本発明は、車両に搭載される無線通信装置に関する。
近年、自動車等の車両に、無線通信装置を搭載して、車両間で無線通信することにより、車両情報等を交換することが考えられている。このような車車間通信では、移動する車両間で通信を行うことになるため、通信環境が車両の走行に伴って大きく変化する。例えば、車両が山間地を走行しているのか、都市部を走行しているのかによって、周辺の車両密度が大きく変化する。このため、車車間通信では、無線通信装置から常時固定の送信電力で通信パケットを出力して通信を行うと、効率的な通信を行うことができない。
例えば、遠方の車両との通信を実現するためには、送信電力を高く設定したほうがよいが、全ての車両が、固定の高い送信電力で通信すると、通信の干渉が発生しやすくなる。特に、交差点付近や渋滞している地域では、車両密度が高いため、車両密度が低い地域と同様の送信電力で通信すると、通信の干渉が多くなって非効率な通信しかできない。
このため、従来の車車間通信では、送信電力を調整する機能を無線通信装置に設けて、状況に応じ、各車両の無線通信装置にて送信電力を調整することが行われている。例えば、通信先の車両との相対距離や相対速度に応じて、送信電力を調整することが行われている(特許文献1及び特許文献2参照)。
特開2007−6395号公報
特開2004−343467号公報
ところで、本発明者らは、車両間の衝突回避を目的として、各車両から周期的に、自車両の車両情報を格納した通信パケットを、不特定多数の周辺車両に向けて、ブロードキャストし、車両間で車両情報を交換することを考えている。このような通信形態で車車間通信を実現するに際しても、従来と同様、通信パケットの送信電力等を調整しなければ、車両密度等の車両周囲の環境に応じて、通信の干渉が増え、衝突回避に必要な通信が行えなくなる可能性がある。
しかしながら、従来では、特定の通信相手と通信をするに当って、送信電力を調整する技術や、隣接する車両と通信をするに当って、送信電力を調整する技術程度しか知られておらず、自車両周囲に不特定多数の車両が存在し、通信相手が特定されない環境下で、車両間の衝突を回避するために、送信電力等の送信条件を調整する技術については、開発されていなかった。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、車両間の衝突回避を目的とする通信システムにおいて、通信の干渉を抑えて、車両間で適切に通信を行うことが可能な車載用の無線通信装置を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するためになされた本発明(請求項1記載)の無線通信装置は、自車両の運動状態を検出する検出手段を備えた車両に搭載される無線通信装置であって、パケット送信手段、パケット受信手段、基準車両設定手段、及び、送信条件設定手段を備えるものである。
この無線通信装置において、パケット送信手段は、検出手段の検出結果に基づき、自車両の運動状態を記述した通信パケットを、予め設定された送信電力及び送信周期で、無線信号として自車両周囲にブロードキャストする。一方、パケット受信手段は、自車両周囲に存在する不特定の各車両に搭載された無線通信装置からブロードキャストされる通信パケットを受信する。
基準車両設定手段は、このパケット受信手段が受信した通信パケットの内容に基づき、通信パケットを送信してきた各送信元車両の自車両に対する危険度を評価し、通信パケットの送信元車両群の内、自車両に対する危険度が最大の車両を、送信条件の設定基準とする基準車両に設定する。
そして、送信条件設定手段は、基準車両設定手段が設定した基準車両の自車両に対する運動状態に基づき、送信条件として、送信電力及び送信周期の少なくとも一方を設定する。このように構成された無線通信装置において、パケット送信手段は、送信条件設定手段により設定された送信条件を満足する送信電力及び送信周期で、通信パケットをブロードキャストする。
このように、本発明の無線通信装置では、他車両から送信されてくる当該車両の運動状態を表す情報に基づき、自車両周囲に位置する車両群の中から、危険度の高い車両を選択し、危険度の高い車両(基準車両)の運動状態に合わせて、送信条件(送信電力や送信周期)を設定する。従って、この無線通信装置によれば、自車両に迫る危険に応じて、最適な送信条件で、通信パケットをブロードキャストすることができ、無線電波の過剰な出力により、他車両の通信環境を悪化させることなく、自車両の存在を、自車両に危険を及ぼす可能性のある車両に対し、適切に知らしめることができる。
よって、この無線通信装置を用いて車車間通信を行えば、過剰な送信電力や送信周期で通信パケットをブロードキャストすることにより、通信の干渉が生じ、他の車両で通信パケットの送信が適切に行えなくなり、他車両に危険が及ぶのを、極力防止することができる。
即ち、この無線通信装置を用いれば、車両間の衝突回避を目的とする通信システムにおいて、通信の干渉を抑えて、必要十分に送信条件を設定することができ、車両間で適切に通信を行うことができる。
尚、上述の無線通信装置において、検出手段としては、自車両の速度ベクトルを検出可能な検出手段を用いることができ、この検出手段を用いる場合、パケット送信手段は、ブロードキャストする通信パケットに、自車両の運動状態として、自車両の速度ベクトルを記述する構成にすることができる(請求項2)。
車両間で速度ベクトルを交換すれば、各車両では、自車両と周囲の車両との相対速度ベクトルを求めることができる。従って、この無線通信装置を用いて、車車間通信を行えば、各車両では、相対速度ベクトルに基づき、各通信パケットの送信元車両についての自車両に対する危険度を適切に評価することができて、適切に、送信条件を設定することができる。
この他、上記検出手段としては、自車両の位置座標を検出可能な検出手段を用いることができ、この検出手段を用いる場合、パケット送信手段は、自車両の運動状態として、自車両の位置座標を記述する構成にすることができる(請求項3)。車両間で速度ベクトル及び位置座標を交換すれば、各車両では、他車両との相対速度と位置関係とから、周囲車両との衝突の危険度を精度よく評価することができる。従って、このように無線通信装置を構成すれば、送信条件を、衝突を回避できる必要十分な送信条件に調整することができ、通信の干渉を抑えて、車両間で適切に通信を行うことができる。
また、基準車両設定手段は、通信パケットの送信元車両群の内、自車両を基準として所定の距離内に存在する車両群の中で、危険度が最大の車両を、基準車両に設定する構成にすることができる(請求項4)。
このように無線通信装置を構成すれば、基準車両の設定対象を、自車両から所定範囲に位置する車両に限定することができ、衝突回避の観点から適切に、基準車両を設定して、この車両(基準車両)に対応する送信条件を設定することができる。
この他、基準車両設定手段は、送信元車両群の内、自車両を基準とした送信元車両の相対速度ベクトルと、送信元車両の存在地点を始点とし自車両の存在地点を終点とするベクトルとの角度、が閾値以下の車両群の中で、危険度が最大の車両を、基準車両に設定する構成にされてもよい(請求項5)。
このように無線通信装置を構成すれば、自車両側に向かって移動している車両群に限定して、この車両群の中から、基準車両を設定することができ、適切に基準車両を設定することができる。
また、無線通信装置には、パケット受信手段が受信した通信パケット毎に、自車両の位置座標と、通信パケットに記述された送信元車両の位置座標と、に基づき、送信元車両が走行する道路が、自車両が走行する道路と所定の関係を満足する道路であるか否かを判定する道路関係判定手段を設け、基準車両設定手段は、道路関係判定手段の判定結果に従って、通信パケットの送信元車両群の内、自車両が走行する道路と所定の関係を満足する道路を走行する車両群の中で、危険度が最大の車両を、基準車両に設定する構成にされてもよい(請求項6)。このように無線通信装置を構成しても、適切に基準車両を設定することができる。
この他、基準車両設定手段は、送信元車両群の内、送信元車両の存在地点と自車両の存在地点との間に、他の車両が存在しない車両群の中で、危険度が最大の車両を、基準車両に設定する構成にされてもよい(請求項7)。
自車両との間に他の車両が存在する送信元車両については、この送信元車両が自車両に直接衝突する危険がない。従って、送信元車両群の内、送信元車両の存在地点と自車両の存在地点との間に、他の車両が存在しない車両群の中から、危険度が最大の車両を選択すれば、危険度の低い車両を外して基準車両を選択することができて、適切に基準車両を設定することができる。
また、送信条件設定手段は、基準車両の運動状態として、基準車両の自車両に対する相対距離に基づき、送信電力を設定する構成にすることができる(請求項8)。具体的に、送信条件設定手段は、相対距離が長い程、送信電力を大きい値に設定する構成にされるとよい(請求項9)。
このように無線通信装置を構成すれば、基準車両と自車両との距離(相対距離)に応じて、適切な送信電力で、通信パケットを送信することができ、衝突回避するために必要十分な送信電力で、通信パケットを車両周囲に送信することができる。換言すると、本発明の無線通信装置によれば、過剰な送信電力で通信パケットを送信しなくて済み、通信の干渉を極力防止することができる。
また、危険度の評価は、自車両を基準とした送信元車両の相対速度ベクトルの大きさに基づいて行うことができ、基準車両設定手段は、危険度が最大の車両として、自車両を基準とした相対速度ベクトルの大きさが最大の送信元車両を、基準車両に設定する構成にすることができる(請求項10)。
但し、このような装置構成であると、車両の移動方向に依らず、相対速度ベクトルの大きさにより、基準車両が設定されるため、自車両から離れていく車両が、基準車両に設定される可能性がある。
そこで、好ましくは、次のように基準車両設定手段を構成するとよい。即ち、基準車両設定手段は、自車両を基準とした送信元車両の相対速度ベクトルと、送信元車両の存在地点から自車両の存在地点方向に延びる単位ベクトルと、の内積、が最大の送信元車両を、危険度が最大の車両として、基準車両に設定する構成にされるとよい(請求項11)。
このように、無線通信装置を構成すれば、自車両に向かって高速に移動してくる車両を基準に、送信条件を設定することができ、衝突回避に適切な送信条件で、通信パケットを送信することができる。例えば、この無線通信装置によれば、高速走行はしているが自車両から離れていく車両を、自車両に向かってくる車両に優先して基準車両に設定してしまわずに済み、離れていく車両を基準車両に設定することで、送信電力が過剰に高くなってしまうのを防止することができる。
この他、基準車両設定手段は、通信パケットを送信してきた各送信元車両について、送信元車両が自車両と衝突する可能性の有無を判定し、衝突する可能性があると判定した場合には、更に、衝突までの残り時間を予測し、危険度が最大の車両として、衝突する可能性があると判定した送信元車両群の中から、衝突するまでの残り時間が最小の車両を、基準車両に設定する構成にされてもよい(請求項12)。
衝突の危険が差し迫っている場合には、送信周期を短くして自車両の情報を、危険車両に迅速に伝達するのが好ましいが、送信周期を前もって短く設定しておくと、衝突の危険が差し迫っていない場合に、過剰な送信周期で通信パケットを送信することになり、通信の干渉が生じて、他車両の通信環境が劣化する。
一方、本発明の無線通信装置によれば、衝突するまでの残り時間が最小の車両を、基準車両に設定して、その基準車両に合わせて送信条件を設定するので、過剰に送信周期を短く設定しなくて済み、通信の干渉を抑えて、効率的な通信を実現することができる。
尚、このように基準車両設定手段を構成する場合には、併せて、送信条件設定手段を次のように構成するとよい。即ち、送信条件設定手段は、基準車両が自車両と衝突するまでの残り時間の長さに基づき、送信周期を設定する構成にされるとよい(請求項13)。更に言えば、送信条件設定手段は、衝突までの残り時間が短い程、送信周期を短い値に設定する構成にされるとよい(請求項14)。
本発明の無線通信装置のように、衝突するまでの残り時間に基づいて送信周期を設定すれば、衝突危険度に合わせて、適切な送信周期で通信パケットを送信することができ、過剰な送信周期の設定により、他車両で通信パケットの送信が適切に行われず、当該他車両に危険が及ぶのを極力防止することができる。
この他、上述した各無線通信装置において、送信条件設定手段は、自車両に対する基準車両の相対速度ベクトルの大きさに基づき、送信周期を設定する構成にされてもよい(請求項15)。この場合、送信条件設定手段は、相対速度ベクトルの大きさが大きい程、送信周期を短い値に設定する構成にすることができる(請求項16)。
危険度の高い基準車両の相対速度ベクトルに基づいて送信周期を設定すれば、危険の逼迫度に対応した送信周期で、通信パケットを送信して、高速走行する車両に対して迅速に自車両の情報を伝達することができるので、各車両にて、衝突回避のための車両制御を精度よく実行することができ、衝突を高確率に回避することができる。
また、送信条件設定手段は、自車両を基準とした基準車両の相対速度ベクトルと、基準車両の存在地点から自車両の存在地点方向に延びる単位ベクトルと、の内積、で表される基準車両の自車両方向への速度成分、に基づき、送信周期を設定する構成にされると、一層好ましい(請求項17)。この場合、送信条件設定手段は、上記速度成分が大きい程、送信周期を短い値に設定する構成にすることができる(請求項18)。
