JP2011032586A - クレープ用剥離剤、紙の製造方法及びクレープ紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の剥離剤に比べ引火する危険性が低い上、繊維ウェブのヤンキードライヤーへの過度の接着を抑えて、クレーピングの操業を改善することができ、クレープ用剥離剤の水への分散性にも優れるクレープ用剥離剤の提供。
【解決手段】下記(A)〜(D)成分を含有することを特徴とするクレープ用剥離剤。(A)成分:アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が8〜24のモノカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを反応させて得られるエピハロヒドリン変性物、(B)成分:油類、(C)成分:水、(D)成分:アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が6〜24である官能基を有するアルキレンオキサイド付加物を含有する乳化剤
【選択図】なし

Description

本発明は、クレープ用剥離剤、紙の製造方法及びクレープ紙に関する。さらに詳しくは、特定の組成物を含有するクリーブランド開放式引火点測定器で、引火点が認められないことを特徴とするクレープ用剥離剤、紙の製造方法及びクレープ紙に関する。
トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ペーパータオル等を製造する際、製品に柔軟性や嵩高さを出すため、繊維ウェブはクレープを付与する工程(クレーピング)にかけられる。クレーピングは、ヤンキードライヤーで知られる回転シリンダー式抄紙乾燥機に湿った繊維ウェブを接着させ、乾燥後、ドライヤー表面から繊維ウェブをドクターブレードで掻き取り、繊維ウェブに非常に細かいシワをよらせる工程からなる。上記クレーピングの工程において、湿った繊維ウェブがヤンキードライヤーに強く接着し過ぎると、ドクターブレードで繊維ウェブを剥ぎ取る際に、繊維を傷めてシートの強度の低下やシートに小穴(ピンホール)ができるなど最終製品の品質低下を招き、さらにはクレーピング工程においてシートが切れて操業効率を著しく悪化する。
クレープ用剥離剤(離型剤)は通常、クレープ用接着剤(コーティング剤)とともにヤンキードライヤー表面にスプレーされて使用される。クレープ用剥離剤をヤンキードライヤーに塗布することで、繊維ウェブのヤンキードライヤーへの過度の接着を抑え、クレーピングの操業を改善する。
紙のクレープ用剥離剤としては、油類を主成分としているものの、クレープ塗工液を調製する際に水媒体への分散が必要であることから、油類を分散、乳化するために種々の乳化剤を混合したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。またクレープ用接着剤と相溶性の良いエチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類をクレープ用剥離剤として使用することも知られている(例えば、特許文献2参照)。
油類、特定の乳化剤、及び水を含有するクレープ用剥離剤や、アルキル基又はアルケニル基を有する4級アンモニウム塩と水を含有するクレープ用剥離剤は、優れた水媒体への分散性を確保するとともに、引火する危険性が低いため取り扱いの安全性に優れていることが知られている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
特開平11−512498号(9頁) 特開平9−41297号(7頁) 特開2008−19525号(9頁) 特開2009−62656号(13頁)
本発明の課題は、従来の剥離剤に比べ引火する危険性が低い上、繊維ウェブのヤンキードライヤーへの過度の接着を抑えて、クレーピングの操業を改善することができ、クレープ用剥離剤の水への分散性にも優れるクレープ用剥離剤を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を用いることにより、従来の剥離剤に比べて引火する危険性が低く、水への分散性と剥離効果に優れたクレープ用剥離剤を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)下記(A)〜(D)成分を含有し、クリーブランド開放式引火点測定器で、引火点が認められないクレープ用剥離剤、
(A)成分:アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が8〜24のモノカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを反応させて得られるエピハロヒドリン変性物、
(B)成分:油類、
(C)成分:水、
(D)成分:アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が6〜24である官能基を有するアルキレンオキサイド付加物を含有する乳化剤
(2)(A)成分と(B)成分の質量比が(A)成分/(B)成分=1/0.1〜10であり、(A)〜(D)成分の合計に対して(C)成分を3〜80質量%と(D)成分を0.01〜30質量%含有し、かつ25℃における粘度が5〜1500mPa・sである前記(1)のクレープ用剥離剤、
(3)前記(1)又は(2)のクレープ用剥離剤をドライヤー表面に塗布し、繊維ウェブに対してクレープ用剥離剤を0.01〜500mg/mとなるように転写することを特徴とする製紙方法、
を提供する。
本発明のクレープ用剥離剤は、公知のクレープ用剥離剤に比べ、繊維ウェブのヤンキードライヤーへの過度の接着を抑えて、クレーピングの操業を改善することができ、水への分散性にも優れている。さらに従来の剥離剤に比べて引火する危険性が低く、使用、保管および運搬時の安全性に優れている。
