JP2009068025A - 冷間加工部品の製造に適した機械部品用または装飾部品用チタン合金棒線およびその製造方法 - Google Patents

冷間加工部品の製造に適した機械部品用または装飾部品用チタン合金棒線およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】JIS1、2種純チタンよりもヘッダー加工、シャー切断などの冷間加工性に優れた機械部品用または装飾部品用チタン合金棒線およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で0.3〜1.8%のCu、0.18%以下のO、0.30%以下のFeを含有し、残部Tiおよび不可避的不純物からなり、長径10〜1000nmのTi2Cuおよび不可避的析出相を体積分率で0.05〜3.5%含み、シャー切断性および冷間鍛造性に優れる。また、最終焼鈍を480〜750℃で行うか、あるいはさらに、減面率15%以下で冷間伸線を行うことを特徴とする製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ボルト、ナットなどのネジ類や、自動車部品、装飾品等で主に冷間鍛造やシャー切断により製造される、冷間加工性に優れた機械部品用または装飾部品用チタン合金棒線製品およびその製造法に関する。
近年、ボルト、ナットなどのネジ、自動車部品や、時計、カメラ、メガネ等の装飾品用部品などで、チタン製品が使用されるようになってきた。これらは、チタンの優れた耐食性や、人体・生体への無害性、軽量であることを利用した用途で主に使用されている。この中で、特に高い強度が要求されず、低い製造コストと高い冷間加工性が重視される場合には、純チタンが使用され、例えば、JIS H4650(2001)「チタン及びチタン合金の棒」に記載される1種材(TB270H(熱間仕上)、TB270C(冷間仕上))、あるいは2種材(TB340H(熱間仕上)、TB340C(冷間仕上))が使用されることが多い。さらにコストを低く抑える場合、ボルト頭部を冷間鍛造成型し、ボルトを製造する方法として、ヘッダー加工が採用される。これは、あらかじめ所定長さに切断しておいた素材を用いて、冷間で連続的にボルト頭部を鍛造加工し、効率良くボルトを製造する方法である。従来、このヘッダー加工に2種材相当以上の強度を持つチタン材を使用する場合、加工部に断熱せん断変形帯が生成し、それに沿ってクラックが発生することが多く、極端な歩留ロスをもたらすという問題があった。また、β合金を除くチタン材で2種材相当以上の強度を有する場合、C断面内に材質異方性を有することが多く、その影響により、ヘッダー加工時に加工性の劣る方向に沿ってクラックが伸展しやすく、ボルトに成型できないという問題がある。これらの理由から、一部のβ合金を除いて、2種材相当以上の強度を示すチタン材は、ヘッダー加工によるボルト製造には適していないことが判明した。したがって、低製造コストが重視される場合、ヘッダー加工してもクラックが発生せず、C断面内での材質異方性の小さい1種材が限定的に使用されてきた。
したがって、1種材なみの加工性を有し低コストで製造できる、より強度の高い材料へのニーズは高い。また、1種材をこの製造プロセスに使用する場合、ヘッダー加工直前に、線材コイルからヘッダー加工用素材の長さに調整するためのシャー切断工程にて、切断面にバリ・カエリが発生したり、切断部近傍が変形したりするなどの問題があった。これは、1種材の強度が低く延性が高いため、シャーにより付与されるせん断加工で即破断に至らずに、少量の塑性変形を伴ってしまうためである。
また、1種材にて、シャー切断時にバリ・カエリ等の発生を抑えるため、減面率5〜15%程度の軽伸線を行う場合が多い。冷間加工強化によって延性をやや低くして、切断性を向上させるためである。しかし、それでもバリやカエリはなくならず、必ずしも抜本的な対策とは成りえていない。
