JP2009046764A - 腐食疲労特性に優れたばね用鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C等を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、フェライト脱炭層深さが0mmであり、下記式(1)で示されるCeq1が0.580以上であり、下記式(2)で示されるCeq2が0.49以下であり、下記式(3)で示されるCeq3が0.570以下であることを特徴とするばね用鋼。
Ceq1=[C]+0.11[Si]−0.07[Mn]−0.05[Ni]+0.02[Cr] … (1)
Ceq2=[C]+0.30[Cr]−0.15[Ni]−0.70[Cu] … (2)
Ceq3=[C]−0.04[Si]+0.24[Mn]+0.10[Ni]+0.20[Cr]−0.89[Ti]−1.92[Nb] … (3)
〔上記式中、[ ]は鋼中の各元素の含有量(質量%)を表す。〕
【選択図】なし
Description
特許文献2は、Cが腐食疲労強度低下原因であるとしてCを低減すること、そしてCの低減によって懸念される耐へたり性の低下を、Si、Cu、Niなどの添加で防止すること、CuやNiは耐食性を高めるためにも有効であることを教示している。
しかしこれら特許文献1〜2では、技術レベルが十分に高いとは言えず、腐食疲労強度のさらなる向上余地がある。例えば、特許文献1〜2では、Niについては単に耐食性に優れるとの認識に過ぎず、その詳細な作用メカニズムや功罪両面の詳細検討が不足している。また同様のことは、Ni以外の元素についてもいえる。
Ceq1=[C]+0.11[Si]−0.07[Mn]−0.05[Ni]+0.02[Cr] … (1)
Ceq2=[C]+0.30[Cr]−0.15[Ni]−0.70[Cu] … (2)
Ceq3=[C]−0.04[Si]+0.24[Mn]+0.10[Ni]+0.20[Cr]−0.89[Ti]−1.92[Nb] … (3)
(上記式中、[ ]は鋼中の各元素の含有量(質量%)を表す。なお鋼が、上記式に記載された元素(例えばCr)を含有しない場合、その対応する項目(例えば[Cr])にはゼロを代入して、Ceq1〜3を計算すればよい。)
アスペクト比=(腐食ピットの深さ×2)/(腐食ピットの幅) … (4)
腐食試験:
ばね用鋼を温度925℃で10分加熱した後、温度70℃の油で冷却して油焼入れし、次いで温度400℃で60分加熱して焼戻しを行った後、表面を800番のエメリー紙で研磨して腐食試験用の試験片を作製する。
この試験片に、5質量%のNaCl水溶液を、JIS Z 2371に従い35℃で8時間噴霧し、その後、試験片を湿度60%及び温度35℃の湿潤環境に16時間保持することを1サイクルとして、これを合計14サイクル行う。
その後、錆を除去してから、試験片表面の腐食ピットをレーザー顕微鏡にて観察する。
本発明では、製造方法を工夫することによってフェライト脱炭を防止している。フェライト脱炭は、合金元素を制御することによっても低減できるが、その場合には合金元素の添加量が増大して経済性が低下する虞があり、またCeq1〜3の制御との両立が難しくなるため、製造方法の工夫によってフェライト脱炭を防止することとした。
本発明の仕上げ圧延温度は、通常の仕上げ圧延温度に比べて高い。仕上げ圧延温度を前記範囲にするためには、例えば、仕上げ圧延前に通常行っている水冷を省略(水冷を弱くすることを含む)し、仕上げ圧延時の加工発熱を利用して、鋼材温度を高めればよい。
なお仕上げ圧延後、コイリングまでの条件は、コイリング後の線材(ばね用鋼)を、そのまま所定の載置温度で冷却床に供給可能なように設計される。通常は、仕上げ圧延後、水冷又は風冷(好ましくは水冷)によって所定の載置温度近くまで急冷してから、コイリングする。急冷によって、冷却床での冷却開始までにフェライト脱炭が開始するのを防止することもできる。
Ceq2=[C]+0.30[Cr]−0.15[Ni]−0.70[Cu] … (2)
