JP2009062656A - クレープ用離型剤、紙の製造方法及びクレープ紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】 シートのヤンキードライヤーへの極度な接着を抑え、クレーピングの操業を改善することができ、クレープ用離型剤の保存安定性と水への分散性にも優れるクレープ用離型剤を提供することにある。また、従来の離型剤に比べ引火する危険性が低く、使用、保管および運搬時の安全性に優れるクレープ用離型剤を提供することにある。
【解決手段】 アルキル基又はアルケニル基を有する4級アンモニウム塩(A成分)と水を含有することを特徴とするクレープ用離型剤。また、アルコール類とアルキレンオキシドとリン酸化剤を反応させて得られるリン酸エステル化合物(B成分)と水を含有することを特徴とするクレープ用離型剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、クレープ用離型剤、紙の製造方法及びクレープ紙に関する。
トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ペーパータオル等を製造する際、製品に柔軟性や嵩高さを出すため、繊維ウェブはクレープを付与する工程(クレーピング)にかけられる。クレーピングは、ヤンキードライヤーで知られる回転シリンダー式抄紙乾燥機に湿った繊維ウェブを接着させ、乾燥後、ドライヤー表面から繊維ウェブをドクターブレードで掻き取り、繊維ウェブに非常に細かいシワをよらせる工程からなる。上記クレーピングの工程において、湿った繊維ウェブがヤンキードライヤーに強く接着し過ぎると、ドクターブレードで繊維ウェブを剥ぎ取る際に、繊維を傷めてシートの強度の低下やシートに小穴(ピンホール)ができるなど最終製品の品質低下を招き、さらにはクレーピング工程においてシートが切れて操業効率を著しく悪化する。
クレープ用離型剤(剥離剤)は通常、クレープ用接着剤(コーティング剤)とともにヤンキードライヤー表面にスプレーされて使用する。クレープ用離型剤をヤンキードライヤーに塗布することで、繊維ウェブのヤンキードライヤーへの過度の接着を抑え、クレーピングの操業を改善する。
紙のクレープ用離型剤(剥離剤)としては、油類を主成分としているものの、クレープ塗工液を調製する際に水媒体への分散が必要であることから、油類を分散、乳化するために種々の乳化剤を混合したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。またクレープ用接着剤と相溶性の良いエチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類をクレープ用離型剤として使用することも知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし近年、抄紙マシンの高速化が進み、より効率よくクレーピングを実施するため、従来のクレープ用離型剤よりも水媒体への分散性が速く、且つ離型効果の強いクレープ用離型剤が求められている。さらに従来の離型剤は引火する危険性があり、使用、保管および運搬時の安全性に問題があった。
トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ペーパータオル等を製造する際、製品に柔軟性を付与するための方法として、アルキル基又はアルケニル基を有する4級アンモニウム塩(A成分)や、アルコール類とアルキレンオキシドとリン酸化剤を反応させて得られるリン酸エステル化合物(B成分)を繊維ウェブの柔軟剤として、パルプスラリーに添加(内添)、或いは原紙表面に塗工(外添)する方法が知られている(例えば、特許文献3〜5参照)。しかし、これらの柔軟剤をクレープ用離型剤としてヤンキードライヤーに塗布するような記述は見当たらない。なお、特許文献3でいう「“剥離剤”とは、ティッシュペーパの柔軟性を高める添加剤」、すなわち、柔軟剤であり、クレープ用離型剤とはその目的とする作用及び効果の点から異なる。
特開平11−512498号(9頁) 特開平9−41297号(7頁) 特許第3793572号(9頁) 特開2002−348796号(6頁) 特開2004−84112号(7頁)
本発明の課題は、繊維ウェブのヤンキードライヤーへの過度の接着を抑えて、クレーピングの操業を改善することができ、クレープ用離型剤の保存安定性と水への分散性にも優れるクレープ用離型剤を提供することにある。また、従来の離型剤に比べ引火する危険性が低く、使用、保管および運搬時の安全性に優れるクレープ用離型剤を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を用いることにより、水への分散性と離型効果に優れたクレープ用離型剤を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)アルキル基又はアルケニル基を有する4級アンモニウム塩(A成分)と水を含有するクレープ用離型剤、
(2)アルコール類とアルキレンオキシドとリン酸化剤を反応させて得られるリン酸エステル化合物(B成分)と水を含有するクレープ用離型剤、
(3)前記(1)のA成分が下記一般式(1)で表される化合物又はイミダゾリン環を有する化合物であるクレープ用離型剤、
