルト処理したことにより、常温での保存性は良好であるが、保存後に喫食状態にしたときのうどんの食感および外観が実施例3に比べて大きく劣っていることがわかる。
《実施例4》[包装α化スパゲティの製造]
(1) 中力小麦粉(日清製粉株式会社製「特雀」)40質量部、デュラム小麦粉(日清製粉株式会社製「DF」)30質量部、馬鈴薯澱粉(ホクレン農業協同組合「なかしゃり」)30質量部に、食塩1質量部および水35質量部を加えて、押出機(ITALPAST社製「MAC30VR−S」)を用いて混練押し出しして、直径が1.4mmの生スパゲティを製造した。
(2) 実験番号1では、得られた生スパゲティを、100℃で2分間蒸熱処理した後、10秒水洗し、さらに2分間蒸熱処理し、α化スパゲティを製造した。
実験番号2および4では、得られた生スパゲティを、100℃で3分間蒸熱処理し、α化スパゲティを製造した。
実験番号3では、前記の実験番号2および4で得られたα化スパゲティを温度30℃の温風にて5分間乾燥処理し、α化スパゲティを製造した。
(3) 実験番号1〜3では、得られたそれぞれのα化スパゲティを100gずつに小分した後、常温でエタノール水溶液(濃度95質量%)を噴霧して、スパゲティ表面にエタノールを付着させたα化スパゲティを得た。このα化スパゲティの水分含量およびエタノールの付着量を測定したところ、下記の表7に示すとおりであった。
実験番号4では、得られたα化スパゲティを100gずつに小分した後、常温でエタノール水溶液(濃度95質量%)をスパゲティ表面に噴霧し、次いで常温で乳酸水溶液(濃度10質量%)をスパゲティ表面に噴霧して、エタノールおよび乳酸を付着させたα化スパゲティを得た。このα化スパゲティの水分含量、エタノールの付着量および乳酸の付着量を測定したところ、下記の表7に示すとおりであった。
(4) 前記で得られた小分した、エタノールを付着させたα化スパゲティ、またはエタノールと乳酸を付着させたα化スパゲティを、耐熱性の包材(ポリアミドとポリエチレンの積層フィルム)で個別密封包装した後、蒸気殺菌庫内で、90℃で40分間加熱殺菌処理した。
(5) 得られた加熱殺菌処理後の包装α化スパゲティを、実施例1と同様にして、保存性および官能評価を実施したところ、下記の表7に示すとおりであった。
《比較例3》[包装α化スパゲティの製造]
(1) 実験番号1では、実施例4の実験番号2と同じ方法でα化スパゲティを製造した後、30℃の温風にて20分間乾燥処理して、水分含量の低減したα化スパゲティを製造した。
実験番号2では、実施例4の実験番号1と同じ方法でα化スパゲティを製造した後、水洗を行い、水分含量の増加したα化スパゲティを製造した。
実験番号3および4では、実施例4の実験番号2と同じ方法でα化スパゲティを製造した。
(2) 実験番号1および2では、得られたα化スパゲティを100gずつに小分し、実施例4と同様にしてスパゲティ表面にエタノール水溶液を噴霧して、エタノールを付着させたα化スパゲティを得た。このα化スパゲティの水分含量およびエタノールの付着量を測定したところ、下記の表8に示すとおりであった。次いで、このエタノールを付着させたα化スパゲティを、実施例3と同様にして、包装し加熱殺菌処理して、包装α化スパゲティを製造した。
実験番号3では、エタノールの付着処理を行なわずに、実施例4と同様にして、包装し加熱殺菌処理して、包装α化スパゲティを製造した。
実験番号4では、エタノールの付着処理を行なわずに、レトルト殺菌用パウチに充填包装し、110℃で30分間加圧加熱殺菌処理をした。
(3) 得られた加熱殺菌処理後の包装α化スパゲティを、実施例4と同様にして、保存性および官能評価を実施したところ、下記の表8に示すとおりであった。
Figure 2009100686
Figure 2009100686