Ceq3=[C]−0.04[Si]+0.24[Mn]+0.10[Ni]+0.20[Cr]−0.89[Ti]−1.92[Nb] … (3)
腐食試験:
(a)ばね用鋼を温度925℃で10分加熱した後、温度70℃の油で冷却して油焼入れし、次いで温度400℃で60分加熱して焼戻しを行った後(その後、必要なら表面を削って縮径した後(例えば、直径を0.25mm程度短くした後))、次いで表面を800番のエメリー紙で研磨して腐食試験用の試験片を作成する。
(b)この試験片に、5質量%のNaCl水溶液を、JIS Z 2371に従い35℃で8時間噴霧し、その後、試験片を湿度60%及び温度35℃の湿潤環境に16時間保持することを1サイクルとして、これを合計14サイクル行う。
(c)クエン酸アンモニウム(98.7%)を蒸留水で10質量%に希釈した液に常温で試験片を浸し、塩水噴霧で発生した錆びを除去する。次いで試験片表面の腐食ピットをレーザー顕微鏡にて観察し、試験片表面に観察される腐食ピットの中から、深さが大きいものから順に5個以上の腐食ピットを選択し、それら腐食ピットのアスペクト比を下記式(4)に従って算出する。
アスペクト比=(腐食ピットの深さ×2)/(腐食ピットの幅) … (4)
ばね用鋼を温度925℃で10分加熱した後、温度70℃の油で冷却して油焼入れし、次いで温度400℃で60分加熱して焼戻しを行い、試験片にする。4点曲げによって1400MPaの応力を作用させながら、試験片を硫酸(0.5mol/L)及びチオシアン酸カリウム(0.01mmol/L)の混合水溶液に浸漬する。ポテンションスタットを用いてSCE電極よりも卑である−700mVの電圧をかけ、割れが発生するまでの時間を測定する。
(a)ばね用鋼を温度925℃で10分加熱した後、温度70℃の油で冷却して油焼入れし、次いで温度400℃で60分加熱して焼戻しを行った後、JIS試験片(疲労試験片)に加工する。
(b)この疲労試験片の平行部を800番のエメリー紙で研磨した。試験片の掴み部が腐食しないように被膜で保護した後、この試験片に、5質量%のNaCl水溶液を、JIS Z 2371規格に従い35℃で8時間噴霧し、その後、試験片を湿度60%及び温度35℃の湿潤環境に16時間保持することを1サイクルとして、これを合計14サイクル行った後、小野式回転曲げ疲労試験で疲労試験を実施する。10MPa間隔で負荷応力を増大させながら、各負荷応力につき5本の試験片を用いて疲労試験を実施し、5本の試験片全てで1000万回まで折損しなかった応力を、腐食疲労強度とする。
C:0.38〜0.47%、
Si:1.9〜2.5%、
Mn:0.6〜1.3%、
Cr:0.4%以下(0%を含む)、
Cu:0.7%以下(0%を含む)、
Ni:0.7%以下(0%を含む)、
Ti:0.05〜0.15%、及び
Al:0.003〜0.1%、
残部:鉄及び不可避不純物
合金元素量(成分)の限定理由について詳述する。
Cは、鋼中に必須的に含まれ、焼入れ・焼戻し後の強度(硬さ)の向上に寄与する。しかしC量が多すぎると、腐食ピットのアスペクト比が増大することで腐食ピットへの応力集中が増大し、また鋼中マトリックスの靱性が劣化することで耐水素脆性も劣化する。その結果、C量が過剰であると腐食疲労特性が劣化する。そこでC量を、0.38%以上(好ましくは0.39%以上)、0.47%以下(好ましくは0.45%以下、より好ましくは0.43%以下)と定めた。
Siは、固溶強化元素として強度向上に寄与し、耐力も向上させる。そのためSi量が少なすぎると、マトリックス強度が不足する。さらにSiは、焼戻し時の炭化物析出温度を高温側にシフトさせて、焼戻し脆性域を高温側にシフトさせることによって、耐水素脆性を向上させる作用も有する。しかしSi量が過剰であると、調質加熱時の炭化物の溶け込みを阻害し、強度が低下する。そこでSi量を、1.9%以上(好ましくは1.95%以上)、2.5%以下(好ましくは2.3%以下、より好ましくは2.2%以下)と定めた。
