特許文献1,2に記載されているような、紫外線硬化型インキに変更して印刷後に印刷物に紫外線を照射して硬化させる方法は、紫外線硬化型インキ自体の安全性や匂いの問題や紫外線照射ランプの安全性とオゾン発生の問題があるとともに、インキ自体が高価であり、紫外線照射装置も高価なものが必要になる等、コスト面を考えると、実現が難しい。
特許文献3,4に記載されているように、印刷物の画像面をヒーターや遠赤外線等の加熱手段で加熱してインキ中の水相蒸発を促進させる方法は、印刷装置のような高速印刷を行う場合、用紙自体が保有している水分を蒸発させることに熱が消費されてしまい、インキの乾燥を効果的に行うには非常に大きな熱容量の装置が必要になるとともに、高い熱量を加えてしまうと、高熱で用紙がカールする問題や火災のおそれも懸念しなければならなくなる。
特許文献5に記載のような、インキ中の溶剤成分が気化することで樹脂成分が顔料と一体になって硬化するというようなインキを使用する方法、又は水性成分が蒸発することで樹脂成分が顔料と一体になって硬化するというようなインキを使用する方法は、印刷物の乾燥性や定着性確保の上で効果が大きいが、未使用放置によって円筒状の版胴を構成する多孔質円筒状薄板やスクリーンメッシュがインキの固化で目詰まりを起こしてしまうことが明らかであり、例えば休日明けに印刷しようとした場合、インキが版胴を通過しないので画像が出ない(印刷されない)といった不具合の発生が想定される。
特許文献6に記載のように、水性インキや気化溶剤を含有するインキの場合は、孔版印刷装置が非使用状態に置かれて装置内のインキが開放状態で長期間放置された状態になると、インキ中の水分や溶剤が容易に蒸発して、インキの流動性が失われ、またインキの成分構成や物性が変化してしまうという課題があった。そのため、孔版印刷装置が非使用状態で長期間放置された後の印刷動作性が低下して、印刷直後もしくは印刷再開直前に孔版印刷装置を分解して洗浄しなくては、再び印刷動作を行うことができなくなるとともに、変質したインキでは高品質な画像が得られないという課題がある。
高粘度インキや粉体インキを用いて印刷時には加熱等で一時的に軟化低粘度化させて印刷する方法は、インキの安定的な供給が困難で、加熱処理部によるインキの軟化が不安定になり安定した乾燥硬化を得ることは難しい。また特許文献6のように印刷物の上に粉末を塗布する方法においても一時的な裏うつり防止程度の効果しか期待することはできないと思われる。
本発明は、印刷物画像の乾燥定着に非常に効果が大きいインキを用いても、円筒状の版胴がインキの固化による目詰まりを起こすことなく、良好な印刷画像を得られる孔版印刷装置を提供することを、その目的とする。
上述した目的を達成するために、請求項1の発明は、未製版の孔版原紙に穿孔製版するとともに孔版原始を給版する製版手段と、製版手段で製版された孔版原紙が外周面に巻装され自身の中心軸線周りに回転駆動される円筒状の版胴と、版胴内に設けられて版胴内周面にインキを供給するインキ供給手段と、給紙された印刷用紙を印圧部材で版胴外周面に押圧する印圧手段と、版胴外周面に巻装されている孔版原紙を剥離する排版手段と、版胴が保持するインキを除去するインキクリーニングモードを設定するクリーニングモード設定手段と、クリーニングモード設定手段によりインキクリーニングモードが設定されている場合、版胴が保持するインキを除去するインキクリーニング処理を実行すべく、排版手段を作動して使用済み孔版原紙を版胴外周面から剥離排版するとともに、製版手段による製版されていない未製版の孔版原紙を給版して版胴外周面に巻装し、この版胴を回転駆動させながら、版胴外周面の未製版の孔版原紙に印圧部材を押圧させるように印圧手段を作動させる制御手段とを有することを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、クリーニングモード設定手段が、操作部に配置され、孔版印刷装置による印刷がその日における最後の場合に選択する最終印刷選択キーであることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、インキ供給手段は、版胴へのインキ供給量を減少させるインキ供給カット手段を有し、制御手段は、クリーニングモード設定手段によりインキクリーニングモードが設定されている場合には、インキ供給カット手段を作動させることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1,2または3記載の孔版印刷装置において、版胴は、多数の微細孔を有する金属薄板製の多孔質支持体からなり、その外周面にメッシュスクリーン層を有していないことを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1ないし4の何れかに記載の孔版印刷装置において、版胴内周面に接離可能に設けられ、該版胴内周面に接触することでその表面に付着している残存インキを回収する第1のインキ回収部材と、第1のインキ回収部材を版胴内周面に接離動作させる第1の駆動手段とを有し、制御手段は、クリーニングモード設定手段によりインキクリーニングモードが設定されている場合には、第1のインキ回収部材を版胴内周面に接触させるように第1の駆動手段を作動させることを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項5記載の孔版印刷装置において、版胴を挟んで第1のインキ回収部材と対向配置されていて版胴外周面に接触してその表面に付着している残存インキを回収する第2のインキ回収部材と、第2のインキ回収部材を版胴外周面に接離動作させる第2の駆動手段とを有し、制御手段は、クリーニングモード設定手段によりインキクリーニングモードが設定されている場合には、第1のインキ回収部材を版胴内周面に、第2のインキ回収部材を版胴外周面に接触させるように第1及び第2の駆動手段を作動させることを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項5または6記載の孔版印刷装置において、第1のインキ回収部材または第2のインキ回収部材の少なくとも何れか一方は、ローラ状でインキ吸収性に優れた多孔質体から構成されており、第1または第2の駆動手段、あるいは第1及び第2の駆動手段による接離動作の度に、回転方向保持位置が変わるように構成されていることを特徴としている。
請求項8の発明は、請求項1ないし4の何れかに記載の孔版印刷装置において、排版手段により孔版原紙を版胴外周面から剥離する場所の版胴の内側に配設され、版胴内周面にエアーを吹き付けるエアー吐出手段と、版胴を挟んでエアー吐出手段と対向位置し、版胴外周面に接離可能に設けられた押さえローラと、押さえローラを接離動作する回収駆動手段とを有し、制御手段は、クリーニングモード設定手段によりインキクリーニングモードが設定されている場合には、エアー吐出手段を作動させるとともに、押さえローラを版胴外周面に接触させるように回収駆動手段を作動させることを特徴としている。
