JP2009051211A - 高分子ゲル複合体、及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高分子ゲルとポリマー基材とを強固に接着させた複合体を提供する。
【解決手段】モノマーと重合開始剤および液体、さらに必要に応じて架橋剤とが含浸された架橋ポリマーを含む第1の成形物を準備する工程;少なくとも一部の表面が光重合開始剤を含む膜で覆われた第2の成形物を準備する工程;および前記光重合開始剤を含む膜に重ねられた前記第1の成形物に、光を照射する工程;を含む方法によって、ポリマー基材11に接着されたIPN構造を有する高分子ゲル12を含む高分子ゲル複合体10を得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、高分子ゲル複合体、及びその製造方法に関する。
高分子ゲルは、高分子が架橋した三次元の網目構造を有しており、その内部に多量の液体を含む物質である。これにより固体と液体との中間的な状態にある高分子ゲルは、非流動的でありながらゴムに近い弾力性を持ち、さらには透過性や柔軟性を含む固体材料にはない優れた特性を有している。また、生体に対する毒性の低さ、すなわち生体適合性が良好である。そのため、高分子ゲルは粘着シートや吸水素材、或いはコンタクトレンズなど、工業用から医用分野に至るまで広く利用されている。
また、高分子ゲルは他の固体材料に比べて表面における摩擦係数が非常に小さい。そのため、低摩擦性を必要とするベアリングや人工関節への高分子ゲルの応用が期待されている。なかでも、人工関節のように生体適合性が求められる生体材料にとって高分子ゲルは有用である。このように、最近では、高分子ゲルを単体ではなく、ベアリングを構成するエンジニアリングプラスチック(エンプラ)部材や人工関節における軟骨のような各種ポリマー基材と接着し、高分子ゲル複合体として用いる様々な検討が行われている。以下の説明では、ポリマー基材を単に基材と称する。
高分子ゲル複合体では、高分子ゲルと基材との接着強度の程度が重要となる。例えば、ベアリングや人工関節の摺動部分では、常に高い荷重がかかるため、その荷重に耐え得るほどの接着強度を保つ必要がある。ところが、弾力性や変形性に富むなどの特性を持つ高分子ゲルは、形状が不安定である他、非常に湿潤状態にあるので、汎用の接着剤によって基材と接着することが難しい。
汎用の接着剤の中には、外科手術において組織を接着するための特殊用途の接着剤のように、ゲルの接着に使用できる可能性がある剤もある。しかしながら高分子ゲルは、その分子構造上、接着剤を吸収しやすい。そのため、高分子ゲルの内部に浸透した接着剤が固化することによって高分子ゲルの組成が変わり、特性や外観が著しく損なわれるという問題が生じる。したがって高分子ゲル複合体を、接着剤を使用することなく作製することが好ましい。
このように接着剤を用いずに基材と高分子ゲルとを接着する方法が望まれている。例えば、ハイドロゲル形成ポリマーと光重合開始剤とを含む組成物を基材の表面に塗布した後、紫外から可視光までの電磁放射線を照射することにより、基材の表面に高分子ゲルを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特表2006−504451号公報
しかしながら、特許文献1に記載された手段は、基材の表面に配置されたハイドロゲルを固定化する方法であるが、基材とハイドロゲルとの接着強度を十分に高めることができない。つまり特許文献1は、例えば、カテーテルやステントのような基材の生体適合性や濡れ性の向上などのように、接着強度があまり問題とはならない基材の表面改質などには好適な方法であるが、その一方で、摺動部分のように継続的に高荷重がかかるため高接着強度が求められるような高分子ゲル複合体の接着技術として応用することは難しい。
したがって本発明の目的は、接着剤を用いることなく、既製の基材と高分子ゲルとを接着して高分子ゲル複合体を製造する方法を提供することである。そして、その方法を用いることにより、基材と高分子ゲルが強固に接着された高分子ゲル複合体が提供されうる。
本発明者らは、鋭意検討の結果、重合開始剤が配置された基材表面に、モノマーを含浸させた架橋ポリマーを配置して;架橋ポリマーに含浸されたモノマーを重合させることによって、基材と高分子ゲルが接着した「高分子ゲル複合体」が得られることを見出して、本発明を完成させた。
本発明の第一は、以下に示す高分子ゲル複合体に関する。
[1]ポリマー基材、および前記ポリマー基材に接着されたIPN構造を有する高分子ゲルを含む高分子ゲル複合体であって、以下の方法によって測定される、前記ポリマー基材と前記高分子ゲルとの接着強度Aが、0.5N/cm〜50N/cmである高分子ゲル複合体。
[接着強度Aの測定方法]
大気環境下における高分子ゲル複合体に含まれる高分子ゲルと、前記ポリマー基材との接着部の端部を剥がし;
前記剥がされた端部の高分子ゲルと、前記ポリマー基材との間隙に、先端が鋭角(10°)の剥ぎ取り部材を挿し当てて;
前記剥ぎ取り部材を、前記高分子ゲルとポリマー基材とを剥がした部位に押圧することにより、前記高分子ゲルの全てを前記ポリマー基材から剥がし、前記剥ぎ取り部材の押圧開始から、前記高分子ゲルの全てが前記ポリマー基材より剥がれるまでの間の押圧力を測定し;
測定された前記押圧力の最大値と最小値の平均値M(N)から下式(1)を用いて計算した結果を接着強度Aとする。
接着強度A(N/cm)=M×tan10°/L …(1)
ただしM:押圧力平均値(N)、L:剥ぎ取られた接着部の幅(cm)とする。
[2]ポリマー基材、および前記ポリマー基材に接着されたIPN構造を有する高分子ゲルを含む高分子ゲル複合体であって、以下の方法によって測定される、前記ポリマー基材と前記高分子ゲルとの接着強度Bが、0.1N/cm〜25N/cmである高分子ゲル複合体。
[接着強度Bの測定方法]
高分子ゲル複合体に含まれる高分子ゲルに含水させて平衡膨潤とし;
前記平衡膨潤させた高分子ゲルと、前記ポリマー基材との接着部の端部を剥がし;
前記剥がされた端部の高分子ゲルと、前記ポリマー基材との間隙に、先端が鋭角(10°)の剥ぎ取り部材を挿し当てて;
前記剥ぎ取り部材を、前記平衡膨潤させた高分子ゲルとポリマー基材とを剥がした部位に押圧することにより、前記高分子ゲルの全てを前記ポリマー基材から剥がし、前記剥ぎ取り部材の押圧開始から、前記高分子ゲルの全てが前記ポリマー基材より剥がれるまでの間の押圧力を測定し;
測定された前記押圧力の最大値と最小値の平均値M(N)から下式(2)を用いて計算した結果を接着強度Bとする。
接着強度B(N/cm)=M×tan10°/L …(2)
ただしM:押圧力平均値(N)、L:剥ぎ取られた接着部の幅(cm)とする。
[3]前記ポリマー基材と前記高分子ゲルとの間には水不溶性ポリマーが存在する、[1]または[2]に記載の高分子ゲル複合体。
[4]前記高分子ゲルの含水率が10重量%〜99重量%である、[1]から[3]のいずれかに記載の高分子ゲル複合体。
[5]前記高分子ゲルは水を含む、[1]から[4]のいずれかに記載の高分子ゲル複合体。
[6]前記高分子ゲルはグリセリンなどの不揮発性液体を含む、[1]から[4]のいずれかに記載の高分子ゲル複合体。
[7]前記高分子ゲルは、架橋構造を有するポリマーに加え、前記ポリマーとは独立した架橋構造または非架橋構造を有するポリマーとを含むIPN構造である、[1]から[6]のいずれかに記載の高分子ゲル複合体。
本発明の第二は、以下に示す高分子ゲル複合体の製造方法に関する。
