以下、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態のエアバッグ20を示す。本実施形態のエアバッグ20は、1枚の基布の外周を縫製し形成され、主膨張部20a、パイプ接続部20b及び挿通部の一例としての筒状部20cからなる。主膨張部20aは、略楕円形の形状を有し、膨張時に歩行者等の衝突対象との衝撃を緩和させる部分である。パイプ接続部20bは、主膨張部20aから突出し、パイプ16が挿入されカシメられる部分である。筒状部20cは、エアバッグ20の衝撃を受け止める面とは逆に位置し、後述する展開位置規制手段21が挿通可能に筒状に形成された部分である。なお、筒状部20cは、少なくともエアバッグ20の主膨張部20aの一端側20dと、パイプ接続部20bとに設けられると、エアバッグ20の全長にわたって位置を規制するので、好ましい。
次に、エアバッグ20含むエアバッグ装置10を車両1に搭載した状態を説明する。
図2は、本実施形態のエアバッグ装置を搭載した車両の斜視図、図3は、本実施形態の車両のフロントピラー付近の斜視図、図4は、図3のa−a線における断面図である。
図中、1は車両、2はフロントピラー、3はフェンダ、4はフード、5はルーフ、6はウインドシールド、7はシール、10はエアバッグ装置、11はカバー、12はバッグケース、13はアンカー、14はスルーアンカー、15はガス発生器、16はパイプ、20はエアバッグ、21は展開位置規制手段である。
車両1は、図示しないメンバーあるいはエンジンルームフレームとルーフ5を連結するフロントピラー2を有する。また、フード4、ルーフ5及びフロントピラー2に囲まれ、シール7を介して取り付けられたウインドシールド6を有する。
フロントピラー2のウインドシールド6側及びフェンダ3には、エアバッグ装置10が収納されている。フロントピラー2は、車両1の外側に面する第1面2aと、ウインドシールド側に面する第2面2bとを有し、第2面2b側には、エアバッグ20が折り畳まれ、展開位置規制手段21と共に、バッグケース12に収納した状態で、カバー11内に収納されている。
カバー11は、上部カバー11aと側部カバー11bを有する断面略L字状の部材からなり、フロントピラー2の第2面2b側に折り畳まれたエアバッグ20を隠蔽するように配置される。なお、折り畳まれたエアバッグ20をバッグケース12に収納せず、カバー11内に直接収納してもよい。
カバー11には、ストラップ等のカバー飛散防止部材17が上部カバー11aの折り返し部11c内に挿通され、カバー飛散防止部材17の一端17aはアンカー13又は後述するバッグ膨張方向規制部材22によりフロントピラー2根本部又はメンバー等の車体側に係止され、他端17bは、スルーアンカー14に係止される。なお、図示しないが、カバー飛散防止部材17は、アンカー13とカバー11を連結する第1カバー飛散防止部材17と、スルーアンカー14とカバー11を連結する第2カバー飛散防止部材17とに分割してもよい。
展開位置規制手段21は、紐状や帯状の部材からなり、一端21aはアンカー13によりフロントピラー2根本部等の車体側に係止され、他端21bはスルーアンカー14の挿通孔14aを通して、縫製や接着等によりエアバッグ20に係止される。例えば、エアバッグ20に挿通孔を有する部分等を設けて係止すると好ましい。また、中間部21cはエアバッグ20に縫製等により作成した筒状部20cに挿通される。
なお、一端21aは、ガス発生器15やエアバッグ20に係止されるように構成してもよい。また、スルーアンカー14は、展開位置規制手段21に摩擦等が大きく影響しないようにガイドや滑車等を備えた滑らかな構造としてもよい。さらに、本実施形態では、筒状部20cは、エアバッグ20のフロントピラー2に沿った略全長にわたって設けられているが、例えば、間隔をあけて複数設けてもよい。
フェンダ3あるいはフード4下には、エアバッグ20を膨張させるガスを発生するガス発生器15と、ガス発生器15で発生したガスをエアバッグ20に供給するパイプ16等が収納されている。