請求項9の発明は、請求項1ないし8の何れかに記載の孔版印刷装置において、版胴にインキを補充するインキ補充モードを設定するインキ補充モード設定手段を有し、制御手段は、インキ補充モード設定手段によりインキ補充モードが設定されている場合、製版手段により製版されていない未製版の孔版原紙を版胴外周面に巻装し、この版胴を回転させながら印圧部材が未製版の孔版原紙を介して版胴外周面を押圧するように印刷手段を作動させ、未製版の孔版原紙を剥離排版するように排版手段を作動させることを特徴としている。
請求項10の発明は、請求項9記載の孔版印刷装置において、インキ補充モード設定手段は、操作部に配置され、孔版印刷装置による印刷がその日における最初の印刷の場合に選択する最初印刷選択キーであることを特徴としている。
請求項11の発明は、請求項1ないし8の何れかに記載の孔版印刷装置において、版胴と同版胴内部に供給されるインキとして通常インキを収納したインキ容器を有する通常印刷用ユニット、または、版胴と同版胴内部に供給されるインキとして乾燥定着向上型インキを収納したインキ容器を有する定着向上印刷用ユニットが印刷装置本体に着脱可能であり、印刷装置本体に装着されるユニットを識別する識別手段を備え、制御手段は、識別手段による識別結果が定着向上印刷用ユニットの場合にはクリーニングモード設定手段により設定されるインキクリーニングモードを有効とし、識別手段による識別結果が通常印刷用ユニットの場合には、インキクリーニングモードを無効とすることを特徴としている。
本発明によれば、版胴が保持するインキを除去するインキクリーニングモードを設定するクリーニングモード設定手段と、クリーニングモード設定手段によりインキクリーニングモードが設定されている場合、版胴が保持するインキを除去するインキクリーニング処理を実行すべく、排版手段を作動して使用済み孔版原紙を版胴外周面から剥離排版するとともに、製版手段による製版されていない未製版の孔版原紙を給版して版胴外周面に巻装し、この版胴を回転駆動させながら、版胴外周面の未製版の孔版原紙に印圧部材を押圧させるように印圧手段を作動させる制御手段とを有するので、不使用時の版胴保有インキ量が減少されるため、孔版印刷装置をある所定時間を超えて使用しない場合には、版胴部(特に外側)が保有するインキ量がほとんどゼロになるように減少され、放置時のインキ乾燥による版胴部目詰まりを防止することができ、孔版印刷における印刷物画像の乾燥定着に非常に効果が大きい定着向上型インキを用いることが可能となる。これにより、紫外線硬化型のような特別インキを使用せず安価な従来型に近い孔版印刷インキを使用しながらも、印刷画像の乾燥性が良好で時間経過とともに確実に定着した印刷画像を得ることができる。
本発明によれば、版胴へのインキ供給量を減少させるインキ供給カット手段を有し、クリーニングモード設定手段によりインキクリーニングモードが設定されている場合にはインキ供給カット手段が作動するので、より版胴へのインキ供給量を大幅に減少されるため、放置時のインキ乾燥による版胴部目詰まりを防止することができ、孔版印刷における印刷物画像の乾燥定着に非常に効果が大きい定着向上型インキを用いることが可能となる。これにより、紫外線硬化型のような特別インキを使用せず安価な従来型に近い孔版印刷インキを使用しながらも、印刷画像の乾燥性が良好で時間経過とともに確実に定着した印刷画像をより得易くなる。
本発明によれば、多数の微細孔を有する金属薄板製の多孔質支持体で構成され、その外周面にメッシュスクリーン層を持たないしメッシュスクリーンレスの版胴を用いるので、保有インキがより広い表面積を有することですぐに目詰まりを起こしやすいメッシュスクリーンが原因で起こる目詰まりを確実に防止することができる。
本発明によれば、版胴内周面に接触することでその表面に付着している残存インキを回収する第1のインキ回収部材と、第1のインキ回収部材を版胴内周面に接離動作させる第1の駆動手段とを有し、クリーニングモード設定手段によりインキクリーニングモードが設定されている場合には第1のインキ回収部材を版胴内周面に接触させるように第1の駆動手段を作動させるので、版胴内周面に薄く付着して残存しているインキを確実に回収することが可能になり、次の印刷時に版胴目詰まりが起こることをより防止して、乾燥定着向上型インキを使用しても目詰まりにならずに常に正常な画像での印刷が可能になる。
本発明によれば、版胴を挟んで第1のインキ回収部材と対向配置されていて版胴外周面に接触してその表面に付着している残存インキを回収する第2のインキ回収部材と、第2のインキ回収部材を版胴外周面に接離動作させる第2の駆動手段とを有し、制御手段は、クリーニングモード設定手段によりインキクリーニングモードが設定されている場合には、第1のインキ回収部材を版胴内周面に、第2のインキ回収部材を版胴外周面に接触させるように第1及び第2の駆動手段を作動させるので、版胴に残存しているインキをその表裏両面から確実に回収することが可能になり、次の印刷時に版胴目詰まりが起こることをより防止して、乾燥定着向上型インキを使用しても目詰まりにならずに常に正常な画像での印刷が可能になる。
本発明によれば、第1のインキ回収部材または第2のインキ回収部材の少なくとも何れか一方は、ローラ状でインキ吸収性に優れた多孔質体から構成されており、第1または第2の駆動手段、あるいは第1及び第2の駆動手段による接離動作の度に、回転方向保持位置が変わるように構成したので、ローラ状の第1、第2のインキ回収部材は常に新しい部分で版胴に接触することになり、インキの吸収による回収効果を時間と共に低下させることがなくなり、より安定して放置時のインキ乾燥による版胴部目詰まりを防止することができ、紫外線硬化型のような特別インキを使用せず安価な従来型に近い孔版印刷インキを使用しながらも、印刷画像の乾燥性が良好で時間経過とともに確実に定着した印刷画像をより得易くなる。
本発明によれば、排版手段による孔版原紙を版胴外周面から剥離する場所の版胴の内側に配設され、版胴内周面にエアーを吹き付けるエアー吐出手段と、版胴を挟んでエアー吐出手段と対向位置し、版胴外周面に接離可能に設けられた押さえローラと、押さえローラを接離動作する回収駆動手段とを有し、クリーニングモード設定手段によりインキクリーニングモードが設定されている場合には、エアー吐出手段を作動させるとともに、押さえローラを版胴外周面に接触させるように回収駆動手段を作動させるので、版胴の多数孔内部に残存したインキがエアーで押し出されて未製版孔版原紙に付着して排出されることになるので、版胴付着して残存しているインキを確実に回収することが可能になり、次の印刷時に版胴目詰まりが起こることをより防止して、乾燥定着向上型インキを使用しても目詰まりにならずに常に正常な画像での印刷が可能になる。
本発明によれば、版胴にインキを補充するインキ補充モードを設定するインキ補充モード設定手段を有し、制御手段は、インキ補充モード設定手段によりインキ補充モードが設定されている場合、製版手段により製版されていない未製版の孔版原紙を版胴外周面に巻装し、この版胴を回転させながら印圧部材が未製版の孔版原紙を介して版胴外周面を押圧するように印刷手段を作動させ、未製版の孔版原紙を剥離排版するように排版手段を作動させるので、インキクリーニング処理により回収して残存インキを極小化した場合の再使用印刷開始時に、印圧部材による印圧により版胴に十分なインキ量を保持させることが可能となり、インキクリーニング処理後の再印刷時の画像の立ち上がり性が向上し、インキ不足によるかすれ印刷が低減されて、無駄な印刷用紙の低減、印刷時間の短縮を図ることができる。
