図1は、本発明の実施例1に係る排気ガス改質装置を備える内燃機関の全体構成図である。同図に示す排気ガス改質装置3は、車両(図示省略)が有すると共に車両の運転時の原動機となる内燃機関1に備えられている。この内燃機関1は、4つの気筒5が直列に配置されており、当該内燃機関1には、気筒5内に連通すると共に気筒5内に吸入される空気が流れる通路である吸気通路10と、気筒5内で燃料を燃焼させた後、気筒5内から排出される排気ガスが流れる排気通路20とが接続されている。これらの吸気通路10と排気通路20とは、気筒5の数に合わせてそれぞれ4つの通路に分岐しており、分岐した通路が4つの気筒に対応し、気筒5内に連通して内燃機関1に接続されている。
この吸気通路10と排気通路20とのうち吸気通路10には、内燃機関1の運転時に気筒5に対して燃料を供給可能な燃料供給手段であるインジェクタ11が配設されている。このインジェクタ11は、内燃機関1の運転時に気筒5内に燃料を噴射することにより、気筒5に対して燃料を供給可能に設けられている。また、吸気通路10を流れる空気の流れ方向におけるインジェクタ11の上流側には、吸気通路10内を開閉可能なスロットルバルブ12が配設されており、スロットルバルブ12のさらに上流側には、吸気通路10内を流れる空気の流量を検出可能なエアフロメータ13が設けられている。このように形成される吸気通路10の入口には、吸気通路10に流入する空気の不純物を除去するエアクリーナ14が設けられている。
また、排気通路20には、排気ガスの成分を検出可能な排気ガス成分検出手段であるO2センサ35が設けられており、さらに、排気ガスを改質する改質器30が備えられている。この改質器30には、内燃機関1の気筒5内から排出された排気ガスと、この排気ガスを改質する際に排気ガスに添加する燃料である改質用燃料とより気筒5内で燃焼可能な改質ガスを生成する改質手段である改質触媒を担持する改質室31が内設されている。このように改質室31が担持する改質触媒は、例えばロジウム系の触媒が用いられる。さらに、この改質室31は、排気ガスを浄化する浄化手段である浄化触媒も担持している。これらの改質触媒と浄化触媒とは、改質触媒は改質室31内側に担持されており、浄化触媒は、改質室31外側に担持されている。つまり、改質室31は、排気ガスが流れる排気通路に設けられると共に排気ガスを浄化する浄化触媒を備えており、且つ、排気ガスを改質可能な改質触媒を備えている。このように改質触媒と浄化触媒との双方を担持する改質室31には、これらの触媒の温度、或いは改質室31の温度である床温を検出する床温検出手段である床温センサ36が設けられている。
また、排気通路20は、排気通路20内を流れる排気ガスの流れ方向における改質器30の上流で通路が分岐しており、排気通路20の主となる通路である排気主通路21に対し、分岐した通路は改質用通路22となっている。この改質用通路22は、一端が排気主通路21に接続され、他端が改質器30に接続されている。このように形成される改質用通路22には、改質用燃料を改質用通路22内に噴射する改質用燃料インジェクタ25が設けられている。
また、改質器30にはガス還流通路40が接続されており、このガス還流通路40は、排気ガスが流れる方向において改質器30と吸気通路10との間に設けられている。つまり、ガス還流通路40は、改質器30と吸気通路10とを接続している。このように設けられるガス還流通路40は、改質器30からガス還流通路40に流れた排気ガス及び改質室31で生成した改質ガスが、改質器30側から吸気通路10側に流れることができるように形成されている。即ち、ガス還流通路40は、改質ガスを気筒5の吸気通路10に流入可能な還流通路となっている。
また、当該ガス還流通路40には、ガス還流通路40を流れる排気ガスや改質ガスを冷却可能な冷却手段であるEGRクーラ41が設けられている。EGRクーラ41は、内燃機関1を循環し、運転時の内燃機関1を冷却する冷却媒体である冷却水(図示省略)と、排気ガス及び改質ガスとの間で熱交換を行なうことができるように形成されており、排気ガス及び改質ガスは、冷却水との間で熱交換を行なうことにより温度が低下する。
また、ガス還流通路40には、EGRクーラ41が設けられている部分と吸気通路10に接続されている部分との間の部分、即ち、ガス還流通路40における吸気通路10の近傍に、ガス還流通路40内を開閉可能な還流流量調整バルブ42が配設されている。
また、このように設けられるガス還流通路40と改質用通路22とは、双方の通路が接続される改質器30を挟んで直線状に形成されている。詳しくは、ガス還流通路40と改質用通路22とは、排気主通路21内を流れる排気ガスの流れ方向に対して略直交する方向で改質器30に接続されており、さらに、ガス還流通路40と改質用通路22とは、改質器30に対して互いに略対向する位置に接続されている。これにより、ガス還流通路40と改質用通路22とにおける改質器30に接続されている部分は、改質器30を挟んで直線状に形成されている。
このように形成される排気通路20は、排気主通路21を流れる排気ガスの流れ方向における改質器30の下流側にも設けられている。即ち、排気通路20は、排気ガスの流れ方向における改質器30の上流側から下流側にかけて連通して形成されている。
また、吸気通路10に設けられるインジェクタ11、及び改質用通路22に設けられた改質用燃料インジェクタ25は、当該内燃機関1を備える車両に設けられ、内燃機関1の運転用の燃料を貯留する燃料タンク45に接続されている。この燃料タンク45は、燃料タンク45内の燃料を外部に送出可能なフィードポンプ46を備えており、燃料タンク45内の燃料は、このフィードポンプ46によってインジェクタ11及び改質用燃料インジェクタ25に供給可能に設けられている。
これらのインジェクタ11及び改質用燃料インジェクタ25、スロットルバルブ12、還流流量調整バルブ42、エアフロメータ13、O2センサ35、床温センサ36は、車両に搭載されると共に車両の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)50に接続されている。
図2は、図1に示す排気ガス改質装置の要部構成図である。ECU50には、処理部51、記憶部70及び入出力部71が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、ECU50に接続されているスロットルバルブ12、エアフロメータ13、O2センサ35、床温センサ36、インジェクタ11、改質用燃料インジェクタ25、還流流量調整バルブ42は、入出力部71に接続されており、入出力部71は、これらのスロットルバルブ12や床温センサ36等との間で信号の入出力を行なう。また、記憶部70には、実施例1に係る排気ガス改質装置3を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部70は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、或いはこれらの組み合わせにより構成することができる。