一方、ヘッダー加工性を向上させるために、Cuをチタンに添加して冷間加工性を向上させることが有効である可能性がある。これまでにCuを添加したチタン合金として、特許文献1、特許文献2等が開示されている。前者はTi−Cu合金の二相温度域への加熱により組織を均一微細化して、マクロ模様を低減するというものであり、ヘッダー加工を含む冷間加工性の改善についての記載はない。また、後者はTi2Cuなどを積極的に析出させて高強度化を図るとともに、抗菌性を利用するというものであるが、当合金の強度を支配するO量の制限がなく、ヘッダー加工できない強度領域のものも含まれる。実際に、特許文献2中の実施例には、最大引張強度で750MPa以上の合金しか例示されておらず、高い冷間加工性を要求するヘッダー加工性まで追及した合金を示していないことは明らかである。
特開2004−2953号公報 特開平11−80867号公報
JIS1、2種純チタンよりもヘッダー加工、シャー切断などの冷間加工性に優れた機械部品用または装飾部品用チタン合金棒線およびその製造方法を提供する。
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、JIS1種純チタンと同等以上のヘッダー加工、シャー切断性などの冷間加工性を有し、2種材同等以上の強度を有する、冷間加工部品として最適なチタン合金棒線およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を骨子とする。
(1)質量%で0.3〜1.8%のCu、0.18%以下のO、0.30%以下のFe、残部Tiおよび0.3%未満の不純物元素からなり、長径10〜1000nmの、Ti2Cuおよび不可避的析出相を体積分率で0.05〜3.5%含むことを特徴とする、シャー切断性および冷間鍛造性に優れる機械部品用または装飾部品用チタン合金棒線。
(2)前記(1)に記載のチタン合金棒線の製造において、最終焼鈍を480〜750℃の温度域にて行うことを特徴とする、シャー切断性および冷間鍛造性に優れる機械部品用または装飾部品用チタン合金棒線の製造方法。
(3)さらに、前記最終焼鈍後に、減面率15%以下の冷間伸線を行うことを特徴とする、前記(2)に記載のシャー切断性および冷間鍛造性に優れる機械部品用または装飾部品用チタン合金棒線の製造方法。
(4)前記(1)に記載のチタン合金棒線を用い、シャー切断を行い、その後ヘッダー加工を行うことを特徴とするチタン製品の製造方法。
JIS1、2種純チタンよりもヘッダー加工、シャー切断などの冷間加工性に優れた機械部品用または装飾部品用チタン合金棒線およびその製造方法を提供できる。
本発明者らは上記課題を解決すべく、チタンの冷間加工性におよぼす成分元素の影響を詳しく調査した結果、チタンに一定量のCuを添加して、Ti2Cuおよび不可避的析出相(以下、Ti2Cu等の析出相と略称)を微細に析出させるとともに、O量を適正に調整することにより、JIS1種純チタンよりもヘッダー加工、シャー切断工程での加工性を向上させることが可能であることを見出した。
本発明はこの知見に基づいてなされたものである。以下に、前記(1)に記載の本発明(以下、本発明(1)と略称)に示した各種添加元素を選択した理由と、その添加量範囲を限定した理由を示す。