本発明によれば、版胴と同版胴内部に供給されるインキとして通常インキを収納したインキ容器を有する通常印刷用ユニット、または、版胴と同版胴内部に供給されるインキとして乾燥定着向上型インキを収納したインキ容器を有する定着向上印刷用ユニットが印刷装置本体に着脱可能であり、印刷装置本体に装着されるユニットを識別する識別手段を備え、識別手段による識別結果が定着向上印刷用ユニットの場合にはクリーニングモード設定手段により設定されるインキクリーニングモードを有効とし、識別手段による識別結果が通常印刷用ユニットの場合にはインキクリーニングモードを無効とするので、定着向上印刷用ユニットの装着時のみにインキクリーニング処理が実行されるため、誤装着や誤操作による無駄なインキの消費を低減しながら印刷時間の浪費を低減することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本発明が適用された製版と排版とが一体型の孔版印刷装置の全体概略図を示している。図1において、符号1は原稿画像を読み取るためのスキャナ装置であり、その上面には開閉可能な圧板2と、複数枚の原稿を自動的に順次送るための自動原稿送り装置3(以下「ADF3」と記す)を有している。スキャナ装置1は最大JIS規格A3サイズまでの原稿を読み取ることが可能なタイプとされている。
符号4は製版手段を示す。製版手段4は、スキャナ装置1の下方に位置する印刷装置本体100内の右側に配置されていて、製版機能と給版機能を備えている。製版手段4では、ロール状に巻かれた未製版孔版原紙5が、プラテンローラ6によってサーマルヘッド7に押し付けられ穿孔製版されながら製版済孔版原紙52として後述する搬送駆動部となる原紙搬送部43Bによって駆動される給版ローラ対401によって搬送される。この製版済孔版原紙52は、印刷装置本体100の中央に配置され、後述するドラム回転駆動源となるドラム駆動モータ48によって自身の中心軸線周りに回転駆動される版胴となる印刷ドラム8の外周面(以下「ドラム外周面」と記す)8aへと搬送される。そして、ドラム外周面8aに設けられた原紙先端用のクランパ9にその先端をクランプ係止されることでドラム外周面8aに巻き付けられ、カッター10により一版分の長さに切断されて、ドラム外周面8aに巻装される。印刷ドラム8は、ドラムに関連する部品とともに、印刷装置本体100に対して着脱自在にユニット化されていて、これを印刷ドラムユニット101と称する。
本発明における印刷ドラムユニット101は、図2に示すように、印刷ドラム8と、印刷用のインキが封入されているインキ容器16と、インキ容器16内のインキを印刷ドラム8内部に供給するインキポンプ17とを含んでおり、ドラムユニットフレームを兼ねたスライド案内レール部材102を利用して印刷装置本体100に対して着脱自在とされている。スライド案内レール部材102は、印刷装置本体100に支持されている。
孔版印刷装置で用いるインキには様々な種類がある。これらインキは、その種類毎に異なるインキ容器16内に収納されている。本形態では、2つのインキに対応するように構成されている。すなわち、1つは従来から使用されている従来型エマルジョン孔版印刷インキ(以下「エマルジョンインキ」と記す)であり、今ひとつは乾燥定着性向上型孔版印刷インキ(以下「乾燥定着向上型インキ」と記す)である。前者の場合には、印刷終了後にそのまま孔版印刷装置を放置しても印刷ドラム8でインキが硬化して目詰まりする心配はないが、後者の場合には印刷終了後にそのまま孔版印刷装置を放置すると、印刷ドラム8でインキが硬化して目詰まりする心配がある。
本形態において、印刷ドラムユニット101のうち、エマルジョンインキが収納されたインキ容器16Aを備えたユニットを図2に示す印刷ドラムユニット101Aとし、乾燥定着向上型インキが収納されたインキ容器16Bを備えたユニットを定着向上印刷用ユニットとなる印刷ドラムユニット101Bと便宜的に使い分ける。このうち、印刷ドラムユニット101Bに用いられる印刷ドラム8では、インキ溜まり55の大きさ(インキ量)が印刷ドラムユニット101Aのものよりも小さく設定なるようにインキ供給量が調整されている。印刷ドラムユニット101Aと印刷ドラムユニット101Bには、保有するインキの種別を識別するためのバーコードのような識別部190A,190Bがそれぞれ設けられている。
印刷ドラムユニット101が着脱される印刷装置本体100の奥側には、印刷装置本体100に装着される印刷ドラムユニット101を識別する識別手段83が配置されている。本形態において識別手段83は、識別部190A,190Bを読み取るバーコードリーダで構成されているが、印刷ドラムユニット101が保有するインキの種別を識別するための識別部が突起などで構成されている場合には、識別手段として突起に押されて作動するスイッチを用いるのが好ましい。
図1において、符号11は使用済孔版原紙をドラム外周面8aから剥離して搬送収納する排版手段を示す。排版手段11は、ドラム外周面8aの使用済孔版原紙を剥離して搬送するための排版ローラ12,13と、剥離搬送した孔版原紙を圧縮する圧縮板14と、圧縮された孔版原紙を収納する排版収納箱15を備えている。
符号Pで示す印刷用紙は、印刷装置本体100の右側に配置された給紙装置20を構成する給紙台21上に載置されている。印刷用紙Pは給紙台21からコロ22で搬送力を付与され分離コロ23と分離パッド24で順次1枚ずつに分離され、印刷ドラム8と印圧部材となるプレスローラ28Aの間に形成される印刷部に向けて給紙される。給紙された印刷用紙Pは、分離コロ23と印刷ドラム8の間の搬送経路上に配設された一対のレジストローラ25,26でタイミングを合わせて印刷部に向かって送り込まれる。給紙台21は、通常A3サイズまでの印刷用紙Pがセット可能な大きさとされていている。
印刷ドラム8の下方には印圧手段28が配置されている。印圧手段28は、プレスローラ28Aと、プレスローラ28Aを回転自在に支持しドラム外周面8aに対して接離動作する図示しない接離機構を備えている。この接離機構は、後述するソレノイドなどの周知の電磁アクチュエータから構成された印圧駆動部45により駆動されることで、プレスローラ28Aを印刷ドラム8の回転と同期してクランパ9部分を避けるようにドラム外周面8aに対して間欠的に接離動作させる。孔版印刷装置では、プレスローラ28Aの接離動作によって、レジストローラ25,26によって送り出された印刷用紙Pをドラム外周面8aの製版済孔版原紙52に対して押し当てて画像形成を行う。本形態では、印圧手段としてプレスローラ28Aとその接離機構を例示したが、圧胴とその接離機構を印圧手段として用いる形態であっても構わない。
印刷部よりも用紙搬送方向下流側の印刷ドラム8の近傍には、ドラム外周面8aから印刷用紙Pを剥離する剥離爪29が配置されている。剥離爪29の下方には、印刷部で印刷された印刷用紙Pを吸引搬送する搬送ベルト手段30が配置されている。搬送ベルト手段30によって吸着搬送される印刷用紙Pは、印刷装置本体100の左側に配置された排紙トレイ31上に順次排出されて積載される。