Figure 2009062656
(但し、式中、Rは炭素数6〜24のアルキル基又は炭素数6〜24のアルケニル基を示し、RとRは(CHCHO)(CHCH(CH)O)H、炭素数1〜24のアルキル基又は炭素数2〜24のアルケニル基から選ばれる1種を示し、RとRとは同一又は相違していてもよく、Xは陰イオンであり、前記mとnとの合計は1〜60である。なおm及びnは平均付加モル数である。)
(4)A成分が、炭素数12〜24のアルキル基あるいはアルケニル基を有するトリメチルモノアルキルアンモニウムハライド、トリメチルモノアルケニルアンモニウムハライド、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド、及びジメチルジアルケニルアンモニウムハライドから選ばれる少なくとも1種である前記(1)又は(3)のクレープ用離型剤、
(5)A成分又はB成分と、アルキレンオキサイド付加物のノニオン性界面活性剤を含有する前記(1)〜(4)のクレープ用離型剤、
(6)水以外の成分の濃度が1〜79質量%の水溶液である前記(1)〜(5)のクレープ用離型剤、
(7)前記クレープ用離型剤の光透過率が、光の波長600nmで50%〜100%である前記(1)〜(6)のクレープ用離型剤、
(8)クリーブランド開放式引火点測定器で、引火点が認められない前記(1)〜(7)のクレープ用離型剤、
(9)前記(1)〜(8)のクレープ用離型剤をドライヤーの表面に繊維ウェブの面積に対して、0.01〜500mg/mになるように塗布する紙の製造方法、
(10)前記(9)の方法によって製造されたクレープ紙
である。
本発明のクレープ用離型剤は、公知のクレープ用離型剤に比べ、繊維ウェブのヤンキードライヤーへの過度の接着を抑えて、クレーピングの操業を改善することができ、クレープ用離型剤の保存安定性と水への分散性にも優れている。さらに従来の離型剤に比べ引火する危険性が低く、使用、保管および運搬時の安全性に優れている。
本発明に係るクレープ用離型剤は、アルキル基若しくはアルケニル基を有する4級アンモニウム塩(A成分)と水を含有するか、又は、アルコール類とアルキレンオキシドとリン酸化剤を反応させて得られるリン酸エステル化合物(B成分)と水を含有する。またこれらに加えてアルキレンオキサイド付加物のノニオン性界面活性剤を含有することにより、クレープ用離型剤の保存安定性が向上するため、好ましい。
これらは通常、前記A成分及び/又はB成分が1〜79質量%、好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは1〜40質量%であり、水は21〜99質量%、好ましくは50〜99質量%、さらに好ましくは60〜99質量%である。これらに加えて、アルキレンオキサイド付加物のノニオン性界面活性剤を加える場合は、A成分及び/又はB成分に対し、0.01〜10倍、好ましくは0.1〜5倍の割合で使用することが好ましい。
本発明に使用されるアルキル基又はアルケニル基を有する4級アンモニウム塩(A成分)としては、分子中に4級アンモニウム塩を有しており、かつ、4級アンモニウム塩の側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有していれば良い。これらの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を併用することもできる。A成分の中でも下記一般式(1)で表される化合物及びイミダゾリン環を有する化合物は、優れた離型効果を発揮するクレープ用離型剤が得られ易く好ましい。
Figure 2009062656
(但し、式中、Rは炭素数6〜24のアルキル基又は炭素数6〜24のアルケニル基を示し、RとRは(CHCHO)(CHCH(CH)O)H、炭素数1〜24のアルキル基又は炭素数2〜24のアルケニル基から選ばれる1種を示し、RとRとは同一又は相違していてもよく、Xは陰イオンであり、前記mとnとの合計は1〜60である。なおm及びnは平均付加モル数である。)
上記A成分である一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩としては、具体的にはトリメチルモノヘキシルアンモニウムクロライド、トリメチルモノオクチルアンモニウムクロライド、トリメチルモノデシルアンモニウムクロライド、トリメチルモノラウリルアンモニウムクロライド、トリメチルモノミリスチルアンモニウムクロライド、トリメチルモノセチルアンモニウムクロライド、トリメチルモノステアリルアンモニウムクロライド、トリメチルモノオレイルアンモニウムクロライド、トリメチルモノベヘニルアンモニウムクロライドなどの炭素数6〜24のアルキル基を有するトリメチルモノアルキルアンモニウムハライドあるいは炭素数6〜24のアルケニル基を有するトリメチルモノアルケニルアンモニウムハライドや、ジメチルジヘキシルアンモニウムクロライド、ジメチルジオクチルアンモニウムクロライド、ジメチルジデシルアンモニウムクロライド、ジメチルジラウリルアンモニウムクロライド、ジメチルジミリスチルアンモニウムクロライド、ジメチルジセチルアンモニウムクロライド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロライド、ジメチルジベヘニルアンモニウムクロライドなどの炭素数6〜24のアルキル基を有するジメチルジアルキルアンモニウムハライドあるいは炭素数6〜24のアルケニル基を有するジメチルジアルケニルアンモニウムハライドや、ポリアルキレンオキシモノメチルジラウリルアンモニウムクロライド、ポリアルキレンオキシモノメチルジミリスチルアンモニウムクロライド、ポリアルキレンオキシモノメチルジセチルアンモニウムクロライド、ポリアルキレンオキシモノメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ポリアルキレンオキシモノメチルジオレイルアンモニウムクロライドなどの炭素数6〜24のアルキル基を有するポリアルキレンオキシモノメチルジアルキルアンモニウムハライドあるいは炭素数6〜24のアルケニル基を有するポリアルキレンオキシモノメチルジアルケニルアンモニウムハライドや、ビス(ポリアルキレンオキシ)モノメチルモノラウリルアンモニウムクロライド、ビス(ポリアルキレンオキシ)モノメチルモノミリスチルアンモニウムクロライド、ビス(ポリアルキレンオキシ)モノメチルモノセチルアンモニウムクロライド、ビス(ポリアルキレンオキシ)モノメチルモノステアリルアンモニウムクロライド、ビス(ポリアルキレンオキシ)モノメチルモノオレイルアンモニウムクロライドなどの炭素数6〜24のアルキル基を有するビス(ポリアルキレンオキシ)モノメチルモノアルキルアンモニウムハライドあるいは炭素数6〜24のアルケニル基を有するビス(ポリアルキレンオキシ)モノメチルモノアルケニルアンモニウムハライドが挙げられる。
これらの中でも、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩のRが炭素数12〜24のアルキル基又は炭素数12〜24のアルケニル基で示され、Rがメチル基、炭素数12〜24のアルキル基又は炭素数12〜24のアルケニル基で示され、Rがメチル基で示される構造を有するトリメチルモノアルキルアンモニウムハライド、トリメチルモノアルケニルアンモニウムハライド、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド、ジメチルジアルケニルアンモニウムハライドから選ばれる1種の化合物を含むことがクレープ用離型剤としての離型効果に優れるため好ましい。特にトリメチルモノラウリルアンモニウムクロライド、トリメチルモノミリスチルアンモニウムクロライド、トリメチルモノセチルアンモニウムクロライド、トリメチルモノステアリルアンモニウムクロライド、トリメチルモノオレイルアンモニウムクロライド、トリメチルモノベヘニルアンモニウムクロライド、ジメチルジラウリルアンモニウムクロライド、ジメチルジミリスチルアンモニウムクロライド、ジメチルジセチルアンモニウムクロライド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロライド、ジメチルジベヘニルアンモニウムクロライドが好ましい。
上記A成分であるイミダゾリン環を有する化合物としては、分子中にイミダゾリン環を有するA成分であれば良く、炭素数6〜24のアルキル基あるいはアルケニル基を有しているものが好ましい。中でも下記一般式(2)で表される化合物を使用すると離型効果に優れたクレープ用離型剤が得られ易く好ましい。中でもRがラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基が好ましく、さらにRがメチル基又はエチル基が好ましい。具体的には、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−オレイルイミダゾリンエチル硫酸塩、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−オレイルイミダゾリンクロライド、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ラウリルイミダゾリンエチル硫酸塩などが挙げられる。
Figure 2009062656
(但し、式中、Rは炭素数6〜24のアルキル基又は炭素数6〜24のアルケニル基を、Rは炭素数1〜24のアルキル基又は炭素数2〜24のアルケニル基を示し、Xは陰イオンである。)
上記以外のA成分としては、ジ塩化−N,N,N,N’,N’−ペンタメチル−N’−牛脂アルキル−1,3−プロパンジアンモニウムなどのアルキルジアンモニウム塩や、セチルベンジルジメチルアンモニウムクロライドなどのベンジル基を有するアンモニウム塩なども挙げられる。
本発明に使用されるアルコール類とアルキレンオキシドとリン酸化剤を反応させて得られるリン酸エステル化合物(B成分)としては、アルコール類のアルキレンオキシド付加体とリン酸とのエステル、アルコール類のリン酸エステルのアルキレンオキシド付加体が挙げられる。中でもアルコール類のアルキレンオキシド付加体とリン酸とのエステルは、離型効果に優れるので好ましい。
