JP2009052830A - 加熱調理器 - Google Patents

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Abstract


【課題】 庫内温度が100℃以下の低温度設定による加熱調理に対し、庫内均一な加熱作用のもとに加熱ムラがない加熱調理を実行可能とする。
【解決手段】 庫内加熱手段、水蒸気発生手段6、及びこれらを制御する制御部を備え、庫内温度が庫内温度設定値に到達するまでの立上がり時の第1の工程と、続いて庫内温度設定値に維持される第2の工程とを有し、そのうちの前記第2の工程では、前記庫内加熱手段に入力される電力供給量より、前記水蒸気発生手段6に入力される電力供給量を大きく設定した構成とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、水蒸気と庫内加熱手段の組み合わせにより加熱調理を行なうようにした加熱調理器に関する。
近年、電気ヒータ或いはマグネトロン(高周波)などの加熱手段に基づく加熱調理に加えて、水蒸気による加熱調理を可能とし、これら加熱手段の組み合わせ利用により調理メニューのレパートリーを広げ、或いは食品の仕上り良好な加熱調理を可能とした加熱調理器が提供されている。この水蒸気による加熱手段の導入は、特徴として大きくは2つ挙げることができる。(1)水蒸気による熱容量が、ヒータ加熱などに基づく乾燥空気より大きいので、温度変化が緩やかであり、調理庫内の温度を均一にするのに優れている。(2)調理庫内を加熱する加熱エリアが、ヒータなどによる固定的に配置された加熱源に比し、水蒸気を加熱源とした方が広いことである。
なお、上記ヒータ加熱手段において、特に庫内を均一に加熱すべく熱風を循環する方法が実行され、固定ヒータに対し相当の効果を得ている。しかしながら、熱風の風下側の食品の一部に対しては常に循環する熱風が強く当たる部分が生じ易く、しかも庫内は矩形容器状の空間にあるため、循環流が庫内の隅々まで均一に行き届き難いこともあって、やはり食品に対し加熱ムラが生じるおそれがある。
しかるに、これまでに水蒸気加熱手段と例えば周知の高周波加熱手段とを組み合わせてなる加熱調理器の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1記載の加熱調理器によれば、加熱開始初期は高周波加熱手段により食品を加熱し、加熱途中より水蒸気加熱手段に切り替えるようにしている。そして、その切り替えのタイミングは赤外線センサにより食品の表面温度を検出することで対処し、また水蒸気加熱手段による加熱では庫内温度センサにより対処するようにしている。
従来、高周波加熱手段では、食品の内部から加熱し迅速で効率よく加熱調理できることが知られているが、その一方で、食品の形状、フライなどの調理済み食品、野菜などの素材別、食品の収納形態(例えば、庫内全体に収納)などに対し、電波吸収特性の差により均一な加熱作用が得難い一面を有していて、所謂加熱ムラが生じ易い憂いも有している。また、サーミスタなどを用いた庫内温度センサでは、食品を集中的に高周波加熱する場合の温度検出手段としては使用できず、一方赤外線センサでは水蒸気加熱手段における庫内温度測定には使用不可となるため、庫内温度センサと赤外線センサを併設しなければならず、構成や制御手段が複雑化する懸念を有している。
一方、上記のような課題を有する高周波加熱手段に代えて、単機能的に水蒸気加熱手段を採用するとともに、食品の種類や量に応じて水蒸気の発生温度を種々調節可能とし、素材に応じた加熱調理を行なうことができるようにすることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この場合、60〜70℃程度の所謂100℃以下の低温度の水蒸気から、例えば200℃程度の高温度の過熱水蒸気による温度制御により各種の加熱調理を可能としている。
特開2005−106376号公報 特許第2792432号公報
しかしながら、上記構成ではそのために水蒸気発生源の温度制御を多段階に行わなければならないのをはじめ、循環流路、及び空気の排出入の機構を有するなど構成及び制御内容が複雑化する。しかも、例えば加熱調理の開始初期から特に低温度による水蒸気加熱を行なった場合、加熱調理の立上りが遅いのに加え、庫内への水蒸気量の導入が少なくて庫内雰囲気が飽和水蒸気量以下(湿度100%以下)の状態となり、庫内均一な加熱や迅速な加熱調理には不利な点もあるなど、未だ改善の余地がある。
