JP2009046763A - ばね用線材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.37〜0.54%(質量%の意味、以下同じ)、Si:1.7〜2.30%、Mn:0.1〜1.30%、Cr:0.15〜1.1%、Cu:0.15〜0.6%、Ti:0.010〜0.1%、Al:0.003〜0.05%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる鋼材を900℃以上A4(C=0)変態点以下で加熱し、
仕上げ圧延時の最高到達温度がA3(C=0)変態点以上、A4(C=0)変態点以下になるように熱間圧延し、
コイリング後、冷却床への載置温度をA1(C=0)変態点以上、A1(C=0)変態点+50℃以下にし、コイル密部で1.0℃/秒以上、コイル疎部で8℃/秒以下の冷却速度で冷却する。
【選択図】なし
Description
本発明の他の目的は、Si量が高く、且つC量が低い亜共析鋼でも、フェライト脱炭を防止でき、且つ加工性も改善できるばね用線材の製造方法、及びこの製造条件によって得られるばね用線材を提供することにある。
従って上記目的を達成し得た本発明のばね用線材の製造方法とは、
熱間圧延前の鋼材の加熱温度を、900℃以上A4(C=0)変態点以下にし、
熱間圧延の仕上げ圧延中の鋼材の最高到達温度をA3(C=0)変態点以上、A4(C=0)変態点以下にし、
熱間圧延後のコイルの冷却床への載置温度をA1(C=0)変態点以上、A1(C=0)変態点+50℃以下にし、
オーステナイト粒の結晶粒度番号8.0〜11に対応する連続冷却曲線でフェライトが析出する温度範囲を、コイル密部で1.0℃/秒以上、コイル疎部で8℃/秒以下の冷却速度で冷却する点にその要旨を有する。
熱間圧延前の鋼材の加熱温度:900℃以上、1250℃以下
熱間圧延の仕上げ圧延中の鋼材の最高到達温度:1050℃以上、1200℃以下
コイルの冷却床への載置温度:900℃以上、980℃以下
冷却条件:温度750〜600℃の温度範囲を、コイル密部で1.0℃/秒以上、コイル疎部で8℃/秒以下の冷却速度で冷却する
なお仕上げ圧延中の鋼材の最高到達温度を前記範囲に制御するためには、仕上げ圧延前の鋼材の水冷を行うことなく仕上げ圧延で鋼材を加工発熱させることが推奨される。
DCI(mm)=25.4×(0.171+0.001[C]+0.265[C]2)×
(3.3333[Mn]+1)×(1+0.7[Si])×
(1+0.363[Ni])×(1+2.16[Cr])×
(1+0.365[Cu])×(1+1.73[V])×
(1+3[Mo]) …(1)
〔上記式中、[ ]は鋼材中の各元素の含有量(質量%)を表す。〕
DCI(mm)=25.4×(0.171+0.001[C]+0.265[C]2)×
(3.3333[Mn]+1)×(1+0.7[Si])×
(1+0.363[Ni])×(1+2.16[Cr])×
(1+0.365[Cu])×(1+1.73[V])×
(1+3[Mo])×
(6.849017−46.78647[C]
+196.6635[C]2−471.3978[C]3
+587.8504[C]4−295.0410[C]5) …(2)
〔上記式中、[ ]は鋼材中の各元素の含有量(質量%)を表す。〕
平衡状態図は、例えば、Thermo−Calc(BCC−A2、FCC−A1、LIQUID、CEMENTITEの4つの相を選択)を利用して作図できる。
より詳細に説明すると、圧延中、全成分量から計算したA3変態点以上の温度に鋼材を保持して、相変態による鋼中の炭素拡散を防止しても、鋼材表面の炭素濃度は徐々に低下していく。そして亜共析鋼では、C量が減少すると、A3変態点が上昇する。一方、圧延温度(鋼材温度)は、特に粗圧延及び中間圧延段階で徐々に低下していく。そして徐々に低下していく圧延温度が、徐々に上昇していく鋼表面のA3変態点以下になると、鋼表面では相変態が生じ、炭素拡散によるフェライト脱炭が急速に進行する。そこで本発明では、このようなフェライト脱炭が進行するような場合でも、最終的に得られる線材にフェライト脱炭層を残さないように、製造条件を改善した。
