JPH0591845A - 三層生麺類の製造方法 - Google Patents

三層生麺類の製造方法

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JPH0591845A
JPH0591845A JP3251856A JP25185691A JPH0591845A JP H0591845 A JPH0591845 A JP H0591845A JP 3251856 A JP3251856 A JP 3251856A JP 25185691 A JP25185691 A JP 25185691A JP H0591845 A JPH0591845 A JP H0591845A
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眞宏 山崎
Koichiro Hosai
皓一郎 法西
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博己 白波瀬
Nobuyuki Akamatsu
伸行 赤松
Mitsuyuki Tabuchi
満幸 田渕
Toshinari Hirata
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 生中華めんが本来有する独特の『粘り(粘着
性)』、『腰』、『粘弾性』、『なめらかさ』を有し、
湯のびがしにくく、かつ、長期保存性をも兼ね備えた生
中華めん類を提供する。 【構成】 (1) 小麦粉等の原料粉などと水とを混練
して外層用の麺生地を調製し、(2) 小麦粉等の原料
粉等、ならびにアルギン酸及び/又はアルギン酸塩、ア
ルカリ剤を加えて水とを混練して、中性乃至弱アルカリ
性のpHを呈する内層用麺生地を調製し、(3) 前記
内層用生地と外層用生地を常法により各々麺帯としてこ
れらを複合圧延して外層/内層/外層からなる麺帯と
し、常法により麺線とした後、α化処理を施し、次い
で、酸液処理して、麺線pHを酸性域に調整し、包装密
封した後、加熱殺菌処理するか、または、前記工程中、
α化処理を酸液浸漬工程において同時に実施する工程を
有する三層生麺類の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、長期保存性を有し、か
つ優れた味覚、食感を有する三層生麺類、特にウエット
状態の生中華麺類の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】消費者の食生活における近年の簡便化志
向及び本格志向の中で、麺類についても、例えば、熱湯
を注ぐだけで調理できかつ即時喫食でき、しかも、長期
保存性を有する生麺類の開発が望まれている。また、最
近においては、このような嗜好を反映して、4〜5ケ月
以上もの長期保存性を付与したうどん生麺などの商品化
が流通し人気を集めている。
【0003】生麺類は、生めん、茹でめん、蒸しめんな
どの総称であり、冷凍めんもこの部類に入れられてい
る。冷凍めん以外の生麺類は水分含量が大きいために常
温での保存性が悪く、これが商品の市場流通性を阻害し
ていた。
【0004】これら生麺類に、保存性を付与するため
に、従来では、プロピレングリコール、エタノール等の
静菌剤添加法、レトルト殺菌法等による他、pH調整剤
(酸性にpHを調整する) と簡易加熱殺菌とを併用する方
法があるが、うどん、そば等の生麺類においては、後者
の併用方法を使用する場合が多い。
【0005】しかしながら、生麺類のうち、特にラーメ
ン・焼きそば等の中華めん類においては、その製造上、
かんすい等のアルカリ剤を使用することが必須であり、
これに前記pH調整剤(酸性にpHを調整する) を使用して
酸性化することは、『腰』の軟弱化に止まらず、『麺』
のつながりが悪くなり麺線が短く切断されやすくバラバ
ラになりやすく、中華めんとしての基本的な麺質の劣化
に直結するために当該併用方法の採用は技術上実施困難
となっている。一部で同法を採用した生タイプのラーメ
ン商品もあるが、これは『腰』の軟弱化を補強するため
に、卵のつなぎを使用したものであり、未だ、生中華め
ん本来の『腰』の強さ等の食感を実現したものとはなっ
ていない。生中華めん類においては、それ故、保存性付
与のためにエタノール等の静菌剤添加法と加熱殺菌法を
採用しており、また、一部では製めん後少し乾燥して通
常の約20〜30%程度水分含量を下げ、半生状態にするこ
とも行われている。
【0006】他方、アルギン酸添加に関しては、(a) ア
ルギン酸プロピレングリコールと有機酸のナトリウム塩
又はカリウム塩を製麺原料の混練前に添加する麺類製造
法(特公昭46−42927 号) 、(b) 生麺に所要量の水分を
含浸せしめ、かつアルギン酸カルシウムの凝固性被膜で
被覆せしめた早ゆで生麺の製造方法 (特公昭61−12662
号) 等があるが、前者は単に『腰』が強く『湯のび』し
にくいうどん麺類のみを得ることを目的としたものであ
って、製麺原料としてかんすい等のアルカリ剤が添加さ
れる中華めん類への適用性に欠けるものであり、後者に
ついては、早ゆでさせるために多量の水分を含浸せしめ
た、うどん・そばの生麺において、単に表面に保形性を
付与させるものであって、しかも麺の長期保存性及び食
感の良好性を確保することについては全く欠落したもの
である。
【0007】さらに又、麺線を複合一体化する三層から
なる多層麺についても、従来から研究されており、例え
ば、 (イ) 栄養素を包蔵するうどんの製造方法 (特公昭
28−4030号) 、 (ロ) 中空芯部に卵液を封入した卵液入
麺体の構造 (実公昭27−5472号) 、 (ハ) 麺線の内層を
蛋白単独もしくは蛋白と小麦粉よりなる層とした多層麺
(特公昭56−54129 号) 、 (ニ) 麺線の内層に比較して
外層のデンプン含有率を相対的に多くした多層麺 (特公
昭54−40621 号) などがある。
【0008】しかしながら、 (イ) は栄養強化麺であっ
て麺の物性を改善するものではなく、 (ロ) は、麺線の
内層として卵液層を形成することによって麺線の『腰』
を強化するものであり、また (ハ) は蛋白質を形成する
ことによって麺線の『腰』を強化するものであり、(ニ)
は外層のでんぷん含有率を多くして、つるみとなめら
かさを付与するものであり、共にアルギン酸添加による
麺質向上とは異質のものである。また、(a) 及び(b) 並
びに (イ) 乃至 (ニ) は、いずれも、生麺類に長期保存
性を付与できるものではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】生麺類、特にラーメン
・焼きそば等の生中華めん類に長期保存性を付与するに
際して、静菌剤添加法は、添加物使用の点で消費者に与
えるイメージが好ましくなく、レトルト殺菌法では、高
温加熱処理するために、麺がいわゆる『レトルト焼』を
起こして美観上好ましくない上に、加熱処理のために、
喫食しても生の麺類とはかけ離れた食感になるので、生
中華めん類の麺質確保の点で採用は好ましくない。
【0010】また、生中華めん類を、うどん等と同様に
してpH調整剤(酸性にpHを調整する) と簡易加熱殺菌と
の併用方法で保存性を付与することも考えられるが、し
かしこの場合は次のような問題がある。すなわち、中華
めんは前述のごとく、製造上、麺線がかんすい等のアル
カリ剤によってアルカリ性となり、これによって中華め
ん独特の強い『腰』や『粘弾性』が付与されているの
で、単なるpH調整によって酸性化すると小麦粉のグルテ
ンの粘弾性が喪失され、加えて麺線に展延性がなくな
り、その結果、麺は軟弱で『腰』のない食感となるだけ
でなく、『麺』のつながりが悪くなり麺線が切断されや
すくバラバラになり易く、結局、生中華めんの基本的な
麺質及び食感が喪失されることになる。
【0011】すなわち、アルカリ性の麺線を酸性化する
ために、長期保存性は付与されるが肝心の中華麺本来の