上記のような課題を解消するため、庫内温度が100℃以下の低温度による加熱調理に対し、水蒸気による加熱手段により、庫内均一な加熱作用のもとに加熱ムラがない加熱調理が期待できる加熱調理器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の加熱調理器は、
食品を加熱調理する調理庫と、
前記調理庫内を加熱する庫内加熱手段と、
前記調理庫内の空気を循環するファン装置と、
前記調理庫内に蒸気を導入する水蒸気発生手段と、
前記調理庫内の温度を検出する庫内温度検出手段と、
庫内温度を100℃以下の設定値に設定可能な庫内温度設定手段と、
庫内温度と庫内温度設定値に応じて、前記庫内加熱手段及び前記水蒸気発生手段を制御する制御部と、
前記制御部により制御され、庫内温度が庫内温度設定値に到達するまでの第1の工程、及びそれ以後、庫内温度設定値に維持される第2の工程と、を有し、
前記第2の工程では、前記庫内加熱手段に入力される電力供給量より前記水蒸気発生手段に入力される電力供給量を大きく設定したことを特徴とする(請求項1の発明)。
上記手段によれば、100℃以下の低温度の加熱調理に対し、熱容量が大きくて加熱エリアが広い水蒸気の温度制御に基づく加熱調理に加え、庫内空気の循環撹拌作用を得て、庫内均一な加熱ができ、食品に対し加熱ムラのない良好な加熱調理が期待できる加熱調理器を提供できる。
以下、本発明の一実施例を示す図1ないし図5を参照して説明する。
まず、図1に基づき加熱調理器の概略構成につき説明すると、この図1は加熱調理器の主要部の構成を示す正面図で、具体的には外郭を形成する外枠、前面側の開閉扉、及び調理メニュー等を設定する操作部などの周知の外装部材を除去した状態の正面図にあって、主に前面を開放した矩形容器状の調理庫1を示している。
しかして、調理庫1には収納した食品(図示せず)を加熱調理するため、庫内加熱手段を設けている。この庫内加熱手段としては、調理庫1の後壁1aの背面側に例えばシーズヒータからなる角形枠状(或は円形枠状でも可)に形成した庫内ヒータ2を設けている。この庫内ヒータ2の枠状内域にファン3aを配置し図示しないモータからなるファン装置3が設けられていて、通常では該ファン装置3が駆動されるとき前記庫内ヒータ2も通電発熱するようにしている。そして、後壁1aには前記ファン3aの中央部、及びその周辺部において前記庫内ヒータ2と対向する位置に、夫々多数の透孔4を形成している。従って、この後壁1aと庫内ヒータ2やファン装置3を取付固定する後面板5との間で、所謂ファンケーシングを構成している。
斯くして、ファン装置3が駆動されファン3aが回転されると、調理庫1内の空気が透孔4の中央部から吸い込まれ、周辺部の透孔4から庫内に吹き出される、所謂循環送風が行われ庫内空気が撹拌される。この場合、庫内ヒータ2が通電されている通常の場合には、循環する空気が該ヒータ2に接触する都度加熱され、熱風となって庫内に吹き出され、且つ撹拌作用を受けて庫内全域の温度上昇と併せて熱風が食品に吹き当たることにより、加熱調理として、この場合では熱風によるオーブン調理を実行可能としている。但し、庫内ヒータ2が消勢されOFF状態となれば、庫内の空気の循環撹拌のみが行われることは云うまでもない。
一方、本発明の加熱調理器は、水蒸気発生手段6を備え、水蒸気による加熱手段に基づく加熱調理を可能としている。この水蒸気発生手段6は、例えば本実施例では調理庫1外側の図示左側壁1bに蒸発器ユニット7を装備している。この蒸発器ユニット7は、蒸発用ヒータとしての棒状のシーズヒータからなる2本(第1,第2)のヒータ8a,8bと、このヒータ8a,8bを鋳込んだアルミダイカスト製で中空の蒸発容器9を具備するとともに、この蒸発容器9内に連通して調理庫1の左側壁1bから内方に突出した、水蒸気の噴出し口10を有する構成としている。
そして、図示しないが蒸発容器9内の温度を検出する容器温度検出手段としての容器用サーミスタ11(図2のみ示す)を具備し、容器温度の検出に基づき安定した水蒸気を発生可能としている。また、上記噴出し口10は、左側壁1bのほぼ中間部に位置し水平方向に一列に並んで複数(例えば、6個)開口して形成され、且つ水蒸気を庫内中央部に向かって噴き出すように形成され、その開口径(開口面積)は、水蒸気が庫内の中央部所まで届くように(図3中に示す矢印参照)、蒸気圧により噴き出すことができる大きさに設定されている(詳細は、後述する)。
更に、水蒸気発生手段6は、上記蒸発器ユニット7に給水パイプ12にて接続された給水ポンプ13及び貯水タンク14を具備した構成としている。
そのうち、貯水タンク14は詳細な構成は省略するが調理庫1の外底部に位置して外部前方から着脱可能な構成にあって、使用者が随時容易に給水できる構成としている。しかして、給水ポンプ13が駆動されると、貯水タンク14から送られてきた水が、所定温度に加熱された蒸発容器9内に至り瞬時に蒸気化され、その蒸気圧により噴出し口10から噴き出され、庫内に導入可能とした水蒸気発生手段6が構成される。
また、調理庫1内に対し換気手段が設けられている。すなわち、左側壁1bの前方寄りに位置して多数の小孔からなる吸気口15が形成され、一方、この吸気口15と略対向する後壁1a上部の隅部に位置して多数の小孔からなる排気口16が形成されている。これら吸,排気口15,16は、いずれも他端が外部に連通するとともに、例えば吸気口15側には外気を積極的に取り込むための吸気用ファン装置(図示せず)を備え、以って吸気口15とともに吸気手段を構成し、該ファン装置の駆動により、庫内空気は排気口16から排出され、以って換気作用を積極的に行えるようにしている。更には、右側壁1cの前方上部には、庫内温度検出手段として機能する庫内用サーミスタ17が配設され、庫内温度たる調理温度を検出可能としている。
なお、図3は使用形態の一例を示す図1相当図で、例えば食品としてプリンPを調理すべく庫内に収容した状態を示しており、プリンPは調理庫1内に上下を仕切るように設置されたセラミック製の矩形の載置台18上に載置され、また該載置台18は調理庫1の左,右側壁1b,1cの対称位置に突出形成された各段部19に着脱可能に支持されている。
次いで、図2は加熱調理器が有する要部の概略的な電気的構成を示すブロック図で、特に水蒸気による加熱調理に関連した電気的構成を示している。しかして、加熱調理器の調理運転全般を制御する制御部20は、マイクロコンピュータを主体に制御プログラム等が格納されたメモリを備えて構成されている。図示しない操作部には、調理温度たる庫内温度を設定する庫内温度設定手段21を備え、前記制御部20にはこの庫内温度設定手段21による操作信号が入力され、後述する水蒸気による加熱手段等を制御して加熱調理が実行される。
なお、上記庫内温度設定手段21は、庫内温度設定値が100℃以上の高温度の調理温度はもとより、100℃以下の低温度の設定値に設定可能であるとともに、例えば図示しない調理メニューを選択操作することで所定の庫内温度が設定され、庫内温度設定手段21として機能する構成であってもよい。
その他、制御部20には、調理庫1内の温度を検出する前記庫内用サーミスタ17、及び前記容器用サーミスタ11からの温度検出信号等が入力される。
これに対し、出力ポート側には前記蒸発器ユニット7を構成する蒸発用ヒータたる第1,第2のヒータ8a,8b、及び前記給水ポンプ13を接続している。また、循環送風し熱風を形成するファン装置3及び庫内ヒータ2等が接続され、夫々図示しない駆動回路等を介して制御部20により制御される。
なお、図4(イ)〜(ヘ)は、100℃以下の低温度設定値における加熱調理時の制御例を説明するためのシーケンス図で、図5(イ)〜(ハ)は水蒸気の噴き出し時における特性を示す作用説明図で、これらは続く作用説明の項で順次参照して説明する。
次に、上記構成の加熱調理器の作用について説明する。
本実施例に示す加熱調理器では、一般周知の使用方法として図示しない操作部の調理メニューを選択操作し、このメニュー設定に基づき、制御部20は予めプログラムされた所定温度に制御した加熱調理を実行する。
また、本実施例の加熱調理器が有する水蒸気による加熱手段を用いた調理メニューおいて、調理温度たる庫内温度が水の沸点以上とする100℃以上の所謂過熱水蒸気による、例えば「鶏の照り焼き」や「ハンバーグ」等の調理をはじめ、一方庫内温度が沸点未満とする100℃以下の低温度に設定される、例えば「プリン」メニュー(78〜82℃の温度帯が好適する)や、「野菜等のビタミンCの増加が見込める調理」メニュー(詳細は後述するが、温度帯としては40〜50℃程度が好適する)などに相応しい水蒸気による加熱調理を可能としている。ここでは、前記目的を達成すべく庫内温度を低温度に設定した加熱調理につき以下説明する。
