JPH1180867A - 抗菌性および耐生物付着性に優れるTi合金およびその製造方法 - Google Patents

抗菌性および耐生物付着性に優れるTi合金およびその製造方法

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JPH1180867A
JPH1180867A JP9242781A JP24278197A JPH1180867A JP H1180867 A JPH1180867 A JP H1180867A JP 9242781 A JP9242781 A JP 9242781A JP 24278197 A JP24278197 A JP 24278197A JP H1180867 A JPH1180867 A JP H1180867A
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JP9242781A
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Atsuhiko Kuroda
篤彦 黒田
Yasuhiro Masaki
康浩 正木
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】抗菌性および耐生物付着性に優れるTi合金を
提供する。 【解決手段】重量%で、Cu:0.1%以上2.0%未
満、Fe:0.01〜0.3%を含み、残部はTiおよ
び不可避的不純物からなり、α相ならびにCuが濃化し
たβ相およびTi2 Cu相の少なくとも1相を持つ。さ
らにβトランザス以下の温度で加工度20%以上の加工
を施し、600℃以上、βトランザス未満の温度で1分
間以上保持することにより優れた加工性を付与すること
が可能であり、また「βトランザス−100」℃以上、
βトランザス未満の温度から空冷以上の冷却速度で冷却
し、400℃以上700℃以下の温度域で1時間以上、
10時間以下保持することで高い強度を付与することが
可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌性が求められ
る建築用内装材、厨房用品、時計の側材、眼鏡フレー
ム、メス等の医療用器具および食品製造装置等ならびに
耐生物付着性が求められる海洋構造物、養殖用の漁網、
海水冷却による熱交換器配管および海水淡水化装置等の
素材として好適なTi合金とその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】Tiは、耐食性に優れ、かつ軽量である
ために、様々な部材の素材として用いられている。Ti
は、特に海水に対して抜群の耐食性を持っているので、
海水冷却による復水器、海水淡水化装置等の配管に多く
用いられている。また、Tiは、生体のアレルギー反応
を起こさない金属であるので、直接人体に接触して使用
される時計側材や眼鏡のフレーム等の素材としても利用
されている。さらには、生体適合性に優れるために人工
骨等の素材としても利用されている。
【0003】上述のようにTiの用途は多岐にわたって
いる。しかし、Tiは生物との親和性が高いためにいく
つかの問題点を抱えている。例えば、Tiを海水冷却に
よる熱交換器配管に利用した場合に、貝等の生物が配管
内に進入して内面に付くため、冷却水の流通を妨げると
ともに、冷却効果を悪くする問題がある。この問題を回
避するために配管内をスポンジ等で洗浄する処理を定期
的に実施する必要がある。またTiは、養殖用漁網の素
材としても利用されているが、この場合も漁網に生物が
付着するために海水の流れが制限される問題が起こる。
このために亜鉛等の表面処理を施すことが検討されてい
るが、処理により製品コストが上昇することと、亜鉛に
よる環境汚染問題も生じるといった弊害があるので実用
化には至っていない。
【0004】上記の問題点を解消するためには、Tiの
耐生物付着性、すなわち生物の付着を防止する性能を向
上させる必要がある。特開平8−9836号公報には、
海洋生物が付着しにくいTi合金製フロートが開示され
ている。しかし、同公報でいう「海洋生物が付着しにく
い」とは、フロートの材料を従来の樹脂から、樹脂より
は生物が付着しにくいTi合金に代えたにすぎず、Ti
合金そのものの耐生物付着性を向上させたものではな
い。
【0005】一方、Tiには、生物との親和性が高いた
めに細菌が繁殖しやすいという欠点もある。上述したよ
うにTiは、直接人体に接触する日用品の素材としても
利用されている。近年の社会の菌類に対する問題の関心
が高まるにつれ、Tiも抗菌性を備えることが要求され
ている。
【0006】ところで、抗菌性を持つ金属としてCuが
周知であり、Cuを含む抗菌性ステンレス鋼等も知られ
ている。
【0007】Ti合金についても、特開平4−3080
51号公報には、CuおよびSiの内の1種以上とN
i、Pd、Ru、Rh、Pt、OsおよびIrの内の1
種以上を添加したTi基合金が開示されている。このT
i基合金には、耐食性を向上させることを目的として種
々の合金元素が添加されているが、Ti基合金の抗菌性
および耐生物付着性を高めるための技術は何ら示されて
いない。
【0008】以上のように、Ti合金の耐生物付着性と
抗菌性を向上させる技術については、未だ確立されてい
ないのが実情である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、抗菌
性および耐生物付着性に優れるTi合金とその製造方法
を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、次の抗
菌性および耐生物付着性に優れるTi合金とその製造方
法にある。
【0011】(1)重量%で、Cu:0.1%以上2.