麺質及び食感が失われるという不都合が生じるのであ
る。
【0012】本出願人は、このような問題点を解消する
ために、既に、アルギン酸添加麺の製造方法を発明し、
中性乃至弱アルカリ性の麺線を最終的に酸性pH域に調整
することにより、しっかりした『腰』、『粘弾性』、
『湯のび防止』を実現することができると同時に、長期
保存性をも有する麺類の製造法を特許出願 (特願平 3−
174129号) したところである。
【0013】しかしながら、これら単層でのアルギン酸
の添加麺では、粘弾性が付与されて『腰』が強くなり、
湯のび防止の点においても十分な効果が得られるもの
の、生中華めん本来のそれに比べて、麺線の口当たりが
やや不良で粘り (粘着性) が少なく、歯切れが良すぎる
という点があり、また、滑らかさ、しなやかさや透明感
においても不十分であった。
【0014】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
このような問題点を解消して、生中華めん類でありなが
ら、pH調整( 酸性にpHを調整する) で長期保存性を付与
し、しかも、当該酸性処理によっても、生中華めんが本
来有するところの『腰』の強い独特の粘り (粘着性) と
歯ごたえをより一層向上させ、さらに、湯のびがしにく
く、口当たり、歯ごたえ、味覚等が飛躍的に改善向上
し、かつ、長期保存性をも兼ね備えた生中華麺を製造す
べく鋭意研究を進めた結果、アルギン酸添加麺帯を多層
化し、酸液で処理することで所望の生中華めんを得るこ
とを知見し、本発明の完成に至ったのである。
【0015】すなわち、本発明の方法は、(1) 小麦粉も
しくは小麦粉と澱粉を主成分とする原料粉に、必要に応
じてアルカリ剤、食塩等を加えて水とを混練し、外層用
の麺生地を調製し、(2) 小麦粉もしくは小麦粉と澱粉を
主成分とする原料粉、アルギン酸及び/又はアルギン酸
塩、アルカリ剤、必要に応じて食塩等を加えて、水とを
混練し、中性乃至弱アルカリ性のpHを呈する内層用麺生
地を調製し、(3) 前記、内層用生地と外層用生地をロー
ル圧延等の常法により各々麺帯とし、これらを更に複合
圧延することにより、外層/内層/外層からなる麺帯と
し、常法により麺線とした後、α化処理を施し、(4) 次
いで、前記α化処理を施した麺線を酸液処理して、麺線
pHを酸性域に調整し、次いで(5) 前記pH調整した麺線を
包装密封した後、加熱殺菌処理する工程からなる三層生
麺類の製造方法であり、また、本発明の第2の方法とし
て、前記工程中、麺線のα化処理を酸液浸漬工程におい
て同時に実施する工程を有する三層生麺類の製造方法で
ある。また、内層及び/又は外層用の麺生地、あるい
は、麺帯を各々、常圧下で調製する以外に、減圧下で調
製する手段を講じることによって、より品質の良好な三
層生麺類を製造する製造方法である。
【0016】本発明における麺生地原料粉としては、め
ん類製造に際して通常使用される小麦粉、澱粉等が使用
でき、澱粉では小麦澱粉、米澱粉等の穀類澱粉、とうも
ろこし澱粉、いも類澱粉、豆類澱粉等及びこれらの加工
澱粉類を用いることができ、さらに、そば粉等の穀粉類
も用いることができる。
【0017】本発明におけるアルカリ剤とは、通常、中
華めん類製造に使用されるかんすい、重合リン酸塩等、
一般的に使用可能な公知の食品用アルカリ剤であって、
より具体的には、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウ
ム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸ナ
トリウム、リン酸カリウム、ポリリン酸塩、縮合リン酸
塩等の1種又は2種以上の混合物などを用いることがで
きる。但し、カルシウム塩を含むアルカリ剤は、本発明
においては用いることはできない。
【0018】アルカリ剤の添加量は、外層内層各々につ
いて、そのアルカリ剤の種類に応じ適宜加減されるが、
本発明においては、アルギン酸及び/又はアルギン酸塩
の添加と生中華めん類のテクスチャー発現等との関係
で、麺生地のpHが中性乃至弱アルカリ性、好ましくは約
6.5 〜9.0 になるように添加量を設定する。pHが約6.5
以下では、生中華めんとしての麺質や食感が得られない
ので好ましくなく、また、pH9.0 以上になると、後工程
の酸液処理において、麺線pHの酸性域への移行が不十分
となり長期保存性の付与が十分実現できなくなり、ま
た、中華めん本来の麺質の発現が困難となるので好まし
くない。
【0019】本発明におけるアルギン酸塩としては、ア
ルギン酸のアルカリ金属塩 (例えば、アルギン酸ナトリ
ウム、アルギン酸カリウム等) 、マグネシウム塩、アン
モニウム塩などを用いることができ、これらアルギン酸
塩及びアルギン酸は、適宜市販の製品を使用できる。そ
の添加方法は、粉体のままでも、また、予め水溶液とし
て添加しても、適宜選択できる。
【0020】アルギン酸及び/又はアルギン酸塩の添加
量は、内層用麺生地における他の製麺原料との関係、例
えば、アルカリ剤の添加量とそれに基づく麺生地のpH、
また酸液処理の程度、製品の麺質 (腰の強さ等) を勘案
して適宜決定されるが、原料粉1kgに対して通常約0.5
g (約0.05%以上) 以上が好ましく、アルギン酸成分が
約0.05%よりも少ないと、製品の生中華めん類において
『腰』の軟弱化を防止する効果が発揮されにくく、ま
た、一方過剰に添加すると麺質の腰が強くなりすぎ、食
感及び食味が悪くなって、生中華めんとしてのテクスチ
ャーが損なわれる。
【0021】外層及び内層の麺生地の調製は、従来公知
の装置によって各々常圧下または減圧下に実施され、後
者では例えば減圧ミキサー等を使用することができる。
【0022】また、外層及び内層の麺帯は、各々常法に
よりロール圧延等によって製造し、または、減圧下でエ
クストルーダー等による押し出し麺帯の形成等により製
造できる。このとき例えば、公知の麺帯製造装置 (特願
昭59−254855号) 等も使用できる。
【0023】減圧下で麺生地及び/又は麺帯を製造する
ことは、混練等に際して内部に包含された気体の脱気を
促進し、緻密な生地や麺帯を得ることができ、なめらか
さ、透明感、ほぐれ等の点において、製品の麺質により
一層の好結果を与えることができる。内外層麺帯の複合
圧延及び麺線切出しは、常法により実施できる。
【0024】本発明において、麺線のα化処理は、煮熱
・蒸煮等、従来公知の方法及び装置を使用して実施で
き、また、麺線の酸液処理は、当該α化処理の後に別途
pH調整した酸液にて麺線を処理する方法 (本発明の第1
方法) 、当該α化処理と同時に同一工程で麺線の酸液処
理を行う方法 (本発明の第2方法) のいずれかを選択で
きる。前者方法においては、麺線の酸液中への浸漬、酸
液の麺線への塗布・噴霧等にて実施でき、後者方法にお
いては、煮熱用水に酸を添加し酸性溶液を用いての煮
熱、蒸煮工程中で麺線への酸液の散布又は噴霧等にて実
施できる。
【0025】酸液処理に使用する酸としては、酢酸、乳
酸、クエン酸、リンゴ酸、醸造酢等の有機酸、塩酸等の
無機酸等、食品に使用できる酸を適宜選択して用いるこ
とができる。使用する酸の種類及びpH程度、麺線のpH程
度、付与すべき長期保存性の程度、製品としての生中華
めん類の麺質等を考慮して酸液処理の条件は適宜設定で
きるが、酸液処理した後の麺線のpHが酸性になることが
必須である。
【0026】本発明においては、当該酸液処理によっ
て、麺線内層に含有されるアルギン酸及び/又はアルギ
ン酸塩が不溶性のアルギン酸凝固物となり、これが内層
全般に3次元的な網目組織を形成して、麺線の『粘弾性
(腰)』を保持又は強化することができ、また、同時に
麺線を酸性域に調整するために、長期保存性を付与する
ことができる。従って、本発明における酸液処理は、従
来の二律背反であった問題点を一挙に解決できるもので
ある。
【0027】尚、麺線の過度の酸性化は、長期保存性は
