JP2009090652A - ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】配向がほとんどなく且つ透明性の高いフィルムを得ることが可能なポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法は、溶融されたポリプロピレン系樹脂をTダイ12から180℃以上且つ300℃以下で押し出すことで成形された溶融状シートを、表面温度が−5℃以上且つ30℃以下とされた冷却ロール16と、表面温度が80℃以上且つ150℃以下とされたタッチロール14とによって挟圧することで、冷却固化させる工程を備える。
【選択図】図1
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法は、溶融されたポリプロピレン系樹脂をTダイ12から180℃以上且つ300℃以下で押し出すことで成形された溶融状シートを、表面温度が−5℃以上且つ30℃以下とされた冷却ロール16と、表面温度が80℃以上且つ150℃以下とされたタッチロール14とによって挟圧することで、冷却固化させる工程を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置(液晶パネル)の構成部材である位相差フィルムや偏光子保護フィルム等の光学フィルムに対しては、コントラストや視野角の向上のために、高い光学的均質性が求められている。
ここで、位相差フィルムは、分子が同じ方向に且つ同じ程度に配向するように無配向の位相差フィルム用原反フィルムを延伸することで製造される。つまり、配向軸と配向度を制御することにより、所望の位相差が均一に発現した位相差フィルムとなるわけである。従って、延伸前の位相差フィルム用原反フィルムには、フィルムそのものにフィッシュアイやブツ、あるいはダイラインと呼ばれるスジ等の欠陥がないこと、高透明であること、厚み偏差が少ないこと、無配向であることが要求される。
そこで、従来、溶融状態の環状オレフィン樹脂(溶融樹脂)との剥離強度が75N以下となる特殊な材料でTダイの吐出口(リップ)をメッキし、当該Tダイからフィルム状に吐出された溶融樹脂を、温度が(環状オレフィン樹脂のガラス転移温度Tg−30℃)以上且つ(環状オレフィン樹脂のガラス転移温度Tg+30℃)以下となるように設定されたキャスティングロールと、温度が(キャスティングロールの温度−50℃)以上且つキャスティングロールの温度以下となるように設定されたタッチロールとにより挟圧することで、冷却固化させる環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−280315号公報
しかしながら、引用文献1に記載された方法では、溶融樹脂との接触時間が長いキャスティングロールの表面温度の方が、溶融樹脂との接触時間が極めて短いタッチロールの表面温度よりも高くなっていた。そのため、特にポリプロピレン系樹脂を用いた場合、製造されたフィルムの透明性が損なわれてしまうという問題があった。
そこで、本発明は、配向がほとんどなく且つ透明性の高いフィルムを得ることが可能なポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係るポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法は、溶融されたポリプロピレン系樹脂をTダイから180℃以上且つ300℃以下で押し出すことで成形された溶融状シートを、表面温度が−5℃以上且つ30℃以下とされた冷却ロールと、表面温度が80℃以上且つ150℃以下とされた弾性変形可能な金属ロールとによって挟圧することで、冷却固化させる工程を備える。
本発明に係るポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法では、フィルム状に成形された溶融樹脂を、冷却ロールと、弾性変形可能な金属ロールとによって挟圧している。そのため、フィルム状に成形された溶融樹脂の両面が冷却ロール(キャスティングロール)及び弾性変形可能な金属ロール(タッチロール)によって冷却されるので、溶融樹脂を素早く冷却固化することができる。その結果、結晶が成長する前に溶融樹脂を冷却固化することができるようになるので、高い透明性を有するポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムを製造することが可能となる。
また、本発明に係るポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法では、冷却ロール及び弾性変形可能な金属ロールを用いている。そのため、フィルム状に成形された溶融樹脂を挟圧する際に、樹脂溜まり(バンク)が極めて発生しにくくなっている。その結果、配向が発生しにくくなり、位相差が小さく、且つ、幅方向において位相差にムラがほとんどないポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムを製造することが可能となる。
また、本発明に係るポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法では、溶融状シートを、表面温度が−5℃以上且つ30℃以下とされた冷却ロールと、表面温度が80℃以上且つ150℃以下とされた弾性変形可能な金属ロールとによって挟圧している。すなわち、弾性変形可能な金属ロールの表面温度が、冷却ロールの表面温度よりも高い温度に設定されている。そのため、溶融状シートが弾性変形可能な金属ロールからはがれやすく、フィルムにしわ等の欠陥が入らず、鏡面状の良好なフィルムを得ることができる。ここで、冷却ロールの表面温度が−5℃よりも小さい場合には、冷却ロールに空気中の水分が結露しやすくなるので、結露した水の痕がフィルムに転写され、表面状態が鏡面にならず、品質が不良になりやすい傾向にあり、冷却ロールの表面温度が30℃よりも大きい場合には、得られるフィルムの透明性が低下する傾向にあり、いずれの場合も好ましくない。また、弾性変形可能な金属ロールの表面温度が80℃よりも小さい場合や150℃よりも大きい場合には、溶融状シートが弾性変形可能な金属ロールからはがれにくくなり、フィルムにしわ等の欠陥が入りやすい傾向にあり、好ましくない。
好ましくは、金属ロール及び冷却ロールの内部には流路が設けられており、冷却固化させる工程では、流路内の液体が金属ロール及び冷却ロールに入る際の入口温度と、流路内の液体が金属ロール及び冷却ロールから出る際の出口温度との温度差を2℃以内とするように、前記流路内を流れる液体の流量を調整する。このようにすると、厚み偏差が小さく、全面にわたり均一な透明性を有するポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムを得ることが可能となる。