基準車両の自車両方向への速度成分に基づき、送信周期を設定すれば、高速に自車両に向かっている車両に対して、その速度に適合する送信周期で、通信パケットを送信することができて、高速走行する車両に対して迅速に自車両の情報を伝達することができる。従って、この無線通信装置を用いれば、適切に送信条件を設定し、衝突回避を目的とした通信を、車両間で適切に行うことができる。
また、上述の無線通信装置において、パケット送信手段は、自車両に設定されている基準車両から過去に受信した通信パケットの内容に基づき、自車両に設定されている基準車両の運動状態を自車両の運動状態と共に記述した通信パケットを、ブロードキャストする構成にされてもよい。このようにパケット送信手段を構成すれば、対応する無線通信装置間で、互いの基準車両の情報を交換することができる。
また、パケット送信手段を、このように構成する場合には、無線通信装置に、パケット受信手段が通信パケットを受信する度、受信した通信パケットが示す通信パケットの送信元車両に設定されている基準車両の運動状態に基づき、自車両に設定されている基準車両を変更する必要があるか否かを判定する変更要否判定手段を設けるとよい。そして、基準車両設定手段は、変更要否判定手段により変更する必要があると判定されると、現在設定されている基準車両に代えて、送信元車両に設定されている基準車両を、自車両の前記基準車両に設定する構成にされるとよい(請求項19)。
尚、基準車両設定手段は、送信元車両に設定されている基準車両の自車両に対する危険度が、自車両に設定されている基準車両よりも高い場合、基準車両を変更する必要があると判定し、送信元車両に設定されている基準車両の自車両に対する危険度が、自車両に設定されている基準車両よりも低い場合、基準車両を変更する必要がないと判定する構成にすることができる(請求項20)。
このように無線通信装置を構成すれば、他車両に設定された基準車両の情報に基づき、自車両の基準車両を、より適切な車両に設定変更することができる。
例えば、高層建造物等の電波障害物が原因で、危険度の高い車両からの通信パケットを、自車両では受信できない環境が考えられる。この場合に、車両間で基準車両の情報を交換すれば、危険度の高い車両の情報を、他車両を介して、取得することができる。従って、この無線通信装置によれば、自車両の基準車両を、より適切な車両に設定変更することができる。
また、通信パケットに、基準車両の運動状態を記述する場合には、パケット受信手段が通信パケットを受信する度、受信した通信パケットの内容に基づき、通信パケットの送信元車両に設定されている基準車両と、自車両に設定されている基準車両と、が同一車両であるか否かを判定する同一判定手段を、無線通信装置に設けてもよい。
また、この無線通信装置には、送信元車両に設定されている基準車両と、自車両に設定されている基準車両と、が同一車両である場合に、基準車両と送信元車両と自車両との位置関係に基づき、自車両に設定されている基準車両を変更する必要があるか否かを判定する変更要否判定手段を設けるとよい。
そして、基準車両設定手段は、変更要否判定手段により変更する必要があると判定されると、自車両に対する危険度が、現在設定されている基準車両の次に大きい車両を、現在設定されている基準車両に代えて、自車両の基準車両に設定する構成にされるとよい(請求項21)。
自車両周囲に位置する車両が、同じ基準車両を設定している環境としては、例えば、自車両と他車両とが、同一レーンを走行中で、基準車両が、自車両及び他車両の後方から接近してくる環境などが考えられる。しかしながら、この場合には、自車両と他車両とが略同じ位置で同じような運動状態にいることから、各車両が、この基準車両に合わせて、高い送信電力や短い送信周期で、通信パケットを送信しなくても、衝突の危険を回避することができる。
そこで、本発明では、自車両と他車両とが同一の基準車両を設定している場合には、当該他車両と自車両と基準車両との位置関係に基づき、自車両の基準車両を変更する必要があるか否かを判定し、必要に応じて、自車両の基準車両を、次候補に変更するようにしている。このように構成された無線通信装置を用いて、車車間通信を行えば、例えば、渋滞中の車両列の最後尾に、後続車両が向かってくる場合に、最後尾周辺の車両が、一斉に、送信電力を上げて通信することで、干渉により、後続車両に、最後尾周辺の位置情報を、後続車両に伝達することができなくなるのを防止することができ、一層好適に、車両間で通信を行うことができる。従って、この無線通信装置によれば、衝突回避に大変役立つ。
尚、変更要否判定手段は、基準車両から送信元車両までの距離が、基準車両から自車両までの距離よりも短い場合に、自車両に設定されている基準車両を変更する必要があると判定する構成にされるとよい(請求項22)。このように変更要否判定手段を構成すれば、簡単な判断で、周囲の車両が、一斉に、送信電力を大きくしたり、送信周期を短くして、通信の干渉が生じるのを極力防止することができる。
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された無線通信装置1の構成を表す説明図である。本実施例の無線通信装置1は、複数の車両間で車両情報を交換するために用いられるものであり、各車両に搭載されて、車車間通信システムを構成する。
具体的に、無線通信装置1は、マイクロコンピュータ等から構成され装置内各部を統括制御する制御部10と、制御部10に制御されて、他の無線通信装置1と無線通信する通信部20と、を備える。この無線通信装置1は、車両に別途搭載されたナビゲーション装置50に接続されて、車両に搭載される。
通信部20は、自車両の運動状態を表す車両情報として、自車両の位置座標及び速度ベクトルを格納した通信パケットを送信する送信部21と、アンテナを介して外部から受信した無線信号から通信パケットを抽出し、これを制御部10に入力する受信部25と、を備える。
送信部21は、予め設定された送信周期で、上記通信パケットを生成して、これを無線信号として送信(ブロードキャスト)する構成にされ、予め設定された送信電力で、上記無線信号をアンテナから外部に出力する。尚、送信周期及び送信電力の設定値は、送信部21が備えるレジスタに保持されており、レジスタに保持される各設定値は、制御部10により更新される。
図2(a)は、送信部21にて生成される通信パケットの構成を表す説明図である。図2(a)に示すように、送信部21で生成されて車両間で授受される通信パケットは、パケット番号を表すヘッダ情報と、自車両の位置座標及び自車両の速度ベクトルと、を含んだ構成にされている。送信部21は、図2(b)に示す処理を繰返し実行することにより、図2(a)に示す構成の通信パケットを、予め設定された送信周期及び送信電力で、無線信号として外部(自車両周囲)にブロードキャストする。
図2(b)は、送信部21が繰返し実行するパケット送信処理を表すフローチャートである。パケット送信処理を開始すると、送信部21は、パケット送信後の経過時間を表すカウンタの値が、予めレジスタに設定された送信周期以上となるまで待機する。
そして、カウンタ値が送信周期以上となると(S110でYes)、前回パケット送信時に付したパケット番号に1加算した次番号を、パケット番号として記したヘッダ情報を格納した通信パケットであって、制御部10から入力された自車両の最新の位置座標及び速度ベクトルを車両情報として記した通信パケットを生成し(S120)、生成した通信パケットを、レジスタに設定された送信電力で、アンテナを通じ無線信号として外部にブロードキャストする(S130)。
その後、送信部21は、カウンタ値をゼロにリセットして(S140)、当該パケット送信処理を一旦終了する。送信部21は、このような内容のパケット送信処理を繰返し実行することで、予め設定された送信周期毎に、自車両の位置座標及び速度ベクトルを格納した通信パケットを外部にブロードキャストする。
尚、制御部10から送信部21に入力される自車両の位置座標及び速度ベクトルの情報は、無線通信装置1に接続されたナビゲーション装置50から提供される。
ナビゲーション装置50には、リンクデータやノードデータ等からなり全国に敷設された各道路の位置や接続関係を表す地図データベース(DB)51、液晶ディスプレイからなる表示部53、スピーカを備え各種ガイド音声を出力する音声出力部55、及び、GPS受信機や自律航法センサ(例えば、車輪速センサやジャイロスコープ等)から構成され自車両の位置座標及び自車両の速度ベクトルを、絶対座標系で検出する状態検出器57が設けられている。
無線通信装置1の制御部10は、自身と通信可能に接続された上記ナビゲーション装置50の状態検出器57から得られる自車両の位置座標及び速度ベクトルの情報を、送信部21に入力し、自車両の位置座標及び速度ベクトルを記述した通信パケットを、送信部21に、無線信号の形態で、自車両周囲にブロードキャストさせる。
また、本実施例の無線通信装置1は、自車両周囲の他車両に搭載された同種の無線通信装置から受信部25を通じて受信した通信パケットに基づき、自車両周囲に位置する各車両の車両情報(位置座標及び速度ベクトル)を、ナビゲーション装置50や、車内LANに接続された車両制御を司る外部ECUに送信する機能を備える。
この機能により、無線通信装置1は、ナビゲーション装置50や外部ECUに自車両周囲の車両情報を提供する。
一方、ナビゲーション装置50は、この車両情報を受けて、表示部53で表示する地図画面上に、自車両周囲に位置する車両のシンボルを、例えば、図9に示すように配置し、運転者が自車両周囲の車両配置を把握できるようにする。また、緊急時には、車両間の衝突を回避するため、音声出力部55を通じて、警報音を出力する。また、外部ECUは、この車両情報を受けて、緊急時には、ステアリング制御やブレーキ制御等を行い、衝突回避のための車両制御を行う。
続いて、無線通信装置1が他車両の無線通信装置から受信した通信パケットに基づき実行する危険車両設定処理について説明する。図3は、無線通信装置1の制御部10が繰返し実行する危険車両設定処理を表すフローチャートである。
制御部10は、受信部25が通信圏内(自車両周囲)に存在する不特定の各車両に搭載された同種の無線通信装置から受信した通信パケットに基づき、自車両に対して危険度が最大の車両を特定し、この車両の運動状態に基づき、送信電力及び送信周期を、送信部21に対して設定する。このようにして、無線通信装置1は、衝突回避に必要十分な送信電力及び送信周期で、通信パケットをブロードキャストし、車両間で通信の干渉が極力生じないようにする。図3に示す危険車両設定処理は、危険度が最大の車両を特定し、送信電力及び送信周期を調整するために、制御部10が実行するものである。
この危険車両設定処理を開始すると、制御部10は、受信部25が外部から通信パケットを受信したか否かを判断し、通信パケットを受信していないと判断すると(S210でNo)、S290に移行し、通信パケットを受信したと判断すると(S210でYes)、S220に移行する。
S220に移行すると、制御部10は、状態検出器57から得られる自車両の位置座標Xs及び速度ベクトルVsと、受信パケットに記述されたパケット送信元車両の位置座標X及び速度ベクトルVと、に基づき、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対距離D及び相対速度ベクトルの絶対値δVを算出する。具体的には、相対距離Dとして、D=|X−Xs|を算出し、相対速度ベクトル絶対値δVとして、δV=|V−Vs|を算出する。
そして、値D及びδVの算出を終えると、S230に移行し、危険車両が設定されているか否かを判断する。
本実施例の制御部10は、他車両の無線通信装置から通信パケットを受信する度、そのパケット送信元車両の運動状態を、制御部10が内蔵するRAMに記憶された周辺車両リストに登録する構成にされている。図4は、周辺車両リストの構成を表す説明図である。
具体的に、制御部10は、通信パケットを受信する度、周辺車両リストに、受信した通信パケットが示すパケット番号と、パケット送信元車両の位置座標Xr及び速度ベクトルVrと、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対距離Drと、後述するパケット送信元車両の相対速度評価値δVrと、通信パケットの受信時刻を表すタイムスタンプTrと、パケット送信元車両が危険車両であるか否かを表す危険車両フラグと、からなるレコードを登録する構成にされている。尚、危険車両フラグは、値0又は値1を採る。
制御部10は、S230において、この周辺車両リストに登録された各レコードの危険車両フラグを参照することにより、危険車両が設定されているか否かを判断する。具体的に、S230では、周辺車両リストに登録されたいずれのレコードの危険車両フラグも値1に設定されていない場合、危険車両が設定されていないと判断し(S230でNo)、周辺車両リストに登録されたレコードのいずれかの危険車両フラグが値1に設定されている場合、危険車両が設定されていると判断する(S230でYes)。また、周辺車両リストにレコードが一つも登録されていない場合には、危険車両が設定されていないと判断する。
S230において、危険車両が設定されていないと判断すると、制御部10は、S260に移行して、パケット送信元車両が自車両に対し「危険度大」であると判定する。一方、危険車両が設定されていると判断すると、S240に移行する。
