JP4262302B2 - サイジング組成物 - Google Patents
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Description
(技術分野)
本発明は、紙のサイジングに関し、より具体的にはセルロース反応性サイジング剤の実質的に無水の組成物および水性の組成物、これらの調製並びにこれらの使用に関する。
【0002】
(背景技術)
例えばアルキルケテン二量体(AKD)とアルケニル無水コハク酸(ASA)に基づくもののようなセルロース反応性サイジング剤は、水性液体による濡れと浸透に対するある程度の耐性を紙と板紙へ与えるために、中性またはわずかにアルカリ性の原料pHの製紙において広く用いられる。セルロース反応性サイジング剤に基づく紙のサイズは一般に、水性相と、この中へ分散したサイジング剤の細かく分割した粒子または小滴とを含む分散液の形態で提供される。この分散液は通常、分散剤の助けにより調製され、この分散剤は例えばリグノスルホン酸ナトリウムのようなアニオン性化合物からなり、好ましくは、例えばカチオン性澱粉、ポリアミン、ポリアミドアミンまたはビニル付加ポリマーのような高分子量の両性またはカチオン性ポリマーと組み合わせたものである。
【0003】
しかしながら、これらの型の分散液は、通常、比較的低い固形分含量においてでさえも、ある程度の不充分な安定性と高い粘度を示し、このことは明らかに、例えば貯蔵および使用に関しての分散液の取り扱いを困難にする。更なる欠点は、製品は低い濃度の分散液として供給されなければならず、このことは更に、一般の分散液の水性含量により占められた大きな容積のせいで、活性サイジング剤の輸送費用および貯蔵費用を増加させる。
【0004】
米国特許第5176748号明細書は、ASA、カチオン性可溶性分散剤および任意に非イオン性界面活性剤を含むサイジング組成物に言及している。用いたカチオン性分散剤は、およそ50000の分子量を有する塩化ジアリルジメチルアンモニウム(ポリダドマック(Polydadmac))のような、高分子量カチオン性分散剤である。
【0005】
ヨーロッパ特許公開第220941号明細書は、ケテン二量体、ポリエーテルのようなカプセル化剤およびポリアミンのようなカチオン性ポリマーを含む固体組成物に関する。
【0006】
米国特許第4743303号明細書は、ロジン並びに、非イオン性界面活性剤とカチオン性分散剤とを含む合成サイジング剤の、水性分散液を開示している。
ヨーロッパ特許公開第707110号明細書は、乳化剤および/またはアニオン性高分子量安定剤を含むアルケニルコハク酸乳濁液サイジング剤に関する。
【0007】
組成物の使用の前に、組成物を水性相の存在下で乳化する。粒径を減少させるためには剪断力が必要である。本発明の一つの利点は従って、乳化/分散性能を改善することである。更に本発明の他の利点は、水性相で容易に/早く分散する実質的に無水のサイジング組成物を用いている間に、良好な、および/または改善したサイジングを成し遂げることである。その上、通常のサイジング分散液に関する安定性の問題を、本質的に無水のサイジング組成物を提供することにより回避する。更なる目的は以下に見られる。
【0008】
(発明の開示)
本発明に従って、均質化の改善が、本明細書の請求項による本質的に無水の組成物を用いて達成できることが見出された。より具体的に、本発明は、セルロース反応性サイジング剤の本質的に無水の組成物に関し、これは非イオン性化合物および10000までの分子量を有するカチオン性化合物を含み、これらは分散剤として有効である。本発明のサイズ組成物は、容易に均質化され、従って剪断力の使用を最小にする。加えて本発明は、更に請求項に定めるように、セルロース反応性サイジング剤の水性組成物、およびこれらの調製と使用に関する。
【0009】
本組成物は、分散液に通常存在する水の量を実質的に排除することにより輸送費用の削減を可能にする。本発明は、従って、実質的な経済的かつ技術的利益をもたらす。
【0010】