付与されるが、生中華めんとしての口当たり、食味を損
なうことになるので好ましくない。
【0028】前記工程を経てpH調整された麺線は、公知
方法によって所定量目毎に包装密封され、次いでこれを
加熱殺菌処理する。加熱条件は、通常、蒸気庫温度85℃
で30分以上、95℃で20分以上が必要とされ、この他適
宜、殺菌に必要な条件を設定できる。
【0029】本発明によって製造された生中華めん類
は、従来のごとき袋入りの包装生麺として商品化される
他、ポリスチレン等の容器に他の調味料、具材と共に収
納し、いわゆるカップ入り生中華めんとしての商品形態
をとることができる。
【0030】通常、生中華めん類の水分含量は、生めん
において約30〜37%、ゆでめんにおいて約60〜68%、蒸
しめんにおいて約54〜64% (蒸し工程直後は約35〜40
%) 程度であるが、本発明は、これら生中華めん類には
勿論のこと、これら通常タイプから約20〜30%程度水分
含量を下げた、いわゆる半生状態の中華めんについても
適用できる。
【0031】本発明は、『アルギン酸は、水に不溶であ
るが、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムと化
合すると各々のアルギン酸塩となって水に溶解し、粘稠
な水溶液を生じる。そして、これに酸を加えれば、再び
アルギン酸となって析出する』というアルギン酸の性質
を利用して、アルギン酸及び/又はアルギン酸塩を原料
に配合して、麺生地を中性乃至弱アルカリ性のpH域に調
整した麺生地を圧延して内層用の麺帯とし、さらに、小
麦粉又は小麦粉と澱粉を主成分とした外層用の麺生地を
圧延した麺帯を複合圧延することにより、外層/内層/
外層からなる麺帯としたものを麺線とし、これを、α化
処理、酸液処理することによって、麺の外層部は、滑ら
かさ、しなやかさ、透明感を有し、麺の内層部は、不溶
性のアルギン酸の網目組織が形成されて湯のびを防止す
るとともに、粘弾性を付与することができる。
【0032】すなわち、三層麺の内層に、アルギン酸及
び/又はアルギン酸塩配合の麺帯を挟着複合しているの
で、これらを複合圧延後、麺線としてα化、酸液処理を
施すと、麺の内層部に不溶性のアルギン酸の網目組織が
形成されるため、麺の『粘弾性』は付与され、しかも、
酸液処理によって長期保存性をも併せて付与されるので
ある。そして、麺の外層の『なまらかさ、しなやかさ』
と内層の『粘弾性』が相俟って、麺全体として、生中華
めん本来の『粘り(粘着性)』のある『歯ごたえ』と
『腰』を有する食感となる。
【0033】さらに、内層に不溶性のアルギン酸の網目
組織が形成されるため、麺線内部での水分移行によって
水分の均一化が生じても、これによる麺線の軟弱化を防
止でき、品質劣化防止に効果を奏するのである。
【0034】以上の効果は、内層用の麺生地及び/又は
外層用の麺生地、あるいは、内層用の麺帯及び/又は外
層用の麺帯を減圧下で調製する手段を講じることによっ
てより一層大きくなる。
【0035】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
なお、これらは本願発明の1実施例を示すものであり、
これらに限定されるものではない。
【0036】実施例1(常圧下調製 ・α化後酸液処理し
たもの) 本発明の三層生麺類を下記工程に従って製造した。
【0037】 かんすい 2.5 g、食塩15 g、ベニバナ
色素 4.5 gを水に溶かし 360 ml の練水とし、小麦粉
(中力粉) 0.7 kg、タピオカでんぷん 0.3 kg の粉体混
合物に前記練水を加えて、常圧ミキサーにて15分間混練
し外層用の麺生地を調製した。
【0038】 かんすい 2.5 g、食塩15 g、アルギン
酸 5.0 g、ベニバナ色素 4.5 gを水に溶かし 340 ml の
練水とし、小麦粉 (準強力粉) 1.0 kgに前記練水を加え
て、常圧ミキサーにて15分間混練し、内層用の麺生地を
調製した(生地pH 7.6) 。
【0039】 前記、内層用生地と外層用生地をロー
ル圧延等により麺帯とし、これらを圧延ロールにてさら
に複合圧延し、1.3 mmの麺帯厚の外層/内層/外層から
なる麺帯とした後、#20の切刃 (角) を通して麺線とし
た。
【0040】 前記麺線を蒸機にて2分間常圧蒸煮
(100 ℃) し、次いで所定量にカットした。前記麺線を
乳酸の 0.05 g/l溶液中で30秒間熱水処理した後、液切
りを30秒間行った。
【0041】 上記工程で調製した麺線を乳酸 6.5
g/lの80℃溶液中に30秒間浸漬後、液切りし、前記麺線
に白絞油を麺線1kg当たり20 g添加し、 上記工程で調製した麺線 180 gをパウチに封入密
封した。
【0042】 前記包装麺を、沸騰水中で35分間殺菌
処理した後、流水中で冷却し、本発明の三層生麺類の中
華麺を得た(麺線pH 4.3)。
【0043】実施例2 (減圧下調製(内層)・α化後酸
液処理したもの) かんすい 2.5 g、食塩15 g、ベニバナ色素 4.5gを
水に溶かし 360 ml の練水とし、小麦粉 (中力粉)0.7 k
g、タピオカでんぷん 0.3 kg の粉体混合物に前記練水
を加えて、常圧ミキサーにて15分間混練し外層用の麺生
地を調製した。
【0044】 かんすい 2.5 g、食塩15 g、アルギン
酸 5.0 g、ベニバナ色素 4.5 gを水に溶かし 340 ml の
練水とし、小麦粉 (準強力粉) 1.0 kgに前記練水を加え
て、常圧ミキサーにて15分間混練後、740 mmHgの減圧下
で押し出し、内層用の麺帯を調製した。 (生地pH 7.6) 前記、内層用麺帯と外層用麺生地をロール圧延等に
より麺帯とし、これらをさらに複合圧延し、1.3 mmの麺
帯厚の外層/内層/外層からなる麺帯とした後、#20の
切刃 (角) を通して麺線とし、以下、前記実施例1の製
法に準じて、本発明の三層生麺類の中華麺を得た (麺線
pH 4.3) 。
【0045】実施例3 (減圧下調製(内外層)・α化後
酸液処理したもの) かんすい 2.5 g、食塩15 g、ベニバナ色素 4.5gを
水に溶かし 360 ml の練水とし、小麦粉 (中力粉)0.7 k
g、タピオカでんぷん 0.3 kg の粉体混合物に前記練水
を加えて、減圧ミキサー(740 mmHg)にて15分間混練し
外層用の麺生地を調製した。
【0046】 かんすい 2.5 g、食塩15 g、アルギン
酸 5.0 g、ベニバナ色素 4.5 gを水に溶かし 340 ml の
練水とし、小麦粉 (準強力粉) 1.0 kgに前記練水を加え
て、常圧ミキサーにて15分間混練後、740 mmHgの減圧下
で押し出し、内層用の麺帯を調製した。 (生地pH 7.6) 前記、内層用麺帯と外層用麺生地をロール圧延等に
より麺帯とし、これらをさらに複合圧延し、1.3 mmの麺
帯厚の外層/内層/外層からなる麺帯とした後、#20の
切刃 (角) を通して麺線とし、以下、前記実施例1の製
法に準じて、本発明の三層生麺類の中華麺を得た (麺線
pH 4.3) 。
【0047】上記、各実施例において試作した生麺と従
来麺の官能比較評価について、表1に結果を示す。評価
は5段階評価で行った。
【0048】
【表1】
【0049】上記の各試験項目の判定基準は以下のとお
りである。
【0050】(1) 滑らかさ、腰、粘着性、湯のび、透明
感の判定基準 充分に訓練された試食パネラー10人で試食を行い、それ
ぞれ、5(良好) ・4(やや良好)・3(普通)・2
(やや不良)・1(不良)の5段階で評価し、その平均
点で以下のとおり判定した。
【0051】良好 …4.6 〜5.0 ポイント やや良好 …3.6 〜4.5 ポイント 普通 …2.6 〜3.5 ポイント やや不良 …1.6 〜2.5 ポイント 不良 …1.0 〜1.5 ポイント (2) ほぐれの判定基準 湯もどし時の麺線のほぐれの状態をいい、下記基準によ
る 良好とは …はしを1〜2回入れれば、麺線が十分に