好ましくは、冷却固化させる工程では、Tダイの吐出口から金属ロール及び冷却ロールによって溶融状シートが挟圧されるまでの間の長さを50mm以上且つ250mm以下に設定する。Tダイの吐出口から金属ロール及び冷却ロールによって溶融状シートが挟圧されるまでの間(いわゆる、エアギャップ)の長さHが250mmを超えると、エアギャップにおいて配向が発生し、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルム熱可塑性樹脂フィルムの位相差が大きくなってしまう傾向にある。エアギャップの長さの下限に関しては、Tダイのサイズや金属ロール及び冷却ロールの径などに依存することから、必然的に50mm程度となる。
本発明によれば、配向がほとんどなく且つ透明性の高いフィルムを得ることが可能なポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(フィルム製造システムの構成)
まず、図1を参照して、本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法に用いられるフィルム製造システム1の構成について説明する。フィルム製造システム1は、押出機10、Tダイ12、タッチロール(弾性変形可能な金属ロール)14、冷却ロール16,18を備える。
まず、図1を参照して、本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法に用いられるフィルム製造システム1の構成について説明する。フィルム製造システム1は、押出機10、Tダイ12、タッチロール(弾性変形可能な金属ロール)14、冷却ロール16,18を備える。
押出機10は、投入されたポリプロピレン系樹脂を溶融混練しつつ押し出して、溶融混練したポリプロピレン系樹脂(溶融樹脂)をTダイ12へと搬送するものである。
Tダイ12は、押出機10と接続されており、押出機10から搬送された溶融樹脂を横方向に広げるためのマニホールド(図示せず)をその内部に有している。また、Tダイ12には、マニホールドと連通すると共にマニホールドによって横方向に広げられた溶融樹脂を吐出する吐出口12aがその下部に設けられている。そのため、Tダイ12の吐出口12aから吐出された溶融樹脂は、フィルム状に成形されることとなる。
Tダイ12としては、溶融樹脂の流路の壁面に微小な段差や傷のないものが好ましい。Tダイ12の吐出口12a部分(リップ部分)は、溶融樹脂(溶融した熱可塑性樹脂)との摩擦係数が小さい材料であり、且つ、硬い材料でめっき、コーティング等(例えば、タングステンカーバイド系、フッ素系の特殊めっき)がされていると、吐出口12aの先端部分の曲率半径を小さくすること(吐出口12aの先端部分をいわゆるシャープエッジと呼ばれる形状とすること)が可能であるため、好ましい。
Tダイ12の吐出口12aの先端部分は、溶融樹脂の流路の壁面の、吐出口12aにおける曲率半径が0.3mm以下とされたシャープエッジと呼ばれる形状のものであると好ましい。このようなTダイ12を用いることで、吐出口12aにおける目やにの発生を抑制することができ、同時にダイラインを抑制する効果も見られ、製造されるポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの外観の均一性をより優れたものにできる。
Tダイ12における溶融樹脂の吐出口12aからタッチロール14及び冷却ロール16によって溶融樹脂が挟圧されるまでの間(いわゆる、エアギャップ)の長さHとしては、50mm〜250mm程度であると好ましく、50mm〜180mm程度であるとより好ましい。エアギャップの長さHが250mmを超えると、エアギャップにおいて配向が発生し、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの位相差が大きくなってしまう傾向にある。エアギャップの長さHの下限に関しては、Tダイ12のサイズやタッチロール14及び冷却ロール16,18の径などフィルム製造システム1に依存することから、必然的に50mm程度となる。
タッチロール14は、例えば、特開平11−235747号公報に記載されている押さえロールと同等のものである。具体的には、タッチロール14は、高剛性の金属内筒14aと、金属内筒14aの外側に配置された薄肉金属外筒14bと、金属内筒14aの内側に配置された流体軸筒14cと、金属内筒14aと薄肉金属外筒14bとの間の空間及び流体軸筒14c内を満たす液体Lと、液体Lの温度を調節するための温度調節手段(図示せず)とを有する。
金属内筒14a、薄肉金属外筒14b及び流体軸筒14cは、同軸となるように配設されている。金属内筒14aには、その周方向に沿って複数の貫通孔14dが設けられている。そのため、液体Lは、流体軸筒14c、貫通孔14d、金属内筒14aと薄肉金属外筒14bとの間の空間の順にタッチロール14の内部を循環するようになっている。
薄肉金属外筒14bは、ステンレス鋼等によって形成されており、その表面に継ぎ目が存在しておらず、可撓性を有している。薄肉金属外筒14bは、ゴム弾性に近い柔軟性と可撓性、復元性をもたせるために、弾性力学の薄肉円筒理論が適用できる範囲内で薄肉化が図られている。薄肉金属外筒14bとしては、その厚みが2000μm〜5000μm程度で、その直径が200mm〜500mm程度で、表面粗度が0.5S以下のものを用いることができ、好ましくは表面粗度が0.2S以下である。薄肉金属外筒14bの厚みが2000μm未満であると、タッチロール14と冷却ロール16とによって溶融樹脂を挟圧する際の圧力が不均一となる傾向にあり、5000μmを超えると、薄肉金属外筒14b(タッチロール14)の弾性が大きくなり、Tダイ12の吐出口12aから吐出された溶融樹脂の厚みの厚薄によっては当該溶融樹脂を挟圧する際に樹脂溜まり(バンク)が発生してしまう傾向にある。
液体Lは、例えば水、エチレングリコール、油を用いることができる。図示しない温度調節手段によって液体Lの温度を調節することにより、間接的に薄肉金属外筒14bの表面温度が調節されることとなる。
冷却ロール16は、高剛性の金属外筒16aと、金属外筒16aの内側に配置された流体軸筒16bと、金属外筒16aと流体軸筒16bとの間の空間及び流体軸筒16b内を満たす液体Lと、液体Lの温度を調節するための温度調節手段(図示せず)とを有する。冷却ロール18は、高剛性の金属外筒18aと、金属外筒18aの内側に配置された流体軸筒18bと、金属外筒18aと流体軸筒18bとの間の空間及び流体軸筒18b内を満たす液体Lと、液体Lの温度を調節するための温度調節手段(図示せず)とを有する。冷却ロール16,18としては、その直径が200mm〜800mm程度で、表面粗度が0.2S以下の鏡面のものを用いることができる。