前記アルコール類とは、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環式アルコール等の1種又は2種以上が用いられる。なかでも炭素数8〜24の脂肪族飽和アルコール、脂肪族不飽和アルコールの1種又は2種以上が好ましく、特に離型効果に優れたクレープ用離型剤の得られやすい炭素数12〜18の脂肪族飽和アルコール、脂肪族不飽和アルコールの1種又は2種以上が好ましい。2種以上の異なるものを混合して使用することができる。
前記アルキレンオキシドとは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられるが、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。2種以上の異なるものを混合して使用することができる。異なる2種以上のアルキレンオキシドを付加させる場合、アルキレンオキシドはランダムに付加していても、ブロック状に付加していても良い。アルキレンオキシドの付加重合度は1〜15程度が好ましい。
前記リン酸化剤とは、五酸化燐、塩化ホスホリル等が挙げられる。2種以上の異なるものを混合して使用することができる。
上記B成分であるアルコール類のアルキレンオキシド付加体とリン酸とのエステルは、アルコール類のアルキレンオキシド付加体にリン酸化剤を反応させて得られるリン酸エステルを主成分とするものであっても良く、またリン酸残基が残っている場合はリン酸エステルのアルカリ中和物を主成分とするものであっても良く、また両者を主成分とするものであっても良い。このリン酸エステルは、通常、モノエステル、ジエステル、トリエステルの混合物として得られ、アルコールのアルキレンオキシド付加体とリン酸化剤との反応生成物中にトリエステルが混在していても、そのままアルカリと反応させることができる。前記アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アンモニア等を挙げることができる。
またアルコール類のアルキレンオキシド付加体とリン酸化剤との反応により得られるリン酸エステルがジエステル及び/又はトリエステルの場合、リン酸とエステル化して結合しているアルコール類のアルキレンオキシド付加体の残基部分は、アルコール残基の種類、アルキレンオキシドの種類、重合度等が同一のものであっても、異なるものであっても良い。
上記B成分であるアルコール類のリン酸エステルのアルキレンオキシド付加体として、アルコール類にリン酸化剤を作用させて得られるリン酸エステルには、モノエステル、ジエステル、トリエステルがあり、アルコール類とリン酸化剤との反応比率、反応時間等によって、反応生成物中のモノエステル、ジエステル、トリエステルの含有割合を調整することができる。通常、アルコール類とリン酸化剤とを反応させて得られる反応生成物は、モノエステル、ジエステル、トリエステルの混合物として得られるが、更にアルキレンオキシドと反応させることができるのは、モノエステルとジエステルである。しかしながら反応生成物中にトリエステルが存在していても、トリエステルを分離除去することなくアルキレンオキシドと反応させることができ、処理剤中にトリエステルが含有されていても何ら支障はない。また、ジエステルにおいて、リン酸とエステル化して結合しているアルコール類の残基は同一のものであっても、異なるものであっても良い。
本発明のクレープ用離型剤は、上記アルコール類のリン酸エステルのアルキレンオキシド付加体を主成分とするものであっても良く、またリン酸残基が残っている場合はリン酸エステルのアルキレンオキシド付加体のアルカリ中和物を主成分とするものであっても良く、また両者を主成分とするものであっても良い。前記アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アンモニア等が挙げられる。
本発明に使用されるアルキレンオキシド付加物のノニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が6〜24である脂肪酸アルキレンオキシドソルビタンエステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコール、ポリオキシアルキレン脂肪族メルカプタン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテル等が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、ノニオン性界面活性剤1分子当たり1〜20モル付加していることが好ましく、またアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、中でもエチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。
アルキレンオキサイド付加物のノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルエーテル、ポリオキシエチレンβ−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレングリセリルイソステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのラウリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのミリスチン酸ジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのセチル酸ジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのステアリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのオレイン酸ジエステル、ポリオキシエチレンオレイルアミド等が挙げられる。