図3を用いて印刷ドラム8の構造について説明する。印刷ドラム8は、図3(b)に示すように、印刷画像範囲に多数の微細孔を有する金属薄板製の多孔質支持体51のみからなり、その外周面に直接製版された孔版原紙52がインキの粘着力によって巻付け、巻着されるように構成されている。通常、多孔質支持体51の外周には1〜2層のメッシュスクリーンが装着されているが、これがあるとそのスクリーンが保持しているインキが表面積を大にして空気に接しているので、インキの種類によっては放置によって乾燥固化し易くなり、容易に目詰まりを起こしてしまう。そこで本発明では、こうしたスクリーンを持たないスクリーンレスの印刷ドラム8としている。
図1に示すように、印刷ドラム8の内部には、印刷ドラム8の内周面(以下「ドラム内周面」と記す)8bにインキを供給するインキ供給手段50が配設されている。インキ供給手段50は、図1の矢印方向に回転可能に保持されている金属性のインキ供給ローラ53と、それと平行にわずかの隙間を設けて配置されたドクタローラ54を備えている。これら二つのローラは、インキ溜まり55を形成している。インキ溜まり55には、図3に示すようにインキポンプ17によってインキ容器16内から吸引されたインキがインキ吐出管57を介して滴下されて供給される。インキ溜まり55のインキは、インキ供給ローラ53の回転によってドラム内周面8bに供給される。通常の印刷可能状態においては、ドラム内周面8bとインキ供給ローラ53の外周面には一定厚さのインキ膜に覆われている。
印刷ドラム8の内部には、インキ溜まり55のインキ量を検出するためのインキ量検出手段となる静電容量式センサ56と、ドラム内周面8bへのインキ供給量を減少させるインキ供給カット手段60とが設けられている。本形態では、静電容量式センサ56によりインキ量が所定量よりも少なくなると、インキポンプ17を駆動してインキの溜まり55へのインキ補充が行なわれる。またインキ量検出手段は静電容量式センサに限定されるものではない。
インキ供給ローラ53とドクタローラ54の間のスキマは通常0.1mm程に設定されているが、インキ供給カット手段60は、このスキマの値を電動で可変するためのものである。インキ供給カット手段60は、ドクタローラ54を回転可能に保持する軸受58と、軸受58との間に間隔を持って配置された固定軸59と、軸受58と固定軸59の間に入りこむ勾配面を有するクサビ部材63と、クサビ部材63を矢印Aで示すドラム内周面8bに対して近接離間する方向に移動させるリードネジ61と、リードネジ61を回転駆動する駆動源となるクサビ駆動モータ62と、リードネジ61のホームポジションを検知する検知手段となるスキマセンサ63を備えている。クサビ駆動モータ62はステッピングモータで構成されている。インキ供給ローラ53とドクタローラ54の間のスキマは、ゼロの位置をホームポジションとして、そこからスキマを拡大する方向に所定パルス分、クサビ駆動モータ62を回転させることで、軸受58の位置を移動させて通常印刷時のスキマとなる0.1mmを確保している。
図4は、図1に示す孔版印刷装置に設けられた操作部となる操作パネル32の一部を示す概略図である。操作パネル32には、印刷設定枚数表示部33と数値入力のためのテンキー34、製版動作を選択する製版キー35、印刷動作を選択するプリントスタートキー36、孔版印刷装置の動作を停止させるストップキー37、表示手段及び警告手段として機能する液晶表示部38、印刷ドラム8が保有するインキを除去するインキクリーニングモードを設定するクリーニングモード設定手段としての最終印刷選択キー41と、最終印刷選択キー41が操作されてインキクリーニングモード設定されているときに点灯する表示手段となるLEDランプ42が設けられている。液晶表示部38には、孔版印刷装置の状態や各種メッセージが文字や図柄で表示される。最終印刷選択キー41は、孔版印刷装置による印刷が、その日における、すなわち印刷当日の最後の場合に装置使用者によって選択されるものである。
孔版印刷装置は、図5に示すように制御手段200を備えている。制御手段200は、CPU、メモリ、タイマなどを備えた周知のコンピュータで構成されている。制御手段20には、スキャナ装置1を駆動するスキャナ駆動部1A、排版手段を駆動する排版駆動部11A、インキポンプ17、給紙手段20を駆動する給紙駆動部20A、搬送ベルト手段30を駆動するベルト駆動部30A、操作パネル32、製版手段4を駆動する製版駆動部43、印圧駆動部45、ドラム駆動モータ48、静電容量式センサ56、スキマ駆動モータ62、スキマセンサ63、識別手段83が信号線を介してそれぞれ接続されている。製版駆動部43は、サーマルヘッド6を駆動するサーマルヘッド駆動回路43Aと給版ローラ401を回転させる搬送駆動部43Bとを備えている。
制御手段200は、所謂、排版処理から製版・給版処理を経てスキャナ装置1で読み取った原稿画像に対応する印刷処理を行う通常の印刷モードと、印刷ドラム8が保有するインキを除去するインキクリーニングモードとを備えている。インキクリーニングモードは、最終印刷選択キー41がオペレータに選択操作されることで設定される。制御手段200は、通常の印刷モードによる通常印刷処理とインキクリーニングモードが設定されるとインキクリーニング処理を実行すべく、孔版印刷装置の各部の動作を制御する。
最初に通常の印刷処理のための操作と動作について説明し、次にインキクリーニング処理の操作と動作について説明する。
通常の印刷処理を実行するには、スキャナ装置1に図示しない原稿をセットして印刷したい枚数をテンキー34で設定する。すると印刷設定枚数表示部33にその設定印刷枚数が表示される。これで製版スタートキー37がオペレータにより操作されると通常の印刷処理が開始される。なお給紙台21には原稿に対応する印刷用紙Pが載置されているものとする。
孔版印刷装置は、このような状態となると、排版駆動部11Aの駆動により排版装置11を作動してドラム外周面8aに巻かれている使用済孔版原紙を剥離排版搬送する。次にスキャナ駆動部1Aの駆動によりスキャナ装置1を作動して原稿をスキャナ装置1で読み取りながら同時に製版手段4のサーマルヘッド駆動制御部43Aと搬送駆動部43Bを駆動して製版手段4を作動して孔版原紙5にサーマルヘッド7による穿孔製版を行いつつ、製版済孔版原紙52として印刷ドラム8に向かって給版搬送する。搬送された製版済孔版原紙52は、カッター10により所定長さ(一版分の長さ)に切断されるとともに、その先端がドラム外周面8aのクランパ9で係止される。製版済孔版原紙52は、この給版動作に伴い、ドラム駆動モータ48によって印刷ドラム8が低速で回転駆動されることで、ドラム外周面8aに巻き付け装着される。
給紙駆動部20Aの駆動により給紙台21に積載されている印刷用紙Pが印刷部に向かって搬送されると、印刷部において印圧駆動部45の駆動で接離動作(印圧動作)するプレスローラ28Aによってドラム外周面8aに押圧されることで印刷画像が印刷用紙Pに形成される。画像形成された印刷用紙Pは剥離爪29によってドラム外周面8aから剥離され、ベルト駆動部30Aの駆動により作動する搬送ベルト手段30で吸着搬送されて排紙トレイ31上に排出積載されることで、最初の試し版付け印刷が行われる。