Cuはチタンα相中に質量%で最大1.5%まで固溶する。固溶状態のCuは、固溶体強化により高温強度を高めるとともに、双晶変形発生を損なわずに強化する作用があることが知られており、その効果は特開2005−298970号公報等により公開されている。当該公報では、固溶Cuによる冷間加工性向上と高温強度上昇効果を見出し、利用しているのが特徴である。一方、Ti−Cu合金でα相中にTi2Cu等の析出相を適正量生成させると、析出強化により強度が上昇するとともに、α粒界へのピニング効果によりα相の粒成長を抑制する作用がある。本発明者らは、Ti2Cu等の析出相の生成量を制御すると、ヘッダー加工時に断熱せん断変形帯の生成をもたらさない程の強化量となるとともに、固溶Cuが冷間加工性を向上させ、ヘッダー加工性改善に寄与することを新たに見出した。さらに、適正量の微細なTi2Cu等の析出相生成により、α粒が微細化されるとともに、適度の析出強化がもたらされ、シャー切断時にバリ・カエリが発生しない強度に調整されることも明らかとした。
この時、Ti2Cu等の析出相の長径が10nm未満の超微細な大きさであると析出強化に寄与せず、一方、長径が1000nmを超えるとα粒のピニング効果が小さくなるために結晶粒径の微細化に寄与せず、いずれもシャー切断性の向上に役立たない。したがって、長径が10〜1000nmのTi2Cu等の析出相の体積分率を、所定の量とする必要がある。この長径範囲外のTi2Cu等の析出相量を抑えるとより好ましい。
また、長径10〜1000nmのTi2Cu等の析出相の体積分率が0.05%未満では析出強化能が十分でなく、シャー切断でバリ、カエリが発生してしまう。一方、Ti2Cu等の析出相の体積分率が3.5%を超えると、逆に析出強化能が高くなり過ぎて、ヘッダー加工時に断熱せん断変形帯が生成して加工できなくなってしまう。そのため、長径10〜1000nmのTi2Cu等の析出相は体積分率で0.05〜3.5%析出していることが必要である。さらに、精密部品など、高いヘッダー加工性と精密なシャー切断性の両立が要求される用途においては、長径10〜1000nmのTi2Cu等の析出相は、体積分率で0.50〜3.0%析出していることが望ましい。
Cu添加量の上限を1.8%としたのは、これを超えて添加するとTi2Cu相が体積分率で3.5%を超えて生成するために析出強化量が大きくなり過ぎてしまい、ヘッダー加工での断熱せん断変形をもたらすと同時に、析出粒子が1000nmを超えて粗大化し粒界へのピニング効果が小さくなってα粒が粗大化し、シャー切断時のバリ・カエリが大きくなるからである。また、合金中に均一に、Ti2Cu等の析出相を分散析出させ、α粒界へのピニング効果を均一にもたらしてα粒径を微細化できるCuの最低添加量は0.3%であるため、Cuは0.3%以上添加する必要がある。
Oはα相中に固溶し固溶体強化する作用を有するため、過度に添加するとヘッダー加工時に断熱せん断変形帯生成をもたらすこととなる。純チタンおよび軽合金チタンのα相は、すべり変形と双晶変形の競合により高い塑性変形能を有するが、O量が0.18%を超えると双晶変形が抑制されて、ヘッダー加工に最低限必要とされる冷間加工性が損なわれるため、O量の上限を0.18%とした。この時、精密なヘッダー加工性が必要となる場合は、O量の上限を0.13%とすることが望ましい。
Feはβ安定化元素であり、室温から高温域にかけてβ相を発現させる。Fe含有量が0.30%以下であれば、β相発生はわずかであるが、これを超えて添加されると、β相の量が増え、β相に濃化しやすいCuがβ相に集中する。こうしてCuの濃化したβ相中に、Ti2Cu等の析出相が集中して析出するため析出相は粗大化しやすくなり、均一な分布状態が得られないこととなる。その結果、局所的にα粒界へのピニング効果を発揮できない領域が発生し、その部分ではα粒の粗大化をもたらすこととなり、シャー切断性が低下してしまう。したがって、Feの含有量は0.30%以下である必要がある。
前記(2)に記載の発明(以下、本発明(2)と略称)は、特に、ボルト・ナット等のネジ類に使用される棒線の製造方法に関するものである。すなわち、本発明(2)は、溶解、熱延、皮剥き等の表面処理等の工程を経て製造される、本発明(1)のチタン合金成分を有する棒線の製造方法において、最終焼鈍を480〜750℃の温度域にて行うことを特徴とする、本発明(1)の、シャー切断性および冷間鍛造性に優れたチタン合金棒線の製造方法である。