水性組成物はまた、セルロース反応性サイジング剤の水性分散液を意味する。従って、水性分散液または水性組成物は、サイジング剤の実質的に無水の組成物の乳化または均質化により得られる。
【0011】
本発明に係るセルロース反応性サイジング剤は、当業界で公知のあらゆるセルロース反応性サイジング剤から選ぶことができる。適切には、このサイジング剤は、疎水性ケテン二量体、ケテンマルチマー、酸無水物、有機イソシアネート、塩化カルバモイルおよびこれらの混合物からなる群から選ばれ、好ましくはケテン二量体と酸無水物、最も好ましくはケテン二量体である。適切なケテン二量体は以下の一般式(I)を有し、この式中R1とR2は飽和または不飽和の炭化水素基を表し、通常は飽和の炭化水素を表し、この炭化水素基は、例えばヘキサデシル基およびオクタデシル基のような適切には炭素数8から36を有し、通常は炭素数12から20を有する直鎖または分岐アルキル基である。
【0012】
適切な酸無水物は、以下の一般式(II)により特徴付けることができ、この式中R3とR4は同一でも異なっていてもよく、適切には炭素数8から30を含む飽和または不飽和の炭化水素基を表し、またはR3とR4は−C−O−C−部分と共に5〜6員環を形成でき、任意に更に炭素数30までを含む炭化水素基により置換されてもよい。商業的に用いられる酸無水物の例は、アルキル無水コハク酸およびアルケニル無水コハク酸、特にイソオクタデセニル無水コハク酸を含む。
【0013】
【化1】
【0014】
【化2】
【0015】
適切なケテン二量体、酸無水物および有機イソシアネートは、米国特許第4522686号明細書に開示された化合物を含み、この特許をここで参考文献に加える。適切な塩化カルバモイルの例は、米国特許第3887427号明細書に開示されたものを含み、この特許もまたここで参考文献に加える。
【0016】
セルロース反応性サイジング剤に加え、サイズ分散液はまた、非セルロース反応性サイジング剤を含んでもよい。この型の適切なサイジング剤の例は、例えば強化したロジンおよび/またはエステル化したロジンのようなロジン、ワックス、例えば脂肪族アミドおよび天然脂肪酸のグリセロールトリエステルのような脂肪族エステルのような、脂肪酸と樹脂酸誘導体を含む。
【0017】
本発明に含まれるカチオン性化合物は、好ましくは同一のまたは異なった型の一つ以上のカチオン性基を含み、一つのカチオン性基を有する化合物と二つ以上のカチオン性基を有するカチオン性化合物即ちカチオン性多価電解質を含む。適切なカチオン性基の例は、スルホニウム基、ホスホニウム基、第一級アミン基またはアミノ基の酸付加塩、第二級アミン基またはアミノ基の酸付加塩、第三級アミン基またはアミノ基の酸付加塩および第四級アンモニウム基を含み、例えばこの場合、窒素が塩化メチル、硫酸ジメチルまたは塩化ベンジルにより第四級化され、好ましくはアミン/アミノ基の酸付加塩および第四級アンモニウム基である。カチオン性多価電解質は広い範囲で変化する置換度を有することができ;カチオン性置換度(DSC)は0.01から1.0、適切には0.1から0.8、好ましくは0.2から0.6であってもよい。
【0018】
本発明で用いる適切なカチオン性有機化合物は、界面活性剤および/または分散剤として機能することができるカチオン性化合物を含む。カチオン性化合物は界面活性剤であることが好ましい。カチオン性界面活性剤は、炭素数9から30を有する少なくとも一つの炭化水素基を含む、第一級アンモニウム化合物、第二級アンモニウム化合物、第三級アンモニウム化合物および第四級アンモニウム化合物から選ぶことができる。
【0019】