[8]ポリマー基材、および前記ポリマー基材に接着されたIPN構造を有する高分子ゲルを含む高分子ゲル複合体の製造方法であって、
モノマーと重合開始剤および液体、さらに必要に応じて架橋剤とが含浸された架橋ポリマーを含む第1の成形物を準備する工程;少なくとも一部の表面が光重合開始剤を含む膜で覆われた第2の成形物を準備する工程;および前記光重合開始剤を含む膜に重ねられた前記第1の成形物に、重合に必要な波長を有する光を照射する工程を含む、高分子ゲル複合体の製造方法。
[9]前記モノマーは非電解質である、[8]に記載の高分子ゲル複合体の製造方法。
本発明により、接着剤を用いることなくポリマー基材と高分子ゲルとを接着することができる。本発明により、高接着強度を示す高分子ゲル複合体を得ることもできる。本発明により得られる高分子ゲル複合体は、高分子ゲルに由来する低摩擦性を有し、かつ高接着強度をも有しうる。よって、高荷重がかかる人工関節やベアリングの摺動部材としても有用である。
図1は、本発明に係る高分子ゲル複合体の一例の概略図である。複合体10は、基材11と高分子ゲル12とから構成されている。以下の説明では、本発明の高分子ゲル複合体を、単に「複合体」とも称する。
基材11は、成形されたポリマー部材であり、高分子ゲル12を固定するための支持体としても作用する。基材11の材質であるポリマーは特に限定されず、複合体10の用途などに応じて適宜選択されうる。かかるポリマーの例には、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)などの汎用プラスチックが含まれる。また、複合体10を人工関節のような医用部品に用いる場合には、基材11を超高分子量ポリエチレンなどにすることが好ましく;複合体10を工業用品に用いる場合には、基材11をエンプラやスーパーエンプラなどにすることが好ましい。
エンプラは、通常、耐熱温度が100℃以上で、かつ一定の機械強度を有する樹脂であり;スーパーエンプラは、エンプラの中でも耐熱温度が150℃以上の樹脂を意味する。本発明で好適なエンプラの例には、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)が含まれる。
また、スーパーエンプラの例には、ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)が含まれる。
高分子ゲル12はIPN構造を有する。IPN構造とは、2種以上のポリマーが互いに化学結合をつくることなく相互に入り組んだ構造をいう。高分子ゲル12は、架橋構造を有するポリマー(架橋ポリマー)同士を組み合わせたIPN構造;または架橋ポリマーと非架橋構造のポリマー(非架橋ポリマー)とを組み合わせたIPN構造を有しうる。IPN構造を有する高分子ゲル12は、網目状の架橋ポリマーにその他のポリマーが絡み合った状態にあるため、変形性に富むなどの高分子ゲルとしての特性を保ちながらも高強度を示しうる。なかでも、剛直である網目状の架橋ポリマーに、柔軟な鎖状の非架橋ポリマーが絡み付いたIPN構造を有する高分子ゲル12は、非常に高強度となりうるので、複合体10を人工関節やベアリングのような高荷重のかかる摺動部分などへ適用する場合に有用である。
高分子ゲル12の厚みt1は、1×10−3mm以上であることが好ましい。厚みが1×10−3mm未満であると、耐摩耗性の観点から、高分子ゲル12の特性を長期にわたって保持することが難しいことがある。厚みt1の上限は特に限定されず、複合体の用途に応じて、適宜に設定すればよい。
高分子ゲル12には、液体(溶媒)が含まれている。高分子ゲル12の液体は特に限定されず、複合体の用途に応じて適宜選択すればよい。複合体を生体材料に適用する場合には生体適合性の高い液体、たとえば水(特に純水や生理食塩水)を選択すればよい。
また、高分子ゲル12の液体を、グリセリンなどの不揮発性液体としてもよい。不揮発性液体を選択すれば、高分子ゲルの内部の湿潤状態を長時間維持することができるので、乾燥しづらくなる。そのため、湿度が低く乾燥している環境下での使用が考えられる工業用途の複合体とする場合には、これらの高沸点液体を高分子ゲルの液体とすることが好ましい。グリセリンは生体適合性が求められる生体材料には不向きであるから、生体適合性が求められる場合には使用を控えることが好ましい。
不揮発性液体を含む高分子ゲル12は、不揮発性液体の原液または水溶液に、水を含む高分子ゲル12を有する複合体10を浸漬させて、高分子ゲル12の水を不揮発性液体(グリセリン)に部分置換または全置換することによって得られる。
また、高分子ゲル12に含まれる液体の割合は、特に限定されないが、例えば、含水率(高分子ゲルに含まれる水の割合)は10重量%以上99重量%以下であることが好ましい。さらに高分子ゲル12の含水率は、50重量%以上であることが好ましく、さらに高くてもよい。含水率が50重量%以上の高分子ゲル12は、非常に高い湿潤状態が保持されている。水によって平衡膨潤させた高分子ゲル12は、膨潤度が2以上となり、その含水率が50重量%以上となることが好ましい。
高分子ゲル12の含水率は乾量基準(乾量基準含水率)で示される。乾量基準で示される含水率とは、含水させた状態の高分子ゲル12の重量に対する、高分子ゲル12に含まれている水分重量の割合(重量%)を意味する。含水率の測定は、例えば、高分子ゲル12の一部分をサンプルとして採取し;このサンプルを秤量(W1重量)し;サンプルをオーブンなどの加熱乾燥装置で乾燥し;乾燥後のサンプルを秤量(W2重量)する。乾燥時間や温度は、特に限定されない。高分子ゲルの乾量基準の含水率は、{(W2−W1)/W1}×100の式から算出される。
一方、高分子ゲルの膨潤度は、液体を含まない乾燥状態の高分子ゲル12の重量をx1とし、液体(例えば、水)を含む状態の高分子ゲル12の重量をx2とするときに、「x2/x1」で算出される。
高分子ゲルのIPN構造を構成する一成分である架橋ポリマーは、好ましくは、反応性が異なる2種類以上のモノマーをラジカル共重合させることにより製造されうる。また、良溶媒による架橋ポリマーの平衡膨潤度は5〜1000であり、良溶媒の重量含有率が50〜99.9重量%であることが好ましい。
架橋ポリマーの平衡膨潤度や剛直性は、架橋度の調整によって制御されうる。架橋度は、架橋剤の量によって調節すればよい。例えば、光重合開始剤を含むモノマー組成物に光を照射して重合させた架橋ポリマーを用いる場合には、そのモノマー組成物に含まれる架橋剤の濃度を適宜調節することで架橋度を制御することができる。
非架橋ポリマーは、架橋剤を使用せず、また自己架橋性のないモノマーやポリマーを使用して得た重合体を意味する。架橋ポリマーおよび非架橋ポリマーの架橋度は、モノマーを重合する際に添加される架橋剤の量から算出される。
基材11は、高分子ゲル12と接着される表面に重合層14を有していてもよい。重合層14とは、基材11の表面層であって、高分子ゲル12を構成するポリマーの一部によって内部に侵入されている層である。基材11と高分子ゲル12とは、重合層14が橋架けとなって接着される。そのため、重合層14が互いを強固に接着させることもできる。複合体10の基材11と高分子ゲル12とのせん断接着強度は、0.1N/cm以上50N/cm以下の範囲内で調整することができ、高接着強度にすることもできる。せん断接着強度は、JIS−K−6850(1999)に準じて測定されうる。図1には、重合層14と、基材11および高分子ゲル12との間の境界線が示されているが、上記のように重合層14は基材11と高分子ゲル12とに入り組んだ状態で存在するため、実際には明確な境界線を確認することは難しい場合がある。