0%未満、Fe:0.01〜0.3%を含み、残部はT
iおよび不可避的不純物からなり、α相ならびにCuが
濃化したβ相およびTi2 Cu相の少なくとも1相から
なることを特徴とする抗菌性および耐生物付着性に優れ
るTi合金。
【0012】(2)重量%で、Cu:0.1%以上2.
0%未満、Fe:0.01〜0.3%を含み、残部はT
iおよび不可避的不純物からなるTi合金の素材に、β
トランザス以下の温度で加工度20%以上の加工を施し
た後、600℃以上、βトランザス未満の温度で1分間
以上保持する熱処理を施すことを特徴とする抗菌性およ
び耐生物付着性に優れるTi合金の製造方法。
【0013】この方法で得られる合金は、加工と熱処理
の組み合わせにより再結晶を起こさせることで等軸組織
となり延性を向上させることができるので、冷間での加
工性に優れている。
【0014】(3)重量%で、Cu:0.1%以上2.
0%未満、Fe:0.01〜0.3%を含み、残部はT
iおよび不可避的不純物からなるTi合金の素材に、β
トランザス以下の温度で加工度20%以上の加工を施し
た後、「βトランザス−100」℃以上、βトランザス
未満の温度から空冷以上の冷却速度で冷却し、400℃
以上700℃以下の温度域で1時間以上10時間以下保
持する熱処理を施すことを特徴とする抗菌性および耐生
物付着性に優れるTi合金の製造方法。
【0015】この方法で得られる合金は、溶体化処理で
得られる等軸の初析α、時効処理によりCuを多量に含
有するβ相またはTi2 Cuからなる析出物および時効
処理中に析出する微細な2次α相が分散しているので、
10%以上の適当な伸びと高い引張強度を備えている。
【0016】本発明のTi合金およびその製造方法の基
本思想は、下記のとおりである。
【0017】本発明のTi合金は、Cuを0.1%以
上2.0%未満含有させており、かつα相ならびにTi
2 Cu相およびCuが富化したβ相の少なくとも1相を
備えている。このTi2 Cu相またはCuが富化したβ
相が抗菌性と耐生物付着性を発揮する。
【0018】本発明のTi合金では、常温でもTi2
u相またはβ相が存在するために、常温でも優れた抗菌
性および耐生物付着性を発揮する。また、Cuの含有量
は、2.0%未満に規定しているので、実用上十分な加
工性を備えている。
【0019】抗菌性および耐生物付着性の他に、加工
性や引張特性が要求される場合は、以下の2種類の方法
によりそれぞれの目的を達成することが可能である。
【0020】a)本発明合金を熱交換器等の加工性が要
求される製品の素材として利用する場合は、Cuを含有
させたTi合金に、βトランザス以下の温度で加工度2
0%以上の加工を施した後に、600℃以上、βトラン
ザス未満の温度で1分間以上保持する熱処理を施すこと
により、加工性に優れる本発明のTi合金を製造するこ
とができる。
【0021】上記の加工および熱処理方法を施した場合
には、Ti合金内の結晶では、蓄えられた歪みを駆動力
として再結晶化が進む。再結晶の過程においてα相は、
針状から等軸に変化する。等軸に変化した組織を持つT
i合金の抗菌性と耐生物付着性は、向上する。
【0022】図1は、等軸のα相を示す模式図である。