また、S240に移行すると、制御部10は、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrと、今回受信した通信パケットに基づきS220で求めたパケット送信元車両の相対速度ベクトル絶対値δVとを比較し、S220で求めた相対速度ベクトル絶対値δVが、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrのいずれよりも大きいか否かを判断する(S250)。尚、詳細は後述するが、本実施例では、周辺車両リストの各レコードに、相対速度評価値δVrとして、レコードに対応する車両の相対速度ベクトル絶対値δVが記述されるものとする。
制御部10は、S220で求めたパケット送信元車両の相対速度ベクトル絶対値δVが、周辺車両リストに登録されたいずれのレコードの値δVrよりも大きいと判断すると(S250でYes)、パケット送信元車両が自車両に対し「危険度大」であると判定する(S260)。その後、S280に移行する。
一方、S220で求めたパケット送信元車両の相対速度ベクトル絶対値δVが、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrのいずれかと同一又はいずれかよりも小さいと判断すると(S250でNo)、パケット送信元車両が自車両に対し「危険度小」であると判定する(S270)。その後、S280に移行する。
また、S280に移行すると、制御部10は、図5に示す更新設定処理を実行する。図5は、制御部10が実行する更新設定処理を表すフローチャートである。図5に示す更新設定処理を開始すると、制御部10は、今回受信した通信パケットが示すパケット番号に基づき、周辺車両リストから、今回受信した通信パケットの送信元車両と同一車両のものと推定されるレコードを検索する(S310)。
上述したようにパケット番号は、各無線通信装置1において、送信対象の通信パケットに対して連番で割り当てられる。従って、S310では、今回の受信パケットが示すパケット番号PN0を基準として、値(PN0−α)よりも大きく値PN0より小さい範囲のパケット番号PN(PN0>PN>PN0−α)を示すレコードを、今回のパケット送信元車両と同一車両のものと推定されるレコードとして、検索する。尚、値αは、2以上の整数値で任意に定めることができる。
そして、該当するレコードが、周辺車両リストに存在する場合には(S320でYes)、S325に移行する。一方、該当するレコードが、周辺車両リストに存在しない場合には(S320でNo)、S365に移行する。
S325に移行すると、制御部10は、該当するレコードの全てを、更新対象の候補に設定する。そして、この処理を終えると、上記設定した更新対象の候補の中で、今回のパケット送信元車両と同一車両のレコードを特定可能であるか否かを判断する(S330)。
例えば、S330では、更新対象の候補に設定されたレコードが一つしかない場合であって、更新対象の候補に設定されたレコードが示すパケット番号PNが、今回受信した通信パケットが示すパケット番号PN0と連番になっている場合(即ち、PN=PN0−1である場合)、今回のパケット送信元車両と同一車両のレコードを特定可能であると判断する(S330でYes)。一方、それ以外の場合には、今回のパケット送信元車両と同一車両のレコードを特定できないと判断する(S330でNo)。
制御部10は、ここで、特定可能であると判断すると(S330でYes)、S335に移行し、同一車両のレコードとして特定されるレコードを、更新対象レコードに設定する。その後、S375に移行する。
一方、特定できないと判断すると(S330でNo)、制御部10は、S340に移行し、更新対象の候補に設定されたレコードの一つを、処理対象に設定する。その後、S345に移行して、処理対象レコードが示す車両の位置座標Xr、速度ベクトルVr、及び、タイムスタンプTrの情報から、このレコードに対応する車両の現在の位置座標Xnを推定する。例えば、車両が等速運動していると仮定して、現在の位置座標Xnを、Xn=Xr+Vr・ΔTと推定する。但し、ΔTは、現在時刻とタイムスタンプTrとの差分である。
また、S345での処理を終えると、制御部10は、今回受信した通信パケットが示すパケット送信元車両の位置座標Xと、推定した位置座標Xnとの誤差ε=|X−Xn|を算出する(S350)。その後、更新対象の候補に設定された全レコードを処理対象に設定して誤差εを算出したか否かを判断し(S355)、全レコードについて誤差εを算出していないと判断すると(S355でNo)、S340に移行して、未処理のレコードを一つ処理対象に設定し、S345以降の処理を実行する。
また、更新対象の候補に設定された全レコードを処理対象に設定して誤差εを算出したと判断すると(S355でYes)、制御部10は、S360に移行して、各レコードの誤差εの一群において、最小値を採る誤差εが、予め設定された閾値以下であるか否かを判断する。
そして、誤差εの最小値が閾値以下であると判断すると(S360でYes)、S370に移行し、更新対象の候補に設定されたレコード群の内、誤差εが最小のレコードを、今回のパケット送信元車両と同一車両のレコードであると判定して、当該誤差εが最小のレコードを、更新対象レコードに設定する。その後、S375に移行する。
また、S375に移行すると、制御部10は、今回受信した通信パケットに記されたパケット番号及び車両情報に基づき、更新対象レコードの内容を更新する。
具体的には、更新対象レコードが示すパケット番号を、今回受信した通信パケットが示すパケット番号に更新し、更新対象レコードが示す位置座標Xrを、今回受信した通信パケットが示すパケット送信元車両の位置座標Xに更新し、更新対象レコードが示す速度ベクトルVrを、今回受信した通信パケットが示すパケット送信元車両の速度ベクトルVに更新する。
同様にして、更新対象レコードが示す相対距離Drを、今回受信した通信パケットに基づきS220で算出した相対距離Dに更新し、更新対象レコードが示す相対速度評価値δVrを、今回受信した通信パケットに基づきS220で算出した相対速度ベクトル絶対値δVに更新する。また、タイムスタンプTrを、現在時刻に更新する。但し、ここでは、更新対象レコードの危険車両フラグを更新しないものとする。
このようにして、S375で更新対象レコードの内容を更新すると、制御部10は、S380に移行する。
一方、S360において、誤差εの最小値が閾値より大きいと判断すると(S360でNo)、制御部10は、周辺車両リストに、今回受信した通信パケットの送信元車両と同一車両のレコードが存在しないと判定して、受信した通信パケットの内容に基づき、新規レコードを生成し、これを周辺車両リストに登録する(S365)。
尚、新規レコードには、S375での処理と同様にして、受信した通信パケットの内容に基づき、パケット番号及び各値Xr,Vr,Dr,δVr,Trを記述する。但し、S365では、新規レコードに、危険車両フラグとして値0を記述する。このようにして、S365での処理を終えると、制御部10は、S380に移行する。
S380に移行すると、制御部10は、パケット送信元車両が、危険車両設定処理における前半のステップ(S260,S270参照)で「危険度大」と判定されているか否かを判断し、「危険度大」と判定されていると判断すると(S380でYes)、今回登録若しくは更新したレコードに対して危険車両設定を施す(S390)。
即ち、S365で登録したレコード若しくはS375で更新したレコードの危険車両フラグを値1にセットし、このレコードを除く周辺車両リスト内の全レコードの危険車両フラグを値0にリセットする(S390)。このようにして、S390では、自車両周辺の車両の一つを、危険車両に設定する。
また、危険車両設定を行うと、制御部10は、S395に移行して、後述する電力周期切替処理タスク(図7参照)に、危険車両更新通知を入力し、危険車両を更新したことを通知する。その後、当該更新設定処理を終了する。
一方、制御部10は、パケット送信元車両が「危険度小」と判定されていると判断すると(S380でNo)、S390,S395の処理を実行することなく、即ち、危険車両を更新することなく、当該更新設定処理を終了する。
また、このようにしてS280で更新設定処理を終了すると、制御部10は、危険車両設定処理を一旦終了し、再度、S210から同様の処理を繰返し実行する。そして、他車両の無線通信装置から通信パケットを受信していない期間には(S210でNo)、S290にて、図6に示す非受信時処理を実行する動作を繰り返す。図6は、制御部10が実行する非受信時処理を表すフローチャートである。
図6に示す非受信時処理を開始すると、制御部10は、周辺車両リストに登録された各レコードのタイムスタンプTrに基づき、最後に更新されてから所定時間が経過したレコードを、該当車両が通信圏から離脱したとして、周辺車両リストから削除する。具体的に、ここでは、現在時刻からタイムスタンプTrが示す時刻を引いた時間が所定時間を越えるレコードを、周辺車両リストから削除する(S291)。
また、この処理を終えると、制御部10は、危険車両が通信圏から離脱したか否かを判断する(S293)。具体的には、S291で、危険車両フラグが値1に設定されたレコードを削除したか否かを判断することで、危険車両が離脱したか否かを判断する。
S293で、危険車両が離脱していないと判断すると、制御部10は、S295〜S299の処理を実行することなく、当該非受信時処理を終了する。一方、S293で、危険車両が離脱していると判断すると、周辺車両リストがレコードの登録されていない空の状態であるか否かを判断する(S295)。そして、周辺車両リストが空の状態であると判断すると(S295でYes)、S299に移行して、危険車両の設定がなくなったことを知らせるために、S395での処理と同様、後述する電力周期切替処理タスクに対し、危険車両更新通知を入力して、危険車両を更新したことを通知する。その後、当該非受信時処理を終了する。
これに対し、周辺車両リストが空の状態ではないと判断すると(S295でNo)、制御部10は、S297に移行し、周辺車両リストに登録されているレコード群の内、相対速度評価値δVrが最大のレコードを、危険車両に設定する。即ち、周辺車両リストに登録されているレコード群の内、相対速度評価値δVrが最大のレコードの危険車両フラグを、値1に設定する。その後、S299に移行して、電力周期切替処理タスクに危険車両更新通知を入力し、当該非受信時処理を終了する。
続いて、上述の電力周期切替処理タスクにより実現される処理(図7)について説明する。図7は、制御部10が実行する電力周期切替処理を表すフローチャートである。制御部10は、無線通信装置1が起動された直後から、この電力周期切替処理を実行する。
電力周期切替処理を開始すると、制御部10は、送信周期及び送信電力として、内蔵のROM(図示せず)に記録されたデフォルト値を、通信部20(具体的には送信部21)に設定し、通信部20を初期化する。このようにして、制御部10は、送信部21からデフォルトの送信周期及び送信電力で通信パケットが送信されるようにする(S410)。
また、この処理を終えると、制御部10は、S420に移行し、危険車両設定処理タスクからS299,S395の処理により、危険車両更新通知が入力されるまで待機する。そして、危険車両更新通知が入力されると(S420でYes)、S430に移行し、周辺車両リストに登録された各レコードの危険車両フラグを参照することにより、S230と同様の手法で、危険車両が設定されているか否かを判断する。
そして、危険車両が設定されていると判断すると(S430でYes)、内蔵のROMに記録された送信電力設定マップに従って、送信部21の送信電力を、危険車両のレコードが示す相対距離Drに対応した値に更新する(S440)。図8(a)は、ROMに記録された送信電力設定マップの概念図である。
本実施例の制御部10は、内蔵のROMにおいて、相対距離Dと設定すべき送信電力の対応関係を示す送信電力設定マップを記憶している。この送信電力設定マップにおいては、図8(a)に示すように、相対距離が大きくなるにつれて送信電力が大きくなるように相対距離と送信電力との対応関係が設定されており、制御部10は、S440において、この送信電力設定マップに従い、相対距離が大きい(長い)程、高い送信電力を、送信部21に設定する。
また、この処理を終えると、制御部10は、S450に移行し、内蔵のROMに記録された送信周期設定マップに従って、送信部21の送信周期を、危険車両のレコードが示す相対速度評価値δVrに対応した値に更新する。尚、図8(b)は、ROMに記録された送信周期設定マップの概念図である。
本実施例の制御部10は、図8(b)に示すように、ROMにおいて、相対速度ベクトル絶対値δVと設定すべき送信周期との対応関係を示す送信周期設定マップを記憶している。具体的に、この送信周期設定マップにおいては、相対速度ベクトル絶対値が大きくなるにつれて送信周期が短くなるように相対速度ベクトル絶対値と送信周期との対応関係が設定されている。
即ち、制御部10は、S450において、危険車両のレコードが示す相対速度評価値δVrとしての相対速度ベクトル絶対値δVに基づき、相対速度ベクトル絶対値δVが大きい程、短い送信周期を、送信部21に設定する。
このようにして、制御部10は、危険車両が変更された場合、変更後の危険車両の運動状態に対応した値に、送信電力及び送信周期を設定し、以後、設定した送信電力及び送信周期で、送信部21から通信パケットが送信されるようにする。
また、送信電力及び送信周期を設定すると(S440,S450)、制御部10は、S420に移行し、新しく危険車両更新通知が入力されるまで待機する。そして、新しく危険車両更新通知が入力されると、再び、S430に移行して、後続の処理を実行する。