また重合層14に、高分子ゲル12を構成するポリマーが侵入しているか否かは、複合体10から高分子ゲル12を除去して、基材11の高分子ゲル12との接着界面を露出させ、露出した界面をIR測定することにより確認されうる。
本発明の複合体は、ポリマー基材の表面に、高分子ゲルが接着されていればよく、ポリマー基材の両面に高分子ゲルが接着されていてもよく;2つのポリマー基材が、高分子ゲルを介して互いに接着されていてもよく;2以上のポリマー基材と2以上の高分子ゲルとが、交互に積層されていてもよく;他の構造であってもよい。
また、基材11と高分子ゲル12とが接着する界面付近には、水不溶性ポリマーが存在していてもよい。水不溶性ポリマーは、本発明の複合体の製造プロセス(後述)において、接着前の基材11の表面に重合開始剤を配置するために用いられるポリマーである。水不溶性ポリマーの例には、ポリ酢酸ビニルが含まれる。
複合体10の高分子ゲル12と基材11との接着強度は、適宜に調整されうる。例えば後述するように、基材11に配置する重合開始剤の量を調整することによって、接着強度を調整することができる。例えば、以下の手順で測定される2種類の接着強度(接着強度A、および接着強度B)を、任意の強さに調整することができる。接着強度Aは、通常の環境下での本発明の複合体の接着強度を示している。例えば接着強度Aは、複合体の製造直後における接着強度であったり、大気雰囲気下に長時間放置された複合体(ほぼ乾燥状態であってもよい)の接着強度であったりする。接着強度Bは、本発明の複合体の高分子ゲルが含水されて平衡膨潤にあるときの接着強度を示している。接着強度Bは、例えば水環境下において使用されている複合体の接着強度を含み、つまり、生体内で人工関節の部材として使用されている複合体の接着強度を含む。
接着強度Aを、少なくとも0.1〜10N/cmとすることができ、0.1〜25N/cmとすることができ、さらに0.1〜50N/cmとすることも可能である。一方、接着強度Bを、少なくとも0.1N/cm〜5N/cmとすることができ、0.1N/cm〜15N/cm以下とすることもでき、さらに0.1N/cm〜25N/cm以下とすることも可能である。
接着強度Aおよび接着強度Bを高くするには、後述するように、ポリマー基材の表面に配置される光重合開始剤の量や濃度を高める(過剰に高めると逆に接着強度が低下することがある)ほか;第一の成型物である架橋ポリマーのモノマー濃度(例えば、重合液に含まれるモノマーの濃度)や架橋密度を高める(過剰に高めると逆に接着強度が低下することがある);第一の成型物に含浸されるモノマーの種類を変えたり、あるいはモノマーの濃度または架橋剤の濃度を高める(過剰に高めると逆に接着強度が低下することがある);ラジカル重合の阻害要因となる溶存酸素の除去レベルの向上(例えば、真空チャンバー内を高真空にしたのち、不活性ガスで置換して重合系から酸素を除去する);接着工程において高分子ゲルとポリマー基材との密着性を高めること、などの手段を採用すればよい。
接着強度Aの測定手順は、大気環境下における高分子ゲル複合体に含まれる高分子ゲルと、前記ポリマー基材との接着部の端部を剥がし;前記剥がされた端部の高分子ゲルと、前記ポリマー基材との間隙に、先端が鋭角(10°とする)の剥ぎ取り部材を挿し当てて;前記剥ぎ取り部材を、前記高分子ゲルとポリマー基材とを剥がした部位に押圧することにより、前記高分子ゲルの全てを前記ポリマー基材から剥がし、前記剥ぎ取り部材の押圧開始から、前記高分子ゲルの全てが前記ポリマー基材より剥がれるまでの間の押圧力を測定し;測定された前記押圧力の最大値と最小値の平均値M(N)を、以下の式(1)に代入して接着強度Aを求める。式(1)において、剥ぎ取り部材で剥ぎ取られた接着部の幅(剥ぎ取り部材の先端と接触する接着部の長さ)をL(cm)とする。

接着強度A(N/cm)=M×tan10°/L …(1)
接着強度Bの測定手順は、高分子ゲル複合体の高分子ゲルに含水させて平衡膨潤とし;前記平衡膨潤させた高分子ゲルと、前記ポリマー基材との接着部の端部を剥がし;前記剥がされた端部の高分子ゲルと、前記ポリマー基材との間隙に、先端が鋭角(10°とする)の剥ぎ取り部材を挿し当てて;前記剥ぎ取り部材を、前記平衡膨潤させた高分子ゲルとポリマー基材とを剥がした部位に押圧することにより、前記高分子ゲルの全てを前記ポリマー基材から剥がし、前記剥ぎ取り部材の押圧開始から、前記高分子ゲルの全てが前記ポリマー基材より剥がれるまでの間の押圧力を測定し;測定された前記押圧力の最大値と最小値の平均値Mを、以下の式(2)に代入して接着強度Bを求める。式(2)において、剥ぎ取り部材で剥ぎ取られた接着部の幅(剥ぎ取り部材の先端と接触する接着部の長さ)をL(cm)とする。

接着強度B(N/cm)=M×tan10°/L …(2)
以下に、接着強度Aおよび接着強度Bの測定方法を、より具体的に説明する。
[接着強度Aおよび接着強度Bの測定]
接着強度Aおよび接着強度Bの測定は、図2(a)に示される装置を用いて行なわれる。測定装置20は、上下自在に変動可能な移動台21に固定されたロードセル22;接着強度測定用のサンプルであり、高分子ゲルとポリマー基材とで構成された複合体23が固定されるT字冶具24;ポリマー基材から高分子ゲルを剥ぎ取るスクレーパ26;スクレーパ26が固定された固定台28を備える。
測定サンプルである複合体23は、後述する複合体の製造方法によって得られる。接着強度Aを測定する場合には、製造直後の複合体をサンプルとして用いたり、通常の大気環境下にある複合体を測定サンプルとしたりすればよい。また、接着強度Bを測定する場合には、測定前に複合体23を水に浸漬させて、平衡膨潤するまで高分子ゲルに含水させて測定サンプルとすればよい。高分子ゲルを水の中に浸漬させる時間は特に限定されず、高分子ゲルの容積などに応じて適宜決定される。高分子ゲルを十分に含水させて平衡膨潤とするためには、ゲルの厚さやこれを構成するポリマーの性質にもよるが、例えば強電解質を主成分とし、2mm程度の厚みの場合であれば、複合体23を約1日間、水の中に浸漬させればよい。
また接着強度の測定前に、高分子ゲル(接着強度Bの場合には平衡膨潤されている)と、ポリマー基材との接着面の端部を剥がす。この剥がされた端部の高分子ゲルとポリマー基材との間隙に、スクレーパ26の先端が押し当てられる。高分子ゲルをポリマー基材から剥がすには、カッターなどを用いて適宜に行えばよい。接着面の端部を剥がすことにより、引き剥がし部材(例えば、スクレーパ26)を押し当てることができる隙間を形成すればよい。
複合体23の接着強度を測定する場合には、先ず、T字冶具24の所定の位置に複合体23が取り付けられる。複合体23の幅方向とスクレーパ26の幅方向とが略平行となるように調節して取り付けることが好ましい。続いて、図2(b)に示されるように、剥がされた高分子ゲルとポリマー基材との間隙に、スクレーパ26の先端を押し当てる。このとき、スクレーパ26の先端を、剥がされた部位に対して強く押し当てる必要はなく、その先端を軽く触れさせればよい。
次に、移動台21を徐々に下降させる(矢印方向)ことにより、スクレーパ26でポリマー基材から高分子ゲルを剥がす。移動台21の下降は、高分子ゲルの全てがポリマー基材から剥がれるまで行われる。移動台21の下降を開始(押圧開始)してから、ポリマー基材から高分子ゲルの全てが剥がれるまでの間の押圧力を測定する。測定された押圧力の最大値m1と最小値m2の平均値を接着強度とする。また、上記の押圧力がフリーになったときが、ポリマー基材から高分子ゲルの全てが剥がれたことを意味する。