Mnは、平衡状態図におけるオーステナイト領域を広げる元素(オーステナイトフォーマー元素)であり、安定してフェライト脱炭を抑制するのに有効である。しかしMn量が過剰であると、鋼中マトリックスの靱性が低下して耐水素脆性が劣化し、その結果、腐食疲労特性が劣化する。そこでMn量を、0.6%以上(好ましくは0.65%以上、より好ましくは0.7%以上)、1.3%以下(好ましくは1.1%以下、より好ましくは0.9%以下)と定めた。
Crは、固溶強化により鋼のマトリックスを強化し、また焼入性を向上させる作用を有する。こうした作用を発揮させるために鋼中にCrを、好ましくは0.1%以上(より好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.20%以上)の量で含有させることが推奨される。しかしCrは、腐食ピット底部のpH値を下げて、腐食ピットのアスペクト比を増大させる(鋭利にする)という作用を有し、これは腐食疲労特性に悪影響を及ぼす。従って本発明では、Cr量の上限を、0.4%以下(好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.25%以下)と定めた。
Cuは、電気化学的に鉄よりも貴な元素であり、鋼の耐食性を高める作用を有する。さらにCuは、腐食中に生じる錆のアモルファス組成を増大させて、腐食原因の1つであるCl元素が腐食ピット底部に濃化することを抑制する作用を有する。この作用によって、腐食ピットのアスペクト比が制限され、応力集中が緩和され、腐食疲労特性が向上する。こうした作用を発揮させるために鋼中にCuを、好ましくは0.1%以上(より好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.22%以上)の量で含有させることが推奨される。しかしCu添加によって、熱間圧延割れが生ずることがある。従って本発明では、Cu量の上限を0.7%以下(好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.4%以下、特に0.35%以下)と定めた。
Niは、Cuと同様に、耐食性を高める作用、及び錆のアモルファス組成を増大させて、腐食ピットのアスペクト比を低減させる作用を有する。こうした作用を発揮させるために鋼中にNiを、好ましくは0.1%以上(より好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.20%以上)の量で含有させることが推奨される。しかしNiは、調質(焼入れ・焼戻し)後のマトリックス中の残留オーステナイト量を増大させる作用を有し、その結果、調質後の硬さ(引張強さ)を低減させる。さらに耐水素脆性も低下させる。従って本発明では、Ni量の上限を、0.7%以下、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.4%以下、特に0.35%以下と定めた。
Tiは、焼入れ・焼戻し後の旧オーステナイト結晶粒を微細化し、大気耐久性及び耐水素脆性の向上に有効である。しかしTi量が過剰であると、粗大なTi窒化物が析出し、疲労特性が劣化する。そこでTi量を、0.05%以上(好ましくは0.06%以上、より好ましくは0.07%以上)、0.15%以下(好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.09%以下、特に0.085%以下)と定めた。
Alは、溶鋼処理時の脱酸剤として作用する元素である。またAlは、微細なAl窒化物を形成し、そのピニング効果によって結晶粒を微細化する作用を有する。しかしAl量が過剰であると、粗大なAl酸化物を形成し、疲労特性に悪影響を及ぼす。そこでAl量を、0.003%以上(好ましくは0.005%以上)、0.1%以下(好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.03%以下)と定めた。