版付け印刷された1枚の印刷物をオペレータが確認して問題がなく、オペレータによってプリントスタートキー36が操作されると印刷が開始し、画像が印刷された印刷用紙Pが搬送ベルト手段30で搬送されて排紙トレイ31上に排出積載される。こうした印刷動作は、テンキー34によって予め設定された印刷枚数分繰り返され、設定された印刷枚数分の印刷が終了すると、印刷処理が終了する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態となるインキクリーニング処理の操作と動作について説明する。本形態にかかる制御手段200は、最終印刷選択キー41が操作されて、インキクリーニングモードが設定されると、印刷ドラム8が保持するインキを除去するインキクリーニング処理を実行する機能と、識別手段83による識別結果が印刷ドラムユニット101Bの場合には、インキクリーニングモードを有効とし、識別手段83による識別結果が通常印刷用ユニットとなる印刷ドラムユニット101Aの場合には、インキクリーニングモードを無効とする。つまり、インキクリーニング処理は、乾燥定着向上型インキを用いる場合には実行されるが、エマルジョンインキを用いる場合には実行されないように、制御手段200によって制御される。
図6のフローチャートを用いて制御手段200によるインキクリーニングモードの制御動作について説明する。
図6において、ステップS1では、印刷装置本体100に装着されているドラムユニットの識別が識別手段83からの信号で判定される。装着されているドラムユニットが乾燥定着向上型インキを用いる定着向上印刷用の印刷ドラムユニット101Bの場合にはステップS2に進み、印刷ドラムユニット101Bで無ければステップS16に進む。
ステップS2では、最終印刷選択キー41の操作状態が判定され、同キーが操作されてオン状態の場合にはステップS3に進み、オン状態でなければその日の最終印刷ではないものとして、ステップS18に進んで上述した通常の印刷処理の動作を実行する。ステップS3において製版スタートキー35がオン状態となると、ステップS4からステップS6において、通常の印刷処理と同様にスキャナ装置1による原稿画像データの読取動作と、製版手段4による製版及び給版巻き付け動作と、版付け動作を実行する。
版付け動作終了後、ステップS7においてプリントスタートキー36がオン状態となると、ステップS8,S9において、通常印刷すべく印刷用紙Pの給紙、搬送動作と、印刷動作を実行する。そして、ステップS10においてテンキー34で設定した所定枚数の印刷が終了したことを図示しないカウンタの値から判定すると、ステップS11において、インキ供給カット手段60を作動する。具体的には、インキ供給ローラ53とドクタローラ54の間のスキマがゼロになるまでクサビ駆動モータ62を駆動し、ステップS12に進む。
さて、ステップS12からステップS15まではインキクリーニング処理の中心であるインキ除去動作となる。まずここではステップS12において排版駆動部11Aの駆動により排版手段11を作動して使用済孔版原紙をドラム外周面8aから排版剥離して排版ボックス15への搬送と圧縮板14による収納排版する。ステップS13では、製版手段4による製版されていない未製版孔版原紙5を原始搬送部43Bの駆動により搬送給版してドラム外周面8aへの巻付け動作を実行する。
ステップS14では、ドラム駆動モータ48を駆動して未製版孔版原紙5が巻装された状態で印刷ドラム8を回転駆動させながら、未製版孔版原紙5をプレスローラ28Aで押圧させるように印圧駆動源45を作動させた状態で、印刷ドラム8のN回数だけの回転を実行する。この動作によって印刷ドラム8が保持しているインキ(乾燥定着向上型インキ)が未製版孔版原紙5に搾り出されて染込むことで印刷ドラム8からのインキ除去が実行される。
この後、ステップS15において、このインキが染込んだ未製版孔版原紙5を排版すべく、排版駆動部11Aの駆動により排版手段11を作動して未製版孔版原紙5をドラム外周面8aから排版剥離して排版ボックス15への搬送と圧縮板14による収納排版動作を実行して、この処理を終える。
ステップS16では、エマルジョンインキを用いる通常印刷用ユニットである印刷ドラムユニット101Aが装着されているか否かを判定し、印刷ドラムユニット101Aが装着されていない場合には、ステップS20に進んで印刷ドラムユニットが未装着であるとして液晶表示部38にユニット未装着である内容の警告内容を表示してこの処理を終える。
ステップS16において、印刷ドラムユニット101Aが装着されている場合には、ステップS17に進んで最終印刷選択キー41の状態が判定され、同キーが操作されてオン状態の場合にはインキクリーニング処理をしなくてよいドラムユニットが装着されているので、誤操作である内容をステップS20において液晶表示部38に警告表示する。ステップS17で最終印刷選択キー41が操作されておらず、オン状態でなければ、ステップS18に進んで上述した通常の印刷処理の動作が実行する。
ステップS18での通常の印刷処理後、ステップS19において再度、最終印刷選択キー41の状態が判定され、オン状態である場合にはステップS12に進んでインキ除去処理を実行し、オン状態でなければこの処理を終了する。
このように、印刷ドラム8が保持するインキを除去するインキクリーニングモードを設定する最終印刷選択キー41と、最終印刷選択キー41によりインキクリーニングモードが設定されている場合、印刷ドラム8が保持するインキを除去するインキクリーニング処理を実行すべく、排版手段11を作動して使用済み孔版原紙をドラム外周面8aから剥離排版するとともに、製版手段4による製版されていない未製版孔版原紙5を給版してドラム外周面8aに巻装し、この巻装された印刷ドラム8を回転駆動させながら、ドラム外周面8aの未製版孔版原紙5にプレスローラ28Aを押圧させるように各部を作動させるので、最終印刷終了後の不使用時の印刷ドラム8が保有するインキ(乾燥定着向上型インキ)の量が減少される。このため、孔版印刷装置をある所定時間を超えて使用しない場合には、印刷ドラム8の特にドラム外周面8aが保有するインキ量がほとんどゼロになるように減少する。よって、放置時のインキ乾燥による印刷ドラム8の開口部の目詰まりを防止することができ、孔版印刷における印刷物画像の乾燥定着に非常に効果が大きい乾燥定着向上型インキを用いることが可能となる。これにより、紫外線硬化型のような特別インキを使用せず安価な従来型に近い孔版印刷インキを使用しながらも、印刷画像の乾燥性が良好で時間経過とともに確実に定着した印刷画像を得ることができる。
インキクリーニングモードが設定されている場合には、インキ供給カット手段60のスキマ駆動モータ62が駆動してインキ供給ローラ53とドクタローラ54の間のスキマがゼロになるので、印刷ドラム8へのインキ供給量が大幅に減少されるため、放置時のインキ乾燥による印刷ドラム8の開口部を防止することができ、孔版印刷における印刷物画像の乾燥定着に非常に効果が大きい乾燥定着向上型インキより用いることが可能となる。