上記の表7にみるように、実施例4では、蒸熱処理を行ってα化した後にエタノールを付着させてエタノールの付着量が2質量%で水分含量が31〜45質量%の範囲であるα化スパゲティ(実験番号1〜3)、またはエタノールと乳酸を付着させてエタノールの付着量が1質量%および乳酸の付着量が0.1質量%でかつ水分含量が35質量%であるα化スパゲティ(実験番号4)を包装した後、90℃の温度で40分間加熱処理して包装α化スパゲティを製造したことにより、常温(25℃)で30日間保存した後でも、カビ・変色が生じず、しかも喫食状態にしたときに透明感があって外観に優れ、スパゲティ中心部の粘弾性およびスパゲティ表面の歯切れに優れていて良好な食感である、常温で流通および長期保存可能な包装α化スパゲティが得られることがわかる。
実施例4の包装α化スパゲティは、常温で30日以上にわたって品質の低下などを生ずることなく保存可能であることから、チルド温度でも品質の低下などを生ずることがなく、前記30日よりも一層長い期間にわたって保存可能であることが予想される。
それに対して、表8にみるように、比較例3の実験番号1では、エタノールを付着させたα化スパゲティを包装した後に90℃の温度で40分間加熱処理しているが、包装する時点でのα化スパゲティの水分含量が26質量%と低いことにより、常温で30日以上にわたって保存可能であるものの、当該保存後に喫食状態にしたときのスパゲティの食感および外観が実施例4に比べて大きく劣っていることがわかる。
比較例3の実験番号2では、エタノールを付着させたα化スパゲティを包装した後に90℃の温度で40分間加熱処理しているが、包装する時点でのα化スパゲティの水分含量が50質量%と高いことにより、常温で保存したときに30日間後にカビや変色が生じており、長期保存できないことがわかる。
比較例3の実験番号3では、包装する時点でのα化スパゲティの水分含量は35質量%であるが、α化スパゲティにエタノールを付着させずに包装し、加熱処理を行なったことにより、常温で保存したときに30日間後にカビや変色が生じており、長期保存できないことがわかる。
比較例3の実験番号4では、包装する時点でのα化スパゲティの水分含量は35質量%であるが、α化スパゲティを包装した後に110℃という高温でレトルト処理したことにより、常温での保存性は良好であるが、保存後に喫食状態にしたときのスパゲティの食感および外観が実施例3に比べて大きく劣っていることがわかる。
本発明の製造方法により、包装後に加熱処理を行なわない場合であっても、チルド温度(0〜5℃)で1カ月以上保存可能であり、しかもチルド温度で1カ月以上保存した後でも麺中心部の食感が粘弾性に優れ且つ麺表面の食感は歯切れがよく、透明感のある良好な外観を有し、高い品質を保持している包装α化麺類を円滑に製造することができ、また本発明において包装後に加熱処理を行なった場合には、常温で1カ月以上保存可能であり、またチルド温度(0〜5℃)では3カ月以上保存可能であり、しかも常温で1カ月以上保存した後でも、またはチルド温度で3カ月以上保存した後でも、麺中心部の粘弾性に優れ且つ麺表面の歯切れのよい良好な食感と、透明感のある良好な外観を有し、高い品質を保持している包装α化麺類を円滑に製造することできるので、本発明は、常温および/またはチルド温度で流通、長期保存可能な包装α化麺類の製造方法として産業上有効に利用することができる。

Claims (4)

  1. 生麺類、半乾燥麺類または乾燥麺類を蒸熱処理して得られるα化麺類の表面にエタノールを付着させて包装α化麺類を製造する方法であって、前記α化麺類の質量に対してエタノールの付着量を1〜5質量%とし、且つα化麺類の水分含量を30〜45質量%にして包装することを特徴とする、包装α化麺類の製造方法。
  2. 生麺類、半乾燥麺類または乾燥麺類を蒸熱処理して得られるα化麺類の表面にエタノールおよび酸を付着させて包装α化麺類を製造する方法であって、前記α化麺類の質量に対して、エタノールの付着量を1〜5質量%、酸の付着量を0.1〜0.5質量%とし、且つα化麺類の水分含量を30〜45質量%にして包装することを特徴とする、包装α化麺類の製造方法。
  3. 包装後に80〜100℃で20〜60分間加熱処理する請求項1または2に記載の包装α化麺類の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により得られる包装α化麺類。
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