また、処理部51は、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、スロットルバルブ12の開閉の制御が可能なスロットルバルブ制御部52と、エアフロメータ13での検出結果より運転中の内燃機関1の吸入空気量を取得可能な吸入空気量取得部53と、を有している。
また、処理部51は、インジェクタ11から噴射する燃料の噴射量を制御可能な燃料噴射量制御部54と、改質用燃料インジェクタ25から噴射する改質用燃料の噴射量を制御可能な改質用燃料噴射量制御部55と、還流流量調整バルブ42の開閉の制御が可能な還流流量調整バルブ制御部56と、を有している。
また、処理部51は、内燃機関1から排出された排気ガスのうち排気通路20側から内燃機関1に還流する還流ガスであるEGRガスの量を設定するEGRガス量設定部57と、内燃機関1の運転中における所定時間あたりの内燃機関1の回転数を取得可能な回転数取得部58と、運転中の内燃機関1に作用する負荷を取得可能な負荷取得部59と、を有している。
また、処理部51は、インジェクタ11から噴射する燃料の噴射量を取得可能な燃料噴射量取得部60と、走行中の車両の速度を取得可能な車速取得部61と、EGRガスに改質ガスを導入しない場合におけるインジェクタ11からの燃料の噴射量を取得可能な改質ガス未導入時燃料噴射量取得部62と、を有している。
また、処理部51は、改質室31が改質ガスを生成しない状態でインジェクタ11によって供給する燃料の量である通常状態燃料供給量と改質室31が改質ガスを生成した状態でインジェクタ11によって供給する燃料の量である改質状態燃料供給量との差を取得可能な燃料噴射量低減量算出手段である燃料噴射量低減量算出部63と、燃料噴射量低減量算出部63で取得した通常状態燃料供給量と改質状態燃料供給量とに基づいて改質室31で生成する改質ガスの量を導出する改質ガス量導出手段である改質ガス量算出部64と、を有している。
ECU50によって制御される排気ガス改質装置3の制御は、例えば、床温センサ36などによる検出結果に基づいて、処理部51が上記コンピュータプログラムを当該処理部51に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて還流流量調整バルブ42などを作動させることにより制御する。その際に処理部51は、適宜記憶部70へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このように排気ガス改質装置3を制御する場合には、上記コンピュータプログラムの代わりに、ECU50とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
この実施例1に係る排気ガス改質装置3は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。実施例1に係る排気ガス改質装置3を備える内燃機関1は、運転時には車両の室内に設けられるアクセルペダル(図示省略)の開度に応じてECU50の処理部51が有するスロットルバルブ制御部52がスロットルバルブ12の開度を制御する。これにより、吸気通路10にはスロットルバルブ12の開度に応じた空気が流れる。吸気通路10に空気が流れた場合、この空気の流量をエアフロメータ13で検出し、エアフロメータ13での検出結果をECU50の処理部51が有する吸入空気量取得部53で取得する。
吸入空気量取得部53で取得した吸入空気量は、アクセルペダルの開度などの運転状態に関する情報と共にECU50の処理部51が有する燃料噴射量制御部54に伝達され、伝達された運転状態に関する情報に応じて燃料噴射量制御部54によってインジェクタ11を制御し、インジェクタ11を作動させる。内燃機関1の運転時には、インジェクタ11及び改質用燃料インジェクタ25には、燃料タンク45が備えるフィードポンプ46によって燃料タンク45内の燃料が供給されるため、燃料噴射量制御部54がインジェクタ11を作動させることにより、インジェクタ11は、燃料噴射量制御部54での制御に応じた燃料を吸気通路10内に噴射する。即ち、燃料噴射量制御部54は、インジェクタ11から吸気通路10内に対して噴射する燃料の噴射量を、運転状態に関する情報に応じて制御する。
このように、吸気通路10内に対してインジェクタ11から燃料を噴射することにより、噴射した燃料は吸気通路10内を流れる空気と混合し、混合気となって吸気通路10内を流れる。吸気通路10内を流れる混合気は、分岐して形成される吸気通路10に沿って分岐し、内燃機関1が有する4つの気筒5内に吸入される。
気筒5内に吸入された混合気は、それぞれの気筒5の燃焼行程で混合気中の燃料が燃焼し、燃焼後の排気ガスは、排気行程で気筒5内から排気通路20に流出する。排気通路20に排気ガスが流れた場合、排気ガスの大部分は排気通路20の排気主通路21を通り、改質器30に流れて改質器30に設けられる改質室31に流れる。その際に、この改質室31外側は、排気ガスを浄化可能な浄化触媒を担持しているため、改質室31に流れた排気ガスは改質室31によって浄化され、排気ガスの流れ方向における改質器30の下流側に位置する排気通路20に流れて大気に放出される。また、このように排気ガスが改質室31外側を通過する際には、改質室31内側には排気ガスの熱が伝達されるため、改質室31内側は、排気ガスの熱により温度が上昇する。
一方、排気通路20を流れる排気ガスのうち、一部の排気ガスは排気主通路21から改質用通路22に流れる。改質用通路22には、このように一部の排気ガスが流れるが、この改質用通路22には改質用燃料インジェクタ25が設けられている。改質用燃料インジェクタ25は、改質用通路22内を流れる排気ガスに対して、排気ガスの改質を行なう際に用いる燃料である改質用燃料を噴射可能に設けられており、その噴射量は、ECU50の処理部51が有する改質用燃料噴射量制御部55によって制御可能に設けられている。なお、この改質用燃料は、内燃機関1を運転するためにインジェクタ11から噴射する燃料と同じ燃料になっており、インジェクタ11から噴射する燃料と同様に、燃料タンク45が備えるフィードポンプ46によって供給された燃料タンク45内の燃料が、改質用燃料として改質用燃料インジェクタ25から噴射される。
改質用燃料噴射量制御部55によって制御される改質用燃料インジェクタ25から改質用燃料を噴射した場合、改質用燃料は改質用通路22を流れる排気ガスと混合し、混合した状態で改質器30に流入する。このように、改質用燃料と混合した状態で改質器30に流入した排気ガスは、改質器30に設けられている改質室31内側を通過する。その際に、改質室31は排気主通路21を流れる排気ガスの熱により温度が高くなっており、また、改質室31内側は改質触媒を担持しているため、改質用燃料と混合した排気ガスが改質室31内側を通過する際には、改質室31内側は改質用燃料と混合された排気ガスに熱を与えながら通過する混合排気ガスを改質し、改質ガスを生成する。