接着強度を測定する場合に、押圧開始直後から一定時間が経過するまでは、ポリマー基材と高分子ゲルとの接着界面が安定せず、測定される押圧力にブレが生じることがある。そのため、接着強度を求めるための押圧力の最大値m1と最小値m2は、押圧開始から一定時間経過後に、押圧力のブレがない安定状態で測定された押圧力から得ることが好ましい。
図3に示されるように、接着強度の測定に用いられるスクレーパ26は、金属またはプラスチックを材質とした剥がし部材である。スクレーパ26の先端の角度θは鋭角にされており、ポリマー基材から高分子ゲルを剥がしやすくしている。先端の角度θは、直角よりも小さい角度であればよく特に限定されないが、通常は10°とする。
スクレーパ26の幅L1は、測定サンプルとなる複合体を構成する高分子ゲルの幅と略同一もしくはそれ以上であることが好ましい。これにより、ポリマー基材から高分子ゲルの全幅域を均一に剥がすことができるので、測定される押圧力のバラツキを抑えることができる。スクレーパ26の厚みt3およびその先端の刃の厚みt2も特に限定されず、使用する高分子ゲルの厚みなどに応じて適宜設定すればよい。
本発明の複合体は、本発明の効果を損なわない限り任意の方法で製造されうるが、例えば、以下に示される方法で製造される。
本発明の複合体の製造方法は、ポリマー基材に、IPN構造を有する高分子ゲルが接着された高分子ゲル複合体の製造方法であって、(1)モノマーと重合開始剤および液体、また必要に応じて架橋剤とが含浸された架橋ポリマーを含む第1の成形物を準備する工程、(2)少なくとも一部の表面が光重合開始剤を含む膜で覆われた第2の成形物を準備する工程、および(3)前記膜の表面に重ねられた前記第1の成形物に光を照射する工程、を含む。
(1)の工程において、モノマーと重合開始剤および液体、また必要に応じて架橋剤とが含浸された架橋ポリマーを含む第1の成形物を準備する。第1の成形物を、所定の処理が施された基材に重ねて;基材に重ねられた第1の成形物に光を照射すると、上記モノマーの重合体であるポリマーが、架橋ポリマーに絡み付き、IPN構造を有する高分子ゲルとなる。第1の成形物は、モノマーと重合開始剤および液体、また必要に応じて架橋剤とが含浸された架橋ポリマーであってもよく、またはモノマーと重合開始剤および液体、また必要に応じて架橋剤とを含浸されたIPN構造を有する架橋ポリマーであってもよい。IPN構造を有する架橋ポリマーとは、架橋ポリマーに他のポリマーが絡み合ったポリマーを意味する。
第1の成形物に含まれる架橋ポリマーの例には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリルアミド(AAm)、アクリル酸(AA)、メタクリル酸、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルピリジン、ヒドロキシエチルアクリレート、酢酸ビニル、ジメチルシロキサン、スチレン(St)、メチルメタクリレート(MMA)、トリフルオロエチルアクリレート(TFE)、スチレンスルホン酸(SS)、ジメチルアクリルアミド(DMAAm)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)などのモノマーの架橋重合体、およびポリビニルアルコールなどのポリマーを後架橋した架橋重合体が含まれる。
また、第1の成形物に含まれる架橋ポリマーは、ジェラン、ヒアルロン酸、カラギーナン、キチン又はアルギン酸などの多糖類、またはゼラチンやコラーゲンなどのタンパク質であってもよい。これらを用いれば、得られる複合体の生体適合性を向上させることができる。
架橋ポリマーは、好ましくは、反応性が異なる2種類以上のモノマーをラジカル共重合させることにより製造されうる。また架橋ポリマーは、良溶媒による平衡膨潤度が5〜1000であり、良溶媒の重量含有率が50〜99.9重量%であることが好ましい。
架橋ポリマーの架橋様式は、必ずしも共有結合による化学架橋である必要はない。例えば、水素結合やイオン結合などによる物理的な架橋結合であってもよい。水素結合による架橋が可能なポリマー(例えば、ポリビニルアルコール(PVA))を架橋ポリマーとして含む第一の成形物を準備する場合、当該ポリマーと架橋を形成するのに必要な溶媒(水に限定されない)とを含む溶液を調製し、この溶液に含まれるポリマーを凍結解凍法などにより架橋させればよい。
一方、水素結合による架橋が可能な多糖類またはタンパク質(例えば、寒天やゼラチン)を架橋ポリマーとして含む第一の成形物を準備する場合、当該多糖類またはタンパク質と架橋を形成するのに必要な溶媒とを含む溶液を調製し、この溶液を冷却して溶液に含まれる多糖類またはタンパク質を架橋させればよい。
前述の通り第1の成形物に含まれる架橋ポリマーは、他のポリマーと絡み合うことによって、IPN構造となっていてもよい。他のポリマーの例には、非電解質の非架橋ポリマーが含まれる。この非架橋ポリマーを形成するモノマーの例には、フッ素含有モノマー、具体的には2,2,2−トリフルオロエチルメチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、3−(ペルフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレンおよびフッ化ビニリデンが含まれる。
第1の成形物に含浸されるモノマーの例には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリルアミド(AAm)、アクリル酸(AA)、メタクリル酸、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルピリジン、ヒドロキシエチルアクリレート、酢酸ビニル、ジメチルシロキサン、スチレン(St)、メチルメタクリレート(MMA)、トリフルオロエチルアクリレート(TFE)、スチレンスルホン酸(SS)およびジメチルアクリルアミドが含まれる。
また、前記モノマー溶液には、用途に応じて架橋剤や光重合開始剤を含ませることもできる。ただし製造される複合体の高分子ゲルの低摩擦性を得るためには、架橋剤を用いないか、または架橋剤の濃度を低くするほうがよい。架橋ポリマーと非架橋ポリマーからなるIPN構造を有する高分子ゲルであると、低摩擦性が得られるからである。光重合開始剤及び架橋剤は特に限定されず、公知のものが用いられる。架橋剤は、第1の成形物に含まれるモノマーを架橋できればよく、その例には、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)やエチレングリコールジメタクリレートが含まれる。一方、前記モノマー溶液に含まれる光重合開始剤は、(2)の工程で基材に配置される光重合開始剤(後述)と同様の剤であってもよく、その他の開始剤(ベンゾインメチルエーテルや2−オキソグルタル酸:2−OGAなど)であってもよい。
架橋ポリマーにモノマーを含浸させる方法は特に限定されないが、例えば、モノマーを含む溶液に、架橋ポリマーなどのモノマー含浸対象物を一定時間浸漬させればよい。モノマー含浸対象物をモノマー溶液に浸漬させる時間は、モノマー含浸対象物の体積などに応じて適宜決設定すればよい。
第1の成形物に含まれる液体は特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよいが、その例には水が含まれる。