ほぐれる やや良好とは…はしを1〜2回入れれば、麺線がほぼほ
ぐれる 普通とは …はしを3回以上入れればほぐれて支障が
ない やや不良とは…はしを3回以上入れても麺線が完全にほ
ぐれない 不良とは …はしを3回以上入れても麺線が団子状で
全くほぐれない本発 明品の各実施例の比較 なお、本発明品と従来の中華麺類との比較対照品とする
ため、以下のものを試作し麺質の比較評価を行った。
【0052】比較例1 従来のアル ギン酸単層麺 アルギン酸単層麺を下記工程に従って試作した。
【0053】小麦粉を1000g 、食塩30g 、アルギン酸ナ
トリウム10g 各々配合し、これに練り水を350g加えて混
練し、常法により製麺し、厚さ2 mm、径3.8 mmの麺線を
形成した。この麺に馬鈴薯澱粉40g と塩化カルシウム10
g とを配合した打粉を均一に散布した。その後、40℃の
水中に60分浸漬し、従来のアルギン酸単層麺 (特公昭61
−12662 号) を得た。
【0054】比較例2 従来の3 層麺(1) ( 外層: 澱粉
添加) 従来の3層麺(1) を下記工程に従って試作した。
【0055】 かんすい 2.5 g、食塩15 g、ベニバナ
色素 4.5 gを水に溶かし 360 ml の練水とし、小麦粉
(中力粉) 0.70 kg 、タピオカでんぷん 0.30 kgの粉体
混合物に前記練水を加えて、常圧ミキサーにて15分間混
練し外層用の麺生地を調製した。
【0056】 かんすい 2.5 g、食塩15 g、ベニバナ
色素 4.5 gを水に溶かし 340 ml の練水とし、小麦粉
(準強力粉) 1.0 kgに前記練水を加えて、常圧ミキサー
にて15分間混練し内層用の麺生地を調製した。
【0057】 前記、内層用生地と外層用生地をロー
ル圧延等により麺帯とし、これらを圧延ロールにてさら
に複合圧延し、1.3mm の麺帯厚の外層/内層/外層から
なる麺帯とした後、#20の切刃 (角) を通して麺線と
し、以下、前記実施例1の製法に準じて3層麺(1) を得
た。
【0058】比較例3 従来の3層麺(2) ( 内層: 卵白
粉末添加) 従来の3層麺(2) を下記工程に従って試作した。
【0059】 かんすい 2.5 g、食塩15 g、ベニバナ
色素 4.5 gを水に溶かし 340 ml の練水とし、小麦粉
(中力粉) 1.0 kgに前記練水を加えて、常圧ミキサーに
て15分間混練し外層用の麺生地を調製した。
【0060】 かんすい 2.5 g、食塩15 g、ベニバナ
色素 4.5 gを水に溶かし 340 ml の練水とし、小麦粉
(準強力粉) 1.0 kg、卵白粉末 0.06 kgの粉体混合物に
前記練水を加えて、常圧ミキサーにて15分間混練し内層
用の麺生地を調製した。
【0061】 前記、内層用生地と外層用生地をロー
ル圧延等により麺帯とし、これらを圧延ロールにてさら
に複合圧延し、1.3mm の麺帯厚の外層/内層/外層から
なる麺帯とした後、#20の切刃 (角) を通して麺線と
し、以下、前記実施例1の製法に準じて3層麺(2) を得
た。
【0062】上記、各実施例の比較結果によれば、本発
明品は、滑らかさ・透明感において従来のアルギン酸単
層麺にはない品質特性を有し、且つ、腰・粘着性・湯の
び・ほぐれの点においても、従来の三層麺を単に酸液処
理したものには見られない優れた品質特性を示してい
る。
【0063】また、従来の三層麺に官能評価において、
腰、粘着性、湯のび、ほぐれの点において極めて低い評
価となっていることは、結局、中華麺類においては、そ
の製造上、かんすい等のアルカリ剤を使用することが必
須であり、これに酸性pH調整剤を使用して酸性化するこ
とは『麺』の軟弱化に止まらず、『麺』のつながりが悪
くなり、麺線がバラバラになりやすく、中華麺としての
基本的な麺質の劣化に直結していることを明示してい
る。
【0064】
【発明の効果】本発明方法を用いることによって、生中
華めん類でありながら、pH調整 (酸性にpHを調整する)
で長期保存性を付与し、しかも、当該酸性処理によって
も、生中華めんが本来有するところの『腰』の強い独特
の『粘りと歯ごたえ』を保持しつつ、しかも、より一層
向上させ、さらに湯のびがしにくく、また、口当たり、
味覚等が飛躍的に改善向上された生中華麺を製造するこ
とができるのである。
【0065】中華めんは前述のごとく、製造上、麺線が
かんすい等のアルカリ剤によってアルカリ性となり、こ
れによって中華めん独特の強い『腰』や粘弾性が付与さ
れているので、単なるpH調整によって酸性化すると、小
麦粉のグルテンの粘弾性が喪失され、加えて麺線に展延
性がなくなり、その結果、麺は軟弱で『腰』のない食感
となり、結局、生中華めん独特の食感が喪失される。従
って、従来は、アルカリ性の麺線を単に酸性化すること
によては、長期保存性は付与されるものの中華麺本来の
食感を出すことができなかったものであるが、本発明は
このような問題点を解消した。
【0066】また、三層麺の技術によっても、麺のなめ
らかさやしなやかさ、透明感が付与されるものの、従来
は生中華麺特有の腰や湯のびの点において十分な効果が
得られていなかったが、本発明はこの問題点を解消し
た。
【0067】すなわち、本発明においては、三層麺の内
層に、アルギン酸及び/又はアルギン酸塩配合の麺帯を
挟着複合しているので、これらを複合圧延後、麺線とし
てα化、酸液処理を施すと、麺の内層部に不溶性のアル
ギン酸の網目組織が形成されるため、麺の『粘弾性』は
維持され、しかも、酸液処理によって長期保存性をも併
せて付与させることができるのである。そして、麺の外
層の『なめらかさ、しなやかさ』と内層の『粘弾性』が
相俟って、麺全体として、生中華めん本来の『粘り( 粘
着性) 』のある『歯ごたえ』と『腰』を有する食感を実
現させることができ、また、加熱後殺菌処理工程におけ
る麺質の食味、食感の劣化をも補強することができるの
である。
【0068】さらに、内層に不溶性のアルギン酸の網目
組織が形成されるため、麺線内部での水分移行によって
生じる水分の均一化が生じても、これによる麺線の軟弱
化を防止でき、品質劣化防止に効果を奏する。外層は内
層のアルギン酸凝固物の網目組織を保護するとともに、
麺線の連続性を維持させることができ、かつ、喫食に際
して当該組織が直接的に口腔内に接触して口当たり感等
の食味、食感を減退させることを防止する効果を奏す
る。
【0069】また、外層及び/又は内層の麺生地あるい
は麺帯を減圧下で調製することによれば、麺生地内の空
気を脱気させるこができ、これにより、なめらかさ、透
明感、ほぐれ等の点においてより一層向上した品質特性
の生中華麺類を製造することができるのである。
【0070】本発明は、従来の三層麺とアルギン酸添加
麺のそれぞれの欠点を解消するとともに、アルギン酸添
加麺と三層麺の特性を有機的に結合させ実現させること
によって初めて可能にしたものである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年12月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 三層生麺類の製造方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、長期保存性を有し、か
つ優れた味覚、食感を有する三層生麺類、特にウエット
状態の生中華めん類の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】消費者の食生活における近年の簡便化志
向及び本格志向の中で、麺類についても、例えば、熱湯
を注ぐだけで調理できかつ即時喫食でき、しかも、長期
保存性を有する生麺類の開発が望まれている。また、近
年、このような流れを反映して、4〜5ケ月以上もの長
期保存性を付与した生麺類が商品化され人気を集めてい
る。
【0003】生麺類は、生めん、茹でめん、蒸しめんな
どの総称であり、冷凍めんもこの部類に入れられてい