一方、S430で、危険車両が設定されていないと判断すると(S430でNo)、制御部10は、S460に移行し、送信部21に、送信電力として上述のデフォルト値を設定する。また、送信周期についても同様に、デフォルト値を設定する(S470)。このようにして、制御部10は、危険車両が設定されていない場合、デフォルトの送信電力及び送信周期で、送信部21から通信パケットが送信されるようにする。
また、このようにして送信電力及び送信周期をデフォルト値に設定すると(S460,S470)、制御部10は、S420に移行し、新しく危険車両更新通知が入力されるまで待機し、新しく危険車両更新通知が入力されると、再び、S430に移行して、後続の処理を実行する。
以上、第一実施例の無線通信装置1の構成について説明したが、この無線通信装置1では、自車両を基準とした相対速度ベクトルの大きさ(絶対値)δVで、自車両に対する他車両の危険度を評価し、図9に示すように、自車両A0の周りに複数の車両A1,A2,A3,A4,A5,A6が存在する場合、値δV(値δVr)が最大の車両A6を危険車両に設定し、この危険車両との相対距離Dに対応した送信電力で通信パケットを送信する。また、危険車両の相対速度ベクトル絶対値δVが大きい程、短い送信周期で、通信パケットを、送信する。
従って、この無線通信装置1によれば、危険車両に対して自車両の存在を知らしめるのに必要十分な送信電力で、自車両の車両情報を搭載した通信パケットを送信することができ、自車両と他車両との衝突を、高確率で回避することができる。また、この無線通信装置1によれば、自車両に対し危険車両が高速に移動している程、短い周期で通信パケットを送信するので、高速に接近する車両に対して、迅速に自車両の車両情報を伝達することができる。
即ち、高速に危険車両が自車両に近づいているのにも拘わらず長い送信周期で車両情報を送信すると、迅速に自車両の存在を、危険車両に伝えることができないため、危険車両における当該車両の認知が遅れて、衝突を回避することができない可能性があるが、本実施例によれば、危険車両との相対速度に応じた送信周期で、通信パケットを送信するので、そのような伝達の遅延が生じずに済み、高確率に車両間の衝突を回避することができる。
また、本実施例によれば、衝突回避に必要十分な送信電力及び送信周期で通信パケットを送信するので、車両密度が高い場合に、車両間の通信干渉が激しくなって、正常に車両間で通信を行うことができなくなり、衝突回避に必要な車両情報の交換ができなくなるのを極力防止することができる。従って、この無線通信装置1を用いて車車間通信システムを構成すれば、車両密度等に拘わらず、衝突回避のための通信を、車両間で適切に行うことができる。
続いて、第二実施例の無線通信装置1について説明する。但し、第二実施例の無線通信装置1は、危険車両設定処理の内容が、第一実施例とは異なる程度であり、その他の構成については、第一実施例と同一であるので、ここでは、第二実施例の説明として、制御部10が実行する危険車両設定処理の内容を選択的に説明する。
図10は、第二実施例の無線通信装置1において、制御部10が繰返し実行する危険車両設定処理を表すフローチャートである。
図10に示す危険車両設定処理を開始すると、制御部10は、受信部25が外部から通信パケットを受信したか否かを判断し(S510)、通信パケットを受信していないと判断すると(S510でNo)、S590に移行し、上述の非受信時処理を実行する。その後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
これに対し、通信パケットを受信したと判断すると(S510でYes)、制御部10は、S520に移行し、状態検出器57から得られる自車両の位置座標と、受信パケットに記述されたパケット送信元車両の位置座標と、に基づき、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対距離Dを算出する。そして、相対距離Dの算出を終えると、S521に移行して、相対距離Dが予め定められた閾値以下であるか否かを判断し、相対距離Dが閾値以下であると判断すると(S521でYes)、S523に移行する。
一方、相対距離Dが閾値より大きいと判断すると(S521でNo)、制御部10は、S525に移行し、周辺車両リストへのレコード登録及びレコードの更新を禁止するためにリスト登録禁止判定を下す。その後、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度小」であると判定し(S570)、S575に移行する。
また、S523に移行すると、制御部10は、状態検出器57から得られる自車両の速度ベクトルと、受信パケットに記述されたパケット送信元車両の速度ベクトルと、に基づき、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対速度ベクトルの絶対値δVを算出し、その後、S530に移行する。
また、S530に移行すると、制御部10は、周辺車両リストに登録された各レコードの危険車両フラグを参照することにより、現在、危険車両が設定されているか否かを判断する。そして、危険車両が設定されていないと判断すると(S530でNo)、S560に移行し、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度大」であると判定する。
一方、危険車両が設定されていると判断すると(S530でYes)、制御部10は、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrと、今回、受信パケットに基づきS523で求めた値δVとを比較して(S540)、S523で求めた値δVが、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrのいずれよりも大きいか否かを判断する(S550)。
そして、S523で求めた値δVが、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrのいずれよりも大きいと判断すると(S550でYes)、S560に移行し、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度大」であると判定する。その後、S575に移行する。
一方、S523で求めたパケット送信元車両の相対速度ベクトル絶対値δVが、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrのいずれかと同一又はいずれかよりも小さいと判断すると(S550でNo)、制御部10は、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度小」であると判定し(S570)、その後、S575に移行する。
また、S575に移行すると、制御部10は、リスト登録禁止判定が下されているか否かを判断し、リスト禁止判定が下されていなければ(S575でNo)、S580にて、上述の更新設定処理を実行した後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
一方、リスト禁止判定が下されていると判断すると(S575でYes)、制御部10は、S580の処理を実行することなく、当該危険車両設定処理を一旦終了する。即ち、本実施例では、相対距離Dが閾値以下である場合、S540で危険度を評価してS580で更新設定処理を実行するが、相対距離Dが閾値を越えている場合には、S540で危険度の評価もしなければ、S580で更新設定処理を実行せずに、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
このようにして、本実施例では、相対距離Dが閾値を越えるパケット送信元車両については、このパケット送信元車両のレコードを、周辺車両リストに登録しないようにし、このパケット送信元車両を危険車両に設定しないようにする。
以上、第二実施例について説明したが、第二実施例によれば、自車両を基準とした所定距離内に存在する車両群の中で、危険度が最大(換言すると、δVが最大)の車両を、危険車両に設定するので、衝突回避の観点から、第一実施例よりも一層適切に危険車両を設定し、一層適切に送信条件(送信電力及び送信周期)を設定することができる。
即ち、第二実施例によれば、第一実施例よりも、危険車両を適切に特定して、この危険車両に合わせて送信条件を設定するので、通信資源を有効活用して通信することができ、通信の干渉を抑えて、効率的且つ適切に、衝突回避に必要な車両情報を、車両間で交換することができる。
続いて、第三実施例の無線通信装置1について説明する。但し、第三実施例の無線通信装置1は、危険車両設定処理の内容が、第一実施例とは異なる程度であり、その他の構成については、第一実施例と同一であるので、ここでは、第三実施例の無線通信装置1の説明として、制御部10が実行する危険車両設定処理の内容を選択的に説明する。
図11は、第三実施例における無線通信装置1の制御部10が繰返し実行する危険車両設定処理を表すフローチャートである。図11に示す危険車両設定処理を開始すると、制御部10は、受信部25が通信パケットを受信したか否かを判断し(S610)、通信パケットを受信していないと判断すると(S610でNo)、S690に移行し、上述の非受信時処理を実行した後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
これに対し、通信パケットを受信したと判断すると(S610でYes)、制御部10は、状態検出器57から得られる自車両の位置座標及びナビゲーション装置50が有する地図データベース51の内容に基づき、自車両の走行道路(例えば、走行道路のリンクID)を、特定する(S620)。
同様に、制御部10は、受信した通信パケットが示すパケット送信元車両の位置座標及びナビゲーション装置50が有する地図データベース51の内容に基づき、送信元車両の走行道路(リンクID)を特定する(S621)。
また、自車両及びパケット送信元車両の走行道路を特定すると、制御部10は、上記特定した走行道路の情報に基づき、パケット送信元車両が、自車両と同一の道路又はそれと交差する道路を走行しているか否かを判断する(S623)。換言すると、パケット送信元車両が、自車両と同一の道路、又は、この道路に接続されて当該道路に侵入することが可能な他の道路を走行しているか否かを判断する。具体的には、例えば、パケット送信元車両が走行中のリンクが、自車両が走行中のリンクと同一のリンク、又は、自車両が走行中のリンクに接続されたリンクであるか否かを判断する。
そして、パケット送信元車両が、自車両と同一の道路又はそれと交差する道路を走行していると判断すると(S623でYes)、S627に移行する。一方、パケット送信元車両が、自車両と同一の道路又はそれと交差する道路を走行していないと判断すると(S623でNo)、S625に移行し、周辺車両リストへのレコード登録及びレコードの更新を禁止するためにリスト登録禁止判定を下す。その後、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度小」であると判定し(S670)、S675に移行する。
また、S627に移行すると、制御部10は、状態検出器57から得られる自車両の位置座標及び速度ベクトルと、受信パケットに記述されたパケット送信元車両の位置座標及び速度ベクトルと、に基づき、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対距離D及び相対速度ベクトル絶対値δVを算出する。その後、S630に移行する。
S630に移行すると、制御部10は、周辺車両リストに登録された各レコードの危険車両フラグを参照することにより、現在、危険車両が設定されているか否かを判断し、危険車両が設定されていないと判断すると(S630でNo)、S660に移行し、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度大」であると判定する。その後、S675に移行する。
一方、危険車両が設定されていると判断すると(S630でYes)、制御部10は、S627にて算出した相対速度ベクトル絶対値δVを用い、S640〜S670で、第二実施例のS540〜S570と同様の処理を実行する。その後、S675に移行する。
また、S675に移行すると、制御部10は、リスト登録禁止判定(S625参照)が下されているか否かを判断し、リスト禁止判定が下されていなければ(S675でNo)、S680に移行し、上述の更新設定処理を実行した後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
一方、リスト禁止判定が下されていると判断すると(S675でYes)、S680の処理を実行することなく、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
このようにして、本実施例では、自車両と同一の道路及びそれと交差する道路のいずれの道路にもいない車両についての危険度評価(S640の処理)を実行せず、この車両のレコードを、周辺車両リストに登録しないようにし、当該車両を危険車両に設定しないようにする。
以上、第三実施例について説明したが、第三実施例によれば、自車両が走行する道路と同一の道路又はそれと交差する道路を走行する車両群の中で、危険度が最大(換言すると、δVが最大)の車両を、危険車両に設定するので、衝突回避の観点から、第一実施例よりも一層適切に危険車両を設定して、送信条件(送信電力及び送信周期)を設定することができる。即ち、第三実施例によれば、第一実施例よりも、危険車両を適切に設定して、この危険車両に合わせて送信条件を設定することができ、通信の干渉を抑えて、効率的且つ適切に、衝突回避に必要な車両情報を、車両間で交換することができる。