しかして、調理開始に先立ち図3に示すように、本実施例では所望の食品として、複数個のプリンPを載置した載置台18を調理庫1内に収納し、操作部(図示せず)にて水蒸気による加熱調理の条件等につき選択設定する。本実施例では、図2に示す庫内温度設定手段21による設定操作により低温度の設定値、ここでは80℃に設定され(後述する図4(イ)参照)、制御部20は、その操作信号の入力及び庫内用サーミスタ17による庫内温度の検出結果を受けて、予め設定されたプログラムに基づき加熱調理を制御し実行する。
しかして、例えばスタート釦の押圧操作により加熱調理がスタートすると、特に図4の横軸に示すスタートからの時間(t)の経過に応じたシーケンス図において、図4(イ)に示す如く庫内温度が推移するとともに、設定値である所定温度80℃に維持すべく温度コントロールされる。その具体的な制御態様は、詳細は後述するが立上り時の状態を示す第1の工程と、設定温度に維持コントロールされる第2の工程にあって、これは同図(ロ)以降において具体的に明らかとなる。
まず、同図(ロ)に示すように庫内奥部の庫内ヒータ2がON動作して通電発熱し、同時に同図(ニ)に示すようにファン装置3も駆動される。この結果、ファン3aにより熱風が生成され、周囲の透孔4から庫内の前方側に向かって吹き出され、そして中央部の透孔4から吸引され、再び庫内ヒータ2と接触して加熱され庫内に吹き出されるという熱風循環が行われ、且つこの循環により庫内の空気は撹拌され、できるだけ庫内全域にわたり均一な温度上昇が得られるようにしている。但し、この熱風循環による撹拌効果は有するものの、既述の如く庫内ヒータ2の位置や透孔4などが固定的に設けられ、従って熱風吹き出しの一部である高温度の熱風が、同じ流路を形成するように流れ続け、食品たるプリンPの特定の一部が強く加熱され加熱ムラが生じるおそれがある。
そこで、庫内ヒータ2による熱風循環による加熱作用は、図4(イ)などから明らかなように、庫内温度が設定値である所定温度(例えば、80℃)に到達した時点Tで、庫内ヒータ2はOFFし、水蒸気による加熱作用に切り替わるようにしている。以下、スタートから上記時点Tまでの温度の立上りを第1の工程と称して説明する。すなわち、同図(ロ)に示す庫内ヒータ2は時点Tに達すると完全にOFF制御(停止)され、しかも本実施例では庫内温度と設定値の温度との差に応じて比例制御され、所定温度に近づくにつれ庫内ヒータ2への入力を減じるようにしている。この結果、高温度の熱風循環が次第に抑制されて加熱ムラを抑えるととともに、所定温度80℃に達した以降(後述する第2の工程)は庫内ヒータ2への入力を確実に断つ(OFF)ことができ、更に実質的な水蒸気による加熱調理が開始されるとき(時点Tに相当)のオーバーシュートを抑制できる。
上記以外の立上り時における所謂第1の工程における他のシーケンスとしては、同図(ハ)においては基本的な水蒸気量を示している。この水蒸気量は、給水ポンプ13のON/OFF制御により制御される。しかるに、これに対応する同図(ホ)に示す第1の工程における蒸発器ユニット7の第1,第2のヒータ8a,8bは、定格消費電力1500Wを超えないように制御される。すなわち本実施例では、同図(ロ)に示す庫内ヒータ2に対しては消費電力1000Wを超えないように制御され、同図(ホ)に示す上記第1のヒータ8aに対しては600W、また第2のヒータ8bについては300Wに夫々制御されるように、制御部20にてON/OFF制御され、トータルで定格消費電力を超過しないよう制御される。
ただ本実施例では、図示するように第2のヒータ8b(300W)は常にON状態に維持され、水蒸気を発生する蒸発容器9の加熱作用を続けており、昇温動作は継続される。そして、蒸発容器9の加熱温度の上限は例えば所定温度120℃に設定され、容器用サーミスタ11による温度検出に基づき制御される。従って、第1の工程における庫内に導入される水蒸気量としては、上記蒸発容器9の昇温状態に応じた水蒸気の発生に基づき実行され、図4(ハ)に示すように徐々に水蒸気量が増していき、途中からほぼ所定量の水蒸気が得られる状態となり、依ってこの立上り時期では後半において熱風循環と併用される。