る。生麺類は水分含量が高いため、冷凍麺以外は常温で
の保存性が悪い。
【0004】これら生麺類に、保存性を付与する方法と
しては、プロピレングリコールやエタノール等の静菌剤
添加法、レトルト殺菌法、pH調整剤(酸性にpHを調
整する)と簡易加熱殺菌とを併用する方法などがある
が、うどん、そば等の生麺類においては、後者の併用方
法を使用する場合が多い。
【0005】しかしながら、生麺類のうち、特にラーメ
ン・焼きそば等の中華めん類においては、その製造上、
かんすい等のアルカリ剤を使用することが必須であり、
これら中華めん類に前記pH調整剤(酸性にpHを調整
する)を使用して麺を酸性化すると、麺の『腰』の軟弱
化に止まらず、『麺』のつながりが弱くなり麺線が切れ
やすくなり、中華めんとしての基本的な麺質の劣化を伴
うため、当該併用方法の採用は技術上実施困難となって
いる。一部で同法を採用した生タイプのラーメン商品も
あるが、これは『腰』の軟弱化を抑えるために、卵など
を使用したものであるが、これらによっては未だ、生中
華めん本来の『腰』の強さ等の食感を実現したものとは
なっていない。
【0006】他方、麺へのアルギン酸又はその塩の添加
に関しては、生麺に所要量の水分を含浸せしめ、かつア
ルギン酸カルシウムの凝固性被膜で被覆せしめた早ゆで
生麺の製造方法(特公昭61−12662 号)等があ
るが、これは、早ゆでさせるために多量の水分を含浸せ
しめたうどん・そばの生麺において、アルギン酸がカル
シウムによってカルシウム塩として凝固する性質を利用
して、単に麺表面に保形性を付与させるものであって、
麺の長期保存性及び中華めんとしての良好な食感の良好
性を確保することについては全く欠落したものである。
【0007】さらに又、麺線を複合一体化する三層から
なる多層麺についても、従来から研究されており、例え
ば、(イ)栄養素を包蔵するうどんの製造方法(特公昭
28−4030号)、(ロ)中空芯部に卵液を封入した
卵液入麺体の構造(実公昭27−5472号)、(ハ)
麺線の内層を蛋白単独もしくは蛋白と小麦粉よりなる層
とした多層麺(特公昭56−54129号)、(ニ)麺
線の内層に比較して外層のデンプン含有率を相対的に多
くした多層麺(特公昭54−40621号)などがあ
る。
【0008】しかしながら、(イ)は栄養強化麺であっ
て麺の物性を改善するものではなく、(ロ)は、麺線の
内層として卵液層を形成することによって麺線の『腰』
を強化するものであり、また(ハ)は蛋白質を形成する
ことによって麺線の『腰』を強化するものであり、
(ニ)は外層のでんぷん含有率を多くして、つるみとな
めらかさを付与するものであり、共にアルギン酸添加に
よる麺質向上とは異質のものである。また、(a)及び
(b)並びに(イ)乃至(ニ)は、いずれも、生麺類に
長期保存性を付与できるものではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】生麺類、特にラーメン
・焼きそば等の生中華めん類に長期保存性を付与するに
際して、静菌剤添加法は添加物使用の点で消費者に与え
るイメージが好ましくなく、約120℃以上のレトルト
殺菌は、高温加熱処理するために、麺がいわゆる『レト
ルト焼』を起こして美観上好ましくない上に、食感も生
の麺類とはかけ離れたものになるので好ましくない。
【0010】また、生中華めん類を、うどん等と同様に
してpH調整剤(酸性にpHを調整する)と簡易加熱殺
菌との併用方法で保存性を付与することも考えられる
が、しかしこの場合には次のような問題がある。すなわ
ち、中華めんは前述のごとく、かんすい等のアルカリ剤
を加えることてによってアルカリ性となっており、これ
によって生中華めん独特の強い『腰』や『粘弾性』が発
現するので、pH調整によってめんを酸性化すると小麦
粉のグルテンの粘弾性が喪失され、加えて麺線に展延性
がなくなり、その結果、麺は軟弱で『腰』のない食感と
なるだけでなく、『麺』のつながりが悪くなり麺線が弱
くて切れ易く、結局、生中華めんの基本的な麺質及び食
感が喪失されることになる。
【0011】すなわち、アルカリ性の麺線を酸性化する
ために、長期保存性は付与されるが肝心の生中華めん本
来の麺質及び食感が失われるという不都合が生じるので
ある。
【0012】本出願人は、このような問題点を解消する
ために、既に、アルギン酸添加麺の製造方法を発明し、
中性乃至弱アルカリ性の麺線を最終的に酸性pH域に調
整することにより、しっかりした『腰』、『粘弾性』、
『湯のび防止』を実現することができると同時に、長期
保存性をも有する麺類の製造法を特許出願(特願平3−
174129号)したところである。
【0013】しかしながら、この単層でのアルギン酸の
添加麺は、粘弾性が付与されて『腰』が強くなり、湯の
び防止の点においても十分な効果が得られるものの、生
中華めん本来のそれに比べて、麺線の粘り(粘着性)が
やや少なく、また、滑らかさ、しなやかさや透明感にお
いても充分ではなかった。
【0014】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
このような問題点を解消して、生中華めん類でありなが
ら、pH調整(酸性にpHを調整する)と適宜加熱殺菌
を併用して長期保存性を付与し、しかも、当該酸処理に
よっても、生中華めんが本来有する独特の『腰』、『粘
り(粘着性)』と歯ごたえを有し、さらに、湯のびしに
くく、口当たり等も良好で、かつ、長期保存性をも兼ね
備えた生中華めん類を製造すべく鋭意研究を進めた結
果、アルギン酸添加麺帯を多層化し、酸液で処理するこ
とで所望の生中華めん類を得ることを知見し、本発明の
完成に至ったのである。
【0015】すなわち、本発明の方法は、(1)小麦粉
もしくは小麦粉と澱粉を主成分とする原料粉に、必要に
応じてアルカリ剤、食塩等を加えて水とを混練し、外層
用の麺生地を調製し、(2)小麦粉もしくは小麦粉と澱
粉を主成分とする原料粉、アルギン酸及び/又はアルギ
ン酸塩、アルカリ剤、必要に応じて食塩等を加えて、水
とを混練し、中性乃至弱アルカリ性のpHを呈する内層
用麺生地を調製し、(3)前記、内層用生地と外層用生
地をロール圧延等の常法により各々麺帯とし、これらを
更に複合圧延することにより、外層/内層/外層からな
る麺帯とし、常法により麺線とした後、α化処理を施
し、(4)次いで、前記α化処理を施した麺線を酸液処
理して、麺線pHを酸性域に調整し、次いで(5)前記
pH調整した麺線を包装密封した後、加熱殺菌処理する
工程からなる三層生麺類の製造方法であり、また、本発
明の第2の方法として、前記工程中、麺線のα化処理を
酸液浸漬工程において同時に実施する工程を有する三層
生麺類の製造方法である。また、内層及び/又は外層用
の麺生地、あるいは、麺帯を各々、常圧下で調製する以
外に、減圧下で調製する手段を講じることによって、よ
り品質の良好な三層生麺類を製造する製造方法である。
【0016】本発明における麺生地原料粉としては、め
ん類製造に際して通常使用される小麦粉、澱粉等が使用
でき、澱粉では小麦澱粉、米澱粉等の穀類澱粉、とうも
ろこし澱粉、いも類澱粉、豆類澱粉等及びこれらの加工
澱粉類を用いることができ、さらに、そば粉等の穀粉類
も用いることができる。
【0017】本発明におけるアルカリ剤とは、通常、中
華めん類製造に使用されるかんすい、重合リン酸塩等、
一般的に使用可能な公知の食品用アルカリ剤であって、
より具体的には、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウ
ム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸ナ
トリウム、リン酸カリウム、ポリリン酸塩、縮合リン酸
塩等の1種又は2種以上の混合物などを用いることがで
きる。但し、カルシウム塩を含むアルカリ剤は、本発明
においては好ましくない。
【0018】アルカリ剤の添加量は、外層内層各々につ
いて、そのアルカリ剤の種類に応じ適宜加減されるが、