Pは、旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させ、疲労特性を低下させる元素である。そこでP量は、できるだけ低いほど好ましく、例えば0.02%以下(好ましくは0.01%以下)に制御してもよい。
Sは、旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させ、疲労特性を低下させる元素である。そこでS量は、できるだけ低いほど好ましく、例えば0.02%以下(好ましくは0.01%以下)に制御してもよい。
N量が多くなるほど、TiやAlと共に粗大な窒化物を形成し、疲労特性に悪影響を及ぼす。そこでN量はできるだけ少ないほど好ましく、例えば0.007%以下(好ましくは0.005%以下)に制御してもよい。一方、N量を低減しすぎると、生産性が著しく低下する。またNはAlと共に窒化物を形成して、結晶粒の微細化に貢献する。この観点からすればN量を、0.001%以上(好ましくは0.002%以上)に設定することが好ましい。
O量が過剰になると、粗大な酸化物系介在物(Al2O3など)が形成され、疲労特性に悪影響を及ぼす。そこでO量の上限を、0.0015%以下(好ましくは0.0010%以下)と定めた。一方、O量の下限は、工業生産上、一般に0.0002%以上(好ましくは0.0004%以上)である。
Nbは、微細な化合物(Nb炭化物、窒化物、硫化物やこれらの複合化合物)を形成して、耐水素脆性を向上させる作用を有する元素である。さらにNbは、結晶粒微細化効果を発揮して、靱性や耐力を高める作用も有する。そこで必要に応じてNbを、好ましくは0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)の量で含有させることが推奨される。しかしNb量が過剰であると、焼入れ加熱時にオーステナイト中に固溶されない炭化物の量が増大し、充分な強度が得られなくなる。またNb量が過剰であると、粗大なNb窒化物を形成して、疲労折損が生じ易くなる。そこで含有させる場合のNb量を、0.1%以下(好ましくは0.05%以下)と定めた。
Bは、Pの粒界偏析を防止して粒界を清浄化し、耐水素脆性や靱延性を向上させるために有効な元素である。また少量のBを添加するだけで、多量の合金元素を添加しなくとも焼入性を増大させることができるので、圧延後の徐冷中に生じる線材表層のフェライト析出を抑えると共に、ばね製造時の焼入時の硬さを深くまで確保できる。そこで必要に応じてBを、好ましくは0.0003%以上(より好ましくは0.0005%以上)の量で含有させることが推奨される。しかしB量が過剰になると、Fe23(CB)6等のB化合物が形成されて、フリーのBが減少するため、Pの粒界偏析を防止する効果が飽和する。さらにこのB化合物は粗大であることが多いため、疲労折損の起点となって疲労特性が低下し得る。そこで含有させる場合のB量を、0.005%以下(好ましくは0.004%以下)と定めた。
表1に示す化学成分組成の鋼(鋼種SA〜SG)を80トンの転炉にて溶製し、連続鋳造で400mm角のブルームを作製し、さらに分塊圧延して155mm角のビレットにした。このビレットを加熱した後、熱間圧延し、載置温度近くまで水冷した後、コイリングし、ステルモア冷却設備の冷却床(コンベア)に載置し、コイル密部とコイル疎部に供給する風量を調節しながら衝風冷却することによって、直径14.3mmのばね用線材を2トン作製した。詳細な製造条件は、表2に示した通りである。また表2中、冷却速度は、温度750℃〜600℃の間の速度である。
線材コイルのトップ部(圧延始め)及びボトム部(圧延終わり)からそれぞれ5巻き目を寸断した。トップ側及びボトム側の1巻きをそれぞれ8等分に分割し、合計16本の線材片を作製し、各線材片から10mm程度のサンプルを切断した。このサンプルを、切断面(横断面)が表面に出るようにしながら樹脂に埋込み、エメリー紙及びダイヤモンド粒子を用いて湿式研磨し、次いでピクラール液でエッチングして、合計16個の脱炭層深さ測定用試験片を作製した。これら試験片を光学顕微鏡にて観察倍率200倍で観察し、表層の全脱炭層深さ及びフェライト脱炭層深さを測定した。この測定法は、JIS G 0558の顕微鏡による測定法に従った。16個のサンプルの中で、全脱炭層深さ及びフェライト脱炭層深さの最大値を、各線材コイルにおける「全脱炭層深さ」及び「フェライト脱炭層深さ」とした。