これは、シャー切断およびヘッダー加工工程での加工性を確保するために、Ti2Cuを主とする、微細な析出相を適正な量だけ得ることを狙った条件である。
すなわち、480〜750℃はTi2Cu等の析出相が長径10〜1000nm程の微細なサイズで、かつ、0.05〜3.5%の体積分率で均一に析出しやすい温度範囲であり、この温度域で焼鈍することにより、棒線の冷間加工性を高めることができる。
なお、Ti2Cu析出が生じる温度Tp(℃)は、Cu量に依存し、Ti−Cu平衡状態図から近似的に、以下のTi2Cu析出曲線式で表すことができる。
Tp(℃)=730[%Cu]0.126
ここで、[%Cu]はCuの質量%である。
したがって、最終焼鈍温度は、480〜750℃の範囲内でかつ、Tpよりも低い温度であることがのぞましい。
最終焼鈍温度480℃未満ではTi2Cu等の析出相の効果が十分に発揮される程度の析出量を得るまでに必要な焼鈍時間が長くなり、工業的な生産に適さない。一方、最終焼鈍温度が750℃を超えると、Ti2Cu等の析出相の過度な粗大化が短時間うちに生じてしまい、工業生産上、Ti2Cu等の析出相の大きさを最適に制御することができなくなる。
最終焼鈍時間は、480〜750℃の範囲内の温度によって、最適時間が変化するが、30分〜16時間程度が望ましく、この温度範囲内で温度が低いほど、最適焼鈍時間は長くなる。
請求項3に記載の発明(以下、本発明(3)と略称)は、最終焼鈍後、さらに、減面率15%以下の冷間伸線を行うことを特徴とした本発明(1)を製造する方法である。減面率15%以下の冷間伸線を行うことにより、適度な加工硬化が棒線全長に生じ、冷間鍛造性、シャー切断性などの冷間加工性の均質度が向上する。したがって、線材製品の全長にわたる品質安定化を重視する場合は、減面率15%以下の冷間伸線を行うことがのぞましい。ただし、減面率15%を超える冷間伸線を行なうと、加工硬化が大きくなりすぎ、ヘッダー加工時に、実用上は問題ないが、シワ状の模様を誘発する場合が生じる。したがって、冷間伸線を減面率15%以下で行うこととした。
<実施例1>
真空アーク溶解法により表1に示す組成のチタン材を溶解し、これを熱間鍛造してビレットとし、860℃に加熱した後、熱間圧延により直径13mmの線材とした。
この熱間圧延した線材を皮剥きおよび酸洗して酸化スケールを除去した後、冷間伸線により直径10mmの線材とした後、最終熱処理として、680℃、5時間、炉冷の真空焼鈍を施した。
試験番号4、5および6は、最終熱処理後、潤滑剤を塗布し、それぞれ減面率14.8、12.0および10.0%で軽伸線し、試験材としたが、それぞれ線材の端部2mほどを軽伸線せずに、最終熱処理ままとして残し、それぞれ試験番号51、52および53として、試験材に加えた。一方、試験番号1〜3および7〜20では、最終熱処理後、潤滑剤を塗布した後に減面率8.5〜13.5%で軽伸線し、試験材として供した。
これらの試験材をシャー切断およびヘッダー加工し、加工性を評価した。シャー切断性試験ではクリアランス0.1mmのシャー切断機にて、切断後、切断面におけるカエリ高さを測定し、ヘッダー加工性試験ではヘッダー加工機により、試験片端部に直径15mmの半球形状のヘッドを冷間成形させ、目視検査による割れ発生有無を評価した。さらに、焼鈍後のサンプルより引張試験片を採取して引張特性も調べた。また、金属組織観察用試験片を採取し、長手方向断面を2%弗酸水溶液でエッチングして、エネルギー分散型X線分析器付きで電解放射型電子銃装備の走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いてTi2Cu等の析出相を観察し、観察断面内で長径10〜1000nmの析出相の体積分率を調査した。すなわち、析出相の大きさに合わせて倍率3000倍〜10万倍で観察し、Cu濃度が一様に高い領域を占める析出相をTi2Cu等の析出相と認識し、そのうち長径10〜1000nmの析出相を選択し、その面積占有率を測定して、この値をそのままTi2Cu等の析出相の体積分率とした。後述のように長径10〜1000nmの析出相の大部分が、TiCuであると確認され、それら析出相は、ほぼ等方的な形状を持ち、その分布状態も異方性が認められなかったためである。