本発明においては、アルギン酸及び/又はアルギン酸塩
の添加と生中華めんのテクスチャー発現等との関係で、
麺生地のpHが中性乃至弱アルカリ性、好ましくは約
6.5〜9.0になるように添加量を設定する。pHが
約6.5以下では、生中華めんとしての麺質や食感が得
られないので好ましくなく、また、pH9.0以上にな
ると、後工程の酸液処理において、麺線pHの酸性域へ
の移行が不十分となる危険性があり、その結果長期間の
保存性付与が十分実現できなくなり、また、中華めん本
来の麺質の発現が困難となるので好ましくない。
【0019】本発明におけるアルギン酸塩としては、ア
ルギン酸のアルカリ金属塩(例えば、アルギン酸ナトリ
ウム、アルギン酸カリウム等)、マグネシウム塩、アン
モニウム塩などを用いることができ、これらアルギン酸
塩及びアルギン酸は、適宜市販の製品を使用できる。そ
の添加方法は、粉体のままでも、また、予め水溶液とし
て添加しても、適宜選択できる。
【0020】アルギン酸及び/又はアルギン酸塩の添加
量は、内層用麺生地における他の製麺原料との関係、例
えば、アルカリ剤の添加量とそれに基づく麺生地のp
H、また酸液処理の程度、製品の麺質(腰の強さ等)を
勘案して適宜決定されるが、原料粉1kgに対して通常
約0.5g(約0.05%以上)以上が好ましく、アル
ギン酸成分が約0.05%よりも少ないと、製品の
『腰』の軟弱化を防止する効果が発揮されにくく、ま
た、一方過剰に添加すると麺質の腰が強くなりすぎ、食
感及び食味が悪くなって、生中華めんとしてのテクスチ
ャーが損なわれる。
【0021】外層及び内層の麺生地の調製は、従来公知
の装置によって各々常圧下または減圧下に実施され、後
者では例えば減圧ミキサー等を使用することができる。
【0022】また、外層及び内層の麺帯は、各々常法に
よりロール圧延等によって製造し、または、減圧下でエ
クストルーダー等による押し出し麺帯の形成等により製
造できる。このとき例えば、公知の麺帯製造装置(特願
昭59−254855号)等も使用できる。
【0023】減圧下で麺生地及び/又は麺帯を製造する
ことは、混練等に際して内部に包含された気体の脱気を
促進し、緻密な生地や麺帯を得ることができ、製品のな
めらかさ、透明感、ほぐれ等の点において、より一層の
好結果を得ることができる。
【0024】内外層麺帯の複合圧延及び麺線切出しは、
常法により実施できる。
【0025】本発明において、麺線のα化処理は、煮熱
・蒸煮等、従来公知の方法及び装置を使用して実施で
き、また、麺線の酸液処理は、当該α化処理の後に別途
pH調整した酸液にて麺線を処理する方法(本発明の第
1方法)、当該α化処理と同時に同一工程で麺線の酸液
処理を行う方法(本発明の第2方法)のいずれかを選択
できる。前者方法においては、麺線の酸液中への浸漬、
酸液の麺線への塗布・噴霧等にて実施でき、後者方法に
おいては、煮熱用水に酸を添加した酸性溶液を用いての
煮熱、蒸煮工程中で麺線への酸液の散布又は噴霧等にて
実施できる。
【0026】酸液処理に使用する酸としては、酢酸、乳
酸、クエン酸、リンゴ酸、醸造酢等食品に使用できるも
のを適宜選択して用いることができる。酸液処理の条件
は、使用する酸の種類、麺線のpH程度、麺線のアルカ
リ度、付与すべき長期保存性の程度、製品としての生中
華めん類の麺質等を考慮して適宜設定できるが、酸液処
理した後の麺線のpHが酸性になることが必須である。
【0027】本発明においては、当該酸液処理によっ
て、麺線内層に含有されるアルギン酸及び/又はアルギ
ン酸塩が不溶化したアルギン酸となり、これが内層全般
に3次元的な網目組織を形成しているものと推定され、
麺線の『腰』、『粘弾性』を保持又は強化することがで
き、また、同時に麺線を酸性域に調整するために、長期
保存性を付与することができる。従って、本発明におけ
る酸液処理は、従来の二律背反であった問題点を一挙に
解決できるものである。
【0028】前記工程を経てpH調整された麺線は、公
知方法によって所定量目毎に包装密封され、次いでこれ
を加熱殺菌処理する。加熱条件は、通常、酸処理による
麺のpHや酸度によって異なるが、蒸気殺菌庫温度85
℃で30分以上、95℃で20分以上が必要とされ、こ
の他適宜、殺菌に必要な条件を設定できる。
【0029】本発明によって製造された生中華めん類
は、従来のごとき袋入りの包装生麺として商品化される
他、ポリスチレン等の容器に他の調味料、具材と共に収
納し、いわゆるカップ入り生中華めん類等の商品形態を
とることができる。
【0030】また、本発明は、生めんよりも水分活性を
下げた、いわゆる半生状態の中華めんについても適用で
きる。
【0031】本発明は、『アルギン酸は、水に不溶であ
るが、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムと化
合すると各々のアルギン酸塩となって水に溶解し、粘稠
な水溶液を生じる。そして、これに酸を加えれば、再び
アルギン酸となって析出する』というアルギン酸の性質
を利用するものである。すなわち、アルギン酸及び/又
はアルギン酸塩を原料に配合した中性乃至弱アルカリ性
の麺生地を圧延して内層用の麺帯とし、さらに、小麦粉
又は小麦粉と澱粉を主成分とした外層用の麺生地を圧延
した麺帯を複合圧延することにより、外層/内層/外層
からなる麺帯とし、次いでこれを麺線とし、これを、α
化処理、酸液処理する。
【0032】すなわち、三層麺の内層に、アルギン酸及
び/又はアルギン酸塩配合の麺帯を挟着複合しているの
で、これらを複合圧延後、麺線としてα化、酸液処理を
施すと、麺の内層部に酸によって不溶性のアルギン酸の
網目組織が形成されると推定され、麺に『腰』と『粘弾
性』が付与され、しかも、酸液処理によって長期保存性
も付与されるのである。そして、麺の外層の『なめらか
さ、しなやかさ』、『粘り』と、内層の『腰』と『粘弾
性』が相俟って、麺全体として、生中華めん本来の『な
めらかさ』、『粘り(粘着性)』、『腰』、『粘弾性』
を有する食感となる。
【0033】さらに、内層に不溶性のアルギン酸の網目
組織が形成されると推定されるため、麺線内部での水分
移行によって麺線外層部と中心部との水分勾配がなくな
っても、麺線の軟弱化は起こらず、品質劣化防止に効果
を奏するのである。
【0034】以上の効果は、内層用の麺生地及び/又は
外層用の麺生地、あるいは、内層用の麺帯及び/又は外
層用の麺帯を減圧下で調製する手段を講じることによっ
てより一層大きくなる。
【0035】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
なお、これらは本願発明の1実施例を示すものであり、
これらに限定されるものではない。
【0036】・実施例1(常圧下調製・α化後酸液処理
したもの) 本発明の三層生麺類を下記工程に従って製造した。
【0037】 かんすい2.5g、食塩15g、ベニ
バナ色素4.5gを水に溶かし360mlの練水とし、
小麦粉(中力粉)0.7kg、タピオカでんぷん0.3
kgの粉体混合物に前記練水を加えて、常圧ミキサーに
て15分間混練し外層用の麺生地を調製した。
【0038】 かんすい2.5g、食塩15g、アル
ギン酸5.0g、ベニバナ色素4.5gを水に溶かし3
40mlの練水とし、小麦粉(準強力粉)1.0kgに
前記練水を加えて、常圧ミキサーにて15分間混練し、
内層用の麺生地を調製した(生地pH7.6)。
【0039】 前記、内層用生地と外層用生地をロー
ル圧延等により麺帯とし、これらを圧延ロールにてさら
に複合圧延し、1.3mmの麺帯厚の外層/内層/外層
からなる麺帯とした後、#20の切刃(角)を通して麺
線とした。
【0040】 前記麺線を蒸機にて2分間常圧蒸煮
(100℃)し、次いで所定量にカットした。前記麺線
を乳酸の0.05g/l溶液中で30秒間熱水処理した
後、液切りを30秒間行った。
【0041】 上記工程で調製した麺線を乳酸6.