後述の(3)の工程において、第1の成形物に含まれるモノマーを重合させて高分子ゲルを形成する。その高分子ゲルを高強度にするには、第1の成形物に含まれるモノマーを非電解質モノマーとするか、または(3)の工程で重合されるポリマーを非架橋ポリマーとする(つまり、第1の成形物に架橋剤を加えない)ことが好ましい。
(2)の工程において、高分子ゲルを接着させる面が光重合開始剤を含む膜で覆われた第2の成形物を準備する。第2の成形物は、高分子ゲルと接着させるためのポリマー基材である。前記膜は、光重合開始剤を含む乾燥状態の樹脂膜などである。以下の説明では、高分子ゲルを接着させるための基材の被接着面を単に「被接着面」とも称する。
被接着面に光重合開始剤を含む膜を形成する方法の例には、所定のコーティング液を被接着面に塗布したり、コーティング液を吹き付けたり、または被接着面をコーティング液に浸漬させたりして液膜を形成した後に、乾燥状態の皮膜とする方法が含まれる。被接着面に液膜を形成する方法は特に限定されないが、被接着面をムラなく覆って、できる限り厚みが均一な液膜とすることが好ましい。基材の表面のうち、少なくとも被接着面に液膜を形成すればよい。
所定のコーティング液とは、溶媒および光重合開始剤が混合された混合液である。コーティング液に含まれる光重合開始剤は、特に限定されるものではなく、適宜選択すればよい。具体的な例には、ベンゾフェノンやリボフラビンなどが含まれる。製造される複合体を、人工関節のような生体材料に適用する場合には、リボフラビン、ニコチン酸アミド(ビタミンB3)、チオキサントンなどのような非毒性あるいは生理学的に安全性の高い光重合開始剤を選択することが好ましい。
コーティング液に含まれる溶媒は、使用する光重合開始剤の種類などに応じて適宜選択されうるが、添加剤に対して良溶媒であることが好ましい。良溶媒とは、溶質である添加剤の溶解度が高い溶媒を意味する。溶媒の具体例には、アセトンやメタノールが含まれる。また、沸点が低い溶媒や、揮発性が高い溶媒を用いれば、液膜を乾燥する際に溶媒を容易に除去することができる。
また、均一な膜厚の液膜を形成するためには、溶媒の量を調節して、塗布しやすい濃度のコーティング液を調製することが好ましい。また溶媒によっては、基材を溶かすことがあるため、基材の材質に対する溶媒の溶解性を考慮しながら、適宜溶媒種などの選択を行う。
コーティング液には、水不溶性ポリマーを含ませてもよい。このように光重合開始剤と水不溶性ポリマーとを併用すれば、被接着面に光重合開始剤を効率よくかつ効果的に配置することができる。水不溶性ポリマーは、コーティング液に用いた溶媒に溶解することが好ましい。具体的には、有機溶剤やアルコールなどへの溶解性が高いポリ酢酸ビニルなどが好ましい。
コーティング液の液膜で覆われた被接着面を乾燥する。乾燥によって液膜中の溶媒が蒸発して膜が形成される。このような膜で被接着面を覆うことにより、被接着面に光重合開始剤が配置される。乾燥によって液膜の溶液は除去されるが、被接着面に配置された光重合開始剤の量は変化しない。液膜を乾燥する手段の例には、膜に向かって温調した乾燥風を供給する送風装置や加熱ヒータが含まれるが、特に限定されない。前述の通り、コーティング液に揮発性の高い溶媒を用いれば、常温常圧下に液膜を放置するだけで、液膜中から溶媒のみを容易に除去することができる。
コーティング液の液膜形成から、乾燥状態の膜を形成するまでの作業は、紫外領域にある光を遮断した環境下で行うことが好ましい。これにより、光重合開始剤の特性を損なうことなく作業を進めることができる。
(3)の工程において、光重合開始剤を含む膜の表面に、第1の成形物を重ねる。このとき、第1の成形物と膜の表面とを、密着させることが好ましい。第1の成形物と膜の表面との密着度を上げるには、光を透過するガラス基板などによって第1の成形物とポリマー基材を含む構造体を挟み込み、この構造体の両側から荷重をかければよい。
次に、ポリマー基材に重ねられた第1の成形物に光を照射する。照射する光の波長は、光重合開始剤(ポリマー基材に形成された膜に含まれる重合開始剤など)に応じて選択すればよい。使用時の安全性などを考えると紫外線が好適である。光の照射により、第1の成形物に含浸されたモノマーが重合してポリマーとなる。その結果、第1の成形物は、新たに形成されたポリマーと架橋ポリマーとが絡み付いたIPN構造の高分子ゲルとなる。また、新たに形成されたポリマーの一部が第2の成形物に侵入する。このポリマーが橋架けとなり、第1の成形物と第2の成形物とが接着される。そのため、製造された複合体のポリマー基材と高分子ゲルとが非常に高強度に接着されうる。
以下、本発明の実施例及び比較例を参照して、本発明をさらに具体的に説明する。ここに示す例は、本発明の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1]
第1の成形物の調製
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS、20.725g)、メチレンビスアクリルアミド(MBAA、0.617g)、2−オキソグルタル酸(2−OGA、0.014g)および水からなるAMPS溶液を用意した。具体的には、200mlビーカーに、薬さじによってAMPS溶液の各種原料を添加し;これらを純水で溶解してモノマー水溶液として;モノマー溶液中にアルゴンガスでバブリングを行いながら(約1/4秒間の間隔で気泡を発生させた)、テフロン(登録商標)コーディングされた攪拌子とマグネティックスターラーを用いてモノマー水溶液を1時間攪拌して、100mlのAMPS溶液を得た。
ガラス板(縦150mm、横150mm)に、シリコン枠(厚さ0.5mm、縦150mm、横150mm、幅10mm)をのせ、さらにガラス板を被せて、重合容器を作製した。この重合容器中に、前記AMPS溶液(8ml)を気泡が入らないように注入した。AMPS溶液を注入した重合容器をアルゴンガス雰囲気のグローブボックス内に入れた。グローブボックス内の重合容器に波長365nmの紫外線を15時間、照射して重合を行った。紫外線は、グローブボックスから約20cmの距離から照射した。その結果、厚さ0.5mm×縦100mm×横130mmのPAMPSゲルが得られた。
次にジメチルアクリルアミド(DMAAm、89.217g)、メチレンビスアクリルアミド(MBAA、0.046g)、2−オキソグルタル酸(2−OGA、0.043g)および水からなるDMAAm溶液を用意した。具体的には500mlビーカーに薬さじによってDMAAm溶液の各種原料を添加し;これらを純水で溶解してモノマー溶液として;モノマー溶液中にアルゴンガスでバブリングを行いながら(約1/4秒間の間隔で気泡を発生させた)、テフロン(登録商標)コーティングされた攪拌子とマグネティックスターラーを用いてモノマー溶液を1時間攪拌して、300mlのDMAAm溶液を得た。
AMPSをモノマー原料とするPAMPSゲルを、3MのDMAAm溶液に浸漬させたのち、縦30mm×横25mmの大きさに切り取り、第1の成形物を得た。
第2の成形物の調製
幅30mm×長さ70mm×厚さ1mの低分子量ポリエチレン基材(LDPE基材)を準備した。十分に洗浄したLDPE基材を、後述のコーティング液中に、一定時間(10分間)浸漬させた。LDPE基材をコーティング液から取り出して、ドライヤーを用いて空気中にて乾燥させた。これにより、表面が乾燥状態の膜で被覆されたLDPE基材を作製して、第2の成形物とした。
コーティング液
φ150mmのシャーレに、所定量のベンゾフェノンおよびポリ酢酸ビニルを加え、さらにアセトンを加えて全量を100gとした。ベンゾフェノンおよびポリ酢酸ビニルを完全に溶解させてコーティング液を調製した。ポリ酢酸ビニルの配合量は、コーティング液100重量部に対して6重量部とした。ベンゾフェノンの濃度は、0.2重量%、0.5重量%、1.0重量%として、3種類の濃度のコーティング液を調製した。