仕上げ圧延温度を前記範囲にするための方法は特に限定されないが、仕上げ圧延前に通常行っている水冷を省略(水冷を弱くすることを含む)し、仕上げ圧延時の加工発熱を利用して、鋼材温度を高めればよい。
熱間圧延前の鋼材の加熱温度は、900℃以上(好ましくは1000℃以上、より好ましくは1100℃以上)、A4(C=0)変態点以下(好ましくは1250℃以下、より好ましくは1200℃以下)である。前記加熱温度は、A3(C=0)変態点以上であることが特に好ましい。加熱温度が低すぎると、熱間圧延の生産性が低下する。またフェライト−オーステナイト域での滞留時間が長くなる。一方、加熱温度がA4(C=0)変態点を超えると、δ−フェライト変態することに帰因するフェライト脱炭、及び高温加熱に帰因する全脱炭が進行する。
冷却開始温度は、冷却床へのコイル(リング状線材)の載置温度として設定できる。この載置温度は、A1(C=0)変態点以上(好ましくはA1(C=0)変態点+5℃以上、さらに好ましくはA1(C=0)変態点+10℃以上。または900℃以上、好ましくは920℃以上、より好ましくは925℃以上)、A1(C=0)変態点+50℃以下(好ましくはA1(C=0)変態点+45℃以下、より好ましくはA1(C=0)変態点+40℃以下。または980℃以下、好ましくは975℃以下、より好ましくは970℃以下)である。載置温度が低すぎるとフェイライト単相域での滞留時間が長くなってフェライト脱炭や全脱炭が生じやすくなる。逆に載置温度が高すぎると、オーステナイト結晶粒が粗大化し(オーステナイト結晶粒度番号が例えば8.0未満になり)、CCT線図においてパーライトノーズが後退する。その結果、載置後の冷却で、過冷組織(ベイナイトやマルテンサイト)が発生しやすくなり、線材の加工性が劣化する。さらには結晶粒が粗大化すると、パーライト変態の核となる結晶粒界(粒界三重点)が少なくなってパーライト変態開始温度が低下するため、フェライトが増えやすくなり、フェライト脱炭の制御が難しくなることもある。
コイル密部及び疎部の冷却速度は、例えば、それぞれの場所に当たる風量を調節することによって別々に制御できる。
前記製造方法によってフェライト脱炭を防止しつつ、加工性を改善できる鋼材の成分は以下の通りである。
C :0.37〜0.54%、
Si:1.7〜2.30%、
Mn:0.1〜1.30%、
Cr:0.15〜1.1%、
Cu:0.15〜0.6%、
Ti:0.010〜0.1%、
Al:0.003〜0.05%、
残部:鉄及び不可避不純物
以下、成分の限定理由について詳細に説明する。
C量が過剰であると、焼入性が増大しすぎて、圧延後の冷却過程で過冷組織が発生し、線材の加工性が劣化するため、C量は、0.54%以下にする。しかも本発明の製造方法を採用することで、C量がさらに少なくなっても、フェライト脱炭を防止できる。またC量が少ないほど、加工性をより改善できる点で有利である。従って好ましいC量は、0.48%以下、特に0.42%以下である。一方、Cが過度に少なくなると、フェライト析出領域が増大し、フェライト脱炭の防止が難しくなる。さらに焼入れ焼戻し後の強度(硬さ)が低下する。そこでC量を、0.37%以上(好ましくは0.38%以上)と定めた。
Siは、固溶強化元素として強度向上(例えば、マトリックス強度向上)に寄与し、耐力も向上させるため、Si量は、1.7%以上にする。しかも本発明の製造方法を採用することで、Siをさらに増量してもフェライト脱炭を防止できる。従って本発明ではSi量の下限を高く設定することが可能であり、例えば、1.75%以上に設定することも可能であり、特にSi量が1.9%以上(例えば、2.0%以上)であってもフェライト脱炭を防止できる点は本発明の利点である。しかし、Si量が過剰であると、フェライト析出領域が増大し、フェライト脱炭の防止が難しくなる。そこでSi量を、2.30%以下に定めた。前記Si量は、好ましくは2.1%以下、より好ましくは1.9%以下にしてもよい。