5g/lの80℃溶液中に30秒間浸漬後、液切りし、
前記麺線に白絞油を麺線1kg当たり20g添加し、 上記工程で調製した麺線180gをパウチに封入
密封した。
【0042】 前記包装麺を、沸騰水中で35分間殺
菌処理した後、流水中で冷却し、本発明の三層生麺類の
中華めんを得た(麺線pH4.3)。
【0043】・実施例2 (減圧下調製(内層)・α化
後酸液処理したもの) かんすい2.5g、食塩15g、ベニバナ色素4.
5gを水に溶かし360mlの練水とし、小麦粉(中力
粉)0.7kg、タピオカでんぷん0.3kgの粉体混
合物に前記練水を加えて、常圧ミキサーにて15分間混
練し外層用の麺生地を調製した。
【0044】 かんすい2.5g、食塩15g、アル
ギン酸5.0g、ベニバナ色素4.5gを水に溶かし3
40mlの練水とし、小麦粉(準強力粉)1.0kgに
前記練水を加えて、常圧ミキサーにて15分間混練後、
740mmHgの減圧下で押し出し、内層用の麺帯を調
製した。(生地pH7.6) 前記、内層用麺帯と外層用麺生地をロール圧延等に
より麺帯とし、これらをさらに複合圧延し、1.3mm
の麺帯厚の外層/内層/外層からなる麺帯とした後、#
20の切刃(角)を通して麺線とし、以下、前記実施例
1の製法に準じて、本発明の三層生麺類の中華めんを得
た(麺線pH4.3)。
【0045】・実施例3 (減圧下調製(内外層)・α
化後酸液処理したもの) かんすい2.5g、食塩15g、ベニバナ色素4.
5gを水に溶かし360mlの練水とし、小麦粉(中力
粉)0.7kg、タピオカでんぷん0.3kgの粉体混
合物に前記練水を加えて、減圧ミキサー(740mmH
g)にて15分間混練し外層用の麺生地を調製した。
【0046】 かんすい2.5g、食塩15g、アル
ギン酸5.0g、ベニバナ色素4.5gを水に溶かし3
40mlの練水とし、小麦粉(準強力粉)1.0kgに
前記練水を加えて、常圧ミキサーにて15分間混練後、
740mmHgの減圧下で押し出し、内層用の麺帯を調
製した。(生地pH7.6) 前記、内層用麺帯と外層用麺生地をロール圧延等に
より麺帯とし、これらをさらに複合圧延し、1.3mm
の麺帯厚の外層/内層/外層からなる麺帯とした後、#
20の切刃(角)を通して麺線とし、以下、前記実施例
1の製法に準じて、本発明の三層生麺類の中華めんを得
た(麺線pH4.3)。
【0047】上記、各実施例において試作した生麺と後
記の比較例で示した従来法で作った麺の官能比較評価に
ついて、表1に結果を示す。なお、評価は、パウチから
麺を取り出し、発泡スチロール製の容器内で熱湯を40
0cc注加し、フタをして、2分待って復元させた麺を
5段階評価することにより行った。
【0048】
【表1】
【0049】上記の各試験項目の判定基準は以下のとお
りである。
【0050】(1)滑らかさ、腰、粘着性、湯のび、透
明感の判定基準 充分に訓練された試食パネラー10人で試食を行い、そ
れぞれ、5(良好)・4(やや良好)・3(普通)・2
(やや不良)・1(不良)の5段階で評価し、その平均
点で以下のとおり判定した。
【0051】 良好 …4.6 〜5.0 ポイント やや良好 …3.6 〜4.5 ポイント 普通 …2.6 〜3.5 ポイント やや不良 …1.6 〜2.5 ポイント 不良 …1.0 〜1.5 ポイント (2) ほぐれの判定基準 湯もどし時の麺線のほぐれの状態をいい、下記基準によ
る 良好とは …はしを1〜2回入れれば、麺線が十分に
ほぐれる やや良好とは…はしを1〜2回入れれば、麺線がほぼほ
ぐれる 普通とは …はしを3回以上入れればほぐれて支障が
ない やや不良とは…はしを3回以上入れても麺線が完全にほ
ぐれない 不良とは …はしを3回以上入れても麺線が団子状で
全くほぐれない ・比較例1 従来法のアルギン酸単層麺 アルギン酸単層麺を下記工程に従って試作した。
【0052】 かんすい2.5g、食塩15g、ベニ
バナ色素4.5g、及びアルギン酸5.0を水350m
lに溶解して練水を調製した。次に、小麦粉(準強力
粉)1.0kgに前記練水を加えて、常圧ミキサーにて
15分間混練し、麺生地を調整する(生地pH7.6) 前記麺生地を圧延ロールに通して、1.3mmの麺
帯とした後、#20の切刃(角)を通して麺線とし、以
下前記実施例1の製法に準じてアルギン酸単層麺を得
た。
【0053】・比較例2 従来法の3層麺(1)(外
層:澱粉添加) 従来の3層麺(1)を下記工程に従って試作した。
【0054】 かんすい2.5g、食塩15g、ベニ
バナ色素4.5gを水に溶かし360mlの練水とし、
小麦粉(中力粉)0.70kg、タピオカでんぷん0.
30kgの粉体混合物に前記練水を加えて、常圧ミキサ
ーにて15分間混練し外層用の麺生地を調製した。
【0055】 かんすい2.5g、食塩15g、ベニ
バナ色素4.5gを水に溶かし340mlの練水とし、
小麦粉(準強力粉)1.0kgに前記練水を加えて、常
圧ミキサーにて15分間混練し内層用の麺生地を調製し
た。
【0056】 前記、内層用生地と外層用生地をロー
ル圧延等により麺帯とし、これらを圧延ロールにてさら
に複合圧延し、1.3mmの麺帯厚の外層/内層/外層
からなる麺帯とした後、#20の切刃(角)を通して麺
線とし、以下、前記実施例1の製法に準じて3層麺
(1)を得た。
【0057】・比較例3 従来法の3層麺(2)(内
層:卵白粉末添加) 従来の3層麺(2)を下記工程に従って試作した。
【0058】 かんすい2.5g、食塩15g、ベニ
バナ色素4.5gを水に溶かし340mlの練水とし、
小麦粉(中力粉)1.0kgに前記練水を加えて、常圧
ミキサーにて15分間混練し外層用の麺生地を調製し
た。
【0059】 かんすい2.5g、食塩15g、ベニ
バナ色素4.5gを水に溶かし340mlの練水とし、
小麦粉(準強力粉)1.0kg、卵白粉末0.06kg
の粉体混合物に前記練水を加えて、常圧ミキサーにて1
5分間混練し内層用の麺生地を調製した。
【0060】 前記、内層用生地と外層用生地をロー
ル圧延等により麺帯とし、これらを圧延ロールにてさら
に複合圧延し、1.3mmの麺帯厚の外層/内層/外層
からなる麺帯とした後、#20の切刃(角)を通して麺
線とし、以下、前記実施例1の製法に準じて3層麺
(2)を得た。
【0061】・比較例4 従来法の3層麺(3)(外
層:澱粉添加、内層:減圧下調製) 従来の3層麺(3)を下記工程に従って試作した。
【0062】 かんすい2.5g、食塩15g、ベニ
バナ色素4.5gを水に溶かし360mlの練水とし、
小麦粉(中力粉)0.7kg、タピオカ澱粉0.3kg
の粉体混合物に前記練水を加えて、常圧ミキサーにて1
5分間混練し外層用の麺生地を調製した。
【0063】 かんすい2.5g、食塩15g、ベニ
バナ色素4.5gを水に溶かし340mlの練水とし、
小麦粉(準強力粉)1.0kg、に前記練水を加えて、
常圧ミキサーにて15分間混練後、740mmHgの減
圧下で押出し、内層用の麺生地を調製した。
【0064】 前記、内層用生地と外層用生地をロー
ル圧延等により麺帯とし、これらを圧延ロールにてさら
に複合圧延し、1.3mmの麺帯厚の外層/内層/外層
からなる麺帯とした後、#20の切刃(角)を通して麺
線とし、以下、前記実施例1の製法に準じて3層麺
(3)を得た。
【0065】上記、各実施例の比較結果によれば、本発
明品は、滑らかさ・透明感において従来法のアルギン酸
単層麺にはない品質特性を有し、且つ、腰・粘着性・湯
のび・ほぐれの点においても、従来の三層麺を酸液処理
したものには見られない優れた品質特性を示している。
【0066】また、従来法の三層麺の官能評価におい
て、腰、粘着性、湯のび、ほぐれの点で極めて低い評価
となっていることは、結局、中華めん類においては、そ
の製造上、かんすい等のアルカリ剤を使用しており、こ
れに酸液処理を行って麺を酸性化することは『麺』の軟
弱化に止まらず、『麺』のつながりを悪くし、麺線が切
れ易くなり、中華めんとしての基本的な麺質の喪失に直