等軸とは、α相のアスペクト比が1に近いこと、すなわ
ち結晶粒が針状でなく粒状であることを意味する。等軸
のα相が成長する過程で、Cuがα相から排出され、α
相の粒界で濃化する。α相中のCuの固溶度が低いため
に、固溶限を越えた量のCuがα相の外へ排出されるの
である。粒界で濃化したCuは、Ti2 Cu相またはβ
相を形成する。このように、組織が等軸に変化すると、
粒界でCuがより濃化するために抗菌性と耐生物付着性
が向上するのである。
【0023】b)引張特性が要求される場合は、βトラ
ンザス以下の温度で加工度20%以上の加工を施した後
に、「βトランザス−100」℃以上、βトランザス未
満の温度から空冷以上の冷却速度で冷却する溶体化処理
と、400℃以上700℃以下の温度域で1時間以上1
0時間以下保持する時効熱処理を組み合わせることによ
り、10%以上の延性を確保しつつ、高い引張強さも備
える本発明のTi合金を製造することができる。
【0024】この加工と熱処理においては、熱処理前の
加工歪を駆動力として溶体化処理時の加熱により等軸組
織が形成される。溶体化処理直後の段階では等軸の初析
α相とマルテンサイト相が形成される。マルテンサイト
相は時効処理においてTi2Cu相またはCu濃度の高
いβ相と微細なα相に分解する。この時効処理で析出す
る微細相により、高い強度が得られ、Ti2 Cu相また
はCu濃度の高いβ相が形成されることにより抗菌性お
よび耐生物付着性が向上するのである。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明のTi合金およびその製造
方法を具体的に説明する。
【0026】(A)Ti合金の化学組成 以下、化学組成の説明で使用する%は重量%を表すもの
とする。
【0027】(イ)Cu:0.1%以上2.0%未満 抗菌性および耐生物付着性を発揮させるには、Cuを
0.1%以上含有させる必要がある。Cuを0.1%以
上含有させることにより、Ti合金の組織は、常温でα
相と、α相の粒界にCuが富化したβ相およびTi2Cu
相の少なくとも1相が共存している組織とすることがで
きる。しかし、Cu含有量が高すぎる場合には、Ti合
金を加工する際に、α相とβ相の変形量の違いが顕著に
なるのでα相とβ相の界面で不整合が起こる。このよう
な場合には、加工性が悪くなる。この弊害を防止するた
めには、Cuの含有量を2.0%未満にする必要があ
る。望ましいのは、1.8%以下とすることである。
【0028】(ロ)Fe:0.01〜0.3% Feは、β相の析出を促進させて抗菌性および耐生物付
着性を向上させる作用とTi合金の強度を高める作用を
持つ。これらの効果を得るためには、0.01%以上含
有させる必要がある。しかし、含有量が0.3%を超え
るとTi合金の耐食性が劣化するおそれがあるとともに
延性が低下する。したがって、上限を0.3%以下とす
る。
【0029】本発明でいう不純物には例えば下記のよう
なものがある。
【0030】Niは、原料のスポンジチタンに不可避的
に混入している元素である。Niの含有量が0.05%
を超えると延性が低下する。したがって、含有量を0.