つまり、改質室31は、浄化触媒の作用で排気ガスを浄化する際に排気ガスから熱を受けることにより温度が上昇するが、改質触媒の作用で排気ガスを改質する際には、この熱を利用し、吸熱反応により改質する。このように、改質室31が担持する改質触媒は、浄化触媒が排気ガスを浄化する際の熱を利用して改質ガスを生成可能に設けられている。この改質により生成した改質ガスは、水素や一酸化炭素を含んでおり、燃焼可能な気体となっている。
また、排気ガスと改質用燃料とが改質室31によって改質されることにより生成された改質ガスは、発熱量が、改質前の改質用燃料の発熱量よりも大きくなっている。これを化学式で表すと、内燃機関1の燃料の一例であるガソリンをC8H18とし、空気を主成分である酸素(O2)と窒素(N2)とからなるものとして(12.5O2+47.1N2)とした場合に、ガソリンの燃焼は式(1)のように表すことができる。即ち、式(1)における左辺は、燃焼前のガソリンと空気とを表しており、式(1)の右辺は、ガソリンが燃焼した後の排気ガスを表している。この式(1)に示すように、ガソリンが燃焼した場合には、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)とを発生する。
C8H18+12.5O2+47.1N2→8CO2+9H2O+47.1N2・・・(1)
これに対し、改質室31によってガソリンと排気ガスとを改質する場合は、式(1)の右辺で示す排気ガスのモル数を、ガソリンを表すC8H18のモル数と合わせて変換することにより、式(2)のように表すことができる。即ち、式(2)における左辺は、改質前のガソリンと排気ガスとを表しており、式(2)の右辺は、ガソリンと排気ガスとを改質した後の改質ガスを表している。ガソリンと排気ガスとを改質した場合には、式(2)に示すように、水素(H2)と一酸化炭素(CO)とが生成される。
C8H18+3.8CO2+4.2H2O+22.1N2→13.2H2+11.8CO+22.1N2・・・(2)
さらに、この改質ガスが燃焼する場合における化学式は、式(3)のように表すことができる。式(3)の左辺は、燃焼前の改質ガスと空気とを表しており、式(3)の右辺は、改質ガスの燃焼後の状態を表している。
13.2H2+11.8CO+22.1N2+12.5O2+47.1N2→11.8CO2+13.2H2O+69.2N2・・・(3)
このように、排気ガスとガソリンとを改質室31で改質した場合、燃焼可能な改質ガスになる。即ち、改質ガスは、燃焼可能な水素と一酸化炭素とを含んでいるため、燃焼可能な気体になっているが、このガソリンと水素と一酸化炭素との発熱量を、等モルにおける低位発熱量で示すと、
C8H18(ガソリン)→低位発熱量=5116[kJ/mol]
H2(水素)→低位発熱量=242[kJ/mol]
CO(一酸化炭素)→低位発熱量=283[kJ/mol]
になる。それぞれの発熱量はこのようになっているため、水素と一酸化炭素の発熱量を、改質ガスの化学式、即ち、式(2)、式(3)の(13.2H2+11.8CO)に代入することにより、式(4)で示すように、改質ガスの発熱量を求めることができる。
13.2×242+11.8×283=6534[kJ/mol]・・・(4)
このように、ガソリンと改質ガスとを、等モルの発熱量を比較した場合、ガソリンの発熱量は5116[kJ/mol]であるのに対し、改質ガスの発熱量は6534[kJ/mol]になるため、ガソリンの発熱量よりも改質ガスの発熱量の方が1418[kJ/mol]高くなる。従って、改質用燃料と排気ガスとを改質室31で改質することにより、発熱量は約27.7%増加する。
改質室31では、このように排気ガスと改質用燃料とを改質して改質ガスを生成するが、改質室31で生成した改質ガス、及び改質ガスに改質されずに改質室31を通過する排気ガスは、内燃機関1に還流する還流ガスであるEGRガスとして、ガス還流通路40に流れる。ガス還流通路40に流れたEGRガスは、EGRクーラ41を通過する。その際に、EGRクーラ41は、EGRガスと冷却水との間で熱交換を行なわせる。これにより、EGRガスは、温度が低下する。
EGRクーラ41によって温度が低下したEGRガスは、さらにガス還流通路40を流れ、還流流量調整バルブ42の方向に向かう。この還流流量調整バルブ42は、ECU50の処理部51が有する還流流量調整バルブ制御部56によって制御可能に設けられており、還流流量調整バルブ制御部56は、還流流量調整バルブ42を制御することにより還流流量調整バルブ42の開度を調整する。
ここで、還流流量調整バルブ42が設けられるガス還流通路40は、吸気通路10に接続されているが、吸気通路10内を流れる空気とガス還流通路40内を流れるEGRガスとでは、ガス還流通路40内を流れるEGRガスの方が圧力が高くなっている。このため、吸気通路10とガス還流通路40とが連通した状態では、ガス還流通路40内を流れるEGRガスは、吸気通路10内に流入する。
従って、還流流量調整バルブ制御部56によって還流流量調整バルブ42を制御し、還流流量調整バルブ42の開度を大きくした場合には、ガス還流通路40内を流れるEGRガスの吸気通路10内への流入量は多くなり、還流流量調整バルブ42の開度を小さくした場合には、吸気通路10内へのEGRガスの流入量は少なくなる。
吸気通路10には、このように還流流量調整バルブ42の開度に応じた量のEGRガスが流れるが、これらのEGRガスは、内燃機関1の運転時には吸気通路10内を流れる空気と共に内燃機関1の気筒5内に吸入される。これにより、内燃機関1を任意の出力で運転する際に、スロットルバルブ12の開度を小さくした場合でも、EGRガスが気筒5内に流れるため吸入行程における負圧が小さくなり、ポンプロスが低減する。また、EGRガスを気筒5内に吸入させることにより、吸気通路10から吸入した混合気を燃焼させた場合でも燃焼温度が低下するため、NOx(窒素酸化物)が減少する。
また、EGRガスを気筒5内に吸入させた場合には、このように燃焼温度が低下するため、燃料を燃焼させることにより発生した熱に対して、冷却水で冷却する熱の割合が低下する。このため、燃料を燃焼させた際に、燃焼時の全エネルギーのうち内燃機関1を運転させるエネルギーとして使用できるエネルギーの割合が増加するため、燃費が向上する。
また、このEGRガスには、改質ガスが含まれており、さらに改質ガスには、水素や一酸化炭素などの燃焼可能なガスが含まれている。このため、EGRガスが流入した気筒5内で燃料が燃焼する場合には、燃料と共に改質ガスも燃焼する。特に、水素は急速燃焼をするガスであるため、水素が燃焼する際には、気筒5内の水素は急速な燃焼速度で燃焼する。また、これらのように気筒5内で燃焼する改質ガスは、燃料であるガソリンよりも発熱量が高いため、改質ガスが燃焼した際には、内燃機関1の出力は増加する。従って、EGRガスに含まれる改質ガスを燃焼させる場合において、内燃機関1の出力を一定にする場合には、改質ガスを燃焼させない場合と比較してスロットルバルブ12は閉じ、インジェクタ11から噴射する燃料の噴射量を低減させる。