続いて、第四実施例の無線通信装置1について説明する。但し、第四実施例の無線通信装置1は、危険車両設定処理の内容が、第一実施例とは異なる程度であり、その他の構成については、第一実施例と同一であるので、ここでは、第四実施例の説明として、制御部10が実行する危険車両設定処理の内容を選択的に説明する。
図12(a)は、第四実施例の無線通信装置1における制御部10が繰返し実行する危険車両設定処理を表すフローチャートである。
図12(a)に示す危険車両設定処理を開始すると、制御部10は、受信部25が通信パケットを受信したか否かを判断し(S710)、通信パケットを受信していないと判断すると(S710でNo)、S790に移行し、上述の非受信時処理を実行した後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
これに対し、通信パケットを受信したと判断すると(S710でYes)、制御部10は、S720に移行し、状態検出器57から得られる自車両の位置座標と、受信パケットに記述されたパケット送信元車両の位置座標と、に基づき、自車両の存在地点とパケット送信元車両の存在地点との間の領域Rに、他車両が存在するか否かを判断する。
尚、図12(b)は、上記領域Rを示した説明図である。即ち、S720では、自車両とパケット送信元車両を結ぶ直線を中心に所定幅の領域を、上記領域Rと定義する。そして、この領域Rの位置座標Xrが記されたレコードが周辺車両リスト内に存在する場合には、自車両とパケット送信元車両との間の領域Rに、他車両が存在すると判断し、この領域R内の位置座標Xrが記されたレコードが周辺車両リスト内に存在しない場合には、自車両とパケット送信元車両との間の領域Rに、他車両が存在しないと判断する。
但し、周辺車両リストには、パケット送信元車両と同一車両のレコードが登録されている可能性もあるため、この領域R内の位置座標Xrが記されたレコードが周辺車両リスト内に存在する場合には、該当する各レコードのパケット番号PNと、今回受信した通信パケットが示すパケット番号PN0とを比較して、該当する各レコードについて、パケット番号PNが、値(PN0−α)よりも大きくPN0より小さい範囲(PN0>PN>PN0−α)にあるか否かを判断し、該当する全レコードのパケット番号PNが上記範囲内にある場合には、例外的に、自車両とパケット送信元車両との間の領域Rに、他車両が存在しないと判断する。
即ち、上記範囲(PN0>PN>PN0−α)外のパケット番号を示し領域R内の位置座標Xrを示すレコードが周辺車両リスト内に存在する場合に限って、自車両とパケット送信元車両との間の領域Rに、他車両が存在すると判断する。
尚、本実施例では領域Rを、自車両とパケット送信元車両を結ぶ直線を中心とした方形状の領域として定義したが、領域Rは、自車両とパケット送信元車両との間に位置する道路の形状に合わせて定義されてもよい。
自車両とパケット送信元車両との間の領域Rに、他車両が存在すると判断すると(S720でYes)、制御部10は、S725に移行して、リスト登録禁止判定を下す。その後、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度小」であると判定し(S770)、S775に移行する。
一方、自車両とパケット送信元車両との間の領域Rに、他車両が存在しないと判断すると(S720でNo)、制御部10は、S723に移行し、状態検出器57から得られる自車両の位置座標及び速度ベクトルと、受信パケットに記述されたパケット送信元車両の位置座標及び速度ベクトルと、に基づき、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対距離D及び相対速度ベクトル絶対値δVを算出する。その後、S730に移行する。
また、S730に移行すると、制御部10は、周辺車両リストに登録された各レコードの危険車両フラグを参照することにより、現在、危険車両が設定されているか否かを判断する。そして、危険車両が設定されていないと判断すると(S730でNo)、S760に移行し、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度大」であると判定する。その後、S775に移行する。
一方、危険車両が設定されていると判断すると(S730でYes)、制御部10は、S723にて算出した相対速度ベクトル絶対値δVを用い、S740〜S770で、第二実施例のS540〜S570と同様の処理を実行する。その後、S775に移行する。
また、S775に移行すると、制御部10は、リスト登録禁止判定(S725参照)が下されているか否かを判断し、リスト禁止判定が下されていなければ(S775でNo)、S780にて、上述の更新設定処理を実行した後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。一方、リスト禁止判定が下されていると判断すると(S775でYes)、制御部10は、S780の処理を実行することなく、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
このようにして、本実施例では、パケット送信元車両と自車両との間に他車両が存在する場合、このパケット送信元車両のレコードを、周辺車両リストに登録しないようにし、このパケット送信元車両を危険車両に設定しないようにする。
以上、第四実施例について説明したが、第四実施例によれば、周辺の車両群の内、自車両との間に、他の車両が存在しない隣接する車両群の中で、危険度が最大(δVが最大)の車両を、危険車両に設定するので、渋滞の最後尾周辺で、複数の車両が、渋滞の列に後方から近づいてくる遠方の同一車両を、危険車両にしてしまうことにより、通信の干渉が激しく発生し、当該危険車両に円滑に車両情報を送信することができなくなるのを防止することができる。従って、効率的且つ適切に、衝突回避に必要な車両情報を、車両間で交換することができる。
続いて、第五実施例の無線通信装置1について説明する。但し、第五実施例の無線通信装置1は、危険車両設定処理の内容が、第一実施例とは異なる程度であり、その他の構成については、第一実施例と同一であるので、ここでは、第五実施例の説明として、制御部10が実行する危険車両設定処理の内容を選択的に説明する。
図13は、第五実施例の無線通信装置1における制御部10が繰返し実行する危険車両設定処理を表すフローチャートである。
図13に示す危険車両設定処理を開始すると、制御部10は、受信部25が通信パケットを受信したか否かを判断し(S810)、通信パケットを受信していないと判断すると(S810でNo)、S890に移行し、上述の非受信時処理を実行した後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
これに対し、通信パケットを受信したと判断すると(S810でYes)、制御部10は、S820に移行し、状態検出器57から得られる自車両の速度ベクトルVsと、受信パケットに記述されたパケット送信元車両の速度ベクトルVと、に基づき、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対速度ベクトルVp=V−Vsを算出する。
また、この処理を終えると、制御部10は、状態検出器57から得られる自車両の位置座標Xs及び受信パケットに記述されたパケット送信元車両の位置座標Xに基づき、パケット送信元車両の存在地点Paを始点とし、自車両の存在地点Pbを終点とするベクトルQ=Xs−Xに対して、相対速度ベクトルVpがなす角度θ(0≦θ≦π)を算出する(S821)。尚、図14は、角度θの定義を記した説明図である。
そして、角度θが予め定められた閾値以下であるか否かを判断し(S823)、角度θが閾値を超えていると判断すると(S823でNo)、S825に移行して、リスト登録禁止判定を下す。その後、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度小」であると判定し(S870)、S875に移行する。
一方、角度θが予め定められた閾値以下であると判断すると(S823でYes)、制御部10は、S827に移行し、状態検出器57から得られる自車両の位置座標及び速度ベクトルと、受信パケットに記述されたパケット送信元車両の位置座標及び速度ベクトルと、に基づき、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対距離D及び相対速度ベクトル絶対値δVを算出する。その後、S830に移行する。
また、S830に移行すると、制御部10は、現在、危険車両が設定されているか否かを判断し、危険車両が設定されていないと判断すると(S830でNo)、S860に移行して、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度大」であると判定する。その後、S875に移行する。
一方、危険車両が設定されていると判断すると(S830でYes)、制御部10は、S827で算出した相対速度ベクトル絶対値δVを用い、S840〜S870で、第二実施例のS540〜S570と同様の処理を実行する。その後、S875に移行する。
また、S875に移行すると、制御部10は、リスト登録禁止判定(S825参照)が下されているか否かを判断し、リスト禁止判定が下されていなければ(S875でNo)、S880にて、上述の更新設定処理を実行した後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。一方、リスト禁止判定が下されていると判断すると(S875でYes)、S880の処理を実行することなく、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
このようにして、本実施例では、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対速度ベクトルVpと、パケット送信元車両の存在地点Paを始点とし自車両の存在地点Pbを終点とするベクトルQとの角度θ、が閾値を超えている場合には、衝突の危険がないとして、このパケット送信元車両のレコードを、周辺車両リストに登録しないようにし、当該パケット送信元車両を危険車両に設定しないようにする。
以上、第五実施例について説明したが、第五実施例によれば、上記角度θが閾値以下の車両群の中で、危険度が最大(δVが最大)の車両を、危険車両に設定するので、衝突回避の観点から、第一実施例よりも一層適切に危険車両を設定して、送信条件(送信電力及び送信周期)を設定することができる。よって、第五実施例によれば、第一実施例よりも、通信の干渉を抑えて、効率的且つ適切に、衝突回避に必要な車両情報を、車両間で交換することができる。
続いて、第六実施例の無線通信装置1について説明する。但し、第六実施例の無線通信装置1は、危険車両設定処理の内容及び電力周期切替処理の内容が、第一実施例とは異なる程度であり、その他の構成については、第一実施例と同一であるので、ここでは、第六実施例の説明として、制御部10が実行する危険車両設定処理の内容及び電力周期切替処理の内容を選択的に説明する。
図15(a)は、第六実施例の無線通信装置1における制御部10が繰返し実行する危険車両設定処理を表すフローチャートである。
図15(a)に示す危険車両設定処理を開始すると、制御部10は、受信部25が通信パケットを受信したか否かを判断し(S910)、通信パケットを受信していないと判断すると(S910でNo)、S990に移行し、上述の非受信時処理を実行した後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
これに対し、通信パケットを受信したと判断すると(S910でYes)、制御部10は、S920に移行し、状態検出器57から得られる自車両の位置座標Xs及び速度ベクトルVsと、受信パケットに記述されたパケット送信元車両の位置座標X及び速度ベクトルVと、に基づき、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対速度ベクトルVp=V−Vsと、パケット送信元車両の存在地点Paから自車両の存在地点Pb方向に延びるベクトルQ=Xs−Xの単位ベクトルEと、の内積、で表されるパケット送信元車両の自車両方向速度成分δVeを算出する(δVe=Vp・E)。尚、図16は、パケット送信元車両の自車両方向速度成分δVeを表した説明図である。
また、この処理を終えると、制御部10は、パケット送信元車両が自車両から離れる方向に移動しているか否かを判断する(S921)。具体的には、δVeが負値(δVe<0)であるか否かを判断する。
そして、パケット送信元車両が自車両から離れる方向に移動していると判断すると(S921でYes)、制御部10は、S925に移行して、リスト登録禁止判定を下す。その後、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度小」であると判定し(S970)、S975に移行する。
一方、パケット送信元車両が自車両から離れる方向に移動していないと判断すると(S921でNo)、制御部10は、S927に移行し、状態検出器57から得られる自車両の位置座標Xsと、受信パケットに記述されたパケット送信元車両の位置座標Xと、に基づき、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対距離Dを算出する。その後、S930に移行する。