05%以下にするのが好ましい。
【0031】Crも原料のスポンジチタンに不可避的に
混入している元素である。Crの含有量が0.05%を
超えると延性が低下する。したがって、含有量を0.0
5%以下にするのが好ましい。
【0032】窒素(N)はスポンジチタンや、溶解工程
で混入する元素である。窒素(N)の含有量が0.02
%を超えると延性が低下する。したがって、含有量を
0.02%以下にするのが好ましい。
【0033】水素(H)もスポンジチタン内や、溶解工
程または後述する熱処理工程で混入する元素である。水
素(H)の含有量が0.015%を超えると水素脆化の
問題が起こる。したがって、含有量を0.015%以下
にするのが好ましい。
【0034】炭素(C)は、原料のスポンジチタンに不
可避的に混入している元素である。炭素(C)の含有量
が0.01%を超えると延性が低下する。したがって、
含有量を0.01%以下にするのが好ましい。
【0035】酸素(O)は、スポンジチタンの製造過程
において、不可避的に混入する元素である。酸素(O)
の含有量が0.3%を超えると延性が低下する。したが
って、含有量を0.3%以下にするのが好ましい。
【0036】本発明のTi合金製造用の素材は、例え
ば、スポンジチタンを原料として、真空中で溶解し、上
記の化学組成となるように添加元素を調整した後、イン
ゴット(素材)に鋳造することにより製造できる。イン
ゴット(素材)は、目的に合わせて、通常の鍛造、圧延
等の塑性加工を施して板、棒、パイプ等に加工すること
ができる。
【0037】(B)Ti合金の製造方法 抗菌性と耐生物付着性をより高めたTi合金を製造する
場合には、化学組成を上記のように規定した上で、下記
のような特定の加工と熱処理を施すことが有効である。
【0038】まず、上述のTi合金の素材に、βトラン
ザス以下の温度で加工度20%以上の加工を施す。次
に、600℃以上、βトランザス未満の温度で1分間以
上保持するか、または「βトランザス−100」℃以
上、βトランザス未満の温度から空冷以上の冷却速度で
冷却し、400℃以上700℃以下の温度域で1時間以
上、10時間以下保持する熱処理を施す。
【0039】加工時の素材の温度がβトランザスを超え
ていても、加工の最中に温度がβトランザス以下に低下
し、βトランザス以下の温度域で20%以上の加工を施
すのも有効である。なお、本発明でいう加工度とは、鍛
造や圧延等により生じる素材の断面減少率を指し、以下
の式で求められる値である。
【0040】加工度(%)={(加工前の素材断面積−
加工後の素材断面積)×100}/加工前の素材断面積 βトランザス以下での加工度が低いと加工後に針状組織
が残留してしまい、引き続き行われる熱処理によってα
相を等軸に成長させることができない。加工温度の下限
については、冷間での加工も可能であり特に規定しな
い。
【0041】加工度が20%に満たない場合には、再結
晶時において等軸晶は形成されず、熱処理前の加工組織
の残留が生じる。加工度は、大きい方がよい。したがっ
て、その上限は、工業的に可能な大きさの加工度であ
る。
【0042】上記の加工に引き続き、次の2つのいずれ
かの条件で熱処理を行う。
【0043】特に、良好な加工性を付与する場合には、
前記の加工に引き続き600℃以上、βトランザス未満
の温度で1分以上保持する熱処理を施す。この熱処理を
焼鈍熱処理と記す。焼鈍熱処理により、Ti合金の加工
性が向上するのは、等軸α相が形成されるためである。
焼鈍熱処理の温度が600℃未満であると等軸のα相が
形成されない。βトランザス以上の温度では、β単相と
なって結晶粒が粗大化するとともに針状組織が形成さ
れ、加工性を向上させることができない。
【0044】処理時間が1分未満では、加工組織が残存
し等軸のα相が形成されない。なお処理の最大時間は特
に規定しないが、経済的な面を考慮して4時間以下とす
るのがよい。
【0045】一方高い強度が要求される場合には、前記