冷却ロール16,18においては、タッチロール14と同様、図示しない温度調節手段によって液体Lの温度を調節することにより、間接的に金属外筒16a,18aの表面温度が調節され、タッチロール14と共にTダイ12の吐出口12aから吐出されたフィルム状の溶融樹脂を冷却して固化させる。なお、厚み偏差が小さく、全面にわたり均一な透明性を有するポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを得るために、タッチロール14及び冷却ロール16,18においては、液体Lが各ロール14,16,18に入る際の入口温度と、液体Lが各ロール14,16,18から出る際の出口温度との温度差が2℃以内であると好ましい。このようにするために、液体Lの流量を選定する。一般的には、液体Lの流量が多い方が、入口温度と出口温度との温度差が小さくなる。また、流れ方向の厚み偏差の小さいポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを得るために、タッチロール14及び冷却ロール16,18について遊星ローラ減速機又は遊星歯車減速機を用いることが好ましい。
タッチロール14及び冷却ロール16,18によってフィルム状の溶融樹脂が固化すると、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFとなる。このポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFは、その後延伸処理等が施されることにより、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルムとなる。
なお、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの加工速度は、溶融樹脂を冷却して固化させる速度、すなわち、キャスティングロールである冷却ロール16の径が大きいほど速くなる。具体的には、冷却ロール16の直径が600mmである場合、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの加工速度を、最大で50m/min程度、通常30m/min程度に設定することができる。
タッチロール14及び冷却ロール16,18は、Tダイ12の下方において、一般的には一列に並ぶように配列されている。特に、タッチロール14と冷却ロール16とは、所定間隔をもって配置されており、このタッチロール14と冷却ロール16との間隔や、各ロール14,16,18の回転速度、Tダイ12の吐出口12aから吐出される溶融樹脂の吐出量等によってポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの厚みが規定される。
(ポリプロピレン系樹脂)
ここで、本実施形態においてポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを製造するために用いられるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとプロピレンとの共重合体である。また、これらの混合物であってもよい。
ここで、本実施形態においてポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを製造するために用いられるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとプロピレンとの共重合体である。また、これらの混合物であってもよい。
上記のα−オレフィンとしては、具体的には、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−プロピル−1−ヘプテン、2−メチル−3−エチル−1−ヘプテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタダセン、1−オクタテセン、1−ノナデセンなどが挙げられ、炭素原子数4〜12のα−オレフィンがより好ましく、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−プロピル−1−ヘプテン、2−メチル−3−エチル−1−ヘプテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。特に共重合性の観点から、好ましくは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセンである。
本発明におけるプロピレン系重合体の例としては、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。より具体的には、プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体等が挙げられ、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられる。本発明におけるプロピレン系重合体として、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体であり、より好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体である。
本発明で用いるプロピレン系重合体が共重合体である場合、該共重合体におけるコモノマー由来の構成単位の含量は、透明性と耐熱性のバランスの観点から、0重量%を超え40重量%以下が好ましい。また同じ観点で0重量%を超え30重量%がより好ましい。なお、2種類以上のコモノマーとプロピレンとの共重合体である場合には、該共重合体に含まれる全てのコモノマー由来の構成単位の合計含量が、前記範囲であることが好ましい。
本発明におけるプロピレン系重合体の製造方法としては、公知の重合用触媒を用いてプロピレンを単独重合する方法や、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとプロピレンとを共重合する方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、(1)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分等からなるTi−Mg系触媒、(2)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分とを組み合わせた触媒系、(3)メタロセン系触媒等が挙げられる。