また、S930に移行すると、制御部10は、現在、危険車両が設定されているか否かを判断し、危険車両が設定されていないと判断すると(S930でNo)、S960に移行して、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度大」であると判定する。その後、S975に移行する。
一方、危険車両が設定されていると判断すると(S930でYes)、制御部10は、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrと、今回、受信パケットに基づきS920で求めた値δVeとを比較して(S940)、S920で求めた値δVeが、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrのいずれよりも大きいか否かを判断する(S950)。
但し、本実施例では、S980で実行する更新設定処理のS365,S375において、相対速度評価値δVrとして、S920で求めたパケット送信元車両の自車両方向速度成分δVeをレコードに記述するものとする。即ち、S940では、周辺車両リストに登録された各レコードが示す当該レコードに対応する車両の自車両方向速度成分δVeと、今回、受信パケットに基づきS920で求めた値δVeとを比較して(S940)、S920で求めた値δVeが、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVr=δVeのいずれよりも大きいか否かを判断する(S950)。
そして、S920で求めた値δVeが、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrのいずれよりも大きいと判断すると(S950でYes)、S960に移行し、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度大」であると判定する。その後、S975に移行する。
一方、S920で求めた値δVeが、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrのいずれかと同一又はいずれかよりも小さいと判断すると(S950でNo)、制御部10は、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度小」であると判定し(S970)、その後、S975に移行する。
また、S975に移行すると、制御部10は、リスト登録禁止判定(S925参照)が下されているか否かを判断し、リスト禁止判定が下されていなければ(S975でNo)、S980にて、上述の更新設定処理を実行した後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。一方、リスト禁止判定が下されていると判断すると(S975でYes)、制御部10は、S980の処理を実行することなく、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
このようにして、本実施例では、パケット送信元車両が自車両から離れる方向に移動している場合には、このパケット送信元車両のレコードを、周辺車両リストに登録しないようにし、当該パケット送信元車両を危険車両に設定しないようにする。
続いて、制御部10が実行する電力周期切替処理の内容について説明する。本実施例において制御部10が実行する電力周期切替処理は、基本的に、第一実施例と同内容であるが(図7参照)、上述したように、本実施例では、相対速度評価値δVrとして、パケット送信元車両の自車両方向速度成分δVeを周辺車両リストに登録するので、電力周期切替処理のS450では、内蔵のROMに記録された送信周期設定マップに従って、送信部21の送信周期を、危険車両のレコードが示す危険車両の自車両方向速度成分δVeに対応した値に更新する。図15(b)は、本実施例におけるS450の処理内容、及び、制御部10のROMに記録された送信周期設定マップの概念図である。
本実施例の送信周期設定マップは、危険車両の自車両方向速度成分δVeと設定すべき送信周期との対応関係を示すものであり、具体的に、この送信周期設定マップでは、速度成分δVeが大きくなるにつれて送信周期が短くなるように速度成分δVeと送信周期との対応関係が設定されている。
即ち、制御部10は、S450において、危険車両のレコードが示す相対速度評価値δVrとしての危険車両の自車両方向速度成分δVeに基づき、危険車両の自車両方向速度成分δVeが大きい程、短い送信周期を、送信部21に設定する。
以上、第六実施例について説明したが、第六実施例によれば、自車両を基準とした他車両の相対速度ベクトルVpの絶対値δVではなく、相対速度ベクトルVpの自車両方向速度成分δVeに基づいて、車両の危険度を評価し、速度成分δVeが最大の車両を、危険度が最大の車両として、危険車両に設定するので、衝突回避の観点から、第一実施例よりも一層適切に危険車両を設定して、送信条件(送信電力及び送信周期)を設定することができる。よって、第六実施例によれば、第一実施例よりも、通信の干渉を抑えて、効率的且つ適切に、衝突回避に必要な車両情報を、車両間で交換することができる。
続いて、第七実施例の無線通信装置1について説明する。但し、第七実施例の無線通信装置1は、危険車両設定処理の内容及び電力周期切替処理の内容が、第一実施例とは異なる程度であり、その他の構成については、第一実施例と同一であるので、ここでは、第七実施例の説明として、制御部10が実行する危険車両設定処理の内容及び電力周期切替処理の内容を選択的に説明する。
図17は、第七実施例の無線通信装置1における制御部10が繰返し実行する危険車両設定処理を表すフローチャートである。
図17に示す危険車両設定処理を開始すると、制御部10は、受信部25が通信パケットを受信したか否かを判断し(S1010)、通信パケットを受信していないと判断すると(S1010でNo)、S1090に移行し、上述の非受信時処理を実行した後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
これに対し、通信パケットを受信したと判断すると(S1010でYes)、制御部10は、S1020に移行し、状態検出器57から得られる自車両の位置座標Xs及び速度ベクトルVsと、受信パケットに記述されたパケット送信元車両の位置座標X及び速度ベクトルVと、に基づき、第六実施例におけるS920での処理と同様に、パケット送信元車両の自車両方向速度成分δVeを算出する。
また、この処理を終えると、制御部10は、パケット送信元車両が自車両から離れる方向に移動しているか否かを判断することによって、パケット送信元車両が自車両と衝突する可能性の有無を判断する(S1021)。具体的には、δVeが負値(δVe<0)であるか否かを判断する。
そして、パケット送信元車両が自車両から離れる方向に移動していると判断すると(S1021でYes)、パケット送信元車両が自車両と衝突する可能性は無いとして、S1025に移行し、リスト登録禁止判定を下す。その後、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度小」であると判定し(S1070)、S1075に移行する。
一方、パケット送信元車両が自車両から離れる方向に移動していないと判断すると(S1021でNo)、制御部10は、パケット送信元車両が自車両と衝突する可能性があるとして、S1027に移行し、状態検出器57から得られる自車両の位置座標Xsと、受信パケットに記述されたパケット送信元車両の位置座標Xと、に基づき、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対距離Dを算出する。その後、S1029に移行する。
また、S1029に移行すると、制御部10は、S1027で算出した相対距離Dを、S1020で算出した値δVeで除算して、パケット送信元車両が自車両と衝突するまでの残り時間Cを、パケット送信元車両と自車両との衝突時間Cとして、算出する(C=D/δVe)。そして、この処理を終えると、S1030に移行する。
また、S1030に移行すると、制御部10は、現在、危険車両が設定されているか否かを判断し、危険車両が設定されていないと判断すると(S1030でNo)、S1060に移行して、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度大」であると判定する。その後、S1075に移行する。
一方、危険車両が設定されていると判断すると(S1030でYes)、制御部10は、周辺車両リストに登録された各レコードについて、レコードが示す値δVr及び相対距離Dから、レコードに対応する車両と自車両との衝突時間Cr=D/δVrを算出し、各レコードの衝突時間Crと、今回、受信パケットに基づきS1029で求めた衝突時間Cとを比較する(S1040)。そして、S1029で求めた衝突時間Cが、周辺車両リストに登録された各レコードの衝突時間Crのいずれよりも小さいか否かを判断する(S1050)。
そして、S1029で求めた衝突時間Cが、周辺車両リストに登録された各レコードの衝突時間Crのいずれよりも小さいと判断すると(S1050でYes)、S1060に移行し、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度大」であると判定する。その後、S1075に移行する。
一方、S1029で求めた衝突時間Cが、周辺車両リストに登録された各レコードの衝突時間Crのいずれかと同一又はいずれかよりも大きいと判断すると(S1050でNo)、制御部10は、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度小」であると判定し(S1070)、その後、S1075に移行する。
また、S1075に移行すると、制御部10は、リスト登録禁止判定(S1025参照)が下されているか否かを判断し、リスト禁止判定が下されていなければ(S1075でNo)、S1080にて、第六実施例と同様の更新設定処理を実行した後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。一方、リスト禁止判定が下されていると判断すると(S1075でYes)、制御部10は、S1080の処理を実行することなく、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
このようにして、本実施例では、パケット送信元車両と自車両との衝突時間Cが、他の車両との衝突時間Crよりも短いときには、当該パケット送信元車両を、更新設定処理で危険車両に設定し、電力周期切替処理では、この危険車両の運動状態に応じて、送信電力及び送信周期を設定する。
続いて、本実施例において制御部10が実行する電力周期切替処理の内容について説明する。本実施例において制御部10が実行する電力周期切替処理は、基本的に、第一実施例と同内容であるが(図7参照)、S450では、図18に示すように、危険車両と自車両との衝突時間Crに対応した周期に、送信周期を設定する構成にされている。尚、図18は、本実施例におけるS450の処理内容、及び、制御部10のROMに記録された送信周期設定マップの概念図である。
本実施例の送信周期設定マップは、危険車両と自車両との衝突時間Crと設定すべき送信周期との対応関係を示すものであり、具体的に、この送信周期設定マップでは、衝突時間Crが長くなるにつれて送信周期が長くなるように衝突時間Crと送信周期との対応関係が設定されている。
即ち、制御部10は、S450において、危険車両のレコードが示す相対距離Dr及び相対速度評価値δVrから、危険車両と自車両との衝突時間Cr=Dr/δVrを算出し、この衝突時間Crに基づき、衝突時間Crが短い程、短い送信周期を、送信部21に設定する。
以上、第七実施例について説明したが、第七実施例によれば、自車両との衝突時間Crにより車両の危険度を評価し、衝突時間Crが最小の車両を、危険度が最大の車両として、危険車両に設定するので、衝突回避の観点から、第一実施例よりも一層適切に危険車両を設定して、送信条件(送信電力及び送信周期)を設定することができる。
特に、本実施例では、衝突が差し迫っている状況下では、短い周期で車両情報を送信して、自車両の存在を周囲の車両に知らしめるようにするので、必要に応じて適切な周期で車両情報を送信することができ、通信の干渉を抑えて、効率的且つ適切に、衝突回避に必要な車両情報を、車両間で交換することができる。
続いて、第八実施例の無線通信装置1について説明する。但し、第八実施例の無線通信装置1は、第一実施例の無線通信装置1に対して一部変更を加えた程度のものであるので、以下では、第八実施例の説明として、第一実施例の無線通信装置1と異なる構成を選択的に説明する。
まず、本実施例の無線通信装置1は、送信部21にて、自車両の位置座標及び自車両の速度ベクトルを表す車両情報と共に、現在自車両に設定されている危険車両の位置座標及び速度ベクトルを表す危険車両情報を格納した通信パケットを生成し、これを、電力周期切替処理により予め設定された送信電力及び送信周期で、送信する構成にされている。