本発明のクレープ用離型剤は、前記(A)成分と水、または前記(B)成分と水にさらにアルキレンオキサイド付加物のノニオン性界面活性剤などを加えたものを攪拌混合して得られる。攪拌混合する温度および時間は、配合物を均一に混合できればよく、特に制限されないが、通常5〜90℃および10分〜5時間である。但し脱溶剤工程などで100℃以上に温度を上昇させる場合は、水を投入する前が好ましい。また、攪拌混合設備についても特に制限はないが、通常羽根型攪拌機やラインミキサーを使用することができる。また攪拌混合だけでは分散が困難な場合は、必要に応じて転相乳化法、界面活性剤又は無機塩類を添加した後の転相乳化法、また機械的な方法により分散する機械的分散方法を組み合わせることが好ましい。これらは単独でも二種以上の方法を併用しても差し支えない。機械的分散方法としては、ホモミキサー、高圧吐出型ホモジナイザー、高剪断型回転式乳化分散機、超音波乳化機等の各種公知の乳化機により均一に分散させる方法が挙げられる。
上記方法により得られたクレープ用離型剤の粘度は、水への分散性及びヤンキードライヤー上での均一な皮膜形成をし易くするため、製紙工程で使用される際の形態として、通常、5〜1000mPa・s、さらには5〜500mPa・s(B型粘度計を用いて25℃にて測定)の範囲にあることが好ましい。
また上記方法により得られたクレープ用離型剤が製紙工程で使用される際の形態として透明度が高いほど、クレープ用離型剤の保存安定性の良好なものが得られ易く好ましい。クレープ用離型剤の保存安定性が悪いと溶液が多層分離するなどの現象が起こる。クレープ用離型剤の透明度は特定の光の波長でクレープ用離型剤を透過する光のパーセント透過率と定義され、本発明では、光透過率(以下、単に「透過率」と略することがある)と称し、それによって定量することができる。本発明の光透過率は、600nmでのパーセント透過率(%)を示しており、クレープ用離型剤の光透過率が、50〜100%、さらには80〜100%、特に90〜100%の範囲にあることが好ましい。
また、本発明のクレープ用離型剤は、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂やポリアミドポリアミンポリ尿素エピクロロヒドリン樹脂などのクレープ用接着剤(コーティング剤)、さらにはリン酸塩などの無機塩やプロピレングリコールなどの多価アルコールなどのクレープ助剤(モディファイヤー)などとともに使用することにより、例えば、トイレットペーパー、ティシュペーパー等の家庭紙の製造工程で、すなわちヤンキードライヤー表面に接着した紙匹をヤンキードライヤー表面からドクターブレードで容易に剥離させることで優れたクレープを付与することができる。クレープ用離型剤としての使用方法としては、ヤンキードライヤーの前方で湿紙にスプレーする方法、ヤンキードライヤーの表面に直接スプレーする方法、及びこれら前記方法を組み合わせて行う方法がある。ヤンキードライヤーの表面に直接スプレーした方が離型剤としての効果が得られやすく、好ましい。
通常、離型剤は、必要に応じてクレープ用接着剤やクレープ用接着助剤とともに使用され、これらを同時または順次水に希釈混合した後、ドライヤー表面あるいは湿紙ウェブに対してスプレーされる。これらの希釈の順番は特に限定されないが、クレープ用接着剤、離型剤、次いでクレープ用接着助剤の順に希釈混合すると均一な分散液が得られやすく好ましい。
クレープ用離型剤をスプレーする場合は、繊維ウェブの面積に対して、離型剤が0.01〜500mg/m、特に0.1〜300mg/mとなるようにドライヤー表面あるいは湿紙ウェブに対して使用することが好ましい。特にドライヤー上に効率的にクレープ用接着剤、離型剤、クレープ用接着助剤によるコーティング皮膜が形成し易くなるためドライヤー表面に塗布することが好ましい。
本発明のクレープ用離型剤を用いて製造される紙としては、特に限定されないが、ティシュペーパー、トイレットペーパー、タオルペーパー、ナプキン原紙のような衛生用紙等のクレープ処理が必要となる紙が好ましい。
前記紙のパルプ原料としては、クラフトパルプ又はサルファイトパルプなどの晒または未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプ又はサーモメカニカルパルプなどの晒または未晒高収率パルプ、及び新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙又は脱墨古紙などの古紙パルプ等を挙げることができる。また、上記パルプ原料とポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物を含有しても良い。