本発明におけるプロピレン系重合体の製造に用いる触媒系としては、これらの中で、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と電子性供与性化合物とを組み合わせた触媒系が最も一般的に使用できる。より具体的には、有機アルミニウム化合物としては、好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物およびテトラエチルジアルモキサンが挙げられ、電子供与性化合物としては、好ましくはシクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランが挙げられる。マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報等に記載された触媒系が挙げられる。メタロセン触媒としては例えば、特許第2587251号、特許第2627669号、特許第2668732号に記載された触媒系が挙げられる。
本発明におけるプロピレン系重合体の重合方法としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶剤重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマー中で行う気相重合法等が挙げられ、好ましくは後処理等が容易な塊状重合法または気相重合法である。これらの重合法は、バッチ式であってもよく、連続式であってもよい。
本発明におけるプロピレン系重合体の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのどの形式であってもよい。本発明で用いるプロピレン系重合体は、耐熱性の点からシンジオタクチック、あるいはアイソタクチックのプロピレン系重合体であることが好ましい。
(添加剤)
本実施形態において用いられるプロピレン系重合体には、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の添加剤を配合してもよい。
本実施形態において用いられるプロピレン系重合体には、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収材、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられ、これらのうち複数種を併用するものであってもよい。
上記の酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤(HALS)や、1分子中に例えばフェノール系とリン系の酸化防止機構と有するユニットを有する複合型の酸化防止剤などが挙げられる。
上記の紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン系、ヒドロキシトリアゾール系などの紫外線吸収剤や、ベンゾエート系など紫外線遮断剤などが挙げられる。
上記の帯電防止剤としては、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型などが挙げられる。
上記の滑剤としては、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドや、ステアリン酸などの高級脂肪酸、及びその金属塩などが挙げられる。
上記の造核剤としては、例えばソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、ポリビニルシクロアルカンなどの高分子系造核剤等が挙げられる。アンチブロッキング剤としては球状、あるいはそれに近い形状の微粒子が無機系、有機系に関わらず使用できる。
(分子量)
本実施形態において用いられるプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定される値で通常0.1g/10分〜200g/10分程度であり、0.5g/10分〜50g/10分程度であると好ましい。MFRがこのような範囲のプロピレン系重合体を用いることにより、押出機10に大きな負荷をかけることなく、均一なフィルムを成形することができる。
本実施形態において用いられるプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定される値で通常0.1g/10分〜200g/10分程度であり、0.5g/10分〜50g/10分程度であると好ましい。MFRがこのような範囲のプロピレン系重合体を用いることにより、押出機10に大きな負荷をかけることなく、均一なフィルムを成形することができる。
(分子量分布)
本実施形態において用いられるプロピレン系重合体の分子量分布は、通常1〜20である。分子量分布は、溶媒に140℃のo−ジクロロベンゼンを用い、標準サンプルにポリスチレンを用いて測定及び計算される、MnとMwとの比(=Mw/Mn)である。
本実施形態において用いられるプロピレン系重合体の分子量分布は、通常1〜20である。分子量分布は、溶媒に140℃のo−ジクロロベンゼンを用い、標準サンプルにポリスチレンを用いて測定及び計算される、MnとMwとの比(=Mw/Mn)である。
(ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法)
続いて、上記のフィルム製造システム1によってポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを製造する方法について、図1を参照しつつ説明する。
続いて、上記のフィルム製造システム1によってポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを製造する方法について、図1を参照しつつ説明する。
まず、ホッパー(図示せず)から押出機10にポリプロピレン系樹脂を投入する(溶融工程)。このとき、樹脂の劣化を抑制するために、押出機10にポリプロピレン系樹脂を供給する前に、窒素中で40℃以上且つ(Tm−20℃)以下の温度にて1時間〜10時間程度予備乾燥をすることが好ましい(ただし、Tm[℃]は、JIS K 7121で規定される示差走査熱量測定における融解ピーク温度であり、具体的には、示差熱走査熱量計(DSC)などを用い、サンプルを一度融点以上に加熱したのち、所定の速度で−30℃(PP(ポリプロピレン)の場合)程度まで冷却し、その後、所定の速度で昇温しながら測定することで得られるDSC曲線の屈曲点から求められる。)。また、押出機10内も、20℃〜120℃の窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスでガス置換することが好ましい。なお、より一定量の押出量が必要な場合、ギアポンプの使用が効果的である。また、不純物、異物などが問題となる場合は、リーフディスクフィルターなどのフィルターユニットを必要に応じて使用してもよい。