なお、FE−SEM観察では表面に露出した1μm未満の析出相のCu濃度を正確に測定できないが、半定量的にTi:Cuの原子比がほぼ2:1であることを確認でき、あるいは母相よりも高濃度のCuを含有していることの確認ができ、ここでは、母相よりも高濃度のCuが検出された析出相はTi2Cuおよび不可避的析出相とみなしている。その理由は、試験番号4〜20および51〜53の試料に対し、薄膜試料によるエネルギー分散型X線分析器を装備した透過電子顕微鏡による観察、分析、電子線回折を実施した結果、長径10〜1000nm範囲内の析出相50個のうち、48個がTi2Cuと同定されたためである。なお、残りの2個はCu濃度が、相対的にTi2Cuよりも母相に近いβ相であった。
各試験片の主要化学成分、室温引張り試験結果、析出相分率、シャー切断性、ヘッダー加工性を評価した。ここで、シャー切断性試験では試験片を、シャー切断した後の切断面におけるカエリ高さを評価し、その高さが0.05mm未満を合格として丸印、その高さが、0.05mm以上0.1mm未満のとき、三角印、0.1mm超で×印を付けた。さらに、ヘッダー加工性試験では、ヘッダー加工後のヘッド部を目視観察し、割れが認められない場合は丸印、割れが認められた場合に×印を付けた。これらの評価結果を併せて表1に示す。
Figure 2009068025
表1において、試験番号1はJIS2種純チタンであり、試験番号2はAlを1〜2%程度添加した合金の例である。試験番号1、2ともにヘッダー加工で割れが発生し、ボルトに加工できていない。これは、前者では材質異方性による断熱せん断変形帯生成によるものであり、後者では双晶変形が抑制されることによる冷間加工性低下によるものである。これらの材料では、Ti2Cu等の析出相生成は認められない。
これに対し、本発明(2)に記載した方法で製造された本発明(1)の実施例である試験番号4、5、6、8、9、11、12、13、14、16、17、18、19、20は、JIS2種相当の強度レベルを示すとともに、いずれも高い全伸びを示していた。これらはヘッダー加工時に割れは目視で確認できず、加工性は良好であった。同時に、シャー切断でも、切断面に0.05mmを超える高さのバリ、カエリなどは発生せず、良好な切断性を有し、かつ、試験番号ごとに複数回実施した試験において、それぞれ再現性の良い切断面形状が得られ、品質が安定していた。なお、これらはいずれも、長径10〜1000nmのTi2Cu等の析出相を体積分率で0.05〜3.5%含んでおり、その析出量が適正な範囲にあることは明らかである。
一方、試験番号3、10では、シャー切断時に0.1mmを超えるカエリが発生し切断性は不十分であった。このうち、試験番号3は、Cu添加量が本発明の下限値である0.3%を下回っており、Ti2Cu等の析出相の生成量も0.05%未満である。この材料では、焼鈍中の粒成長を抑制するだけの十分な析出相が得られなかったため、部分的に粗粒となり、切断時に不均一な変形が生じたためカエリが生成した。一方、試験番号10では、一部に1000nmを超える粗大なTi2Cu等の析出相が生成していた。これは、β安定化元素であるFeの含有量が、本発明の上限である0.30%を越えて添加されたためβ相の量が増え、Cuがそこに集中的に濃縮して粗大な析出相が生成し、これらは粒成長を抑制することができないため、局所的にカエリが発生したものである。