また、このように、改質ガスが含まれるEGRガスを還流させる場合には、改質室31で生成する改質ガスの量を導出する。改質ガスの生成量の導出は、改質ガスを導入する場合と改質ガスを導入しない場合とでインジェクタ11から噴射する燃料の噴射量が異なるため、この噴射量の差に基づいて導出する。即ち、インジェクタ11から噴射する燃料の発熱量と、改質ガスの発熱量とでは、改質ガスの発熱量の方が大きくなっており、発熱量が大きい改質ガスの割合が多くなった場合には、内燃機関1の出力は大きくなる。このため、内燃機関1の出力とインジェクタ11から噴射する燃料の噴射量とを比較することにより、改質室31で生成する改質ガスの量を導出することができる。
この導出は、具体的には、車両の定速走行中にEGRガスに改質ガスを導入し、この場合におけるインジェクタ11からの燃料の噴射量と、仮に同じ走行条件で改質ガスを導入しない場合におけるインジェクタ11からの燃料の噴射量とを比較する。改質ガスを導入した場合には内燃機関1の出力は向上するが、改質ガスを導入した場合と導入しない場合とで同じ速度で車両を定速走行させる場合には、改質ガスを導入した場合と導入しない場合とで内燃機関1の出力を一定にする。このため、改質ガスを導入する場合においてインジェクタ11から噴射する燃料の噴射量は、改質ガスを導入しない場合においてインジェクタ11から噴射する燃料の噴射量よりも低減する。
インジェクタ11から噴射する燃料の発熱量と、改質ガスの発熱量とは、式(1)〜(4)により1モルあたりの発熱量を算出することができるため、この発熱量と、インジェクタ11から噴射する燃料の低減量とより、改質ガスの生成量を算出することができる。改質ガスの生成量を算出した場合には、その生成量に応じて内燃機関1に吸入させるEGRガスの量を増加させる。
これらのようにEGRガスを増加させた場合には、燃費が向上し、EGRガスに改質ガスを導入した場合には、発熱量の増加により燃費はさらに向上するが、次に、このEGRガスの量の変化と燃費との関係について説明する。図3は、EGR率と燃料消費率との関係を示す説明図である。同図における横軸は、内燃機関1に吸気されるガス中におけるEGRガスの割合であるEGR率を示しており、縦軸は、所定の単位時間における燃料の消費量である燃料消費率を示している。
EGR率を大きくした場合には、内燃機関1の運転時のポンプロスを低減させたり冷却損失を低減させたりすることができるが、EGR率が大き過ぎる場合には燃焼が不安定になるため、内燃機関1の所定出力を得るには、燃料を多く噴射する必要がある。このため、燃料消費率は、図3の改質ガス未導入時特性80で示すように、所定の範囲内でEGR率を大きくすることにより向上し、ERG率が大きくなり過ぎると燃料消費率は低下する。このように、EGR率を変化させた場合において最も燃料消費率が良い状態のEGR率は、ERGリミット82となっている。
また、EGRガスに改質ガスを導入した場合には、改質ガスの発熱量はインジェクタ11から噴射する燃料の発熱量よりも高いため、図3の改質ガス導入時特性81で示すように、燃料消費率は、改質ガスを導入しない場合、即ち改質ガス未導入時特性80よりも向上する。
また、EGRガスに改質ガスを導入した場合には、改質ガスに含まれるH2の急速燃焼によりEGRガスを増加させた場合における不完全燃焼を抑制できるため、改質ガス導入時特性81で示すように、内燃機関1に吸入させるEGRガスの量を増加することができる。これにより、内燃機関1の運転時のポンプロスや冷却損失は、より低減するため、燃料消費率は、より向上する。また、これらにより、改質ガス導入時特性81のEGRリミット82は、改質ガス未導入時特性80のEGRリミット82よりも燃費消費率が良く、EGR率が大きい側に移動する。
図4は、本発明の実施例1に係る排気ガス改質装置の処理手順を示すフロー図である。次に、実施例1に係る排気ガス改質装置3の制御方法、即ち、当該排気ガス改質装置3の処理手順について説明する。実施例1に係る排気ガス改質装置3の処理手順では、まず、改質ガスを導入する運転条件で、内燃機関1の回転数と負荷とからベースのEGRガス量を設定する(ステップST101)。このうち、内燃機関1の回転数は、内燃機関1に備えられるクランク角センサ(図示省略)などによる検出結果が、ECU50の処理部51が有する回転数取得部58に伝達されることにより、この回転数取得部58で取得する。また、内燃機関1の負荷は、エアフロメータ13での検出結果や、スロットルバルブ12の開度を検出するスロットル開度センサ(図示省略)の検出結果などがECU50の処理部51が有する負荷取得部59に伝達されることにより、この負荷取得部59で取得する。
さらに、これらの回転数や負荷が、ECU50の処理部51が有するEGRガス量設定部57に伝達され、EGRガス量設定部57で、これらの回転数や負荷より、EGRガスに改質ガスを導入する際におけるベースとなるEGRガス量を設定する。即ち、EGRガス量設定部57で、EGRガスに改質ガスを導入する運転条件において、取得した回転数や負荷に適したEGRガス量を設定する。
次に、改質室床温より燃料噴射量分の改質用燃料を噴射する(ステップST102)。この改質用燃料の噴射は、床温センサ36で検出した改質室31の床温が、ECU50の処理部51が有する改質用燃料噴射量制御部55に伝達され、改質用燃料噴射量制御部55で改質用燃料インジェクタ25を制御することにより改質用燃料を噴射する。
ここで、改質室31の床温と、改質室31による改質用燃料の改質との関係について説明する。図5は、改質室の床温と全体の燃料噴射量に対する改質用燃料の噴射量の割合との関係を示す説明図である。同図における横軸は、改質室31の床温を示しており、縦軸は、インジェクタ11から噴射する燃料と改質用燃料インジェクタ25から噴射する改質用燃料とを合わせた噴射量中における改質量燃料の噴射量の割合を示している。改質室31が担持する改質触媒は、温度が高くなるに従って活性化し、より多くの改質用燃料を改質ガスに改質可能になっている。
詳しくは、改質室31は、図5に示すように床温が概ね300℃以上の場合に改質可能になっており、床温が概ね300℃以上の場合に、全体の燃料噴射量に対して所定の割合以下の改質用燃料を改質可能な制御域85を有している。この制御域85における改質用燃料の割合の上限値以上となる改質用燃料の割合の領域は、改質用燃料を改質することが不可能な領域である改質不可領域86となっている。また、制御域85における改質用燃料の割合の上限値は、床温が高くなるに従って高くなっている。つまり、改質室31は、床温が高くなるに従って、より多くの改質用燃料を改質可能になっている。