図5は、バッグ膨張方向規制部材22を示す図、図6はフロントピラー2の一部をウインドシールド6側から見た図、図7は、カバー11、エアバッグ20及びフェンダ3を省略したフロントピラー2付近の斜視図、図8は、図7のb−b線における断面図である。
図5に示すように、バッグ膨張方向規制部材22は、断面略L字状で、板状の部材からなる固定部22Aと、フェンダ3とウインドシールド6との隙間を隠蔽する隠蔽部22Bとからなる。固定部22Aは、車両1に螺子等で固定される車体固定部22a、エアバッグ20を固定するバッグ固定部22b、ウインドシールド6に対して略垂直に立ち上がる側壁ガイド部22c、側壁ガイド部22cの端部から上部カバー11aと略平行に延びる延長部22dを有する。また、側壁ガイド部22cには、図6に示すフロントピラー2に設けられた係止孔2aに掛止される掛止部22eが設けられている。隠蔽部22Bは、フロントピラー2に沿った滑らかな曲面で固定部22Aと連通される連通部22fと、固定部22Aと反対側の端部に設けられ、パイプ16が通る湾曲部22gを有する。
図7及び図8は、バッグ膨張方向規制部材22を車両1に取り付けた状態を示している。バッグ膨張方向規制部材22は、図5に示した掛止部22eを図6に示したフロントピラー2の係止孔2aに掛止すると共に、車体固定部22aを車両1に螺子等で固定する。この時、固定部22Aは、フロントピラー2に沿って嵌り込むように強固に取り付けられる。隠蔽部22Bは、フェンダ3とウインドシールド6との隙間を隠蔽し、エアバッグ20がフェンダ3下に潜り込まないようにすることができると共に、湾曲部22gで、パイプ16を案内することができる。
このように、バッグ膨張方向規制部材22を車両1に取り付けた後、図3及び図4で示したエアバッグ装置10を固定し、図8に示すように、カバー11を閉じる。
次に、本実施形態のエアバッグ装置10の作動について説明する。図9は、本実施形態のエアバッグ装置10の作動を示す図、図10はエアバッグ装置10の作動時の断面図である。
図3に示すような収納状態にあるエアバッグ装置10は、車両1が図示しない衝突対象と衝突し、車両1に発生した衝撃力を図示しない検知手段等で検知した場合、その検知信号に基づき制御手段等により作動される。
図9(a)は、エアバッグ装置10が作動を始め、フェンダ3に収納したガス発生器15からパイプ16を通じてエアバッグ20内にガスが流入し、エアバッグ20が膨張し始めた膨張初期段階を示している。膨張初期段階では、フェンダ3側からエアバッグ20が膨張を始め、膨張圧力により、図3及び図4に示したカバー11が開く。
この時、図10に示すように、エアバッグ20は、バッグ膨張方向規制部材22の側壁ガイド部22c及び延長部22dにより、車両中心方向へ膨張方向を規制される。その結果、カバー11とフロントピラー2の隙間Sを隠蔽し、該隙間Sからエアバッグ20が突出することがなく、安定した作動をすることができる。
図9(b)は、ガス発生器15からパイプ16を通じてエアバッグ20内にガスが流入し、エアバッグ20が膨張し続ける膨張中期段階を示している。膨張中期段階では、エアバッグ20全体が折り畳まれた状態から完全に外部に露出する。この時、展開位置規制手段21に張力は、生じておらず、エアバッグ20の膨張が続けられる。
図9(c)は、エアバッグ20の膨張が完了した膨張完了段階を示している。膨張完了段階では、エアバッグ20が完全に膨張する。膨張完了段階のエアバッグ装置10の状態を以下に説明する。
図11は、膨張完了段階のフロントピラー2付近の斜視図、図12は図11のc−c線における断面図、図13は図11のd−d線における断面図、図14はスルーアンカー14付近の拡大図である。
膨張完了段階では、エアバッグ20は、フェンダ3及びフード4の一部上方とフロントピラー2の前方で、フロントピラー2に沿う方向に展開する。
この時、エアバッグ20に係止された展開位置規制手段21の他端21bが、エアバッグ20の膨張に対応して、矢印Aに示すように、ルーフ5とは逆方向に引っ張られる。これにより、スルーアンカー14に対して展開位置規制手段21の中間部21cは、矢印Bに示すように、ルーフ5側に引っ張られ、ウインドシールド6及びフロントピラー2側に押し付けられる状態となる。そして、図12に示すように、展開位置規制手段21を挿通しているエアバッグ20もウインドシールド6及びフロントピラー2側に押し付けられる状態となる。