また、試験番号7、15では、ヘッダー加工時に割れが発生して十分な加工性が得られなかった。その理由は、試験番号7は、Cu添加量が本発明の上限値である1.8%を越えて添加されたため、Ti2Cu等の析出相が体積分率で3.5%を超えて多量に析出して、冷間での延性が損なわれたためである。また、試験番号15では、酸素含有量が本発明の上限である0.18%を超えて添加されたため、双晶変形が抑えられ、ヘッダー加工性に必要な冷間加工性が得られなかったためである。
なお、本発明による試験番号14、18、20の素材では、ヘッダー加工時に0.05mm以下のシワ状の表面模様が発生した。これは実用上問題にならない程度の表面欠陥であり一般には合格レベルであるが、精密加工を必要とされる用途などでは、このような表面模様も発生しない方が望ましい。これらの素材は、O量が0.15〜0.16%と比較的高くなっており、より低いO含有量のものに比べ、双晶変形が僅かに起こりにくくなっているためである。したがって、用途によっては、O量上限を0.13%とするのが望ましい。
以上のように、本発明に規定された元素含有量および、長径10〜1000nmのTi2Cu等の析出相の体積分率を有するチタン合金棒線は、シャー加工性および冷間鍛造性に優れ、JIS2種相当以上の強度を有しているが、本発明に規定された合金元素量ならびに、Ti2Cu等の析出相の体積分率を外れると、冷間加工性と強度の両特性を満足することはできない。
なお、試験番号51〜53は、真空焼鈍後に軽伸線をしていないが、シャー切断性、ヘッダー加工性ともに良好な結果であった。ただし、試験片番号ごとに複数回実施したシャー切断性試験では、切断面に0.01〜0.04mmの高さバリ、カエリが現れ、その大きさには、ばらつきが見られた。一方、10%軽伸線をした試験番号4〜6は、試験片番号51〜53とそれぞれ化学成分が同じであるが、切断面に現れたバリ、カエリは、0.03mm以下の高さで、ばらつきが少なく、品質安定性が高かった。
<実施例2>
表1の試験番号6、11、18の素材を製造する際の中間製品である直径13mmの熱間圧延線材を使用して、皮剥きおよび酸洗して酸化スケールを除去した後、冷間伸線により直径10mmの線材とした。それに表2〜4に示す条件にて真空焼鈍を施した後、潤滑剤を塗布した後に減面率10%で軽伸線した。この線材をシャー切断およびヘッダー加工し、加工性を評価した。特に、シャー切断性試験ではカエリ高さを精査した。さらに、焼鈍後のサンプルより引張試験片を採取し、引張特性を調べるとともに、金属組織観察試験片を2%弗酸水溶液によりエッチングしFE−SEMを用いて、実施例1に記載の方法で、長径10〜1000nmのTi2Cu等の析出相を観察し、体積分率を測定した。これらの評価結果も併せて表2〜4に示す。
Figure 2009068025
Figure 2009068025
Figure 2009068025
表2、3、4はそれぞれ、試験番号6、試験番号11、試験番号18に示す組成の線材における結果である。いずれも高い延性を有し、シャー切断性、ヘッダー加工性も実用的に全く問題ないことが分る。特に、最終焼鈍を500〜730℃の温度域で実施した、試験番号22、23、24、27、28、29、30、32、33、34はシャー切断でのカエリが目視で確認できず良好な切断性を示した。一方、試験番号21、25、26、31、35は、いずれも高い延性とヘッダー加工性を有していたが、試験番号21、26、31ではヘッダー加工時には実用上問題のない薄いシワ模様が生成し、試験番号25、35では実用上問題のない0.05mm未満の高さのカエリが発生した。これは、焼鈍温度が500℃未満である試験番号21、26、31では、Ti2Cu等の析出相の生成により強度がやや上昇するためである。