続いて、180℃以上且つ300℃以下に加熱された押出機10のシリンダー内においてスクリューにより熱可塑性樹脂が溶融混練されると、Tダイ12の吐出口12aからフィルム状に成形された溶融樹脂が180℃以上且つ300℃以下で吐出される(成形工程)。この溶融樹脂の温度は、Tダイ12の吐出口12a部分において樹脂温度計を用いて測定される。
溶融樹脂の温度が180℃未満であると、樹脂の延展性が十分でなく、エアギャップ内での伸びの不均一により厚みムラが発生してしまう傾向にある。溶融樹脂の温度が300℃を越えると、樹脂が劣化し、分解ガスを生じるなどの理由でリップ部分が汚れてしまい、ダイライン等が発生し、フィルムの外観不良が生じてしまう傾向にある。これらの観点から、溶融樹脂の温度は、220℃以上且つ280℃以下であると好ましい。
このとき、特に、流れ方向の厚み偏差の小さいポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを得るため、Tダイ12の入口の上流部分に樹脂圧力計P(図1参照)を設け、Tダイ12の入口の近傍を流れる溶融樹脂の圧力の変動が±0.1MPa以下(溶融樹脂の圧力の最大値と最小値との差が0.2MPa以下)となるようにすることが好ましい。
続いて、このフィルム状の溶融樹脂をタッチロール14と冷却ロール16とによって挟圧すると共に、タッチロール14及び冷却ロール16,18によって冷却して固化させることで、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFが得られることとなる(冷却工程)。ここで、冷却ロール16の表面温度T1[℃]は、下記式(1)によって示される条件を満たすように設定されており、タッチロール14における薄肉金属外筒14bの表面温度T2[℃]は、下記式(2)によって示される条件を満たすように設定されている。
−5℃≦T1≦30℃・・・(1)
80℃≦T2≦150℃・・・(2)
−5℃≦T1≦30℃・・・(1)
80℃≦T2≦150℃・・・(2)
T1が−5℃よりも小さい場合には、冷却ロール16に空気中の水分が結露しやすくなるので、結露した水の痕がフィルムに転写され、表面状態が鏡面にならず、品質が不良になりやすい傾向にあり、T1が30℃よりも大きい場合には、得られるフィルムの透明性が低下する傾向にあり、いずれの場合も好ましくない。また、T2が80℃よりも小さい場合や150℃よりも大きい場合には、溶融状シートがタッチロール14(弾性変形可能な金属ロール)からはがれにくくなり、フィルムにしわ等の欠陥が入りやすい傾向にある。なお、冷却ロール16の表面温度T1[℃]が下記式(3)によって示される条件を満たすように設定されており、タッチロール14における薄肉金属外筒14bの表面温度T2[℃]が下記式(4)によって示される条件を満たすように設定されていると、より好ましい。
−5℃≦T1≦15℃・・・(3)
100℃≦T2≦130℃・・・(4)
−5℃≦T1≦15℃・・・(3)
100℃≦T2≦130℃・・・(4)
挟圧する圧力(線圧)は、タッチロール14を冷却ロール16に押し付ける圧力により決まるが、0.5N/mm〜20N/mm程度であると好ましく、1N/mm〜10N/mm程度であるとより好ましい。線圧が0.5N/mm未満であると、溶融樹脂に対する線圧を均一に制御することが困難となる傾向にある。線圧が20N/mmを超えると、溶融樹脂が強く挟圧されすぎることとなるので、溶融樹脂が、挟圧(ニップ)された部分にたまりながら成形されるバンク成形となり、大きな位相差が発現してしまう傾向にある。
挟圧する圧力(線圧)を制御する方法としては、(1)挟圧(ニップ)する部分にコッターと呼ばれる三角形の楔形の「つめもの」を設置し、このコッターを調整することによりロール間隔を調整する方法、(2)タッチロール14及び冷却ロール16の双方を、油圧、エア等を用いて所定の圧力で調整したコッターに当接するまで押し付ける方法、が一般的である。その他、コッターを用いず、ねじの回転数を制御し、機械的に所定の位置まで無段階で圧着する方法や油圧系にサーボモーターを用いる方法も挙げられる。
その後、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFは、必要に応じて耳部がスリット(切断)され、巻き取り機にて巻き取られる。なお、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの耳部をスリット(切断)する前、又はスリット(切断)した後に、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの片面又は両面に保護フィルムを積層してもよい。
ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの厚みとしては、本発明の効果がもっとも良く発現するという観点から、70μm〜500μm程度とすると好ましいが、この範囲は特に限定されない。つまり、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの厚みとして、種々の延伸条件で延伸され、さまざまな用途の位相差フィルムとなるために必要な厚みを選択することが可能である。延伸方法としては、縦延伸、横延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸が挙げられる。逐次二軸延伸の場合、縦延伸を先に行った後、横延伸を行う方法と、横延伸を先に行った後、縦延伸を行う方法のどちらの方法で行ってもよい。
以上の工程を経て製造されるポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFは、上記のように延伸により位相差制御することで、テレビ、パソコン用モニター、カーナビ、デジカメ、携帯電話などの大型液晶パネルから中小型液晶パネルまで幅広く用いることができる位相差フィルムとして利用可能である。また、無配向、高透明であることから、偏光板保護フィルムとしても使用することも可能であり、さらにその他さまざまな液晶部材にも利用可能である。