なお、第1,第2のヒータ8a,8bによる蒸発容器9の加熱温度120℃の設定は、水蒸気が庫内に導入され時には、ほぼ100℃程度に低下するが、これは庫内温度設定値が100℃以下の低温度とし、この庫内温度を水蒸気量により温度制御するのに好適とするもので、他にアルミダイカスト製による蒸発容器9の耐熱性にも十分に対応でき、容易に製作できる点でも有効であるからである。
このように、立上り時の第1の工程では、庫内用サーミスタ17が、庫内温度が所定温度80℃に達したことを検出する時点Tまでは、当初主として庫内ヒータ2のON動作に基づき通電発熱し、且つファン装置3の駆動に伴う熱風循環にて庫内温度を逸早く立上げる。一方、水蒸気発生手段6としては第1,第2のヒータ8a,8bが、上記庫内ヒータ2を含む消費電力が定格消費電力を超えない範囲でON/OFF制御される中、蒸発容器9を予熱し徐々に水蒸気を庫内に噴き出す動作が実行され、未だ庫内温度が設定値(80℃)に達しない中で、食品に対し熱風と水蒸気による予備的な加熱作用が実行される。
そして、図4(イ)に示すように庫内温度が設定値である所定温度80℃に達したことを庫内用サーミスタ17が検出した時点T以降は、水蒸気主体の加熱調理が実行され、所謂水蒸気量に基づく庫内温度のコントロールがなされる第2の工程が実行される。
まず、庫内ヒータ2への通電は完全にOFFとなるが(図4(ロ)参照)、循環用のファン装置3は継続して駆動され(図4(ニ)参照)、庫内の空気の循環撹拌作用は継続して実行される。なお、本実施例では途中に庫内ヒータ2を複数回(例えば、3回)ON動作するようにしている。これは、一時的に庫内ヒータ2にて加熱した熱風を循環して撹拌し、また水蒸気の反導入側であるファン3a側の雰囲気に加熱作用を与えるなどして、庫内が低温度になるのを抑制する補助的な加熱手段として機能するようにしている。因みに、図4(ヘ)に示すように、この第2の工程において少なくとも庫内ヒータ2に入力される電力供給量より、蒸気化する第1,第2のヒータ8a,8bに入力される電力供給量を大きく設定してあり、従って水蒸気を主体とした温度コントロールにあって、庫内温度を所定温度80℃を維持するべく制御される。
このように第2の工程では、OFF動作の庫内ヒータ2に代わって、蒸気発生手段6(蒸発容器9)によるフルパワー(計900W)での加熱制御が可能となる(図4(ホ)参照)。すなわち、第1及び第2のヒータ8a(600W)及び8b(300W)共に通電され、該蒸発容器9は加熱温度120℃を所定温度として容器用サーミスタ11で検出され、高温状態に維持制御される。従って、高温度に加熱された蒸発容器9に給水すれば瞬時に蒸気化され水蒸気が発生するため、庫内に噴き出す所望の水蒸気量は蒸発容器9への給水量にて制御できる。このことは、給水ポンプ13の運転制御により制御でき、本実施例では間欠運転により蒸発容器9内に間欠的に給水制御することで、水は瞬時に蒸気化され庫内に導入する水蒸気量を制御可能としている(図4(ハ)参照)。
しかして、この第2の工程では、水蒸気による加熱手段に基づきプリンPの加熱調理が行なわれ、水蒸気が有する特徴である熱容量が大きく、且つ調理庫1内の加熱エリアが固定的熱源に比し広いことなどを有効に活かして、庫内温度を均一に加熱昇温できる。特に、100℃以下の低温度設定の場合、水蒸気量も絞られた少量となり庫内の飽和水蒸気量が湿度100%に達しない悪条件下にあっても、ファン装置3による庫内空気の循環撹拌作用と相俟って、水蒸気は確実に庫内全体に行き渡りムラのない水蒸気加熱が可能となる。
因みに、本実施例の図3に示す如く、矩形容器状の庫内全域(全面積)にわたり食品たるプリンPを収容した場合でも、隅部(角部)に位置するプリンPに対しても水蒸気による加熱作用は効果的に行われ、加えてファン装置3による庫内の空気の循環により、庫内に噴き出され広く拡散する水蒸気に、更に撹拌作用を加えて、複数の食品に対しても加熱ムラなく仕上がり良好な加熱調理が実行できる。
なお、第2の工程では換気手段たる図示しない吸気用ファン装置を駆動し、調理庫1の吸,排気口15,16から新鮮な外気を庫内に取り込む一方、一部を外部に排出する庫内の換気作用が行われる。この場合、外気の導入は通常庫内温度を低下させる傾向にあるので、間欠的に換気するなど水蒸気量を勘案して適宜に制御すればよいし、また前記した第1の工程では温度の立上りに際し、その妨げとならないように停止状態にするなどの制御としてもよい。