図19は、本実施例の送信部21にて生成される通信パケットの構成を表す説明図である。図2(a)に示すように、送信部21で生成されて車両間で送受信される通信パケットは、パケット番号を表すヘッダ情報と、自車両の位置座標及び自車両の速度ベクトルを表す車両情報と、自装置の制御部10にて設定された危険車両の位置座標及び速度ベクトルを表す危険車両情報と、を含んだ構成にされている。送信部21は、図2(b)に示すパケット送信処理のS120にて、制御部10から入力された自車両の最新の位置座標及び速度ベクトルと、制御部10から入力された現在設定されている危険車両の位置座標及び速度ベクトルとに基づき、上記構成の通信パケットを生成して、これを、予め設定された送信周期及び送信電力で、無線信号として外部にブロードキャストする。尚、危険車両が設定されていない場合、送信部21は、危険車両情報として、危険車両が設定されていない旨の情報を格納した通信パケットを生成し、これを無線信号として外部にブロードキャストする。
また、本実施例の制御部10は、受信部25を介して、自車両周囲の他車両に搭載された同種の無線通信装置から送信されてくる図19に示す構成の通信パケットに基づき、図20に示す危険車両設定処理を実行する構成にされている。図20は、第八実施例の無線通信装置1における制御部10が、図3に示す危険車両設定処理に代えて、繰返し実行する危険車両設定処理を表すフローチャートである。
図20に示す危険車両設定処理を開始すると、制御部10は、受信部25が通信パケットを受信したか否かを判断し(S1110)、通信パケットを受信していないと判断すると(S1110でNo)、S1190に移行し、第一実施例と同様の非受信時処理を実行した後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
これに対し、通信パケットを受信したと判断すると(S1110でYes)、制御部10は、S1120に移行し、状態検出器57から得られる自車両の位置座標Xs及び速度ベクトルVsと、受信パケットに車両情報として記述されたパケット送信元車両の位置座標X及び速度ベクトルVと、に基づき、自車両を基準としたパケット送信元車両の相対距離D及び相対速度ベクトル絶対値δVを算出する。
そして、値D,δVの算出を終えると、S1125に移行して、自車両の位置座標Xs及び速度ベクトルVsと、受信パケットに危険車両情報として記述されたパケット送信元車両側の危険車両(以下、「送信元危険車両」を称する。)の位置座標Xd及び速度ベクトルVdと、に基づき、自車両を基準とした送信元危険車両の相対距離Dd=|Xd−Xs|及び相対速度ベクトル絶対値δVd=|Vd−Vs|を算出する。
また、この処理を終えると、制御部10は、S1130に移行し、周辺車両リストに登録された各レコードの危険車両フラグを参照することにより、現在、危険車両が設定されているか否かを判断する。そして、危険車両が設定されていないと判断すると(S1130でNo)、S1160に移行し、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度大」であると判定する。
一方、危険車両が設定されていると判断すると(S1130でYes)、制御部10は、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrと、今回、受信パケットに基づきS1120で求めた値δVとを比較して(S1140)、S1120で求めた値δVが、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrのいずれよりも大きいか否かを判断する(S1150)。
詳しくは後述するが、本実施例の無線通信装置1は、受信した通信パケットが示す危険車両情報に基づき、周辺車両リストに、送信元危険車両についてのレコードを登録する。つまり、本実施例の無線通信装置1が備える周辺車両リストには、自車両と通信可能な車両についてのレコードだけでなく、自車両とは通信できなくとも他車両で危険車両に設定された車両についてのレコードが登録されている。制御部10は、このような特徴を有する周辺車両リストに登録されたレコードに基づき、S1150の処理を実行する。この点が、第一実施例の無線通信装置1と異なる点である。
そして、S1120で求めた値δVが、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrのいずれよりも大きいと判断すると(S1150でYes)、制御部10は、S1160に移行し、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度大」であると判定すると共に、送信元危険車両が自車両に対して「危険度小」であると判定する(S1165)。その後、S1180に移行する。
一方、S1120で求めた値δVが、周辺車両リストに登録された各レコードが示す値δVrのいずれかと同一又はいずれかよりも小さいと判断すると(S1150でNo)、制御部10は、パケット送信元車両が自車両に対して「危険度小」であると判定し(S1170)、その後、S1175に移行する。
また、S1175に移行すると、制御部10は、送信元危険車両の自車両に対する危険度を評価するために、図21に示す送信元危険車両判定処理を実行する。
尚、図21は、制御部10が、S1175で実行する送信元危険車両判定処理を表すフローチャートである。また、図22は、制御部10が、送信元危険車両判定処理のS1210で実行する同一性判定処理を表すフローチャートである。
制御部は、S1175で送信元危険車両判定処理を開始すると、まず、S1210にて、今回受信した通信パケットが示す送信元危険車両の位置座標Xdを、比較対象車両の位置座標Xcに設定して(Xc=Xd)、図22に示す同一性判定処理を実行する。
同一性判定処理を開始すると、制御部10は、まず、現在自車両に設定されている危険車両のレコード(危険車両フラグが値1のレコード)を、周辺車両リスト内で検索し、該当レコードが示す危険車両の位置座標Xr、速度ベクトルVr及びタイムスタンプTrに基づき、第一実施例におけるS345の処理と同様の手法で、危険車両の現在の位置座標Xnを推定する(S1310)。
また、位置座標Xnを推定し終えると、制御部10は、予め設定された上記比較対象車両の位置座標Xcと、推定した危険車両の現在位置座標Xnとの誤差εc=|Xc−Xn|を算出し(S1320)、誤差εcが、予め設定された閾値以下であるか否かを判断する(S1330)。
そして、誤差εcが閾値以下であると判断すると(S1330でYes)、比較対象車両が現在設定されている危険車両と同一車両であると判定し(S1340)、当該同一性判定処理を終了する。一方、誤差εcが閾値より大きいと判断すると(S1330でNo)、比較対象車両が現在設定されている危険車両と同一車両ではないと判定して(S1350)、当該同一性判定処理を終了する。
S1210では、このような内容の同一性判定処理を、今回受信した通信パケットが示す送信元危険車両の位置座標Xdを、比較対象車両の位置座標Xcに設定して実行する。
そして、S1210での処理を終えると、制御部10は、同一性判定処理で比較対象車両が現在設定されている危険車両と同一車両であると判定されたか否かを判断し(S1220)、比較対象車両が危険車両と同一車両であると判定されたと判断すると(S1220でYes)、S1260に移行して、送信元危険車両が自車両に対して「危険度小」であると判定する。その後、送信元車両判定処理を終了する。
一方、制御部10は、比較対象車両が危険車両と同一車両であると判定されていないと判断すると(S1220でNo)、S1230に移行し、送信元危険車両が、現在自車両に設定されている危険車両よりも危険であるか否かを判断する。
具体的には、送信元危険車両の速度ベクトルVdと自車両の速度ベクトルVsとに基づき、自車両を基準とした送信元危険車両の相対速度ベクトルの絶対値|Vd−Vs|を算出し、算出した送信元危険車両の相対速度ベクトルの絶対値|Vd−Vs|が、現在自車両に設定されている危険車両のレコードが示す値δVr(相対速度ベクトル絶対値)よりも大きいか否かを判断することにより、送信元危険車両が、現在自車両に設定されている危険車両よりも危険であるか否かを判断する。
値|Vd−Vs|が危険車両の値Vrよりも大きい場合には、ここで、送信元危険車両が現在自車両に設定されている危険車両よりも危険であると判断する(S1230でYes)。一方、値|Vd−Vs|が危険車両の値Vr以下である場合には、送信元危険車両が現在自車両に設定されている危険車両よりも危険ではないと判断する(S1230でNo)。
そして、送信元危険車両が現在自車両に設定されている危険車両よりも危険ではないと判断すると(S1230でNo)、S1260に移行し、送信元危険車両が自車両に対して「危険度小」であると判定する。その後、送信元危険車両判定処理を終了する。
一方、送信元危険車両が現在自車両に設定されている危険車両よりも危険であると判断すると(S1230でYes)、制御部10は、S1240に移行して、自車両がパケット送信元車両よりも送信元危険車両に近い位置にいるか否かを判断する。即ち、自車両の位置座標Xs、及び、受信した通信パケットが示す送信元危険車両の位置座標Xdに基づき、自車両と送信元危険車両との相対距離|Xd−Xs|を算出すると共に、受信した通信パケットが示す送信元危険車両の位置座標Xd及びパケット送信元車両の位置座標Xに基づき、パケット送信元車両と送信元危険車両との相対距離|Xd−X|を算出し、相対距離|Xd−Xs|が相対距離|Xd−X|も小さいか否か(|Xd−Xs|<|Xd−X|であるか否か)を判断する。
そして、自車両がパケット送信元車両よりも送信元危険車両に近い位置にいないと判断すると(S1240でNo)、制御部10は、S1260に移行し、送信元危険車両が自車両に対して「危険度小」であると判定する。その後、送信元危険車両判定処理を終了する。
これに対し、自車両がパケット送信元車両よりも送信元危険車両に近い位置にいると判断すると(S1240でYes)、制御部10は、S1250に移行し、送信元危険車両が自車両に対して「危険度大」であると判定する。その後、送信元危険車両判定処理を終了する。
また、このようにして、S1175で送信元危険車両判定処理を実行し終えると、制御部10は、S1180に移行して、図23に示す第一更新設定処理を実行する。図23は、制御部10が実行する第一更新設定処理を表すフローチャートである。
第一更新設定処理を開始すると、制御部10は、周辺車両リストに登録されているレコードの一つを、処理対象レコードに選択して(S1410)、処理対象レコードが示す危険車両の位置座標Xr、速度ベクトルVr及びタイムスタンプTrに基づき、上述の手法で、このレコードに対応する車両の現在位置座標Xnを推定する(S1420)。
また、この処理を終えると、制御部10は、今回受信した通信パケットが示すパケット送信元車両の位置座標Xと、上記推定した現在位置座標Xnとの誤差ε=|X−Xn|を算出する(S1430)。その後、周辺車両リストに登録された全レコードについて誤差εを算出したか否かを判断し(S1440)、全レコードについて誤差εを算出していない場合には(S1440でNo)、S1410に移行して、周辺車両リストから未処理のレコードを一つ処理対象レコードに選択し、S1420以降の処理を実行する。
制御部10は、このようにして、処理対象レコードを切り替えて、S1410〜S1440の処理を繰返し実行し、周辺車両リストに登録された各レコードについて誤差εを算出する。そして、全レコードについて誤差εを算出したと判断すると(S1440でYes)、S1450に移行し、上記算出した各レコードの誤差εの一群において、最小値を採る誤差εが、予め設定された閾値以下であるか否かを判断する。
そして、誤差εの最小値が閾値以下であると判断すると(S1450でYes)、S1470に移行し、誤差εが最小のレコードを、今回のパケット送信元車両と同一車両のレコードであると判定し、当該誤差εが最小のレコードを、更新対象レコードに設定する。その後、S1475に移行する。
また、S1475に移行すると、制御部10は、今回受信した通信パケットに記されたパケット送信元車両の位置座標X及び速度ベクトルVと、S1120で求めたパケット送信元車両の相対距離D及び相対速度ベクトル絶対値δVに基づき、第一実施例におけるS375と同様の手法で、更新対象レコードの内容を更新する。但し、本実施例では、レコードに、パケット番号を記さないものとする。その後、S1480に移行する。
一方、S1450において、誤差εの最小値が閾値より大きいと判断すると(S1450でNo)、制御部10は、周辺車両リストに、今回受信した通信パケットの送信元車両と同一車両のレコードが存在しないと判定して、受信した通信パケットが示すパケット送信元車両の位置座標X及び速度ベクトルVと、S1120で求めたパケット送信元車両の相対距離D及び相対速度ベクトル絶対値δVに基づき、第一実施例におけるS365と同様の手法で、新規レコードを生成し、これを周辺車両リストに登録する(S1460)。その後、S1480に移行する。
S1480に移行すると、制御部10は、パケット送信元車両が、危険車両設定処理における前半のステップ(S1160,S1170参照)で「危険度大」と判定されているか否かを判断し、「危険度大」と判定されていると判断すると(S1480でYes)、今回登録若しくは更新したレコードに対して危険車両設定を施す(S1490)。即ち、今回S1460で登録したレコード若しくはS1475で更新したレコードの危険車両フラグを値1に設定し、このレコードを除く周辺車両リスト内の全レコードの危険車両フラグを値0にリセットする(S1490)。