ところで、位相差フィルム用原反フィルムは、無配向であることが要求される。ここで、無配向とは、熱可塑性樹脂からなる材料中のポリマーの分子鎖がまったく配向せず、無秩序な状態にあることを意味する。配向の程度は、位相差値を求めることで評価することができ、位相差値は、市販の位相差計を用いて測定することができる。位相差フィルム用原反フィルムの位相差値は、その厚みが100μmの時の値で0nm〜50nm程度であると好ましい。位相差フィルム用原反フィルムの位相差値がこの範囲外にある場合に、当該位相差フィルム用原反フィルムを延伸し、位相差フィルムとすると、位相差フィルム用原反フィルムが当初から有する位相差のため、延伸条件を調節しても位相差を制御することが困難となり、結果として位相差ムラを生じやすく、液晶パネルに組み込んだ際に表示の均一性が損なわれてしまい、製品価値を下げてしまう。
以上のような本実施形態においては、フィルム状に成形された溶融樹脂を、金属製の冷却ロール16と、タッチロール14とによって挟圧している。そのため、フィルム状に成形された溶融樹脂の両面がタッチロール14及び冷却ロール16(キャスティングロール)によって冷却されるので、溶融樹脂を素早く冷却固化することができる。その結果、結晶性樹脂であるポリプロピレン系樹脂であっても、結晶が成長する前に溶融樹脂を冷却固化することができるようになるので、高い透明性を有するポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを製造することが可能となる。
また、本実施形態においては、金属製の冷却ロール16及び弾性変形可能な薄肉金属外筒14bを有するタッチロール14を用いている。そのため、フィルム状に成形された溶融樹脂を挟圧する際に、樹脂溜まり(バンク)が極めて発生しにくくなっている。その結果、配向が発生しにくくなり、位相差が小さく、且つ、幅方向において位相差にムラがほとんどないポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを製造することが可能となる。特に、ポリプロピレン系樹脂は、環状オレフィン樹脂と比較して100倍程度の配向しやすさを有しており、光学的均質性が損なわれやすいので、本発明の効果が大きく発揮されることとなる。
また、本実施形態においては、タッチロール14の薄肉金属外筒14ba及び冷却ロール16が共に金属によって形成されている。そのため、表面光沢に優れたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを形成することが可能となる。
以下、実施例1及び比較例1,2並びに図1〜図3に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
エチレン−プロピレン系共重合体(エチレン含有量=5重量%)、Tm(融点)=134℃、MFR(メルトフローレート)=8g/10分)を、250℃に加熱した90mmφ押出機10(スクリュー:L/D=32)にて溶融混練し、押出機10から、押出機10に続いて設置されるアダプタ及びTダイ12(すべて250℃に設定)へとこの順にフィードし、Tダイ12の吐出口(リップ口)12aから溶融状体とされたエチレン−プロピレン系共重合体の樹脂フィルム(溶融樹脂)を吐出した。Tダイ12の吐出口12a部分における溶融樹脂の温度は250℃であった。そして、当該溶融樹脂を、図1に示されるタッチロール14と、冷却ロール16とによって挟圧長さ5mm、線圧6N/mmで挟圧すると共に、タッチロール14及び冷却ロール16,18によって冷却して固化させることで、厚みが130μmのポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを得た。
エチレン−プロピレン系共重合体(エチレン含有量=5重量%)、Tm(融点)=134℃、MFR(メルトフローレート)=8g/10分)を、250℃に加熱した90mmφ押出機10(スクリュー:L/D=32)にて溶融混練し、押出機10から、押出機10に続いて設置されるアダプタ及びTダイ12(すべて250℃に設定)へとこの順にフィードし、Tダイ12の吐出口(リップ口)12aから溶融状体とされたエチレン−プロピレン系共重合体の樹脂フィルム(溶融樹脂)を吐出した。Tダイ12の吐出口12a部分における溶融樹脂の温度は250℃であった。そして、当該溶融樹脂を、図1に示されるタッチロール14と、冷却ロール16とによって挟圧長さ5mm、線圧6N/mmで挟圧すると共に、タッチロール14及び冷却ロール16,18によって冷却して固化させることで、厚みが130μmのポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを得た。
ここで、タッチロール14の薄肉金属外筒14bは、その直径が300mm、その厚みが3000μm、その表面粗度が0.1S〜0.2Sであった。冷却ロール16,18は、その直径が350mm、その表面粗度が0.1Sであり、表面が鏡面のものであった。また、タッチロール14の回転速度を9.8m/min、冷却ロール16,18の回転速度を10.7m/min、エアギャップHを90mm、冷却ロール16の表面温度T1を20℃、タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を130℃にそれぞれ設定した。
(実施例2)
タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を80℃に設定した以外は実施例1と同様にして実施例2のポリプロピレン系樹脂位相差フィルム用原反フィルムFを得た。
タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を80℃に設定した以外は実施例1と同様にして実施例2のポリプロピレン系樹脂位相差フィルム用原反フィルムFを得た。
(実施例3)
タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を100℃に設定し、タッチロール14の回転速度を15.9m/minに設定し、冷却ロール16,18の回転速度を共に17.4m/minに設定した以外は実施例1と同様にして実施例3のポリプロピレン系樹脂位相差フィルム用原反フィルムF(厚みは80μm)を得た。
タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を100℃に設定し、タッチロール14の回転速度を15.9m/minに設定し、冷却ロール16,18の回転速度を共に17.4m/minに設定した以外は実施例1と同様にして実施例3のポリプロピレン系樹脂位相差フィルム用原反フィルムF(厚みは80μm)を得た。
(実施例4)
タッチロール14の回転速度を12.7m/minに設定し、冷却ロール16,18の回転速度を共に13.9m/minに設定した以外は実施例1と同様にして実施例4のポリプロピレン系樹脂位相差フィルム用原反フィルムF(厚みは100μm)を得た。