更に好ましいカチオン性界面活性剤は一般式R4N+X-を有する化合物を含み、この式中個々のR基は別個に、(i)水素;(ii)炭素数1から約30、好ましくは炭素数1から22を含む炭化水素基、適切には脂肪族基および好ましくはアルキル基、;および(iii)炭素数約30まで、好ましくは炭素数4から22を有し、そして例えば酸素または窒素のようなヘテロ原子を一つ以上、および/または例えばカルボニル基とアシルオキシ基のようなヘテロ原子を含む基、によりさえぎられている炭化水素基、適切には脂肪族基、好ましくはアルキル基、から選ぶことができ;この場合、少なくとも一つ、適切には少なくとも三つそして好ましくは全ての前記R基が炭素原子を含み;適切には前記R基の少なくとも一つ、好ましくは少なくとも二つは、少なくとも炭素数7、好ましくは少なくとも炭素数9、最も好ましくは少なくとも炭素数12を含んでおり;そして前記式中X-は対イオン、典型的には塩化物のようなハロゲン化物、または分散剤の対イオン化合物に存在する基であり、例えばこの場合、前記界面活性剤は、RとNが前述のように定められた式R3Nのプロトン化したアミンである。
【0020】
適切な前記界面活性剤の例は、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジココジメチルアンモニウム、塩化ココベンジルジメチルアンモニウム、塩化ココ(分別化)ベンジルジメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、塩化ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、塩化ジ(水素化獣脂)ジメチルアンモニウム、塩化ジ(水素化獣脂)ベンジルメチルアンモニウム、塩化(水素化獣脂)ベンジルジメチルアンモニウム、塩化ジオレイルジメチルアンモニウム、および塩化ジ(ヘキサデカンカルボン酸エチレン)ジメチルアンモニウムを含む。特に好ましいカチオン性界面活性剤は、従って、炭素数9から30を有する少なくとも一つの炭化水素基と特に第四級アンモニウム化合物を含有する物を含む。
【0021】
更に好ましいカチオン性界面活性剤は、炭素数9から30、好ましくは炭素数12から22を有する少なくとも一つの炭化水素基、適切には脂肪族基、好ましくはアルキル基を含有するジ第四級アンモニウム化合物およびポリ第四級アンモニウム化合物を含む。この型の適切な界面活性剤の例は、二塩化N−オクタデシル−N−ジメチル−N'−トリメチル−プロピレン−ジアンモニウムを含む。
【0022】
本発明で用いる好ましいカチオン性多価電解質は、更に、低分子量カチオン性有機ポリマー、例えば澱粉やグアールガムのような多糖類から誘導されるもののような任意に減成した低分子量カチオン性有機ポリマー、カチオン性ポリウレタンのようなカチオン性縮合物、例えばポリアミドアミン−エピクロロヒドリンコポリマーのようなポリアミドアミン、例えばジメチルアミン−エピクロロヒドリンコポリマー、ジメチルアミン−エチレンジアミン−エピクロロヒドリンコポリマーのようなポリアミン、アンモニア−二塩化エチレンコポリマー、例えば塩化ジアリルジメチルアンモニウムのホモポリマーとコポリマーのようなカチオン性基を有するモノマーから形成されるビニル付加ポリマー、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレートおよびジアルキルアミノアルキルアクリルアミド(例えばジメチルアミノエチルアクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレート)を含み、これらは通常、酸付加塩または第四級アンモニウム塩として存在し、任意にアクリルアミド、アルキルアクリレート、スチレンおよびアクリルニトリル、並びにこのようなモノマー、ビニルエステル等の誘導体を含む非イオン性モノマーと共重合される。
【0023】
カチオン性有機化合物の分子量は、一般に約10000まで、通常約5000まで、適切には約3000まで、そして好ましくは約800までである。この分子量は通常少なくとも約200である。適切なカチオン性界面活性剤は、約3000までの分子量を有することができ、好ましい界面活性剤は約200〜約800の分子量を有することができる。
【0024】