本発明に係るクレープ用剥離剤は、下記(A)〜(D)成分を含有する。
(A)成分:アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が8〜24のモノカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを反応させて得られるエピハロヒドリン変性物、
(B)成分:油類、
(C)成分:水、
(D)成分:アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が6〜24である官能基を有するアルキレンオキサイド付加物を含有する乳化剤
上記(A)〜(D)成分の割合は、以下のようになっていることが好ましい。
(A)成分は(A)〜(D)成分の合計に対して、1〜88質量%、さらに好ましくは5〜70質量%、より好ましくは5〜50質量%である。
(B)成分は(A)〜(D)成分の合計に対して、1〜88質量%、さらに好ましくは10〜85質量%、より好ましくは20〜80質量%である。
(C)成分は(A)〜(D)成分の合計に対して、3〜80質量%、さらに好ましくは5〜70質量%、より好ましくは5〜50質量%である。
(D)成分は(A)〜(D)成分の合計に対して0.01〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%である。
また、(A)成分と(B)成分の質量比は、(A)成分/(B)成分=1/0.1〜10、さらに好ましくは1/0.1〜6、より好ましくは1/0.2〜6である。
本発明に使用されるエピハロヒドリン変性物((A)成分)は、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が8〜24のモノカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリン類とを反応させて得ることができる。
前記アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が8〜24のモノカルボン酸類としては炭素数8〜24の脂肪酸や炭素数8〜24の脂肪酸エステルを挙げることができる。脂肪酸としては、炭素数が8〜24である直鎖脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸の何れでも良い。これら各種脂肪酸の中でも特にラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸及びオレイン酸が好ましい。
前記脂肪酸のエステルとしては、上記各脂肪酸の酸無水物、及び上記各脂肪酸の炭素数1〜5、特に炭素数1〜3の低級アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール)のエステルなどが挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
前記ポリアルキレンポリアミン類としては、分子中に少なくとも1個以上のアルキレン基と2個以上のアミノ基を有するものであればよく、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン及びこれらのアミン類のアルキレンオキシド付加物が挙げられる。これらの中で特にジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが好ましい。これらは単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
前記アミド系化合物を合成する際は、モノカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との反応モル比は、好ましくはポリアルキレンポリアミン類に含まれるアミノ基1モルに対してモノカルボン酸類が0.2〜0.8モルであり、さらに好ましくは0.3〜0.6モルである。モノカルボン酸類の前記モル比が0.8よりも高いとクレープ用剥離剤の水への分散性が低下する場合があり、0.2よりも低いと十分な剥離効果が得られない場合がある。
ポリアルキレンポリアミン類とモノカルボン酸類とを反応させるときは、原料仕込み時に発生する反応熱を利用するか、外部より加熱して脱水及び/又は脱アルコール反応を行う。反応温度は、好ましくは110〜250℃、より好ましくは120〜190℃であるが、温度条件はモノカルボン酸類が遊離酸であるか、無水物、エステル等の誘導体であるかに依存する。この際、重縮合反応の触媒として、硫酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸類や、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸等のリン酸類、その他公知の触媒を単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。その使用量はポリアルキレンポリアミン1モルに対し好ましくは0.005〜0.1モル、より好ましくは0.01〜0.05モルである。
本発明で使用されるエピハロヒドリン変性物((A)成分)は、前記のアミド系化合物にエピハロヒドリン類を反応させることにより得ることができる。
エピハロヒドリン類は、エピハロヒドリンのほか、エピハロヒドリンから誘導される1,3−ジハロゲノ−2−プロパノールを含む。エピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン等が挙げられ、エピハロヒドリンから誘導される1,3−ジハロゲノ−2−プロパノールとしては、例えば、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等が挙げられるが、中でもエピクロロヒドリンが好ましい。