結していることを明示している。
【0067】
【発明の効果】本発明方法を用いることによって、pH
調整(酸性にpHを調整する)で長期保存性を付与し、
しかも、当該酸性処理によっても、生中華めんが本来有
する独特の『粘り(粘着性)』、『腰』の強い独特の
『粘りと歯ごたえ』を保持しつつ、しかも、湯のびしに
くい生中華めん類を製造することができるのである。
【0068】通常の生中華めんは前述のごとく、麺線は
かんすい等のアルカリ剤の配合によってアルカリ性とな
っており、これによって生中華めん独特の強い『腰』や
『粘弾性』が付与されているので、この麺線を単なるp
H調整によって酸性化すると、小麦粉のグルテンの粘弾
性が喪失され、加えて麺線に展延性がなくなり、その結
果、麺は軟弱で『腰』のない食感となり、結局、生中華
めん独特の食感が喪失される。従って、従来は、アルカ
リ性の麺線を単に酸性化することによっては、長期保存
性は付与されるものの生中華めん本来の食感を出すこと
ができなかったものであるが、本発明はこのような問題
点を解消した。
【0069】また、従来の三層麺の技術によると、麺の
なめらかさやしなやかさ、透明感は付与されるものの、
従来は生中華めん特有の腰の付与や湯のび防止の点にお
いては十分な効果が得られていなかったが、本発明はこ
の問題点を解消した。
【0070】すなわち、本発明においては、三層麺の内
層に、アルギン酸及び/又はアルギン酸塩配合の麺帯を
挟着複合しているので、これらを複合圧延後、麺線とし
てα化、酸液処理を施すと、麺の内層部に不溶性のアル
ギン酸の網目組織が形成されるものと推定され、麺の
『腰』と『粘弾性』は維持され、しかも、酸液処理によ
って長期保存性をも併せて付与させることができるので
ある。そして、麺の外層の『なめらかさ、しなやか
さ』、『粘り』がと内層の『腰』と『粘弾性』と相俟っ
て、麺全体として、生中華めん本来の『粘り(粘着
性)』、『腰』、『粘弾性』を有する食感を実現させる
ことができ、また、加熱殺菌による麺の食感の劣化をも
防止することができるのである。
【0071】さらに、内層に不溶性のアルギン酸とその
網目組織が形成されるものと推定され、麺線外層部と中
心部との水分勾配がなくなっても、これによる麺線の軟
弱化を防止でき、品質劣化防止に効果を奏する。外層
は、内層に形成されたアルギン酸の網目組織が喫食に際
して直接的に口腔内に接触して口当たり感等が低下する
のを防止する効果を奏する。
【0072】また、外層及び/又は内層の麺生地あるい
は麺帯を減圧下で調製すると、麺生地内の空気を脱気さ
せるこができ、これにより、なめらかさ、透明感、ほぐ
れ等の点において、品質がより一層向上した生中華めん
類を製造することができるのである。
【0073】本発明は、従来の三層麺とアルギン酸添加
麺のそれぞれの欠点を解消するとともに、アルギン酸添
加麺と三層麺の特性を有機的に結合させ実現させること
によって初めて可能にしたものである。
【0074】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 赤松 伸行 大阪府大阪市淀川区西中島4丁目1番1号 日清食品株式会社内 (72)発明者 田渕 満幸 大阪府大阪市淀川区西中島4丁目1番1号 日清食品株式会社内 (72)発明者 平田 俊成 大阪府大阪市淀川区西中島4丁目1番1号 日清食品株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 麺類の製造方法であって、下記の工程、
    すなわち、(1) 小麦粉もしくは小麦粉と澱粉を主成分と
    する原料粉に、必要に応じてアルカリ剤、食塩等を加え
    て水とを混練し、外層用の麺生地を調製し、(2) 小麦粉
    もしくは小麦粉と澱粉を主成分とする原料粉、アルギン
    酸及び/又はアルギン酸塩、アルカリ剤、必要に応じて
    食塩等を加えて、水とを混練し、中性乃至弱アルカリ性
    のpHを呈する内層用麺生地を調製し、(3) 前記、内層用
    生地と外層用生地をロール圧延等の常法により各々麺帯
    とし、これらを更に複合圧延することにより、外層/内
    層/外層からなる麺帯とし、常法により麺線とした後、
    α化処理を施し、(4) 次いで、前記α化処理を施した麺
    線を酸液処理して、麺線pHを酸性域に調整し、次いで、
    (5) 前記pH調整した麺線を包装密封した後、加熱殺菌処
    理する工程からなる三層生麺類の製造方法。
  2. 【請求項2】 麺類の製造方法であって、下記の工程、
    すなわち、(1) 小麦粉もしくは小麦粉と澱粉を主成分と
    する原料粉に、必要に応じてアルカリ剤、食塩等を加え
    て水とを混練し、外層用の麺生地を調製し、(2) 小麦粉
    もしくは小麦粉と澱粉を主成分とする原料粉、アルギン
    酸及び/又はアルギン酸塩、アルカリ剤、必要に応じて
    食塩等を加えて、水とを混練し、中性乃至弱アルカリ性
    のpHを呈する内層用麺生地を調製し、(3) 前記、内層用
    生地と外層用生地をロール圧延等の常法により各々麺帯
    とし、これらを更に複合圧延することにより、外層/内
    層/外層からなる麺帯とし、常法により麺線として、
    (4) 前記麺線をα化処理と同時に酸液処理して、麺線pH
    を酸性域に調整し、次いで、(5) 前記pH調整した麺線を
    包装密封した後、加熱殺菌処理する工程からなる三層生
    麺類の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記、内層用の麺生地の調製において、
    アルカリ剤を内層用麺生地のpHが約 6.5〜9.0 になるよ
    うに添加する請求項1もしくは請求項2に記載の三層生
    麺類の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記、麺線を酸液処理する工程におい
    て、酸液処理後の麺線のpHが約6以下である請求項1か
    ら請求項3のいずれかに記載の三層生麺類の製造方法。
  5. 【請求項5】 内層用の麺生地及び/又は外層用の麺生
    地を、常圧又は減圧下で調製することを特徴とする請求
    項1から請求項4のいずれかに記載の三層生麺類の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 内層用の麺帯及び/又は外層用の麺帯
    を、常圧又は減圧下で調製することを特徴とする請求項
    1から請求項5のいずれかに記載の三層生麺類の製造方
    法。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH078194A (ja) * 1993-01-14 1995-01-13 Nissin Food Prod Co Ltd 三層生麺類の製造方法
US5534273A (en) * 1994-07-15 1996-07-09 Toyo Suisan Kaisha, Ltd. Method for manufacturing packed wet-type instant noodles
JP2010130980A (ja) * 2008-12-08 2010-06-17 Nisshin Foods Kk 三層麺の製造方法
JP2010130979A (ja) * 2008-12-08 2010-06-17 Nisshin Foods Kk 乾麺類の製造方法
JP2019062850A (ja) * 2017-10-04 2019-04-25 日本製粉株式会社 多層麺の製造方法
JP2019176814A (ja) * 2018-03-30 2019-10-17 日清食品ホールディングス株式会社 調理済みチルド中華麺の製造方法

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