本発明で用いる適切な非イオン性化合物は、界面活性剤および/または分散剤として機能する非イオン性化合物を含む。非イオン性化合物は、通常、ポリ酸化アルキレンエーテル若しくはポリ酸化アルキレンエステルまたはこれらの混合物である。適切には、非イオン性化合物は、ポリ酸化アルキレン部分と脂肪族部分とを含む。非イオン性化合物のポリ酸化アルキレン部分は、一つまたは異なった酸化アルキレン単位を含むことができる。適切には、非イオン性化合物は、少なくとも3つの酸化アルキレン単位、好ましくは4から100個までの酸化アルキレン単位、より好ましくは5から60個までの酸化アルキレン単位、最も好ましくは5から50個までの酸化アルキレン単位を含む。
【0025】
一般的な酸化アルキレン単位は、酸化エチレンまたは酸化プロピレンである。通常、エステル基またはエーテル基によりポリ酸化アルキレン部分へ結合した、非イオン性化合物の脂肪族部分は、適切に分岐していたり、直鎖であったり、および/または環状であったりする。通常、この脂肪族部分は、少なくとも炭素数4を含むアルキル基またはアルケニル基である。適切な非イオン性化合物は、エトキシル化した脂肪族エーテル、エトキシル化した脂肪族エステルまたはエトキシル化したノニルフェノールであり、またはシリコーングリコールポリマーが本発明で用いることのできる化合物の例である。
【0026】
本発明で用いる更なる好ましい非イオン性化合物の例は、ウルマン工業化学百科事典、第5版、A25巻、783〜793頁(Ullman's Encyclopaedia of Industrial Chemistry, 5 Edition, Volume A25, pages 783-793);カーク・オスマー化学技術百科事典、第4版、23巻、506〜523頁(Kirk Othmer Encyclopaedia of Chemical Technology, 4 Edition, Volume 23, pages 506-523)および工業界面活性剤ハンドブック、第2版、1997、ガウアー出版社(Handbook of industrial surfactants, second edition 1997, Gower Publishing Limited)に開示されており、ここでこれらを参考文献に加える。
【0027】
本発明に係る実質的に無水の組成物および水性組成物に存在するカチオン性化合物と非イオン性化合物の量は、特に、カチオン性材料と非イオン性材料の型と電荷密度、サイジング剤の型、結果として生じる分散液の所望のカチオン度と固形分含量に依存して広い範囲にわたって変えることができる。実質的に無水の組成物と水性組成物において、カチオン性化合物は、サイジング剤基準で100重量%まで、通常0.1から20重量%、適切には1から10重量%、そして好ましくは2から7重量%の量存在でき、非イオン性化合物は、サイジング剤基準で100重量%まで、通常0.1から20重量%、適切には0.2から10重量%、そして好ましくは0.3から6重量%の量存在できる。
【0028】
本発明に係れば、サイジング組成物は実質的に無水である。実質的に無水であることは、通常少量の水が存在できることを意味し;含水量は0から10重量%まで、適切には5重量%未満、好ましくは2重量%未満であってもよい。最も好ましくは、組成物は水を含まない。
【0029】
本発明の好ましい実施態様によれば、実質的に無水の組成物は、本質的にロジンおよび/またはロジンの誘導体を含まない。本質的に含まないということは、本質的に無水の組成物を分散した後に得られる水性組成物が5重量%未満、適切には2重量%未満のロジンおよび/またはロジンの誘導体を含むことを意味する。より好ましくは、実質的に無水の組成物は、ロジンおよび/またはロジンの誘導体を含まない。
【0030】
この組成物は、好ましくは、支配的な量、適切には重量基準で少なくとも50重量%のセルロース反応性サイジング剤を含み、適切にはこの組成物は、80から99.8重量%、好ましくは90から99.7重量%の範囲内のサイジング剤含量を有する。
【0031】