改質室31の床温と、改質室31による改質用燃料の改質とは、このような関係になっているが、この関係は、マップとなって予めECU50の記憶部70に記憶されている。改質用燃料噴射量制御部55は、記憶部70に記憶されたこのマップと、床温センサ36で検出した床温とより改質可能な改質用燃料の量を導出し、改質用燃料インジェクタ25を制御することにより導出した改質用燃料の量で改質用燃料を噴射する。
次に、改質ガス導入後に定速走行運転した状態における燃料噴射量を低減する(ステップST103)。この燃料噴射量の低減は、ECU50の処理部51が有する燃料噴射量制御部54で行なう。燃料噴射量制御部54は、改質用燃料インジェクタ25から改質用燃料を噴射した状態で、所定の定速走行運転になるインジェクタ11からの燃料の噴射量を導出する。さらに、インジェクタ11に制御信号を送信して制御することにより、導出した噴射量でインジェクタ11から燃料を噴射する。つまり、燃料噴射量制御部54は、改質用燃料インジェクタ25から改質用燃料を噴射した状態で内燃機関1が所望の運転状態になるように、回転数取得部58で取得した回転数及び負荷取得部59で取得した負荷が所望の回転数及び負荷になる燃料の噴射量を算出する。即ち、燃料噴射量制御部54は、インジェクタ11から噴射する燃料の噴射量を、改質用燃料インジェクタ25から改質用燃料の噴射することに伴って低減して算出する。
次に、改質ガスを導入した状態における定速走行時の燃料噴射量及び車速Sを取得する(ステップST104)。これらの取得は、各センサ類で検出した検出結果がECU50に伝達されることにより、ECU50によって取得する。詳しく説明すると、燃料噴射量は、燃料噴射量制御部54からインジェクタ11に伝達される制御信号が、ECU50の処理部51が有する燃料噴射量取得部60にも伝達され、この燃料噴射量取得部60で取得する。この場合に取得される燃料噴射量は、改質ガスを導入した状態におけるインジェクタ11の燃料噴射量となっているため、換言すると、燃料噴射量取得部60は、改質室31が改質ガスを生成した状態でインジェクタ11によって供給する燃料の量である改質状態燃料供給量、即ち、改質状態燃料噴射量を取得する。
また、車速Sは、車両が有する自動変速機(図示省略)の出力軸等に設けられる車速センサ(図示省略)が当該出力軸等の回転を検出し、検出した結果がECU50の処理部51が有する車速取得部61に伝達されることにより、この回転を介して取得する。これらにより、燃料噴射量取得部60及び車速取得部61は、内燃機関1に改質ガスを導入し、車両が定速走行で走行している状態における改質状態燃料噴射量及び車速Sを取得する。
次に、改質ガスを導入していない状態で、車速取得部61で取得した車速Sで定速走行をした場合における燃料噴射量を取得する(ステップST105)。この取得は、ECU50の処理部51が有する改質ガス未導入時燃料噴射量取得部62で取得する。ここで、ECU50の記憶部70には、予め、改質ガスを導入しない状態における車速と燃料の噴射量との関係を示すマップが記憶されている。改質ガス未導入時燃料噴射量取得部62は、車速取得部61で取得した車速Sと、記憶部70に記憶されたマップとより、改質ガスを導入してしない状態で車両が車速Sで定速走行をしていると仮定した場合における燃料噴射量を取得する。この場合に取得される燃料噴射量は、改質ガスを導入しない状態におけるインジェクタ11の燃料噴射量となっているため、換言すると、改質ガス未導入時燃料噴射量取得部62は、改質室31が改質ガスを生成しない状態でインジェクタ11によって供給する燃料の量である通常状態燃料供給量、即ち、通常状態燃料噴射量を取得する。
次に、改質ガスを導入しない状態での燃料噴射量に対する改質ガスを導入した状態での燃料噴射量の低減量を算出する(ステップST106)。この算出は、ECU50の処理部51が有する燃料噴射量低減量算出部63が、改質ガス未導入時燃料噴射量取得部62で取得した改質ガスを導入しない状態における燃料噴射量である通常状態燃料噴射量と、燃料噴射量取得部60で取得した改質ガスを導入した状態における燃料噴射量である改質状態燃料噴射量とを比較する。これにより、通常状態燃料噴射量から改質状態燃料噴射量を減算し、通常状態燃料噴射量に対する改質状態燃料噴射量の低減量を算出する。
次に、算出した燃料噴射量の低減量を発熱量換算して改質ガス量を算出する(ステップST107)。この算出は、ECU50の処理部51が有する改質ガス量算出部64で算出する。インジェクタ11から噴射される燃料の所定量あたりの発熱量、及び改質室31で生成される改質ガスの所定量あたりの発熱量は、共に一定となっており、さらに、取得した2種類の燃料噴射量、即ち改質ガスを導入した状態の燃料噴射量と改質ガスを導入していない状態の燃料噴射量とは、定速走行時における噴射量となっている。このため、2種類の燃料噴射量で燃料を噴射して運転している内燃機関1の出力は一定となっている。
このため、改質ガスを導入していない状態の燃料噴射量に対して改質ガスを導入した状態の燃料噴射量が低減した分の燃料の発熱量は、改質ガスを導入した際における改質ガスの発熱量と等しくなっている。従って、改質ガス量算出部64は、燃料噴射量低減量算出部63で算出した燃料噴射量の低減量より、低減した分の燃料の発熱量を算出し、算出した発熱量より、この発熱量を有する改質ガス量を算出する。具体的には、改質ガス量算出部64は、燃料噴射量低減分の発熱量を算出する際には、まず、燃料の噴射量低減分の発熱量を算出し、燃圧、燃温等より換算して低減分のモル数を算出する。さらに、このモル数に対する発熱量を算出することにより、燃料噴射量低減分の発熱量を算出する。
次に、改質ガス量の算出は、上述した式(1)〜(4)に基づき算出した発熱量の増加分(1418[kJ/mol])で、燃料噴射量低減分のモル数に対する発熱量を除算し、改質用燃料の量を算出する。さらに、式(2)より、改質用燃料の1モルに対し13.2モルのH2及び11.8モルのCOが生成されているはずなので、これにより改質ガスの総生成量を算出する。つまり、改質ガス量算出部64は、改質ガスを導入していない状態の燃料噴射量であり、燃料噴射量低減量算出部63で取得した燃料噴射量である通常状態燃料噴射量と、改質ガスを導入した状態の燃料噴射量である改質状態燃料噴射量との差に基づいて、改質室31で生成する改質ガスの量を算出する。
次に、改質ガスの導入に伴い増加可能なEGRガスの増加させる、及び燃料噴射量が低減することに伴い改質用燃料を増加させる(ステップST108)。つまり、改質ガスを導入することにより、内燃機関1に吸気させるEGRガスを増加させることができるので、改質ガスの導入に伴い増加させることができるEGRガスの量を増加させる。また、EGRガスの量を増加させることにより、インジェクタ11から噴射させる燃料の噴射量が低減するため、この低減に伴い、改質用燃料インジェクタ25から噴射させる改質用燃料の噴射量を増加させる。