の加工に引き続き、βトランザス未満、「βトランザス
−100」℃以上の温度域からの空冷以上の冷却速度で
冷却する溶体化処理を行い、さらに400℃以上700
℃以下の温度域で1時間以上、10時間以下保持する時
効処理を施す。
【0046】溶体化処理をβトランザス以上の温度で行
うと等軸のα相が形成されにくく、十分な引張特性向上
効果が得られない。「βトランザス−100」℃未満の
場合には、溶体化処理の効果が得られず、引張強さが向
上しない。溶体化処理の保持時間は特に規定しないが、
30分以上、2時間以下程度行うのが好ましい。空冷を
下回る速度で冷却するとマルテンサイト相が形成されな
いために、引き続く時効処理において微細なTi2 Cu
相またはβ相と微細なα相の析出が発生せず、引張強さ
を高めることができない。冷却速度は速い方が望まし
く、水焼入れや油焼入れを施すのが望ましい。冷却速度
の上限は、工業的に可能な速度とする。
【0047】時効処理の温度が400℃未満であると、
時効処理の効果が発揮されず、引張特性の向上効果が小
さい。700℃を超えると時効が過度となり、いわゆる
過時効処理となる。また、時効処理の保持時間を1時間
以上10時間以下とするのは、1時間未満では時効の効
果が得られず、10時間を超えると過時効となるからで
ある。
【0048】
【実施例】
(実施例1)アルゴン雰囲気としたボタンアーク溶解炉
を使用して幅100mm、長さ300mm、厚さ15m
mの種々の化学組成のインゴットを鋳造した。インゴッ
トの化学組成は表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】インゴットを1000℃に加熱し、通常の
方法で熱間圧延を施して厚さ10mmの熱延板に形成し
徐冷した。その後、βトランザス以下の温度である90
0℃に加熱し熱間圧延によって加工度45%の加工を施
し、5.5mmの熱延板に形成した。熱延板の表面に生
成したスケールを除去するために機械加工を施して5m
mの厚さに仕上げた。
【0051】上記のようにして得た厚さ5mmの熱延板
に通常の方法で冷間圧延を施して厚さ1mmの冷延板に
仕上げた。この冷延板に600℃以上、βトランザス未
満の温度である700℃で1時間保持する焼鈍熱処理を
施してTi合金の板を製造した。
【0052】製造したTi合金の板の抗菌性、耐生物付
着性、加工性および組織を調査した。
【0053】抗菌性の調査のための試験は、以下のよう
に実施した。大腸菌(Escherichia col
i W3110株を、1/500に希釈したブイヨン培
地に分散させて接種用菌液を調製した。ブイヨン培地
は、肉エキス5g、ペプトン10.0g、塩化ナトリウ
ム5gを精製水1リットルに溶かしたものとした。
【0054】次に、予めエタノールで拭くことにより殺
菌済みの試験片(Ti合金の板を50mm角に切り出し
たもの)を滅菌シャーレ内におき、試験片の表面に接種
用菌液(0.5ml;菌数105 個)を接種した。スト
マッカー用ポリ袋減菌ケンサパックを50mm角に切り
取った被覆フィルムを試験片に被せた後、温度35±1
℃、相対湿度95%の条件下で保存した。
【0055】24時間後、試験片の表面とフィルムに付
着した菌を9.5mlの生理食塩水で洗い出し、標準寒
天培地に沫塗した。さらに、温度35±1℃で48時間
培養後、生育したコロニーを計数し、生菌率を算出し、
抗菌性の評価の指標とした。菌の生存率10%未満を非
常に抗菌性に優れるもの、10%以上30%未満を抗菌
性に優れるもの、30%以上70%未満を抗菌性を備え
るもの、70%以上を抗菌性を持たないものと評価し
た。なお、耐生物付着性は、Ti合金の表面における生
物の付着しやすさを示す指標であるために抗菌性と比例
すると考え、抗菌性に優れるものを耐生物付着性に優れ
るものと判断した。つまり、以下の実施例において、抗
菌性に優れるものは耐生物付着性にも優れているものと