複合体の製造
DMAAm溶液によって平衡膨潤状態のPAMPSゲル(第1の成形物)を、第2の成形物であるLDPE基材の中央部分にのせた。その両面をガラス板で挟み、クリップで固定した。
ガラス板で挟まれた第1の成形物と第2の成形物との積層体を、窒素ガス雰囲気のグローブボックス内においた。グローブボックス内の積層体に、紫外線(波長 365nm)を15時間照射して光重合を行った。これにより、第1の成型物に含浸されたDMAAmが重合される。DMAAmの重合体はPAMPSゲルに絡み付き、IPN構造の高分子ゲルが形成され、複合体が得られた。
接着強度の測定
得られた複合体を、1日間、水に浸漬させることにより高分子ゲルを平衡膨潤させた。平衡膨潤した高分子ゲルをLDPE基材から、その接着部の一端部だけをカッターで剥がした。具体的には、3cmの接着幅のうち、端から内側に向かって約1cmだけを剥がした。
接着強度の測定は、図2(a)に示される装置を用いて行なった。先ず、T字冶具24の所定の位置に、接着部の端部を剥がした複合体を取り付けた。このとき、複合体の幅方向とスクレーパ26の幅方向とを略平行とした。また、スクレーパ26は、図3に示されるように、先端の角度θが10°の鋭角であり、その幅L1が42mm、厚みt1が1.7mm、先端の刃の厚みt2が0.3mmのものを使用した。
続いて、図2(b)に示されるように、スクレーパ26の先端を、高分子ゲルと基材とが剥がされた部分に軽く触れる程度に押し当てた。そして、移動台21を徐々に下降させることによってスクレーパ26でポリエチレン基材から高分子ゲルを剥がした。このときの移動台21の下降速度を10mm/分とした。
移動台21の下降を開始(押圧開始)してから、LDPE基材から高分子ゲルの全てが剥がされるまでの押圧力を測定した。そして、測定された押圧力のうち、最大値m1と最小値m2の平均値を接着強度とした。
測定された接着強度は、ベンゾフェノン濃度が0.2重量%のコーティング液を用いた場合には0.2N/cm;0.5重量%の場合には0.8N/cm;1.0重量%の場合には2.5N/cmとなった。これらの結果から、光重合開始剤の濃度によって、接着強度が適宜調整されることが確認された。ベンゾフェノンの濃度が高まるほど、複合体の接着強度が高くなることがわかるが、ただしベンゾフェノンの濃度が過剰に高いと接着強度が下がることもある。もちろん、さらに強い接着強度とすることもできる。
[実施例2]
第1の成形物の調製
実施例1と同様の手順でPAMPSゲルを調製した。
DMAAm溶液を準備した。DMAAm溶液は、モノマーであるDMAAmに、架橋剤であるMBAA(0.1mol%)、光重合開始剤である2−OGA(0.1mol%)を含む混合溶液である。DMAAm溶液に、前述のPAMPSゲルを24時間浸漬して、第1の成形物を得た。
コーティング液
2種類の光重合開始剤(ポリ酢酸ビニルおよびベンゾフェノン)を用いて、2種類のコーティング液aおよびコーティング液bをそれぞれ準備した。コーティング液aは、ポリ酢酸ビニルの配合量が調節されたコーティング液であって、ポリ酢酸ビニルの濃度を2重量%、6重量%、10重量%である3種類とした(ベンゾフェノンの濃度は、1.0重量%で一定とした)。コーティング液bは、ベンゾフェノンの配合量が調節されたコーティング液であって、ベンゾフェノンの濃度を0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、1.0重量%である4種類とした(ポリ酢酸ビニルの濃度は、6重量%で一定とした)。
コーティング液aおよびコーティング液bのそれぞれに、LDPE基材(縦30mm×横70mm、厚さ1mm)を一定時間(10分間)浸漬させ、空気中にて乾燥させた。これにより表面が乾燥状態の膜で被覆されたLDPE基材を作製して、第2の成形物とした。
複合体の作製
DMAAm溶液を含浸させたPAMPSゲル(第1の成形物)を、各コーティング液の皮膜で被覆されたLDPE基材の上にのせた。そこに紫外線(波長365nm)を照射して、第1の成形物に含浸されたモノマーを重合させて、高分子ゲルとPDEL基材とが接着してなる複合体を作製した。
接着強度の評価
得られた各複合体の接着強度を、以下の方法によって測定した。各複合体を水に浸漬させて、その高分子ゲルを膨潤させた。膨潤させた高分子ゲルとLDPE基材との接着具合を目視観察した。高分子ゲルとLDPE基材との間の剥がれ具合を以下の基準にしたがって判断し、複合体の接着強度を3段階で評価した。
高分子ゲルを含水させて膨潤状態とした後に、高分子ゲルとLDPE基材とが剥がれずに接着している場合を○;高分子ゲルを含水させて膨潤状態とした後に、高分子ゲルとLDPE基材とが部分的に剥がれている場合を△:含水させて膨潤状態とした後に、高分子ゲルとLDPE基材とが完全に剥がれている場合を×とした。
ポリ酢酸ビニルの濃度が調整されたコーティング液(コーティング液a)を用いて製造された複合体の接着強度を表1に;ベンゾフェノンの濃度が調整されたコーティング液(コーティング液b)を用いて製造された複合体の接着強度を表2に示す。
Figure 2009051211
Figure 2009051211
表1に示されたようにコーティング液の一成分である水不溶性ポリマー(ポリ酢酸ビニル)の濃度によらず、高分子ゲルとポリマー基材とを接着させることができ、高分子ゲルが膨潤してもはがれないことがわかる。ポリ酢酸ビニルの濃度が高いほど、コーティング液は若干乾燥されにくくなり、コーティング液による皮膜のムラが低減されることが確認された。
また表2に示されたように、コーティング液の一成分である光重合開始剤(ベンゾフェノン)の濃度によって、高分子ゲルとポリマー基材との接着の程度が制御できることがわかる。つまり、コーティング液中の光重合開始剤の濃度が高くなるほど、複合体の接着強度が高くなることが確認された。
[実施例3]
第1の成形物の調製
実施例1と同様の手順でPAMPSゲルを調製した。
モノマー溶液として、実施例2と同様のAAm溶液およびDMAAm溶液を準備した。前述のPAMPSゲルを、AAm溶液またはDMAA溶液に一定時間(24時間)浸漬させて、PAMPSゲルにモノマー溶液を含浸させて第1の成形物を得た。
第2の成形物の調製
LDPE基材の表面を、コーティング液(ポリ酢酸ビニルを6重量%、ベンゾフェノンを0.5重量%含むアセトン溶液)に一定時間(10分間)浸漬させ、空気中にて乾燥させた。これにより表面が乾燥状態の膜で被覆されたLDPE基材を作製して、第2の成形物とした。
複合体の作製
第1の成形物と、皮膜で被覆されたLDPE基材(第2の成形物)とを貼り合わせた。これに紫外線(波長 365nm)を16時間照射して、高分子ゲルとポリマー基材とが接着された複合体を得た。
得られた各複合体の接着強度を、実施例2と同様に評価した。その結果、含水させて平衡膨潤とした高分子ゲルとポリマー基材との間には剥がれが確認されず、非常に高い接着強度であることが示唆された。
[実施例4]
第1の成形物の調製
実施例1と同様に、シート状のPAMPSゲル(縦130mm×横130mm)を準備し、実施例1と同様にDMAAm溶液に浸漬させて平衡膨潤させた後、縦15mm×横130mmに切り取って、第1の成形物を得た。
第2の成形物の調製
縦100mm×横130mmに切断した、厚さ1mmのLDPE基材を2枚用意した。LDPE基材をアセトンに入れて、50℃で煮沸しながら攪拌することによりLDPE基材を洗浄して、風乾した。