これらの制御は、EGRガスの量の増加については、ECU50の処理部51が有する還流流量調整バルブ制御部56で行なう。還流流量調整バルブ制御部56には、改質ガス量算出部64で算出した改質ガスの生成量が伝達され、還流流量調整バルブ制御部56は、伝達された改質ガスの生成量に基づいて、改質ガスの導入に伴い増加させることのできるEGRガスの量を導出する。さらに、還流流量調整バルブ制御部56は、導出したEGRガスの量に応じて還流流量調整バルブ42の開度を決定し、還流流量調整バルブ42を制御する。
また、改質用燃料の噴射量を増加させる制御は、ECU50の処理部51が有する改質用燃料噴射量制御部55で行なう。改質用燃料噴射量制御部55には、還流流量調整バルブ制御部56で導出したEGRガスの量が伝達され、この改質用燃料噴射量制御部55は、EGRガスの量の増加に伴うインジェクタ11から噴射する燃料の変化と、床温センサ36で検出した改質室31の床温とより、改質用燃料インジェクタ25から噴射する改質用燃料を導出する。即ち、改質用燃料噴射量制御部55は、改質用燃料インジェクタ25から噴射する改質用燃料を増加させる。これにより、改質室31でより多くの排気ガスと改質用燃料とを吸熱反応させることができるため、改質室31で生成する改質ガス量が増加する。実施例1に係る排気ガス改質装置3では、上述した処理手順でフィードバックしながら最適制御を行なう。
以上の排気ガス改質装置3は、内燃機関1の運転時における通常状態燃料噴射量と改質状態燃料噴射量とに基づいて改質室31で生成する改質ガスの量を導出している。このうち、改質状態燃料噴射量は、改質ガスの生成量が多くなるに従ってインジェクタ11から噴射する燃料の噴射量が少なくなり、改質ガスの生成量が少なくなるに従って燃料の噴射量が多くなる。また、改質ガスが生成された場合には、改質状態燃料噴射量は通常状態燃料噴射量よりも少なくなるため、通常状態燃料噴射量と改質状態燃料噴射量とは、改質ガスの生成量が多くなるに従って差が大きくなり、改質ガスの生成量が少なくなるに従って差が小さくなる。通常状態燃料噴射量と改質状態燃料噴射量とは、このような関係となっているため、改質ガス量算出部64は、これらの通常状態燃料噴射量と改質状態燃料噴射量とより改質ガスの生成量を推定し、導出することができる。この結果、特殊な検出手段を用いることなく改質ガスの生成量を導出することができる。
また、これにより、燃料噴射量やEGRガスの量を最適に制御することができる。また、これらのように特殊なセンサなどの検出手段を用いることなく改質ガスの生成量を検出できるため、信頼性やロバスト性の向上を図ることができ、さらに、特殊な検出手段を用いることがないためコストの低減を図ることができる。
また、改質ガス量算出部64は、改質ガスの生成量を導出する際に、通常状態燃料噴射量と改質状態燃料噴射量との差、及び燃料の発熱量と改質ガスの発熱量とに基づいて導出している。このため、より正確に改質ガスの生成量を導出することができる。つまり、改質ガスの発熱量は、燃料の発熱量よりも大きいため、改質ガスの生成量を導出する際この発熱量の差も含めて導出することにより、より正確に導出することができる。この結果、特殊な検出手段を用いることなく、より正確に改質ガスの生成量を導出することができる。
実施例2に係る排気ガス改質装置は、実施例1に係る排気ガス改質装置と略同様の構成であるが、改質ガスの生成量を導出する際に、改質室の床温より導出している点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。図6は、実施例2に係る排気ガス改質装置の要部構成図である。実施例2に係る排気ガス改質装置90は、実施例1に係る排気ガス改質装置3と同様に内燃機関1に備えられており、排気通路20は、改質用燃料インジェクタ25が設けられた改質用通路22を有している(図1参照)。また、排気通路20には、改質触媒及び浄化触媒を担持した改質室31を内設すると共にガス還流通路40が接続された改質器30が設けられており、改質器30に接続されたガス還流通路40は、改質器30に接続されている側の端部の反対側に位置する端部が吸気通路10に接続されている。また、ガス還流通路40には、当該ガス還流通路40内を開閉可能な還流流量調整バルブ42が設けられている。
また、この実施例2に係る排気ガス改質装置90が有するECU100は、実施例1に係る排気ガス改質装置3が有するECU50と同様に処理部51と記憶部70と入出力部71とを有している。このうち、処理部51は、少なくともスロットルバルブ制御部52と、吸入空気量取得部53と、燃料噴射量制御部54と、改質用燃料噴射量制御部55と、還流流量調整バルブ制御部56と、回転数取得部58と、負荷取得部59と、を有している。
また、処理部51は、床温センサ36での検出結果より改質室31の床温を取得可能な床温取得部101と、床温取得部101で取得した床温が改質可能条件以上であるかを判定する床温判定部102と、回転数取得部58で取得した運転中の内燃機関1の回転数及び負荷取得部59で取得した運転中の内燃機関1の負荷とより、基本となるEGRガスの量である基本EGR量を選定する基本EGR量選定部103と、を有している。
さらに、この処理部51は、基本EGR量選定部103で選定した基本EGR量と床温取得部101で取得した改質室31の床温とより改質室31で改質可能な改質用燃料の噴射量を算出する改質可能燃料噴射量算出部104と、改質可能燃料噴射量算出部104で算出した改質用燃料の噴射量より、この改質用燃料の噴射量で生成される改質ガス量を算出する生成改質ガス量算出部105と、生成改質ガス量算出部105で算出した改質ガス量より、EGRガスに改質ガスを導入することにより増加可能なEGR量を算出する増加可能EGR量算出部106と、を有している。
この実施例2に係る排気ガス改質装置90は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。実施例2に係る排気ガス改質装置90を備える内燃機関1の運転時には、アクセルペダルの開度に応じてスロットルバルブ制御部52でスロットルバルブ12の開度を制御することにより、スロットルバルブ12の開度に応じた量の空気が吸気通路10に流れる。吸気通路10を流れる吸入空気量は、吸気通路10に設けられるエアフロメータ13で検出し、検出結果を吸入空気量取得部53で取得する。
また、吸気通路10にはインジェクタ11が設けられており、このインジェクタ11を燃料噴射量制御部54で制御することにより、吸入空気量取得部53で取得した吸入空気量に基づいた量の燃料をインジェクタ11から噴射する。インジェクタ11から燃料が噴射された場合、燃料は吸気通路10内を流れる空気と混合し、混合気の状態で内燃機関1の各気筒5内に吸気される。