点、A3(C=0)変態点、A4(C=0)変態点)も記載した。なお鋼種SGでは、C=0%付近でA3及びA4線が結合してしまい、A3(C=0)変態点及びA4(C=0)変態点が消失した。
表3に示す化学成分組成の鋼を150kgの小型真空溶解炉にて溶製し、熱間鍛造して155mm角のビレットを作製した。化学成分組成から計算されるCeq1〜3を、表5に示す。前記ビレットを加熱した後、熱間圧延し、載置温度近くまで水冷したあと、コイリングし、ステルモア冷却設備の冷却床(コンベア)に載置し、コイル密部とコイル疎部に供給する風量を調節しながら衝風冷却することによって、直径13.5mmのばね用鋼(線材)を作製した。詳細な製造条件は、表4に示した通りである。また表4中、冷却速度は600〜750℃の間の速度である。なお表4には、化学成分組成(但しC=0%)からThermo−Calcで計算したA1(C=0)変態点、A3(C=0)変態点及びA4(C=0)変態点を記載した。
線材コイルのボトム側(圧延終わり)から3、4及び5巻き目を寸断し、1巻きをそれぞれ8等分に分割し、合計24本の線材片を作製した。線材片から、それぞれ10mm程度切断して、サンプルを取得した。このサンプルを、切断面(横断面)が表面にでるようにしながら樹脂に埋込み、エメリー紙及びダイヤモンド粒子を用いて湿式研磨し、次いでピクラール液でエッチングして、合計24個の脱炭層深さ測定用試験片を作製した。これら試験片を光学顕微鏡にて観察倍率200倍で観察し、参考例の場合と同様にして、全脱炭層深さ(DmT)、フェライト脱炭層深さ(DmF)を求めた。
前記線材片を引き抜き加工(摩棒加工)及び切断して、直径12.5mm×長さ70mmのサンプルを作製した。このサンプルを、温度925℃で10分加熱した後、温度70℃の油で冷却して油焼入れし、次いで温度400℃で60分加熱して焼戻しを行った。焼入れ・焼戻しを行った鋼を、掴み部径12mm、平行部径8mmnJIS Z2274の1号試験片(疲労試験片)に加工した。
前記線材片を摩棒加工及び切断して、直径12.5mm×長さ60mmのサンプルを作製した。このサンプルを、疲労試験と同じ条件にて焼入れ・焼戻しして、ビッカース硬さ測定用の試験片を作製した。この試験片を横断面が露出するようにして樹脂に埋込み、研磨・鏡面仕上げした後、表層から深さ0.1mmの位置を10kgの荷重でビッカース硬さ試験を行い、ビッカース硬さを測定した。結果を表5に示す。図1に、ビッカース硬さとCeq1との関係を示すグラフを記載する。また表5には、ビッカース硬さから換算した引張強度を記載する(表5中で「換算TS」と記載)。この換算には、下記式(5)を使用した:
TS=58.33×(−9.751+0.16491×HV
−9.4457×10-5×HV2)−1135.7 … (5)
〔上記式中、TSは引張強さ(MPa)を表し、HVはビッカース硬さを表す。〕
前記の線材片を摩棒加工及び切断して、直径12.5mm×長さ120mmのサンプルを作製した。このサンプルを、疲労試験と同じ条件にて焼入れ・焼戻しした後、直径10mm×長さ100mmの形状に機械加工して、アスペクト比測定用の試験片を作製した。試験片の表面を800番のエメリー紙で研磨した。腐食しないように、この試験片の両端10mmをエナメル被覆で保護し、この試験片に、5質量%のNaCl水溶液を、JIS Z 2371に従い35℃で8時間噴霧し、その後、試験片を湿度60%及び温度35℃の湿潤環境に16時間保持することを1サイクルとして、これを合計14サイクル行った。その後、クエン酸アンモニウム(98.7%)を蒸留水で10質量%に希釈した液に常温で試験片を浸し、塩水噴霧で発生した錆びを除去し、試験片表面の腐食ピットをレーザー顕微鏡(レーザーテック社製「1LM21W」、倍率:100〜200倍)にて観察した。鋼種ごとに5本の試験片を使用した。5本の試験片表面に観察される腐食ピットの中から、深さが大きいものから順に10個の腐食ピットを選択し、各腐食ピットの深さ及び幅を上記式(4)に代入してアスペクト比を求め、これらの平均値を求めた。結果を表5に示す。図2に、腐食ピットのアスペクト比(平均値)とCeq2との関係を示すグラフを記載する。