コーティング液として、重合開始剤とポリ酢酸ビニルとを含むアセトン溶液を準備した。重合開始剤をベンゾフェノンとして、その濃度が異なる2種類のコーティング液(0.5重量%、および0.3重量%)を準備した(ポリ酢酸ビニルの濃度を6重量%とした)。LDPE基材をそれぞれのコーティング液に一定時間(10分間)浸漬させ、ドライヤーにより空気中にて乾燥させた。これにより表面が乾燥された膜で被覆されたLDPE基材(2枚)を作製して第2の成形物とした。
複合体の製造
第2の成形物である2枚のLDPE基材のうちの1枚の端に、モノマー溶液を含浸させたPAMPSゲルである第1の成形物をのせた。さらに第1の成形物の上に、もう1枚のLDPE基材を被せた。一方のLDPE基材の端部と、もう一方のLDPE基材の端部だけが互いに重なり合い、その重なり部分で第1の成形物が挟み込まれている。
第1の成形物を挟み込む2枚のLDPE基材を、2枚のガラス板で挟んだ。2枚のガラス板をクリップで固定して、ゲル状物質が破壊されない程度の圧力をかけて、LDPE基材とゲル状物質とを互いに密着させた。このときガラス板が歪まないように、適当な厚みのシリコンゴムシートをスペーサとして用いた。
2枚のガラス板で挟まれた重ね合わせ体を、窒素ガス雰囲気下のグローブボックス内に入れた。グローブボックス内の重ね合わせ体に、15時間、365nmの紫外線を照射して、第1の成形物に含浸されたモノマーを重合させた。所定時間(15時間)の紫外線照射後にクリップの固定を開放した。2枚のLDPE基材を純水に浸漬し、含水させることにより高分子ゲルの未反応モノマーを除去して複合体を得た。
[実施例5]
第1の成形物の調製
実施例1と同様の手順でPAMPSゲルを調製した。但し紫外線照射時間は6時間とした。
DMAAm(89.217g)、MBAA(0.046g)、2−OGA(0.043g)および水からなるDMAAm溶液を調製した。具体的には、500mlビーカーに、薬さじでDMAAm溶液の各種原料を添加し;これらを純水で溶解してモノマー水溶液として;モノマー溶液を、アルゴンガスでバブリングしながら(約1/4秒間の間隔で気泡を形成させた)、テフロン(登録商標)コーディングされた攪拌子とマグネティックスターラーを用いてモノマー溶液を1時間攪拌して、300mlのDMAAm溶液を得た。
前記PAMPSゲル(厚さ0.5mm×縦100mm×横130mm)を、カミソリで切断して、縦40mm×横60mmのサイズとした。切断されたゲル片を、縦150mm×横200mm×深さ55mmのポリプロピレン容器の内部に貯留されたDMAAm溶液に浸漬させて、15時間静置した。この後、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内のゲル片に、波長365nmの紫外線を6時間照射して、ゲル片に含浸されたDMAAmを重合させた。紫外線は、グローブボックスから約20cm離れた位置から照射した。これにより、PAMPSの架橋構造に、PDMAAmが絡みついたIPN構造のゲル状物質を得た。得られたゲル状物質の大きさは、厚さ1mm×縦80mm×横120mmであった。
得られたゲル状物質から縦50mm×横50mmの切断片を切り出した。縦150mm×横200mm×深さ55mmのポリプロピレン容器に貯留された前記DMAAm溶液に、切断片を浸漬させて6時間放置した。これにより、DMAAm溶液を含浸させた第1の成形物を得た。
第2の成形物の調製
厚さ1mm×縦70mm×横70mmのポリエチレン基材を準備した。アルミホイルで遮光した環境下にて、ピンセットを用いてポリエチレン基材を以下のコーティング液に入れた後、10分間放置した。ポリエチレン基材をコーティング液から取り出して、空気中で乾燥することにより、光重合開始剤を含む膜で被覆されたポリエチレン基板を得て、第2の成形物とした。
コーティング液
φ150mmのシャーレに、スパーテルを用いてベンゾフェノンを0.3g;薬さじを用いてポリ酢酸ビニルを2.0g添加した。これらにメタノールを加えて、ガラス棒で撹拌して溶液として、100gのコーティング液を調製した。
複合体の製造
前記第1の成形物、および第2の成形物を用いて複合体を形成した。先ず、第2の成形物をガラス板にのせて、さらにその上に第1の成形物をのせた。第1の成形物の上にさらにガラス基板をのせて積層体を得た。得られた積層体を、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内に入れた。グローブボックス内の積層体に、波長365nmの紫外線を、約20cm離れた位置から6時間照射して、モノマーを重合させた。それにより、ポリエチレン基材と、高分子ゲル(第1の成形物のモノマーが重合して形成された)とが接着されて複合体が製造された。複合体を構成する高分子ゲルは、架橋構造を有するPAMPSと、架橋構造を有するPDMAAmからなるIPNゲルに、さらにPDMAAmからなる架橋ポリマーが絡み付いたIPNゲルである。
得られた複合体を水に浸漬し、高分子ゲルを含水させて平衡膨潤とした後に、平衡膨潤させた高分子ゲルとポリマー基材とを手で引き剥がすことにより複合体の接着強度を評価した。その結果、力の加減によっては高分子ゲルが壊れそうになるほど、高分子ゲルとポリマー基材とが強固に接着していることが確認された。
[実施例6]
第1の成形物を変更した以外は、実施例5と同様にして複合体を製造した。
PAMPSゲルから縦50mm×横50mmのサイズに切り出した切断片を、縦150mm×横200mm×深さ55mmのポリプロピレン容器に貯留されたDMAAm溶液(300ml)に浸漬させて、15時間放置した。DMAAm溶液が含浸したPAMPSゲルを第1の成形物とした。
得られた第1の成型物を用いて、実施例5と同様にして複合体を作製した。作製された複合体を構成する高分子ゲルは、架橋ポリマーのPAMPSの架橋構造に、PDMAAmからなる架橋ポリマーが絡み付いたIPN構造を有する。
完成した複合体を水に浸漬し、高分子ゲルを含水させて平衡膨潤とした後に、この平衡膨潤とした高分子ゲルとポリマー基材とを手で引き剥がすことにより複合体の接着強度を評価した。その結果、力の加減によっては高分子ゲルが壊れそうになるほど、高分子ゲルとポリマー基材とが強固に接着していることが確認された。
[実施例7]
第2の成形物として、シート状のポリプロピレン基材を使用する以外は、実施例5と同様にして複合体を作製した。ポリプロピレン基材の大きさは実施例5と同じである。実施例7の複合体を構成する高分子ゲルは、架橋ポリマーのPAMPSの架橋構造に、PDMAAmからなる架橋ポリマーが絡み付いたIPN構造を有する。
完成した複合体を水に浸漬し、高分子ゲルを含水させて平衡膨潤とした後に、この平衡膨潤とした高分子ゲルとポリマー基材とを手で引き剥がすことにより複合体の接着強度を評価した。その結果、力の加減によっては高分子ゲルが壊れそうになるほど、高分子ゲルとポリマー基材とが強固に接着していることが確認された。
[実施例8]
第2の成形物として、シート状のポリスチレン基材を使用する以外は、実施例5と同様にして複合体を作製した。ポリスチレン基材の大きさは実施例5と同じである。実施例8の複合体を構成する高分子ゲルは、架橋ポリマーのPAMPSの架橋構造に、PDMAAmからなる架橋ポリマーが絡み付いたIPN構造を有する。
得られた複合体を水に浸漬し、高分子ゲルを含水させて平衡膨潤とした。平衡膨潤とした高分子ゲルとポリマー基材とを手で引き剥がすことにより複合体の接着強度を評価した。その結果、力の加減によっては高分子ゲルが壊れそうになるほど、高分子ゲルとポリマー基材とが強固に接着していることが確認された。