また、識別手段83による識別結果が定着向上印刷用ユニットである印刷ドラムユニット101Bの場合には、最終印刷選択キー41により設定されるインキクリーニングモードを有効とし、識別手段83による識別結果が通常印刷用ユニットである印刷ドラムユニット101Aの場合には、インキクリーニングモードを無効とするので、印刷ドラムユニット101Bの装着時のみにインキクリーニング処理が実行されるため、誤装着や誤操作による無駄なインキの消費を低減しながら印刷時間の浪費を低減することができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態となるインキクリーニング処理について説明する。この処理は、図7に示すように、ドラム内周面8bに接離可能に設けられ、ドラム内周面8bに接触することでその表面に付着している残存インキを回収する第1のインキ回収部材となる第1のインキ回収ローラ65と、第1のインキ回収ローラ65をドラム内周面8bに接離動作させる第1の駆動手段70Aと、印刷ドラム8を挟んで第1のインキ回収ローラ65と対向配置されていてドラム外周面8aに接触してその表面に付着している残存インキを回収する第2のインキ回収部材となるインキ回収ローラ66と、第2のインキ回収ローラ66をドラム外周面8aに接離動作させる第2の駆動手段70Bとを備えている。
第1のインキ回収ローラ65と第2のインキ回収ローラ66には、たとえばインキ吸収性に優れた多孔質体である多孔質の発泡ゴムから構成されたローラ、又は吸収性の高い繊維から構成されたローラ、あるいは外周に多数の細毛を植毛したブラシ状ローラ等で構成されている。これ以外に、第1及び第2のインキ回収部材としてはブレード状の部材を用いても良い。ただし、第2のインキ回収部材をブレード状部材で構成すると、ブレード状部材でかき取ったインキを回収する手段が印刷ドラム8の外部に必要になってスペースの問題が発生するので、第2のインキ回収部材は、吸収性を備えたローラ状部材であるのが好ましい。その点、第1のインキ回収部材は印刷ドラム8の内部に配置されるので、ブレード状部材を用いても、かき取ったインキをドラム外周面8aに巻着される未製版孔版原紙5に吸収させることができるのでブレード状部材を用いても特に、スペース的な問題を生じることはない。
第1及び第2の駆動手段70A,70Bは、第1のインキ回収ローラ65と第2のインキ回収ローラ66を移動する方向が異なる以外は基本的に同一構成要素で構成されている。すなわち、第1の駆動手段70Aは、第1のインキ回収ローラ65を支持する軸69Aを、ブレーキ抵抗を持ってその一端で回転可能に保持するとともに、第1のインキ回収ローラ65をドラム内周面8bに対して接離する方向に支持するアーム部材71Aと、アーム部材71Aを作動するアーム駆動源となる電磁ソレノイド73Aと、第1のインキ回収ローラ65がドラム内周面8bから離間するようにアーム部材71Aに作用する引っ張りばね77Aとを備えている。アーム部材71Aは支持軸69Aを中心に揺動自在に構成されている。電磁ソレノイド73Aは駆動信号により可動ロッド73aが引き込まれるプルタイプであって、第1のインキ回収ローラ65を支持する側と反対側に位置するアーム部材71Aの端部に可動ロッド73aがピン結合されている。このため、第1のインキ回収ローラ65は、電磁ソレノイド73Aの非作動時は引っ張りばね77Aの作用によりドラム内周面8bから離間した位置を占め、電磁ソレノイド73Aが作動すると、引っ張りばね77Aの作用に抗して移動し、ドラム内周面8bに圧接する位置を占めるように構成されている。
軸69Aには、第1のインキ回収ローラ65と一体回転するように円形のラチェットギヤ78Aが設けられている。ラチェットギヤ78Aの近傍には、軸75Aでラチェットギヤ78Aと係脱する方向に揺動可能に支持されたラチェット爪74Aが配設されている。ラチェット爪74Aの基端には、引っ張りばね76Aの一端が係止されていて、この引っ張りばね76Aの作用によりラチェットギヤ77Aに向かって自由端が付勢されている。第1のインキ回収ローラ65は、ラチェットギヤ77Aとラチェット爪74Aと引っ張りばね76Aにより、第1の駆動手段70Aによる接離動作の度に、ローラ回転方向保持位置が変わるように構成されている。
第2の駆動手段70Bは、第2のインキ回収ローラ66を支持する軸69Bを、ブレーキ抵抗を持ってその一端で回転可能に保持するとともに、第2のインキ回収ローラ66をドラム外周面8aに対して接離する方向に支持するアーム部材71Bと、アーム部材71Bを作動するアーム駆動源となる電磁ソレノイド73Bと、第2のインキ回収ローラ66がドラム外周面8aから離間するようにアーム部材71Bに作用する引っ張りばね77Bとを備えている。アーム部材71Bは支持軸69Bを中心に揺動自在に構成されている。電磁ソレノイド73Bは駆動信号により可動ロッド73bが引き込まれるプルタイプであって、第2のインキ回収ローラ66を支持する側と反対側に位置するアーム部材71Bの端部に可動ロッド73bがピン結合されている。このため、第2のインキ回収ローラ66は、電磁ソレノイド73Bの非作動時は引っ張りばね77Bの作用によりドラム外周面8aから離間した位置を占め、電磁ソレノイド73Bが作動すると、引っ張りばね77Bの作用に抗して移動してドラム外周面8aに圧接する位置を占めるように構成されている。
軸69Bには、第2のインキ回収ローラ66と一体回転するように円形のラチェットギヤ78Bが設けられている。ラチェットギヤ78Bの近傍には、軸75Bでラチェットギヤ78Bと係脱する方向に揺動可能に支持されたラチェット爪74Bが配設されている。ラチェット爪74Bの基端には、引っ張りばね76Bの一端が係止されていて、この引っ張りばね76Bの作用によりラチェットギヤ77Bに向かって自由端が付勢されている。第2のインキ回収ローラ66は、ラチェットギヤ77Bとラチェット爪74Bと引っ張りばね76Bにより、第2の駆動手段70Bによる接離動作の度に、ローラ回転方向保持位置が変わるように構成されている。
図8に示す本形態に係る制御手段200Aは、図5に示す制御手段200に対して電磁ソレノイド73Aと電磁ソレノイド73Bが信号線を介して接続している点が追加構成となる。制御手段200Aの制御形態は、制御手段200による制御形態に対して、電磁ソレノイド73A,73Bの作動制御が追加されている以外は同一の形態となる。
図9に示すフローチャートを用いて制御手段200Aによるインキクリーニング処理を説明するが、ここでは主に電磁ソレノイド73A,73Bに関連する制御部分を中心に説明する。なお、図9に示すフローチャートは、図8に示すフローチャートのステップS15の後に、ステップS21〜ステップS23の3つのステップを追加したものであるので、ステップS1〜ステップS15までの重複説明は極力省略し、追加したステップS21〜ステップS23を中心に説明する。