一方、焼鈍温度が730℃を超える、試験番号25、35では、Ti2Cu等の析出相が一部再固溶して析出相生成量が低くなる上、一部は粒径が粗くなって粒界のピニング効果がやや低くなるからである。これらの結果は、ヘッダー加工性とシャー切断性において実用的に問題のないレベルが要求される場合、焼鈍温度は、480〜750℃が適しているが、この温度範囲を外れると、ヘッダー加工性とシャー切断性に問題が生じる可能性が高いことを示しており、さらに、高いヘッダー加工性と精密なシャー切断性を同時に要求される部品においては、焼鈍を500〜730℃で行うことにより、Ti2Cu等の析出相を均一微細に分散させた方がより好ましいことは明らかである。
<実施例3>
表1の試験番号5、6、13の素材を製造する際の中間製品である直径13mmの熱間圧延線材を使用して、皮剥きおよび酸洗して酸化スケールを除去した後、冷間伸線により直径10mmの線材とした。それに650℃、4時間、炉冷の真空焼鈍を施し、潤滑剤を塗布した後に、表5〜7に示す減面率で伸線した。この線材をシャー切断およびヘッダー加工し、加工性を評価した。特に、シャー切断性試験ではカエリ高さを精査した。さらに、焼鈍後のサンプルより引張試験片を採取し、引張特性を調べるとともに、金属組織観察試験片を2%弗酸水溶液によりエッチングしFE−SEMを用いて、実施例1に記載の方法で、長径10〜1000nmのTi2Cu等の析出相を観察し、体積分率を測定した。これらの評価結果も併せて表5〜7に示す。
Figure 2009068025
Figure 2009068025
Figure 2009068025
表5、6、7はそれぞれ、試験番号5、試験番号6、試験番号13に示す組成の線材における結果である。いずれも高い延性を有し、シャー切断性、ヘッダー加工性も実用的に全く問題ないことが分る。特に、最終伸線を減面率15%以下で実施した、試験番号36、37、38、41、42、43、45、46、47のヘッダー加工性、シャー切断性はいずれも極めて良好であった。一方、試験番号39、40、44、48は、いずれも高い延性とヘッダー加工性を有していたが、ヘッダー加工後に実用上問題のないレベルの薄いシワ模様が生成していた。これは伸線減面率が15%を超えており、冷間加工により強度がやや上昇し延性が僅かに低下したためである。これらの結果は、実用的に問題のないレベルであるが、高いヘッダー加工性と精密なシャー切断性を同時に要求される部品においては、最終製品での冷間伸線を15%以下の減面率で行うことにより、加工硬化量を適正に管理した方がより好ましいことは明らかである。
本発明のチタン合金棒線は、耐食性と、ヘッダー加工、シャー加工に代表される冷間加工性を要求される用途でのボルト、ナットなどのネジ部品を含む、冷間鍛造加工を受ける部品に、特に活用することができる。

Claims (4)

  1. 質量%で0.3〜1.8%のCu、0.18%以下のO、0.30%以下のFe、残部Tiおよび不可避的不純物元素からなり、長径10〜1000nmのTi2Cuおよび不可避的析出相を体積分率で0.05〜3.5%含むことを特徴とする、シャー切断性および冷間鍛造性に優れる機械部品用または装飾部品用チタン合金棒線。
  2. 請求項1に記載のチタン合金棒線の製造において、最終焼鈍を480〜750℃の温度域にて行うことを特徴とする、シャー切断性および冷間鍛造性に優れる機械部品用または装飾部品用チタン合金棒線の製造方法。
  3. さらに、前記最終焼鈍後に、減面率15%以下の冷間伸線を行うことを特徴とする、請求項2に記載のシャー切断性および冷間鍛造性に優れる機械部品用または装飾部品用チタン合金棒線の製造方法。
  4. 請求項1に記載のチタン合金棒線を用い、シャー切断を行い、その後ヘッダー加工を行うことを特徴とするチタン製品の製造方法。
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