アミド系化合物に対するエピハロヒドリン類の反応比は、アミド系化合物のアミノ基の活性水素1モルに対して、好ましくは0.01〜1.4モル、より好ましくは、0.2〜1.2モルである。エピハロヒドリン類のモル比が1.4より多いと、例えば1,3−ジクロロ−2−プロパノール、及び3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどの環境上好ましくない低分子有機塩素化合物の含有量が増加する場合がある。一方、エピハロヒドリンのモル比が0.05よりも小さいと、水に対する分散性の良好なクレープ用剥離剤が得られ難い場合がある。
前記アミド系化合物の固形分1gに含まれるアミンのモル数は、塩酸メタノール液による中和滴定により算出することが可能である。
アミド系化合物の固形分1gに含まれるのアミノ基量(mmol/g)=(V×F×0.5)/S
但し、V:1/2規定塩酸メタノール液の滴定量(mL)、F:1/2規定塩酸メタノール液の力価、S:採取した試料の固形分量(g)
アミド系化合物とエピハロヒドリン類との反応は、反応温度を5〜90℃で行うことが好ましい。特に、ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリン類との反応効率を上げるため、ポリアミドポリアミンにエピハロヒドリン類を投入する場合の反応温度を5〜60℃の範囲で実施し、その後の反応では反応温度を45〜90℃の範囲でエピハロヒドリン類を投入する場合の反応温度と同じかそれ以上の温度で反応することが好ましい。
本発明で使用される油類(B成分)は、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素、オレフィン系炭化水素等を含有する鉱物油、及びシリコーンオイルなどの合成油、動物ワックス、植物ワックス、鉱物ワックス、石油ワックス等の天然ワックス及びこれらを酸化、変性、水素化等した天然ワックス誘導体、フィッシャー・トロプシュワックス、カスターワックス、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックス等の合成ワックス及びこれらを酸化、変性等した合成ワックス誘導体、植物油、動物油を挙げることができる。これらの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を併用することもできる。これらの中でもパラフィン系炭化水素を含有している鉱物油が好ましく、さらに100℃における動粘度が2mm/s以上、より好ましくは3〜11mm/sであると剥離効果に優れるクレープ用剥離剤が得られ易く好ましい。
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジエンシリコーンオイル、ポリジメチルシロキサンジオール、アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が1〜5である官能基を有するポリオキシアルキレンエーテル変性シリコーンオイル、フルオロアルキル変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル並びにビニル変性シリコーンオイル等を挙げることができる。これらのシリコーンオイルの中でも、100℃における動粘度が1mm/s以上であると性能に優れるクレープ用剥離剤が得られ易く好ましい。
植物油としては、オリーブ油、大豆油、ゴマ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、紅花油、ナタネ油、ユーカリ油などを挙げることができる。
動物油としては、肝油、アザラシ油、イワシ油などを挙げることができる。
本発明で使用される水((C)成分)は、水道水、工業用水、蒸留水、イオン交換水などを用いることができ、できるだけ塩素や塩がないことがクレープ用剥離剤の粘度安定性の観点から好ましく、工業用水を用いるのがコスト的に優位である。
本発明で使用される乳化剤((D)成分)は、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が6〜24である官能基とアルキレンオキサイドを付加した構造を有していれば乳化剤としての機能を有している限り、他の官能基を有していてもよく、例えば、アルキルアリール基のようなものもアルキル基の部分を有しているため含まれる。これらの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を併用することもできる。また、前記乳化剤のイオン性はアニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性のいずれであってもよいが、ノニオン性が好ましい。これらの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を併用することもできる。
前記ノニオン性乳化剤としては、例えば、炭素数が6〜24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する、脂肪酸アルキレンオキシドソルビタンエステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコール、ポリオキシアルキレン脂肪族メルカプタン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテル並びにポリオキシアルキレンエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、ノニオン性界面活性剤1分子当たり1〜20モル付加していることが好ましく、またアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、中でもエチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。