評価した。加工性は以下のように調査した。
【0056】上記で製造したTi合金の板から90mm
角、厚さ0.8mmのエリクセン試験片を採取し、室温
でのエリクセン値を測定して加工性を評価した。エリク
セン値が10mm以上のものを加工性が良好であると評
価した。
【0057】圧延縦断面から試料を採取し、研磨、腐食後
に500倍の光学顕微鏡にてミクロ組織を観察した。
【0058】抗菌性、加工性および組織について調査し
た結果を表1に併せて示した。抗菌性の欄の○は、菌の
生存率が10%以上30%未満のもの、×は、菌の生存
率が70%以上のものを示している。表1の結果から、
本発明のTi合金は、抗菌性に優れ、かつ良好な加工性
を持つことがわかる。一方、Cuの含有量が本発明で規
定する量に満たない比較合金1、2は、α相の単相組織
であり、抗菌性を発揮しなかった。Cuの含有量が本発
明で規定する量を超えている比較合金8は、抗菌性には
優れているものの、加工性に劣っていた。
【0059】(実施例2)実施例1と同様に、アルゴン
雰囲気としたボタンアーク溶解炉を使用して幅100m
m、長さ300mm、厚さ15mmのインゴット(A〜
J)を鋳造した。インゴットの化学組成については、C
uを1.5%、Feを0.1%含有させることを目標と
して調整した。これらのインゴットを使用して、加工
度、加工時の加熱温度および焼鈍熱処理の温度と時間を
様々に変化させて供試用のTi合金を製造し、抗菌性、
加工性および組織を調査した。なお、A〜Jのβトラン
ザスは、約840℃である。
【0060】本発明例では、それぞれのインゴットをま
ず、実施例1と同様に1000℃に加熱し、熱間圧延と
機械加工を施して厚さ5mmの熱延板に形成した。この
熱延板を素材として、表2に示す様々な温度と加工度で
様々な厚さの熱延板に仕上げ、その後焼鈍熱処理を施し
た。
【0061】
【表2】
【0062】焼鈍熱処理後、機械加工を施して厚さ1m
mの試験片に切り出し、抗菌性、加工性および組織を調
査した。試験方法および評価基準は実施例1と同じであ
る。抗菌性、加工性および組織について調査した結果を
表2に併せて示した。抗菌性の欄の○は、菌の生存率が
10%以上30%未満のもの、△は、30%以上70%
未満のものを示している。本発明の方法、すなわちβト
ランザス未満の温度で20%以上の加工を加え、かつ6
00℃以上、βトランザス未満の温度で1分以上保持す
る熱処理を施す方法で製造したTi合金(B,D,E,
G,I,J)は、α相が等軸になっており、α相が針状
のTi合金(A,C,F)よりも抗菌性および加工性に
優れていた。
【0063】(実施例3)実施例1と同様に、アルゴン
雰囲気としたボタンアーク溶解炉を使用して幅100m
m、長さ300mm、厚さ15mmのインゴット(K〜
W)を鋳造した。インゴットの化学組成については、C
uを1.5%、Feを0.1%含有させることを目標と
して調整した。これらのインゴットを使用して、溶体化
処理の温度および冷却速度ならびに時効処理の温度およ
び保持時間を様々に変化させてTi合金を製造し、組織
の調査、抗菌性試験ならびに引張強さおよび延性を求め
るための引張試験を実施した。なお、K〜Wのβトラン
ザスは、約840℃である。それぞれのインゴットを1
000℃に加熱し、熱間圧延と機械加工を施して厚さ5
mmの熱延板に形成した。次に、厚さ5mmの熱延板に
冷間圧延を施して厚さ1mmの冷延板に仕上げた。この
冷延板に溶体化処理と時効処理を施してTi合金を製造
した。表3に溶体化処理および時効処理の条件を示す。
【0064】
【表3】
【0065】熱処理後の冷延板から平行部幅6.25m
m、厚さ0.8mm、標点間距離25mmのASTMサ
ブサイズ引張試験片を採取し、室温での引張強さと延性
を測定した。引張試験の条件は、ASTM−E8に準拠
した。引張試験の結果を表3に併せて示した。
【0066】なお、抗菌性および組織の調査のための試