また、前記原料パルプからなるパルプスラリーに、填料、硫酸バン土、サイズ剤、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、柔軟剤(風合向上剤)、保湿剤、歩留り向上剤、及び濾水性向上剤、染料などの添加物も、各々の紙種に要求される物性を発現するために、必要に応じて添加(内添)しても良い。更にスプレー法等による表面塗工によって、澱粉、ポリビニルアルコール、アクリルアミド系ポリマー等の表面紙力増強剤、表面サイズ剤、染料、保湿剤、柔軟剤等を必要に応じて繊維ウェブに塗布(外添)しても良い。
填料としては、クレー、タルク、及び炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。サイズ剤としては、ステアリン酸ナトリウムのごとき脂肪酸石鹸のサイズ剤、ロジン、強化ロジン及びロジンエステルの水性エマルション、アルケニル無水コハク酸の水性エマルション、2−オキセタノンの水性エマルション、パラフィンワックスの水性エマルション、カルボン酸と多価アミンとの反応により得られるカチオン性サイズ剤及び脂肪族オキシ酸と脂肪族アミン又は脂肪族アルコールとの反応物の水性エマルション、並びにアニオン性及びカチオン性スチレン系サイズ剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。乾燥紙力向上剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、及び両性澱粉等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用しても良い。湿潤紙力向上剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、及び尿素・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、アニオン性ポリアクリルアミドを併用しても良い。保湿剤としては、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール類が挙げられる。歩留り向上剤としては、アニオン性、カチオン性、又は両性の高分子量ポリアクリルアミドを使用したり、シリカゾルとカチオン化澱粉を併用したり、或いはベントナイトとカチオン性高分子量ポリアクリルアミドを併用したりすることができる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。濾水性向上剤としては、ポリエチレンイミン、カチオン性又は両性又はアニオン性ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
以下、本発明の実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各例中、%は特記しない限りすべて質量%である。またクレープ用離型剤の有効分とは、水以外の成分を指す。
実施例1
撹拌機を備えた200mLのフラスコに、A成分としてヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド5g、水95gを60℃1時間混合攪拌することにより、クレープ用離型剤Aを得た。得られたクレープ用離型剤(I)の粘度(25℃)は8mPa・s、透過率は100%であった。
実施例2〜17、比較例1〜13
表1のA成分又はB成分、その他の化合物、水、オイルの種類と量を用いる以外は実施例1と同様にして実施例用のクレープ用離型剤(II)〜(XVII)(実施例2〜17)及び比較例用のクレープ用離型剤(i)〜(xiii)(比較例1〜13)を得た。また、得られたクレープ用離型剤(II)〜(XVII)(実施例2〜17)及びクレープ用離型剤(i)〜(xiii)(比較例1〜13)の粘度(25℃)、透過率の測定結果を表1及び表2に示す。なお、クレープ用離型剤(x)については、得られたクレープ用離型剤が不均一であったため、透過率、粘度、剥離効果の評価試験、分散性の評価試験、引火点についてデータを得ることができなかった。またクレープ用離型剤(xii)、(xiii)については、得られたクレープ用離型剤が半固体状のものであったため、透過率、粘度を測定することができなかった。
実施例用のクレープ用離型剤(I)〜(XVII)(実施例1〜17)及び比較例用のクレープ用離型剤(i)〜(xiii)(比較例1〜13)を40℃で1週間静置したときの安定性を評価した。評価した結果を表1、2にまとめる。評価は、クレープ用離型剤が、40℃で1週間静置したときに目視で多層分離していない場合を○、多層分離したものと認められる場合を×と評価した。
<剥離効果の評価試験>
クレープ剤CA6018(星光PMC株式会社製・クレープ用接着剤)を固形分として1.0g/m、クレープ用離型剤(I)〜(XVII)(実施例1〜17)及び比較例用のクレープ用離型剤(i)〜(xiii)(比較例1〜13)を有効分0.25g/mとなるように120℃に加熱したプレートに塗布し、250gf/cmとなるように、湿紙を押し付けた。プレートと紙を引き剥がす際に必要な荷重を接着力として評価した。評価した結果を表1、2にまとめる。Blank(CA6018のみ使用)の場合の接着力に対して、各種クレープ用離型剤を使用したときの接着力が60%未満のときを◎、60%以上70%未満を○、70%以上80%未満を△、80%以上のときを×とした。接着力が小さいほど離型効果が良いことを示している。