本発明に係れば、セルロース反応性サイジング剤の水性組成物は、10000までの分子量のカチオン性化合物と、非イオン性化合物を含んで提供される。本発明の水性組成物は、高い固形分含量で調製できるが、それにもかかわらず貯蔵に関する非常に良好な安定性と低い粘度を示す。従って本発明は良好な、および/または改善された貯蔵安定性、高い固形分含量および/または低い粘度のサイズ分散液を提供する。本水性組成物に認められる更なる利点は、非常に良好な、および/または改善された希釈安定性であり、これはサイジング剤の粒子または小滴の低い凝集を意味し、これによって低いサイジング効率を有する大きな凝集体のさらに低い水準を成立させ、並びに製紙機上への疎水性サイジング剤の少ない沈積とより少ないワイヤ汚染を意味し、これによって製紙機の保守の必要性を減らす。
【0032】
本水性組成物は、一般的に約1から約60重量%のサイジング剤含量を有することができる。本発明に係る、ケテン二量体サイジング剤を含む組成物は、5から約50重量%、好ましくは約10から約35重量%の範囲内のケテン二量体含量を有してもよい。本発明に係る、酸無水物サイジング剤を含む、分散液または乳濁液は、0.1から約30重量%、通常約1から約20重量%の範囲内の酸無水物含量を有してもよい。
【0033】
驚くべきことに、本発明に係るセルロース反応性サイジング剤の本質的に無水の組成物は、容易に水性相の存在下で均質化できることが見出された。従来の分散液の調製方法と比較して、この方法では、より少ないエネルギーとより低い剪断力が必要とされ、これにより単純化した装置を使用できる。本発明に係る実質的に無水の組成物は、サイジング剤を溶融し、そこへ非イオン性化合物とカチオン性化合物を添加することにより製造できる。更なる他の好ましい実施態様によれば、実質的に無水の組成物は、サイジング剤を溶融し、カチオン性化合物を添加することにより製造できる。このように形成した組成物は、次に非イオン性化合物を含む水性相の存在下で適切に乳化される。溶融物を冷却した後、固体のペレットが形成される。
【0034】
サイジング剤の水性組成物または分散液は、水性相を、適切にはサイジング剤が液体形態で存在する温度まで、好ましくは約20℃から95℃まで加熱することにより得ることができる。従って、本発明の他の好ましい実施態様は、セルロース反応性サイジング剤の水性分散液の調製方法に関し、この方法では実質的に無水の組成物を水性相の存在下で乳化する。更に本発明の他の好ましい実施態様は、セルロース反応性サイジング剤の水性分散液の調製方法であり、この方法ではセルロース反応性サイジング剤と10000までの分子量のカチオン性化合物とを含む実質的に無水のサイジング組成物は、非イオン性化合物を含む水性相の存在下で乳化される。
【0035】
本発明の実質的に無水の組成物は、適切には、約0.1から約90重量%まで、好ましくは約0.1から約50重量%までの範囲内のサイジング剤含量を有する水性組成物または分散液をもたらす量で、水性相へ添加される。組成物を水性相へ添加した後、形成された水性組成物は、適切には圧力をかけて、好ましくは乳化され、これにより分散液が形成される。このサイズ組成物は、使用しようとする場所で、またはどこででも好ましく乳化される。本方法は、ケテン二量体の乳濁液を調製する時に特に魅力的である。貯蔵安定な実質的に無水のサイズ組成物の供給は、従って、かなりの経済的かつ技術的利益をもたらす。この実質的に無水のサイジング組成物は、適切には様々な形状を有することのできるペレットとして明確な形で表わされる。
【0036】
本発明に係る組成物中に存在する成分、即ちセルロース反応性サイジング剤、カチオン性化合物および非イオン性化合物は、好ましくは上述のように定められる。
【0037】
本発明に係る組成物と分散液は、あらゆる型のセルロース繊維を用いた紙の製造において従来の方法で用いることができ、これらは表面サイジングと、内部または原料サイジングの両方で用いることができる。本明細書で用いる「紙」という用語は、紙のみでなく、シートや織物形状の全ての型のセルロースに基づく製品を含有することを意味し、これは例えば、厚紙と板紙を含む。原料は、任意に鉱物質充填剤との組み合わせでセルロース繊維を含み、通常、セルロース繊維の含量は、乾燥原料基準で少なくとも50重量%である。従来型の鉱物質充填剤の例は、カオリン、陶土、二酸化チタン、石膏、タルク、並びにチョーク、粉砕大理石および沈降炭酸カルシウムのような天然炭酸カルシウムと合成炭酸カルシウムが挙げられる。