Mnは、鋼の焼入性を向上させ、焼入れ焼戻し後の硬さを確保するために有効な元素である。Mn量が少なすぎると、ばね用線材に求められる焼入性を達成することが困難である。逆にMn量が過剰であると、圧延後の冷却で過冷組織が発生して、線材の加工性が劣化する。そこでMn量を、0.1%以上(好ましくは0.12%以上、より好ましくは0.2%以上)、1.30%以下(好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.9%以下、さらに好ましくは0.8%以下)に定めた。
Crは、固溶強化により鋼材のマトリックスを強化し、また焼入性を向上させる元素である。Cr量が少なすぎると、ばね用線材に求められる焼入性を達成することが困難である。逆にCr量が過剰であると、線材の加工性が劣化する。そこでCr量を、0.15%以上(好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.5%以上、特に1.0%以上)、1.1%以下(好ましくは1.05%以下)とした。
Cuは、鋼材の耐食性を高める作用を有し、また熱間圧延時やばね加工での熱処理時におけるフェライト脱炭を抑制する元素である。しかしCu量が過剰になると、熱間割れが生じ得る。そこでCu量を、0.15%以上(好ましくは0.20%以上)、0.6%以下(好ましくは0.5%以下)と定めた。
Tiは、焼入れ焼戻し後の旧オーステナイト結晶粒を微細化し、大気耐久性及び耐水素脆性の向上に有効な元素である。またTiは、Ti炭化物を形成して、載置時にオーステナイト結晶粒の粗大化を防止して、載置後の冷却で過冷組織が発生するのを防ぐためにも有効である。しかしTi量が過剰であると、粗大なTi窒化物が析出し、加工性が劣化する。そこでTi量を、0.010%以上(好ましくは0.020%以上)、0.1%以下(好ましくは0.09%以下)と定めた。
Alは、溶鋼処理時の脱酸剤として作用する元素である。またAlは、微細なAl窒化物を形成し、そのピニング効果によって結晶粒を微細化する作用を有する。しかしAl量が過剰であると、粗大なAl酸化物を形成し、疲労特性等に悪影響を及ぼす。そこでAl量を、0.003%以上(好ましくは0.005%以上)、0.05%以下(好ましくは0.03%以下)と定めた。
Pは、旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させ、疲労特性を低下させる元素である。そこでP量は、できるだけ低いほど好ましく、例えば、0.020%以下(好ましくは0.010%以下)に制御してもよい。
Sは、旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させ、疲労特性を低下させる元素である。そこでS量は、できるだけ低いほど好ましく、例えば、0.020%以下(好ましくは0.010%以下)に制御してもよい。
N量が多くなるほど、TiやAlと粗大な窒化物を形成し、疲労特性等に悪影響を及ぼす。そこでN量はできるだけ少ないほど好ましく、例えば、0.0070%(好ましくは0.005%)に制御してもよい。一方、N量を低減しすぎると生産性が著しく低下する。またNはTiやAlと共に窒化物を形成して結晶粒の微細化に貢献する。この観点からすればN量を、0.001%以上(好ましくは0.002%以上)に設定することが望ましい。
O量が過剰になると、粗大な酸化物系介在物(Al2O3など)が形成され、疲労特性等に悪影響を及ぼす。そこでO量の上限を、0.0015%以下(好ましくは0.0010%以下)と定めた。一方、O量の下限は、工業生産上、一般に0.0002%以上(好ましくは0.0004%以上)である。
Ni:0.7%以下(0%を含まない)