なお、展開位置規制手段21は複数設けてもよい。また、展開位置規制手段21は、本実施形態に限らず、エアバッグ20膨張時に、エアバッグ20をウインドシールド6及びフロントピラー2側に押し付ける構成であれば、他の形態でもよい。
図15は、バッグ膨張方向規制部材22の第2実施形態を示す図である。図15に示すように、バッグ膨張方向規制部材22は、断面略L字状の固定部材からなり、車両1に螺子等で固定される車体固定部22a、エアバッグ20を固定するバッグ固定部22b、ウインドシールド6に対して略垂直に立ち上がる側壁ガイド部22c、側壁ガイド部22cの端部から上部カバー11aと略平行に延びる延長部22dを有する。また、側壁ガイド部22cには、図6に示すフロントピラー2に設けられた係止孔2aに掛止される掛止部22eが設けられている。
図16は、バッグ膨張方向規制部材22の第3実施形態を示す図である。本実施形態では、図16(a)に示すように、バッグ膨張方向規制部材22の側壁ガイド部22cと延長部22dの境界部分に切欠22hを設け、図16(b)に示すように、延長部22dが側壁ガイド部22cに対して容易に屈曲できる構造としたものである。この構造は、第1実施形態や第2実施形態のバッグ膨張方向規制部材22はもちろん、他の構造のバッグ膨張方向規制部材22にも適用することができる。
このような構造とすることにより、膨張初期段階では、エアバッグ20は、車両中心方向側へエアバッグ20の膨張方向が規制され、カバー11とフロントピラー2の隙間からエアバッグ20が突出することがなく、安定した作動をすることができ、膨張完了段階では、エアバッグ20は、フロントピラー2の前方で、フロントピラー2に沿う方向に展開するので、広い範囲に展開することが可能となる。
なお、本実施形態では、ガス発生器15をフェンダ3に収納する構造としたが、ルーフ5側に収納する構造としてもよい。その際、アンカー13及びスルーアンカー14も逆の配置とし、アンカー13をルーフ5側に配置し、スルーアンカー14をフェンダ3側に配置するとよい。
このように、カバー11とフロントピラー2との隙間を隠蔽するように配置されるバッグ膨張方向規制部材22を備えたので、膨張時にフロントピラー2とカバー11との間にエアバッグ20が潜り込み突出することを防止することができ、エアバッグ20が円滑に膨張展開することができる。
また、パイプ16は、エアバッグ20内でガスを噴出するパイプ噴出口16aを有し、バッグ膨張方向規制部材22は、少なくともフロントピラー2のウインドシールド6側のパイプ噴出口16a付近に配置されるので、膨張開始時にフロントピラー2とカバー11との間にエアバッグ20が潜り込み突出することを防止することができ、エアバッグ20が円滑に膨張展開することができる。
また、バッグ膨張方向規制部材22は、車体のフェンダ3とウインドシールド6との隙間を隠蔽する隠蔽部22Bを有するので、エアバッグ20がフェンダ3下に潜り込まないようにすることができる。
また、バッグ膨張方向規制部材22Bは、エアバッグ20を固定するバッグ固定部22bと、ウインドシールド6に対して立ち上がる側壁ガイド部22bと、側壁ガイド部22cの端部からカバーと略平行に延びる延長部22dとを有するので、エアバッグ20を安定して保持することができると共に、安定して膨張展開することができる。
また、側壁ガイド部22cと、延長部22dとの結合部分に切欠部22hを設けたので、エアバッグ20の膨張の際、延長部22dが容易に変形することができ、幅方向に広範囲に膨張することができる。
1…車両、2…フロントピラー、3…フェンダ、4…フード、5…ルーフ、6…ウインドシールド、7…シール、10…エアバッグ装置、11…カバー、12…バッグケース、13…アンカー、14…スルーアンカー(挿通部材)、15…ガス発生器(インフレータ)、16…パイプ、20…エアバッグ、20c…筒状部(挿通部)21…展開位置規制手段、22…バッグ膨張方向規制部材