【0038】
本発明はまた紙の製造方法に関し、この方法では、すでに定めたように水性分散液を表面サイズまたは原料サイズとして用いる。適切には、セルロース繊維と任意の充填剤を含む原料へ添加され、ワイヤ上で排水されて紙を形成するかまたは、通常、サイズプレスで表面サイズとして紙の表面へ適用されるかのどちらかのセルロース反応性サイジング剤の量は、セルロース繊維と任意の充填剤の乾燥重量基準で、0.01から1.0重量%、好ましくは0.05から0.5重量%であり、この場合、適用量は主に、サイズされるパルプまたは紙の品質、用いたセルロース反応性サイジング剤および望まれるサイジングの水準に依存する。
【0039】
保持(歩留り)助剤、アルミニウム化合物、染料、湿潤強度樹脂、光学増白剤等のような、従来、製紙において原料へ添加する薬品は、もちろん本組成物と共に用いることができる。アルミニウム化合物の例は、ミョウバン、アルミン酸塩および、例えばポリ塩化アルミニウムやポリ硫酸アルミニウムのようなポリアルミニウム化合物を含む。適切な保持助剤の例はカチオン性ポリマー、例えばカチオン性ポリマーと組み合わせたベントナイトのような有機ポリマーと組み合わせたアニオン性無機材料、カチオン性ポリマーとまたはカチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーと組み合わせたシリカ系ゾルを含む。
【0040】
特に良好な原料サイジングは、カチオン性ポリマーを含む保持助剤と組み合わせた本発明の水性組成物または分散液を用いるときに達成できる。適切なカチオン性ポリマーは、カチオン性澱粉、グアールガム、アクリル系ポリマー、アクリルアミド系ポリマー、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミド−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミン、ポリアミドアミンとポリ(ジアリルジメチル塩化アンモニウム)、並びにこれらの組み合わせを含む。カチオン性澱粉とカチオン性アクリルアミド系ポリマーが、単独でまたはお互いを組み合わせて若しくは他の材料と組み合わせてのどちらかで、好ましく用いられる。
【0041】
本発明の好ましい実施態様において、分散液は少なくとも一つのカチオン性ポリマーとアニオン性シリカ系粒子を含む保持システムと組み合わせて用いられる。本水性組成物または分散液は、カチオン性ポリマーまたは複数のポリマー添加の前に、間に、後にまたは添加と同時に添加できる。また、実質的に無水の組成物の均質化により得られたサイズ分散液を、例えばカチオン性澱粉またはカチオン性アクリルアミド系ポリマーのようなカチオン性ポリマーのような保持助剤、またはアニオン性シリカ系材料と、このようにして得られる混合物を原料へ導入する前に、予備混合することも可能である。従って、水性組成物または分散液は、本発明に係る実質的に無水のサイズ組成物を水性溶液を用いて乳化することにより、前記水性組成物または分散液を原料へ導入する直前に、調製できる。
【0042】
本発明を更に以下の実施例で説明するが、しかしながら、これは本発明を実施例に制限しようとするものでない。特記しなければ、部と%はそれぞれ重量部と重量%を示す。
【0043】
実施例1
本発明に係る水性サイズ組成物のサイジング効率をこの実施例で評価した。AKDの分散液を、94.5グラムのAKDを4.0グラムのカチオン性アミン(塩化ジ(水素化獣脂)ジメチルアンモニウム、クエルトン442(Querton 442):アクゾノーベル(Akzo Nobel)の商品名)と1.5グラムの非イオン性化合物(7つの酸化エチレン単位と、炭素数11を含むアルキル部分とを有するポリ酸化エチレンアルキル、ベロセル537(Berocell 537))と共に溶融することにより調製した。溶融物を固化し、ペレットを形成した。50グラムのこれらペレットを60℃の水に添加し、溶融した。15000rpmのウルトラタラックス(Ultra Turrax)ミキサを60秒間用い、分散液を調製した。