次いで、図5において水蒸気の噴き出し時における特性について説明する。まず、水蒸気を庫内に導入するときの背景事情につき述べると、水蒸気は第1,第2のヒータ8a,8bを埋設した庫外に位置する蒸発容器9にて生成し、その蒸気圧により庫内の噴出し口10から噴き出し庫内に導入している。そして、噴出し口10から噴き出された水蒸気は庫内中央部に向けて噴き出すようにしていることは既述の通りである(図3中に示す矢印参照)。
しかるに、水蒸気は噴出し口10から庫内に噴き出された途端に拡散していく傾向にある。このため、噴き出す勢いが弱いとすぐに拡散し、噴出し口10付近の温度が高くなり、他の部位と加熱ムラが生じる。また、強すぎても対向する右側壁1eの内壁面に衝突して拡散し、温度変化が大きく且つやはり加熱ムラが生じ易い。従って、加熱ムラをなくすためには、庫内中央まで熱エネルギーが届くように初期速度を定める必要がある。このように、水蒸気が勢いよく中央の部所まで到達するためには、所望の蒸気圧を得るべく噴出し口10の開口径(開口面積)を絞るなどして設定する必要がある。
そこで、実験に基づき噴出し口10と、これに対向する壁面までの距離と、噴出し口10個々の開口面積を測定して検証した結果、噴き出された水蒸気の熱エネルギーの影響が庫内中央まで届くに有効な開口面積を求めることができた。
すなわち、水蒸気発生手段6では蒸発容器9内に水が供給されるや瞬時に蒸気化する構成をなしているから、水蒸気は、その蒸気圧により噴出し口10から勢いよく噴き出すことができる。従って、水を供給する給水ポンプ13には水が溜まらない程度に注入し、且つ瞬時に蒸発するように蒸発容器9の加熱温度を、前記したように所定温度として120℃程度に維持することが好ましい。
しかして、図5(イ)は横軸に水蒸気の噴き出し距離(4箇所)を表し、縦軸には噴き出し距離に応じて測定した熱エネルギーたる温度の変化を示している。具体的には、横軸には噴き出し側の位置Aから対向壁面に相当する位置Dまでの距離を4等分して示しており、従って位置Cが庫内のほぼ中央の位置を示している。この図から理解できるように、庫内中央の位置C付近では温度上昇した状態にあることが認められ、水蒸気による熱量が届いていることが分る。そして、これより遠く離間した位置Dから位置E(対向壁面)に至り、その付近の温度上昇は殆んど認められなくなり、ほぼ庫内温度と同等である。このような傾向は、図5(ロ)からも検証できる。
まず図5(ロ)は、水蒸気が庫内に噴き出されるタイミングに応じて、水蒸気による熱エネルギーたる温度の計時的変化を、位置a〜eにて測定した結果を表している。なお、位置aは噴出し口10近傍にあって、位置b,c,d,eの順に沿って遠のく位置を示している。この図から、位置a,b,cにあっては、温度特性が突状に示され、その位置の温度が高くなっていることが分り、但し遠のくに伴い突状で示す温度が徐々に低くなっている。これは、水蒸気の噴き出し側から遠のくに伴い拡散され、従って熱エネルギーも拡散されることから温度上昇が減少し、位置d,eでは温度上昇は殆んどみられなかった。なお、図示では突状部で示す水蒸気の噴き出しタイミングが短時間であるため、各位置における計時的な変化は殆んど認められない。
上記結果は、水蒸気による熱エネルギーが直接影響を与える位置が、庫内の中央部所に設定され、これより遠い位置には熱エネルギーが直製影響しないように、噴出し口10の各開口径(開口面積)が設定されていることが検証できた。すなわち、この開口径により噴出された水蒸気の熱エネルギーが到達する位置が決定されている。
しかして、図5(c)は、3種類の開口径D1,D2,D3(D1<D2<D3)において、水蒸気が到達する最終地点(図中、矢印の先端部)を夫々示している。該図面から明らかな如く、例えば開口径D3の如く径大な場合は、蒸気圧が高まる前に噴き出されたり、またすぐに拡散して勢いが弱められた水蒸気となり、当該水蒸気は到達する最終地点が短くなる。一方、開口径D1の如く小さい場合には蒸気圧が高められることから、水蒸気は庫内の対向壁面まで到達してしまう。