<分散性の評価試験>
100mLビーカーに30℃の水を50mL加えて、回転数300rpm(回転子30×直径7mm)で水を攪拌しながらクレープ用離型剤(I)〜(XVII)(実施例1〜17)及び比較例用のクレープ用離型剤(i)〜(xiii)(比較例1〜13)をそれぞれ各々のクレープ用離型剤400μL加えて分散状態を目視で評価した。評価した結果を表1、2にまとめる。サンプルを加えてから30秒以内に30℃の温水に均一に溶解又はエマルションとして分散した場合は○、分散せずに不均一な状態を×と評価した。
<引火点の測定>
日本工業規格JIS K 2265−4に従ってクリーブランド開放式引火点測定器で測定した。測定した結果を表1、2にまとめる。引火点があったものを「有り」と記載し、測定不能であったものを「無し」と記載した。なお、予期引火点以下55℃まで毎分14〜17℃の割合で、予期引火点以下28℃から引火点に達するまで毎分5.5±0.5℃の割合で温度を上昇できず、試験サンプルが試料カップより溢れでて測定不能となった場合は引火点“無し”とした。
Figure 2009062656
表中の略号の説明
ヤシアルキル基は、アルキル基が炭素数6〜18のアルキル基又は、アルケニル基の混合物で、主にラウリル基を含有している。 大豆アルキル基は、アルキル基が炭素数16〜18のアルキル基又は、アルケニル基の混合物で、主にオレイル基や9,12−オクタデカジエノイル基を含有している。
鉱物油は、密度0.85g/cm、動粘度(40℃)15mm/sのものを使用した。
「−」は該当するものを使用しなかった又は測定できなかったことを示す。
Figure 2009062656
表中の略号の説明
「−」は該当するものを使用しなかった又は測定できなかったことを示す。
表1、2に示す結果から明らかな通り、本発明のクレープ用離型剤である実施例1〜13を用いたものは、比較例1〜13に比べて、剥離効果に優れた効果を示し、また保存安定性、水への分散性が良好なことから実機マシンにおいてクレーピング用離型剤として利用した場合に優れた効果が発揮されることが予想される。また、本発明のクレープ用離型剤は引火する危険性が低いため、離型剤の使用、保管および運搬などに伴う制限が著しく軽減できるというメリットがあり、実用上非常に有用である。

Claims (10)

  1. アルキル基又はアルケニル基を有する4級アンモニウム塩(A成分)と水を含有することを特徴とするクレープ用離型剤。
  2. アルコール類とアルキレンオキシドとリン酸化剤を反応させて得られるリン酸エステル化合物(B成分)と水を含有することを特徴とするクレープ用離型剤。
  3. 前記請求項1に記載のA成分が下記一般式(1)で表される化合物又はイミダゾリン環を有する化合物であることを特徴とするクレープ用離型剤。
    Figure 2009062656
    (但し、式中、Rは炭素数6〜24のアルキル基又は炭素数6〜24のアルケニル基を示し、RとRは(CHCHO)(CHCH(CH)O)H、炭素数1〜24のアルキル基又は炭素数2〜24のアルケニル基から選ばれる1種を示し、RとRとは同一又は相違していてもよく、Xは陰イオンであり、前記mとnとの合計は1〜60である。なおm及びnは平均付加モル数である。)
  4. A成分が、炭素数12〜24のアルキル基あるいはアルケニル基を有するトリメチルモノアルキルアンモニウムハライド、トリメチルモノアルケニルアンモニウムハライド、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド、及びジメチルジアルケニルアンモニウムハライドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は3に記載のクレープ用離型剤。
  5. A成分又はB成分と、アルキレンオキサイド付加物のノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクレープ用離型剤。
  6. 水以外の成分の濃度が1〜79質量%の水溶液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のクレープ用離型剤。
  7. 前記クレープ用離型剤の光透過率が、光の波長600nmで50%〜100%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のクレープ用離型剤。
  8. クリーブランド開放式引火点測定器で、引火点が認められないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のクレープ用離型剤。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載したクレープ用離型剤をドライヤーの表面に繊維ウェブの面積に対して、0.01〜500mg/mになるように塗布することを特徴とする紙の製造方法。
  10. 請求項9に記載された方法によって製造されたクレープ紙。
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