【0044】
紙シートを、研究室向けSCAN−C23X標準法により調整した。用いた製紙原料は80%の漂白したカバ材と20%のチョークを含み、これへ0.3g/リットルのNa2SO4*10H2Oを添加した。原料稠度は0.5%、pHは8.0であった。このサイズ分散液を、カチオン性澱粉とアニオン性アルミニウム改質シリカゾルを含む市販の保持および脱水システム、コンポジルティーエム(CompozilTM)、と共に用い、これら澱粉とシリカゾルは別々に原料へ添加され;カチオン性澱粉は、乾燥原料基準で7kg/トンの量で添加し、シリカゾルは、SiO2として計算し乾燥原料基準で0.8kg/トンの量で添加した。
【0045】
TAPPI標準T441 OS−63により測定した、試験で得られたコッブ(Cobb)値は、乾燥原料を基に計算して0.6kg/トンのAKD添加水準で17g/m2であった。このコッブ値は、本発明に係るサイジング組成物を用いた、紙の良好なサイジングを示す。
【0046】
実施例2
本発明に係る分散液の製造の容易さを、実質的に無水のサイジング組成物から水性分散液を調製することにより評価した。本発明の分散液は、a)カチオン性アミン(塩化ジ(水素化獣脂)ジメチルアンモニウム、クエルトン442、アクゾノーベル)と、様々な量の非イオン性化合物(7つの酸化エチレン単位と、炭素数11を含むアルキル部分とを有するポリ酸化エチレンアルキル、ベロセル537)を含むAKD(アルキルケテン二量体)の実質的に無水の組成物を乳化すること(試験C1からC3)、b)カチオン性アミンを含むAKDの実質的に無水の組成物を乳化することにより調製し、これにより異なった量の非イオン性化合物が乳化の前に水性相へ添加された。先行技術による参照用の、AKDとカチオン性アミンを含む実質的に無水のサイジング組成物を評価した(AとB)。本発明のためにAKDワックスを、AKD基準で2.4重量%のカチオン性アミン、並びにAKD基準で1重量%、2重量%および3重量%の非イオン性化合物と混合した。
【0047】
試験C1〜C3において、非イオン性化合物は実質的に無水のサイジング組成物に含まれていた。試験D1〜D3において、非イオン性化合物は水性相に存在していた。試験Eにおいて、AKD、約56個の酸化プロピレンおよび酸化エチレン単位を含む非イオン性化合物プルロニックピーイー10500(Pluronic PE 10500)0.9重量%(AKD基準)、および約200000から500000の分子量を有するポリダドマックエフエル45シー(Polydadmac FL45C)0.4重量%(AKD基準)を含んだ実質的に無水のサイジング組成物を評価した。この組成物はこの後、水性相へ分散した。
【0048】
実質的に無水のAKD組成物を、カチオン性アミンと非イオン性化合物を添加またはカチオン性アミンのみを添加しながら、AKDを溶融し、そしてこの後溶融物を冷却し、固体ペレットを形成することにより製造した。先行技術に係る参照用組成物を、カチオン性アミンとAKDを含むペレットから製造し、この組成物を、続いてナフタレンスルホン酸ナトリウムを含む水性相の存在下で乳化し(A)、またはこの組成物を、ナフタレンスルホン酸ナトリウムを含まない水性相の存在下で乳化した(B)。
【0049】
分散液の調製は、水性相を約70℃まで加熱し、水性相にペレット形態の実質的に無水のAKD組成物を添加することにより行なった。添加後、ミキサすなわち15000rpmの速度を有するウルトラタレックスを、均質化/乳化のために用いた。混合時間は5から180秒の間で変化させた。粒子径はモールヴァンマスター分粒器(Malvern Mastersizer)により測定した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1は、非イオン性界面活性剤を水性相またはAKDペレットへ添加することにより、粒径の減少がより早く達成され、従って、分散液を形成するのに必要な時間とエネルギーを減少させることを示している。Eに関しては、粒径の減少はすばやく達成されたが、しかしながら、粒子は決して3.3ミクロンより小さくならず、これは受け入れられない。