気筒5内に吸気された混合気は、気筒5の燃焼行程で燃焼し、燃焼後のガスが排気ガスとなって排気行程で各気筒5内から排気通路20に流れる。排気通路20に流れた排気ガスは、排気主通路21と改質用通路22に流れる。このうち、排気主通路21に流れた排気ガスは、改質器30内の改質室31を通過し、浄化触媒を担持する改質室31によって浄化される。その際に、改質室31は排気ガスの熱によって温度が上昇する。
また、改質用通路22には改質用燃料インジェクタ25が設けられており、内燃機関1の運転状態に応じて改質用燃料噴射量制御部55で改質用燃料インジェクタ25を制御することにより、改質用燃料インジェクタ25は改質用通路22を流れる排気ガスに対して改質用燃料を噴射する。
改質用通路22に改質用燃料を噴射した場合における排気ガスが、改質室31に流れる際には、排気ガスと改質用燃料とが混合した状態で流れる。このように改質用燃料と混合した排気ガスが改質室31を通過すると、改質触媒を担持する改質室31は排気ガスに熱を与えながら排気ガスを改質し、改質ガスを生成する。
改質室31により生成された改質ガスは、EGRガスとしてガス還流通路40を流れ、還流流量調整バルブ制御部56で還流流量調整バルブ42の開度を調整することにより流量が調整されて、吸気通路10に流れる。吸気通路10に流れた改質ガスを含むEGRガスは、吸気通路10を流れる空気と燃料との混合気と共に内燃機関1に吸入される。改質ガスを含む混合気が内燃機関1に吸入された場合、改質ガスは混合気中の燃料と共に内燃機関1の気筒5内で燃焼し、燃焼後の排気ガスが排気通路20に流れる。
このように、内燃機関1の運転時には、気筒5内で燃焼可能な改質ガスを改質室31で生成するが、改質用燃料が混合した排気ガスを改質室31で改質して改質ガスを生成する場合、改質室31の熱を排気ガスに吸熱させることにより生成する。このため、改質室31で生成する改質ガスの生成量は、改質室31の温度に応じて変化するが、実施例2に係る排気ガス改質装置90では、床温センサ36で床温を検出し、検出した床温に応じて内燃機関1に吸気させるEGRガスの量を決定している。
詳しくは、床温センサ36で検出した床温を床温取得部101で取得し、取得した床温より、改質室31で改質可能な燃料の噴射量である改質可能燃料噴射量を改質可能燃料噴射量算出部104で算出する。さらに、生成改質ガス量算出部105で、改質用燃料の噴射量により生成される改質ガス量を算出し、算出した改質ガス量より、増加できるEGR量を増加可能EGR量算出部106で算出する。
還流流量調整バルブ制御部56は、増加可能EGR量算出部106で算出したEGR量のEGRガスが吸気通路10に流れる開度になるように、還流流量調整バルブ42を制御して開度を調整する。これにより、改質ガスは改質室31の床温に応じた量で生成され、EGRガスの量は、生成される改質ガスにより増加可能な量で吸気側に導入する。つまり、改質室の床温に基づいて改質ガスの生成量を算出し、この改質ガスの生成量に基づいてEGRガスの量を導出することにより、改質ガスをEGRガスに導入する前にEGRガスの量を推定し、制御する。
図7は、本発明の実施例2に係る排気ガス改質装置の処理手順を示すフロー図である。次に、実施例2に係る排気ガス改質装置90の制御方法、即ち、当該排気ガス改質装置90の処理手順について説明する。実施例2に係る排気ガス改質装置90の処理手順では、まず、改質室31の床温を取得する(ステップST201)。この取得は、床温センサ36で検出した改質室31の床温がECU100の処理部51が有する床温取得部101に伝達され、床温取得部101で取得する。
次に、改質室31の床温は改質可能条件以上であるかを判定する(ステップST202)。この判定は、床温取得部101で取得した改質室31の床温が、ECU100の処理部51が有する床温判定部102で、改質可能条件以上であるかを判定する。つまり、改質室31は、図5に示すように床温が所定の温度以上の場合に排気ガスを改質可能になっており、この温度は、改質可能温度として予めECU100の記憶部70に記憶されている。床温判定部102は、床温取得部101で取得した改質室31の床温と、記憶部70に記憶された改質可能温度とを比較し、改質室31の床温は改質可能条件以上であるかを判定する。床温判定部102での判定により、床温取得部101で取得した改質室31の床温は改質可能温度よりも低く、改質可能条件未満であると判定された場合には、この処理手順から抜け出る。
これに対し、床温判定部102での判定により、床温取得部101で取得した改質室31の床温は改質可能温度よりも高く、改質可能条件以上であると判定された場合には、運転条件のEGRマップから基本EGR量を選定する(ステップST203)。詳しくは、実施例1に係る排気ガス改質装置3で運転中の内燃機関1の回転数や負荷を取得するのと同様に、まずECU100の処理部51が有する回転数取得部58で回転数を取得し、負荷取得部59で負荷を取得する。
さらに、これらの回転数や負荷が、ECU100の処理部51が有する基本EGR量選定部103に伝達され、基本EGR量選定部103で、これらの回転数や負荷より、基本となるEGRガスの量であるEGR量を選定する。このように基本EGR量選定部103でEGR量を選定する際には、予めECU100の記憶部70に記憶されている内燃機関1の回転数と負荷とからなる運転条件と、この運転条件に適したEGR量との関係を示すマップより、回転数取得部58で取得した回転数、及び負荷取得部59で取得した負荷とに適したEGR量を選定する。
次に、床温から改質可能燃料噴射量を算出する(ステップST204)。この算出は、基本EGR量選定部103で選定した基本EGR量が、ECU100の処理部51が有する改質可能燃料噴射量算出部104に伝達され、この改質可能燃料噴射量算出部104で、改質用燃料インジェクタ25から噴射する改質用燃料の噴射量を算出する。改質可能燃料噴射量算出部104で改質可能燃料噴射量を算出する際には、予めECU100の記憶部70にされている、改質室31の床温と改質可能燃料噴射量との関係を示すマップに、床温取得部101で取得した床温を当てはめる。これにより、改質室31の床温が、床温取得部101で取得した床温の場合に改質可能な改質用燃料の噴射量を算出する。つまり、改質可能燃料噴射量算出部104は、改質室31で改質ガスを生成する際における改質用燃料の改質可能な量を、床温取得部101で取得した改質室31の床温より導出する改質用燃料量導出手段となっている。
次に、噴射した改質用燃料により生成される改質ガス量を算出する(ステップST205)。この算出は、改質可能燃料噴射量算出部104で算出した改質用燃料の噴射量が、ECU100の処理部51が有する生成改質ガス量算出部105に伝達され、この生成改質ガス量算出部105で、改質用燃料の噴射量により生成される改質ガス量を算出する。この改質用燃料の噴射量と改質ガス量とは、上述した式(2)の関係になっているため、改質可能燃料噴射量算出部104で算出した改質用燃料の噴射量と式(2)とより、改質用燃料の噴射量により生成される改質ガス量を算出する。つまり、生成改質ガス量算出部105は、改質可能燃料噴射量算出部104で導出した改質可能な改質用燃料の量より改質室31で生成する改質ガスの量を導出する。