そこで、開口径D2を採用することで、庫内中央付近まで到達した水蒸気が拡散するように設定でき、以って水蒸気による熱エネルギーが広いエリアに均一に行き渡り、加熱ムラを抑制するに有効であることが理解できる。
なお、上記以外に100℃以下の低温度設定による調理メニューとしては、庫内温度の設定値として調理温度が35℃〜50℃程度の発酵調理や、前記した「野菜等のビタミンCの増加が見込める調理」メニューなど考えられる。このビタミンCの増加が見込める調理とは、野菜のビタミンCを自己生成可能な、例えばほうれん草など食材を、40℃〜50℃程度に設定してなる水蒸気加熱を行うと、野菜のビタミンC生成の生化学反応を促進して調理中にビタミンCが増加させることができるという格別な調理モードである。その他、通常に用いられるあたため調理など、相当に低い庫内温度を設定値とした調理メニューが多い。そのため、一層水蒸気量が絞られた使用形態となる中で、水蒸気による特性を活かした加熱手段と、庫内空気の循環作用との併用によれば、加熱ムラがなく且つ食品の乾燥を防ぎ仕上がり良好な加熱調理が実行でき、調理メニューのレパートリーも広く展開可能である。
上記実施例によれば、次のような効果を奏する。
特に、図4に開示したように、庫内温度が庫内温度設定値に到達するまでの所謂立上がり時の第1の工程と、続いて庫内温度設定値に維持される第2の工程とを有し、そのうちの前記第2の工程では、庫内加熱手段たる庫内ヒータ2に入力される電力供給量より水蒸気発生手段6を構成する第1,第2のヒータ8a,8b側に入力される電力供給量を大きく設定した。
これにより、第2の工程では固定的な庫内ヒータ2への入力を抑え、熱容量の大きな水蒸気を庫内に導入して庫内温度を制御することで、水蒸気が庫内に広く拡散して庫内均一な加熱ができ、食品の加熱ムラがなく、しかも乾燥作用を抑えた仕上がり良好な加熱調理が期待できる。特に庫内温度を100℃以下の低温度設定の場合、庫内雰囲気が飽和水蒸気量以下(湿度100%以下)の状態となり、通常加熱ムラが生じ易い雰囲気であるが、水蒸気の特性である熱容量が大きく且つ拡散による加熱エリアが広いことと併せ、ファン装置3にて庫内空気を循環撹拌作用を加えることで、水蒸気が有する熱エネルギーを庫内の隅々まで確実に行き渡らせることができ、平面的に広い範囲に収容配置された多数の食品、例えばプリンP(図3参照)などの加熱調理に対しても、加熱ムラを効果的に防止することができる。
また、この第2の工程では水蒸気量を制御することにより庫内温度の設定値を、より正確に維持できる。これは、上記したように水蒸気による熱量を庫内均一に行き渡らせることができることによるもので、固定的なヒータ加熱手段に比べ大いに優れ、より正確な温度制御が求められる加熱調理や、特に庫内温度制御が難しくなる100℃以下の低温度設定における加熱調理などに有効である。しかも、水蒸気量の制御は、水蒸気発生手段6を制御することで可能で、つまり蒸発容器9に給水する給水ポンプ13の運転制御により、容易に且つ適正に実行できる。
一方、本実施例では立上り時の第1の工程では、庫内加熱手段たる庫内ヒータ2により設定値である所定温度まで速やかに庫内温度を上昇でき、水蒸気発生手段6による温度の立上りの遅いのをカバーできるとともに、この間に蒸発容器9を予熱でき、続く水蒸気による温度制御を主体とする第2の工程に速やかに移行でき、食品の加熱調理時間が長くなるのを効果的に抑えることができる。
しかも、図4(ロ)に開示したように、庫内加熱手段である庫内ヒータ2は、庫内温度と設定値の温度との差に応じて比例制御するようにし、所定温度に近づくにつれ庫内ヒータ2への入力を減じるようにしたので、温度上昇に伴い熱風循環が次第に抑制されて加熱ムラを抑えるととともに、所定温度(80℃)に達した以降は庫内ヒータ2への入力を断つ(OFF)ことができ、更には実質的な加熱調理の立上り時(時点Tに相当)のオーバーシュートを抑制できる効果を有する。
更に、図5に開示したように、水蒸気発生手段6は、蒸気圧を利用して噴出し口10から調理庫1内の中央に向けて水蒸気を噴き出すようにしているが、その蒸気圧、従って噴き出し方向の勢いに影響を与える噴出し口10の各開口面積を、水蒸気が庫内中央まで到達し、その熱量にて中央部所における温度を高めることができる大きさに設定したので、最適な熱エネルギーが得られるとともに、水蒸気を庫内に広く拡散するにも有利で、以って適正で確実な庫内温度制御を可能とし且つ加熱ムラを抑えるのにも有効である。