[実施例9]
第1の成形物の調製
ポリビニルアルコール(PVA)の水溶液を用意した。具体的には、100mlのガラスビーカーに約5℃の冷水90mlを入れ;重合度2000のPVAの粉体10gを分散させ;このPVA分散液を湯浴(水温100℃)により加熱してPVAを完全に溶解させて、10重量%のPVA水溶液を得た。
平滑な底面を有する直径20mm、高さ30mmの容器中に、前記PVA水溶液(10ml)を気泡が入らないように注いだ。PVA水溶液を注いだ容器を−20℃の冷凍庫に入れ、2時間以上静置した。PVA水溶液が完全に凍結したことを確認した後、室温で解凍した。この冷凍−解凍のステップを合計5回繰り返した。その結果、弾力を有する高分子ゲル(PVA凍結解凍ゲル)が得られた。
次に、モノマーであるAAmに、架橋剤であるMBAA(0.1mol%)、光重合開始剤である2−OGA(0.1mol%)を含むAAm溶液を用意した。前記AAm溶液に、前述のPVA凍結解凍ゲルを24時間浸漬して、第1の成形物を得た。
第2の成形物の調製
LDPE基材の表面を、コーティング液(ポリ酢酸ビニルを6重量%、ベンゾフェノンを0.5重量%含むアセトン溶液)に一定時間(10分間)浸漬させ、空気中にて乾燥させた。これにより表面が乾燥状態の膜で被覆されたLDPE基材を作製して、第2の成形物とした。
複合体の作製
第1の成形物と、皮膜で被覆されたLDPE基材(第2の成形物)とを貼り合わせた。これに波長365nmの紫外線を16時間照射して、高分子ゲル(PVA凍結解凍ゲル)とポリマー(LDPE)基材とが接着された複合体を得た。
[比較例1]
AMPSモノマー、ならびにMBAA(4mol%)および2−OGA(0.1mol%)を含むAMPS溶液から、実施例1と同じ方法により、PAMPSゲルを作製した。PAMPSゲルは、架橋構造を有する高分子ゲルである。一方、ポリエチレン基材の表面を、実施例3で用いたコーティング液で被覆した。
PAMPSゲルを、コーティング液で被覆されたポリエチレン基材に重ねた。そこに紫外線を照射して、サンプルを得た。
得られたサンプルを水に浸漬し、PAMPSゲルに含水させることにより平衡膨潤させた。膨潤後のPAMPSゲルは、ポリエチレン基材に接着していたが、膨潤圧によって破壊されていた。手での引き剥がし試験を行うことはできなかった。
本発明は、弾力性や変形性、衝撃吸収性、表面摩擦特性、物質透過性、外部刺激応答性などの高分子ゲルの特性を活かして作られる部材などに有用である。本発明によって得られる高分子ゲルと支持体との複合材料は、工業分野から医用分野に至るまで幅広く利用することができる。例えば、工業分野では、ロボットのジョイント部において、低摩擦性とクッション性を兼ね備えた新しい衝撃吸収性ジョイントとしての適用や、オイルフリーの非金属製ベアリングなどへの応用が期待される。一方、医用分野では、人工関節の軟骨や、人工器官、人工声帯、人工血管を含むあらゆる生体材料への応用が期待される。また、耐熱性に優れたエンジニアリングプラスチックを支持体とすれば、これに高分子ゲルを接着、固定することで、例えば、エンジンやモーターなどの振動を吸収する振動吸収剤として利用することができる。
本発明に係る高分子ゲル複合体の一例の断面図である。 本発明に係る高分子ゲルの接着強度を測定する装置の一例の概略図である。 接着強度を測定する装置に用いられるスクレーパの一例の概略図である。
符号の説明
10 高分子ゲル複合体
11 基材
12 高分子ゲル
14 重合層
20 接着強度測定装置
26 スクレーパ

Claims (9)

  1. ポリマー基材、および前記ポリマー基材に接着されたIPN構造を有する高分子ゲルを含む高分子ゲル複合体であって、
    以下の方法によって測定される、前記ポリマー基材と前記高分子ゲルとの接着強度Aが、0.5N/cm〜50N/cmである高分子ゲル複合体。
    [接着強度Aの測定方法]
    大気環境下における高分子ゲル複合体に含まれる高分子ゲルと、前記ポリマー基材との接着部の端部を剥がし;
    前記剥がされた端部の高分子ゲルと、前記ポリマー基材との間隙に、先端が鋭角(10°)の剥ぎ取り部材を挿し当てて;
    前記剥ぎ取り部材を、前記高分子ゲルとポリマー基材とを剥がした部位に押圧することにより、前記高分子ゲルの全てを前記ポリマー基材から剥がし、前記剥ぎ取り部材の押圧開始から、前記高分子ゲルの全てが前記ポリマー基材より剥がれるまでの間の押圧力を測定し;
    測定された前記押圧力の最大値と最小値の平均値M(N)から下式(1)を用いて計算した結果を接着強度Aとする。
    接着強度A(N/cm)=M×tan10°/L …(1)
    ただしM:押圧力平均値(N)、L:剥ぎ取られた接着部の幅(cm)とする。
  2. ポリマー基材、および前記ポリマー基材に接着されたIPN構造を有する高分子ゲルを含む高分子ゲル複合体であって、
    以下の方法によって測定される、前記ポリマー基材と前記高分子ゲルとの接着強度Bが、0.1N/cm〜25N/cmである高分子ゲル複合体。
    [接着強度Bの測定方法]
    高分子ゲル複合体に含まれる高分子ゲルに含水させて平衡膨潤とし;
    前記平衡膨潤させた高分子ゲルと、前記ポリマー基材との接着部の端部を剥がし;
    前記剥がされた端部の高分子ゲルと、前記ポリマー基材との間隙に、先端が鋭角(10°)の剥ぎ取り部材を挿し当てて;
    前記剥ぎ取り部材を、前記平衡膨潤させた高分子ゲルとポリマー基材とを剥がした部位に押圧することにより、前記高分子ゲルの全てを前記ポリマー基材から剥がし、前記剥ぎ取り部材の押圧開始から、前記高分子ゲルの全てが前記ポリマー基材より剥がれるまでの間の押圧力を測定し;
    測定された前記押圧力の最大値と最小値の平均値M(N)から下式(2)を用いて計算した結果を接着強度Bとする。
    接着強度B(N/cm)=M×tan10°/L …(2)
    ただしM:押圧力平均値(N)、L:剥ぎ取られた接着部の幅(cm)とする。
  3. 前記ポリマー基材と前記高分子ゲルとの間には水不溶性ポリマーが存在する、請求項1または請求項2に記載の高分子ゲル複合体。
  4. 前記高分子ゲルの含水率が10重量%〜99重量%である、請求項1または請求項2に記載の高分子ゲル複合体。
  5. 前記高分子ゲルは水を含む、請求項1または請求項2に記載の高分子ゲル複合体。
  6. 前記高分子ゲルは不揮発性液体を含む、請求項1または請求項2に記載の高分子ゲル複合体。
  7. 前記高分子ゲルは、架橋構造を有するポリマーに加え、前記ポリマーとは独立した架橋構造または非架橋構造を有するポリマーとを含むIPN構造である、請求項1または請求項2に記載の高分子ゲル複合体。
  8. ポリマー基材、および前記ポリマー基材に接着されたIPN構造を有する高分子ゲルを含む高分子ゲル複合体の製造方法であって、
    モノマーと重合開始剤および液体、さらに必要に応じて架橋剤とが含浸された架橋ポリマーを含む第1の成形物を準備する工程、
    少なくとも一部の表面が光重合開始剤を含む膜で覆われた第2の成形物を準備する工程、および
    前記光重合開始剤を含む膜に重ねられた前記第1の成形物に、光を照射する工程を含む、高分子ゲル複合体の製造方法。
  9. 前記モノマーは非電解質である、請求項8に記載の製造方法。
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