Niは、圧延前及び圧延中のフェライト脱炭を抑制する作用を有し、さらに焼入れ焼戻し後のばね素材の靱性を高める作用を有する元素である。そこで必要に応じてNiを、好ましくは0.15%以上(より好ましくは0.2%以上)の量で含有させることが推奨される。しかしNi量が過剰であると、焼入れ焼戻しによって、残留オーステナイト量が増大し、引張強さが低下する。そこで含有させる場合のNi量を、0.7%以下(好ましくは0.65%以下、より好ましくは0.6%以下)と定めた。
V及びNbは、微細な化合物(V炭化物、窒化物やこれらの複合化合物、Nb炭化物、窒化物、硫化物やこれらの複合化合物)を形成して、耐水素脆性及び疲労特性を向上させる作用を有し、さらに結晶粒微細化効果を発揮して、靱性や耐力を高める作用も有する元素である。またVは、耐へたり性の向上にも寄与する。そこで必要に応じてVを、好ましくは0.07%以上(より好ましくは0.10%以上)の量で、Nbを、好ましくは0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)の量で含有させることが推奨される。
Moは、焼入性を確保すると共に、軟化抵抗を向上させて、耐へたり性を向上させるために有効な元素である。そこでMoを、好ましくは0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)の量で含有させることが推奨される。しかしMo量が過剰になると、熱間圧延後の冷却時に過冷組織が発生して加工性や延性が劣化する。そこで含有させる場合のMo量を、0.3%以下(好ましくは0.2%以下)と定めた。
Bは、Pの粒界偏析を防止して粒界を清浄化し、耐水素脆性や靱延性を向上させるために有効な元素である。また少量のBを添加するだけで、多量の合金元素を添加しなくとも焼入性を増大させることができるので、圧延後の徐冷中に生じる線材表層のフェライト析出を抑えると共に、ばね製造時の焼入時の硬さを深くまで確保できる。そこで必要に応じてBを、好ましくは0.0003%以上(より好ましくは0.0005%以上)の量で含有させることが推奨される。しかしB量が過剰になると、Fe23(CB)6等のB化合物が形成されて、フリーのBが減少するため、Pの粒界偏析を防止する効果が飽和する。さらにこのB化合物は粗大であることが多いため、疲労折損の起点となって疲労特性が低下し得る。そこで含有させる場合のB量を、0.005%以下(好ましくは0.004%以下)と定めた。
DCI(mm)=25.4×(0.171+0.001[C]+0.265[C]2)×
(3.3333[Mn]+1)×(1+0.7[Si])×
(1+0.363[Ni])×(1+2.16[Cr])×
(1+0.365[Cu])×(1+1.73[V])×
(1+3[Mo]) …(1)
B.F.=(6.849017−46.78647[C]+196.6635[C]2
−471.3978[C]3+587.8504[C]4
−295.0410[C]5) …(3)
DCI(mm)=25.4×(0.171+0.001[C]+0.265[C]2)×
(3.3333[Mn]+1)×(1+0.7[Si])×
(1+0.363[Ni])×(1+2.16[Cr])×
(1+0.365[Cu])×(1+1.73[V])×
(1+3[Mo])×
(6.849017−46.78647[C]
+196.6635[C]2−471.3978[C]3
+587.8504[C]4−295.0410[C]5) …(2)
表1に示す化学成分組成の鋼(鋼種A〜M)を80トンの転炉にて溶製し、連続鋳造で400mm角のブルームを作成し、さらに分塊圧延して155mm角のビレットにした。このビレットを加熱した後、熱間圧延し、載置温度近くまで水冷した後、コイリングし、ステルモア冷却設備の冷却床(コンベア)に載置し、コイル密部とコイル疎部に供給する風量を調節しながら衝風冷却することによって、直径14.3mmのばね用線材を2トン作製した。詳細な製造条件は、表2に示した通りである。また表2中、冷却速度は、温度750℃〜600℃の間の速度である。