前記の線材片を摩棒加工及び切断して、直径12.5mm×長さ70mmのサンプルを作製した。このサンプルを、疲労試験と同じ条件にて焼入れ・焼戻ししてから、幅10mm×厚さ1.5mm×長さ65mmの試験片を切り出した。この試験片に対して、4点曲げによって1400MPaの応力を作用させながら、試験片を硫酸(0.5mol/L)及びチオシアン酸カリウム(0.01mmol/L)の混合水溶液に浸漬した。ポテンションスタットを用いてSCE電極よりも卑である−700mVの電圧をかけ、割れが発生するまでの時間を測定した。結果を表5に示す。図3に、水素脆化割れ寿命とCeq3との関係を示すグラフを記載する。
Claims (5)
- C :0.38〜0.47%(質量%の意味。以下同じ)、
Si:1.9〜2.5%、
Mn:0.6〜1.3%、
Cr:0.4%以下(0%を含む)、
Cu:0.7%以下(0%を含む)、
Ni:0.7%以下(0%を含む)、
Ti:0.05〜0.15%、及び
Al:0.003〜0.1%
を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、
フェライト脱炭層深さが0.01mm以下であり、
下記式(1)で示されるCeq1が0.580以上であり、
下記式(2)で示されるCeq2が0.49以下であり、
下記式(3)で示されるCeq3が0.570以下であることを特徴とするばね用鋼。
Ceq1=[C]+0.11[Si]−0.07[Mn]−0.05[Ni]+0.02[Cr] … (1)
Ceq2=[C]+0.30[Cr]−0.15[Ni]−0.70[Cu] … (2)
Ceq3=[C]−0.04[Si]+0.24[Mn]+0.10[Ni]+0.20[Cr]−0.89[Ti]−1.92[Nb] … (3)
〔上記式中、[ ]は鋼中の各元素の含有量(質量%)を表す。〕 - 下記に示す腐食試験を行った後に、試験片表面に観察される腐食ピットの中から、深さが大きいものから順に5個以上の腐食ピットを選択し、それら腐食ピットの下記式(4)で示されるアスペクト比の平均値が0.9以下である、請求項1に記載のばね用鋼。
アスペクト比=(腐食ピットの深さ×2)/(腐食ピットの幅) … (4)
腐食試験:
ばね用鋼を温度925℃で10分加熱した後、温度70℃の油で冷却して油焼入れし、次いで温度400℃で60分加熱して焼戻しを行った後、表面を800番のエメリー紙で研磨して腐食試験用の試験片を作製する。
この試験片に、5質量%のNaCl水溶液を、JIS Z 2371に従い35℃で8時間噴霧し、その後、試験片を湿度60%及び温度35℃の湿潤環境に16時間保持することを1サイクルとして、これを合計14サイクル行う。
その後、錆を除去してから、試験片表面の腐食ピットをレーザー顕微鏡にて観察する。 - さらにNb:0.1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1又は2に記載のばね用鋼。
- さらにB:0.005%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のばね用線材の製造方法。
- Pが0.02%以下(0%を含まない)、Sが0.02%以下(0%を含まない)、Nが0.007%以下(0%を含まない)、Oが0.0015%以下(0%を含まない)である請求項1〜4のいずれかに記載のばね用鋼。
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