タッチロール14の回転速度を12.7m/minに設定し、冷却ロール16,18の回転速度を共に13.9m/minに設定した以外は実施例1と同様にして実施例4のポリプロピレン系樹脂位相差フィルム用原反フィルムF(厚みは100μm)を得た。
(実施例5)
タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を140℃に設定し、タッチロール14の回転速度を9.1m/minに設定し、冷却ロール16,18の回転速度を共に9.9m/minに設定した以外は実施例1と同様にして実施例5のポリプロピレン系樹脂位相差フィルム用原反フィルムF(厚みは140μm)を得た。
タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を140℃に設定し、タッチロール14の回転速度を9.1m/minに設定し、冷却ロール16,18の回転速度を共に9.9m/minに設定した以外は実施例1と同様にして実施例5のポリプロピレン系樹脂位相差フィルム用原反フィルムF(厚みは140μm)を得た。
(実施例6)
ホモプロピレン系重合体(エチレン−プロピレン共重合体、エチレン含有量=0.2重量%以下)を用いて、タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を100℃に設定し、タッチロール14の回転速度を12.7m/minに設定し、冷却ロール16,18の回転速度を共に13.9m/minに設定した以外は実施例1と同様にして実施例6のポリプロピレン系樹脂位相差フィルム用原反フィルムF(厚みは100μm)を得た。
ホモプロピレン系重合体(エチレン−プロピレン共重合体、エチレン含有量=0.2重量%以下)を用いて、タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を100℃に設定し、タッチロール14の回転速度を12.7m/minに設定し、冷却ロール16,18の回転速度を共に13.9m/minに設定した以外は実施例1と同様にして実施例6のポリプロピレン系樹脂位相差フィルム用原反フィルムF(厚みは100μm)を得た。
(比較例1)
タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を12℃に設定した以外は実施例1と同様にして比較例1のポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを得た。
タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を12℃に設定した以外は実施例1と同様にして比較例1のポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを得た。
(比較例2)
タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を65℃に設定した以外は実施例1と同様にして比較例2のポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを得た。
タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を65℃に設定した以外は実施例1と同様にして比較例2のポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを得た。
(比較例3)
比較例3では、タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を180℃に設定した以外は実施例1と同様にした。
比較例3では、タッチロール14の薄肉金属外筒14bの表面温度T2を180℃に設定した以外は実施例1と同様にした。
(評価結果)
実施例1〜6においてポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを製造する際、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFはタッチロール14からきれいに剥離し、成形安定性は良好であった。実施例1〜6において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを目視により観察したところ、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの表面にはしわが存在しておらず、表面状態が良好であった。また、実施例1〜6において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを40mm×40mmに切り出し、王子計測機器サービス株式会社製KOBRA−WPRにより位相差をそれぞれ測定したところ、位相差は30nm、32nm、20nm、24nm、20nm、20nmであり、いずれも32nm以下という十分に小さい値であった。さらに、実施例1〜6において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを50mm×50mmに切り出し、スガ試験機株式会社製ヘーズメータを用いてJIS K 7136に従いHAZEをそれぞれ測定したところ、0.6%、0.7%、0.4%、0.6%、0.6%、0.6%であり、いずれも0.7%以下となり透明性に優れていた。なお、HAZEは、フィルムの透明性を示す指標であり、値が小さいほど透明であることを表す。以上より、実施例1〜6において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの品質の評価結果としては、いずれも「○:良好」であった。