ノニオン性乳化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレングリセリルイソステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのラウリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのミリスチン酸ジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのセチル酸ジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのステアリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのオレイン酸ジエステル、ポリオキシエチレンオレイルアミド等が挙げられる。
前記カチオン性乳化剤としては、例えば、炭素数が6〜24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアミン等が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、カチオン性界面活性剤1分子当たり1〜20モル付加していることが好ましく、またアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、中でもエチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。
前記アニオン性乳化剤としては、例えば、炭素数が6〜24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル又はこれらのアルカリ中和物、ポリオキシアルキレンアルキルアリール硫酸エステル又はこれらのアルカリ中和物、ポリオキシアルキレンアラルキルアリール硫酸エステル又はこれらのアルカリ中和物、アルキル─アリールスルホン酸及びこれらのアルカリ中和物、アルコール類のアルキレンオキシド付加体とリン酸とのエステル又はこれらのアルカリ中和物が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、アニオン性界面活性剤1分子当たり1〜20モル付加していることが好ましく、またアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、中でもエチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。前記中和物として使用されるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アンモニア等を挙げることができる。
本発明のクレープ用剥離剤は、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分を加えたものを攪拌混合して得られる。攪拌混合する温度および時間は、前記(A)〜(D)成分を均一に混合できればよく、特に制限されないが、通常5〜90℃および10分〜5時間である。但し脱溶剤工程などで100℃以上に温度を上昇させる場合は、水を投入する前が好ましい。また、攪拌混合設備についても特に制限はないが、通常羽根型攪拌機やラインミキサーを使用することができる。また攪拌混合だけでは分散が困難な場合は、必要に応じて転相乳化法、界面活性剤又は無機塩類を添加した後の転相乳化法、また機械的な方法により分散する機械的分散方法を組み合わせることが好ましい。これらは単独でも二種以上の方法を併用しても差し支えない。機械的分散方法としては、ホモミキサー、高圧吐出型ホモジナイザー、高剪断型回転式乳化分散機、超音波乳化機等の各種公知の乳化機により均一に分散させる方法が挙げられる。
本発明の製紙方法は上記クレープ用接着剤をドライヤーに塗布し、膜を形成し湿った繊維ウェブを接着し、クレーピングが実施される。
上記方法により得られたクレープ用剥離剤の粘度は、水への分散性及びヤンキードライヤー上での均一な皮膜形成をし易くするため、製紙工程で使用される際の形態として、通常、5〜1500mPa・s、さらには10〜1000mPa・s(B型粘度計を用いて25℃にて測定)の範囲にあることが好ましい。
また、本発明のクレープ用剥離剤は、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂やポリアミドポリアミンポリ尿素エピクロロヒドリン樹脂などのクレープ用接着剤(コーティング剤)、さらにはリン酸塩などの無機塩やプロピレングリコールなどの多価アルコールなどのクレープ助剤(モディファイヤー)などとともに使用することにより、例えば、トイレットペーパー、ティシュペーパー等の家庭紙の製造工程で、すなわちヤンキードライヤー表面に接着した紙匹をヤンキードライヤー表面からドクターブレードで容易に剥離させることで優れたクレープを付与することができる。
クレーピング用剥離剤をヤンキードライヤーの表面に直接スプレーする場合、クレーピング用剥離剤を10〜1000倍に希釈して使用することが好ましく、スプレー量はクレープ用剥離剤が0.01〜500mg/m、特に0.1〜300mg/mとなるようにドライヤーに塗布するのが好ましい。