線材コイルのトップ部(圧延始め)及びボトム部(圧延終わり)からそれぞれ5巻き目を寸断した。トップ側及びボトム側の1巻きをそれぞれ8等分に分割し、合計16本の線材片を作製した。ローラ矯正で線材片を直線形状にした後、各線材片からJIS Z 2201の2号試験片(チャック間距離200mm)を作製して、引張試験を行い、引張強さ及び破断絞りを測定した。16本の試験片の中で、引張強さの最大値及び破断絞りの最小値を、当該線材の引張強さ及び破断絞りとした。引張強さが高く、破断絞りが小さい例(特に25%未満である場合)は、過冷組織の影響が出ていると判断し、不合格とした。
前記トップ側及びボトム側から得られた16本の線材片において、引張試験片を採取した近傍から10mm程度切断してサンプルを取得した。このサンプルを、切断面(横断面)が表面に出るようにしながら樹脂に埋込み、エメリー紙及びダイヤモンド粒子を用いて湿式研磨し、次いでピクラール液でエッチングして、合計16個の脱炭層深さ測定用試験片を作製した。これら試験片を光学顕微鏡にて観察倍率200倍で観察し、表層の全脱炭層深さ及びフェライト脱炭層深さを測定した。この測定法は、JIS G 0558の顕微鏡による測定法に従った。16個のサンプルの中で、全脱炭層深さ及びフェライト脱炭層深さの最大値を、本発明における「全脱炭層深さ」及び「フェライト脱炭層深さ」とした。
上記実験例と同様にして、鋼の溶製から線材のコイリングまでを実施した。この線材コイルを表2に示す冷却条件ではなく、強風冷にて約20℃/秒の冷却速度で温度200℃まで冷却し、マルテンサイト組織を主体とした線材(即ち、表層0.1mmの深さを光学顕微鏡にて観察倍率200倍で観察した場合、組織の95面積%以上がマルテンサイト組織である線材)を2トン作製した。このコイルのトップ部及びボトム部からそれぞれ5巻き目を寸断し、トップ側及びボトム側の1巻きをそれぞれ8等分に分割し、合計16本の線材片を作製した。各線材片から20mm程度の長さのサンプルを湿式切断し、これを550℃×2時間焼鈍した。このサンプルを、切断面(横断面)が表面に出るようにしながら樹脂に埋込み、エメリー紙及びダイヤモンド粒子を用いて湿式研磨し、次いでピクラール液でエッチングして、合計16個のオーステナイト結晶粒度番号の測定用試験片を作製した。これら試験片を光学顕微鏡で観察し、表層から0.1mmの深さの位置におけるオーステナイト結晶粒度番号を測定した。この測定法は、JIS G 0551の結晶粒度の顕微鏡試験方法に従った。16個のサンプルの中でオーステナイト結晶粒度番号の最小値を採用した。
なお、例えばA鋼のA3変態点(C=0.42%)は、約840℃程度であり、A−2の例では圧延中、常にこのA3変態点以上に温度が保持されているといえる。しかしこのA−2の例では、フェライト脱炭が生じた。A−1に示すように、仕上げ圧延中の最高到達温度をA3(C=0)変態点以上にすることで、フェライト脱炭を防止できた。
Claims (11)
- C:0.37〜0.54%(質量%の意味、以下同じ)、Si:1.7〜2.30%、Mn:0.1〜1.30%、Cr:0.15〜1.1%、Cu:0.15〜0.6%、Ti:0.010〜0.1%、Al:0.003〜0.05%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる鋼材を熱間圧延し、コイリング後、冷却床で冷却するばね用線材の製造方法であって、
前記鋼材の平衡状態図でC=0質量%のときのA1変態点、A3変態点、及びA4変態点をそれぞれA1(C=0)変態点、A3(C=0)変態点、A4(C=0)変態点と称したとき、
熱間圧延前の鋼材の加熱温度を、900℃以上A4(C=0)変態点以下にし、
熱間圧延の仕上げ圧延中の鋼材の最高到達温度をA3(C=0)変態点以上、A4(C=0)変態点以下にし、
コイルの冷却床への載置温度をA1(C=0)変態点以上、A1(C=0)変態点+50℃以下にし、