改質用燃料の噴射量により生成される改質ガス量は、このように改質用燃料の噴射量より算出し、改質用燃料の噴射量は、床温取得部101で取得した床温より改質可能燃料噴射量算出部104で算出する。このため、換言すると生成改質ガス量算出部105は、床温取得部101で取得した床温に基づいて改質室31で生成する改質ガスの量を導出する生成改質ガス量導出手段となっている。
次に、算出した改質ガス量より、増加できるEGR量を算出する(ステップST206)。この算出は、生成改質ガス量算出部105で算出した改質ガス量が、ECU100の処理部51が有する増加可能EGR量算出部106に伝達され、この増加可能EGR量算出部106で、EGRガスに改質ガスを導入することにより増加可能なEGR量を算出する。
ここで、これらのEGRガスと改質ガスとの関係は、図3に示すように、EGRガスに改質ガスを導入しない場合(改質ガス未導入時特性80)と比較して、EGRガスに改質ガスを導入した場合(改質ガス導入時特性81)の方が、EGRリミット82のEGR率が大きくなるため、内燃機関1に吸入させるEGRガスの量を増加することができる関係となっている。ECU100の記憶部70には、このEGRガスと改質ガスとの関係を示すマップが予め記憶されており、増加可能EGR量算出部106が、EGRガスに改質ガスを導入することにより増加可能なEGR量を算出する際には、生成改質ガス量算出部105で算出した改質ガス量と、記憶部70に記憶されたマップとより算出する。つまり、生成改質ガス量算出部105で算出した改質ガス量をEGRガスに導入した場合におけるEGRリミット82を、増加可能なEGR量として増加可能EGR量算出部106で算出する。
次に、還流流量調整バルブ42を制御してEGR量を増加する(ステップST207)。詳しくは、まず、増加可能EGR量算出部106で算出した増加可能なEGR量が、ECU100の処理部51が有する還流流量調整バルブ制御部56に伝達される。還流流量調整バルブ制御部56は、還流流量調整バルブ42の開度が、増加可能EGR量算出部106で算出したEGR量のEGRガスが吸気通路10に流れる開度になるように、還流流量調整バルブ42を制御する。これにより、ガス還流通路40から吸気通路10に流れるEGRガスは、増加可能EGR量算出部106で算出したEGR量で流れるため、EGR量は、基本EGR量選定部103で選定したEGR量よりも増加して流れる。
以上の排気ガス改質装置90は、床温取得部101で取得した床温に基づいて、改質室31で生成する改質ガスの量を導出している。また、改質室31が担持する改質触媒で改質ガスを生成する場合には、改質室31が担持する浄化触媒が排気ガスを浄化する際の熱を利用して生成するが、この生成は、浄化触媒の温度、つまり、改質室31の床温が高くなるに従って改質触媒を担持する改質室31による改質ガスの生成量が増加する。改質室31の床温は、このように改質ガスの生成量に影響を与えるため、生成改質ガス量算出部105は、この改質室31の床温に基づいて改質ガスの生成量を推定し、導出することができる。この結果、特殊な検出手段を用いることなく改質ガスの生成量を導出することができる。
また、改質室31で改質可能な改質用燃料の量を、改質室31の床温より改質可能燃料噴射量算出部104で導出し、導出した改質可能な改質用燃料の量より、改質室31で生成する改質ガスの量を生成改質ガス量算出部105によって導出している。即ち、生成改質ガス量算出部105は、改質室31で生成する改質ガスの量を、改質室31で改質可能な改質用燃料の量を介して改質室31の床温より導出している。このように、改質室31の床温が変化した際に直接的に変化する、改質室31で改質可能な改質用燃料の量を介して改質室31で生成する改質ガスの量を導出することにより、改質室31で生成する改質ガスの量を、より正確に導出することができる。この結果、特殊な検出手段を用いることなく、より正確に改質ガスの生成量を導出することができる。
なお、上述した排気ガス改質装置3、90を備える内燃機関1は、ガソリンを燃料とする内燃機関1となっているが、内燃機関1の燃料はガソリン以外のものでもよく、例えば、軽油やアルコールなどでもよい。内燃機関1の燃料は、ガソリン以外のものでも発熱量が分かり、また、改質室31の床温によって改質ガスの生成量が変化する。このため、これらに基づいて改質ガスの生成量を導出することにより、特殊な検出手段を用いることなく、より正確に改質ガスの生成量を導出することができる。
また、上述した排気ガス改質装置3、90では、ガス還流通路40と改質用通路22とは、排気主通路21内を流れる排気ガスの流れ方向に対して略直交する方向で改質器30に接続されているが、ガス還流通路40と改質用通路22とは、これ以外の形態で配設されていてもよい。例えば、ガス還流通路40と改質用通路22とは、改質用通路22から改質器30内に流れ、さらにガス還流通路40に流れる排気ガスや改質ガスの流れが、排気主通路21内を流れる排気ガスの流れ方向に向流するように形成されていてもよい。ガス還流通路40と改質用通路22とは、改質用燃料が供給された改質用通路22内の排気ガスが改質器30内の改質室31に流れて改質室31で改質ガスを生成し、この改質ガス及び排気ガスがガス還流通路40に流れるように設けられていれば、その形態は問わない。
また、上述した排気ガス改質装置3、90では、改質室31は改質触媒と浄化触媒との双方を担持しているが、改質室31は、改質触媒のみを担持していてもよい。改質室31が改質触媒のみを担持している場合でも、改質室31に排気ガスが流れた場合には排気ガスの熱により改質室31に温度は上昇するため、改質室31は、この熱を用いて排気ガスと改質用燃料とを吸熱反応させることができる。これにより、改質室31は、改質ガスを生成することができる。
また、実施例1に係る排気ガス改質装置3では、改質室31の床温より改質可能な改質用燃料の量を改質用燃料噴射量制御部55で導出する際、及び改質ガスを導入していない状態で、車速取得部61で取得した車速Sで定速走行をした場合における燃料噴射量を改質ガス未導入時燃料噴射量取得部62で取得する際には、ECU50の記憶部70に記憶されたマップより導出したり取得したりしているが、これらの導出や取得は、マップ以外でもよく、例えば関数等を用いてもよい。同様に、実施例2に係る排気ガス改質装置90では、内燃機関1の運転条件より基本EGR量を基本EGR量選定部103で選定する際、床温より改質可能燃料噴射量を改質可能燃料噴射量算出部104で算出する際、生成改質ガス量算出部105で算出した改質ガス量をEGRガスに導入した場合におけるEGRリミット82を、増加可能なEGR量として増加可能EGR量算出部106で算出する際には、ECU100の記憶部70に記憶されたマップより算出等を行っているが、これらの算出等はマップ以外でもよく、例えば関数等を用いてもよい。