本発明のクレーピング用剥離剤を使用する場合のパルプ原料としては、クラフトパルプ、サルファイトパルプ等の晒並びに未晒化学パルプ;砕木パルプ、機械パルプ、サーモメカニカルパルプ等の晒並びに未晒高収率パルプ;新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙、脱墨古紙等の古紙パルプを挙げることができ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の製造方法によって製造されるクレープ紙は、トイレットペーパー、ティシュペーパー、タオルペーパー、ナプキン原紙のような衛生用紙等の用途に適している。
以下、本発明の実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各例中、%は特記しない限りすべて質量%である。
(実施例1)
温度計、冷却器、撹拌機及び窒素導入管を備えた1L四つ口丸底フラスコにジエチレントリアミン103g(1モル)を仕込み、攪拌しながらオレイン酸424g(1.5モル)を加え、生成する水を系外に除去しながら昇温し、170℃で3時間反応を行い、アミド系化合物1反応液を得た(アミド化合物の固形分1g当たりのアミノ基の量は3.1mmol/gであった)。次に、前記フラスコとは別の温度計、冷却器、撹拌機及び窒素導入管を備えた1L四つ口丸底フラスコにアミド系化合物1反応液を92g(アミノ基量0.29モル)、(B)成分として鉱物油1(100℃での動粘度4.4mm/s)を65g加えて80℃まで昇温し、完全に溶解した後、40℃まで冷却しエピクロロヒドリンを29.5g(0.32モル)加えて同温度で5時間反応を行った。反応液に(C)成分として水を130g加えて60℃まで加熱し同温度で3時間反応させて、50℃まで冷却した後、(B)成分として酸化ワックス混合物を15g、(D)成分としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル(平均分子量650、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=75/25(モル比))を110g加えて50℃30分間混合することで、クレープ用剥離剤(1)を得た。得られたクレープ用剥離剤(1)は、(A)成分と(B)成分の質量比が(A)成分/(B)成分=1/0.61であり、(B)成分を29%、(D)成分を24%含んでいる。
なお、前記アミド系化合物とエピクロロヒドリンの反応比ではほぼ完全に反応するため、アミド系化合物とエピクロロヒドリンの仕込み量の和をクレープ用剥離剤(1)の(A)成分の仕込み量とし、前記アミド系化合物とエピクロロヒドリンの反応条件において、前記アミド系化合物やエピクロロヒドリンは、鉱物油とほとんど反応していない。
(実施例2〜10)
前記実施例1のポリアルキレンポリアミン類とモノカルボン酸類の種類、モノカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類の比率、アミド系化合物のアミノ基当量に対するエピクロロヒドリンの反応当量を表1に示したものに変更し、前記実施例1の(A)〜(D)成分の種類と使用量、(A)成分/(B)成分の比率、(C)成分、(D)成分の含有率を表2に示したものに変更した以外は実施例1と同様にしてクレープ用剥離剤を得た。なお、実施例5のジメチルシリコーンオイルは酸化ワックス混合物を加えた後に加えた。
Figure 2011032586
Figure 2011032586
表2中の略号の説明
(※1)(A)成分:アミド系化合物とエピクロロヒドリンの重量の和
(※2)鉱物油1:密度0.86g/cm(15℃)、動粘度5.5mm/s(100℃)、環分析:CA30%、CP70%
(※3)鉱物油2:密度0.85g/cm(15℃)、動粘度2.6mm/s(100℃)、環分析:CA4%、CN29%、CP67%
(※4)酸化ワックス混合物:酸化ワックス/固形パラフィン混合物(混合重量比85:15)、密度0.89g/cm(70℃)、酸価72mgKOH/g、けん化価181mgKOH/g
(※5)ジメチルシリコーンオイル:密度0.92g/cm(15℃)、動粘度1.5mm/s(100℃)
(※6)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル:(平均分子量650、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=75/25(モル比))
「−」は該当するものを使用しなかったことを示す。
なお、前記の(※2)、(※3)でいう環分析とは、油全体を構成している炭素をパラフィン部(CP),ナフテン部(CN),芳香族部(CA)に分類し,各々を%表示する方法である。
(比較例1)
アミド系化合物とエピクロロヒドリンを加えない以外は前記実施例2と同様にして、(A)成分を含まないクレープ用剥離剤を得たが、室温静置1時間以内に相分離を起こしたため、クレープ用剥離剤としての取り扱いが困難であった。
(比較例2)
鉱物油および酸化ワックス混合物を加えない以外は前記実施例2と同様にして、(B)成分を含まないクレープ用剥離剤を得たが、室温でペースト状となり、クレープ用剥離剤としての取り扱いが困難であった。
(比較例3)
水を加えない以外は前記実施例2と同様にして、(C)成分を含まないクレープ用剥離剤を得たが、室温静置1時間以内に相分離を起こしたため、クレープ用剥離剤としての取り扱いが困難であった。
(比較例4)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテルを加えない以外は前記実施例2と同様にして、(D)成分を含まないクレープ用剥離剤を得たが、室温静置1時間以内に相分離を起こしたため、クレープ用剥離剤としての取り扱いが困難であった。