制御手段200Aは、ステップS1において装着ユニットが乾燥定着向上型インキを用いる定着向上印刷用の印刷ドラムユニット101Bであり、ステップS2において最終印刷選択キー41がオン状態であると、ステップS3〜ステップS15の処理を実行する。そして、ステップS21において、第1のインキ回収ローラ65と第2のインキ回収ローラ66の印刷ドラム8に対する押圧動作を実行する。ここでは、電磁ソレノイド73A,73Bに駆動信号を入力してオン状態とする。すると、各ソレノイドの可動ロッド73a,73bがそれぞれソレノイド本体内に引き込まれることで、第1及び第2のインキ回収ローラ65,66がドラム内周面8bとドラム外周面8aにそれぞれ圧接される。このため、印刷ドラム8は、その内側と外側から第1及び第2のインキ回収ローラ65,66によって挟み込まれた状態で保持される。この状態でステップS23においてドラム駆動モータ48を駆動して印刷ドラム8をN回数回転動作させ、N回数の回転動作が終了するとステップS23において、インキ回収ローラ65,66の押圧状態を解除すべく、電磁ソレノイド73A,73Bをオフにしてこの処理を終える。
電磁ソレノイド73A,73Bがオフされると、アーム部材71A,71Bはそれぞれ印刷ドラム8から各インキ回収ローラ65,66を離間する方向に引っ張りばね77A,77Bの作用により揺動し、各インキ回収ローラ65,66を離間位置に保持する。また、ラチェット爪74A,74Bは軸75A,75Bで支持されて引っ張りばね76A、76Bでラチェットギヤ78A,78Bに付勢されているので、アーム部材71A,71Bの揺動動作によってラチェットギヤ78A,78Bが1歯分ずれた位置に移動するようになる。このため、第1及び第2のインキ吸収ローラ65,66は、その押圧動作(接離動作)の度に、ラチェットギヤ78A,78Bの歯数に応じて少しずつ断続回転することになり、その結果、常に新しい部分でドラム内周面8bとドラム外周面8aにそれぞれ付着しているインキを回収することになる。
このように、最終印刷選択キー41によりインキクリーニングモードが設定されている場合には、第1のインキ回収ローラ65をドラム内周面8bに、第2のインキ回収ローラ66をドラム外周面8aに接触させるように電磁ソレノイド73A,73Bを駆動して第1及び第2の駆動手段70A,70Bを作動させるので、印刷ドラム8に残存しているインキをその表裏両面から確実に第1のインキ回収ローラ65と第2のインキ回収ローラ66で回収することが可能になり、次の印刷時に印刷ドラム8の開口部の目詰まりが起こることをより防止でき、乾燥定着向上型インキを使用しても目詰まりにならずに常に正常な画像での印刷が可能になる。
また、第1の駆動手段70Aや第2の駆動手段70Bによる接離動作の度に、第1及び第2のインキ回収ローラ65,66の回転方向保持位置が変わるので、第1及び第2のインキ回収ローラ65,66は常に新しい部分で印刷ドラム8に接触することになり、インキの吸収による回収効果を時間と共に低下させることがなくなり、より安定して放置時のインキ乾燥による目詰まりを防止することができる。
本形態では、第1及び第2のインキ回収ローラ65,66と、その駆動手段70A,70Bを備え、印刷ドラム8の内側と外側の双方から残留インキを回収する構成としたが、第1のインキ回収ローラ65とその駆動手段70Aまたは第2のインキ回収ローラ66とその駆動手段70Bの少なくとも一方を備えた形態であってもよい。何れか一方を備える場合、ドラム外周面8aのインキは主に未製版孔版原紙5をドラム外周面8aに巻付けて回収するため、ドラム内周面8bからインキを回収する第1のインキ回収ローラ65と第1の駆動手段70Aを配備するのが好ましい。
本形態では、ステップS11でのインキ供給カット工程の後に実行されるステップS12からステップS15で行われるインキ除去動作の後に、ステップS21〜ステップS23に示す第1及び第2のインキ供給ローラ65,66によるインキ回収動作を実行するようにしているが、ステップS12からステップS15で行われるインキ除去動作を行わずに、ステップS11でのインキ供給カット工程の後にステップS21〜ステップS23に示す第1及び第2のインキ供給ローラ65,66によるインキ回収動作を実行するようにしてもよい。この場合には、インキを回収する量が多くなることが想定されるため、第1及び第2のインキ供給ローラ65,66の双方を用いたインキ回収動作を実行するのが望ましい。
本形態において、第1及び第2のインキ回収ローラ65,66をドラム内周面8bとドラム外周面8aに圧接させた状態で印刷ドラム8をN回数回転動作させるようにしたが、このときのN回数は、印刷ドラム8からインキを十分にできる回転数が望ましい。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態となるインキクリーニング処理について説明する。この形態は、図10に示すように、排版手段11によりドラム外周面8aから孔版原紙を剥離する場所の印刷ドラム8の内側に、ドラム内周面8bにエアーを吹き付けるエアー吐出手段80を配設するとともに、印刷ドラム8を挟んでエアー吐出手段80と対向する位置となる印刷ドラム8の外側に、ドラム外周面8aに接離可能に押さえローラ81と、この押さえローラ81を接離動作する回収駆動手段となる電磁ソレノイド82を配置し、最終印刷選択キー41によりインキクリーニングモードが設定されている場合には、エアー吐出手段80を作動させるとともに、押さえローラ81をドラム外周面8bに接触させるように回収駆動手段となる電磁ソレノイド86を作動させるものである。
エアー吐出手段80は、エアポンプ83と、エアポンプ83の吐出側に接続された空気噴射部材84とを備えている。空気噴射部材84は、印刷ドラム8の母線方向に一例に並んで配置されていて、エアポンプ83から送り出された高圧の空気をドラム内周面8bに向かって噴射するように構成されている。
押さえローラ81は、アーム85の一端に回転自在に支持されている。アーム85は、押さえローラ81を破線で示すドラム外周面8aから離間する位置と、実線で示すドラム外周面8aに圧接する位置とに移動可能に軸86で揺動自在に支持されている。アーム85は、押さえローラ81が破線で示す離間位置を占めるように、引っ張りばね87の作用を受けている。電磁ソレノイド82は駆動信号により可動ロッド82aが引き込まれるプルタイプであって、押さえローラ81と反対側に位置するアーム85の端部に可動ロッド82aがピン結合されている。このため、押さえローラ81は、電磁ソレノイド82の非作動時は引っ張りばね87の作用によりドラム外周面8aから離間した位置を占め、電磁ソレノイド82が作動すると、引っ張りばね87の作用に抗して移動してドラム外周面8aに圧接する位置を占めるように構成されている。押さえローラ81はアーム85に支持された状態において、排版搬送ローラ上12と排版搬送ローラ下13よりも原紙搬送方向の上流側に配置されていて、原紙剥離位置に配置されることになる。
図11に示す本形態に係る制御手段200Bは、図6に示す制御手段200に対して電磁ソレノイド82とエフポンプ83とが信号線を介して接続している点が追加構成となる。制御手段200Bの制御形態は、制御手段200による制御形態に対して、電磁ソレノイド82とエフポンプ83の作動制御が追加されている以外は同一の形態となる。
図12に示すフローチャートを用いて制御手段200Bによるインキクリーニング処理を説明するが、ここでは主に電磁ソレノイド82とエアポンプ83に関連する制御部分を中心に説明する。電磁ソレノイド82とエフポンプ83の作動は、図12のステップS15において実行される。