実施例1〜6においてポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを製造する際、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFはタッチロール14からきれいに剥離し、成形安定性は良好であった。実施例1〜6において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを目視により観察したところ、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの表面にはしわが存在しておらず、表面状態が良好であった。また、実施例1〜6において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを40mm×40mmに切り出し、王子計測機器サービス株式会社製KOBRA−WPRにより位相差をそれぞれ測定したところ、位相差は30nm、32nm、20nm、24nm、20nm、20nmであり、いずれも32nm以下という十分に小さい値であった。さらに、実施例1〜6において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを50mm×50mmに切り出し、スガ試験機株式会社製ヘーズメータを用いてJIS K 7136に従いHAZEをそれぞれ測定したところ、0.6%、0.7%、0.4%、0.6%、0.6%、0.6%であり、いずれも0.7%以下となり透明性に優れていた。なお、HAZEは、フィルムの透明性を示す指標であり、値が小さいほど透明であることを表す。以上より、実施例1〜6において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの品質の評価結果としては、いずれも「○:良好」であった。
一方、比較例1においてポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを製造する際、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFはタッチロール14からのフィルムの剥離性が悪く、成形安定性が不良であった。比較例1において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを目視により観察したところ、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの表面にはしわが存在しており、表面状態が不良であった。また、比較例1において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを40mm×40mmに切り出し、王子計測機器サービス株式会社製KOBRA−WPRにより位相差を測定したところ、位相差は35nmであり、実施例1〜6と比較して大きな値であった。さらに、比較例1において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFのHAZEをJIS K 7136に従い測定したところ、3.0%であり、実施例1〜6と比較して透明性が劣っていた。以上より、比較例1において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの品質の評価結果としては、「×:不良」であった。
また、比較例2においてポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを製造する際、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFは比較例1以上にタッチロール14からのフィルムの剥離性が悪く、フィルムに剥離痕が残り、成形安定性が極めて不良であった。比較例2において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを目視により観察したところ、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの表面にはしわが存在しており、表面状態が不良であった。このフィルムの表面状態の不良性に起因して、比較例2において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFに厚みムラが発生しており、フィルムの幅方向で130μm±5μmという大きな厚みムラとなっていた。また、比較例2において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを40mm×40mmに切り出し、王子計測機器サービス株式会社製KOBRA−WPRにより位相差を測定したところ、位相差は35nmであり、実施例1〜6と比較して大きな値であった。さらに、比較例2において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFのHAZEをJIS K 7136に従い測定したところ、1.0%であり、実施例1〜6と比較して透明性が劣っていた。以上より、比較例2において得られたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFの品質の評価結果としては、「×:不良」であった。
さらに、比較例3においてポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを製造しようとしたところ、成形中、タッチロール14に溶融樹脂が巻き付いてしまい、ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムFを得ることができなかった。
1…フィルム製造システム、12…Tダイ、12a…吐出口、14…タッチロール(弾性変形可能な金属ロール)、14a…金属内筒、14b…薄肉金属外筒、16,18…冷却ロール、F…ポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルム、L…液体。
Claims (3)
- 溶融されたポリプロピレン系樹脂をTダイから180℃以上且つ300℃以下で押し出すことで成形された溶融状シートを、表面温度が−5℃以上且つ30℃以下とされた冷却ロールと、表面温度が80℃以上且つ150℃以下とされた弾性変形可能な金属ロールとによって挟圧することで、冷却固化させる工程を備えるポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法。
- 前記金属ロール及び前記冷却ロールの内部には流路が設けられており、
冷却固化させる前記工程では、前記流路内の液体が前記金属ロール及び前記冷却ロールに入る際の入口温度と、前記流路内の液体が前記金属ロール及び前記冷却ロールから出る際の出口温度との温度差を2℃以内とするように、前記流路内を流れる液体の流量を調整することを特徴とする請求項1に記載されたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法。 - 冷却固化させる前記工程では、前記Tダイの吐出口から前記金属ロール及び前記冷却ロールによって前記溶融状シートが挟圧されるまでの間の長さを50mm以上且つ250mm以下に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載されたポリプロピレン系樹脂製位相差フィルム用原反フィルムの製造方法。
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