Claims (9)
- 含水量が0から10重量%及びセルロース反応性サイジング剤を含む実質的に無水の組成物であって、該サイジング剤がケテン二量体であり、該組成物が炭素数9から30を有する少なくとも一つの炭化水素基を含む第一級、第二級、第三級および第四級アンモニウム化合物から選ばれる10000までの分子量を有するカチオン性界面活性剤およびポリ酸化アルキレン部分と脂肪族部分とを含む非イオン性界面活性剤を含み、該組成物がロジンおよびロジンの誘導体を含まないことを特徴とする前記組成物。
- 前記ケテン二量体が少なくとも50重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の実質的に無水の組成物。
- 前記カチオン性界面活性剤がサイジング剤基準で0.1から20重量%の量存在し、前記非イオン性界面活性剤がサイジング剤基準で0.1から20重量%の量存在することを特徴とする請求項1または2に記載の実質的に無水の組成物。
- 前記カチオン性界面活性剤が200から800の分子量を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の実質的に無水の組成物。
- 前記カチオン性界面活性剤が一般式R 4 N + X - を有する化合物から選ばれ、この式中、個々のR基は別個に、(i)水素、(ii)炭素数1から約30を有する炭化水素基、および(iii)炭素数約30までを有し、ヘテロ原子を一つ以上および/またはヘテロ原子を含む基によりさえぎられている炭化水素基であり、前記R基の少なくとも一つが炭素数9−30を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の実質的に無水の組成物。
- 前記カチオン性界面活性剤が、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジココジメチルアンモニウム、塩化ココベンジルジメチルアンモニウム、塩化ココ(分別化)ベンジルジメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、塩化ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、塩化ジ(水素化獣脂)ジメチルアンモニウム、塩化ジ(水素化獣脂)ベンジルメチルアンモニウム、塩化(水素化獣脂)ベンジルジメチルアンモニウム、塩化ジオレイルジメチルアンモニウム、塩化ジ(ヘキサデカンカルボン酸エチレン)ジメチルアンモニウム、および二塩化N−オクタデシル−N−ジメチル−N'−トリメチル−プロピレン−ジアンモニウムから選ばれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の実質的に無水の組成物。
- 前記非イオン性界面活性剤が5から60個までの酸化アルキレン単位を有するポリ酸化アルキレン部分およびエステル基またはエーテル基により該ポリ酸化アルキレン部分へ結合した脂肪族部分を含み、該脂肪族部分が少なくとも炭素数4を含むアルキル基またはアルケニル基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の実質的に無水の組成物。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の実質的に無水の組成物からの水性分散液の調製方法であって、該実質的に無水のサイジング組成物を水性相の存在下で乳化することを特徴とする前記調製方法。
- セルロース繊維と任意の充填剤を含む原料へ請求項1〜7のいずれか一項に記載の実質的に無水の組成物を添加し、該原料をワイヤ上で排水して紙を得ることを特徴とする紙の製造方法。
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