(比較例5)
撹拌機を備えた200mLのフラスコに、(A)成分としてヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド5g、水95gを60℃1時間混合攪拌することにより、クレープ用剥離剤を得た。
(比較例6)
撹拌機を備えた200mLのフラスコに鉱物油1を76g、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエートを20g、水を4g加えて混合攪拌することによりクレープ用剥離剤を得た。
(比較例7)
プロピレングリコールをクレープ用剥離剤とした。
実施例1〜10、比較例5〜7
得られた実施例1〜10及び比較例1〜7のクレープ用剥離剤の粘度(25℃)、接着強度、分散性、引火点の測定結果を表3、表4に示す。
<接着性の評価試験>
クレープ剤CA6001(星光PMC株式会社製・クレープ用接着剤)を不揮発分2g/m、実施例1〜10及び比較例5〜7のクレープ用剥離剤を250mg/mとなるように、100℃に加熱したプレート(面積0.2cm)に塗布し、300gf/cmとなるように、湿紙(水分率40〜60%)を30秒間押し付けた。プレートと紙を引き剥がす際に必要な荷重を接着力として評価した。評価した結果を表3、4にまとめる。CA6001のみ使用の場合の接着力に対して、各種クレープ用剥離剤を使用したときの接着力が、35%以上60%未満のときを◎、60%以上70%未満を○、70%以上80%未満を△、80%以上のときを×とした。接着力が低下するほど、剥離効果に優れたクレープ用剥離剤といえるが、製紙工程において、ドライヤーに対する繊維ウェブの接着力が極端に低下すると、ドライヤーにおける乾燥効率の低下や、クレープ紙の品質低下を招くおそれがある。そのため、クレープ用剥離剤の効果としては上記接着性の評価試験において、接着力が35%以上80%未満であることが好ましい。
実施例1〜10のクレープ用剥離剤を1000mg/mとなるように塗布した以外は、上記接着性評価試験と同様に行ったところ、クレープ剤CA6001のみ使用の場合に比べて全て接着力が35%未満であった。
<分散性の評価試験>
100mLビーカーに30℃の水を50mL加えて、回転数400rpm又は600rpm(直径7mm×厚さ)で水を攪拌しながら実施例1〜10及び比較例1〜7のクレープ用剥離剤をそれぞれ各々のクレープ用剥離剤400μL加えて分散状態を目視で評価した。評価した結果を表1、2にまとめる。回転数400rpmでサンプルを加えてから60秒以内に均一に溶解又はエマルションとして分散した場合は○、回転数600rpmでサンプルを加えてから60秒以内に均一に溶解又はエマルションとして分散した場合は△、回転数600rpmでも分散せずに不均一な状態を×と評価した。
<引火点の測定>
実施例1〜10及び比較例1〜7のクレープ用剥離剤を日本工業規格JIS K 2265−4に従ってクリーブランド開放式引火点測定器で測定した。測定した結果を表1、2にまとめる。引火点があったものを「あり」と記載し、測定不能であったものを「なし」と記載した。なお、予期引火点以下55℃まで毎分14〜17℃の割合で、予期引火点以下28℃から引火点に達するまで毎分5.5±0.5℃の割合で温度を上昇できず、試験サンプルが試料カップより溢れでて測定不能となった場合は引火点“なし”とした。
Figure 2011032586
Figure 2011032586
表4の略号の説明
「−」は、相分離またはペースト状で取り扱いが悪く、水への分散性も悪かったため、粘度、接着強度が測定できなかったことを示す。
表3及び4に示す結果から明らかな通り、本発明のクレープ用剥離剤である実施例1〜10を用いたものは、クレープ用剥離剤として使用に耐えられる比較例5〜7に比べて、優れた剥離効果を示すと共に水への分散性が良好なことから実機マシンにおいてクレーピング用剥離剤として利用した場合に優れた効果が発揮されることが予想される。また、本発明のクレープ用剥離剤は引火する危険性が低いため、剥離剤の使用、保管および運搬などに伴う制限が著しく軽減できるというメリットがあり、実用上非常に有用である。

Claims (3)

  1. 下記(A)〜(D)成分を含有し、クリーブランド開放式引火点測定器で、引火点が認められないことを特徴とするクレープ用剥離剤。
    (A)成分:アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が8〜24のモノカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを反応させて得られるエピハロヒドリン変性物、
    (B)成分:油類、
    (C)成分:水、
    (D)成分:アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が6〜24である官能基を有するアルキレンオキサイド付加物を含有する乳化剤
  2. (A)成分と(B)成分の質量比が(A)成分/(B)成分=1/0.1〜10であり、(A)〜(D)成分の合計に対して(C)成分を3〜80質量%と(D)成分を0.01〜30質量%含有し、かつ25℃における粘度が5〜1500mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載のクレープ用剥離剤。
  3. 前記請求項1又は2に記載したクレープ用剥離剤をドライヤー表面に塗布し、繊維ウェブに対してクレープ用剥離剤を0.01〜500mg/mとなるように転写することを特徴とする製紙方法。
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