オーステナイト粒の結晶粒度番号8.0〜11に対応する連続冷却曲線でフェライトが析出する温度範囲を、コイル密部で1.0℃/秒以上、コイル疎部で8℃/秒以下の冷却速度で冷却することを特徴とするばね用線材の製造方法。 - C:0.37〜0.54%(質量%の意味、以下同じ)、Si:1.7〜2.30%、Mn:0.1〜1.30%、Cr:0.15〜1.1%、Cu:0.15〜0.6%、Ti:0.010〜0.1%、Al:0.003〜0.05%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる鋼材を熱間圧延し、コイリング後、冷却床で冷却するばね用線材の製造方法であって、
熱間圧延前の鋼材の加熱温度を、900℃以上、1250℃以下にし、
熱間圧延の仕上げ圧延中の鋼材の最高到達温度を1050℃以上、1200℃以下にし、
コイルの冷却床への載置温度を900℃以上、980℃以下にし、
温度750℃〜600℃の温度域を、コイル密部で1.0℃/秒以上、コイル疎部で8℃/秒以下の冷却速度で冷却することを特徴とするばね用線材の製造方法。 - 仕上げ圧延前の鋼材の水冷を行うことなく仕上げ圧延で鋼材を加工発熱させることによって、仕上げ圧延中の鋼材の最高到達温度を前記範囲に制御する請求項1又は2に記載のばね用線材の製造方法。
- 前記鋼材が、さらにNi:0.7%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載のばね用線材の製造方法。
- 前記鋼材が、さらにV:0.4%以下(0%を含まない)及び/又はNb:0.1%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載のばね用線材の製造方法。
- 前記鋼材が、さらにMo:0.3%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載のばね用線材の製造方法。
- 前記鋼材の下記式(1)で示される理想臨界直径DCIが、75〜135mmである請求項1〜6のいずれかに記載のばね用線材の製造方法。
DCI(mm)=25.4×(0.171+0.001[C]+0.265[C]2)×
(3.3333[Mn]+1)×(1+0.7[Si])×
(1+0.363[Ni])×(1+2.16[Cr])×
(1+0.365[Cu])×(1+1.73[V])×
(1+3[Mo]) …(1)
〔上記式中、[ ]は鋼材中の各元素の含有量(質量%)を表す。〕 - 前記鋼材が、さらにB:0.005%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載のばね用線材の製造方法。
- 前記鋼材の下記式(2)で示される理想臨界直径DCIが、75〜135mmである請求項8に記載のばね用線材の製造方法。
DCI(mm)=25.4×(0.171+0.001[C]+0.265[C]2)×
(3.3333[Mn]+1)×(1+0.7[Si])×
(1+0.363[Ni])×(1+2.16[Cr])×
(1+0.365[Cu])×(1+1.73[V])×
(1+3[Mo])×
(6.849017−46.78647[C]
+196.6635[C]2−471.3978[C]3
+587.8504[C]4−295.0410[C]5) …(2)
〔上記式中、[ ]は鋼材中の各元素の含有量(質量%)を表す。〕 - 前記鋼材中のPが0.020%以下(0%を含まない)、Sが0.020%以下(0%を含まない)、Nが0.0070%以下(0%を含まない)、Oが0.0015%以下(0%を含まない)である請求項1〜9のいずれかに記載のばね用線材の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法により製造され、フェライト脱炭層深さが0.01mm以下であり、全脱炭層深さが0.20mm以下であり、破断絞りが25%以上であることを特徴とするばね用線材。
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