験方法は、実施例1と同じとした。本発明の方法、すな
わち「βトランザス−100」℃以上、βトランザス未
満の温度に加熱した後、空冷以上の冷却速度で冷却し、
引き続き400℃以上700℃以下の温度で1時間以
上、10時間以下保持して製造したTi合金(L,M,
Q,R,U,V)のα相は、等軸になっているので抗菌
性に優れ、適切な時効処理が施されたので、時効硬化に
より引張強さが800N/mm2 以上になっている。
【0067】Ti合金Kは、溶体化処理の温度が高いの
で、α相が針状晶になっており、上記のTi合金(L,
M,Q,R,U,V)と比較して、抗菌性と伸びがやや
低い。Ti合金Nは、α相が等軸晶なので、優れた抗菌
性を備える。しかし、溶体化処理の加熱温度が低いので
溶体化処理の効果が得られず、引張強さがやや低い。T
i合金Oは、α相が等軸晶なので、優れた抗菌性を備え
る。溶体化処理後の冷却速度が遅いので、α相、Ti2
Cu相およびβ相が微細に析出しておらず、引張強さが
やや低い。Ti合金Pは、α相が等軸晶なので、優れた
抗菌性を備える。しかし、時効処理の温度が低いので、
時効硬化が十分でなく、引張強さがやや低い。Ti合金
Sは、α相が等軸晶なので、優れた抗菌性を備える。し
かし、時効処理の温度が高く、過時効処理となってお
り、引張強さがやや低い。Ti合金Tは、α相が等軸晶
なので、優れた抗菌性を備える。しかし、時効処理の時
間が短いので、時効硬化が十分でなく、引張強さがやや
低い。Ti合金Wは、α相が等軸晶なので、優れた抗菌
性を備える。しかし、時効処理の時間が長すぎるので過
時効処理となっており、引張強さがやや低い。
【0068】
【発明の効果】本発明のTi合金は、抗菌性および耐生
物付着性に優れている。また、本発明の方法により、抗
菌性および耐生物付着性に優れるTi合金、さらには良
好な加工性、引張特性をも備えるTi合金を製造するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】等軸のα相を示す模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22F 1/00 675 C22F 1/00 675 683 683 684 684A 692 692B 693 693A 693B 694 694A 694B

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、Cu:0.1%以上2.0%未
    満、Fe:0.01〜0.3%を含み、残部はTiおよ
    び不可避的不純物からなり、α相ならびにCuが濃化し
    たβ相およびTi2 Cu相の少なくとも1相からなるこ
    とを特徴とする抗菌性および耐生物付着性に優れるTi
    合金。
  2. 【請求項2】重量%で、Cu:0.1%以上2.0%未
    満、Fe:0.01〜0.3%を含み、残部はTiおよ
    び不可避的不純物からなるTi合金の素材に、βトラン
    ザス以下の温度で加工度20%以上の加工を施した後、
    600℃以上、βトランザス未満の温度で1分間以上保
    持する熱処理を施すことを特徴とする抗菌性および耐生
    物付着性に優れるTi合金の製造方法。
  3. 【請求項3】重量%で、Cu:0.1%以上2.0%未
    満、Fe:0.01〜0.3%を含み、残部はTiおよ
    び不可避的不純物からなるTi合金の素材に、βトラン
    ザス以下の温度で加工度20%以上の加工を施した後、
    「βトランザス−100」℃以上、βトランザス未満の
    温度から空冷以上の冷却速度で冷却し、400℃以上7
    00℃以下の温度域で1時間以上10時間以下保持する
    熱処理を施すことを特徴とする抗菌性および耐生物付着
    性に優れるTi合金の製造方法。
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