制御手段200Bは、ステップS1において装着ユニットが乾燥定着向上型インキを用いる定着向上印刷用の印刷ドラムユニット101Bであり、ステップS2において最終印刷選択キー41がオン状態であると、ステップS3〜ステップS15の処理を実行する。そして、ステップS15において、エアポンプ83を駆動して高圧の空気を空気噴射部材84からドラム内周面8bに向かって噴射し、電磁ソレノイド82に駆動信号を入力すると、押さえローラ81が引っ張りばね87の作用に抗して移動してドラム外周面8aに向かって移動する。
この動作と並行して排版搬送ローラ上12と排版搬送ローラ下13が駆動して両ローラで挟んでインキが染み込んだ未製版孔版原紙5が剥離搬送されるが、未製版孔版原紙5は2つのローラによるニップ部よりも上流の押さえローラ81によりドラム外周面8aに押し付けられ、内側から高圧の空気が噴射される。このため、印刷ドラム8の開口部内に溜まっていてドラム外周面8a側に吹き飛ばされ、排版搬送ローラ上12と排版搬送ローラ下13によって剥離される未製版孔版原紙5に付着して回収されることとなる。
このように、インキクリーニングモードが設定されている場合には、エアー吐出手段80が作動するとともに、押さえローラ81がドラム外周面8aに接触するように電磁ソレノイド82が作動するので、印刷ドラム8の多数孔内部に残存したインキがエアーで押し出されて未製版孔版原紙5に付着して排出されることになることで、印刷ドラム8に付着して残存しているインキを確実に回収することが可能になり、次の印刷時に印刷ドラムの開口部の目詰まりが起こることをより防止でき、乾燥定着向上型インキを使用しても目詰まりにならずに常に正常な画像での印刷が可能になる。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態について説明する。本形態は図13に示すように、操作パネル32に印刷ドラム8にインキを補充するインキ補充モードを設定するインキ補充モード設定手段となる最初印刷選択キー46と、最初印刷選択キー46が操作されてインキ補充モード設定されているときに点灯する表示手段となるLEDランプ47が設けられている。
図13に示す本形態に係る制御手段200Cは、図6に示す制御手段200に対して、最初印刷選択キー46とLEDランプ47が信号線を介して接続している点が追加構成となる。制御手段200Cに制御形態は、制御手段200による制御形態に対して、最初印刷選択キー46によりインキ補充モードが設定されている場合、インキクリーニングモードが設定されてインキクリーニング処理の実行後に、製版手段4により製版されていない未製版孔版原紙5をドラム外周面8aに巻装し、この未製版孔版原紙5が巻装された印刷ドラム8を回転させながらプレスローラ28Aが未製版孔版原紙5を介してドラム外周面8aを押圧するように印刷駆動部45を作動させ、未製版孔版原紙5を剥離排版するように排版駆動部11Aを作動させるものである。
図14に示すフローチャートを用いて制御手段200Cによるインキクリーニング処理を説明するが、ここでは主に最初印刷選択キー46によりインキ補充モードが設定された場合の制御部分を中心に説明する。なお、図14に示すフローチャートは、図6に示すフローチャートに対してインキ補充モードの判定と、インキ補充モード設定時の動作ステップを追加してものであるので、図6に示すフローチャートと同様のステップ内容については、図6と同一の符号を付し、重複説明は省略するものとする。
図14において、インキ補充モードの判定は、ステップS1とステップS2の間のステップS30で行われる。このステップS30では、最初印刷選択キー46が操作されてオン状態であるか否かを判定し、オン状態でなければステップS3に進んで最終印刷選択キー41によるインキクリーニングモードの設定の有無が判断される。
ステップS30において、最初印刷選択キー46がオンされてインキ補充モードが設定されている場合には、図15に示すステップS31に進んでインキクリーニングモードの実行履歴が判定される。この実行履歴は、最終印刷選択キー41が操作されたときに、図示しないカウンタで、そのオン回数をカウントすることで判定することができる。ここで、インキクリーニングモードの実行履歴がない場合には、印刷ドラム8上にインキが保持されているものとしてステップS2に戻る。
一方、インキクリーニングモードの実行履歴がある場合には、ステップS32に進み、製版スタートキー35がオン状態となるとステップS33に進む。ステップS33では、製版手段4により製版されていない未製版孔版原紙5をドラム外周面8aに巻装すべく、原紙搬送部43Bを駆動して、給版ローラ対401によって未製版孔版原紙5を給版搬送して、ドラム外周面8aに巻付ける動作を実行する。そしてステップS34において、この未製版孔版原紙5が巻装された印刷ドラム8を回転すべくドラム駆動モータ48を駆動するとともに、プレスローラ28Aが未製版孔版原紙5を介してドラム外周面8aを押圧するように印刷駆動部45を作動し、この状態で印刷ドラム8をN回数だけ回転する。この印刷ドラム8の回転とプレスローラ28Aの接離動作により、印刷ドラム8の内側からドラム開口部に充填されることになる。これにより印刷前のインキ充填が完了する。未製版孔版原紙5を巻き付けるのは、インキを回収するためではなく、インキクリーニング処理によりインキが取り除かれた印刷ドラム8に対してインキを補充する際に、補充されてドラム外周面8aから滲み出たインキがプレスローラ28Aに付着するのを防止するためである。ここでのN回数とは、インキ供給手段50からのインキがドラム内周面8bを経てドラム開口部の全域に満遍なくインキが行き渡る回数である。
ステップS35では、この未製版孔版原紙5を剥離排版するように排版駆動部11Aの駆動により排版手段11を作動して未製版孔版原紙5をドラム外周面8aから排版剥離して排版ボックス15への搬送と圧縮板14による収納排版動作を実行する。ステップS36では、既に十分なインキが印刷ドラム8に保持されているので、この十分なインキを備えた印刷ドラム8を用いて通常の印刷処理動作を実行する。
このように、インキクリーニング処理の実行後の最初の印刷の場合に、製版手段4により製版されていない未製版孔版原紙5をドラム外周面8aに巻装し、この印刷ドラム8を回転させながらプレスローラ28Aを未製版孔版原紙5に押圧動作させた後、未製版孔版原紙5を剥離排版するので、インキクリーニング処理で回収して残存インキが極小化された場合の、再使用印刷開始時、例えば、最後の印刷終了後の次に孔版印刷装置を使うのが翌日以降であるといった場合には、プレスローラ28Aによる印圧により印刷ドラム8に十分なインキ量を保持させることが可能となり、インキクリーニング処理後の再印刷時の画像の立ち上がり性が向上し、インキ不足によるかすれ印刷が低減されて、無駄な印刷用紙Pの低減、印刷時間の短縮を図ることができる。
本形態では、図6のステップS1とステップS2の間に、ステップS30を行う例で説明したが、ステップS30としては、図9、図12に示すフローチャートにおいても同様に、ステップS1とステップS2の間に、ステップS30を行うようにすることで、本形態と同様の作用効果を得ることができる。