なお、本発明は上記し且つ図面に示した実施例に限定されず、例えば図4(ロ)に開示したように第2の工程では、間欠的に複数回庫内ヒータ2に入力する制御としたが、この加熱動作は行わず、簡潔に水蒸気による温度制御のみとしてもよい。
また、同図に示す第1の工程において、庫内ヒータ2は、庫内温度と設定値の温度との差に応じて比例制御するようにしたが、これに加えて、庫内温度設定値に対し所定の温度だけ低い温度に達したとき、庫内ヒータ2への入力が行われないように制限する制御手段を設けてもよい。
この場合、より確実に庫内ヒータ2の入力を制限し、続く第2の工程における水蒸気の熱量に基づく庫内温度のコントロールが可能となる。その具体的な制御手段としては、上記比例制御を行うべく定数設定において、庫内温度設定値から所定の温度だけ低い温度以上における庫内ヒータ2への入力値を0(ゼロ)に設定すればよい。勿論、上記比例制御を採用しなくても可能であることは言うまでもなく、この場合も上記同様に庫内温度設定値より所定の温度だけ低い温度に達したときに、庫内ヒータ2への入力を完全にOFFする制御とすればよい。
その他、上記実施例では庫内ヒータ2とファン装置3による専用のユニットを設け、庫内空気や熱風の循環を行ったが、夫々別個に設けたり、他の加熱手段などを転用してもよい。また、この種加熱調理器には、上記以外の加熱手段として、周知の高周波による加熱手段としてのマグネトロンや、更には庫内天井壁側にグリル用の面状ヒータを備えた構成としてもよいなど、実施に際して本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
本発明の一実施例の主要な構成部分を概略的に示す調理庫の正面図 要部の電気的構成を示すブロック図 使用形態の一例を示す図1相当図 同図(イ)〜(ヘ)は、低温度設定値における加熱調理時の制御例を説明するためのシーケンス図 同図(イ)〜(ハ)は、水蒸気の噴き出し時の特性を示す作用説明図
符号の説明
図面中、1は調理庫、2は庫内ヒータ(庫内加熱手段)、3はファン装置、3aはファン、5はスチーム供給装置、6は水蒸気発生手段、7は蒸発器ユニット、8a,8bは第1,第2のヒータ(蒸発用ヒータ)、9は蒸発容器、10は噴出し口、11は容器用サーミスタ(容器温度検出手段)、13は給水ポンプ、17は庫内用サーミスタ(庫内温度検出手段)、20は制御部、及び21は庫内温度設定手段を示す。

Claims (4)

  1. 食品を加熱調理する調理庫と、
    前記調理庫内を加熱する庫内加熱手段と、
    前記調理庫内の空気を循環するファン装置と、
    前記調理庫内に蒸気を導入する水蒸気発生手段と、
    前記調理庫内の温度を検出する庫内温度検出手段と、
    庫内温度を100℃以下の設定値に設定可能な庫内温度設定手段と、
    庫内温度と庫内温度設定値に応じて、前記庫内加熱手段及び前記水蒸気発生手段を制御する制御部と、
    前記制御部により制御され、庫内温度が庫内温度設定値に到達するまでの第1の工程、及びそれ以後、庫内温度設定値に維持される第2の工程と、を有し、
    前記第2の工程では、前記庫内加熱手段に入力される電力供給量より前記水蒸気発生手段に入力される電力供給量を大きく設定したことを特徴とする加熱調理器。
  2. 水蒸気発生手段は、調理庫内の中央に向けて水蒸気を噴き出す噴出し口を備え、
    前記噴出し口は、水蒸気の噴き出し時において庫内中央の部所における温度を高めることができる開口面積に設定してあることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
  3. 第2の加熱工程において、庫内加熱手段による加熱動作を停止することを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
  4. 第1の加熱工程において、庫内温度設定値よりも所定値だけ低い温度に達した以降は、庫内加熱手段への入力は行われないように制御することを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
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