また、危険車両設定を行うと、制御部10は、S1495に移行し、電力周期切替処理タスク(図7参照)に、危険車両更新通知を入力し、危険車両を更新したことを通知する。その後、第一更新設定処理を終了する。一方、制御部10は、パケット送信元車両が、危険車両設定処理における前半のステップで「危険度小」と判定されていると判断すると(S1480でNo)、S1490,S1495の処理を実行することなく(即ち、危険車両を更新することなく)、当該第一更新設定処理を終了する。
また、S1180で第一更新設定処理を終了すると、制御部10は、S1190に移行して、図24に示す第二更新設定処理を実行する。図24は、制御部10が実行する第二更新設定処理を表すフローチャートである。
図24に示す第二更新設定処理を開始すると、制御部10は、周辺車両リストに登録されているレコードの一つを、処理対象レコードに選択して(S1510)、当該処理対象レコードに基づき、このレコードに対応する車両の現在位置座標Xnを推定する(S1520)。尚、S1520の処理は、先に実行するS1420の処理と同内容であるので、S1420で推定した処理対象レコードの位置座標Xnを読み出す処理であってもよい。
この処理を終えると、制御部10は、今回受信した通信パケットが示す送信元危険車両の位置座標Xdと、上記推定した現在位置座標Xnとの誤差εd=|Xd−Xn|を算出する(S1530)。その後、周辺車両リストに登録された全レコードについて誤差εdを算出したか否かを判断し(S1540)、全レコードについて誤差εdを算出していない場合には(S1540でNo)、S1510に移行して、周辺車両リストから未処理のレコードを一つ処理対象レコードに選択し、S1520以降の処理を実行する。
そして、全レコードについて誤差εdを算出したと判断すると(S1540でYes)、S1550に移行し、上記算出した各レコードの誤差εdの一群において、最小値を採る誤差εdが、予め設定された閾値以下であるか否かを判断する。
そして、誤差εdの最小値が閾値以下であると判断すると(S1550でYes)、S1570に移行し、誤差εdが最小のレコードを、今回の送信元危険車両と同一車両のレコードであると判定し、当該誤差εdが最小のレコードを、更新対象レコードに設定する。その後、S1575に移行する。
また、S1575に移行すると、制御部10は、今回受信した通信パケットに記された送信元危険車両の位置座標Xd及び速度ベクトルVdと、S1125で求めた送信元危険車両の相対距離Dd及び相対速度ベクトル絶対値δVdに基づき、更新対象レコードの内容を更新する。
具体的には、更新対象レコードが示す位置座標Xrを、今回受信した通信パケットが示す送信元危険車両の位置座標Xdに更新し、更新対象レコードが示す速度ベクトルVrを、今回受信した通信パケットが示す送信元危険車両の速度ベクトルVに更新する。
同様にして、更新対象レコードが示す相対距離Drを、今回受信した通信パケットに基づきS1125で算出した相対距離Ddに更新し、更新対象レコードが示す相対速度評価値δVrを、S1125で算出した相対速度ベクトル絶対値δVdに更新する。また、タイムスタンプTrを、現在時刻に更新する。但し、ここでは、更新対象レコードの危険車両フラグを更新しないものとする。
また、このようにして、更新対象レコードの内容を更新すると、S1580に移行する。
一方、S1550において、誤差εdの最小値が閾値より大きいと判断すると(S1550でNo)、制御部10は、周辺車両リストに、今回受信した通信パケットが示す送信元危険車両と同一車両のレコードが存在しないと判定し、受信した通信パケットが示す送信元危険車両の位置座標Xd及び速度ベクトルVdと、S1125で求めた送信元危険車両の相対距離Dd及び相対速度ベクトル絶対値δVdに基づき、新規レコードを生成し、これを周辺車両リストに登録する(S1560)。
尚、新規レコードには、S1575での処理と同様にして、受信した通信パケットの内容に基づき、各値Xr,Vr,Dr,δVr,Trを記述する。但し、S1575では、新規レコードに、危険車両フラグとして値0を記述する。このようにして、S1560での処理を終えると、制御部10は、S1580に移行する。
また、S1580に移行すると、制御部10は、送信元危険車両が、危険車両設定処理における前半のステップ(S1165,S1175参照)で「危険度大」と判定されているか否かを判断し、「危険度大」と判定されていると判断すると(S1580でYes)、今回登録又は更新したレコードに対して危険車両設定を施す(S1590)。即ち、今回S1560で登録したレコード若しくはS1575で更新したレコードの危険車両フラグを値1に設定し、このレコードを除く周辺車両リスト内の全レコードの危険車両フラグを値0にリセットする(S1590)。
また、危険車両設定を行うと、制御部10は、S1595に移行し、電力周期切替処理タスク(図7参照)に、危険車両更新通知を入力し、危険車両を更新したことを通知する。その後、第二更新設定処理を終了する。一方、制御部10は、送信元危険車両が「危険度小」と判定されていると判断すると(S1580でNo)、S1590,S1595の処理を実行することなく(即ち、危険車両を更新することなく)、当該第二更新設定処理を終了する。また、S1190で第二更新設定処理を終了すると、制御部10は、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
以上、本実施例の無線通信装置1について説明したが、この無線通信装置1では、他車両に設定されている危険車両の相対速度ベクトル絶対値が、自車両に設定されている危険車両の相対速度ベクトル絶対値よりも大きく、他車両に設定されている危険車両の自車両に対する危険度が、自車両に設定されている危険車両よりも高い場合(S1240でYes)、自車両に設定されている危険車両を変更する必要がある判定し(S1580でYes)、現在設定されている危険車両に代えて、他車両に設定されている危険車両を、自車両の危険車両に設定する。
即ち、本実施例によれば、他車両では通信パケットを受信することができるが、自車両では通信パケットを受信することができない車両の情報を、危険車両情報として受信することができて、この危険車両情報に基づき、自車両と通信することができない危険車両の存在を知ることができる。従って、本実施例によれば、第一実施例よりも、適切に危険車両を設定して、送信電力及び送信周期を適切に調整することができる。
また、本実施例では、自車両がパケット送信元車両よりも送信元危険車両に近い場合に限って、自車両の危険車両を、送信元危険車両に切り替えるので、パケット送信元車両が自車両よりも送信元危険車両に近い場合等に、上記切り替えを行うことによって、送信元危険車両とパケット送信元車両との通信と、送信元危険車両と自車両との通信と、が干渉してしまい、パケット送信元車両にて衝突回避に必要な通信ができなくなるのを防止することができる。
続いて、第九実施例の無線通信装置1について説明する。但し、第九実施例の無線通信装置1は、送信部21を、第八実施例と同様の構成として、送信する通信パケットを図19に示す構成とすると共に、制御部10にて実行する危険車両設定処理を、図25に示す内容にした程度のものであり、その他の構成は、基本的に、第一実施例の無線通信装置1と同一であるので、以下では、第九実施例の説明として、第一実施例の無線通信装置1と異なる構成を選択的に説明する。
尚、図25は、第九実施例の無線通信装置1において、制御部10が繰返し実行する危険車両設定処理を表すフローチャートである。この危険車両設定処理を開始すると、制御部10は、第一実施例のS210〜S280の処理と同様にして、S1610〜S1680の処理を実行する。また、S1680にて更新設定処理を終了すると、S1690に移行し、図26に示す危険車両切替処理を実行する。その後、当該危険車両設定処理を一旦終了する。
S1690で危険車両切替処理を開始すると、制御部10は、直前のS1680の処理で危険車両が更新され、今回受信した通信パケットの送信元車両が危険車両に設定されたか否かを判断し(S1710)、危険車両が更新されたと判断すると(S1710でYes)、S1720〜S1750の処理を実行することなく、当該危険車両切替処理を終了する。
一方、危険車両が更新されていないと判断すると(S1710でNo)、制御部10は、S1720に移行し、今回受信した通信パケットが示す送信元危険車両の位置座標Xdを、比較対象車両の位置座標Xcに設定して、図22に示す同一性判定処理を実行する。
そして、S1720での処理を終えると、制御部10は、同一性判定処理で比較対象車両が現在設定されている危険車両と同一車両であると判定されたか否かを判断し(S1730)、比較対象車両が危険車両と同一車両であると判定されていないと判断すると(S1730でNo)、S1740〜S1750の処理を実行することなく、当該危険車両切替処理を終了する。
これに対し、比較対象車両が危険車両と同一車両であると判定されたと判断すると(S1730でYes)、制御部10は、S1740に移行して、自車両がパケット送信元車両よりも送信元危険車両から遠い位置にいるか否かを判断する。即ち、自車両の位置座標Xs、及び、受信した通信パケットが示す送信元危険車両の位置座標Xdに基づき、自車両と送信元危険車両との相対距離|Xd−Xs|を算出すると共に、受信した通信パケットが示す送信元危険車両の位置座標Xd及び送信元車両の位置座標Xに基づき、送信元車両と送信元危険車両との相対距離|Xd−X|を算出し、相対距離|Xd−Xs|が相対距離|Xd−X|も大きいか否か(|Xd−Xs|>|Xd−X|であるか否か)を判断する。
そして、自車両がパケット送信元車両よりも送信元危険車両から遠い位置にいないと判断すると(S1740でNo)、制御部10は、S1750の処理を実行することなく、当該危険車両切替処理を終了し、自車両がパケット送信元車両よりも送信元危険車両から遠い位置にいると判断すると(S1740でYes)、S1750に移行する。
そして、S1750では、周辺車両リストの中から、現在危険車両に設定されているレコードの次に、相対速度評価値δVrが大きいレコードに対して、危険車両設定を施して、危険車両を次車両に更新する。
即ち、現在危険車両に設定されているレコードの次に、相対速度評価値δVrが大きいレコードの危険車両フラグを値1に設定し、その他のレコードの危険車両フラグを値0に設定して、危険車両を次車両に設定する。このようにして、制御部10は、自車両に設定されている危険車両と送信元危険車両が同一車両である場合であって、自車両がパケット送信元車両よりも送信元危険車両から遠い位置にいる場合、S1750にて危険車両を次車両に切り替えた後、当該危険車両切替処理を終了する。
以上、第九実施例の無線通信装置1について説明したが、本実施例では、周辺の車両と自車両とが同一の車両を危険車両に設定している場合であって、自車両が周辺車両よりも送信元危険車両から遠い位置にいる場合、危険車両を、次に危険度が高い車両に切り替える。
従って、この無線通信装置1を用いて、車車間通信を行えば、例えば、渋滞中の車両列の最後尾に、後続車両が向かってくる場合に、最後尾周辺の車両が、一斉に、送信電力を上げて通信することで、通信の干渉がひどくなり、後続車両に、最後尾周辺の位置情報を伝達することができなくなるのを防止することができる。従って、この無線通信装置1によれば、衝突回避に大変役立つ。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採る得ることは言うまでもない。
無線通信装置1の構成を表すブロック図である。
通信パケットの構成を表す説明図(a)及び送信部21が実行するパケット送信処理を表すフローチャート(b)である。
制御部10が実行する危険車両設定処理を表すフローチャートである。
周辺車両リストの構成を表す説明図である。
制御部10が実行する更新設定処理を表すフローチャートである。
制御部10が実行する非受信時処理を表すフローチャートである。
制御部10が実行する電力周期切替処理を表すフローチャートである。
送信電力設定マップの概念図(a)及び送信周期設定マップの概念図(b)である。
危険車両の決定方法に関する説明図である。
第二実施例の危険車両設定処理を表すフローチャートである。
第三実施例の危険車両設定処理を表すフローチャートである。
第四実施例の危険車両設定処理を表すフローチャート(a)及び領域Rに関する説明図(b)である。
第五実施例の危険車両設定処理を表すフローチャートである。
角度θの定義に関する説明図である。
第六実施例における危険車両設定処理を表すフローチャート(a)及び送信周期設定マップの概念図(b)である。
速度成分δVeに関する説明図である。
第七実施例の危険車両設定処理を表すフローチャートである。
第七実施例における送信周期設定マップの概念図である。
第八実施例における通信パケットの構成を表す説明図である。
第八実施例の危険車両設定処理を表すフローチャートである。
第八実施例において制御部10が実行する送信元危険車両判定処理を表すフローチャートである。
第八実施例において制御部10が実行する同一性判定処理を表すフローチャートである。
第八実施例において制御部10が実行する第一更新設定処理を表すフローチャートである。
第八実施例において制御部10が実行する第二更新設定処理を表すフローチャートである。
第九実施例の危険車両設定処理を表すフローチャートである。
第九実施例において制御部10が実行する危険車両切替処理を表すフローチャートである。
符号の説明
1…無線通信装置、10…制御部、20…通信部、21…送信部、25…受信部、50…ナビゲーション装置、51…地図データベース、53…表示部、55…音声出力部、57…状態検出器